(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-20
(45)【発行日】2025-01-28
(54)【発明の名称】電子線又は極端紫外線リソグラフィー用レジスト下層膜形成組成物、電子線又は極端紫外線リソグラフィー用レジスト下層膜、及び半導体基板の製造方法
(51)【国際特許分類】
G03F 7/11 20060101AFI20250121BHJP
H01L 21/027 20060101ALI20250121BHJP
【FI】
G03F7/11 503
H01L21/30 573
(21)【出願番号】P 2022509542
(86)(22)【出願日】2021-03-09
(86)【国際出願番号】 JP2021009349
(87)【国際公開番号】W WO2021193030
(87)【国際公開日】2021-09-30
【審査請求日】2023-06-13
(31)【優先権主張番号】P 2020058385
(32)【優先日】2020-03-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004178
【氏名又は名称】JSR株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100159499
【氏名又は名称】池田 義典
(72)【発明者】
【氏名】瀬古 智昭
(72)【発明者】
【氏名】庵野 祐亮
(72)【発明者】
【氏名】二位 明崇
【審査官】高橋 純平
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2009/069712(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/171446(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/004-7/18
H01L 21/027
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表される第1構造単位を有するポリシロキサン化合物と、
溶媒と
を含有する、電子線又は極端紫外線リソグラフィー用レジスト下層膜形成組成物。
【化1】
(式(1)中、Xは、下記式(2)で表される基である。aは、1~3の整数である。aが2以上の場合、複数のXは互いに同一又は異なる。R
1は、炭素数1~20の1価の有機基、ヒドロキシ基又はハロゲン原子である。bは、0~2の整数である。bが2の場合、2つのR
1は互いに同一又は異なる。但し、a+bは3以下である。)
【化2】
(式(2)中、R
2は、炭素数1~20の1価の炭化水素基である。nは、1又は2である。nが2の場合、複数のR
2は互いに同一又は異なる。R
3は
、炭素数1~20の1価の有機基である。Lは、単結合又は2価の連結基である。*は、上記式(1)におけるケイ素原子との結合部位を示す。)
【請求項2】
上記式(2)におけるR
2が炭素数1~20の1価の鎖状炭化水素基又は炭素数6~20の1価の芳香族炭化水素基である、請求項1に記載の電子線又は極端紫外線リソグラフィー用レジスト下層膜形成組成物。
【請求項3】
上記式(2)におけるR
2で表される上記鎖状炭化水素基が酸素原子に3級炭素原子で結合している、請求項2に記載の電子線又は極端紫外線リソグラフィー用レジスト下層膜形成組成物。
【請求項4】
上記式(2)におけるnが1である、請求項1、請求項2又は請求項3に記載の電子線又は極端紫外線リソグラフィー用レジスト下層膜形成組成物。
【請求項5】
上記式(2)におけるR
3で表される上記有機基が炭素数1~20の1価の炭化水素基である、請求項
1から請求項4のいずれか1項に記載の電子線又は極端紫外線リソグラフィー用レジスト下層膜形成組成物。
【請求項6】
上記式(2)におけるLで表される上記連結基が炭素数1~20の2価の鎖状炭化水素基である、請求項1から請求項
5のいずれか1項に記載の電子線又は極端紫外線リソグラフィー用レジスト下層膜形成組成物。
【請求項7】
上記ポリシロキサン化合物が下記式(3)で表される第2構造単位をさらに有する、請求項1から請求項
6のいずれか1項に記載の電子線又は極端紫外線リソグラフィー用レジスト下層膜形成組成物。
【化3】
(式(3)中、R
4は、炭素数1~20の1価の有機基、ヒドロキシ基又はハロゲン原子である。cは、1~3の整数である。cが2以上の場合、複数のR
4は互いに同一又は異なる。)
【請求項8】
上記ポリシロキサン化合物が下記式(4)で表される第3構造単位をさらに有する、請求項1から請求項
7のいずれか1項に記載の電子線又は極端紫外線リソグラフィー用レジスト下層膜形成組成物。
【化4】
【請求項9】
請求項1から請求項
8のいずれか1項に記載の電子線又は極端紫外線リソグラフィー用レジスト下層膜形成組成物により形成される、電子線又は極端紫外線リソグラフィー用レジスト下層膜。
【請求項10】
基板に直接又は間接に
請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の電子線又は極端紫外線リソグラフィー用レジスト下層膜形成組成物を塗工する工程と、
上記レジスト下層膜形成組成物塗工工程により形成された塗工膜を加熱する工程と、
上記加熱工程により形成されたレジスト下層膜に直接又は間接にレジスト膜形成組成物を塗工する工程と、
上記レジスト膜形成組成物塗工工程により形成されたレジスト膜を電子線又は極端紫外線により露光する工程と、
上記露光されたレジスト膜を現像する工程と
を備
える、半導体基板の製造方法。
【請求項11】
上記加熱工程における加熱温度が200℃以上である、請求項
10に記載の半導体基板の製造方法。
【請求項12】
上記レジスト下層膜形成組成物塗工工程前に、
上記基板に直接又は間接に有機下層膜を形成する工程
をさらに備える、請求項
10又は請求項
11に記載の半導体基板の製造方法。
【請求項13】
上記レジスト下層膜を、酸を含有する除去液で除去する工程
をさらに備える、請求項
10、請求項
11又は請求項
12に記載の半導体基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子線又は極端紫外線リソグラフィー用レジスト下層膜形成組成物、電子線又は極端紫外線リソグラフィー用レジスト下層膜、及び半導体基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体基板の製造におけるパターン形成には、多層レジストプロセスが用いられることがある。多層レジストプロセスは、例えば、基板上に有機下層膜、ケイ素含有膜等のレジスト下層膜を介して積層されたレジスト膜を露光及び現像して得られたレジストパターン等をマスクとしてエッチングを行うことでパターニングされた基板を形成する(国際公開第2012/039337号参照)。
【0003】
最近では、半導体デバイスの高集積化がさらに進んでおり、より微細なパターンを形成するため、使用する露光光がKrFエキシマレーザー(248nm)、ArFエキシマレーザー(193nm)等から、極端紫外線(13.5nm、EUV)へと短波長化される傾向にある。また、微細なパターンを形成するため、電子線を使用したリソグラフィーも行われることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
多層レジストプロセスにおいては、レジスト下層膜であるケイ素含有膜上に残渣等の欠陥のない、断面形状の矩形性に優れたレジストパターンを形成できることが求められる。しかし、従来の電子線又は極端紫外線リソグラフィーにおいても、微細なレジストパターンを良好な形状で形成することは困難である。特に、形成されるレジストパターンが微細なものになるほど、現像時等においてパターン倒れが生じ易くなる。また、半導体基板等の製造工程では、除去液を用いてレジスト下層膜を除去することが行われる。この際、基板へのダメージを抑えつつ、上記レジスト下層膜を容易に除去することが求められる。
