(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-20
(45)【発行日】2025-01-28
(54)【発明の名称】防水シート施工補助治具、および防水シート施工方法
(51)【国際特許分類】
E04F 21/00 20060101AFI20250121BHJP
E04D 5/06 20060101ALI20250121BHJP
【FI】
E04F21/00 C
E04D5/06 A
(21)【出願番号】P 2023201932
(22)【出願日】2023-11-29
【審査請求日】2023-12-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000198787
【氏名又は名称】積水ハウス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】堀 一夫
(72)【発明者】
【氏名】疊 将志
(72)【発明者】
【氏名】橋本 知慈
【審査官】五十幡 直子
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-310034(JP,A)
【文献】特開2021-38556(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04F 21/00
E04D 5/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
壁に防水シートを張り付ける張付作業を補助する防水シート施工補助治具であって、
ハンドル部と、前記ハンドル部に設けられて前記防水シートにおいて前記壁に張り付けられる壁シート部に係合する係合部とを備え、
前記ハンドル部は、前記壁に繋がる床に接触する接触部を含む基部と、前記基部から延びるレバー部とを有し、
前記係合部は、前記基部に回転可能に取り付けられる取付部と、前記取付部から延びる延長部と、前記延長部に設けられて前記壁シート部の上部に刺さる爪部と、を有する、
防水シート施工補助治具。
【請求項2】
前記レバー部から前記係合部が離れるように前記係合部を付勢する付勢部をさらに備える、
請求項1に記載の防水シート施工補助治具。
【請求項3】
前記レバー部と前記係合部との間の角度が第1角度以下となるように、前記レバー部に対して前記係合部の位置を規制する第1規制部をさらに備え、
前記第1規制部は、前記レバー部に対する前記係合部の位置規制を解除可能に構成される、
請求項2に記載の防水シート施工補助治具。
【請求項4】
前記レバー部と前記係合部との間の角度が前記第1角度よりも大きい第2角度以下となるように、前記レバー部に対して前記係合部の位置を規制する第2規制部をさらに備える、
請求項3に記載の防水シート施工補助治具。
【請求項5】
前記防水シート施工補助治具の仮留状態において、前記壁と前記レバー部との間の距離が所定距離よりも短くならないように前記壁と前記レバー部との間に配置される支持部材をさらに備え、前記仮留状態は、前記防水シートの前記壁シート部に前記爪部が刺さり、かつ、前記壁シート部が引っ張られた状態である、
請求項2に記載の防水シート施工補助治具。
【請求項6】
前記支持部材は、前記レバー部に回転可能に取り付けられ、または、前記レバー部に着脱可能に取り付けられる、
請求項5に記載の防水シート施工補助治具。
【請求項7】
前記基部の前記接触部は、曲面に構成される、
請求項1に記載の防水シート施工補助治具。
【請求項8】
壁に防水シートを張り付ける防水シート施工方法であって、
床から立ち上がる壁に、前記防水シートの一部である壁シート部を接触させた状態において、請求項1~7のいずれか一項に記載の防水シート施工補助治具によって、前記壁シート部を仮留めする第1工程と、
前記壁に、前記壁シート部を固定する第2工程と、を含む、
防水シート施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、防水シート施工補助治具、および防水シート施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
