(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-20
(45)【発行日】2025-01-28
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
H01L 25/07 20060101AFI20250121BHJP
H01L 25/18 20230101ALI20250121BHJP
H01L 21/60 20060101ALI20250121BHJP
H02M 7/48 20070101ALI20250121BHJP
【FI】
H01L25/04 C
H01L21/60 301A
H01L21/60 321E
H02M7/48 Z
(21)【出願番号】P 2023525735
(86)(22)【出願日】2022-05-23
(86)【国際出願番号】 JP2022021068
(87)【国際公開番号】W WO2022255139
(87)【国際公開日】2022-12-08
【審査請求日】2023-06-01
(31)【優先権主張番号】P 2021094169
(32)【優先日】2021-06-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003177
【氏名又は名称】弁理士法人旺知国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山野 彰生
【審査官】庄司 一隆
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/059285(WO,A1)
【文献】特開2014-011225(JP,A)
【文献】特開2019-114727(JP,A)
【文献】国際公開第2013/179547(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 25/07
H01L 21/60
H02M 7/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1導電パターンおよび第2導電パターンを有する導電パターンと、
前記第1導電パターン上に各々配置された第1半導体素子および第2半導体素子と、を備え、
前記第1導電パターンは、前記第1半導体素子と重なる第1入力領域と、前記第2半導体素子と重なる第2入力領域とを含み、
前記第1半導体素子および前記第2半導体素子の各々は、
前記第1導電パターンに対向する第1主面に設けられ、前記第1導電パターンと電気的に接続する第1主電極と、
前記第1主面と反対側の第2主面に設けられた第2主電極と、を備え、
前記第1半導体素子の前記第2主電極と、前記第2半導体素子の前記第2主電極とは、ワイヤまたはリボンである第1配線部材によって相互に接続され、
前記第2半導体素子の前記第2主電極と、前記第2導電パターンとは、前記ワイヤまたは前記リボンである第2配線部材によって相互に接続され、
前記第1入力領域から前記第1半導体素子を経由して前記第2導電パターンに流れる電流(i1)に対する、前記第2入力領域から前記第2半導体素子を経由して前記第2導電パターンに流れる電流(i2)の比(i2/i1)は、0.90以上1.10以下であ
り、
前記第1半導体素子における前記第1主電極と前記第2主電極との間の抵抗および前記第1半導体素子と前記第1導電パターンとの接続層の抵抗の和は、前記第2半導体素子における前記第1主電極と前記第2主電極との間の抵抗および前記第2半導体素子と前記第1導電パターンとの接続層の抵抗の和よりも小さい、
半導体装置。
【請求項2】
前記電流(i1)に対する前記電流(i2)の比(i2/i1)は、0.93以上1.07以下である、
請求項1記載の半導体装置。
【請求項3】
前記電流(i1)に対する前記電流(i2)の比(i2/i1)は、0.95以上1.05以下である、
請求項1または2記載の半導体装置。
【請求項4】
第1導電パターンおよび第2導電パターンを有する導電パターンと、
前記第1導電パターン上に各々配置された第1半導体素子および第2半導体素子と、を備え、
前記第1導電パターンは、前記第1半導体素子と重なる第1入力領域と、前記第2半導体素子と重なる第2入力領域とを含み、
前記第1半導体素子および前記第2半導体素子の各々は、
前記第1導電パターンに対向する第1主面に設けられ、前記第1導電パターンと電気的に接続する第1主電極と、
前記第1主面と反対側の第2主面に設けられた第2主電極と、を備え、
前記第1半導体素子の前記第2主電極と、前記第2半導体素子の前記第2主電極とは、ワイヤまたはリボンである第1配線部材によって相互に接続され、
前記第2半導体素子の前記第2主電極と、前記第2導電パターンとは、前記ワイヤまたは前記リボンである第2配線部材によって相互に接続され、
前記第2入力領域から前記第2半導体素子を経由して前記第2半導体素子の前記第2主電極と前記第2配線部材との接続点に至る第2経路における抵抗(R2)に対する、前記第1入力領域から前記第1半導体素子および第1配線部材を経由して前記接続点に至る第1経路における抵抗(R1)の比(R1/R2)は、0.90以上1.10以下であ
り、
前記第1半導体素子における前記第1主電極と前記第2主電極との間の抵抗および前記第1半導体素子と前記第1導電パターンとの接続層の抵抗の和は、前記第2半導体素子における前記第1主電極と前記第2主電極との間の抵抗および前記第2半導体素子と前記第1導電パターンとの接続層の抵抗の和よりも小さい、
半導体装置。
【請求項5】
前記抵抗(R2)に対する前記抵抗(R1)の比(R1/R2)は、0.93以上1.07以下である、
請求項4記載の半導体装置。
【請求項6】
前記抵抗(R2)に対する前記抵抗(R1)の比(R1/R2)は、0.95以上1.05以下である、
請求項4または5記載の半導体装置。
【請求項7】
前記第1導電パターンは、前記第1入力領域と前記第2入力領域との間の中間領域を含み、
前記第1配線部材の抵抗は、前記中間領域の抵抗と同一である、
請求項1から
6のいずれか1項記載の半導体装置。
【請求項8】
前記第1導電パターンは、前記第1入力領域と前記第2入力領域との間の中間領域を含み、
前記中間領域の断面積は、前記第1入力領域の断面積よりも小
さい、
請求項1から
7のいずれか1項記載の半導体装置。
【請求項9】
前記中間領域に、前記第1導電パターンの一部が除去されたトレンチが設けられている、
請求項
8記載の半導体装置。
【請求項10】
前記第1配線部材および前記第2配線部材は、前記第1半導体素子の前記第2主電極、前記第2半導体素子の前記第2主電極、および前記第2導電パターンにステッチボンディングされた単一の前記ワイヤまたは前記リボンである、
請求項1から
9のいずれか1項記載の半導体装置。
【請求項11】
前記第1配線部材および前記第2配線部材である前記単一の前記ワイヤまたは前記リボンに加えて、前記第2半導体素子の前記第2主電極と前記第2導電パターンとを接続する前記ワイヤまたは前記リボンである第3配線部材が更に設けられている、
請求項
10記載の半導体装置。
【請求項12】
前記第2半導体素子は、前記第2導電パターンに対して第1軸に沿って間隔を置いて配置されており、
前記第1半導体素子は、前記第2半導体素子に対して前記第1軸に沿って間隔を置いて配置されており、
前記第1配線部材および前記第2配線部材は、前記第1軸に沿って延在する、
請求項1から
11のいずれか1項記載の半導体装置。
【請求項13】
前記第1半導体素子および前記第2半導体素子の各々は、
平面視した際に互いに対向する一対の長辺および互いに対向する一対の短辺を有する矩形を呈し、
前記短辺が前記第1軸に沿うように前記第1導電パターン上に配置されている、
請求項
12記載の半導体装置。
【請求項14】
前記第1半導体素子の前記第2主面および前記第2半導体素子の前記第2主面には、
ゲート電極と、
前記ゲート電極と電気的に接続するゲートランナーと、が設けられており、
前記ゲートランナーは、前記第2主面の前記長辺に平行に配置されている、
請求項
13記載の半導体装置。
【請求項15】
前記第1半導体素子および前記第2半導体素子は、RC-IGBT(Reverse Conducting Insulated Gate Bipolar Transistor)である、
請求項1から
