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7622650α位にカーボネート基を有するイソ酪酸エステル化合物及び香料組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-20
(45)【発行日】2025-01-28
(54)【発明の名称】α位にカーボネート基を有するイソ酪酸エステル化合物及び香料組成物
(51)【国際特許分類】
   C11B 9/00 20060101AFI20250121BHJP
   C07C 69/96 20060101ALI20250121BHJP
   A61K 8/37 20060101ALI20250121BHJP
   A61Q 13/00 20060101ALI20250121BHJP
   A61Q 19/10 20060101ALI20250121BHJP
   A61K 47/14 20170101ALI20250121BHJP
   A23L 27/20 20160101ALI20250121BHJP
【FI】
C11B9/00 S
C07C69/96 Z CSP
A61K8/37
A61Q13/00 101
A61Q19/10
A61K47/14
A23L27/20 D
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021567472
(86)(22)【出願日】2020-12-22
(86)【国際出願番号】 JP2020047848
(87)【国際公開番号】W WO2021132211
(87)【国際公開日】2021-07-01
【審査請求日】2023-10-24
(31)【優先権主張番号】P 2019233331
(32)【優先日】2019-12-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004466
【氏名又は名称】三菱瓦斯化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡本 淳
(72)【発明者】
【氏名】平岡 杏子
(72)【発明者】
【氏名】濱島 航
(72)【発明者】
【氏名】横堀 海
【審査官】小久保 敦規
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-235002(JP,A)
【文献】特開昭61-93141(JP,A)
【文献】SHAPIRO, Seymour L. et al,Aminoalkylamides and Oxazolidinediones,Journal of the American Chemical Society,1959年,81,pp.3083-3088
【文献】REHBERG, C.E. et al,MIXED ESTERS OF LACTIC AND CARBONIC ACIDS. REACTION OF CHLOROFORMATES WITH ESTERS OF LACTIC ACID,Journal of Organic Chemistry,1948年,13,pp.254-264
【文献】CIPOLLONE Amalia, et al,Reaction of Ethyl Azidoformate with Ketene Silyl Acetals,Journal of Organic Chemistry,1987年,52,pp.2584-2586
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C11B 9/00
C07C 69/96
A61K 8/37
A61Q 13/00
A61Q 19/10
A61K 47/14
A23L 27/20
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)で表される化合物を有効成分として含有する香料組成物。
【化1】

(式(1)中、R1は炭素数1~4の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基を、R2は炭素数1~6の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基を示す。)
【請求項2】
式(1)中、R1がメチル基又はエチル基である、請求項1に記載の香料組成物。
【請求項3】
式(1)中、R2がイソプロピル基、セカンダリーブチル基又はイソブチル基である、請求項1又は2に記載の香料組成物。
【請求項4】
式(2)で表される化合物。
【化2】

(式(2)中、R3は炭素数1~4の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基を、R4は炭素数1~6の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基を示す。ただし、R3=エチル基でありかつR4=メチル基である化合物、R3=エチル基でありかつR4=エチル基である化合物、及びR3=ノルマルブチル基でありかつR4=エチル基である化合物を除く。)
【請求項5】
式(2)中、R3がメチル基又はエチル基である、請求項4に記載の化合物。
【請求項6】
式(2)中、R4がイソプロピル基、セカンダリーブチル基又はイソブチル基である、請求項4又は5に記載の化合物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、α位にカーボネート基を有するイソ酪酸エステル化合物及び香料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
イソ酪酸エステルには香料として有用な化合物があることが知られている。例えば、非特許文献1には各種のイソ酪酸エステルが主としてフレーバーとして用いられており、具体的にはイソ酪酸メチルが甘いアプリコット様、イソ酪酸プロピルが重いパイナップル様、イソ酪酸ブチルが新鮮なリンゴ及びバナナ様、イソ酪酸イソアミルが甘いアプリコット及びパイナップル様といった、いずれもフルーツ香のフレーバー素材であることの記載がある。
