(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-20
(45)【発行日】2025-01-28
(54)【発明の名称】内燃機関用のスパークプラグ及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01T 13/54 20060101AFI20250121BHJP
H01T 13/20 20060101ALI20250121BHJP
H01T 21/02 20060101ALI20250121BHJP
【FI】
H01T13/54
H01T13/20 E
H01T21/02
(21)【出願番号】P 2021191299
(22)【出願日】2021-11-25
【審査請求日】2024-02-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】弁理士法人あいち国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】杉浦 明光
【審査官】片岡 弘之
(56)【参考文献】
【文献】実開昭51-038124(JP,U)
【文献】特開2008-186667(JP,A)
【文献】特開2020-009747(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01T 13/54
H01T 13/20
H01T 21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状の絶縁碍子(3)と、
該絶縁碍子の内周側に保持されると共に該絶縁碍子から先端側に突出した中心電極(4)と、
上記絶縁碍子を内周側に保持する筒状のハウジング(2)と、
上記中心電極との間に放電ギャップ(G)を形成する接地電極(6)と、
該接地電極が設けられていると共に、上記放電ギャップが配される副燃焼室(50)を覆うよう上記ハウジングの先端部に固定されたプラグカバー(5)と、を有し、
上記接地電極は、上記プラグカバーの内壁面(53)から上記副燃焼室内に突出していると共に、プラグ軸方向(Z)から見たとき、プラグ径方向に沿うように設けられており、
上記放電ギャップは、上記中心電極の中心放電面(41)と上記接地電極の接地放電面(61)とが、プラグ軸方向に互いに対向することにより形成されており、
上記ハウジングの先端部は、上記プラグカバーのカバー基端部(51)と上記プラグ径方向に対向するハウジング固定部(21)と、該ハウジング固定部よりも基端側において上記プラグカバーの基端面(52)とプラグ軸方向に対向する対向面(22)と、を有し、
上記ハウジング固定部と上記カバー基端部とは互いに接合されており、
上記プラグカバーの上記基端面は、上記対向面からプラグ軸方向に離れた位置に配置されて
おり、
上記カバー基端部は、上記基端面の一部が基端側に突出することにより形成された凸部(54)を複数有し、上記対向面は、プラグ周方向に沿って階段状に形成された階段部(23)を有し、上記凸部は、上記階段部の一部に、プラグ軸方向に当接している、内燃機関用のスパークプラグ(1)。
【請求項2】
筒状の絶縁碍子(3)と、
該絶縁碍子の内周側に保持されると共に該絶縁碍子から先端側に突出した中心電極(4)と、
上記絶縁碍子を内周側に保持する筒状のハウジング(2)と、
上記中心電極との間に放電ギャップ(G)を形成すると共に、該放電ギャップが配される副燃焼室(50)を覆うよう上記ハウジングの先端部に固定されたプラグカバー(5)と、を有し、
上記放電ギャップは、上記中心電極の中心放電面(41)と、上記プラグカバーの内壁面(53)の一部である接地放電面(611)とが、プラグ軸方向(Z)に互いに対向することにより形成されており、
上記ハウジングの先端部は、上記プラグカバーのカバー基端部(51)とプラグ径方向に対向するハウジング固定部(21)と、該ハウジング固定部よりも基端側において上記プラグカバーの基端面(52)とプラグ軸方向に対向する対向面(22)と、を有し、
上記ハウジング固定部と上記カバー基端部とは互いに接合されており、
上記プラグカバーの上記基端面は、上記対向面からプラグ軸方向に離れた位置に配置されている、内燃機関用のスパークプラグ(1)。
【請求項3】
上記カバー基端部は、上記基端面の一部が基端側に突出することにより形成された凸部(54)を複数有し、上記対向面は、プラグ周方向に沿って階段状に形成された階段部(23)を有し、上記凸部は、上記階段部の一部に、プラグ軸方向に当接している、請求
項2に記載の内燃機関用のスパークプラグ。
【請求項4】
上記ハウジング固定部と上記カバー基端部とは、雄ネジ部(11)と、該雄ネジ部と螺合する雌ネジ部(12)との螺合によって、互いに固定された、螺合部を形成している、請求
項2に記載の内燃機関用のスパークプラグ。
【請求項5】
プラグ軸方向における上記対向面から上記プラグカバーの上記基端面までの距離(D1)は、上記放電ギャップのプラグ軸方向における長さ(D2)以上である、請求項1~4のいずれか一項に記載の内燃機関用のスパークプラグ。
【請求項6】
上記ハウジング固定部の外周側に、上記カバー基端部が接合されている、請求項1~5のいずれか一項に記載の内燃機関用のスパークプラグ。
【請求項7】
内燃機関用のスパークプラグ(1)を製造する方法であって、
上記スパークプラグは、筒状の絶縁碍子(3)と、該絶縁碍子の内周側に保持されると共に該絶縁碍子から先端側に突出した中心電極(4)と、上記絶縁碍子を内周側に保持する筒状のハウジング(2)と、上記中心電極との間に放電ギャップ(G)を形成する接地電極(6)と、該接地電極が設けられていると共に、上記放電ギャップが配される副燃焼室(50)を覆うよう上記ハウジングの先端部に固定されたプラグカバー(5)と、を有し、
上記接地電極は、上記プラグカバーの内壁面(53)から上記副燃焼室内に突出していると共に、プラグ軸方向(Z)から見たとき、プラグ径方向に沿うように設けられており、
上記放電ギャップは、上記中心電極の中心放電面(41)と上記接地電極の接地放電面(61)とが、プラグ軸方向に互いに対向することにより形成されており、
上記ハウジングの先端部は、上記プラグカバーのカバー基端部(51)と上記プラグ径方向に対向するハウジング固定部(21)を有し、
上記スパークプラグを製造するにあたっては、
上記絶縁碍子及び上記中心電極を組み付けた上記ハウジングと、上記接地電極を設けた上記プラグカバーとを、それぞれ作製する、準備工程と、
該準備工程の後に、上記ハウジング固定部と上記カバー基端部とをプラグ径方向に重ねつつ、上記中心放電面と上記接地放電面とをプラグ軸方向に互いに当接させるようにして、上記ハウジングに対して上記プラグカバーを配置する、ギャップ当接工程と、
該ギャップ当接工程の後に、上記ハウジングに対して上記プラグカバーをプラグ軸方向に移動させることにより上記中心放電面から上記接地放電面を離隔させる離隔工程と、
