(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-20
(45)【発行日】2025-01-28
(54)【発明の名称】伸縮性デバイス
(51)【国際特許分類】
H05K 1/02 20060101AFI20250121BHJP
B32B 7/022 20190101ALI20250121BHJP
C09J 7/22 20180101ALI20250121BHJP
C09J 7/38 20180101ALI20250121BHJP
【FI】
H05K1/02 J
H05K1/02 B
B32B7/022
C09J7/22
C09J7/38
(21)【出願番号】P 2022107309
(22)【出願日】2022-07-01
【審査請求日】2024-02-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100197583
【氏名又は名称】高岡 健
(72)【発明者】
【氏名】フェルフールト,アレクサンダー
(72)【発明者】
【氏名】浅井 遼
(72)【発明者】
【氏名】勝 勇人
【審査官】中島 昭浩
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-155605(JP,A)
【文献】特開2019-140292(JP,A)
【文献】特開2020-126926(JP,A)
【文献】特開2020-174067(JP,A)
【文献】特開2016-143763(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 1/00 - 3/46
B32B 1/00 - 43/00
C09J 7/00 - 7/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
伸縮性基材、前記伸縮性基材上に設けられかつ前記伸縮性基材の厚み方向にて相互に部分的に重なる第1伸縮性配線および第2伸縮性配線、前記第1伸縮性配線と前記第2伸縮性配線との間の配線重なり部分に配置された絶縁層、ならびに前記厚み方向にて前記絶縁層の少なくとも一部と重なる第1粘着層を備え、前記第1粘着層は前記絶縁層よりも相対的に小さい伸縮性能を有
し、および粘着剤から構成される、伸縮性デバイス。
【請求項2】
前記配線重なり部分において、前記第1伸縮性配線と前記第2伸縮性配線とが相互に交差する、請求項1に記載の伸縮性デバイス。
【請求項3】
前記第1粘着層のヤング率は前記絶縁層のヤング率よりも大きい、請求項1に記載の伸縮性デバイス。
【請求項4】
前記第1粘着層が前記伸縮性基材と被着体との間に位置する、請求項1に記載の伸縮性デバイス。
【請求項5】
保護層を更に備え、前記第2伸縮性配線は前記絶縁層と対向する第1の側と前記第1の側とは反対側の第2の側を有し、前記保護層が前記第2の側と接し、前記第1粘着層が前記保護層と被着体との間に位置する、請求項1に記載の伸縮性デバイス。
【請求項6】
第2粘着層を更に備え、前記第2粘着層が、断面視で前記第1粘着層の少なくとも一方の側と対向し、かつ前記第1粘着層とは異なるヤング率を有する、請求項1に記載の伸縮性デバイス。
【請求項7】
前記第2粘着層は、前記絶縁層よりも相対的に小さい伸縮性能を有する、請求項6に記載の伸縮性デバイス。
【請求項8】
前記第2粘着層のヤング率が、前記絶縁層のヤング率よりも小さい、請求項7に記載の伸縮性デバイス。
【請求項9】
前記第2粘着層は前記第1粘着層と離隔する、請求項6に記載の伸縮性デバイス。
【請求項10】
前記第2粘着層は前記第1粘着層と接する、請求項6に記載の伸縮性デバイス。
【請求項11】
前記伸縮性基材の厚み方向にて、前記第2粘着層が前記絶縁層と重なる、請求項6に記載の伸縮性デバイス。
【請求項12】
断面視で、前記第1粘着層の幅が前記絶縁層の幅よりも小さい、請求項11に記載の伸縮性デバイス。
【請求項13】
前記配線重なり部分が複数あり、前記伸縮性基材の厚み方向にて、前記複数の配線重なり部分の各々にて、前記絶縁層と前記絶縁層に重なる前記第1粘着層とがそれぞれ位置付けられる、請求項1に記載の伸縮性デバイス。
【請求項14】
前記配線重なり部分が複数あり、前記伸縮性基材の厚み方向にて、前記複数の配線重なり部分を跨る1つの前記絶縁層と、前記1つの絶縁層に重なる前記第1粘着層とが位置付けられる、請求項1に記載の伸縮性デバイス。
【請求項15】
前記第1粘着層の厚みが前記絶縁層の厚みよりも大きい、請求項1に記載の伸縮性デバイス。
【請求項16】
前記第1粘着層の厚みが前記絶縁層の厚みよりも大きい場合に、前記第1粘着層のヤング率は前記絶縁層のヤング率よりも小さい、請求項15に記載の伸縮性デバイス。
【請求項17】
断面視で、前記第1粘着層の幅が前記絶縁層の幅よりも大きい、請求項16に記載の伸縮性デバイス。
【請求項18】
電子部品を実装可能となっており、前記伸縮性基材の厚み方向において、前記電子部品が前記第1粘着層と重なる、請求項1に記載の伸縮性デバイス。
【請求項19】
前記第1伸縮性配線と前記第2伸縮性配線とは異なる電位を有する、請求項1に記載の伸縮性デバイス。
【請求項20】
前記第1粘着層の厚みが一定である、請求項1に記載の伸縮性デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、伸縮性デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
