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特許7622654感放射線性樹脂組成物及びレジストパターンの形成方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-20
(45)【発行日】2025-01-28
(54)【発明の名称】感放射線性樹脂組成物及びレジストパターンの形成方法
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/039 20060101AFI20250121BHJP
   G03F 7/004 20060101ALI20250121BHJP
   G03F 7/20 20060101ALI20250121BHJP
   C08F 222/20 20060101ALI20250121BHJP
   C08F 212/02 20060101ALI20250121BHJP
【FI】
G03F7/039 601
G03F7/004 503A
G03F7/20 521
C08F222/20
C08F212/02
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2021575700
(86)(22)【出願日】2021-01-20
(86)【国際出願番号】 JP2021001795
(87)【国際公開番号】W WO2021157354
(87)【国際公開日】2021-08-12
【審査請求日】2023-06-13
(31)【優先権主張番号】P 2020019096
(32)【優先日】2020-02-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004178
【氏名又は名称】JSR株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大宮 拓也
(72)【発明者】
【氏名】錦織 克聡
(72)【発明者】
【氏名】桐山 和也
(72)【発明者】
【氏名】木下 奈津子
【審査官】高橋 純平
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-008842(JP,A)
【文献】特開2008-304767(JP,A)
【文献】特開2015-018072(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/004-7/18
G03F 7/20
C08F 222/20
C08F 212/02
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表される構造単位Aと、酸解離性基を有する構造単位B(ただし、下記式(1)で表されるものを除く。)とを含む樹脂、
下記式(p-1)で表される感放射線性酸発生剤、及び
溶剤
を含む感放射線性樹脂組成物。
【化1】

(上記式(1)中、Rは、水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。
Aは、1価の芳香族炭化水素基であって、Lαが結合する炭素原子の隣の炭素原子に-ORが結合しており、他の炭素原子上の水素原子は非置換であるか、又は該水素原子の一部若しくは全部がシアノ基、ニトロ基、アルキル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アルコキシカルボニルオキシ基、アシル基若しくはアシロキシ基で置換されている基である。Rは、水素原子又は酸の作用で脱保護される保護基である。
αは、単結合又は2価の連結基である。)
【化2】

(式中、R p1 は、環員数6以上の環構造を含む1価の基である。上記環構造が有する水素原子の一部又は全部は、ヨウ素原子で置換されている。
p2 は、2価の連結基である。
p3 及びR p4 は、それぞれ独立して、水素原子、フッ素原子、炭素数1~20の1価の炭化水素基又は炭素数1~20の1価のフッ素化炭化水素基である。
p5 及びR p6 は、それぞれ独立して、フッ素原子又は炭素数1~20の1価のフッ素化炭化水素基である。
p1 は、0~10の整数である。n p2 は、0~10の整数である。n p3 は、0~10の整数である。ただし、n p1 +n p2 +n p3 は、1以上30以下の整数である。
p1 が2以上の場合、複数のR p2 は互いに同一又は異なる。
p2 が2以上の場合、複数のR p3 は互いに同一又は異なり、複数のR p4 は互いに同一又は異なる。
p3 が2以上の場合、複数のR p5 は同一又は異なり、複数のR p6 は同一又は異なる。
は、1価のオニウムカチオンである。)
【請求項2】
上記式(1)中のAにおいて、Lαが結合する炭素原子の隣の炭素原子以外の炭素原子に-ORは結合していない請求項1に記載の感放射線性樹脂組成物。
【請求項3】
上記式(1)における-Rが水素原子である請求項1又は2に記載の感放射線性樹脂組成物。
【請求項4】
上記芳香族炭化水素基は、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基又はピレニル基である請求項1~3のいずれか1項に記載の感放射線性樹脂組成物。
【請求項5】
上記式(1)で表される構造単位が、下記式(1-1)~(1-4)のいずれかで表される構造単位である請求項1~4のいずれか1項に記載の感放射線性樹脂組成物。
【化3】

(式中、R、R及びLαは上記式(1)と同義である。
a1、Ra2、Ra3及びRa4は、それぞれ独立して、シアノ基、ニトロ基、アルキル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アルコキシカルボニルオキシ基、アシル基又はアシロキシ基である。
n1は0~4の整数である。n2、n3及びn4は、それぞれ独立して、0~6の整数である。Ra1、Ra2、Ra3及びRa4がそれぞれ複数ある場合、複数あるRa1、Ra2、Ra3及びRa4はそれぞれ同一又は異なる。)
【請求項6】
上記Lαは単結合である請求項1~5のいずれか1項に記載の感放射線性樹脂組成物。
【請求項7】
上記樹脂は、下記式(cf)で表される構造単位Cをさらに含む請求項1~6のいずれか1項に記載の感放射線性樹脂組成物。
【化4】

(式中、RCF1は、水素原子又はメチル基である。
CF2は、炭素数1~20の1価の有機基又はハロゲン原子である。
f1は0~3の整数である。nf1が2又は3の場合、複数のRCF2は同一又は異なる。nf2は1~3の整数である。ただし、nf1+nf2は5以下である。nafは0~2の整数である。)
【請求項8】
上記酸解離性基が単環又は多環の脂環構造を有する請求項1~7のいずれか1項に記載の感放射線性樹脂組成物。
【請求項9】
放射線の照射により、上記感放射線性酸発生剤から発生する酸よりpKaが高い酸を発生するオニウム塩化合物をさらに含む請求項1~のいずれか1項に記載の感放射線性樹脂組成物。
【請求項10】
上記式(1)で表される構造単位の含有割合は、上記樹脂を構成する構造単位の合計に対して5モル%以上70モル%以下である請求項1~のいずれか1項に記載の感放射線性樹脂組成物。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか1項に記載の感放射線性樹脂組成物によりレジスト膜を形成する工程、
上記レジスト膜を露光する工程、及び
上記露光されたレジスト膜を現像する工程を含むレジストパターンの形成方法。
【請求項12】
上記露光を極端紫外線又は電子線を用いて行う請求項11に記載のレジストパターンの形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感放射線性樹脂組成物及びレジストパターンの形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体素子における微細な回路形成にレジスト組成物を用いるフォトリソグラフィー技術が利用されている。代表的な手順として、例えば、レジスト組成物の被膜に対するマスクパターンを介した放射線照射による露光で酸を発生させ、その酸を触媒とする反応により露光部と未露光部とにおいて樹脂のアルカリ系や有機溶剤系の現像液に対する溶解度の差を生じさせることで、基板上にレジストパターンを形成する。
【0003】
上記フォトリソグラフィー技術ではArFエキシマレーザー等の短波長の放射線を用いたり、この放射線と液浸露光法(リキッドイマージョンリソグラフィー)とを組み合わせたりしてパターン微細化を推進している。次世代技術として、電子線、X線及びEUV(極端紫外線)等のさらに短波長の放射線の利用が図られており、こうした放射線の吸収効率を高めたスチレン系の樹脂を含むレジスト材料も検討されつつある。(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-52294号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述の次世代技術においても、感度やレジストパターンの線幅のバラつきを示すラインウィドゥスラフネス(LWR)性能等の点で従来と同等以上のレジスト諸性能が要求される。またパターン微細化のための条件の制御を容易にするプロセスマージンが望まれる。しかしながら、既存の感放射線性樹脂組成物ではそれらの特性は十分なレベルで得られていない。
【0006】
本発明は、次世代技術を適用した場合に感度やLWR性能、プロセスマージンを十分なレベルで発揮可能な感放射線性樹脂組成物及びレジストパターンの形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、本課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、下記構成を採用することにより、上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、一実施形態において、
下記式(1)で表される構造単位Aと、酸解離性基を有する構造単位B(ただし、下記式(1)で表されるものを除く。)とを含む樹脂、
感放射線性酸発生剤、及び
溶剤
を含む感放射線性樹脂組成物に関する。
【0009】
【化1】
(上記式(1)中、Rは、水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。
Aは、1価の芳香族炭化水素基であって、Lαが結合する炭素原子の隣の炭素原子に-ORが結合しており、他の炭素原子上の水素原子は非置換であるか、又は該水素原子の一部若しくは全部がシアノ基、ニトロ基、アルキル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アルコキシカルボニルオキシ基、アシル基若しくはアシロキシ基で置換されている基である。Rは、水素原子又は酸の作用で脱保護される保護基である。
αは、単結合又は2価の連結基である。)
【0010】
当該感放射線性樹脂組成物は、上記構造単位Aを有する樹脂を含むので、感度、LWR性能及びプロセスマージンを十分なレベルで発揮することができる。この理由は定かではないものの、以下のように推察される。上記構造単位A中の芳香族炭化水素基に結合する-OR基は、Lαが結合する炭素原子の隣の炭素原子(すなわち、Lαに対してオルト位)に結合している。フェノール性水酸基となり得る-OR基がLαに対してオルト位に結合して樹脂の主鎖方向を向くことで、未露光部における樹脂の現像液溶解性が低下し、その結果、露光部と非露光部とのコントラスト増大に寄与する点等の影響が大きいと推察される。-OR基が酸の作用で脱保護される保護基で保護されている場合、酸の作用で脱保護されてフェノール性水酸基となり、上記と同様のコントラスト増大作用が得られる。なお、「酸解離性基」とは、カルボキシ基、フェノール性水酸基、スルホ基、スルホンアミド基等のアルカリ可溶性基が有する水素原子を置換する基であって、酸の作用により解離する基をいう。従って、酸解離性基は、これらの官能基中の上記水素原子と結合していた酸素原子と結合していることになる。
【0011】
本発明は、他の実施形態において、当該感放射線性樹脂組成物によりレジスト膜を形成する工程、
上記レジスト膜を露光する工程、及び
上記露光されたレジスト膜を現像する工程を含むレジストパターンの形成方法に関する。
【0012】
当該レジストパターンの形成方法では、感度、LWR性能及びプロセスマージンに優れる上記感放射線性樹脂組成物を用いているので、次世代露光技術を適用するリソグラフィーにより高品位のレジストパターンを効率的に形成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明するが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではない。
【0014】
《感放射線性樹脂組成物》
本実施形態に係る感放射線性樹脂組成物(以下、単に「組成物」ともいう。)は、樹脂、感放射線性酸発生剤及び溶剤を含む。上記組成物は、本発明の効果を損なわない限り、他の任意成分を含んでいてもよい。
【0015】
<樹脂>
