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特許7622657コイルユニット及びコイルユニットの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-20
(45)【発行日】2025-01-28
(54)【発明の名称】コイルユニット及びコイルユニットの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01F 38/14 20060101AFI20250121BHJP
   H01F 27/28 20060101ALI20250121BHJP
   H01F 41/04 20060101ALI20250121BHJP
   B60M 7/00 20060101ALN20250121BHJP
   B60L 5/00 20060101ALN20250121BHJP
   B60L 53/12 20190101ALN20250121BHJP
【FI】
H01F38/14
H01F27/28 K
H01F41/04 A
B60M7/00 X
B60L5/00 B
B60L53/12
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2022003677
(22)【出願日】2022-01-13
(65)【公開番号】P2023102922
(43)【公開日】2023-07-26
【審査請求日】2024-02-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000003643
【氏名又は名称】株式会社ダイフク
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】神吉 裕之
【審査官】右田 勝則
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-239168(JP,A)
【文献】特開2014-082339(JP,A)
【文献】特表2015-518271(JP,A)
【文献】特表2018-507671(JP,A)
【文献】特開2017-076704(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0174734(US,A1)
【文献】特開2013-089728(JP,A)
【文献】特開2011-155835(JP,A)
【文献】特開2017-220385(JP,A)
【文献】特開2021-027772(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 38/14
H01F 27/28
H01F 41/04
B60M 7/00
B60L 5/00
B60L 53/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持板と、前記支持板の支持面に沿って配置されたコイルと、モールド樹脂と、を備えたコイルユニットであって、
前記コイルは、前記支持面の法線方向に沿う法線方向視でそれぞれ環状に形成されていると共に、前記支持面に沿う特定の方向である第1方向に互いに隣接するように配置された第1コイル体及び第2コイル体を備え、
前記法線方向視で前記第1方向に直交する方向を第2方向として、
前記第1コイル体及び前記第2コイル体のそれぞれは、前記第1方向に互いに対向する部分に、前記第2方向の外側へ向かうに従って前記第1方向に互い離れる側へ向かうように形成された湾曲部を備え、
前記第1方向における前記第1コイル体の前記湾曲部と前記第2コイル体の前記湾曲部との間に、固定部材が配置され、
前記固定部材は、前記支持板に固定された固定部と、前記固定部から前記支持面に対して前記第1コイル体及び前記第2コイル体が配置されている側に延出するように配置された延出部と、を有し、
前記第1コイル体、前記第2コイル体、及び、前記延出部が、前記モールド樹脂に埋め込まれると共に、前記モールド樹脂と前記支持板とが一体的に接合されている、コイルユニット。
【請求項2】
前記第1コイル体及び前記第2コイル体のそれぞれが、絶縁被覆された線状導体を環状に巻回して形成され、
前記支持板が金属製であり、
前記固定部材がボルトであり、
前記固定部に形成された雄ねじが、前記支持板に形成された雌ねじに螺合して固定されている、請求項1に記載のコイルユニット。
【請求項3】
前記法線方向視における前記第1コイル体の中心位置と前記第2コイル体の中心位置とが、前記第2方向における同じ位置に配置され、
前記法線方向視における前記第1コイル体の外縁部と前記第2コイル体の外縁部とが、前記第2方向における同じ位置に配置されている、請求項1又は2に記載のコイルユニット。
【請求項4】
前記固定部材が複数設けられ、
複数の前記固定部材が、前記法線方向視における前記第1コイル体の中心位置と前記第2コイル体の中心位置とを結ぶ仮想線に対して線対称に配置されている、請求項1から3のいずれか一項に記載のコイルユニット。
【請求項5】
前記第1コイル体及び前記第2コイル体と前記支持板との間に磁性体で構成されたコアが配置され、
前記コアは、前記法線方向視で、前記第1コイル体の中心位置と前記第2コイル体の中心位置との双方に重なるように、前記第1方向に連続的に配置され、
前記コアは、前記支持面に接するように配置されている、請求項1から4のいずれか一項に記載のコイルユニット。
【請求項6】
支持板とコイルとモールド樹脂とを備えるコイルユニットの製造方法であって、
第1コイル体及び第2コイル体を備えた前記コイルを前記支持板の支持面に沿って配置するコイル配置工程と、固定部材を配置する固定部材配置工程と、前記コイル配置工程及び前記固定部材配置工程の後に実行され、樹脂を供給する樹脂供給工程と、を備え、
前記コイル配置工程では、前記第1コイル体及び前記第2コイル体を、前記支持面の法線方向に沿う法線方向視でそれぞれ環状に形成する共に、前記第1コイル体と前記第2コイル体とが前記支持面に沿う特定の方向である第1方向に互いに隣接するように配置し、
前記法線方向視で前記第1方向に直交する方向を第2方向とし、
前記第1コイル体及び前記第2コイル体のそれぞれの、前記第1方向に互いに対向する部分における、前記第2方向の外側へ向かうに従って前記第1方向に互い離れる側へ向かうように形成された部分を湾曲部として、
前記固定部材配置工程では、前記固定部材を、前記第1方向における前記第1コイル体の前記湾曲部と前記第2コイル体の前記湾曲部との間に配置し、前記固定部材の固定部を前記支持板に固定すると共に、前記固定部から延出する延出部を、前記支持面に対して前記第1コイル体及び前記第2コイル体が配置されている側に延出するように配置し、
前記樹脂供給工程では、前記第1コイル体、前記第2コイル体、及び、前記延出部が、前記樹脂に埋め込まれるように、前記支持板の前記支持面に隣接する領域に対して前記樹脂を供給する、コイルユニットの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、支持板と、前記支持板の支持面に沿って配置されたコイルと、モールド樹脂と、を備えたコイルユニット、及び、コイルユニットの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許第5958423号公報(特許文献1)には、バッテリが搭載されたフォークリフトの非接触給電に用いるコイルユニットが開示されている。以下、背景技術の説明において括弧内に示される符号は、特許文献1のものである。
