(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-20
(45)【発行日】2025-01-28
(54)【発明の名称】積層型LCフィルタ
(51)【国際特許分類】
H03H 7/09 20060101AFI20250121BHJP
H03H 7/01 20060101ALI20250121BHJP
【FI】
H03H7/09 Z
H03H7/01 B
(21)【出願番号】P 2023502462
(86)(22)【出願日】2022-02-22
(86)【国際出願番号】 JP2022007431
(87)【国際公開番号】W WO2022181651
(87)【国際公開日】2022-09-01
【審査請求日】2023-06-19
(31)【優先権主張番号】P 2021031266
(32)【優先日】2021-02-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小川 圭介
【審査官】福田 正悟
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2012/066873(WO,A1)
【文献】国際公開第2012/066946(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/169354(WO,A1)
【文献】国際公開第2012/077498(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/100918(WO,A1)
【文献】特開2013-128232(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03H 7/09
H03H 7/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力端子から出力端子へ信号を伝達する積層型LCフィルタであって、
複数の誘電体層が積層された積層体と、
前記積層体に配置され、互いに電磁界結合する複数のLC並列共振器と、を備え、
前記積層体は、
前記誘電体層の層間に形成された第1の線路状導体パターンと、第2の線路状導体パターンと、第3の線路状導体パターンと、
前記誘電体層の層間に形成された第1のキャパシタ導体パターンと、第2のキャパシタ導体パターンと、第3のキャパシタ導体パターンと、
前記誘電体層の層間に形成された少なくとも1つのグランド導体パターンと、を含み、
前記複数のLC並列共振器は、第1のLC並列共振器と、第2のLC並列共振器と、第3のLC並列共振器と、を含み、
前記第1のLC並列共振器は、第1の線路状導体パターンと、前記第1の線路状導体パターンと前記第1のキャパシタ導体パターンとを接続する第1の開放ビア導体と、前記第1の線路状導体パターンと前記グランド導体パターンとを接続する第1の短絡ビア導体と、を含み、
前記第2のLC並列共振器は、第2の線路状導体パターンと、前記第2の線路状導体パターンと前記第2のキャパシタ導体パターンとを接続する第2の開放ビア導体と、前記第2の線路状導体パターンと前記グランド導体パターンとを接続する第2の短絡ビア導体と、を含み、
前記第3のLC並列共振器は、第3の線路状導体パターンと、前記第3の線路状導体パターンと前記第3のキャパシタ導体パターンとを接続する第3の開放ビア導体と、前記第3の線路状導体パターンと前記グランド導体パターンとを接続する第3の短絡ビア導体と、を含み、
積層方向から前記積層体を透視して見たとき、
前記第1の開放ビア導体は、前記第2の短絡ビア導体よりも前記第2の開放ビア導体と距離が近く、前記第3の短絡ビア導体よりも前記第3の開放ビア導体と距離が近い位置に配置され、
前記第2の開放ビア導体は、前記第3の短絡ビア導体よりも前記第3の開放ビア導体と距離が近い位置に配置され、
少なくとも1つの前記LC並列共振器において、
当該LC並列共振器のキャパシタを構成する、前記キャパシタ導体パターンと前記グランド導体パターンとの間の前記誘電体層の層間に、当該キャパシタの容量を調整する調整用キャパシタ導体パターンが形成され、
前記調整用キャパシタ導体パターンが、ビア導体によって、前記キャパシタ導体パターンおよび前記グランド導体パターンのいずれか一方に直接接続され
、
前記調整用キャパシタ導体パターンが形成された前記誘電体層の前記層間と同一の前記誘電体層の層間に、
少なくとも1つの前記LC並列共振器と、等価回路上において離れた、少なくとも1つの他の前記LC並列共振器とを、容量結合によって飛び越し結合させる、飛び越し結合用キャパシタ導体パターンが形成された、
積層型LCフィルタ。
【請求項2】
少なくとも1つの前記LC並列共振器の前記短絡ビア導体と、少なくとも1つ他の前記LC並列共振器の前記短絡ビア導体とが接続され、当該接続点と前記グランド導体パターンとの間が、共通短絡ビア導体で接続された、
請求項
1に記載された積層型LCフィルタ。
【請求項3】
前記積層体は、実装側の主面と非実装側の主面とを有し、
前記第1の線路状導体パターン、前記第2の線路状導体パターン、および、前記第3の線路状導体パターンと、前記非実装側の主面との間の、前記積層体層間に、シールド導体パターンが形成され、
前記シールド導体パターンは、シールド用ビア導体を経由して、前記グランド導体パターンと接続された、
請求項1
または2に記載された積層型LCフィルタ。
【請求項4】
前記シールド導体パターンは、前記シールド用ビア導体を経由して、直接に、前記グランド導体パターンと接続された、
請求項
3に記載された積層型LCフィルタ。
【請求項5】
前記積層体を高さ方向に透視したとき、
前記第1の開放ビア導体、前記第2の開放ビア導体、前記第3の開放ビア導体が、それぞれ、前記積層体の中央近傍に配置され、
前記第1の短絡ビア導体、前記第2の短絡ビア導体、前記第3の短絡ビア導体が、それぞれ、前記積層体の周縁近傍に配置され、
前記第1の線路状導体パターン、前記第2の線路状導体パターン、前記第3の線路状導体パターンが、それぞれ、前記中央近傍から前記周縁近傍に向って、放射状に配置された、
請求項1ないし
4のいずれか1項に記載された積層型LCフィルタ。
【請求項6】
前記複数のLC並列共振器は、第4のLC並列共振器を更に含み、
前記第4のLC並列共振器は、第4の線路状導体パターンと、第4のキャパシタ導体パターンと、前記第4の線路状導体パターンと前記第4のキャパシタ導体パターンとを接続する第4の開放ビア導体と、前記第4の線路状導体パターンと前記グランド導体パターンとを接続する第4の短絡ビア導体と、を含み、
前記積層体を高さ方向に透視したとき、
前記第1の開放ビア導体、前記第2の開放ビア導体、前記第3の開放ビア導体、前記第4の開放ビア導体が、それぞれ、前記積層体の前記中央近傍に配置され、
前記第1の短絡ビア導体、前記第2の短絡ビア導体、前記第3の短絡ビア導体、前記第4の短絡ビア導体が、それぞれ、前記積層体の前記周縁近傍に配置され、
前記第1の線路状導体パターン、前記第2の線路状導体パターン、前記第3の線路状導体パターン、前記第4の線路状導体パターンが、それぞれ、前記中央近傍から前記周縁近傍に向って、放射状に配置された、
請求項
5に記載された積層型LCフィルタ。
【請求項7】
前記第1の線路状導体パターンと、前記第2の線路状導体パターンとが、前記積層体の異なる層間に配置された、
請求項1ないし
6のいずれか1項に記載された積層型LCフィルタ。
【請求項8】
前記第1の線路状導体パターンと前記第4の線路状導体パターンとが、前記積層体の同じ層間に配置され、
前記第2の線路状導体パターンと前記第3の線路状導体パターンとが、前記積層体の同じ層間に配置され、
前記第1の線路状導体パターンおよび前記第4の線路状導体パターンと、前記第2の線路状導体パターンおよび前記第3の線路状導体パターンとが、前記積層体の異なる層間に配置された、
請求項
6に記載された積層型LCフィルタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の誘電体層が積層された積層体の内部に、複数のLC並列共振器が形成された、積層型LCフィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
積層型LCフィルタが、種々の電子機器に広く使用されている。積層型LCフィルタによって、バンドパスフィルタ、ローパスフィルタ、ハイパスフィルタなど、種々のフィルタが構成される。
【0003】
一般に、フィルタにおいては、通過帯域の外側に極を形成し、良好な通過帯域特性を得る。たとえば、標準的なバンドパスフィルタであれば、通過帯域よりも低周波側と高周波側とに、それぞれ、同じ程度の大きさの減衰量を持つ極を形成することが多い。
【0004】
しかしながら、積層型LCフィルタが使用される電子機器の仕様から、フィルタの通過帯域特性に、標準的な通過帯域特性とは異なる特徴をもたせることが求められる場合がある。たとえば、バンドパスフィルタにおいて、低周波側の極の減衰量を、高周波側の極の減衰量よりも、大きくすることが求められる場合がある。ただし、これは一例であり、これに限らず、通過帯域特性に種々の特徴が求められる場合がある。
【0005】
このような場合、たとえば、等価回路上において離れた特定のLC並列共振器どうしを、容量結合によって飛び越し結合させるなどして、所望の通過帯域特性を得る。
【0006】
本発明にとって参考となる積層型LCフィルタが、文献1(特許第5549744号公報)に開示されている。なお、積層型LCフィルタは、LC並列共振器のインダクタが、いわゆるループインダクタによって構成されている。すなわち、積層体のある層間に形成された線路状導体パターンの両端に、それぞれ、誘電体層を貫通して形成されたビア導体を接続することによって、インダクタがループインダクタに形成されている。
【0007】
文献1の積層型LCフィルタは、平面方向の大きさが、比較的、大きい誘電体層が積層されて積層体が構成されている。また、文献1の積層型LCフィルタは、比較的、多数の誘電体層が積層されて積層体が構成されている。そのため、文献1の積層型LCフィルタは、積層体の内部に、新たに飛び越し結合用導体パターンを設けることが容易であり、等価回路上において離れた特定のLC並列共振器どうしを容量結合によって飛び越し結合させ、所望の通過帯域特性を得ることが容易であった。なお、文献1の積層型LCフィルタにおいては、各LC並列共振器の各ループインダクタは、積層体を高さ方向に透視したとき、長さ方向において、線路状導体パターンとグランド導体パターンとを接続する短絡ビア導体が積層体の中央寄りに配置され、線路状導体パターンとキャパシタ導体パターンとを接続する開放ビア導体が積層体の外寄りに配置されている。
【0008】
しかしながら、近年、電子機器の小型化に伴い、使用される積層型LCフィルタを含めた電子部品にも小型化が求められている。たとえば、積層型LCフィルタにおいても、誘電体層の平面方向の大きさを従来に比べて小さくし、積層される誘電体層の数を従来に比べて少なくすることが求められている。そして、そのような積層体の内部に、必要な数のLC並列共振器を形成し、しかも通過帯域特性を含めた特性を劣化させないことが求められている。
【0009】
小型化のはかられた積層型LCフィルタが、文献2(WO2007/119356A1公報)に開示されている。この積層型LCフィルタも、各LC並列共振器のインダクタが、積層体のある層間に形成された線路状導体パターンの両端に、それぞれビア導体を接続した構造からなる、ループインダクタによって形成されている。
