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特許7622756信号処理装置、信号処理方法及びプログラム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-20
(45)【発行日】2025-01-28
(54)【発明の名称】信号処理装置、信号処理方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   H04B 7/06 20060101AFI20250121BHJP
   H04B 1/04 20060101ALI20250121BHJP
   H03F 1/32 20060101ALI20250121BHJP
   H03F 3/68 20060101ALI20250121BHJP
   H04B 7/08 20060101ALI20250121BHJP
   H03F 3/24 20060101ALN20250121BHJP
【FI】
H04B7/06 982
H04B1/04 R
H03F1/32 141
H03F3/68
H04B7/08 982
H03F3/24
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2022571959
(86)(22)【出願日】2021-11-16
(86)【国際出願番号】 JP2021041999
(87)【国際公開番号】W WO2022137891
(87)【国際公開日】2022-06-30
【審査請求日】2023-06-21
(31)【優先権主張番号】P 2020217114
(32)【優先日】2020-12-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】望月 拓志
【審査官】吉江 一明
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-195955(JP,A)
【文献】国際公開第2009/004733(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/061899(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/06
H04B 1/04
H03F 1/32
H03F 3/68
H04B 7/08
H03F 3/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の入力信号のうち、1以上の入力信号に対して非線形歪を補償する歪補償処理を行い、前記歪補償処理がなされた信号を出力する歪補償手段と、
前記歪補償手段が出力した信号を含む前記複数の入力信号を増幅し、出力信号として出力する複数の増幅器と、
キャリブレーション信号が前記複数の入力信号として用いられ、前記複数の増幅器に入力される自装置のキャリブレーション動作時に、前記入力信号と、前記入力信号に対応する前記出力信号と位相、振幅及び強度の少なくともいずれか、前記入力信号毎に算出する算出手段と、
前記算出手段が算出した位相差、振幅比及び強度比のいずれかの比較結果の数値について、最大値と最小値とを特定し、前記最大値と前記最小値との差分である第1の差分が第1の閾値以上となるかを判定し、その判定結果に基づいて、前記歪補償手段が前記キャリブレーション信号に対して前記歪補償処理を実行するか否かを制御する制御手段と、
を備える信号処理装置。
【請求項2】
前記算出手段は、前記入力信号と、前記入力信号に対応する前記出力信号との前記位相差及び前記振幅比を前記入力信号毎に算出し、
前記制御手段は、
前記位相差の最大値と最小値との差分である第2の差分が第2の閾値以上となるかを判定するとともに、前記振幅比の最大値と最小値との差分である第3の差分が第3の閾値以上となるかを判定し、
前記第2の差分が前記第2の閾値以上であるか、又は、前記第3の差分が前記第3の閾値以上である場合に、前記歪補償手段が前記キャリブレーション信号に対して前記歪補償処理を実行するように制御し、
前記第2の差分が前記第2の閾値未満であり、かつ、前記第3の差分が前記第3の閾値未満である場合に、前記歪補償手段が前記キャリブレーション信号に対して前記歪補償処理を実行しないように制御する、
請求項1に記載の信号処理装置。
【請求項3】
前記キャリブレーション動作前に、広角放射の無線送信用の信号が前記入力信号として前記複数の増幅器に入力され、前記キャリブレーション動作後に、データビームフォーミングによる無線送信用の信号が前記入力信号として前記複数の増幅器に入力される、
請求項1又は2に記載の信号処理装置。
【請求項4】
前記複数の増幅器は、ドハティ増幅器である、
請求項1乃至のいずれか1項に記載の信号処理装置。
【請求項5】
前記信号処理装置は、前記複数の増幅器からの前記出力信号を無線送信する無線送信手段をさらに備えた無線通信装置である、
請求項1乃至のいずれか1項に記載の信号処理装置。
【請求項6】
複数の入力信号のうち、1以上の入力信号に対して非線形歪を補償する歪補償処理を行い、前記歪補償処理がなされた信号を出力し、
複数の増幅器が、前記歪補償処理がなされた信号を含む前記複数の入力信号を増幅して、出力信号として出力し、
キャリブレーション信号が前記複数の入力信号として用いられ、前記複数の増幅器に入力される信号処理装置のキャリブレーション動作時に、前記入力信号と、前記入力信号に対応する前記出力信号と位相、振幅及び強度の少なくともいずれか、前記入力信号毎に算出し、
算出された位相差、振幅比及び強度比のいずれかの比較結果の数値について、最大値と最小値とを特定し、前記最大値と前記最小値との差分である第1の差分が第1の閾値以上となるかを判定し、その判定結果に基づいて、前記キャリブレーション信号に対して前記歪補償処理を実行させるか否かを制御する、
信号処理装置が実行する信号処理方法。
【請求項7】
複数の入力信号のうち、1以上の入力信号に対して非線形歪を補償する歪補償処理を行い、前記歪補償処理がなされた信号を出力し、
複数の増幅器が、前記歪補償処理がなされた信号を含む前記複数の入力信号を増幅して、出力信号として出力し、
キャリブレーション信号が前記複数の入力信号として用いられ、前記複数の増幅器に入力される信号処理装置のキャリブレーション動作時に、前記入力信号と、前記入力信号に対応する前記出力信号と位相、振幅及び強度の少なくともいずれか、前記入力信号毎に算出し、
算出された位相差、振幅比及び強度比のいずれかの比較結果の数値について、最大値と最小値とを特定し、前記最大値と前記最小値との差分である第1の差分が第1の閾値以上となるかを判定し、その判定結果に基づいて、前記キャリブレーション信号に対して前記歪補償処理を実行させるか否かを制御する、
ことを信号処理装置に実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は信号処理装置、信号処理方法及び非一時的なコンピュータ可読媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
5G(5th Generation)等の無線通信に関する技術が進展している。この技術分野において、信号中に存在する歪みを補償することは、信号内容の正確な伝達を担保するのに重要である。
【0003】
例えば、特許文献1には、複数の増幅器を起因とする歪みを補償する歪み補償部を備えたアンテナ装置が開示されている。アンテナ装置の検出部は、電力増幅器の歪み特性として、例えば、AM(Amplitude Modulation)-AM歪みや、AM-PM(Phase Modulation)歪みを検出する。歪み補償部は、この検出結果に基づいて、複数の増幅器の歪み補償を行う。
【0004】
特許文献2には、補正装置のDPD(Digital Pre-Distortion)モジュール及び非線形調整モジュールが、複数の電力増幅器の非線形性を補償することが記載されている。DPDモジュールは、DPDパラメータに基づいて、複数の電力増幅器の非線形性を一律に補償する。また、非線形調整モジュールは、アナログ非線形補正パラメータに基づいて、電力増幅器の非線形性の部分であってDPDモジュールによって補償されていない部分を補償する。
【0005】
また、特許文献3には、デジタル論理回路が電力増幅器の各々に適した予歪補償信号を生成するデュアルチャネルリモート無線ヘッドユニットが開示されている。さらに、特許文献4には、電力増幅器110への入力信号と、電力増幅器110の出力信号の誤差を先行歪み器によって最小にするようなRF電力増幅器システムが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2020-136772号公報
【文献】特表2020-526150号公報
【文献】特表2013-515424号公報
【文献】特表2010-519862号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
無線通信システムにおいて、増幅器の前段にDPD補償部を設けることにより、増幅器によって生成される非線形歪みを抑制し、増幅器の出力信号における線形範囲を拡大することが実施されている。しかしながら、増幅器によっては、その入出力特性にメモリ効果が生ずる場合がある。この状況において、無線通信設定のキャリブレーション動作時に、キャリブレーション信号が増幅器に入力される場合、増幅器によって増幅され、出力されるキャリブレーション信号は、メモリ効果が反映されたものとなる。そのため、正確なキャリブレーションができない可能性があった。
【0008】
本開示の目的は、正確なキャリブレーションを可能とするための信号処理装置、信号処理方法及び非一時的なコンピュータ可読媒体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本実施形態にかかる一態様の信号処理装置は、複数の入力信号のうち、1以上の入力信号に対して非線形歪を補償する歪補償処理を行い、歪補償処理がなされた信号を出力する歪補償手段と、歪補償手段が出力した信号を含む複数の入力信号を増幅し、出力信号として出力する複数の増幅器と、キャリブレーション信号が複数の入力信号として用いられ、複数の増幅器に入力される自装置のキャリブレーション動作時に、入力信号と、入力信号に対応する出力信号とにおける位相、振幅及び強度の少なくともいずれかの比較結果を、入力信号毎に算出する算出手段と、算出手段が算出した比較結果に基づいて、歪補償手段がキャリブレーション信号に対して歪補償処理を実行するか否かを制御する制御手段を備える。