【0006】
本発明は、以上のような事情に基づいてなされたものであり、その目的は、電子線又は極端紫外線リソグラフィーにおけるレジスト下層膜の形成に用いられ、形成されるレジスト下層膜上に微細なレジストパターンを形成でき且つ容易に除去できるレジスト下層膜を形成することができる組成物、このような組成物から形成されるレジスト下層膜、及びこのような組成物を用いた半導体基板の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するためになされた発明は、下記式(1)で表される第1構造単位を有するポリシロキサン化合物(以下、「[A]化合物」ともいう。)と、溶媒(以下、「[B]溶媒」ともいう。)とを含有する、電子線又は極端紫外線リソグラフィー用レジスト下層膜形成組成物である。
【化1】
(式(1)中、Xは、下記式(2)で表される基である。aは、1~3の整数である。aが2以上の場合、複数のXは互いに同一又は異なる。R
1は、炭素数1~20の1価の有機基、ヒドロキシ基又はハロゲン原子である。bは、0~2の整数である。bが2の場合、2つのR
1は互いに同一又は異なる。但し、a+bは3以下である。)
【化2】
(式(2)中、R
2は、炭素数1~20の1価の炭化水素基である。nは、1又は2である。nが2の場合、複数のR
2は互いに同一又は異なる。R
3は、水素原子又は炭素数1~20の1価の有機基である。Lは、単結合又は2価の連結基である。*は、上記式(1)におけるケイ素原子との結合部位を示す。)
【0008】
上記課題を解決するためになされた別の発明は、当該電子線又は極端紫外線リソグラフィー用レジスト下層膜形成組成物により形成される、電子線又は極端紫外線リソグラフィー用レジスト下層膜である。
【0009】
上記課題を解決するためになされたさらに別の発明は、基板に直接又は間接にレジスト下層膜形成組成物を塗工する工程と、上記レジスト下層膜形成組成物塗工工程により形成された塗工膜を加熱する工程と、上記加熱工程により形成されたレジスト下層膜に直接又は間接にレジスト膜形成組成物を塗工する工程と、上記レジスト膜形成組成物塗工工程により形成されたレジスト膜を電子線又は極端紫外線により露光する工程と、上記露光されたレジスト膜を現像する工程とを備え、上記レジスト下層膜形成組成物が、上述の当該電子線又は極端紫外線リソグラフィー用レジスト下層膜形成組成物である、半導体基板の製造方法である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、電子線又は極端紫外線リソグラフィーにおけるレジスト下層膜の形成に用いられ、形成されるレジスト下層膜上に微細なレジストパターンを形成でき且つ容易に除去できるレジスト下層膜を形成することができる組成物、このような組成物から形成されるレジスト下層膜、及びこのような組成物を用いた半導体基板の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の電子線又は極端紫外線リソグラフィー用レジスト下層膜形成組成物(以下、「レジスト下層膜形成組成物」ともいう。)、電子線又は極端紫外線リソグラフィー用レジスト下層膜(以下、「レジスト下層膜」ともいう。)、及び半導体基板の製造方法について詳説する。
【0012】
<レジスト下層膜形成組成物>
当該レジスト下層膜形成組成物は、[A]化合物と[B]溶媒とを含有する。当該レジスト下層膜形成組成物は、本発明の効果を損なわない範囲において、その他の任意成分(以下、単に「任意成分」ともいう。)を含有していてもよい。
【0013】
当該レジスト下層膜形成組成物は[A]化合物と[B]溶媒とを含有することにより、電子線又は極端紫外線リソグラフィーにおいて、形成されるレジスト下層膜上に、微細なレジストパターンを形成できる。さらに、当該レジスト下層膜形成組成物により形成されるレジスト下層膜(ケイ素含有膜)は、酸を含有する除去液による除去性(膜除去性)に優れる。当該レジスト下層膜形成組成物が上記効果を奏する理由は必ずしも明確ではないが、例えば以下のように推察することができる。レジスト下層膜を形成する際、通常、溶媒の除去及び硬化等のために、レジスト下層膜形成組成物の塗工膜に対する加熱が行われる。この加熱の際、[A]化合物が有する上記式(2)で表される基においては、保護基(R2)の脱離及び脱炭酸(CO2)、すなわち-COOR2で表される基の脱離が起こり、その結果、1級又は2級アミノ基が生じる。塩基性であるこれらのアミノ基がレジスト下層膜の表面に存在すると、レジスト下層膜の表面と接するレジスト膜中の酸を捕捉することができるため、電子線又は極端紫外線リソグラフィーによる微細なレジストパターンにおいても、その断面形状の矩形性が優れたものとなると考えられる。具体的には、例えばアルカリ現像液を用いたポジ型の場合、非露光部のレジスト下層膜表面においてレジスト膜中の酸が捕捉されることで、レジストパターン底部の断面形状がえぐれた形状となり難く、レジストパターンの倒壊も抑制される。また、有機溶媒現像液を用いたネガ型の場合、非露光部のレジスト下層膜表面においてレジスト膜中の酸が捕捉されることで、現像の際に残渣が残り難く、断面形状の矩形性に優れたレジストパターンを形成することができると考えられる。このようなことから、当該レジスト下層膜形成組成物を用いることで、レジスト下層膜上に微細なレジストパターンを形成することができると推測される。また、形成されるレジスト下層膜中にアミノ基が存在するため、酸を含有する除去液への溶解性が向上することから、膜除去性を向上することができると考えられる。
【0014】
以下、当該レジスト下層膜形成組成物が含有する各成分について説明する。
【0015】
[[A]化合物]
[A]化合物は、後述する下記式(1)で表される第1構造単位(以下、「構造単位(I)」ともいう。)を有するポリシロキサン化合物である。本明細書において「ポリシロキサン化合物」とは、シロキサン結合(-Si-O-Si-)を含む化合物を意味する。[A]化合物は、本発明の効果を損なわない範囲において、上記構造単位(I)以外の他の構造単位を有していてもよい。
【0016】
以下、[A]化合物が有する各構造単位について説明する。
【0017】
(構造単位(I))
構造単位(I)は、下記式(1)で表される構造単位である。[A]化合物は、1種又は2種以上の構造単位(I)を有することができる。
【0018】
【0019】
式(1)中、Xは、下記式(2)で表される基である。aは、1~3の整数である。aが2以上の場合、複数のXは互いに同一又は異なる。R1は、炭素数1~20の1価の有機基、ヒドロキシ基又はハロゲン原子である。bは、0~2の整数である。bが2の場合、2つのR1は互いに同一又は異なる。但し、a+bは3以下である。
【0020】
【0021】
式(2)中、R2は、炭素数1~20の1価の炭化水素基である。nは、1又は2である。nが2の場合、複数のR2は互いに同一又は異なる。R3は、水素原子又は炭素数1~20の1価の有機基である。Lは、単結合又は2価の連結基である。*は、上記式(1)におけるケイ素原子との結合部位を示す。
【0022】
本明細書において、「有機基」とは、少なくとも1個の炭素原子を含む基を意味し、「炭素数」とは、基を構成する炭素原子数を意味する。
【0023】
R1で表される炭素数1~20の1価の有機基としては、例えば炭素数1~20の1価の炭化水素基、この炭化水素基の炭素-炭素結合間に2価のヘテロ原子含有基を含む基(以下、「基(α)」ともいう)、上記炭化水素基又は上記基(α)が有する水素原子の一部又は全部を1価のヘテロ原子含有基で置換した基(以下、「基(β)」ともいう)、上記炭化水素基、上記基(α)又は上記基(β)と2価のヘテロ原子含有基とを組み合わせた基(以下、「基(γ)」ともいう)等が挙げられる。なお、R1で表される炭素数1~20の1価の有機基には、上記式(2)で表される基は含まれないものとする。
