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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-20
(45)【発行日】2025-01-28
(54)【発明の名称】気泡発生装置、および気泡発生システム
(51)【国際特許分類】
   B01F 31/80 20220101AFI20250121BHJP
   B01F 23/231 20220101ALI20250121BHJP
   B01F 25/30 20220101ALI20250121BHJP
【FI】
B01F31/80
B01F23/231
B01F25/30
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2023505125
(86)(22)【出願日】2021-12-22
(86)【国際出願番号】 JP2021047550
(87)【国際公開番号】W WO2022190571
(87)【国際公開日】2022-09-15
【審査請求日】2023-06-08
(31)【優先権主張番号】P 2021037607
(32)【優先日】2021-03-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤本 克己
【審査官】河野 隆一朗
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/189270(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/189271(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/189272(WO,A1)
【文献】特開2006-087984(JP,A)
【文献】特開2004-097851(JP,A)
【文献】特開2001-197594(JP,A)
【文献】国際公開第2018/207395(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01F 23/20 - 23/2375
B01F 25/30
B01F 25/40 - 25/46
B01F 31/00 - 31/87
B06B 1/00 - 3/04
C02F 1/72 - 1/78
F02M 25/00 - 25/14
F02M 33/00 - 33/08
F02M 37/00 - 37/54
F02M 55/00 - 55/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体槽に取り付け、前記液体槽の液体中に微細な気泡を発生させる気泡発生装置であって、
複数の開口部が形成され、一方の面が前記液体槽の液体と接し、他方の面が気体と接する位置に設けられる振動板と、
前記振動板の一方の端を支持する第1筒状体と、
前記第1筒状体の他方の端を支持する板状のバネ部と、
前記第1筒状体を支持する位置より外側にある位置において前記バネ部の一方の端を支持する第2筒状体と、
前記第2筒状体の他方の端を支持し、前記第2筒状体の位置より外側に伸びる板状のつば部と、
前記第2筒状体を支持する位置より外側にある位置において前記つば部を一方の端を支持する第3筒状体と、
前記第3筒状体の他方の端に設けられる錘部と、
前記第2筒状体により支持される前記バネ部の面に設けられ、前記バネ部を振動させる圧電素子と、を備え、
前記第1筒状体の中心軸から前記第3筒状体の外側の位置までの長さは、前記第3筒状体を設けない構成と比べて前記第2筒状体の貫通方向の変位量が半分になる範囲の長さである、気泡発生装置。
【請求項2】
前記第3筒状体および前記錘部は、前記圧電素子により前記バネ部を振動させた場合に、前記第2筒状体の一方の端に生じる第1の慣性モーメントと、前記第2筒状体の他方の端に生じる第2の慣性モーメントとの差が±3%以内となる位置に設ける、請求項1に記載の気泡発生装置。
【請求項3】
前記圧電素子は、前記第2筒状体により支持される側の前記バネ部の面において、前記第2筒状体により支持される位置よりも内側に設けられる、請求項1または請求項2に記載の気泡発生装置。
【請求項4】
前記圧電素子は、前記第2筒状体により支持される側の前記バネ部の面において、前記第2筒状体の内径の全面に設けられる、請求項1または請求項2に記載の気泡発生装置。