【0010】
本実施形態にかかる一態様の信号処理方法は、複数の入力信号のうち、1以上の入力信号に対して非線形歪を補償する歪補償処理を行い、歪補償処理がなされた信号を出力し、複数の増幅器が、歪補償処理がなされた信号を含む複数の入力信号を増幅して、出力信号として出力し、キャリブレーション信号が複数の入力信号として用いられ、複数の増幅器に入力される自装置のキャリブレーション動作時に、入力信号と、入力信号に対応する出力信号とにおける位相、振幅及び強度の少なくともいずれかの比較結果を、入力信号毎に算出し、算出された比較結果に基づいて、キャリブレーション信号に対して歪補償処理を実行させるか否かを制御する。
【0011】
本実施形態にかかる一態様の非一時的なコンピュータ可読媒体は、複数の入力信号のうち、1以上の入力信号に対して非線形歪を補償する歪補償処理を行い、歪補償処理がなされた信号を出力し、複数の増幅器が、歪補償処理がなされた信号を含む複数の入力信号を増幅して、出力信号として出力し、キャリブレーション信号が複数の入力信号として用いられ、複数の増幅器に入力される自装置のキャリブレーション動作時に、入力信号と、入力信号に対応する出力信号とにおける位相、振幅及び強度の少なくともいずれかの比較結果を、入力信号毎に算出し、算出された比較結果に基づいて、キャリブレーション信号に対して歪補償処理を実行させるか否かを制御することをコンピュータに実行させるプログラムが格納されたものである。
【発明の効果】
【0012】
本開示によれば、正確なキャリブレーションを可能とするための信号処理装置、信号処理方法及び非一時的なコンピュータ可読媒体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】関連技術にかかる無線通信装置の一例を示すブロック図である。
図2】関連技術にかかるBBユニットの一例を示すブロック図である。
図3】関連技術にかかるFEユニットの一例を示すブロック図である。
図4】関連技術にかかる無線通信装置における送信機のパワーレベルの一例を示すグラフである。
図5】関連技術にかかる各送信機用のDLキャリブレーション信号の周波数配置の一例を示す図である。
図6A】関連技術にかかる各アンテナの配置例を示す図である。
図6B】関連技術にかかる送信アンプのAM-AM入出力特性の一例を示すグラフである。
図7A】関連技術にかかる各信号チャネルの位相差の一例を示すグラフである。
図7B】関連技術にかかるデータビームフォーミングに係る無線信号出力時の水平方向放射パターンの角度スペクトラムの一例を示すグラフである。
図8】実施の形態1にかかる信号処理装置の一例を示すブロック図である。
図9A】実施の形態1にかかる信号処理装置の処理の一例を示すフローチャートである。
図9B】実施の形態1にかかる信号処理装置の処理の一例を示すフローチャートである。
図10】実施の形態2にかかる無線通信装置の一例を示すブロック図である。
図11】実施の形態2にかかるBBユニットの一例を示すブロック図である。
図12】実施の形態2にかかるFEユニットの一例を示すブロック図である。
図13A】実施の形態2にかかる無線通信装置の処理の一例を示すフローチャートである。
図13B】実施の形態2にかかる無線通信装置の詳細な処理の一例を示すフローチャートである。
図14】各実施の形態にかかる装置のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
まず、本願の関連技術について説明する。以下、通信方式としてTDD(Time Division Duplex)が用いられ、無線による送受信がMIMO(Multi User-Multi Input Multi Output)が用いられる無線通信装置の実施例を示す。また、高い周波数利用効率を実現するために、この無線通信装置では、デジタルビームフォーミングの技術が用いられる。
【0015】
図1は、関連技術に係る無線通信装置10の一例を示すブロック図である。無線通信装置10は、5G用超多素子AAS(Active Antenna System)を搭載し、例えば、基地局に設けられる装置である。図1に示されるように、無線通信装置10は、BF-BB(Beamforming-Baseband)部20と、AAS部30とを備える。ここで、AAS部30は、光トランシーバ31、TRX-BB部32、フロントエンド(Frontend)部33、32個のアンテナ34と無線送信部(本実施例では32個のアンテナ・送受信機を一例として挙げたが、同数以外の配列・数となる場合も開示の範囲内に含むものとする)、分配合成器35、SW(Switch)36及びCAL-TRX(キャリブレーション用送受信機)37、及びこれらの各部を制御する図示しない制御部を備える。なお、以下で示すアップリンク(UL)とは、図示しないUE(User Equipment:端末)から無線通信装置10への通信路を意味し、ダウンリンク(DL)とは、無線通信装置10からUEへの通信路を意味する。
【0016】
BF-BB部20は、ビームフォーミング信号を生成する機能を有するベースバンド部である。BF-BB部20は、予め設定された受信系特性[CAL-RX(固定)]を、内部に格納する。また、BF-BB部20は、無線通信装置10が起動した場合及び周期的に、TRX-BB部32が動作することにより取得した、各信号チャネルの特性TX#n*[CAL-RX]を内部に格納し、新たな値が得られる度に更新する。BF-BB部20は、これらの値を利用し、通信用の通信信号をAAS部30に出力することで、DL方向への通信を行う。この処理の詳細については後述する。
【0017】
次に、AAS部30の各部について説明する。光トランシーバ31は、BF-BB部20とTRX-BB部32との間で送受信される信号(例えば、複数レイヤ信号)の光電変換及びその逆の変換を行う。
【0018】
TRX-BB部32は、光トランシーバ31とフロントエンド部33との間で、送受信される通信信号を媒介する。また、TRX-BB部32は、DLキャリブレーション動作時に、IQ信号であるDLキャリブレーション信号(以下、DL―CAL信号と記載)を生成し、フロントエンド部33、分配合成器35、SW36を介してCAL-TRX37に出力する。さらに、TRX-BB部32は、ULキャリブレーション動作時に、IQ信号であるUL-CAL信号(以下、UL―CAL信号と記載)を生成し、CAL-TRX37に直接出力する。このように、TRX-BB部32は、送受信機ベースバンド部として機能する。
【0019】
TRX-BB部32は、光トランシーバ31とフロントエンド部33との間で、送受信される通信信号を媒介するユニットであり、32個のBBユニット40#0~#31を備える。以下、BBユニット40#0~#31を総称して、BBユニット40と記載する。
【0020】
図2は、BBユニット40のブロック図である。BBユニット40は、CFR処理部41、DPD処理部42を備える。なお、BBユニット40#0~#31の各々は、図2に示したものと同じ構成を有する。
【0021】
CFR処理部41は、BF-BB部20から出力され、光トランシーバ31を介して入力されたIQ信号(複数レイヤ信号)のピークレベルをCFR閾値(最大ピーク成分を抑圧するための閾値)で制限する。具体的に、CFR処理部41は、入力された複数レイヤ信号における振幅成分のうち、CFR閾値で設定されたピークレベルを超えた信号振幅成分を、CFR閾値で設定されたピークレベルに抑圧して、DPD処理部42に出力する。
【0022】
なお、CFR処理部41でピークレベルを抑圧する理由は次の通りである。ピークレベルが抑圧されない場合、高いピークレベルを有する送信信号が、CFR処理部41の後段の送信アンプに出力される可能性がある。その場合、送信アンプの飽和出力レベルでハードクリッピングが生じることで、高次の混変調の非線形歪成分が発生し、DPD処理部42が、この非線形歪成分を十分に歪補償できない状態となることがある。この状態を回避するため、CFR処理部41は、送信アンプに入力される送信信号のピークレベルを制限し、送信アンプの出力レベルが飽和レベルを超過しないように、送信信号を調整している。
【0023】
DPD処理部42は、各CFR処理部41と、各TRX51との間に設けられる。DPD処理部42は、CFR処理部41から出力されたIQ信号(複数レイヤ信号)と、送信アンプ52(送信電力増幅器)から出力後、方向性結合器53、FB(Feedback)パスを介して戻された、送信アンプ52の非線形度に基づく非線形歪みが加わったIR信号(複数レイヤ信号)とを比較する。DPD処理部42は、この比較によって、送信アンプ52において生じるAM-AM及びAM-PMの入出力特性における非線形の歪みを補償すべく、入力信号に非線形度を逆補正した重み付けを与える補償を行う。なお、IR信号は、図2、3では信号FBとして表される。
【0024】
DPD処理部42は、後段の送信アンプ52の入出力特性と逆の特性を表すDPD補償係数に基づいて、CFR処理部41から出力された無線通信用のIQ信号の振幅及び位相を補償するDPD補償処理を行い、DPD補償処理がなされた信号をTR信号としてFE(Front End)ユニット50に出力する。DPD処理部42がTRX51毎に設けられることで、個別のTRX51の特性に基づいたDPD補償処理を実行することができる。このDPD補償処理は、非線形歪放射を抑圧し、DLのSINR(Signal to Interference plus Noise Ratio)性能を向上するために行われる。なお、DPD補償処理によって、送信アンプ52のEVM(Error Vector Magnitude)やACLR(Adjacent Channel Leakage Ratio)を改善することもできる。
【0025】
TRX-BB部32は、無線通信装置10が起動した場合及び周期的に、DL又はULキャリブレーション動作を実行することにより、キャリブレーションウェイト(以下、CALウェイトと記載)をDL又はULについて決定し、記憶する。このDL/UL―CALウェイトは、後述の各TX又はRXの振幅及び位相のばらつきを補正するための値であり、DL/UL―CAL信号に基づいて、DL/ULキャリブレーション動作により決定される。データビームフォーミングによる複数レイヤから成る空間多重信号を無線通信装置10が送信する際、無線通信装置10が通信するUEに出力する電波のビームが、無線通信装置10が通信しないUE(他のUE)に干渉を与えることがあるため、その干渉を軽減することが好ましい。そのため、無線通信装置10から、あるUEの方向にデータを送信するためのビームパターンを形成してビームを放射する際、他のUEの方向には、放射されるビームのパターンとしてヌルが形成される。DLキャリブレーションは、ヌルの所望の角度及び深さを確保するためになされる。