該離隔工程の後に、上記ハウジング固定部と上記カバー基端部とを互いに接合する接合工程と、を行
い、
上記ハウジングの先端部は、上記ハウジング固定部よりも基端側において上記プラグカバーの基端面(52)とプラグ軸方向に対向する対向面(22)を有し、上記カバー基端部は、上記基端面の一部が基端側に突出することにより形成された凸部(54)を複数有し、上記対向面は、プラグ周方向に沿って階段状に形成された階段部(23)を有し、
上記離隔工程の後であって、上記接合工程の前に、
上記ハウジングに対して上記プラグカバーをプラグ周方向に回転させることにより上記凸部を上記階段部にプラグ周方向に当接させた後、上記ハウジングに対して上記プラグカバーをプラグ軸方向に沿って基端側に移動させることにより上記凸部を上記階段部にプラグ軸方向に当接させるカバー当接工程を行う、内燃機関用のスパークプラグの製造方法。
【請求項8】
内燃機関用のスパークプラグ(1)を製造する方法であって、
上記スパークプラグは、筒状の絶縁碍子(3)と、該絶縁碍子の内周側に保持されると共に該絶縁碍子から先端側に突出した中心電極(4)と、上記絶縁碍子を内周側に保持する筒状のハウジング(2)と、上記中心電極との間に放電ギャップ(G)を形成すると共に、該放電ギャップが配される副燃焼室(50)を覆うよう上記ハウジングの先端部に固定されたプラグカバー(5)と、を有し、
上記放電ギャップは、上記中心電極の中心放電面(41)と、上記プラグカバーの内壁面(53)の一部である接地放電面(611)とが、プラグ軸方向(Z)に互いに対向することにより形成されており、
上記ハウジングの先端部は、上記プラグカバーのカバー基端部(51)とプラグ径方向に対向するハウジング固定部(21)を有し、
上記スパークプラグを製造するにあたっては、
上記絶縁碍子及び上記中心電極を組み付けた上記ハウジングと、上記プラグカバーとを、それぞれ作製する、準備工程と、
該準備工程の後に、上記ハウジング固定部と上記カバー基端部とをプラグ径方向に重ねつつ、上記中心放電面と上記接地放電面とをプラグ軸方向に互いに当接させるようにして、上記ハウジングに対して上記プラグカバーを配置する、ギャップ当接工程と、
該ギャップ当接工程の後に、上記ハウジングに対して上記プラグカバーをプラグ軸方向に移動させることにより上記中心放電面から上記接地放電面を離隔させる離隔工程と、
該離隔工程の後に、上記ハウジング固定部と上記カバー基端部とを互いに接合する接合工程と、を行う、内燃機関用のスパークプラグの製造方法。
【請求項9】
上記ハウジングの先端部は、上記ハウジング固定部よりも基端側において上記プラグカバーの基端面(52)とプラグ軸方向に対向する対向面(22)を有し、上記カバー基端部は、上記基端面の一部が基端側に突出することにより形成された凸部(54)を複数有し、上記対向面は、プラグ周方向に沿って階段状に形成された階段部(23)を有し、
上記離隔工程の後であって、上記接合工程の前に、
上記ハウジングに対して上記プラグカバーをプラグ周方向に回転させることにより上記凸部を上記階段部にプラグ周方向に当接させた後、上記ハウジングに対して上記プラグカバーをプラグ軸方向に沿って基端側に移動させることにより上記凸部を上記階段部にプラグ軸方向に当接させるカバー当接工程を行う、請求
項8に記載の内燃機関用のスパークプラグの製造方法。
【請求項10】
上記ハウジング固定部と上記カバー基端部とは、雄ネジ部(11)と、該雄ネジ部と螺合する雌ネジ部(12)との螺合によって、互いに固定された、螺合部を形成しており、
上記ギャップ当接工程においては、上記雄ネジ部と上記雌ネジ部とを互いに螺合させた状態にて、上記ハウジングに対して上記プラグカバーをプラグ周方向の一方に回転させることにより、上記中心放電面と上記接地放電面とが互いに当接するまで、上記ハウジングに対して上記プラグカバーを基端側に移動させ、
上記離隔工程においては、上記雄ネジ部と上記雌ネジ部とを互いに螺合させた状態にて、上記ハウジングに対して上記プラグカバーをプラグ周方向の他方に回転させることにより、上記ハウジングに対して上記プラグカバーを先端側に移動させ、上記中心放電面から上記接地放電面を離隔させる、請求
項8に記載の内燃機関用のスパークプラグの製造方法。
【請求項11】
上記接合工程においては、上記ハウジング固定部の外周側に、上記カバー基端部を接合する、請求項7~10のいずれか一項に記載の内燃機関用のスパークプラグの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関用のスパークプラグ及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1に開示されているように、先端に副燃焼室を備えた内燃機関用のスパークプラグが知られている。特許文献1に開示されたスパークプラグは、接地電極がハウジングの先端部に固定されており、放電ギャップを調整した後に、副燃焼室を覆うプラグカバーの内側に放電ギャップが配置されるように、組み付けることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載のスパークプラグは、放電ギャップを形成するために接地電極を変形させた際、接地電極に、いわゆるスプリングバックが起こるおそれがある。そのため、放電ギャップを所望の長さに調整しにくい場合がある。それゆえ、スパークプラグの生産性の観点において課題がある。
【0005】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、生産性を向上させることができるスパークプラグ及びその製造方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様は、筒状の絶縁碍子(3)と、
該絶縁碍子の内周側に保持されると共に該絶縁碍子から先端側に突出した中心電極(4)と、
上記絶縁碍子を内周側に保持する筒状のハウジング(2)と、
上記中心電極との間に放電ギャップ(G)を形成する接地電極(6)と、
該接地電極が設けられていると共に、上記放電ギャップが配される副燃焼室(50)を覆うよう上記ハウジングの先端部に固定されたプラグカバー(5)と、を有し、
上記接地電極は、上記プラグカバーの内壁面(53)から上記副燃焼室内に突出していると共に、プラグ軸方向(Z)から見たとき、プラグ径方向に沿うように設けられており、
上記放電ギャップは、上記中心電極の中心放電面(41)と上記接地電極の接地放電面(61)とが、プラグ軸方向に互いに対向することにより形成されており、
上記ハウジングの先端部は、上記プラグカバーのカバー基端部(51)と上記プラグ径方向に対向するハウジング固定部(21)と、該ハウジング固定部よりも基端側において上記プラグカバーの基端面(52)とプラグ軸方向に対向する対向面(22)と、を有し、
