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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-20
(45)【発行日】2025-01-28
(54)【発明の名称】複合成形体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 70/44 20060101AFI20250121BHJP
   B29C 70/16 20060101ALI20250121BHJP
   B29C 70/68 20060101ALI20250121BHJP
   B29C 43/12 20060101ALI20250121BHJP
【FI】
B29C70/44
B29C70/16
B29C70/68
B29C43/12
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2022114537
(22)【出願日】2022-07-19
(65)【公開番号】P2024012804
(43)【公開日】2024-01-31
【審査請求日】2024-04-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】小嶋 達也
(72)【発明者】
【氏名】池 敬
(72)【発明者】
【氏名】片平 奈津彦
【審査官】岸 智章
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-082832(JP,A)
【文献】特開昭60-234833(JP,A)
【文献】特開2019-059048(JP,A)
【文献】特表2008-531902(JP,A)
【文献】特開2011-011473(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 70/44
B29C 70/16
B29C 70/68
B29C 43/12
B64C 11/00
F03D 1/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1及び第2の複合材をそれぞれ成形して、第1及び第2の複合成形体を形成する複合成形体の製造方法であって、
前記第1及び第2の複合成形体は、互いに接合可能な被接合部を備え、
前記第1及び第2の複合成形体の前記被接合部が互いに接合して、複合材接合体が形成され、
前記第1及び第2の複合材は、前記第1及び第2の複合成形体の被接合部にそれぞれ相当する被接合予定部を備え、
成形型内に配置された第1及び第2の複合材同士に挟まれた空間内に、マンドレルと、押圧部とを配置する工程であって、前記配置されたマンドレルは、前記押圧部と、前記第1及び第2の複合材の被接合予定部同士との間に挟まれる工程と、
前記押圧部が前記マンドレルを前記第2の複合材の被接合予定部に押し当てる工程と、を備える、
複合成形体の製造方法。
【請求項2】
前記押圧部が前記マンドレルを前記第2の複合材の被接合予定部に押し当てる工程において、前記押圧部は、膨張可能な第1のバッグを備え、ガスを前記第1のバッグ内に供給して、前記第1のバッグ内を加圧し、又は前記第1のバッグを膨張させることによって、前記マンドレルを前記第2の複合材の被接合予定部に押し当てる、
請求項1に記載の複合成形体の製造方法。
【請求項3】
前記第1のバッグは、前記第1及び第2の複合材の被接合予定部同士の間に挿入された端部を備え、ガスを前記第1のバッグ内に供給して、前記第1のバッグ内を加圧し、又は前記第1のバッグを膨張させることによって、前記第1のバッグの前記端部が前記第1の複合材の被接合予定部を前記成形型に押し当てる、
請求項2に記載の複合成形体の製造方法。
【請求項4】
前記押圧部が前記マンドレルを前記第2の複合材の被接合予定部に押し当てる工程において、
前記押圧部は、前記第1のバッグ内に配置された第2のバッグをさらに備え、
ガスを前記第2のバッグ内に供給し、前記第2のバッグを膨張させる、
請求項2又は3に記載の複合成形体の製造方法。
【請求項5】
前記第2のバッグ内の圧力P2は、前記第1のバッグ内の圧力P1と比較して大きい、
請求項4に記載の複合成形体の製造方法。
【請求項6】
前記押圧部が前記マンドレルを前記第2の複合材の被接合予定部に押し当てる工程において、
前記押圧部は、前記第1のバッグ内に配置された熱膨張体を備え、
前記熱膨張体を加熱して熱膨張させる、
請求項2又は3に記載の複合成形体の製造方法。
【請求項7】
前記複合材接合体は、飛行体のプロペラであり、
前記複合材接合体において、接合された前記第1及び第2の複合成形体の被接合部同士は、前記飛行体の前記プロペラのリーディングエッジ部である、
請求項1又は2に記載の複合成形体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、複合成形体の製造方法に関し、互いに接合して複合材接合体を形成可能な2つの複合成形体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示の製造方法では、繊維強化樹脂中空部品製の風車ブレードを低融点合金中子を用いて一体成形する。また、特許文献2及び3に開示の製造方法では、ブレードの半分の形状に対応する半割れの2つの型を用いて行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2017/126287号