14のいずれか1項記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体装置の小型化および大電流化のため、複数の半導体素子を導電パターン上に面積効率よく配置させる技術が開発されている。例えば下記特許文献1には、絶縁基板上の導電パターンと、複数の半導体素子とが一方向に並んだ配置が開示されている。半導体素子には、絶縁基板に対向する裏面に第1主電極が、おもて面に第2主電極が形成されている。複数の半導体素子の第2主電極間は、ワイヤをステッチボンディングすることにより接続されている。複数の半導体素子の第2主電極と導電パターンとの間は、複数の半導体素子の第2主電極間を接続するワイヤを、更に導電パターンにステッチボンディングすることにより接続されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した従来技術では、第2主電極と導電パターンとを接続するワイヤを複数の半導体素子に対して個別に設けなくてよいため、半導体素子の実装可能面積が大きくなり、半導体装置の大容量化が実現される。一方で、各半導体素子の第2主電極から導電パターンまでの経路における抵抗値が不均衡になり、複数の半導体素子それぞれに流れる電流が不均衡になる。これにより、電流が相対的に大きい半導体素子において、ワイヤ接合部分の温度が相対的に高くなり、半導体素子のパワーサイクル耐量(所定電流のオン/オフの繰り返しによる破壊サイクル数)、短絡耐量およびI2t耐量等が低下し、半導体装置の長期信頼性が保てなくなる可能性がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために本開示の半導体装置は、第1導電パターンおよび第2導電パターンを有する導電パターンと、前記第1導電パターン上に各々配置された第1半導体素子および第2半導体素子と、を備え、前記第1導電パターンは、前記第1半導体素子と重なる第1入力領域と、前記第2半導体素子と重なる第2入力領域とを含み、前記第1半導体素子および前記第2半導体素子の各々は、前記第1導電パターンに対向する第1主面に設けられ、前記第1導電パターンと電気的に接続する第1主電極と、前記第1主面と反対側の第2主面に設けられた第2主電極と、を備え、前記第1半導体素子の前記第2主電極と、前記第2半導体素子の前記第2主電極とは、ワイヤまたはリボンである第1配線部材によって相互に接続され、前記第2半導体素子の前記第2主電極と、前記第2導電パターンとは、前記ワイヤまたは前記リボンである第2配線部材によって相互に接続され、前記第1入力領域から前記第1半導体素子を経由して前記第2導電パターンに流れる電流(i1)に対する、前記第2入力領域から前記第2半導体素子を経由して前記第2導電パターンに流れる電流(i2)の比(i2/i1)は、0.90以上1.10以下である。
【0006】
また、本開示の半導体装置は、第1導電パターンおよび第2導電パターンを有する導電パターンと、前記第1導電パターン上に各々配置された第1半導体素子および第2半導体素子と、を備え、前記第1導電パターンは、前記第1半導体素子と重なる第1入力領域と、前記第2半導体素子と重なる第2入力領域とを含み、前記第1半導体素子および前記第2半導体素子の各々は、前記第1導電パターンに対向する第1主面に設けられ、前記第1導電パターンと電気的に接続する第1主電極と、前記第1主面と反対側の第2主面に設けられた第2主電極と、を備え、前記第1半導体素子の前記第2主電極と、前記第2半導体素子の前記第2主電極とは、ワイヤまたはリボンである第1配線部材によって相互に接続され、前記第2半導体素子の前記第2主電極と、前記第2導電パターンとは、前記ワイヤまたは前記リボンである第2配線部材によって相互に接続され、前記第2入力領域から前記第2半導体素子を経由して前記第2半導体素子の前記第2主電極と前記第2配線部材との接続点に至る第2経路における抵抗(R2)に対する、前記第1入力領域から前記第1半導体素子および第1配線部材を経由して前記接続点に至る第1経路における抵抗(R1)の比(R1/R2)は、0.90以上1.10以下である。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】実施形態にかかる半導体装置10の平面図である。
【
図2】実施形態にかかる半導体ユニット20の平面図である。
【
図3】実施形態にかかる半導体ユニット20の断面図である。
【
図4】実施形態にかかる半導体ユニット20で構成される回路構成図である。
【
図5】
図3に示される半導体ユニットの断面図の領域Zを拡大した断面図である。
【
図6】
図3に示される半導体ユニットの断面図の領域Zを拡大した断面図である。
【
図7】
図3に示される半導体ユニットの断面図の領域Zを拡大した断面図である。
【
図9】トレンチTが設けられた半導体装置10の平面図である。
【
図10】室温における半導体素子のI-Vカーブの一例を示すグラフである。
【
図11】175℃における半導体素子のI-Vカーブの一例を示すグラフである。
【
図12】抵抗Rw
2およびRp
3の範囲を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照しながら本開示にかかる実施形態を説明する。なお、図面において各部の寸法および縮尺は実際のものと適宜異なる。また、以下に記載する実施形態は、本開示の好適な具体例である。このため、以下の実施形態には、技術的に好ましい種々の限定が付されている。しかし、本開示の範囲は、以下の説明において特に本開示を限定する旨の記載がない限り、これらの形態に限られるものではない。
【0009】
図1は、実施形態にかかる半導体装置10の平面図である。半導体装置10は、放熱基板11と、ボンディングワイヤ12a~12eにより電気的に接続された半導体ユニット20a~20fとを有する。放熱基板11は、熱伝導性に優れた、例えば、アルミニウム、鉄、銀、銅、または、少なくともこれらの一種を含む合金により構成されている。また、放熱基板11の表面は、耐食性を向上させるために、例えばニッケル等の材料でめっき処理等が施されてもよい。めっき処理等に用いる材料として、ニッケルの他、ニッケル-リン合金、ニッケル-ボロン合金等が用いられてもよい。放熱基板11には、外部機器に対して取り付けの際に用いられる取り付け孔、半導体ユニット20a~20fに対して電流を入出力するためのコンタクト領域等が適宜形成されている。
【0010】
半導体ユニット20a~20fは、例えば、はんだまたは銀ろう等を介して放熱基板11のおもて面に一列で配置されている。半導体ユニット20a~20fは、半導体素子(例えば後述する半導体素子25~28)が配置されて、必要とされる機能を実現する。なお、
図1に示す半導体ユニット20a~20fの個数は一例であって、必要に応じた個数を設置することができる。また、以下では、半導体ユニット20a~20fの総称を半導体ユニット20とし、その詳細については後述する。なお、ボンディングワイヤ12a~12eは、導電性に優れたアルミニウムや銅等の金属、または、少なくともこれらの一種を含む合金等により形成されている。
【0011】
次に、半導体ユニット20の構成について、
図2~
図4を用いて説明する。
図2は、実施形態にかかる半導体ユニット20の平面図であり、
図3は、実施形態にかかる半導体ユニット20の断面図である。なお、
図3は、
図2の一点鎖線C-Cにおける断面を表している。ただし、
図3ではボンディングワイヤ29の図示が省略されている。また、
図4は、実施形態にかかる半導体ユニット20で構成される回路図である。
【0012】
本実施形態では、半導体ユニット20は、平面視で矩形を呈する。より詳細には、半導体ユニット20を構成する絶縁基板22は、平面視した際に、互いに対向する一対の長辺と、互いに対向する一対の短辺とを有する矩形を呈し、その主面(おもて面および裏面)に、半導体ユニット20の他の構成部材が配置される。本実施形態では、平面視した際の半導体ユニット20の短辺に沿ってX軸、長辺に沿ってY軸を取る。Y軸は、第1軸の一例である。なお、本実施形態におけて、平面視とは、絶縁基板22のおもて面と垂直な方向から対象物を見ることと同義である。
【0013】
半導体ユニット20は、第1アーム部(上アーム部)Aと第2アーム部(下アーム部)Bを備え、上下アーム部が形成されている。
図4に示すように、第1アーム部Aは、図示しない外部電源の正極に接続する外部接続端子P(入力P)が接続され、外部電源の正極(高電位端子)から負荷へ電流を供給する回路を構成する。なお、負荷は外部接続端子U(出力U)に接続されている。第2アーム部Bは、外部電源の負極に接続する外部接続端子N(入力N)が接続され、負荷から外部電源の負極(低電位端子)へ電流を引き込む回路を構成する。
図2および
図3に示されるように、半導体ユニット20は、回路基板21と、回路基板21のおもて面に設けられた半導体素子25~28とを有している。半導体素子26および27は「第1半導体素子」の一例であり、半導体素子25および28は「第2半導体素子」の一例である。半導体ユニット20は、回路基板21の裏面がはんだまたは銀ろう等(図示省略)を介して放熱基板11に接合されることにより、放熱基板11上に配置される(
図1参照)。
【0014】
本実施形態では、半導体素子25~28は、シリコンまたは炭化シリコンを含んで構成され、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)とFWD(Free Wheeling Diode)が1チップ内に構成されたRC-IGBT(Reverse Conducting Insulated Gate Bipolar Transistor)のスイッチング素子である。RC-IGBTは、IGBTとFWDとが逆並列で接続された回路を有する。
【0015】
