(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-20
(45)【発行日】2025-01-28
(54)【発明の名称】変調器及び撮像装置
(51)【国際特許分類】
G01J 3/36 20060101AFI20250121BHJP
G02B 5/18 20060101ALI20250121BHJP
G03B 15/00 20210101ALN20250121BHJP
【FI】
G01J3/36
G02B5/18
G03B15/00 V
(21)【出願番号】P 2021575729
(86)(22)【出願日】2021-01-25
(86)【国際出願番号】 JP2021002371
(87)【国際公開番号】W WO2021157398
(87)【国際公開日】2021-08-12
【審査請求日】2024-01-09
(31)【優先権主張番号】P 2020016582
(32)【優先日】2020-02-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002185
【氏名又は名称】ソニーグループ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】庄 沱
【審査官】嶋田 行志
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-276552(JP,A)
【文献】特開2011-080980(JP,A)
【文献】特表2012-508366(JP,A)
【文献】国際公開第2013/046257(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/216213(WO,A1)
【文献】中国実用新案第210774359(CN,U)
【文献】米国特許出願公開第2016/0202178(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2002/0101587(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2007/0165223(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2007/0182962(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0206291(US,A1)
【文献】Practical Spectral Photography,EUROGRAPHICS,2012年,Volume 31, Number 2,pp. 449-458,doi: 10.1111/j.1467-8659.2012.03024.x
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01J 3/00-G01J 3/52
G02B 5/00-G02B 5/32
G01N 21/00-G01N 21/61
G03B 15/00
JSTPlus/JST7580/JSTChina(JDreamIII)
IEEE Xplore
SPIE Digital Library
Optica
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回折格子とイメージセンサとの間に設けられる変調器であって、
前記回折格子から前記イメージセンサに向かう光線が入射され、前記イメージセンサの受光面上における前記光線の波長ごとの
投影される回折像が曲がるように、前記イメージセンサに向けて出射する前記光線の進行方向を変更する
変調器。
【請求項2】
前記回折格子から入射される前記光線の波長のうち、前記受光面上における
前記回折像が直線状になる波長の前記回折像が曲線となるように、前記光線の進行方向を変更する
請求項1に記載の変調器。
【請求項3】
曲げた前記回折像が前記受光面の内部に収まるように、前記光線の進行方向を変更する
請求項2に記載の変調器。
【請求項4】
曲げた前記回折像と他の前記回折像との重畳を抑制するように、前記光線の進行方向を変更する
請求項3に記載の変調器。
【請求項5】
透過性部材によって形成された本体を備え、
前記本体は、前記透過性部材の屈折率と一点に入射する単一波長及び単一入射角を含む前記光線とに基づく入射位置の形状に形成された入射面を有する
請求項4に記載の変調器。
【請求項6】
回折格子と、
前記回折格子が受光面側に配置されたイメージセンサと、
前記回折格子と前記イメージセンサとの間に配置された変調器と、
を備え、
前記変調器は、
前記回折格子から前記イメージセンサに向かう光線が入射され、前記イメージセンサの受光面上における前記光線の波長ごとの
投影される回折像が曲がるように、前記イメージセンサに向けて出射する前記光線の進行方向を変更する
撮像装置。
【請求項7】
前記回折格子と前記変調器との間に配置された変調レンズをさらに備え、
前記変調器は、前記変調レンズの焦点位置に配置されている
請求項6に記載の撮像装置。
【請求項8】
前記変調器と前記イメージセンサとの間に配置された結像レンズをさらに備え、
前記結像レンズは、前記変調器が出射した前記光線を前記受光面上に結像する
請求項7に記載の撮像装置。
【請求項9】
前記回折格子と前記イメージセンサとの間に配置された結像レンズをさらに備え、
前記変調器は、前記結像レンズの焦点面に位置するように、前記イメージセンサの受光面側に配置されている
請求項6に記載の撮像装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、変調器及び撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、物体の組成解析手法として分光計測手法が知られている。分光計測手法とは、物体からの放射光あるいは反射光あるいは透過光を解析することで、その物体の組成(元素、分子構造など)を解析する手法である。
【0003】
物体からの放射光や反射光あるいは透過光の光波長成分は、物体の組成により異なる。そこで、この波長成分を解析することで、物体の組成を解析することができる。一般に、波長ごとの分量を示すデータを波長スペクトルと呼び、波長スペクトルを計測する処理を分光計測処理と呼ぶ。
【0004】
物体の表面の各点の組成を解析するためには、物体の空間情報と波長情報との対応データを取得することが必要となる。物体の空間情報と波長情報との対応データを1回の処理、すなわち分光計測装置による1回の撮影処理のみで、物体の空間情報と波長情報との対応データを取得する方式としてスナップショット方式が知られている。スナップショット方式を適用した分光計測装置は、複数のレンズやスリット(視野絞り)、分光素子等からなる光学系とセンサの組み合わせによって構成される。分光計測装置の空間分解能や波長分解能は、これらの光学系やセンサの構成によって決定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【非特許文献】
【0006】
【文献】Habel, R., Kudenov, M., Wimmer, M.: Practical spectral photography. Computer Graphics Forum (Proceedings EUROGRAPHICS 2012) 31(2), 449-458 (2012)
【文献】Tebow, Christopher P.; Dereniak, Eustace L.; Garrood, Dennis; Dorschner, Terry A.; Volin, Curtis E.: Tunable snapshot imaging spectrometer. Proceedings of the SPIE, Volume 5159, p. 64-72 (2004)
【文献】Dwight JG, Tkaczyk TS.: Lenslet array tunable snapshot imaging spectrometer (LATIS) for hyperspectral fluorescence microscopy. Biomed Opt Express. 2017;8:1950-64
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ここで、分光計測装置に一般的に使用されるプリズムや回折格子などの分光素子は、入射した光をその波長に従って1軸又は2軸方向に分散する。一方で、分光像を撮像するためのイメージセンサの撮像領域は、通常、矩形の領域である。これは、イメージセンサには分光像が入射されない撮像領域が多く存在していることを意味している。
【0008】
このように、従来の一般的な分光素子では、分光計測装置などに用いられるイメージセンサの撮像領域を効率的に使用することが困難であった。
【0009】
そこで、本開示では、イメージセンサの撮像領域をより効率的に使用することを可能にする変調器、撮像装置及び設計方法を提案する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するために、本開示に係る一形態の変調器は、回折格子とイメージセンサとの間に設けられる変調器であって、前記回折格子から前記イメージセンサに向かう光線が入射され、前記イメージセンサの受光面上における前記光線の波長ごとの回折像の記録方向が曲がるように、前記イメージセンサに向けて出射する前記光線の進行方向を変更する。
【0011】
また、本開示に係る一形態の撮像装置は、回折格子と、前記回折格子が受光面側に配置されたイメージセンサと、前記回折格子と前記イメージセンサとの間に配置された変調器と、を備え、前記変調器は、前記回折格子から前記イメージセンサに向かう光線が入射され、前記イメージセンサの受光面上における前記光線の波長ごとの回折像の記録方向が曲がるように、前記イメージセンサに向けて出射する前記光線の進行方向を変更する。
【0012】
また、本開示に係る一形態の設計方法は、回折格子から入射した光線の進行方向を変更してイメージセンサに出射する変調器の設計方法であって、前記変調器の入射光線及び出射光線の空間における振る舞いを追跡すること、前記入射光線及び前記出射光線に基づいて変調器の面法線を決定すること、前記面法線を積分して前記変調器の形状を決定すること、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】光の種類と波長の関係について説明する図である。
【
図2】発光物体の分光計測例について説明する図である。
【
図3】ある食品の出力光の分光解析結果であるスペクトル強度解析結果の一例を示す図である。
【
図4】分光素子であるプリズムについて説明する図である。
【
