(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-20
(45)【発行日】2025-01-28
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
H10D 12/00 20250101AFI20250121BHJP
H10D 30/66 20250101ALI20250121BHJP
H10D 62/10 20250101ALI20250121BHJP
【FI】
H01L29/78 655B
H01L29/78 652T
H01L29/78 653A
H01L29/78 655G
H01L29/06 301D
H01L29/06 301V
(21)【出願番号】P 2023515428
(86)(22)【出願日】2022-04-13
(86)【国際出願番号】 JP2022017660
(87)【国際公開番号】W WO2022224883
(87)【国際公開日】2022-10-27
【審査請求日】2023-03-30
(31)【優先権主張番号】P 2021071267
(32)【優先日】2021-04-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小宮山 典宏
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 雅浩
(72)【発明者】
【氏名】小野澤 勇一
(72)【発明者】
【氏名】山田 昭治
【審査官】上田 智志
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/125490(WO,A1)
【文献】特開2003-338626(JP,A)
【文献】特開2009-176882(JP,A)
【文献】国際公開第2015/093190(WO,A1)
【文献】特開2013-138172(JP,A)
【文献】特開2013-055098(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/336、29/06、
29/12、29/739、
29/78
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面および下面を有し、第1導電型のドリフト領域を有する半導体基板と、
前記上面の上方に設けられた第1主端子と、
前記下面の下方に設けられた第2主端子と、
前記第1主端子および前記第2主端子の間に電流を流すか否かを制御する制御端子と、
前記ドリフト領域および前記下面の間に設けられ、前記ドリフト領域よりもドーピング濃度が高いバッファ領域と、
前記制御端子と対向して設けられ、前記制御端子に制御電圧が印加されることで、前記制御端子と対向するチャネル領域に反転層チャネルが形成される第2導電型のベース領域と
を備え、
前記第1主端子および前記第2主端子の間に印加する電源電圧と、前記制御端子および前記第2主端子の間の端子間容量との関係を示すC-V特性において、前記電源電圧が500V以上の領域に、前記端子間容量のピークを有し、
前記バッファ領域は、前記ドリフト領域との境界から前記下面に向かってドーピング濃度が単調に増加する増加領域を有し、
前記増加領域における前記ドーピング濃度の常用対数の値が、深さ方向の1cm当たりに増加する傾きαと、前記チャネル領域の総長さβとが、下式を満たす
β>2×10
3/α
半導体装置。
【請求項2】
上面および下面を有し、第1導電型のドリフト領域を有する半導体基板と、
前記上面の上方に設けられた第1主端子と、
前記下面の下方に設けられた第2主端子と、
前記第1主端子および前記第2主端子の間に電流を流すか否かを制御する制御端子と、
前記ドリフト領域および前記下面の間に設けられ、前記ドリフト領域よりもドーピング濃度が高いバッファ領域と
を備え、
前記第1主端子および前記第2主端子の間に印加する電源電圧と、前記制御端子および前記第2主端子の間の端子間容量との関係を示すC-V特性において、前記電源電圧が500V以上の領域に、前記端子間容量のピークを有し、
前記バッファ領域は、深さ方向において前記バッファ領域の1/2以上
であって、前記バッファ領域のドーピング濃度分布の前記下面側に設けられるドーピング濃度ピークまでの領域に渡って設けられ、前記ドリフト領域との境界から前記下面に向かってドーピング濃度が単調に増加する増加領域を有
し、
前記バッファ領域の深さ方向における前記ドーピング濃度分布が有する前記ドーピング濃度ピークは1つである
半導体装置。
【請求項3】
上面および下面を有し、第1導電型のドリフト領域を有する半導体基板と、
前記上面の上方に設けられた第1主端子と、
前記下面の下方に設けられた第2主端子と、
前記第1主端子および前記第2主端子の間に電流を流すか否かを制御する制御端子と、
前記ドリフト領域および前記下面の間に設けられ、前記ドリフト領域よりもドーピング濃度が高いバッファ領域と
を備え、
前記第1主端子および前記第2主端子の間に印加する電源電圧と、前記制御端子および前記第2主端子の間の端子間容量との関係を示すC-V特性において、前記電源電圧が500V以上の領域に、前記端子間容量のピークを有し、
前記バッファ領域は、深さ方向において前記バッファ領域の10μm以上
であって、前記バッファ領域のドーピング濃度分布の前記下面側に設けられるドーピング濃度ピークまでの領域に渡って設けられるとともに、前記ドリフト領域との境界から前記下面に向かってドーピング濃度が単調に増加する増加領域を有
し、
前記増加領域において、前記ドーピング濃度分布は、水素化学濃度分布よりも平坦である
半導体装置。
【請求項4】
前記増加領域は、深さ方向において前記バッファ領域の20μm以上に渡って設けられる
請求項3に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記制御端子と対向して設けられ、前記制御端子に制御電圧が印加されることで、前記制御端子と対向するチャネル領域に反転層チャネルが形成される第2導電型のベース領域と
を備え、
前記増加領域における前記ドーピング濃度の常用対数の値が、深さ方向の1cm当たりに増加する傾きαと、前記チャネル領域の総長さβとが、下式を満たす
β>2×10
3/α
請求項2または3に記載の半導体装置。
【請求項6】
上面および下面を有し、第1導電型のドリフト領域を有する半導体基板と、
前記上面の上方に設けられた第1主端子と、
前記下面の下方に設けられた第2主端子と、
前記第1主端子および前記第2主端子の間に電流を流すか否かを制御する制御端子と、
前記ドリフト領域および前記下面の間に設けられ、前記ドリフト領域よりもドーピング濃度が高いバッファ領域と
を備え、
前記第1主端子および前記第2主端子の間に印加する電源電圧と、前記制御端子および前記第2主端子の間の端子間容量との関係を示すC-V特性において、前記電源電圧が500V以上の領域に、前記端子間容量のピークを有し、
前記バッファ領域は、深さ方向において前記バッファ領域の10μm以上であって、前記バッファ領域のドーピング濃度分布の前記下面側に設けられるドーピング濃度ピークまでの領域に渡って設けられるとともに、前記ドリフト領域との境界から前記下面に向かってドーピング濃度が単調に増加する増加領域を有し、
前記C-V特性は、前記電源電圧が500V未満の領域において前記端子間容量が極小値を示す谷部を有し、
前記電源電圧が500Vのときの前記端子間容量が、前記極小値よりも大きい
半導体装置。
【請求項7】
半導体装置であって、
上面および下面を有し、第1導電型のドリフト領域を有する半導体基板と、
前記上面の上方に設けられた第1主端子と、
前記下面の下方に設けられた第2主端子と、
前記第1主端子および前記第2主端子の間に電流を流すか否かを制御する制御端子と、
前記ドリフト領域および前記下面の間に設けられ、前記ドリフト領域よりもドーピング濃度が高いバッファ領域と
を備え、
前記第1主端子および前記第2主端子の間に印加する電源電圧と、前記制御端子および前記第2主端子の間の端子間容量との関係を示すC-V特性において、前記電源電圧が500V以上の領域に、前記端子間容量のピークを有し、
前記バッファ領域は、深さ方向において前記バッファ領域の10μm以上であって、前記バッファ領域のドーピング濃度分布の前記下面側に設けられるドーピング濃度ピークまでの領域に渡って設けられるとともに、前記ドリフト領域との境界から前記下面に向かってドーピング濃度が単調に増加する増加領域を有し、
前記C-V特性は、前記半導体装置をオン状態に設定し、且つ、前記第1主端子と前記第2主端子の間に印加される電源電圧を初期電圧に設定した状態で、前記第1主端子と前記第2主端子の間に流れる電流を安定させた後に、前記電源電圧を前記初期電圧より小さい変位電圧だけ変化させたときのいずれかの端子における電荷量の変化を、前記半導体装置内の電荷の過渡的な変化を模擬するデバイスシミュレータにより解析し、解析した電荷量の変化に基づいて前記端子間容量を計算することで取得された特性である
半導体装置。
【請求項8】
前記バッファ領域の深さ方向におけるドーピング濃度分布が有するドーピング濃度ピークは
1つである
請求項
1または3に記載の半導体装置。
【請求項9】
前記バッファ領域の深さ方向における水素化学濃度分布は、前記ドーピング濃度ピークよりも多くの水素濃度ピークを有する
請求項8に記載の半導体装置。
【請求項10】
前記半導体基板の前記上面において配列方向に並んで配置され、且つ、前記半導体基板の前記上面から前記ドリフト領域まで設けられた複数のトレンチ部と、
2つのトレンチ部に挟まれたメサ部と
を更に備え、
前記メサ部の前記配列方向における幅は、前記トレンチ部の深さの20%以下である
請求項1から4のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項11】
前記メサ部の幅が1.1μm以下である
請求項10に記載の半導体装置。
【請求項12】
前記増加領域において、ドーピング濃度分布は、水素化学濃度分布よりも平坦である
