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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-20
(45)【発行日】2025-01-28
(54)【発明の名称】電源システム
(51)【国際特許分類】
   H02M 3/155 20060101AFI20250121BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20250121BHJP
   B60L 9/18 20060101ALN20250121BHJP
   B60L 50/60 20190101ALN20250121BHJP
   B60L 58/18 20190101ALN20250121BHJP
【FI】
H02M3/155 H
H02J7/00 302C
H02M3/155 W
B60L9/18 P
B60L50/60
B60L58/18
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2022158489
(22)【出願日】2022-09-30
(65)【公開番号】P2024052050
(43)【公開日】2024-04-11
【審査請求日】2023-10-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大畠 弘嗣
【審査官】尾家 英樹
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/012725(WO,A1)
【文献】特開2019-205276(JP,A)
【文献】特開2011-101456(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 3/00- 3/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池とコンバータとを含む電池ユニットを複数並列に接続した電源システムであって、
前記コンバータを制御する制御装置を備え、
前記制御装置は、電源システムの出力電圧の指令値である電圧指令を入力パラメータとして、前記コンバータの各々を制御する電圧制御を実行し、
前記複数並列に接続された電池ユニットを含むとともに正極端子および負極端子が設けられた電源サブユニットをさらに備え、
前記コンバータは、第1の三相インバータを転用したものであり、
前記電源サブユニットは、第2の三相インバータを転用した転用インバータを含み、
前記コンバータは、正極線と負極線との間に互いに並列に接続された三相の第1アームを含み、
前記転用インバータは、前記正極線と前記負極線との間に互いに並列に接続された三相の第2アームを含み、
前記三相の第2アームは、第1相アーム、第2相アーム、および、第3相アームを有し、
前記第1相アームは、直列に接続された第1上アームと第1下アームとを有するとともに、前記第1上アームと前記第1下アームとの中間点が前記負極端子と電気的に接続されており、
前記第2相アームは、直列に接続された第2上アームと第2下アームとを有するとともに、前記第2上アームと前記第2下アームとの中間点が前記正極端子と電気的に接続されており、
前記第3相アームは、直列に接続された第3上アームと第3下アームとを有するとともに、前記第3上アームと前記第3下アームとの中間点が前記正極端子と電気的に接続されており、
前記第1の三相インバータの各相アームに、前記電池が接続されており、
前記第1下アーム、前記第2上アーム、および、前記第3上アームの各々は、短絡している、電源システム。
【請求項2】
前記電池ユニットの出力電圧であるユニット出力電圧を検出する電圧センサを、さらに備え、
前記制御装置で実行する前記電圧制御は、前記ユニット出力電圧が前記電圧指令になるよう、比例制御のみによってフィードバック制御するものである、請求項1に記載の電源システム。
【請求項3】
前記比例制御のゲインは、前記ユニット出力電圧の変動が所定範囲内になるよう設定されている、請求項2に記載の電源システム。
【請求項4】
前記電池ユニットの出力電圧であるユニット出力電圧を検出する電圧センサと、
前記電池ユニットの出力電力であるユニット出力電力を取得する出力電力取得部と、をさらに備え、
前記制御装置は、
電源システムの出力電力の指令値である電力指令に基づいて、前記ユニット出力電力の指令値であるユニット電力指令を算出する電力指令算出部と、
前記ユニット出力電力が前記ユニット電力指令よりも大きいとき、前記ユニット電力指令と前記ユニット出力電力の偏差が大きくなるほど前記電圧指令が小さくなるよう補正するとともに、前記ユニット出力電力が前記ユニット電力指令より小さいとき、前記ユニット電力指令と前記ユニット出力電力の偏差が大きくなるほど前記電圧指令が大きくなるよう補正して、補正後電圧指令を求める電圧指令補正部と、を有し、
前記制御装置で実行する前記電圧制御は、前記ユニット出力電圧が前記補正後電圧指令になるよう、フィードバック制御するものである、請求項1に記載の電源システム。
【請求項5】
前記電圧指令補正部は、前記ユニット出力電力と前記ユニット電力指令が等しいとき、前記電圧指令を前記補正後電圧指令に設定する、請求項4に記載の電源システム。
【請求項6】
前記電圧指令補正部は、前記偏差と前記補正後電圧指令との関係が線形になるよう、前記補正後電圧指令を求める、請求項5に記載の電源システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電源システムに関し、特に、電池とコンバータとを含む電池ユニットを複数並列に接続した電源システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特開2014-103804号公報(特許文献1)には、複数の組電池を並列に接続した電池システムにおいて、複数の組電池の電圧を均等化する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-103804号公報
【文献】特開2015-154692号公報
【文献】特開2015-186405号公報
【文献】国際公開第2017/163508号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
複数の組電池(電池)を並列に接続した電池システム(電源システム)では、各電池の特性の差や劣化によって各電池の電圧に差が生じ、循環電流が発生する。並列に接続した電池毎にコンバータを設け、循環電流を抑制して、循環電流に起因した電池の劣化を抑制することが考えられる。