【0024】
本明細書において「炭化水素基」には、鎖状炭化水素基、脂環式炭化水素基及び芳香族炭化水素基が含まれる。この「炭化水素基」は、飽和炭化水素基でも不飽和炭化水素基でもよい。「鎖状炭化水素基」とは、環状構造を含まず、鎖状構造のみで構成された炭化水素基をいい、直鎖状炭化水素基及び分岐状炭化水素基の両方を含む。「脂環式炭化水素基」とは、環構造としては脂環構造のみを含み、芳香環構造を含まない炭化水素基をいい、単環の脂環式炭化水素基及び多環の脂環式炭化水素基の両方を含む。但し、脂環構造のみで構成されている必要はなく、その一部に鎖状構造を含んでいてもよい。「芳香族炭化水素基」とは、環構造として芳香環構造を含む炭化水素基をいう。但し、芳香環構造のみで構成されている必要はなく、その一部に鎖状構造や脂環構造を含んでいてもよい。
【0025】
炭素数1~20の1価の炭化水素基としては、例えば炭素数1~20の1価の鎖状炭化水素基、炭素数3~20の1価の脂環式炭化水素基、炭素数6~20の1価の芳香族炭化水素基が挙げられる。
【0026】
炭素数1~20の1価の鎖状炭化水素基としては、例えばメチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、iso-ブチル基、tert-ブチル基等のアルキル基、エテニル基、プロペニル基、ブテニル基等のアルケニル基、エチニル基、プロピニル基、ブチニル基等のアルキニル基などが挙げられる。
【0027】
炭素数3~20の1価の脂環式炭化水素基としては、例えばシクロペンチル基、シクロヘキシル基等の単環の脂環式飽和炭化水素基、ノルボルニル基、アダマンチル基、トリシクロデシル基、テトラシクロドデシル基等の多環の脂環式飽和炭化水素基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基等の単環の脂環式不飽和炭化水素基、ノルボルネニル基、トリシクロデセニル基、テトラシクロドデセニル基等の多環の脂環式不飽和炭化水素基などが挙げられる。
【0028】
炭素数6~20の1価の芳香族炭化水素基としては、例えばフェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、アントリル基等のアリール基、ベンジル基、フェネチル基、ナフチルメチル基、アントリルメチル基等のアラルキル基などが挙げられる。
【0029】
2価及び1価のヘテロ原子含有基を構成するヘテロ原子としては、例えば酸素原子、窒素原子、硫黄原子、リン原子、ケイ素原子、ハロゲン原子等が挙げられる。ハロゲン原子としては、例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
【0030】
2価のヘテロ原子含有基としては、例えば-O-、-C(=O)-、-S-、-C(=S)-、-NR’-、これらのうちの2つ以上を組み合わせた基等が挙げられる。R’は、水素原子又は1価の炭化水素基である。
【0031】
1価のヘテロ原子含有基としては、例えばハロゲン原子、ヒドロキシ基、カルボキシ基、シアノ基、アミノ基、スルファニル基等が挙げられる。
【0032】
R1で表されるハロゲン原子としては、例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
【0033】
R1としては、炭素数1~20の1価の有機基が好ましく、1価の鎖状炭化水素基、1価の芳香族炭化水素基又は1価の炭化水素基の有する水素原子の一部若しくは全部を1価のヘテロ原子含有基で置換した1価の基がより好ましく、アルキル基又はアリール基がより好ましく、メチル基、エチル基又はフェニル基がさらに好ましい。
【0034】
R2で表される炭素数1~20の1価の炭化水素基としては、例えば上述のR1で表される炭素数1~20の1価の有機基の例として例示した基と同様の基等が挙げられる。
【0035】
R2は、炭素数1~20の1価の鎖状炭化水素基又は炭素数6~20の1価の芳香族炭化水素基が好ましく、炭素数1~20の1価の鎖状炭化水素基がより好ましい。
【0036】
R2が炭素数1~20の1価の鎖状炭化水素基である場合、上記鎖状炭化水素基が酸素原子に3級炭素原子で結合していることが好ましい。すなわち、上記鎖状炭化水素基は、3級鎖状炭化水素基であることが好ましい。また、この鎖状炭化水素基は、アルキル基であることが好ましい。すなわち、R2が炭素数1~20の1価の鎖状炭化水素基である場合、この鎖状炭化水素基は、3級アルキル基がより好ましく、炭素数4~8の3級アルキル基がさらに好ましく、炭素数4~6の3級アルキル基がよりさらに好ましく、t-ブチル基が特に好ましい。また、R2は、炭化水素基の種類によらず、酸素原子に3級炭素原子で結合していること、すなわち、3級炭化水素基であることが好ましい。
【0037】
R2がこのような3級炭化水素基である場合、加熱に伴うR2の脱離等が効率的に生じてレジスト下層膜表面にアミノ基が存在し易くなることなどにより、レジスト下層膜上に形成されるレジストパターンの矩形性、レジストパターン倒壊抑制性、レジスト下層膜の除去性等が向上する。
【0038】
R3で表される炭素数1~20の1価の有機基としては、例えば上述のR1で表される炭素数1~20の1価の有機基として例示した基と同様の基等が挙げられる。なお、R3で表される炭素数1~20の1価の有機基には、-COO-R2で表される基は含まれないものとする。
【0039】
R3は、炭素数1~20の1価の有機基が好ましく、炭素数1~20の1価の炭化水素基がより好ましく、鎖状炭化水素基又は脂環式炭化水素基がさらに好ましく、鎖状炭化水素基がよりさらに好ましく、アルキル基がよりさらに好ましい。R3で表される基の炭素数としては、1~8が好ましく、1~4がより好ましい。
【0040】
R3がこのような基である場合、加熱に伴って生じる基(アミノ基)の塩基性が高まることなどにより、レジスト下層膜上に形成されるレジストパターンの矩形性、レジストパターン倒壊抑制性、レジスト下層膜の除去性等、当該レジスト下層膜形成組成物が奏する効果がより高まる。また、R3が炭化水素基である場合、レジスト下層膜の疎水性が高まることなどにより、レジスト下層膜とレジストパターンとの密着性が高まり、特にアルカリ現像の際のレジストパターンの倒壊等の発生が抑制される。
【0041】
Lで表される2価の連結基としては、例えば炭素数1~20の2価の有機基等が挙げられる。炭素数1~20の2価の有機基としては、例えば上述のR1で表される炭素数1~20の1価の有機基として例示した1価の有機基から1個の水素原子を除いた基等が挙げられる。
【0042】
Lとしては、炭素数1~20の2価の炭化水素基が好ましく、炭素数1~20の2価の鎖状炭化水素基がより好ましく、炭素数1~20のアルカンジイル基がさらに好ましい。Lで表される基の炭素数としては、1~12が好ましく、1~6がより好ましい。Lで表される基のより好ましい形態としては、-(CH2)m-(mは、1から6の整数である。)で表される基が挙げられる。
【0043】
aとしては、1又は2が好ましく、1がより好ましい。
【0044】
bとしては、0又は1が好ましく、0がより好ましい。
【0045】
nとしては、1が好ましい。nが1であり、R3が有機基である場合、加熱に伴って生じるアミノ基が2級アミノ基となる。一般的に2級アミノ基は1級アミノ基より塩基性が高い。このように塩基性が高いアミノ基が生じることにより、レジスト下層膜上に形成されるレジストパターンの矩形性、レジストパターン倒壊抑制性、レジスト下層膜の除去性等が向上する。また、一般的に2級アミノ基は1級アミノ基より疎水性が高いため、レジスト下層膜とレジストパターンとの密着性が高まり、特にアルカリ現像の際のレジストパターンの倒壊等の発生が抑制される。