【0003】
特許文献1に開示された技術では、床板(5)と側板(8)との内側に空間を形成し、この空間に、コイル(9、10)とフェライト(7)とを配置すると共に樹脂(17)を注入している。これにより、床板(5)、側板(8)、コイル(9、10)、及びフェライト(7)が、樹脂(17)により一体化されて、コイルユニットを構成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第5958423号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示された技術では、コイル(9、10)、フェライト(7)、及び樹脂(17)を配置するための空間を形成するために、床板(5)や側板(8)などの空間形成部材を用いており、これら床板(5)と側板(8)とは、完成後のコイルユニットの一部になる。そのため、コイルユニットを構成する部品点数が多くなり、高コスト化の要因になるという問題があった。
【0006】
上記実状に鑑みて、コイルユニットを構成する各部材を適切に一体化できると共に、低コスト化を図り易いコイルユニットの実現が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
支持板と、前記支持板の支持面に沿って配置されたコイルと、モールド樹脂と、を備えたコイルユニットであって、
前記コイルは、前記支持面の法線方向に沿う法線方向視でそれぞれ環状に形成されていると共に、前記支持面に沿う特定の方向である第1方向に互いに隣接するように配置された第1コイル体及び第2コイル体を備え、
前記法線方向視で前記第1方向に直交する方向を第2方向として、
前記第1コイル体及び前記第2コイル体のそれぞれは、前記第1方向に互いに対向する部分に、前記第2方向の外側へ向かうに従って前記第1方向に互い離れる側へ向かうように形成された湾曲部を備え、
前記第1方向における前記第1コイル体の前記湾曲部と前記第2コイル体の前記湾曲部との間に、固定部材が配置され、
前記固定部材は、前記支持板に固定された固定部と、前記固定部から前記支持面に対して前記第1コイル体及び前記第2コイル体が配置されている側に延出するように配置された延出部と、を有し、
前記第1コイル体、前記第2コイル体、及び、前記延出部が、前記モールド樹脂に埋め込まれると共に、前記モールド樹脂と前記支持板とが一体的に接合されている。
【0008】
従来のような、コイルやモールド樹脂を配置する空間を形成するための空間形成部材を用いる場合には、空間形成部材を含む各部材がモールド樹脂と接合されるため、各部材を適切に一体化することができる。しかしながら、そのような空間形成部材を用いらずにコイルユニットを形成する場合には、モールド樹脂と当該モールド樹脂に接する部材とを適切に一体化する必要がある。本構成によれば、固定部材の固定部が支持板に固定されていると共に固定部材の延出部がモールド樹脂に埋め込まれるため、モールド樹脂と支持板とを適切に一体化することができ、ひいては、モールド樹脂に埋め込まれた第1コイル体及び第2コイル体を支持板に適切に一体化することができる。更に、本構成によれば、固定部材が第1方向における第1コイル体の湾曲部と第2コイル体の湾曲部との間のデッドスペースに配置されているため、コイルユニットの寸法の拡大を抑制しつつ、モールド樹脂と支持板との一体化を適切に行うことができる。以上のように、本構成によれば、コイルユニットを構成する各部材を適切に一体化できると共に、低コスト化を図り易いコイルユニットを実現することができる。
【0009】
支持板とコイルとモールド樹脂とを備えるコイルユニットの製造方法であって、
第1コイル体及び第2コイル体を備えた前記コイルを前記支持板の支持面に沿って配置するコイル配置工程と、固定部材を配置する固定部材配置工程と、前記コイル配置工程及び前記固定部材配置工程の後に実行され、樹脂を供給する樹脂供給工程と、を備え、
前記コイル配置工程では、前記第1コイル体及び前記第2コイル体を、前記支持面の法線方向に沿う法線方向視でそれぞれ環状に形成する共に、前記第1コイル体と前記第2コイル体とが前記支持面に沿う特定の方向である第1方向に互いに隣接するように配置し、
前記法線方向視で前記第1方向に直交する方向を第2方向とし、
前記第1コイル体及び前記第2コイル体のそれぞれの、前記第1方向に互いに対向する部分における、前記第2方向の外側へ向かうに従って前記第1方向に互い離れる側へ向かうように形成された部分を湾曲部として、
前記固定部材配置工程では、前記固定部材を、前記第1方向における前記第1コイル体の前記湾曲部と前記第2コイル体の前記湾曲部との間に配置し、前記固定部材の固定部を前記支持板に固定すると共に、前記固定部から延出する延出部を、前記支持面に対して前記第1コイル体及び前記第2コイル体が配置されている側に延出するように配置し、
前記樹脂供給工程では、前記第1コイル体、前記第2コイル体、及び、前記延出部が、前記樹脂に埋め込まれるように、前記支持板の前記支持面に隣接する領域に対して前記樹脂を供給する。
【0010】
本構成によれば、固定部材配置工程によって固定部材が固定部によって支持板に固定され、その後、樹脂供給工程によって固定部材の延出部を樹脂に埋め込むため、当該樹脂が硬化してなるモールド樹脂を支持板に対して適切に一体化することができる。これにより、モールド樹脂に埋め込まれた第1コイル体及び第2コイル体を支持板に対して適切に一体化することができる。更に、本構成によれば、固定部材が第1方向における第1コイル体の湾曲部と第2コイル体の湾曲部との間のデッドスペースに配置されているため、コイルユニットの寸法の拡大を抑制しつつ、モールド樹脂と支持板との一体化を適切に行うことができる。以上のように、本構成によれば、コイルユニットを構成する各部材を適切に一体化できると共に、低コスト化を図り易いコイルユニットを実現することができる。
【0011】
本開示に係る技術のさらなる特徴と利点は、図面を参照して記述する以下の例示的かつ非限定的な実施形態の説明によってより明確になるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】コイルユニットの使用例を示す図
図2】コイルユニットの法線方向視図
図3図2におけるIII-III断面図
図4】コイルユニットの製造工程を示すフローチャート
図5】コイルユニット100の製造途中を示す図
図6】その他の実施形態に係るコイルユニットの断面図
図7】その他の実施形態に係るコイルユニットの断面図
図8】その他の実施形態に係るコイルユニットの断面図
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、コイルユニットの実施形態について図面を参照して説明する。図1に示すように、コイルユニット100は、対象物に非接触で給電を行う非接触給電装置として用いられる。非接触給電装置では、受電側のコイルユニット100と送電側のコイルユニット100とが用いられ、送電側のコイルユニット100で発生した磁界により受電側のコイルユニット100に起電力を発生させる電磁誘導を利用して、対象物に非接触の状態で給電を行う。