【0005】
電池とコンバータを含む電池ユニットを並列に接続した電源システムにおいて、当該電源システムの出力電圧および出力電力を、所望の値に制御することが望まれる。たとえば、電源システムに接続された負荷等から要求される電圧指令および電力指令に基づいて、各電池ユニットのコンバータを制御する。この場合、所定の電池ユニットにおいて、電源システムの出力電圧が電圧指令になるよう電圧制御を実行し、他の電池ユニットにおいて、電源システムの出力電力が電力指令になるよう電力制御を実行することが考えられる。
【0006】
各種センサの誤差や制御の応答遅れ等によって、電力制御における出力電力と電力指令と差が生じる(電力ずれが生じる)と、出力電圧が変動する。電力ずれに起因した出力電圧の変動に応答して、電圧制御が実行されるので、電圧制御を実行する電池ユニットの動作量が増え、所定の電池ユニット(電圧制御が実行される電池ユニット)の負荷(電力負担)が増大し、所定の電池ユニットの劣化が促進される可能性がある。
【0007】
本開示の目的は、電池とコンバータとを含む電池ユニットを複数並列に接続した電源システムにおいて、各電池ユニットの負荷(負担)の均一化を図ることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)本開示の電源システムは、電池とコンバータとを含む電池ユニットを複数並列に接続した電源システムである。電源システムは、コンバータを制御する制御装置を備える。制御装置は、電源システムの出力電圧の指令値である電圧指令RVを入力パラメータとして、コンバータの各々を制御する電圧制御を実行する。
【0009】
この構成によれば、複数並列に接続された電池ユニットのコンバータの各々は、電圧指令RVを入力パラメータとして、電圧制御される。電力ずれが生じるような場合であっても、各電池ユニットで電圧制御を実行するので、各電池ユニットの負荷(電力負担)の均一化を図ることができる。
【0010】
(2)好ましくは、(1)において、電源システムは、電池ユニットの出力電圧であるユニット出力電圧VO(N)を検出する電圧センサを、さらに備える。制御装置で実行する電圧制御は、ユニット出力電圧VO(N)が電圧指令RVになるよう、比例制御のみによってフィードバック制御するものであってよい。
【0011】
複数並列に接続された電池ユニットの各々に対して、ユニット出力電圧VO(N)が電圧指令RVになるようフィードバック制御する際、積分項(積分制御)を含むと、積分項は定常偏差を解消するように各電池ユニットの出力電力(出力電流)を制御するので、各電池ユニットの間の制御干渉を招く場合がある。この構成によれば、比例制御のみによって、ユニット出力電圧VO(N)が電圧指令RVになるようフィードバック制御を実行するので、電池ユニット間の制御干渉を抑制することができる。
【0012】
(3)なお、(2)において、比例制御のゲインは、ユニット出力電圧VO(N)の変動が所定範囲内になるよう設定することが好ましい。
【0013】
比例制御のみによって、ユニット出力電圧VO(N)が電圧指令になるようフィードバック制御を実行すると、積分項(積分制御)を含まないので、ユニット出力電圧VO(N)が電圧指令RVに収束し難い。ユニット出力電圧VO(N)が電圧指令RVに近づくよう、比例制御のゲインを大きくすると、ユニット出力電圧VO(N)が大きく変動する。この構成によれば、比例制御のゲインを、ユニット出力電圧VO(N)の変動が所定範囲内になるよう設定するので、ユニット出力電圧VO(N)を電圧指令に近づけつつ、ユニット出力電圧VO(N)の変動を、負荷等の許容範囲内に収めることが可能になる。
【0014】
(4)好ましくは、(1)において、電源システムは、電池ユニットの出力電圧であるユニット出力電圧VO(N)を検出する電圧センサと、電池ユニットの出力電力であるユニット出力電力OP(N)を取得する出力電力取得部と、をさらに備える。制御装置は、電源システムの出力電力の指令値である電力指令RPに基づいて、ユニット出力電力OP(N)の指令値であるユニット電力指令TP(N)を算出する電力指令算出部と、ユニット出力電力OP(N)がユニット電力指令TP(N)よりも大きいとき、ユニット電力指令TP(N)とユニット出力電力OP(N)の偏差が大きくなるほど電圧指令RVが小さくなるよう補正するとともに、ユニット出力電力OP(N)がユニット電力指令TP(N)より小さいとき、ユニット電力指令TP(N)とユニット出力電力OP(N)の偏差が大きくなるほど電圧指令RVが大きくなるよう補正して、補正後電圧指令RV(N)を求める電圧指令補正部と、を有する。制御装置で実行する電圧制御は、ユニット出力電圧VO(N)が補正後電圧指令RV(N)になるよう、フィードバック制御するものであってよい。
【0015】
各電池ユニットの負荷(負担)の均一化を図るため、各電池ユニットで電圧制御を実行すると、各電池ユニット間で制御干渉が発生する場合がある。この構成によれば、電圧指令補正部によって、ユニット出力電力OP(N)がユニット電力指令TP(N)よりも大きいとき、ユニット電力指令TP(N)とユニット出力電力OP(N)の偏差が大きくなるほど電圧指令RVが小さくなるよう補正された、補正後電圧指令RV(N)が算出される。また、電圧指令補正部によって、ユニット出力電力OP(N)がユニット電力指令TP(N)より小さいとき、ユニット電力指令TP(N)とユニット出力電力OP(N)の偏差が大きくなるほど電圧指令RVが大きくなるよう補正された、補正後電圧指令RV(N)が算出される。そして、ユニット出力電圧VO(N)が補正後電圧指令RV(N)になるようフィードバック制御を実行し、ユニット出力電力OP(N)がユニット電力指令TP(N)よりも大きいとき、当該電池ユニットのユニット出力電圧VO(N)が小さくなるよう制御され、ユニット出力電力OP(N)がユニット電力指令TP(N)より小さいとき、当該電池ユニットのユニット出力電圧VO(N)が大きくなるよう制御されるので、各電池ユニット間の制御干渉を抑制することができる。
【0016】
(5)好ましくは、(4)において、電圧指令補正部は、ユニット出力電力OP(N)とユニット電力指令TP(N)が等しいとき、電圧指令RVを補正後電圧指令RV(N)に設定してもよい。
【0017】
この構成によれば、ユニット出力電力OP(N)とユニット電力指令TP(N)が等しいとき、電圧指令RVは補正されることなく、電圧指令RVが補正後電圧指令RV(N)に設定されるので、電源システムの出力電圧が電圧指令RVになるよう制御できる。
【0018】
(6)好ましくは、(5)において、電圧指令補正部は、偏差と補正後電圧指令RV(N)との関係が線形になるよう、補正後電圧指令RV(N)を求めてもよい。