【0026】
TRX-BB部32は、DLキャリブレーションを実行する場合、DL―CAL信号を生成し、フロントエンド部33、分配合成器35及びSW36を介して、CAL-TRX37に送信する。CAL-TRX37は、内部を通過したDL―CAL信号をTRX-BB部32に出力する。TRX-BB部32は、元のDL―CAL信号と、CAL-TRX37が受信したDL―CAL信号との振幅及び位相の差分を測定することにより、その差分を逆補正すべく、各信号チャネルに適用するDL-CALウェイトを決定する。
【0027】
また、TRX-BB部32は、ULキャリブレーションを実行する場合、UL―CAL信号を生成し、CAL-TRX37に入力する。CAL-TRX37は、CALネットワーク内部を通過したUL―CAL信号を、SW36、分配合成器35を介して、TRX51の受信機RXに入力する。受信機RXは、UL―CAL信号をTRX-BB部32に入力する。TRX-BB部32は、元のUL―CAL信号と、CAL-TRX37が送信したUL―CAL信号との振幅及び位相の差分を測定することにより、それを逆補正すべく、各TRX51の受信機RXに適用するUL-CALウェイトを決定する。このようにして、TRX-BB部32は、送受信機ベースバンド部として機能する。なお、図1、2では、TRX-BB部32(DPD処理部42)とCAL-TRX37との間で送受信されるIQ信号であるDL/UL-CAL信号を、DL/UL-CAL IQと表示している。
【0028】
図1に戻り、AAS部30の説明を続ける。フロントエンド部33は、32個のFEユニット50#0~#31を備える。以下、FEユニット50#0~#31を総称して、FEユニット50と記載する。
【0029】
図3は、FEユニット50のブロック図である。FEユニット50は、TRX51、送信アンプ(送信電力増幅器)52、方向性結合器(COUPLER)53、SW54及び受信アンプ(受信電力増幅器)55を備える。なお、FEユニット50#0~#31の各々は、図3に示したものと同じ構成を有する。
【0030】
TRX51は、送受信機であり、不図示の送信機TX及び受信機RXを備えている。送信機TXは、TRX-BB部32から受信したIQ信号をRF信号に変換し、アンテナ34又はCAL-TRX37に出力する。無線通信装置10が無線信号を送信する場合には、送信機TXはRF信号をアンテナ34に出力し、DLキャリブレーションを実行する場合には、送信機TXは分配合成器35を介してCAL-TRX37にDL-CAL信号(RF信号)を出力する。
【0031】
また、受信機TXは、アンテナ34又はCAL-TRX37から受信したRF信号をIQ信号に変換し、TRX-BB部32に出力する。無線通信装置10がUEから無線信号を受信する場合には、TRX51はRF信号をアンテナ34から受信する。ULキャリブレーションが実行される場合には、TRX51はCAL-TRX37から分配合成器35を介してUL-CAL信号(RF信号)を受信する。そして、受信したUL-CAL信号をUL-CAL信号(IQ信号)に変換し、変換したUL-CAL信号を、TRX-BB部32を介してBF-BB部20に出力する。
【0032】
さらに、TRX51は、方向性結合器53から出力された信号FBを、前述のDPD処理部42に出力するFBパスを有する。
【0033】
各送信アンプ52は、各アンテナ34と、各アンテナ34に対応して設けられたTRX51との間に配置される。送信アンプ52は、TRX51から出力されたRF信号(無線通信用の信号又はDL-CAL信号)を増幅して、方向性結合器53に出力する。
【0034】
各方向性結合器53は、各送信アンプ52と各アンテナ34との間に設けられたカプラである。方向性結合器53は、各送信アンプ52から出力されたRF信号をアンテナ34に出力すると共に、FBパスによって、対応するTRX51に出力する。TRX51は、出力されたRF信号をFBパスによってDPD処理部42に出力し、DPD処理部42は、出力されたRF信号を受信して、上述の処理を行う。
【0035】
SW54は、AAS部30の制御部からの制御信号に基づいて、TRX51に入力又は出力される信号を切り替えるスイッチである。すなわち、AAS部30の制御によって、フロントエンド部33の接続先が切り替えられる。
【0036】
具体的には、無線通信装置10が無線通信を実行している場合には、各信号チャネル#0~#31において、フロントエンド部33とアンテナ34が接続され、フロントエンド部33とCAL-TRX37とは接続されないよう、SW54が制御される。これにより、データ送信時には、TRX51からのRF信号をアンテナ34に出力される一方、データ受信時には、SW54は、アンテナ34からのRF信号をTRX51に出力させる。
【0037】
これに対し、無線通信装置10がDL/ULキャリブレーションを実行する場合、各信号チャネル#0~#31において、フロントエンド部33とCAL-TRX37が接続され、フロントエンド部33とアンテナ34とは接続されないよう、SW54が制御される。換言すると、TRX51と、分配合成器35とが接続される一方、アンテナ34とTRX51との接続は解除される。なお、無線通信装置10がDLキャリブレーションを実行する場合は、送信アンプ52から出力されたDL-CAL信号が分配合成器35に入力される。また、無線通信装置10がULキャリブレーションを実行する場合は、分配合成器35から出力されたUL-CAL信号が受信アンプ55に入力される。
【0038】
無線通信装置10は、各SW54を制御することにより、各TRX51で処理するDL/UL-CAL信号が、他システムからの干渉の影響を受けることを回避する。すなわち、各TRX51で処理するDL/UL-CAL信号に干渉成分が含まれなくなるので、AAS部30は、各TRX51に適用するCALウェイトを正確に決定することが可能である。また、DL/ULキャリブレーションが完了すると、AAS部30の制御部は、各TRX51と、各アンテナ34とが接続されるように、各SW54を制御する。
【0039】
各受信アンプ55は、入力されたRF信号(無線通信用の信号又はUL-CAL信号)を増幅して、対応するTRX51に出力する。
【0040】
図1に戻り、AAS部30の説明を続ける。アンテナ34は、各TRX51、各送信アンプ52及び各受信アンプ55に対応して設けられるアンテナである。アンテナ34は、+45度と-45度の互いに直交する偏波を有する偏波用アンテナであって、8セットのものが4個、つまり合計32個設けられているが、1アンテナ素子で2偏波用となるため、64アンテナ相当となる。各アンテナ34は、各FEユニット50から受信したRF信号を、無線によって1又は複数のUEに送信する。なお、各アンテナ34の前段側に、適宜、フィルタ及びデュプレクサの少なくともいずれかが設けられていても良い。
【0041】
分配合成器35は、無線通信装置10がDLキャリブレーションを実行する場合に、各SW54から出力されたDL-CAL信号を合成し、合成されたDL-CAL信号をSW36に出力する。また、分配合成器35は、ULキャリブレーションを実行する場合は、SW36から出力されたUL-CAL信号を分配し、分配されたUL-CAL信号を各SW54に出力する。
【0042】
SW36は、信号方向を切り替えるスイッチである。SW36は、無線通信装置10がDLキャリブレーションを実行する場合は、分配合成器35から出力されたDL-CAL信号をSW36に出力させる。また、SW36は、無線通信装置10がULキャリブレーションを実行する場合は、SW36から出力されたUL-CAL信号を分配合成器35に出力させる。
【0043】
CAL-TRX37は、無線通信装置10がDLキャリブレーションを実行する場合に、SW36から出力されたDL-CAL信号(RF信号)をDL-CAL信号(IQ信号)に変換する。そして、変換したDL-CAL信号をTRX-BB部32に出力する。
【0044】
また、CAL-TRX37は、無線通信装置10がULキャリブレーションを実行する場合に、TRX-BB部32から出力されたUL-CAL信号(IQ信号)をUL-CAL信号(RF信号)に変換し、変換したUL-CAL信号をSW36に出力する。なお、CAL-TRX37は、TRX51と同様に、送信機及び受信機を備えていても良い。
【0045】
以下、無線通信装置10のDLキャリブレーション動作及びULキャリブレーション動作について説明する。なお、以下に示すキャリブレーション動作中に、各DPD処理部42はオフとなっており、DPD補償処理を実行しない。
【0046】
<DLキャリブレーション動作>
まず、DLキャリブレーション動作について説明する。まず、TRX-BB部32は、予め設定されたDL-CAL信号(IQ信号)をフロントエンド部33に出力する。フロントエンド部33内の各TRX51(の送信機TX)は、DL-CAL信号(IQ信号)をDL-CAL信号(RF信号)に変換する。各TRX51で変換されたDL-CAL信号(RF信号)は、送信アンプ52及びSW54を介して、分配合成器35に出力され、分配合成器35で合成される。分配合成器35で合成されたDL-CAL信号は、SW36を介してCAL-TRX37に入力される。なお、AAS部30は、信号チャネル毎にタイミングを分けてDL-CAL信号を出力しても良い。
【0047】
CAL-TRX37は、受信したDL-CAL信号(RF信号)をDL-CAL信号(IQ信号)に変換して、TRX-BB部32に出力する。CAL-TRX37から送出されたDL-CAL信号は、各TRX51#nから送出されたDL-CAL信号が周波数多重により合成された状態になっている。そのため、TRX-BB部32は、CAL-TRX37から送出されたDL-CAL信号を、FFT(Fast Fourier Transform)により周波数分離して、信号チャネル#0~#31毎に、DL-CAL信号を抽出し、DL-CALウェイトを計算する。
【0048】
具体的には、TRX-BB部32は、信号チャネル毎に送信されたDL-CAL信号のDL-CAL信号と、元の(すなわち送信前の)DL-CAL信号との振幅及び位相の差分を測定することにより、信号チャネル毎のDL-CAL信号の振幅及び位相のばらつきを学習する。TRX-BB部32は、その学習結果を基に、各TRX51#nのDL-CALウェイトを計算する。