また、特許文献1にはα位に酸素との結合を持つイソ酪酸エステルとして、α-アルコキシイソ酪酸の直鎖又は分岐した炭素数4~12のアルキルエステルが香料として有用であることが開示されており、α-エトキシイソ酪酸ノルマルヘキシルがラベンダー様の香気を持つと記載がある。
【0003】
一方、α位にカーボネート基を有するイソ酪酸エステルについても公知な物質はあり、例えば非特許文献2ではα-(ノルマルペンチルオキシカルボニル)オキシイソ酪酸エチル、α-(ノルマルブトキシカルボニル)オキシイソ酪酸エチルが、セルロース樹脂やビニル樹脂の可塑剤として有用であることが開示されている。
【0004】
また、非特許文献3ではα-(エトキシカルボニル)オキシイソ酪酸エチルが、ナトリウムエトキシド触媒の存在下にα-ヒドロキシイソ酪酸エチルと炭酸ジエチルを反応させることにより合成できることが開示されている。
また、非特許文献4ではα-(エトキシカルボニル)オキシイソ酪酸メチルが、対応するトリメチルシリルカルボイミド化合物の加水分解反応により生成することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】米国特許第3,368,943号明細書
【非特許文献】
【0006】
【文献】「合成香料 化学と商品知識 増補新版」、化学工業日報社、2016年、580~582ページ
【文献】Journal of Organic Chemistry, 1948, Vol.13, p.254-264
【文献】Journal of the American Chemical Society, 1959, Vol.81, p.3083-3088
【文献】Journal of Organic Chemistry, 1987, vol.52(12), p.2584-2586
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、香料及び調合香料素材として有用なα位にカーボネート基を有するイソ酪酸エステル化合物を提供することである。更に本発明が解決しようとする別の課題は、前記化合物を有効成分として含有する香料組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、種々の化合物を合成し、その香気について鋭意検討したところ、α位にカーボネート基を有するイソ酪酸の特定のエステル化合物が香料及び調合香料素材として有用であることを見出した。
すなわち、本発明は、以下のとおりである。
【0009】
<1> 式(1)で表される化合物を有効成分として含有する香料組成物。
【化1】

(式(1)中、R1は炭素数1~4の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基を、R2は炭素数1~6の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基を示す。)
<2> 式(1)中、R1がメチル基又はエチル基である、上記<1>に記載の香料組成物。
<3> 式(1)中、R2がイソプロピル基、セカンダリーブチル基又はイソブチル基である、上記<1>又は<2>に記載の香料組成物。
<4> 式(2)で表される化合物。
【化2】

(式(2)中、R3は炭素数1~4の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基を、R4は炭素数1~6の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基を示す。ただし、R3=エチル基でありかつR4=メチル基である化合物、R3=エチル基でありかつR4=エチル基である化合物、及びR3=ノルマルブチル基でありかつR4=エチル基である化合物を除く。)
<5> 式(2)中、R3がメチル基又はエチル基である、上記<4>に記載の化合物。
<6> 式(2)中、R4がイソプロピル基、セカンダリーブチル基又はイソブチル基である、上記<4>又は<5>に記載の化合物。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、香料及び調合香料素材として有用なα位にカーボネート基を有するイソ酪酸エステル化合物を提供することができる。更に本発明によれば、α位にカーボネート基を有するイソ酪酸エステル化合物を有効成分として含有する香料組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[香料組成物及び使用]
本発明の香料組成物は、下記式(1)で表される化合物を有効成分として含む。従来、α位にカーボネート基を有するイソ酪酸エステル化合物の一部については報告があるが、α位にカーボネート基を有するイソ酪酸エステル固有の香りについては先行文献に記載がなかった。
【0012】
以下、本発明について、詳細に説明する。
<式(1)で表される化合物>
本発明の香料組成物に用いられる化合物(以下、「α位にカーボネート基を有するイソ酪酸エステル」ともいう。)は、下記式(1)で表される。
【化3】

(式(1)中、R1は炭素数1~4の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基を、R2は炭素数1~6の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基を示す。)
【0013】
式(1)中、R1としては、具体的にはメチル基、エチル基、ノルマルプロピル基、イソプロピル基、ノルマルブチル基、イソブチル基(2-メチルプロピル基)、セカンダリーブチル基(1-メチルプロピル基)、ターシャリーブチル基、シクロプロピル基、シクロブチル基等が挙げられる。好ましくはメチル基、エチル基、ノルマルプロピル基、イソプロピル基、ノルマルブチル基又はイソブチル基(2-メチルプロピル基)であり、より好ましくはメチル基又はエチル基である。