【0019】
この構成によれば、ユニット電力指令TP(N)とユニット出力電力OP(N)の偏差と補正後電圧指令RV(N)との関係が線形であるので、ユニット出力電圧VO(N)を安定して制御することができる。
【0020】
(7)好ましくは、(1)~(6)において、コンバータは、三相インバータを転用したものであり、三相インバータの各相アームに、電池が接続されるようにしてもよい。
【0021】
近年、ハイブリッド車(HEV:Hybrid Electric Vehicle)や電気自動車(BEV:Battery Electric Vehicle)などの電動車両の普及が進んでいる。これら車両の買い換え、解体等に伴って回収されるバッテリ(電池)やPCU(Power Control Unit)を、リサイクルあるいはリユースすることが望まれる。この構成によれば、回収したPCUの三相インバータを、電源システム(電池ユニット)のコンバータに転用することにより、PCUのリユースを促進することができる。なお、電源システム(電池ユニット)の電池として、回収したバッテリ(電池)も用いれば、バッテリのリユースを促進することもできる。
【発明の効果】
【0022】
本開示によれば、電池とコンバータとを含む電池ユニットを複数並列に接続した電源システムにおいて、各電池ユニットの負荷(負担)の均一化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本実施の形態の電源システムの全体構成を示す図である。
図2】電動車両の一例を説明する図である。
図3】電源システムの制御装置の構成の一例を示す図である。
図4】実施の形態1における、電源システムの出力電力を制御するブロック線図の一例である。
図5】実施の形態2における、電源システムの出力電力を制御するブロック線図の一例である。
図6】電圧指令補正部で算出される補正後電圧指令を説明する図である。
図7】変形例1に係る、電源システムの制御装置を説明する図である。
図8】変形例2における電源システムの全体構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0025】
図1は、本実施の形態の電源システムPの全体構成を示す図である。電源システムPは、3個のバッテリパック1とコンバータ2とを含む電源サブユニットSuと、制御装置3とを備える。本実施の形態において、電源サブユニットSuは、電動車両に搭載されるバッテリパックおよびPCU(Power Control Unit)を、電源システムPに転用したものである。バッテリパックおよびPCUを搭載した電動車両の構成の一例を説明する。
【0026】
図2は、電動車両の一例を説明する図である。図2において、電動車両Vは、回転電機とエンジンとを車両の駆動に併用するハイブリッド車である。電動車両Vは、バッテリパック1と、PCU20と、エンジン30と、回転電機としてのモータジェネレータMG1,MG2と、動力分割機構40と、駆動輪50と、を含む。
【0027】
バッテリパック1は、バッテリ10とシステムメインリレー(SMR)11とを備える。バッテリ10は、ニッケル水素電池、リチウムイオン電池、等の二次電池からなる単電池(電池セル)を、電気的に直列に接続した組電池である。バッテリパック1の出力端子(正極端子,負極端子)は、PCU20のバッテリ接続端子25に接続され、SMR11が閉成すると、バッテリ10とPCU20とが接続され、SMR11が開放されると、バッテリ10とPCU20との接続が遮断される。バッテリパック1には、監視ユニット15が設けられており、バッテリ10の電圧VB、バッテリ10の入出力電流IB、および、バッテリ10の温度等を検出する。
【0028】
PCU20は、昇圧コンバータ21、インバータ22およびインバータ23を含む。昇圧コンバータ21は、バッテリパック1から入力されるバッテリ電圧VBを昇圧し、インバータ22およびインバータ23に出力する。インバータ22は、昇圧コンバータ21から昇圧された直流電力を三相交流電力に変換して、たとえばエンジン30を始動させるために、モータジェネレータMG1を駆動する。また、インバータ22は、エンジン30から伝達される動力によってモータジェネレータMG1で発電された交流電力を直流電力に変換し昇圧コンバータ21に戻す。このとき昇圧コンバータ21は、降圧回路として動作するよう制御される。インバータ23は、昇圧コンバータ21から出力された直流電力を三相交流電力に変換してモータジェネレータMG2に出力する。
【0029】
動力分割機構40は、エンジン30とモータジェネレータMG1,MG2とに連結されて、これらの間で動力を分配する機構である。動力分割機構40として、遊星歯車機構を用いることができ、たとえば、エンジン30がプラネタリキャリアに、モータジェネレータMG1がサンギヤに、モータジェネレータMG2がリングギヤに接続されている。モータジェネレータMG2のロータ(および動力分割機構40のリングギヤの回転軸)は、図示しない減速ギヤ、差動ギヤおよびドライブシャフトを介して駆動輪50に連結されている。
【0030】
PCU20の昇圧コンバータ21は、リアクトルと、スイッチング素子Q1a,Q1b,Q2a,Q2bとを含む。スイッチング素子Q1a~Q2bは、たとえば、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)素子からなり、各IGBT素子と逆並列に接続されるダイオードを含む。スイッチング素子Q1aとスイッチング素子Q1bとが並列に設けられ、スイッチング素子Q2aとスイッチング素子Q2bとが並列に設けられており、スイッチング素子Q1aとスイッチング素子Q1bとは同一の駆動信号で駆動され、スイッチング素子Q2aとスイッチング素子Q2bとは同一の駆動信号で駆動される。スイッチング素子Q1a,Q1bのコレクタが正極線Plに接続され、スイッチング素子Q2a,Q2bのエミッタが負極線Nlに接続されている。リアクトルは、スイッチング素子Q1a,Q1bのエミッタおよびスイッチング素子Q2a,Q2bのコレクタに接続されている。
【0031】
インバータ22は、三相インバータであり、正極線Plと負極線Nlとの間に直列接続されたスイッチング素子Q3,Q4からなるU相アームと、正極線Plと負極線Nlとの間に直列接続されたスイッチング素子Q5,Q6からなるV相アームと、正極線Plと負極線Nlとの間に直列接続されたスイッチング素子Q7,Q8からなるW相アームとを備える。スイッチング素子Q3~Q8は、スイッチング素子Q1aと同様に、IGBT素子と逆並列に接続されるダイオードを含むスイッチング素子である。
【0032】