【文献】特開2011-137386号公報
【文献】特開2012-082832号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本願発明者は、以下の課題を発見した。
特許文献1に開示の技術は、樹脂を事前に含浸しない強化繊維基材に後で液状樹脂を含浸する成形(RTM:Resin Transfer Molding)である。特許文献1に開示の技術は、同じ強化繊維を用いた場合、あらかじめ樹脂を含浸したプリプレグ基材に圧力を加え成形する成形方法と比較して、液状樹脂を緻密な強化繊維層に短時間で含浸させる必要がある。これによって、特許文献1に開示の製造方法は、当該成形方法と比較して、(1)粘度が高い高性能樹脂が使えない、(2)高繊維含有率では樹脂が含浸しない、の理由によって材料特性が劣る。そのため、同じ製品強度を得るためには厚みを増すなどの設計が必要となり、質量が大きくなる欠点がある。また、低融点合金を使った中子は、中子の製造、溶出といった工程が余分に必要になるとの課題がある。さらに、低融点合金は比重が鉄よりも重いため、樹脂硬化時に低融点合金中子の温度が上昇するのに時間がかかり、搬送装置も大がかりとなる課題がある。
【0005】
特許文献2では、成形する材料および成形法が明示されていないが、特許文献2に開示の製造方法がRTMである場合、特許文献1に開示の製造方法と同じ課題を有する。また、プリプレグ材料を用いて半割れ型で成形する場合、材料に圧力を加えるためには、オートクレーブが必要となるが、オートクレーブを用いた成形は、オートクレーブの設備費用が高価、雰囲気温度による温調(加熱、冷却)のため成形時間が長いなどの課題がある。
【0006】
特許文献3では成形する材料が明示されていないが、特許文献3に開示の製造方法がRTMである場合、特許文献1に開示の技術と同じ課題を有する。プリプレグ材料を用いる場合は、特許文献3に開示の製造方法では内部バッグによって圧力を加えることができる。しかし、ウェブ部の形状や位置を保持することができないため、量産するさいに毎回ウェブを高精度に維持することができない。また、重要な強度剛性を負担するウェブの強化繊維が連続していない。これらにより、高い信頼性が求められる飛行体や強度が必要な大型の風車に適用するには課題がある。
【0007】
本開示は、上述した課題を鑑みてなされたものであり、2つの複合成形体の被接合部同士の形状精度の向上を図ることができる複合成形体の製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示に係る複合成形体の製造方法は、
第1及び第2の複合材をそれぞれ成形して、第1及び第2の複合成形体を形成する複合成形体の製造方法であって、
前記第1及び第2の複合成形体は、互いに接合可能な被接合部を備え、
前記第1及び第2の複合成形体の前記被接合部が互いに接合して、複合材接合体が形成され、
前記第1及び第2の複合材は、前記第1及び第2の複合成形体の被接合部にそれぞれ相当する被接合予定部を備え、
成形型内に配置された第1及び第2の複合材同士に挟まれた空間内に、マンドレルと、押圧部とを配置する工程であって、前記配置されたマンドレルは、前記押圧部と、前記第1及び第2の複合材の被接合予定部同士との間に挟まれる工程と、
前記押圧部が前記マンドレルを前記第2の複合材の被接合予定部に押し当てる工程と、を備える。
【0009】
なお、前記成形型は、熱媒体(水、オイル、気体等)や電気(ヒータ、誘導加熱、誘電加熱等)にて金型の温度をコントロールする手段を備えてもよい。
【0010】
また、前記複合成形体は、あらかじめ半硬化状の樹脂を含浸済みのプリプレグシートや、樹脂を含浸していない強化繊維シートに型内で液状樹脂を充填含浸する方法の双方に適用可能であるが、材料特性に優れるプリプレグシートと組み合わせることでより軽量化に優れた製品を得ることができる。
【0011】
このような構成によれば、押圧部がマンドレルを第2の複合材の被接合予定部に押し当てて、第2の複合材を成形し第2の複合成形体を形成する。これによって、形状精度の高い第2の複合成形体の被接合部を形成することができる。したがって、第1及び第2の複合成形体の被接合部同士の形状精度の向上を図ることができる。
【0012】
また、前記押圧部が前記マンドレルを前記第2の複合材の被接合予定部に押し当てる工程において、前記押圧部は、膨張可能な第1のバッグを備え、ガスを前記第1のバッグ内に供給して、前記第1のバッグ内を加圧し、又は前記第1のバッグを膨張させることによって、前記マンドレルを前記第2の複合材の被接合予定部に押し当ててもよい。
【0013】
このような構成によれば、第1のバッグは多様な形状の第2の複合材等に対して膨張し押圧可能である。よって、多様な形状の第2の複合材を成形し、形状精度の高い第2の複合成形体の被接合部を形成することができる。
【0014】
また、前記第1のバッグは、前記第1及び第2の複合材の被接合予定部同士の間に挿入された端部を備え、ガスを前記第1のバッグ内に供給して、前記第1のバッグ内を加圧し、又は前記第1のバッグを膨張させることによって、前記第1のバッグの前記端部が前記第1の複合材の被接合予定部を前記成形型に押し当ててもよい。
【0015】
このような構成によれば、第1のバッグの端部が第1の複合材の被接合予定部を成形型に押し当てて、第1の複合成形体を成形する。これによって、形状精度の高い第1の複合成形体の被接合部を形成することができる。
【0016】