【請求項5】
請求項1~請求項のいずれか1項に記載の前記気泡発生装置と、
前記液体槽と、を備える、気泡発生システム。
【請求項6】
前記気泡発生装置は、前記第2筒状体の側面において前記液体槽と結合されている、請求項に記載の気泡発生システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、気泡発生装置、および気泡発生システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、微細な気泡を使って水質浄化、排水処理、魚の養殖などが行なわれており、微細な気泡が様々な分野で利用されている。そのため、微細な気泡を発生する気泡発生装置が開発されている(特許第6108526号公報:特許文献1)。
【0003】
特許文献1に記載の気泡発生装置では、圧電素子を利用して微細な気泡を発生させている。この気泡発生装置では、屈曲振動する振動板の中央部での上下振動を利用して、振動板に形成した細孔で発生した気泡を振動で引きちぎり微細化している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第6108526号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
気泡発生装置の用途には、例えば、ディーゼルエンジンの燃焼を向上させるため軽油に気泡を発生させる車載用途がある。車載用途の場合、高い信頼性が求められ、気泡発生装置は、液体槽と気泡発生装置との結合部分などから液体槽の液体(軽油)が漏れないような対策を行う必要があった。
【0006】
そこで、本開示の目的は、液体槽と気泡発生装置との結合部分などから液体槽の液体が漏れにくい気泡発生装置、および気泡発生システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一形態に係る気泡発生装置は、液体槽に取り付け、液体槽の液体中に微細な気泡を発生させる気泡発生装置であって、複数の開口部が形成され、一方の面が液体槽の液体と接し、他方の面が気体と接する位置に設けられる振動板と、振動板の一方の端を支持する第1筒状体と、第1筒状体の他方の端を支持する板状のバネ部と、第1筒状体を支持する位置より外側にある位置においてバネ部の一方の端を支持する第2筒状体と、第2筒状体の他方の端を支持し、第2筒状体の位置より外側に伸びる板状のつば部と、第2筒状体を支持する位置より外側にある位置においてつば部を一方の端を支持する第3筒状体と、第3筒状体の他方の端に設けられる錘部と、第2筒状体により支持されるバネ部の面に設けられ、バネ部を振動させる圧電素子と、を備え、第1筒状体の中心軸から第3筒状体の外側の位置までの長さは、第3筒状体を設けない構成と比べて第2筒状体の貫通方向の変位量が半分になる範囲の長さである
【0008】
本開示の別の一形態に係る気泡発生システムは、前述の気泡発生装置と、液体槽と、を備える。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、気泡発生装置において、第3筒状体および錘部を設けるので、液体槽との結合部分の変位量を所定の範囲内となるように調整することができ、液体槽と気泡発生装置との結合部分などから液体槽の液体が漏れにくくできる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本実施の形態に係る気泡発生装置が用いられる気泡発生システムの概略図である。
図2】本実施の形態に係る気泡発生装置の斜視図である。
図3】本実施の形態に係る気泡発生装置の断面図である。
図4】本実施の形態に係る気泡発生装置の半断面図である。
図5】第3筒状体の他方の端に設けられる錘部の位置が異なるタイプの気泡発生装置の半断面図である。
図6】本実施の形態に係る気泡発生装置のうち、タイプAの対象側面のZ方向の変位量を示すグラフである。
図7】本実施の形態に係る気泡発生装置うち、タイプAの対象側面のX方向の変位量を示すグラフである。
図8】位置Dの長さに対する平均変位量の変化を示すグラフである。
図9】タイプごとの位置Dの長さに対するZ方向の平均変位量の変化を示すグラフである。
図10】位置Dの長さに対する慣性モーメントの変化を示すグラフである。
図11】錘部の密度に対するZ方向の変位量を示すグラフである。