各相のアームの中間点は、MG1接続端子26を介して、モータジェネレータMG1の各相のコイルに接続されている。モータジェネレータMG1は、三相の永久磁石同期モータであり、たとえばIPM(Interior Permanent Magnet)同期電動機であってよい。
【0033】
インバータ23の構成は、各相のアームのスイッチング素子が並列に設けられている他は、インバータ22の構成と同様な三相インバータである。スイッチング素子Q9a,Q9bがスイッチング素子Q3に相当し、スイッチング素子Q10a,Q10bがスイッチング素子Q4に相当してU相アームを構成する。スイッチング素子Q11a,Q11bがスイッチング素子Q5に相当し、スイッチング素子Q12a,Q12bがスイッチング素子Q6に相当してV相アームを構成する。スイッチング素子Q13a,Q13bがスイッチング素子Q7に相当し、スイッチング素子Q14a,Q14bがスイッチング素子Q8に相当してW相アームを構成する。
【0034】
各相のアームの中間点は、MG2接続端子27を介して、モータジェネレータMG2の各相のコイルに接続されている。モータジェネレータMG2も、IPM同期電動機であってよい。
【0035】
PCU20には、インバータ22およびインバータ23の各々のU相電流iuを検出する電流センサiu、V相電流ivを検出する電流センサiv、W相電流iwを検出する電流センサiwが設けられている。また、PCU20は、昇圧コンバータ21からインバータ22、23へ供給される電圧であるシステム電圧VHを検出する電圧センサVH、および、バッテリパック1から昇圧コンバータ21に入力される電圧VLを検出する電圧センサVLを備えている。
【0036】
電動車両Vは、制御装置として、ハイブリッドECU(Electronic Control Unit)(HV-ECU)200、モータジェネレータECU(MG-ECU)210、バッテリECU(BT-ECU)220、および、エンジンECU(EG-ECU)230を備える。各ECUは、CPU(Central Processing Unit)と、メモリと、バッファ(いずれも図示せず)とを含んで構成される。
【0037】
監視ユニット15は、バッテリ10の電圧VBを検出する電圧センサVB、入出力電流IBを検出する電流センサIB、等を備えている。BT-ECU220は、監視ユニット15で検出した電圧VBおよび入出力電流IB等に基づいて、バッテリ10のSOC(State Of Charge)を演算し、HV-ECU200へ送信する。
【0038】
HV-ECU200は、電動車両Vの走行制御のために、たとえば、アクセル開度、車速等に基づいて要求駆動トルクTrを算出し、要求駆動トルクTrに駆動輪50の回転速度を乗じて、要求パワーPdを求める。要求パワーPdからバッテリ10のSOCに基づく充放電パワーPb(バッテリ10から放電するときに正の値)を減じて、エンジン30に要求される要求パワーPeを設定する。そして、エンジン30から要求パワーPeが出力されるとともに、要求駆動トルクTrが駆動輪50に出力されるよう、目標エンジン回転速度Ne、目標エンジントルクTe、モータジェネレータMG1の指令トルクTm1およびモータジェネレータMG2の指令トルクTm2を設定する。
【0039】
MG-ECU210は、モータジェネレータMG1から指令トルクTm1が出力されるよう、インバータ22の各スイッチング素子をPWM(Pulse Width Modulation)制御する。また、MG-ECU210は、モータジェネレータMG2から指令トルクTm2が出力されるよう、インバータ23の各スイッチング素子をPWM(Pulse Width Modulation)制御する。
【0040】
EG-ECU230は、エンジン30が目標エンジン回転速度Neおよび目標エンジントルクTeで運転されるようエンジン30を制御する。
【0041】
図1を参照して、電源システムPにおいて、バッテリパック1およびコンバータ2は、電動車両Vに搭載されたバッテリパック1およびPCU20を転用したものである。3個のバッテリパック1(1-1-1、1-1-2、1-1-3)の出力端子の正極端子が、PCU20のインバータ23(三相インバータ)の各相アーム(U相アーム、V相アーム、W相アーム)の中間点が接続されたMG2接続端子27に、コイル(インダクタ)5を介して接続される。バッテリパック1の正極端子とコイル5との間の電力線は、コンデンサ6を介して、バッテリパック1の出力端子の負極端子と接続される。バッテリパック1の負極端子は、電力線Nl1によって、PCU20の負極線Nlに接続される。なお、図1においては、監視ユニット15の図示を省略している。
【0042】
図1において、PCU20のインバータ22のスイッチング素子Q4、スイッチング素子Q5、および、スイッチング素子Q7が短絡されている。インバータ22の各相アームの中間点が接続されたMG1接続端子26において、U相アームが接続された端子が、電力線Nl2によって、バッテリ接続端子25の負極端子に接続される。バッテリ接続端子25の負極端子は、電源サブユニットSuの負極端子28bに接続される。MG1接続端子26において、V相アームおよびW相アームが接続される端子が、電力線Pl1によって、電源サブユニットSuの正極端子28aに接続される。
【0043】
このようにPCU20のインバータ23の各相アームをバッテリパック1に接続し、インバータ22の一部のスイッチング素子を短絡させ、MG1接続端子26を電源サブユニットSuの正極端子28a、負極端子28bに接続することによって、PCU20は、インバータ23の各相アームに接続されたバッテリパック1(バッテリ10)の電圧を昇圧するコンバータ2に転用されている。
【0044】
図1において、バッテリパック1が、本開示の「電池」の一例に相当する。1個のバッテリパック1に対応する(1個のバッテリパック1に接続された)各相アーム、コイル5およびコンデンサ6からなるチョッパ回路が、本開示の「コンバータ」に相当する。なお、図1においては、便宜上、3個のコンバータをまとめて、符号2を付している。そして、バッテリパック1と1個のコンバータ2を含む構成が、本開示の「電池ユニット」に相当する。たとえば、図1において、バッテリパック1-1-1、U相アーム(スイッチング素子Q9a,Q9b,Q10a,Q10b)、U相アームの中間点に接続されたコイル5、および、バッテリパック1-1-1の正極端子とコイル5との間の電力線に設けたコンデンサ6が、本開示の「電池ユニット」に相当する。なお、本実施の形態の説明では、各電池ユニットを区別することなく、電池ユニットに符号Buを用いる。
【0045】