【0046】
構造単位(I)としては、例えば下記式(1-1)~(1-19)で表される化合物に由来する構造単位等が挙げられる。
【0047】
【0048】
[A]化合物における構造単位(I)の含有割合の下限としては、[A]化合物を構成する全構造単位に対して、0.1モル%が好ましく、1モル%がより好ましく、2モル%がさらに好ましく、3モル%がよりさらに好ましい。また、構造単位(I)の含有割合の上限としては、80モル%が好ましく、50モル%がより好ましく、20モル%がさらに好ましい。構造単位(I)の含有割合が上記範囲であることにより、レジスト下層膜上に電子線又は極端紫外線リソグラフィーによりレジストパターンを形成する際に、断面形状の矩形性がより優れ、倒壊し難い、微細なレジストパターンを形成することができ、また膜除去性も高まる。
【0049】
(他の構造単位)
他の構造単位としては、例えば下記式(3)で表される第2構造単位(以下、「構造単位(II)」ともいう。)、下記式(4)で表される第3構造単位(以下、「構造単位(III)」ともいう。)等が挙げられる。[A]化合物が構造単位(II)を有する場合、当該レジスト下層膜形成組成物の保存安定性及び塗工性を向上させることができる。また、[A]化合物が構造単位(III)を有する場合、当該レジスト下層膜形成組成物により形成されるレジスト下層膜の酸素ガスエッチング耐性を向上させることなどができる。
【0050】
【0051】
上記式(3)中、R4は、炭素数1~20の1価の有機基、ヒドロキシ基又はハロゲン原子である。cは、1~3の整数である。cが2以上の場合、複数のR4は互いに同一又は異なる。
【0052】
R4で表される炭素数1~20の1価の有機基としては、例えば上述のR1で表される炭素数1~20の1価の有機基として例示した基と同様の基等が挙げられる。
【0053】
R4で表されるハロゲン原子としては、例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
【0054】
R4としては、炭化水素基が好ましく、アルキル基又はアリール基がより好ましい。R4で表される基の炭素数としては、1~12が好ましく、1~8がより好ましい。
【0055】
cとしては、1が好ましい。
【0056】
[A]化合物が他の構造単位として構造単位(II)を有する場合、構造単位(II)の含有割合の下限としては、[A]化合物を構成する全構造単位に対して、0.1モル%が好ましく、1モル%がより好ましく、2モル%、3モル%又は5モル%がさらに好ましい場合もある。上記含有割合の上限としては、40モル%が好ましく、30モル%がより好ましく、20モル%がさらに好ましい。
【0057】
【0058】
[A]化合物が他の構造単位として構造単位(III)を有する場合、構造単位(III)の含有割合の下限としては、[A]化合物を構成する全構造単位に対して、30モル%が好ましく、40モル%がより好ましく、50モル%、60モル%又は70モル%がさらに好ましい場合もある。上記含有割合の上限としては、95モル%が好ましく、90モル%がより好ましく、85モル%がさらに好ましい。
【0059】
[A]化合物を構成する全構造単位に対する構造単位(I)、構造単位(II)及び構造単位(III)の合計含有割合の下限としては、80モル%が好ましく、90モル%がより好ましく、95モル%又は99モル%がさらに好ましい場合もある。上記合計含有割合の上限は100モル%であってよい。
【0060】
当該レジスト下層膜形成組成物における[A]化合物の含有割合の下限としては、当該レジスト下層膜形成組成物に含まれる全成分に対して、0.1質量%が好ましく、0.3質量%がより好ましく、0.5質量%がさらに好ましい。上記含有割合の上限としては、10質量%が好ましく、5質量%がより好ましく、3質量%がさらに好ましく、2質量%がよりさらに好ましい。
【0061】
当該レジスト下層膜形成組成物の全固形分における[A]化合物の含有割合の下限としては、50質量%が好ましく、70質量%がより好ましく、80質量%、90質量%又は95質量%がさらに好ましい場合もある。上記含有割合の上限としては、100質量%が好ましく、99質量%又は95質量%であってもよい。なお、全固形分とは、[B]溶媒及び[D]水以外の全成分をいう。
【0062】
[A]化合物は、重合体の形態であることが好ましい。本明細書において「重合体」とは、2以上の構造単位を有する化合物をいい、重合体において同一の構造単位が2以上連続する場合、この構造単位を「繰り返し単位」ともいう。[A]化合物が重合体の形態である場合、[A]化合物のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算重量平均分子量(Mw)の下限としては、1,000が好ましく、1,200がより好ましく、1,500がさらに好ましい。上記Mwの上限としては、10,000が好ましく、5,000がより好ましく、3,000がさらに好ましい。
【0063】
なお、本明細書において[A]化合物のMwは、東ソー(株)のGPCカラム(「G2000HXL」2本、「G3000HXL」1本及び「G4000HXL」1本)を使用し、以下の条件によるゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定される値である。
溶離液:テトラヒドロフラン
流量:1.0mL/分
試料濃度:1.0質量%
試料注入量:100μL
カラム温度:40℃
検出器:示差屈折計
標準物質:単分散ポリスチレン
【0064】
[A]化合物は、各構造単位を与える単量体を用い、常法により合成することができる。例えば構造単位(I)を与える単量体及び必要に応じて他の構造単位を与える単量体をシュウ酸等の触媒及び水の存在下、溶媒中で加水分解縮合させることにより合成することができる。加水分解縮合反応等により、各単量体は種類に関係なく[A]化合物中に取り込まれると考えられる。したがって、合成された[A]化合物における構造単位(I)及び他の構造単位の含有割合は、通常、合成反応に用いた各単量体の仕込み量の割合と同等になる。
【0065】
[[B]溶媒]
[B]溶媒としては特に制限されず、例えばアルコール系溶媒、ケトン系溶媒、エーテル系溶媒、エステル系溶媒、含窒素系溶媒等が挙げられる。[B]溶媒は、通常、有機溶媒である。当該レジスト下層膜形成組成物は、1種又は2種以上の[B]溶媒を含有することができる。
【0066】
アルコール系溶媒としては、例えばメタノール、エタノール、n-プロパノール、iso-プロパノール、n-ブタノール、iso-ブタノール等のモノアルコール系溶媒、エチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール等の多価アルコール系溶媒などが挙げられる。
【0067】
ケトン系溶媒としては、例えばアセトン、メチルエチルケトン、メチル-n-プロピルケトン、メチル-iso-ブチルケトン、シクロヘキサノン等が挙げられる。
【0068】
エーテル系溶媒としては、例えばエチルエーテル、iso-プロピルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、テトラヒドロフラン等が挙げられる。
【0069】
エステル系溶媒としては、例えば酢酸エチル、γ-ブチロラクトン、酢酸n-ブチル、酢酸エチレングリコールモノメチルエーテル、酢酸エチレングリコールモノエチルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノメチルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノエチルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノメチルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノエチルエーテル、酢酸ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、酢酸ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸n-ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル等が挙げられる。
