(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-20
(45)【発行日】2025-01-28
(54)【発明の名称】電子部品
(51)【国際特許分類】
H01C 7/04 20060101AFI20250121BHJP
H01C 7/02 20060101ALI20250121BHJP
H01C 1/032 20060101ALI20250121BHJP
H01G 4/224 20060101ALI20250121BHJP
H01F 27/29 20060101ALI20250121BHJP
H01F 27/32 20060101ALI20250121BHJP
H01G 4/30 20060101ALI20250121BHJP
【FI】
H01C7/04
H01C7/02
H01C1/032
H01G4/224 100
H01G4/224
H01F27/29 123
H01F27/32 101
H01G4/30 201J
(21)【出願番号】P 2023529616
(86)(22)【出願日】2022-03-30
(86)【国際出願番号】 JP2022015950
(87)【国際公開番号】W WO2022264634
(87)【国際公開日】2022-12-22
【審査請求日】2023-11-29
(31)【優先権主張番号】P 2021099716
(32)【優先日】2021-06-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100087985
【氏名又は名称】福井 宏司
(72)【発明者】
【氏名】大島 知也
(72)【発明者】
【氏名】星野 悠太
(72)【発明者】
【氏名】山田 耕市
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 美希
(72)【発明者】
【氏名】久保田 博信
【審査官】田中 晃洋
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-036002(JP,A)
【文献】特開平10-106809(JP,A)
【文献】特開2021-089924(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01C 7/04
H01C 7/02
H01C 1/032
H01G 4/224
H01F 27/29
H01F 27/32
H01G 4/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
素体と、前記素体の外表面を覆う絶縁膜と、を備え、
前記絶縁膜は、ガラス及び粉粒体を含む混合層と、ガラスを含み、前記粉粒体の含有割合が前記混合層よりも小さいガラス層と、を有し、
前記混合層は、前記ガラス層から視て前記素体側に位置している
電子部品。
【請求項2】
前記絶縁膜に積層している外部電極をさらに備え、
前記外部電極は、金属層を含んでいる
請求項1に記載の電子部品。
【請求項3】
前記粉粒体の材質は、前記素体の材質と同一である
請求項1又は請求項2に記載の電子部品。
【請求項4】
前記粉粒体の平均粒径は、100nm以上である
請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の電子部品。
【請求項5】
前記素体の外表面に直交する断面視において、
前記素体の外表面から最も離れた前記粉粒体を、特定粉粒体としたとき、
前記素体の外表面から前記特定粉粒体のうちの最も前記素体の外表面から遠い特定点までの最短の距離は、前記特定点から前記ガラス層の表面までの最短の距離よりも、大きい
請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の電子部品。
【請求項6】
前記絶縁膜は、前記ガラス層における前記混合層とは反対側の面に開口し、前記素体にまで至らないクラックを有する
請求項1~請求項5のいずれか1項に記載の電子部品。
【請求項7】
前記素体の材質は、セラミックスであり、
前記混合層は、他の層を介することなく前記素体の外表面を覆っている
請求項1~請求項6のいずれか1項に記載の電子部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載された電子部品は、素体と、素体の外表面を覆う絶縁膜と、を備えている。絶縁膜は、ガラスからなるガラス層である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された電子部品には、外部からの衝撃が加わることがある。電子部品に外部からの衝撃が加わると、衝撃による荷重とガラス層の内部応力とが合わさって、ガラス層における特定の箇所に大きな力が作用することがある。そして、ガラス層に大きな力が作用した場合、当該ガラス層の一部が素体の外表面から剥がれるおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため、本発明は、素体と、前記素体の外表面を覆う絶縁膜と、を備え、前記絶縁膜は、ガラス及び粉粒体を含む混合層と、ガラスを含み、前記粉粒体の含有割合が前記混合層よりも小さいガラス層と、を有し、前記混合層は、前記ガラス層から視て前記素体側に位置している電子部品である。
【0006】