電源サブユニットSuは、PCU20を転用したコンバータ2を含む、3個の電池ユニットBuから構成される。電源サブユニットSuにおいて、各電池ユニットBuは並列に接続されている。電源システムPは、電源サブユニットSuを複数備え、各電源サブユニットSuはPCS100に対して並列に接続される。本実施の形態において、電源サブユニットSuは、n個(nは正の整数)の電源サブユニットSuを備えており、たとえば、20個の電源サブユニットSuを備えてよい。電源サブユニットSuには、3個の電池ユニットBu(バッテリパック1)が並列に接続されており、20個の電源サブユニットSuを備えた電源システムPでは、60個の電池ユニットBu(バッテリパック1)が並列に接続されている。図1において、符号Su-nのnは、n番目の電源サブユニットSuであることを表している。符号1-n-1、1-n-2および1-n-3のnは、n番目の電源サブユニットSuに含まれるバッテリパック1を表している。
【0046】
各電源サブユニットSuの正極端子28aは、正極線PLを介して、PCS100の入出力端子に接続される。各電源サブユニットSuの負極端子28bは、負極線NLを介して、PCS100の入出力端子に接続される。
【0047】
PCS100は、電源システムPに加え、電力系統PG、太陽光発電装置650、および、負荷(電気負荷)300に接続されている。電力系統PGは、発電所や送電網からなる、たとえば商用電源である。PCS100は、電力変換装置を含み、太陽光発電装置650で発電した電力を負荷300に供給したり、逆潮流を行ったりする。PCS100は、上げDRの要請があると、電力系統PGの交流電力を直流電力に変換し、電源システムP(電池ユニットBu)の充電を行う。PCS100は、下げDRの要請があると、電源システムP(電池ユニットBu)の放電電力(出力電力)を交流電力に変換し、逆潮流を行う。負荷300は、家庭負荷(家電)であってよく、事業所や工場の電気負荷であってよい。
【0048】
電源システムPは、電力系統PGとの間で電力の授受を行う連系運転と、電力系統PGと解列された(遮断された)自立運転とを行う。連系運転時、負荷300への電力供給は、主に、電力系統PGの電力が供給される。連系運転時、電源システムPは、下げDRあるいは上げDRの要請に応じて、電力系統PGと電力の授受を行う。電源システムPの自立運転時には、電源システムP(電池ユニットBu)の出力電力(放電電力)が、負荷300に供給される。
【0049】
図3は、電源システムPの制御装置3の構成の一例を示す図である。制御装置3は、制御ECU400と駆動ECU450とを備える。各ECUは、CPUと、メモリと、バッファ(いずれも図示せず)とを含んで構成される。PCS-ECU500は、PCS100を制御する制御装置であり、電源システムP(電池ユニットBu)から出力される電力の要求値、あるいは、電源システムPに入力される電力の要求値である電力指令RP、および、電源システムPから出力される電圧の指令値である電圧指令RVを、制御ECU400に出力する。
【0050】
制御ECU400は、電源システムPから電力を出力するとき(電池ユニットBuから放電するとき)、電力指令RPおよび電圧指令RVに基づいて電力指令TPを生成する。駆動ECU450は、電源システムP(電池ユニットBu)の出力電力が、電力指令TPになるよう、電池ユニット(コンバータ2)をPWM制御する。
【0051】
(実施の形態1)
図4は、実施の形態1における、電源システムPの出力電力を制御するブロック線図の一例である。このブロック線図は、制御ECU400および駆動ECU450に、ソフトウェアおよび/またはハードウェアとして、構成されてよい。図4において、電圧指令RVおよび電力指令RPは、PCS-ECU500から入力される。電圧指令RVは、電源システムPの出力電圧の要求値(目標電圧)であり、たとえば、100V、200V、あるいは、600Vであってよい。また、電力指令RPは、PCS100に接続されている負荷等によって要求される(負荷等に供給する)電力であってよい。
【0052】
たとえば、所定の電池ユニットBuにおいて、電源システムPの出力電圧VPが電圧指令RVになるよう電圧制御を実行し、他の電池ユニットBuにおいて、電源システムPの出力電力OPが電力指令RPなるよう電力制御を実行すると、電流センサの誤差や電力制御の応答遅れ等によって出力電力OPと電力指令RPとの差が生じ(電力ズレが生じ)、出力電圧VPが変動する。この出力電圧VPの変動に応答して電圧制御が実行されるので、電圧制御を実行する所定の電池ユニットBuの動作量が増え、当該電池ユニットBuの負荷(負担)が増大し、当該電池ユニットBu(に含まれるバッテリパック1)の劣化が促進される可能性がある。このため、実施の形態1では、各電池ユニットBu(バッテリパック1)の負荷(負担)の均一化を図るため、すべての電池ユニットBuにおいて電圧制御を実行する。
【0053】
実施の形態1では、PCS100から入力される電力指令RPを用いることなく、すべての電池ユニットBuにおいて電圧制御を実行する。図4のブロック線図は、電池ユニットBu毎にコンバータをPWM制御するブロック線図を示している。各電池ユニットBuのブロック線図は共通であるので、バッテリパック1-1-1を含む電池ユニットBuについて説明する。
【0054】
PCS-ECU500から入力された電圧指令RVと電池ユニットBuの出力電圧であるユニット出力電圧VO(1-1-1)が差し引き点301に入力され、差し引き点301から、電圧指令RVとユニット出力電圧VO(1-1-1)の偏差ΔRVが、P制御器302へ出力される。ユニット出力電圧VO(1-1-1)は、電源サブユニットSu-1に転用されたPCU20が備えている、システム電圧VHを検出する電圧センサVHの検出値であってよい。この場合、電圧センサVHが、本開示の「ユニット電圧を検出する電圧センサ」の一例に相当する。
【0055】
P制御器302は、比例制御のみによってフィードバック制御を行うものであり、たとえば、偏差ΔRVに比例定数(比例ゲイン)Kpを乗算して、IL指令を出力する。IL指令は、電池ユニットBuから出力する電流指令である。
【0056】
P制御器302から出力されたIL指令と電池ユニットBuの出力電流であるIL(1-1-1)が差し引き点303に入力され、差し引き点303から、IL指令とIL(1-1-1)の偏差ΔILが、PI制御器304へ出力される。IL(1-1-1)は、バッテリパック1-1-1を含む電池ユニットBuの出力電流であり、バッテリパック1-1-1が接続されたU相のU相電流iuを検出する電流センサiuの検出値であってよく、バッテリパック1-1-1のバッテリ10の入出力電流IBを検出する電流センサIBの検出値であってもよい。