建築物の屋上において、床から立ち上がる壁に防水シートを張るための治具が知られている。治具は、皺の発生を抑制するように防水シートを張るために用いられる。例えば、特許文献1には、防水シート施工補助治具(特許文献1では、施工用治具)が開示されている。同文献の防水シート施工補助治具は、基部と、基部に対して回転するように設けられる押圧部とを備える。押圧部は、弾性体を有する。押圧部は、弾性体を介して防水シートを壁に押圧することによって、押圧後の皺の発生を抑制する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、防水シートを施工する際、防水シートの皺の発生を抑制する点に関して、防水シート施工補助治具および防水シート施工方法には改善の余地がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(1)上記課題を解決する防水シート施工補助治具は、壁に防水シートを張り付ける張付作業を補助する防水シート施工補助治具であって、ハンドル部と、前記ハンドル部に設けられて前記防水シートにおいて前記壁に張り付けられる壁シート部に係合する係合部とを備え、前記ハンドル部は、前記壁に繋がる床に接触する接触部を含む基部と、前記基部から延びるレバー部とを有し、前記係合部は、前記基部に回転可能に取り付けられる取付部と、前記取付部から延びる延長部と、前記延長部に設けられて前記壁シート部の上部に刺さる爪部と、を有する。
【0006】
この構成によれば、レバー部に力が加えられると接触部を支点としてハンドル部が回転するとともに係合部が上に移動する。これによって、係合部に係合する防水シートが伸張するため、壁に張られる防水シートの皺を少なくできる。
【0007】
(2)上記(1)の防水シート施工補助治具において、前記レバー部から前記係合部が離れるように前記係合部を付勢する付勢部をさらに備える。この構成によれば、レバー部に対して係合部が付勢されるため、係合部を壁シート部に強く係合させることができる。
【0008】
(3)上記(2)の防水シート施工補助治具において、前記レバー部と前記係合部との間の角度が第1角度以下となるように、前記レバー部に対して前記係合部の位置を規制する第1規制部をさらに備え、前記第1規制部は、前記レバー部に対する前記係合部の位置規制を解除可能に構成される。
【0009】
この構成によれば、レバー部と係合部との間の角度が第1角度以下である状態に、係合部の位置を維持できる。このため、係合部の爪部が壁シート部に接触し難くなる。作業者の不注意に起因して係合部の爪部が壁シート部に引っ掛かるといったことが少なくなるので、防水シート施工補助治具を壁から所定距離だけ離れた位置に配置し易くなる。
【0010】
(4)上記(3)の防水シート施工補助治具において、前記レバー部と前記係合部との間の角度が前記第1角度よりも大きい第2角度以下となるように、前記レバー部に対して前記係合部の位置を規制する第2規制部をさらに備える。この構成によれば、レバー部に加えられる力を係合部に伝え易い。
【0011】
(5)上記(2)~(4)のいずれか1つの防水シート施工補助治具において、前記防水シート施工補助治具の仮留状態において、前記壁と前記レバー部との間の距離が所定距離よりも短くならないように前記壁と前記レバー部との間に配置される支持部材をさらに備え、前記仮留状態は、前記防水シートの前記壁シート部に前記爪部が刺さり、かつ、前記壁シート部が引っ張られた状態である。この構成によれば、支持部材が壁とレバー部との間の距離を所定距離のままに維持するため、防水シート施工補助治具の仮留状態を維持できる。
【0012】
(6)上記(5)の防水シート施工補助治具において、前記支持部材は、前記レバー部に回転可能に取り付けられ、または、前記レバー部に着脱可能に取り付けられる。この構成によれば、支持部材はレバー部に取り付けられるものであるため、支持部材の紛失を抑制できる。
【0013】
(7)上記(1)~(6)のいずれか1つの防水シート施工補助治具において、前記基部の前記接触部は、曲面に構成される。この構成によれば、床シート部に、防水シート施工補助治具の使用の跡が残ることを抑制できる。
【0014】
(8)課題を解決する防水シート施工方法は、壁に防水シートを張り付ける防水シート施工方法であって、床から立ち上がる壁に、前記防水シートの一部である壁シート部を接触させた状態において、上記(1)~上記(7)のいずれか1つに記載の防水シート施工補助治具によって、前記壁シート部を仮留めする第1工程と、前記壁に、前記壁シート部を固定する第2工程と、を含む。
【0015】