上記ハウジング固定部と上記カバー基端部とは互いに接合されており、
上記プラグカバーの上記基端面は、上記対向面からプラグ軸方向に離れた位置に配置されており、
上記カバー基端部は、上記基端面の一部が基端側に突出することにより形成された凸部(54)を複数有し、上記対向面は、プラグ周方向に沿って階段状に形成された階段部(23)を有し、上記凸部は、上記階段部の一部に、プラグ軸方向に当接している、内燃機関用のスパークプラグ(1)にある。
【0007】
本発明の第2の態様は、筒状の絶縁碍子(3)と、
該絶縁碍子の内周側に保持されると共に該絶縁碍子から先端側に突出した中心電極(4)と、
上記絶縁碍子を内周側に保持する筒状のハウジング(2)と、
上記中心電極との間に放電ギャップ(G)を形成すると共に、該放電ギャップが配される副燃焼室(50)を覆うよう上記ハウジングの先端部に固定されたプラグカバー(5)と、を有し、
上記放電ギャップは、上記中心電極の中心放電面(41)と、上記プラグカバーの内壁面(53)の一部である接地放電面(611)とが、プラグ軸方向(Z)に互いに対向することにより形成されており、
上記ハウジングの先端部は、上記プラグカバーのカバー基端部(51)とプラグ径方向に対向するハウジング固定部(21)と、該ハウジング固定部よりも基端側において上記プラグカバーの基端面(52)とプラグ軸方向に対向する対向面(22)と、を有し、
上記ハウジング固定部と上記カバー基端部とは互いに接合されており、
上記プラグカバーの上記基端面は、上記対向面からプラグ軸方向に離れた位置に配置されている、内燃機関用のスパークプラグ(1)にある。
【0008】
本発明の第3の態様は、内燃機関用のスパークプラグ(1)を製造する方法であって、
上記スパークプラグは、筒状の絶縁碍子(3)と、該絶縁碍子の内周側に保持されると共に該絶縁碍子から先端側に突出した中心電極(4)と、上記絶縁碍子を内周側に保持する筒状のハウジング(2)と、上記中心電極との間に放電ギャップ(G)を形成する接地電極(6)と、該接地電極が設けられていると共に、上記放電ギャップが配される副燃焼室(50)を覆うよう上記ハウジングの先端部に固定されたプラグカバー(5)と、を有し、
上記接地電極は、上記プラグカバーの内壁面(53)から上記副燃焼室内に突出していると共に、プラグ軸方向(Z)から見たとき、プラグ径方向に沿うように設けられており、
上記放電ギャップは、上記中心電極の中心放電面(41)と上記接地電極の接地放電面(61)とが、プラグ軸方向に互いに対向することにより形成されており、
上記ハウジングの先端部は、上記プラグカバーのカバー基端部(51)と上記プラグ径方向に対向するハウジング固定部(21)を有し、
上記スパークプラグを製造するにあたっては、
上記絶縁碍子及び上記中心電極を組み付けた上記ハウジングと、上記接地電極を設けた上記プラグカバーとを、それぞれ作製する、準備工程と、
該準備工程の後に、上記ハウジング固定部と上記カバー基端部とをプラグ径方向に重ねつつ、上記中心放電面と上記接地放電面とをプラグ軸方向に互いに当接させるようにして、上記ハウジングに対して上記プラグカバーを配置する、ギャップ当接工程と、
該ギャップ当接工程の後に、上記ハウジングに対して上記プラグカバーをプラグ軸方向に移動させることにより上記中心放電面から上記接地放電面を離隔させる離隔工程と、
該離隔工程の後に、上記ハウジング固定部と上記カバー基端部とを互いに接合する接合工程と、を行い、
上記ハウジングの先端部は、上記ハウジング固定部よりも基端側において上記プラグカバーの基端面(52)とプラグ軸方向に対向する対向面(22)を有し、上記カバー基端部は、上記基端面の一部が基端側に突出することにより形成された凸部(54)を複数有し、上記対向面は、プラグ周方向に沿って階段状に形成された階段部(23)を有し、
上記離隔工程の後であって、上記接合工程の前に、
上記ハウジングに対して上記プラグカバーをプラグ周方向に回転させることにより上記凸部を上記階段部にプラグ周方向に当接させた後、上記ハウジングに対して上記プラグカバーをプラグ軸方向に沿って基端側に移動させることにより上記凸部を上記階段部にプラグ軸方向に当接させるカバー当接工程を行う、内燃機関用のスパークプラグの製造方法にある。
【0009】
本発明の第4の態様は、内燃機関用のスパークプラグ(1)を製造する方法であって、
上記スパークプラグは、筒状の絶縁碍子(3)と、該絶縁碍子の内周側に保持されると共に該絶縁碍子から先端側に突出した中心電極(4)と、上記絶縁碍子を内周側に保持する筒状のハウジング(2)と、上記中心電極との間に放電ギャップ(G)を形成すると共に、該放電ギャップが配される副燃焼室(50)を覆うよう上記ハウジングの先端部に固定されたプラグカバー(5)と、を有し、
上記放電ギャップは、上記中心電極の中心放電面(41)と、上記プラグカバーの内壁面(53)の一部である接地放電面(611)とが、プラグ軸方向(Z)に互いに対向することにより形成されており、
上記ハウジングの先端部は、上記プラグカバーのカバー基端部(51)とプラグ径方向に対向するハウジング固定部(21)を有し、
上記スパークプラグを製造するにあたっては、
上記絶縁碍子及び上記中心電極を組み付けた上記ハウジングと、上記プラグカバーとを、それぞれ作製する、準備工程と、
該準備工程の後に、上記ハウジング固定部と上記カバー基端部とをプラグ径方向に重ねつつ、上記中心放電面と上記接地放電面とをプラグ軸方向に互いに当接させるようにして、上記ハウジングに対して上記プラグカバーを配置する、ギャップ当接工程と、
該ギャップ当接工程の後に、上記ハウジングに対して上記プラグカバーをプラグ軸方向に移動させることにより上記中心放電面から上記接地放電面を離隔させる離隔工程と、
該離隔工程の後に、上記ハウジング固定部と上記カバー基端部とを互いに接合する接合工程と、を行う、内燃機関用のスパークプラグの製造方法にある。
【発明の効果】
【0010】
第1の態様のスパークプラグにおいて、放電ギャップは、中心放電面と、プラグカバーに設けられた接地電極の接地放電面とが、プラグ軸方向に互いに対向することにより形成されている。また、プラグカバーの基端面は、対向面からプラグ軸方向に離れた位置に配置されている。それゆえ、接地電極を変形させることなく、放電ギャップを調整することができる。それゆえ、所望の長さを有する放電ギャップを、容易に形成することができる。その結果、スパークプラグの生産性を向上させることができる。
【0011】
第2の態様のスパークプラグにおいて、放電ギャップは、中心放電面と、プラグカバーの接地放電面とが、プラグ軸方向に互いに対向することにより形成されている。また、プラグカバーの基端面は、対向面からプラグ軸方向に離れた位置に配置されている。それゆえ、所望の長さを有する放電ギャップを、容易に形成することができる。その結果、スパークプラグの生産性を向上させることができる。