【0049】
ここで、各TRX51#nのDL-CALウェイトは、以下の数式1で表されるように、TRX51#nの送信系特性(振幅及び位相特性)[TX#n]と、CAL-TRX37の受信系特性(振幅及び位相特性)[CAL-RX]とが乗算されたものになる。
【数1】
【0050】
以上でDLキャリブレーション学習が終了する。BF-BB部20は、このDL-CALウェイトを内部に格納する。以降、通常のDLに係る無線通信時には、BF-BB部20は、各TRX51に対し、その各TRX51について、上述のDL-CALウェイトで重み付けしたDL信号を出力することになる。
【0051】
続いて、AAS部30のDL動作の動作例について説明する。BF-BB部20は、BF信号(IQ信号)を内部の回路で生成する。そして、生成したBF信号を、信号チャネル#0~#31の各々について、上述のDL-CALウェイトで補正した上で、光トランシーバ31を介してTRX-BB部32に出力する。
【0052】
なお、BF-BB部20とTRX-BB部32との間に光トランシーバ31が設けられず、BF-BB部20とTRX-BB部32とが直結した構成であっても良い。この場合、BF-BB部20は、外部のDU(Distribution Unit)と、光トランシーバを介して接続される構成となる。
【0053】
具体的には、BF-BB部20は、DL-CALウェイトを分母に、CAL-TRX37の固定の受信系特性[CAL-RX(固定)]を分子に持つ分数を、BF信号に乗算する。補正後のBF信号は、以下の数式2のように表される。なお、[CAL-RX(固定)]は、BF-BB部20の記憶部(不図示)に予め格納されている。
【数2】
【0054】
補正後のBF信号は、TRX-BB部32の各TRX51#nにてIQ信号からRF信号に変換されて送出され、各送信アンプ52#nにて増幅されて、フロントエンド部33から出力される。フロントエンド部33から出力されたBF信号は、各TRX51#nを通過するため、以下の数式3のように表される。
【数3】
【0055】
また、数式3は、[TX#n]を消去して簡単に表現すると、以下の数式4のように表される。
【数4】
【0056】
数式4において、[CAL-RX(固定)]=[CAL-RX]であれば、BF信号は理想状態になり、理想状態のBF信号が各アンテナ34#nから送信されることになる。なお、[CAL-RX(固定)]=[CAL-RX]となるには、CAL-RXの安定性が重要となる。
【0057】
以上の動作を行うことにより、各送信機TX#nの振幅及び位相特定のばらつきを補償することが可能となる。このDLキャリブレーション動作により、データビームフォーミングによって複数レイヤの空間多重無線信号を送信する際に、他のUE方向に形成されるヌルの角度及び深さを精度良く設定することができる。また、空間の各方向における3次相互変調歪み起因の非線形歪放射が生ずることも抑制することができる。
【0058】
なお、以上に示したDL-CALウェイトの更新は、後述のとおり、ファンビームフォーミング(Omni-directional Broad Beamforming相当のBeam Pattern形状)による無線信号の送信と、データビームフォーミングによる無線信号の送信間になされても良い。又は、DL-CALウェイトの更新は、定期的になされても良い。さらに別の例として、環境変化(例えば温度変化)や信号の経時変化が生じたことを、無線通信装置10のセンサが検知したことをトリガとして、無線通信装置10がDL-CALウェイトを更新しても良い。この場合の更新周期は、例えば1分以上の周期となる。
【0059】
<ULキャリブレーション動作>
次に、ULキャリブレーション動作について説明する。TRX-BB部32は、予め設定されたUL-CAL信号(IQ信号)を、直接CAL-TRX37に出力する。CAL-TRX37は、UL-CAL信号(IQ信号)をUL-CAL信号(RF信号)に変換する。CAL-TRX37で変換されたUL-CAL信号(RF信号)は、SW36を介して、分配合成器35に出力され、分配合成器35で分配される。分配合成器35で分配されたUL-CAL信号は、各SW54及び受信アンプ55を介して、各TRX51に出力される。各TRX51は、UL-CAL信号(RF信号)をUL-CAL信号(IQ信号)に変換して、TRX-BB部32に出力する。
【0060】
TRX-BB部32は、各TRX51で受信されたUL-CAL信号のUL-CAL信号と、元のUL-CAL信号と、の振幅及び位相の差分を測定し、UL-CAL信号の振幅及び位相のばらつきを学習する。TRX-BB部32は、その学習結果を基に、各TRX51のUL-CALウェイトを計算する。
【0061】
以上でULキャリブレーション動作が終了する。BF-BB部20は、このUL-CALウェイトを内部に格納する。以降、通常のULに係る無線通信時には、BF-BB部20は、各TRX51に対し、その各TRX51について、上述のUL-CALウェイトで重み付けしたUL信号を出力することになる。
【0062】
<キャリブレーション実行タイミング>
次に、DL及びULキャリブレーション実行タイミングについて説明する。上述のとおり、無線通信装置10は、TDDモード(TDD通信方式)に対応する無線通信装置である。TDDモードは、上下リンク(UL/DL)で同一周波数を用いて、時間的にDL通信及びUL通信を切り替えて送受信を行う通信方式である。DL通信にはDLサブフレームが伝送され、UL通信にはULサブフレームが伝送される。また、DL通信からUL通信に切り替わるタイミングでは、スペシャルサブフレームが伝送される。スペシャルサブフレームは、DwPTS(Downlink Pilot Time Slot)、UpPTS(Uplink Pilot Time Slot)及びGP(Guard Period)により構成されるサブフレームである。DwPTSはDL通信のためにリザーブされるフィールドであり、UpPTSはUL通信のためにリザーブされるフィールドであり、GPはDL通信及びUL通信が行なわれないフィールドである。
【0063】
無線通信装置10において、DL通信及びUL通信が行われないGP(Guard Period)の時間区間では、TRX51における送信機TX及び受信機RXは共に排他的にOFF/ON状態となる。無線通信装置10は、例えば、スペシャルサブフレームのGPの時間区間にDLキャリブレーション及びULキャリブレーションの少なくともいずれかを実行する。
【0064】
<キャリブレーション実行時の送信機パワーレベルについて>
図4は、DL及びULタイミングの各タイミングにおける送信機TXのパワーレベルを示す。図4の横軸は時間を示し、縦軸はパワーレベルを示す。図4の実線L1は無線通信装置10の送信機TXの送信パワーレベルの遷移を示している。図4からは、当初のトランスミッタオフ区間においてオフパワーレベルであった送信パワーレベルが、トランスミッタ遷移区間を経てトランスミッタオン区間においてオンパワーレベルとなり、再度のトランスミッタ遷移区間を経てトランスミッタオフ区間においてオフパワーレベルとなることが見て取れる。なお、図4において、ULトランスミッションと記載されている時間区間は、UL通信の時間区間であることを示す。また、DLトランスミッションと記載されている時間区間は、DL通信の時間区間であることを示している。また、GP又はULトランスミッションと記載されている時間区間は、GP又はUL通信の時間区間であることを示している。
【0065】
無線通信装置10は、スペシャルサブフレームのGPの時間区間(トランスミッタ遷移区間)にDLキャリブレーション又はULキャリブレーションを実行する。この時間区間は、アップリンク-ダウンリンクフレームタイミングの区間内に含まれる。GP内において、(a)送信機TXがOFFからONの状態に遷移する時間区間、及び(b)ONからOFFの状態に遷移する時間区間は、例えば10μsである。無線通信装置10は、(a)及び(b)の少なくともいずれかの区間で、上述のDLキャリブレーション又はULキャリブレーションを実行することができる。つまり、この例において、DL/UL-CAL信号の出力時間は、10μs以内であれば良い。また、キャリブレーションの主目的は、32個のTRX間の線形域での、振幅及び位相の周波数特性の一元化にある。そのため、DL/UL-CAL信号のパワーを、DL/UL-CAL信号が非線形劣化を受けない様、最大定格以下で、必要なSNR(Signal-to-Noise Ratio)を確保できるレベルまで下げる事が重要である。このようにして、DL-CALウェイトは、GPの時間区間において周期的に算出され、BF-BB部20内部に格納される。
【0066】
<DL-CAL信号の周波数配置について>
さらに、各TRX#n毎に周波数直交させたDL-CAL信号の周波数配置の例について説明する。ここでは、図1に示した通り、32個のTRX#nが設けられている場合における、各送信機TX#n用のDL-CAL信号の周波数配置の例について説明する。
【0067】
図5を参照して、各送信機TX#n用のDL-CAL信号の周波数配置の例について説明する。図5は、各送信機TX#n用のDL-CAL信号の周波数配置を例示する。
【0068】
図5では、1つの送信機TX#nのDL-CAL信号の周波数配置において、DL-CAL信号の送出に用いるサブキャリアが、X[MHz]の間隔で配置されている。そして、隣接する送信機TX#n同士では、DL-CAL信号の周波数配置が、周波数方向にY[MHz]だけシフトされている。なお、fs0[MHz]は、基準となる周波数である。
【0069】
ここで、図5に示される例では、以下の2つの周波数配置条件A1,A2を満たす必要がある。
周波数配置条件A1:
X[MHz]>Y[MHz]×(送信機TX#nの数-1)が成立している。
周波数配置条件A2:
信号帯域幅の範囲内に、送信機TX#1用のDL-CAL信号の最下限のサブキャリアsc0の周波数“sc0=fs0[MHz]”から、送信機TX#31用のDL-CAL信号の最上限のサブキャリアsckの周波数“sck=fsc0+31Y+kX[MHz]”が入っている。
【0070】