この構成によれば、壁に防水シートを張り付ける施工において、防水シート施工補助治具を使用するため、防水シートを壁に張る際に皺の発生を抑制できる。
【発明の効果】
【0016】
本開示の防水シート施工補助治具によれば、防水シートを施工する際、防水シートに皺の発生を抑制できる。本開示の防水シート施工方法によれば、防水シートを施工する際、防水シートに皺の発生を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】バルコニーの壁において、防水シート施工補助治具が配置されているときの壁の正面図である。
【
図2】バルコニーの壁に防水シートを張る人の作業の様子を示す図である。
【
図5】防水シート施工補助治具による張付作業の第1手順を示す、
図1のB-B線に沿う壁の断面図である。
【
図6】防水シート施工補助治具による張付作業の第2手順を示す、
図1のB-B線に沿う壁の断面図である。
【
図7】防水シート施工補助治具による張付作業の第3手順を示す、
図1のB-B線に沿う壁の断面図である。
【
図8】防水シート施工補助治具による張付作業の第4手順を示す、
図1のB-B線に沿う壁の断面図である。
【
図9】防水シート施工補助治具の変形例の図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1~
図8を参照して、本実施形態の防水シート施工補助治具20および防水シート施工方法について説明する。防水シート施工補助治具20は、壁10に防水シート6を張り付ける張付作業を補助するための治具である。
【0019】
防水シート6の施工において、防水シート施工補助治具20が使われる対象である壁10は、建築物の床2から立ち上がるように配置される壁である。防水シート6が施工される壁10は、屋外の壁である。防水シート6が張られる屋外の壁10の例としては、ベランダの壁、バルコニーの壁、および屋上のパラペットなどが挙げられる。本実施形態において、壁は、バルコニー1の床2から立ち上がる壁である。
【0020】
本実施形態では、バルコニー1の床2は、床ユニット3によって構成される。床ユニット3は、バルコニー1の下部にある下フレームの上に配置される。床ユニット3は、コンクリート部材7を介して下フレームの上に配置されてもよい。床ユニット3は、勾配断熱材4と、勾配断熱材4の上に配置される鋼板5と、鋼板5に張り付けられる防水シート6と、を備える。勾配断熱材4の上面は水平に対して傾斜する。防水シート6は、バルコニー1の壁10の下部を覆うことができるように延ばされている。すなわち、防水シート6は、床シート部6Aと、壁シート部6Bとを含む。一枚の連続した防水シート6において、床シート部6Aと、壁シート部6Bとが設けられている。壁シート部6Bは、勾配断熱材4から食み出ている。
【0021】
壁10は、フレーム11、合板12、および外装材13を含む。外装材13は、フレーム11に取り付け金具によって取り付けられる。
【0022】
外装材13は、フレーム11の外面11Aおよび内面11Bに配置される。
図5~
図8では外面11Aにある外装材13の記載が省略されている。フレーム11の内面11Bは、建築物本体に向く面を示す。フレーム11の外面11Aは、内面11Bの反対側を示す。外装材13は、フレーム11の内面11Bにおいて所定高さの位置から上の領域を覆う。フレーム11の内面11Bにおいて、所定高さの位置から下端までの領域には、合板12が設けられる。合板12は、外装材13の下方に位置する。合板12は、金具、ビスまたはボルトによってフレーム11に固定される。上下方向において、合板12と外装材13との間には、水切り材およびシーリング材が設けられてもよい。
【0023】
防水シート6は、上述のように、壁シート部6Bと床シート部6Aとを含む。壁シート部6Bは、防水シート6において壁10に張り付けられる部分である。床シート部6Aは、防水シート6において床2に張り付けられる部分である。本実施形態では、床シート部6Aは、上述のように、床2を構成する床ユニット3の勾配断熱材4に鋼板5を介して設けられている。
【0024】
[防水シート施工補助治具]
図1および
図2に示されるように、防水シート施工補助治具20は、壁10に防水シート6を張り付ける張付作業を補助する。
【0025】