請求項
1または2に記載の半導体装置。
【請求項13】
上面および下面を有し、第1導電型のドリフト領域を有する半導体基板と、
前記上面の上方に設けられた第1主端子と、
前記下面の下方に設けられた第2主端子と、
前記第1主端子および前記第2主端子の間に電流を流すか否かを制御する制御端子と、
前記ドリフト領域および前記下面の間に設けられ、前記ドリフト領域よりもドーピング濃度が高いバッファ領域と
を備え、
前記第1主端子および前記第2主端子の間に印加する電源電圧と、前記制御端子および前記第2主端子の間の端子間容量との関係を示すC-V特性において、前記電源電圧が500V以上の領域に、前記端子間容量のピークを有し、
前記バッファ領域は、深さ方向において前記バッファ領域の1/2以上であって、前記バッファ領域のドーピング濃度分布の前記下面側に設けられるドーピング濃度ピークまでの領域に渡って設けられ、前記ドリフト領域との境界から前記下面に向かってドーピング濃度が単調に増加する増加領域を有し、
前記C-V特性は、前記電源電圧が500V未満の領域において前記端子間容量が極小値を示す谷部を有し、
前記電源電圧が500Vのときの前記端子間容量が、前記極小値よりも大きい
半導体装置。
【請求項14】
半導体装置であって、
上面および下面を有し、第1導電型のドリフト領域を有する半導体基板と、
前記上面の上方に設けられた第1主端子と、
前記下面の下方に設けられた第2主端子と、
前記第1主端子および前記第2主端子の間に電流を流すか否かを制御する制御端子と、
前記ドリフト領域および前記下面の間に設けられ、前記ドリフト領域よりもドーピング濃度が高いバッファ領域と
を備え、
前記第1主端子および前記第2主端子の間に印加する電源電圧と、前記制御端子および前記第2主端子の間の端子間容量との関係を示すC-V特性において、前記電源電圧が500V以上の領域に、前記端子間容量のピークを有し、
前記バッファ領域は、深さ方向において前記バッファ領域の1/2以上であって、前記バッファ領域のドーピング濃度分布の前記下面側に設けられるドーピング濃度ピークまでの領域に渡って設けられ、前記ドリフト領域との境界から前記下面に向かってドーピング濃度が単調に増加する増加領域を有し、
前記C-V特性は、前記半導体装置をオン状態に設定し、且つ、前記第1主端子と前記第2主端子の間に印加される電源電圧を初期電圧に設定した状態で、前記第1主端子と前記第2主端子の間に流れる電流を安定させた後に、前記電源電圧を前記初期電圧より小さい変位電圧だけ変化させたときのいずれかの端子における電荷量の変化を、前記半導体装置内の電荷の過渡的な変化を模擬するデバイスシミュレータにより解析し、解析した電荷量の変化に基づいて前記端子間容量を計算することで取得された特性である
半導体装置。
【請求項15】
上面および下面を有し、第1導電型のドリフト領域を有する半導体基板と、
前記上面の上方に設けられた第1主端子と、
前記下面の下方に設けられた第2主端子と、
前記第1主端子および前記第2主端子の間に電流を流すか否かを制御する制御端子と、
前記ドリフト領域および前記下面の間に設けられ、前記ドリフト領域よりもドーピング濃度が高いバッファ領域と、
前記制御端子と対向して設けられ、前記制御端子に制御電圧が印加されることで、前記制御端子と対向するチャネル領域に反転層チャネルが形成される第2導電型のベース領域と
を備え、
前記バッファ領域は、前記ドリフト領域との境界から前記下面に向かってドーピング濃度が単調に増加する増加領域を有し、
前記増加領域における前記ドーピング濃度の常用対数の値が、深さ方向の1cm当たりに増加する傾きαと、前記チャネル領域の総長さβとが、下式を満たす
β>2×10
3/α
半導体装置。
【請求項16】
前記バッファ領域の深さ方向におけるドーピング濃度分布が有するドーピング濃度ピークは1つ以下である
請求項
15に記載の半導体装置。
【請求項17】
前記バッファ領域の深さ方向における水素化学濃度分布は、前記ドーピング濃度ピークよりも多くの水素濃度ピークを有する
請求項
16に記載の半導体装置。
【請求項18】
前記半導体基板の前記上面において配列方向に並んで配置され、且つ、前記半導体基板の前記上面から前記ドリフト領域まで設けられた複数のトレンチ部と、
2つのトレンチ部に挟まれたメサ部と
を更に備え、
前記メサ部の前記配列方向における幅は、前記トレンチ部の深さの20%以下である
請求項
15に記載の半導体装置。
【請求項19】
前記メサ部の幅が1.1μm以下である
請求項
18に記載の半導体装置。
【請求項20】
前記増加領域において、ドーピング濃度分布は、水素化学濃度分布よりも平坦である
請求項
15から19のいずれか一項に記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、フィールドストップ層として機能するバッファ領域を備える半導体装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1 WO2016/203545号
【一般的開示】
【0003】
上記課題を解決するために、本発明の第一の態様においては、半導体装置を提供する。上記半導体装置は、上面および下面を有し、第1導電型のドリフト領域を有する半導体基板を備えてよい。上記いずれかの半導体装置は、上面の上方に設けられた第1主端子を備えてよい。上記いずれかの半導体装置は、下面の下方に設けられた第2主端子を備えてよい。上記いずれかの半導体装置は、第1主端子および第2主端子の間に電流を流すか否かを制御する制御端子を備えてよい。上記いずれかの半導体装置は、ドリフト領域および下面の間に設けられ、ドリフト領域よりもドーピング濃度が高いバッファ領域を備えてよい。第1主端子および第2主端子の間に印加する電源電圧と、制御端子および第2主端子の間の端子間容量との関係を示すC-V特性において、電源電圧が500V以上の領域に、端子間容量のピークを有してよい。
【0004】
上記半導体装置において、C-V特性は、電源電圧が500V未満の領域において端子間容量が極小値を示す谷部を有してよい。電源電圧が500Vのときの端子間容量が、極小値よりも大きくてよい。
【0005】
上記何れかの半導体装置において、C-V特性は、半導体装置をオン状態に設定し、且つ、第1主端子と第2主端子の間に印加される電源電圧を初期電圧に設定した状態で、第1主端子と第2主端子の間に流れる電流を安定させた後に、電源電圧を初期電圧より小さい変位電圧だけ変化させたときのいずれかの端子における電荷量の変化を、半導体装置内の電荷の過渡的な変化を模擬するデバイスシミュレータにより解析し、解析した電荷量の変化に基づいて端子間容量を計算することで取得された特性であってよい。
【0006】
上記何れかの半導体装置において、制御端子と対向して設けられ、制御端子に制御電圧が印加されることで、制御端子と対向するチャネル領域に反転層チャネルが形成される第2導電型のベース領域を備えてよい。上記何れかの半導体装置において、バッファ領域は、ドリフト領域との境界から下面に向かってドーピング濃度が単調に増加する増加領域を有してよい。上記何れかの半導体装置において、増加領域におけるドーピング濃度の常用対数の値が、深さ方向の1cm当たりに増加する傾きαと、チャネル領域の総長さβとが、下式を満たしてよい。
β>2×103/α
【0007】
上記何れかの半導体装置において、バッファ領域の深さ方向におけるドーピング濃度分布が有するドーピング濃度ピークは1つ以下であってよい。
【0008】
上記何れかの半導体装置において、バッファ領域の深さ方向における水素化学濃度分布は、ドーピング濃度ピークよりも多くの水素濃度ピークを有してよい。
【0009】
上記何れかの半導体装置において、半導体基板の上面において配列方向に並んで配置され、且つ、半導体基板の上面からドリフト領域まで設けられた複数のトレンチ部を備えてよい。上記何れかの半導体装置は、2つのトレンチ部に挟まれたメサ部を備えてよい。上記何れかの半導体装置において、メサ部の配列方向における幅は、トレンチ部の深さの20%以下であってよい。
【0010】
上記何れかの半導体装置において、メサ部の幅が1.1μm以下であってよい。
【0011】
上記何れかの半導体装置において、増加領域において、ドーピング濃度分布は、水素化学濃度分布よりも平坦であってよい。
【0012】
本発明の第2の態様においては、半導体装置を提供する。上記半導体装置は、上面および下面を有し、第1導電型のドリフト領域を有する半導体基板を備えてよい。上記何れかの半導体装置は、上面の上方に設けられた第1主端子を備えてよい。上記何れかの半導体装置は、下面の下方に設けられた第2主端子を備えてよい。上記何れかの半導体装置は、第1主端子および第2主端子の間に電流を流すか否かを制御する制御端子を備えてよい。上記何れかの半導体装置は、ドリフト領域および下面の間に設けられ、ドリフト領域よりもドーピング濃度が高いバッファ領域を備えてよい。上記何れかの半導体装置は、制御端子と対向して設けられ、制御端子に制御電圧が印加されることで、制御端子と対向するチャネル領域に反転層チャネルが形成される第2導電型のベース領域を備えてよい。バッファ領域は、ドリフト領域との境界から下面に向かってドーピング濃度が単調に増加する増加領域を有してよい。増加領域におけるドーピング濃度の常用対数の値が、深さ方向の1cm当たりに増加する傾きαと、チャネル領域の総長さβとが、下式を満たしてよい。
β>2×103/α
【0013】
なお、上記の発明の概要は、本発明の必要な特徴の全てを列挙したものではない。また、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となりうる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1A】解析対象の半導体装置100の一例を示す断面図である。
【
図1B】
図1AにおけるA-A断面を側面とする斜視図の一例を示す図である。
【
図2】半導体装置100の端子間容量を説明する図である。
【