次に、関連技術に係る課題について説明する。図6Aは、関連技術におけるアンテナ34#0~#31の配置例を示す。アンテナ34は、8個のアンテナが4列並んで配置されており、図6Aにおいて同じ列にあるアンテナ34は、同じ無線信号を出力する。例えば、図6Aにおける(a1)、(a2)、(b1)、(b2)、(c1)、(c2)、(d1)、(d2)のそれぞれに属する4個のアンテナは、同じ無線信号を出力する。したがって、これらの列における4個のアンテナの電波強度は略同一となる。
【0071】
アンテナ34#0~#31は、例えば、ファンビームフォーミングによる無線信号の送信と、データビームフォーミングによる無線信号の送信をすることができる。ここで、ファンビームフォーミングによる無線信号の送信とは、無線通信装置10の正面及び正面から水平方向において所定の角度分の範囲に対して、略一定の強度の無線信号を送信することを意味し、例えばブロードキャストなデータ送信に用いられる。これに対し、データビームフォーミングによる無線信号の送信とは、無線通信装置10の正面や水平方向のある角度方向に対して強度が強い無線信号を送信する一方、別のUE方向にはヌルを形成し、強度が低い無線信号を送信することを意味する。この無線信号の送信方法は、特定のUEに対するデータ通信に用いられる。
【0072】
アンテナ34#0~#31が、ファンビームフォーミングによって無線信号を送信する場合に、例えば、(a1)及び(a2)は最大定格の無線信号を出力し、(b1)及び(b2)、(c1)及び(c2)、(d1)及び(d2)の順に電波強度が高い無線信号を出力する。つまり、図6Aに示すアンテナの中央部分から外側になるにつれて、出力する無線信号の強度が下がる。一例として、BF-BB部20は、(a1)、(a2)に対応する送信アンプ52に、最大で-14dBFS(平均)の入力信号を出力し、(b1)、(b2)に対応する送信アンプ52には、最大で-24dBFS(平均)の入力信号を出力する。
【0073】
なお、(a1)、(a2)及び(c1)、(c2)に対応する送信アンプ52の入力信号の位相は同じであり、(b1)、(b2)及び(d1)、(d2)に対応する送信アンプ52の入力信号の位相は、(a1)、(a2)及び(c1)、(c2)に対応する送信アンプ52の位相を反転したものである。
【0074】
図6Bは、図6Aの(a1)、(a2)、(b1)、(b2)のアンテナ34に対応する送信アンプ52のAM-AM入出力特性の一例を示すグラフである。図6Bの横軸は、入力信号の振幅であり、図6Bの縦軸は、出力信号の振幅である。(a1)、(a2)に対応する送信アンプ52の入出力特性は、図6Bの(a)で表され、(b1)、(b2)に対応する送信アンプ52の入出力特性は、図6Bの(b)で表される。また、送信アンプ52の理想的な入出力特性は線形であり、図6Bの(e)で表される。なお、送信アンプ52の入出力特性(a)、(b)は、各DPD処理部42による補償がなされていないものである。また、送信アンプ52のAM-AM特性やAM-PM特性にメモリ効果(過去の時間帯で送信アンプを通過した入出力レベルに応じてAM-AM特性やAM-PM特性が変化し、時間的に一定期間保持されてしまう現象)が発生した場合を考える。このとき、入力信号として、DL-CAL信号として-37dBFS(平均)の信号が送信アンプ52に入力された場合、入出力特性(a)、(b)において該当する出力信号を示す点は(c)、(d)となる。
【0075】
図6Bが示すとおり、入出力特性(a)、(b)は、理想的な入出力特性からずれた非線形性を有する。特に、入出力特性(a)は(b)に比較して、非線形性が大きい。そして、各送信アンプ52には、小さい振幅(強度)を有するDL-CAL信号が入力される。
【0076】
また、送信アンプ52の入力信号-出力信号間の位相差(AM-PM入出力特性)も、AM-AM入出力特性と同様に、理想的な入出力特性(位相差が0になる特性)と比較すると、有意な差が生じる。この差分は、(a1)及び(a2)、(b1)及び(b2)、(c1)及び(c2)、(d1)及び(d2)の順に大きくなる。
【0077】
以上に示した非線形性に基づく歪みは、送信アンプ52への入力信号を変化することによって、本来解消される。しかしながら、送信アンプ52がドハティ増幅器(例えば窒化ガリウム増幅器)であるような場合、AM-AM入出力特性及びAM-PM入出力特性にメモリ効果が生ずる場合がある。この場合、入力信号が変化したにもかかわらず、送信アンプ52は、自身に生じたメモリ効果によって、しばらくの期間、変化前の入力信号に係る入出力特性に基づいた出力信号を出力する。
【0078】
特に、無線通信装置10がファンビームフォーミングによって無線信号を送信後、DLキャリブレーションを実行し、その後データビームフォーミングによる無線信号を送信する場合に、以下の課題が生じる。ファンビームフォーミングによる無線信号の送信時、送信アンプ52の出力は、最大定格のものから低い信号強度のものまで、強度にばらつきがある。なお、この段階での各送信アンプ52の非線形性による歪みは、対応するDPD処理部42によって補償される。
【0079】
このデータビームフォーミングによる無線信号を無線通信装置10が送信(放射)した後に、DLキャリブレーションを実行する場合、BF-BB部20が出力するDL-CAL信号は、ファンビームフォーミングの場合と異なり、各送信機間で出力レベルは概ね同一となる。しかしながら、送信アンプ52のメモリ効果により、各送信アンプ52を通過する際、ファンビームフォーミング時の入出力特性で決まるAM-AM及びAM-PMの特性が、各送信機から出力されるDL-CAL信号に影響を及ぼしてしまう事になる。
【0080】
一例として、DL-CAL信号として、平均レベルが-37dBFSの信号を想定する。なお、0dBFSは送信DAC(Digital Analog Converter)のFull Scale:最大出力レベルに相当する。上述のとおり、メモリ効果が発生した状態でDL-CAL信号が送信アンプ52に入力された場合、図6Bにおいて、入出力特性(a)、(b)について該当する出力信号を示す点は(c)、(d)となり、理想的な入出力特性と比較して、ゲインの差が生じる。また、DL-CAL信号を用いるDLキャリブレーション動作時、無線通信装置10が、非線形を伴わない線形域での各送信機の振幅及び位相の周波数特性を学習し、各周波数特性の差分を一元化して補正する事が前提となっている。したがって、DPD処理部42はオフとなっているので、各送信アンプ52の非線形性による歪みは、対応するDPD処理部42によって補償されない。そのため、DLキャリブレーション動作時には、このメモリ効果によって生じる各送信機間の振幅及び位相の差分を補償するように、DL-CALウェイトが設定される。
【0081】
次のデータスロットで、無線通信装置10がデータビームフォーミングによる無線信号を送信するとき、各送信アンプ52の出力は、UEとデータを送信するために最大定格となる。つまり、BF-BB部20が出力する無線信号は、各信号チャネルについて略同一の振幅である。また、データビームフォーミングによる無線信号が送信されるとき、各DPD処理部42はオンになっているため、各DPD処理部42は、対応する送信アンプ52の非線形性による歪みを補償しようとする。
【0082】
しかしながら、上述のとおり、先のDLキャリブレーションにおいて設定されたのは、ファンビームフォーミングの履歴が反映されたDL-CALウェイトである。したがって、各送信アンプ52における出力信号は、本来、略同一の振幅を有するはずだったのが、不必要なDL-CALウェイトによって、送信アンプ52毎に異なる振幅となってしまう。また、送信アンプ52毎に、本来存在しないはずの位相差も生じてしまう。このようにして、データビームフォーミングによる無線信号の振幅及び位相に、過補償又は補償不足が生じる。この現象は、DL-CALウェイトが更新されるまで続くことになる。
【0083】
図7Aは、各信号チャネルの位相差の一例を示すグラフである。図7Aのグラフ横軸は、送信アンプ52の番号を示し、グラフ縦軸は、送信アンプ52#3、#4、#11、#12(図6の(a1)、(a2)に相当)からの位相差量を示す。図7Aは、図6Aに示されたアンテナ34の構成において、上述の処理により、不必要なDL-CALウェイトによる補正がなされた状態で無線信号を送信する場合に、各送信アンプ52が出力するデータビームフォーミングの無線信号間の位相ずれ量を示す。なお、図7Aは、送信アンプ52#0~#15までの位相差量を示しているが、送信アンプ52#16~#31の位相差量(送信アンプ52#19、#20、#27、#28からの位相差量)についても、図7Aと同じグラフとなる。
【0084】
図7Aは、統計上、標準偏差をσとしたときの±3σの範囲内において、前記のメモリ効果が存在する場合、各送信機間の位相差が、(1)では最大11.6度p-p(phase-phase)、(2)では最大23.1度p-p、(3)では最大34.6度p-pとなる場合を示している。この位相差がデータビームフォーミング時に及ぼす影響を、次の計算により検証した。図7Aを参照すると理解できるように、図6Aにおいて(d1)及び(d2)のアンテナ34に対応する送信アンプ52の位相差量が最大であり、(c1)及び(c2)に対応する送信アンプ52、(b1)及び(b2)に対応する送信アンプ52となるに従い、位相差量が小さくなる。
【0085】
図7Bは、データビームフォーミングに係る無線信号出力時の水平方向放射パターンの角度スペクトラムの一例を示すグラフである。図7Bのグラフ横軸は、無線通信装置10の正面からの水平方向(左右方向)の角度を示し、グラフ縦軸は、無線通信装置10の正面からの出力信号を基準としたときの、正規化された放射パワーレベルを示す。図7Bの(1)~(3)が、図7Aの(1)~(3)の位相差がある場合の角度スペクトラムを示すグラフであり、図7Bの(0)は、不必要なDL-CALウェイトがない、本来の角度スペクトラムを示す。
【0086】
図7Bを参照すると理解できるように、無線通信装置10の正面に最も近接して存在するヌルポイントの深さ(第1のヌル深さ)は、(0)では46dBだが、(1)では27dB、(2)では21dB、(3)では17dBとなる。つまり、位相差が大きいほど、ヌル深さが浅くなる。すなわち、空間多重信号送信時の各UE方向でのDL SINRが、この浅いヌル(他UEへのビームフォーミングでの妨害波を意味する)によって劣化する事になる。ヌル深さは、無線通信装置10のMU-MIMO性能を決定する。そのため、無線通信装置10が基地局として機能するときのセルのスループットが向上せず、通信品質が劣化してしまう。
【0087】