また、前記押圧部が前記マンドレルを前記第2の複合材の被接合予定部に押し当てる工程において、前記押圧部は、前記第1のバッグ内に配置された第2のバッグをさらに備え、ガスを前記第2のバッグ内に供給し、前記第2のバッグを膨張させてもよい。また、前記第2のバッグ内の圧力P2は、前記第1のバッグ内の圧力P1と比較して大きいとよい。
【0017】
このような構成によれば、第2のバッグを膨張させることによって、マンドレルが第2の複合材の被接合予定部に押し当たる力を高めることができる。そのため、第2の複合成形体の被接合部の形状精度の向上を図ることができる。
【0018】
また、前記押圧部が前記マンドレルを前記第2の複合材の被接合予定部に押し当てる工程において、前記押圧部は、前記第1のバッグ内に配置された熱膨張体を備え、前記熱膨張体を加熱して熱膨張させてもよい。
【0019】
このような構成によれば、簡易な構成である熱膨張体を用いて、第2の複合成形体の被接合部の形状精度の向上を図ることができる。
【0020】
このような構成によれば、プリプレグシートを使用した高品質な複合材製品の成形で一般的な高価で温度コントロールに時間がかかるオートクレーブを使用しなくても、押圧部にて複合材に圧力を加え、成形型の温度を短時間でコントロールできることから、高品質な複合成形体を高い生産性で製造することができる。
【0021】
また、前記複合材接合体は、飛行体の翼やプロペラであり、
前記複合材接合体において、接合された前記第1及び第2の複合成形体の被接合部同士は、前記飛行体の前記翼やプロペラのリーディングエッジ部であってもよい。
【0022】
このような構成によれば、飛行体の翼やプロペラのリーディングエッジ部を高い形状精度で成形することができる。
【発明の効果】
【0023】
本開示によれば、2つの複合成形体の被接合部同士の形状精度の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】実施の形態1に係る複合成形体の製造方法を示すフローチャートである。
図2】実施の形態1に係る複合成形体の製造方法の一工程における上側金型を示す概略図である。
図3】実施の形態1に係る複合成形体の製造方法の一工程における上側金型の断面を示す概略図である。
図4】実施の形態1に係る複合成形体の製造方法の一工程における下側金型を示す概略図である。
図5】実施の形態1に係る複合成形体の製造方法の一工程における下側金型の断面を示す概略図である。
図6】実施の形態1に係る複合成形体の製造方法の一工程を示す概略図である。
図7】複合成形体を示す概略図である。
図8】実施の形態2に係る複合成形体の製造方法を示すフローチャートである。
図9】実施の形態2に係る複合成形体の製造方法の一工程における下側金型を示す概略図である。
図10】実施の形態2に係る複合成形体の製造方法の一工程における下側金型の断面を示す概略図である。
図11】実施の形態2に係る複合成形体の製造方法の一工程を示す概略図である。
図12】実施の形態1に係る複合成形体の製造方法の一工程の一具体例を示す概略図である。
図13】実施の形態2に係る複合成形体の製造方法の一工程の一具体例を示す概略図である。
図14】実施の形態3に係る複合成形体の製造方法を示すフローチャートである。
図15】実施の形態3に係る複合成形体の製造方法の一工程における下側金型を示す概略図である。
図16】実施の形態3に係る複合成形体の製造方法の一工程における下側金型の断面を示す概略図である。
図17】実施の形態3に係る複合成形体の製造方法の一工程を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明を適用した具体的な実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。ただし、本発明が以下の実施形態に限定される訳ではない。また、説明を明確にするため、以下の記載及び図面は、適宜、簡略化されている。
【0026】
(実施の形態1)
図1図7を参照して実施の形態1に係る複合成形体の製造方法について説明する。なお、本実施の形態に係る複合成形体の製造方法は、プリプレグシートを使用したが、プリプレグシートを用いず強化繊維シートに型内で液状樹脂を充填含浸する方法にも適用可能である。また、本実施の形態に係る複合成形体の製造方法は、オートクレーブを使用することなく、実施することができる。図1は、実施の形態1に係る複合成形体の製造方法を示すフローチャートである。図2は、実施の形態1に係る複合成形体の製造方法の一工程における上側金型を示す概略図である。図3は、図2に示す上側金型の断面を示す概略図である。図4は、実施の形態1に係る複合成形体の製造方法の一工程における下側金型を示す概略図である。図5は、図4に示す下側金型の断面を示す概略図である。図6は、実施の形態1に係る複合成形体の製造方法の一工程を示す概略図である。図7は、複合成形体を示す概略図である。
【0027】
なお、当然のことながら、図2及びその他の図面に示した右手系xyz座標は、構成要素の位置関係を説明するための便宜的なものである。通常、z軸プラス向きが鉛直上向き、xy平面が水平面であり、図面間で共通である。なお、図2図3では、見やすさのため、その他の図面と異なり、後述する上側金型1等を上下逆転している。また、見やすさのため、後述する上側金型本体1a及び下側金型本体2aのハッチングの図示を省略する。また、後述する上側フィルム4a、下側フィルム4b、及び第1のバッグ4は、破線を用いて概略的に図示した。
【0028】