従前より、伸縮性基材上に伸縮性配線が実装された伸縮性デバイスが知られている。この伸縮性デバイスは、人体に装着して使用することができる。
【0003】
伸縮性デバイスは、伸縮性基材と、伸縮性基材に設けられた第1伸縮性配線と、第1伸縮性配線上に配置された第2伸縮性配線と、第1伸縮性配線と第2伸縮性配線との間の配線重なり部分に配置される絶縁層と、実装用粘着層とを含む(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、粘着層または接着層の性質によっては、伸縮時に、2つの伸縮性配線間の配線重なり部分に位置する絶縁層の厚さが薄くなる虞がある。かかる絶縁層の厚みの低減は、2つの配線間のIR(絶縁抵抗)の低下をもたらす。その結果、センシング、信号のコミュニケーション等のデバイスの機能の低下、ならびにイオンマイグレーションおよび配線接触による短絡の発生が生じる虞がある。
【0006】
そこで、本発明は、配線間のIR(絶縁抵抗)の低下を抑制可能な伸縮性デバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の一実施形態では、
伸縮性基材、前記伸縮性基材上に設けられかつ前記伸縮性基材の厚み方向にて相互に部分的に重なる第1伸縮性配線および第2伸縮性配線、前記第1伸縮性配線と前記第2伸縮性配線との間の配線重なり部分に配置された絶縁層、ならびに前記厚み方向にて前記絶縁層の少なくとも一部と重なる第1粘着層を備え、前記第1粘着層は前記絶縁層よりも相対的に小さい伸縮性能を有する、伸縮性デバイスが提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一実施形態に係る伸縮性デバイスによれば、配線間のIR(絶縁抵抗)の低下を抑制可能である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本発明の第1実施形態に係る伸縮性デバイスを模式的に示す平面図である。
【
図2】
図2は、本発明の第1実施形態に係る伸縮性デバイスの部分拡大模式平面図である。
【
図3】
図3は、本発明の第1実施形態に係る伸縮性デバイスの伸縮前における
図2の線分X-X間における部分拡大模式断面図である。
【
図4】
図4は、本発明の第1実施形態に係る伸縮性デバイスの伸縮時における
図2の線分X-X間における部分拡大模式断面図である。
【
図5】
図5は、本発明の第1実施形態に係る伸縮性デバイスの変形例1の部分拡大模式断面図である(
図2の線分X-X間における断面図に対応)。
【
図6】
図6は、本発明の第1実施形態に係る伸縮性デバイスの変形例2の部分拡大模式断面図である(
図2の線分X-X間における断面図に対応)。
【
図7】
図7は、本発明の第2実施形態に係る伸縮性デバイスの部分拡大模式断面図である(
図2の線分X-X間における断面図に対応)。
【
図8】
図8は、本発明の第2実施形態に係る伸縮性デバイスの変形例1の部分拡大模式断面図である(
図2の線分X-X間における断面図に対応)。
【
図9】
図9は、本発明の第2実施形態に係る伸縮性デバイスの変形例2の部分拡大模式断面図である(
図2の線分X-X間における断面図に対応)。
【
図10】
図10は、本発明の第3実施形態に係る伸縮性デバイスを模式的に示す平面図である。
【
図11】
図11は、
図10の線分Y-Y間における本発明の第3実施形態に係る伸縮性デバイスの部分拡大模式断面図である。
【
図12】
図12は、本発明の第4実施形態に係る伸縮性デバイスを模式的に示す平面図である。
【
図13】
図13は、
図12の線分Z-Z間における本発明の第4実施形態に係る伸縮性デバイスの部分拡大模式断面図である。
【
図14】
図14は、本発明の第5実施形態に係る伸縮性デバイスを模式的に示す平面図である。
【
図15】
図15は、
図14の線分W-W間における本発明の第5実施形態に係る伸縮性デバイスの部分拡大模式断面図である。
【
図16】
図16は、従来の伸縮性デバイスの伸縮前における部分拡大模式断面図である。
【
図17】
図17は、従来の伸縮性デバイスの伸縮時における部分拡大模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について、図面を用いて詳細に説明する。各々の実施形態では、その実施形態以前に説明した点と異なる点について主に説明する。特に、同様の構成による同様の作用効果については実施形態ごとには逐次言及しない。以下の実施形態における構成要素のうち、独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。また、図面に示される構成要素の大きさおよび大きさの比は、必ずしも厳密ではない。また、各図において、実質的に同一の構成に対しては同一の符号を付しており、重複する説明は省略又は簡略化する場合がある。
【0011】
[第1実施形態]
以下、
図1~
図4を参照しながら、第1実施形態に係る伸縮性デバイス100の構成について説明する。
【0012】
図1は、本発明の第1実施形態に係る伸縮性デバイスを模式的に示す平面図である。
図2は、本発明の第1実施形態に係る伸縮性デバイスの部分拡大模式平面図である。
図3は、本発明の第1実施形態に係る伸縮性デバイスの伸縮前における
図2の線分X-X間における部分拡大模式断面図である。