【0012】
第3の態様のスパークプラグの製造方法は、準備工程と、ギャップ当接工程と、離隔工程と、接合工程とを有する。それゆえ、接地電極を変形させることなく、放電ギャップを調整することができる。その結果、放電ギャップの調整が容易となり、スパークプラグを効率的に製造することができる。
【0013】
第4の態様のスパークプラグの製造方法は、準備工程と、ギャップ当接工程と、離隔工程と、接合工程とを有する。それゆえ、放電ギャップを容易に調整することができる。その結果、スパークプラグを効率的に製造することができる。
【0014】
以上のごとく、上記態様によれば、生産性を向上させることができるスパークプラグ及びその製造方法を提供することができる。
なお、特許請求の範囲及び課題を解決する手段に記載した括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものであり、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】実施形態1における、スパークプラグの先端部付近の、プラグ軸方向に沿った断面図であって、
図2のI-I線矢視断面図。
【
図3】実施形態1における、放電ギャップの長さ等を示す断面図。
【
図4】実施形態1における、ギャップ当接工程において、ハウジングに対してプラグカバーを基端側に移動させる様子を示す断面図。
【
図5】実施形態1における、中心放電面と接地放電面とを互いに当接させた状態を示す断面図。
【
図6】実施形態1における、スパークプラグが設置された内燃機関の断面図。
【
図7】実施形態2における、スパークプラグの先端部付近の、プラグ軸方向に沿った断面図。
【
図8】実施形態2における、中心放電面と接地放電面とを互いに当接させた状態を示す断面図。
【
図9】実施形態3における、スパークプラグの先端部付近の、プラグ軸方向に沿った断面図。
【
図10】実施形態3における、中心放電面と接地放電面とを互いに当接させた状態を示す断面図。
【
図11】実施形態4における、スパークプラグの先端部付近を、プラグ軸方向に直交する方向から見た図。
【
図12】実施形態4における、プラグカバーを基端側から見た図であって、
図15のXII矢視図。
【
図13】実施形態4における、ハウジングを先端側から見た図であって、
図15のXIII矢視図。
【
図14】実施形態4における、階段部付近の拡大図。
【
図15】実施形態4における、ギャップ当接工程において、ハウジングに対してプラグカバーを基端側に移動させる様子を示す図。
【
図16】実施形態4における、中心放電面と接地放電面とを互いに当接させた状態を示す図。
【
図17】実施形態4における、離隔工程において、ハウジングに対してプラグカバーを先端側に移動させた状態を示す図。
【
図18】実施形態4における、カバー当接工程において、凸部を階段部にプラグ周方向に当接させた状態を示す図。
【
図19】実施形態5における、スパークプラグの先端部付近の、プラグ軸方向に沿った断面図。
【
図20】実施形態6における、スパークプラグの先端部付近の、プラグ軸方向に沿った断面図。
【
図21】実施形態7における、スパークプラグの先端部の、プラグ軸方向に直交する断面図。
【
図22】実施形態7における、副燃焼室に形成されたスワール流の向きを説明する断面図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(実施形態1)
内燃機関用のスパークプラグ及びその製造方法に係る実施形態について、
図1~
図6を参照して説明する。
本形態において、内燃機関用のスパークプラグ1は、
図1、
図2に示すごとく、筒状の絶縁碍子3と、中心電極4と、筒状のハウジング2と、接地電極6と、プラグカバー5と、を有する。中心電極4は、絶縁碍子3の内周側に保持されると共に絶縁碍子3から先端側に突出している。ハウジング2は、絶縁碍子3を内周側に保持する。接地電極6は、中心電極4との間に放電ギャップGを形成する。プラグカバー5には、接地電極6が設けられている。また、プラグカバー5は、放電ギャップGが配される副燃焼室50を覆うようハウジング2の先端部に固定されている。
【0017】
接地電極6は、プラグカバー5の内壁面53から副燃焼室50内に突出している。また、接地電極6は、
図2に示すごとく、プラグ軸方向Zから見たとき、プラグ径方向に沿うように設けられている。放電ギャップGは、
図1に示すごとく、中心電極4の中心放電面41と接地電極6の接地放電面61とが、プラグ軸方向Zに互いに対向することにより形成されている。
【0018】
また、ハウジング2の先端部は、ハウジング固定部21と、対向面22と、を有する。ハウジング固定部21は、プラグカバー5のカバー基端部51とプラグ径方向に対向する。対向面22は、ハウジング固定部21よりも基端側においてプラグカバー5の基端面52とプラグ軸方向Zに対向する。また、ハウジング固定部21とカバー基端部51とは互いに接合されている。プラグカバー5の基端面52は、対向面22からプラグ軸方向Zに離れた位置に配置されている。
【0019】
本形態のスパークプラグ1は、例えば、自動車等の内燃機関における着火手段として用いることができる。
図6に示すごとく、ハウジング2のネジ部24を、シリンダヘッド71のプラグホール711の雌ネジ部に螺合して、スパークプラグ1が内燃機関10に取り付けられる。
【0020】
内燃機関10は、シリンダ70内を往復運動するピストン74を備える。主燃焼室101は、ピストン74の往復運動によって、容積変化する。内燃機関10には、吸気ポート721及び排気ポート731が形成されており、それぞれ吸気弁72又は排気弁73が備えられている。
【0021】
そして、スパークプラグ1の軸方向Zの一端が、内燃機関10の主燃焼室101に配置される。スパークプラグ1の軸方向Zにおいて、主燃焼室101に露出する側を先端側、その反対側を基端側というものとする。また、スパークプラグ1の軸方向Zを、適宜、プラグ軸方向Z、或いは単に、Z方向ともいう。なお、プラグ中心軸Cは、スパークプラグ1の中心軸Cを意味するものとする。また、プラグ径方向とは、プラグ中心軸Cに直交する平面上において、プラグ中心軸Cを中心とする円の半径方向を意味する。また、プラグ周方向は、プラグ中心軸Cを中心とする円周に沿った方向である。また、プラグ中心軸Cは、本形態において、中心電極4の中心軸でもある。
【0022】
スパークプラグ1が内燃機関10に取り付けられた状態において、プラグカバー5は、主燃焼室101に面していると共に、副燃焼室50を主燃焼室101と区画している。
【0023】
また、プラグカバー5には、副燃焼室50と外部とを連通させる噴孔55が形成されている。本形態において、プラグカバー5には、