図5】分光素子である解説格子について説明する図である。
【
図6】計測対象物の空間方向(XY)と波長方向(λ)の3次元からなるデータであるデータキューブの例について説明する図である。
【
図7】点計測方式(スペクトロメータ)の分光計測装置の概略構成例を示す図である。
【
図8】点計測方式の分光計測装置を用いて1回の撮影処理で取得されるデータの一例を示す図である。
【
図9】波長スキャン方式の分光計測装置の概略構成例を示す図である。
【
図10】波長スキャン方式の分光計測装置を用いて1回の撮影処理で取得されるデータの一例を示す図である。
【
図11】空間スキャン方式の分光計測装置の概略構成例を示す図である。
【
図12】空間スキャン方式の分光計測装置を用いて1回の撮影処理で取得されるデータの一例を示す図である。
【
図13】スナップショット方式の分光計測装置の概略構成例を示す図である。
【
図14】スナップショット方式の分光計測装置を用いて1回の撮影処理で取得されるデータの一例を示す図である。
【
図15】スナップショット方式の分光計測装置の変形例を示す図である。
【
図16】スナップショット方式におけるデータキューブ復元方法を説明するための図である。
【
図17】スリット型の回折格子による分光の原理を説明するための図である。
【
図18】格子型の回折格子で分光された光の像の一例を示す図である。
【
図19】入射光の波長と回折角度との関係を示す図である。
【
図20】スナップショット方式の課題を説明するための図である(その1)。
【
図21】スナップショット方式の課題を説明するための図である(その2)。
【
図22】格子間隔を制御することで波長分解能と空間分解能とを調節する方法における第1の課題を説明するための図である。
【
図23】格子間隔を制御することで波長分解能と空間分解能とを調節する方法における第2の課題を説明するための図である。
【
図24】受光面上における基本的な回折格子の投影像と実施形態に係る変調器を用いた場合の投影像との一例を示す図である。
【
図25】実施形態に係るスナップショット方式の分光計測装置の概略構成例を示す図である。
【
図26】実施形態に係る分光計測装置の変調器と画像データとの関係の一例を示す図である。
【
図27】スナップショット方式の従来の分光計測装置における光線を説明するための図である。
【
図28】実施形態に係る分光計測装置の配置例を説明するための図である。
【
図29】実施形態に係る変調器の設計方法の手順を示すフローチャートである。
【
図30】実施形態に係る変調器の設計方法の一例を説明するための図である。
【
図31】実施形態に係る分光計測装置のシミュレーション結果を示す図である。
【
図32】実施形態の変形例に係る分光計測装置の配置例を説明するための図である。
【
図33】実施形態の変形例に係る変調器の設計方法の手順を示すフローチャートである。
【
図34】本開示に係る技術が適用され得る移動体制御システムの一例である車両制御システムの概略的な構成例を示すブロック図である。
【
図36】本開示に係る技術(本技術)が適用され得る内視鏡手術システムの概略的な構成の一例を示す図である。
【
図37】
図36に示すカメラヘッド及びCCUの機能構成の一例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本開示の一実施形態について図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施形態において、同一の部位には同一の符号を付することにより重複する説明を省略する。
【0015】
また、以下に示す項目順序に従って本開示を説明する。
1.分光計測装置(システム)の概要について
2.スナップショット方式の課題について
3.実施形態
3.1 分光計測装置の概要
3.2 変調器の配置
3.3 変調器の設計例
3.4 シミュレーション結果
3.5 作用・効果
3.6 実施形態の変形例
3.7 実施形態の変形例に係る変調器の設計例
3.8 移動体への応用例
3.9 内視鏡手術システムへの応用例
【0016】
1.分光計測装置(システム)の概要について
まず、分光計測装置(システム)の概要について説明する。光は、例えば、赤外光(infrared radiation)、可視光(visible light)、紫外線(Ultraviolet)などが知られているが、これらの光は電磁波の一種であり、
図1に示すように光の種類によって異なる波長(振動周期)を持っている。
【0017】
可視光(visible light)の波長は約400nm~700nmの範囲であり、赤外光(infrared radiation)は、可視光(visible light)より波長が長く、一方、紫外線(Ultraviolet)は可視光(visible light)より波長が短いという特性を持つ。
【0018】
前述したように、物体からの放射光や反射光あるいは透過光は、物体の組成(元素、分子構造など)により光波長成分が異なり、この波長成分を解析することで物体の組成を解析することが可能となる。一般に、波長ごとの分量を示すデータを波長スペクトルと呼び、波長スペクトルを計測する処理を分光計測処理と呼ぶ。
【0019】
図2は、発光物体の分光計測例を示す図である。
図2には、太陽、電灯、ネオン、水素、水銀、ナトリウムから出力される光が、可視光の波長範囲(約400nm~700nm)のどの波長の光であるかを示している。出力のある領域が白っぽく表示され、出力の無い領域が黒く示されている。
図2は、太陽光、電灯や熱せられた各種物質からの出力光を分光計測した結果である。
【0020】
図2に示すように、太陽、電灯、ネオン、水素、水銀、ナトリウム、これらの各物体は、それぞれの物体固有の波長光を出力する。すなわち、物体が不明であっても、その物体からの光に含まれる波長成分を解析することで、その物体の組成を解析することが可能となる。
【0021】
例えば、ある加工食品の組成が不明である場合、その食品の出力光(放射光や反射光あるいは透過光)を解析することで、その食品を構成している物質を解析することが可能となる。
図3は、ある食品の出力光の分光解析結果であるスペクトル強度解析結果の一例を示す図である。この食品からは2種類の異なるスペクトル解析結果が得られている。
【0022】
このスペクトル強度解析結果と、予め様々な物質について解析済みのスペクトル強度解析結果データとを比較することで、物質Aと物質Bが何であるかを判定することが可能となり、食品の組成を解析することができる。
【0023】
上述のように、分光計測ができれば、計測対象物に関する様々な情報を取得することが可能となる。しかし、集光レンズとセンサを有する一般的なカメラでは、センサの各画素にすべての波長が入り混じった光が入射してしまうため、各波長単位の強度を解析することが困難となる。
【0024】
そこで、分光計測の観測系には、カメラに飛び込んでくる光から各波長の光を分離するための分光素子(分光デバイス)が設けられる。
【0025】
最も一般的に知られている分光素子としては、
図4に示すプリズム901がある。プリズム901に対して入射する光、すなわち入射光に含まれる様々な波長の光は、入射光の波長と、入射角度と、プリズム901の形状に対応した出射角でプリズム901から出射される。分光計測の観測系にはこのプリズム901のような分光素子が設けられ、波長単位の光をセンサで個別に受光可能とした構成を持つ。
【0026】
なお、屈折率nのプリズムによる分光において、プリズムによる光の進行方向の変化を示す式は、以下の式(1)で示すことができる。
【数1】
【0027】
なお、上記式(1)の各パラメータは、以下の通りである。
α:プリズムの頂角
θ1:プリズム入射面に対する入射角
θ2:プリズム出射面に対する出射角
φ1:プリズム入射面の屈折角
φ2:プリズム出射面の屈折角
δ:偏角(入射光と出射光との角度)
【0028】
ここで、スネルの法則(sinθ
j=nsinΦ
j)に従うと、上記式(1)は下記の式(2)のように書き換えることができる。
【数2】
【0029】
なお、上記式(2)において、nはプリズムの屈折率であり、屈折率nは波長に依存する。また、φ1はプリズム入射面の屈折角であり、プリズムの屈折率nとプリズム入射面に対する入射角θ1とに依存する。よって、偏角(入射光と出射光との角度)δは、入射角θ1と波長に依存する。
【0030】
また、
図5に示すように、光の波としての性質を利用した回折格子902による分光も可能である。回折格子902による光線の出射角(回折角度)βは以下の式(3)で示すことができる。
【数3】
なお、上記式(3)において、dは格子間隔、αは入射角、βは出射角、mは回折次数である。
【0031】
しかし、物体のある一点からの光の波長情報を解析したとしても、その一点の組成を解析することしかできない。すなわち、物体の表面の各点の組成を一回の観測により解析するためには、表面の各点からの光を全て解析することが必要となる。
【0032】
計測対象物の表面の各点の組成を解析するためには、計測対象物の空間方向(XY)と波長方向(λ)の3次元からなるデータを一回の観測で取得することが必要となる。
図6は、計測対象物の空間方向(XY)と波長方向(λ)の3次元からなるデータ、すなわちデータキューブの例を示している。
【0033】
図6に示すように、データキューブは、計測対象物の空間方向(XY)と、波長方向(λ)の3次元からなるデータであり、計測対象物の表面の各点の座標がXY座標で示され、各座標位置(x,y)の各波長光の強度(λ)が記録されたデータである。
図6に例示するデータキューブは、8×8×8の立方体データから構成されており、1つの立方体Dが、特定の位置(x,y)の特定波長(λ)の光強度を示すデータである。
【0034】
なお、
図6に示す立方体の数8×8×8は一例であり、分光計測装置の空間分解能や、波長分解能に応じてこの数は変動することになる。
【0035】
つづいて、
図6に示すようなデータキューブ、すなわち、計測対象物の空間方向(XY)と波長方向(λ)との3次元からなるデータを取得する既存の分光計測装置の例について説明する。
【0036】
計測対象物の空間方向(XY)と波長方向(λ)の3次元データを取得する既存の分光計測装置は、下記の4種類に分類される。
(a)点計測方式(スペクトロメータ)
(b)波長スキャン方式
(c)空間スキャン方式
(d)スナップショット方式
以下、これらの各方式の概要について説明する。
【0037】
(a)点計測方式(スペクトロメータ)
図7は、点計測方式(スペクトロメータ)の分光計測装置の概略構成例を示す図である。
図8は、点計測方式の分光計測装置を用いて1回の撮影処理で取得されるデータの一例を示す図である。
【0038】