本実施形態では、半導体素子25~28は、平面視で矩形を呈する。より詳細には、半導体素子25~28のおもて面および裏面は、平面視した際に、互いに対向する一対の長辺と、互いに対向する一対の短辺とを有する矩形を呈する。各半導体素子25~28は、その長辺がX軸に、その短辺がY軸に、それぞれ沿って延在するように配置される。
【0016】
半導体素子25~28は、例えば、第1主面である裏面に第1主電極である入力電極(コレクタ電極、例えば図3に半導体素子25の入力電極25d、半導体素子26の入力電極26dを示す)を備える。また、半導体素子25~28は、第2主面であるおもて面に、制御電極(ゲート電極25a~28a)と、第2主電極である出力電極(エミッタ電極)25b~28bを備える。ゲート電極25a~28aは、半導体素子25~28のおもて面の一方の長辺の近傍、かつ当該長辺の中央付近に位置する。また、出力電極25b~28bは、半導体素子25~28のおもて面のゲート電極25a~28a以外の部分に形成されている。また、半導体素子25~28のおもて面には、ゲート電極25a~28aと電気的に接続するゲートランナー25c~28cが設けられている。ゲートランナー25c~28cは、ゲート電極25a~28aに供給されるゲート制御信号を半導体素子25~28の全体に遅延なく伝達するために設けられている。本実施形態では、ゲートランナー25c~28cは、半導体素子25~28の短辺の中央付近に、半導体素子25~28の長辺と平行に配置されている。
【0017】
回路基板21は、絶縁基板22と、絶縁基板22の裏面に接合された金属板23とを有している。絶縁基板22は、熱伝導性に優れた、酸化アルミニウム、窒化アルミニウムまたは窒化珪素等の高熱伝導性のセラミックスにより形成されている。金属板23は、熱伝導性に優れたアルミニウム、鉄、銀、銅、または、少なくともこれらの一種を含む合金等の金属により形成されている。更に、回路基板21は、絶縁基板22のおもて面に形成された導電パターン24a~24eをそれぞれ有している。導電パターン24a~24eは、導電性に優れた銅あるいは銅合金等の金属により形成されている。導電パターン24a~24eの表面には、耐食性を向上させるために、例えばニッケル等の材料を用いためっき処理等が施されていてもよい。めっき処理等に用いる材料として、ニッケルの他、例えばニッケル-リン合金またはニッケル-ボロン合金等が用いられてもよい。また、導電パターン24a~24eの厚さは、例えば、0.1mm以上、1mm以下である。このような構成を有する回路基板21として、例えば、DCB(Direct Copper Bonding)基板、AMB(Active Metal Brazed)基板を用いることができる。回路基板21は、半導体素子25~28で発生した熱を、導電パターン24a,24c、絶縁基板22および金属板23を介して放熱基板11に伝導させることができる。なお、回路基板21は、例えば金属ベース基板や、ダイパッドが形成されたリードフレームであってもよい。
【0018】
導電パターン24aは、第1アーム部Aのコレクタパターンを構成する。導電パターン24aは、第1アーム部Aにおける「第1導電パターン」の一例である。コレクタパターンは、半導体素子(第1アーム部Aにおいては半導体素子25,26)の入力電極(コレクタ電極)が接続される導電パターンである。導電パターン24aは、略矩形状を成しており、
図2中下側にコンタクト領域24a1を含む部分が突出している。
図4等に示すように、コンタクト領域24a1には、外部電源の正極と接続する外部接続端子Pが接続される。導電パターン24a上には、半導体素子25,26が、Y軸に沿って間隔をあけて配置されている。より詳細には、半導体素子25,26は、第1の長辺と第2の長辺とを有する。第1の長辺は、ゲート電極25a,26aに近接して配置されるとともに、後述する導電パターン24bの接続領域24b1に近接して配置される。第2の長辺は、ゲート電極25a,26aから離れた位置に配置されるとともに、後述する導電パターン24cの接続領域24c3に近接して配置される。したがって、ゲート電極25a,26aは、絶縁基板22の短辺(
図2中下側)に向いている。導電パターン24aと半導体素子25,26とは、はんだ層30(30A,30B)を介して接合されており、半導体素子25,26の裏面に形成されたコレクタ電極と導電パターン24aとが電気的に接続する。
【0019】
なお、第1アーム部Aに配置される半導体素子は、3つ以上であってもよい。その場合も、半導体素子は、ゲート電極が接続される導電パターン24bの接続領域24b1を向いてゲート電極が一列に配列するように配置される。
【0020】
導電パターン24bは、第1アーム部Aの制御パターンを構成する。制御パターンは、半導体素子(第1アーム部Aにおいては半導体素子25,26)の制御電極(ゲート電極)が接続される導電パターンである。導電パターン24bは、Y軸に沿って並んだ半導体素子25,26のゲート電極25a,26aの延長線上に位置する接続領域24b1を有する。接続領域24b1には、半導体素子25,26のゲート電極25a,26aと接続されたボンディングワイヤ29aが接続されている。また、導電パターン24bは、ゲート用の外部接続端子G1が接続されるコンタクト領域24b2を有する。導電パターン24bは、
図2において、接続領域24b1を含む部分から、絶縁基板22の下側の短辺(X軸)に沿って、半導体素子25,26の配列と垂直に延びている。
【0021】
導電パターン24cは、第1アーム部Aのエミッタパターンおよび第2アーム部Bのコレクタパターンを構成する。導電パターン24cは、第1アーム部Aにおける「第2導電パターン」の一例である。また、導電パターン24cは、第2アーム部Bにおける「第1導電パターン」の一例である。エミッタパターンは、半導体素子(第1アーム部Aにおいては半導体素子25,26)の出力電極(エミッタ電極)が接続される導電パターンである。導電パターン24cは、絶縁基板22の右側の長辺に沿って延在する略矩形の第1領域24c1と、絶縁基板22の上側の短辺に沿って延在する略矩形の第2領域24c2とを有し、全体として略L字型状を呈している。
【0022】
第2領域24c2は、第1アーム部Aのエミッタパターンを構成する。第2領域24c2のうち、半導体素子25,26からY軸に沿った延長線上には、半導体素子25,26の出力電極25b,26bから延びるボンディングワイヤ29cおよび半導体素子25の出力電極25bから延びるシングルボンディングワイヤ29cxが接続される接続領域24c3が設けられている。第2領域24c2には、負荷と接続する外部接続端子Uが接続されるコンタクト領域24c4が設けられている。
【0023】
第1領域24c1は、第2アーム部Bのコレクタパターンを構成する。第1領域24c1には半導体素子27,28がY軸に沿って間隔をあけて配置されている。より詳細には、半導体素子27,28は、第3の長辺と第4の長辺とを有する。第3の長辺は、ゲート電極27a,28aに近接して配置される。第4の長辺は、後述する導電パターン24dの接続領域24d1に近接し、ゲート電極27a,28aから離れた位置に配置される。したがって、ゲート電極27a,28aは、絶縁基板22の短辺(
図2中上側)に向いている。導電パターン24cの第1領域24c1と半導体素子27,28とは、図示しないはんだ層を介して接合されており、半導体素子27,28の裏面に形成されたコレクタ電極と導電パターン24cとが電気的に接続する。
【0024】
なお、第2アーム部Bに配置される半導体素子は、3つ以上であってもよい。その場合も、半導体素子は、ゲート電極が接続される導電パターン24eの接続領域24e1を向いてゲート電極が一列に配列するように配置される。
【0025】
導電パターン24dは、第2アーム部Bの制御パターンを構成する。導電パターン24dは、Y軸に沿って並んだ半導体素子27,28のゲート電極27a,28aの延長線上に位置する接続領域24d1を有する。接続領域24d1には、半導体素子27,28のゲート電極27a,28aと接続されたボンディングワイヤ29bが接続されている。また、導電パターン24dは、ゲート用の外部接続端子G2が接続されるコンタクト領域24d2を有する。導電パターン24dは、
図2において、接続領域24d1を含む部分から、絶縁基板22の上側の短辺(X軸)に沿って、半導体素子27,28の配列と垂直に延びている。
【0026】
導電パターン24eは、第2アーム部Bのエミッタパターンを構成する。導電パターン24eは、第2アーム部Bにおける「第2導電パターン」の一例である。導電パターン24eのうち、半導体素子27,28からY軸に沿った延長線上には、半導体素子27,28の出力電極27b,28bから延びるボンディングワイヤ29dおよび半導体素子28の出力電極28bから延びるシングルボンディングワイヤ29dxが接続される接続領域24e1が設けられている。導電パターン24eには、外部接続端子(図示省略)が接続されるコンタクト領域24e2が設けられている。
図4等に示すように、コンタクト領域24e2には、外部電源の負極と接続する外部接続端子Nが接続される。
【0027】