【0014】
図1には、蓄電装置9vを搭載した物品搬送車Vが、充電ステーションSで充電を行っている例が示されている。
【0015】
物品搬送車Vは、無人搬送車(AGV:Automatic Guided Vehicle)であり、自動で物品(不図示)を搬送するように構成されている。物品搬送車Vは、蓄電装置9vに電気的に接続された受電側のコイルユニット100を備えている。
【0016】
充電ステーションSには、電源9sに電気的に接続された送電側のコイルユニット100が設けられている。詳細な図示は省略するが、電源9sは、例えば、商用電源に接続された高周波電源装置として構成されている。
【0017】
送電側のコイルユニット100は、電源9sからの電力によって磁界を発生させる。受電側のコイルユニット100は、送電側で発生した磁界を利用して起電力を発生させる。起電力により生じた電力は、蓄電装置9vに蓄えられ、物品搬送車Vの動作のために利用される。
【0018】
このように、コイルユニット100は、対象部9に電気的に接続されている。受電側のコイルユニット100は、対象部9としての蓄電装置9vに電気的に接続されており、送電側のコイルユニット100は、対象部9としての電源9sに電気的に接続されている。送電側のコイルユニット100と受電側のコイルユニット100とは、同様の構成となっている。以下、コイルユニット100の詳細な構成について説明する。
【0019】
図2及び図3に示すように、コイルユニット100は、支持板1と、支持板1の支持面F1に沿って配置されたコイル2と、モールド樹脂3と、を備えている。コイルユニット100は、更に、磁性体で構成されたコア5を備えている。また、コイルユニット100は、コイル2、コア5、及びモールド樹脂3を覆うカバー6を備えている。カバー6は支持板1に連結されており、支持板1とカバー6との間にカバー内空間60が形成されている。コイル2、コア5、及びモールド樹脂3は、カバー内空間60に配置されている。
【0020】
以下では、支持板1の支持面F1に沿う特定の方向を「第1方向X」とし、支持面F1の法線方向に沿う法線方向視で第1方向Xに直交する方向を「第2方向Y」とする。図2に示すように、本例では、支持板1は、法線方向視で長方形状(全体としておよそ長方形である形状を含む)に形成されており、その長辺に沿う方向を第1方向Xとしている。なお、図2は、法線方向視におけるコイルユニット100を示している。図3は、図2におけるIII-III断面で切断した断面図を示している。
【0021】
支持板1は、支持面F1において、コイル2、コア5、及びモールド樹脂3を支持している。本実施形態では、支持板1は金属製である。例えば、支持板1は、アルミニウム板を用いて構成されている。
【0022】
本実施形態では、支持板1は、金属製の板部材10(例えばアルミニウム板)と、絶縁シート11(電気絶縁シート)と、を備えている。
【0023】
支持板1には、後述する固定部材4が固定される。支持板1は、固定部材4が取り付けられる取付穴12を備えている。本例では、取付穴12には、雌ねじ12aが形成されている。
【0024】
絶縁シート11は、板部材10の表面に貼付されている。本例では、板部材10に貼付された絶縁シート11の面が、支持面F1となっている。すなわち、絶縁シート11の面(支持面F1)に、コイル2、コア5、及びモールド樹脂3が支持されている。
【0025】
コイル2は、支持面F1の法線方向に沿う法線方向視でそれぞれ環状に形成されていると共に、支持面F1に沿う特定の方向である第1方向Xに互いに隣接するように配置された第1コイル体21及び第2コイル体22を備えている。本実施形態では、第1コイル体21及び第2コイル体22のそれぞれが、絶縁被覆された線状導体を環状に巻回して形成されている。第1コイル体21及び第2コイル体22のそれぞれは、一部がカバー6の外部に引き出され、対象部9(受電側では蓄電装置9v、送電側では電源9s)に対して電気的に接続されている。
【0026】
図2に示すように、本実施形態では、法線方向視における第1コイル体21の中心位置(以下、「第1中心位置C1」と称する。)と第2コイル体22の中心位置(以下、「第2中心位置C2」と称する。)とが、第2方向Yにおける同じ位置に配置されている。
【0027】
第1中心位置C1は、法線方向視での、第1コイル体21の外縁によって囲まれる領域の中央部分に設定される位置である。例えば、第1中心位置C1は、法線方向視での、第1コイル体21の外縁によって囲まれる領域の重心位置(当該領域を図形として捉えた場合における図形の重心位置)とすることができる。また図示とは異なるが、例えば、第1中心位置C1は、法線方向視での、第1コイル体21によって囲まれた空隙部分の中心位置、或いは、重心位置とすることもできる。また、第2中心位置C2は、法線方向視での、第2コイル体22の外縁によって囲まれる領域の中央部分に設定される位置である。例えば、第2中心位置C2は、法線方向視での、第2コイル体22の外縁によって囲まれる領域の重心位置(当該領域を図形として捉えた場合における図形の重心位置)とすることができる。また図示とは異なるが、例えば、第2中心位置C2は、法線方向視での、第2コイル体22によって囲まれた空隙部分の中心位置、或いは、重心位置とすることもできる。
【0028】
本実施形態では、法線方向視における第1コイル体21の外縁部21E(以下、「第1外縁部21E」と称する。)と第2コイル体22の外縁部22E(以下、「第2外縁部22E」と称する。)とが、第2方向Yにおける同じ位置に配置されている。第1外縁部21Eは、第1コイル体21における第2方向Yの端部である。第2外縁部22Eは、第2コイル体22における第2方向Yの端部である。そして、第1コイル体21における第2方向Yの端部(第1外縁部21E)と第2コイル体22における第2方向Yの端部(第2外縁部22E)とが、第2方向Yにおける同じ位置に配置されている。これにより、第1コイル体21と第2コイル体22とが、第2方向Yにおける同じ領域内に収まっている。上記構成により、第1コイル体21及び第2コイル体22の大きさを確保しつつ、コイルユニット100の全体を小型化し易くなっている。
【0029】
第1コイル体21及び第2コイル体22のそれぞれは、第1方向Xに互いに対向する部分に、第2方向Yの外側へ向かうに従って第1方向Xに互い離れる側へ向かうように形成された湾曲部(210、220)を備えている。本実施形態では、第1コイル体21及び第2コイル体22のそれぞれは、第1方向Xに互いに対向する部分に、湾曲部(210、220)に連続して形成されると共に第2方向Yに沿って直線状に延びる直線部(211、221)を備えている。湾曲部(210、220)は、法線方向視で曲線状に形成された部分である。直線部(211、221)は、法線方向視で直線状に形成された部分である。以下、第1コイル体21の湾曲部210を「第1湾曲部210」と称し、第2コイル体22の湾曲部220を「第2湾曲部220」と称する。また、第1コイル体21の直線部211を「第1直線部211」と称し、第2コイル体22の直線部221を「第2直線部221」と称する。