図3】半導体装置100のC-V特性の一例を示す図である。
【
図4】ドリフト領域116の一部、バッファ領域118およびコレクタ領域120の深さ方向におけるドーピング濃度分布と、水素化学濃度分布の一例を示す図である。
【
図5】ドーピング濃度分布の傾きαを説明する図である。
【
図8】「ピークあり」のバッファ領域118のドーピング濃度分布の例を示す図である。
【
図9】本発明の一つの実施形態に係る解析装置10の一例を示す図である。
【
図10】半導体装置100を模式的に示す回路300の一例である。
【
図11】電荷量解析部14の動作例を説明する図である。
【
図12】容量算出部16が算出するC-V特性の一例を示す図である。
【
図13】電荷量解析部14の他の動作例を示す図である。
【
図14】一般的なC-V特性の一例を示す図である。
【
図15】参考例に係る測定方法を説明する図である。
【
図17】
図16に示した測定回路405に基づいて算出したC-V特性の一例を示す図である。
【
図18】参考例において半導体装置100がオン状態の場合の動作を示す回路420を示す。
【
図19】半導体装置100をオン状態としたときの端子容量C
GCの解析値と、オフ状態としたときの端子容量C
GCの解析値とを示す。
【
図20】
図9から
図13において説明した解析方法により算出した電荷量から、各電流波形を解析した図である。
【
図21】
図9から
図13に示した解析装置10を用いた解析方法の一例を示すフローチャートである。
【
図22】本発明の複数の態様が全体的または部分的に具現化されうるコンピュータ1200の構成例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0016】
本明細書においては半導体基板の深さ方向と平行な方向における一方の側を「上」、他方の側を「下」と称する。基板、層またはその他の部材の2つの主面のうち、一方の面を上面、他方の面を下面と称する。「上」、「下」の方向は、重力方向または半導体装置の実装時における方向に限定されない。
【0017】
本明細書では、X軸、Y軸およびZ軸の直交座標軸を用いて技術的事項を説明する場合がある。直交座標軸は、構成要素の相対位置を特定するに過ぎず、特定の方向を限定するものではない。例えば、Z軸は地面に対する高さ方向を限定して示すものではない。なお、+Z軸方向と-Z軸方向とは互いに逆向きの方向である。正負を記載せず、Z軸方向と記載した場合、+Z軸および-Z軸に平行な方向を意味する。
【0018】
本明細書では、半導体基板の上面および下面に平行な直交軸をX軸およびY軸とする。また、半導体基板の上面および下面と垂直な軸をZ軸とする。本明細書では、Z軸の方向を深さ方向と称する場合がある。また、本明細書では、X軸およびY軸を含めて、半導体基板の上面および下面に平行な方向を、水平方向と称する場合がある。本明細書において半導体基板の上面側と称した場合、半導体基板の深さ方向における中央から上面までの領域を指す。半導体基板の下面側と称した場合、半導体基板の深さ方向における中央から下面までの領域を指す。
【0019】
本明細書において「同一」または「等しい」のように称した場合、製造ばらつき等に起因する誤差を有する場合も含んでよい。当該誤差は、例えば10%以内である。
【0020】
本明細書においては、不純物がドーピングされたドーピング領域の導電型をP型またはN型として説明している。本明細書においては、不純物とは、特にN型のドナーまたはP型のアクセプタのいずれかを意味する場合があり、ドーパントと記載する場合がある。本明細書においては、ドーピングとは、半導体基板にドナーまたはアクセプタを導入し、N型の導電型を示す半導体またはP型の導電型を示す半導体とすることを意味する。
【0021】
本明細書においては、ドーピング濃度とは、熱平衡状態におけるドナーの濃度またはアクセプタの濃度を意味する。本明細書においては、ネット・ドーピング濃度とは、ドナー濃度を正イオンの濃度とし、アクセプタ濃度を負イオンの濃度として、電荷の極性を含めて足し合わせた正味の濃度を意味する。一例として、ドナー濃度をND、アクセプタ濃度をNAとすると、任意の位置における正味のネット・ドーピング濃度はND-NAとなる。
【0022】
ドナーは、半導体に電子を供給する機能を有している。アクセプタは、半導体から電子を受け取る機能を有している。ドナーおよびアクセプタは、不純物自体には限定されない。例えば、半導体中に存在する空孔(V)、酸素(O)および水素(H)が結合したVOH欠陥は、電子を供給するドナーとして機能する。
【0023】
本明細書においてP+型またはN+型と記載した場合、P型またはN型よりもドーピング濃度が高いことを意味し、P-型またはN-型と記載した場合、P型またはN型よりもドーピング濃度が低いことを意味する。また、本明細書においてP++型またはN++型と記載した場合には、P+型またはN+型よりもドーピング濃度が高いことを意味する。
【0024】
本明細書において化学濃度とは、電気的な活性化の状態によらずに測定される不純物の原子密度を指す。化学濃度(原子密度)は、例えば二次イオン質量分析法(SIMS)により計測できる。上述したネット・ドーピング濃度は、電圧-容量測定法(CV法)により測定できる。また、拡がり抵抗測定法(SR法)により計測されるキャリア密度を、ネット・ドーピング濃度としてよい。CV法またはSR法により計測されるキャリア密度は、熱平衡状態における値としてよい。また、N型の領域においては、ドナー濃度がアクセプタ濃度よりも十分大きいので、当該領域におけるキャリア密度を、ドナー濃度としてもよい。同様に、P型の領域においては、当該領域におけるキャリア密度を、アクセプタ濃度としてもよい。
【0025】
また、ドナー、アクセプタまたはネット・ドーピングの濃度分布がピークを有する場合、当該ピーク値を当該領域におけるドナー、アクセプタまたはネット・ドーピングの濃度としてよい。ドナー、アクセプタまたはネット・ドーピングの濃度がほぼ均一な場合等においては、当該領域におけるドナー、アクセプタまたはネット・ドーピングの濃度の平均値をドナー、アクセプタまたはネット・ドーピングの濃度としてよい。
【0026】
SR法により計測されるキャリア密度が、ドナーまたはアクセプタの濃度より低くてもよい。拡がり抵抗を測定する際に電流が流れる範囲において、半導体基板のキャリア移動度が結晶状態の値よりも低い場合がある。キャリア移動度の低下は、格子欠陥等による結晶構造の乱れ(ディスオーダー)により、キャリアが散乱されることで生じる。
【0027】
CV法またはSR法により計測されるキャリア密度から算出したドナーまたはアクセプタの濃度は、ドナーまたはアクセプタを示す元素の化学濃度よりも低くてよい。一例として、シリコンの半導体においてドナーとなるリンまたはヒ素のドナー濃度、あるいはアクセプタとなるボロン(ホウ素)のアクセプタ濃度は、これらの化学濃度の99%程度である。一方、シリコンの半導体においてドナーとなる水素のドナー濃度は、水素の化学濃度の0.1%から10%程度である。
【0028】
図1Aは、解析対象の半導体装置100の一例を示す断面図である。本例の半導体装置100はIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)等のトランジスタ素子を有する。ただし、半導体装置100の構造は
図1Aの構造に限定されない。半導体装置100は、半導体基板111、第1主端子101、第2主端子102および層間絶縁膜110を備える。また、半導体基板111の内部に制御端子103を備える。制御端子103は、印加される電圧により第1主端子101と第2主端子102との間に主電流を流すか否かを制御する。制御端子103は、例えばトランジスタ素子のゲート端子またはベース端子である。第1主端子101および第2主端子102は、主電流が流れる端子である。第1主端子101は、例えばトランジスタ素子のエミッタ端子またはソース端子である。第2主端子102は、例えばトランジスタ素子のコレクタ端子またはドレイン端子である。本例の第1主端子101はエミッタ電極であり、第2主端子102はコレクタ電極である。第1主端子101および第2主端子102は、アルミニウム等の金属材料で形成される。
【0029】
半導体基板111は、シリコン等の半導体材料、または、炭化シリコン、ガリウム砒素等の化合物半導体材料で形成された基板である。半導体基板111は、MCZ(Magneticfield applied CZ)法により形成されてよい。半導体基板111は、複数のチップを含むウエハー状であってよく、個片化されたチップ状であってもよい。半導体基板111は、上面113および下面115を有する。本例の半導体装置100は、上面113の上方に第1主端子101が設けられ、下面115の下方に第2主端子102が設けられた縦型デバイスである。
【0030】
本例の半導体基板111は、ゲート構造部105、エミッタ領域112、ベース領域114、ドリフト領域116、バッファ領域118およびコレクタ領域120を有する。ドリフト領域116は、第1導電型(本例ではN-型)の領域である。エミッタ領域112は、ドリフト領域116と上面113との間に配置される。エミッタ領域112は、第1主端子101と接触するN+型の接触領域である。ベース領域114は、第1主端子101と接触する第2導電型(本例ではP-型)の接触領域である。ベース領域114の少なくとも一部の領域は、エミッタ領域112とドリフト領域116の間に配置されている。本例では第1導電型がN型であり、第2導電型がP型であるが、導電型は逆であってもよい。
【0031】
コレクタ領域120は、下面115に接して設けられたP+型の領域である。コレクタ領域120は第2主端子102と電気的に接続されている。バッファ領域118は、コレクタ領域120とドリフト領域116との間に設けられたN+型の領域である。バッファ領域118のドーピング濃度は、ドリフト領域116のドーピング濃度よりも高い。バッファ領域118は、上面113側から広がる空乏層117が、コレクタ領域120に到達することを防ぐフィールドストップ層として機能する。