ボンディングワイヤ29a~29d(シングルボンディングワイヤ29cx,29dxを含む)は、半導体素子25~28と導電パターン24とを接続する配線部材の一例である。ボンディングワイヤ29a~29dは、導電性に優れたアルミニウム、銅等の金属、または、少なくともこれらの一種を含む合金等により構成されている。また、ボンディングワイヤ29a~29dの径は、100μm以上、1mm以下であることが好ましい。
【0028】
本実施形態では、配線部材としてワイヤを用いるが、配線部材としてリボン(ribbon wire)を用いてもよい。ワイヤは線状の部材であり、ワイヤ内で電流は1次元的に流れる。これに対して、リボンは所定の幅を有する帯状の部材であり、リボン内で電流は2次元的に流れる。なお、この他半導体装置における配線部材としてリードフレームが知られている。リードフレームは板状の部材であり、リードフレーム内で電流は3次元的に流れる。リードフレームは、ワイヤやリボンと比較して抵抗が小さい等の利点はあるものの、半導体素子25~28や導電パターン24に対する接続に際して工程が複雑になるなど、本実施形態への適用は困難であるため、本実施形態における配線部材はワイヤまたはリボンであるものとする。
【0029】
ボンディングワイヤ29aは、半導体素子25のゲート電極25a、半導体素子26のゲート電極26a、および接続領域24b1にステッチボンディングされた単一のワイヤである。なお、ステッチボンディングとは、3箇所以上のボンディングにおいて、最初のボンディングから1つ以上の中間点のボンディングを経て最後のボンディングまで連続的に単一のワイヤで接続されているボンディングである。ボンディングワイヤ29aは、ゲート電極25aとゲート電極26aと接続領域24b1とに連続的に接合され、これらを電気的に接続する。ボンディングワイヤ29aは、ゲート電極25a,26aへの制御電流が流れるゲートワイヤとして機能する。
図2に示されるように、ゲート電極25aとゲート電極26aと接続領域24b1とは、Y軸に沿って一列に配置されている。よって、ボンディングワイヤ29aもY軸に沿って延在している。
【0030】
ボンディングワイヤ29bは、半導体素子28のゲート電極28a、半導体素子27のゲート電極27a、および接続領域24d1にステッチボンディングされた単一のワイヤである。ボンディングワイヤ29bは、ゲート電極28aとゲート電極27aと接続領域24d1とに連続的に接合され、これらを電気的に接続する。ボンディングワイヤ29bは、ゲート電極27a,28aへの制御電流が流れるゲートワイヤとして機能する。
図2に示されるように、ゲート電極28aとゲート電極27aと接続領域24d1とは、Y軸に沿って一列に配置されている。よって、ボンディングワイヤ29bもY軸に沿って延在している。
【0031】
ボンディングワイヤ29cは、半導体素子25の出力電極25b、半導体素子26の出力電極26b、および導電パターン24cを電気的に接続する。ボンディングワイヤ29cは、出力電極(エミッタ電極)25b,26bからの出力電流が流れるエミッタワイヤとして機能する。より詳細には、出力電極26b上の2箇所と、出力電極25b上の2箇所と、接続領域24c3上の1箇所の計5箇所で、1本のワイヤがステッチボンディングされることにより、ボンディングワイヤ29cが形成されている。ステッチボンディングによりステッチが形成される箇所(以下「ステッチ箇所」という)は、半導体素子25,26の短辺、すなわちY軸に沿って並んでおり、よって、ボンディングワイヤ29cは、ボンディングワイヤ29aと同様にY軸に沿って延在している。各出力電極25b,26bにおけるステッチ箇所は、ゲートランナー25c,26cを挟んで反対側に位置する。
【0032】
図5は、
図3に示される半導体ユニットの断面図の領域Zを拡大した断面図である。例えば
図5に示すように、1本のボンディングワイヤ29cは、5つのボンディング箇所があって、そのうち3つのステッチ箇所を境界として4個の部分ワイヤ29c1~29c4に区分される。部分ワイヤ29c1は、ボンディングワイヤ29cのうち、半導体素子26の出力電極26b上のボンディング箇所P1と、ボンディング箇所P1からY軸に沿って離れた出力電極26b上のステッチ箇所P2との間の部分である。部分ワイヤ29c2は、ボンディングワイヤ29cのうち、半導体素子26の出力電極26b上のステッチ箇所P2と、半導体素子25の出力電極25b上のステッチ箇所P3との間の部分である。部分ワイヤ29c2は、「第1配線部材」の一例である。部分ワイヤ29c3は、ボンディングワイヤ29cのうち、半導体素子25の出力電極25b上のステッチ箇所P3と、ステッチ箇所P3からY軸に沿って離れた出力電極25b上のステッチ箇所P4との間の部分である。部分ワイヤ29c4は、ボンディングワイヤ29cのうち、半導体素子25の出力電極25b上のステッチ箇所P4と、導電パターン24cの接続領域24c3上のボンディング箇所P5との間の部分である。部分ワイヤ29c4は、「第2配線部材」の一例である。なお、
図2では、ボンディングワイヤ29cが4本の場合が示されているが、ボンディングワイヤ29cの本数は任意である。
【0033】
また、
図2、5では、1本のワイヤ(ボンディングワイヤ29c)により、出力電極26b上の2箇所と、出力電極25b上の2箇所と、接続領域24c3上の1箇所の計5箇所がステッチボンディングされているが、これに限らない。少なくとも、出力電極26b上の1箇所以上と、出力電極25b上の1箇所以上と、接続領域24c3上の1箇所以上がステッチボンディングされていればよい。この場合でも、「第1配線部材」は、出力電極26b上の出力電極25bに最も近いボンディング箇所と出力電極25b上の出力電極26bに最も近いボンディング箇所との間の部分ワイヤであってよい。また、「第2配線部材」は、出力電極25b上の導電パターン24c(接続領域24c3)に最も近いボンディング箇所と接続領域24c3上の出力電極25bに最も近いボンディング箇所との間の部分ワイヤであってよい。
【0034】
ボンディングワイヤ29dは、半導体素子27の出力電極27b、出力電極28b、および導電パターン24eを電気的に接続する。ボンディングワイヤ29dは、出力電極(エミッタ電極)27b,28bからの出力電流が流れるエミッタワイヤとして機能する。より詳細には、出力電極27b上の2箇所と、出力電極28b上の2箇所と、接続領域24e1上の1箇所の計5箇所で、1本のワイヤがステッチボンディングされることにより、ボンディングワイヤ29dが形成されている。ステッチ箇所は、半導体素子27,28の短辺、すなわちY軸に沿って並んでおり、よって、ボンディングワイヤ29dは、ボンディングワイヤ29bと同様にY軸に沿って延在している。各出力電極27b,28bにおけるステッチ箇所は、ゲートランナー27c,28cを挟んで反対側に位置する。
【0035】
シングルボンディングワイヤ29cxは、半導体素子25の出力電極25b上の1箇所と、導電パターン24cの接続領域24c3上の1箇所とに接合され、出力電極25bと導電パターン24cを電気的に接続する。シングルボンディングワイヤ29cxは、「第3配線部材」の一例である。シングルボンディングワイヤ29cxは、出力電極(エミッタ電極)25bからの出力電流が流れるエミッタワイヤとして機能する。シングルボンディングワイヤ29cxは、出力電極25bのうちゲート電極25aとゲートランナー25cを挟んで反対側の位置と、接続領域24c3とでボンディングされている。ボンディング箇所は、半導体素子25の短辺、すなわちY軸に沿って配置されており、よって、シングルボンディングワイヤ29cxは、ボンディングワイヤ29cと同様にY軸に沿って延在する。
図2では、シングルボンディングワイヤ29cxが1本の場合が示されているが、シングルボンディングワイヤ29cxは2本以上設けられていてもよい。
【0036】
シングルボンディングワイヤ29dxは、半導体素子28の出力電極28b上の1箇所と、導電パターン24eの接続領域24e1上の1箇所とに接合され、出力電極28bと導電パターン24eを電気的に接続する。シングルボンディングワイヤ29dxは、出力電極(エミッタ電極)28bからの出力電流が流れるエミッタワイヤとして機能する。シングルボンディングワイヤ29dxは、出力電極28bのうちゲート電極
28aとゲートランナー
28cを挟んで反対側の位置と、接続領域24e1とでボンディングされている。ボンディング箇所は、半導体素子28の短辺、すなわちY軸に沿って配置されており、よって、シングルボンディングワイヤ29
dxは、ボンディングワイヤ29dと同様にY軸に沿って延在する。
図2では、シングルボンディングワイヤ29dxが1本の場合が示されているが、シングルボンディングワイヤ29dxは2本以上設けられていてもよい。
【0037】
半導体素子25~28と導電パターン24a~24eとボンディングワイヤ29a,29b,29c,29dおよびシングルボンディングワイヤ29cx,29dxにより、