樹脂は、構造単位Aと酸解離性基を有する構造単位B(ただし、構造単位Aを除く。)を有する重合体の集合体である(以下、この樹脂を「ベース樹脂」ともいう。)。ベース樹脂は、構造単位A及び構造単位B以外に、フェノール性水酸基を有する構造単位C、ラクトン構造、環状カーボネート構造及びスルトン構造からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む構造単位D等を有していてもよい。以下、各構造単位について説明する。
【0016】
(構造単位A)
構造単位Aは、下記式(1)で表される。
【化2】
【0017】
上記式(1)中、Rは、水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。
Aは、1価の芳香族炭化水素基であって、Lαが結合する炭素原子の隣の炭素原子に-ORが結合しており、他の炭素原子上の水素原子は非置換であるか、又は該水素原子の一部若しくは全部がシアノ基、ニトロ基、アルキル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アルコキシカルボニルオキシ基、アシル基若しくはアシロキシ基で置換されている基である。Rは、水素原子又は酸の作用で脱保護される保護基である。
αは、単結合又は2価の連結基である。
【0018】
芳香族炭化水素基とは、環構造として芳香環構造を含む炭化水素基をいう。ただし、芳香環構造のみで構成されている必要はなく、その一部に鎖状構造や脂環構造を含んでいてもよい。
【0019】
上記Aで表される芳香族炭化水素基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基、ピレニル基等のアリール基;ベンジル基、フェネチル基、ナフチルメチル基等のアラルキル基などの芳香族炭化水素基等を挙げることができる。中でも、芳香族炭化水素基としてはアリール基が好ましい。
【0020】
上記Aで表される芳香族炭化水素基では、Lαが結合する芳香環の炭素原子の隣の炭素原子に-ORが結合している。言い換えると、Lαが結合する炭素原子に対し-ORはオルト位に結合している。Rは、水素原子又は酸の作用で脱保護される保護基である。これにより、未露光部における樹脂のアルカリ現像液溶解性を適度に抑制することができ、優れたLWR性能等を発揮することができる。
【0021】
酸の作用で脱保護される保護基としては、例えば、下記式(AL-1)~(AL-3)で表される基等が挙げられる。
【化3】
【0022】
上記式(AL-1)及び(AL-2)中、RL1及びRL2は、1価の炭化水素基であり、酸素原子、硫黄原子、窒素原子、フッ素原子等のヘテロ原子を含んでいてもよい。上記1価の炭化水素基としては、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよく、炭素数1~40のアルキル基が好ましく、炭素数1~20のアルキル基がより好ましい。式(AL-1)中、aは0~10の整数であり、1~5の整数が好ましい。上記式(AL-1)~(AL-3)中、*は他の部分との結合手である。
【0023】
上記式(AL-2)中、RL3及びRL4は、それぞれ独立に、水素原子、又は1価の炭化水素基であり、酸素原子、硫黄原子、窒素原子、フッ素原子等のヘテロ原子を含んでいてもよい。上記1価の炭化水素基としては、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよく、炭素数1~20のアルキル基が好ましい。また、RL2、RL3及びRL4のいずれか2つが、互いに結合してこれらが結合する炭素原子又は炭素原子と酸素原子とともに炭素数3~20の環を形成してもよい。上記環としては、炭素数4~16の環が好ましく、特に脂環が好ましい。
【0024】
上記式(AL-3)中、RL5、RL6及びRL7は、それぞれ独立に、1価の炭化水素基であり、酸素原子、硫黄原子、窒素原子、フッ素原子等のヘテロ原子を含んでいてもよい。上記1価の炭化水素基としては、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよく、炭素数1~20のアルキル基が好ましい。また、RL5、RL6及びRL7のいずれか2つが、互いに結合してこれらが結合する炭素原子とともに炭素数3~20の環を形成してもよい。上記環としては、炭素数4~16の環が好ましく、特に脂環が好ましい。
【0025】
これらの中でも、酸の作用で脱保護される保護基としては上記式(AL-3)で表される基が好ましい。
【0026】
上記式(1)中のAにおいて、Lαが結合する炭素原子の隣の炭素原子以外の炭素原子に-ORは結合していないことが好ましい。これにより、未露光部における構造単位Aのアルカリ現像液溶解性を効率良く制御することができ、コントラスト増大に寄与することができる。
【0027】
上記芳香族炭化水素基の炭素原子上の水素原子を置換し得るアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基等の炭素数1~8の直鎖又は分岐のアルキル基;炭素数3~20の単環又は多環のシクロアルキル基等が挙げられる。アルコキシキとしては、例えば、メトキシ基、エトキシ基及びtert-ブトキシ基等の炭素数1~8の直鎖又は分岐のアルコキシ基が挙げられる。アルコキシカルボニル基としては、例えば、メトキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基及びアダマンチルメチルオキシカルボニル基等の炭素数1~20の鎖状又は脂環のアルコキシカルボニル基が挙げられる。アルコキシカルボニルオキシ基としては、例えば、メトキシカルボニルオキシ基、ブトキシカルボニルオキシ基及びアダマンチルメチルオキシカルボニルオキシ基等の炭素数2~16の鎖状又は脂環のアルコキシカルボニルオキシ基が挙げられる。アシル基としては、例えば、アセチル基、プロピオニル基、ベンゾイル基及びアクリロイル基等の炭素数2~12の脂肪族又は芳香族のアシル基が挙げられる。アシロキシ基としては、例えば、アセチルオキシ基、プロピオニルオキシ基、ベンゾイルオキシ基及びアクリロイルオキシ基等の炭素数2~12の脂肪族又は芳香族のアシロキシ基等が挙げられる。
【0028】
上記Lαで表される2価の連結基としては、例えば、アルカンジイル基、シクロアルカンジイル基、アルケンジイル基、-RLaO-、-RLbCOO-等が挙げられる(*は酸素側の結合手を表す。)。これらの基が有する水素原子の一部又は全部は、フッ素原子や塩素原子等のハロゲン原子、シアノ基等で置換されていてもよい。
【0029】
上記アルカンジイル基としては、炭素数1~8のアルカンジイル基が好ましい。
【0030】
上記シクロアルカンジイル基としては、例えば、シクロペンタンジイル基、シクロヘキサンジイル基等の単環のシクロアルカンジイル基;ノルボルナンジイル基、アダマンタンジイル基等の多環のシクロアルカンジイル基等が挙げられる。上記シクロアルカンジイル基としては、炭素数5~12のシクロアルカンジイル基が好ましい。
【0031】
上記アルケンジイル基としては、例えば、エテンジイル基、プロペンジイル基、ブテンジイル基等が挙げられる。上記アルケンジイル基としては、炭素数2~6のアルケンジイル基が好ましい。
【0032】
上記-RLaO-のRLaとしては、上記アルカンジイル基、上記シクロアルカンジイル基、上記アルケンジイル基等が挙げられる。上記-RLbCOO-のRLbとしては、上記アルカンジイル基、上記シクロアルカンジイル基、上記アルケンジイル基、アレーンジイル基等が挙げられる。アレーンジイル基としては、例えば、フェニレン基、トリレン基、ナフチレン基等が挙げられる。上記アレーンジイル基としては、炭素数6~15のアレーンジイル基が好ましい。
【0033】
上記式(1)で表される構造単位は、下記式(1-1)~(1-4)のいずれかで表される構造単位であることが好ましい。
【0034】
【化5】
(式中、R、R及びLαは上記式(1)と同義である。
a1、Ra2、Ra3及びRa4は、それぞれ独立して、シアノ基、ニトロ基、アルキル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アルコキシカルボニルオキシ基、アシル基又はアシロキシ基である。
n1は0~4の整数である。n2、n3及びn4は、それぞれ独立して、0~6の整数である。Ra1、Ra2、Ra3及びRa4がそれぞれ複数ある場合、複数あるRa1、Ra2、Ra3及びRa4はそれぞれ同一又は異なる。)
【0035】
a1、Ra2、Ra3及びRa4で表されるアルキル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アルコキシカルボニルオキシ基、アシル基及びアシロキシ基は、上記式(1)と同義である。
【0036】
これらの中でも、Rは、水素原子又はメチル基であることが好ましい。
は、水素原子であることが好ましい。
a1、Ra2、Ra3及びRa4は、それぞれ独立して、アルキル基又はアルコキシル基であることが好ましい。
【0037】
n1は0~2の整数であることが好ましく、0又は1であることがより好ましい。n2、n3及びn4は、それぞれ独立して、0~4の整数であることが好ましく、0~2の整数であることがより好ましい。
【0038】
αは単結合又は-RLaO-であることが好ましい。RLaとしてはアルカンジイル基が好ましい。Lαは単結合であることがより好ましい。
【0039】
上記構造単位Aとしては、下記式(A-1)~(A-12)で表される構造単位等であることが好ましい。
【0040】
【化5】
(上記式(A-1)~(A-12)中、R及びRは上記式(1)と同義である。)
【0041】
これらの中でも、上位式(A-1)~(A-4)、(A-9)~(A-11)で表される構造単位が好ましい。
【0042】
構造単位Aを与える単量体化合物の合成方法について、上記式(A-1)で表される構造単位を与える単量体を例に説明する。上記式(A-1)で表される構造単位を与える単量体化合物は以下のスキームに従って合成することができる。
【0043】
【化6】
(上記スキーム中、Rは上記式(1)と同義である。)
【0044】
塩基存在下、溶媒に上記式(1)における芳香族炭化水素基に対応する構造を有する1,2-ジヒドロキシベンゼン誘導体と重合性基を有するハロゲン化アシル(スキーム中では塩化メタクリロイル)との求核置換反応を進行させることで単量体化合物を合成することができる。他の構造についても出発原料としてのジヒドロキシ芳香族炭化水素誘導体の構造を制御することで同様に合成することができる。
【0045】
樹脂中、構造単位Aの含有割合の下限としては、樹脂を構成する全構造単位に対して、2モル%が好ましく、4モル%がより好ましく、5モル%がさらに好ましい。上記含有割合の上限としては、70モル%が好ましく、50モル%がより好ましく、30モル%がさらに好ましい。構造単位Aの含有割合を上記範囲とすることで、上記感放射線性樹脂組成物は、感度、LWR性能及びプロセスマージンのさらなる向上を図ることができる。
【0046】
(構造単位B)
構造単位Bは、構造単位Aと異なりかつ酸解離性基を含む構造単位である。構造単位Bとしては、酸解離性基を含む限り特に限定されず、例えば、第三級アルキルエステル部分を有する構造単位、フェノール性水酸基の水素原子が第三級アルキル基で置換された構造を有する構造単位、アセタール結合を有する構造単位等が挙げられるが、当該感放射線性樹脂組成物のパターン形成性の向上の観点から、下記式(2)で表される構造単位(以下、「構造単位(B-1)」ともいう)が好ましい。
【0047】
【化7】
【0048】
上記式(2)中、Rは、水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。Rは、水素原子、又は炭素数1~20の1価の炭化水素基である。R及びR10は、それぞれ独立して、炭素数1~10の1価の鎖状炭化水素基若しくは炭素数3~20の1価の脂環式炭化水素基であるか、又はこれらの基が互いに合わせられこれらが結合する炭素原子と共に構成される炭素数3~20の2価の脂環式基を表す。Lは、単結合又は2価の連結基を表す。ただし、Lが2価の連結基である場合、上記式(2)中の-COO-の酸素原子に結合する炭素原子は第三級炭素であるか、又は側鎖末端側の構造が-COO-である。
【0049】
上記Rとしては、構造単位(B-1)を与える単量体の共重合性の観点から、水素原子、メチル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
【0050】
上記Rで表される炭素数1~20の1価の炭化水素基としては、例えば、炭素数1~10の鎖状炭化水素基、炭素数3~20の1価の脂環式炭化水素基、炭素数6~20の1価の芳香族炭化水素基等が挙げられる。
【0051】
上記R~R10で表される炭素数1~10の鎖状炭化水素基としては、炭素数1~10の直鎖若しくは分岐鎖飽和炭化水素基、又は炭素数1~10の直鎖若しくは分岐鎖不飽和炭化水素基が挙げられる。
【0052】
上記R~R10で表される炭素数3~20の脂環式炭化水素基としては、単環若しくは多環の飽和炭化水素基、又は単環若しくは多環の不飽和炭化水素基が挙げられる。単環の飽和炭化水素基としてはシクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基が好ましい。多環のシクロアルキル基としてはノルボルニル基、アダマンチル基、トリシクロデシル基、テトラシクロドデシル基等の有橋脂環式炭化水素基が好ましい。なお、有橋脂環式炭化水素基とは、脂環を構成する炭素原子のうち互いに隣接しない2つの炭素原子間が1つ以上の炭素原子を含む結合連鎖で結合された多環性の脂環式炭化水素基をいう。
