(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-20
(45)【発行日】2025-01-28
(54)【発明の名称】車両
(51)【国際特許分類】
B60L 7/14 20060101AFI20250121BHJP
B60L 7/18 20060101ALI20250121BHJP
B60T 8/17 20060101ALI20250121BHJP
B60T 7/12 20060101ALI20250121BHJP
B60L 3/00 20190101ALI20250121BHJP
【FI】
B60L7/14
B60L7/18
B60T8/17 Z
B60T7/12 D
B60L3/00 H
(21)【出願番号】P 2021124170
(22)【出願日】2021-07-29
【審査請求日】2024-02-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高下 雅央
【審査官】加藤 昌人
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-017090(JP,A)
【文献】国際公開第2020/121848(WO,A1)
【文献】特開2006-111170(JP,A)
【文献】特開平02-114515(JP,A)
【文献】特開2019-123369(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60L 1/00- 3/12
B60L 7/00-13/00
B60L 15/00-58/40
B60T 7/12- 8/1769
B60T 8/32- 8/96
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の回生制動力が付与される第1モードと、前記第1の回生制動力とは異なる第2の回生制動力が付与される第2モードと、の間で切り替え可能な車両であって、
ドライバ操作によって選択されたモードが前記第1モードと前記第2モードのいずれであるかを示すモード選択信号を出力するモード選択装置と、
前記モード選択信号を入力し、選択されたモードに基づいて回生制動力を制御する制御装置と、を備えており、
前記制御装置は、前記第1モードを示す前記モード選択信号から前記第2モードを示す前記モード選択信号に切り替わったときに、前記モード選択信号が切り替わってから一定時間が経過するまでは前記第1モードに基づいて回生制動力を制御し、前記モード選択信号が切り替わってから前記一定時間が経過するまでにキャンセル操作がされなかったときに前記第2モードに基づいて回生制動力を制御する、車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書が開示する技術は、電気自動車等の車両に関する。本明細書でいう「電気自動車」は、一又は複数の車輪をモータによって駆動する自動車を広く意味し、例えば、外部電源によって充電される再充電式の自動車、及び、エンジンを併せ持つハイブリッド式の自動車等が含まれる。
【背景技術】
【0002】
アクセル開放操作によるコースト走行状態において、ドライバの選択に応じて車両に付与する回生制動力を切り替え可能な車両が知られており、その一例が特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ドライバの誤操作によって意図しないモードが選択されると、ドライバの意図しない制動力が車両に付与されてしまう。誤操作によって意図しない制動力が車両に付与されるのを回避する技術が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書が開示する車両は、第1の回生制動力が付与される第1モードと、前記第1の回生制動力とは異なる第2の回生制動力が付与される第2モードと、の間で切り替え可能な車両である。なお、前記第1の回生制動力と前記第2の回生制動力の大小関係については、特に限定されるものではない。この車両は、ドライバ操作によって選択されたモードが前記第1モードと前記第2モードのいずれであるかを示すモード選択信号を出力するモード選択装置と、前記モード選択信号を入力し、選択されたモードに基づいて回生制動力を制御する制御装置と、を備えることができる。前記制御装置は、前記第1モードを示す前記モード選択信号から前記第2モードを示す前記モード選択信号に切り替わったときに、前記モード選択信号が切り替わってから一定時間が経過するまでは前記第1モードに基づいて回生制動力を制御し、前記モード選択信号が切り替わってから前記一定時間が経過するまでにキャンセル操作がされなかったときに前記第2モードに基づいて回生制動力を制御する。
【0006】
前記車両では、前記第1モードから前記第2モードに切り替わるときに、前記ドライバのキャンセル操作を受け付けるための期間が設けられている。このため、誤操作に気付いた前記ドライバがこの期間内にキャンセル操作を実行することにより、前記第1モードから前記第2モードへの切り替えが停止され、前記ドライバの意図した前記第1モードが維持される。このように、前記ドライバの誤操作によって前記ドライバの意図しない制動力が車両に付与されることが回避される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本実施形態の電気自動車の駆動系のブロック図である。
【
図2】本実施形態の電気自動車の制御装置が行う制御のフローチャートである。
【
図3】本実施形態の電気自動車の通常回生モードと強回生モードの間のモード遷移を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図面を参照して実施例の電気自動車2について説明する。
図1は、電気自動車2の駆動系のブロック図である。電気自動車2は、モータ10が発生する駆動力を利用して走行する。電気自動車2は、モータ10に電力を供給するバッテリ14と、モータ10とバッテリ14の間に接続されているとともに電力を直流と交流の間で変換するインバータ12と、インバータ12等の機器を制御する制御装置16と、を有している。電気自動車2はさらに、ドライブシャフト6及びディファレンシャルギア8を有している。ドライブシャフト6及びディファレンシャルギア8は、モータ10から駆動輪である一対の前輪4に駆動力を伝えるように構成されている。
【0009】
モータ10は、永久磁石が埋設されたロータを備える三相交流回転電機によって構成されている。バッテリ14の直流電源を不図示のコンバータで昇圧し、インバータ12が三相の交流に変換し、モータ10に供給することで、モータ10のロータが回転して駆動力が発生する。モータ10が発生させた駆動力は、ディファレンシャルギア8を介してドライブシャフト6に入力して一対の前輪4に伝達される。これにより電気自動車2は走行する。