【0014】
式(1)中、R2としては、具体的にはメチル基、エチル基、ノルマルプロピル基、イソプロピル基、ノルマルブチル基、イソブチル基(2-メチルプロピル基)、セカンダリーブチル基(1-メチルプロピル基)、ターシャリーブチル基、ノルマルペンチル基、1-メチルブチル基(2-ペンチル基)、2-メチルブチル基、3-メチルブチル基、ネオペンチル基(2,2-ジメチルプロピル基)、2-メチルブタン-2-イル基、1-エチルプロピル基(3-ペンチル基)、3-メチルブタン-2-イル基、ノルマルヘキシル基、1-メチルペンチル基(2-ヘキシル基)、2-メチルペンチル基、3-メチルペンチル基、4-メチルペンチル基、2-メチルペンタン-2-イル基、2,2-ジメチルブチル基、3,3-ジメチルブチル基、3-メチルペンタン-2-イル基、2,3-ジメチルブチル基、4-メチルペンタン-2-イル基、3-ヘキシル基、2-エチルブチル基、2,3-ジメチルブタン-2-イル基、3,3-ジメチルブタン-2-イル基、4-メチルペンタン3-イル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。好ましくは、イソプロピル基、セカンダリーブチル基又はイソブチル基である。
【0015】
1又はR2が不斉炭素を持つ場合には、式(1)で表される化合物は、それによって生じる光学異性体のいずれか1つ又は任意の割合での混合物を含む。
【0016】
上記式(1)で表される化合物は、香料及び調合香料素材として有用であり、フローラルの香気を持ち、それに加えてR1又はR2の違いによってフルーティ調、ウッディー調、スパイシー調、グリーン調、ミント調などの香気も同時に示す。
好ましくは、R1がメチル基である。
好ましくは、R1がエチル基である。
好ましくは、R2がイソプロピル基である。
好ましくは、R2がセカンダリーブチル基である。
好ましくは、R2がイソブチル基である。
特に好ましくは、R1がメチル基、かつ、R2がイソプロピル基である。
特に好ましくは、R1がエチル基、かつ、R2がイソプロピル基である。
特に好ましくは、R1がメチル基、かつ、R2がセカンダリーブチル基である。
特に好ましくは、R1がエチル基、かつ、R2がセカンダリーブチル基である。
特に好ましくは、R1がメチル基、かつ、R2がイソブチル基である。
特に好ましくは、R1がエチル基、かつ、R2がイソブチル基である。
【0017】
本発明において、式(1)で表される化合物として、下式(1-1)~(1-34)のいずれかで表される化合物が例示され、特に好ましい化合物は、下式(1-4)、(1-5)、(1-8)、(1-12)、(1-13)、(1-16)のいずれかで表される化合物である。
【0018】
【化4】
【0019】
【化5】
【0020】
【化6】
【0021】
式(1)で表される化合物は、それ自体が後述するように優れた香気を有することから、香料として有用である。また、香料は、一般に単品で使用されることは少なく、複数の香料を目的に合わせて配合した調合香料(香料組成物)として使用することが多い。式(1)で表される化合物は、調合香料(香料組成物)に配合される香料(「調合香料素材」ともいう。)として有用であり、本発明の香料組成物は、式(1)で表される化合物を有効成分として含有するものである。香料として、上記式(1)で表される化合物を1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
また、式(1)で表される化合物が、本発明の効果を損なわない範囲で、少量の不純物、副生成物、夾雑物などを含むことを排除するものではない。
【0022】
式(1)で表される化合物は、フローラルの香気を持つと共にフルーティ調、ウッディー調、スパイシー調、グリーン調、ミント調などの香気を有し、かつ拡散性にも優れる。式(1)で表される化合物を単独で香料として各種香粧品類、保健衛生材料をはじめとして医薬品、日用雑貨品、食品などに添加使用することにより香気を賦与してもよく、また、式(1)で表される化合物を他の調合香料素材等と混合して、後述する香料組成物(調合香料)を調製し、これを各種の製品に配合して香気を付与してもよい。これらの中でも、目的とする香気を得る観点から、式(1)で表される化合物を調合香料素材として香料組成物に配合して、式(1)で表される化合物を有効成分として含有する香料組成物を調製し、該香料組成物を製品に配合することで賦香することが好ましい。
【0023】
<香料組成物>
本発明の香料組成物(調合香料)は、式(1)で表される化合物を有効成分として含有する。なお、式(1)で表される化合物を少なくとも1種以上含有すれば特に限定されず、2種以上の式(1)で表される化合物を含有してもよい。
本発明の香料組成物は、式(1)で表される化合物を有効成分として含有していればよく、その他の成分については特に限定されないが、他の調合香料素材(以下、「従来香料」ともいう。)を更に含有することが好ましい。
なお、「香料組成物(調合香料)」とは、該香料組成物を各種香粧品類、医薬品、食品、飲料等に添加することで、香気を付与する組成物、又はそれ自体として香水等に使用される組成物であり、従来香料に加え、必要に応じて、溶媒等の添加剤を含有してもよい。
式(1)で表される化合物の配合量は、化合物の種類、目的とする香気の種類及び香気の強さ等により異なるが、式(1)で表される化合物の量として香料組成物中に、好ましくは0.001質量%以上、より好ましくは0.01質量%以上、更に好ましくは0.1質量%以上であり、好ましくは90質量%以下、より好ましくは70質量%以下、更に好ましくは50質量%以下である。
【0024】
従来香料は、従来公知な香料成分であれば特に制限はなく、広い範囲の香料が使用でき、例えば下記のようなものから単独で又は2種以上を任意の混合比率で選択し、使用することができる。