【0070】
含窒素系溶媒としては、例えばN,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン等が挙げられる。
【0071】
これらの中でも、エーテル系溶媒又はエステル系溶媒が好ましく、成膜性に優れるため、グリコール構造を有するエーテル系溶媒又はグリコール構造を有するエステル系溶媒がより好ましい。
【0072】
グリコール構造を有するエーテル系溶媒及びグリコール構造を有するエステル系溶媒としては、例えばプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノメチルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノエチルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノプロピルエーテル等が挙げられる。これらの中でも、酢酸プロピレングリコールモノメチルエーテル又はプロピレングリコールモノエチルエーテルが好ましい。
【0073】
当該レジスト下層膜形成組成物における[B]溶媒の含有割合の下限としては、当該レジスト下層膜形成組成物に含まれる全成分に対して、90質量%が好ましく、92.5質量%がより好ましく、95質量%がさらに好ましい。上記含有割合の上限としては、99.9質量%が好ましく、99.5質量%がより好ましく、99質量%がさらに好ましい。
【0074】
(任意成分)
任意成分としては、例えば酸発生剤、塩基性化合物(塩基発生剤を含む)、ラジカル発生剤、界面活性剤、コロイド状シリカ、コロイド状アルミナ、有機ポリマー、水等が挙げられる。当該レジスト下層膜形成組成物は、1種又は2種以上の任意成分を含有することができる。
【0075】
当該レジスト下層膜形成組成物が任意成分を含有する場合、当該レジスト下層膜形成組成物における任意成分の含有割合としては、用いる任意成分の種類に応じて、また本発明の効果を損なわない範囲において適宜決定することができる。
【0076】
[[C]酸発生剤]
当該レジスト下層膜形成組成物が[C]酸発生剤を含有する場合、当該レジスト下層膜形成組成物の硬化性が向上し、レジスト下層膜とレジスト膜とのインターミキシングを抑制することなどができる。
【0077】
[C]酸発生剤は、露光又は加熱により酸を発生する成分である。当該膜形成組成物が酸発生剤を含有することで、比較的低温(常温を含む)においても[A]化合物の硬化反応を促進できる。
【0078】
露光により酸を発生する酸発生剤としては、例えば特開2004-168748号公報における段落[0077]~[0081]に記載の酸発生剤等が挙げられる。
【0079】
また、加熱により酸を発生する酸発生剤としては、上記特開2004-168748号公報において光酸発生剤として例示されているオニウム塩系酸発生剤、2,4,4,6-テトラブロモシクロヘキサジエノン、ベンゾイントシレート、2-ニトロベンジルトシレート、アルキルスルホネート類等が挙げられる。
【0080】
当該レジスト下層膜形成組成物が[C]酸発生剤を含有する場合、当該レジスト下層膜形成組成物における[C]酸発生剤の含有割合の下限としては、当該レジスト下層膜形成組成物に含まれる全成分に対して、例えば0.001質量%が好ましく、0.01質量%がより好ましい。上記含有割合の上限としては、1質量%が好ましく、0.5質量%がより好ましく、0.1質量%がさらに好ましい。[C]酸発生剤の含有割合を上記下限以上とすることで、硬化性をより高めることなどができる。[C]酸発生剤の含有割合を上記上限以下とすることで、形成されるレジスト下層膜の表面を塩基性に保ちやすくなり、レジスト下層膜上に形成されるレジストパターンの矩形性、レジストパターン倒壊抑制性、レジスト下層膜の除去性等が高まる。
【0081】
[[D]水]
当該レジスト下層膜形成組成物が[D]水を含有すると、[A]化合物が水和されるため、保存安定性が向上する。また、[D]水を含有するとレジスト下層膜形成時の硬化が促進され、緻密なレジスト下層膜を得ることができる。[D]水は、[B]溶媒に含まれないものとする。
【0082】
当該レジスト下層膜形成組成物が[D]水を含有する場合、当該レジスト下層膜形成組成物における[D]水の含有割合の下限としては、当該レジスト下層膜形成組成物に含まれる全成分に対して、例えば0.1質量%が好ましく、0.2質量%がより好ましい。上記含有割合の上限としては、20質量%が好ましく、5質量%がより好ましい。
【0083】
<レジスト下層膜形成組成物の調製方法>
当該レジスト下層膜形成組成物の調製方法としては特に限定されず、常法に従って調製することができる。例えば[A]化合物の溶液と、[B]溶媒と、必要に応じて任意成分とを所定の割合で混合し、好ましくは得られた混合溶液を孔径0.2μm以下のフィルター等でろ過することにより調製することができる。
【0084】
<レジスト下層膜>
当該レジスト下層膜は、当該レジスト下層膜形成組成物により形成される、電子線又は極端紫外線リソグラフィー用レジスト下層膜である。当該レジスト下層膜によれば、電子線又は極端紫外線リソグラフィーに用いることで、当該レジスト下層膜上に微細なレジストパターンを形成できる。また、当該レジスト下層膜は、酸を含有する除去液等によって、容易に除去できる。当該レジスト下層膜は、後述するように、当該レジスト下層膜形成組成物の塗工、及び塗工膜の加熱により形成することができる。
【0085】
<半導体基板の製造方法>
当該半導体基板の製造方法は、基板に直接又は間接にレジスト下層膜形成組成物を塗工する工程(以下、「レジスト下層膜形成組成物塗工工程」ともいう。)と、上記レジスト下層膜形成組成物塗工工程により形成された塗工膜を加熱する工程(以下、「加熱工程」ともいう。)と、上記加熱工程により形成されたレジスト下層膜に直接又は間接にレジスト膜形成組成物を塗工する工程(以下、「レジスト膜形成組成物塗工工程」ともいう)と、上記レジスト膜形成組成物塗工工程により形成されたレジスト膜を電子線又は極端紫外線により露光する工程(以下、「露光工程」ともいう)と、上記露光されたレジスト膜を現像する工程(以下、「現像工程」ともいう)とを備える。当該半導体基板の製造方法では、レジスト下層膜形成組成物として上述の当該レジスト下層膜形成組成物を用いる。
【0086】
当該半導体基板の製造方法は、必要に応じて、上記レジスト下層膜形成組成物塗工工程前に、上記基板に直接又は間接に有機下層膜を形成する工程(以下、「有機下層膜形成工程」ともいう)をさらに備えていてもよい。
【0087】
当該半導体基板の製造方法は、必要に応じて、上記レジスト下層膜(ケイ素含有膜)を、酸を含有する除去液で除去する工程(以下、「除去工程」ともいう)をさらに備えていてもよい。
【0088】
また、当該半導体基板の製造方法は、現像工程後、形成されたレジストパターン等をマスクとしてエッチングを行う工程(以下、「エッチング工程」ともいう)を備えていてよい。このエッチング工程により、基板自体に微細なパターンが形成される。
【0089】