図12】バネ部の端部をテーパ形状に加工した例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(実施の形態)
以下に、本実施の形態に係る気泡発生装置、および気泡発生システムについて、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中の同一または相当部分については、同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0012】
まず、図1は、本実施の形態に係る気泡発生装置1が用いられる気泡発生システム100の概略図である。図1に示す気泡発生装置1は、例えば、水,ガソリン,軽油などの液体を貯留する液体槽10の底部に設けられ、液体槽10の液体に微細な気泡200を発生させる気泡発生システム100に用いられる。なお、気泡発生システム100は、例えば、水質浄化装置、排水処理装置、魚の養殖用水槽、燃料噴射装置などの様々なシステムに適用することができる。
【0013】
また、液体槽10は、適用するシステムにより導入される液体が異なり、水質浄化装置であれば水になるが、燃料噴射装置であれば液体燃料になる。さらに、液体槽10は、液体を一時的に貯留することができればよく、液体が導入される管において当該管の中を常に液体が流れるようなものも含む。
【0014】
気泡発生装置1は、振動板2と、筒状体3と、圧電素子4とを備えている。気泡発生装置1は、液体槽10の底部の一部に開けた孔に設けられ、当該孔から液体側に突き出た振動板2を圧電素子4により振動させることにより、振動板2に形成した複数の細孔(開口部)から微細な気泡200を発生させている。
【0015】
振動板2は、例えば、樹脂板、金属板、SiもしくはSOI(Silicon On Insulator)基板、多孔質のセラミック板、ガラス板などで形成されている。振動板2をガラス板により形成する場合、例えば、波長が200nm~380nmの紫外光および深紫外光を透過させるガラス板により形成してもよい。紫外光および深紫外光を透過させるガラス板により形成することで、振動板2の他方の面側から液体槽10の液体に対して紫外光を発する光源を設け、オゾン生成による殺菌と紫外光照射による殺菌とを兼用させることができる。
【0016】
振動板2は、複数の細孔が形成され、一方の面が液体槽10の液体(例えば、水)と接し、他方の面が気体(例えば、空気)と接している。つまり、気泡発生装置1では、振動板2により液体と空気とを分離し、他方の面に背圧を加え(図1に示す矢印方向)ることで、複数の細孔を通って気体が液体槽10の液体に送り込まれる。気泡発生装置1は、複数の細孔を通って送り込まれた気体を、振動板2の振動により引きちぎることで微細な気泡200を発生させている。
【0017】
さらに詳しく説明すると、複数の細孔から気体が出ようとする際、液体の表面張力によって液体側へ気体が侵入するのを阻害する一方、気体の浮力によりその表面張力を断ち切る力が働くことになる。このバランスにより気泡200の径が決まることになるが、振動板2の振動により細孔の壁面からの引きはがし効果が生じ、あたかも表面張力が小さくなったかのような状態となる。その結果、複数の細孔から気体が出ようとする初期の段階で、振動板2の振動により気体が引きちぎられ、振動板2の振動を加えない場合に比べて1/10程度の径の微細な気泡200を発生させることができる。
【0018】
図示していないが、たとえば、直径14mmの振動板2の中央部に設ける5mm×5mmの領域に複数の細孔が形成されている。細孔の孔径を1μm、細孔の間隔を0.25mmにした場合、5mm×5mmの領域に441個の細孔を形成することができる。
【0019】
気泡発生装置1では、筒状体3を介して圧電素子4により振動板2を振動させている。図2は、本実施の形態に係る気泡発生装置1の斜視図である。図3は、本実施の形態に係る気泡発生装置の断面図である。図1に示す筒状体3は、図3に示すように第1筒状体31、バネ部32、第2筒状体33、つば部34、第3筒状体35、および錘部36を含んでいる。なお、図3の気泡発生装置1は、第2筒状体33の貫通方向(図中、上下方向)に中央で切断した断面図である。
【0020】