【0053】
上記Rで表される炭素数6~20の1価の芳香族炭化水素基としては、例えば、
フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、アントリル基等のアリール基;ベンジル基、フェネチル基、ナフチルメチル基等のアラルキル基などが挙げられる。
【0054】
上記Rとしては、炭素数1~10の直鎖又は分岐鎖飽和炭化水素基、炭素数3~20の脂環式炭化水素基が好ましい。
【0055】
上記R及びR10で表される鎖状炭化水素基又は脂環式炭化水素基が互いに合わせられこれらが結合する炭素原子と共に構成される炭素数3~20の2価の脂環式基は、上記炭素数の単環又は多環の脂環式炭化水素の炭素環を構成する同一炭素原子から2個の水素原子を除いた基であれば特に限定されない。単環式炭化水素基及び多環式炭化水素基のいずれでもよく、多環式炭化水素基としては、有橋脂環式炭化水素基及び縮合脂環式炭化水素基のいずれでもよく、飽和炭化水素基及び不飽和炭化水素基のいずれでもよい。なお、縮合脂環式炭化水素基とは、複数の脂環が辺(隣接する2つの炭素原子間の結合)を共有する形で構成された多環性の脂環式炭化水素基をいう。
【0056】
単環の脂環式炭化水素基のうち飽和炭化水素基としては、シクロペンタンジイル基、シクロヘキサンジイル基、シクロヘプタンジイル基、シクロオクタンジイル基等が好ましく、不飽和炭化水素基としてはシクロペンテンジイル基、シクロヘキセンジイル基、シクロヘプテンジイル基、シクロオクテンジイル基、シクロデセンジイル基等が好ましい。多環の脂環式炭化水素基としては、有橋脂環式飽和炭化水素基が好ましく、例えばビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2,2-ジイル基(ノルボルナン-2,2-ジイル基)、ビシクロ[2.2.2]オクタン-2,2-ジイル基、トリシクロ[3.3.1.13,7]デカン-2,2-ジイル基(アダマンタン-2,2-ジイル基)等が好ましい。
【0057】
上記Lで表される2価の連結基としては、例えば、アルカンジイル基、シクロアルカンジイル基、アルケンジイル基、-RLAO-、-RLBCOO-等が挙げられる(*は酸素側の結合手を表す。)。ただし、-RLBCOO-以外の基の場合、上記式(2)における-COO-の酸素原子に結合する炭素原子は第三級炭素であり、水素原子を有しない。この第三級炭素は、当該基における同一の炭素原子から2本の結合手が出ている場合、又は当該基における一方の結合手が存在する炭素原子にさらに1若しくは2の置換基が結合している場合に得られる。
【0058】
~R10及びL中の炭素原子上の水素原子の一部又は全部は、フッ素原子や塩素原子等のハロゲン原子、トリフルオロメチル基等のハロゲン化アルキル基、メトキシ基等のアルコキシ基、シアノ基等で置換されていてもよい。
【0059】
上記アルカンジイル基としては、炭素数1~8のアルカンジイル基が好ましい。
【0060】
上記シクロアルカンジイル基としては、例えば、シクロペンタンジイル基、シクロヘキサンジイル基等の単環のシクロアルカンジイル基;ノルボルナンジイル基、アダマンタンジイル基等の多環のシクロアルカンジイル基等が挙げられる。上記シクロアルカンジイル基としては、炭素数5~12のシクロアルカンジイル基が好ましい。
【0061】
上記アルケンジイル基としては、例えば、エテンジイル基、プロペンジイル基、ブテンジイル基等が挙げられる。上記アルケンジイル基としては、炭素数2~6のアルケンジイル基が好ましい。
【0062】
上記-RLAO-のRLAとしては、上記アルカンジイル基、上記シクロアルカンジイル基、上記アルケンジイル基等が挙げられる。上記-RLBCOO-のRLBとしては、上記アルカンジイル基、上記シクロアルカンジイル基、上記アルケンジイル基、アレーンジイル基等が挙げられる。アレーンジイル基としては、例えば、フェニレン基、トリレン基、ナフチレン基等が挙げられる。上記アレーンジイル基としては、炭素数6~15のアレーンジイル基が好ましい。
【0063】
これらの中で、Rは炭素数1~4のアルキル基であり、R及びR10が互いに合わせられこれらが結合する炭素原子と共に構成される脂環構造が多環又は単環のシクロアルカン構造であることが好ましい。Lは単結合又は-RLAO-であることが好ましい。RLAとしてはアルカンジイル基が好ましい。
【0064】
構造単位(B-1)としては、例えば、下記式(3-1)~(3-6)で表される構造単位(以下、「構造単位(B-1-1)~(B-1-6)」ともいう)等が挙げられる。
【0065】
【化8】
【0066】
上記式(3-1)~(3-6)中、R~R10及びRLAは、上記式(2)と同義である。RLM及びRLNは、それぞれ独立して、炭素数1~10の1価の炭化水素基である。i及びjは、それぞれ独立して、1~4の整数である。nは0又は1である。
【0067】
LM及びRLNとしては、上記式(2)のRで表される炭素数1~20の1価の炭化水素基のうち炭素数1~10に対応する基等が挙げられる。RLM及びRLNとしては、メチル基、エチル基又はイソプロピル基が好ましい。
【0068】
i及びjとしては、1が好ましい。R~R10としては、メチル基、エチル基又はイソプロピル基が好ましい。
【0069】
構造単位(B-1)としては、これらの中で、構造単位(B-1-1)、構造単位(B-1-2)、構造単位(B-1-4)及び構造単位(B-1-5)が好ましい。構造単位(B-1-1)ではシクロペンタン構造を有することが好ましい。構造単位(B-1-5)ではnは0が好ましい。
【0070】
ベース樹脂は、構造単位Bを1種又は2種以上組み合わせて含んでいてもよい。
【0071】
さらに、樹脂は、その他の構造単位Bとして下記式(1f)~(2f)で表される構造単位を含んでいてもよい。
【0072】
【化9】
【0073】
上記式(1f)~(2f)中、Rαfはそれぞれ独立して水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。Rβfは、それぞれ独立して水素原子又は炭素数1~5の鎖状アルキル基である。hは、1~4の整数である。
【0074】
上記Rβfとしては、水素原子、メチル基又はエチル基が好ましい。hとしては1又は2が好ましい。
【0075】
樹脂が構造単位Bを含む場合、構造単位Bの含有割合の下限としては、ベース樹脂を構成する全構造単位に対して、10モル%が好ましく、15モル%がより好ましく、20モル%がさらに好ましく、30モル%が特に好ましい。上記含有割合の上限としては、90モル%が好ましく、80モル%がより好ましく、75モル%がさらに好ましく、70モル%が特に好ましい。構造単位Cの含有割合を上記範囲とすることで、当該感放射線性樹脂組成物のパターン形成性をより向上させることができる。
【0076】
(構造単位C)
上記樹脂は、下記式(cf)で表される構造単位Cをさらに含むことが好ましい。
【0077】
【化10】
(式中、RCF1は、水素原子又はメチル基である。
CF2は、炭素数1~20の1価の有機基又はハロゲン原子である。
f1は0~3の整数である。nf1が2又は3の場合、複数のRCF2は同一又は異なる。nf2は1~3の整数である。ただし、nf1+nf2は5以下である。nafは0~2の整数である。)
【0078】
構造単位Cは、構造単位Aとは異なるフェノール性水酸基を含む構造単位である。樹脂は、構造単位C及び必要に応じその他の構造単位を有することで、現像液への溶解性をより適度に調整することができ、その結果、上記感放射線性樹脂組成物の感度等をより向上させることができる。また、レジストパターン形成方法における露光工程で照射する放射線として、KrFエキシマレーザー光、EUV、電子線等を用いる場合には、構造単位Cはエッチング耐性の向上と、露光部と未露光部との間の現像液溶解性の差(溶解コントラスト)の向上に寄与する。特に、電子線やEUVといった波長50nm以下の放射線による露光を用いるパターン形成に好適に適用することができる。
【0079】
上記RCF1としては、構造単位Cを与える単量体の共重合性の観点から、水素原子であることが好ましい。
【0080】
なお、有機基とは、少なくとも1個の炭素原子を含む基をいう。
【0081】
上記RCF2で表される炭素数1~20の1価の有機基としては、例えば、炭素数1~20の1価の炭化水素基、この炭化水素基の炭素-炭素間又は結合手側の末端に2価のヘテロ原子含有基を含む基、当該基及び上記炭化水素基が有する水素原子の一部又は全部を1価のヘテロ原子含有基で置換した基等をあげることができる。
【0082】
上記RCF2で表される炭素数1~20の1価の炭化水素基としては、例えば、
メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等のアルキル基;
エテニル基、プロペニル基、ブテニル基等のアルケニル基;
エチニル基、プロピニル基、ブチニル基等のアルキニル基などの鎖状炭化水素基;
シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロオクチル基、ノルボルニル基、アダマンチル基等のシクロアルキル基;
シクロプロペニル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基、ノルボルネニル基等のシクロアルケニル基などの脂環式炭化水素基;
フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、アントリル基等のアリール基;
ベンジル基、フェネチル基、ナフチルメチル基等のアラルキル基などの芳香族炭化水素基等をあげることができる。
【0083】
上記RCF2としては、鎖状炭化水素基、シクロアルキル基が好ましく、アルキル基及びシクロアルキル基がより好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロオクチル基及びアダマンチル基がさらに好ましい。
【0084】
上記2価のヘテロ原子含有基としては、例えば、-O-、-CO-、-CO-O-、-S-、-CS-、-SO-、-NR’-、これらのうちの2つ以上を組み合わせた基等をあげることができる。R’は、水素原子又は1価の炭化水素基である。
【0085】
上記1価のヘテロ原子含有基としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子、ヒドロキシ基、カルボキシ基、シアノ基、アミノ基、スルファニル基(-SH)等をあげることができる。
【0086】
これらの中で、1価の鎖状炭化水素基が好ましく、アルキル基がより好ましく、メチル基がさらに好ましい。
【0087】
上記nf1としては、0~2の整数が好ましく、0及び1がより好ましく、0がさらに好ましい。
【0088】
上記nf2としては、1及び2が好ましく、1がより好ましい。
【0089】
上記nafとしては、0及び1が好ましく、0がより好ましい。
【0090】
上記構造単位Cとしては、下記式(c1-1)~(c1-7)で表される構造単位等であることが好ましい。
【0091】
【化11】
【0092】
上記式(c1-1)~(c1-7)中、RCF1は、上記式(cf)と同様である。
【0093】
これらの中で、上記式(c1-1)~(c1-4)で表される構造単位及び上記式(c1-6)で表される構造単位が好ましい。
【0094】
樹脂が構造単位Cを含む場合、構造単位Cの含有割合の下限としては、樹脂を構成する全構造単位に対して、2モル%が好ましく、4モル%がより好ましく、5モル%がさらに好ましく、8モル%が特に好ましい。上記含有割合の上限としては、50モル%が好ましく、45モル%がより好ましく、40モル%がさらに好ましく、35モル%が特に好ましい。構造単位Cの含有割合を上記範囲とすることで、上記感放射線性樹脂組成物は、感度、LWR性能及びプロセスマージンのさらなる向上を図ることができる。
【0095】
ヒドロキシスチレン等のフェノール性水酸基を有する単量体を重合させる場合、アルカリ解離性基等の保護基によりフェノール性水酸基を保護した状態で重合させておき、その後加水分解を行って脱保護することにより構造単位Bを得るようにすることが好ましい。加水分解により構造単位Bを与える構造単位としては、例えば、下記式(c)で表される構造単位等が挙げられる。他の構造についても、構造単位Bに対応させるように構造中に存在するフェノール性水酸基を保護すればよい。
【0096】
【化12】
【0097】
上記式(c)中、R11は、水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。R12は、炭素数1~20の1価の炭化水素基又はアルコキシ基である。R12の炭素数1~20の1価の炭化水素基としては、炭素数1~20の1価の炭化水素基をあげることができる。アルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基及びtert-ブトキシ基等をあげることができる。