【0057】
PI制御器304は、比例積分制御(PI制御)によってフィードバック制御を行うものであり、偏差ΔILが0になるよう(IL(1-1-1)がIL指令に一致するよう)、比例項と積分項を加算した、デューティ比Du(1-1-1)を出力する。そして、バッテリパック1-1-1を含む電池ユニットBuのコンバータ2(U相アーム(スイッチング素子Q9a,Q9b,Q10a,Q10b))が、デューティ比Du(1-1-1)によって、PWM制御される。なお、すべての電池ユニットBuが同様に制御される。
【0058】
この実施の形態1によれば、電源システムPの出力電圧VPの指令値である電圧指令RVを入力パラメータとして、電池ユニットBuのコンバータ2の各々を制御する電圧制御を実行する。これにより、出力電力OPと電力指令RPと差が生じても(電力ずれが生じても)、各電池ユニットBuで電圧制御を実行するので、各電池ユニットBuの負荷(負担)の均一化を図ることができる。なお、電源システムPの出力電力OPが電力指令RPを下回ると、出力電圧VPが低下するので、出力電力OPを増大するよう電圧制御が実行される。出力電力OPが電力指令RPを上回ると、出力電圧VPが上昇するので、出力電力OPを低下するよう電圧制御が実行される。これにより、電力指令RPを満足するよう、出力電力OPも制御されることになる。
【0059】
この実施の形態1によれば、制御装置3で実行する電圧制御は、ユニット出力電圧VO(N)が電圧指令RVになるよう、P制御器302によって、比例制御のみのフィードバック制御を実行するものである。比例制御のみによって、ユニット出力電圧VO(N)が電圧指令RVになるようフィードバック制御を実行するので、電池ユニットBu間の制御干渉を抑制することができる。なお、ユニット出力電圧VO(N)の「N」は、当該電池ユニットBuに含まれるバッテリパックの符号に対応するものであり、バッテリパック1-n-1を含む電池ユニットBuのユニット出力電圧は、ユニット出力電圧VO(1-n-1)と表される。以下、「N」を同様に扱い、「N」はバッテリパックの符号に対応するものとする。
【0060】
なお、比例制御のみによって、ユニット出力電圧VO(N)が電圧指令RVになるようフィードバック制御を実行すると、積分項(積分制御)を含まないので、ユニット出力電圧VO(N)が電圧指令RVに収束し難い。ユニット出力電圧VO(N)が電圧指令RVに近づくよう、比例制御のゲインKpを大きくすると、ユニット出力電圧VO(N)が大きく変動する。ユニット出力電圧VO(N)の変動が、PCS100で許容可能な範囲内になるよう、比例制御のゲインKpを、予め実験等で求めておき、このゲインKpを用いて電圧制御を行うことにより、ユニット出力電圧VO(N)を電圧指令RVに近づけつつ、ユニット出力電圧VO(N)の変動を、PCS100の許容範囲内に納めることが好ましい。
【0061】
(実施の形態2)
実施の形態2では、各電池ユニットBu(バッテリパック1)の負荷(負担)の均一化を図るため、すべての電池ユニットBuにおいて電圧制御を実行する。そして、各電池ユニットBuの電圧指令に垂下特性(ドループ)を適用して、電池ユニットBu間の制御干渉を抑制する。
【0062】
図5は、実施の形態2における、電源システムPの出力電力を制御するブロック線図の一例である。このブロック線図は、制御ECU400および駆動ECU450に、ソフトウェアおよび/またはハードウェアとして構成されてよい。図5において、電圧指令RVおよび電力指令RPは、実施の形態1と同様に、PCS-ECU500から入力される。
【0063】
図5において、電力指令算出部310は、各電池ユニットBuの出力電力の指令値であるユニット電力指令TP(N)を算出する。なお、「N」は、上記で説明したように、当該電池ユニットBuに含まれるバッテリパックの符号に対応するものである。PCS-ECU500から入力された電力指令RPと出力電力OPが差し引き点401に入力される。出力電力OPは、電源システムPの出力電力であり、電源システムの出力電力VPと出力電流IPとから算出されてよい。差し引き点401から電力指令RPと出力電力OPの偏差ΔRPが出力され、PI制御器402へ入力される。PI制御器402は、比例積分制御(PI制御)によってフィードバック制御を行うものであり、偏差ΔRPが0になるよう(出力電力OPが電力指令RPに一致するよう)電力補正Frpを出力する。
【0064】
電力指令算出部310の加え合わせ点403には、電力指令RPと電力補正Frpとが入力され、加え合わせ点403は、電源システムPの出力電力指令TPを出力する。加え合わせ点403から出力された出力電力指令TPは、配分器404に入力される。配分器404は、各電池ユニットBuの出力電力(ユニット出力電力)の指令値であるユニット電力指令TP(N)を出力する。本実施の形態の電源システムPにおいて、電池ユニットBuは60個並列に接続されており、配分器404は、出力電力指令TPの1/60を、各電池ユニットBuに配分する。たとえば、出力電力指令TPに「1/60」を乗算して、ユニット電力指令TP(N)を出力する。
【0065】
電力指令算出部310より下流のブロック線図は、各電池ユニットBuにおいて共通であるので、以下、バッテリパック1-1-1を含む電池ユニットBuについて説明する。
【0066】
出力電力取得部320は、電池ユニットBuのユニット出力電力OP(1-1-1)を取得する。本実施形態では、バッテリパック1-1-1に含まれるバッテリ10の電圧VB(1-1-1)と電池ユニットBu(バッテリパック1-1-1)の出力電流であるIL(1-1-1)を乗算することにより、ユニット出力電力OP(1-1-1)を取得する。出力電力取得部320で取得した(算出された)ユニット出力電力OP(1-1-1)は、電圧指令補正部330に入力される。
【0067】
電圧指令補正部330は、電圧指令RVを補正して、補正後電圧指令RV(1-1-1)を算出する。電圧指令補正部330には、PCS-ECU500から出力された電圧指令RV、電力指令算出部310(配分器404)から出力されたユニット電力指令TP(1-1-1)、および、出力電力取得部320から出力されたユニット出力電力OP(1-1-1)が、入力される。
【0068】
図6は、電圧指令補正部330で算出される補正後電圧指令RV(N)を説明する図である。図6において、縦軸は、補正後電圧指令RV(N)であり、横軸は、電力偏差ΔPである。電力偏差ΔPは、ユニット出力電力P(N)からユニット電指令TP(N)を減算したものである(ΔP=OP(N)-TP(N))。図6に示すように、電力偏差ΔPが0のとき(ユニット出力電力OP(N)とユニット電力指令TP(N)が等しいとき)、補正後電圧指令RV(N)は、電圧指令RVに設定される。そして、電力偏差ΔPと補正後電圧指令RV(N)との関係は線形になっている。