図4は、本発明の第1実施形態に係る伸縮性デバイスの伸縮時における
図2の線分X-X間における部分拡大模式断面図である。なお、本明細書中の断面図において、後述する伸縮性基材の厚み方向を両矢印Xで示している。また、
図3および
図4は、
図2の線分X-X間、即ち第1伸縮性配線の延伸方向における断面図である。
【0013】
本発明の第1実施形態に係る伸縮性デバイス100は、伸縮性基材10、第1伸縮性配線20、第2伸縮性配線40、絶縁層30および第1粘着層50を備える(
図1~
図4参照)。
【0014】
以下、上記の伸縮性デバイス100の構成要素について具体的に説明する。その後、第1実施形態の特徴部分について説明する。
【0015】
(伸縮性基材10)
伸縮性基材10は、シート状あるいはフィルム状の伸縮可能な基材であり、例えば、伸縮性を有する樹脂材料から構成される。伸縮性基材10の樹脂材料としては、例えば、熱可塑性ポリウレタン(TPU)、ポリエチレン(PE)、ポリスチレン(PS)、ポリエチレンテレフタレート(PET)等が挙げられる。
【0016】
伸縮性基材10の厚さは特に限定されないが、生体に貼り付けた際に生体表面の伸縮を阻害しない観点から、100μm以下であることが好ましく、50μm以下であることがより好ましい。また、伸縮性基材1の厚さは、所定の強度確保の観点から20μm以上であることが好ましい。
【0017】
(第1伸縮性配線20/第2伸縮性配線40)
第1伸縮性配線20および第2伸縮性配線40は、伸縮性基材10上、具体的にはその主面上に設けられ、かつ、伸縮性基材10の厚み方向Xにて相互に部分的に重なる。
【0018】
なお、本明細書中における「上」とは、ある要素と離れた上方、即ち他の物体を介してある要素の上側に位置する状態、間隔を空けてある要素の上側に位置する状態、およびある要素と接する直上に位置する状態を含む。
【0019】
そのため、本明細書において、「伸縮性基材10上に配置された第1伸縮性配線20および第2伸縮性配線40」は、伸縮性基材10の主面と接した状態の第1および第2伸縮性配線20、40と、伸縮性基材10の主面に直接接することなく、他の部材(例えば後述する樹脂層)を介して主面から離隔した状態の第1および第2伸縮性配線20、40とを含む。
【0020】
一例では、
図1に示すように、第1伸縮性配線20および第2伸縮性配線40は相互に交差する配線交差部分を形成する。例えば、第1伸縮性配線20および第2伸縮性配線40は相互に垂直に交差する配線交差部分を形成する。第1伸縮性配線20および第2伸縮性配線40はそれぞれ、電子部品200に電気的に接続されている。
【0021】
第1伸縮性配線20および第2伸縮性配線40はそれぞれ、導電性粒子および樹脂を含む。各伸縮性配線としては、例えば、導電性粒子としてのAg、Cu、Niなどの金属粉と、シリコーン樹脂などのエラストマー系樹脂とからなる混合物が挙げられる。導電性粒子の平均粒径は特に限定されるものではないが、0.01μm以上、10μm以下であることが好ましい。また、導電性粒子の形状は球形であることが好ましい。
【0022】
各伸縮性配線の厚さは、特に限定されないが、100μm以下であることが好ましく、50μm以下であることがより好ましい。また、各伸縮性配線の厚さは0.01μm以上であることが好ましい。各伸縮性配線の線幅は、特に限定されないが0.1μm以上であることが好ましく、10mm以下であることがより好ましい。また、各伸縮性配線の形状および本数は特に限定されない。
【0023】
なお、伸縮性デバイス100の使用時の短絡をより確実に防止する観点から、上記の第1伸縮性配線20の延伸方向は伸縮性デバイス100の長手方向(即ち、伸縮方向)であることが好ましい。
【0024】
(絶縁層30)
絶縁層30は、伸縮性配線同士の接触による短絡を防ぐために配置される層である。具体的には、絶縁層30は、第1伸縮性配線20と第2伸縮性配線40との間の配線重なり部分70に配置される。配線同士の接触を好適に回避する観点から、断面視で、絶縁層30の幅は、第2伸縮性配線40の幅以上であり、第2伸縮性配線40の幅よりも大きいことが好ましい。
【0025】
絶縁層30としては、例えば、ポリイミド系、エポキシ系樹脂、ウレタン系樹脂、およびアクリル系樹脂から成る群から選択される少なくとも1種の樹脂材で形成され得る。また、絶縁層30としては、アルミナ、二酸化ケイ素等の無機材で形成されてよい。
【0026】
(第1粘着層50)
第1粘着層50は、伸縮性基材10の厚み方向Xにて、絶縁層30の少なくとも一部と重なるように配置される。即ち、伸縮性基材の厚み方向Xにて、第1粘着層50は、両伸縮性配線20、40の配線重なり部分70(例えば配線交差部分)と相互に重なるように配置される。
【0027】
第1粘着層50は、伸縮性デバイス100を生体等の被着体300に貼付可能な粘着性を有する。一例では、第1粘着層50は、伸縮性基材10と生体等の被着体300との間に位置付けられ得る。
【0028】
第1粘着層50は、生体等の被着体300側の第1主面51とこれとは反対側の第2主面52とを備える。第1粘着層50は両主面に粘着性を有することが好ましい。第1粘着層50の第1主面51は生体等に貼付することができる。なお、第1粘着層50の第1主面51自体は他の層に貼り付けられ、その上で、他の層を生体等に貼り付ける態様も可能である。
【0029】