図4に示されるインバータ回路が構成される。半導体素子25,26と、導電パターン24a,24b,24cと、ボンディングワイヤ29a,29c(シングルボンディングワイヤ29cxを含む)とにより第1アーム部(上アーム部)Aが構成される。また、半導体素子27,28と、導電パターン24c,24d,24eと、ボンディングワイヤ29b,29d(シングルボンディングワイヤ29dxを含む)とにより第2アーム部(下アーム部)Bが構成される。そして、半導体ユニット20は、外部電源の正極と接続する外部接続端子Pがコンタクト領域24a1に、外部電源の負極と接続する外部接続端子Nがコンタクト領域24e2に、それぞれ接続される。また、半導体ユニット20は、半導体装置10の外部の負荷と接続する外部接続端子Uがコンタクト領域24c4に接続される。これにより、半導体ユニット20は、インバータとして機能する。半導体ユニット20は、例えば、各コンタクト領域24a1,24c4,24e2に外部接続端子(図示省略)が接合され、回路基板21上の半導体素子25~28およびボンディングワイヤ29a~29dが封止部材で封止されていてもよい。この場合の封止部材は、例えば、マレイミド変性エポキシ樹脂、マレイミド変性フェノール樹脂、マレイミド樹脂等の熱硬化性樹脂を用いることができる。
【0038】
このように、本実施形態にかかる半導体ユニット20は、第1アーム部Aを構成する複数の半導体素子25,26の出力電極25b,26bと、導電パターン24cの接続領域24c3が一列に並んで配置される。これらは、出力電極26b、出力電極25bおよび導電パターン24cの接続領域24c3でステッチボンディングされたボンディングワイヤ29cで接続されている。すなわち、半導体装置10において、半導体素子25は、導電パターン24cに対してY軸に沿って間隔を置いて配置されており、半導体素子26は、半導体素子25に対してY軸に沿って間隔を置いて配置されており、部分ワイヤ29c2および部分ワイヤ29c4は、Y軸に沿って延在する。よって、ボンディングワイヤ29cは、半導体素子25のエミッタワイヤと、半導体素子26のエミッタワイヤを兼ねることになる。これにより、半導体素子25の出力電極25bと導電パターン24c、および、半導体素子26の出力電極26bと導電パターン24cをそれぞれ別のワイヤで接続するのと比較して、接続領域24c3を小さくすることができ、その分半導体素子25,26の実装面積を大きくすることができる。
【0039】
また、本実施形態では、半導体素子25,26の出力電極25b,26bと、導電パターン24cの接続領域24c3が、1本のボンディングワイヤ29cがステッチボンディングされることにより接続されている。すなわち、半導体装置10において、部分ワイヤ29c2および部分ワイヤ29c4は、半導体素子26の出力電極26b、半導体素子25の出力電極25b、および導電パターン24cにステッチボンディングされた単一のワイヤ(ボンディングワイヤ29c)である。これにより、複数の半導体素子25,26を簡易に接続することができ、半導体装置10の製造効率を向上させることができる。
【0040】
また、本実施形態では、ボンディングワイヤ29cに加えて、半導体素子25の出力電極25bと導電パターン24cのみを接続するシングルボンディングワイヤ29cxが設けられている。すなわち、半導体装置10において、部分ワイヤ29c2および部分ワイヤ29c4を含むボンディングワイヤ29cに加えて、半導体素子25の出力電極25bと導電パターン24cとを接続するワイヤであるシングルボンディングワイヤ29cxが更に設けられている。これにより、半導体素子25を経由して導電パターン24cに流れる電流の一部をシングルボンディングワイヤ29cxに流すことができ、部分ワイヤ29c4と半導体素子25との接合部における温度上昇を抑制することができる。
【0041】
また、本実施形態では、各半導体素子25,26は平面視で矩形を呈し、半導体素子25および26は、矩形の短辺に沿って配置されている。すなわち、半導体装置10において、半導体素子26および半導体素子25の各々は、平面視した際に互いに対向する一対の長辺および互いに対向する一対の短辺を有する矩形を呈し、短辺がY軸に沿うように導電パターン24a上に配置されている。上述のように、半導体素子25,26の出力電極25b,26bと、導電パターン24cの接続領域24c3とは一列に並んで配置され、ボンディングワイヤ29cもこれに沿って配置されている。よって、ボンディングワイヤ29cは、半導体素子25,26の短辺と平行に延在する。このため、複数のボンディングワイヤ29cを半導体素子25,26の長辺に沿って並べて配置することが可能となり、短辺に沿って並べて配置する場合と比較して、ボンディングワイヤ29cの配線本数を多くすることが可能となる。
【0042】
また、本実施形態では、各半導体素子25,26のおもて面に、ゲートランナー25c,26cが設けられており、ゲートランナー25c,26cは半導体素子25,26の長辺に平行に配置されている。すなわち、半導体装置10において、半導体素子26の出力電極26bおよび半導体素子25の出力電極25bには、ゲート電極26a,25aと、ゲート電極26a,25aと電気的に接続するゲートランナー26c,25cと、が設けられており、ゲートランナー26c,25cは、おもて面の長辺に平行に配置されている。ゲートランナー25c,26cが半導体素子25,26の長辺に平行に配置されていることにより、半導体素子25,26の各部への制御電流の伝達遅延を抑制することができる。また、ゲートランナー25c,26cが半導体素子25,26の長辺に平行に配置されていることにより、複数のボンディングワイヤ29cを半導体素子25,26の長辺に沿って並べて配置する際に、効率よくワイヤを配置することができる。なお、上記では第1アーム部Aを例にして説明したが、第2アーム部Bについても同様である。
【0043】
次に、半導体ユニット20における電流の流れについて、
図6~
図8を用いて説明する。以下の説明では、第1アーム部Aにおける電流の流れを例にして説明するが、第2アーム部Bにおける電流の流れについても同様である。
【0044】
図6は、
図5の断面図における電流の流れを模式的に示す図である。
図5および
図6には、絶縁基板22と、絶縁基板22上に形成された導電パターン24aおよび24cと、導電パターン24a上に配置された半導体素子25および26と、半導体素子25および導電パターン24aを接合するはんだ層30Aと、半導体素子26および導電パターン24aを接合するはんだ層30Bと、ボンディングワイヤ29cとが示されている。はんだ層30Aおよび30Bは、「接続層」の一例である。
【0045】
外部接続端子Pから導電パターン24aのコンタクト領域24a1に入力された電流Iは、導電パターン24aを流れ、まず入力領域24a2に到達する。入力領域24a2は、導電パターン24aのうち、コンタクト領域24a1に相対的に近い位置(導電パターン24cから相対的に遠い位置)にある半導体素子26と重なる領域である。入力領域24a2は、「第1入力領域」の一例である。入力領域24a2に到達した電流Iの一部である電流i1は、はんだ層30Bを経由して半導体素子26の入力電極26dに流れ、半導体素子26の出力電極26bに流れる。電流i1は、更に出力電極26bと半導体素子25の出力電極25bとを接続する部分ワイヤ29c2に流れる。なお、半導体素子26から部分ワイヤ29c2の接続点(ステッチ箇所P2、後述する点ζ)までは、電流i1は、出力電極26b内を接続する部分ワイヤ29c1に流れてもよい。その後、電流i1は、出力電極25bの複数箇所を接続する部分ワイヤ29c3を経て、出力電極25b上の導電パターン24c(接続領域24c3)に最も近い接続点(ステッチ箇所P4、後述する点θ)に至る。なお、電流i1の一部は、部分ワイヤ29c3に代わり出力電極25b内を流れてもよい。そして、出力電極25bにおいて後述する電流i2と合流し、合流した電流Iは、出力電極25bと導電パターン24cの接続領域24c3とを接続する部分ワイヤ29c4を経て、導電パターン24cに流れ、外部接続端子Uと接続するコンタクト領域24c4に至る。ここで、分流された電流i1の流路を経路L1という。即ち、経路L1は、入力領域24a2から、半導体素子26を経由して、半導体素子25の出力電極25bまでであってよい。より具体的には、経路L1は、入力領域24a2から、はんだ層30B、半導体素子26の電極間(入力電極26dと出力電極26bとの間)、半導体素子26の出力電極26bと半導体素子25の出力電極25bとを接続する部分ワイヤ29c2を経て、出力電極25b上の部分ワイヤ29c4との接続点であるステッチ箇所P4までであってよい。
【0046】