振動板2の端部は、円筒状の第1筒状体31の端部により保持されている。振動板2に形成された複数の細孔の貫通方向が、第1筒状体31の振動方向に対して平行となる位置において、振動板2が第1筒状体31に支持されている。第1筒状体31は、振動板2側とは反対側の端部がバネ部32に支持されている。バネ部32は、弾性変形可能な板状の部材であり、円筒状の第1筒状体31の底面を支持し、第1筒状体31の外側に向かって延伸している。バネ部32には、第1筒状体31と第2筒状体33とを貫通する孔が設けられておらず、側面から第1筒状体31に気体を流入させる少なくとも1つの連通部320を設けている。第1筒状体31と第2筒状体33とを貫通する孔をバネ部32に設けないことで、振動板2に形成された複数の細孔から漏れた液体が第2筒状体33より下側に漏れることがなく、圧電素子4を液体から保護することができる。もちろん、バネ部32が中空円状で、第1筒状体31と第2筒状体33とを貫通する孔を有していてもよい。また、連通部320をバネ部32に設けなくてもよい。
【0021】
バネ部32は、第1筒状体31を支持する位置の外側にある位置において第2筒状体33により支持されている。第2筒状体33は、円筒状の形態である。第2筒状体33は、一方の端によりバネ部32を支持する。第2筒状体33は、バネ部32側とは反対側の端部がつば部34に支持されている。つば部34は、板状の部材であり、円筒状の第2筒状体33の底面を支持し、第2筒状体33を支持した位置から外側に向かって延伸している。
【0022】
つば部34は、第2筒状体33を支持する位置の外側にある位置において第3筒状体35により支持されている。第3筒状体35は、円筒状の形態である。第3筒状体35は、一方の端によりつば部34を支持する。第3筒状体35の他方の端には、外側に円筒状の錘部36を有している。なお、第3筒状体35および錘部36は、圧電素子4によりバネ部32を振動させた場合に第2筒状体33の側面の変位量が所定の範囲内となる位置に設けてある。
【0023】
バネ部32の下面には、バネ部32の形状に合わせて円状の圧電素子4が設けられている。圧電素子4は、第1筒状体31の貫通方向(図中、上下方向)に振動する。圧電素子4が第1筒状体31の貫通方向に振動することにより、バネ部32を第1筒状体31の貫通方向に振動させて第1筒状体31が略均一に上下方向に変位させる。なお、圧電素子4は、第2筒状体33の内径の全面を覆う円状ではなく、中央部に孔を有する中空円状であってもよい。
【0024】
第1筒状体31、バネ部32、第2筒状体33、つば部34、第3筒状体35、および錘部36は、一体的に形成される。第1筒状体31、バネ部32、第2筒状体33、つば部34、第3筒状体35、および錘部36は、たとえば、ステンレスなどの金属や合成樹脂からなる。好ましくは、ステンレスなどの剛性の高い金属が望ましい。なお、第1筒状体31、バネ部32、第2筒状体33、つば部34、第3筒状体35、および錘部36を別体として形成してもよいし、別部材として形成してもよい。振動板2と第1筒状体31との接合方法は、特に問わない。振動板2と第1筒状体31とを、接着剤、溶着、嵌合、圧入、などで接合してもよい。
【0025】
気泡発生装置1は、図1に示すように、バネ部32の外側の端部または第2筒状体33の外側面において、液体槽10の底部の一部に開けた孔と結合している。バネ部32の外側の端部または第2筒状体33の外側面は、後述するように第3筒状体35および錘部36を設けることで、圧電素子4により振動板2を振動させてもほぼ無振動である。そのため、圧電素子4の振動を液体槽10に伝えずに、実質的に振動板2のみを振動させることが可能である。さらに、気泡発生装置1と液体槽10との結合部分などから液体槽10の液体が漏れにくくできる。
【0026】
圧電素子4は、例えば、厚み方向において分極することで振動する。圧電素子4は、チタン酸ジルコン酸鉛系圧電セラミックスからなる。もっとも、(K,Na)NbO3などの他の圧電セラミックスが用いられてもよい。さらにLiTaO3などの圧電単結晶が用いられてもよい。圧電素子4は、コントローラ20(図1参照)からの駆動信号に基づいて、第1筒状体31の貫通方向に振動させる。
【0027】
気泡発生装置1では、液体に接する振動板2の構造を例えばガラス板とし、筒状体3を介して圧電素子4により振動板2を振動させる構成にすることで、気体を導入する空間と液体とを完全分離することができる。気体を導入する空間と液体とを完全分離することで、圧電素子4の電気配線等が液体に浸かることを防止できる。また、気泡発生装置1では、液体槽10の液体に対して紫外光を発する光源を設ける場合でも、気体を導入する空間に当該光源を設けることができるので、当該光源の電気配線等が液体に浸かることも防止できる。