【0010】
文献2の積層型LCフィルタは、積層体の内部に、各LC並列共振器のインダクタのループインダクタの線路状導体パターンが、平行に並べて配置されている。たとえば、4段のバンドパスフィルタであれば、第1段~第4段の各共振器のインダクタのループインダクタの線路状導体パターンが、平行に並べて配置されている。
【0011】
この結果、文献2の積層型LCフィルタは、誘電体層の平面方向の大きさを従来に比べて小さくし、積層される誘電体層の数を従来に比べて少なくして、積層体を小さくしているにもかかわらず、積層体の内部に必要な数のLC並列共振器が形成され、必要な回路が構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】特許第5549744号公報
【文献】WO2007/119356A1公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
文献2の積層型LCフィルタは、等価回路上において離れた特定のLC並列共振器どうしを、容量結合によって飛び越し結合させ、通過帯域特性を調整することが難しかった。
【0014】
すなわち、たとえば、新たに飛び越し結合用導体パターンを追加し、1段目のLC並列共振器と3段目のLC並列共振器とを、容量結合によって飛び越し結合させ、通過帯域特性を調整しようとした場合、越し結合用導体パターンは2段目のLC並列共振器の近傍を通って配置されることになる。この結果、1段目のLC並列共振器と3段目のLC並列共振器とが新たに飛び越し結合されるだけではなく、1段目のLC並列共振器と2段目のLC並列共振器の結合状態や、2段目のLC並列共振器と3段目のLC並列共振器の結合状態までもが変化してしまい、基本的な通過帯域特性そのものが崩れてしまうという問題があった。すなわち、飛び越し結合を、独立制御することが難しかった。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は上述した従来の課題を解決するためになされたものであり、その手段として本発明の一実施態様にかかる積層型LCフィルタは、入力端子から出力端子へ信号を伝達する積層型LCフィルタであって、複数の誘電体層が積層された積層体と、積層体に配置され、互いに電磁界結合する複数のLC並列共振器と、を備え、積層体は、誘電体層の層間に形成された第1の線路状導体パターンと、第2の線路状導体パターンと、第3の線路状導体パターンと、誘電体層の層間に形成された第1のキャパシタ導体パターンと、第2のキャパシタ導体パターンと、第3のキャパシタ導体パターンと、誘電体層の層間に形成された少なくとも1つのグランド導体パターンと、を含み、複数のLC並列共振器は、第1のLC並列共振器と、第2のLC並列共振器と、第3のLC並列共振器と、を含み、第1のLC並列共振器は、第1の線路状導体パターンと、第1の線路状導体パターンと第1のキャパシタ導体パターンとを接続する第1の開放ビア導体と、第1の線路状導体パターンとグランド導体パターンとを接続する第1の短絡ビア導体と、を含み、第2のLC並列共振器は、第2の線路状導体パターンと、第2の線路状導体パターンと第2のキャパシタ導体パターンとを接続する第2の開放ビア導体と、第2の線路状導体パターンとグランド導体パターンとを接続する第2の短絡ビア導体と、を含み、第3のLC並列共振器は、第3の線路状導体パターンと、第3の線路状導体パターンと第3のキャパシタ導体パターンとを接続する第3の開放ビア導体と、第3の線路状導体パターンとグランド導体パターンとを接続する第3の短絡ビア導体と、を含み、 積層方向から積層体を透視して見たとき、第1の開放ビア導体は、第2の短絡ビア導体よりも第2の開放ビア導体と距離が近く、第3の短絡ビア導体よりも第3の開放ビア導体と距離が近い位置に配置され、第2の開放ビア導体は、第3の短絡ビア導体よりも第3の開放ビア導体と距離が近い位置に配置されたものとする。
【発明の効果】
【0016】
本発明の一実施態様にかかる積層型LCフィルタは、第1の開放ビア導体が、第2の短絡ビア導体よりも第2の開放ビア導体と距離が近く、第3の短絡ビア導体よりも第3の開放ビア導体と距離が近い位置に配置され、第2の開放ビア導体が、第3の短絡ビア導体よりも第3の開放ビア導体と距離が近い位置に配置されており、各LC並列共振器のキャパシタのキャパシタ導体パターン及び/又は開放ビア導体が積層体の中央近傍に集めて設けられているため、等価回路上において離れたLC並列共振器どうしを容量結合によって飛び越し結合させることが容易である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】第1実施形態にかかる積層型LCフィルタ100の分解斜視図である。
【
図2】積層型LCフィルタ100の等価回路図である。
【
図3】積層型LCフィルタ100の説明図(透視平面図)である。
【
図4】積層型LCフィルタ100の周波数特性を示すグラフである。
【
図5】積層型LCフィルタ100の第1変形例にかかる積層型LCフィルタ110を示す分解斜視図である。
【
図6】積層型LCフィルタ100の第2変形例にかかる積層型LCフィルタ120を示す分解斜視図である。
【
図7】積層型LCフィルタ100の第3変形例にかかる積層型LCフィルタ130を示す分解斜視図である。
【
図8】第2実施形態にかかる積層型LCフィルタ200の分解斜視図である。
【
図9】積層型LCフィルタ200の等価回路図である。
【
図10】積層型LCフィルタ200の説明図(透視平面図)である。
【
図11】積層型LCフィルタ200の周波数特性を示すグラフである。
【
図12】積層型LCフィルタ200の第1変形例にかかる積層型LCフィルタ210を示す分解斜視図である。
【
図13】積層型LCフィルタ200の第2変形例にかかる積層型LCフィルタ220を示す分解斜視図である。
【
図14】積層型LCフィルタ200の第3変形例にかかる積層型LCフィルタ230を示す分解斜視図である。
【
図15】
図15(A)は、第3実施形態にかかる積層型LCフィルタ300の説明図(透視平面図)である。
図15(B)は、積層型LCフィルタ300の等価回路図である。
【
図16】
図16(A)は、第3実施形態にかかる積層型LCフィルタ400の説明図(透視平面図)である。
図16(B)は、積層型LCフィルタ400の等価回路図である。
【
図17】第5実施形態にかかる積層型LCフィルタ500の分解斜視図である。
【
図18】
図18(A)は、積層型LCフィルタ500の要部分解斜視図である。
図18(B)は、積層型LCフィルタ500の説明図(透視平面図)である。
【
図19】
図19(A)は、積層型LCフィルタ500の第1変形例にかかる積層型LCフィルタ510の要部分解斜視図である。
図19(B)は、積層型LCフィルタ510の説明図(透視平面図)である。
【
図20】
図20(A-1)、(B-1)は、実験1の説明図である。
図20(A-2)、(B-2)は、実験1の特性図である。
【
図21】
図21(A)は、積層型LCフィルタ500の第2変形例にかかる積層型LCフィルタ530の要部分解斜視図である。
図21(B)は、積層型LCフィルタ500の第3変形例にかかる積層型LCフィルタ540の要部分解斜視図である。
【
図22】第6実施形態にかかる積層型LCフィルタ600の要部分解斜視図である。
【
図23】
図23(A)は、積層型LCフィルタ600の要部分解斜視図である。
図23(B)は、積層型LCフィルタ600の説明図(透視平面図)である。
【
図24】
図24(A)は、積層型LCフィルタ600の第1変形例にかかる積層型LCフィルタ610の要部分解斜視図である。
図24(B)は、積層型LCフィルタ610の説明図(透視平面図)である。
【
図25】
図20(A-1)、(B-1)は、実験2の説明図である。
図20(A-2)、(B-2)は、実験2の特性図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面とともに、本発明を実施するための形態について説明する。
【0019】
なお、各実施形態は、本発明の実施の形態を例示的に示したものであり、本発明が実施形態の内容に限定されることはない。また、異なる実施形態に記載された内容を組合せて実施することも可能であり、その場合の実施内容も本発明に含まれる。また、図面は、明細書の理解を助けるためのものであって、模式的に描画されている場合があり、描画された構成要素または構成要素間の寸法の比率が、明細書に記載されたそれらの寸法の比率と一致していない場合がある。また、明細書に記載されている構成要素が、図面において省略されている場合や、個数を省略して描画されている場合などがある。
【0020】
[第1実施形態:積層型LCフィルタ100]
図1、
図2、
図3に、第1実施形態にかかる積層型LCフィルタ100を示す。ただし、
図1は、積層型LCフィルタ100の分解斜視図である。
図2は、積層型LCフィルタ100の等価回路図である。
図3は、積層型LCフィルタ100の説明図(透視平面図)である。
【0021】
積層型LCフィルタ100は、バンドパスフィルタである。ただし、本発明の積層型LCフィルタは、バンドパスフィルタには限られず、ローパスフィルタや、ハイパスフィルタなどであってもよい。
【0022】
積層型LCフィルタ100は、積層体1を備える。
【0023】
積層体1は、後述する誘電体層1a~1gが積層された高さ方向Zと、高さ方向Zに直行する幅方向Wと、高さ方向Zおよび幅方向Wの両方と直交する長さ方向Lとを有している。なお、本実施形態においては、幅方向Wの長さをa、長さ方向Lの長さをbとしたとき、a<bとなっているが、これに代えて、a=bであってもよい。
【0024】
積層体1は、誘電体層1a~1gが下から順に積層されたものからなる。なお、
図1では、誘電体層1a~1gの厚みを均一に示してしているが、実際には厚みに差がある場合がある。この場合には、たとえば、厚みの小さい誘電体層を1層の誘電体シートで構成し、厚みの大きい誘電体層を複数の誘電体シートで構成する。積層体1(誘電体層1a~1g)の材質は任意であり、種々の誘電体材料を使用することができる。
【0025】
以下に、各誘電体層1a~1gの各構成について説明する。
【0026】
誘電体層1aの下側主面に、第1の入出力端子T1、第2の入出力端子T2、2つのグランド端子Tg、2つのダミー端子Tdが形成されている。ダミー端子Tdとは、積層型LCフィルタ100を基板などに実装するにあたり、電気的な接続には使用せず、専ら実装強度を向上させるために使用する電極である。なお、
図1においては、作図上の理由により、入出力端子T1、T2、グランド端子Tg、ダミー端子Tdを、誘電体層1aの下側主面から離して示している。
【0027】
誘電体層1aの上下主面間を貫通して、ビア導体2a、2b、2c、2dが形成されている。
【0028】
誘電体層1aの上側主面に、グランド導体パターン3が形成されている。グランド導体パターン3は、2本のビア導体2b、2cによって、2つのグランド端子Tgに、それぞれ接続されている。
【0029】
誘電体層1bの上下主面間を貫通して、上述したビア導体2a、2dに加えて、新たなビア導体2e、2f、2g、2hが形成されている。
【0030】
誘電体層1aの上側主面に、飛び越し結合用キャパシタ導体パターン4aが形成されている。
【0031】
誘電体層1cの上下主面間を貫通して、上述したビア導体2a、2d、2e、2f、2g、2hが形成されている。
【0032】