一方、入力領域24a2に到達した電流Iのうち、半導体素子26に供給される電流i1以外の電流i2は、中間領域24a3を経て入力領域24a4に至る。入力領域24a4は、「第2入力領域」の一例である。入力領域24a4は、導電パターン24aのうち、コンタクト領域24a1から相対的に遠い位置(導電パターン24cに相対的に近い位置)にある半導体素子25と重なる領域である。中間領域24a3は、入力領域24a2と入力領域24a4との間の導電パターン24aの領域である。入力領域24a4に到達した電流i2は、はんだ層30Aを経由して半導体素子25の入力電極25dに流れ、半導体素子25の出力電極25bに流れ、出力電極25b上の導電パターン24c(接続領域24c3)に最も近い接続点(ステッチ箇所P4、後述する点θ)に至る。なお、半導体素子25からステッチ箇所P4(後述する点θ)までは、出力電極25b内を接続する部分ワイヤ29c3に流れてもよい。そして、電流i2は、出力電極25bにおいて電流i1と合流する。合流した電流Iは、出力電極25bと導電パターン24cの接続領域24c3とを接続する部分ワイヤ29c4を経て、導電パターン24cを流れ、外部接続端子Uと接続するコンタクト領域24c4に至る。ここで、分流された電流i2の流路を経路L2という。即ち、経路L2は、入力領域24a2から、半導体素子25を経由して、半導体素子25の出力電極25bまでであってよい。より具体的には、経路L2は、入力領域24a2から、中間領域24a3、入力領域24a4、はんだ層30A、半導体素子25の電極間(入力電極25dと出力電極25bとの間)を経て、出力電極25b上の部分ワイヤ29c4との接続点であるステッチ箇所P4までであってよい。
【0047】
図6において、点αは、入力領域24a2内のコンタクト領域24a1に近接する箇所であり、近似的にボンディング箇所P1の直下であってよい。点βは、入力領域24a2内の中間領域24a3に近接する箇所であり、近似的にステッチ箇所P2の直下であってよい。点γは、入力領域24a4内の中間領域24a3に近接する箇所であり、近似的にステッチ箇所P3の直下であってよい。点δは、入力領域24a4内の導電パターン24cに近接する箇所であり、近似的にステッチ箇所P4の直下であってよい。
【0048】
図6において、点εは、部分ワイヤ29c1の始点であり、本実施形態ではボンディング箇所P1である。点ζは、部分ワイヤ29c1の終点かつ第1配線部材である部分ワイヤ29c2の始点であり、本実施形態ではステッチ箇所P2である。点ηは、部分ワイヤ29c2の終点かつ部分ワイヤ29c3の始点であり、本実施形態ではステッチ箇所P3である。点θは、部分ワイヤ29c3の終点かつ第2配線部材である部分ワイヤ29c4の始点であり、本実施形態ではステッチ箇所P4である。
【0049】
上記点α~点θは、半導体素子25,26の入力電極25d,26d内および出力電極25b,26b内での抵抗を無視した、それぞれにおける概念的な点である。
【0050】
コンタクト領域24a1と点αとの間の抵抗を抵抗Rp1とする。点αと点βとの間の抵抗を抵抗Rp2とする。点βと点γとの間の抵抗を抵抗Rp3とする。点γと点δとの間の抵抗を抵抗Rp4とする。したがって、抵抗Rp1~Rp4は、導電パターン24aにおける抵抗であってよい。点αと点εとの間の抵抗を抵抗Rc1aとする。点βと点ζとの間の抵抗を抵抗Rc1bとする。したがって、抵抗Rc1a、Rc1bは、半導体素子26の電極間抵抗(入力電極26dと出力電極26bとの間の抵抗)、および半導体素子26と導電パターン24aとの間のはんだ層30Bの抵抗であってよい。点γと点ηとの間の抵抗を抵抗Rc2aとする。点δと点θとの間の抵抗を抵抗Rc2bとする。したがって、抵抗Rc2a、Rc2bは、半導体素子25の電極間抵抗(入力電極25dと出力電極25bとの間の抵抗)、および半導体素子25と導電パターン24aとの間のはんだ層30Aの抵抗であってよい。点εと点ζとの間の抵抗を抵抗Rw1とする。点ζと点ηの間の抵抗を抵抗Rw2とする。点ηと点θの間の抵抗を抵抗Rw3とする。点θと点P5の間の抵抗を抵抗Rw4とする。したがって、抵抗Rw1~Rw4は、部分ワイヤ29c1~29c4における抵抗であってよい。
【0051】
ここで、半導体素子25および26に流れる電流の不均衡を検討する際には、同一の半導体素子内の配線に関わる抵抗、具体的には、抵抗Rw1、Rp2、Rw3、Rp4については、無視することができる。これは、同一の半導体素子内の配線に関わる抵抗は、半導体素子間の電流の不均衡にほとんど寄与しないためである。また、同一の半導体素子25の電極間抵抗およびはんだ層30Aの抵抗である抵抗Rc1aおよびRc1bは、同一とみなすことができる。よって、抵抗Rc1aとRc1bを抵抗Rc1とする。また、同一の半導体素子26の電極間抵抗およびはんだ層30Bの抵抗である抵抗Rc2aとRc2bは、同一とみなすことができる。よって、抵抗Rc2aおよびRc2bを抵抗Rc2とする。
【0052】
図7は、
図6から同一の半導体素子内の配線に関わる抵抗を除いた図である。また、
図8は、
図7の等価回路図である。上述のように、第1アーム部Aでは、入力領域24a2から半導体素子26を経由してステッチ箇所P4に至る経路L1を流れる電流i1と、入力領域24a4から半導体素子25を経由してステッチ箇所P4に至る経路L2を流れる電流i2とが流れる。
図7および
図8を参照すると、経路L1上には、半導体素子25,26の電流の不均衡に寄与する抵抗として、抵抗Rc1および抵抗Rw2がある。また、経路L2上には、半導体素子25,26の電流の不均衡に寄与する抵抗として、抵抗Rp3および抵抗Rc2がある。よって、オームの法則等より、経路L1を流れる電流i1に対する経路L2を流れる電流i2の比i2/i1は、下記式(1)で表すことができる。
【0053】
【0054】
上記式(1)において、抵抗Rc1は、半導体素子26の電極間抵抗(入力電極26dと出力電極26bとの間の抵抗)およびはんだ層30Bの抵抗を含んでいる。抵抗Rw2は、第1配線部材である部分ワイヤ29c2の抵抗を含んでいる。抵抗Rc2は、半導体素子25の電極間抵抗(入力電極25dと出力電極25bとの間の抵抗)およびはんだ層30Aの抵抗を含んでいる。抵抗Rp3は、中間領域24a3の抵抗を含んでいる。
【0055】
一般的に、ボンディングワイヤ29cの抵抗率は、導電パターン24aの抵抗率と比較して大きい。また、半導体素子25,26が材料または構造等の特性が共通する同型の要素とすると、抵抗Rc1と抵抗Rc2は等しい。よって、一般的な設計では、経路L1を流れる電流i1と比較して経路L2を流れる電流i2の方が大きくなる(電流i1<電流i2)。このような電流の不均衡が生じると、流れる電流が相対的に大きい半導体素子(本実施形態では半導体素子25)において、半導体素子とワイヤとが接合される部分(以下「ワイヤ接合部分」という)の温度が相対的に高くなり、半導体素子25のパワーサイクル耐量、短絡耐量、I2t耐量等が低下し、ひいては半導体装置10の長期信頼性が保てなくなる可能性がある。
【0056】
ここで、半導体素子25,26の各種耐量の低下を抑制可能な電流の範囲について検討する。上述のように、半導体素子25,26の各種耐量の低下は、ワイヤ接合部分の温度上昇に起因する。半導体素子25,26におけるワイヤ接合部分の温度差は、20℃以内となるのが好ましい。すなわち、並列に接続された半導体素子25,26のうち、流れる電流が大きい方の半導体素子におけるワイヤ接合部の温度上昇をT2、電流が小さい方の半導体素子の温度上昇をT1とすると、T2-T1=ΔT≦20℃とするのが好ましい。この場合、例えばT1=100℃とすると、T2は120℃以内(つまり、T2≦T1×1.20)に抑える必要がある。ワイヤの温度上昇は、電流の2乗に比例する。上記1.20の平方根はおよそ1.10である。よって、電流が大きい方の半導体素子における電流i2は、電流が小さい方の半導体素子における電流i1に対して、110%以内(i2≦i1×1.10)に抑える必要がある。このことから、本実施形態では、経路L1を流れる電流i1に対する経路L2を流れる電流i2の比i2/i1は、0.90以上1.10以下とされる。例えば第1アーム部Aにおいて、入力領域24a2から半導体素子26を経由して導電パターン24cに流れる電流i1に対する、入力領域24a4から半導体素子25を経由して導電パターン24cに流れる電流i2の比i2/i1は、0.90以上1.10以下である。
【0057】
より好ましくは、半導体素子25,26におけるワイヤ接合部分の温度差は、15℃以内となるのが好ましい。すなわち、T2-T1=ΔT≦15℃とするのが好ましい。この場合、例えばT1=100℃とすると、T2は115℃以内(つまり、T2≦T1×1.15)に抑える必要がある。上記1.15の平方根はおよそ1.07である。よって、この場合には、電流が大きい方の半導体素子における電流i2は、電流が小さい方の半導体素子における電流i1に対して、107%以内(i2≦i1×1.07)に抑える必要がある。すなわち、より好ましくは、経路L1を流れる電流i1に対する経路L2を流れる電流i2の比i2/i1は、0.93以上1.07以下とされる。
【0058】
更に好ましくは、半導体素子25,26におけるワイヤ接合部分の温度差は、10℃以内となるが好ましい。すなわち、T2-T1=ΔT≦10℃とするのが好ましい。この場合、例えばT1=100℃とすると、T2は110℃以内(つまり、T2≦T1×1.10)に抑える必要がある。上記1.10の平方根はおよそ1.05である。よって、この場合には、電流が大きい方の半導体素子における電流i2は、電流が小さい方の半導体素子における電流i1に対して、105%以内(i2≦i1×1.05)に抑える必要がある。すなわち、更に好ましくは、経路L1を流れる電流i1に対する経路L2を流れる電流i2の比i2/i1は、0.95以上1.05以下とされる。