【0069】
図6を参照して、補正後電圧指令RV(N)は、ユニット出力電力OP(N)がユニット電力指令TP(N)よりも大きく、電力偏差ΔPが正の値のとき、電力偏差ΔPが大きくなるほど、電圧指令RVが小さくなるよう補正した値になる。また、補正後電圧指令RV(N)は、ユニット出力電力OP(N)がユニット電力指令TP(N)より小さく、電力偏差ΔPが負の値のとき、電力偏差ΔPが大きくなるほど、電圧指令RVが大きくなるよう補正した値になる。
【0070】
電圧指令補正部330は、図6に示した関係(特性)に基づいて、電力偏差ΔP(=OP(N)-TP(N))により電圧指令RVを補正し、補正後電圧指令RV(N)を算出して、差し引き点406へ出力する。(バッテリパック1-1-1を含む電池ユニットBuにおいては、差し引き点406へ補正後電圧指令RV(1-1-1)が出力される。)
電圧指令補正部330から出力された補正後電圧指令RV(1-1-1)と、電池ユニットBuの出力電圧であるユニット出力電圧VO(1-1-1)が差し引き点406に入力され、差し引き点406から、補正後電圧指令RV(1-1-1)とユニット出力電圧VO(1-1-1)の偏差ΔRVが、PI制御器407へ出力される。ユニット出力電圧VO(1-1-1)は、電源サブユニットSu-1に転用されたPCU20が備えている、システム電圧VHを検出する電圧センサVHの検出値であってよい。この電圧センサVHは、本開示の「ユニット電圧を検出する電圧センサ」の一例に相当する。
【0071】
PI制御器407は、比例積分制御(PI制御)によってフィードバック制御を行うものであり、偏差ΔRVが0になるよう(ユニット出力電圧VO(1-1-1)が補正後電圧指令RV(1-1-1)に一致するよう)、IL指令を出力する。IL指令は、電池ユニットBuから出力する電流指令である。
【0072】
PI制御器407から出力されたIL指令と電池ユニットBuの出力電流であるIL(1-1-1)が差し引き点408に入力され、差し引き点408から、IL指令とIL(1-1-1)の偏差ΔILが、PI制御器409へ出力される。IL(1-1-1)は、バッテリパック1-1-1を含む電池ユニットBuの出力電流であり、バッテリパック1-1-1が接続されたU相のU相電流iuを検出する電流センサiuの検出値であってよく、バッテリパック1-1-1のバッテリ10の入出力電流IBを検出する電流センサIBの検出値であってもよい。
【0073】
PI制御器409は、比例積分制御(PI制御)によってフィードバック制御を行うものであり、偏差ΔILが0になるよう(IL(1-1-1)がIL指令に一致するよう)、比例項と積分項を加算した、デューティ比Du(1-1-1)を出力する。そして、バッテリパック1-1-1を含む電池ユニットBuのコンバータ2(U相アーム(スイッチング素子Q9a,Q9b,Q10a,Q10b))が、デューティ比Du(1-1-1)によって、PWM制御される。なお、すべての電池ユニットBuが同様に制御される。
【0074】
この実施の形態2によれば、電源システムPの出力電圧VPの指令値である電圧指令RVを入力パラメータとして、電池ユニットBuのコンバータ2の各々を制御する電圧制御を実行する。これにより、出力電力OPと電力指令RPと差が生じても(電力ずれが生じても)、各電池ユニットBuで電圧制御を実行するので、各電池ユニットBuの負荷(負担)の均一化を図ることができる。
【0075】
この実施の形態2によれば、電力指令算出部310において、電源システムPの出力電力の指令値である電力指令RPに基づいて、電池ユニットBuの各々の出力電力の指令値であるユニット電力指令TP(N)を算出する。そして、電圧指令補正部330では、ユニット出力電力OP(N)がユニット電力指令TP(N)よりも大きいとき(電力偏差ΔPが正のとき)、ユニット電力指令TP(N)とユニット出力電力OP(N)の偏差(電力偏差ΔP)が大きくなるほど電圧指令RVが小さくなるよう補正するとともに、ユニット出力電力OP(N)がユニット電力指令TP(N)より小さいとき(電力偏差ΔPが負のとき)、ユニット電力指令TP(N)とユニット出力電力OP(N)の偏差(電力偏差ΔP)が大きくなるほど電圧指令RVが大きくなるよう補正して、補正後電圧指令RV(N)を求める。制御装置3で実行する電圧制御は、ユニット出力電圧VO(N)が補正後電圧指令RV(N)になるよう、フィードバック制御するものである。ユニット出力電力OP(N)がユニット電力指令TP(N)よりも大きいとき、電池ユニットBuのユニット出力電圧VO(N)が小さくなるよう制御され、ユニット出力電力OP(N)がユニット電力指令TP(N)より小さいとき、電池ユニットBuのユニット出力電圧VO(N)が大きくなるよう制御されるので、電池ユニットBu間の制御干渉を抑制することができる。
【0076】
また、ユニット出力電力OP(N)とユニット電力指令TP(N)が等しいとき(電力偏差ΔPが0のとき)、電圧指令RVは補正されることなく、電圧指令RVが補正後電圧指令RV(N)に設定されるので、電源システムPの出力電圧VPが電圧指令RVになるよう制御できる。さらに、電力偏差ΔPと補正後電圧指令RV(N)との関係は線形に設定されているので、ユニット出力電圧VO(N)を安定して制御することができる。
【0077】
上記の実施の形態では、電源システムPは、並列に接続された複数の電源サブユニットSuから構成されている。これにより、電源システムPの入出力電力を大きくすることが可能になる。
【0078】
上記の実施の形態によれば、電源サブユニットSuのコンバータ2は、電動車両VのPCU20に含まれるインバータ23(三相インバータ)を転用したものである。また、電源サブユニットSuのバッテリパック1として、電動車両Vのバッテリパック1を用いている。したがって、電動車両Vの買い換え、解体等に伴って回収されるバッテリやPCUのリユースを促進することができる。
【0079】
(変形例1)
図7は、変形例1に係る、電源システムPの制御装置3aを説明する図である。変形例1の制御装置3aは、電動車両Vに搭載された、HV-ECU200、MG-ECU210、および、BT-ECU220を利活用したものである。図7において、H/HV-ECU20a、および、HV-ECU(1)220a-1~HV-ECU(3)220a-3は、電動車両Vに搭載されたHV-ECU200を利活用したものである。MG-ECU210aは、MG-ECU210を利活用したものである。BT-ECU220a1~BT-ECU220a-3は、BT-ECU220を利活用したものである。