本実施の形態に係る複合成形体の製造方法は、例えば、図6に示す成形型10を用いて実施することができる。本実施の形態に係る複合成形体の製造方法は、第1及び第2の複合材W1、W2をそれぞれ成形し、図7に示す第1及び第2の複合成形体M1、M2を製造する。第1の複合成形体M1は、本体M1aと、被接合部M1bとを備える。被接合部M1bは、本体M1aの一端から延びる。第2の複合成形体M2は、本体M2aと、被接合部M2bとを備える。被接合部M1bは、本体M1aの一端から延びる。被接合部M1b、M2bは、互いに接合可能である。被接合部M1b、M2b同士が互いに接合すると、複合材接合体が形成される。
【0029】
成形型10は、上側金型1と、下側金型2とを備える。上側金型1は、下側金型2の上側において配置されている。また、上側金型1と下側金型2とが押し合い、又は、離隔することができるように保持される。
【0030】
図2及び図3に示すように、上側金型1は、上側金型本体1aと、温調回路1bと、シール1cとを備える。上側金型本体1aはキャビティ面1dを有し、キャビティ面1dは、第1の複合成形体M1に倣う表面形状を有する。温調回路1bは、上側金型本体1aの内部に設けられている。図示しない温調機が熱媒体を温調回路1bに流入させ、排出させ、又は循環させる。この熱媒体は、例えば、水、オイル、気体などである。この熱媒体が上側金型本体1aに熱を与え、上側金型1の温度は所定の範囲内に到達し、その後維持される。シール1cは、上側金型本体1aのキャビティ面1dを包囲する。上側金型1は、図示しない配管を有してもよい。当該配管の一端は、キャビティ面1d周辺において開口し、当該配管の他端は、真空ポンプに接続されている。
【0031】
図4及び図5に示すように、下側金型2は、下側金型本体2aと、温調回路2bと、シール2cとを備える。下側金型本体2aは、キャビティ面2dを有し、キャビティ面2dは、第2の複合成形体M2を成形した成形体に倣う表面形状を有する。温調回路2bは、下側金型本体2aの内部に設けられている。図示しない温調機が熱媒体を温調回路2bに流入させ、排出させ、又は循環させる。この熱媒体が下側金型本体2aに熱を与え、下側金型2の温度が所定の範囲内に収まる。シール2cは、下側金型本体2aのキャビティ面2dを包囲する。下側金型2は、図示しない配管を有してもよい。当該配管の一端は、キャビティ面2d周辺において開口し、当該配管の他端は、真空ポンプに接続されている。なお、成形型10は、ヒータ、誘導加熱、誘電加熱等の電気にて上側金型1下及び下側金型2の温度をコントロールする手段を備えてもよい。
【0032】
まず、図6に示すように、成形型10内に配置された第1及び第2の複合材W1、W2同士に挟まれた空間C1内に、マンドレル3と、第1のバッグ4とを配置する(工程ST11)。この配置されたマンドレル3は、第1のバッグ4と、第1及び第2の複合材W1、W2の被接合予定部W1b、W2b同士との間に挟まれる。本実施の形態に係る複合成形体の製造方法では、第1のバッグ4は、マンドレル3を押圧する押圧部として機能する。
【0033】
第1のバッグ4は、上側フィルム4aと、下側フィルム4bと、端部4cとを含む。端部4cは、第1及び第2の複合材の被接合予定部W1b、W2b同士の間に挿入されている。ガスを第1のバッグ4内に供給した場合、第1のバッグ4は膨張する。このガスは、幅広い種類の気体、例えば、空気を利用することができる。第1のバッグ4は、図示しない配管を介して、コンプレッサ等のガス供給源と接続されているとよい。当該配管には、バルブが設けられている。当該バルブを開閉することによって、ガスを当該ガス供給源から当該配管を通させて第1のバッグ4に供給することができる。第1のバッグ4は、ガスを供給されていない場合、キャビティ内を真空引きしていることから、第1及び第2の複合材W1、W2の内側壁面に倣う形状を有する。
【0034】
第1及び第2の複合材W1、W2は、例えば、一般的なプリプレグであり、樹脂が繊維に含浸している。当該繊維は、炭素繊維、アラミド繊維、ナイロン繊維、ポリエステル繊維、若しくはガラス繊維、又はそれら何れかの組み合わせなどが組物、織物又は編物として構成されている。当該樹脂は、熱硬化性樹脂を含み、例えば、エポキシ樹脂、ビスマレイミド樹脂、ビニルエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、又はシリコン樹脂などである。
【0035】
工程ST11では、具体的には、まず、図2及び図3に示すように、第1の複合材W1を上側金型1のキャビティ面1d上に配置する。第1の複合材W1は、本体W1aと、被接合予定部W1bとを備える。被接合予定部W1bは、本体W1aの一端から延びる。被接合予定部W1bは、本体W1aと比較して薄いとよい。なお、本体W1a及び被接合予定部W1bは、それぞれ、図7に示す第1の複合成形体M1の本体M1a及び被接合部M1bに相当する。
【0036】
続いて、上側フィルム4aを第1の複合材W1上に張り付ける。上側フィルム4aの第1の複合材W1上への張り付けは、例えば、上記した真空ポンプを用いて、上側フィルム4aと第1の複合材W1との間の空気を、上記した上側金型1の配管を通過させて排気することによって、実施することができる。上側フィルム4aを第1の複合材W1の周辺の上側金型1上にも張り付けてもよい。
【0037】