図7に示すように、点計測方式の分光計測装置は、光源911と、スリット912と、プリズム913と、リニアセンサ914とを備え、計測対象900の1点から出た光を、分光素子であるプリズム913で分光し、その分散光を1方向にのみ素子が配置されているリニアセンサ914に投影する構成を備える。このような構成により、異なる波長光がリニアセンサ914上の異なる素子(画素)に記録される。
【0039】
点計測方式では、リニアセンサ914の各素子(画素)の値を読み取れることで、波長スペクトルが取得される。この点計測方式の特徴は、波長分解能がリニアセンサ914の素子サイズ(画素数)に依存することであり、素子の数(画素数)を増やせば増やすほど細かい波長情報を取得可能となることである。
【0040】
しかし、点計測方式では、1回の撮影処理で、計測対象900の1点から出た光を受光して解析する。したがって、
図8に示すように、1回の撮影処理では、計測対象900の空間方向(XY)のある一点のみの波長情報(λ)しか得ることができない。そのため、計測対象900の空間方向(XY)の様々な点の波長情報(λ)を得るためには、計測位置をずらしながら多数回の撮影と解析とを行う必要がある。
【0041】
(b)波長スキャン方式
図9は、波長スキャン方式の分光計測装置の概略構成例を示す図である。
図10は、波長スキャン方式の分光計測装置を用いて1回の撮影処理で取得されるデータの一例を示す図である。
【0042】
図9に示すように、波長スキャン方式の分光計測装置は、波長フィルタアレイ921とエリアセンサ(2次元イメージセンサ)923とを備え、エリアセンサ923の前に配置された異なる波長通過特性を持つ複数の光学フィルタ922を時間ごとに切り替えて撮影する。
【0043】
このような手順によれば、
図10に示すように、1回の撮影で複数の空間位置に対応する1つの波長の強度情報を取得することが可能である。そして、光学フィルタ922を切り替えて撮影することで、複数の異なる波長の強度情報を取得することが可能である。
【0044】
ただし、高い波長分解能を実現するには、大量の異なる光学フィルタ922を用意し、それらを切り替えて撮影する必要があるので、計測時間が長くなるという問題がある。また、光学フィルタ922の特性により、取得できない波長帯域が存在するという課題も存在する。
【0045】
(c)空間スキャン方式
図11は、空間スキャン方式の分光計測装置の概略構成例を示す図である。
図12は、空間スキャン方式の分光計測装置を用いて1回の撮影処理で取得されるデータの一例を示す図である。
【0046】
図11に示すように、空間スキャン方式の分光計測装置は、対物レンズ931と、スリット932と、コリメートレンズ933と、分光素子934と、結像レンズ935と、エリアセンサ936とを備え、分光素子(プリズム、回折格子など)934によって分光された計測対象900からの光に対して、空間の1方向をエリアセンサのX方向に、波長方向をエリアセンサのY方向に記録する。さらに、
図12に示すように、分光計測装置を計測対象900に対して残りの1方向に走査(スキャン)する。この処理により、先に
図6を参照して説明したデータキューブ、すなわち、計測対象900の空間方向(XY)と波長方向(λ)の3次元からなるデータキューブを取得することができる。
【0047】
この空間スキャン方式では高い空間分解能と波長分解能を実現できるが、スキャンするのに大型な装置が必要なうえ、スキャン処理時間が必要で計測時間が長くなるという課題が存在する。
【0048】
(d)スナップショット方式
図13は、スナップショット方式の分光計測装置の概略構成例を示す図である。
図14は、スナップショット方式の分光計測装置を用いて1回の撮影処理で取得されるデータの一例を示す図である。
【0049】
図13に示すように、スナップショット方式の分光計測装置は、対物レンズ941と、スリット942と、コリメートレンズ943と、回折格子型分光素子(以下、単に回折格子という)944と、結像レンズ945と、エリアセンサ946とを備え、計測対象900からの光を対物レンズ941で集光し、さらにコリメートレンズ943で平行光に変換し、回折格子944を透過させてエリアセンサ946の受光面上に投影する構成である。なお、受光面とは、イメージセンサ(固体撮像装置ともいう)におけるフォトダイオードなどの光電変換部が配列された面であってよい。
【0050】
このような構成により、計測対象900上の異なる点からの異なる波長成分の光がエリアセンサ946の受光面における異なる素子(画素)に記録される。
【0051】
このスナップショット方式は、1回の撮影で、
図6を参照して説明したデータキューブ、すなわち、
図14に示すような計測対象900の空間方向(XY)と波長方向(λ)の3次元からなるデータキューブを取得することができる。
【0052】
ただし、エリアセンサ946の受光面積は有限であり、また波長方向の情報が受光面上で重なり合って記録されるため、撮影後は信号処理によってデータキューブを復元する処理が必要となる。
【0053】
また、信号処理に用いられる各種係数は光学系の性能と連動しているため、光学系を固定、すなわち、センサと光学系との位置関係を固定して使用する必要があり、応用目的に合わせて波長と空間分解能とを調整することが困難であるという課題が存在する。
【0054】
なお、
図13に示すスナップショット方式の応用例として、
図15に例示するような、エリアセンサ946の受光面上に異なる透過帯域を持つ光学フィルタ947を空間的に配置することでデータキューブを取得する構成も提案されている。しかし、受光面積は有限であって、光学フィルタ947をエリアセンサ946の受光面上に装着することが必要となるため、光学フィルタ947の装着によりエリアセンサ946の空間分解能が低下するという問題がある。
【0055】
図7~
図14を参照して、計測対象物の空間方向(XY)と波長方向(λ)の3次元からなるデータを取得する既存の分光計測装置の例、すなわち、(a)点計測方式(スペクトロメータ)、(b)波長スキャン方式、(c)空間スキャン方式、(d)スナップショット方式、これら4種類の方式について説明した。
【0056】
これら4方式の中でも特に
図13及び
図14を参照して説明した(d)スナップショット方式は1回の撮影でデータキューブを取得できるため、利用価値が高い。
【0057】
さらに、波長分解能の調整が困難という課題を解決するには、センサとフィルタとが一体化されているセンサ構成よりも、既存の光学系に後から組み込むことのできる回折格子を用いた構成の方が好適である。
【0058】
そこで本開示では、回折格子を用いたスナップショット方式の分光計測装置であって、例えば、計算トモグラフィ撮像分光計(CTIS:Computed Tomography Imaging Spectrometer)を利用した分光計測装置について、以下に幾つか例を挙げて説明する。
【0059】
2.スナップショット方式の課題について
ここで、スナップショット方式におけるデータキューブの復元方法について、
図16を用いて説明する。
図16では、格子状の回折格子944(
図13参照)を備えるスナップショット方式の分光計測装置940で計測対象900を撮像した場合を例示する。
【0060】
図16に示すように、回折格子944を備える分光計測装置940で計測対象900を撮像(S901)した場合、その撮像画像951では、中央に位置する0次光の回折像を中心として、その上下左右方向と斜め方向との計8方向に、±1次以上の回折像が映し出されている。
【0061】
このような撮像画像951に対し、予め準備しておいた変調行列Hを用いるバイナリ行列演算処理を施すことで、データキューブgを復元することが可能である。具体的には、取得された撮像画像951を以下の式(4)に代入することで、データキューブgを復元することができる。なお、式(4)において、x、y及びλは撮像画像951(若しくは分光計測装置940の画素アレイ部)における画素のx座標、y座標及び波長λを示し、f(x,y,λ)は撮像画像951における画素(x,y,λ)の画素値を示している。
【数4】
【0062】
式(4)の解は、例えば、以下の式(5)を用いたEM(expectation-maximization)アルゴリズムによる最適化を利用することで求めることができる(S902)。それにより、水平面をXY座標系とし、縦方向を波長軸としたデータキューブ(g)952を得ることができる。なお、グラフ953は、データキューブ952における(x,y)画素の波長スペクトルを示している。
【数5】
【0063】
このようなスナップショット方式を適用した分光計則装置では、回折像を取得するイメージセンサのサイズ上の制約から、空間分解能と波長分解能との間でトレードオフの関係が発生してしまう。例えば、波長分解能を上げるために分散角を大きくして分散光の広がりを大きくした場合には、回折像の広がりも大きくなるため、広範囲の撮影ができず、空間分解能が低下してしまう。一方で、空間分解能を上げるために分散角を小さくした場合には、異なる波長の回折像の重なりが大きくなるため、波長分解能が低下してしまう。さらに、回折像が小さくなることによってイメージセンサの1つの画素に入射する分散光の波長範囲が大きくなることも、波長分解能を低下させる要因となる。
【0064】
これを、より具体的に説明する。
図17は、スリット型の回折格子による分光の原理を説明するための図である。
図18は、格子型の回折格子で分光された光の像の一例を示す図である。
図19は、入射光の波長と回折角度との関係を示す図である。
【0065】
図17に示すように、回折格子に入射した光(平面波とする)は、2つのスリットを通過して、球面波としてスクリーンに到達する。その際、一方のスリットを通過した光と他方のスリットを通過した光とには、光路長の差が生じる。そのため、スクリーンに転写された入射光の像には、光路長の差と入射光の波長λとスリットの間隔(格子間隔P)とに依存したパターンの光の濃淡(光強度の強弱)が発生する。
【0066】
これを、格子状の回折格子に応用すると、
図18の左図に示すように、回折格子に入射した入射光は、その波長λと、回折格子の格子間隔Pとに依存して、上述した式(3)で求まる異なる回折角度βで回折をする。なお、式(3)において、mは次数である。その結果、
図18の右図に示すように、回折格子を通過した光の像(回折像)は、0次光を中心として、その周囲に、±1次光、±2次光、…が配列した像となる。
【0067】
これは、格子間隔Pを固定した場合、波長λと回折角度βとの関係が、
図19のような線形の関係になることを意味している。なお、
図19において、直線P1、P2及びP3は、格子間隔P1、P2及びP3に対応し、格子間隔P1、P2及びP3は、P1<P2<P3の関係にある。
【0068】
このような関係から、格子間隔Pを小さくすると、回折角度βが大きくなる。それにより、