図3に示されるように、防水シート施工補助治具20は、ハンドル部21と、ハンドル部21に設けられる係合部30とを備える。防水シート施工補助治具20は、さらに、付勢部40を備えてもよい。防水シート施工補助治具20は、さらに、第1規制部41、および、第2規制部51を備えてもよい。防水シート施工補助治具20は、さらに、支持部材60を備えてもよい。
【0026】
[ハンドル部]
ハンドル部21は、基部22と、基部22から延びるレバー部28とを有する。ハンドル部21には力が加えられる。ハンドル部21は、ハンドル部21に加えられる力を係合部30に伝達する。係合部30は、ハンドル部21に加えられる力に基づいて動く。
【0027】
基部22は、接触部23を含む。基部22は、さらに、第1部位22Aと、第2部位22Bとを含む。第1部位22Aは、レバー部28の下端が取り付けられる部分である。第2部位22Bは、係合部30の取付部31が取り付けられる部分である。接触部23は、壁10に繋がる床2に接触する部分である。第1部位22Aおよび第2部位22Bは、接触部23よりも上に位置する。第2部位22Bは、第1部位22Aから水平方向に離れた位置に配置されている。第2部位22Bは、第1部位22Aよりも高い位置にあってもよく、第1部位22Aよりも低い位置にあってもよい。第1部位22A、第2部位22Bおよび接触部23のこのような配置関係によって、接触部23を床2に接触させた状態で第1部位22Aが下がると、第2部位22Bが上がるようになる。
【0028】
基部22の具体例を説明する。基部22は、接触部23を含む底部25と、底部25の第1端25Aから上に延びる交差延長部26と、を備える。交差延長部26は、底部25に対して交差するように立ち上がる。底部25の底面は平坦に構成される。交差延長部26の上端には、ヒンジ39を介して係合部30が回転可能に設けられる。底部25において第1端25Aと反対側の第2端25Bには、レバー部28が接続される。この例において、底部25において第2端25Bが第1部位22Aに該当する。交差延長部26の上端が第2部位22Bに該当する。
【0029】
接触部23は、底部25の底面において第2端25B付近に設けられる。接触部23は、床シート部6Aに接触する。また、接触部23は、防水シート施工補助治具20によって壁シート部6Bが引っ張られているときに床シート部6Aに接触する。具体的には、接触部23は、係合部30が壁シート部6Bに係合した状態でレバーに力が加えられることによってハンドル部21が傾けられたときに、床シート部6Aに接触する。このとき、床シート部6Aには、接触部23によって押圧される。このため、接触部23は、防水シート6にめり込まないように構成される。
【0030】
具体的には、
図4に示されるように、接触部23は、曲面に構成される。一例では、接触部23は、円弧に沿う面に構成される。接触部23において、接触部23の曲面と接触部23の側面との間の角は、面取り加工された面取り部24が設けられている。
【0031】
レバー部28は、把持される把持部29を有する。把持部29は、プラスチック、ゴム、または、布によって構成される。把持部29は、握りやすい形状に構成されてもよい。レバー部28において基部22から離れた先端部の近くに設けられる。本実施形態では、レバー部28は、係合部30よりも長くなるように構成される。
【0032】
[係合部]
係合部30は、壁シート部6Bに係合する。係合部30は、取付部31と、取付部31から延びる延長部32と、爪部36とを有する。
【0033】
取付部31は、基部22に回転可能に取り付けられる部分である。本実施形態では、取付部31は、ヒンジ39を介して基部22の交差延長部26に回転可能に取り付けられる。取付部31は、軸及び軸受を介して基部22の交差延長部26に回転可能に取り付けられてもよい。
【0034】
延長部32は、真っ直ぐに延びる第1延長部33と、第1延長部33の先から延びる第2延長部34とを有する。第2延長部34は、第2延長部34の先に向かうにつれてレバー部28から離れるように延びる。第2延長部34は、先端に向かって徐々に薄くなるように構成される。第2延長部34の先に、爪部36が設けられる。
【0035】
爪部36は、延長部32に設けられる。一例では、爪部36は、延長部32の先端に設けられる。爪部36は、壁シート部6Bに係合するように構成される。
【0036】
爪部36は、防水シート6において壁10に張り付けられる壁シート部6Bの上部に刺さるように構成される。具体的には、爪部36は、先端が尖っている複数の突起36Aを有する。