続いて、図4及び図5に示すように、第2の複合材W2を下側金型2のキャビティ面2d上に配置する。第2の複合材W2は、本体W2aと、被接合予定部W2bとを備える。被接合予定部W2bは、本体W2aの一端から延びる。被接合予定部W2bは、本体W2aと比較して薄いとよい。なお、本体W2a、及び被接合予定部W2bは、それぞれ、図7に示す第2の複合成形体M2の本体M2a、及び被接合部M2bに相当する。
【0038】
続いて、マンドレル3を第2の複合材W2、具体的には、被接合予定部W2bを含む下側金型本体2aにおいてアンダーカットとなる部位に配置する。マンドレル3は、第2の複合成形体M2に倣う表面形状を有する。マンドレル3は、所定の弾性率、又は硬度を有する。マンドレル3は、例えば、Y軸に沿って延びる棒状体である。マンドレル3は、第1のバッグ4と比較して高い硬度を有するとよい。本実施の形態にかかるマンドレル3は、アルミニウム、又はアルミニウム合金からなるが、マンドレル3は、別の材料、例えば、シリコン樹脂からなるとしてもよい。
【0039】
続いて、下側フィルム4bを第2の複合材W2、及びマンドレル3に張り付ける。この張り付けは、例えば、上記した真空ポンプを用いて、下側フィルム4bと第2の複合材W2との間、及び、下側フィルム4bとマンドレル3との間の空気を、上記した下側金型2の配管を通過させて排気して、実施してもよい。
【0040】
続いて、キャビティ面1dとキャビティ面2dとが対向するように、上側金型1と下側金型2とを押し合わせる。言い換えると、上側金型1と下側金型2とを型締めする。すると、上側フィルム4aと下側フィルム4bとが張り合わされ、第1のバッグ4が形成される。この時、後の第1のバッグ4への圧力付加に対して上側金型1と下側金型2が開かないよう、図示しないプレス等の型締め装置やボルトにより必要な力で上側金型1と下側金型2を締付保持する。
【0041】
続いて、第1のバッグ4を膨張させて、マンドレル3を被接合予定部W2bに押し当てる(工程ST12)。
【0042】
具体的には、第1のバッグ4の内側にガスを供給し、加圧する。すると、第1のバッグ4が膨張し、マンドレル3を被接合予定部W2b側(ここでは、X軸負方向)に押圧する。なお、第1のバッグ4が真空引きの状態においてキャビティの正規形状に密着している場合、第1のバッグ4の内側にガスを供給し、第1のバッグ4内を加圧しても、第1のバッグ4は形状的には殆ど膨張しないが、マンドレル3を被接合予定部W2b側(ここでは、X軸負方向)に押圧する。これによって、マンドレル3が被接合予定部W2bに押し当たる。また、第1のバッグ4の端部4cが膨張し、被接合予定部W1bおよびW2bに押し当たる。第1のバッグ4の端部4cが被接合予定部W1bを上側金型1のキャビティ面1dに押圧して成形する。また、第1のバッグ4の端部4cとマンドレル3に挟まれて被接合予定部W2bは成形される。被接合予定部W1b及びW2bがマンドレル3、第1のバッグ4から受ける圧力は、一般的なオートクレーブを用いて複合材を成形する場合において当該複合材が受ける圧力と同等であるよい。また、温調機を用いて、第1及び第2の複合材W1、W2を加熱し、硬化させる。より具体的には、被接合予定部W2bは、マンドレル3から押圧されつつ加熱されるため、被接合予定部W2bの含む樹脂が硬化する。また、被接合予定部W1bは、第1のバッグ4の端部4cから押圧されつつ加熱されるため、被接合予定部W1bの含む樹脂が硬化する。これらの結果、図7に示す第1の複合成形体M1、及び第2の複合成形体M2が形成される。
【0043】
なお、被接合予定部W1b及び被接合予定部W2bの含む樹脂は、適宜、設定してもよい。被接合予定部W1b及び被接合予定部W2bの含む樹脂を半硬化状態になるまで硬化してもよい。ここで、半硬化状態とは、第1の複合成形体M1、及び第2の複合成形体M2の表面に官能基が残った状態であり、例えば、第1の複合成形体M1の樹脂、及び第2の複合成形体M2の樹脂の硬化度が60~80%程度(好ましくは70%)である。
【0044】
但し、第1の複合成形体M1、及び第2の複合成形体M2の樹脂の硬化度は、第1の複合成形体M1の樹脂、及び第2の複合成形体M2の樹脂や、第1の複合成形体M1、及び第2の複合成形体M2のシワの発生具合などを考慮して、適宜、設定することができる。なお、硬化度は、例えば、示差走査熱分析(DSC)によって取得したヒートフロー曲線に基づいて測定することができる。
【0045】
以上より、第1の複合材W1と第2の複合材W2とをそれぞれ成形して、第1及び第2の複合成形体M1、M2を製造することができる。
【0046】
本実施の形態に係る複合成形体の製造方法によれば、第1のバッグ4がマンドレル3を第2の複合材W2の被接合予定部W2bに押し当て、第2の複合成形体M2を製造する。第2の複合成形体M2の被接合部M2bは、高い形状精度を有する。したがって、第1及び第2の複合成形体M1、M2の被接合部M1b、M2b同士の形状精度の向上を図ることができる。また、第1及び第2の複合成形体M1、M2をオートクレーブを使用することなく、オートクレーブと同等の圧力を加えて成形するとともに、第1及び第2の複合成形体M1、M2の被接合部M1b、M2b同士の形状精度の向上を図ることができる。
【0047】
また、第1のバッグ4は膨張して、マンドレル3を、多様な形状の第2の複合材W2の被接合予定部W2bに押し当てる。よって、多様な形状の第2の複合材W2を成形し、形状精度の高い第2の複合成形体M2の被接合部M2bを形成することができる。
【0048】