上記構成によれば、絶縁膜は、混合層と、ガラス層と、を有する。そして、混合層は、ガラス及び粉粒体を含んでいる。混合層では、ガラス層と比べて、粉粒体の含有割合が大きい分だけ、ガラスの内部応力が緩和される。さらに、粉粒体が存在する各箇所においてガラスの内部応力が各粉粒体に分断されるので、大きな内部応力が特定の箇所に集中して作用しにくい。したがって、電子部品に外部からの衝撃が加わった際に、内部応力に起因して絶縁膜が素体から剥がれることは抑制できる。
【発明の効果】
【0007】
絶縁膜が素体から剥がれることを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【発明を実施するための形態】
【0009】
<電子部品の一実施形態>
以下、電子部品の一実施形態を、図面を参照して説明する。なお、図面は、理解を容易にするために構成要素を拡大して示している場合がある。構成要素の寸法比率は実際のものと、又は別の図面中のものと異なる場合がある。また、断面図ではハッチングを付しているが、理解を容易にするために一部の構成要素のハッチングを省略している場合がある。
【0010】
(全体構成について)
図1に示すように、電子部品10は、例えば、回路基板等に実装される表面実装型の負特性サーミスタ部品である。なお、負特性サーミスタ部品は、温度が上がると抵抗値が下がるという特性を有するものである。
【0011】
電子部品10は、素体20を備えている。素体20は、略四角柱状であり、中心軸線CAを有する。なお、以下では、中心軸線CAに沿って延びる軸を第1軸Xとする。また、第1軸Xに直交する軸の1つを第2軸Yとする。そして、第1軸X及び第2軸Yに直交する軸を第3軸Zとする。そして、第1軸Xに沿う方向の一方を第1正方向X1とし、第1軸Xに沿う方向のうち第1正方向X1と反対方向を第1負方向X2とする。また、第2軸Yに沿う方向の一方を第2正方向Y1とし、第2軸Yに沿う方向のうち第2正方向Y1と反対方向を第2負方向Y2とする。さらに、第3軸Zに沿う方向の一方を第3正方向Z1とし、第3軸Zに沿う方向のうち第3正方向Z1と反対方向を第3負方向Z2とする。
【0012】
素体20の外表面21は、6個の平面状の平面22を有している。6個の平面22は、互いに異なる向きに広がっている。6個の平面22は、第1正方向X1を向く第1端面22Aと、第1負方向X2を向く第2端面22Bと、4つの側面22Cに大別される。4つの側面22Cは、それぞれ、第3正方向Z1を向く面と、第3負方向Z2を向く面と、第2正方向Y1を向く面と、第2負方向Y2を向く面と、である。
【0013】
素体20の外表面21は、12個の境界面23を有している。境界面23は、隣り合う平面22同士の境界に存在する曲面を含んでいる。すなわち、境界面23は、例えば、隣り合う平面22を形成される角をR面取り加工することで形成される曲面を含んでいる。
【0014】
また、素体20の外表面21は、8個の球面状のコーナ面24を有している。コーナ面24は、隣り合う3つの平面22同士の境界部分である。換言すれば、コーナ面24は、3つの境界面23が交わる箇所の曲面を含んでいる。すなわち、コーナ面24は、例えば、隣り合う3つの平面22によって形成される角をR面取り加工することによって形成された曲面を含んでいる。
【0015】
なお、
図1及び
図2では、後述する絶縁膜50の表面を素体20の外表面21と同一視して符号を付している。
図2に示すように、素体20は、第1軸Xに沿う方向の寸法が、第3軸Zに沿う方向の寸法よりも大きい。また、
図1に示すように、素体20は、第1軸Xに沿う方向の寸法が、第2軸Yに沿う方向の寸法よりも大きい。また、素体20の材質は、Mn、Fe、Ni、Co、Ti、Ba、Al、及びZnの少なくとも1つを成分とする金属酸化物を焼成したセラミックスである。
【0016】
図3に示すように、電子部品10は、2つの第1内部電極41と、2つの第2内部電極42と、を備えている。第1内部電極41及び第2内部電極42は、素体20の内部に埋め込まれている。
【0017】
第1内部電極41の材質は、導電性の材料である。例えば、第1内部電極41の材質は、パラジウムである。また、第2内部電極42の材質は、第1内部電極41の材質と同一である。
【0018】
第1内部電極41の形状は、長方形板状である。第1内部電極41の主面は、第2軸Yに直交している。第2内部電極42の形状は、第1内部電極41と同じ長方形板状である。第2内部電極42の主面は、第1内部電極41と同様に、第2軸Yに直交している。
【0019】
第1内部電極41の第1軸Xに沿う方向の寸法は、素体20の第1軸Xに沿う方向の寸法より小さくなっている。また、
図1に示すように、第1内部電極41の第3軸Zに沿う方向の寸法は、素体20の第3軸Zに沿う方向の寸法の略3分の2となっている。第2内部電極42の各方向の寸法は、第1内部電極41と同じ寸法となっている。
【0020】
図3に示すように、第1内部電極41と第2内部電極42とは、第2軸Yに沿う方向に互い違いに位置している。すなわち、第2正方向Y1を向く側面22Cから第2負方向Y2に、第1内部電極41、第2内部電極42、第1内部電極41、第2内部電極42の順に並んでいる。この実施形態では、各内部電極間の第2軸Yに沿う方向の距離は、等しくなっている。
【0021】
図1に示すように、2つの第1内部電極41及び2つの第2内部電極42は、いずれも、第3軸Zに沿う方向において、素体20の中央に位置している。その一方で、
図3に示すように、第1内部電極41は、第1正方向X1に寄って位置している。第2内部電極42は、第1負方向X2に寄って位置している。