第1粘着層50の第2主面52は伸縮性基材10に貼付することができる。なお、第1粘着層50の第2主面52と伸縮性基材10との間に、防水性向上等の観点から、後述する保護層が更に配置されてよい。
【0030】
第1粘着層50としては、皮膚に対して低刺激であり、十分な感圧粘着性を有しながら、使用後に皮膚から容易に剥がすことができる粘着剤であれば、特に制限なく使用することができる。
【0031】
特に限定されるものではないが、第1粘着層50は、感圧性粘着剤等から構成され得る。感圧性粘着剤としては、伸縮性基材10上にて積層して一般的に使用できるものであれば、特に限定されることはない。例えば、感圧性接着剤としては、ゴム系、アクリル系、シリコーン系のものを用いることができる。感圧性接着剤を用いる場合、相対的に低温で相手方の部材(伸縮性基材、後述する保護層)と接着できるため、過剰な熱やUVエネルギーを用いることに伸縮性基材10の変質、歪みを防止することができる。
【0032】
なお、
図1~
図4では、絶縁層30と第1粘着層50とが略同一の幅寸法を有する態様が示されているが、これに限定されることなく、第1粘着層50の幅寸法が絶縁層30の幅寸法よりも大きくてもよい。この場合、両者の幅寸法の違いに起因して、両者の幅寸法が略同一の場合と比べて、伸縮性デバイス100にて生じる応力の緩和が可能となり得る。
【0033】
(第1実施形態の特徴部分)
上記の伸縮性デバイス100の主たる構成要素の内容をふまえ、以下で第1実施形態の特徴部分について説明する。第1実施形態は、第1粘着層50が伸縮性基材の厚み方向Xにて絶縁層30の少なくとも一部と重なることを前提として、第1粘着層50が絶縁層30よりも相対的に小さい伸縮性能(又は伸縮性又は伸縮率)を有することを特徴とする。
【0034】
本明細書でいう「伸縮性能(又は伸縮性又は伸縮率)」とは、広義には、伸縮性デバイスの構成要素である粘着層(第1粘着層/後述する第2粘着層)と絶縁層の伸縮の性質および能力を表すものであり、狭義には、これら粘着層と絶縁層の各々のヤング率の違いおよび/または厚さの違いにより評価され得るものを指す。
【0035】
又、本明細書でいう「伸縮性能が小さい」とは、伸縮しにくい状態を指し、ヤング率が大きい状態および/または厚みが大きい状態を指す。即ち、ヤング率が大きいほど伸縮しにくく、厚みが大きいほど伸縮しにくく、この状態を伸縮性能が小さいと規定する。一方、本明細書において、伸縮しやすい状態、即ちヤング率が小さい状態および/または厚みが小さい状態については、伸縮性能が大きいと規定し得る。
【0036】
一例として、第1粘着層50のヤング率が絶縁層30のヤング率よりも大きくなっている。なお、第1実施形態では、第1粘着層50の幅寸法と絶縁層30の幅寸法とは相互に同一又は実質同一である。また、第1粘着層50の伸縮性基材10の厚み方向寸法と絶縁層30の伸縮性基材10の厚み方向寸法も相互に同一又は実質同一である。即ち、第1粘着層50の断面積と絶縁層30の断面積は相互に同一又は実質同一であり得る。
【0037】
上記特徴によれば、第1粘着層50が絶縁層30よりも相対的に小さい伸縮性能を有するため、第1粘着層50は絶縁層30よりも相対的に固い性質を有し得る。そのため、伸縮性デバイス100の伸縮時に、両伸縮性配線20、40の配線重なり部分70に位置する第1粘着層50は伸縮し難い。これに伴い、この伸縮し難い第1粘着層50と相互に重なる部分に位置する両伸縮性配線20、40の局所部分も伸縮し難くなる。
【0038】
これにより、第1伸縮性配線20と第2伸縮性配線40との間の配線重なり部分70に位置する絶縁層30も伸縮し難くなる。その結果、伸縮性デバイス100’の伸縮前と比べて伸縮時に絶縁層30’の厚さが薄くなり得る従前の態様(
図16および
図17参照)と比べて、伸縮性デバイス100の伸縮前後における絶縁層30の厚さの低減を抑制することができる(
図3および
図4参照)。
【0039】
その結果、かかる絶縁層30の厚みの低減抑制により、2つの伸縮性配線20、40間のIR(絶縁抵抗)の低下を抑制することができる。即ち、2つの伸縮性配線20、40間における漏洩電圧(または漏洩電流)の発生を抑制することができる。
【0040】
これにより、デバイスの伸縮時における2つの伸縮性配線20、40の一方の電圧低下(例えば5V⇒4V)、およびこれに伴う2つの伸縮性配線20、40の他方の電圧上昇(例えば0V⇒1V)の発生を好適に抑制することができる。これにより、デバイスの伸縮時における2つの伸縮性配線20、40の電圧の安定化が可能となり、機能部品への電圧供給の安定化が可能となる。
【0041】
それ故、第1実施形態によれば、センシング、信号のコミュニケーション等のデバイスの機能の維持が可能となる。更に、高湿度、高温度でのデバイス駆動にあたり、伸縮の際に両伸縮性配線間での電圧差が大きくなる両配線の配線重なり部分70(例えば配線交差部分)でのイオンマイグレーションおよび配線接触による短絡の発生回避が可能となる。
【0042】
又、イオンマイグレーションの発生抑制の観点から、第1伸縮性配線20と第2伸縮性配線40とは異なる電位を有することが好ましい。更に、第1実施形態によれば、絶縁層30は第1伸縮性配線20と第2伸縮性配線40との間の重なり部分70に位置するにすぎないため、生体等の被着体300と伸縮性基材10との間に間隙を供することができる。これにより、伸縮性デバイス100の通気性の向上も図ることができる。