当該半導体基板の製造方法によれば、レジスト下層膜の形成に上述の当該レジスト下層膜形成組成物を用い、電子線又は極端紫外線による露光を行うため、レジスト下層膜上に微細なレジストパターンを形成することができる。また、形成されるレジスト下層膜は、除去性に優れており、酸を含有する除去液等で除去することができる。従って、当該半導体基板の製造方法によれば、微細なパターンが形成された半導体基板を効率的に製造することができる。なお、当該製造方法における「半導体基板」とは、半導体デバイス(半導体素子)に用いられる基板をいい、材質が半導体である基板に限定されるものではない。
【0090】
当該製造方法において形成されるレジストパターン及び基板パターン(基板に形成されたパターン)のサイズは、例えば線幅100nm以下、50nm以下、30nm以下、20nm以下又は15nm以下の部分を有するものであることが好ましい。形成されるレジストパターンの最小の線幅は例えば2nm、5nm又は10nmであってよい。
【0091】
以下、当該半導体基板の製造方法が備える各工程について説明する。
【0092】
[レジスト下層膜形成組成物塗工工程]
本工程では、基板に直接又は間接にレジスト下層膜形成組成物を塗工する。本工程により、基板上に直接又は間接にレジスト下層膜形成組成物の塗工膜が形成される。本工程では、レジスト下層膜形成組成物として上述の当該レジスト下層膜形成組成物を用いる。
【0093】
基板としては、例えば酸化シリコン、窒化シリコン、酸窒化シリコン、ポリシロキサン等の絶縁膜、樹脂基板などが挙げられる。また、基板としては、配線溝(トレンチ)、プラグ溝(ビア)等のパターニングが施された基板であってもよい。
【0094】
レジスト下層膜形成組成物の塗工方法としては特に制限されず、例えば回転塗工法等が挙げられる。
【0095】
基板に間接にレジスト下層膜形成組成物を塗工する場合としては、例えば基板上に形成された他の膜上にレジスト下層膜形成組成物を塗工する場合等が挙げられる。基板上に形成された他の膜としては、例えば後述する有機下層膜形成工程により形成される有機下層膜、反射防止膜、低誘電体絶縁膜等が挙げられる。
【0096】
[加熱工程]
本工程では、レジスト下層膜形成組成物塗工工程により形成された塗工膜を加熱する。この加熱により、塗工膜が硬化することなどにより、レジスト下層膜が形成される。また、この加熱により、上述のように[A]化合物中の上記式(2)で表される基からアミノ基が生じるため、表面にアミノ基が存在するレジスト下層膜が得られる。
【0097】
塗工膜の加熱を行う際の雰囲気としては特に制限されず、例えば大気下、窒素雰囲気下等が挙げられる。通常、塗工膜の加熱は大気下で行われる。塗工膜の加熱を行う場合の加熱温度、加熱時間等の諸条件については適宜決定することができる。加熱温度の下限としては、例えば150℃であってよいが、200℃が好ましく、210℃又は220℃がより好ましい。加熱温度を上記下限以上とすることで、アミノ基を十分に生じさせることができる。加熱温度の上限としては、550℃が好ましく、450℃がより好ましく、300℃がさらに好ましい。加熱時間の下限としては、15秒が好ましく、30秒がより好ましい。加熱時間の上限としては、1,200秒が好ましく、600秒がより好ましい。
【0098】
レジスト下層膜形成組成物が酸発生剤を含有し、この酸発生剤が露光により酸を発生する酸発生剤である場合には、加熱と露光とを組み合わせることにより、レジスト下層膜の形成を促進させることができる。また、酸発生剤が加熱により酸を発生する酸発生剤である場合には、上記加熱により酸が発生し、硬化反応を促進させることができる。
【0099】
本工程により形成されるレジスト下層膜の平均厚みの下限としては、1nmが好ましく、3nmがより好ましく、5nmがさらに好ましい。上記平均厚みの上限としては、300nmが好ましく、100nmがより好ましく、50nmがさらに好ましく、20nmがよりさらに好ましい。なお、レジスト下層膜の平均厚みは、分光エリプソメータ(J.A.WOOLLAM社の「M2000D」)を用いて測定した値である。
【0100】
[レジスト膜形成組成物塗工工程]
本工程では、上記加熱工程により形成されたレジスト下層膜に直接又は間接にレジスト膜形成組成物を塗工する。本工程により、レジスト下層膜上に直接又は間接にレジスト膜が形成される。
【0101】
レジスト膜形成組成物の塗工方法としては特に制限されず、例えば回転塗工法等が挙げられる。
【0102】
本工程をより詳細に説明すると、例えば形成されるレジスト膜が所定の厚みとなるようにレジスト組成物を塗工した後、プレベーク(以下、「PB」ともいう)することによって塗工膜中の溶媒を揮発させることにより、レジスト膜を形成する。
【0103】
PB温度及びPB時間は、使用されるレジスト膜形成組成物の種類等に応じて適宜決定することができる。PB温度の下限としては、30℃が好ましく、50℃がより好ましい。PB温度の上限としては、200℃が好ましく、150℃がより好ましい。PB時間の下限としては、10秒が好ましく、30秒がより好ましい。PB時間の上限としては、600秒が好ましく、300秒がより好ましい。
【0104】
本工程において用いるレジスト膜形成組成物としては特に制限されず、公知のレジスト膜形成組成物を用いることができる。通常、レジスト膜形成組成物は、電子線又は極端紫外線の露光により酸を発生する酸発生剤(感放射線性酸発生剤)を含有する。レジスト膜形成組成物としては、例えば、樹脂及び上記酸発生剤を含有するネガ型又はポジ型のレジスト膜形成組成物等が挙げられる。上記樹脂はアルカリ可溶性であることが好ましい。また、上記樹脂は酸解離性基を有することが好ましい。
【0105】
[露光工程]
本工程では、上記レジスト膜形成組成物塗工工程により形成されたレジスト膜を電子線又は極端紫外線(波長13.5nm等、「EUV」ともいう)により露光する。具体的には、例えば所定のパターンを有するマスクを介して、電子線又は極端紫外線をレジスト膜に照射する。本工程により、レジスト膜における露光部と非露光部との間で現像液への溶解性に差異が生じる。露光条件は用いるレジスト膜形成組成物の種類等に応じて適宜決定することができる。
【0106】
本工程では、上記露光後、解像度、パターンプロファイル、現像性等のレジスト膜の性能を向上させるために、ポストエクスポージャーベーク(以下、「PEB」ともいう)を行うことができる。PEB温度及びPEB時間としては、使用されるレジスト膜形成組成物の種類等に応じて適宜決定することができる。PEB温度の下限としては、50℃が好ましく、70℃がより好ましい。PEB温度の上限としては、200℃が好ましく、150℃がより好ましい。PEB時間の下限としては、10秒が好ましく、30秒がより好ましい。PEB時間の上限としては、600秒が好ましく、300秒がより好ましい。
【0107】
[現像工程]
本工程では、上記露光されたレジスト膜を現像する。この現像に用いる現像液としては、アルカリ水溶液(アルカリ現像液)、有機溶媒含有液(有機溶媒現像液)等が挙げられる。例えばアルカリ現像液を用いたポジ型の場合、レジスト膜における露光部のアルカリ水溶液への溶解性が高まっていることから、アルカリ現像を行うことで露光部が除去されることにより、ポジ型のレジストパターンが形成される。また、有機溶媒現像液を用いたネガ型の場合、レジスト膜における露光部の有機溶媒への溶解性が低下していることから、有機溶媒現像を行うことで有機溶媒への溶解性が相対的に高い非露光部が除去されることにより、ネガ型のレジストパターンが形成される。
【0108】
アルカリ水溶液(アルカリ現像液)としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、けい酸ナトリウム、メタけい酸ナトリウム、アンモニア水、エチルアミン、n-プロピルアミン、ジエチルアミン、ジ-n-プロピルアミン、トリエチルアミン、メチルジエチルアミン、エチルジメチルアミン、トリエタノールアミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)、ピロール、ピペリジン、コリン、1,8-ジアザビシクロ-[5.4.0]-7-ウンデセン、1,5-ジアザビシクロ-[4.3.0]-5-ノネン等のアルカリ性化合物の少なくとも1種を溶解したアルカリ性水溶液等が挙げられる。