【0098】
上記R12としては、アルキル基及びアルコキシ基が好ましく、中でもメチル基、tert-ブトキシ基がより好ましい。
【0099】
(構造単位D)
構造単位Dは、ラクトン構造、環状カーボネート構造及びスルトン構造からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む構造単位である。ベース樹脂は、構造単位Dをさらに有することで、現像液への溶解性を調整することができ、その結果、当該感放射線性樹脂組成物は、解像性等のリソグラフィー性能を向上させることができる。また、ベース樹脂から形成されるレジストパターンと基板との密着性を向上させることができる。
【0100】
構造単位Dとしては、例えば、下記式(T-1)~(T-10)で表される構造単位等が挙げられる。
【0101】
【化13】
【0102】
上記式中、RL1は、水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。RL2~RL5は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~4のアルキル基、シアノ基、トリフルオロメチル基、メトキシ基、メトキシカルボニル基、ヒドロキシ基、ヒドロキシメチル基、ジメチルアミノ基である。RL4及びRL5は、互いに合わせられこれらが結合する炭素原子と共に構成される炭素数3~8の2価の脂環式基であってもよい。Lは、単結合又は2価の連結基である。Xは、酸素原子又はメチレン基である。kは0~3の整数である。mは1~3の整数である。
【0103】
上記RL4及びRL5が互いに合わせられこれらが結合する炭素原子と共に構成される炭素数3~8の2価の脂環式基としては、上記式(2)中のR及びR10で表される鎖状炭化水素基又は脂環式炭化水素基が互いに合わせられこれらが結合する炭素原子と共に構成される炭素数3~20の2価の脂環式基のうち炭素数が3~8の基が挙げられる。この脂環式基上の1つ以上の水素原子は、ヒドロキシ基で置換されていてもよい。
【0104】
上記Lで表される2価の連結基としては、例えば、炭素数1~10の2価の直鎖状若しくは分岐状の炭化水素基、炭素数4~12の2価の脂環式炭化水素基、又はこれらの炭化水素基の1個以上と-CO-、-O-、-NH-及び-S-のうちの少なくとも1種の基とから構成される基等が挙げられる。
【0105】
構造単位Dとしては、これらの中で、ラクトン構造を含む構造単位が好ましく、ノルボルナンラクトン構造を含む構造単位がより好ましく、ノルボルナンラクトン-イル(メタ)アクリレートに由来する構造単位がさらに好ましい。
【0106】
樹脂が構造単位Dを有する場合の含有割合の下限としては、ベース樹脂を構成する全構造単位に対して、5モル%が好ましく、8モル%がより好ましく、10モル%がさらに好ましい。上記含有割合の上限としては、40モル%が好ましく、30モル%がより好ましく、20モル%がさらに好ましい。構造単位Dの含有割合を上記範囲とすることで、当該感放射線性樹脂組成物は解像性等のリソグラフィー性能及び形成されるレジストパターンの基板との密着性をより向上させることができる。
【0107】
(その他の構造単位)
樹脂は、上記構造単位A~構造単位D以外のその他の構造単位を適宜有してもよい。その他の構造単位としては、例えば、フッ素原子、アルコール性水酸基、カルボキシ基、シアノ基、ニトロ基、スルホンアミド基等を有する構造単位(以下、「構造単位E」ともいう。)などをあげることができる。これらの中で、フッ素原子を有する構造単位、アルコール性水酸基を有する構造単位及びカルボキシ基を有する構造単位が好ましく、フッ素原子を有する構造単位及びアルコール性水酸基を有する構造単位がより好ましい。
【0108】
構造単位Eとしては、例えば、下記式で表される構造単位等が挙げられる。
【0109】
【化14】
【0110】
上記式中、Rは水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。
【0111】
樹脂が構造単位Eを有する場合、樹脂を構成する全構造単位に対する構造単位Eの含有割合の下限としては、1モル%が好ましく、3モル%がより好ましく、5モル%がさらに好ましい。一方、上記含有割合の上限としては、30モル%が好ましく、20モル%がより好ましく、15モル%がさらに好ましい。構造単位Eの含有割合を上記範囲とすることで、樹脂の現像液への溶解性をより適度にすることができる。
【0112】
なお、上記構造単位B~構造単位Eについては、それらの構造単位から上記構造単位Aに該当するものを除く。
【0113】
樹脂の含有量としては、上記感放射線性樹脂組成物の全固形分中、70質量%以上が好ましく、75質量%以上がより好ましく、80質量%以上がさらに好ましい。ここで「固形分」とは、上記感放射線性樹脂組成物中に含まれる成分のうち溶媒を除いた全ての成分をいう。
【0114】
(樹脂の合成方法)
ベース樹脂たる樹脂は、例えば、各構造単位を与える単量体を、ラジカル重合開始剤等を用い、適当な溶剤中で重合反応を行うことにより合成できる。
【0115】
上記ラジカル重合開始剤としては、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(2-シクロプロピルプロピオニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、ジメチル2,2’-アゾビスイソブチレート等のアゾ系ラジカル開始剤;ベンゾイルパーオキサイド、t-ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド等の過酸化物系ラジカル開始剤等をあげることができる。これらの中で、AIBN、ジメチル2,2’-アゾビスイソブチレートが好ましく、AIBNがより好ましい。これらのラジカル開始剤は1種単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
【0116】
上記重合反応に使用される溶剤としては、例えば、n-ペンタン、n-ヘキサン、n-ヘプタン、n-オクタン、n-ノナン、n-デカン等のアルカン類;シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、デカリン、ノルボルナン等のシクロアルカン類;ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、クメン等の芳香族炭化水素類;クロロブタン類、ブロモヘキサン類、ジクロロエタン類、ヘキサメチレンジブロミド、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素類;酢酸エチル、酢酸n-ブチル、酢酸i-ブチル、プロピオン酸メチル等の飽和カルボン酸エステル類;アセトン、メチルエチルケトン、4-メチル-2-ペンタノン、2-ヘプタノン等のケトン類;テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン類、ジエトキシエタン類等のエーテル類;メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、4-メチル-2-ペンタノール等のアルコール類等をあげることができる。これらの重合反応に使用される溶剤は、1種単独で又は2種以上を併用してもよい。
【0117】
上記重合反応における反応温度としては、通常40℃~150℃であり、50℃~120℃が好ましい。反応時間としては、通常1時間~48時間であり、1時間~24時間が好ましい。
【0118】
ベース樹脂たる樹脂の分子量は特に限定されないが、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算重量平均分子量(Mw)が1,000以上50,000以下が好ましく、2,000以上30,000以下がより好ましく、3,000以上15,000以下がさらに好ましく、4,000以上12,000以下が特に好ましい。樹脂(A)のMwが上記下限未満だと、得られるレジスト膜の耐熱性が低下する場合がある。樹脂(A)のMwが上記上限を超えると、レジスト膜の現像性が低下する場合がある。
【0119】
ベース樹脂たる樹脂のGPCによるポリスチレン換算数平均分子量(Mn)に対するMwの比(Mw/Mn)は、通常、1以上5以下であり、1以上3以下が好ましく、1以上2以下がさらに好ましい。
【0120】
本明細書における樹脂のMw及びMnは、以下の条件によるゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて測定される値である。
GPCカラム:G2000HXL 2本、G3000HXL 1本、G4000HXL 1本(以上、東ソー製)
カラム温度:40℃
溶出溶剤:テトラヒドロフラン
流速:1.0mL/分
試料濃度:1.0質量%
試料注入量:100μL
検出器:示差屈折計
標準物質:単分散ポリスチレン
【0121】
樹脂の含有量としては、上記感放射線性樹脂組成物の全固形分に対して、70質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましく、85質量%以上がさらに好ましい。
【0122】
<他の樹脂>
本実施形態の感放射線性樹脂組成物は、他の樹脂として、上記ベース樹脂よりもフッ素原子の質量含有率が大きい樹脂(以下、「高フッ素含有量樹脂」ともいう。)を含んでいてもよい。上記感放射線性樹脂組成物が高フッ素含有量樹脂を含有する場合、上記ベース樹脂に対してレジスト膜の表層に偏在化させることができ、その結果、レジスト膜表面の状態やレジスト膜中の成分分布を所望の状態に制御することができる。
【0123】
高フッ素含有量樹脂としては、例えば、必要に応じて上記ベース樹脂における構造単位Aから構造単位Cまでを有するとともに、下記式(6)で表される構造単位(以下、「構造単位G」ともいう。)を有することが好ましい。
【化15】
【0124】
上記式(6)中、R13は、水素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。Gは、単結合、酸素原子、硫黄原子、-COO-、-SOONH-、-CONH-又は-OCONH-である。R14は、炭素数1~20の1価のフッ素化鎖状炭化水素基又は炭素数3~20の1価のフッ素化脂環式炭化水素基である。
【0125】
上記R13としては、構造単位Gを与える単量体の共重合性の観点から、水素原子及びメチル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
【0126】
上記Gとしては、構造単位Gを与える単量体の共重合性の観点から、単結合及び-COO-が好ましく、-COO-がより好ましい。
【0127】
上記R14で表される炭素数1~20の1価のフッ素化鎖状炭化水素基としては、炭素数1~20の直鎖又は分岐鎖アルキル基が有する水素原子の一部又は全部がフッ素原子により置換されたものをあげることができる。
【0128】
上記R14で表される炭素数3~20の1価のフッ素化脂環式炭化水素基としては、炭素数3~20の単環又は多環式炭化水素基が有する水素原子の一部又は全部がフッ素原子により置換されたものをあげることができる。
【0129】
上記R14としては、フッ素化鎖状炭化水素基が好ましく、フッ素化アルキル基がより好ましく、2,2,2-トリフルオロエチル基、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロピル基及び5,5,5-トリフルオロ-1,1-ジエチルペンチル基がさらに好ましい。
【0130】
高フッ素含有量樹脂が構造単位Gを有する場合、構造単位Gの含有割合の下限としては、高フッ素含有量樹脂を構成する全構造単位に対して、10モル%が好ましく、15モル%がより好ましく、20モル%がさらに好ましく、25モル%が特に好ましい。上記含有割合の上限としては、60モル%が好ましく、50モル%がより好ましく、40モル%がさらに好ましい。構造単位Gの含有割合を上記範囲とすることで、高フッ素含有量樹脂のフッ素原子の質量含有率をより適度に調整してレジスト膜の表層への偏在化をさらに促進することができる。
【0131】
高フッ素含有量樹脂は、構造単位G以外に、下記式(f-1)で表されるフッ素原子含有構造単位(以下、構造単位Hともいう。)を有していてもよい。高フッ素含有量樹脂は構造単位Hを有することで、アルカリ現像液への溶解性が向上し、現像欠陥の発生を抑制することができる。
【化16】
【0132】
構造単位Hは、(x)アルカリ可溶性基を有する場合と、(y)アルカリの作用により解離してアルカリ現像液への溶解性が増大する基(以下、単に「アルカリ解離性基」とも言う。)を有する場合の2つに大別される。(x)、(y)双方に共通して、上記式(f-1)中、Rは水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。Rは単結合、炭素数1~20の(s+1)価の炭化水素基、この炭化水素基のR側の末端に酸素原子、硫黄原子、-NRdd-、カルボニル基、-COO-若しくは-CONH-が結合された構造、又はこの炭化水素基が有する水素原子の一部がヘテロ原子を有する有機基により置換された構造である。Rddは、水素原子又は炭素数1~10の1価の炭化水素基である。sは、1~3の整数である。