【0037】
[付勢部]
付勢部40は、レバー部28から係合部30が離れるように係合部30を付勢する。一例では、付勢部40は、レバー部28の下部と係合部30の中間部との間に配置される。付勢部40は、コイルばねによって構成される。付勢部40は、捩じりばねによって構成されてもよい。付勢部40は、板ばねによって構成されてもよい。
【0038】
[第1規制部]
第1規制部41は、レバー部28と係合部30との間の角度Aが第1角度A1以下となるように、レバー部28に対して係合部30の位置を規制する。
【0039】
第1規制部41によってレバー部28に対して係合部30の位置が規制されている状態においても、付勢部40は、レバー部28から係合部30が離れるように係合部30を付勢している。このため、第1規制部41によってレバー部28に対して係合部30の位置が規制されている状態では、レバー部28と係合部30との間の角度Aは、第1角度A1に維持される。
【0040】
第1規制部41は、レバー部28に対する係合部30の位置規制を解除可能に構成される。具体的は、第1規制部41は、フック42と、フック42が掛けられるフック係合部43とを備える。フック42およびフック係合部43の一方がレバー部28に設けられる。フック42およびフック係合部43の他方が係合部30に設けられる。
【0041】
[第2規制部]
第2規制部51は、レバー部28と係合部30との間の角度Aが第2角度A2以下となるように、レバー部28に対して係合部30の位置を規制する。第2角度A2は、第1角度A1よりも大きい。第2角度A2は、第3角度よりも小さい。第3角度は、第2規制部51が無い場合において、付勢部40が最も拡張したときのレバー部28と係合部30との間の角度である。第2規制部51によれば、第1規制部41による規制が解除されている状態において、レバー部28と係合部30との間の角度Aは、第2角度A2よりも大きくならない。
【0042】
一例では、第2規制部51は、ヒンジ39に内蔵される。第2規制部51は、ヒンジ39の一方の回転体に固定される扇形プレート52と、ヒンジ39の他方の回転体に固定されるピン53とを含む。扇形プレート52は、ピン53の係合によってヒンジ39の回転が規制される。これによって、レバー部28と係合部30との間の角度Aが第2角度A2以下の角度に制限される。
【0043】
[支持部材]
支持部材60は、壁10とレバー部28との間に配置される部材である。具体的には、支持部材60は、防水シート施工補助治具20の仮留状態において、壁10とレバー部28との間の距離が所定距離(以下、壁レバー間所定距離)よりも短くならないように壁10とレバー部28との間に配置される。仮留状態は、防水シート6の壁シート部6Bに爪部36が刺さり、かつ、防水シート施工補助治具20によって壁シート部6Bが引っ張られた状態である。
【0044】
一例では、支持部材60は、レバー部28に回転可能に取り付けられる。支持部材60は、壁10に接触する接触端部61を有する。具体的には、支持部材60の一方の端部がレバー部28に回転可に回転可能に取り付けられる。支持部材60の他方の端部には、接触端部61が設けられる。接触端部61は、弾性摩擦部62を有する。弾性摩擦部62は、ゴムによって構成される。この例において、壁レバー間所定距離は、レバー部28の回転軸部と壁10との間の距離と定義される。
【0045】
<防水シート施工方法>
図5~
図8を参照して、壁10に防水シート6の壁シート部6Bを張り付ける防水シート施工方法を説明する。
【0046】
防水シート施工方法は、壁10に防水シート6を張り付ける施工方法である。防水シート施工方法は、第1工程と、第2工程とを含む。第1工程では、壁10に壁シート部6Bを接触させる状態において、防水シート施工補助治具20によって、壁シート部6Bを仮留めする。第2工程では、壁10に、壁シート部6Bを固定する。第2工程では、タッカー70を用いて、ビスによって壁シート部6Bに壁シート部6Bを固定する。
【0047】
第1工程では、まず、防水シート6の壁シート部6Bをバルコニー1の壁10に沿うように接触させる。そして、水シート施工補助治具によって壁シート部6Bを仮留めする。
【0048】
以下、防水シート施工補助治具20を用いた仮留めの手順を説明する。
図5に示されるように、第1手順において、防水シート施工補助治具20を壁シート部6Bと床シート部6Aとの境界部分から所定距離だけ離れたところに配置する。