図20に例示するように、撮像画像960中の回折像961の広がりが大きくなるため、波長分解能を高めることが可能となる。一方で、格子間隔Pを大きくすると、回折角度βが小さくなる。それにより、
図21に例示するように、撮像画像960中の回折像962の広がりが小さくなるため、より広い範囲の撮像が可能となり、空間分解能を高めることが可能となる。
【0069】
しかしながら、単に格子間隔を制御することで波長分解能と空間分解能とを調節する方法では、以下のような課題が発生する。
【0070】
図22は、第1の課題を説明するための図である。
図22に示すように、格子間隔Pを小さくすると、回折角度βが観測されるすべての波長において大きくなる。そのため、回折像971の範囲が広がるものの、エリアセンサのセンササイズなどの設定によっては、回折像971がエリアセンサの観測可能範囲970から突出てしまい、正確な測定ができないという事象が発生し易くなる。これは、つまり計測したい波長範囲と波長分解能とは、お互いトレードオフの関係にあることを意味する。
【0071】
また、
図23は、第2の課題を説明するための図である。
図23に示すように、格子間隔Pを大きくすると、回折像全体の広がりが小さくなるため、空間分解能を高めることが可能となるが、その一方で、各波長の回折像981~985の重畳部分が増加するため、波長分解能が低下してしまう。これは、空間分解能と波長分解能とは、お互いトレードオフの関係にあることを意味する。なお、
図23では、理解のため、回折像981~985を横方向に微小にずらしているが、実際には縦方向に揃っていてよい。
【0072】
このように、従来の回折格子を用いたスナップショット方式の分光計測装置では、空間分解能と波長分解能とがトレードオフの関係にあるため、空間分解能を維持しつつ、高い波長分解能を実現することが困難であった。
【0073】
そこで以下の実施形態では、新たな変調器を提案することにより、観測可能波長範囲や空間分解能との間のトレードオフ関係を軽減することを可能にする。
【0074】
3.実施形態
つづいて、実施形態に係る変調器及び撮像装置について、図面を参照して詳細に説明する。なお、実施形態では、上述において
図13、
図14及び
図16を用いて説明した回折格子を用いたスナップショット方式の分光計測装置940をベースとしている。ただし、これに限定されず、回折格子を分光素子として使用する種々の光学装置に対して、本実施形態を適用することが可能である。
【0075】
3.1 分光計測装置の概要
図24は、受光面上における基本的な回折格子の投影像と実施形態に係る変調器を用いた場合の投影像との一例を示す図である。
図25は、実施形態に係るスナップショット方式の分光計測装置の概略構成例を示す図である。
図26は、実施形態に係る分光計測装置の変調器と画像データとの関係の一例を示す図である。
【0076】
スナップショット方式の分光計測装置940における分光素子では、
図24の左図に示すように、画像データ100は、回折像が波長(例えば、±1次光)によって、直線状に記録される。すなわち、回折像は、0次光を中心として、±1次光の直線状の像が放射状に記録される。この現象によって有限サイズのセンサ空間においては、像と像の間の重なり合いを調整することが困難であり、波長分解能の劣化の要因となる。このため、実施形態に係る分光計測装置940Aは、回折格子944からの出射光線を変調器によって再度曲げることで、
図24の右図に示す画像データ101のように、波長ごとの回折像の記録方向を変更する。なお、本実施形態では、説明を簡単化するため、変調器は、1次光の回折像を曲げる場合について説明するが、2次光以降の次光の回折像も、1次光と同様に曲げるように構成してもよい。
【0077】
分光計測装置940Aは、例えば、撮像装置に含まれる。分光計測装置940Aは、
図25に示すように、対物レンズ941と、スリット942と、コリメートレンズ943と、回折格子944と、変調レンズ948と、変調器300と、結像レンズ945と、エリアセンサ946とを備える。エリアセンサ946は、イメージセンサの一例である。
【0078】
変調レンズ948は、回折格子944と変調器300との間に設けられ、回折格子944の回折光線を波長ごとにまとめるためのレンズである。変調レンズ948は、焦点距離がfMとなっており、fMだけ離れた位置に焦点面を生成する。
【0079】
変調器300は、回折格子944とエリアセンサ946との間に設けられる。変調器300は、回折格子944を透過した光線がエリアセンサ946に向かう光路上に設けられている。実施形態では、変調器300は、光路上における変調レンズ948の焦点位置に配置されている。変調器300は、透過性部材によって外形が方形状に形成されている。透過性部材は、例えば、ガラス、合成樹脂、ポリカーボネート樹脂等の屈折率を有する部材を含む。変調器300の形状は、例えば、外形が円形、楕円形、多角形等の外形とすることができる。
【0080】
変調器300は、回折格子944からエリアセンサ946に向かう光線(回折光線)が入射される。変調器300は、スネルの法則により、入射した光線の進行方向を変化させる構成となっている。変調器300は、エリアセンサ946の受光面上における光線の波長ごとの回折像の記録方向が曲がるように、エリアセンサ946に向けて出射する光線の進行方向を変更する。すなわち、変調器300は、エリアセンサ946の受光面上の回折像の記録方向が曲がるように、光線の進行方向を変更する。
【0081】
例えば、
図26に示すように、変調器300は、画像データ100に示す回折像を投影する光線群L1が回折格子944から入射する。光線群L1は、0次光を中心として、±1次光の直線状の回折像が放射状に記録される光線の束である。変調器300は、画像データ101のような回折像のパターンを得るために、入射した光線群L1のうちのパターンに対応する波長の光線L11の進行方向を変更した光線L21を出射する。光線L21を含む光線群L2は、エリアセンサ946の受光面上に投影される。このとき、屈折率を有する変調器300は、入射面上の各点に入射する単一波長と単一進入角度を持つ光線L11に対して入射位置の面形状を設計することで、スネルの法則にしたがって光線L11の進行方向を変化させ、変調光線である光線L21を出射する。
【0082】
図26に示す一例では、変調器300は、回折格子944から入射される光線の波長のうち、エリアセンサ946の受光面上における記録方向が直線状になる波長の回折像が曲線となるように、光線の進行方向を変更する。変調器300は、0次光の回折像を変化させずに、1次光の回折像が変化するように、光線の進行方向を変更する。すなわち、変調器300は、1次光以降の次光の回折像を変化させたり、特定の次光の回折像を変化させたりすることができる。
【0083】
変調器300は、曲げた回折像がエリアセンサ946の受光面の内部に収まるように、光線の進行方向を変更する。例えば、変調器300は、
図26の画像データ101に示すように、1次光の回折像が受光面の内部に収まる曲線となるように、光線の進行方向を変更する。変調器300は、曲げた回折像が他の回折像との重畳を抑制するように、光線の進行方向を変更する。例えば、変調器300は、複数の1次光の回折像同士が重ならないように、光線の進行方向を変更する。
【0084】
本実施形態では、変調器300は、エリアセンサ946の受光面で曲げる回折像に対応した部分が凸状となるように、面形状が設計されている。変調器300の面形状の設計方法の一例については、後述する。
【0085】
図25に戻り、分光計測装置940Aの動作の一例について説明する。分光計測装置940Aは、計測対象900からの光を対物レンズ941で集光し、さらにスリット942を介してコリメートレンズ943で平行光に変換し、回折格子944を透過させる。分光計測装置940Aは、回折格子944を透過させた光線を変調レンズ948、変調器300で透過させることで、進行方向を変更させた光線を、結像レンズ945を介してエリアセンサ946の受光面上に投影する構成である。
【0086】
このような構成により、分光計測装置940Aは、計測対象900上の異なる点からの異なる波長成分の光がエリアセンサ946の受光面における異なる素子(画素)に記録する。分光計測装置940Aは、変調器300を備えることで、波長ごとの回折像の記録方向を直線から曲線に変更することができる。
【0087】
3.2 変調器の配置
分光計測装置940Aは、変調器300を用いて光線の進行方向を変更(変調)する場合、変調器300の設置位置が重要である。
図27を参照しながら、変調器300を備えない、従来の分光計測装置における光線の一例について説明する。
図27は、スナップショット方式の従来の分光計測装置における光線を説明するための図である。
【0088】
図27に示すように、従来の分光計測装置は、焦点距離がf
1の対物レンズ941と、焦点距離がf
2のコリメートレンズ943と、回折格子944と、焦点距離がf
3の結像レンズ945と、エリアセンサ946と、を備える。従来の分光計測装置は、対物レンズ941を光線群LFが通過している。従来の分光計測装置は、回折格子944と結像レンズ945との間では、部分PT1に示すように、回折光に混色があり、複数の角度光にも混色がある。このため、変調器300は、回折格子944と結像レンズ945との間に設ける場合、入射面上の一点には異なる波長と異なる進入角度を持つ複数の光線が集まるので、適切な変調を掛けることが困難である。また、従来の分光計測装置は、結像レンズ945とエリアセンサ946との間では、部分PT2に示すように、回折光に混色はないが、複数の角度光に混色がある。従来の分光計測装置は、エリアセンサ946の受光面の位置では回折光線が焦点に集光され、波長ごとに光線がまとめられる。
【0089】
よって、実施形態に係る分光計測装置940Aは、進入角度の範囲を狭めれば、変調器300の一点に入射する光線を単一波長、ほぼ単一進入角度にすることができ、上述のような変調を掛けることができるようになる。
【0090】
図28は、実施形態に係る分光計測装置940Aの配置例を説明するための図である。分光計測装置940Aは、上述のように回折格子944を通過した回折光線を波長ごとにまとめるために、
図28に示すように、変調レンズ948及び変調器300を光路OPに配置している。なお,
図28では、スリット942の記載を省略している。分光計測装置940Aは、光路OPにおいて、回折格子944の直後に、焦点距離がf
Mの変調レンズ948を配置し、変調レンズ948からf
Mだけ離れた位置で焦点面を生成する。分光計測装置940Aは、変調器300を変調レンズ938の焦点面に配置することで、光線群LFの光線の進行方向を波長ごとに変調する。分光計測装置940Aは、変調器300と結像レンズ945との距離がd