【0133】
構造単位Hが(x)アルカリ可溶性基を有する場合、Rは水素原子であり、Aは酸素原子、-COO-*又は-SOO-*である。*はRに結合する部位を示す。Wは単結合、炭素数1~20の炭化水素基又は2価のフッ素化炭化水素基である。Aが酸素原子である場合、WはAが結合する炭素原子にフッ素原子又はフルオロアルキル基を有するフッ素化炭化水素基である。Rは単結合又は炭素数1~20の2価の有機基である。sが2又は3の場合、複数のR、W、A及びRはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。構造単位Hが(x)アルカリ可溶性基を有することで、アルカリ現像液に対する親和性を高め、現像欠陥を抑制することができる。(x)アルカリ可溶性基を有する構造単位Hとしては、Aが酸素原子でありWが1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2,2-メタンジイル基である場合が特に好ましい。
【0134】
構造単位Hが(y)アルカリ解離性基を有する場合、Rは炭素数1~30の1価の有機基であり、Aは酸素原子、-NRaa-、-COO-*又は-SOO-*である。Raaは水素原子又は炭素数1~10の1価の炭化水素基である。*はRに結合する部位を示す。Wは単結合又は炭素数1~20の2価のフッ素化炭化水素基である。Rは、単結合又は炭素数1~20の2価の有機基である。Aが-COO-*又は-SOO-*である場合、W又はRはAと結合する炭素原子又はこれに隣接する炭素原子上にフッ素原子を有する。Aが酸素原子である場合、W、Rは単結合であり、Rは炭素数1~20の炭化水素基のR側の末端にカルボニル基が結合された構造であり、Rはフッ素原子を有する有機基である。sが2又は3の場合、複数のR、W、A及びRはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。構造単位Hが(y)アルカリ解離性基を有することにより、アルカリ現像工程においてレジスト膜表面が疎水性から親水性へと変化する。この結果、現像液に対する親和性を大幅に高め、より効率的に現像欠陥を抑制することができる。(y)アルカリ解離性基を有する構造単位Hとしては、Aが-COO-*であり、R若しくはW又はこれら両方がフッ素原子を有するものが特に好ましい。
【0135】
としては、構造単位Hを与える単量体の共重合性等の観点から、水素原子及びメチル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
【0136】
が2価の有機基である場合、ラクトン構造を有する基が好ましく、多環のラクトン構造を有する基がより好ましく、ノルボルナンラクトン構造を有する基がより好ましい。
【0137】
高フッ素含有量樹脂が構造単位Hを有する場合、構造単位Hの含有割合の下限としては、高フッ素含有量樹脂を構成する全構造単位に対して、10モル%が好ましく、20モル%がより好ましく、30モル%がさらに好ましく、35モル%が特に好ましい。上記含有割合の上限としては、90モル%が好ましく、75モル%がより好ましく、60モル%がさらに好ましい。構造単位Hの含有割合を上記範囲とすることで、液浸露光時のレジスト膜の撥水性をより向上させることができる。
【0138】
高フッ素含有量樹脂のMwの下限としては、1,000が好ましく、2,000がより好ましく、3,000がさらに好ましく、5,000が特に好ましい。上記Mwの上限としては、50,000が好ましく、30,000がより好ましく、20,000がさらに好ましく、15,000が特に好ましい。
【0139】
高フッ素含有量樹脂のMw/Mnの下限としては、通常1であり、1.1がより好ましい。上記Mw/Mnの上限としては、通常5であり、3が好ましく、2がより好ましく、1.7がさらに好ましい。
【0140】
高フッ素含有量樹脂の含有量の下限としては、上記感放射線性樹脂組成物中の全固形分に対して、0.1質量%が好ましく、0.5質量%がより好ましく、1質量%がさらに好ましく、1.5質量%がさらに好ましい。上記含有量の上限としては、20質量%が好ましく、15質量%がより好ましく、10質量%がさらに好ましく、7質量%が特に好ましい。
【0141】
高フッ素含有量樹脂の含有量の下限としては、上記ベース樹脂100質量部に対して、0.1質量部が好ましく、0.5質量部がより好ましく、1質量部がさらに好ましく、1.5質量部が特に好ましい。上記含有量の上限としては、15質量部が好ましく、10質量部がより好ましく、8質量部がさらに好ましく、5質量部が特に好ましい。
【0142】
高フッ素含有量樹脂の含有量を上記範囲とすることで、高フッ素含有量樹脂をレジスト膜の表層へより効果的に偏在化させることができ、その結果、液浸露光時におけるレジスト膜の表面の撥水性をより高めることができる。上記感放射線性樹脂組成物は、高フッ素含有量樹脂を1種又は2種以上含有していてもよい。
【0143】
(高フッ素含有量樹脂の合成方法)
高フッ素含有量樹脂は、上述のベース樹脂の合成方法と同様の方法により合成することができる。
【0144】
<感放射線性酸発生剤>
感放射線性酸発生剤は、露光により酸を発生する成分である。感放射線性酸発生剤は、下記式(p-1)で表されることが好ましい。
【化17】
(上記式(p-1)中、Rp1は、環員数6以上の環構造を含む1価の基である。
p2は、2価の連結基である。
p3及びRp4は、それぞれ独立して、水素原子、フッ素原子、炭素数1~20の1価の炭化水素基又は炭素数1~20の1価のフッ素化炭化水素基である。
p5及びRp6は、それぞれ独立して、フッ素原子又は炭素数1~20の1価のフッ素化炭化水素基である。
p1は、0~10の整数である。np2は、0~10の整数である。np3は、0~10の整数である。ただし、np1+np2+np3は、1以上30以下の整数である。
p1が2以上の場合、複数のRp2は互いに同一又は異なる。
p2が2以上の場合、複数のRp3は互いに同一又は異なり、複数のRp4は互いに同一又は異なる。
p3が2以上の場合、複数のRp5は同一又は異なり、複数のRp6は同一又は異なる。
は、1価のオニウムカチオンである。)
【0145】
p1で表される環構造を含む1価の基としては、例えば、環員数5以上の脂環構造を含む1価の基、環員数5以上の脂肪族複素環構造を含む1価の基、環員数6以上の芳香環構造を含む1価の基、環員数6以上の芳香族複素環構造を含む1価の基等をあげることができる。
【0146】
上記環員数5以上の脂環構造としては、例えば、
シクロペンタン構造、シクロヘキサン構造、シクロヘプタン構造、シクロオクタン構造、シクロノナン構造、シクロデカン構造、シクロドデカン構造等の単環のシクロアルカン構造;
シクロペンテン構造、シクロヘキセン構造、シクロヘプテン構造、シクロオクテン構造、シクロデセン構造等の単環のシクロアルケン構造;
ノルボルナン構造、アダマンタン構造、トリシクロデカン構造、テトラシクロドデカン構造等の多環のシクロアルカン構造;
ノルボルネン構造、トリシクロデセン構造等の多環のシクロアルケン構造などをあげることができる。
【0147】
上記環員数5以上の脂肪族複素環構造としては、例えば、
ペンタノラクトン構造、ヘキサノラクトン構造、ノルボルナンラクトン構造等のラクトン構造;
ペンタノスルトン構造、ヘキサノスルトン構造、ノルボルナンスルトン構造等のスルトン構造;
オキサシクロペンタン構造、オキサシクロヘプタン構造、オキサノルボルナン構造等の酸素原子含有複素環構造;
アザシクロペンタン構造、アザシクロヘキサン構造、ジアザビシクロオクタン構造等の窒素原子含有複素環構造;
チアシクロペンタン構造、チアシクロヘキサン構造、チアノルボルナン構造のイオウ原子含有複素環構造などをあげることができる。
【0148】
上記環員数6以上の芳香環構造としては、例えば、ベンゼン構造、ナフタレン構造、フェナントレン構造、アントラセン構造等をあげることができる。
【0149】
上記環員数6以上の芳香族複素環構造としては、例えば、フラン構造、ピラン構造、ベンゾピラン構造等の酸素原子含有複素環構造、ピリジン構造、ピリミジン構造、インドール構造等の窒素原子含有複素環構造などをあげることができる。
【0150】
p1の環構造の環員数の下限としては、6であってもよく、7が好ましく、8がより好ましく、9がさらに好ましく、10が特に好ましい。一方、上記環員数の上限としては、15が好ましく、14がより好ましく、13がさらに好ましく、12が特に好ましい。上記環員数を上記範囲とすることで、上述の酸の拡散長をさらに適度に短くすることができ、その結果、上記化学増幅型レジスト材料の各種性能をより向上させることができる。
【0151】
p1の環構造が有する水素原子の一部又は全部は、置換基で置換されていてもよい。上記置換基としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子、ヒドロキシ基、カルボキシ基、シアノ基、ニトロ基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アルコキシカルボニルオキシ基、アシル基、アシロキシ基などをあげることができる。これらの中でヒドロキシ基が好ましい。
【0152】
p1としては、これらの中で、環員数5以上の脂環構造を含む1価の基及び環員数5以上の脂肪族複素環構造を含む1価の基が好ましく、環員数6以上の脂環構造を含む1価の基及び環員数6以上の脂肪族複素環構造を含む1価の基がより好ましく、環員数9以上の脂環構造を含む1価の基及び環員数9以上の脂肪族複素環構造を含む1価の基がさらに好ましく、アダマンチル基、ヒドロキシアダマンチル基、ノルボルナンラクトン-イル基、ノルボルナンスルトン-イル基及び5-オキソ-4-オキサトリシクロ[4.3.1.13,8]ウンデカン-イル基がさらに好ましく、アダマンチル基が特に好ましい。
【0153】
p2で表される2価の連結基としては、例えば、カルボニル基、エーテル基、カルボニルオキシ基、スルフィド基、チオカルボニル基、スルホニル基、2価の炭化水素基等をあげることができる。Rp2で表される2価の連結基としては、カルボニルオキシ基、スルホニル基、アルカンジイル基及びシクロアルカンジイル基が好ましく、カルボニルオキシ基及びシクロアルカンジイル基がより好ましく、カルボニルオキシ基及びノルボルナンジイル基がさらに好ましく、カルボニルオキシ基が特に好ましい。
【0154】
p3及びRp4で表される炭素数1~20の1価の炭化水素基としては、例えば、炭素数1~20のアルキル基等をあげることができる。Rp3及びRp4で表される炭素数1~20の1価のフッ素化炭化水素基としては、例えば、炭素数1~20のフッ素化アルキル基等をあげることができる。Rp3及びRp4としては、水素原子、フッ素原子及びフッ素化アルキル基が好ましく、フッ素原子及びパーフルオロアルキル基がより好ましく、フッ素原子及びトリフルオロメチル基がさらに好ましい。
【0155】
p5及びRp6で表される炭素数1~20の1価のフッ素化炭化水素基としては、例えば、炭素数1~20のフッ素化アルキル基等をあげることができる。Rp5及びRp6としては、フッ素原子及びフッ素化アルキル基が好ましく、フッ素原子及びパーフルオロアルキル基がより好ましく、フッ素原子及びトリフルオロメチル基がさらに好ましく、フッ素原子が特に好ましい。
【0156】
p1としては、0~5の整数が好ましく、0~3の整数がより好ましく、0~2の整数がさらに好ましく、0及び1が特に好ましい。
【0157】
p2としては、0~2の整数がより好ましく、0及び1がさらに好ましく、0が特に好ましい。
【0158】
p3としては、0~5の整数が好ましく、1~4の整数がより好ましく、1~3の整数がさらに好ましく、1及び2が特に好ましい。np3を1以上とすることで、上記式(p-1)の化合物から生じる酸の強さを高めることができ、その結果、当該感放射線性樹脂組成物のLWR性能等をより向上させることができる。np3の上限としては、4が好ましく、3がより好ましく、2がさらに好ましい。
【0159】
なお、上記式(p-1)において、np1+np2+np3は、1以上30以下の整数である。np1+np2+np3の下限としては、2が好ましく、4がより好ましい。np1+np2+np3の上限としては、20が好ましく、10がより好ましい。
【0160】
上記Zで表される1価のオニウムカチオンとしては、例えば、S、I、O、N、P、Cl、Br、F、As、Se、Sn、Sb、Te、Bi等の元素を含む放射線分解性オニウムカチオンが挙げられ、例えばスルホニウムカチオン、テトラヒドロチオフェニウムカチオン、ヨードニウムカチオン、ホスホニウムカチオン、ジアゾニウムカチオン、ピリジニウムカチオン等が挙げられる。中でも、スルホニウムカチオン又はヨードニウムカチオンが好ましい。スルホニウムカチオン又はヨードニウムカチオンは、好ましくは下記式(X-1)~(X-6)で表される。
【0161】
【化18】
【0162】
【化19】
【0163】
【化20】
【0164】
【化21】
【0165】
【化22】
【0166】
【化23】
【0167】