【0028】
次に、気泡発生装置1に第3筒状体35および錘部36を設けることで、第2筒状体33の外側面(液体槽10との結合部分)の変位量を調整することについて詳しく説明する。図4は、本実施の形態に係る気泡発生装置の半断面図である。図4に示す一点鎖線は、第1筒状体31の中心軸を通る部分である。また、第1筒状体31の内側の位置を位置A、第2筒状体33の内側の位置を位置B、第2筒状体33の外側の位置を位置C、第3筒状体35の外側の位置を位置Dとしている。また、バネ部32の外側の端部または第2筒状体33の外側面が、液体槽10と接合する側面で、変位量を所定の範囲内に抑える対象側面である。第2筒状体33の貫通方向(図中、上下方向)をZ方向、図中、左右方向をX方向とする。
【0029】
図5は、第3筒状体35の他方の端に設けられる錘部36の位置が異なるタイプの気泡発生装置1の半断面図である。図5(a)は、中心軸から錘部36の外側までの長さが7.0mmとなる気泡発生装置1のタイプAが図示されている。図5(b)は、中心軸から錘部36の外側までの長さが7.5mmとなる気泡発生装置1のタイプBが図示されている。図5(a)および図5(b)では、中心軸から錘部36の内側までの長さが、中心軸から第3筒状体35の内側までの長さに合わせて変化する。図5(c)は、中心軸から錘部36の外側までの長さが7.0mmで、錘部36の内側の位置が位置Bに固定された気泡発生装置1のタイプCが図示されている。
【0030】
図5(a)~図5(c)に示す気泡発生装置1のタイプA~タイプCのそれぞれに対して、圧電素子4により振動板2を振動させるシミュレーションを行い、対象側面の変位量の変化を求めた。図6は、気泡発生装置1のタイプAの対象側面のZ方向の変位量を示すグラフである。図7は、気泡発生装置1のタイプAの対象側面のX方向の変位量を示すグラフである。図6および図7では、縦軸を変位量(単位μm)、横軸を対象側面での位置(バネ部32~つば部34までの第2筒状体33の側面上の位置)(単位mm)としている。さらに、図6および図7では、中心軸から位置Dまでの長さ(以下、単に位置Dの長さともいう)を4.5mm(D1)、5.25mm(D2)、5.75mm(D3)、6.0mm(D4)、6.25mm(D5)、6.5mm(D6)、6.75mm(D7)、7.0mm(D8)に変化させた場合の対象側面の変位量が図示されている。
【0031】
図8は、位置Dの長さに対する平均変位量の変化を示すグラフである。図8では、縦軸を平均変位量(単位μm)、横軸を位置Dの長さ(単位mm)としている。図6および図7で示した変位量を中心軸から位置Dまでの長さごとに平均値を求めてプロットしたグラフが図8である。図8から分かるように気泡発生装置1のタイプAでは、位置Dの長さが6.5mmの時にX方向およびZ方向の変位量がほぼ0(ゼロ)になる。
【0032】
気泡発生装置1のタイプBおよびタイプCについても同様にシミュレーションを行い、図6図8で示した処理を行うことで、タイプAと同様、X方向の変位量がZ方向の変位量に比べて小さく、また位置Dの長さが長いほどX方向の変位量が小さくなる。気泡発生装置1のタイプBでは、位置Dの長さが6.3mmの時にX方向およびZ方向の変位量がほぼ0(ゼロ)になる。気泡発生装置1のタイプCでは、位置Dの長さが6.1mmの時にX方向およびZ方向の変位量がほぼ0(ゼロ)になる。
【0033】
図9は、タイプごとの位置Dの長さに対するZ方向の平均変位量の変化を示すグラフである。図9では、縦軸をZ方向の平均変位量(単位μm)、横軸を位置Dの長さ(単位mm)としている。さらに、図9には、所定の範囲Sが図示されている。変位対象範囲(第2筒状体33の側面)の変位量が所定の範囲S内になるとは、例えば、初期値の半分程度に平均変位量が収まることである。具体的に、図9に示す例では、Z方向の平均変位量において、初期値(約+0.06μm)を半分にした絶対値の範囲(約±0.03μmの範囲)が所定の範囲Sであるとしている。この所定の範囲Sを満たす位置Dの範囲は、一番厳しいタイプCで約±0.4mm=約±3%で、タイプAで約±0.7mm=約±5%となる。所定の範囲Sは、第3筒状体35がない場合の変位量の半分になる範囲としたが、これに限定されず、液体槽10と気泡発生装置1との結合部分などから液体槽10の液体が漏れにくくできる範囲であればよい。