例えば、リモネン、α-ピネン、β-ピネン、テルピネン、セドレン、ロンギフォレン、バレンセン等の炭化水素類;リナロール、シトロネロール、ゲラニオール、ネロール、テルピネオール、ジヒドロミルセノール、エチルリナロール、ファルネソール、ネロリドール、シス-3-ヘキセノール、セドロール、メントール、ボルネオール、β-フェニルエチルアルコール、ベンジルアルコール、フェニルヘキサノール、2,2,6-トリメチルシクロヘキシル-3-ヘキサノール、1-(2-t-ブチルシクロヘキシルオキシ)-2-ブタノール、4-イソプロピルシクロヘキサンメタノール、4-t-ブチルシクロヘキサノール、4-メチル-2-(2-メチルプロピル)テトラヒドロ-2H-ピラン-4-オール、2-メチル-4-(2,2,3-トリメチル-3-シクロペンテン-1-イル)-2-ブテン-1-オール、2-エチル-4-(2,2,3-トリメチル-3-シクロペンテン-1-イル)-2-ブテン-1-オール、イソカンフィルシクロヘキサノール、3,7-ジメチル-7-メトキシオクタン-2-オール等のアルコール類;オイゲノール、チモール、バニリン等のフェノール類;リナリルホルメート、シトロネリルホルメート、ゲラニルホルメート、n-ヘキシルアセテート、シス-3-ヘキセニルアセテート、リナリルアセテート、シトロネリルアセテート、ゲラニルアセテート、ネリルアセテート、テルピニルアセテート、ノピルアセテート、ボルニルアセテート、イソボルニルアセテート、o-t-ブチルシクロヘキシルアセテート、p-t-ブチルシクロヘキシルアセテート、トリシクロデセニルアセテート、ベンジルアセテート、スチラリルアセテート、シンナミルアセテート、ジメチルベンジルカルビニルアセテート、3-ペンチルテトラヒドロピラン-4-イルアセテート、シトロネリルプロピオネート、トリシクロデセニルプロピオネート、アリルシクロヘキシルプロピオネート、エチル2-シクロヘキシルプロピオネート、ベンジルプロピオネート、シトロネリルブチレート、ジメチルベンジルカルビニルn-ブチレート、トリシクロデセニルイソブチレート、メチル2-ノネノエート、メチルベンゾエート、ベンジルベンゾエート、メチルシンナメート、メチルサリシレート、n-ヘキシルサリシレート、シス-3-ヘキセニルサリシレート、ゲラニルチグレート、シス-3-ヘキセニルチグレート、メチルジャスモネート、メチルジヒドロジャスモネート、メチル-2,4-ジヒドロキシ-3,6-ジメチルベンゾエート、エチルメチルフェニルグリシデート、メチルアントラニレート、フルテート等のエステル類;n-オクタナール、n-デカナール、n-ドデカナール、2-メチルウンデカナール、10-ウンデセナール、シトロネラール、シトラール、ヒドロキシシトロネラール、ジメチルテトラヒドロベンズアルデヒド、4(3)-(4-ヒドロキシ-4-メチルペンチル)-3-シクロヘキセン-1-カルボアルデヒド、2-シクロヘキシルプロパナール、p-t-ブチル-α-メチルヒドロシンナミックアルデヒド、p-イソプロピル-α-メチルヒドロシンナミックアルデヒド、p-エチル-α,α-ジメチルヒドロシンナミックアルデヒド、α-アミルシンナミックアルデヒド、α-ヘキシルシンナミックアルデヒド、ピペロナール、α-メチル-3,4-メチレンジオキシヒドロシンナミックアルデヒド等のアルデヒド類;メチルヘプテノン、4-メチレン-3,5,6,6-テトラメチル-2-ヘプタノン、アミルシクロペンタノン、3-メチル-2-(シス-2-ペンテン-1-イル)-2-シクロペンテン-1-オン、メチルシクロペンテノロン、ローズケトン、γ-メチルヨノン、α-ヨノン、カルボン、メントン、ショウ脳、ヌートカトン、ベンジルアセトン、アニシルアセトン、メチルβ-ナフチルケトン、2,5-ジメチル-4-ヒドロキシ-3(2H)-フラノン、マルトール、7-アセチル-1,2,3,4,5,6,7,8-オクタヒドロ-1,1,6,7-テトラメチルナフタレン、ムスコン、シベトン、シクロペンタデカノン、シクロヘキサデセノン等のケトン類;アセトアルデヒドエチルフェニルプロピルアセタール、シトラールジエチルアセタール、フェニルアセトアルデヒドグリセリンアセタール、エチルアセトアセテートエチレングリコールケタール類のアセタール類及びケタール類;アネトール、β-ナフチルメチルエーテル、β-ナフチルエチルエーテル、リモネンオキシド、ローズオキシド、1,8-シネオール、ラセミ体又は光学活性のドデカヒドロ-3a,6,6,9a-テトラメチルナフト[2,1-b]フラン等のエーテル類;シトロネリルニトリル等のニトリル類;γ-ノナラクトン、γ-ウンデカラクトン、σ-デカラクトン、γ-ジャスモラクトン、クマリン、シクロペンタデカノリド、シクロヘキサデカノリド、アンブレットリド、エチレンブラシレート、11-オキサヘキサデカノリド等のラクトン類;オレンジ、レモン、ベルガモット、マンダリン、ペパーミント、スペアミント、ラベンダー、カモミル、ローズマリー、ユーカリ、セージ、バジル、ローズ、ゼラニウム、ジャスミン、イランイラン、アニス、クローブ、ジンジャー、ナツメグ、カルダモン、セダー、ヒノキ、サンダルウッド、ベチバー、パチョリ、ラブダナム等の天然精油や天然抽出物;合成香料等の他の香料物質等である。
【0025】
また、香料組成物は、調合香料素材以外の構成成分として、ポリオキシエチレンラウリル硫酸エーテル等の界面活性剤;ジプロピレングリコール、ジエチルフタレート、エチレングリコール、プロピレングリコール、メチルミリステート、トリエチルシトレート等の溶媒;酸化防止剤;着色剤等も含んでいてもよい。
【0026】
式(1)で表される化合物は、フローラルの香気を持つと共にフルーティ調、ウッディー調、スパイシー調、グリーン調、ミント調などの香気を有することから、従来香料と組み合わせることによりフローラル調と共に自然なフルーティ調、ウッディー調、スパイシー調、グリーン調、ミント調を賦与できるため、各種香粧品類、保健衛生材料をはじめとして医薬品、日用雑貨品、食品などへの添加し、香気を賦与するに有用である。
【0027】