本開示は、増幅器の非線形特性にメモリ効果がある場合、メモリ効果がキャリブレーションの精度を劣化させ、これにより空間多重信号送信時の各端末への信号のSINR劣化が生じてしまわない様に、SINR劣化を抑制可能な構成を示す。具体例として、無線通信装置がファンビームフォーミングによって無線信号を送信後、DLキャリブレーションを実行し、その後データビームフォーミングによる無線信号を送信する場合であっても、本開示により、データビームフォーミングによる無線通信の品質の劣化を抑制することができる。
【0088】
実施の形態1
以下、図面を参照して本開示の実施の形態1について説明する。図8は、実施の形態1に係る信号処理装置を示すブロック図である。信号処理装置100は、電気信号を処理する装置であって、例えば通信システムの無線通信装置に対して適用できるが、適用対象はそれに限定されない。
【0089】
信号処理装置100は、歪補償部101#1~#n、アンプ102#1~#n、算出部103及び制御部104を備える。以下、各構成要素について説明する。なお、nは任意の2以上の数であり、歪補償部101#1~#nを総称して、歪補償部101と記載し、アンプ102#1~#nを総称して、アンプ102と記載する。
【0090】
歪補償部101#1~#nは、それぞれ入力信号IN#1~#nに対して非線形歪を補償する歪補償処理を行い、歪補償処理がなされた信号を、対応するアンプ102#1~#nに出力する。この歪補償処理によって、アンプ102によって出力される信号の非線形歪みが抑制される。歪補償部101は、歪補償処理を実行するオン状態と、歪補償処理を実行せず、入力信号をそのまま出力信号として出力するオフ状態とが、制御部104の制御により切り替えられることができる。
【0091】
歪補償部101は、歪補償処理として、例えばDPD補償処理を実行する。DPD補償処理が実行される場合には、歪補償部101の内部には、振幅及び位相に関するDPD補償係数が格納される。DPD補償係数は、アンプ102の非線形AM/PM成分を補償するための重みであり、歪補償部101は、入力信号INの特性に基づいて、振幅及び位相に関する適切なDPD補償係数を選択する。歪補償部101は、選択したDPD補償係数を用いて、入力信号INにDPD補償処理を実行する。例えば、歪補償部101には、入力信号INの振幅又は(I,Q)の値と、その値に対応するDPD補償係数とが関連付けられたLUT(ルックアップテーブル)が格納されている。歪補償部101は、入力信号INの値を判定し、その値に基づいてLUTを参照することで、適切なDPD補償係数を選択し、DPD補償処理を実行する。なお、歪補償部101は、振幅及び位相に関するDPD補償係数を適宜更新する。
【0092】
アンプ102#1は、歪補償部101#1から出力された信号を増幅し、出力信号OUT#1として出力する増幅器である。同様に、アンプ102#2、・・・、#nは、それぞれ、歪補償部101#2・・・、#nから出力された信号を増幅し、出力信号OUT#2・・・、#nとして出力する。アンプ102として、任意の種類の増幅器を用いることができる。
【0093】
算出部103は、入力信号INと、入力信号INにそれぞれ対応する出力信号OUTとの位相、振幅及び強度の少なくともいずれかの比較結果を、信号チャネル#1~#n毎に算出する。この処理は、キャリブレーション信号が複数の入力信号IN#1~#nとして用いられ、アンプ102#1~#nに入力される信号処理装置100のキャリブレーション動作時に、少なくとも実行される。キャリブレーション動作は、例えば、上述の関連技術に記載した無線通信装置におけるDLキャリブレーション動作やULキャリブレーション動作であっても良いが、これらに限られない。キャリブレーション信号は、この例では、入力信号IN#1~#nについては、略同一レベルの信号である。
【0094】
算出部103は、例えば、入力信号INと、その入力信号INにそれぞれ対応する出力信号OUTとの位相差、振幅比及び強度比の少なくともいずれかを、信号チャネル#1~#n毎に算出することができる。一例として、算出部103は、入力信号から、それに対応する出力信号を減算することにより位相差を算出する。また、算出部103は、入力信号を、それに対応する出力信号で除算することにより振幅比を算出する。さらに、算出部103は、入力信号の二乗を、それに対応する出力信号の二乗で除算することにより、強度比を算出する。なお、位相差、振幅比及び強度比の中では、後述の制御部104の判定に関して、位相差がデータビームフォーミング時のDL SINRの劣化に対して最も敏感だと考えられるが、振幅比、強度比を判定のファクターとして用いることもできる。このような比較結果は、歪補償部101#1~#nにおいてメモリ効果があるか否かを判定するために算出される。
【0095】
制御部104は、算出部103が算出した比較結果に基づいて、キャリブレーション動作中における歪補償部101#1~#nのオン・オフを制御することで、歪補償部101が歪補償処理を実行するか否かを制御する。
【0096】
上述のとおり、キャリブレーション信号は、入力信号IN#1~#nについて、レベルが略同一の信号である。これに対し、キャリブレーション信号区間より過去に遡った際の入力信号#1~#nでは、互いの入出力レベルが異なる。更に、アンプの非線形度にメモリ効果が存在する場合は、信号チャネル毎に異なるAM-AM及びAM-PM特性が維持されてしまう。その結果、後続するキャリブレーション区間で、異なるAM-AM及びAM-PM特性を有する各アンプ102をキャリブレーション信号が通過してしまうため、信号チャネル間で、振幅又は位相の周波数特性に差が生じてしまう。例えば、各アンプが送信機に接続される場合は、送信機間で、振幅又は位相の周波数特性に差が生じてしまう。
【0097】
したがって、キャリブレーション信号をアンプ102#1~#nに出力した場合の各信号チャネル#1~#nにおける位相差等を比較することにより、アンプ102のメモリ効果が有意なレベルであるか否かを判定することができる。有意なメモリ効果がある場合、前回の入力信号の影響が大きいため、比較結果に基づく差分が、大きい値となる。これに対し、有意なメモリ効果がない場合、前回の入力信号の影響が0又は小さいため、比較結果に基づく差分は、0又は小さい値となる。
【0098】
図9Aは、キャリブレーション信号ではない、通常の入力信号が各アンプ102に入力される場合に、信号処理装置100が実行する処理を示したフローチャートである。まず、歪補償部101#1~#nは、複数の入力信号IN#1~#nに対して歪補償処理を行い、歪補償処理がなされた信号を、対応するアンプ102に出力する(ステップS11)。アンプ102#1~#nは、歪補償部101#1~#nから出力された信号をそれぞれ増幅し、出力信号OUT#1~#nとして出力する(ステップS12)。
【0099】
上述の通常の入力信号は、例えば、無線通信装置における無線送信又は受信に係る信号(通信信号)である。この場合、歪補償処理がなされることで、通信信号のSINRを向上させることができる。
【0100】
図9Bは、キャリブレーション信号が入力信号IN#1~#nとして各アンプ102に入力される場合に、信号処理装置100が実行する処理を示したフローチャートである。なお、信号処理装置100が通常の入力信号に基づく通常の処理を実行しない状態であるため、図9Bに示したフローの当初の状態では、歪補償部101#1~#nはオフとなっている。
【0101】
まず、キャリブレーション信号が入力信号IN#1~#nとしてアンプ102#1~#nに入力される。アンプ102#1~#nは、それぞれ、キャリブレーション信号を増幅して出力する(ステップS13)。
【0102】
この例では、算出部103は、入力信号IN#1~#nと、入力信号IN#1~#nにそれぞれ対応する出力信号OUT#1~#nとの位相差を算出する(ステップS14)。ただし、上述のとおり、算出部103は、その他の種類の位相、振幅及び強度の比較結果を算出しても良い。制御部104は、算出部103が算出した位相差の比較結果に基づいて、歪補償部101#1~#nのオン・オフを制御することで、各信号チャネルのキャリブレーション信号に歪補償処理を行うか否かを制御する(ステップS15)。
【0103】
以上のように、信号処理装置100の制御部104は、算出部103が算出した比較結果に基づいて、歪補償部101に対し、歪補償処理を実行させるか否かを制御する。したがって、制御部104は、アンプ102にメモリ効果が残っていることを正確に判定し、歪補償部101に対して歪補償処理を実行させることができる。そのため、信号処理装置100は、キャリブレーション信号を用いて、各信号チャネル間の振幅又は位相の周波数特性の差分について学習できる。その結果、周波数特性の差分が補正されることで、正確なキャリブレーションが可能となる。
【0104】
なお、具体的には、算出部103が入力信号IN#1-出力信号OUT#1、入力信号IN#2-出力信号OUT#2、・・・、入力信号IN#n-出力信号OUT#nのそれぞれについて位相差を算出した場合、制御部104は、予め設定された第1の閾値以上となる位相差同士の差分が存在する所定の条件が成立するか否かを判定しても良い。また、算出部103が振幅比を算出した場合、制御部104は、予め設定された第2の閾値以上となる振幅比同士の差分が存在する所定の条件が成立するか否かを判定しても良い。また、算出部103が強度比を算出した場合、制御部104は、予め設定された第3の閾値以上となる強度比同士の差分が存在する所定の条件が成立するか否かを判定しても良い。
【0105】
また、算出部103は、n個の位相差、n個の振幅比及びn個の強度比のうち、複数のものを算出しても良い。例えば、算出部103が位相差と振幅比を算出した場合、制御部104は、第1の閾値以上となる位相差同士の差分及び第2の閾値以上となる振幅比同士の差分の少なくともいずれかが存在する所定の条件が成立するか否かを判定しても良い。算出部103が位相差と強度比を算出した場合、算出部103が振幅比と強度比を算出した場合、又は算出部103が位相差、振幅比及び強度比を算出した場合であっても、同様の判定が実行できる。つまり、制御部104は、位相差同士の差分、振幅比同士の差分、強度比同士の差分の少なくともいずれかにおいて、所定の閾値以上となるような差分が存在するか否かを判定する。
【0106】