誘電体層1cの上側主面に、3つのキャパシタ導体パターン5a、5b、5cが形成されている。キャパシタ導体パターン5aが、ビア導体2aによって、第1の入出力端子T1に接続されている。キャパシタ導体パターン5cが、ビア導体2dによって、第2の入出力端子T2に接続されている。
【0033】
誘電体層1dの上下主面間を貫通して、上述したビア導体2e、2f、2g、2hに加えて、新たなビア導体2i、2j、2kが形成されている。
【0034】
誘電体層1dの上側主面に、結合用キャパシタ導体パターン6a、6bが形成されている。
【0035】
誘電体層1eの上下主面間を貫通して、上述したビア導体2e、2f、2g、2h、2i、2j、2kが形成されている。
【0036】
誘電体層1eの上側主面に、線路状導体パターン7a、7b、7cが形成されている。線路状導体パターン7aの一端が、ビア導体2eによって、グランド導体パターン3に接続されている。線路状導体パターン7aの他端が、ビア導体2iによって、キャパシタ導体パターン5aに接続されている。線路状導体パターン7bの一端が、ビア導体2fによって、グランド導体パターン3に接続されている。線路状導体パターン7bの他端が、ビア導体2hによって、グランド導体パターン3に接続されている。線路状導体パターン7bの中央近傍部分が、ビア導体2jによって、キャパシタ導体パターン5bに接続されている。線路状導体パターン7cの一端が、ビア導体2gによって、グランド導体パターン3に接続されている。線路状導体パターン7cの他端が、ビア導体2kによって、キャパシタ導体パターン5cに接続されている。
【0037】
誘電体層1fの上下主面間を貫通して、上述したビア導体2e、2f、2g、2h、2i、2j、2kが形成されている。
【0038】
誘電体層1fの上側主面に、線路状導体パターン7d、7e、7fが形成されている。線路状導体パターン7d、7e、7fは、上述した線路状導体パターン7a、7b、7cと、それぞれ上下重なるように形成されている。すなわち、積層型LCフィルタ100では、インダクタのQを向上させるために、線路状導体パターンを、それぞれ2層に重ねて形成している。なお、電気回路的には、線路状導体パターン7d、7e、7fは省略してもよい。
【0039】
線路状導体パターン7dの一端が、ビア導体2eによって、グランド導体パターン3に接続されている。線路状導体パターン7dの他端が、ビア導体2iによって、キャパシタ導体パターン5aに接続されている。線路状導体パターン7eの一端が、ビア導体2fによって、グランド導体パターン3に接続されている。線路状導体パターン7eの他端が、ビア導体2hによって、グランド導体パターン3に接続されている。線路状導体パターン7eの中央近傍部分が、ビア導体2jによって、キャパシタ導体パターン5bに接続されている。線路状導体パターン7fの一端が、ビア導体2gによって、グランド導体パターン3に接続されている。線路状導体パターン7fの他端が、ビア導体2kによって、キャパシタ導体パターン5cに接続されている。
【0040】
誘電体層1gは保護層であり、ビア導体や導体パターンは形成されていない。
【0041】
入出力端子T1、T2、グランド端子Tg、ダミー端子Td、ビア導体2a~2k、グランド導体パターン3、飛び越し結合用キャパシタ導体パターン4a、キャパシタ導体パターン5a~5c、結合用キャパシタ導体パターン6a、6b、線路状導体パターン7a~7fの材質は、それぞれ任意であり、種々の導電性材料を使用することができる。
【0042】
積層型LCフィルタ100は、
図2に示す等価回路を備えている。
【0043】
積層型LCフィルタ100は、第1の入出力端子T1と、第2の入出力端子T2と備える。第1の入出力端子T1と第2の入出力端子T2との間に、信号ラインSLが形成されている。
【0044】
積層型LCフィルタ100は、第1の入出力端子T1と第2入出力端子T2とを繋ぐ信号ラインSLに、キャパシタC12とキャパシタC23とが、順に接続されている。また、積層型LCフィルタ100は、第1の入出力端子T1と第2入出力端子T2との間に、キャパシタC12およびキャパシタC23と並列に、キャパシタC13が接続されている。
【0045】
積層型LCフィルタ100は、第1~第3の3つのLC並列共振器LC1、LC2、LC3を備えている。第1のLC並列共振器LC1は、インダクタL1とキャパシタC1が並列に接続されたものからなる。第2のLC並列共振器LC2は、インダクタL2とキャパシタC2が並列に接続されたものからなる。第3のLC並列共振器LC3は、インダクタL3とキャパシタC3が並列に接続されたものからなる。
【0046】
第1のLC並列共振器LC1は、一端が、信号ラインSLの第1の入出力端子T1とキャパシタC12との間の部分に接続され、他端が、グランド端子Tgに接続されている。第2のLC並列共振器LC2は、一端が、信号ラインSLのキャパシタC12とキャパシタC23との間の部分に接続され、他端が、グランド端子Tgに接続されている。第3のLC並列共振器LC3は、一端が、信号ラインSLのキャパシタC23と第2の入出力端子T2との間の部分に接続され、他端が、グランド端子Tgに接続されている。
【0047】
次に、第1~第3のLC並列共振器LC1、LC2、LC3の主な結合関係について説明する。
【0048】
第1のLC並列共振器LC1と第2のLC並列共振器LC2とが、インダクタL1とインダクタL2との磁気結合によって、磁気結合している。第2のLC並列共振器LC2と第3のLC並列共振器LC3とが、インダクタL2とインダクタL3との磁気結合によって、磁気結合している。
【0049】
第1のLC並列共振器LC1と第2のLC並列共振器LC2とが、キャパシタC12の容量によって、容量結合している。第2のLC並列共振器LC2と第3のLC並列共振器LC3とが、キャパシタC23の容量によって、容量結合している。第1のLC並列共振器LC1と第3のLC並列共振器LC3とが、キャパシタC13の容量によって、飛び越し容量結合している。
【0050】
以上の等価回路および結合により、積層型LCフィルタ100は、第1の入出力端子T1と第2入出力端子T2との間に、3段のバンドパスフィルタが構成されている。
【0051】
次に、積層型LCフィルタ100の等価回路と、構造との関係について説明する。
【0052】
第1のLC並列共振器LC1のキャパシタC1は、キャパシタ導体パターン5aと、グランド導体パターン3との間の容量によって構成されている。なお、キャパシタ導体パターン5aは、ビア導体2aによって、第1の入出力端子T1に接続されている。ビア導体第1のLC並列共振器LC1のインダクタL1は、キャパシタ導体パターン5aを起点として、ビア導体2i、線路状導体パターン7a、7d、ビア導体2eを経由し、グランド導体パターン3を終点とする、ループインダクタによって形成されている。
【0053】
第2のLC並列共振器LC2のキャパシタC2は、キャパシタ導体パターン5bと、グランド導体パターン3との間の容量によって構成されている。第2のLC並列共振器LC2のインダクタL2は、キャパシタ導体パターン5bを起点として、ビア導体2j、線路状導体パターン7b、7eを経由し、さらに、ここで2つの経路に別れ、ビア導体2fと、ビア導体2hとを経由し、グランド導体パターン3を終点とする、ループインダクタによって形成されている。
【0054】
第3のLC並列共振器LC3のキャパシタC3は、キャパシタ導体パターン5cと、グランド導体パターン3との間の容量によって構成されている。第3のLC並列共振器LC3のインダクタL3は、キャパシタ導体パターン5cを起点として、ビア導体2k、線路状導体パターン7c、7f、ビア導体2gを経由し、グランド導体パターン3を終点とする、ループインダクタによって形成されている。なお、キャパシタ導体パターン5cは、ビア導体2dによって、第2の入出力端子T2に接続されている。
【0055】
キャパシタC12は、直列に接続された、キャパシタ導体パターン5aと結合用キャパシタ導体パターン6aとの間の容量と、結合用キャパシタ導体パターン6aとキャパシタ導体パターン5bとの間の容量とによって構成されている。
【0056】
キャパシタC23は、直列に接続された、キャパシタ導体パターン5bと結合用キャパシタ導体パターン6bとの間の容量と、結合用キャパシタ導体パターン6bとキャパシタ導体パターン5cとの間の容量とによって構成されている。
【0057】
キャパシタC13は、直列に接続された、キャパシタ導体パターン5aと飛び越し結合用キャパシタ導体パターン4aとの間の容量と、飛び越し結合用キャパシタ導体パターン4aとキャパシタ導体パターン5cとの間の容量とによって構成されている。
【0058】
以上の構造、等価回路からなる積層型LCフィルタ100は、積層体1を高さ方向Zに透視したとき、第1のLC並列共振器LC1のループインダクタであるインダクタL1、第2のLC並列共振器LC2のループインダクタであるインダクタL2、第3のLC並列共振器LC3のループインダクタであるインダクタL3の全てにおいて、開放ビア導体が積層体1の長さ方向Lの中央寄りに配置され、短絡ビア導体が積層体1の長さ方向Lの外寄りに配置されている。なお、開放ビア導体とはキャパシタ導体パターンに接続されたビア導体をいい、短絡ビア導体とはグランド導体パターンに接続されたビア導体をいう。
【0059】
上述したとおり、第1のLC並列共振器LC1のループインダクタであるインダクタL1は、キャパシタ導体パターン5aを起点として、ビア導体2i、線路状導体パターン7a、7d、ビア導体2eを経由し、グランド導体パターン3を終点とする、ループインダクタによって形成されている。このうち、ビア導体2iが、インダクタL1の開放ビア導体である。ビア導体2eが、インダクタL1の短絡ビア導体である。
【0060】
第2のLC並列共振器LC2のループインダクタであるインダクタL2は、キャパシタ導体パターン5bを起点として、ビア導体2j、線路状導体パターン7b、7eを経由し、さらに、ここで2つの経路に別れ、ビア導体2fと、ビア導体2hとを経由し、グランド導体パターン3を終点とする、ループインダクタによって形成されている。このうち、ビア導体2jが、インダクタL2の開放ビア導体である。ビア導体2f、2hが、インダクタL2の短絡ビア導体である。
【0061】
第3のLC並列共振器LC3のループインダクタであるインダクタL3は、キャパシタ導体パターン5cを起点として、ビア導体2k、線路状導体パターン7c、7f、ビア導体2gを経由し、グランド導体パターン3を終点とする、ループインダクタによって形成されている。このうち、ビア導体2kが、インダクタL3の開放ビア導体である。ビア導体2gが、インダクタL1の短絡ビア導体である。
【0062】
図3に、インダクタL1~L3の開放ビア導体、短絡ビア導体を、それぞれ示す。
図3から分かるように、積層型LCフィルタ100は、第1~第3のLC並列共振器LC1、LC2、LC3の全てのインダクタL1、L2、L3において、開放ビア導体を長さ方向Lの中央寄りに配置し、短絡ビア導体を長さ方向Lの外寄りに配置されている。また、別の見方をすれば、インダクタL1の開放ビア導体は、インダクタL2の短絡ビア導体よりもインダクタL2の開放ビア導体と距離が近く、インダクタL3の短絡ビア導体よりもインダクタL3の開放ビア導体と距離が近い位置に配置され、インダクタL2の開放ビア導体は、インダクタL3の短絡ビア導体よりもインダクタL3の開放ビア導体と距離が近い位置に配置されている。この結果、開放ビア導体が積層体1の中央寄りに配置されている。さらに、この結果、積層型LCフィルタ100では、第1~第3のLC並列共振器LC1、LC2、LC3のキャパシタ導体パターン5a、5b、5cも、積層体1の中央寄りに配置されている。なぜなら、開放ビア導体は、キャパシタ導体パターンに接続されるビア導体だからである。