【0034】
第3筒状体35および錘部36を設ける位置を、慣性モーメントの観点から規定することもできる。位置A-位置B間の慣性モーメントIaは、第2筒状体33の一方の端に生じる第1の慣性モーメントであり、Ia=Ma(B-A)×(1/2)と求めることができる。ここで、Maは、振動板2、第1筒状体31、およびバネ部32の質量を含み、面密度を考慮した等価質量であり、AおよびBは、位置Aおよび位置Bの座標である。一方、位置C-位置D間の慣性モーメントIbは、第2筒状体33の他方の端に生じる第2の慣性モーメントであり、Ib=Mb(D-C)×(1/2)と求めることができる。ここで、Mbは、第3筒状体35、および錘部36の質量を含み、面密度を考慮した等価質量であり、CおよびDは、位置Cおよび位置Dの座標である。
【0035】
位置A-位置B間の慣性モーメントIaは、気泡発生装置1のタイプに依存しないが、位置C-位置D間の慣性モーメントIbは、気泡発生装置1のタイプに依存する、図10は、位置Dの長さに対する慣性モーメントの変化を示すグラフである。図10では、縦軸を慣性モーメント(任意単位ARB.)、横軸を位置Dの長さ(単位mm)としている。慣性モーメントIaは、気泡発生装置1のタイプに依存しないため一定値(=83565)となる。一方、慣性モーメントIbは、気泡発生装置1のタイプに依存するため、タイプごとにグラフが図示されている。
【0036】
図10から分かるように、慣性モーメントIaとそれぞれタイプの慣性モーメントIbとが一致する位置Dの長さは、図9で示したZ方向の変位量がほぼ0(ゼロ)となる位置Dの長さに近い値となる。具体的に、慣性モーメントIaと慣性モーメントIbとが一致する位置Dの長さは、気泡発生装置1のタイプAでは約6.6mm、タイプBでは約6.2mm、タイプCでは約5.9mmとなる。そのため、慣性モーメントIaと慣性モーメントIbと差が±3%以内であれば、図9に示したように変位対象範囲(第2筒状体33の側面)の変位量が所定の範囲S内となる。
【0037】
なお、タイプAの慣性モーメントIbのグラフの変化がなだらかであることから、位置Dの範囲の許容度も広いことが分かり、この点からも図9に示したタイプAの位置Dの範囲の傾向と同じである。
【0038】
錘部36の密度によっても対象側面の変位量が変化することを説明する。図11は、錘部36の密度に対するZ方向の変位量を示すグラフである。図11では、縦軸をZ方向の変位量(単位μm)、横軸を対象側面での位置(バネ部32~つば部34までの第2筒状体33の側面上の位置)(単位mm)としている。さらに、図11では、錘部36がCu(密度8.93g/cm)、錘部36がSUS(Steel Use Stainless)(密度7.75g/cm)、錘部36がジュラルミン(密度2.79g/cm)とした場合の対象側面の変位量が図示されている。図11から、第3筒状体35および錘部36の位置が同じであっても密度が小さければ対象側面の変位量が大きくなることが分かる。
【0039】
以上のように、本実施の形態に係る気泡発生装置1は、液体槽10に取り付け、液体槽10の液体中に微細な気泡を発生させる。気泡発生装置1は、振動板2と、第1筒状体31と、バネ部32と、第2筒状体33と、つば部34と、第3筒状体35と、錘部36と、圧電素子4と、を備える。振動板2は、複数の開口部が形成され、一方の面が液体槽10の液体と接し、他方の面が気体と接する位置に設けられる。第1筒状体31は、一方の端により振動板2を支持する。バネ部32は、板状であり、第1筒状体31の他方の端を支持する。第2筒状体33は、第1筒状体31を支持する位置より外側にある位置においてバネ部32を一方の端により支持する。つば部34は、板状であり、第2筒状体33の他方の端を支持し、第2筒状体33の位置より外側に伸びる。第3筒状体35は、第2筒状体33を支持する位置より外側にある位置においてつば部34を一方の端を支持する。錘部36は、第3筒状体35の他方の端に設けられる。圧電素子4は、バネ部32を振動させる。第3筒状体35および錘部36は、圧電素子4によりバネ部32を振動させた場合に第2筒状体33の側面の変位量が所定の範囲S内となる位置に設ける。
【0040】