【0080】
図7において、インターフェースECU(I/F-ECU)600は、PCS-ECU500と制御装置3a(H/HV-ECU200a)との間を接続し、PCS-ECU500の通信プロトコルと制御装置3aの通信プロトコルとの間の整合を行っている。H/HV-ECU200aは、I/F-ECU600を介して、PCS-ECU500から受信した、電力指令RP、電圧指令RV、等から、各電池ユニットBuに対する電力指令TP(N)、等を演算する。
【0081】
MG-ECU210a、HV-ECU(1)20a-1~HV-ECU(3)20a-3、および、BT-ECU220a1~BT-ECU220a-3から構成された、サブ制御装置3a1は、電源サブユニットSuを制御する制御装置である。図7において、サブ制御装置3a1-1は、図1における電源サブユニットSu-1を制御する制御装置であり、電源サブユニットSu毎にサブ制御装置3a1が設けられる。すなわち、制御装置3aは、サブ制御装置3a1-1~サブ制御装置3a1-nのn個のサブ制御装置3a1を有する。
【0082】
図7において、BT-ECU(1)220a-1は、電源サブユニットSu-1のバッテリパック1-1-1のバッテリ10の電圧VB、入出力電流IB、温度等を監視するとともに、SOCを算出する。HV-ECU(1)200a-1は、電力指令TP(1-1-1)や電圧指令RVに基づいて、バッテリパック1-1-1のSMR11の開閉制御を行う。また、HV-ECU200a-1は、バッテリパック1-1-1のバッテリ10の劣化度合の検出等を行う。BT-ECU(2)220a-2およびHV-ECU(2)200a-2は、バッテリパック1-1-2に対して、BT-ECU(1)220a-1およびHV-ECU(1)200a-1と同様の処理を行う。BT-ECU(3)220a-3およびHV-ECU(3)200a-3は、バッテリパック1-1-3に対して、BT-ECU(1)220a-1およびHV-ECU(1)200a-1と同様の処理を行う。MG-ECU210aは、電圧指令RV、電力指令TP(1-1-1)、等に基づいて、上記で説明したように、デューティ比Du(1-1-1)を求め、コンバータ2を制御する(インバータ23のU相アームのスイッチング素子を駆動する)。
【0083】
サブ制御装置3a1-2~サブ制御装置3a1-nも、電源サブユニットSu-2~電源サブユニットSu-nに関して、サブ制御装置3a1-1と同様の処理を行う。この変形例1によれば、電源システムPの制御装置として、電動車両Vに搭載された、HV-ECU200、MG-ECU210、および、BT-ECU220のハードウェアを利活用することが促進できる。また、電動車両Vに搭載された、HV-ECU200、MG-ECU210、および、BT-ECU220等で利用していたCAN(Controller Area Network)通信の資源も活用でき、信頼性の高い、多重系の通信や監視を、比較的容易に実行することができる。
【0084】
(変形例2)
図8は、変形例2における電源システムPaの全体構成を示す図である。上記の実施の形態では、昇圧コンバータ21、インバータ22およびインバータ23を備えたPCU20を、電源システムPのコンバータ2に転用した例を説明した。上記の実施の形態では、特に、大電力を通電可能とするために、並列にスイッチング素子が設けられたインバータ23を、コンバータ2のスイッチング素子として利用していた。しかし、電動車両に搭載されるPCUには、インバータがひとつ設けられるもの、あるいは、昇圧コンバータを備えないPCUが存在する。
【0085】
変形例2における電源システムPaは、ひとつのインバータのみを備えるPCU、あるいは、PCUからインバータ部分を抜き出した回路を、電源システムPaのコンバータ2Aに転用したものである。
【0086】
図8において、コンバータ2Aは、電動車両に搭載されたPCUのインバータ(三相インバータ)を転用したものである。図8において、バッテリパック1のSR1およびSR2は、システムメインリレー(SMR)である。上記実施の形態と同様に、3個のバッテリパック1(1-1-1、1-1-2、1-1-3)の出力端子の正極端子が、PCUの三相インバータの各相アーム(U相アーム2A1、V相アーム2A2、W相アーム2A3)の中間点に、コイル(インダクタ)5を介して接続される。バッテリパック1の正極端子とコイル5との間の電力線は、コンデンサ6を介して、バッテリパック1の出力端子の負極端子と接続される。三相インバータの各相アーム(U相アーム2A1、V相アーム2A2、W相アーム2A3)の上アームは正極線PLに接続され、PCS100の入出力端子に接続される。三相インバータの各相アーム(U相アーム2A1、V相アーム2A2、W相アーム2A3)の下アームは負極線NLに接続され、PCS100の入出力端子に接続される。バッテリパック1の負極端子は、負極線NLに接続される。
【0087】
このように、変形例2における電源システムPaでは、PCUの三相インバータの各相アームをバッテリパック1に接続し、三相インバータをコンバータ2Aに転用して、3個の電池ユニットBuを有する電源サブユニットSuaを構成している。電源システムPaは、上記実施の形態と同様に、電源サブユニットSuaを複数備え、各電源サブユニットSuaは並列に接続されている。この変形例2においても、制御装置3bにおいて、上記の実施の形態と同様な電圧制御を実行することにより、上記の実施の形態と同様の作用効果を奏する。
【0088】
今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0089】
1 バッテリパック、2,2A コンバータ、3,3a,3b 制御装置、5 コイル(インダクタ)、6 コンデンサ、10 バッテリ、11 SMR、15 監視ユニット、20 PCU、21 昇圧コンバータ、22,23 インバータ、25 バッテリ接続端子、26 MG1接続端子、27 MG2接続端子、28a 正極端子、28b 負極端子、30 エンジン、40 動力分割機構、50 駆動輪、100 PCS、200 HV-ECU、210 MEG-ECU、220 BT-ECU 230 EG-ECU、300 負荷、400 制御ECU、450 駆動ECU、500 PCS-ECU、600 I/F-ECU、650 太陽光発電装置、Bu 電池ユニット、MG1 モータジェネレータ、MG2 モータジェネレータ、Su,Sua 電源サブユニット、P,Pa 電源システム、PG 電力系統、V 電動車両。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8