【0063】
LC並列共振器のキャパシタ導体パターンが、積層体の中央寄りに配置されていることは、等価回路上で離れたLC並列共振器どうしの、飛び越し結合(飛び越し容量結合)を容易にする。一般的に、飛び越し容量結合は、飛び越し結合をさせたい2つのLC並列共振器のキャパシタ導体パターンとキャパシタ導体パターンとの間に、キャパシタを挿入することによっておこなうからである。より具体的には、飛び越し結合をさせたい2つのLC並列共振器のキャパシタ導体パターンとキャパシタ導体パターンとの間に、飛び越し結合用キャパシタ導体パターンを設けることによって、飛び越し容量結合させることができるからである。
【0064】
積層型LCフィルタ100では、飛び越し結合用キャパシタ導体パターン4aを設けることによって、第1のLC並列共振器LC1と第3のLC並列共振器LC3とを飛び越し結合(飛び越し容量結合)させている。この結果、積層型LCフィルタ100は、所望の周波数特性(通過帯域特性)に調整されている。
【0065】
図4に、積層型LCフィルタ100の周波数特性を示す。
図4から分かるように、各LC並列共振器の各開放ビア導体を積層体1の中央寄りに配置することによって低域側に2段の減衰極を容易に形成することができる。また、
図4では低域側に2段の減衰極が形成されているが、容量結合や磁気結合を調整することで、高周波側に2段の減衰極を形成することも可能である。
【0066】
[第1実施形態の第1変形例:積層型LCフィルタ110]
図5に、第1実施形態の第1変形例にかかる積層型LCフィルタ110を示す。ただし、
図5は、積層型LCフィルタ110の分解斜視図である。
【0067】
第1変形例にかかる積層型LCフィルタ110は、上述した積層型LCフィルタ100に、新たな構成を追加した。具体的には、誘電体層1bの上下主面間を貫通して、新たなビア導体12a、12b、12cを形成した。また、誘電体層1bの上側主面に、3つの調整用キャパシタ導体パターン18a、18b、18cを形成した。そして、調整用キャパシタ導体パターン18aをビア導体12aによって、グランド導体パターン3に接続した。調整用キャパシタ導体パターン18bをビア導体12bによって、グランド導体パターン3に接続した。調整用キャパシタ導体パターン18cをビア導体12cによって、グランド導体パターン3に接続した。
【0068】
調整用キャパシタ導体パターン18aは、キャパシタ導体パターン5aとグランド導体パターン3との間に形成されるキャパシタC1の容量を大きくする。調整用キャパシタ導体パターン18bは、キャパシタ導体パターン5bとグランド導体パターン3との間に形成されるキャパシタC2の容量を大きくする。調整用キャパシタ導体パターン18cは、キャパシタ導体パターン5cとグランド導体パターン3との間に形成されるキャパシタC3の容量を大きくする。
【0069】
このように、積層型LCフィルタ110は、調整用キャパシタ導体パターン18a、18b、18cを形成し、キャパシタC1、C2、C3の容量を大きくすることにより、周波数特性(通過帯域特性)を調整している。
【0070】
なお、調整用キャパシタ導体パターン18aは、グランド導体パターン3に接続するのに代えて、キャパシタ導体パターン5aに接続してもよい。調整用キャパシタ導体パターン18bは、グランド導体パターン3に接続するのに代えて、キャパシタ導体パターン5bに接続してもよい。調整用キャパシタ導体パターン18cは、グランド導体パターン3に接続するのに代えて、キャパシタ導体パターン5cに接続してもよい。このようにした場合も、同様に、キャパシタC1、C2、C3の容量を大きくし、周波数特性を調整することができる。
【0071】
なお、積層型LCフィルタ110は、調整用キャパシタ導体パターン18a、18b、18cを、積層体1の内部において、飛び越し結合用キャパシタ導体パターン4aと同じ層間に形成している。これにより、積層型LCフィルタ110は、積層体1の高さ方向Zの大きさを大きくすることなく、周波数特性を調整できている。
【0072】
[第1実施形態の第2変形例:積層型LCフィルタ120]
図6に、第1実施形態の第2変形例にかかる積層型LCフィルタ120を示す。ただし、
図6は、積層型LCフィルタ120の分解斜視図である。
【0073】
第2変形例にかかる積層型LCフィルタ120は、上述した積層型LCフィルタ100の構成の一部を変更した。具体的には、積層型LCフィルタ100の構成において、直線状であった線路状導体パターン7b、7eの形状を、T字状に変更し、線路状導体パターン27b、27eとした。そして、積層型LCフィルタ120においては、これに伴い、ビア導体2jの形成位置を、幅方向Wにおいて、積層体1の中央寄りに移動させた。
【0074】
この結果、積層型LCフィルタ120は、積層型LCフィルタ100に比べて、第2のLC並列共振器の開放ビア導体が、第1のLC並列共振器の開放ビア導体及び第3のLC並列共振器の開放ビア導体との距離が近くなっている。そのため、飛び越し結合が強くなっている。第2のLC並列共振器の開放ビア導体の位置を調整することで、第1のLC並列共振器と第2のLC並列共振器の飛び越し結合と、第2のLC並列共振器と第3のLC並列共振器の飛び越し結合を調整することができる。
【0075】
[第1実施形態の第3変形例:積層型LCフィルタ130]
図7に、第1実施形態の第3変形例にかかる積層型LCフィルタ130を示す。ただし、
図7は、積層型LCフィルタ130の分解斜視図である。
【0076】
第3変形例にかかる積層型LCフィルタ130は、上述した積層型LCフィルタ100の構成の一部を変更した。
【0077】
積層型LCフィルタ100では、第1のLC並列共振器LC1のインダクタL1の線路状導体パターン7a、7dと、第2のLC並列共振器LC2のインダクタL2の線路状導体パターン7b、7eとが、独立していた。そして、第1のLC並列共振器LC1のインダクタL1の線路状導体パターン7a、7dは、ビア導体2eによってグランド導体パターン3に接続され、第2のLC並列共振器LC2のインダクタL2の線路状導体パターン7b、7eは、ビア導体2fによってグランド導体パターン3に接続されていた。積層型LCフィルタ130では、これを変更し、第1のLC並列共振器LC1のインダクタL1の線路状導体パターン37a、37dと、第2のLC並列共振器LC2のインダクタL2の線路状導体パターン37b、37eとを、相互に接続したうえで、1本の共通ビア導体32aによって、グランド導体パターン3に接続した。
【0078】
また、積層型LCフィルタ100では、第2のLC並列共振器LC2のインダクタL2の線路状導体パターン7b、7eと、第3のLC並列共振器LC3のインダクタL3の線路状導体パターン7c、7fとが、独立していた。そして、第2のLC並列共振器LC2のインダクタL2の線路状導体パターン7b、7eは、ビア導体2hによってグランド導体パターン3に接続され、第3のLC並列共振器LC3のインダクタL3の線路状導体パターン7c、7fは、ビア導体2gによってグランド導体パターン3に接続されていた。積層型LCフィルタ130では、これを変更し、第2のLC並列共振器LC2のインダクタL2の線路状導体パターン37b、37eと、第3のLC並列共振器LC3のインダクタL3の線路状導体パターン37c、37fとを、相互に接続したうえで、1本の共通ビア導体32bによって、グランド導体パターン3に接続した。
【0079】
積層型LCフィルタ130は、第1のLC並列共振器LC1のインダクタL1の線路状導体パターン37a、37dと、第2のLC並列共振器LC2のインダクタL2の線路状導体パターン37b、37eとを、1本の共通ビア導体32aによってグランド導体パターン3に接続したことにより、第1のLC並列共振器LC1と第2のLC並列共振器LC2との磁気結合が強くなっている。また、積層型LCフィルタ130は、第2のLC並列共振器LC2のインダクタL2の線路状導体パターン37b、37eと、第3のLC並列共振器LC3のインダクタL3の線路状導体パターン37c、37fとを、1本の共通ビア導体32bによってグランド導体パターン3に接続したことにより、第2のLC並列共振器LC2と第3のLC並列共振器LC3との磁気結合が強くなっている。
【0080】
このように、等価回路上において隣接する2つのLC並列共振器のインダクタの線路状導体パターンを、1本の共通ビア導体によって、共通化してグランド導体パターン3に接続することによって、当該2つのLC並列共振器の磁気結合を強めることができる。
【0081】
[第2実施形態:積層型LCフィルタ200]
図8、
図9、
図10に、第2実施形態にかかる積層型LCフィルタ200を示す。ただし、
図8は、積層型LCフィルタ200の分解斜視図である。
図9は、積層型LCフィルタ200の等価回路図である。
図10は、積層型LCフィルタ200の説明図(透視平面図)である。
【0082】
積層型LCフィルタ200は、バンドパスフィルタである。
【0083】
積層型LCフィルタ200は、積層体1を備える。
【0084】
積層体1は、誘電体層1a~1iが下から順に積層されたものからなる。以下に、各誘電体層1a~1gの各構成について説明する。
【0085】
誘電体層1aの下側主面に、第1の入出力端子T1、第2の入出力端子T2、2つのグランド端子Tg、2つのダミー端子Tdが形成されている。
【0086】
誘電体層1aの上下主面間を貫通して、ビア導体2a、2b、2c、2dが形成されている。
【0087】
誘電体層1aの上側主面に、グランド導体パターン3が形成されている。グランド導体パターン3は、2本のビア導体2b、2cによって、2つのグランド端子Tgに、それぞれ接続されている。
【0088】
誘電体層1bの上下主面間を貫通して、上述したビア導体2a、2dに加えて、新たなビア導体2e、2f、2g、2hが形成されている。
【0089】
誘電体層1aの上側主面に、飛び越し結合用キャパシタ導体パターン4aが形成されている。また、誘電体層1aの上側主面に、結合用キャパシタ導体パターン6aが形成されている。
【0090】
誘電体層1cの上下主面間を貫通して、上述したビア導体2a、2d、2e、2f、2g、2hが形成されている。
【0091】
誘電体層1cの上側主面に、4つのキャパシタ導体パターン5a、5b、5c、5dが形成されている。キャパシタ導体パターン5aが、ビア導体2aによって、第1の入出力端子T1に接続されている。キャパシタ導体パターン5dが、ビア導体2dによって、第2の入出力端子T2に接続されている。
【0092】
誘電体層1dの上下主面間を貫通して、上述したビア導体2e、2f、2g、2hに加えて、新たなビア導体2i、2j、2k、2l、2m、2nが形成されている。
【0093】
誘電体層1dの上側主面に、結合用キャパシタ導体パターン6b、6cが形成されている。また、誘電体層1dの上側主面に、飛び越し結合用キャパシタ導体パターン4b、4c、4d、4eが形成されている。
【0094】
結合用キャパシタ導体パターン6bが、ビア導体2mによって、キャパシタ導体パターン5aに接続されている。結合用キャパシタ導体パターン6cが、ビア導体2nによって、キャパシタ導体パターン5dに接続されている。
【0095】
誘電体層1eの上下主面間を貫通して、上述したビア導体2e、2f、2g、2h、2i、2j、2k、2lに加えて、新たにビア導体2o、2p、2q、2rが形成されている。
【0096】