【0059】
また、上述のように、経路L1における抵抗をR1とすると、R1=Rc1+Rw2となる。また、経路L2における抵抗をR2とすると、R2=Rc2+Rp3となる。よって、上記式(1)は、経路L2における抵抗R2に対する経路L1における抵抗R1の比R1/R2を示しているともいえる。すなわち、本実施形態において、経路L2における抵抗R2に対する、経路L1における抵抗R1の比R1/R2が、0.90以上1.10以下であっても、同様の効果を得られる。
【0060】
この場合も、より好ましくは、抵抗R2に対する抵抗R1の比R1/R2が、0.93以上1.07以下であるとよい。更に好ましくは、抵抗R2に対する抵抗R1の比R1/R2が、0.95以上1.05以下であるとよい。
【0061】
本実施形態では、経路L2と経路L1とに略均等に電流が流れるように、上記式(1)に含まれるパラメータの値が調整される。具体的には、経路L1を流れる電流i1に対する経路L2を流れる電流i2の比i2/i1が、0.90以上1.10以下となるように、上記式(1)に含まれるパラメータの値が設定される。なお、上述のように、より好ましい比i2/i1は0.93以上1.07以下であり、更に好ましい比i2/i1は0.95以上1.05以下である。
【0062】
以下具体的に、上記式(1)に含まれるパラメータの値の調整方法について説明する。上述のように、ボンディングワイヤ29cの抵抗率は、導電パターン24aの抵抗率と比較して大きいため、一般的な設計では、経路L1を流れる電流i1と比較して経路L2を流れる電流i2の方が多くなる(電流i1<電流i2)。このため、電流の不均衡を解消するには、[方法A]電流i1を増大させる、[方法B]電流i2を減少させる、の少なくともいずれかを行えばよい。なお、方法Aと方法Bを同時に採用してもよい。すなわち、電流i1を増大させ、かつ電流i2を減少させてもよい。
【0063】
[方法A]電流i1を増大させる
電流i1を増大させるには、経路L1上の抵抗を小さくすればよい。具体的には、[方法A-1]抵抗Rc1を低減させる、[方法A-2]抵抗Rw2を低減させる、の少なくともいずれかを行えばよい。
【0064】
[方法A-1]抵抗Rc1を低減させる
抵抗Rc1は、はんだ層30Bの抵抗と半導体素子26の抵抗(より詳細には、半導体素子26の電極間抵抗)との和を含んでいる。よって、抵抗Rc1を低減させるには、例えば、半導体素子26の抵抗を半導体素子25の抵抗と比較して小さくする構成、または、はんだ層30Bの抵抗をはんだ層30Aの抵抗と比較して小さくする構成が考えられる。
【0065】
抵抗Rc1を低減させる方法の一例として、以下が挙げられる。
(例1)半導体素子26として、半導体素子25と比較して導通損失が小さい低速タイプのRC-IGBTを用いる。
(例2)半導体素子26として、半導体素子25と比較して飽和電流密度が大きいRC-IGBTを用いる。
(例3)半導体素子26として、半導体素子25と比較して閾値電圧Vthが小さいRC-IGBTを用いる。
(例4)はんだ層30Bの厚さを、はんだ層30Aの厚さよりも薄くする。
【0066】
[方法A-2]抵抗Rw2を低減させる
抵抗Rw2は、第1配線部材である部分ワイヤ29c2の抵抗を含んでいる。抵抗Rw2を低減させるには、例えば、複数のボンディングワイヤ29c各々の断面積の和である総断面積を増大させればよい。この時、抵抗Rw2が、中間領域24a3の抵抗を含む抵抗Rp3と同一であれば、比i2/i1は1となり、電流i2と電流i1とが等しくなる。なお、温度等の要因により、抵抗の値は変化する。よって、この場合の同一とは、抵抗が完全に一致する場合のほか、抵抗が実質的に一致する場合も含む。抵抗が実質的に一致する場合とは、例えば、所定の条件下において同一であることが予測される場合などである。
【0067】
抵抗Rw2を低減させる方法の一例として、以下が挙げられる。
(例1)ボンディングワイヤ29cの本数を増加させる。
(例2)ボンディングワイヤ29cの径を太くする。
(例3)ワイヤに代えて、銅等で形成されたリボンを配線部材として用いる。
【0068】
[方法B]電流i2を減少させる
電流i2を減少させるには、経路L2上の抵抗を大きくすればよい。具体的には、[方法B-1]抵抗Rp3を増大させる、[方法B-2]抵抗Rc2を増大させる、の少なくともいずれかを行えばよい。
【0069】
[方法B-1]抵抗Rp3を増大させる
抵抗Rp3は、中間領域24a3の抵抗を含んでいる。抵抗Rp3を増大させるには、例えば、中間領域24a3の断面積を、中間領域24a3の上流にある入力領域24a2と比較して減少させればよい。
【0070】
具体的には、例えば、
図9に示すように、中間領域24a3の導電パターン24cの一部を除去したトレンチTを設けてもよい。すなわち、方法B-1において、中間領域に、第1導電パターンの一部が除去されたトレンチが設けられていてもよい。
図9に示すトレンチTは、隣接する半導体素子25,26の長辺同士の間に、当該長辺に沿って形成されている。半導体素子25,26においては、その中央部が発熱しやすいため、トレンチTは、半導体素子25,26の長辺の中央部付近に形成されるのが好ましい。トレンチTは、例えば導電パターン24a~24eの形成時にともに形成されてもよい。すなわち、導電パターン24a~24eは、絶縁基板22上に形成された金属層の選択的な除去(例えばエッチング)により形成される。具体的には、例えば金属層のうち導電パターン24a~24eとなる部分がマスキングされた状態でエッチングが行われる。この工程において、トレンチTに対応する領域にはマスキングを行わず、エッチングにより金属層を除去することで、トレンチTを形成することができる。トレンチTにおいて、金属層が完全に除去されて絶縁基板22が露出していてもよいし、導電パターン24cの他の領域(例えば入力領域24a2)と比較して厚さが薄くなる程度に金属層が除去されていてもよい。
【0071】
[方法B-2]抵抗Rc2を増大させる
抵抗Rc2は、はんだ層30Aの抵抗と半導体素子25の抵抗とを含んでいる。抵抗Rc2を増大させるには、例えば、半導体素子25の抵抗を半導体素子26の抵抗と比較して大きくする構成、または、はんだ層30Aの抵抗をはんだ層30Bの抵抗と比較して増大する構成が考えられる。
【0072】
抵抗Rc2を増大させる方法の一例として、以下が挙げられる。
(例1)半導体素子25として、半導体素子26と比較して導通損失が大きい高速タイプのRC-IGBTを用いる。
(例2)半導体素子25として、半導体素子26と比較して飽和電流密度が小さいRC-IGBTを用いる。
(例3)半導体素子25として、半導体素子26と比較して閾値電圧Vthが大きいRC-IGBTを用いる。
(例4)はんだ層30Aの厚さを、はんだ層30Bの厚さよりも厚くする。
【0073】
つぎに、上記式(1)の各パラメータの範囲について検討する。まず、抵抗Rc1、Rc2について検討する。抵抗Rc1は、半導体素子26の電極間抵抗Re1と、はんだ層30Bの抵抗Rs1とを含んでいる。抵抗Rc2は、半導体素子25の電極間抵抗Re2と、はんだ層30Aの抵抗Rs2とを含んでいる。
【0074】
図10および
図11は、半導体素子のI-Vカーブの一例を示すグラフである。
図10は、素子温度が室温(25℃)である状況におけるI-Vカーブであり、
図11は、素子温度が175℃におけるI-Vカーブである。各グラフにおいて、横軸は印加電圧、
縦軸は半導体素子を流れる電流である。I-Vカーブの測定に用いた半導体素子は、定格電圧1700V、定格電流2200Aの半導体装置に用いられるRC-IGBTであり、定格電流は183A、チップサイズは13.9mm×13.5mmである。印加電圧1V以上におけるI-Vカーブから、この半導体素子の室温における抵抗は3.9mΩ、175℃における抵抗は7.5mΩである。よって、この半導体素子の1平方センチメートル当たりの抵抗は、室温において2mΩ/cm
2、175℃において4mΩ/cm
2となる。
【0075】
この半導体素子が用いられる半導体装置の電流密度は約150A/cm2である。また、一般に、定格電圧650V~3.3kVのIGBTおよびFWDの電流密度は、75A/cm2から450A/cm2である。よって、半導体装置10に用いられる半導体素子25~28の1平方センチメートル当たりの抵抗は、室温で1mΩ/cm2~6mΩ/cm2、175℃で2mΩ/cm2~12mΩ/cm2の範囲内にあるのが好ましい。
【0076】
次に、抵抗Rw2および抵抗Rp3について検討する。上記式(1)に、上記比i2/i1の範囲(0.90以上1.10以下)を当てはめると、下記式(2)となる。
【0077】
【0078】
上記式(2)において、半導体素子25および26が同型であり、はんだ層30Aおよび30Bの厚さも同一であるものとすると、Rc1=Rc2=Rと置ける。Rw2=y、Rp3=xと置くと、上記式(2)は、下記式(3)となる。
【0079】
0.90x-0.10R≦y≦1.10x+0.10R・・・(3)
【0080】
図12は、上記式(3)のグラフである。抵抗は正の値を取るため、Rw2およびRp3を、