【0043】
上記では、
図3および
図4を用いて、伸縮性デバイスの伸縮前および伸縮時の態様を説明したが、以降は、伸縮性デバイスの伸縮時の態様を示す図面を用いて、第1実施形態の変形例および第2実施形態~第5実施形態について説明することを確認的に付言しておく。
【0044】
また、伸縮性能が絶縁層30よりも相対的に小さいことを前提として、伸縮性能の異なる2つ以上の第1粘着層50が供され得る。この場合、絶縁層30と比べて、相対的により固い(スーパーハードの)第1粘着層と相対的に固い(ハードの)第1粘着層とが供され得る。例えば、2つの第1粘着層が積層される構造であってもよいし、幅方向に2つの第1粘着層が並んで配置される構造であってもよい。
【0045】
[第1実施形態の変形例1]
以下、
図5を参照しながら、第1実施形態に係る伸縮性デバイスの変形例1の構成について説明する。第1実施形態の変形例1は、第1実施形態(
図3および
図4参照)と比べて、第1粘着層50Aの形態が異なる。
【0046】
図5は、本発明の第1実施形態に係る伸縮性デバイスの変形例1の部分拡大模式断面図である(
図2の線分X-X間における断面図に対応)。
【0047】
図5に示すように、第1粘着層50Aの厚みは絶縁層30の厚みよりも大きい。この場合、第1粘着層50Aのヤング率が絶縁層30のヤング率よりも小さい。即ち、
図3および
図4に示す第1粘着層50と比べて、相対的に柔らかくかつ分厚い第1粘着層50Aが用いられ得る。これに加えて、第1粘着層50Aの幅が絶縁層30の幅よりも大きいことが好ましい。
【0048】
かかる構成を採ることで、第1粘着層50Aは絶縁層30よりも相対的に小さい伸縮性能を供することができる。これにより、第1伸縮性配線20と第2伸縮性配線40との間の重なり部分に位置する絶縁層30も伸縮し難くなる。その結果、伸縮性デバイス100Aの伸縮前後における絶縁層30の厚さの低減が抑制され、それによって、2つの伸縮性配線20、40間のIR(絶縁抵抗)の低下が抑制され得る。
【0049】
なお、第1粘着層50Aは絶縁層30よりも相対的に小さい伸縮性能を有するならば、第1粘着層50Aのヤング率が絶縁層30のヤング率より大きい場合があってよいことは言うまでもない。
【0050】
[第1実施形態の変形例2]
以下、
図6を参照しながら、第1実施形態に係る伸縮性デバイスの変形例2の構成について説明する。第1実施形態の変形例2は、第1実施形態(
図3および
図4参照)と比べて、第1粘着層50Bの配置箇所が異なる。
【0051】
図6は、本発明の第1実施形態に係る伸縮性デバイスの変形例2の部分拡大模式断面図である(
図2の線分X-X間における断面図に対応)。
【0052】
図6に示すように、変形例2では、伸縮性デバイス100Bは保護層60を更に備え得る。
第2伸縮性配線40は絶縁層と対向する第1の側41とこの第1の側41とは反対側の第2の側42を有する。この場合において、生体適合性および絶縁性の確保ならびに防水の観点から、保護層60は第2伸縮性配線40の第2の側42と接することが好ましい。又、
図6に示すように、一例では、保護層60は第1伸縮性配線20と接するように配置され得る。しかしながら、これに限定されることなく、断面視で、保護層60と第1伸縮性配線20との間に空隙が供されてよい。
【0053】
上記の観点をふまえ、保護層60は伸縮性を有する樹脂材料から形成され得る。例えば、保護層60は、ポリエステル系樹脂、スチレン系樹脂、オレフィン系樹脂、エポキシ系樹脂、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂又はシリコーン系樹脂で形成され得る。
【0054】
かかる構成下において、第1粘着層50Bは保護層60と生体等の被着体300との間に位置づけられ得る。即ち、変形例2における第1粘着層50Bは、
図3および
図4に示す第1粘着層50と比べて、伸縮性基材10ではなく、保護層60と生体等の被着体300との間に位置づけられ得る。なお、
図3および
図4に示す第1粘着層50と同様に、変形例2における第1粘着層50Bも絶縁層30よりも相対的に小さい伸縮性能を供することを前提とする。
【0055】
以上により、変形例2においても、第1伸縮性配線20と第2伸縮性配線40との間の重なり部分に位置する絶縁層30も伸縮し難くなる。その結果、伸縮性デバイス100Bの伸縮前後における絶縁層30の厚さの低減が抑制され、それによって、2つの伸縮性配線20、40間のIR(絶縁抵抗)の低下が抑制され得る。
【0056】
なお、第1実施形態およびその変形例1、2につき、伸縮性基材10と生体等の被着体300の双方に好適に粘着させる観点から、第1粘着層50の厚みは一定であることが好ましい。又、上記のとおり、第1粘着層50自体の性質(ヤング率)および第1粘着層50自体の厚みの調整により、第1粘着層50は絶縁層30よりも相対的に固いという特徴を供することができる。即ち、第1粘着層50は、その内部に補強部材を別途有していなくとも絶縁層30よりも相対的に固いという特徴を供することができる点でも、従前の態様と比べて技術的な違いがある。
【0057】
[第2実施形態]
以下、
図7を参照しながら、第2実施形態に係る伸縮性デバイスの構成について説明する。第1実施形態(
図3および
図4参照)と比べて、第2実施形態は少なくとも2種類の粘着層を用いる点で異なる。
【0058】