【0032】
ゲート構造部105は、エミッタ領域112とドリフト領域116の間のベース領域114と対向する位置に設けられる。本例のゲート構造部105は、半導体基板111の上面113から、エミッタ領域112およびベース領域114を貫通してドリフト領域116まで設けられるトレンチ型である。本例のゲート構造部105は、トレンチ部の一例である。上面113からゲート構造部105の下端までの深さをZt(cm)とする。他の例のゲート構造部105は、半導体基板111の上面113の上方に設けられるプレナー型であってもよい。
【0033】
ゲート構造部105は、層間絶縁膜110により、第1主端子101と絶縁されている。ゲート構造部105は、所定の配列方向(
図1Aの例ではX軸方向)において、所定の間隔で繰り返し配置されている。
【0034】
ゲート構造部105は、ゲート絶縁膜104および制御端子103を有する。本例の制御端子103は、ゲート電極である。制御端子103は、ポリシリコン等の導電材料で形成されてよい。制御端子103およびベース領域114は、少なくとも部分的に対向するように設けられる。
【0035】
ゲート絶縁膜104は、半導体基板111を熱酸化または熱窒化して形成された膜であってよい。ゲート絶縁膜104は、制御端子103と、半導体基板111とを絶縁する。ベース領域114のうち、ゲート絶縁膜104と接触し、且つ、ゲート絶縁膜104を挟んで制御端子103と向かい合って配置された領域を、チャネル領域106と称する。制御端子103に所定の制御電圧が印加されることで、ベース領域114のチャネル領域106に、導電型が反転した反転層チャネルが形成される。これにより、エミッタ領域112とドリフト領域116とが反転層チャネルにより接続され、電流が流れる。
【0036】
本例の半導体基板111は、メサ部160を有する。メサ部160は、半導体基板111において2つのゲート構造部105に挟まれた部分である。本例のメサ部160の上端の位置は、ゲート構造部105の上端の位置(すなわち上面113)と同一であり、メサ部160の下端の位置は、ゲート構造部105の下端の位置と同一である。ゲート構造部105の配列方向におけるメサ部160の幅を、Wm(cm)とする。メサ部160の幅Wmは、X軸方向において隣り合う2つのゲート構造部105の距離に相当する。メサ部160の幅Wmは、半導体基板111の上面113において測定してよい。
【0037】
本明細書では、ベース領域114のチャネル領域106に反転層チャネルが形成された状態をオン状態と称し、反転層チャネルが形成されていない状態をオフ状態と称する場合がある。また、反転層チャネルに電流が流れる方向(
図1Aの例ではZ軸方向)に垂直で、且つ、ベース領域114と制御端子103が向かい合う方向(
図1Aの例ではX軸方向)に垂直な方向を、チャネル長方向(
図1Aの例ではY軸方向)と称する。チャネル長方向におけるチャネル領域106の長さをチャネル長と称する。
【0038】
図1Bは、
図1AにおけるA-A断面を側面とする斜視図の一例を示す図である。A-A断面は、ベース領域114のチャネル領域106を通過するYZ断面である。
図1Aに示した各部材は、Y軸方向に延伸して配置されている。このため、チャネル領域106も、Y軸方向に延伸して配置される。本例では、ベース領域114のうち、ゲート絶縁膜104を挟んで制御端子103と隣り合って配置され、且つ、エミッタ領域112とドリフト領域116とに挟まれた部分をチャネル領域106とする。チャネル領域106のY軸方向における長さを、チャネル長L
CH(cm)とする。また、半導体基板111におけるチャネル長L
CHの総和を、チャネル領域106の総長さβと称する。
【0039】
図2は、半導体装置100の端子間容量を説明する図である。半導体装置100は、第1主端子101および第2主端子102の間に端子間容量C
CEを有し、第1主端子101および制御端子103の間に端子間容量C
GEを有し、第2主端子102および制御端子103の間に端子間容量C
GCを有する。
【0040】
図3は、半導体装置100のC-V特性の一例を示す図である。本例では、
図1Aに示した第1主端子101と第2主端子102の間に印加する電源電圧をV
CE(V)とする。
図3は、電源電圧V
CEと、端子間容量C
GCとの関係を示す。特性151は、
図1Aに示した実施例に係る半導体装置100のC-V特性であり、特性154は、参考例に係る半導体装置100のC-V特性である。特性151および特性154は、半導体装置がオン状態の場合のC-V特性である。電源電圧V
CEが変化すると、空乏層117が広がる範囲が変化し、半導体基板111における空間電荷密度の分布が変化するので、端子間容量C
GCが変化する。
【0041】
端子間容量CGCが急激に減少する電圧範囲では、第1主端子101および第2主端子102の間の電圧波形に振動が発生しやすくなる。このため、電源電圧VCEが高い領域にピーク180を配置することで、電源電圧VCEが比較的に低い範囲における電圧波形の振動を抑制できる。
【0042】
特性151は、電源電圧VCEが500V以上の領域に、端子間容量CGCのピーク180を有する。なお、ピーク180の頂点における電圧を、ピーク180が配置されている電圧とする。これにより、電源電圧VCEが500V未満の場合における、電圧波形の振動を抑制できる。また、電源電圧VCEにサージ電圧が生じた場合でも、電圧波形の振動を抑制できる。ピーク180は、550V以上の領域に配置されてよく、600V以上の領域に配置されてよく、700V以上の領域に配置されてもよい。ピーク180は、1000V以下の領域に配置されてよく、800V以下の領域に配置されてもよい。後述するように、ピーク180の位置は、バッファ領域118におけるドーピング濃度分布の形状、および、メサ部160の幅Wmの少なくとも一方により調整できる。
【0043】
特性151は、電源電圧VCEが500V未満の領域において、端子間容量CGCが極小値を示す谷部181を有する。谷部181は、ピーク180よりも緩やかに端子間容量CGCが変化する。谷部181の幅は、ピーク180の半値全幅(FWHM)より大きい。谷部181の幅とは、極小値の前後の電源電圧VCEにおいて、端子間容量CGCが極小値の2倍となる2つの電源電圧VCEの差分である。谷部181の幅は、ピーク180の半値全幅の2倍以上であってよい。谷部181は、電源電圧VCEが100V以上の領域に配置されてよく、200V以上の領域に配置されてもよい。なお、端子間容量CGCが極小値を示す電源電圧VCEを、谷部181が配置されている電圧とする。
【0044】
また、電源電圧VCEが500Vのときの端子間容量CGCが、谷部181の極小値よりも大きい。谷部181の極小値から、ピーク180の頂点まで、端子間容量CGCは単調に増加してよい。このような配置により、電源電圧VCEが500V未満の領域において、端子間容量CGCが急激に減少することを抑制できる。
【0045】
参考例に係る特性154は、電源電圧VCEが100Vから500Vの領域にピークを有する。このため、当該領域において端子間容量CGCが急激に減少している。このため、電圧VCEが振動しやすくなる。例えば半導体装置のオフ時には、電源電圧VCEが増大するので、電圧波形が振動しやすくなる。
【0046】
図4は、ドリフト領域116の一部、バッファ領域118およびコレクタ領域120の深さ方向におけるドーピング濃度分布と、水素化学濃度分布の一例を示す図である。コレクタ領域120は、ボロン等のP型ドーパントを注入することで形成される。コレクタ領域120は、ドーピング濃度のピークを有する。
【0047】
バッファ領域118は、水素等のN型ドーパントを注入することで形成される。バッファ領域118とコレクタ領域120との境界におけるPN接合部を、バッファ領域118の下端とする。
【0048】
ドリフト領域116のドーピング濃度をDdとする。ドリフト領域116のドーピング濃度は、深さ方向においてほぼ一定であってよい。ほぼ一定とは、ドリフト領域116の深さ範囲において、ドーピング濃度の変動幅が、ドーピング濃度の平均値Ddの±20%未満であることを指してよい。半導体基板111には、バルク・ドナーが基板全体にほぼ一様に分布していてよい。バルク・ドナーは、半導体基板のインゴットの形成時から存在するドナーである。バルク・ドナーは、例えばリンであるがこれに限定されない。ドリフト領域116のドーピング濃度は、バルク・ドナー濃度と同一であってよい。
【0049】
本例のバッファ領域118は、ドリフト領域116と接している。ドリフト領域116とバッファ領域118の境界Zbは、ドリフト領域116から下面115に向かってドーピング濃度分布を観察した場合に、ドーピング濃度が1.2×Ddとなる最初の位置としてよい。
【0050】
本例のバッファ領域118は、ドリフト領域116との境界Zbから下面115に向かって、ドーピング濃度が単調に増加する増加領域124を有する。増加領域124は、深さ方向において、バッファ領域118の1/2以上に渡って設けられてよく、3/4以上に渡って設けられてもよい。増加領域124は、10μm以上に渡って設けられてよく、20μm以上に渡って設けられてよく、30μm以上に渡って設けられてもよい。
【0051】
ドーピング濃度が単調に増加するとは、下面115に向かってドーピング濃度分布を観察したときに、ドーピング濃度が連続して増加または維持される状態を指す。つまり、増加領域124は、下面115に向かって、ドーピング濃度が減少する領域を有さない。ただし、増加領域124には、測定ノイズまたはその他の要因による微小なドーピング濃度の減少が含まれていてもよい。下面115に向かってドーピング濃度分布を観察したときに、ドーピング濃度の極小値が、直前の極大値の80%以上である場合には、当該極小値を含む部分は、ドーピング濃度が減少していないと判断してよい。ドーピング濃度の極小値が、直前の極大値の90%以上である場合に、当該極小値を含む部分は、ドーピング濃度が減少していないと判断してもよい。