【0109】
アルカリ水溶液におけるアルカリ性化合物の含有割合の下限としては、0.1質量%が好ましく、0.5質量%がより好ましく、1質量%がさらに好ましい。上記含有割合の上限としては、20質量%が好ましく、10質量%がより好ましく、5質量%がさらに好ましい。
【0110】
アルカリ水溶液としては、TMAH水溶液が好ましく、2.38質量%TMAH水溶液がより好ましい。
【0111】
有機溶媒含有液(有機溶媒現像液)が含有する有機溶媒としては、有機溶媒現像に用いられる公知の有機溶媒を用いることができる。例えば、上述の当該レジスト膜形成組成物における[B]溶媒として例示したものと同様のもの等が挙げられる。
【0112】
有機溶媒としては、エステル系溶媒、エーテル系溶媒、アルコール系溶媒、ケトン系溶媒及び/又は炭化水素系溶媒が好ましく、エステル系溶媒がより好ましい。
【0113】
有機溶媒含有液における有機溶媒の含有割合の下限としては、80質量%が好ましく、90質量%がより好ましく、95質量%がさらに好ましく、99質量%が特に好ましい。
【0114】
これらの現像液は、1種単独又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。なお、現像後は、洗浄し、乾燥することが一般的である。
【0115】
[有機下層膜形成工程]
本工程では、上記レジスト下層膜形成組成物塗工工程前に、上記基板に直接又は間接に有機下層膜を形成する。本工程は、任意の工程である。本工程により、基板に直接又は間接に有機下層膜が形成される。なお、「上記レジスト下層膜形成組成物塗工工程前」とは、レジスト下層膜形成組成物塗工工程の直前のみを意味するのではなく、レジスト下層膜形成組成物塗工工程よりも川上の時点を意味する。したがって、本工程とレジスト下層膜形成組成物塗工工程との間にその他の任意の工程を備えていてもよい。
【0116】
有機下層膜は、有機下層膜形成組成物の塗工等により形成することができる。有機下層膜を有機下層膜形成組成物の塗工により形成する方法としては、例えば有機下層膜形成組成物を基板に直接又は間接に塗工して形成された塗工膜を加熱や露光を行うことにより硬化等させる方法等が挙げられる。上記有機下層膜形成組成物としては、例えばJSR(株)の「HM8006」等を用いることができる。加熱や露光の諸条件については、用いる有機下層膜形成組成物の種類等に応じて適宜決定することができる。
【0117】
基板に間接に有機下層膜を形成する場合としては、例えば基板上に形成された低誘電絶縁膜上に有機下層膜を形成する場合等が挙げられる。
【0118】
[除去工程]
本工程では、上記レジスト下層膜を、酸を含有する除去液で除去する。本工程は、任意の工程である。本工程により、基板からレジスト下層膜が除去される。なお、本工程は、レジスト下層膜が形成された直後に行われるものに限定されず、レジスト下層膜が形成された以降のいずれの時点で行われるものであってよい。
【0119】
本工程がレジスト膜形成組成物塗工工程前に行われる場合、例えばレジスト膜形成組成物塗工工程前にレジスト下層膜に欠陥等が検出された際に、リワーク工程としてレジスト下層膜を容易に除去することができる。
【0120】
また、本工程がエッチング工程後に行われる場合、エッチング後のレジスト下層膜残渣を除去することができる。当該製造方法においては、このとき、レジスト膜の残膜も共に除去できるという利点もある。
【0121】
酸を含有する除去液としては、例えば酸及び水を含む液、酸、過酸化水素及び水の混合により得られる液等が挙げられる。酸としては、例えば硫酸、フッ化水素酸、塩酸等が挙げられる。酸を含有する除去液としては、より具体的には、例えばフッ化水素酸及び水の混合により得られる液、硫酸、過酸化水素及び水の混合により得られる液、塩酸、過酸化水素及び水の混合により得られる液等が挙げられる。
【0122】
レジスト下層膜の除去方法としては、レジスト下層膜と除去液とを接触させることができる方法であれば特に制限されず、例えば、基板を除去液に浸漬する方法、除去液を吹き付ける方法、除去液を塗布する方法等が挙げられる。
【0123】
レジスト下層膜を除去する際の温度、時間等の諸条件については特に制限されず、レジスト下層膜の膜厚、用いる除去液の種類等に応じて適宜決定することができる。除去液の温度の下限としては、20℃が好ましく、40℃がより好ましい。上記温度の上限としては、100℃が好ましく、80℃がより好ましい。時間の下限としては、1分が好ましく、3分がより好ましく、5分又は10分がより好ましい場合もある。上記時間の上限としては、20分が好ましく、10分がより好ましく、5分がさらに好ましい。
【0124】
本工程では、レジスト下層膜を除去した後、洗浄及び/又は乾燥を行ってもよい。
【0125】
[エッチング工程]
本工程は、レジストパターン等をマスクとしてエッチングを行う工程である。エッチングの回数としては1回でも、複数回、すなわちエッチングにより得られるパターンをマスクとして順次エッチングを行ってもよいが、より良好な形状のパターンを得る観点からは、複数回が好ましい。複数回のエッチングを行う場合、例えば、上記有機下層膜を有さない場合はレジスト下層膜、基板の順に順次エッチングし、上記有機下層膜を有する場合はレジスト下層膜、有機下層膜、基板の順に順次エッチングを行う。エッチングの方法としては、ドライエッチング、ウエットエッチング等が挙げられる。これらの中で、基板のパターンの形状をより良好なものとする観点から、ドライエッチングが好ましい。エッチングガスとしては、フッ素系ガス、酸素系ガス等が、マスク及びエッチングされる層の材質に応じて適宜選択される。例えば、レジストパターンをマスクとしたレジスト下層膜(ケイ素含有膜)のドライエッチングには、通常フッ素系ガスが用いられ、これに酸素系ガスと不活性ガスとを混合したものが好適に用いられる。レジスト下層膜(ケイ素含有膜)パターンをマスクとした有機下層膜のドライエッチングには、通常、酸素系ガスが用いられる。有機下層膜パターンをマスクとした基板のドライエッチングには、レジスト下層膜(ケイ素含有膜)のドライエッチングと同様のガス等が用いられる。上記エッチングの後、所定のパターンを有するパターニング基板が得られる。
【実施例】
【0126】
以下、実施例を説明する。なお、以下に示す実施例は、本発明の代表的な実施例の一例を示したものであり、これにより本発明の範囲が狭く解釈されることはない。
【0127】
本実施例における[A]化合物の重量平均分子量(Mw)の測定、[A]化合物の溶液中の濃度の測定、及び膜の平均厚みの測定はそれぞれ以下の方法により行った。
【0128】
[重量平均分子量(Mw)の測定]
[A]化合物の重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、東ソー(株)のGPCカラム(「G2000HXL」2本、「G3000HXL」1本及び「G4000HXL」1本)を使用し以下の条件により測定した。
溶離液:テトラヒドロフラン
流量:1.0mL/分
試料濃度:1.0質量%
試料注入量:100μL
カラム温度:40℃
検出器:示差屈折計
標準物質:単分散ポリスチレン
【0129】
[[A]化合物の溶液中の濃度]
[A]化合物の溶液0.5gを250℃で30分間焼成して得られた残渣の質量を測定し、この残渣の質量を[A]化合物の溶液の質量で除することにより、[A]化合物の溶液の濃度(単位:質量%)を算出した。
【0130】
[膜の平均厚み]
膜の平均厚みは、分光エリプソメータ(J.A.WOOLLAM社の「M2000D」)を用いて測定した。
【0131】
<[A]化合物等の合成>
以下の合成例においては特に断りのない限り、質量部は使用した単量体の合計質量を100質量部とした場合の値を意味する。