誘電体層1eの上側主面に、線路状導体パターン7aが形成されている。線路状導体パターン7aの一端が、ビア導体2pによって、飛び越し結合用キャパシタ導体パターン4cに接続されている。線路状導体パターン7aの他端が、ビア導体2rによって、飛び越し結合用キャパシタ導体パターン4eに接続されている。
【0097】
誘電体層1fの上下主面間を貫通して、上述したビア導体2e、2f、2g、2h、2i、2j、2k、2l、2o、2qが形成されている。
【0098】
誘電体層1fの上側主面に、線路状導体パターン7bが形成されている。線路状導体パターン7bの一端が、ビア導体2oによって、飛び越し結合用キャパシタ導体パターン4bに接続されている。線路状導体パターン7bの他端が、ビア導体2qによって、飛び越し結合用キャパシタ導体パターン4dに接続されている。
【0099】
誘電体層1gの上下主面間を貫通して、上述したビア導体2e、2f、2g、2h、2i、2j、2k、2lが形成されている。
【0100】
誘電体層1gの上側主面に、線路状導体パターン7c、7d、7e、7fが形成されている。線路状導体パターン7cの一端が、ビア導体2eによって、グランド導体パターン3に接続されている。線路状導体パターン7cの他端が、ビア導体2iによって、キャパシタ導体パターン5aに接続されている。線路状導体パターン7dの一端が、ビア導体2fによって、グランド導体パターン3に接続されている。線路状導体パターン7dの他端が、ビア導体2jによって、キャパシタ導体パターン5bに接続されている。線路状導体パターン7eの一端が、ビア導体2hによって、グランド導体パターン3に接続されている。線路状導体パターン7eの他端が、ビア導体2kによって、キャパシタ導体パターン5cに接続されている。線路状導体パターン7fの一端が、ビア導体2gによって、グランド導体パターン3に接続されている。線路状導体パターン7fの他端が、ビア導体2lによって、キャパシタ導体パターン5dに接続されている。
【0101】
誘電体層1hの上下主面間を貫通して、上述したビア導体2e、2f、2g、2h、2i、2j、2k、2lが形成されている。
【0102】
誘電体層1gの上側主面に、線路状導体パターン7g、7h、7i、7jが形成されている。線路状導体パターン7gの一端が、ビア導体2eによって、グランド導体パターン3に接続されている。線路状導体パターン7gの他端が、ビア導体2iによって、キャパシタ導体パターン5aに接続されている。線路状導体パターン7hの一端が、ビア導体2fによって、グランド導体パターン3に接続されている。線路状導体パターン7hの他端が、ビア導体2jによって、キャパシタ導体パターン5bに接続されている。線路状導体パターン7iの一端が、ビア導体2hによって、グランド導体パターン3に接続されている。線路状導体パターン7iの他端が、ビア導体2kによって、キャパシタ導体パターン5cに接続されている。線路状導体パターン7jの一端が、ビア導体2gによって、グランド導体パターン3に接続されている。線路状導体パターン7jの他端が、ビア導体2lによって、キャパシタ導体パターン5dに接続されている。
【0103】
誘電体層1hは保護層であり、ビア導体や導体パターンは形成されていない。
【0104】
積層型LCフィルタ200は、
図9に示す等価回路を備えている。
【0105】
積層型LCフィルタ200は、第1の入出力端子T1と、第2の入出力端子T2と備える。第1の入出力端子T1と第2の入出力端子T2との間に、信号ラインSLが形成されている。
【0106】
積層型LCフィルタ200は、第1の入出力端子T1と第2入出力端子T2とを繋ぐ信号ラインSLに、キャパシタC12、キャパシタC23、キャパシタC34が、順に接続されている。また、積層型LCフィルタ200は、次に説明する、第1のLC並列共振器LC1と第4のLC並列共振器LC4との間に、キャパシタC14が接続されている。第1のLC並列共振器LC1と第3のLC並列共振器LC3との間に、キャパシタC13が接続されている。第2のLC並列共振器LC2と第4のLC並列共振器LC4との間に、キャパシタC14が接続されている。
【0107】
積層型LCフィルタ100は、第1~第4の4つのLC並列共振器LC1、LC2、LC3、LC4を備えている。第1のLC並列共振器LC1は、インダクタL1とキャパシタC1が並列に接続されたものからなる。第2のLC並列共振器LC2は、インダクタL2とキャパシタC2が並列に接続されたものからなる。第3のLC並列共振器LC3は、インダクタL3とキャパシタC3が並列に接続されたものからなる。第4のLC並列共振器LC4は、インダクタL4とキャパシタC4が並列に接続されたものからなる。
【0108】
第1のLC並列共振器LC1は、一端が、信号ラインSLの第1の入出力端子T1とキャパシタC12との間の部分に接続され、他端が、グランド端子Tgに接続されている。第2のLC並列共振器LC2は、一端が、信号ラインSLのキャパシタC12とキャパシタC23との間の部分に接続され、他端が、グランド端子Tgに接続されている。第3のLC並列共振器LC3は、一端が、信号ラインSLのキャパシタC23とキャパシタC34との間の部分に接続され、他端が、グランド端子Tgに接続されている。第4のLC並列共振器LC4は、一端が、信号ラインSLのキャパシタC34と第2の入出力端子T2との間の部分に接続され、他端が、グランド端子Tgに接続されている。
【0109】
次に、第1~第3のLC並列共振器LC1、LC2、LC3の主な結合関係について説明する。
【0110】
第1のLC並列共振器LC1と第2のLC並列共振器LC2とが、インダクタL1とインダクタL2との磁気結合によって、磁気結合している。第3のLC並列共振器LC3と第4のLC並列共振器LC4とが、インダクタL3とインダクタL4との磁気結合によって、磁気結合している。
【0111】
第1のLC並列共振器LC1と第2のLC並列共振器LC2とが、キャパシタC12の容量によって、容量結合している。第2のLC並列共振器LC2と第3のLC並列共振器LC3とが、キャパシタC23の容量によって、容量結合している。第3のLC並列共振器LC3と第4のLC並列共振器LC4とが、キャパシタC34の容量によって、容量結合している。
【0112】
第1のLC並列共振器LC1と第4のLC並列共振器LC4とが、キャパシタC14の容量によって、飛び越し容量結合している。第1のLC並列共振器LC1と第3のLC並列共振器LC3とが、キャパシタC13の容量によって、飛び越し容量結合している。第2のLC並列共振器LC1と第4のLC並列共振器LC4とが、キャパシタC23の容量によって、飛び越し容量結合している。
【0113】
以上の等価回路および結合により、積層型LCフィルタ200は、第1の入出力端子T1と第2入出力端子T2との間に、4段のバンドパスフィルタが構成されている。
【0114】
次に、積層型LCフィルタ200の等価回路と、構造との関係について説明する。
【0115】
第1のLC並列共振器LC1のキャパシタC1は、キャパシタ導体パターン5aと、グランド導体パターン3との間の容量によって構成されている。なお、キャパシタ導体パターン5aは、ビア導体2aによって、第1の入出力端子T1に接続されている。ビア導体第1のLC並列共振器LC1のインダクタL1は、キャパシタ導体パターン5aを起点として、ビア導体2i、線路状導体パターン7c、7d、ビア導体2eを経由し、グランド導体パターン3を終点とする、ループインダクタによって形成されている。
【0116】
第2のLC並列共振器LC2のキャパシタC2は、キャパシタ導体パターン5bと、グランド導体パターン3との間の容量によって構成されている。ビア導体第2のLC並列共振器LC2のインダクタL2は、キャパシタ導体パターン5bを起点として、ビア導体2j、線路状導体パターン7d、7h、ビア導体2fを経由し、グランド導体パターン3を終点とする、ループインダクタによって形成されている。
【0117】
第3のLC並列共振器LC3のキャパシタC3は、キャパシタ導体パターン5cと、グランド導体パターン3との間の容量によって構成されている。ビア導体第3のLC並列共振器LC3のインダクタL3は、キャパシタ導体パターン5cを起点として、ビア導体2k、線路状導体パターン7e、7i、ビア導体2hを経由し、グランド導体パターン3を終点とする、ループインダクタによって形成されている。
【0118】
第4のLC並列共振器LC4のキャパシタC4は、キャパシタ導体パターン5dと、グランド導体パターン3との間の容量によって構成されている。第4のLC並列共振器LC4のインダクタL4は、キャパシタ導体パターン5dを起点として、ビア導体2l、線路状導体パターン7f、7j、ビア導体2gを経由し、グランド導体パターン3を終点とする、ループインダクタによって形成されている。なお、キャパシタ導体パターン5dは、ビア導体2dによって、第2の入出力端子T2に接続されている。
【0119】
キャパシタC12は、結合用キャパシタ導体パターン6bとキャパシタ導体パターン5bとの間の容量によって構成されている。なお、結合用キャパシタ導体パターン6bは、ビア導体2mによって、キャパシタ導体パターン5aに接続されている。
【0120】
キャパシタC23は、直列に接続された、キャパシタ導体パターン5bと結合用キャパシタ導体パターン6aとの間の容量と、結合用キャパシタ導体パターン6aとキャパシタ導体パターン5cとの間の容量とによって構成されている。
【0121】
キャパシタC34は、キャパシタ導体パターン5bと結合用キャパシタ導体パターン6cとの間の容量によって構成されている。なお、結合用キャパシタ導体パターン6cは、ビア導体2nによって、キャパシタ導体パターン5dに接続されている。
【0122】
キャパシタC14は、直列に接続された、キャパシタ導体パターン5aと飛び越し結合用キャパシタ導体パターン4aとの間の容量と、飛び越し結合用キャパシタ導体パターン4aとキャパシタ導体パターン5dとの間の容量とによって構成されている。
【0123】
キャパシタC13は、直列に接続された、キャパシタ導体パターン5aと飛び越し結合用キャパシタ導体パターン4bとの間の容量と、飛び越し結合用キャパシタ導体パターン4dとキャパシタ導体パターン5cとの間の容量とによって構成されている。なお、飛び越し結合用キャパシタ導体パターン4bと飛び越し結合用キャパシタ導体パターン4dとは、ビア導体2o、線路状導体パターン7b、ビア導体2qを経由して接続されている。
【0124】
キャパシタC24は、直列に接続された、キャパシタ導体パターン5bと飛び越し結合用キャパシタ導体パターン4cとの間の容量と、飛び越し結合用キャパシタ導体パターン4eとキャパシタ導体パターン5dとの間の容量とによって構成されている。なお、飛び越し結合用キャパシタ導体パターン4cと飛び越し結合用キャパシタ導体パターン4eとは、ビア導体2p、線路状導体パターン7a、ビア導体2rを経由して接続されている。
【0125】
図10に、インダクタL1~L4の開放ビア導体、短絡ビア導体を、それぞれ示す。
図10から分かるように、積層型LCフィルタ200は、第1~第4のLC並列共振器LC1、LC2、LC3、LC4の全てのインダクタL1、L2、L3、L4において、開放ビア導体を長さ方向Lの中央寄りに配置し、短絡ビア導体を長さ方向Lの外寄りに配置されている。この結果、全ての開放ビア導体が、積層体1の中央寄りに配置されている。
【0126】
積層型LCフィルタ200は、全ての開放ビア導体が、積層体1の中央寄りに配置されているため、等価回路上で離れたLC並列共振器どうしの、飛び越し結合(飛び越し容量結合)が容易になっている。具体的には、飛び越し容量結合であるキャパシタC14、キャパシタC13、キャパシタC24を、容易に形成することが可能になっている。