制御部104は、以上の所定の条件が成立する場合、キャリブレーション信号に対して、歪補償部101#1~#nをオンにして、歪補償処理を実行させるように制御する。これにより、過去の入力信号に基づく非線形特性のメモリ効果がアンプ102に存在しても、制御部104は、キャリブレーション信号に対して、そのメモリ効果によって生じる振幅又は位相の変動が補正対象として扱われ、入力信号に過補償がされることのない様に制御をしている。具体的に、制御部104は、キャリブレーション信号における周波数特性の学習時に、歪補償部101においてアンプ102の非線形性を短期間で補正する。これにより、制御部104は、正確に各信号チャネル間の振幅や位相の誤差を判定し、その誤差を補正して、アンプ102の出力信号を均一にすることができる様になる。
【0107】
また、制御部104は、上記の所定の条件が成立しない場合に、歪補償部101#1~#nをオフにして、歪補償処理を実行させないように制御することもできる。これにより、有意なメモリ効果がないと判定される場合に、CAL信号に対し、歪補償処理に基づく余分な信号変化がなされることを抑制することができる。これにより、キャリブレーションが却って正確にできなくなることを抑制することができる。
【0108】
なお、制御部104は、上述の処理において、算出されたn個の位相差に関して、最大となる位相差と、最小となる位相差を特定し、その2つの差分を算出して、その差分が第1の閾値以上となるかを判定しても良い。このように、制御部104が、算出された値の最大値と最小値を比較に用いることにより、制御部104は、全ての値について比較処理をする必要がないため、より早い比較処理ができる。この処理は、振幅比、強度比についても同様に実行できる。
【0109】
キャリブレーション信号は、位相又は振幅に関して、各信号チャネル#1~#nにおいて完全に同一でなくても良い。その場合、制御部104での判定に用いる閾値は、各信号チャネルにおけるキャリブレーション信号の元々の位相又は振幅の差分を考慮した上で、アンプ102のメモリ効果が確実に検出可能な値が設定されることになる。
【0110】
上記の説明では、各信号チャネル#1~#n毎に歪補償部101が設けられていた。しかしながら、アンプ102が設けられているが、歪補償部101が設けられていない信号チャネルがあっても良い。また、1ユニットの歪補償部101が、複数の信号チャネルにおいて歪補償処理を行い、歪補償処理がなされた信号を、複数のアンプ102に出力しても良い。このような回路構成であっても、各アンプ102の後段に対して無線通信用の送信機を接続させ、無線通信用の回路を構成することが可能である。
【0111】
さらに、歪補償部101は、DPD補償ではなく、別の方法による歪補償を実行しても良い。例えば、フィードフォワード方式での歪補償(OpenLoop補償)が実行されても良い。また、歪補償部101に、AI(Artificial Intelligence)・深層学習の技術を適用し、歪補償部に対して大量の非線形歪の補償結果を学習及び記憶させることによって、歪補償に用いる最尤補償係数を決定しても良い。
【0112】
実施の形態2
以下、図面を参照して本開示の実施の形態2について説明する。実施の形態2では、実施の形態1で示した信号処理について、詳細な具体例を示して説明する。
【0113】
図10は、実施の形態2に係る無線通信装置200を示すブロック図である。無線通信装置200は、信号処理装置100の具体的な適用例である。なお、無線通信装置200は、上述の関連技術に係る無線通信装置10の一部に変更を加えたものである。無線通信装置10と同一符号を付した部分は、無線通信装置10において対応する部分と同一の構成を有し、同一の処理を実行するため、適宜説明を省略する。
【0114】
無線通信装置200は、BF-BB部20と、AAS部30とを備える。ここで、AAS部30は、光トランシーバ31、TRX-BB部60、フロントエンド部61、32個のアンテナ34、分配合成器35、SW36、CAL-TRX37及びBB制御部62を備える。
【0115】
TRX-BB部60は、送受信機ベースバンド部として機能し、32個のBBユニット70#0~#31を備える。以下、BBユニット70#0~#31を総称して、BBユニット70と記載する。
【0116】
図11は、BBユニット70のブロック図である。BBユニット40は、CFR処理部41、DPD処理部71、DPD制御部72及びORX73を備える。なお、BBユニット70#0~#31の各々は、図2に示したものと同じ構成を有する。
【0117】
DPD処理部71は、実施の形態1に記載の歪補償部101に対応するユニットであり、関連技術にかかるDPD処理部42が実行する処理のほか、以下の処理を実行する。DPD処理部71は、DPD補償処理を実行するオン状態と、DPD補償処理を実行せず、入力信号をそのまま出力するオフ状態とを、DPD制御部72が出力する制御信号DPD_SWにより切り替えられることができる。また、DPD処理部71の内部には、DPD補償係数が格納されており、DPD処理部71は入力信号の特性に基づいて、適切なDPD補償係数を選択して、入力信号にDPD補償処理を実行する。DPD補償係数は、送信アンプ52の非線形AM/PM成分を補償するための重みであり、DPD処理部71は、入力信号INの特性に基づいて、振幅及び位相に関する適切なDPD補償係数を選択して、入力信号INにDPD補償処理を実行する。DPD補償係数の詳細については、実施の形態1に記載した通りである。
【0118】
DPD制御部72は、実施の形態1に記載の算出部103に対応するユニットであり、DPD制御部72には、CFR処理部41が出力した入力信号INと、出力信号FBが入力される。出力信号FBは、BBユニット70と同一チャネル上にある送信アンプ52が出力した出力信号がフィードバックされた信号である。DPD制御部72は、入力信号INと出力信号FBとの位相差及び振幅比を算出する。DPD制御部72は、算出した位相差及び振幅比のデータを、BB制御部62に出力する。
【0119】
また、DPD制御部72は、BB制御部62からの制御信号CTRLを受信し、その制御信号CTRLに基づいて、DPD処理部71のオン・オフを切り替える制御信号DPD_SWを出力する。
【0120】
ORX73は、受信器であり、後述の方向性結合器53から出力された出力信号FBをDPD制御部72に転送する。
【0121】
図12は、FEユニット80のブロック図である。FEユニット50は、TRX51、送信アンプ52、方向性結合器81、SW54及び受信アンプ55を備える。なお、FEユニット80#0~#31の各々は、図3に示したものと同じ構成を有する。
【0122】
方向性結合器81は、関連技術にかかる方向性結合器53が有する機能のほか、以下の機能を有する。方向性結合器81は、送信アンプ52が出力したRF信号を出力信号FBとして、ORX73を介して、DPD制御部72に出力する。
【0123】
図10に戻り、BB制御部62について説明する。BB制御部62は、実施の形態1に記載の制御部104に対応するユニットであり、各信号チャネルのDPD制御部72が出力した位相差及び振幅比のデータを受信する。そして、BB制御部62は、算出された32個の位相差に関して、最大となる位相差と、最小となる位相差を特定し、その2つの差分を算出して、その差分が第1の閾値以上となるかを判定する。また、BB制御部62は、算出された32個の振幅比に関して、最大となる振幅比と、最小となる振幅比を特定し、その2つの差分を算出して、その差分が第2の閾値以上となるかを判定する。
【0124】
BB制御部62は、最大位相差と最小位相差との差分が第1の閾値以上となるか、又は、最大振幅比と最小振幅比との差分が第2の閾値以上となった場合に、各DPD制御部72に対し、DPD処理部71をオンにするための制御信号CTRL#0~#31を出力する。それに対し、最大位相差と最小位相差との差分が第1の閾値未満であり、かつ、最大振幅比と最小振幅比との差分が第2の閾値未満となった場合には、制御信号CTRL#0~#31を出力しない。したがって、各DPD処理部71はオンにならず、オフのままとなる。
【0125】
図13Aは、無線通信装置200が実行する信号処理を示したフローチャートである。以下、実施される信号処理について説明する。
【0126】
まず、無線通信装置200は、ファンビームフォーミングによって、無線信号を送信する(ステップS21)。具体的には、関連技術で説明したとおり、BF-BB部20は、以前に生成してBF-BB部20内に格納されたDL-CALウェイトを用いてBF信号を生成し、それをAAS部30に出力する。
【0127】
次に、無線通信装置200は、DLキャリブレーションを実施する(ステップS22)。この処理の詳細については後述する。BF-BB部20は、ステップS22において、DL-CALウェイトを更新することができる。
【0128】
そして、無線通信装置200は、データビームフォーミングによって、無線信号を送信する(ステップS23)。ステップS22で設定されたDLキャリブレーションによって、無線通信装置200は、ヌルポイントが精度良く設定された、データビームフォーミングでの無線通信をすることができる。なお、ステップS21、S23において、BB制御部62の制御により、各DPD処理部71はオンの状態に設定されている。ステップS21、S23における信号処理のその他の詳細については、関連技術に記載した通りである。
【0129】
図13Bは、ステップS22において実行される信号処理の詳細を示したフローチャートである。以下、処理の詳細について説明する。
【0130】
まず、TRX-BB部60は、DL-CAL信号をフロントエンド部61に出力する(ステップS31)。DL-CAL信号は、各送信機のFEユニット80の送信アンプ52により増幅して出力される。方向性結合器81は、送信アンプ52の出力信号FBを、ORX73を介してDPD制御部72に出力する。なお、この段階では、各DPD処理部71はオフの状態に設定されている。
【0131】
各送信機のDPD制御部72は、出力信号FBと、CFR処理部41から出力されたDL-CAL信号である入力信号INとの位相差及び振幅比を算出する(ステップS32)。DPD制御部72は、算出した位相差及び振幅比のデータを、BB制御部62に出力する。
【0132】
BB制御部62は、算出された各送信機(32個)の位相差に関して、最大となる位相差と、最小となる位相差を特定し、その2つの差分を算出する。また、BB制御部62は、算出された各送信機の振幅比に関して、最大となる振幅比と、最小となる振幅比を特定し、その2つの差分を算出する(ステップS33)。
【0133】
BB制御部62は、最大位相差と最小位相差の差分が第1の閾値未満であり、かつ、最大振幅比と最小振幅比の差分が第2の閾値未満であるか否かを判定する(ステップS34)。