【0030】
第1直線部211と第2直線部221とは、第1方向Xにおいて互いに対向している。第1直線部211は、第1コイル体21の各部のうち第2コイル体22に対して最も接近して配置された部分である。第2直線部221は、第2コイル体22の各部のうち第1コイル体21に対して最も接近して配置された部分である。本実施形態では、第1直線部211と第2直線部221とは、第1方向Xにおいて互いに接触するように配置されている。これにより、カバー内空間60におけるコイル2の占有領域を広く確保することができる。
【0031】
本実施形態では、一対の第1湾曲部210が、第1直線部211に対して第2方向Yの両側に配置されている。一対の第1湾曲部210のそれぞれは、第1直線部211と第1外縁部21Eとの間に配置されている。本例では、第1コイル体21は、法線方向視における第1中心位置C1と第2中心位置C2とを結ぶ仮想線Lを基準として、線対称の形状となっている。従って、仮想線Lに対して第2方向Yの両側のそれぞれに、第1直線部211の一部、第1湾曲部210、及び第1外縁部21Eが配置されている。
【0032】
本実施形態では、一対の第2湾曲部220が、第2直線部221に対して第2方向Yの両側に配置されている。一対の第2湾曲部220のそれぞれは、第2直線部221と第2外縁部22Eとの間に配置されている。本例では、第2コイル体22は、法線方向視における第1中心位置C1と第2中心位置C2とを結ぶ仮想線Lを基準として、線対称の形状となっている。従って、仮想線Lに対して第2方向Yの両側のそれぞれに、第2直線部221の一部、第2湾曲部220、及び第2外縁部22Eが配置されている。
【0033】
第1湾曲部210は、第2コイル体22に接近した部分ほど支持板1(及びカバー6)における第2方向Yの外縁から離間した位置に配置されるように形成されている。換言すれば、第1湾曲部210は、第2コイル体22から離間した部分ほど支持板1(及びカバー6)における第2方向Yの外縁に接近した位置に配置されるように形成されている。
【0034】
本実施形態では、第1湾曲部210は、第1外縁部21Eに連続すると共に第2コイル体22の側に向かうに従って第2方向Yの中心側(仮想線L)に向けて傾斜するテーパ区間210aと、テーパ区間210aに連続すると共に法線方向視で円弧状に形成された円弧区間210bと、を備えている。円弧区間210bは、テーパ区間210aに連続する端部とは反対側の端部において、第1直線部211に連続している。また、円弧区間210bは、円弧の中心が第1中心位置C1の側となるような円弧状に形成されている。
【0035】
第2湾曲部220は、第1コイル体21に接近した部分ほど支持板1(及びカバー6)における第2方向Yの外縁から離間した位置に配置されるように形成されている。換言すれば、第2湾曲部220は、第1コイル体21から離間した部分ほど支持板1(及びカバー6)における第2方向Yの外縁に接近した位置に配置されるように形成されている。
【0036】
本実施形態では、第2湾曲部220は、第2外縁部22Eに連続すると共に第1コイル体21の側に向かうに従って第2方向Yの中心側(仮想線L)に向けて傾斜するテーパ区間220aと、テーパ区間220aに連続すると共に法線方向視で円弧状に形成された円弧区間220bと、を備えている。円弧区間220bは、テーパ区間220aに連続する端部とは反対側の端部において、第2直線部221に連続している。また、円弧区間220bは、円弧の中心が第2中心位置C2の側となるような円弧状に形成されている。
【0037】
以上のような構成の第1湾曲部210と第2湾曲部220とが第1方向Xに対向して配置されることで、第1湾曲部210と第2湾曲部220との第1方向Xの間には、コイル2が配置されないコイル非配置空間(以下、「第1方向Xのコイル非配置空間Ga」と称する。)が形成されている。
【0038】
第1コイル体21は、線状導体の巻き数が増えるほど法線方向の寸法が大きくなるように、線状導体が法線方向視で環状に巻かれて形成されている。換言すれば、環状に巻かれた線状導体が法線方向に積層されて、第1コイル体21が形成されている。図5に示すように、本実施形態では、第1コイル体21は、第2コイル体22に接近した部分ほど法線方向の寸法が小さくなるように形成されている。これにより、第1コイル体21における第2コイル体22に接近した部分において、法線方向においてコイル2が配置されないコイル非配置空間(以下、「法線方向のコイル非配置空間Gb」と称する。)が形成されている。本例では、第1中心位置C1よりも第2コイル体22側の領域において、第1コイル体21を構成する線状導体の法線方向の各部が、階層的に第2コイル体22側に向けてオフセットされている。これにより、第1コイル体21は、第2コイル体22に接近した部分ほど法線方向の寸法が小さくなるように形成されている。なお、図5は、コイルユニット100の製造途中を示しているが、完成品としてのコイルユニット100における支持板1、コイル2、コア5、及び固定部材4の配置は、図5に示す通りである。
【0039】
第2コイル体22は、線状導体の巻き数が増えるほど法線方向の寸法が大きくなるように、線状導体が法線方向視で環状に巻かれて形成されている。換言すれば、環状に巻かれた線状導体が法線方向に積層されて、第2コイル体22が形成されている。本実施形態では、第2コイル体22は、第1コイル体21に接近した部分ほど法線方向の寸法が小さくなるように形成されている。これにより、第2コイル体22における第1コイル体21に接近した部分において、法線方向においてコイル2が配置されないコイル非配置空間(法線方向のコイル非配置空間Gb)が形成されている。本例では、第2中心位置C2よりも第1コイル体21側の領域において、第2コイル体22を構成する線状導体の法線方向の各部が、階層的に第1コイル体21側に向けてオフセットされている。これにより、第2コイル体22は、第1コイル体21に接近した部分ほど法線方向の寸法が小さくなるように形成されている。
【0040】
本実施形態では、第1コイル体21及び第2コイル体22と支持板1との間に磁性体で構成されたコア5が配置されている。例えば、コア5は、フェライト製の磁性体を用いて構成されている。コア5は、単体の磁性体を用いて構成されていても良い。或いは、複数の磁性体を結合することにより1つのコア5が構成されていても良い。
【0041】
本実施形態では、コア5は、法線方向視で、第1中心位置C1と第2中心位置C2との双方に重なるように、第1方向Xに連続的に配置されている。コア5は、法線方向視でコイル2と重複する重複部50と、法線方向視でコイル2と重複しない非重複部(51、52)と、を備えている。
【0042】
重複部50は、第1方向Xにおけるコア5の中央部である。重複部50は、法線方向視で、第1コイル体21及び第2コイル体22の双方に重複している。上述のように、本実施形態では、第1コイル体21及び第2コイル体22が互いに接近した部分には、法線方向のコイル非配置空間Gbが形成されている(図5参照)。重複部50は、法線方向のコイル非配置空間Gbに配置されている。
【0043】