また、第1のバッグ4の端部4cが膨張し、第1の複合材W1の被接合予定部W1bを上側金型1のキャビティ面1dに押圧する。これによって、形状精度の高い第1の複合成形体M1の被接合部M1bを形成することができる。
【0049】
(実施の形態2)
図8図11を参照して実施の形態2に係る複合成形体の製造方法について説明する。図8は、実施の形態2に係る複合成形体の製造方法を示すフローチャートである。図9は、実施の形態2に係る複合成形体の製造方法の一工程における下側金型を示す概略図である。図10は、図9に示す下側金型の断面を示す概略図である。図11は、実施の形態2に係る複合成形体の製造方法の一工程を示す概略図である。
【0050】
本実施の形態に係る複合成形体の製造方法は、例えば、図11に示す成形型20を用いて実施することができる。
【0051】
成形型20は、第2のバッグ5を備えるところを除いて、図6に示す成形型10と同じ構成を備える。第2のバッグ5は、第1のバッグ4の内側に配置されている。ガスを第2のバッグ5内に供給した場合、第2のバッグ5は第1のバッグ4と同様に膨張する。第2のバッグ5は、図示しない配管を介して、コンプレッサ等のガス供給源と接続されている。当該配管には、バルブが設けられている。当該バルブを開閉することによって、ガスを当該ガス供給源から当該配管を通過させて第2のバッグ5に供給する。第2のバッグ5は、ガスを供給されていない場合、第1のバッグ4の内壁面に倣う形状を有するとよい。
【0052】
まず、図11に示すように、成形型20内に配置された第1及び第2の複合材W1、W2同士に挟まれた空間C1内に、マンドレル3と、第1のバッグ4と、第2のバッグ5とを配置する(工程ST21)。この配置されたマンドレル3は、第1のバッグ4と、第1及び第2の複合材W1、W2の被接合予定部W1b、W2b同士との間に挟まれる。本実施の形態に係る複合成形体の製造方法では、第1のバッグ4、及び第2のバッグ5は、マンドレル3を押圧する押圧部として機能する。
【0053】
具体的には、まず、図1に示す工程ST11と同様に、上側金型1に各構成を配置する。すなわち、図2及び図3に示すように、第1の複合材W1を上側金型1のキャビティ面1d上に配置する。続いて、上側フィルム4aを第1の複合材W1上に張り付ける。
【0054】
続いて、図9及び図10に示すように、第2の複合材W2を下側金型2のキャビティ面2d上に配置する。続いて、マンドレル3を第2の複合材W2、具体的には、被接合予定部W2bを含む部位に配置する。続いて、下側フィルム4bを第2の複合材W2、及びマンドレル3に張り付ける。
【0055】
続いて、第2のバッグ5を下側フィルム4bに配置する。マンドレル3は、第2のバッグ5と第2の複合材W2の被接合予定部W2bとに挟まれる。
【0056】
続いて、キャビティ面1dとキャビティ面2dとが対向するように、上側金型1と下側金型2とを押し合わせる。言い換えると、上側金型1と下側金型2とを型締めする。すると、上側フィルム4aと下側フィルム4bとが張り合わされ、第1のバッグ4が形成される。この時、後の第1のバッグ4および第2のバッグ5への圧力付加に対して型が開かないよう、図示しないプレス等の型締め装置やボルトにより必要な力で上側金型1と下側金型2を締付保持する。
【0057】
続いて、第1のバッグ4、及び第2のバッグ5を膨張させ、マンドレル3を被接合予定部W2bに押し当てる(工程ST22)。
【0058】
具体的には、第1のバッグ4の内側にガスを供給して、加圧する。さらに、第2のバッグ5の内側にガスを供給して、加圧する。第1のバッグ4の内側への加圧と、第2のバッグ5の内側への加圧とは、略同時に行うとよい。また、第2のバッグ5内の圧力P2は、第1のバッグ4内の圧力P1と比較して大きいとよい。すると、第1のバッグ4及び第2のバッグ5が膨張し、マンドレル3を被接合予定部W2b側(ここでは、X軸負方向)に押圧する。これによって、マンドレル3が被接合予定部W2bに押し当たる。また、温調機を用いて、第1及び第2の複合材W1、W2を加熱する。より具体的には、被接合予定部W2bは、マンドレル3から押圧されつつ加熱されるため、被接合予定部W2bの含む樹脂が硬化する。また、被接合予定部W1bは、第1のバッグ4の端部4cから押圧されつつ加熱されるため、被接合予定部W1bの含む樹脂が硬化する。これらの結果、図7に示す第1の複合成形体M1、及び第2の複合成形体M2が形成される。
【0059】
以上より、第1の複合材W1と第2の複合材W2とをそれぞれ成形して、第1及び第2の複合成形体M1、M2を製造することができる。
【0060】
本実施の形態に係る複合成形体の製造方法によれば、第1のバッグ4の端部4cの膨張によってマンドレル3が押し戻される力に対し第2のバッグ5が膨張するため、より強く被接合予定部W2bを被接合予定部W1bに押し付ける。そのため、第2の複合成形体M2の被接合部M2bの形状精度の向上を図ることができる。
【0061】
(具体例1)
次に、図12を参照して、実施の形態1に係る複合成形体の製造方法の一具体例について説明する。図12は、実施の形態1に係る複合成形体の製造方法の一工程の一具体例を示す概略図である。
【0062】
図12に示すように、成形型110は、配管1e、2e、及びマンドレル31を除いて、図6に示す成形型10と同じ構成を備える。図12では、分かり易くするため、上側フィルム4aと下側フィルム4bとが離隔させて図示しているが、実体としては、図6に示す成形型10と同様に、上側フィルム4aと下側フィルム4bとが張り合わされており、第1のバッグ4が形成されている。
【0063】