図7は、本発明の第2実施形態に係る伸縮性デバイスの部分拡大模式断面図である(
図2の線分X-X間における断面図に対応)。
【0059】
第2実施形態では、第1粘着層51Cに加えて第2粘着層52Cが更に用いられる。具体的には、
図7に示すように、第2粘着層52Cは、断面視で第1粘着層51Cの少なくとも一方の側と対向し、かつ第1粘着層51Cとは異なるヤング率を有し得る。
【0060】
また、絶縁層30の性質と比べると、第2粘着層52Cは絶縁層30よりも相対的に小さい伸縮性能を有し得る。例えば、第2粘着層52Cは、絶縁層30よりも相対的に小さいヤング率を有することができる。
【0061】
かかる構成によれば、第1実施形態と比べて、第1粘着層51Cと第2粘着層52Cとが隣り合って並列に配置され得る。これにより、伸縮性基材10と生体等の被着体300との間の領域に占める粘着層の割合を増やすことができる。又、伸縮性デバイス100の伸縮時における伸縮性基材10と生体等の被着体300との間の領域の厚みの全体としての均一化を図ることができる。
【0062】
以上により、第1実施形態における第1粘着層のみが配置される場合と比べて、断面視で、第1粘着層51Cの少なくとも一方の側にて、伸縮時に被着体300に向かって伸縮性デバイス100C(具体的には伸縮性基材10、伸縮性配線20、40)が意図せずに局所的に湾曲または屈曲することを抑制することができる。その結果、伸縮性デバイス100Cの全体としての強度向上を図ることができる。
【0063】
なお、伸縮時における伸縮性基材10と生体等の被着体300との間の領域の厚みの均一化の更なる向上の観点からは、
図7に示すように、第2粘着層52Cは第1粘着層51Cと接することが好ましい。これに限定されることなく、別例では、後述の変形例に示すように第1粘着層と第2粘着層52とは相互に離隔しかつ対向するようにも配置され得る。
【0064】
[第2実施形態の変形例1]
以下、
図8を参照しながら、第2実施形態に係る伸縮性デバイスの変形例1の構成について説明する。第2実施形態の変形例1は第2実施形態(
図7参照)と比べて、第1粘着層の幅寸法の点で異なる。
【0065】
図8は、本発明の第2実施形態に係る伸縮性デバイスの変形例1の部分拡大模式断面図である(
図2の線分X-X間における断面図に対応)。
【0066】
第2実施形態の変形例1では、
図8に示すように、断面視で、第1粘着層51Dの幅が絶縁層30の幅よりも小さい。換言すれば、伸縮性基材10の厚み方向Xにて、第1粘着層51Dと第2粘着層52Dが絶縁層30と重なり得る。
【0067】
かかる構成によれば、第1粘着層51Dの幅が絶縁層30の幅よりも小さいため、伸縮性デバイス100Dの伸縮時に、相対的に固い性質を有する第1粘着層51Dへの応力集中を抑制することができる。
【0068】
即ち、
図7に示す伸縮性デバイス100Dの伸縮時に、
図7に示すような、第1粘着層51Cの幅と絶縁層30の幅とが同一または実質同一である場合と比べて、相対的に固い性質を有する第1粘着層51Dにかかる応力を緩和することができる。
【0069】
第1粘着層の幅と絶縁層の幅とが同一または実質同一である場合、伸縮性デバイスにおける応力の集中点は、幅方向における第1粘着層とこれに接する構成部材との界面、および幅方向における絶縁層とこれに接する構成部材との界面であり得る。
【0070】
これに対して、本実施形態では、伸縮性基材10の厚み方向Xにて、第1粘着層51Dと第2粘着層52Dが絶縁層30と重なるため、相対的に柔らかい絶縁層30により、伸縮性基材10の厚み方向Xにて、第1粘着層51Dと絶縁層30との重なり領域では、固い側の性質を有する第1粘着層51Dの影響が強い。第2粘着層52Dと絶縁層30との重なり領域では、固い側の性質を有する第2粘着層52Dの影響が強い。伸縮性基材10の厚み方向Xにて、第2粘着層52Dと絶縁層30とが重ならない領域では、第2粘着層52Dの影響が作用する。
【0071】
以上の事から、第2粘着層52D、絶縁層30、および第1粘着層51Dのそれぞれのヤング率をこの順で高くすると、伸縮のしやすさを緩やかに変化させることができるため、伸縮性デバイスの応力をより緩和することができる。
【0072】
[第2実施形態の変形例2]
以下、
図9を参照しながら、第2実施形態に係る伸縮性デバイスの変形例2の構成について説明する。第2実施形態の変形例2は、第2実施形態およびその変形例1(
図7および
図8参照)と比べて、第1粘着層51Eと第2粘着層52Eとの配置態様の点で異なる。
【0073】
図9は、本発明の第2実施形態に係る伸縮性デバイスの変形例2の部分拡大模式断面図である(
図2の線分X-X間における断面図に対応)。
【0074】
具体的には、断面視で、第2粘着層52Eは第1粘着層51Eと離隔し得る。かかる構成によれば、第1粘着層51Eと第2粘着層52Eの並列配置による伸縮性デバイス100Eの伸縮時における伸縮性基材10と生体等の被着体300との間の領域の厚みの均一化の向上を図ることができる。これに加えて、第2粘着層52Eと第1粘着層51Eとの離隔配置により、間隙(物理的な空間に相当)が供され得るため、生体等の被着体300と伸縮性基材10との間における通気性の向上も図ることができる。
【0075】
[第3実施形態]
以下、
図10および
図11を参照しながら、第3実施形態に係る伸縮性デバイスの構成について説明する。第1実施形態(
図3および