図2に示すごとく、4つの噴孔55が形成されている。噴孔55は、Z方向から見たとき、噴孔軸55Lがプラグ径方向に沿うように、形成されている。また、噴孔55は、先端側へ向かうほどプラグ径方向の外側へ向かうように、Z方向に対して傾斜して開口している。スパークプラグ1が内燃機関10に取り付けられた状態において、噴孔55は、副燃焼室50と主燃焼室101とを連通させている。
【0024】
また、接地電極6は、プラグカバー5に溶接等によって接合されている。接地電極6は、略四角柱形状をなしている。接地電極6は、4つの平坦な側面を備えており、そのうちの一つが基端側面62となっている。接地電極6の基端側面62は、中心電極4の中心放電面41とZ方向に対向している。つまり、基端側面62の一部が、接地放電面61となっている。
【0025】
接地放電面61と中心放電面41とは、それぞれ平坦な面であると共に、実質的にZ方向に直交するように形成されている。
図1に示すごとく、中心放電面41は、ハウジング2の先端よりも先端側に位置している。つまり、放電ギャップGは、ハウジング2の先端よりも先端側に形成されている。
【0026】
また、ハウジング2の先端部は、ハウジング固定部21と対向面22とを有し、段状に形成されている。また、ハウジング固定部21の外周側に、カバー基端部51が接合されている。
【0027】
また、対向面22の先端側にプラグカバー5の基端面52が位置している。対向面22と基端面52とは互いに当接することなく、Z方向に互いに対向している。つまり、対向面22と基端面52との間には、隙間g1が形成されている。
図3に示すごとく、プラグ軸方向Zにおける対向面22からプラグカバー5の基端面52までの距離D1は、放電ギャップGのプラグ軸方向Zにおける長さD2以上である。
【0028】
また、Z方向における対向面22から中心放電面41までの距離D3は、Z方向におけるプラグカバー5の基端面52から接地放電面61までの距離D4以上である。
【0029】
次に、
図4、
図5を参照しながら、本形態のスパークプラグ1の製造方法について説明する。
スパークプラグ1を製造するにあたっては、準備工程と、ギャップ当接工程と、離隔工程と、接合工程と、を行う。準備工程では、絶縁碍子3及び中心電極4を組み付けたハウジング2と、接地電極6を設けたプラグカバー5とを、それぞれ作製する。ギャップ当接工程では、準備工程の後に、
図5に示すごとく、ハウジング固定部21とカバー基端部51とをプラグ径方向に重ねつつ、中心放電面41と接地放電面61とをプラグ軸方向Zに互いに当接させるようにして、ハウジング2に対してプラグカバー5を配置する。離隔工程では、ギャップ当接工程の後に、ハウジング2に対してプラグカバー5をプラグ軸方向Zに移動させることにより中心放電面41から接地放電面61を離隔させる。接合工程では、離隔工程の後に、ハウジング固定部21とカバー基端部51とを互いに接合する。以下、詳細に説明する。
【0030】
本形態において、ハウジング固定部21の外周面と、カバー基端部51の内周面とは、それぞれZ方向に沿うように形成されている。そして、ギャップ当接工程から接合工程までは、ハウジング2に対し、プラグカバー5を嵌合させた状態にて行う。つまり、ハウジング固定部21の外周面と、カバー基端部51の内周面とが、プラグ径方向に互いに当接した状態にて、各工程を行う。ただし、ハウジング固定部21の外周面とカバー基端部51の内周面との間には、両者の円滑な摺動を可能にする程度の若干のクリアランスが設けられていてもよい。
【0031】
まず、準備工程では、プラグカバー5とは別部材の接地電極6を、プラグカバー5に接合することにより、接地電極6が設けられたプラグカバー5を作製する。
【0032】
次に、ギャップ当接工程では、中心電極4等を組付けたハウジング2に対し、プラグカバー5を嵌合する。そして、
図4の矢印Mに示すごとく、ロボットアームを用いて、ハウジング2に対してプラグカバー5を基端側へ摺動させることにより、
図5に示すごとく、中心放電面41と接地放電面61とを当接させる。つまり、ギャップ当接工程では、中心放電面41と接地放電面61との間に放電ギャップGが形成されていない状態とする。また、接地放電面61を中心放電面41に当接させた状態において、プラグカバー5の基端面52と対向面22との間には隙間g2が形成されている。
【0033】
次に、離隔工程では、接地放電面61が中心放電面41から離れるように、
図5の矢印Mに示すごとく、ロボットアームを用いて、ハウジング2に対してプラグカバー5をZ方向の先端側にスライドさせる。このとき、プラグカバー5は、ハウジング2に対し、放電ギャップGの長さだけ、Z方向にスライドさせる。これにより、放電ギャップGの長さを、所望の長さとすることができる。つまり、離隔工程におけるハウジング2に対するプラグカバー5の移動量が、放電ギャップGの長さに相当する。
【0034】
次に、接合工程では、プラグ径方向に当接しているハウジング固定部21とカバー基端部51とを、溶接等によって互いに接合させる。また、接合工程においては、ハウジング固定部21の外周側に、カバー基端部51を接合する。これにより、
図1、
図2に示すごとく、本形態のスパークプラグ1を作製することができる。
【0035】
次に、本形態の作用効果につき説明する。
本形態のスパークプラグ1において、放電ギャップGは、中心放電面41と、プラグカバー5に設けられた接地電極6の接地放電面61とが、プラグ軸方向Zに互いに対向することにより形成されている。また、プラグカバー5の基端面52は、対向面22からプラグ軸方向Zに離れた位置に配置されている。それゆえ、接地電極6を変形させることなく、放電ギャップGを調整することができる。それゆえ、所望の長さを有する放電ギャップGを、容易に形成することができる。その結果、スパークプラグ1の生産性を向上させることができる。
【0036】
つまり、本形態のスパークプラグ1は、準備工程と、ギャップ当接工程と、離隔工程と、接合工程とを行うことにより、製造することができる。それゆえ、接地電極6を変形させることなく、放電ギャップGを調整することができる。それゆえ、放電ギャップGの再調整を行うことなく、所望の長さの放電ギャップGを形成することができる。その結果、スパークプラグ1の生産性を向上させることができる。また、スパークプラグ1の不良率を抑えることができる。
【0037】
また、距離D1は、長さD2以上である(
図3参照)。それゆえ、スパークプラグ1を製造する際、ギャップ当接工程において、接地放電面61を中心放電面41に確実に当接させることができる。それゆえ、所望の長さを有する放電ギャップGを、確実、かつ容易に形成することができる。その結果、スパークプラグ1の生産性を確実に向上させることができる。
【0038】