1、結像レンズ945とエリアセンサ946との距離がd
2となっている。d
2は、以下の式(6)で示すことができる。
【数6】
なお、上記式(6)において、f
3は、結像レンズ945の焦点距離である。
【0091】
分光計測装置940Aは、変調レンズ948の焦点面で変調器300が変調を行うことで、エリアセンサ946の受光面の位置に変調器300を配置して変調を行う場合と同様の効果を得ることができる。
【0092】
3.3 変調器の設計例
図29は、実施形態に係る変調器300の設計方法の手順を示すフローチャートである。
図30は、実施形態に係る変調器300の設計方法の一例を説明するための図である。
図29に示す設計方法は、スネルの法則を利用して、入射する光線群LFの進行方向を変化させる変調器300の設計方法である。設計方法は、例えば、コンピュータ、専用の電子機器等によって実行される。本実施形態では、設計方法は、コンピュータによって実行される場合について説明する。
【0093】
図29に示す設計方法では、コンピュータは、変調レンズ948の焦点距離を決定する(ステップS101)。コンピュータは、変調レンズ948からエリアセンサ946までの光線を追跡する(ステップS102)。例えば、コンピュータは、シミュレーション、アプリケーション等を実行することで、変調レンズ948からエリアセンサ946まで空間の中で、光線の振る舞いを追跡する。コンピュータは、
図30のR1に示すように、変調レンズ948からエリアセンサ946まで光線群LFの追跡結果を得る。
【0094】
図29に戻り、コンピュータは、変調レンズ948の焦点面への進入光線を入射光線として抽出する(ステップS103)。例えば、コンピュータは、
図28に示した変調レンズの焦点面に対する入射光線と、
図30のR2に示す受光面での必要な光線ヒット位置から算出される変調器300の出力光線とを元に、必要な変調器300の面法線をスネルの法則にしたがって算出する。光線ヒット位置は、例えば、
図30のR3に示すグラフにおいて、破線で示す非線形の部分を含む。
【0095】
図29に戻り、コンピュータは、受光面上で必要な光線ヒット位置に基づいて、変調器300からの出射光を決定する(ステップS104)。コンピュータは、入射光線と出射光線とに基づいて、変調器300の面法線を決定する(ステップS105)。コンピュータは、面法線を積分して変調器300の形状を決定する(ステップS106)。例えば、コンピュータは、
図30のR4に示すように、変調器300の本体301の一面である面形状310を決定する。面形状310は、例えば、本体301の入射面であり、光線の非線形に応じた部分が突出する形状になっている。なお、面形状310は、本体301の出射面としてもよいし、本体301の入射面及び出射面を組み合わせた面形状としてもよい。
【0096】
図29に戻り、コンピュータは、決定した形状の変調器300を用いた場合の光線の追跡結果に基づいて、受光面上における光線のヒット位置を算出する(ステップS107)。例えば、コンピュータは、シミュレーション、アプリケーション等を実行することで、変調レンズ948からエリアセンサ946まで空間の中で、決定した変調器300を用いた場合の光線の振る舞いを追跡する。
【0097】
コンピュータは、算出したヒット位置が設計位置と一致するか否かを判定する(ステップS108)。設計位置は、例えば、変調器300を用いた場合の設計上の受光面における光線のヒット位置を含む。コンピュータは、算出したヒット位置が設計位置と一致しないと判定した場合(ステップS108でNo)、変調器300の面形状が分光計測装置940Aに適していないので、処理を既に説明したステップS101に戻し、一連の手順をやり直す。また、コンピュータは、算出したヒット位置が設計位置と一致すると判定した場合(ステップS108でYes)、変調器300の面形状が分光計測装置940Aに適しているので、設計結果を記憶装置等に記憶し、
図29に示す手順を終了させる。
【0098】
本技術では、変調器300は、スネルの法則を利用して入射光線の進行方向を変化させる。設計方法は、
図29に示すように、まずは変調レンズ948からエリアセンサ946までの間の空間の中での光線の振る舞いを光線追跡で求める。次に、設計方法は、
図28中の変調レンズ948の焦点面に対する入射光線、
図30のR3の中の非線形の点のように、受光面での必要な光線ヒット位置から算出される変調器300の出力光線に基づいて、必要な変調器300の面法線をスネルの法則にしたがって算出する。設計方法は、最後に算出された面法線を積分し、必要な変調器300の面形状を生成する。これにより、変調器300の設計方法は、エリアセンサ946の受光面に曲げた屈折像を投影するのに適した面形状310を設計することができる。その結果、設計方法は、エリアセンサ946の撮像領域をより効率的に使用し、波長分解能を向上させることができる変調器300を提供することができる。
【0099】
3.4 シミュレーション結果
次に、本実施形態に係る変調器300を用いたスナップショット方式の分光計測装置460に対するシミュレーション結果について説明する。
図31は、実施形態に係る分光計測装置460のシミュレーション結果を示す図である。
【0100】
本シミュレーションは、
図31の左図の画像データ102のように、光線の波長ごとの回折そうの記録方向を曲線に変更する面形状310を有する変調器300を、分光計測装置460のシミュレーションを行う。シミュレーションは、入力データ510の異なる点からの異なる波長成分の光が、変調器300を介してエリアセンサ946の受光面に投影した結果が復元データ520として得られることを示している。
【0101】
入力データ510は、例えば、画素数が260×260、波長が301nmとなっている。復元データ520は、例えば、画素数が60×60、波長が30nmとなっている。復元データ520は、例えば、予め準備しておいた変調行列を用いるバイナリ行列演算処理を施すことで、復元されたデータである。グラフ531は、入力データ510における画素511の相対強度と波長λとの関係を示し、真値を示している。グラフ532は、復元データ520における画素521の相対強度と波長λとの関係を示している。グラフ531及びグラフ532は、2つのピーク値の差が50nmであることを示している。グラフ531とグラフ532と比較すると、類似しており、設計に問題がないことを示している。また、変調器300がある場合シミュレーション結果は、変調器300がない場合よりも波長分解能を大幅に改善することができることを示している。
【0102】
3.5 作用・効果
以上のように、本実施形態によれば、変調器300は、分光計測装置940Aの回折格子944とエリアセンサ946との間に設けられることで、回折格子944で回折された光線を、エリアセンサ946の受光面上における回折像を曲げることができる。これにより、変調器300は、エリアセンサ946の受光面上における光線の波長ごとの回折像を直線状の回折像よりも大きくすることができる。その結果、変調器300は、エリアセンサ946の撮像領域をより効率的に使用し、波長分解能を向上させることができる。
【0103】
変調器300は、回折格子944から入射される光線の波長のうち、エリアセンサ946の受光面上における記録方向が直線状になる波長の回折像が曲線となるように、光線の進行方向を変更することができる。その結果、変調器300は、特定の波長の回折像を大きくすることができるので、波長分解能をより一層向上させることができる。
【0104】
変調器300は、曲げた回折像がエリアセンサ946の受光面の内部に収まるように、回折格子944からの光線の進行方向を変更することができる。その結果、変調器300は、エリアセンサ946の受光面から回折像が外部に逸脱することなく、受光面を有効利用することができるので、波長分解能をより一層向上させることができる。
【0105】
変調器300は、エリアセンサ946の受光面において、曲げた回折像と他の回折像との重畳を抑制するように、回折格子944からの光線の進行方向を変更することができる。その結果、変調器300は、回折像同士の重畳を抑制することで、空間分解能と波長分解能との間の関係を軽減することができる。
【0106】
変調器300は、本体301が屈折率と一点に入射する単一波長及び単一入射角を含む光線とに基づく入射位置の形状に形成された入射面を有する。一点は、例えば、変調器300の設置面上で光線が集光する点である。その結果、変調器300は、入射面で集光された光線に変調を掛けることが可能となるで、波長分解能をより一層向上させることができる。
【0107】
分光計測装置940Aは、変調器300を備えることで、回折格子944で回折された光線を、エリアセンサ946の受光面上における回折像を曲げることができる。これにより、分光計測装置940Aは、エリアセンサ946の受光面上における光線の波長ごとの回折像を直線状の回折像よりも大きくすることができる。その結果、分光計測装置940Aは、変調器300を構成に設けることで、エリアセンサ946の受光領域をより効率的に使用し、波長分解能を向上させることができる。
【0108】
分光計測装置940Aは、光路上における回折格子44の後段に変調レンズ948を配置し、変調レンズ948の焦点位置に変調器300を配置することができる。これにより、分光計測装置940Aは、変調器300をエリアセンサ946の近傍に配置しなくても、エリアセンサ946の受光面に集光させる波長ごとの光線と同様の光線を、変調レンズ948によって変調器300に集光することができる。その結果、分光計測装置940Aは、波長ごとにまとめられた光線の進行方向を変調器300によって変更することができるので、波長分解能をより一層向上させることができる。
【0109】
3.6 実施形態の変形例
実施形態の変形例に係る分光計測装置について説明する。上述のように、従来の分光計測装置は、エリアセンサ946の受光面の位置では回折光線が焦点に集光され、波長ごとに光線がまとめられる。このため、実施形態の変形例では、上述した変調器300の配置を、分光計測装置940Aの配置から変更した分光計測装置940Bの一例について説明する。
【0110】
図32は、実施形態の変形例に係る分光計測装置940Bの配置例を説明するための図である。
図32に示すように、分光計測装置940Bは、上述の分光計測装置940Aと同様に、スナップショット方式の装置である。分光計測装置940Bは、焦点距離がf
1の対物レンズ941と、焦点距離がf
2のコリメートレンズ943と、回折格子944と、焦点距離がf
3の結像レンズ945と、変調器300と、エリアセンサ946と、を備える。すなわち、分光計測装置940Bは、上述の分光計測装置940Aの変調レンズ948を備えないので、構成の簡単化を図ることができる。