図4参照)と比べて、第3実施形態は配線重なり部分70Fが複数ある点で異なる。
【0076】
図10は、本発明の第3実施形態に係る伸縮性デバイスを模式的に示す平面図である。
図11は、
図10の線分Y-Y間における本発明の第3実施形態に係る伸縮性デバイスの部分拡大模式断面図である。
【0077】
図10に示すように、第3実施形態は配線重なり部分70Fが複数あることを前提とする。本明細書では、第1伸縮性配線20と重なる複数の伸縮性配線のそれぞれが上述の第2伸縮性配線41~43に相当する。
【0078】
この場合において、
図11に示すように、伸縮性基材の厚み方向Xにて、第1粘着層50Fは、複数の配線重なり部分70Fにおける絶縁層30Fと重なり得る。一例では、
図11に示すように、複数の配線重なり部分70Fの各々にて、絶縁層30Fとこの絶縁層30Fに重なる第1粘着層50Fとがそれぞれ位置付けられ得る。
【0079】
第1実施形態と同様に、第3実施形態においても、各第1粘着層50Fは、伸縮性基材10の厚み方向Xにて絶縁層30と重なり、かつ各絶縁層30Fよりも相対的に小さい伸縮性能を有する。かかる構成によれば、各配線重なり部分70Fに位置する絶縁層30も伸縮し難くなるため、従前の態様(
図16および
図17参照)と比べて、伸縮性デバイス100Fの伸縮前後における各絶縁層30Fの厚さの低減を抑制することができる(
図10および
図11参照)。
【0080】
以上の事から、配線重なり部分70Fが複数ある場合おいても、各絶縁層30Fの厚みの低減抑制により、各配線重なり部分70Fにおける伸縮性配線20、40間のIR(絶縁抵抗)の低下を抑制することができる。即ち、各配線重なり部分70Fにおける伸縮性配線20、40間における漏洩電流の発生を抑制することができる。
【0081】
又、第3実施形態では、複数の第1粘着層50Fが所定の間隔をおいて離隔配置され得るため、生体等の被着体300と伸縮性基材10との間に所定の間隔をおいて複数の間隙が形成され得る。これにより、生体等の被着体300と伸縮性基材10との間における通気性の向上を図ることができる。
【0082】
[第4実施形態]
以下、
図12および
図13を参照しながら、第4実施形態に係る伸縮性デバイスの構成について説明する。第3実施形態(
図10および
図11参照)と比べて、第4実施形態は、1つの絶縁層および1つの第1粘着層が複数の配線重なり部分を跨るように位置付けられる点で異なる。
【0083】
図12は、本発明の第4実施形態に係る伸縮性デバイスを模式的に示す平面図である。
図13は、
図12の線分Z-Z間における本発明の第4実施形態に係る伸縮性デバイスの部分拡大模式断面図である。
【0084】
図12および
図13に示すように、第4実施形態では、複数の配線重なり部分70Gを跨る1つの絶縁層30Gと、1つの絶縁層30Gに重なる第1粘着層50Gとが位置付けられ得る。
【0085】
かかる構成によれば、第3実施形態と比べて、複数の配線重なり部分70Gを含む伸縮性デバイス100Gの製造に際して、伸縮性基材10の主面に第1粘着層の材料を一度に連続して供することができる。更に、第1伸縮性配線20の主面に絶縁層の材料を一度に連続して供することができる。
【0086】
以上により、複数の配線重なり部分70Gを含む伸縮性デバイス100Gの製造プロセスを簡素化できるため、第4実施形態に係る伸縮性デバイス100Gの製造効率の向上を図ることができる。
【0087】
また、第4実施形態では、1つの絶縁層30Gが複数の配線重なり部分70Gを跨るように配置されるため、第1伸縮性配線20と第2伸縮性配線41~43の各々との接触をより好適に抑制することができる。これにより、イオンマイグレーションの発生抑制と短絡発生の抑制をより好適に図ることができる。
【0088】
更に、第4実施形態では、1つの第1粘着層50Gが複数の配線重なり部分70Gを跨るように位置付けられるため、生体等の被着体300と伸縮性基材10との間に占める第1粘着層50Gの領域が広くなり得る。これにより、伸縮性基材10との接続強度が高まり、
伸縮性デバイス100Gの強度向上を図ることができる。また、生体等の被着体300への粘着領域が広くなることによる、生体等の被着体300への伸縮性デバイス100Gの保持をしやすくなる。
【0089】
[第5実施形態]
以下、
図14および
図15を参照しながら、第5実施形態に係る伸縮性デバイスの構成について説明する。第1実施形態(
図1~
図4参照)と比べて、第5実施形態は、電子部品が伸縮性デバイスに実装されている態様である点で異なる。
【0090】
図14は、本発明の第5実施形態に係る伸縮性デバイスを模式的に示す平面図である。
図15は、
図14の線分W-W間における本発明の第5実施形態に係る伸縮性デバイスの部分拡大模式断面図である。
【0091】
図14および
図15に示すように、第5実施形態では、電子部品200が実装され、伸縮性基材10の厚み方向Xにおいて、電子部品200が第1粘着層50Hと重なる。電子部品200はランド210を介して第1伸縮性配線20と接続される。
【0092】
かかる構成を採ることにより、第5実施形態では、第1粘着層50Hは、伸縮性基材10の厚み方向Xにて絶縁層30に加えて電子部品200とも重なり、かつ絶縁層30Fよりも相対的に小さい伸縮性能を有する。そのため、第1粘着層50Hと重なる、絶縁層30Fとランド210の両方が伸縮し難くなる。これにより、伸縮性デバイス100Hの伸縮前後における、絶縁層30Fの厚さの低減抑制による配線重なり部分70における伸縮性配線20、40間のIRの低下抑制が可能となる。これに加えて、伸縮性デバイス100Hの伸縮前後における、ランド210を介して伸縮性デバイス100Hと接続された電子部品200の断線を抑制することができる(