また、ハウジング固定部21の外周側に、カバー基端部51が接合されている。それゆえ、プラグカバー5のプラグ径方向における幅を大きくすることができる。それゆえ、プラグカバー5における内側の空間の容積を大きくすることができる。それゆえ、副燃焼室50の容積を大きくすることができる。それゆえ、噴孔55を介して副燃焼室50から主燃焼室へと噴出させる火炎ジェットを強化することができる。その結果、着火性を向上させることができる。
【0039】
本形態のスパークプラグ1の製造方法は、準備工程と、ギャップ当接工程と、離隔工程と、接合工程とを有する。それゆえ、接地電極6を変形させることなく、放電ギャップGを調整することができる。その結果、放電ギャップGの調整が容易となり、スパークプラグ1を効率的に製造することができる。
【0040】
本形態において、ギャップ当接工程から接合工程までは、ハウジング2に対し、プラグカバー5を嵌合させた状態にて行う。それゆえ、各工程を行うにあたり、ハウジング2に対するプラグカバー5のプラグ径方向における位置がずれにくい。それゆえ、スパークプラグ1を一層効率的に製造することができる。
【0041】
ハウジング固定部21の外周面と、カバー基端部51の内周面とは、それぞれZ方向に沿うように形成されている。それゆえ、ハウジング固定部21にカバー基端部51を嵌合させた状態にて、ハウジング2に対してプラグカバー5をZ方向にスライドさせることができる。それゆえ、ハウジング固定部21とカバー基端部51とをシンプルな形状としつつ、ギャップ当接工程から接合工程までを効率的に行うことができる。それゆえ、スパークプラグ1を、より一層効率的に製造することができる。
【0042】
また、本形態においては、離隔工程における、ハウジング2に対するプラグカバー5のZ方向の移動距離が、放電ギャップGの長さD2となる。それゆえ、ハウジング2に対するプラグカバー5のZ方向の移動距離を調整することにより、放電ギャップGを直接確認することなく、放電ギャップGの長さを調整することができる。
【0043】
接合工程においては、ハウジング固定部21の外周側に、カバー基端部51を接合する。それゆえ、副燃焼室50の容積が大きくなるように、ハウジング2に対してプラグカバー5を組み付けることができる。その結果、着火性を向上させることができるスパークプラグ1を製造することができる。
【0044】
接地電極6は、プラグ軸方向Zから見たとき、プラグ径方向に沿うように設けられている。また、噴孔55は、先端側へ向かうほどプラグ径方向の外側へ向かうように、Z方向に対して傾斜して開口している。それゆえ、噴孔55を介して副燃焼室50内に導入された気流が、接地電極6の基端側面62に案内されることにより放電ギャップGに向かいやすい。それゆえ、放電ギャップGに形成された放電が伸長しやすい。その結果、着火性を向上させることができる。
【0045】
以上のごとく、本形態によれば、生産性を向上させることができるスパークプラグ1及びその製造方法を提供することができる。
【0046】
(実施形態2)
本形態は、
図7、
図8に示すごとく、プラグカバー5の一部が接地電極6を構成する形態である。
【0047】
プラグカバー5は、
図7に示すごとく、中心電極4との間に放電ギャップGを形成する。放電ギャップGは、中心電極4の中心放電面41と、プラグカバー5の内壁面53の一部である接地放電面611とが、プラグ軸方向Zに互いに対向することにより形成されている。
【0048】
本形態において、中心電極4は、先端部をプラグカバー5の内壁面53の近傍にまで延ばすことにより、内壁面53との間に放電ギャップGを形成している。つまり、本形態においては、内壁面53から副燃焼室50内に接地電極6を突出させていない。
【0049】
次に、本形態のスパークプラグ1の製造方法について説明する。
準備工程では、絶縁碍子3及び中心電極4を組み付けたハウジング2と、プラグカバー5とを、それぞれ作製する。ギャップ当接工程では、
図8に示すごとく、ハウジング固定部21とカバー基端部51とをプラグ径方向に重ねつつ、中心放電面41と接地放電面611とをプラグ軸方向Zに互いに当接させるようにして、ハウジング2に対してプラグカバー5を配置する。また、離隔工程では、
図8の矢印Mに示すごとく、ハウジング2に対してプラグカバー5をプラグ軸方向Zに移動させることにより中心放電面41から接地放電面611を離隔させる。
その他は、実施形態1と同様である。なお、実施形態2以降において用いた符号のうち、既出の実施形態において用いた符号と同一のものは、特に示さない限り、既出の実施形態におけるものと同様の構成要素等を表す。
【0050】
本形態のスパークプラグ1において、放電ギャップGは、中心放電面41と、プラグカバー5の接地放電面611とが、プラグ軸方向Zに互いに対向することにより形成されている。また、プラグカバー5の基端面52は、対向面22からプラグ軸方向Zに離れた位置に配置されている。それゆえ、所望の長さを有する放電ギャップGを、容易に形成することができる。その結果、スパークプラグ1の生産性を向上させることができる。
【0051】
本形態のスパークプラグ1の製造方法は、準備工程と、ギャップ当接工程と、離隔工程と、接合工程とを有する。それゆえ、放電ギャップGを容易に調整することができる。その結果、スパークプラグ1を効率的に製造することができる。
【0052】
本形態においては、プラグカバー5の一部が接地電極6を構成している。それゆえ、プラグカバー5に接地電極を固定することなく、スパークプラグ1を製造することができる。その結果、スパークプラグ1を、一層効率的に製造することができる。
その他、実施形態1と同様の作用効果を有する。
【0053】
(実施形態3)
本形態は、
図9、
図10に示すごとく、ハウジング2に対しプラグカバー5を螺合固定した形態である。
【0054】
本形態において、ハウジング固定部21とカバー基端部51とは、
図9に示すごとく、雄ネジ部11と、雄ネジ部11と螺合する雌ネジ部12との螺合によって、互いに固定された、螺合部を形成している。具体的には、カバー基端部51に形成された雌ネジ部12とハウジング固定部21に形成された雄ネジ部11との螺合によって、ハウジング2に対しプラグカバー5が固定されている。
【0055】
次に、本形態のスパークプラグ1の製造方法について説明する。
ギャップ当接工程においては、雄ネジ部11と雌ネジ部12とを互いに螺合させた状態にて、ハウジング2に対してプラグカバー5をプラグ周方向の一方に回転させる。これにより、
図10に示すごとく、中心放電面41と接地放電面61とが互いに当接するまで、ハウジング2に対してプラグカバー5を基端側に移動させる。
【0056】
また、離隔工程においては、雄ネジ部11と雌ネジ部12とを互いに螺合させた状態にて、
図10の矢印Mに示すごとく、ハウジング2に対してプラグカバー5をプラグ周方向の他方に回転させる。これにより、ハウジング2に対してプラグカバー5を先端側に移動させ、中心放電面41から接地放電面61を離隔させる。
その他は、実施形態1と同様である。
【0057】