【0111】
変調器300は、結像レンズ945の焦点面に位置するように、エリアセンサ946の受光面側に配置されている。例えば、変調器300は、エリアセンサ946の受光面上、または受光面の近傍に配置することができる。
【0112】
変調器300は、結像レンズ945からエリアセンサ946に向かう、波長ごとにまとめられた光線(回折光線)が入射される。変調器300は、スネルの法則により、入射した光線の進行方向を変化させる構成となっている。変調器300は、エリアセンサ946の受光面上における光線の波長ごとの回折像の記録方向が曲がるように、エリアセンサ946に向けて出射する光線の進行方向を変更する。すなわち、変調器300は、エリアセンサ946の受光面上の回折像の記録方向が曲がるように、光線の進行方向を変更する。
【0113】
つづいて、分光計測装置940Bの動作の一例について説明する。分光計測装置940Bは、計測対象900からの光を対物レンズ941で集光し、さらにスリット942を介してコリメートレンズ943で平行光に変換し、回折格子944を透過させる。分光計測装置940Bは、回折格子944を透過させた光線を結像レンズ945で結像させ、変調器300に集光させる。分光計測装置940Bは、光線を変調器300で透過させることで、進行方向を変更させた光線をエリアセンサ946の受光面上に投影する。
【0114】
このような構成により、分光計測装置940Bは、計測対象900上の異なる点からの異なる波長成分の光がエリアセンサ946の受光面における異なる素子(画素)に記録する。分光計測装置940Bは、変調器300をエリアセンサ946の受光面側に配置しても、上述の分光計測装置940Aと同様に、波長ごとの回折像の記録方向を直線から曲線に変更することができる。また、分光計測装置940Bは、結像レンズ945の焦点面に位置するように、エリアセンサ946の受光面側に配置することで、上述の変調レンズ948を用いる必要がなくなる。このため、分光計測装置940Bは、分光計測装置940Aよりも装置構成を簡単化することができる。
【0115】
3.7 実施形態の変形例に係る変調器の設計例
図33は、実施形態の変形例に係る変調器300の設計方法の手順を示すフローチャートである。
図33に示す設計方法は、上述の
図29に示した設計方法を変形している。
【0116】
図33に示す設計方法では、コンピュータは、結像レンズ945からエリアセンサ946までの光線を追跡する(ステップS111)。例えば、コンピュータは、シミュレーション、アプリケーション等を実行することで、結像レンズ945からエリアセンサ946まで空間の中で、光線の振る舞いを追跡する。
【0117】
コンピュータは、結像レンズ945の焦点面への進入光線を入射光線として抽出する(ステップS112)。例えば、コンピュータは、結像レンズ945の焦点面に対する入射光線と、エリアセンサ946の受光面での必要な光線ヒット位置から算出される変調器300の出力光線とを元に、必要な変調器300の面法線をスネルの法則にしたがって算出する。
【0118】
コンピュータは、受光面上で必要な光線ヒット位置に基づいて、変調器300からの出射光を決定する(ステップS104)。コンピュータは、入射光線と出射光線とに基づいて、変調器300の面法線を決定する(ステップS105)。コンピュータは、面法線を積分して変調器300の形状を決定する(ステップS106)。コンピュータは、変調器300の形状を決定した設計結果を記憶装置等に記憶し、
図33に示す手順を終了させる。
【0119】
図33に示す設計方法の手順では、分光計測装置940Bが変調レンズ948を備えていないため、
図29に示したステップS101の手順を不要とすることができる。また、
図33に示す設計方法の手順は、分光計測装置940Bが変調器300をエリアセンサ946の受光面の近傍に配置することで、
図29に示したステップS107からステップS108の手順を不要とすることができる。これにより、
図33に示す設計方法は、
図29に示す設計方法よりも手順を簡単化することができる。
【0120】
本技術では、変調器300は、スネルの法則を利用して入射光線の進行方向を変化させる。設計方法は、まずは結像レンズ945からエリアセンサ946までの間の空間の中での光線の振る舞いを光線追跡で求める。次に、設計方法は、結像レンズ945の焦点面に対する入射光線と、エリアセンサ946の受光面での必要な光線ヒット位置から算出される変調器300の出力光線に基づいて、必要な変調器300の面法線をスネルの法則にしたがって算出する。設計方法は、最後に算出された面法線を積分し、必要な変調器300の面形状を生成する。これにより、変調器300の設計方法は、エリアセンサ946の受光面に曲げた屈折像を投影するのに適した面形状310を設計することができる。その結果、設計方法は、エリアセンサ946の撮像領域をより効率的に使用し、波長分解能を向上させることができる変調器300を提供することができる。
【0121】
3.8 移動体への応用例
本開示に係る技術(本技術)は、様々な製品へ応用することができる。例えば、本開示に係る技術は、自動車、電気自動車、ハイブリッド電気自動車、自動二輪車、自転車、パーソナルモビリティ、飛行機、ドローン、船舶、ロボット等のいずれかの種類の移動体に搭載される装置として実現されてもよい。
【0122】
図34は、本開示に係る技術が適用され得る移動体制御システムの一例である車両制御システムの概略的な構成例を示すブロック図である。
【0123】
車両制御システム12000は、通信ネットワーク12001を介して接続された複数の電子制御ユニットを備える。
図34に示した例では、車両制御システム12000は、駆動系制御ユニット12010、ボディ系制御ユニット12020、車外情報検出ユニット12030、車内情報検出ユニット12040、及び統合制御ユニット12050を備える。また、統合制御ユニット12050の機能構成として、マイクロコンピュータ12051、音声画像出力部12052、及び車載ネットワークI/F(Interface)12053が図示されている。
【0124】
駆動系制御ユニット12010は、各種プログラムにしたがって車両の駆動系に関連する装置の動作を制御する。例えば、駆動系制御ユニット12010は、内燃機関又は駆動用モータ等の車両の駆動力を発生させるための駆動力発生装置、駆動力を車輪に伝達するための駆動力伝達機構、車両の舵角を調節するステアリング機構、及び、車両の制動力を発生させる制動装置等の制御装置として機能する。
【0125】
ボディ系制御ユニット12020は、各種プログラムにしたがって車体に装備された各種装置の動作を制御する。例えば、ボディ系制御ユニット12020は、キーレスエントリシステム、スマートキーシステム、パワーウィンドウ装置、あるいは、ヘッドランプ、バックランプ、ブレーキランプ、ウィンカー又はフォグランプ等の各種ランプの制御装置として機能する。この場合、ボディ系制御ユニット12020には、鍵を代替する携帯機から発信される電波又は各種スイッチの信号が入力され得る。ボディ系制御ユニット12020は、これらの電波又は信号の入力を受け付け、車両のドアロック装置、パワーウィンドウ装置、ランプ等を制御する。
【0126】
車外情報検出ユニット12030は、車両制御システム12000を搭載した車両の外部の情報を検出する。例えば、車外情報検出ユニット12030には、撮像部12031が接続される。車外情報検出ユニット12030は、撮像部12031に車外の画像を撮像させるとともに、撮像された画像を受信する。車外情報検出ユニット12030は、受信した画像に基づいて、人、車、障害物、標識又は路面上の文字等の物体検出処理又は距離検出処理を行ってもよい。
【0127】
撮像部12031は、光を受光し、その光の受光量に応じた電気信号を出力する光センサである。撮像部12031は、電気信号を画像として出力することもできるし、測距の情報として出力することもできる。また、撮像部12031が受光する光は、可視光であっても良いし、赤外線等の非可視光であっても良い。
【0128】
車内情報検出ユニット12040は、車内の情報を検出する。車内情報検出ユニット12040には、例えば、運転者の状態を検出する運転者状態検出部12041が接続される。運転者状態検出部12041は、例えば運転者を撮像するカメラを含み、車内情報検出ユニット12040は、運転者状態検出部12041から入力される検出情報に基づいて、運転者の疲労度合い又は集中度合いを算出してもよいし、運転者が居眠りをしていないかを判別してもよい。
【0129】
マイクロコンピュータ12051は、車外情報検出ユニット12030又は車内情報検出ユニット12040で取得される車内外の情報に基づいて、駆動力発生装置、ステアリング機構又は制動装置の制御目標値を演算し、駆動系制御ユニット12010に対して制御指令を出力することができる。例えば、マイクロコンピュータ12051は、車両の衝突回避あるいは衝撃緩和、車間距離に基づく追従走行、車速維持走行、車両の衝突警告、又は車両のレーン逸脱警告等を含むADAS(Advanced Driver Assistance System)の機能実現を目的とした協調制御を行うことができる。
【0130】
また、マイクロコンピュータ12051は、車外情報検出ユニット12030又は車内情報検出ユニット12040で取得される車両の周囲の情報に基づいて駆動力発生装置、ステアリング機構又は制動装置等を制御することにより、運転者の操作に拠らずに自律的に走行する自動運転等を目的とした協調制御を行うことができる。
【0131】
また、マイクロコンピュータ12051は、車外情報検出ユニット12030で取得される車外の情報に基づいて、ボディ系制御ユニット12020に対して制御指令を出力することができる。例えば、マイクロコンピュータ12051は、車外情報検出ユニット12030で検知した先行車又は対向車の位置に応じてヘッドランプを制御し、ハイビームをロービームに切り替える等の防眩を図ることを目的とした協調制御を行うことができる。
【0132】
音声画像出力部12052は、車両の搭乗者又は車外に対して、視覚的又は聴覚的に情報を通知することが可能な出力装置へ音声及び画像のうちの少なくとも一方の出力信号を送信する。
図34の例では、出力装置として、オーディオスピーカ12061、表示部12062及びインストルメントパネル12063が例示されている。表示部12062は、例えば、オンボードディスプレイ及びヘッドアップディスプレイの少なくとも一つを含んでいてもよい。
【0133】
図35は、撮像部12031の設置位置の例を示す図である。
【0134】
図35では、撮像部12031として、撮像部12101、12102、12103、12104、12105を有する。
【0135】