配管1eの一端は、キャビティ面1d周辺において開口し、配管1eの他端は、図示しない真空ポンプに接続されている。この真空ポンプを用いて、上側フィルム4aと第1の複合材W11との間の空気を、配管1eを通過させて排気して、上側フィルム4aを第2の複合材W12、及びマンドレル31に張り付けることができる。
【0064】
同様に、配管2eの一端は、キャビティ面2d周辺において開口し、配管2eの他端は、図示しない真空ポンプに接続されている。この真空ポンプを用いて、下側フィルム4bと第2の複合材W12との間、及び、下側フィルム4bとマンドレル31との間の空気を、配管2eを通過させて排気して、下側フィルム4bを第2の複合材W12、及びマンドレル31に張り付けることができる。
【0065】
マンドレル31は、シリコン樹脂材料からなる。
【0066】
図6に示す成形型10と同様に、成形型110を用いて実施の形態1に係る複合成形体の製造方法を実施することができる
【0067】
(具体例2)
次に、図13を参照して、実施の形態2に係る複合成形体の製造方法の一具体例について説明する。図13は、実施の形態2に係る複合成形体の製造方法の一工程の一具体例を示す概略図である。
【0068】
成形型120は、配管1e、2e、及びマンドレル32を除いて、図11に示す成形型20と同じ構成を備える。図13では、分かり易くするため、上側フィルム4aと下側フィルム4bとが離隔させて図示しているが、実態としては、図11に示す成形型10と同様に、上側フィルム4aと下側フィルム4bとが張り合わされており、第1のバッグ4が形成されている。
【0069】
マンドレル32は、純アルミニウム、又はアルミニウム合金からなる。マンドレル32は、図12に示すマンドレル31と比較して、弾性率、又は硬度が高い。
【0070】
図11に示す成形型20と同様に、成形型120を用いて、実施の形態2に係る複合成形体の製造方法を実施することができる。
【0071】
ここで、成形型120を用いた実施の形態2に係る複合成形体の製造方法の一具体例と、成形型110を用いた実施の形態1に係る複合成形体の製造方法の一具体例との差異を述べる。上記したように、マンドレル32は、図12に示すマンドレル31と比較して、弾性率、又は硬度が高い。そのため、第2の複合材W22を成形して成す第2の複合成形体M2の被接合部M2bの形状精度は、第2の複合材W12を成形して成す第2の複合成形体M2の被接合部M2bの形状精度と比較して、高い。よって、成形型120を用いた実施の形態2に係る複合成形体の製造方法の一具体例は、成形型110を用いた実施の形態1に係る複合成形体の製造方法の一具体例と比較して、形状精度の高い被接合部M2bを有する第2の複合成形体M2を製造することができる。
【0072】
また、工程ST22において、第2のバッグ5が第1のバッグ4の圧力P1よりも高い圧力P2によって膨張するため、第1のバッグの4cよりマンドレル3が押し戻される力に対し第2のバッグ5からより強く被接合予定部W2bを被接合予定部W1bに押し付ける。そのため、成形型120におけるマンドレル32の位置が、成形型110におけるマンドレル31の位置と比較して、安定する。よって、成形型120を用いた実施の形態2に係る複合成形体の製造方法の一具体例は、成形型110を用いた実施の形態1に係る複合成形体の製造方法の一具体例と比較して、マンドレル32の位置が安定する。そのため、第2の複合成形体M2の被接合部M2bの形状精度が安定している。
【0073】
(実施の形態3)
図14図17を参照して実施の形態3に係る複合成形体の製造方法について説明する。図14は、実施の形態3に係る複合成形体の製造方法を示すフローチャートである。図15は、実施の形態3に係る複合成形体の製造方法の一工程における下側金型を示す概略図である。図16は、図15に示す下側金型の断面を示す概略図である。図17は、実施の形態3に係る複合成形体の製造方法の一工程を示す概略図である。
【0074】
本実施の形態に係る複合成形体の製造方法は、例えば、図17に示す成形型30を用いて実施することができる。
【0075】
成形型30は、第2のバッグ5ではなく熱膨張体6を備えたところを除いて、図11に示す成形型20と同じ構成を備える。
【0076】
熱膨張体6は、熱膨張する材料からなるとよい。熱膨張体6は、例えば、シリコーンゴム材料からなる。熱膨張体6は、適宜、熱を与えられて、熱膨張するとよい。熱膨張体6は、例えば、電源に電気的に接続された電熱線が設けられているとよい。熱膨張体6は、常温環境下に置かれた場合、すなわち、熱を与えられておらず、熱膨張していない場合、第1及び第2の複合材W1、W2の内側壁面に倣う形状を有するとよい。本実施の形態に係る複合成形体の製造方法では、熱膨張体6は、マンドレル3を押圧する押圧部として機能する。熱膨張体6は、バッグのように中空である必要が無く、中実である。熱膨張体6は、第2のバッグ5等のバッグと比較して、構成が簡易である。
【0077】
まず、図17に示すように、成形型30内に配置された第1及び第2の複合材W1、W2同士に挟まれた空間C1内に、マンドレル3と、第1のバッグ4と、熱膨張体6とを配置する(工程ST31)。この配置されたマンドレル3は、第1のバッグ4と、熱膨張体6と、第1及び第2の複合材W1、W2の被接合予定部W1b、W2b同士との間に挟まれる。本実施の形態に係る複合成形体の製造方法では、第1のバッグ4、及び熱膨張体6は、マンドレル3を押圧する押圧部として機能する。
【0078】