これにより、気泡発生装置1では、第3筒状体35および錘部36を設けることで、液体槽10との結合部分の変位量を所定の範囲S内となるように調整することができ、液体槽10と気泡発生装置1との結合部分などから液体槽10の液体が漏れにくくできる。
【0041】
また、気泡発生装置1では、振動板2の細孔から軽油が第1筒状体31の内部に漏れ出た場合、漏れた軽油が圧電素子4にかかって腐食しないように、バネ部32に第1筒状体31から第2筒状体33へ貫通する孔を設けていない。その代わりに、バネ部32は、図3に示すように、側面から第1筒状体31に気体を流入させる連通部320を設けている。この連通部320の開口から気体を流入させるためにも、バネ部32を含む第2筒状体33の変位量を所定の範囲S内に抑える必要がある。さらに、第1筒状体31の底に溜まった軽油を連通部320を使って外部に逃がす構造を採用した場合、当該構造と連通部320の開口との結合部が圧電素子4の振動の影響を受けにくくするためにも、バネ部32を含む第2筒状体33の変位量を所定の範囲S内に抑える必要がある。
【0042】
第3筒状体35および錘部36は、圧電素子4によりバネ部32を振動させた場合に、第2筒状体33の一方の端に生じる第1の慣性モーメント(Ia)と、第2筒状体33の他方の端に生じる第2の慣性モーメント(Ib)との差が所定の差となる位置に設けることが好ましい。これにより、気泡発生装置1は、圧電素子4によりバネ部32を振動させた場合に第2筒状体33の側面の変位量が所定の範囲S内となる調整することができる。特に、所定の差は、±3%以内であることが好ましい。
【0043】
圧電素子4は、第2筒状体33により支持される側のバネ部32の面において、第2筒状体33により支持される位置よりも内側に設けられることが好ましい。これにより、気泡発生装置1は、圧電素子4による振動を第1筒状体31に対して効率よく伝えることができ、第1筒状体31および振動板2を平行に上下振動させることができる。
【0044】
圧電素子4は、第2筒状体33により支持される側のバネ部32の面において、第2筒状体33の内径の全面に設けられることが好ましい。これにより、微細な気泡をより効果的に発生させることができる。
【0045】
(変形例1)
前述の実施の形態に係る気泡発生装置1では、バネ部32は板状であると説明したが、バネ部32の端部をテーパ形状に加工してもよい。エッジ部には変位の大きい傾斜が現れる場合が多く、テーパをつけることにより内部の変位量の傾斜が少ない部位への保持板形成が可能になるからである。側面部に2つの保持部を設けて保持強度を上げ、液漏れを二重に防いだり、空間部に気体を導入したりする場合に、1枚をこのテーパ部に設けることが可能になる。図12は、バネ部の端部をテーパ形状に加工した例を示す図である。なお、図12に示す気泡発生装置1aのうち、図3に示す気泡発生装置1と同じ構成については同じ符号を付して詳しい説明は繰り返さない。
【0046】
図12に示すように、バネ部32aは、端部をテーパ形状32bに加工してある。図12に示すように、バネ部32aの端部のうち振動板2に近い側の角をテーパ形状32bに加工することで、圧電素子4の振動をバネ部32aでダンピングさせにくくできる。
【0047】
(変形例2)
第2筒状体33は、図1に示すようにフランジ部33aを設け、フランジ部33aを介して液体槽10を結合させてもよい。これにより、気泡発生装置1と液体槽10とを備える気泡発生システム100において、気泡発生装置1と液体槽10との気密性が高くなる。
【0048】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した説明ではなく、請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0049】
1,1a 気泡発生装置、2 振動板、3 筒状体、4 圧電素子、10 液体槽、20 コントローラ、31 第1筒状体、32 バネ部、33 第2筒状体、33a フランジ部、34 つば部、35 第3筒状体、36 錘部、100 気泡発生システム、200 気泡。
図1
図2
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図4
図5
図6
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図8
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図10
図11
図12