ハウジング固定部21とカバー基端部51とは、螺合部を形成している。それゆえ、ハウジング2に対しプラグカバー5を効率的に組み付けることができる。つまり、離隔工程において放電ギャップGを所望の長さにした後、接合工程を行う際、プラグカバー5をロボットアーム等で保持することなく、ハウジング固定部21に対しカバー基端部51を、溶接等によって接合することができる。それゆえ、ロボットアームが行う作業のタクトタイムを短縮させることができる。その結果、スパークプラグ1の生産性を向上させることができる。
【0058】
本形態のスパークプラグ1の製造方法は、上述したギャップ当接工程と離隔工程とを有する。それゆえ、放電ギャップGを容易に調整することができる。つまり、例えば、雄ネジ部11及び雌ネジ部12のピッチを1.25mm、放電ギャップGの長さD2(
図3参照)を0.6mmとする。この場合、離隔工程において、ハウジング2に対してプラグカバー5をプラグ周方向に0.48回転させることにより、長さD2を0.6mmとすることができる。その結果、スパークプラグ1を効率的に製造することができる。
その他、実施形態1と同様の作用効果を有する。
【0059】
(実施形態4)
本形態は、
図11~
図18に示すごとく、実施形態1に対し、カバー基端部51及び対向面22の形状を変更した形態である。
【0060】
カバー基端部51は、
図11、
図12、
図15~
図18に示すごとく、基端面52の一部が基端側に突出することにより形成された凸部54を複数有する。対向面22は、
図11、
図13~
図18に示すごとく、プラグ周方向に沿って階段状に形成された階段部23を有する。また、凸部54は、
図11に示すごとく、階段部23の一部に、プラグ軸方向Zに当接している。
【0061】
本形態において、カバー基端部51には、
図12に示すごとく、2つの凸部54が形成されている。2つの凸部54は、互いにプラグ径方向に対向するように形成されている。また、それぞれの凸部54は、2つの基端面52同士によって、プラグ周方向に挟まれるように配置されている。
【0062】
凸部54は、
図11に示すごとく、プラグ周方向を向くと共にZ方向に沿って形成された凸部側面541と、実質的にZ方向に直交するように形成された凸部基端面542とを有する。2つの凸部54の、それぞれの凸部基端面542は、階段部23にZ方向に当接している。また、本形態において、それぞれの凸部基端面542は、Z方向における位置が互いに同等の位置となっている。
【0063】
また、ハウジング2の先端部には、凸部54の数に合わせて、2つの階段部23が形成されている。
図13に示すごとく、ハウジング2の先端部をZ方向から見たとき、2つの階段部23は、プラグ中心軸Cを対称点として、点対称となるように形成されている。本形態においては、対向面22の一部に、階段部23が形成されている。
【0064】
階段部23は、段状に形成された段部231を複数有する。段部231は、それぞれ、プラグ周方向を向くと共にZ方向に沿って形成された周方向当接面232と、実質的にZ方向に直交するように形成された軸方向当接面233とを有する。
【0065】
図14に示すごとく、それぞれの段部231のZ方向における長さD5は、放電ギャップGの公差以下の長さとなっている。つまり、例えば、放電ギャップGの長さD2(
図3参照)の基準値を0.6mmとし、長さD2の許容される最大値を0.65mmとし、長さD2の許容される最小値を0.55mmとする。この場合、放電ギャップGの公差が0.1mmとなるため、長さD5は0.1mm以下となる。本形態において、長さD5は、放電ギャップGの公差と同等の長さとなっている。また、長さD5は、周方向当接面232のZ方向における長さでもある。
【0066】
また、
図15に示すごとく、階段部23のZ方向における長さD6は、長さD2よりも長い。また、
図11に示すごとく、Z方向における中心放電面41から、最も基端側に位置する対向面22までの距離D7は、Z方向における接地放電面61から凸部54の凸部基端面542までの距離D8以上である。
【0067】
次に、
図15~
図18を参照しながら、本形態のスパークプラグ1の製造方法について説明する。
本形態において、ギャップ当接工程は、凸部54と階段部23とがZ方向に互いに当接しないように、行う。具体的には、Z方向から見て(図示略)、凸部54が階段部23と重ならないように、ハウジング2に対しプラグカバー5を配置すると共に、
図15の矢印Mに示すごとく、ハウジング2に対しプラグカバー5を基端側にスライドさせる。なお、
図15の矢印Mの方向は、鉛直下向きとなっている。
【0068】
離隔工程においては、
図16の矢印Mに示すごとく、ハウジング2に対しプラグカバー5を先端側にスライドさせる。また、離隔工程においては、長さD2の許容される最大値と同等の距離、ハウジング2に対してプラグカバー5を、Z方向に沿って先端側に移動させる。
【0069】
また、本形態においては、離隔工程の後であって、接合工程の前に、カバー当接工程を行う。カバー当接工程では、
図17の矢印Mに示すごとく、ハウジング2に対してプラグカバー5をプラグ周方向に回転させることにより凸部54を階段部23にプラグ周方向に当接させる。その後、
図18の矢印Mに示すごとく、ハウジング2に対してプラグカバー5をプラグ軸方向Zに沿って基端側に移動させることにより凸部54を階段部23にプラグ軸方向Zに当接させる。
【0070】
具体的には、カバー当接工程では、ハウジング2に対するプラグカバー5のZ方向における位置を維持しつつ、
図17の矢印Mに示すごとく、ハウジング2に対してプラグカバー5をプラグ周方向に回転させる。これにより、
図18に示すごとく、凸部54の凸部側面541を、段部231の周方向当接面232にプラグ周方向に当接させる。その後、
図18の矢印Mに示すごとく、ハウジング2に対してプラグカバー5を基端側に移動させ、
図11に示すごとく、凸部54の凸部基端面542を、段部231の軸方向当接面233にZ方向に当接させる。ここで、長さD5(
図14参照)は、放電ギャップGの公差以下の長さとなっている。したがって、カバー当接工程における、ハウジング2に対するプラグカバー5の基端側への移動量は、放電ギャップGの公差以下となる。また、上記のごとく、離隔工程においては、長さD2の許容される最大値と同等の距離、ハウジング2に対してプラグカバー5を、Z方向に沿って先端側に移動させる。そのため、カバー当接工程において、凸部基端面542を軸方向当接面233に当接させたとき、Z方向における中心放電面41から接地放電面61までの距離は、放電ギャップGの長さD2の許容される範囲内の距離となる。つまり、放電ギャップGを所望の長さとすることができる。
その他は、実施形態1と同様である。
【0071】