【0127】
図11に、積層型LCフィルタ200の周波数特性を示す。
図11から分かるように、各LC並列共振器の各開放ビア導体を積層体1の中央寄りに配置することによって低域側に3段の減衰極を容易に形成することができる。また、
図11では低域側に3段の減衰極が形成されているが、容量結合や磁気結合を調整することで、高周波側に3段の減衰極を形成することも可能である。
【0128】
[第2実施形態の第1変形例:積層型LCフィルタ210]
図12に、第2実施形態の第1変形例にかかる積層型LCフィルタ210を示す。ただし、
図12は、積層型LCフィルタ210の分解斜視図である。
【0129】
第1変形例にかかる積層型LCフィルタ210は、上述した積層型LCフィルタ200に、新たな構成を追加した。具体的には、誘電体層1bの上下主面間を貫通して、新たなビア導体42a、42b、42c、42dを形成した。また、誘電体層1bの上側主面に、4つの調整用キャパシタ導体パターン48a、48b、48c、48dを形成した。そして、調整用キャパシタ導体パターン48aをビア導体42aによって、グランド導体パターン3に接続した。調整用キャパシタ導体パターン48bをビア導体42bによって、グランド導体パターン3に接続した。調整用キャパシタ導体パターン48cをビア導体42cによって、グランド導体パターン3に接続した。調整用キャパシタ導体パターン48dをビア導体42dによって、グランド導体パターン3に接続した。
【0130】
調整用キャパシタ導体パターン48aは、キャパシタ導体パターン5aとグランド導体パターン3との間に形成されるキャパシタC1の容量を大きくする。調整用キャパシタ導体パターン48bは、キャパシタ導体パターン5bとグランド導体パターン3との間に形成されるキャパシタC2の容量を大きくする。調整用キャパシタ導体パターン48cは、キャパシタ導体パターン5cとグランド導体パターン3との間に形成されるキャパシタC3の容量を大きくする。調整用キャパシタ導体パターン48dは、キャパシタ導体パターン5cとグランド導体パターン3との間に形成されるキャパシタC4の容量を大きくする。
【0131】
このように、積層型LCフィルタ210は、調整用キャパシタ導体パターン48a、48b、48c、48dを形成し、キャパシタC1、C2、C3、C4の容量の大きくすることにより、周波数特性(通過帯域特性)を調整している。
【0132】
[第2実施形態の第2変形例:積層型LCフィルタ220]
図13に、第2実施形態の第2変形例にかかる積層型LCフィルタ220を示す。ただし、
図13は、積層型LCフィルタ220の分解斜視図である。
【0133】
第3変形例にかかる積層型LCフィルタ220は、上述した積層型LCフィルタ200の構成の一部を変更した。
【0134】
積層型LCフィルタ200では、第1のLC並列共振器LC1のインダクタL1の線路状導体パターン7c、7gと、第2のLC並列共振器LC2のインダクタL2の線路状導体パターン7d、7hとが、独立していた。そして、第1のLC並列共振器LC1のインダクタL1の線路状導体パターン7c、7gは、ビア導体2eによってグランド導体パターン3に接続され、第2のLC並列共振器LC2のインダクタL2の線路状導体パターン7d、7hは、ビア導体2fによってグランド導体パターン3に接続されていた。積層型LCフィルタ220では、これを変更し、第1のLC並列共振器LC1のインダクタL1の線路状導体パターン57c、57gと、第2のLC並列共振器LC2のインダクタL2の線路状導体パターン57d、57hとを、相互に接続したうえで、1本の共通ビア導体52aによって、グランド導体パターン3に接続した。
【0135】
また、積層型LCフィルタ200では、第3のLC並列共振器LC3のインダクタL3の線路状導体パターン7e、7iと、第4のLC並列共振器LC3のインダクタL3の線路状導体パターン7f、7jとが、独立していた。そして、第3のLC並列共振器LC3のインダクタL3の線路状導体パターン7e、7iは、ビア導体2hによってグランド導体パターン3に接続され、第4のLC並列共振器LC4のインダクタL4の線路状導体パターン7f、7jは、ビア導体2gによってグランド導体パターン3に接続されていた。積層型LCフィルタ220では、これを変更し、第3のLC並列共振器LC3のインダクタL3の線路状導体パターン57e、57iと、第4のLC並列共振器LC4のインダクタL4の線路状導体パターン57f、57jとを、相互に接続したうえで、1本の共通ビア導体52bによって、グランド導体パターン3に接続した。
【0136】
積層型LCフィルタ220は、第1のLC並列共振器LC1のインダクタL1の線路状導体パターン57c、57gと、第2のLC並列共振器LC2のインダクタL2の線路状導体パターン57d、57hとを、1本の共通ビア導体52aによってグランド導体パターン3に接続したことにより、第1のLC並列共振器LC1と第2のLC並列共振器LC2との磁気結合が強くなっている。また、積層型LCフィルタ220は、第3のLC並列共振器LC3のインダクタL3の線路状導体パターン57e、57iと、第4のLC並列共振器LC4のインダクタL4の線路状導体パターン57f、57jとを、1本の共通ビア導体52bによってグランド導体パターン3に接続したことにより、第3のLC並列共振器LC3と第4のLC並列共振器LC4との磁気結合が強くなっている。
【0137】
[第2実施形態の第3変形例:積層型LCフィルタ230]
図14に、第2実施形態の第3変形例にかかる積層型LCフィルタ230を示す。ただし、
図14は、積層型LCフィルタ230の分解斜視図である。
【0138】
第3変形例にかかる積層型LCフィルタ230は、上述した積層型LCフィルタ200の構成の一部を変更した。
【0139】
具体的には、積層型LCフィルタ200では、飛び越し結合用のキャパシタC13を形成するために、キャパシタ導体パターン5aと対向させて飛び越し結合用キャパシタ導体パターン4bを形成し、キャパシタ導体パターン5cと対向させて飛び越し結合用キャパシタ導体パターン4dを形成し、かつ、飛び越し結合用キャパシタ導体パターン4bと飛び越し結合用キャパシタ導体パターン4dとを、ビア導体2o、線路状導体パターン7b、ビア導体2qを経由する経路で接続していた。また、飛び越し結合用のキャパシタC24を形成するために、キャパシタ導体パターン5bと対向させて飛び越し結合用キャパシタ導体パターン4cを形成し、キャパシタ導体パターン5dと対向させて飛び越し結合用キャパシタ導体パターン4eを形成し、かつ、飛び越し結合用キャパシタ導体パターン4cと飛び越し結合用キャパシタ導体パターン4eとを、ビア導体2p、線路状導体パターン7a、ビア導体2rを経由する経路で接続していた。
【0140】
積層型LCフィルタ230では、これらの、飛び越し結合用キャパシタ導体パターン4b、4c、4d、4e、線路状導体パターン7a、7b、ビア導体2o、2p、2q、2rを削除し、代わりに、キャパシタ導体パターン5a、5b、5c、5dのそれぞれと対向させた、1つの矩形の飛び越し結合用キャパシタ導体パターン64aを設けた。
【0141】
積層型LCフィルタ230では、飛び越し結合用のキャパシタC13が、直列に接続された、キャパシタ導体パターン5aと飛び越し結合用キャパシタ導体パターン64aとの間の容量と、飛び越し結合用キャパシタ導体パターン64aとキャパシタ導体パターン5cとの間の容量とによって構成される。また、飛び越し結合用のキャパシタC24が、直列に接続された、キャパシタ導体パターン5bと飛び越し結合用キャパシタ導体パターン64aとの間の容量と、飛び越し結合用キャパシタ導体パターン64aとキャパシタ導体パターン5dとの間の容量とによって構成される。
【0142】
このように、飛び越し結合用キャパシタ導体パターンは、種々の形態を取ることができる。
【0143】
[第3実施形態:積層型LCフィルタ300]
図15(A)、(B)に、第3実施形態にかかる積層型LCフィルタ300を示す。ただし、
図15(A)は、積層型LCフィルタ300の説明図(透視平面図)である。
図15(B)は、積層型LCフィルタ300の等価回路図である。
【0144】
積層型LCフィルタ300は、積層体1内に、5つのLC並列共振器LC1~LC5が形成された、5段のバンドパスフィルタである。
【0145】
図15(A)に、共振器LC1~LC5のインダクタL1~L5の開放ビア導体、短絡ビア導体を、それぞれ示す。
図15(A)から分かるように、積層型LCフィルタ300は、LC並列共振器LC1~LC5の全てのインダクタL1~L5において、開放ビア導体が長さ方向Lの中央寄りに配置され、短絡ビア導体が長さ方向Lの外寄りに配置されている。この結果、全ての開放ビア導体が、積層体1の中央寄りに配置されている。
【0146】
図15(B)の等価回路図から分かるように、積層型LCフィルタ300は、積層体1内に、3つの飛び越し結合用のキャパシタC14、C15、C25が形成されている。積層型LCフィルタ300は、インダクタL1~L5の全ての開放ビア導体が、積層体1の中央寄りに配置されているため、飛び越し結合用のキャパシタC14、C15、C25を容易に形成することができる。
【0147】
[第4実施形態:積層型LCフィルタ400]
図16(A)、(B)に、第4実施形態にかかる積層型LCフィルタ400を示す。ただし、
図16(A)は、積層型LCフィルタ400の説明図(透視平面図)である。
図16(B)は、積層型LCフィルタ400の等価回路図である。
【0148】
積層型LCフィルタ400は、積層体1内に、6つのLC並列共振器LC1~LC6が形成された、6段のバンドパスフィルタである。
【0149】
図16(A)に、共振器LC1~LC6のインダクタL1~L6の開放ビア導体、短絡ビア導体を、それぞれ示す。
図16(A)から分かるように、積層型LCフィルタ400は、LC並列共振器LC1~LC6の全てのインダクタL1~L6において、開放ビア導体が長さ方向Lの中央寄りに配置され、短絡ビア導体が長さ方向Lの外寄りに配置されている。この結果、全ての開放ビア導体が、積層体1の中央寄りに配置されている。
【0150】
図16(B)の等価回路図から分かるように、積層型LCフィルタ400は、積層体1内に、5つの飛び越し結合用のキャパシタC15、C16、C24、C26、C35が形成されている。積層型LCフィルタ400は、インダクタL1~L6の全ての開放ビア導体が、積層体1の中央寄りに配置されているため、飛び越し結合用のキャパシタC15、C16、C24、C26、C35を容易に形成することができる。
【0151】
[第5実施形態:積層型LCフィルタ500]
図17、
図18(A)、(B)に、第5実施形態にかかる積層型LCフィルタ500を示す。ただし、
図17は、積層型LCフィルタ500の分解斜視図である。
図18(A)は、積層型LCフィルタ500の要部分解斜視図である。なお、
図18(A)は、積層型LCフィルタ500から、説明に必要な構成のみを残し、誘電体層1a~1iなどを省略して示している。
図18(B)は、後述するシールド導体パターン58と、線路状導体パターン7c~7jとの位置関係を示す、積層型LCフィルタ500の説明図(透視平面図)である。
【0152】
第5実施形態にかかる積層型LCフィルタ500は、
図8に示した第2実施形態にかかる積層型LCフィルタ200に、新たな構成を追加した。具体的には、積層型LCフィルタ500は、積層型LCフィルタ200に、誘電体層51aと、シールド導体パターン58と、シールド用ビア導体62a、62bとを追加した。