【0010】
モータ10はさらに、発電機として機能することができる。モータ10は、逆駆動によって回生電力を発電するとともに、車輪に回生制動力を付与する。交流である回生電力は、インバータ12により直流に変換される。直流に変換された回生電力は、不図示のコンバータに供給され、コンバータによって降圧されてバッテリ14に供給される。このように電気自動車2では、回生電力を用いてバッテリ14を充電することができる。
【0011】
電気自動車2はさらに、アクセルペダル22と、ブレーキペダル24と、選択装置32と、報知装置34と、を有している。
【0012】
選択装置32は、ドライバ操作によって選択されたモードを示すモード選択信号S10を出力する装置である。ここで、電気自動車2は、第1の回生制動力が付与される通常回生モードと、第2の回生制動力が付与される強回生モードと、の間で切り替え可能な車両である。強回生モードで車両に付与される回生制動力は、通常回生モードで車両に付与される回生制動力よりも大きい。例えば、アクセル開放操作によるコースト走行状態のときに、強回生モードで車両に付与される回生制動力は、通常回生モードで車両に付与される回生制動力よりも大きい。通常回生モードにおける第1の回生制動力は、アクセル操作に応じて調整されてもよい。強回生モードにおける第2の回生制動力も、アクセル操作に応じて調整されてもよい。通常回生モードは、例えば「Bレンジ」と称されるモードである。強回生モードは、ブレーキペダル24を使用せずにアクセルペダル22のみで加減速を制御できるモードであり、例えば「ワンペダルモード」と称されるモードである。なお、この例では、2つのモードのみを例示しているが、選択装置32は、3つ以上のモードがドライバ操作で選択可能であってもよい。
【0013】
選択装置32が出力するモード選択信号S10は、制御装置16に入力する。制御装置16は、モード選択信号S10に基づいて、選択されたモードが通常回生モードと強回生モードのいずれであるかを判定する。制御装置16は、選択されたモードに基づいてインバータ12を制御し、アクセル操作に応じて回生制動力を調整する。制御装置16はさらに、報知装置34を介して選択されたモードをドライバに報知する。報知装置34は、特に限定されるものではないが、例えばインストルメントパネルに設けられた表示部(例えば、ランプの点灯)であってもよい。
【0014】
図2は、ドライバ操作によって通常回生モードが選択された後に、さらに強回生モードが選択された場合の制御装置16が実行する処理手順を示すフローチャートである。
【0015】
まず、ステップS1において、ドライバが選択装置32を介して通常回生モードを選択すると、選択装置32は通常回生モードを示すモード選択信号S10を出力する。
【0016】
ステップS2において、制御装置16は、モード選択信号S10に基づいて通常回生モードに遷移する。これにより、制御装置16は、通常回生モードに基づいてインバータ12を制御し、アクセル操作に応じて回生制動力を調整する。また、制御装置16は、報知装置34を用いて、選択されているモードが通常回生モードであることをドライバに報知する。
【0017】
ステップS3において、ドライバが選択装置32を介して強回生モードを選択すると、選択装置32は強回生モードを示すモード選択信号S10を出力する。
【0018】
ステップS4において、制御装置16は、通常回生モードを示すモード選択信号S10から強回生モードを示すモード選択信号S10に切り替わったときに、移行モードに遷移する。移行モードは、移行前のモード、即ち、通常回生モードを一定時間に亘って維持するモードである。モード選択信号S10が切り替わってから移行モードが継続される一定時間は、例えば1ミリ秒~5000ミリ秒の間に適宜設定されている。下限値は、車両がモード遷移しようとしていることをドライバが認識し、キャンセル操作を行うのに十分な時間である。上限値は、実際の制動力の変更が遅くなりすぎてドライバに故障や操作失敗の誤解を与えない時間である。また、制御装置16は、報知装置34を用いて、選択されているモードが強回生モードであることをドライバに報知する。
【0019】
ステップS5において、制御装置16は、移行モードの期間内にドライバのキャンセル操作があるか否かを判定する。この例のキャンセル操作は、ドライバが選択装置32を介して通常回生モードを再選択する操作である。ドライバのキャンセル操作がなければ、ステップS6に進み、制御装置16は強回生モードに遷移する。ドライバのキャンセル操作があると、ステップS7に進み、制御装置16は通常回生モードに遷移する。また、制御装置16は、キャンセル操作があった場合、報知装置34を用いて、選択されているモードが通常回生モードであることをドライバに報知する。
【0020】
例えば、ドライバが通常回生モードで走行しているときに、選択装置32の誤操作によって強回生モードが選択されてしまうことがある。この場合、ドライバの意図しない強い制動力が車両に付与されてしまう。上記したように、電気自動車2では、通常回生モードから強回生モードに切り替わるときに、制御装置16が移行モードに遷移することにより、ドライバのキャンセル操作を受け付けるための期間が設けられている。このため、誤操作に気付いたドライバがこの期間にキャンセル操作を実行することにより、通常回生モードから強回生モードへの切り替えが停止され、通常回生モードが維持される。このように、ドライバの誤操作によってドライバの意図しない制動力が車両に付与されることが回避される。
【0021】
上記説明では、通常回生モードから強回生モードへの移行時に移行モードに遷移する例を説明した。同様に、強回生モードから通常回生モードへの移行時に移行モードに遷移してもよい。
図3に示されるように、電気自動車2は、通常回生モードと強回生モードの間のいずれの方向への移行時にも移行モードに遷移するように構成されてもよい。この例では、通常回生モードと強回生モードの間のいずれの方向への移行時にも、ドライバの誤操作によってドライバの意図しない制動力が車両に付与されることが回避される。
【0022】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0023】
2 :電気自動車
4 :前輪
6 :ドライブシャフト
8 :ディファレンシャルギア
10 :モータ
12 :インバータ
14 :バッテリ
16 :制御装置
22 :アクセルペダル
24 :ブレーキペダル
32 :選択装置
34 :報知装置