カバー基端部51は凸部54を複数有する。対向面22は階段部23を有する。また、凸部54は、階段部23の一部に、プラグ軸方向Zに当接している。それゆえ、所望の長さを有する放電ギャップGを、効率的に形成することができる。その結果、スパークプラグ1の生産性を一層向上させることができる。
【0072】
また、本形態においては、離隔工程の後であって、接合工程の前に、カバー当接工程を行う。それゆえ、スパークプラグ1を一層効率的に製造することができる。
【0073】
具体的には、カバー当接工程において、複数の凸部54を、階段部23にZ方向に当接させた状態とすることにより、放電ギャップGの長さを所望の長さに維持しつつ、ハウジング2の先端部にプラグカバー5を載置することができる。つまり、カバー当接工程後、プラグカバー5からロボットアームを離したとしても、放電ギャップGの長さを所望の長さに維持しつつ、ハウジング2にプラグカバー5が載置された状態を維持することができる。それゆえ、接合工程においては、プラグカバー5をロボットアームによって保持することなく、ハウジング2に対しプラグカバー5を接合することができる。それゆえ、ロボットアームが行う作業のタクトタイムを短縮させることができる。その結果、スパークプラグ1の生産性を一層向上させることができる。
【0074】
長さD6(
図15参照)は、長さD2よりも長い。それゆえ、ハウジング2に対する中心放電面41のZ方向における位置にバラツキがあったとしても、カバー当接工程において、凸部54を階段部23に、確実に当接させることができる。それゆえ、所望の長さを有する放電ギャップGを確実に形成することができる。その結果、スパークプラグ1を、確実に、効率的に製造することができる。
【0075】
距離D7(
図11参照)は距離D8(
図11参照)以上である。それゆえ、ギャップ当接工程において、接地放電面61を中心放電面41に、確実に当接させることができる。その結果、スパークプラグ1を、確実に、効率的に製造することができる。
その他、実施形態1と同様の作用効果を有する。
【0076】
実施形態4において、カバー基端部51は、凸部54を2つ有する。ただし、カバー基端部に、凸部を3つ以上形成することもできる。この場合、凸部の数に対応するように階段部を形成することにより、接合工程を行う際、ハウジングの先端部にプラグカバーを安定して載置させることができる。
【0077】
(実施形態5)
本形態は、
図19に示すごとく、ハウジング固定部21の内周側に、カバー基端部51が接合された形態である。
【0078】
本形態においては、ハウジング固定部21の内周面と、カバー基端部51の外周面とが、プラグ径方向に互いに当接した状態にて、ギャップ当接工程から接合工程までを行う。
その他の構成及び作用効果は、実施形態1と同様である。
【0079】
(実施形態6)
本形態は、
図20に示すごとく、実施形態5に対し、カバー基端部51の形状を変更した形態である。
【0080】
カバー基端部51は、
図20に示すごとく、筒状の薄肉部511を有する。薄肉部511の厚みは、プラグカバー5における他の部位よりも薄い。ここで、「他の部位よりも薄い」とは、薄肉部511の厚みの平均が、プラグカバー5における薄肉部511以外の部位の厚みの平均よりも薄いことを意味する。
【0081】
また、ハウジング固定部21の内周側に、薄肉部511が接合されることにより、プラグカバー5がハウジング2に固定されている。
【0082】
また、プラグカバー5は、ハウジング固定部21とZ方向に対向するカバー対向面56を有する。カバー対向面56は、薄肉部511の外周面の先端に沿って形成されている。
その他は、実施形態5と同様である。
【0083】
カバー基端部51は薄肉部511を有する。それゆえ、副燃焼室50の容積を大きくすることができる。その結果、着火性を向上させることができる。
その他、実施形態5と同様の作用効果を有する。
【0084】
(実施形態7)
本形態は、
図21、
図22に示すごとく、実施形態1に対し、噴孔55の開口方向を変更した形態である。
【0085】
本形態において、噴孔55は、
図21に示すごとく、Z方向から見たとき、噴孔55とプラグ中心軸Cとを通過するプラグ径方向に延びる仮想直線VLに対して、噴孔軸55Lが鋭角の角度をもって傾斜するように形成されている。複数の噴孔55は、各噴孔55における仮想直線VLに対する噴孔軸55Lの傾斜方向が、プラグ周方向における同じ側となっている。
【0086】
このような噴孔55の形成態様により、噴孔55を介して副燃焼室50に導入された気流によって、副燃焼室50にスワール流(
図22の破線矢印SF参照)が形成される。本形態の場合、スワール流SFは、プラグ中心軸Cの周りに、
図22における反時計回りの螺旋状に生じる。
その他は、実施形態1と同様である。
【0087】
噴孔55は、噴孔55を介して副燃焼室50に導入された気流によって、副燃焼室50にスワール流SFが生じるように、形成されている。それゆえ、放電ギャップGに生じた放電によって形成された初期火炎は、スワール流SFによって、副燃焼室50内に広がりやすい。それゆえ、副燃焼室50内の燃焼が促進されやすい。その結果、副燃焼室50の着火性を向上させることができる。
その他、実施形態1と同様の作用効果を有する。
【0088】
上記実施形態1~7において、プラグカバー5には、4つの噴孔55が形成されている。ただし、噴孔は、プラグカバーに5つ以上形成することもできる。また、プラグカバーに形成された噴孔の数は、3つ以下とすることもできる。
【0089】
上記実施形態1、3~7において、プラグカバー5には、プラグカバー5とは別部材の接地電極6が固定されている。ただし、プラグカバーと接地電極とは、一体に形成されたものとすることができる。
【0090】
上記実施形態1、3~7においては、Z方向から見たとき、すべての噴孔55の噴孔軸55Lが接地電極6の突出方向に対して傾斜している。ただし、例えば、Z方向から見たとき、一部の噴孔の噴孔軸が、接地電極の突出方向に沿うように、噴孔を形成することもできる。
【0091】
また、放電ギャップを形成する中心電極の先端部と接地電極とのそれぞれに、チップを接合することもできる。つまり、中心電極の先端部に接合されたチップと接地電極に接合されたチップとの間に、放電ギャップを形成することもできる。チップは、例えば、イリジウムや白金等の貴金属、又はこれらを主成分とする合金とすることができる。
【0092】
本発明は上記各実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の実施形態に適用することが可能である。
【符号の説明】
【0093】
1…スパークプラグ、2…ハウジング、21…ハウジング固定部、22…対向面、3…絶縁碍子、4…中心電極、41…中心放電面、5…プラグカバー、50…副燃焼室、51…カバー基端部、52…基端面、53…内壁面、6…接地電極、61…接地放電面、G…放電ギャップ、Z…プラグ軸方向