【0049】
次に、
図6に示されるように、第2手順において、壁シート部6Bを手で上に引っ張った状態で第1規制部41による規制を解除する。そうすると、付勢部40の力によって係合部30の爪部36が壁シート部6Bの上部に突き刺さる。
【0050】
次に、
図7に示されるように、第3手順において、レバー部28を壁10から離れる方向(以下、第1方向D1)に引く。そうすると、床シート部6Aに接触する接触部23を支点としてハンドル部21が回転する。このとい、基部22の交差延長部26が持ち上がるとともに、レバー部28と係合部30との間の角度Aが広がる。レバー部28をさらに傾けると、第2規制部51によって、レバー部28と係合部30との間の角度Aが第2角度A2に固定される。この状態でレバー部28を第1方向D1に引くと、さらに、係合部30が交差延長部26とともに上に移動する。そうすると、壁シート部6Bの上部は、係合部30によって引っ張り上げられる。これによって、壁シート部6Bが十分に伸張する。
【0051】
このとき、壁シート部6Bには、伸張に抗して、元の形状に戻ろうとする復元力が生じている。したがって、壁シート部6Bは、係合部30を下方に引く。レバー部28に加えている力を緩めると、壁シート部6Bの復元力によってレバー部28が壁10に近づく方向(以下、第2方向)に引かれる。
【0052】
そこで、
図8に示されるように、第4手順において、壁シート部6Bの復元力に抗するために、壁10とレバー部28との間に支持部材60を配置する。支持部材60は、壁シート部6Bが十分に伸張した状態において、壁10とレバー部28との間に配置される。そして、接触端部61の弾性摩擦部62が変形するように、支持部材60の接触端部61を壁10に押し当てる。これによって、壁10に対してレバー部28の位置が固定される。このため、レバー部28を引く力を緩めた状態でも、壁シート部6Bは、十分に伸張した状態で壁10に沿うように張られた状態のままに維持される。作業者は、壁シート部6Bにおいて所定間隔をおきに、この作業を繰り返す。このようにして、壁シート部6Bは、皺が少ない状態で、壁10に張られる。
【0053】
この後、第2工程において、作業者は、タッカー70を操作することによって、壁シート部6Bをビスで壁10に固定する。
【0054】
[本実施形態の作用]
防水シート施工補助治具20は、ハンドル部21と、防水シート6の壁シート部6Bに係合する係合部30と、を備える。ハンドル部21は、床2に接触する接触部23を含む基部22と、基部22から延びるレバー部28とを有する。係合部30は、壁シート部6Bの上部に刺さる爪部36と、を有する。
【0055】
この構成によれば、レバー部28に力が加えられると接触部23を支点としてハンドル部21が回転するとともに係合部30が上に移動する。これによって、係合部30に係合する防水シート6を伸張させることができる。このため、壁10に張られる防水シート6の皺を少なくできる。さらに、係合部30は、基部22に回転可能に設けられている。このため、係合部30が上に移動したときに、爪部36が防水シート6から外れ難い。したがって、このような構造によれば、爪部36が防水シート6から外れた場合のやり直し作業を少なくできる。
【0056】
[本実施形態の効果]
(1)防水シート施工補助治具20は、ハンドル部21と、防水シート6の壁シート部6Bに係合する係合部30とを備える。ハンドル部21は、床シート部6Aに接触する接触部23を含む基部22と、基部22から延びるレバー部28とを有する。係合部30は、取付部31と、取付部31から延びる延長部32と、壁シート部6Bの上部に刺さる爪部36と、を有する。
【0057】
この構成によれば、レバー部28に力が加えられると接触部23を支点としてハンドル部21が回転するとともに係合部30が上に移動する。これによって、係合部30に係合する防水シート6が伸張するため、壁10に張られる防水シート6の皺を少なくできる。
【0058】
(2)防水シート施工補助治具20は、レバー部28から係合部30が離れるように係合部30を付勢する付勢部40をさらに備える。この構成によれば、レバー部28に対して係合部30が付勢されるため、係合部30を壁シート部6Bに強く係合させることができる。
【0059】