【0134】
関連技術に記載したとおり、ファンビームフォーミングによる無線信号は、各送信機に於いて、振幅及び位相が異なる信号である。無線通信装置200がこの無線信号を出力する際に、各送信機間の送信アンプにおいて、非線形メモリ効果により、AM-AMやAM-PMの特性に差が生じる。一方、DL-CAL信号については、AM-AMやAM-PMの特性について生じた差によって、DL-CAL信号に過補償又は補償不足が生じない様にする事が重要となる。従い、送信アンプ52に有意なメモリ効果がなければ、ファンビームフォーミングによる無線信号が出力された後でも、各送信機間のAM-AMやAM-PMの特性は、同一レベルのDL-CAL信号レベルに依存して、一意的に定まる。そのため、DL-CAL信号への影響は小さくなる。これに対し、有意なメモリ効果がある場合、前回のファンビームフォーミングによる信号の影響が反映されて、位相差等同士の差分が、大きい値となる。BB制御部62は、ステップS34において、このような有意なメモリ効果の有無を判定している。
【0135】
最大位相差と最小位相差との差分が第1の閾値未満であり、かつ、最大振幅比と最小振幅比との差分が第2の閾値未満である場合(ステップS34のYes)、BB制御部62は、制御信号CTRL#0~#31を出力せず、各DPD処理部71をオフのままにするよう制御する(ステップS35)。
【0136】
一方、BB制御部62は、最大位相差と最小位相差との差分が第1の閾値以上であるか、最大振幅比と最小振幅比との差分が第2の閾値以上である少なくともいずれかの場合に(ステップS34のNo)、以下の処理を行う。BB制御部62は、各DPD制御部72に対し、DPD処理部71をオンにするための制御信号CTRL#0~#31を出力する(ステップS36)。
【0137】
無線通信装置200は、以上のようにして、DPD処理部71のオン又はオフを設定した後、関連技術に示したDLキャリブレーション動作によって、DL-CALウェイトを設定する。このとき、送信アンプ52に有意なメモリ効果が生じている場合でも、DPD処理部71によってメモリ効果の補償がなされるため、次のデータビームフォーミングでの無線通信におけるヌルポイントを精度良く設定することができる。
【0138】
送信アンプ52に有意なメモリ効果が生じていない場合には、DLキャリブレーション動作においてDPD補償処理を実行しない状態でCALウェイトを設定しても、次のデータビームフォーミングでの無線通信におけるヌルポイントの精度が十分に担保されると考えられる。また、一般に、DPD処理部71におけるDPD補償係数の更新周期は、DL-CALの更新周期と同期しないか、又は同一ではない。そのため、DPD処理部71をオンにした場合、ファンビームフォーミングによる無線信号送信時に決定されたDPD補償係数でDL-CAL信号がDPD補償されることによって、出力されるDL-CAL信号の振幅及び位相が変化することが考えられる。これにより、DPD補償をオンにしたときに算出されるCALウェイトは、DPD処理部71をオフにしたときに算出されるCALウェイトよりも、決定されるヌルポイントの精度が劣化してしまう可能性がある。そのため、この場合には、無線通信装置200は、DPD処理部71をオフにする。このように、実施の形態2では、キャリブレーション動作時のDPD補償処理のオン・オフを切り替えることで、アンプの非線形性を補償するDPD補償処理と、MU-MIMO性能(MIMO空間多重の性能)を決定するキャリブレーション動作とを、自律的に両立させることができる。
【0139】
無線通信装置10においては、ファンビームフォーミングによる無線送信用の信号が出力された後にキャリブレーション動作がなされ、その後、ビームフォーミングによる無線送信用の信号が出力される。このため、無線通信装置10は、ビームフォーミングにおける信号の品質を向上させることができる。
【0140】
送信アンプ52は、様々な種類のものが適用可能であるが、例えばドハティ増幅器であっても良い。ドハティ増幅器は、高周波用の増幅器であり、一例としてGaN(窒化ガリウム)ドハティ増幅器が、大電力を出力可能であり、高効率で低消費電力化が可能なため用いられる。この様なGaNドハティ増幅器は、消費電力削減に有効とはなるが、上述のとおり、AM-AM入出力特性及びAM-PM入出力特性にメモリ効果が生ずる場合がある。しかしながら、実施の形態2では、このメモリ効果によって生ずる不都合を解消することができる。
【0141】
また、無線通信を実行する無線通信装置200において、DPD補償処理とキャリブレーション動作を両立可能としたことで、無線通信の品質をより向上させることができる。
【0142】
なお、本開示は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。例えば、実施の形態2における送信機数は、32に限られなくても良い。また、実施の形態2におけるファンビームの無線信号に代えて、その他の広角放射の無線信号(例えば、全方位への無線信号放射を目的とするもの)が使用されても良い。
【0143】
本開示の技術が適用可能な無線通信の方式は、関連技術及び実施の形態2に記載したものに限られない。
【0144】
以上に示した実施の形態では、この開示をハードウェアの構成として説明したが、この開示は、これに限定されるものではない。この開示は、上述の実施形態において説明された装置の処理(ステップ)を、コンピュータ内のプロセッサにコンピュータプログラムを実行させることにより実現することも可能である。
【0145】
図14は、以上に示した各実施の形態の処理が実行される情報処理装置(信号処理装置)のハードウェア構成例を示すブロック図である。図14を参照すると、この情報処理装置90は、信号処理回路91、プロセッサ92及びメモリ93を含む。
【0146】
信号処理回路91は、プロセッサ92の制御に応じて、信号を処理するための回路である。なお、信号処理回路91は、送信装置から信号を受信する通信回路を含んでいても良い。
【0147】
プロセッサ92は、メモリ93からソフトウェア(コンピュータプログラム)を読み出して実行することで、上述の実施形態において説明された装置の処理を行う。プロセッサ92の一例として、CPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro Processing Unit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、DSP(Demand-Side Platform)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)のうち一つを用いてもよいし、複数を並列で用いてもよい。
【0148】
メモリ93は、揮発性メモリ及び不揮発性メモリの組み合わせによって構成される。メモリ93は、プロセッサ92から離れて配置されたストレージを含んでもよい。この場合、プロセッサ92は、図示されていないI/O(Input / Output)インタフェースを介してメモリ93にアクセスしてもよい。
【0149】
図14の例では、メモリ93は、ソフトウェアモジュール群を格納するために使用される。プロセッサ92は、これらのソフトウェアモジュール群をメモリ93から読み出して実行することで、上述の実施形態において説明された処理を行うことができる。
【0150】
以上に説明したように、上述の実施形態における各装置が有する1又は複数のプロセッサは、図面を用いて説明されたアルゴリズムをコンピュータに行わせるための命令群を含む1又は複数のプログラムを実行する。この処理により、各実施の形態に記載された信号処理方法が実現できる。
【0151】
プログラムは、様々なタイプの非一時的なコンピュータ可読媒体(non-transitory computer readable medium)を用いて格納され、コンピュータに供給することができる。非一時的なコンピュータ可読媒体は、様々なタイプの実体のある記録媒体(tangible storage medium)を含む。非一時的なコンピュータ可読媒体の例は、磁気記録媒体(例えばフレキシブルディスク、磁気テープ、ハードディスクドライブ)、光磁気記録媒体(例えば光磁気ディスク)、CD-ROM(Read Only Memory)、CD-R、CD-R/W、半導体メモリ(例えば、マスクROM、PROM(Programmable ROM)、EPROM(Erasable PROM)、フラッシュROM、RAM(Random Access Memory))を含む。また、プログラムは、様々なタイプの一時的なコンピュータ可読媒体(transitory computer readable medium)によってコンピュータに供給されてもよい。一時的なコンピュータ可読媒体の例は、電気信号、光信号、及び電磁波を含む。一時的なコンピュータ可読媒体は、電線及び光ファイバ等の有線通信路、又は無線通信路を介して、プログラムをコンピュータに供給できる。
【0152】
以上、実施の形態を参照して本開示を説明したが、本開示は上記によって限定されるものではない。本開示の構成や詳細には、開示のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。
【0153】
この出願は、2020年12月25日に出願された日本出願特願2020-217114を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。
【符号の説明】
【0154】
10 無線通信装置
20 BF-BB部
30 AAS部
31 光トランシーバ
32 TRX-BB部
33 フロントエンド部
34 アンテナ
35 分配合成器
36 SW
37 CAL-TRX
40 BBユニット
41 CFR処理部
42 DPD処理部
50 FEユニット
51 TRX
52 送信アンプ
53 方向性結合器
54 SW
55 受信アンプ
60 TRX-BB部
61 フロントエンド部
62 BB制御部
70 BBユニット
71 DPD処理部
72 DPD制御部
73 ORX
80 FEユニット
81 方向性結合器
100 信号処理装置
101 歪補償部
102 アンプ
103 算出部
104 制御部
200 無線通信装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図7A
図7B
図8
図9A
図9B
図10
図11
図12
図13A
図13B
図14