[A]化合物等の合成に使用した単量体(以下、「単量体(M-1)~(M-23)」ともいう。)を以下に示す。
【0132】
【0133】
[合成例1]化合物(A-1)の合成
反応容器において、上記化合物(M-1)、化合物(M-4)及び化合物(M-5)(合計100質量部)をモル比率が83/12/5(モル%)となるようプロピレングリコールモノエチルエーテル91質量部に溶解し、単量体溶液を調製した。上記反応容器内を5℃とし、撹拌しながら、9.1質量%シュウ酸水溶液46質量部を20分間かけて滴下した。滴下終了後、反応容器内を40℃に加熱し、反応を4時間実施した。反応終了後、水を91質量部加え、攪拌を1時間実施した。攪拌終了後、反応容器内を30℃以下に冷却した。冷却した反応溶液にプロピレングリコールモノエチルエーテルを447質量部加えた後、エバポレーターを用いて、水、反応により生成したアルコール類及び余剰のプロピレングリコールモノエチルエーテルを除去して、化合物(A-1)のプロピレングリコールモノエチルエーテル溶液を得た。化合物(A-1)のMwは1,600であった。化合物(A-1)の上記プロピレングリコールモノエチルエーテル溶液中の濃度は、20.0質量%であった。
【0134】
[合成例2~22及び比較合成例1~2](化合物(A-2)~(A-22)及び化合物(a-1)~(a-2)の合成)
下記表1に示す種類及び使用量(モル%)の各単量体を使用した以外は、合成例1と同様にして、化合物(A-2)~(A-22)及び化合物(a-1)~(a-2)のプロピレングリコールモノエチルエーテル溶液を得た。得られた[A]化合物のMw及び[A]化合物の上記プロピレングリコールモノエチルエーテル溶液中の濃度(質量%)を表1に合わせて示す。表1における「-」は、該当する単量体を使用しなかったことを示す。
【0135】
【0136】
<レジスト下層膜形成組成物の調製>
レジスト下層膜形成組成物の調製に用いた[B]溶媒及び[C]酸発生剤について以下に示す。
【0137】
[[B]溶媒]
B-1:プロピレングリコールモノメチルエーテル
B-2:酢酸プロピレングリコールモノメチルエーテル
[[C]酸発生剤
C-1:下記式(C-1)で表される化合物
【0138】
【0139】
[実施例1]
[A]化合物としての(A-1)0.5質量部(但し、溶媒を除く)、[B]溶媒としての(B-1)94.5質量部([A]化合物の溶液に含まれる溶媒としての(B-1)も含む)及び(B-2)5.0質量部を混合し、得られた溶液を孔径0.2μmのPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)フィルターでろ過して、組成物(レジスト下層膜形成組成物)(J-1)を調製した。
【0140】
[実施例2~24及び比較例1~比較例2]
下記表2に示す種類及び配合量の各成分を用いた以外は、実施例1と同様に操作して、組成物(J-2)~(J-24)及び(j-1)~(j-2)を調製した。表2中の「-」は、該当する成分を使用しなかったことを示す。
【0141】
<レジスト組成物の調製>
レジスト組成物を以下のようにして調製した。レジスト組成物(R-1)は、4-ヒドロキシスチレンに由来する構造単位(1)、スチレンに由来する構造単位(2)及び4-t-ブトキシスチレンに由来する構造単位(3)(各構造単位の含有割合は、(1)/(2)/(3)=65/5/30(モル%))を有する重合体100質量部と、感放射線性酸発生剤としてのトリフェニルスルホニウムトリフオロメタンスルホネート1.0質量部と、溶媒としての乳酸エチル4,400質量部及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート1,900質量部とを混合し、得られた溶液を孔径0.45μmのPTFEフィルターでろ過することで得た。
【0142】
<評価>
調製した各組成物(レジスト下層膜形成組成物)を用いて、以下の方法により、レジストパターン倒壊抑制性及び膜除去性を評価した。評価結果を表2に示す。
【0143】
[レジストパターン倒壊抑制性]
12インチシリコンウェハ上に、有機下層膜形成用材料(JSR(株)の「HM8006」)をスピンコーター(東京エレクトロン(株)の「CLEAN TRACK ACT12」)による回転塗工法により塗工した後、250℃で60秒間加熱を行うことにより平均厚み100nmの有機下層膜を形成した。この有機下層膜上に、上記調製した組成物(レジスト下層膜形成組成物)を塗工し、220℃で60秒間加熱した後、23℃で30秒間冷却することにより平均厚み10nmのレジスト下層膜を形成した。上記形成したレジスト下層膜上に、レジスト組成物(R-1)を塗工し、130℃で60秒間加熱した後、23℃で30秒間冷却することにより平均厚み50nmのレジスト膜を形成した。次いで、EUVスキャナー(ASML社の「TWINSCAN NXE:3300B」(NA0.3、シグマ0.9、クアドルポール照明、ウェハ上寸法が線幅25nmの1対1ラインアンドスペースのマスク)を用いて、レジスト膜に、露光量を変化させて極端紫外線を照射した。極端紫外線の照射後、基板を110℃で60秒間加熱を行い、次いで23℃で60秒間冷却した。その後、2.38質量%のTMAH水溶液(20~25℃)を用い、パドル法により現像した。その後、水で洗浄し、乾燥することにより、レジストパターンが形成された評価用基板を得た。上記評価用基板のレジストパターンの測長及び観察には走査型電子顕微鏡(日立ハイテクノロジーズ(株)の「CG-6300」)を用いた。
レジストパターン倒壊抑制性は、
線幅13nmのラインのレジストパターンの倒壊が確認されなかった場合は「A」(極めて良好)、
線幅13nmのラインのレジストパターンの倒壊が確認されたが、線幅18nmのラインのレジストパターンの倒壊が確認されなかった場合は「B」(より良好)
線幅18nmのラインのレジストパターンの倒壊が確認されたが、線幅22nmのラインのレジストパターンの倒壊が確認されなかった場合は「C」(良好)、
線幅24nmのラインのレジストパターンの倒壊が確認された場合は「D」(不良)
と評価した。
【0144】
[膜除去性]
12インチシリコンウェハ上に、上記調製した組成物(レジスト下層膜形成組成物)を塗工し、220℃で60秒間加熱した後、23℃で30秒間冷却することにより平均厚み10nmの膜(レジスト下層膜)を形成した。上記得られた膜付き基板を、50℃に加温した除去液(96質量%硫酸/30質量%過酸化水素水=3/1(体積比)混合水溶液)に5分間浸漬した後、水で洗浄し、乾燥することにより、評価用基板を得た。また、上記得られた各膜付き基板を、50℃に加温した除去液(96質量%硫酸/30質量%過酸化水素水=3/1(体積比)混合水溶液)に10分間浸漬した後、水で洗浄し、乾燥することにより、評価用基板を得た。
上記得られた各評価用基板の断面について、電界放出形走査電子顕微鏡((株)日立ハイテクノロジーズの「SU8220」)を用いて観察し、
除去液に5分間浸漬した場合にレジスト下層膜が残存していない場合は「A」(良好)、
除去液に5分間浸漬した場合にレジスト下層膜が残存しているが除去液に10分間浸漬した場合にケイ素含有膜が残存していない場合は「B」(やや良好)、
除去液に5分間及び10分間浸漬した場合にレジスト下層膜が残存している場合は「C」(不良)
と評価した。
【0145】
【0146】
上記表2の結果から明らかなように、実施例の各組成物(レジスト下層膜形成組成物)はレジストパターン倒壊抑制性が良好であり、レジスト下層膜上に微細なレジストパターンを形成することができた。さらに、実施例の各組成物から形成されたレジスト下層膜は、膜除去性が良好であった。
【産業上の利用可能性】
【0147】
本発明の電子線又は極端紫外線リソグラフィー用レジスト下層膜形成組成物は、半導体基板の製造等に好適に用いることができる。