(3)防水シート施工補助治具20は、第1規制部41をさらに備えてもよい。第1規制部41は、レバー部28と係合部30との間の角度Aが第1角度A1以下となるように、レバー部28に対して係合部30の位置を規制する。第1規制部41は、レバー部28に対する係合部30の位置規制を解除可能に構成される。
【0060】
この構成によれば、レバー部28と係合部30との間の角度Aが第1角度A1以下である状態に、係合部30の位置を維持できる。このため、係合部30の爪部36が壁シート部6Bに接触し難くなる。作業者の不注意に起因して係合部30の爪部36が壁シート部6Bに引っ掛かるといったことが少なくなるので、防水シート施工補助治具20を壁10から所定距離だけ離れた位置に配置し易くなる。
【0061】
(4)防水シート施工補助治具20は、第2規制部51をさらに備えてもよい。第2規制部51は、レバー部28と係合部30との間の角度Aが第1角度A1よりも大きい第2角度A2以下となるように、レバー部28に対して係合部30の位置を規制する。この構成によれば、レバー部28に加えられる力を係合部30に伝え易い。
【0062】
(5)防水シート施工補助治具20は、支持部材60をさらに備えてもよい。支持部材60は、防水シート施工補助治具20の仮留状態において、壁10とレバー部28との間の距離が所定距離よりも短くならないように壁10とレバー部28との間に配置される。この構成によれば、支持部材60が壁10とレバー部28との間の距離を所定距離のままに維持するため、防水シート施工補助治具20の仮留状態を維持できる。
【0063】
(6)支持部材60は、レバー部28に回転可能に取り付けられ、または、レバー部28に着脱可能に取り付けられる。この構成によれば、支持部材60はレバー部28に取り付けられるものであるため、支持部材60の紛失を抑制できる。
【0064】
(7)防水シート施工補助治具20において、基部22の接触部23は、曲面に構成される。この構成によれば、床シート部6Aに、防水シート施工補助治具20の使用の跡が残ることを抑制できる。
【0065】
(8)防水シート施工方法は、第1工程と、壁10に、壁シート部6Bを固定する第2工程と、を含む。第1工程では、床2から立ち上がる壁10に、防水シート6の一部である壁シート部6Bを接触させた状態において、防水シート施工補助治具20によって、壁シート部6Bを仮留めする。この構成によれば、壁10に防水シート6を張り付ける施工において、防水シート施工補助治具20を使用するため、防水シート6を壁10に張る際に、皺の発生を抑制できる。
【0066】
<変形例>
上記実施形態は、防水シート施工補助治具20および防水シート施工方法が取り得る形態の例示であり、その形態を制限することを意図していない。防水シート施工補助治具20および防水シート施工方法は、上記実施形態に例示された形態とは異なる形態を取り得る。その例は、実施形態の構成の一部を置換、変更、省略した形態、または、実施形態に新たな構成を付加した形態である。以下に実施形態の変形例を示す。
【0067】
図9に、基部22の変形例を示す。この変形例では、基部22において最下点に接触部23が設けられる。防水シート施工補助治具20がこのような構造の基部22を有する場合でも、実施形態の効果を奏する。
【0068】
・上記実施形態では、付勢部40は、レバー部28の下部と係合部30の中間部との間に配置されるが、付勢部40は、ヒンジ39に設けられてもよい。ヒンジ39の付勢部40はヒンジ39を開くように付勢する。このような構造によっても、付勢部40によって、レバー部28から係合部30が離れるように係合部30を付勢できる。
【0069】
・上記実施形態では、第2規制部51は、ヒンジ39に内蔵されているが、第2規制部51は、ヒンジ39の外に設けられてもよい。例えば、第2規制部51は、交差延長部26から突出するストッパとして構成されてもよい。ストッパは、レバー部28と係合部30との間の角度Aが第2角度A2となったときに、係合部30がストッパに当接するように構成される。これによって、レバー部28と係合部30との間の角度Aが第2角度A2以下の角度に制限される。
【0070】
・上記実施形態では、支持部材60は、レバー部28に回転可能に取り付けられるが、支持部材60は、レバー部28に着脱可能に取り付けられてもよい。例えば、支持部材60は、レバー部28に設けられるケースに収容されてもよい。
【0071】