【0052】
増加領域124のドーピング濃度が単調に増加するので、増加領域124には、ドーピング濃度ピークが含まれない。ドーピング濃度ピークが実質的に存在しない増加領域124を設けることにより、当該領域に空乏層117が到達したときに、端子間容量CGCが急激に変化することを抑制できる。
【0053】
なお、バッファ領域118は、1つ以下のドーピング濃度ピーク121を有してよい。つまりバッファ領域118は、ドーピング濃度ピーク121を1つだけ有してよく、ドーピング濃度ピーク121が存在していなくてもよい。ドーピング濃度ピーク121は、頂点から上面113に向かってドーピング濃度が減少する上側裾と、頂点から下面115に向かってドーピング濃度が減少する下側裾とを有する。本例のドーピング濃度ピーク121は、深さ位置Z1に頂点を有する。上側裾および下側裾におけるドーピング濃度は、頂点におけるドーピング濃度Dpに対して、少なくとも半分以下に低下してよく、0.1倍以下に低下してもよい。
【0054】
増加領域124は、ドーピング濃度ピーク121を含まない。下面115に向かってドーピング濃度分布の傾きを観察したときに、当該傾きが深さ位置Z1の頂点に向かって増加し始める位置を、増加領域124の下端位置としてよい。ドーピング濃度の深さ方向おける2階微分が極大値となる位置を、増加領域124の下端位置としてもよい。他の例では、深さ位置Z1から5μm離れた深さ位置を、ドーピング濃度ピーク121の端部位置としてもよい。
図4のように、ドーピング濃度ピーク121が、増加領域124の下側に配置されている場合、深さ位置Z1から上面113側に5μm離れた位置を、増加領域124の下端位置としてもよい。後述するように、バッファ領域118に複数の水素濃度ピーク141が含まれている場合、下面115に2番目に近く配置された水素濃度ピーク141-2の深さ位置Z2を、増加領域124の下端位置としてもよい。
【0055】
本明細書では、増加領域124におけるドーピング濃度の傾きをαとする。傾きαは、ドーピング濃度Dの常用対数の値logDが、深さ方向の1cm当たりに増加する割合であり、単位は(cm-1)である。傾きαは、増加領域124のドーピング濃度分布を、最小二乗法で近似した近似直線122の傾きであってよい。
【0056】
半導体装置100においては、傾きαと、上述したチャネル領域106の総長さβとが、下の式(1)を満たす。
β>2×103/α ・・・式(1)
式(1)によれば、傾きαの下限が総長さβの逆数1/βに応じて定まる。チャネル領域106の総長さβが小さい場合、半導体基板111の上面113におけるチャネル領域106が少なくなり、半導体基板111に注入されるキャリアは減少する。この場合、傾きαの下限は大きくなる。傾きαが大きくなると、増加領域124が深さ方向に短くなる。一方、式(1)によれば、傾きαの上限が総長さβの逆数1/βに応じて定まる。チャネル領域106の総長さβが大きい場合、半導体基板111の上面113におけるチャネル領域106が多くなり、半導体基板111に注入されるキャリアは増加する。この場合、傾きαの下限は小さくなる。傾きαが小さくなる場合、増加領域124を深さ方向に長くしてよい。一例として、増加領域124は、トレンチ部底面からコレクタ領域120のバッファ領域118側端面までの長さの、30%以上であってよく、40%以上であってよく、50%以上であってよい。総長さβが大きい場合は、例えば半導体装置100の活性領域の面積が大きい場合である。つまり式(1)は、活性領域が大きいまたは総長さβが大きい場合に、傾きαを比較的に小さくすることで、端子間容量CGCの急激な変化を抑制できることを示す。
【0057】
近似直線122のドーピング濃度を2倍した直線を直線123-Hとし、1/2倍した直線を直線123-Lとする。増加領域124におけるドーピング濃度は、増加領域124の全体において、直線123-Hと直線123-Lの間の値になっていてよい。これにより、ドーピング濃度の急激な増減がなくなるので、C-V特性における端子間容量CGCの急激な変化を抑制できる。
【0058】
バッファ領域118の深さ方向における水素化学濃度分布は、ドーピング濃度ピーク121よりも多くの水素濃度ピーク141を有してよい。下面115から、複数の深さ位置に水素イオンを注入することで、複数の水素濃度ピーク141を形成できる。水素イオンを注入した後に、半導体基板111をアニールすることで、空孔欠陥(V)、酸素(O)、水素(H)が結合したVOH欠陥が形成される。VOH欠陥は、ドナーとして機能する。このため、下面115からの深さ距離に応じてドーズ量を少なくしながら、複数の深さ位置に水素イオンを注入することで、
図4に示すようなドーピング濃度分布を形成できる。
【0059】
本例のバッファ領域118は、深さ位置Z1、Z2、Z3、Z4に、水素濃度ピーク141-1、141-2、141-3、141-4を有する。最も下面115の近くに配置された水素濃度ピーク141-1は、ドーピング濃度ピーク121と同じ深さに配置されている。2つのピークが同じ深さに配置されるとは、一方のピークの半値全幅の範囲に、他方のピークの頂点が配置されていることを指す。
【0060】
水素濃度ピーク141-1は、他の水素濃度ピーク141よりも、水素化学濃度が大きい。ピークの濃度とは、ピークの頂点の濃度を指す。水素濃度ピーク141-1は、他の水素濃度ピーク141の水素化学濃度のうちの最大濃度に対して、5倍以上の濃度であってよく、10倍以上の濃度であってよく、100倍以上の濃度であってもよい。水素濃度ピーク141-2、141-3、141-4の水素濃度を低くすることで、ドーピング濃度分布にピークを設けずに、増加領域124を形成できる。最も深い位置に形成した水素濃度ピーク141-4の頂点から、2番目に浅い位置に形成した水素濃度ピーク141-2の頂点までの深さ範囲を、増加領域124としてもよい。
【0061】
それぞれの水素濃度ピーク141は、下面115からの距離が大きくなるほど、濃度が小さくなっている。水素濃度ピーク141-1以外の水素濃度ピーク141-2、141-3、141-4の頂点を最小二乗法で近似した直線を、直線142とする。直線142の傾きは、近似直線122の傾きαとほぼ等しい。直線142の傾きは、傾きαの0.5倍以上、2倍以下であってよい。
【0062】
また、増加領域124において、ドーピング濃度分布は、水素化学濃度分布よりも平坦である。水素化学濃度分布において、最も下面115から離れた水素濃度ピーク141―4と、2番目に下面115から離れた水素濃度ピーク141-3の間の極小値の深さ位置をZ5とする。深さ位置Z4およびZ5におけるドーピング濃度の差は、深さ位置Z4およびZ5における水素化学濃度の差よりも小さい。当該ドーピング濃度の差は、当該水素化学濃度の差の0.5倍以下であってよく、0.1倍以下であってよく、0.05倍以下であってもよい。
【0063】
図5は、ドーピング濃度分布の傾きαを説明する図である。深さ位置Z4におけるドーピング濃度をD
4、深さ位置Z3におけるドーピング濃度をD
3とする。傾きα(/cm)は、式(2)で与えられる。
α=|log(D
3)-log(D
4)|/|Z3-Z4| ・・・式(2)
【0064】
また、増加領域124におけるドーピング濃度分布は、上側に凸の凸部125と、下側に凸の凹部126とを有してよい。凸部125は、深さ位置Z4を含む範囲に配置されている。凹部126は、深さ位置Z5を含む位置に配置されている。
【0065】
増加領域124におけるドーピング濃度分布は、全体が上側に凸の凸部125であってよい。増加領域124におけるドーピング濃度分布は、全体が下側に凸の凹部126であってもよい。増加領域124におけるドーピング濃度分布は、直線形状であってもよい。
【0066】
図6は、近似直線122の数値例を示す図である。本例では、近似直線の両端の深さ位置をX1、X2とし、深さ位置X1、X2におけるドーピング濃度をN1、N2とする。X1=4.3μm=4.3×10
―4cm、N1=
3.5×10
15
/cm
3、log(N1)=15.55、X2=29.9μm=29.9×10
―4cm、N2=
2.9×10
13
/cm
3、log(N2)=13.46である。
【0067】
式(2)から、傾きαは下式となる。
α=|15.55-13.46|/|4.3×10―4―29.9×10―4|≒816.5
この場合、式(1)の右辺は2.45cmとなる。従ってチャネル領域106の総長さβが2.45cmより大きいことが好ましい。
【0068】
図7は、C-V特性の一例を示す図である。本例では、バッファ領域118のドーピング濃度分布が2つ以上のドーピング濃度ピークを有する例を「ピークあり」、
図4の例のようにドーピング濃度ピークが1つ以下の例を「ピークなし」と称する。また、メサ部160の幅Wmが、ゲート構造部105の深さZtの20%以下の例を「幅狭メサ」、幅Wmが深さZtの20%より大きい例を「幅広メサ」と称する。
【0069】
特性152は、「ピークなし」且つ「幅狭メサ」の例の特性である。また、特性151は、「ピークなし」且つ「幅広メサ」の例の特性である。また、特性153は、「ピークあり」且つ「幅狭メサ」の例の特性である。また、特性154は、「ピークあり」且つ「幅広メサ」の例の特性である。本例のZtは5.5μmであり、「幅狭メサ」の幅Wmは1.1μmであり、「幅広メサ」の幅Wmは2.5μmである。
【0070】
図7に示すように、「ピークなし」の例の特性151、152は、いずれも500V以上の領域に端子間容量C
GCのピークが配置されている。このため、電圧V
CEの振動を抑制できる。
【0071】
また、「幅狭メサ」とすることで、端子間容量CGCを更に高電圧側にシフトできる。メサ部160の幅Wmは、1.1μm以下であってよい。メサ幅Wmを小さくすることで、キャリア注入の促進効果(IE効果)が増加し、半導体基板111の上面113からのキャリア注入量が増大する。半導体基板111の上面113側におけるキャリア密度が増大すると、端子間容量CGCが急減しないことが、実験的に確認されている。