非重複部(51、52)は、第1方向Xにおけるコア5の両端部である。非重複部(51、52)は、重複部50よりも第1方向Xにおける第1コイル体21側に配置された第1非重複部51と、重複部50よりも第1方向Xにおける第2コイル体22側に配置された第2非重複部52と、を含む。本実施形態では、第1非重複部51は、第1中心位置C1よりも第1方向Xの外側に配置されている。或いは、第1非重複部51の一部が、第1中心位置C1よりも第1方向Xの外側に配置されていても良い。また、第2非重複部52は、第2中心位置C2よりも第1方向Xの外側に配置されている。或いは、第2非重複部52の一部が、第2中心位置C2よりも第1方向Xの外側に配置されていても良い。
【0044】
図2及び図3に示すように、本実施形態では、コア5は、支持面F1に接するように配置されている。これにより、コイル2から発生する熱を、コア5を介して支持板1に伝達し易くなるため、コイルユニット100の放熱性を高め易い。本例では、コア5における支持面F1に対向する面の全体が、支持面F1に接している。これにより、上記効果を更に高めることができる。
【0045】
本開示に係るコイルユニット100では、第1方向Xにおける第1コイル体21の湾曲部(第1湾曲部210)と第2コイル体22の湾曲部(第2湾曲部220)との間に、固定部材4が配置されている。固定部材4は、モールド樹脂3と支持板1とを固定するための部材である。上述のように、第1湾曲部210と第2湾曲部220との第1方向Xの間には、コイル2が配置されないコイル非配置空間(第1方向Xのコイル非配置空間Ga)が形成されている。固定部材4は、第1方向Xのコイル非配置空間Gaに配置されている。固定部材4は、例えば、SUS、アルミニウム、合成樹脂などの非磁性体を用いて構成されている。これにより、磁界発生時に、固定部材4が発熱し難くできる。また、コイル2が発生する磁界に与える影響を小さく抑えつつ、固定部材4を配置することができる。
【0046】
本実施形態では、固定部材4が複数設けられている。複数の固定部材4が、法線方向視における第1中心位置C1と第2中心位置C2とを結ぶ仮想線Lに対して線対称に配置されている。複数の固定部材4は、第1方向Xのコイル非配置空間Gaに配置されている。本例では、2つの固定部材4が、法線方向視で、仮想線Lに対して線対称に配置されている。
【0047】
固定部材4は、支持板1に固定された固定部41と、固定部41から支持面F1に対して第1コイル体21及び第2コイル体22が配置されている側に延出するように配置された延出部42と、を有している。
【0048】
本実施形態では、固定部41は、固定部材4における支持板1の側に配置された固定側雄ねじ部411を備えている。固定側雄ねじ部411には、雄ねじ411aが形成されている。固定側雄ねじ部411の雄ねじ411aが、支持板1の取付穴12に形成された雌ねじ12aに螺合して固定されている。すなわち本実施形態では、固定部41に形成された雄ねじ411aが、支持板1に形成された雌ねじ12aに螺合して固定されている。
【0049】
延出部42の端部である延出端部42Eは、支持板1とカバー6との間に配置されている。換言すれば、延出端部42Eは、カバー内空間60においてカバー6から離間した位置に配置されており、カバー6を法線方向に貫通していない。
【0050】
本実施形態では、延出部42は、モールド樹脂3に係止される係止部420を備えている。係止部420は、固定側雄ねじ部411と延出端部42Eとの間に配置されている。そのため、係止部420は、カバー内空間60に配置され、モールド樹脂3に埋め込まれている。
【0051】
本実施形態では、固定部材4がボルトである。図示の例では、固定部材4は、両端部にねじ部を有するスタッドボルトを用いて構成されている。固定部材4の一端部には、上述の固定側雄ねじ部411が形成されており、固定部材4の他端部には、延出側雄ねじ部421が形成されている。本例では、延出側雄ねじ部421が、係止部420を構成している。延出側雄ねじ部421に形成された雄ねじ421aが、モールド樹脂3との間で摩擦を生じさせることにより、延出側雄ねじ部421(係止部420)がモールド樹脂3に係止される。
【0052】
モールド樹脂3は、接着性の樹脂が乾いて硬化することにより形成されている。モールド樹脂3は、カバー内空間60に形成されている。そして、第1コイル体21、第2コイル体22、及び、固定部材4の延出部42が、モールド樹脂3に埋め込まれると共に、モールド樹脂3と支持板1とが一体的に接合されている。また、コア5もモールド樹脂3に埋め込まれている。なお、モールド樹脂3とカバー6とは互いに接触しないように配置されていると好適である。言い換えれば、モールド樹脂3とカバー6との間には微小な隙間(例えば1mm~2mm)が形成されていると良い。これによれば、モールド樹脂3とカバー6とが干渉しないように両者を組み付けることが可能となり、コイルユニット100の組立性が向上する。
【0053】
上述のように、固定部材4の固定部41は、支持板1に固定されている。これに加えて、固定部材4の延出部42がモールド樹脂3に埋め込まれるため、モールド樹脂3と支持板1とを適切に一体化することができる。そのため、モールド樹脂3に埋め込まれた第1コイル体21、第2コイル体22、及びコア5を支持板1に適切に一体化することができる。そして、本開示に係るコイルユニット100によれば、固定部材4が第1方向Xにおける第1コイル体21の湾曲部(第1湾曲部210)と第2コイル体22の湾曲部(第2湾曲部220)との間のデッドスペース(第1方向Xのコイル非配置空間Ga)に配置されているため、コイルユニット100の寸法の拡大を抑制しつつ、モールド樹脂3と支持板1との一体化を適切に行うことができる。
【0054】
次に、上述したコイルユニット100、すなわち支持板1とコイル2とモールド樹脂3とを備えるコイルユニット100の製造方法について、図4及び図5を主に参照して説明する。図4は、コイルユニット100の製造工程を示すフローチャートである。図5は、コイルユニット100の製造途中を示すものであり、コイル2、コア5、及び固定部材4が配置された金型8の内部に樹脂を供給する樹脂供給工程P6の前段階の状態を示している。
【0055】
図4に示すように、本実施形態に係るコイルユニット100の製造方法は、支持板準備工程P1と、金型準備工程P2と、コイル収容工程P3と、コア配置工程P4と、固定部材配置工程P5と、樹脂供給工程P6と、金型取外し工程P7と、カバー取付け工程P8と、を備えている。本実施形態では、図4に示された順番に、各工程が実行される。本実施形態では、コイル配置工程P9は、コイル収容工程P3と固定部材配置工程P5とを含んでいる。
【0056】
支持板準備工程P1は、支持板1を準備する工程である。本実施形態では、支持板準備工程P1は、板部材10に絶縁シート11を貼付して支持板1を形成する工程を含む。また、支持板準備工程P1には、固定部材4を支持板1に取り付ける工程が含まれていても良い。この場合、支持板準備工程P1では、固定部材4が取り付けられた支持板1を準備することになる。
【0057】
金型準備工程P2は、金型8(図5参照)を準備する工程である。金型8は、樹脂が供給されると共にモールド樹脂3が形成される内部空間を有している。この内部空間には、コイル収容工程P3、コア配置工程P4、固定部材配置工程P5により、コイル2、コア5、及び固定部材4が配置される。
【0058】