式(1)で表される化合物を含有する香料組成物を、香気付与のため、及び配合対象物の香気の改良を行うために添加できるものとしては香粧品類、健康衛生材料、雑貨、飲料、食品、医薬部外品、医薬品等の各種製品を挙げることができ、例えば、香水、コロン類等のフレグランス製品;シャンプー、リンス類、ヘアートニック、ヘアークリーム類、ムース、ジェル、ポマード、スプレーその他毛髪用化粧料;化粧水、美容液、クリーム、乳液、パック、ファンデーション、おしろい、口紅、各種メークアップ類等の肌用化粧料;皿洗い洗剤、洗濯用洗剤、ソフトナー類、消毒用洗剤類、消臭洗剤類、室内芳香剤、ファニチャーケア、ガラスクリーナー、家具クリーナー、床クリーナー、消毒剤、殺虫剤、漂白剤、殺菌剤、忌避剤、その他の各種健康衛生用洗剤類;歯磨、マウスウォッシュ、入浴剤、制汗製品、パーマ液等の医薬部外品;トイレットペーパー、ティッシュペーパー等の雑貨;医薬品等;食品等の香気成分として使用することができる。
【0028】
上記製品中の香料組成物の配合量は特に限定されず、賦香すべき製品の種類、性質及び官能的効果などに応じて、香料組成物の配合量は広い範囲に渡って選択することができる。例えば、0.00001質量%以上、好ましくは0.0001質量%以上、更に好ましくは0.001質量%以上であり、例えば香水等のフレグランスの場合には100質量%であってもよく、好ましくは80質量%以下、更に好ましくは60質量%以下、より更に好ましくは40質量%以下である。
【0029】
[式(2)で表される化合物]
本発明の化合物は、式(2)で表される。以下、式(2)で表される化合物を、「本発明のイソ酪酸エステル」ともいう。
【化7】

(式(2)中、R3は炭素数1~4の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基を、R4は炭素数1~6の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基を示す。ただし、R3=エチル基でありかつR4=メチル基である化合物、R3=エチル基でありかつR4=エチル基である化合物、及びR3=ノルマルブチル基でありかつR4=エチル基である化合物を除く。)
【0030】
式(2)中、R3としては、具体的にはメチル基、エチル基、ノルマルプロピル基、イソプロピル基、ノルマルブチル基、イソブチル基(2-メチルプロピル基)、セカンダリーブチル基(1-メチルプロピル基)、ターシャリーブチル基、シクロプロピル基、シクロブチル基等が挙げられる。好ましくはメチル基、エチル基、ノルマルプロピル基、イソプロピル基、ノルマルブチル基又はイソブチル基(2-メチルプロピル基)であり、より好ましくはメチル基又はエチル基である。
【0031】
式(2)中、R4としては、具体的にはメチル基、エチル基、ノルマルプロピル基、イソプロピル基、ノルマルブチル基、イソブチル基(2-メチルプロピル基)、セカンダリーブチル基(1-メチルプロピル基)、ターシャリーブチル基、ノルマルペンチル基、1-メチルブチル基(2-ペンチル基)、2-メチルブチル基、3-メチルブチル基、ネオペンチル基(2,2-ジメチルプロピル基)、2-メチルブタン-2-イル基、1-エチルプロピル基(3-ペンチル基)、3-メチルブタン-2-イル基、ノルマルヘキシル基、1-メチルペンチル基(2-ヘキシル基)、2-メチルペンチル基、3-メチルペンチル基、4-メチルペンチル基、2-メチルペンタン-2-イル基、2,2-ジメチルブチル基、3,3-ジメチルブチル基、3-メチルペンタン-2-イル基、2,3-ジメチルブチル基、4-メチルペンタン-2-イル基、3-ヘキシル基、2-エチルブチル基、2,3-ジメチルブタン-2-イル基、3,3-ジメチルブタン-2-イル基、4-メチルペンタン3-イル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。好ましくは、イソプロピル基、セカンダリーブチル基又はイソブチル基である。
【0032】
ただし、式(2)中、R3=エチル基でありかつR4=メチル基である化合物、R3=エチル基でありかつR4=エチル基である化合物、及びR3=ノルマルブチル基でありかつR4=エチル基である化合物を除く。
【0033】
3又はR4が不斉炭素を持つ場合には、式(2)で表される化合物は、それによって生じる光学異性体のいずれか1つ又は任意の割合での混合物を含む。
【0034】
本発明のイソ酪酸エステルは、式(2)中、R3がメチル基又はエチル基であることが好ましい。また、R4がイソプロピル基、セカンダリーブチル基又はイソブチル基であることが好ましい。ただし、R3=エチル基でありかつR4=メチル基である化合物、R3=エチル基でありかつR4=エチル基である化合物、及びR3=ノルマルブチル基でありかつR4=エチル基である化合物を除く。
すなわち、本発明のイソ酪酸エステルは、特に好ましくは以下の化合物である。
好ましくは、R3がメチル基である。
好ましくは、R3がエチル基である。ただし、R4がメチル基又はエチル基であるものを除く。
好ましくは、R4がイソプロピル基である。
好ましくは、R4がセカンダリーブチル基である。
好ましくは、R4がイソブチル基である。
特に好ましくは、R3がメチル基、かつR4がイソプロピル基である。
特に好ましくは、R3がエチル基、かつR4がイソプロピル基である。
特に好ましくは、R3がメチル基、かつR4がセカンダリーブチル基である。
特に好ましくは、R3がエチル基、かつR4がセカンダリーブチル基である。
特に好ましくは、R3がメチル基、かつR4がイソブチル基である。
特に好ましくは、R3がエチル基、かつR4がイソブチル基である。
【0035】
本発明のイソ酪酸エステルは、好ましくは下式(2-1)~(2-26)のいずれかで表される化合物であり、特に好ましくは下式(2-4)、(2-5)、(2-8)、(2-10)、(2-11)、(2-14)のいずれかで表される化合物である。
【0036】
【化8】
【0037】
【化9】
【0038】