撮像部12101、12102、12103、12104、12105は、例えば、車両12100のフロントノーズ、サイドミラー、リアバンパ、バックドア及び車室内のフロントガラスの上部等の位置に設けられる。フロントノーズに備えられる撮像部12101及び車室内のフロントガラスの上部に備えられる撮像部12105は、主として車両12100の前方の画像を取得する。サイドミラーに備えられる撮像部12102、12103は、主として車両12100の側方の画像を取得する。リアバンパ又はバックドアに備えられる撮像部12104は、主として車両12100の後方の画像を取得する。車室内のフロントガラスの上部に備えられる撮像部12105は、主として先行車両又は、歩行者、障害物、信号機、交通標識又は車線等の検出に用いられる。
【0136】
なお、
図35には、撮像部12101ないし12104の撮影範囲の一例が示されている。撮像範囲12111は、フロントノーズに設けられた撮像部12101の撮像範囲を示し、撮像範囲12112,12113は、それぞれサイドミラーに設けられた撮像部12102,12103の撮像範囲を示し、撮像範囲12114は、リアバンパ又はバックドアに設けられた撮像部12104の撮像範囲を示す。例えば、撮像部12101ないし12104で撮像された画像データが重ね合わせられることにより、車両12100を上方から見た俯瞰画像が得られる。
【0137】
撮像部12101ないし12104の少なくとも1つは、距離情報を取得する機能を有していてもよい。例えば、撮像部12101ないし12104の少なくとも1つは、複数の撮像素子からなるステレオカメラであってもよいし、位相差検出用の画素を有する撮像素子であってもよい。
【0138】
例えば、マイクロコンピュータ12051は、撮像部12101ないし12104から得られた距離情報を基に、撮像範囲12111ないし12114内における各立体物までの距離と、この距離の時間的変化(車両12100に対する相対速度)を求めることにより、特に車両12100の進行路上にある最も近い立体物で、車両12100と略同じ方向に所定の速度(例えば、0km/h以上)で走行する立体物を先行車として抽出することができる。さらに、マイクロコンピュータ12051は、先行車の手前に予め確保すべき車間距離を設定し、自動ブレーキ制御(追従停止制御も含む)や自動加速制御(追従発進制御も含む)等を行うことができる。このように運転者の操作に拠らずに自律的に走行する自動運転等を目的とした協調制御を行うことができる。
【0139】
例えば、マイクロコンピュータ12051は、撮像部12101ないし12104から得られた距離情報を元に、立体物に関する立体物データを、2輪車、普通車両、大型車両、歩行者、電柱等その他の立体物に分類して抽出し、障害物の自動回避に用いることができる。例えば、マイクロコンピュータ12051は、車両12100の周辺の障害物を、車両12100のドライバが視認可能な障害物と視認困難な障害物とに識別する。そして、マイクロコンピュータ12051は、各障害物との衝突の危険度を示す衝突リスクを判断し、衝突リスクが設定値以上で衝突可能性がある状況であるときには、オーディオスピーカ12061や表示部12062を介してドライバに警報を出力することや、駆動系制御ユニット12010を介して強制減速や回避操舵を行うことで、衝突回避のための運転支援を行うことができる。
【0140】
撮像部12101ないし12104の少なくとも1つは、赤外線を検出する赤外線カメラであってもよい。例えば、マイクロコンピュータ12051は、撮像部12101ないし12104の撮像画像中に歩行者が存在するか否かを判定することで歩行者を認識することができる。かかる歩行者の認識は、例えば赤外線カメラとしての撮像部12101ないし12104の撮像画像における特徴点を抽出する手順と、物体の輪郭を示す一連の特徴点にパターンマッチング処理を行って歩行者か否かを判別する手順によって行われる。マイクロコンピュータ12051が、撮像部12101ないし12104の撮像画像中に歩行者が存在すると判定し、歩行者を認識すると、音声画像出力部12052は、当該認識された歩行者に強調のための方形輪郭線を重畳表示するように、表示部12062を制御する。また、音声画像出力部12052は、歩行者を示すアイコン等を所望の位置に表示するように表示部12062を制御してもよい。
【0141】
以上、本開示に係る技術が適用され得る車両制御システムの一例について説明した。本開示に係る技術は、以上説明した構成のうち、撮像部12031等に適用され得る。具体的には、分光計測装置940Aは、撮像部12031等に適用することができる。撮像部12031に本開示に係る技術を適用することにより、波長分解能を向上させることができるため、車外の情報の検出精度を向上させることができる。
【0142】
3.9 内視鏡手術システムへの応用例
本開示に係る技術(本技術)は、様々な製品へ応用することができる。例えば、本開示に係る技術は、内視鏡手術システムに適用されてもよい。
【0143】
図36は、本開示に係る技術(本技術)が適用され得る内視鏡手術システムの概略的な構成の一例を示す図である。
【0144】
図36では、術者(医師)11131が、内視鏡手術システム11000を用いて、患者ベッド11133上の患者11132に手術を行っている様子が図示されている。図示するように、内視鏡手術システム11000は、内視鏡11100と、気腹チューブ11111やエネルギー処置具11112等の、その他の術具11110と、内視鏡11100を支持する支持アーム装置11120と、内視鏡下手術のための各種の装置が搭載されたカート11200と、から構成される。
【0145】
内視鏡11100は、先端から所定の長さの領域が患者11132の体腔内に挿入される鏡筒11101と、鏡筒11101の基端に接続されるカメラヘッド11102と、から構成される。図示する例では、硬性の鏡筒11101を有するいわゆる硬性鏡として構成される内視鏡11100を図示しているが、内視鏡11100は、軟性の鏡筒を有するいわゆる軟性鏡として構成されてもよい。
【0146】
鏡筒11101の先端には、対物レンズが嵌め込まれた開口部が設けられている。内視鏡11100には光源装置11203が接続されており、当該光源装置11203によって生成された光が、鏡筒11101の内部に延設されるライトガイドによって当該鏡筒の先端まで導光され、対物レンズを介して患者11132の体腔内の観察対象に向かって照射される。なお、内視鏡11100は、直視鏡であってもよいし、斜視鏡又は側視鏡であってもよい。
【0147】
カメラヘッド11102の内部には光学系及び撮像素子が設けられており、観察対象からの反射光(観察光)は当該光学系によって当該撮像素子に集光される。当該撮像素子によって観察光が光電変換され、観察光に対応する電気信号、すなわち観察像に対応する画像信号が生成される。当該画像信号は、RAWデータとしてカメラコントロールユニット(CCU: Camera Control Unit)11201に送信される。
【0148】
CCU11201は、CPU(Central Processing Unit)やGPU(Graphics Processing Unit)等によって構成され、内視鏡11100及び表示装置11202の動作を統括的に制御する。さらに、CCU11201は、カメラヘッド11102から画像信号を受け取り、その画像信号に対して、例えば現像処理(デモザイク処理)等の、当該画像信号に基づく画像を表示するための各種の画像処理を施す。
【0149】
表示装置11202は、CCU11201からの制御により、当該CCU11201によって画像処理が施された画像信号に基づく画像を表示する。
【0150】
光源装置11203は、例えばLED(light emitting diode)等の光源から構成され、術部等を撮影する際の照射光を内視鏡11100に供給する。
【0151】
入力装置11204は、内視鏡手術システム11000に対する入力インタフェースである。ユーザは、入力装置11204を介して、内視鏡手術システム11000に対して各種の情報の入力や指示入力を行うことができる。例えば、ユーザは、内視鏡11100による撮像条件(照射光の種類、倍率及び焦点距離等)を変更する旨の指示等を入力する。
【0152】
処置具制御装置11205は、組織の焼灼、切開又は血管の封止等のためのエネルギー処置具11112の駆動を制御する。気腹装置11206は、内視鏡11100による視野の確保及び術者の作業空間の確保の目的で、患者11132の体腔を膨らめるために、気腹チューブ11111を介して当該体腔内にガスを送り込む。レコーダ11207は、手術に関する各種の情報を記録可能な装置である。プリンタ11208は、手術に関する各種の情報を、テキスト、画像又はグラフ等各種の形式で印刷可能な装置である。
【0153】
なお、内視鏡11100に術部を撮影する際の照射光を供給する光源装置11203は、例えばLED、レーザ光源又はこれらの組み合わせによって構成される白色光源から構成することができる。RGBレーザ光源の組み合わせにより白色光源が構成される場合には、各色(各波長)の出力強度及び出力タイミングを高精度に制御することができるため、光源装置11203において撮像画像のホワイトバランスの調整を行うことができる。また、この場合には、RGBレーザ光源それぞれからのレーザ光を時分割で観察対象に照射し、その照射タイミングに同期してカメラヘッド11102の撮像素子の駆動を制御することにより、RGBそれぞれに対応した画像を時分割で撮像することも可能である。当該方法によれば、当該撮像素子にカラーフィルタを設けなくても、カラー画像を得ることができる。
【0154】
また、光源装置11203は、出力する光の強度を所定の時間ごとに変更するようにその駆動が制御されてもよい。その光の強度の変更のタイミングに同期してカメラヘッド11102の撮像素子の駆動を制御して時分割で画像を取得し、その画像を合成することにより、いわゆる黒つぶれ及び白とびのない高ダイナミックレンジの画像を生成することができる。
【0155】
また、光源装置11203は、特殊光観察に対応した所定の波長帯域の光を供給可能に構成されてもよい。特殊光観察では、例えば、体組織における光の吸収の波長依存性を利用して、通常の観察時における照射光(すなわち、白色光)に比べて狭帯域の光を照射することにより、粘膜表層の血管等の所定の組織を高コントラストで撮影する、いわゆる狭帯域光観察(Narrow Band Imaging)が行われる。あるいは、特殊光観察では、励起光を照射することにより発生する蛍光により画像を得る蛍光観察が行われてもよい。蛍光観察では、体組織に励起光を照射し当該体組織からの蛍光を観察すること(自家蛍光観察)、又はインドシアニングリーン(ICG)等の試薬を体組織に局注するとともに当該体組織にその試薬の蛍光波長に対応した励起光を照射し蛍光像を得ること等を行うことができる。光源装置11203は、このような特殊光観察に対応した狭帯域光及び/又は励起光を供給可能に構成され得る。