【0072】
一方で、「ピークあり」の例の特性153、154は、いずれも500V未満の領域に端子間容量CGCのピークが配置されている。このため、電圧VCEの振動が生じやすくなる。
【0073】
図8は、「ピークあり」のバッファ領域118のドーピング濃度分布の例を示す図である。本例のバッファ領域118は、ドーピング濃度ピーク121よりも上面113側に複数のドーピング濃度ピーク127を有する。本例では、比較的に上面113に近い位置に、ドーピング濃度ピーク127が配置される。空乏層117がドーピング濃度ピーク127に到達すると、端子間容量C
GCが急減しやすくなる。このため
図7に示すように、電源電圧V
CEが比較的に低い領域に、端子間容量C
GCのピークがあらわれる。
【0074】
なお、
図3および
図7に示すようなC-V特性は、精度よく解析できることが好ましい。C-V特性は、後述する解析装置10により取得された特性であってよい。
【0075】
図9は、解析装置10の一例を示す図である。解析装置10は、
図1Aから
図8において説明した半導体装置100の特性を解析する。解析装置10は、半導体装置100のいずれかの端子容量を解析する。端子容量は、いずれかの端子の寄生容量であってよい。端子容量は、いずれか2つの端子間の寄生容量であってもよい。
【0076】
解析装置10は、コンピュータにより実現される装置であってよい。当該コンピュータには、コンピュータを解析装置10として機能させるためのプログラムが与えられてよい。コンピュータは、当該プログラムを実行することで、解析装置10による解析方法を実行する。
【0077】
解析装置10は、入力部12、電荷量解析部14、容量算出部16および出力部18を備える。入力部12には、解析対象の半導体装置100に関するデータが入力される。当該データは、解析装置10の使用者等により入力されてよい。当該データは、半導体装置100の各部位の位置、大きさ、形状、不純物濃度、電気抵抗、容量等の情報を含んでよい。
【0078】
電荷量解析部14は、所定の解析条件における半導体装置100内の所定の領域における電荷量を解析する。所定の解析条件は、制御端子に印加する制御電圧、および、第1主端子101および第2主端子102間に印加する電源電圧を指定する条件を含んでよい。電荷量解析部14は、半導体装置100内の電荷量の過渡的な変化を模擬できるデバイスシミュレータにより、半導体装置100の電荷を解析する。過渡的な変化とは、例えば半導体装置100内の電荷量の時間変化である。デバイスシミュレータは、例えば電源電圧を変化させたときの、半導体装置100内の電荷量の時間変化を解析する。デバイスシミュレータは、例えばポアソン方程式を用いて、半導体装置100内の所定の領域における電荷密度を解析し、電荷密度を積分することで当該領域における電荷量を算出してよい。電荷量解析部14は、公知のシミュレータを用いて、半導体装置100内の電荷量を解析してよい。
【0079】
電荷量解析部14は、制御端子103に印加する制御電圧を所定の値に設定することで半導体装置100をオン状態に設定し、且つ、第1主端子101および第2主端子102間に印加される電源電圧を所定の初期電圧に設定する。そして電荷量解析部14は、電源電圧VCEを初期電圧より小さい変位電圧だけ変化させたときのいずれかの端子における電荷量の変化をデバイスシミュレータにより解析する。
【0080】
容量算出部16は、電荷量解析部14が解析した電荷量の変化に基づいて、いずれかの端子容量を計算する。容量算出部16は、変位電圧に対する電荷量の変化に基づいて、端子容量を算出してよい。容量Cは、電荷量Qを電圧Vで除算した値(C=Q/V)なので、電荷の変化量を変位電圧で除算することで、端子容量を算出できる。
【0081】
出力部18は、容量算出部16が算出した端子容量に関する情報を出力する。出力部18は、端子容量に関する情報を表示装置に表示させてよく、外部の装置に送信してよく、記憶媒体に記憶させてもよい。
【0082】
図10は、半導体装置100を模式的に示す回路300の一例である。解析装置10は、回路300を用いて半導体装置100の動作を解析してよい。制御端子103には、電源135から制御電圧V
GEが印加される。第1主端子101は、グランド電位等の基準電位に接続される。第1主端子101および第2主端子102の間には、電源134から電源電圧V
CEが印加される。電荷量解析部14は、制御電圧V
GEおよび電源電圧V
CEを設定して、半導体装置100における電荷量を解析してよい。
【0083】
半導体装置100の第1主端子101および第2主端子102の間の容量を、端子間容量CCEとする。同様に、第1主端子101および制御端子103の間の容量を、端子間容量CGEとし、第2主端子102および制御端子103の間の容量を、端子間容量CGCとする。容量算出部16は、いずれかの端子間容量を算出する。半導体装置100の端子間容量CGCは、半導体装置100がオン状態における値とオフ状態における値が異なる場合がある。半導体装置100がオン状態の場合、電流密度が大きいと端子間容量CGCを精度よく測定または算出することが難しい。以下の例では、半導体装置100がオン状態においても精度よく端子間容量CGCを算出する例を説明する。
【0084】
図11は、電荷量解析部14の動作例を説明する図である。電荷量解析部14は、半導体装置100をオン状態にするように、制御電圧V
GEを設定する。つまり、電荷量解析部14は、半導体装置100の閾値電圧より高い制御電圧V
GEを設定する。また、電荷量解析部14は、電源電圧V
CEを所定の初期値に設定する。そして、電荷量解析部14は、コレクタ電極Cとエミッタ電極E間の電流I
CEが一定になったあとに、電源電圧V
CEを変位電圧ΔV
CEだけ変化させたときの、第1主端子101の電荷量の変化を算出する。変位電圧ΔV
CEは、電源電圧V
CEに対して十分小さい。変位電圧ΔV
CEは、例えば電源電圧V
CEの10%以下であってよく、1%以下であってよく、0.1%以下であってもよい。コレクタ電極Cとエミッタ電極E間の電流I
CEが一定であるとは、例えばコレクタ電極Cとエミッタ電極E間の電流I
CEが、一定の電流値で時間的に実質的に変化しない状態であってよく、制御端子103に流れる電流が実質的にゼロである状態であってよい。実質的に変化しないとは、例えば変動幅が平均値の20%以下であることを指してよい。制御電圧V
GEは変化しないため、端子間容量C
GEは変化しない。そのため、電源電圧V
CEの微小変化ΔV
CEによる変位電流は、端子間容量C
GCだけによるものとなる。端子間容量C
GCは、例えばゲート酸化膜とドリフト領域の空間電荷密度から、電極GC間の電荷の変化量ΔQ
GCを計算し、電極CE間電圧の変化量ΔV
CEを除することで(ΔQ
GC/ΔV
CE)算出してよい。
【0085】
電荷量解析部14は、変位電圧ΔVCEの大きさを、電源電圧VCEの大きさの変化に応じて設定してよい。例えば変位電圧ΔVCEは、電源電圧VCEに対して所定の係数を乗算した電圧であってよい。他の例では、変位電圧ΔVCEは、電源電圧VCEの変化によらず、一定の電圧であってもよい。
【0086】
端子の電荷量とは、半導体基板111において当該端子に接する接触領域の電荷量であってよい。例えば第2主端子102の電荷量は、第2主端子102に接触するコレクタ領域120を含む。また、第1主端子101の電荷量は、第1主端子101に接触するエミッタ領域112およびベース領域114の電荷量を含む。
【0087】
電荷量解析部14は、下式で示されるポアソン方程式を用いてコレクタ領域120の電荷量を算出してよい。
∇2・φ=-q(p-n+ND-NA)/ε
ただし、∇は微分演算子、φは静電ポテンシャル、qは電荷素量、pはホール密度、nは電子密度、NDはドナー濃度、NAはアクセプタ濃度、εは半導体基板111の誘電率である。半導体基板111の誘電率εは、真空の誘電率ε0に、半導体基板111の比誘電率εrを乗じた値である。p-n+ND-NAの項が、電荷密度に相当する。
【0088】
電荷量解析部14には、誘電率εが解析条件として与えられてよい。また、電源電圧VCEによって、半導体領域のそれぞれの位置における静電ポテンシャルφが定まる。電荷量解析部14は、それぞれの位置について、電源電圧がVCEのときの電荷密度と、電源電圧がVCE+ΔVCEのときの電荷密度とを、上記のポアソン方程式により算出する。電荷量解析部14には、半導体基板111の各位置におけるドナー濃度ND、アクセプタ濃度NAが解析条件として予め設定されてもよい。
【0089】
電荷量解析部14は、コレクタ領域120の電荷密度の総和を計算する。電荷量解析部14は、上述した電荷密度を積分してよい。電荷密度の積分値に、電荷素量を乗算することで、電荷量を算出できる。電荷量解析部14は、
図11に示すように電源電圧を変化させたときの、電荷量の時間変化を過渡解析(キルヒホフの法則に基づいて微分方程式をつくり解を導出)により算出してよい。電荷量解析部14は、電荷量の変化が収束したときの電荷量を、電源電圧がV
CE+ΔV
CEのときの電荷量として算出してよい。電荷量解析部14は、電源電圧がV
CEのときの電荷量と、電源電圧がV
CE+ΔV
CEのときの電荷量との差分ΔQを算出してよい。
【0090】
電荷量解析部14は、ドリフト領域116の少なくとも一部における電荷密度を更に算出してよい。ドリフト領域116の電荷密度も、コレクタ領域120と同様に、電源電圧VCEおよび変位電圧ΔVCEから、ポアソン方程式を用いて解析できる。例えば電荷量解析部14は、電源電圧VCEが印加された場合に空乏層117が広がる範囲のドリフト領域116の電荷密度を算出してよい。電荷量解析部14は、ドリフト領域116の当該領域の電荷密度を積分して、当該領域の電荷量を算出してよい。電荷量解析部14は、当該領域の電荷量を、第2主端子102の電荷量に含めてよい。空乏層117の広がり方により端子間容量CGCが変化し得るので、当該領域の電荷量を考慮することで端子間容量CGCをより精度よく解析できる。