上記式(X-1)中、Ra1、Ra2及びRa3は、それぞれ独立して、置換若しくは非置換の炭素数1~12の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、アルコキシ基若しくはアルコキシカルボニルオキシ基、置換若しくは非置換の炭素数3~12の単環若しくは多環のシクロアルキル基、置換若しくは非置換の炭素数6~12の芳香族炭化水素基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、-OSO-R、-SO-R若しくは-S-Rであるか、又はこれらの基のうちの2つ以上が互いに合わせられ構成される環構造を表す。当該環構造は骨格を形成する炭素-炭素結合間にOやS等のヘテロ原子を含んでいてもよい。R、R及びRは、それぞれ独立して、置換若しくは非置換の炭素数1~12の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、置換若しくは非置換の炭素数5~25の脂環式炭化水素基又は置換若しくは非置換の炭素数6~12の芳香族炭化水素基である。k1、k2及びk3は、それぞれ独立して0~5の整数である。Ra1~Ra3並びにR、R及びRがそれぞれ複数の場合、複数のRa1~Ra3並びにR、R及びRはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。
【0168】
上記式(X-2)中、Rb1は、置換若しくは非置換の炭素数1~20の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基若しくはアルコキシ基、置換若しくは非置換の炭素数2~8のアシル基、又は置換若しくは非置換の炭素数6~8の芳香族炭化水素基、又はヒドロキシ基である。nは0又は1である。nが0のとき、k4は0~4の整数であり、nが1のとき、k4は0~7の整数である。Rb1が複数の場合、複数のRb1は同一でも異なっていてもよく、また、複数のRb1は、互いに合わせられ構成される環構造を表してもよい。Rb2は、置換若しくは非置換の炭素数1~7の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、又は置換若しくは非置換の炭素数6若しくは7の芳香族炭化水素基である。Lは単結合又は2価の連結基である。k5は、0~4の整数である。Rb2が複数の場合、複数のRb2は同一でも異なっていてもよく、また、複数のRb2は互いに合わせられ構成される環構造を表してもよい。qは、0~3の整数である。式中、Sを含む環構造は骨格を形成する炭素-炭素結合間にOやS等のヘテロ原子を含んでいてもよい。
【0169】
上記式(X-3)中、Rc1、Rc2及びRc3は、それぞれ独立して、置換若しくは非置換の炭素数1~12の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基である。
【0170】
上記式(X-4)中、Rg1は、置換若しくは非置換の炭素数1~20の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基若しくはアルコキシ基、置換若しくは非置換の炭素数2~8のアシル基、又は置換若しくは非置換の炭素数6~8の芳香族炭化水素基、又はヒドロキシ基である。nは0又は1である。nk2が0のとき、k10は0~4の整数であり、nk2が1のとき、k10は0~7の整数である。Rg1が複数の場合、複数のRg1は同一でも異なっていてもよく、また、複数のRg1は、互いに合わせられ構成される環構造を表してもよい。Rg2は及びRg3は、それぞれ独立して、置換若しくは非置換の炭素数1~12の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、アルコキシ基若しくはアルコキシカルボニルオキシ基、置換若しくは非置換の炭素数3~12の単環若しくは多環のシクロアルキル基、置換若しくは非置換の炭素数6~12の芳香族炭化水素基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子であるか、又はこれらの基が互いに合わせられ構成される環構造を表す。k11及びk12は、それぞれ独立して0~4の整数である。Rg2は及びRg3がそれぞれ複数の場合、複数のRg2は及びRg3はそれぞれ同一でも異なっていてもよい。
【0171】
上記式(X-5)中、Rd1及びRd2は、それぞれ独立して、置換若しくは非置換の炭素数1~12の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、アルコキシ基若しくはアルコキシカルボニル基、置換若しくは非置換の炭素数6~12の芳香族炭化水素基、ハロゲン原子、炭素数1~4のハロゲン化アルキル基、ニトロ基であるか、又はこれらの基のうちの2つ以上が互いに合わせられ構成される環構造を表す。k6及びk7は、それぞれ独立して0~5の整数である。Rd1及びRd2がそれぞれ複数の場合、複数のRd1及びRd2はそれぞれ同一でも異なっていてもよい。
【0172】
上記式(X-6)中、Re1及びRe2は、それぞれ独立して、ハロゲン原子、置換若しくは非置換の炭素数1~12の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、又は置換若しくは非置換の炭素数6~12の芳香族炭化水素基である。k8及びk9は、それぞれ独立して0~4の整数である。
【0173】
上記式(p-1)で表される感放射線性酸発生剤としては、例えば、下記式(p-1-1)~(p-1-35)で表される感放射線性酸発生剤(以下、「感放射線性酸発生剤(p-1-1)~感放射線性酸発生剤(p-1-35)」ともいう。)等が挙げられる。
【0174】
【化24】
【0175】
【化25】
【0176】
【化26】
【0177】
上記式(p-1-1)~(p-1-35)中、Zは、1価のオニウムカチオンである。
【0178】
これらの中でも、上記式(p-1-9)、(p-1-13)、(p-1-17)、(p-1-23)、(p-1-25)及び(p-1-35)で表される感放射線性酸発生剤が好ましい。
【0179】
これらの感放射線性酸発生剤は、単独で使用してもよく2種以上を併用してもよい。感放射線性酸発生剤の含有量の下限は、樹脂100質量部に対して0.1質量部が好ましく、1質量部がより好ましく、5質量部がさらに好ましい。上記含有量の上限は、50質量部が好ましく、40質量部がより好ましく、30質量部がさらに好ましい。これによりレジストパターン形成の際に優れた感度やLWR性能、プロセスマージンを発揮することができる。
【0180】
<酸拡散制御剤>
当該感放射線性樹脂組成物は、必要に応じて、酸拡散制御剤を含有してもよい。酸拡散制御剤は、露光により感放射線性酸発生剤から生じる酸のレジスト膜中における拡散現象を制御し、非露光領域における好ましくない化学反応を抑制する効果を奏する。また、得られる感放射線性樹脂組成物の貯蔵安定性が向上する。さらに、レジストパターンの解像度がさらに向上すると共に、露光から現像処理までの引き置き時間の変動によるレジストパターンの線幅変化を抑えることができ、プロセス安定性に優れた感放射線性樹脂組成物が得られる。
【0181】
酸拡散制御剤としては、例えば下記式(7)で表される化合物(以下、「含窒素化合物(I)」ともいう)、同一分子内に窒素原子を2個有する化合物(以下、「含窒素化合物(II)」ともいう)、窒素原子を3個有する化合物(以下、「含窒素化合物(III)」ともいう)、アミド基含有化合物、ウレア化合物、含窒素複素環化合物等が挙げられる。
【0182】
【化27】
【0183】
上記式(7)中、R22、R23及びR24は、それぞれ独立して、水素原子、置換若しくは非置換のアルキル基、置換若しくは非置換のシクロアルキル基、置換若しくは非置換のアリール基又は置換若しくは非置換のアラルキル基である。
【0184】
含窒素化合物(I)としては、例えばn-ヘキシルアミン等のモノアルキルアミン類;ジ-n-ブチルアミン等のジアルキルアミン類;トリエチルアミン等のトリアルキルアミン類;アニリン等の芳香族アミン類等が挙げられる。
【0185】
含窒素化合物(II)としては、例えばエチレンジアミン、N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン等が挙げられる。
【0186】
含窒素化合物(III)としては、例えばポリエチレンイミン、ポリアリルアミン等のポリアミン化合物;ジメチルアミノエチルアクリルアミド等の重合体等が挙げられる。
【0187】
アミド基含有化合物としては、例えばホルムアミド、N-メチルホルムアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、アセトアミド、N-メチルアセトアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、プロピオンアミド、ベンズアミド、ピロリドン、N-メチルピロリドン等が挙げられる。
【0188】
ウレア化合物としては、例えば尿素、メチルウレア、1,1-ジメチルウレア、1,3-ジメチルウレア、1,1,3,3-テトラメチルウレア、1,3-ジフェニルウレア、トリブチルチオウレア等が挙げられる。
【0189】
含窒素複素環化合物としては、例えばピリジン、2-メチルピリジン等のピリジン類;N-プロピルモルホリン、N-(ウンデシルカルボニルオキシエチル)モルホリン等のモルホリン類;ピラジン類、ピラゾール類等が挙げられる。
【0190】
また上記含窒素有機化合物として、酸解離性基を有する化合物を用いることもできる。このような酸解離性基を有する含窒素有機化合物としては、例えばN-t-ブトキシカルボニルピペリジン、N-t-ブトキシカルボニルイミダゾール、N-t-ブトキシカルボニルベンズイミダゾール、N-t-ブトキシカルボニル-2-フェニルベンズイミダゾール、N-(t-ブトキシカルボニル)ジ-n-オクチルアミン、N-(t-ブトキシカルボニル)ジエタノールアミン、N-(t-ブトキシカルボニル)ジシクロヘキシルアミン、N-(t-ブトキシカルボニル)ジフェニルアミン、N-t-ブトキシカルボニル-4-ヒドロキシピペリジン、N-t-アミルオキシカルボニル-4-ヒドロキシピペリジン等が挙げられる。
【0191】
また、酸拡散制御剤として、放射線の照射により、上記感放射線性酸発生剤から発生する酸よりpKaが高い酸を発生するオニウム塩化合物(以下、便宜上「感放射線性弱酸発生剤」ともいう。)を好適に用いることもできる。上記感放射線性弱酸発生剤より発生する酸は、上記樹脂中の酸解離性基を解離させる条件では上記酸解離性基の解離を誘発しない弱酸である。なお、本明細書において、酸解離性基の「解離」とは、110℃で60秒間ポストエクスポージャーベークした際に解離することをいう。
【0192】
感放射線性弱酸発生剤としては、例えば下記式(8-1)で表されるスルホニウム塩化合物、下記式(8-2)で表されるヨードニウム塩化合物等が挙げられる。
【0193】
【化28】
【0194】
上記式(8-1)及び式(8-2)中、Jはスルホニウムカチオンであり、Uはヨードニウムカチオンである。Jで表されるスルホニウムカチオンとしては、上記式(X-1)~(X-4)で表されるスルホニウムカチオンが挙げられ、Uで表されるヨードニウムカチオンとしては、上記式(X-5)~(X-6)で表されるヨードニウムカチオンが挙げられる。E及びQは、それぞれ独立して、OH、Rα-COO、Rα-SO で表されるアニオンである。Rαは、アルキル基、アリール基又はアラルキル基である。Rαで表されるアルキル基の水素原子、又はアリール基若しくはアラルキル基の芳香環の水素原子は、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、ニトロ基、ハロゲン原子置換若しくは非置換の炭素数1~12のアルキル基又は炭素数1~12のアルコキシ基で置換されていてもよい。
【0195】
上記感放射線性弱酸発生剤としては、例えば下記式で表される化合物等が挙げられる。
【0196】
【化29】
【0197】
【化30】
【0198】
酸拡散制御剤の含有量の下限としては、感放射線性酸発生剤の合計モル数に対して、5モル%が好ましく、10モル%がより好ましく、15モル%がさらに好ましい。上記含有量の上限としては、40モル%が好ましく30モル%がより好ましく、25モル%がさらに好ましい。酸拡散制御剤の含有量を上記範囲とすることで、当該感放射線性樹脂組成物のリソグラフィー性能をより向上させることができる。当該感放射線性樹脂組成物は、酸拡散制御剤を1種又は2種以上を含有していてもよい。
【0199】
<溶剤>
本実施形態に係る感放射線性樹脂組成物は、溶剤を含有する。溶剤は、少なくとも樹脂及び感放射線性酸発生剤、並びに所望により含有される添加剤等を溶解又は分散可能な溶剤であれば特に限定されない。
【0200】
溶剤としては、例えば、アルコール系溶剤、エーテル系溶剤、ケトン系溶剤、アミド系溶剤、エステル系溶剤、炭化水素系溶剤等が挙げられる。
【0201】
アルコール系溶剤としては、例えば、
iso-プロパノール、4-メチル-2-ペンタノール、3-メトキシブタノール、n-ヘキサノール、2-エチルヘキサノール、フルフリルアルコール、シクロヘキサノール、3,3,5-トリメチルシクロヘキサノール、ジアセトンアルコール等の炭素数1~18のモノアルコール系溶剤;
エチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、2,5-ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール等の炭素数2~18の多価アルコール系溶剤;
上記多価アルコール系溶剤が有するヒドロキシ基の一部をエーテル化した多価アルコール部分エーテル系溶剤等が挙げられる。
【0202】
エーテル系溶剤としては、例えば、
ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル等のジアルキルエーテル系溶剤;
テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン等の環状エーテル系溶剤;
ジフェニルエーテル、アニソール(メチルフェニルエーテル)等の芳香環含有エーテル系溶剤;
上記多価アルコール系溶剤が有するヒドロキシ基をエーテル化した多価アルコールエーテル系溶剤等が挙げられる。
【0203】
ケトン系溶剤としては、例えばアセトン、ブタノン、メチル-iso-ブチルケトン等の鎖状ケトン系溶剤:
シクロペンタノン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン等の環状ケトン系溶剤:
2,4-ペンタンジオン、アセトニルアセトン、アセトフェノン等が挙げられる。
【0204】
アミド系溶剤としては、例えばN,N’-ジメチルイミダゾリジノン、N-メチルピロリドン等の環状アミド系溶剤;
N-メチルホルムアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジエチルホルムアミド、アセトアミド、N-メチルアセトアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルプロピオンアミド等の鎖状アミド系溶剤等が挙げられる。
【0205】
エステル系溶剤としては、例えば、
酢酸n-ブチル、乳酸エチル等のモノカルボン酸エステル系溶媒;
ジエチレングリコールモノ-n-ブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等の多価アルコール部分エーテルアセテート系溶剤;
γ-ブチロラクトン、バレロラクトン等のラクトン系溶剤;
ジエチルカーボネート、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等のカーボネート系溶剤;
ジ酢酸プロピレングリコール、酢酸メトキシトリグリコール、シュウ酸ジエチル、アセト酢酸エチル、乳酸エチル、フタル酸ジエチル等の多価カルボン酸ジエステル系溶媒が挙げられる。
【0206】
炭化水素系溶剤としては、例えば
n-ヘキサン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶剤;
ベンゼン、トルエン、ジ-iso-プロピルベンゼン、n-アミルナフタレン等の芳香族炭化水素系溶剤等が挙げられる。
【0207】
これらの中で、エステル系溶剤、ケトン系溶剤が好ましく、多価アルコール部分エーテルアセテート系溶剤、環状ケトン系溶剤、ラクトン系溶剤がより好ましく、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、シクロヘキサノン、γ-ブチロラクトンがさらに好ましい。当該感放射線性樹脂組成物は、溶剤を1種又は2種以上含有していてもよい。
【0208】
<その他の任意成分>
上記感放射線性樹脂組成物は、上記成分以外にも、その他の任意成分を含有していてもよい。上記その他の任意成分としては、例えば、架橋剤、偏在化促進剤、界面活性剤、脂環式骨格含有化合物、増感剤等をあげることができる。これらのその他の任意成分は、それぞれ1種又は2種以上を併用してもよい。
【0209】
(架橋剤)
架橋剤は2つ以上の官能基を有する化合物であり、一括露光工程後のベーク工程において、酸触媒反応により(1)重合体成分において架橋反応を引き起こし、(1)重合体成分の分子量を増加させることで、パターン露光部の現像液に対する溶解度を低下させるものである。上記官能基としては、例えば、(メタ)アクリロイル基、ヒドロキシメチル基、アルコキシメチル基、エポキシ基、ビニルエーテル基等をあげることができる。
【0210】
(偏在化促進剤)
偏在化促進剤は、上記高フッ素含有量樹脂をより効率的にレジスト膜表面に偏在させる効果を有するものである。上記感放射線性樹脂組成物にこの偏在化促進剤を含有させることで、上記高フッ素含有量樹脂の添加量を従来よりも少なくすることができる。従って、上記感放射線性樹脂組成物のリソグラフィー性能を維持しつつ、レジスト膜から液浸媒体への成分の溶出をさらに抑制したり、高速スキャンにより液浸露光をより高速に行うことが可能になり、結果としてウォーターマーク欠陥等の液浸由来欠陥を抑制するレジスト膜表面の疎水性を向上させることができる。このような偏在化促進剤として用いることができるものとしては、例えば、比誘電率が30以上200以下で、1気圧における沸点が100℃以上の低分子化合物をあげることができる。このような化合物としては、具体的には、ラクトン化合物、カーボネート化合物、ニトリル化合物、多価アルコール等をあげることができる。
【0211】
上記ラクトン化合物としては、例えば、γ-ブチロラクトン、バレロラクトン、メバロニックラクトン、ノルボルナンラクトン等をあげることができる。
【0212】
上記カーボネート化合物としては、例えば、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ビニレンカーボネート等をあげることができる。
【0213】
上記ニトリル化合物としては、例えば、スクシノニトリル等をあげることができる。
【0214】
上記多価アルコールとしては、例えば、グリセリン等をあげることができる。
【0215】
偏在化促進剤の含有量の下限としては、上記感放射線性樹脂組成物における樹脂の総量100質量部に対して、10質量部が好ましく、15質量部がより好ましく、20質量部がさらに好ましく、25質量部がさらに好ましい。上記含有量の上限としては、300質量部が好ましく、200質量部がより好ましく、100質量部がさらに好ましく、80質量部が特に好ましい。上記感放射線性樹脂組成物は、偏在化促進剤を1種又は2種以上含有していてもよい。
【0216】
(界面活性剤)
界面活性剤は、塗布性、ストリエーション、現像性等を改良する効果を奏する。界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンn-オクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンn-ノニルフェニルエーテル、ポリエチレングリコールジラウレート、ポリエチレングリコールジステアレート等のノニオン系界面活性剤;市販品としては、KP341(信越化学工業製)、ポリフローNo.75、同No.95(以上、共栄社化学製)、エフトップEF301、同EF303、同EF352(以上、トーケムプロダクツ製)、メガファックF171、同F173(以上、DIC製)、フロラードFC430、同FC431(以上、住友スリーエム製)、アサヒガードAG710、サーフロンS-382、同SC-101、同SC-102、同SC-103、同SC-104、同SC-105、同SC-106(以上、旭硝子工業製)等をあげることができる。上記感放射線性樹脂組成物における界面活性剤の含有量としては、樹脂100質量部に対して通常2質量部以下である。
【0217】
(脂環式骨格含有化合物)
脂環式骨格含有化合物は、ドライエッチング耐性、パターン形状、基板との接着性等を改善する効果を奏する。
【0218】
脂環式骨格含有化合物としては、例えば、
1-アダマンタンカルボン酸、2-アダマンタノン、1-アダマンタンカルボン酸t-ブチル等のアダマンタン誘導体類;
デオキシコール酸t-ブチル、デオキシコール酸t-ブトキシカルボニルメチル、デオキシコール酸2-エトキシエチル等のデオキシコール酸エステル類;
リトコール酸t-ブチル、リトコール酸t-ブトキシカルボニルメチル、リトコール酸2-エトキシエチル等のリトコール酸エステル類;
3-〔2-ヒドロキシ-2,2-ビス(トリフルオロメチル)エチル〕テトラシクロ[4.4.0.1(2,5).1(7,10)]ドデカン、2-ヒドロキシ-9-メトキシカルボニル-5-オキソ-4-オキサ-トリシクロ[4.2.1.0(3,7)]ノナン等をあげることができる。上記感放射線性樹脂組成物における脂環式骨格含有化合物の含有量としては、樹脂100質量部に対して通常5質量部以下である。
【0219】
(増感剤)
増感剤は、感放射線性酸発生剤等からの酸の生成量を増加する作用を示すものであり、上記感放射線性樹脂組成物の「みかけの感度」を向上させる効果を奏する。
【0220】
増感剤としては、例えば、カルバゾール類、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、ナフタレン類、フェノール類、ビアセチル、エオシン、ローズベンガル、ピレン類、アントラセン類、フェノチアジン類等をあげることができる。これらの増感剤は、単独で使用してもよく2種以上を併用してもよい。上記感放射線性樹脂組成物における増感剤の含有量としては、樹脂100質量部に対して通常2質量部以下である。
【0221】
<感放射線性樹脂組成物の調製方法>
上記感放射線性樹脂組成物は、例えば、樹脂、感放射線性酸発生剤、必要に応じて高フッ素含有量樹脂等、及び溶剤を所定の割合で混合することにより調製できる。上記感放射線性樹脂組成物は、混合後に、例えば、孔径0.05μm~0.20μm程度のフィルター等でろ過することが好ましい。上記感放射線性樹脂組成物の固形分濃度としては、通常0.1質量%~50質量%であり、0.5質量%~30質量%が好ましく、1質量%~20質量%がより好ましい。
【0222】
《レジストパターン形成方法》
本発明におけるレジストパターン形成方法は、
上記感放射線性樹脂組成物によりレジスト膜を形成する工程(1)(以下、「レジスト膜形成工程」ともいう)、
上記レジスト膜を露光する工程(2)(以下、「露光工程」ともいう)、及び、
露光された上記レジスト膜を現像する工程(3)(以下、「現像工程」ともいう)を含む。
【0223】
上記レジストパターン形成方法によれば、露光工程における感度やLWR性能、プロセスマージンに優れた上記感放射線性樹脂組成物を用いているため、高品位のレジストパターンを形成することができる。以下、各工程について説明する。
【0224】
[レジスト膜形成工程]
本工程(上記工程(1))では、上記感放射線性樹脂組成物でレジスト膜を形成する。このレジスト膜を形成する基板としては、例えば、シリコンウェハ、二酸化シリコン、アルミニウムで被覆されたウェハ等の従来公知のもの等をあげることができる。また、例えば、特公平6-12452号公報や特開昭59-93448号公報等に開示されている有機系又は無機系の反射防止膜を基板上に形成してもよい。塗布方法としては、例えば、回転塗布(スピンコーティング)、流延塗布、ロール塗布等をあげることができる。塗布した後に、必要に応じて、塗膜中の溶剤を揮発させるため、プレベーク(PB)を行ってもよい。PB温度としては、通常60℃~140℃であり、80℃~120℃が好ましい。PB時間としては、通常5秒~600秒であり、10秒~300秒が好ましい。形成されるレジスト膜の膜厚としては、10nm~1,000nmが好ましく、10nm~500nmがより好ましい。
【0225】
液浸露光を行う場合、上記感放射線性樹脂組成物における上記高フッ素含有量樹脂等の撥水性重合体添加剤の有無にかかわらず、上記形成したレジスト膜上に、液浸液とレジスト膜との直接の接触を避ける目的で、液浸液に不溶性の液浸用保護膜を設けてもよい。液浸用保護膜としては、現像工程の前に溶剤により剥離する溶剤剥離型保護膜(例えば、特開2006-227632号公報参照)、現像工程の現像と同時に剥離する現像液剥離型保護膜(例えば、WO2005-069076号公報、WO2006-035790号公報参照)のいずれを用いてもよい。ただし、スループットの観点からは、現像液剥離型液浸用保護膜を用いることが好ましい。
【0226】
また、次工程である露光工程を波長50nm以下の放射線にて行う場合、上記組成物中のベース樹脂として上記構造単位Aとともに、必要に応じて構造単位Bを有する樹脂を用いることが好ましい。
【0227】
[露光工程]
本工程(上記工程(2))では、上記工程(1)であるレジスト膜形成工程で形成されたレジスト膜に、フォトマスクを介して(場合によっては、水等の液浸媒体を介して)、放射線を照射し、露光する。露光に用いる放射線としては、目的とするパターンの線幅に応じて、例えば、可視光線、紫外線、遠紫外線、EUV(極端紫外線)、X線、γ線等の電磁波;電子線、α線等の荷電粒子線などをあげることができる。これらの中でも、遠紫外線、電子線、EUVが好ましく、ArFエキシマレーザー光(波長193nm)、KrFエキシマレーザー光(波長248nm)、電子線、EUVがより好ましく、次世代露光技術として位置付けされる波長50nm以下の電子線、EUVがさらに好ましい。
【0228】