コイル配置工程P9は、第1コイル体21及び第2コイル体22を備えたコイル2を支持板1の支持面F1に沿って配置する工程である。コイル配置工程P9では、第1コイル体21及び第2コイル体22を、支持面F1の法線方向に沿う法線方向視でそれぞれ環状に形成する共に、第1コイル体21と第2コイル体22とが支持面F1に沿う特定の方向である第1方向Xに互いに隣接するように配置する(図2も参照)。第1コイル体21及び第2コイル体22のそれぞれの、第1方向Xに互いに対向する部分における、第2方向Yの外側へ向かうに従って第1方向Xに互い離れる側へ向かうように形成された部分を湾曲部(210、220)として、コイル配置工程P9では、湾曲部(210、220)を形成するように、コイル2を支持板1の支持面F1に沿って配置する。
【0059】
本実施形態では、コイル配置工程P9は、コイル収容工程P3と固定部材配置工程P5とを含んでいる。コイル収容工程P3は、コイル2を金型8の内部空間に収容する工程である。本実施形態では、コイル収容工程P3では、支持板1が金型8から分離している状態で、コイル2を金型8の内部空間に収容する。そして、コイル収容工程P3の後に実行される固定部材配置工程P5において、コイル2が支持面F1に沿うように支持板1が金型8に対して配置される。コイル収容工程P3では、固定部材配置工程P5の実行後に、法線方向視でそれぞれ環状に形成された第1コイル体21と第2コイル体22とが第1方向Xに隣接して配置されるように、コイル2を金型8の内部空間に収容する。
【0060】
コア配置工程P4は、コア5を配置する工程である。本実施形態に係るコア配置工程P4では、法線方向視において、コア5を、第1コイル体21の中心位置(第1中心位置C1)と第2コイル体22の中心位置(第2中心位置C2)との双方に重なるように、第1方向Xに連続的に配置する(図2も参照)。また、コア配置工程P4では、コア5が法線方向視でコイル2と重複する重複部50と法線方向視でコイル2と重複しない非重複部(51、52)とを有するように、当該コア5を配置する。
【0061】
固定部材配置工程P5は、固定部材4を配置する工程である。本実施形態では、固定部材配置工程P5では、固定部材4が以下に述べるように配置されるように、固定部材4及び支持板1を金型8に対して配置する。固定部材配置工程P5は、少なくとも、樹脂供給工程P6の前に実行される。本実施形態では、固定部材配置工程P5は、樹脂供給工程P6の前であってコイル収容工程P3の後に実行される。固定部材配置工程P5では、固定部材4を、第1方向Xにおける第1コイル体21の湾曲部(第1湾曲部210)と第2コイル体22の湾曲部(第2湾曲部220)との間に配置し、固定部材4の固定部41を支持板1に固定すると共に、固定部41から延出する延出部42を、支持面F1に対して第1コイル体21及び第2コイル体22が配置されている側に延出するように配置する。上述したように、支持板準備工程P1において、固定部材4が取り付けられた支持板1を準備してもよく、この場合、固定部材配置工程P5における「固定部材4の固定部41を支持板1に固定する」工程は、支持板準備工程P1に含まれる。
【0062】
本実施形態に係る固定部材配置工程P5では、固定部材4における延出部42(延出端部42E)が支持板1と金型8の内壁との間に位置するように、固定部材4を配置する(図5参照)。換言すれば、固定部材配置工程P5では、延出端部42Eが金型8の内壁から離間して配置されるように、固定部材4を配置する。
【0063】
上記のコイル収容工程P3、コア配置工程P4、固定部材配置工程P5を実行することにより、図5に示すように、金型8の内部空間に、コイル2、コア5、及び固定部材4を配置する。
【0064】
樹脂供給工程P6は、コイル配置工程P9及び固定部材配置工程P5の後に実行される工程である。本実施形態では、固定部材配置工程P5は、コイル配置工程P9に含まれているため、「コイル配置工程P9及び固定部材配置工程P5の後」は、「コイル配置工程P9の後」と言い換えることができる。本実施形態に係る樹脂供給工程P6は、コイル配置工程P9及び固定部材配置工程P5に加えて、コア配置工程P4の後に実行される。樹脂供給工程P6では、第1コイル体21、第2コイル体22、及び、固定部材4の延出部42が、樹脂に埋め込まれるように、支持板1の支持面F1に隣接する領域に対して樹脂を供給する。本実施形態に係る樹脂供給工程P6では、コア5も樹脂に埋め込まれるように、支持板1の支持面F1に隣接する領域に対して樹脂を供給する。樹脂として、流動性を有する接着性の樹脂を用い、当該樹脂を金型8の供給口80から当該金型8の内部空間に流し込むことにより、樹脂供給工程P6を実行する。
【0065】
金型取外し工程P7は、支持板1から金型8を取り外す工程である。金型取外し工程P7では、金型8の内部空間に供給された樹脂が硬化した後に、支持板1から金型8を取り外す。
【0066】
カバー取付け工程P8は、支持板1にカバー6を取り付ける工程である。カバー取付け工程P8では、コイル2、コア5、及び固定部材4が埋め込まれたモールド樹脂3を覆うように、支持板1にカバー6を取り付ける。
【0067】
上記コイルユニット100の製造方法では、少なくとも固定部材配置工程P5の後に、樹脂供給工程P6を実行する。すなわち、固定部材配置工程P5を実行することで固定部材4が固定部41によって支持板1に固定され、その後、樹脂供給工程P6を実行することで固定部材4の延出部42を樹脂に埋め込むため、当該樹脂が硬化してなるモールド樹脂3を支持板1に対して適切に一体化することができる。すなわち、図3に示すように、延出部42に形成された係止部420の周囲に樹脂が充填されて、当該樹脂が係止部420の形状に合わせて変形すると共に硬化することで、係止部420が硬化後のモールド樹脂3に係止される。これにより、固定部材4とモールド樹脂3とが適切に固定される。そして、当該固定部材4は、固定部41によって支持板1とも固定されている。従って、固定部材4を介して、支持板1とモールド樹脂3とを適切に固定することができる。
【0068】
〔その他の実施形態〕
次に、コイルユニット及びコイルユニットの製造方法のその他の実施形態について説明する。
【0069】
(1)上記の実施形態では、固定部材4が、両端部にねじ部を有するスタッドボルトを用いて構成され、その一端部に形成された延出側雄ねじ部421が、モールド樹脂3に係止される係止部420を構成している例について説明した。しかし、このような例に限定されることなく、例えば図6に示すように、固定部材は、頭部420Aを有するボルト4Aを用いて構成され、ボルト4Aの頭部420Aが係止部420を構成していても良い。ボルト4Aの頭部420Aが、引っ掛かりとなって、モールド樹脂3に係止される。従って、この構成によっても、ボルト4Aを介して、支持板1とモールド樹脂3とを適切に固定することができる。また、他の例として、図7に示すように、固定部材は、法線方向に交差するように屈曲する屈曲部420Bを備えた棒状部材4Bを用いて構成され、棒状部材4Bの屈曲部420Bが係止部420を構成していても良い。棒状部材4Bの屈曲部420Bが、引っ掛かりとなって、モールド樹脂3に係止される。従って、この構成によっても、棒状部材4Bを介して、支持板1とモールド樹脂3とを適切に固定することができる。