なお、本発明のイソ酪酸エステルは、式(2)で表される化合物から、R3=エチル基でR4=メチル基である化合物、R3=エチル基でR4=エチル基である化合物、及びR3=ノルマルブチル基でR4=エチル基である化合物を除いたものである。従って、本発明のイソ酪酸エステルは、単独で香料として有用であり、また、香料組成物の有効成分として有用である。
【0039】
[本発明のイソ酪酸エステル及び式(1)で表される化合物の製造方法]
式(2)で表される本発明のイソ酪酸エステル及び式(1)で表される化合物の製造方法に特に制限はなく、従来公知の方法から適宜選択して用いればよい。
【0040】
例えば、α-ヒドロキシイソ酪酸エステル又はそのアルカリ金属アルコキシドとハロゲノギ酸エステルとを反応させることによって、α位にカーボネート基を有するイソ酪酸エステルを製造することができる。この反応の反応式を下記式(3)に示した。
【化10】

式(3)中、R1は炭素数1~4の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基を、R2は炭素数1~6の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基を示し、Mは水素原子又はナトリウム、カリウム、セシウム等のアルカリ金属原子を示し、Xは塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲン原子を示す。
【0041】
また、α-ヒドロキシイソ酪酸エステルと炭酸エステルとを触媒の存在下にエステル交換反応させることによって、α位にカーボネート基を有するイソ酪酸エステルを製造することができる。この反応の反応式を下記式(4)に示した。
【化11】

式(4)中、R1は炭素数1~4の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基を、R2は炭素数1~6の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基を示す。
【0042】
また、別種のα位にカーボネート基を有するイソ酪酸エステルとアルコールとを触媒の存在下にエステル交換反応させることによって、目的のα位にカーボネート基を有するイソ酪酸エステルを製造することができる。この反応の反応式を下記式(5)に示した。
【化12】

式(5)中、R1は炭素数1~4の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基を、R2は炭素数1~6の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基を示し、R11はR1と異なる基を、R12はR2と異なる基を示す。
【0043】
これらの反応に用いられる触媒や反応方式、反応条件、及び反応装置などについても、従来公知な触媒、反応方法、反応条件、及び反応装置を用いることができ、特に制限はない。また、得られた式(2)で表される本発明のイソ酪酸エステル及び式(1)で表される化合物を精製する方法についても、従来公知な精製方法を採用することができ、何ら制限はない。
【実施例
【0044】
以下に、実施例を以って本発明を更に詳細に説明するが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
【0045】
反応成績の評価は下記の式によって評価した。
反応収率(%)=[(反応液中の生成エステルのモル数)/(仕込液中の原料エステルのモル数)]×100%
【0046】
<ガスクロマトグラフィー分析(GC分析)>
装置:「GC-2010」((株)島津製作所製、製品名)
検出器:FID
カラム:「DB-1」(J&W製キャピラリーカラム、製品名)(0.25mmφ×60m×0.25μm)
【0047】
<NMRスペクトル分析>
エステルの同定は1H-NMR測定及び13C-NMR測定によって行った。測定条件を下記に示す。
装置:「ECA500」(日本電子(株)製、製品名)
1H-NMR〕
核種:1
測定周波数:500MHz
測定試料:5%CDCl3溶液
13C-NMR〕
核種:13
測定周波数:125MHz
測定試料:5%CDCl3溶液
【0048】
<ガスクロマトグラフ-質量分析(GC-MS分析)>
化合物の同定は、GC-MS測定(化学イオン化法[CI+]、高分解能質量分析[ミリマス])により分子量を特定することによっても行った。測定条件を下記に示す。
GC装置:「Agilent 7890A」(アジレント社製、商品名)
GC測定条件
カラム:「DB-1」(J&W製キャピラリーカラム、製品名)(0.25mmφ×30m×0.25μm)
MS装置:「JMS-T100GCV」(日本電子(株)製、製品名)
MS測定条件、化学イオン化法
検出器条件:200eV,300μA
試薬ガス:イソブタン
化学イオン化法によりプロトン化された状態で検出されたフラグメントのExact.Mass値と、それによって帰属された化学組成式を記載した。
【0049】
<クロマトグラフ法による生成物単離>
クロマトグラフ法による生成物単離には下記の材料を使用した。
充填剤:「ワコーゲルC-200」(富士フイルム和光純薬(株)製、商品名)
展開溶媒:酢酸エチル-ヘキサン
【0050】
<参考例1:α-ヒドロキシイソ酪酸イソプロピルの合成>
蒸留管を備えた300mLガラス製フラスコにα-ヒドロキシイソ酪酸メチル(三菱ガス化学(株)製)88.7g、イソプロパノール(富士フイルム和光純薬(株)製)106.1g、ナトリウムメトキシド(富士フイルム和光純薬(株)製)0.21gを充填した。常圧下で加熱還流しながらエステル交換反応を行い、生成するメタノールを系外に抜き出しながら48時間反応を行った。その結果、下記式(6)の反応により反応収率98.4%でα-ヒドロキシイソ酪酸イソプロピルが得られた。反応系に加水して触媒を失活させた後に減圧蒸留を行い、40mmHg、65℃の留分としてα-ヒドロキシイソ酪酸イソプロピル77.7g(GC分析による純度(以下、GC純度ともいう。):99.6%)を得た。
【化13】