・本実施形態では、床ユニット3の防水シート6をバルコニー1の壁10に張るときに、防水シート施工補助治具20が使用されているが、防水シート施工補助治具20が適用できる防水シート6の形態は、これに限定されない。例えば、既設の床2から壁10にかけて防水シート6を敷く場合にも、防水シート施工補助治具20を適用できる。
【0072】
・壁10のみに防水シート6を張る場合にも、防水シート施工補助治具20を適用できる。この場合、防水シート6の下端が壁10に固定される。その後、防水シート6を上に引っ張り上げるために、防水シート施工補助治具20を使用できる。
【0073】
・防水シート施工補助治具20において付勢部40は省略されてもよい。この場合、作業者が係合部30の爪部36を防水シート6に係合させる。
【0074】
本明細書は、次の技術を開示する。
[付記1]
付記1は、壁に防水シートを張り付ける張付作業を補助する防水シート施工補助治具である。防水シート施工補助治具は、ハンドル部と、前記防水シートにおいて前記壁に張り付けられる壁シート部に係合する係合部とを備える。前記ハンドル部は、前記壁に繋がる床に接触する接触部を含む基部と、前記基部から延びるレバー部とを有する。前記係合部は、前記基部に回転可能に取り付けられる取付部と、前記取付部から延びる延長部と、前記延長部に設けられて前記壁シート部の上部に刺さる爪部と、を有する。
【0075】
[付記2]
付記1に記載の防水シート施工補助治具において、前記レバー部から前記係合部が離れるように前記係合部を付勢する付勢部をさらに備える。
【0076】
[付記3]
付記2に記載の防水シート施工補助治具において、前記レバー部と前記係合部との間の角度が第1角度以下となるように、前記レバー部に対して前記係合部の位置を規制する第1規制部をさらに備える。前記第1規制部は、前記レバー部に対する前記係合部の位置規制を解除可能に構成される。
【0077】
[付記4]
付記3に記載の防水シート施工補助治具において、前記レバー部と前記係合部との間の角度が前記第1角度よりも大きい第2角度以下となるように、前記レバー部に対して前記係合部の位置を規制する第2規制部をさらに備える。
【0078】
[付記5]
付記2に記載の防水シート施工補助治具において、前記防水シート施工補助治具の仮留状態において、前記壁と前記レバー部との間の距離が所定距離よりも短くならないように前記壁と前記レバー部との間に配置される支持部材をさらに備える。前記仮留状態は、前記防水シートの前記壁シート部に前記爪部が刺さり、かつ、前記壁シート部が引っ張られた状態である。
【0079】
[付記6]
付記5に記載の防水シート施工補助治具において、前記支持部材は、前記レバー部に回転可能に取り付けられ、または、前記レバー部に着脱可能に取り付けられる。
【0080】
[付記7]
付記1に記載の防水シート施工補助治具において、前記基部の前記接触部は、曲面に構成される。
【0081】
[付記8]
付記8は、防水シート施工方法は、壁に防水シートを張り付ける防水シート施工方法である。防水シート施工方法は、第1工程と、第2工程とを含む。第1工程では、床から立ち上がる壁に、前記防水シートの一部である壁シート部を接触させた状態において、付記1~7のいずれか1つに記載の防水シート施工補助治具によって、前記壁シート部を仮留めする。第2工程では、前記壁に、前記壁シート部を固定する。
【符号の説明】
【0082】
A…角度、A1…第1角度、A2…第2角度、1…バルコニー、2…床、6…防水シート、6B…壁シート部、10…壁、20…防水シート施工補助治具、21…ハンドル部、22…基部、23…接触部、28…レバー部、30…係合部、31…取付部、32…延長部、36…爪部、40…付勢部、41…第1規制部、51…第2規制部、60…支持部材。
【要約】
【課題】防水シートの施工において皺の発生を抑制できる、防水シート施工補助治具および防水シート施工方を提供する。
【解決手段】防水シート施工補助治具20は、壁10に防水シート6を張り付ける張付作業を補助する。防水シート施工補助治具20は、ハンドル部21と、防水シート6において壁10に張り付けられる壁シート部6Bに係合する係合部30とを備える。ハンドル部21は、壁10に繋がる床2に接触する接触部23を含む基部22と、基部22から延びるレバー部28とを有する。係合部30は、基部22に回転可能に取り付けられる取付部と、取付部から延びる延長部と、延長部に設けられて壁シート部6Bの上部に刺さる爪部36と、を有する。
【選択図】
図7