【0091】
容量算出部16は、電荷量解析部14が算出した、電荷量の差分ΔQと、変位電圧ΔVCEに基づいて、端子間容量CGCを算出する。容量算出部16は、下式により端子間容量CGCを算出してよい。
CGC=ΔQ/ΔVCE
【0092】
図12は、容量算出部16が算出するC-V特性の一例を示す図である。本例では、電荷量解析部14は、電源電圧V
CEを初期電圧から変化させ、変化させた電源電圧V
CE毎に、電源電圧V
CEを変位電圧ΔV
CEだけ変化させたときの電荷量の変化ΔQを解析する。例えば電荷量解析部14は、電源電圧V
CEを10V、50V、100V、500V、・・・のように変化させ、それぞれの電源電圧V
CEに対して、変位電圧ΔV
CEだけ変化させたときの電荷量の変化ΔQを算出する。
【0093】
容量算出部16は、電源電圧V
CE毎に解析した電荷量の変化ΔQに基づいて、電源電圧V
CE毎の端子間容量C
GCを算出する。これにより、
図12に示すようなC-V特性が得られる。容量算出部16は、算出した端子間容量C
GCを、電源電圧V
CEにおける容量値としてよい。つまり、算出した端子間容量C
GCを、変化前の電源電圧V
CEにおける容量値としてよい。他の例では、容量算出部16は、算出した端子間容量C
GCを、電源電圧V
CE+ΔV
CEに対する容量値としてもよい。つまり、算出した端子間容量C
GCを、電源電圧V
CEを変位電圧ΔV
CEだけ変化させた後の電源電圧V
CE+ΔV
CEに対する容量値としてよい。容量算出部16は、算出した端子間容量C
GCを、電源電圧V
CE+0.5×ΔV
CEに対する容量値としてもよい。つまり、算出した端子間容量C
GCを、変化前後の平均の電源電圧に対する容量値としてもよい。
【0094】
図13は、電荷量解析部14の他の動作例を示す図である。本例の電荷量解析部14は、第1の電源電圧V
CE1に第1の変位電圧ΔV
CE1を加算した場合の電荷量の第1の変化ΔQ1と、第2の電源電圧V
CE2から第2の変位電圧ΔV
CE2を減じた場合の電荷量の第2の変化ΔQ2とを解析する。
【0095】
第1の電源電圧V
CE1と、第2の電源電圧V
CE2とは、同一の電圧であってよい。つまり、変化前の電源電圧が同一となるように、各電圧を設定してよい。電荷量解析部14は、電源電圧V
CEから電圧を増加させた場合の電荷量の変化ΔQ1と、同一の電源電圧V
CEから電圧を減少させた場合の電荷量の変化ΔQ2を算出してよい。第1の変位電圧ΔV
CE1と第2の変位電圧ΔV
CE2は、同一であってよく、異なっていてもよい。電荷量解析部14は、第1の変位電圧ΔV
CE1と第2の変位電圧ΔV
CE2の比に応じてΔQ1およびΔQ2の加重平均を算出してよい。この場合、容量算出部16は、電荷量の変化の平均値ΔQから算出した端子間容量C
GCを、当該電源電圧V
CEに対する容量としてよい。この場合においても、それぞれの電源電圧を初期値から変化させることで、
図12に示したC-V特性が得られる。
【0096】
他の例では、第1の電源電圧V
CE1と、第2の電源電圧V
CE2とは、異なる電圧であってよい。例えば、第1の電源電圧V
CE1に第1の変位電圧ΔV
CE1を加算した電圧V
CE1+ΔV
CE1と、第2の電源電圧V
CE2から第2の変位電圧ΔV
CE2を減じた電圧V
CE2+ΔV
CE2とが等しくなるように、各電圧を設定してよい。つまり、変化後の電源電圧が同一となるように、各電圧を設定してよい。第1の変位電圧ΔV
CE1と第2の変位電圧ΔV
CE2とは、同一であってよく、異なっていてもよい。電荷量解析部14は、第1の電源電圧V
CE1に第1の変位電圧ΔV
CE1を加算した場合の電荷量の変化ΔQ1と、第2の電源電圧V
CE2から第2の変位電圧ΔV
CE2を減じた場合の電荷量の変化ΔQ2とを算出してよい。容量算出部16は、電荷量の変化ΔQ1およびΔQ2の平均値から算出した端子間容量C
GCを、電圧V
CE1+ΔV
CE1(=V
CE2+ΔV
CE2)に対する容量としてよい。この場合においても、それぞれの電源電圧を初期値から変化させることで、
図12に示したC-V特性が得られる。
【0097】
電荷量解析部14のデバイスシミュレータは、電荷量の変化を解析する処理が収束するか否かを判定する収束判定機能を有してよい。収束判定機能は、電源電圧VCEを変位電圧ΔVCEだけ変化させた後の電荷量が、設定される演算期間内、または、設定される演算処理量以下で算出できない場合に、解析処理が収束しないと判定してよい。変位電圧ΔVCEを小さくすると、解析処理が収束しにくくなる。一方で、変位電圧ΔVCEが小さいほど、C-V特性を高精度に解析できる。電荷量解析部14は、解析処理が収束すると判定される範囲において、変位電圧ができるだけ小さくなるように設定してよい。電荷量解析部14は、解析処理が収束すると判定される範囲において、最も小さい変位電圧を設定してよい。設定される変位電圧は、条件を満たす最小の変位電圧に対して所定のマージンを有していてもよい。できるだけ小さい変位電圧を設定することで、C-V特性をより高精度に解析できる。
【0098】
図14は、一般的なC-V特性の一例を示す図である。
図14における横軸はV
CEを示し、縦軸はC
GCを示す。容量C
GCは、電源電圧V
CEが所定の飽和電圧を下回ると飽和し始める場合がある。電源電圧V
CEを下げていったときに、容量C
GCが最大値C
maxの半分になった電圧を、飽和電圧としてよい。
図14の例では、飽和電圧は約1Vである。
【0099】
容量CGCが最大値Cmaxの近傍で飽和する領域は、半導体装置100がオフ状態で、空乏層が広がっていない領域に対応する。解析装置10は、オン状態の半導体装置100のC-V特性を解析するので、電荷量解析部14は、飽和電圧に応じて電源電圧VCEの変動範囲の下限の電圧を設定してよい。当該下限の電圧は、飽和電圧であってよい。
【0100】
電荷量解析部14は、飽和電圧に応じて変位電圧ΔVCEを決定してよい。電荷量解析部14は、飽和電圧に所定の係数を乗算して、変位電圧ΔVCEを決定してよい。当該係数は、例えば0.2以下であってよく、0.1以下であってよく、0.01以下であってもよい。これにより、測定すべき電源電圧VCEの変動範囲の下限に対して、十分小さい変位電圧ΔVCEを設定できる。飽和電圧は、使用者等により予め設定されてよく、入力される情報に基づいて電荷量解析部14が解析してもよい。飽和電圧は、半導体装置100がオフ状態のC-V特性を解析して算出してもよい。
【0101】
図15は、参考例に係る測定方法を説明する図である。本例の測定方法は、半導体装置100に小信号電圧を印加して、半導体装置100に流れる電流を測定してインピーダンスを計算することで、C-V特性を測定する。
図15は、半導体装置100の容量成分のみを示す等価回路である。参考例では、C-V特性を測定すべき容量Cに、交流の小信号電圧を印加して、流れる電流を測定する。
【0102】
図16は、参考例に用いる測定回路405の一例を示す図である。本例では、容量C
GCを測定する例を示すが、他の容量Cも同様に測定できる。容量C
GCを測定する場合、
図15に示した第1主端子101を、交流信号を通過させるACガードを介して、グランド電位に接続する。これにより、容量C
GEと容量C
CEを除外して、容量C
GCのインピーダンスを測定できる。
【0103】
本例では、第2主端子102に小信号源401および電源V
CCを並列に接続する。容量C
GCには、V=V
CC+V
acの電圧が印加される。また、制御端子103に電流計402を接続する。電流計402が測定した電流Iと、印加電圧Vに基づいて、容量C
GCは下式のように算出できる。
C
GC=I/jωV
電源電圧V
CCを変化させて容量C
GCを測定することで、C-V特性を取得できる。
図14において説明した飽和電圧に関する情報は、参考例の測定結果から取得してよい。
【0104】
図17は、
図16に示した測定回路405に基づいて算出したC-V特性の一例を示す図である。
図17においては、概ね妥当なC-V特性が得られている。ただし上述したように、当該C-V特性は、半導体装置100がオフ状態の場合の特性である。しかし、半導体装置100のC-V特性は、半導体装置100がオン状態の場合と、オフ状態の場合とで変化し得る。半導体装置100は、オン状態で用いられる場合が多い。このため、半導体装置100のオン状態のC-V特性を解析できることが好ましい。
【0105】
図18は、参考例において半導体装置100がオン状態の場合の動作を示す回路420を示す。回路420においては、小信号源401を省略している。回路420により、直流成分の動作を解析する。
【0106】
図18に示すように、半導体装置100がオン状態の場合、第2主端子102に流れる電流I
Cには、主電流Iが含まれる。通常、主電流Iは、電源電圧V
CEが変化した時に各容量に流れる電流に比べて非常に大きい。
【0107】
このような場合に、
図16に示したような等価回路を用いて端子容量C
GCを解析すると、電流I
acには、各容量を流れる電流に加えて、主電流Iの成分も含まれてしまう。このため、見た目の電流量が非常に大きくなり、端子容量C
GCが非常に大きい値になってしまう。
【0108】
図19は、半導体装置100をオン状態としたときの端子容量C
GCの解析値と、オフ状態としたときの端子容量C
GCの解析値とを示す。
図19に示すように、オン状態のときの端子容量C
GCの解析値が、オフ状態の端子容量C
GCの解析値に比べて非常に大きくなってしまう。このように、参考例の解析方法では、半導体装置100がオン状態のときの容量を精度よく解析できない。
【0109】
図20は、
図1Aから
図14において説明した解析方法により算出した電荷量から、各電流波形を解析した図である。
図20においては、電源電圧を、V
CEからV
CE+ΔV
CEまで変化させる期間を、電圧遷移期間としている。
図20においては、
図10に示した第2主端子102に流れるコレクタ電流の変化分ΔI
cと、端子間容量C
GCに流れる電流の変化分ΔI