【0153】
積層型LCフィルタ500は、積層体1の誘電体層1hと誘電体層1iとの間に、新たな誘電体層51aが追加されている。
【0154】
誘電体層51aの上側主面には、矩形のシールド導体パターン58が形成されている。ただし、シールド導体パターン58の形状は任意であり、矩形には限定されない。
【0155】
誘電体層1b~1h、および、誘電体層51aを貫通して、シールド用ビア導体62a、62bが形成されている。シールド導体パターン58は、シールド用ビア導体62a、62bによって、直接に、グランド導体パターン3に接続されている。なお、本実施形態においては、シールド用ビア導体の本数は2本であるが、シールド用ビア導体の本数は任意であり、1本であってもよく、3本以上であってもよい。
【0156】
図18(B)に示すように、積層型LCフィルタ500は、積層体1を高さ方向に透視したとき、シールド導体パターン58が、線路状導体パターン7c~7jを覆っている。
【0157】
この結果、積層型LCフィルタ500は、金属が近接しても、特性の変動が抑制されている。すなわち、シールド導体パターン58が設けられていない場合、たとえば、積層体1の上方に金属が近接すると、積層型LCフィルタの各LC並列共振器のインダクタの磁界形成が影響を受け、2つのLC並列共振器の間の磁気結合の強さが変動してしまう。そして、積層型LCフィルタの全体的な特性が変動してしまう。そこで、積層型LCフィルタ500は、シールド導体パターン58を設けることによって、積層体1の周囲に金属が近接しても、特性の変動が小さくなるようにしている。
【0158】
より具体的には、積層型LCフィルタ500は、シールド導体パターン58によって、各LC並列共振器のインダクタの磁界が、積層体1の周囲に漏れないようにしている。そのため、積層型LCフィルタ500は、積層体1の周囲に金属が近接しても、特性の変動が小さい。この効果については、後の実験1において説明する。
【0159】
積層型LCフィルタ500の等価回路は、
図9に示した積層型LCフィルタ200の等価回路と同じである。
【0160】
[第5実施形態の第1変形例:積層型LCフィルタ510]
図19(A)、(B)に、第5実施形態の第1変形例にかかる積層型LCフィルタ510を示す。ただし、
図19(A)は、積層型LCフィルタ510の要部分解斜視図である。
図19(B)は、シールド導体パターン58と、線路状導体パターン77c~77jとの位置関係を示す、積層型LCフィルタ510の説明図(透視平面図)である。
【0161】
第1変形例にかかる積層型LCフィルタ510は、第5実施形態にかかる積層型LCフィルタ500を改良したものである。すなわち、積層型LCフィルタ510は、積層型LCフィルタ500に比べて、積層体1の周囲に金属が近接した場合の特性の変動が、より抑制されている。
【0162】
積層型LCフィルタ500は、
図18(B)に示すように、平面方向に透視した場合、線路状導体パターン7c~7jとシールド導体パターン58とのギャップGが小さく、線路状導体パターン7c~7jが発生させる磁界が、まだ積層体1の周囲に漏れており、改善の余地があった。そこで、積層型LCフィルタ510は、線路状導体パターンを積層体1の中央側に移動させることによって、磁界の積層体1の周囲への漏れを更に抑制し、特性の変動を更に抑制している。
【0163】
図19(A)、(B)に示すように、積層型LCフィルタ510は、積層体1を高さ方向に透視したとき、開放ビア導体2i、2j、2k、2lが、それぞれ、積層体1の中央近傍に移動させて配置されている。一方、短絡ビア導体2e、2f、2g、2hは、積層体1の周縁近傍に配置されている。この結果、積層型LCフィルタ510は、線路状導体パターン77c~77jが、それぞれ、積層体1の中央近傍から周縁近傍に向って、放射状に配置されている。
【0164】
なお、積層型LCフィルタ510において、短絡ビア導体2e~2hを、積層体1の中央側に移動させなかったのは、シールド用ビア導体62a、62bとの間の距離を確保する必要があったからである。すなわち、短絡ビア導体2e~2hが、グランド電位であるシールド用ビア導体62a、62bの近くに配置されると、両者の間に浮遊容量が発生し、各LC並列共振器の特性が変動する虞があり、好ましくないからである。
【0165】
線路状導体パターン77c~77jを積層体1の中央近傍から周縁近傍に向って放射状に配置した積層型LCフィルタ510は、積層型LCフィルタ500に比べて、積層体1の外部への磁界の漏れが更に抑制されており、積層体1に金属が近接しても、更に特性が変動しにくい。
【0166】
[実験1]
シールド導体パターン58を設けることが、金属が近接した場合の特性の変動を抑制することに有効であることを確認するために、
図20(A-1)、(A-2)、(B-1)、(B-2)に示す、実験1を実施した。
【0167】
まず、積層型LCフィルタ510を用意した。また、積層型LCフィルタ510から、シールド導体パターン58とシールド用ビア導体62a、62bとを省略した積層型LCフィルタ520を用意した。
【0168】
そして、
図20(A-1)に示すように、積層型LCフィルタ510を基板に実装したうえで、積層型LCフィルタ510の上方に金属(金属板)が近接していないとき、遠くの位置Fに金属が近接したとき、近くの位置Nに金属が近接したときの、3通りの特性を測定した。特性の測定結果を、
図20(A-2)に示す。
【0169】
次に、
図20(B-1)に示すように、積層型LCフィルタ520を基板に実装したうえで、積層型LCフィルタ520の上方に金属(金属板)が近接していないとき、遠くの位置Fに金属が近接したとき、近くの位置Nに金属が近接したときの、3通りの特性を測定した。特性の測定結果を、
図20(B-2)に示す。
【0170】
図20(A-1)と
図20(B-1)とを比較して分かるように、シールド導体パターン58を省略した積層型LCフィルタ520は、金属が近接することによって、特性が大きく変動する。これに対し、シールド導体パターン58を有する積層型LCフィルタ510は、金属が近接しても特性の変動が小さい。以上より、シールド導体パターン58を設けることが、金属が近接した場合の特性の変動を抑制することに有効であることが確認できた。
【0171】
[第5実施形態の第2変形例:積層型LCフィルタ530]
[第5実施形態の第3変形例:積層型LCフィルタ540]
図21(A)に、第5実施形態の第2変形例である積層型LCフィルタ530を示す。また、
図21(B)に、第5実施形態の第3変形例である積層型LCフィルタ540を示す。なお、
図21(A)は、積層型LCフィルタ530の要部斜視図である。
図21(B)は、積層型LCフィルタ540の要部斜視図である。
【0172】
積層型LCフィルタ530、540は、それぞれ、
図19(A)、(B)に示した、第5実施形態の第1変形例の積層型LCフィルタ510の構成に変更を加えた。
【0173】
具体的には、積層型LCフィルタ510では、シールド用ビア導体62a、62bによって、シールド導体パターン58を、グランド導体パターン3に、直接に接続していた。第2変形例である積層型LCフィルタ530は、これを変更し、シールド導体パターン58を、シールド用ビア導体62fによって線路状導体パターン77hの短絡ビア2f側に接続し、シールド用ビア導体62hによって線路状導体パターン77iの短絡ビア2h側に接続した。すなわち、積層型LCフィルタ530は、シールド導体パターン58を、シールド用ビア導体によってグランド導体パターン3に直接に接続するのではなく、シールド用ビア導体62f、62hと短絡ビア導体2f、2hとを経由して、間接的にグランド導体パターン3に接続した。
【0174】
第3変形例である積層型LCフィルタ540は、第2変形例である積層型LCフィルタ530に、更に構成を追加した。すなわち、シールド導体パターン58を、更に、シールド用ビア導体62eによって線路状導体パターン77gの短絡ビア2e側に接続し、シールド用ビア導体62gによって線路状導体パターン77jの短絡ビア2g側に接続した。すなわち、積層型LCフィルタ540は、シールド導体パターン58を、シールド用ビア導体によってグランド導体パターン3に直接に接続するのではなく、シールド用ビア導体62e、62f、62g、62hと短絡ビア導体2e、2f、2g、2hとを経由して、間接的にグランド導体パターン3に接続した。
【0175】
このように、シールド導体パターン58をシールド用ビア導体によってグランド導体パターン3に直接に接続するのではなく、他の構成要素を経由させて、間接的にグランド導体パターン3に接続してもよい。この方法は、積層体1の内部容積に余裕がなく、シールド導体パターン58をシールド用ビア導体によってグランド導体パターン3に直接に接続できない場合に有効である。
【0176】
ただし、シールド導体パターン58をシールド用ビア導体によってグランド導体パターン3に直接に接続するのではなく、他の構成要素を経由させて、間接的にグランド導体パターン3に接続した場合、特性が変動してしまう虞がある。たとえば、積層型LCフィルタ530では、短絡ビア導体2e、線路状導体パターン77d、77h、開放ビア導体2jで構成されるLC並列共振器LC2のインダクタL2と、短絡ビア導体2h、線路状導体パターン77e、77i、開放ビア導体2kで構成されるLC並列共振器LC3のインダクタL3とが、途中で、シールド用ビア導体62f、シールド導体パターン58、シールド用ビア導体62hを経由して接続されてしまうことになり、インダクタL2とインダクタL3との磁気結合が強まってしまい、特性が変動してしまう虞がある。したがって、可能であるならば、シールド導体パターン58とグランド導体パターン3とは、シールド用ビア導体によって直接に接続することが好ましい。
【0177】
[第6実施形態:積層型LCフィルタ600]
図22、
図23(A)、(B)に、第6実施形態にかかる積層型LCフィルタ600を示す。ただし、
図22は、積層型LCフィルタ600の要部分解斜視図である。
図23(A)も、積層型LCフィルタ600の要部分解斜視図である。
図23(B)は、シールド導体パターン58と、線路状導体パターン87c~87jとの位置関係を示す、積層型LCフィルタ600の説明図(透視平面図)である。
【0178】
第6実施形態にかかる積層型LCフィルタ600は、
図17、
図18(A)、(B)に示した、第5実施形態にかかる積層型LCフィルタ500を更に改良したものである。
【0179】
第5実施形態にかかる積層型LCフィルタ500では、LC並列共振器LC1のインダクタL1を構成する線路状導体パターン7cと、LC並列共振器LC2のインダクタL2を構成する線路状導体パターン7dと、LC並列共振器LC3のインダクタL3を構成する線路状導体パターン7eと、LC並列共振器LC4のインダクタL4を構成する線路状導体パターン7fとが、全て積層体1の同じ層間に形成され、LC並列共振器LC1のインダクタL1を構成する線路状導体パターン7gと、LC並列共振器LC2のインダクタL2を構成する線路状導体パターン7hと、LC並列共振器LC3のインダクタL3を構成する線路状導体パターン7iと、LC並列共振器LC4のインダクタL4を構成する線路状導体パターン7jとが、全て積層体1の同じ層間に形成されていた。そのため、積層型LCフィルタ500では、2つの積層型LCフィルタ500を基板などに近接して実装したとき、積層型LCフィルタ500どうしの間で不要な磁気結合が発生し、双方の積層型LCフィルタ500の特性に変動が生じる虞があるという問題があった。