具体的には、まず、図1に示す工程ST11と同様に、上側金型1に各構成を配置する。すなわち、図2及び図3に示すように、第1の複合材W1を上側金型1のキャビティ面1d上に配置する。続いて、上側フィルム4aを第1の複合材W1上に張り付ける。
【0079】
続いて、図15及び図16に示すように、第2の複合材W2を下側金型2のキャビティ面2d上に配置する。続いて、マンドレル3を第2の複合材W2、具体的には、被接合予定部W2bを含む部位に配置する。続いて、下側フィルム4bを第2の複合材W2、及びマンドレル3に張り付ける。
【0080】
続いて、熱膨張体6を下側フィルム4b上に配置する。マンドレル3は、熱膨張体6と第2の複合材W2の被接合予定部W2bとに挟まれる。
【0081】
続いて、キャビティ面1dとキャビティ面2dとが対向するように、上側金型1と下側金型2とを押し合わせる。言い換えると、上側金型1と下側金型2とを型締めする。すると、上側フィルム4aと下側フィルム4bとが張り合わされ、第1のバッグ4が形成される。この時、後の第1のバッグ4への圧力付加や熱膨張体6の熱膨張に対して型が開かないよう、図示しないプレス等の型締め装置やボルトにより必要な力で上側金型1と下側金型2を締付保持する。
【0082】
続いて、第1のバッグ4、及び熱膨張体6を膨張させ、マンドレル3を第2の複合材W2の被接合予定部W2bに押し当てる(工程ST32)。
【0083】
具体的には、第1のバッグ4の内側にガスを供給して、加圧する。さらに、熱膨張体6を加熱して、熱膨張させる。第1のバッグ4の内側への加圧と、熱膨張体6の加熱とは、略同時に行うとよい。また、熱膨張体6が熱膨張した場合、熱膨張体6内の圧力P3は、第1のバッグ4内の圧力P1と比較して大きいとよい。すると、第1のバッグ4及び熱膨張体6が膨張し、マンドレル3を被接合予定部W1b、W2b同士側(ここでは、X軸負方向)に押圧する。これによって、マンドレル3が被接合予定部W1b、W2bに押し当たる。また、温調機を用いて、第1及び第2の複合材W1、W2を加熱し、硬化させる。より具体的には、被接合予定部W2bは、マンドレル3から押圧されつつ加熱されるため、被接合予定部W2bの含む樹脂が硬化する。これらの結果、図7に示す第1の複合成形体M1、及び第2の複合成形体M2が形成される。
【0084】
以上より、第1の複合材W1と第2の複合材W2とをそれぞれ成形して、第1及び第2の複合成形体M1、M2を製造することができる。
【0085】
本実施の形態に係る複合成形体の製造方法によれば、熱膨張体6がマンドレル3を第2の複合材W2の被接合予定部W2bに押し当て、第2の複合成形体M2を製造する。第2の複合成形体M2の被接合部M2bは、高い形状精度を有する。したがって、第1及び第2の複合成形体M1、M2の被接合部M1b、M2b同士の形状精度の向上を図ることができる。また、簡易な構成である熱膨張体6を用いて、第2の複合成形体M2の被接合部M2bの形状精度の向上を図ることができる。
【0086】
また、本実施の形態に係る複合成形体の製造方法によれば、第1のバッグ4の端部4cの膨張によってマンドレル3が押し戻される力に対し熱膨張体6が膨張するため、より強く被接合予定部W2bを被接合予定部W1bに押し付ける。そのため、第2の複合成形体M2の被接合部M2bの形状精度の向上を図ることができる。
【0087】
なお、図7に示す第1及び第2の複合成形体M1、M2の被接合部M1b、M2b同士が互いに接合することによって、複合材接合体を得ることができる。当該複合材接合体は、例えば、飛行体の翼やプロペラとして利用できる。当該複合材接合体が飛行体のプロペラである場合、第1の複合成形体M1と第2の複合成形体M2とは、スキンであり、接合された被接合部M1b、M2bは、飛行体の翼やプロペラのリーディングエッジ部である。上記したように、被接合部M1b、M2bの形状精度の向上を図ることができため、この接合された被接合部M1b、M2bには、隙間が殆ど生じることがなく、その接着性は高い。そのため、この接合された被接合部M1b、M2bは、リーディングエッジ部として好適である。飛行体は、例えば、航空機、eVTOL(Electric Vertical Take-Off and Landing Aircraft)である。なお、適宜、当該複合材接合体の内側に、スパー等の構成部材が取り付けられていてもよい。
【0088】
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。また、本発明は、上記実施の形態やその一例を適宜組み合わせて実施してもよい。
【符号の説明】
【0089】
10、20、30、110、120 成形型
1 上側金型
1a 上側金型本体 1b 温調回路
1c シール 1d キャビティ面
1e 配管
2 下側金型
2a 下側金型本体 2b 温調回路
2c シール 2d キャビティ面
2e 配管
3、31、32 マンドレル
4 第1のバッグ
4a 上側フィルム 4b 下側フィルム
4c 端部
5 第2のバッグ
6 熱膨張体
C1 空間 P1、P2、P3 圧力
ST11、ST12、ST21、ST22、ST31、ST32 工程
M1 第1の複合成形体 M2 第2の複合成形体
M1a、M2a 本体 M1b、M2b 被接合部
W1、W11、W21 第1の複合材 W2、W12、W22 第2の複合材
W1a、W2a 本体 W1b、W2b 被接合予定部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17