Cgcを示している。変化分ΔI
cは、電源電圧を変化させたときの電流I
cの差分である。変化分ΔI
Cgcは、コレクタ領域120の電荷の積分値から算出できる。
【0110】
図20に示すように、電源電圧を増加させると、主電流の増加に伴いコレクタ電流I
Cは増加している。一方で、端子間容量C
GCに流れる電流I
Cgcは、電圧遷移期間で変動するが、電圧遷移期間以外では、ほぼ0である。
図20に示されるように、
図1Aから
図14において説明した解析方法において算出した電荷量には、コレクタ電流I
Cに寄与する電荷が含まれない。このため、半導体装置100がオン状態のC-V特性を精度よく解析できる。
図12に示したオン状態のC-V特性は、
図19に示したオフ状態のC-V特性との差異が小さく、概ね妥当な値になっている。当該解析方法において算出する電荷にはコレクタ電流I
Cに寄与する電荷が含まれないことから、コレクタ電流I
Cに影響なく端子容量C
GCを計算することができる。
【0111】
図21は、
図1Aから
図14に示した解析装置10を用いた解析方法の一例を示すフローチャートである。解析方法は、
図1Aから
図14において説明した各処理を適宜行ってよい。解析方法は、入力段階S1500、電荷量解析段階S1502、容量算出段階S1504、および、出力段階S1506を備える。
【0112】
入力段階S1500における処理は、入力部12の処理と同様である。電荷量解析段階S1502における処理は、電荷量解析部14の処理と同様である。容量算出段階S1504における処理は、容量算出部16の処理と同様である。出力段階S1506における処理は、出力部18の処理と同様である。
【0113】
図22は、本発明の複数の態様が全体的または部分的に具現化されうるコンピュータ1200の構成例を示す。コンピュータ1200にインストールされたプログラムは、コンピュータ1200に、本発明の実施形態に係る装置に関連付けられるオペレーション又は当該装置の1又は複数の「部」として機能させ、又は当該オペレーション又は当該1又は複数の「部」を実行させることができ、及び/又はコンピュータ1200に、本発明の実施形態に係るプロセス又は当該プロセスの段階を実行させることができる。このようなプログラムは、コンピュータ1200に、本明細書に記載のフローチャート及びブロック図のブロックのうちのいくつか又はすべてに関連付けられた特定のオペレーションを実行させるべく、CPU1212によって実行されてよい。また、本発明の実施形態に係るプロセス又は当該プロセスの段階は、クラウド上で実行されてもよい。
【0114】
本実施形態によるコンピュータ1200は、CPU1212、RAM1214、グラフィックコントローラ1216、及びディスプレイデバイス1218を含み、これらはホストコントローラ1210によって相互に接続される。コンピュータ1200はまた、通信インターフェイス1222、ハードディスクドライブ1224、DVD-ROMドライブ1226、及びICカードドライブのような入出力ユニットを含み、これらは入出力コントローラ1220を介してホストコントローラ1210に接続される。コンピュータはまた、ROM1230及びキーボード1242のようなレガシの入出力ユニットを含み、これらは入出力チップ1240を介して入出力コントローラ1220に接続される。
【0115】
CPU1212は、ROM1230及びRAM1214内に格納されたプログラムに従い動作し、これにより各ユニットを制御する。グラフィックコントローラ1216は、RAM1214内に提供されるフレームバッファ等又は当該グラフィックコントローラ1216自体の中に、CPU1212によって生成されるイメージデータを取得し、イメージデータをディスプレイデバイス1218上に表示させる。
【0116】
通信インターフェイス1222は、ネットワークを介して他の電子デバイスと通信する。ハードディスクドライブ1224は、コンピュータ1200内のCPU1212によって使用されるプログラム及びデータを格納する。DVD-ROMドライブ1226は、プログラム又はデータをDVD-ROM1201から読み取り、ハードディスクドライブ1224にRAM1214を介してプログラム又はデータを提供する。ICカードドライブは、プログラム及びデータをICカードから読み取り、及び/又はプログラム及びデータをICカードに書き込む。
【0117】
ROM1230は、内部に、アクティブ化時にコンピュータ1200によって実行されるブートプログラム等、及び/又はコンピュータ1200のハードウェアに依存するプログラムを格納する。入出力チップ1240はまた、様々な入出力ユニットをパラレルポート、シリアルポート、キーボードポート、マウスポート等を介して、入出力コントローラ1220に接続してよい。
【0118】
プログラムが、DVD-ROM1201又はICカードのようなコンピュータ可読記憶媒体によって提供される。プログラムは、コンピュータ可読記憶媒体から読み取られ、コンピュータ可読記憶媒体の例でもあるハードディスクドライブ1224、RAM1214、又はROM1230にインストールされ、CPU1212によって実行される。これらのプログラム内に記述される情報処理は、コンピュータ1200に読み取られ、プログラムと、上記様々なタイプのハードウェアリソースとの間の連携をもたらす。装置又は方法が、コンピュータ1200の使用に従い情報のオペレーション又は処理を実現することによって構成されてよい。
【0119】
例えば、通信がコンピュータ1200及び外部デバイス間で実行される場合、CPU1212は、RAM1214にロードされた通信プログラムを実行し、通信プログラムに記述された処理に基づいて、通信インターフェイス1222に対し、通信処理を命令してよい。通信インターフェイス1222は、CPU1212の制御の下、RAM1214、ハードディスクドライブ1224、DVD-ROM1201、又はICカードのような記録媒体内に提供される送信バッファ領域に格納された送信データを読み取り、読み取られた送信データをネットワークに送信し、又はネットワークから受信した受信データを記録媒体上に提供される受信バッファ領域等に書き込む。
【0120】
また、CPU1212は、ハードディスクドライブ1224、DVD-ROMドライブ1226(DVD-ROM1201)、ICカード等のような外部記録媒体に格納されたファイル又はデータベースの全部又は必要な部分がRAM1214に読み取られるようにし、RAM1214上のデータに対し様々なタイプの処理を実行してよい。CPU1212は次に、処理されたデータを外部記録媒体にライトバックしてよい。
【0121】
様々なタイプのプログラム、データ、テーブル、及びデータベースのような、様々なタイプの情報が、情報処理されるべく、記録媒体に格納されてよい。CPU1212は、RAM1214から読み取られたデータに対し、本開示の随所に記載され、プログラムの命令シーケンスによって指定される様々なタイプのオペレーション、情報処理、条件判断、条件分岐、無条件分岐、情報の検索/置換等を含む、様々なタイプの処理を実行してよく、結果をRAM1214に対しライトバックする。また、CPU1212は、記録媒体内のファイル、データベース等における情報を検索してよい。例えば、各々が第2の属性の属性値に関連付けられた第1の属性の属性値を有する複数のエントリが記録媒体内に格納される場合、CPU1212は、当該複数のエントリの中から、第1の属性の属性値が指定されている条件に一致するエントリを検索し、当該エントリ内に格納された第2の属性の属性値を読み取り、これにより所定の条件を満たす第1の属性に関連付けられた第2の属性の属性値を取得してよい。
【0122】
以上の説明によるプログラム又はソフトウェアモジュールは、コンピュータ1200上又はコンピュータ1200近傍のコンピュータ可読記憶媒体に格納されてよい。また、専用通信ネットワーク又はインターネットに接続されたサーバシステム内に提供されるハードディスク又はRAMのような記録媒体が、コンピュータ可読記憶媒体として使用可能であり、これにより、プログラムをコンピュータ1200にネットワークを介して提供する。
【0123】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、請求の範囲の記載から明らかである。
【0124】
請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。
【符号の説明】
【0125】
10・・・解析装置、12・・・入力部、14・・・電荷量解析部、16・・・容量算出部、18・・・出力部、100・・・半導体装置、101・・・第1主端子、102・・・第2主端子、103・・・制御端子、104・・・ゲート絶縁膜、105・・・ゲート構造部、106・・・チャネル領域、110・・・層間絶縁膜、111・・・半導体基板、112・・・エミッタ領域、113・・・上面、114・・・ベース領域、115・・・下面、116・・・ドリフト領域、117・・・空乏層、118・・・バッファ領域、120・・・コレクタ領域、121・・・ドーピング濃度ピーク、122・・・近似直線、123・・・直線、124・・・増加領域、125・・・凸部、126・・・凹部、127・・・ドーピング濃度ピーク、134・・・電源、135・・・電源、141・・・水素濃度ピーク、142・・・直線、151、152、153、154・・・特性、160・・・メサ部、180・・・ピーク、181・・・谷部、300・・・回路、401・・・小信号源、402・・・電流計、405・・・測定回路、420・・・回路、1200・・・コンピュータ、1201・・・DVD-ROM、1210・・・ホストコントローラ、1212・・・CPU、1214・・・RAM、1216・・・グラフィックコントローラ、1218・・・ディスプレイデバイス、1220・・・入出力コントローラ、1222・・・通信インターフェイス、1224・・・ハードディスクドライブ、1226・・・DVD-ROMドライブ、1230・・・ROM、1240・・・入出力チップ、1242・・・キーボード