【0156】
図37は、
図36に示すカメラヘッド11102及びCCU11201の機能構成の一例を示すブロック図である。
【0157】
カメラヘッド11102は、レンズユニット11401と、撮像部11402と、駆動部11403と、通信部11404と、カメラヘッド制御部11405と、を有する。CCU11201は、通信部11411と、画像処理部11412と、制御部11413と、を有する。カメラヘッド11102とCCU11201とは、伝送ケーブル11400によって互いに通信可能に接続されている。
【0158】
レンズユニット11401は、鏡筒11101との接続部に設けられる光学系である。鏡筒11101の先端から取り込まれた観察光は、カメラヘッド11102まで導光され、当該レンズユニット11401に入射する。レンズユニット11401は、ズームレンズ及びフォーカスレンズを含む複数のレンズが組み合わされて構成される。
【0159】
撮像部11402を構成する撮像素子は、1つ(いわゆる単板式)であってもよいし、複数(いわゆる多板式)であってもよい。撮像部11402が多板式で構成される場合には、例えば各撮像素子によってRGBそれぞれに対応する画像信号が生成され、それらが合成されることによりカラー画像が得られてもよい。あるいは、撮像部11402は、3D(dimensional)表示に対応する右目用及び左目用の画像信号をそれぞれ取得するための1対の撮像素子を有するように構成されてもよい。3D表示が行われることにより、術者11131は術部における生体組織の奥行きをより正確に把握することが可能になる。なお、撮像部11402が多板式で構成される場合には、各撮像素子に対応して、レンズユニット11401も複数系統設けられ得る。
【0160】
また、撮像部11402は、必ずしもカメラヘッド11102に設けられなくてもよい。例えば、撮像部11402は、鏡筒11101の内部に、対物レンズの直後に設けられてもよい。
【0161】
駆動部11403は、アクチュエータによって構成され、カメラヘッド制御部11405からの制御により、レンズユニット11401のズームレンズ及びフォーカスレンズを光軸に沿って所定の距離だけ移動させる。これにより、撮像部11402による撮像画像の倍率及び焦点が適宜調整され得る。
【0162】
通信部11404は、CCU11201との間で各種の情報を送受信するための通信装置によって構成される。通信部11404は、撮像部11402から得た画像信号をRAWデータとして伝送ケーブル11400を介してCCU11201に送信する。
【0163】
また、通信部11404は、CCU11201から、カメラヘッド11102の駆動を制御するための制御信号を受信し、カメラヘッド制御部11405に供給する。当該制御信号には、例えば、撮像画像のフレームレートを指定する旨の情報、撮像時の露出値を指定する旨の情報、並びに/又は撮像画像の倍率及び焦点を指定する旨の情報等、撮像条件に関する情報が含まれる。
【0164】
なお、上記のフレームレートや露出値、倍率、焦点等の撮像条件は、ユーザによって適宜指定されてもよいし、取得された画像信号に基づいてCCU11201の制御部11413によって自動的に設定されてもよい。後者の場合には、いわゆるAE(Auto Exposure)機能、AF(Auto Focus)機能及びAWB(Auto White Balance)機能が内視鏡11100に搭載されていることになる。
【0165】
カメラヘッド制御部11405は、通信部11404を介して受信したCCU11201からの制御信号に基づいて、カメラヘッド11102の駆動を制御する。
【0166】
通信部11411は、カメラヘッド11102との間で各種の情報を送受信するための通信装置によって構成される。通信部11411は、カメラヘッド11102から、伝送ケーブル11400を介して送信される画像信号を受信する。
【0167】
また、通信部11411は、カメラヘッド11102に対して、カメラヘッド11102の駆動を制御するための制御信号を送信する。画像信号や制御信号は、電気通信や光通信等によって送信することができる。
【0168】
画像処理部11412は、カメラヘッド11102から送信されたRAWデータである画像信号に対して各種の画像処理を施す。
【0169】
制御部11413は、内視鏡11100による術部等の撮像、及び、術部等の撮像により得られる撮像画像の表示に関する各種の制御を行う。例えば、制御部11413は、カメラヘッド11102の駆動を制御するための制御信号を生成する。
【0170】
また、制御部11413は、画像処理部11412によって画像処理が施された画像信号に基づいて、術部等が映った撮像画像を表示装置11202に表示させる。この際、制御部11413は、各種の画像認識技術を用いて撮像画像内における各種の物体を認識してもよい。例えば、制御部11413は、撮像画像に含まれる物体のエッジの形状や色等を検出することにより、鉗子等の術具、特定の生体部位、出血、エネルギー処置具11112の使用時のミスト等を認識することができる。制御部11413は、表示装置11202に撮像画像を表示させる際に、その認識結果を用いて、各種の手術支援情報を当該術部の画像に重畳表示させてもよい。手術支援情報が重畳表示され、術者11131に提示されることにより、術者11131の負担を軽減することや、術者11131が確実に手術を進めることが可能になる。
【0171】
カメラヘッド11102及びCCU11201を接続する伝送ケーブル11400は、電気信号の通信に対応した電気信号ケーブル、光通信に対応した光ファイバ、又はこれらの複合ケーブルである。
【0172】
ここで、図示する例では、伝送ケーブル11400を用いて有線で通信が行われていたが、カメラヘッド11102とCCU11201との間の通信は無線で行われてもよい。
【0173】
以上、本開示に係る技術が適用され得る内視鏡手術システムの一例について説明した。本開示に係る技術は、以上説明した構成のうち、撮像部11402に適用され得る。撮像部11402に本開示に係る技術を適用することにより、より鮮明な術部画像を得ることができるため、術者が術部を確実に確認することが可能になる。
【0174】
なお、ここでは、一例として内視鏡手術システムについて説明したが、本開示に係る技術は、その他、例えば、顕微鏡手術システム等に適用されてもよい。
【0175】
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示の技術的範囲は、上述の各実施形態そのままに限定されるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。また、異なる実施形態及び変形例にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【0176】
また、本明細書に記載された各実施形態における効果はあくまで例示であって限定されるものでは無く、他の効果があってもよい。
【0177】
さらに、上述した各実施形態は、それぞれ単独で使用されてもよいし、他の実施形態と組み合わせて使用されてもよい。
【0178】
上述した実施形態では、変調器300は、回折像の記録方向を曲線状に曲げる場合について説明したが、これに限定されない。例えば、変調器300は、回折像の記録方向を、部分的に折り曲げたり、異なる方向に曲げたり、ジグザグに曲げたりすることができる。
【0179】
なお、本技術は以下のような構成も取ることができる。
(1)
回折格子とイメージセンサとの間に設けられる変調器であって、
前記回折格子から前記イメージセンサに向かう光線が入射され、前記イメージセンサの受光面上における前記光線の波長ごとの回折像の記録方向が曲がるように、前記イメージセンサに向けて出射する前記光線の進行方向を変更する
変調器。
(2)
前記回折格子から入射される前記光線の波長のうち、前記受光面上における記録方向が直線状になる波長の前記回折像が曲線となるように、前記光線の進行方向を変更する
前記(1)に記載の変調器。
(3)
曲げた前記回折像が前記受光面の内部に収まるように、前記光線の進行方向を変更する
前記(1)または(2)に記載の変調器。
(4)
曲げた前記回折像と他の前記回折像との重畳を抑制するように、前記光線の進行方向を変更する
前記(1)から(3)のいずれかに記載の変調器。
(5)
透過性部材によって形成された本体を備え、
前記本体は、前記透過性部材の屈折率と一点に入射する単一波長及び単一入射角を含む前記光線とに基づく入射位置の形状に形成された入射面を有する
前記(1)から(4)のいずれかに記載の変調器。
(6)
回折格子と、
前記回折格子が受光面側に配置されたイメージセンサと、
前記回折格子と前記イメージセンサとの間に配置された変調器と、
を備え、
前記変調器は、
前記回折格子から前記イメージセンサに向かう光線が入射され、前記イメージセンサの受光面上における前記光線の波長ごとの回折像の記録方向が曲がるように、前記イメージセンサに向けて出射する前記光線の進行方向を変更する
撮像装置。
(7)
前記回折格子と前記変調器との間に配置された変調レンズをさらに備え、
前記変調器は、前記変調レンズの焦点位置に配置されている
前記(6)に記載の撮像装置。
(8)
前記変調器と前記イメージセンサとの間に配置された結像レンズをさらに備え、
前記結像レンズは、前記変調器が出射した前記光線を前記受光面上に結像する
前記(6)または(7)に記載の撮像装置。
(9)
前記回折格子と前記イメージセンサとの間に配置された結像レンズをさらに備え、
前記変調器は、前記結像レンズの焦点面に位置するように、前記イメージセンサの受光面側に配置されている
前記(6)に記載の撮像装置。
(10)
回折格子から入射した光線の進行方向を変更してイメージセンサに出射する変調器の設計方法であって、
前記変調器の入射光線及び出射光線の空間における振る舞いを追跡すること、
前記入射光線及び前記出射光線に基づいて変調器の面法線を決定すること、
前記面法線を積分して前記変調器の形状を決定すること、
を含む設計方法。
【符号の説明】
【0180】
300 変調器
900 計測対象
901、913 プリズム
911 光源
912、932、942 スリット
914 リニアセンサ
921 波長フィルタアレイ
922、947 光学フィルタ
923、936、946 エリアセンサ
931、941 対物レンズ
933、943 コリメートレンズ
934 分光素子
940、940A、940B 分光計測装置
944 回折格子型分光素子(回折格子)
935、945 結像レンズ
948 変調レンズ