露光を液浸露光により行う場合、用いる液浸液としては、例えば、水、フッ素系不活性液体等をあげることができる。液浸液は、露光波長に対して透明であり、かつ膜上に投影される光学像の歪みを最小限に留めるよう屈折率の温度係数ができる限り小さい液体が好ましいが、特に露光光源がArFエキシマレーザー光(波長193nm)である場合、上述の観点に加えて、入手の容易さ、取り扱いのし易さといった点から水を用いるのが好ましい。水を用いる場合、水の表面張力を減少させるとともに、界面活性力を増大させる添加剤をわずかな割合で添加しても良い。この添加剤は、ウェハ上のレジスト膜を溶解させず、かつレンズの下面の光学コートに対する影響が無視できるものが好ましい。使用する水としては蒸留水が好ましい。
【0229】
上記露光の後、ポストエクスポージャーベーク(PEB)を行い、レジスト膜の露光された部分において、露光により感放射線性酸発生剤から発生した酸による樹脂等が有する酸解離性基の解離を促進させることが好ましい。このPEBによって、露光部と未露光部とで現像液に対する溶解性に差が生じる。PEB温度としては、通常50℃~180℃であり、80℃~130℃が好ましい。PEB時間としては、通常5秒~600秒であり、10秒~300秒が好ましい。
【0230】
[現像工程]
本工程(上記工程(3))では、上記工程(2)である上記露光工程で露光されたレジスト膜を現像する。これにより、所定のレジストパターンを形成することができる。現像後は、水又はアルコール等のリンス液で洗浄し、乾燥することが一般的である。
【0231】
上記現像に用いる現像液としては、アルカリ現像の場合、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、けい酸ナトリウム、メタけい酸ナトリウム、アンモニア水、エチルアミン、n-プロピルアミン、ジエチルアミン、ジ-n-プロピルアミン、トリエチルアミン、メチルジエチルアミン、エチルジメチルアミン、トリエタノールアミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)、ピロール、ピペリジン、コリン、1,8-ジアザビシクロ-[5.4.0]-7-ウンデセン、1,5-ジアザビシクロ-[4.3.0]-5-ノネン等のアルカリ性化合物の少なくとも1種を溶解したアルカリ水溶液等をあげることができる。これらの中でも、TMAH水溶液が好ましく、2.38質量%TMAH水溶液がより好ましい。
【0232】
また、有機溶剤現像の場合、炭化水素系溶剤、エーテル系溶剤、エステル系溶剤、ケトン系溶剤、アルコール系溶剤等の有機溶剤、又は有機溶剤を含有する溶剤をあげることができる。上記有機溶剤としては、例えば、上述の感放射線性樹脂組成物の溶剤として列挙した溶剤の1種又は2種以上等をあげることができる。これらの中でも、エステル系溶剤、ケトン系溶剤が好ましい。エステル系溶剤としては、酢酸エステル系溶剤が好ましく、酢酸n-ブチル、酢酸アミルがより好ましい。ケトン系溶剤としては、鎖状ケトンが好ましく、2-ヘプタノンがより好ましい。現像液中の有機溶剤の含有量としては、80質量%以上が好ましく、90質量%以上がより好ましく、95質量%以上がさらに好ましく、99質量%以上が特に好ましい。現像液中の有機溶剤以外の成分としては、例えば、水、シリコンオイル等をあげることができる。
【0233】
現像方法としては、例えば、現像液が満たされた槽中に基板を一定時間浸漬する方法(ディップ法)、基板表面に現像液を表面張力によって盛り上げて一定時間静止することで現像する方法(パドル法)、基板表面に現像液を噴霧する方法(スプレー法)、一定速度で回転している基板上に一定速度で現像液塗出ノズルをスキャンしながら現像液を塗出しつづける方法(ダイナミックディスペンス法)等をあげることができる。
【実施例
【0234】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。各種物性値の測定方法を以下に示す。
【0235】
[重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)及び分散度(Mw/Mn)の測定]
樹脂の項に記載の測定条件により測定した。また、分散度(Mw/Mn)は、Mw及びMnの測定結果より算出した。
【0236】
H-NMR分析及び13C-NMR分析]
日本電子社の「JNM-Delta400」を用いて測定した。
【0237】
<樹脂の合成>
各実施例及び比較例における各樹脂の合成で用いた単量体を以下に示す。なお以下の合成例においては特に断りのない限り、質量部は使用した単量体の合計質量を100質量部とした場合の値を意味し、モル%は使用した単量体の合計モル数を100モル%とした場合の値を意味する。また、本発明は下記構造単位に限定されるものでない。
【0238】
各実施例における樹脂の合成で用いた単量体のうち、上記式(1)で表される構造単位(すなわち、構造単位A)を与える単量体の構造を以下に示す。
【化31】
【0239】
各実施例ならびに各比較例における樹脂の合成で用いた単量体のうち、上記構造単位Aを与える単量体以外の単量体の構造を以下に示す。
【化32】
【0240】
(単量体(M-1)の合成)
構造単位Aを与える単量体(M-1)は、以下のスキームに従って合成した。
【0241】
【化33】
【0242】
カテコール200g(1.816mol)とトリエチルアミン91.89g(0.908mol)を3Lのナスフラスコに測りとり、ジクロロメタン(1500mL)に溶解させた。溶媒を0℃に冷却したのち、塩化メタクリロイル94.93g(0.908mol)を、25℃を超えない程度の速度で滴下した。滴下終了後25℃にて1.5時間攪拌した。反応終了後、塩化アンモニウム飽和水溶液でクエンチし、塩化メチレンで抽出を行った。減圧濃縮して得られた残渣をカラムクロマトグラフィーにより精製し、単量体(M-1)を65.08g(収率20%)得た。
【0243】
構造単位Aを与える他の単量体(M-2)~(M-9)についても前駆体を適宜変更したこと以外は単量体(M-1)の合成方法と同様に合成した。
【0244】
[合成例1]
(樹脂(A-1)の合成)
単量体(M-1)、単量体(M-10)、単量体(M-19)をモル比率が10/30/60となるよう1-メトキシ-2-プロパノール(全単量体量に対して200質量部)に溶解した。次に、開始剤としてAIBNを全モノマーに対して6モル%添加し、単量体溶液を調製した。一方、空の反応容器に1-メトキシ-2-プロパノール(全単量体量に対して100質量部)を加え、攪拌しながら85℃に加熱した。次に、上記で調製した単量体溶液を3時間かけて滴下し、その後、さらに3時間85℃で加熱し、重合反応を合計6時間実施した。重合反応終了後、重合溶液を室温に冷却した。ヘキサン(重合溶液に対して500質量部)中に冷却した重合溶液を投入し、析出した白色粉末をろ別した。ろ別した白色粉末を重合溶液に対して100質量部のヘキサンで2回洗浄した後、ろ別し、1-メトキシ-2-プロパノール(300質量部)に溶解した。次に、メタノール(500質量部)、トリエチルアミン(50質量部)、超純水(10質量部)を加え、撹拌しながら70℃で6時間加水分解反応を実施した。反応終了後、残溶媒を留去し、得られた固体をアセトン(100質量部)に溶解させた。500質量部の水中に滴下して樹脂を凝固させ、得られた固体をろ別した。50℃、12時間乾燥させて白色粉末状の樹脂(A-1)を合成した。
【0245】
[合成例2~30、33~36、38~42]
(樹脂(A-2)~(A-39)の合成)
表1に記載の種類の単量体を所定量配合したこと以外は、合成例1と同様に操作して樹脂(A-2)~(A-39)を合成した。また、得られた各樹脂のMw、Mw/Mnおよび各樹脂における各単量体に由来する構造単位の含有率を合わせて表1に示す。
【0246】
[合成例31]
(樹脂(B-1)の合成)
単量体(M-1)、単量体(M-21)、単量体(M-32)をモル比率が40/45/15となるよう2-ブタノン(全単量体量に対して200質量部)に溶解した。開始剤としてAIBNを全モノマーに対して6モル%添加し、単量体溶液を調製した。一方、空の反応容器に2-ブタノン(100質量部)を入れ、攪拌しながら80℃に加熱した。次に、上記で調製した単量体溶液を3時間かけて滴下し、その後、さらに3時間80℃で加熱し、重合反応を合計6時間実施した。重合反応終了後、重合溶液を室温に冷却した。メタノール(重合溶液に対して2000質量部)中に冷却した重合溶液を投入し、析出した白色粉末をろ別した。得られた固体をアセトン(100質量部)に溶解させた。500質量部の水中に滴下して樹脂を凝固させ、得られた固体をろ別した。50℃、12時間乾燥させて白色粉末状の樹脂(B-1)を合成した。
【0247】
[合成例32、37]
(重合体(B-2)、(B-3)の合成)
表1に記載の種類の単量体を所定量配合したこと以外は、合成例31同様に操作して樹脂(B-2)、(B-3)を得た。また、得られた各樹脂のMw、Mw/Mnおよび各樹脂における各単量体に由来する構造単位の含有率を合わせて表1に示す。
【0248】
【表1】
【0249】
<感放射線性樹脂組成物の調製>
感放射線性樹脂組成物を構成する感放射線性酸発生剤、酸拡散制御剤及び溶剤について以下に示す。
【0250】
(感放射線性酸発生剤)
C-1~C-9:下記式(C-1)~(C-9)で表される化合物。
【化34】
【0251】
(酸拡散制御剤)
D-1~D-9:下記式(D-1)~(D-9)で表される化合物。
【化35】
【0252】
(溶剤)
E-1:酢酸プロピレングリコールモノメチルエーテル
E-2:プロピレングリコール1-モノメチルエーテル
【0253】
[実施例1]
樹脂(A-1)100質量部、感放射線性酸発生剤としての(C-1)20質量部、酸拡散制御剤としての(D-1)を(C-1)に対して20モル%、並びに溶剤としての(E-1)4,800質量部及び(E-2)2000質量部を配合して混合した。次に、得られた混合液を孔径0.20μmのメンブランフィルターでろ過することにより、感放射線性樹脂組成物(R-1)を調製した。
【0254】
[実施例2~55及び比較例1~5]
下記表2に示す種類及び配合量の各成分を用いた以外は、実施例1と同様に操作して、感放射線性樹脂組成物(R-2)~(R-55)及び(CR-1)~(CR-5)を調製した。
【0255】
【表2】
【0256】
<レジストパターンの形成>
(EUV露光、アルカリ現像)
膜厚20nmの下層膜(AL412(Brewer Science社製))が形成された12インチのシリコンウェハ表面に、スピンコーター(CLEAN TRACK ACT12、東京エレクトロン製)を使用して、上記調製した感放射線性樹脂組成物を塗布し、130℃で60秒間SBを行った後、23℃で30秒間冷却し、膜厚50nmのレジスト膜を形成した。次に、このレジスト膜に、EUV露光機(型式「NXE3300」、ASML製、NA=0.33、照明条件:Conventional s=0.89、マスクimecDEFECT32FFR02)を用いてEUV光を照射した。次いで、2.38wt%のTMAH水溶液を用い、23℃で30秒間現像しポジ型の32nmラインアンドスペースパターンを形成した。
【0257】
<評価>
上記形成した各レジストパターンについて、下記方法に従って測定することにより、各感放射線性樹脂組成物の感度、LWR性能及びプロセスウィンドウを評価した。なお、レジストパターンの測長には走査型電子顕微鏡(日立ハイテクノロジーズ社の「CG-4100」)を用いた。評価結果を下記表3に示す。
【0258】
[感度]
上記レジストパターンの形成において、32nmラインアンドスペースパターンを形成する露光量を最適露光量とし、この最適露光量を感度(mJ/cm)とした。感度は、30mJ/cm以下の場合は「良好」と、30mJ/cmを超える場合は「不良」と判定した。
【0259】
[LWR性能]
上記走査型電子顕微鏡を用いてレジストパターンを上部から観察した。線幅を任意のポイントで計50点測定し、その測定値の分布から3シグマ値を求め、これをLWR性能とした。LWR性能は、値が小さいほど良いことを示す。LWR性能は、4.0nm以下の場合は良好と、4.0nmを超える場合は不良と判定した。
【0260】
[プロセスウィンドウ]
32nmラインアンドスペース(1L/1S)を形成するマスクを用いて、低露光量から高露光量までのパターンを形成した。一般的に低露光量側ではパターン間の繋がりが、高露光量側ではパターン倒れなどの欠陥が見られる。これら欠陥が見られないレジスト寸法の上限値と下限値の差を「CDマージン」とし、CDマージンが30nm以上の場合は良好、30nm未満の場合は不良と判定した。CDマージンの値が大きいほど、プロセスウィンドウも広いと考えられる。
【0261】
【表3】
【0262】
表3の結果から明らかなように、実施例の感放射線性樹脂組成物ではいずれも、感度、LWR性能、CDマージンが比較例の感放射線性樹脂組成物対比で良好であった。
【産業上の利用可能性】
【0263】
本発明の感放射線性樹脂組成物及びレジストパターン形成方法によれば、従来よりも感度、LWRおよびプロセスマージンを改良することができる。従って、これらは半導体デバイス、液晶デバイス等の各種電子デバイスのリソグラフィー工程における微細なレジストパターン形成に好適に用いることができる。