【0070】
(2)上記の実施形態では、固定部材4が、第1方向Xにおける第1コイル体21の湾曲部(第1湾曲部210)と第2コイル体22の湾曲部(第2湾曲部220)との間に配置されている例について説明した。しかし、固定部材4は、第1方向Xにおける第1湾曲部210と第2湾曲部220との間に加えて、他の場所に配置されていても良い。例えば、カバー内空間60において、第1コイル体21に対して第1方向Xの外側にデッドスペースがある場合には、固定部材4は、第1コイル体21に対して第1方向Xの外側に配置されていても良い。また、カバー内空間60において、第2コイル体22に対して第1方向Xの外側にデッドスペースがある場合には、固定部材4は、第2コイル体22に対して第1方向Xの外側に配置されていても良い。
【0071】
(3)上記の実施形態では、コイル収容工程P3の後にコア配置工程P4を実行し、コア配置工程P4の後に固定部材配置工程P5を実行する例について説明した。しかし、このような例に限定されることなく、コイル収容工程P3、固定部材配置工程P5、及びコア配置工程P4を実行する順番は、任意に定めることができる。また、これらコイル収容工程P3、固定部材配置工程P5、及びコア配置工程P4は、同時に実行されても良い。
【0072】
(4)上記の実施形態では、コイル配置工程P9が、コイル収容工程P3と固定部材配置工程P5とを含む例について説明した。しかし、このような例に限定されることなく、コイル配置工程P9が、固定部材配置工程P5を含まない構成としても良い。例えば、コイル配置工程P9を構成する1つの工程によって、第1コイル体21及び第2コイル体22を備えたコイル2を支持板1の支持面F1に沿って配置しても良い。この場合、コア5を配置しやすいように、コア配置工程P4をコイル配置工程P9の前に実行すると好適である。
【0073】
(5)上記の実施形態では、固定部材配置工程P5は、コイル収容工程P3の後に実行される例について説明した。そして、この固定部材配置工程P5では、固定部材4を、第1方向Xにおける第1コイル体21の湾曲部(第1湾曲部210)と第2コイル体22の湾曲部(第2湾曲部220)との間に配置し、固定部材4の固定部41を支持板1に固定すると共に、固定部41から延出する延出部42を、支持面F1に対して第1コイル体21及び第2コイル体22が配置されている側に延出するように配置する例について説明した。しかし、このような例に限定されることなく、固定部材配置工程P5は、コイル収容工程P3の前に実行されても良い。この場合、コイル収容工程P3は、固定部材配置工程P5の後に実行される。そして、このコイル収容工程P3では、第1コイル体21の湾曲部(第1湾曲部210)と第2コイル体22の湾曲部(第2湾曲部220)とで固定部材4を第1方向Xに挟むようにして、コイル2を配置する。この場合においても、結果的に、固定部材4を、第1方向Xにおける第1コイル体21の湾曲部(第1湾曲部210)と第2コイル体22の湾曲部(第2湾曲部220)との間に配置することになる。
【0074】
(6)上記の実施形態では、固定部41に形成された雄ねじ411aが、支持板1に形成された取付穴12の雌ねじ12aに螺合して固定され、これにより固定部材4が支持板1に固定されている例について説明した。しかし、このような例に限定されることなく、固定部41が取付穴12に圧入されることにより、固定部材4が支持板1に固定されていても良い。この場合、固定部41に雄ねじ411aは形成されていなくても良く、また、取付穴12に雌ねじ12aは形成されていなくても良い。更に、固定部材4を支持板1に圧入する他の例として、図8に示すように、圧入型のスタッドボルトにより構成された固定部材4Cを用いて、支持板1の支持面F1とは反対側から、支持板1に形成された貫通孔13に当該固定部材4Cを圧入するようにしても良い。この際、固定部材4Cの頭部が支持板1における支持面F1とは反対側の面から突出しないように、固定部材4Cを圧入すると好適である。なお、図8に示す例では、固定部材4Cのねじ部420Cが係止部420を構成している。
【0075】
(7)上記の実施形態では、法線方向視における第1コイル体21の第1中心位置C1と第2コイル体22の第2中心位置C2とが、第2方向Yにおける同じ位置に配置され、法線方向視における第1コイル体21の第1外縁部21Eと第2コイル体22の第2外縁部22Eとが、第2方向Yにおける同じ位置に配置されている例について説明した。しかし、このような例に限定されることなく、第1コイル体21の第1中心位置C1と第2コイル体22の第2中心位置C2とは、第2方向Yにおいてずれた位置に配置されていても良い。また、第1コイル体21の第1外縁部21Eと第2コイル体22の第2外縁部22Eとは、第2方向Yにおいてずれた位置に配置されていても良い。
【0076】
(8)上記の実施形態では、複数の固定部材4が、法線方向視における第1中心位置C1と第2中心位置C2とを結ぶ仮想線Lに対して線対称に配置されている例について説明した。しかし、複数の固定部材4は、仮想線Lに対して線対称に配置されていなくても良い。すなわち、複数の固定部材4は、仮想線Lからの第2方向Yの距離が異なる位置に配置されていても良いし、互いに第1方向Xにずれた位置に配置されていても良い。
【0077】
(9)上記の実施形態では、コア5が、法線方向視で、第1中心位置C1と第2中心位置C2との双方に重なるように、第1方向Xに連続的に配置されている例について説明した。しかし、このような例に限定されることなく、コア5は、複数の磁性体を用いて構成され、第1方向Xに断続的に配置されていても良い。
【0078】
(10)上記の実施形態では、コイルユニット100が、物品搬送車Vの充電のために用いられる例について説明した。コイルユニット100を用いた充電の対象としては、蓄電装置9vを搭載した様々な形態の物品搬送車Vを例示することができ、例えば、天井付近に設定された走行経路に沿って走行する天井搬送車がその対象とされても良い。
【0079】
(11)なお、上述した実施形態で開示された構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示された構成と組み合わせて適用することも可能である。その他の構成に関しても、本明細書において開示された実施形態は全ての点で単なる例示に過ぎない。従って、本開示の趣旨を逸脱しない範囲内で、適宜、種々の改変を行うことが可能である。
【0080】
〔上記実施形態の概要〕
以下、上記において説明したコイルユニット及びコイルユニットの製造方法について説明する。
【0081】
支持板と、前記支持板の支持面に沿って配置されたコイルと、モールド樹脂と、を備えたコイルユニットであって、
前記コイルは、前記支持面の法線方向に沿う法線方向視でそれぞれ環状に形成されていると共に、前記支持面に沿う特定の方向である第1方向に互いに隣接するように配置された第1コイル体及び第2コイル体を備え、
前記法線方向視で前記第1方向に直交する方向を第2方向として、
前記第1コイル体及び前記第2コイル体のそれぞれは、前記第1方向に互いに対向する部分に、前記第2方向の外側へ向かうに従って前記第1方向に互い離れる側へ向かうように形成された湾曲部を備え、
前記第1方向における前記第1コイル体の前記湾曲部と前記第2コイル体の前記湾曲部との間に、固定部材が配置され、