【0180】
そこで、第6実施形態にかかる積層型LCフィルタ600は、
図22に示すように、誘電体層1hと誘電体層51aとの間に、2層の誘電体層61a、61bを追加した。そして、もとからあった誘電体層1gに、LC並列共振器LC1のインダクタL1を構成する線路状導体パターン87cと、LC並列共振器LC4のインダクタL4を構成する線路状導体パターン87fとを形成した。また、もとからあった誘電体層1hに、LC並列共振器LC1のインダクタL1を構成する線路状導体パターン87gと、LC並列共振器LC4のインダクタL4を構成する線路状導体パターン87jとを形成した。そして、追加した誘電体層61aに、LC並列共振器LC2のインダクタL2を構成する線路状導体パターン87dと、LC並列共振器LC3のインダクタL3を構成する線路状導体パターン87eとを形成した。また、追加した誘電体層61bに、LC並列共振器LC2のインダクタL2を構成する線路状導体パターン87hと、LC並列共振器LC3のインダクタL3を構成する線路状導体パターン87iとを形成した。
【0181】
この結果、積層型LCフィルタ600は、2つの積層型LCフィルタ600を、基板などに、方向を揃えて、整列させて実装すれば、両者が近接して実装されても、積層型LCフィルタ600どうしの間で不要な磁気結合が発生することが抑制され、特性が変動することが抑制される。この効果については、後の実験2において説明する。
【0182】
[第6実施形態の第1変形例:積層型LCフィルタ610]
図24(A)、(B)に、第6実施形態の第1変形例にかかる積層型LCフィルタ610を示す。ただし、
図24(A)は、積層型LCフィルタ610の要部分解斜視図である。
図24(B)は、シールド導体パターン58と、線路状導体パターン97c~97jとの位置関係を示す、積層型LCフィルタ610の説明図(透視平面図)である。
【0183】
第1変形例にかかる積層型LCフィルタ610は、第6実施形態にかかる積層型LCフィルタ600を改良したものである。すなわち、積層型LCフィルタ610は積層型LCフィルタ600に比べて、積層体1の周囲に金属が近接した場合の特性の変動を、より抑制したものである。
【0184】
積層型LCフィルタ610は、
図19(A)、(B)に示した、第5実施形態の第1変形例にかかる積層型LCフィルタ510と、同様の効果をねらったものである。
【0185】
積層型LCフィルタ610は、
図24(A)、(B)に示すように、積層体1を高さ方向に透視したとき、開放ビア導体2i、2j、2k、2lが、それぞれ、積層体1の中央近傍に移動させて配置されている。一方、短絡ビア導体2e、2f、2g、2hは、積層体1の周縁近傍に配置されている。この結果、積層型LCフィルタ610は、線路状導体パターン97c~97jが、それぞれ、積層体1の中央近傍から周縁近傍に向って、放射状に配置されている。
【0186】
積層型LCフィルタ610は、積層型LCフィルタ600に比べて、積層体1の外部への磁界の漏れが抑制されており、積層体1に金属が近接しても、特性が変動しにくくなっている。その理由については、第5実施形態の第1変形例の積層型LCフィルタ510の説明において記載したので、ここでの記載は省略する。
【0187】
[実験2]
第6実施形態の有効性を確認するために、
図25(A-1)、(A-2)、(B-1)、(B-2)に示す、実験2を実施した。
【0188】
まず、変形例1の積層型LCフィルタ610を4つ用意した。そして、積層型LCフィルタ610の単体での特性を測定した。
【0189】
次に、
図25(A-1)に示すように、2つの積層型LCフィルタ610を、基板に100μmの間隔を空けて、方向を揃えて、整列させて実装した。このときの積層型LCフィルタ610の特性を、
図25(A-2)に示す。
【0190】
また、
図25(B-1)に示すように、2つの積層型LCフィルタ610を、基板に100μmの間隔を空けて、相互に方向を逆にして実装した。このときの積層型LCフィルタ610の特性を、
図25(B-2)に示す。
【0191】
図25(B-1)と
図25(B-2)とを比較して分かるように、2つの積層型LCフィルタ610を、方向を揃えて、整列させて実装した方が、方向を逆にして実装した場合よりも、近接実装した場合の特性の変動が小さい。これは、異なるLC並列共振器の線路状導体パターンを積層体1の異なる層に形成することにより、2つの積層型LCフィルタ610の間での不要な磁気結合の発生が抑制されたことによる効果であると考えられる。
【0192】
第6実施形態の積層型LCフィルタ600、610のように、異なるLC並列共振器の線路状導体パターンを積層体1の異なる層に形成し、かつ、2つの積層型LCフィルタを、方向を揃えて整列させて実装することによって、2つの積層型LCフィルタを近接実装しても、特性の変動を抑制することができる。
【0193】
以上、第1実施形態~第6実施形態について説明した。しかしながら、本発明が上述した内容に限定されることはなく、発明の趣旨に沿って種々の変更をなすことができる。
【0194】
たとえば、上記実施形態では、長さ方向において、開放ビア導体が積層体の中央寄りに配置され、短絡ビア導体が積層体の外寄りに配置されていたが、これに代えて、長さ方向、および、幅方向の両方において、開放ビア導体が積層体の中央寄りに配置され、短絡ビア導体が積層体の外寄りに配置されてもよい。
【0195】
本発明の一実施態様にかかる積層型LCフィルタは、「課題を解決するための手段」の欄に記載したとおりである。
【0196】
この積層型LCフィルタにおいて、少なくとも1つのLC並列共振器と、等価回路上において離れた、少なくとも1つの他のLC並列共振器とを、容量結合によって飛び越し結合させる、飛び越し結合用キャパシタ導体パターンが形成されることも好ましい。この場合には、飛び越し結合によって、積層型LCフィルタを所望の周波数特性に調整することができる。
【0197】
また、少なくとも1つのLC並列共振器において、当該LC並列共振器のキャパシタを構成する、キャパシタ導体パターンとグランド導体パターンとの間の誘電体層の層間に、当該キャパシタの容量を調整する調整用キャパシタ導体パターンが形成され、調整用キャパシタ導体パターンが、ビア導体によって、キャパシタ導体パターンおよびグランド導体パターンのいずれか一方に接続されることも好ましい。この場合には、LC並列共振器のキャパシタの容量を容易に調整することができ、積層型LCフィルタを所望の周波数特性に調整することができる。
【0198】
調整用キャパシタ導体パターンが形成された誘電体層の層間と同一の誘電体層の層間に、少なくとも1つのLC並列共振器と、等価回路上において離れた、少なくとも1つの他のLC並列共振器とを、容量結合によって飛び越し結合させる、飛び越し結合用キャパシタ導体パターンが形成されることも好ましい。この場合には、積層体1の高さ方向の大きさを大きくすることなく、飛び越し結合用キャパシタ導体パターンを形成することができる。
【0199】
少なくとも1つのLC並列共振器の短絡ビア導体と、少なくとも1つ他のLC並列共振器の短絡ビア導体とが接続され、当該接続点とグランド導体パターンとの間が、共通短絡ビア導体で接続されることも好ましい。この場合には、当該2つのLC並列共振器の間の磁気結合を強めることができ、積層型LCフィルタを所望の周波数特性に調整することができる。
【0200】
積層体は、実装側の主面と非実装側の主面とを有し、第1の線路状導体パターン、第2の線路状導体パターン、および、第3の線路状導体パターンと、非実装側の主面との間の、積層体層間に、シールド導体パターンが形成され、シールド導体パターン層は、シールド用ビア導体を経由して、グランド導体パターンと接続されることも好ましい。この場合には、積層体の周囲に金属が近接しても、特性の変動が抑制される。
【0201】
この場合において、シールド導体パターンは、シールド用ビア導体を経由して、直接に、グランド導体パターンと接続されることも好ましい。この場合には、シールド導体パターンを設けたことによる、積層型LCフィルタの特性の変動を小さくすることができる。
【0202】
積層体を高さ方向に透視したとき、第1の開放ビア導体、第2の開放ビア導体、第3の開放ビア導体が、それぞれ、積層体の中央近傍に配置され、第1の短絡ビア導体、第2の短絡ビア導体、第3の短絡ビア導体が、それぞれ、積層体の周縁近傍に配置され、第1の線路状導体パターン、第2の線路状導体パターン、第3の線路状導体パターンが、それぞれ、中央近傍から周縁近傍に向って、放射状に配置されることも好ましい。この場合には、積層体に金属が近接しても、更に特性が変動しにくい。
【0203】
複数のLC並列共振器は、第4のLC並列共振器を更に含み、第4のLC並列共振器は、第4の線路状導体パターンと、第4のキャパシタ導体パターンと、第4の線路状導体パターンと第4のキャパシタ導体パターンとを接続する第4の開放ビア導体と、第4の線路状導体パターンとグランド導体パターンとを接続する第4の短絡ビア導体と、を含み、積層体を高さ方向に透視したとき、第1の開放ビア導体、第2の開放ビア導体、第3の開放ビア導体、第4の開放ビア導体が、それぞれ、積層体の中央近傍に配置され、第1の短絡ビア導体、第2の短絡ビア導体、第3の短絡ビア導体、第4の短絡ビア導体が、それぞれ、積層体の周縁近傍に配置され、第1の線路状導体パターン、第2の線路状導体パターン、第3の線路状導体パターン、第4の線路状導体パターンが、それぞれ、中央近傍から周縁近傍に向って、放射状に配置されることも好ましい。この場合も、積層体に金属が近接しても、更に特性が変動しにくい。
【0204】
第1の線路状導体パターンと、第2の線路状導体パターンとが、積層体の異なる層間に配置されることも好ましい。この場合には、2つの積層型LCフィルタを、基板などに、方向を揃えて、整列させて実装すれば、両者が近接して実装されても、積層型LCフィルタどうしの間で不要な磁気結合が発生することが抑制され、特性が変動することが抑制される。
【0205】
複数のLC並列共振器は、第4のLC並列共振器を更に含み、第4のLC並列共振器は、第4の線路状導体パターンと、第4のキャパシタ導体パターンと、第4の線路状導体パターンと第4のキャパシタ導体パターンとを接続する第4の開放ビア導体と、第4の線路状導体パターンとグランド導体パターンとを接続する第4の短絡ビア導体と、を含み、第1の線路状導体パターンと第4の線路状導体パターンとが、積層体の同じ層間に配置され、第2の線路状導体パターンと第3の線路状導体パターンとが、積層体の同じ層間に配置され、第1の線路状導体パターンおよび第4の線路状導体パターンと、第2の線路状導体パターンおよび第3の線路状導体パターンとが、積層体の異なる層間に配置されることも好ましい。この場合も、2つの積層型LCフィルタを、基板などに、方向を揃えて、整列させて実装すれば、両者が近接して実装されても、積層型LCフィルタどうしの間で不要な磁気結合が発生することが抑制され、特性が変動することが抑制される。
【符号の説明】
【0206】
1・・・積層体
1a~1i、51a、61a、61b・・・誘電体層
2a~2r・・・ビア導体
3・・・グランド導体パターン
4a~4e・・・飛び越し結合用キャパシタ導体パターン
5a~5d・・・キャパシタ導体パターン
6a~6c・・・結合用キャパシタ導体パターン
7a~7j、77a~77j、87a~87j、97a~97j・・・線路状導体パターン
58・・・シールド導体パターン
62a、62b、62e、62f、62g、62h・・・シールド用ビア導体