【0051】
<参考例2~3:各種α-ヒドロキシイソ酪酸エステルの合成>
参考例1と同様の反応装置を用い、適量のα-ヒドロキシイソ酪酸メチル(三菱ガス化学(株)製)と各種アルコール(イソブタノール、セカンダリーブタノール)をチタンテトラアルコキシド及び/又はナトリウムアルコキシドのような適当な触媒の存在下、場合によってはヘキサン、トルエンのような溶媒共存下で、加熱しながら適当な反応条件下でエステル交換反応させた。反応によって生成するメタノールを反応条件下で蒸留又は反応溶媒との共沸によって系外へ抜出しながらエステル交換反応を完結し、参考例1と同様の分離操作を行い、以下のα-ヒドロキシイソ酪酸エステルをそれぞれ得た。得られたイソ酪酸エステルのGC純度を併記した。
α-ヒドロキシイソ酪酸イソブチル (GC純度:99.6%)
α-ヒドロキシイソ酪酸セカンダリーブチル (GC純度:99.6%)
【0052】
<実施例1:α-(メトキシカルボニル)オキシイソ酪酸イソプロピルの合成>
撹拌装置、滴下装置を備えた50mLガラス製フラスコに参考例1で合成したα-ヒドロキシイソ酪酸イソプロピル5.0g、N-メチルイミダゾール(東京化成工業(株)製)5.6g、ジクロロメタン(富士フイルム和光純薬(株)製)6.5mLを充填し、0℃に冷却した。撹拌しながら、クロロギ酸メチル(東京化成工業(株)製)4.9gをジクロロメタン(富士フイルム和光純薬(株)製)6.5mLに溶解させた溶液をゆっくり滴下した。滴下終了後も0℃を保ちながら2時間撹拌を続けた。その後、冷却を止め、ゆっくり常温に戻しながら撹拌を続け、15時間反応を継続した。反応液のGC分析から下記式(6)の反応によりα-(メトキシカルボニル)オキシイソ酪酸イソプロピルが反応収率81%で得られたことを確認した。その後、10%炭酸水素ナトリウム水溶液で2回、飽和塩化アンモニウム水溶液で2回の洗浄操作を行い、硫酸ナトリウムで乾燥した後に濃縮し、カラムクロマトグラフによってα-(メトキシカルボニル)オキシイソ酪酸イソプロピル3.2g(GC純度:99.6%)を得た。生成物のNMRスペクトル分析及びGC-MS分析の結果を以下に示した。
【0053】
〔α-(メトキシカルボニル)オキシイソ酪酸イソプロピル〕
1H NMR (500 MHz, CDCl3) δ1.251 (6H, d, J = 6.0Hz), 1.590 (6H, s), 3.768 (3H, s), 5.070 (1H, sept(7), J = 6.25Hz)
13C NMR (125 MHz, CDCl3) δ21.66, 24.55, 54.77, 69.11, 80.42, 154.26, 171.75
Exact.Mass 205.10847 (C9H16O5, 親ピーク), 129.09197 (C7H12O2)
【0054】
【化14】
【0055】
<実施例2~6:各種α-(アルコキシカルボニル)オキシイソ酪酸イソプロピルの合成>
実施例1と同様の反応装置を用い、参考例1で調製したα-ヒドロキシイソ酪酸イソプロピル、各種クロロギ酸エステル(クロロギ酸エチル、クロロギ酸ノルマルプロピル、クロロギ酸イソプロピル、クロロギ酸ノルマルブチル、クロロギ酸イソブチル;いずれも東京化成工業(株)製)、N-メチルイミダゾール(東京化成工業(株)製)、ジクロロメタン(富士フイルム和光純薬(株)製)を適量用いて反応を行った。実施例1と同様に操作して、カラムクロマトグラフにより下記の各種α-(アルコキシカルボニル)オキシイソ酪酸イソプロピル類をそれぞれ得た。得られたエステルのGC純度、NMRスペクトル分析及びGC-MS分析の結果を併記した。
【0056】
〔α-(エトキシカルボニル)オキシイソ酪酸イソプロピル〕
GC純度:99.7%
1H NMR (500 MHz, CDCl3) δ1.251 (6H, d, J = 6.5Hz), 1.315 (3H, t, J = 7.5Hz), 1.591 (6H, s), 4.179 (2H, q, J = 7.0Hz), 5.070 (1H, spt(7), J = 6.25Hz)
13C NMR (125 MHz, CDCl3) δ14.34, 21.67, 24.57, 64.06, 69.04, 80.21, 153.64, 171.83
Exact.Mass 219.12564 (C10H18O5, 親ピーク)
【0057】
〔α-(ノルマルプロポキシカルボニル)オキシイソ酪酸イソプロピル〕
GC純度:99.9%
1H NMR (500 MHz, CDCl3) δ0.97 (3H, t, J = 7.5 Hz), 1.25 (6H, d, J = 6.5 Hz), 1.59 (6H, s), 1.70 (2H, qt, J = 6.5, 7.5 Hz), 4.08 (2H, t, J = 6.5 Hz), 5.07 (1H, sept, J = 6.5 Hz)
13C NMR (125 MHz, CDCl3) δ10.12, 21.51, 21.96, 24.43, 68.87, 69.51, 80.04, 153.65, 171.67
Exact.Mass 233.13737 (C11H20O5, 親ピーク)
【0058】
〔α-(イソプロポキシカルボニル)オキシイソ酪酸イソプロピル〕
GC純度:99.3%
1H NMR (500 MHz, CDCl3) δ1.249 (6H, d, J = 6.5Hz), 1.305 (6H, d, J = 6.5Hz), 1.587 (6H, s), 4.844 (1H, sept(7), J = 6.25Hz), 5.068 (1H, sept(7), J = 6.25Hz)
13C NMR (125 MHz, CDCl3) δ21.69, 21.85, 24.60, 69.00, 72.12, 80.07, 153.16, 171.92
Exact.Mass 233.13768 (C11H20O5, 親ピーク), 129.09123 (C7H12O2)
【0059】