図14および
図15参照)。
【0093】
なお、電子部品が伸縮性デバイスに実装される場合、デバイスの伸縮時におけるランド210の伸縮発生防止およびランド210と接続する電子部品200の保護の観点から、電子部品200およびランド210を覆うように樹脂材を添加する工程(ポッティング工程)が通常必要となり得る。
【0094】
この点につき、上記のとおり、第5実施形態では、伸縮性デバイス100Hの伸縮前後におけるランド210の伸縮およびこれに伴う電子部品200の断線が抑制され得る。そのため、上記のポッティング工程の実施が不要である。かかる工程の実施不要により、ケミカルアタックの発生防止と、電子部品200の低背化が可能となる。
【0095】
なお、各実施形態および変形例は例示であり、本発明は各実施形態および変形例に限定されるものではない。また、各図面は構成要素の例示であって、形状を限定するものではない。また、異なる実施形態および変形例で示した構成の部分的な置換又は組み合わせが可能である。
【0096】
本発明の一実施形態に係る伸縮性デバイスは下記態様を採り得る。
<1>
伸縮性基材、前記伸縮性基材上に設けられかつ前記伸縮性基材の厚み方向にて相互に部分的に重なる第1伸縮性配線および第2伸縮性配線、前記第1伸縮性配線と前記第2伸縮性配線との間の配線重なり部分に配置された絶縁層、ならびに前記厚み方向にて前記絶縁層の少なくとも一部と重なる第1粘着層を備え、前記第1粘着層は前記絶縁層よりも相対的に小さい伸縮性能を有する、伸縮性デバイス。
<2>
前記配線重なり部分において、前記第1伸縮性配線と前記第2伸縮性配線とが相互に交差する、<1>に記載の伸縮性デバイス。
<3>
前記第1粘着層のヤング率は前記絶縁層のヤング率よりも大きい、<1>又は<2>に記載の伸縮性デバイス。
<4>
前記第1粘着層が前記伸縮性基材と被着体との間に位置する、<1>~<3>のいずれかに記載の伸縮性デバイス。
<5>
保護層を更に備え、前記第2伸縮性配線は前記絶縁層と対向する第1の側と前記第1の側とは反対側の第2の側を有し、前記保護層が前記第2の側と接し、前記第1粘着層が前記保護層と被着体との間に位置する、<1>~<4>のいずれかに記載の伸縮性デバイス。
<6>
前記第2粘着層を更に備え、前記第2粘着層が、断面視で前記第1粘着層の少なくとも一方の側と対向し、かつ前記第1粘着層とは異なるヤング率を有する、<1>~<5>のいずれかに記載の伸縮性デバイス。
<7>
前記第2粘着層は、前記絶縁層よりも相対的に小さい伸縮性能を有する、<6>に記載の伸縮性デバイス。
<8>
前記第2粘着層のヤング率が、前記絶縁層のヤング率よりも小さい、<6>又は<7>に記載の伸縮性デバイス。
<9>
前記第2粘着層は前記第1粘着層と離隔する、<6>~<8>のいずれかに記載の伸縮性デバイス。
<10>
前記第2粘着層は前記第1粘着層と接する、<6>~<9>のいずれかに記載の伸縮性デバイス。
<11>
前記伸縮性基材の厚み方向にて、前記第2粘着層が前記絶縁層と重なる、<6>~<10>のいずれかに記載の伸縮性デバイス。
<12>
断面視で、前記第1粘着層の幅が前記絶縁層の幅よりも小さい、<11>に記載の伸縮性デバイス。
<13>
前記配線重なり部分が複数あり、前記伸縮性基材の厚み方向にて、前記複数の配線重なり部分の各々にて、前記絶縁層と前記絶縁層に重なる前記第1粘着層とがそれぞれ位置付けられる、<1>~<12>のいずれかに記載の伸縮性デバイス。
<14>
前記配線重なり部分が複数あり、前記伸縮性基材の厚み方向にて、前記複数の配線重なり部分を跨る1つの前記絶縁層と、前記1つの絶縁層に重なる前記第1粘着層とが位置付けられる、<1>~<13>のいずれかに記載の伸縮性デバイス。
<15>
前記第1粘着層の厚みが前記絶縁層の厚みよりも大きい、<1>~<14>のいずれかに記載の伸縮性デバイス。
<16>
前記第1粘着層の厚みが前記絶縁層の厚みよりも大きい場合に、前記第1粘着層のヤング率は前記絶縁層のヤング率よりも小さい、<15>に記載の伸縮性デバイス。
<17>
断面視で、前記第1粘着層の幅が前記絶縁層の幅よりも大きい、<16>に記載の伸縮性デバイス。
<18>
電子部品を実装可能となっており、前記伸縮性基材の厚み方向において、前記電子部品が前記第1粘着層と重なる、<1>~<17>のいずれかに記載の伸縮性デバイス。
<19>
前記第1伸縮性配線と前記第2伸縮性配線とは異なる電位を有する、<1>~<18>のいずれかに記載の伸縮性デバイス。
<20>
前記第1粘着層の厚みが一定である、<1>~<19>のいずれかに記載の伸縮性デバイス。
【0097】
300 被着体300(生体等)
200、201、202 電子部品
100、100A~100H、100’ 伸縮性デバイス
10、10’ 伸縮性基材
20、20’ 第1伸縮性配線
30、30F、30G、30’ 絶縁層
40、40’、41~43 第2伸縮性配線
50、50A、50B、51C、51D、51E、50F、50G、50H、50’ 第1粘着層
52C、52D、52E 第2粘着層
60 保護層
70、70F、70G 配線重なり部分
X 伸縮性基材の厚み方向