図12の網掛けの範囲内とすれば、電流i1に対する電流i2の比i2/i1が0.90以上1.10以下になる。
【0081】
なお、上述のように、より好ましい比i2/i1は0.93以上1.07以下である。よって、Rc1=Rc2=R、Rw2=y、Rp3=xとすると、より好ましい範囲は、下記式(4)となる。
【0082】
0.93x-0.07R≦y≦1.07x+0.07R・・・(4)
【0083】
また、更に好ましい比i2/i1は0.95以上1.05以下である。よって、Rc1=Rc2=R、Rw2=y、Rp3=xとすると、更に好ましい範囲は、下記式(5)となる。
【0084】
0.95x-0.05R≦y≦1.05x+0.05R・・・(5)
【0085】
以上説明したように、実施形態にかかる半導体装置10は、並列に接続された複数の半導体素子25,26および27,28について、それぞれに流れる電流の比が一定範囲内となるように構成されている。すなわち、第1アーム部Aを例とすると、半導体装置10は、絶縁基板22と、絶縁基板22の主面に設けられ、導電パターン24aおよび導電パターン24cを有する導電パターンと、導電パターン24a上に各々配置された半導体素子26および半導体素子25と、を備える。導電パターン24aは、半導体素子26と重なる入力領域24a2と、半導体素子25と重なる入力領域24a4とを含む。半導体素子26および半導体素子25の各々は、導電パターン24aに対向する裏面に設けられ、導電パターン24aと電気的に接続する入力電極26d,25dと、裏面と反対側のおもて面に設けられた出力電極26b,25bとを備える。半導体素子26の出力電極26bと、半導体素子25の出力電極25bとは、部分ワイヤ29c2によって相互に接続される。半導体素子25の出力電極25bと、導電パターン24cとは、部分ワイヤ29c4によって相互に接続される。入力領域24a2から半導体素子26を経由して導電パターン24cに流れる電流i1に対する、入力領域24a4から半導体素子25を経由して導電パターン24cに流れる電流i2の比i2/i1は、0.90以上1.10以下である。これにより、半導体装置10は、半導体素子25,26に流れる電流の不均衡に起因したワイヤ接合部分の劣化を抑制することができ、半導体素子25,26のパワーサイクル耐量、短絡耐量およびI2t耐量等を向上させることができる。また、半導体装置10は、長期信頼性を維持することができる。
【0086】
より好ましい電流i1に対する電流i2の比i2/i1は、0.93以上1.07以下であり、更に好ましい電流i1に対する電流i2の比2/i1は、0.95以上1.05以下である。これにより、半導体装置10は、半導体素子25,26に流れる電流をより均等にすることができ、電流の不均衡に起因する劣化をより確実に防止することができる。
【0087】
また、実施形態にかかる半導体装置において、入力領域24a4から半導体素子25を経由して半導体素子25の出力電極25bと部分ワイヤ29c4との接続点であるステッチ箇所P4に至る経路L2における抵抗R2に対する、入力領域24a2から半導体素子26および部分ワイヤ29c2を経由してステッチ箇所P4に至る経路L1における抵抗R1の比R1/R2が、0.90以上1.10以下であってもよい。これにより、半導体装置10は、半導体素子25,26に流れる電流の不均衡に起因したワイヤ接合部分の劣化を抑制することができ、半導体素子25,26のパワーサイクル耐量、短絡耐量およびI2t耐量等を向上させることができる。また、半導体装置10は、長期信頼性を維持することができる。
【0088】
より好ましい抵抗R2に対する抵抗R1の比R1/R2は、0.93以上1.07以下であり、更に好ましい抵抗R2に対する抵抗R1の比R1/R2は、0.95以上1.05以下である。これにより、半導体装置10は、半導体素子25,26に流れる電流をより均等にすることができ、電流の不均衡に起因する劣化をより確実に防止することができる。
【0089】
比i2/i1または比R1/R2を上記範囲にするために、例えばはんだ層30Bの抵抗と半導体素子26の抵抗の和である抵抗Rc1を低減させてもよい。すなわち、半導体装置10において、半導体素子26における入力電極26dと出力電極26bとの間の抵抗および半導体素子26と導電パターン24aとを接続するはんだ層30Bの抵抗の和は、半導体素子25における入力電極25dと出力電極25bとの間の抵抗および半導体素子25と導電パターン24aとを接続するはんだ層30Aの抵抗の和よりも小さくてもよい。これにより、抵抗Rc1が位置する経路L1の抵抗が小さくなり、経路L1を流れる電流i1を増大させることができる。
【0090】
また、比i2/i1または比R1/R2を上記範囲にするために、例えば半導体素子26の出力電極26bと半導体素子25の出力電極25bとを接続する第1配線部材である部分ワイヤ29c2の抵抗を含む抵抗Rw2を低減させてもよい。この時、抵抗R2が、中間領域24a3の抵抗を含む抵抗Rp3と同一となるようにするのが好ましい。すなわち、半導体装置10において、部分ワイヤ29c2の抵抗Rw2は、導電パターン24aのうち入力領域24a2と入力領域24a4との間の領域である中間領域24a3の抵抗Rp3と同一であってもよい。これにより、抵抗Rw2が位置する経路L1の抵抗が小さくなり、経路L1を流れる電流i1を増大させることができる。
【0091】
また、比i2/i1または比R1/R2を上記範囲にするために、例えば中間領域24a3の抵抗である抵抗Rp3を増大させてもよい。具体的には、例えば
図9に示すように、中間領域24a3の導電パターン24
aの一部を除去したトレンチTを設けてもよい。すなわち、半導体装置10において、導電パターン24aのうち入力領域24a2と入力領域24a4との間の領域である中間領域24a3の断面積は、入力領域24a2の断面積よりも小さくてもよい
。これにより、抵抗Rp3が位置する経路L2の抵抗が大きくなり、経路L2を流れる電流i2を減少させることができる。
【0092】
また、比i2/i1または比R1/R2を上記範囲にするために、例えばはんだ層30Aの抵抗と半導体素子25の抵抗の和である抵抗Rc2を増大させてもよい。すなわち、半導体装置10において、半導体素子25における入力電極25dと出力電極25bとの間の抵抗および半導体素子25と導電パターン24aとを接続するはんだ層30Aの抵抗の和は、半導体素子26における入力電極26dと出力電極26bとの間の抵抗および半導体素子26と導電パターン24aとを接続するはんだ層30Bの抵抗の和よりも大きくてもよい。これにより、抵抗Rc2が位置する経路L2の抵抗が大きくなり、経路L2を流れる電流i2を減少させることができる。
【0093】
また、本実施形態では、半導体素子25~28がRC-IGBTであるので、FWDを用いる必要がなく、半導体装置10に実装可能な半導体素子面積を増大させることができ、半導体装置10の大容量化を実現することができる。
【0094】
なお、本実施形態では、半導体素子25~28は、RC-IGBTであるものとしたが、これに限らず、半導体素子25~28が、IGBT、パワーMOSFET等の他のスイッチング素子であってもよい。また、半導体素子25~28として、必要に応じて、SBD(Schottky Barrier Diode)、FWD等のダイオードを含めてもよい。
【0095】
また、半導体ユニット20の半導体素子25~28の個数は一例であって、各アーム部に2つずつの半導体素子が配置され、2つのアーム部で構成されている場合に限らない。例えば、各アーム部に3つ以上の半導体素子が配置されていてもよい。その場合も、各半導体素子を経由して流れる電流の比は、0.90以上1.10以下とする。また、例えば、各アーム部に半導体素子として、IGBTチップとFWDチップとが同時に配置されていてもよい。その場合も、複数のIGBTチップは、IGBTチップの配列と平行な一辺にゲート電極を向けて、ゲート電極が一列に配列するように配置される。複数のFWDチップは、IGBTチップの列と平行に別の列として配置されてもよく、また、IGBTチップと同じ列に配置されてもよい。また、例えば、半導体ユニット20が、3つ以上のアーム部で構成されてもよい。その場合、半導体素子の配列と垂直に、3つ以上のアーム部が並んで配置される。
【符号の説明】
【0096】
10…半導体装置、20(20a~20f)…半導体ユニット、22…絶縁基板、24(24a~24e)…導電パターン、24a1…コンタクト領域、24a2…入力領域、24a3…中間領域、24a4…入力領域、24b1…接続領域、24c1…第1領域、24c2…第2領域、24c3…接続領域、24c4…コンタクト領域、24d1…接続領域、24e1…接続領域、24e2…コンタクト領域、25~28…半導体素子、25a~28a…ゲート電極、25b~28b…出力電極(エミッタ電極)、25c~28cゲートランナー、26d,25d…入力電極(コレクタ電極)、29(29a~29d)…ボンディングワイヤ、29cx,29dx…シングルボンディングワイヤ、30(30A,30B)…はんだ層、A…第1アーム部、B…第2アーム部。