〔α-(ノルマルブトキシカルボニル)オキシイソ酪酸イソプロピル〕
GC純度:99.8%
1H NMR (500 MHz, CDCl3) δ0.94 (3H, t, J = 7.5 Hz), 1.25 (6H, d, J = 6.5 Hz), 1.36-1.46 (2H, m), 1.59 (6H, s), 1.62-1.69 (2H, m), 4.12 (2H, t, J = 6.5 Hz), 5.07 (1H, sept, J = 6.5 Hz)
13C NMR (125 MHz, CDCl3) δ13.60, 18.85, 21.52, 24.43, 30.62, 67.81, 68.87, 80.04, 153.65, 171.70
Exact.Mass 247.15379 (C12H22O5, 親ピーク)
【0060】
〔α-(イソブトキシカルボニル)オキシイソ酪酸イソプロピル〕
GC純度:99.5%
1H NMR (500 MHz, CDCl3) δ0.95 (6H, d, J = 7.0Hz), 1.24 (6H, d, J = 6.5Hz), 1.59 (6H, s), 1.94-2.03 (1H, m), 3.90 (2H, d, J = 6.5Hz), 5.06 (1H, sept, J = 6.5Hz)
13C NMR (125 MHz, CDCl3) δ18.85, 21.51, 24.43, 27.74, 68.87, 73.98, 80.03, 153.73, 171.72
Exact.Mass 247.15746 (C12H22O5, 親ピーク)
【0061】
<実施例7:α-(エトキシカルボニル)オキシイソ酪酸イソブチルの合成>
実施例1と同様の反応装置を用い、参考例2で調製したα-ヒドロキシイソ酪酸イソブチル、クロロギ酸エチル(東京化成工業(株)製)、N-メチルイミダゾール(東京化成工業(株)製)、ジクロロメタン(富士フイルム和光純薬(株)製)を適量用いて反応を行った。実施例1と同様に操作して、カラムクロマトグラフにより下記のα-(エトキシカルボニル)オキシイソ酪酸イソブチルを得た。得られたエステルのGC純度、NMRスペクトル分析及びGC-MS分析の結果を併記した。
【0062】
〔α-(エトキシカルボニル)オキシイソ酪酸イソブチル〕
GC純度:99.5%
1H NMR (500 MHz, CDCl3) δ0.94 (6H, d, J = 7.0Hz), 1.31 (3H, t, J =7.0Hz), 1.61 (6H, s), 1.96 (1H, nonatet, J = 7.0Hz), 3.93 (2H, d, J = 7.0Hz), 4.17 (1H, q, J = 7.0Hz), 4.18 (1H, q, J = 7.0Hz)
13C NMR (125 MHz, CDCl3) δ14.16, 18.92, 24.57, 27.62, 63.98, 71.47, 80.14, 153.54, 172.27
Exact.Mass 233.13845 (C11H20O5, 親ピーク), 143.10793 (C8H14O2)
【0063】
<実施例8:α-(エトキシカルボニル)オキシイソ酪酸セカンダリーブチルの合成>
実施例1と同様の反応装置を用い、参考例3で調製したα-ヒドロキシイソ酪酸セカンダリーブチル、クロロギ酸エチル(東京化成工業(株)製)、N-メチルイミダゾール(東京化成工業(株)製)、ジクロロメタン(富士フイルム和光純薬(株)製)を適量用いて反応を行った。実施例1と同様に操作して、カラムクロマトグラフにより下記のα-(エトキシカルボニル)オキシイソ酪酸セカンダリーブチルを得た。得られたエステルのGC純度、NMRスペクトル分析及びGC-MS分析の結果を併記した。
【0064】
〔α-(エトキシカルボニル)オキシイソ酪酸セカンダリーブチル〕
GC純度:99.8%
1H NMR (500 MHz, CDCl3) δ0.90 (3H, t, J = 7.5Hz), 1.22 (3H, d J = 6.0Hz), 1.31 (3H, t, J = 7.0Hz), 1.56-1.65 (2H, m), 1.60 (6H, s), 4.18 (1H, q, J = 7.0Hz), 4.18 (1H, q, J = 7.0Hz), 4.90 (1H, sext, J = 6.5Hz).
13C NMR (125 MHz, CDCl3) δ9.49, 14.16, 19.09, 24.42, 24.51, 28.59, 63.89, 73.44, 80.11, 153.45, 171.78
Exact.Mass 233.14004 (C11H20O5, 親ピーク), 177.07780 (C7H12O5)
【0065】
上記の方法によって得た各種のα位にカーボネート基を有するイソ酪酸エステルにつき、調香師により香気評価を行った結果を表1に示した。
【0066】
【表1】
【0067】
<実施例9:フルーティフローラルタイプのシャワージェル用の香料組成物>
表2に示す組成を持つ香料組成物925質量部に、実施例2で得られたα-(エトキシカルボニル)オキシイソ酪酸イソプロピル75質量部を加えた香料組成物を調合した。
調香師による香気評価により、表2に記載した組成を持つ香料組成物に実施例2のα-(エトキシカルボニル)オキシイソ酪酸イソプロピルを添加することにより、香りの強さが増すと共に拡散性が強くなり、広がりと纏まりが出て、より爽やかなフルーティフローラル感を付与することかできた。その結果、新規なフルーティフローラルタイプのシャワージェル用の香料組成物を得ることができた。
【0068】
【表2】
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明のα位にカーボネート基を有するイソ酪酸エステル化合物は、優れた香気を有し、それ自体を香料として使用することが期待されると共に、該化合物を調合香料素材として使用することにより、香気性に優れた香料組成物が得られ、各種製品に配合することにより、所望の賦香性を発揮するものである。