前記固定部材は、前記支持板に固定された固定部と、前記固定部から前記支持面に対して前記第1コイル体及び前記第2コイル体が配置されている側に延出するように配置された延出部と、を有し、
前記第1コイル体、前記第2コイル体、及び、前記延出部が、前記モールド樹脂に埋め込まれると共に、前記モールド樹脂と前記支持板とが一体的に接合されている。
【0082】
従来のような、コイルやモールド樹脂を配置する空間を形成するための空間形成部材を用いる場合には、空間形成部材を含む各部材がモールド樹脂と接合されるため、各部材を適切に一体化することができる。しかしながら、そのような空間形成部材を用いらずにコイルユニットを形成する場合には、モールド樹脂と当該モールド樹脂に接する部材とを適切に一体化する必要がある。本構成によれば、固定部材の固定部が支持板に固定されていると共に固定部材の延出部がモールド樹脂に埋め込まれるため、モールド樹脂と支持板とを適切に一体化することができ、ひいては、モールド樹脂に埋め込まれた第1コイル体及び第2コイル体を支持板に適切に一体化することができる。更に、本構成によれば、固定部材が第1方向における第1コイル体の湾曲部と第2コイル体の湾曲部との間のデッドスペースに配置されているため、コイルユニットの寸法の拡大を抑制しつつ、モールド樹脂と支持板との一体化を適切に行うことができる。以上のように、本構成によれば、コイルユニットを構成する各部材を適切に一体化できると共に、低コスト化を図り易いコイルユニットを実現することができる。
【0083】
前記第1コイル体及び前記第2コイル体のそれぞれが、絶縁被覆された線状導体を環状に巻回して形成され、
前記支持板が金属製であり、
前記固定部材がボルトであり、
前記固定部に形成された雄ねじが、前記支持板に形成された雌ねじに螺合して固定されている、と好適である。
【0084】
本構成によれば、第1コイル体及び第2コイル体は、絶縁被覆された線状導体により構成されているため、金属製の支持板に沿って配置されていても電気的絶縁性を確保し易い。従って、別に絶縁材等を配置する必要性を低減でき、製造コストを抑えてコイルユニットの更なる低コスト化を図り易い。また、固定部に形成された雄ねじと支持板に形成された雌ねじとが螺合しているため、固定部材を支持板に対して容易かつ適切に固定することができる。
【0085】
前記法線方向視における前記第1コイル体の中心位置と前記第2コイル体の中心位置とが、前記第2方向における同じ位置に配置され、
前記法線方向視における前記第1コイル体の外縁部と前記第2コイル体の外縁部とが、前記第2方向における同じ位置に配置されている、と好適である。
【0086】
本構成によれば、第1コイル体及び第2コイル体の大きさを確保しつつ、コイルユニットの全体を小型化し易い。
【0087】
前記固定部材が複数設けられ、
複数の前記固定部材が、前記法線方向視における前記第1コイル体の中心位置と前記第2コイル体の中心位置とを結ぶ仮想線に対して線対称に配置されている、と好適である。
【0088】
本構成によれば、支持板に対してモールド樹脂が固定される位置を、第1コイル体及び第2コイル体の中心位置に対して均等にし易い。従って、支持板に対するモールド樹脂の固定強度を確保し易い。
【0089】
前記第1コイル体及び前記第2コイル体と前記支持板との間に磁性体で構成されたコアが配置され、
前記コアは、前記法線方向視で、前記第1コイル体の中心位置と前記第2コイル体の中心位置との双方に重なるように、前記第1方向に連続的に配置され、
前記コアは、前記支持面に接するように配置されている、と好適である。
【0090】
本構成によれば、支持板とは反対側に多くの磁束を放出し易くできる。また、コイルから発生する熱を、コアを介して支持板に伝達し易くなるため、コイルユニットの放熱性を高め易い。
【0091】
支持板とコイルとモールド樹脂とを備えるコイルユニットの製造方法であって、
第1コイル体及び第2コイル体を備えた前記コイルを前記支持板の支持面に沿って配置するコイル配置工程と、固定部材を配置する固定部材配置工程と、前記コイル配置工程及び前記固定部材配置工程の後に実行され、樹脂を供給する樹脂供給工程と、を備え、
前記コイル配置工程では、前記第1コイル体及び前記第2コイル体を、前記支持面の法線方向に沿う法線方向視でそれぞれ環状に形成する共に、前記第1コイル体と前記第2コイル体とが前記支持面に沿う特定の方向である第1方向に互いに隣接するように配置し、
前記法線方向視で前記第1方向に直交する方向を第2方向とし、
前記第1コイル体及び前記第2コイル体のそれぞれの、前記第1方向に互いに対向する部分における、前記第2方向の外側へ向かうに従って前記第1方向に互い離れる側へ向かうように形成された部分を湾曲部として、
前記固定部材配置工程では、前記固定部材を、前記第1方向における前記第1コイル体の前記湾曲部と前記第2コイル体の前記湾曲部との間に配置し、前記固定部材の固定部を前記支持板に固定すると共に、前記固定部から延出する延出部を、前記支持面に対して前記第1コイル体及び前記第2コイル体が配置されている側に延出するように配置し、
前記樹脂供給工程では、前記第1コイル体、前記第2コイル体、及び、前記延出部が、前記樹脂に埋め込まれるように、前記支持板の前記支持面に隣接する領域に対して前記樹脂を供給する、と好適である。
【0092】
本構成によれば、固定部材配置工程によって固定部材が固定部によって支持板に固定され、その後、樹脂供給工程によって固定部材の延出部を樹脂に埋め込むため、当該樹脂が硬化してなるモールド樹脂を支持板に対して適切に一体化することができる。これにより、モールド樹脂に埋め込まれた第1コイル体及び第2コイル体を支持板に対して適切に一体化することができる。更に、本構成によれば、固定部材が第1方向における第1コイル体の湾曲部と第2コイル体の湾曲部との間のデッドスペースに配置されているため、コイルユニットの寸法の拡大を抑制しつつ、モールド樹脂と支持板との一体化を適切に行うことができる。以上のように、本構成によれば、コイルユニットを構成する各部材を適切に一体化できると共に、低コスト化を図り易いコイルユニットを実現することができる。
【産業上の利用可能性】
【0093】
本開示に係る技術は、支持板と、前記支持板の支持面に沿って配置されたコイルと、モールド樹脂と、を備えたコイルユニット、及び、コイルユニットの製造方法に利用することができる。
【符号の説明】
【0094】
100 :コイルユニット
1 :支持板
F1 :支持面
12a :支持板の雌ねじ
2 :コイル
21 :第1コイル体
C1 :第1コイル体の中心位置
21E :第1コイル体の外縁部
210 :第1コイル体の湾曲部
22 :第2コイル体
C2 :第2コイル体の中心位置
22E :第2コイル体の外縁部
220 :第2コイル体の湾曲部
3 :モールド樹脂
4 :固定部材
41 :固定部
411a :固定側雄ねじ部の雄ねじ
42 :延出部
421a :延出側雄ねじ部の雄ねじ
5 :コア
L :仮想線
P3 :コイル配置工程
P5 :固定部材配置工程
P6 :樹脂供給工程
X :第1方向
Y :第2方向
図1
図2
図3
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図8