【0022】
具体的には、第1内部電極41の第1正方向X1側の端は、素体20の第1正方向X1側の端と一致している。第1内部電極41の第1負方向X2側の端は、素体20の内部に位置しており、素体20の第1負方向X2側の端にまで至っていない。一方で、第2内部電極42の第1負方向X2側の端は、素体20の第1負方向X2側の端と一致している。第2内部電極42の第1正方向X1側の端は、素体20の内部に位置しており、素体20の第1正方向X1側の端にまで至っていない。
【0023】
電子部品10は、絶縁膜50を備えている。絶縁膜50は、素体20の外表面21を覆っている。本実施形態では、絶縁膜50は、素体20の外表面21のすべての領域を覆っている。
【0024】
図3に示すように、電子部品10は、第1外部電極61と、第2外部電極62と、を備えている。第1外部電極61は、第1下地電極61Aと、第1金属層61Bと、を有している。第1下地電極61Aは、素体20の外表面21のうち、第1端面22Aを含む一部分において、絶縁膜50の上から積層されている。具体的には、第1下地電極61Aは、素体20の第1端面22Aと、4つの側面22Cの第1正方向X1側の一部を覆う、5面電極である。この実施形態では、第1下地電極61Aの材質は、銀とガラスとである。
【0025】
第1金属層61Bは、第1下地電極61Aを外部から覆っている。そのため、第1金属層61Bは、第1下地電極61Aに積層されている。具体的には、第1金属層61Bは、ニッケルめっきと、錫めっきと、の2層構造となっている。
【0026】
第2外部電極62は、第2下地電極62Aと、第2金属層62Bと、を有している。第2下地電極62Aは、素体20の外表面21のうち、第2端面22Bを含む一部分において、絶縁膜50の上から積層されている。具体的には、第2下地電極62Aは、素体20の第2端面22Bと、4つの側面22Cの第1負方向X2側の一部を覆う、5面電極である。この実施形態では、第2下地電極62Aの材質は、第1外部電極61の材質と同一で、銀とガラスとである。
【0027】
第2金属層62Bは、第2下地電極62Aを外部から覆っている。そのため、第2金属層62Bは、第2下地電極62Aに積層されている。具体的には、第2金属層62Bは、第1金属層61Bと同様に、ニッケルめっきと、錫めっきと、の2層構造となっている。
【0028】
第2外部電極62は、側面22C上において、第1外部電極61にまでは至っておらず、第1外部電極61に対して第1軸Xに沿う方向に離れて配置されている。そして、素体20の側面22C上において、第1軸Xに沿う方向の中央部分は、第1外部電極61及び第2外部電極62が積層されておらず、絶縁膜50が露出している。なお、
図1~
図3では、第1外部電極61及び第2外部電極62は、二点鎖線で図示している。
【0029】
図3に示すように、第1外部電極61と第1内部電極41における第1正方向X1側の端とは、絶縁膜50を貫通する第1貫通部71を介して接続している。なお、詳細は後述するが、第1貫通部71は、電子部品10の製造過程において、第1内部電極41を構成するパラジウムが第1外部電極61側へと延びることによって形成される。
【0030】
また、第2外部電極62と第2内部電極42における第1負方向X2側の端とは、絶縁膜50を貫通する第2貫通部72を介して接続している。第2貫通部72も、第1貫通部71と同様に、電子部品10の製造過程において、第1内部電極41を構成するパラジウムが第2外部電極62側へと延びることによって形成される。なお、
図3では、第1内部電極41と第1貫通部71とを境界のある別の部材として図示しているが、実際には両者の間に明確な境界は存在しない。この点、第2貫通部72についても同様である。また、
図1及び
図2においては、第1貫通部71の図示を省略する。
【0031】
(絶縁膜について)
図4に示すように、絶縁膜50は、混合層51と、ガラス層56と、を有している。混合層51は、ガラス52と粉粒体53と、を含んでいる。混合層51は、素体20の外表面21に積層されている。すなわち、混合層51は、他の層を介することなく素体20の外表面21を覆っている。また、混合層51は、ガラス層56から視て素体20側に位置している。
【0032】
混合層51を断面視すると、粉粒体53は、ガラス52内に分散している。粉粒体53の材質は、素体20と同じ材質である。また、粉粒体53の熱膨張係数は、ガラス52の熱膨張係数よりも大きい。粉粒体53の平均粒径は、100nm以上である。なお、平均粒径は、断面視する1枚の画像中において、ランダムに抽出される複数個、例えば10個の粉粒体53の粒径の平均値として算出されればよい。なお、粉粒体53は、複数の粒子が凝集して1つの塊になっていることがある。この場合、凝集した塊の内部に、粒子の界面が観察できれば、その境界によって囲まれる部分が1つの粉粒体53である。また、粒径は、1つの粉粒体53を断面視したときに当該粉粒体53の幾何中心を通る最大の寸法である。
【0033】
ガラス層56は、粉粒体53の含有割合が混合層51よりも小さい層である。本実施形態では、ガラス層56は、略ガラス57のみで構成されている。なお、ガラス層56のガラス57と混合層51のガラス52とは、一体化しており、明確な境界線を有していない。
【0034】
ガラス層56は、クラック58を有している。クラック58は、ガラス層56における混合層51とは反対側の面に開口している。そして、クラック58は、素体20まで至っていない。クラック58の先端は、混合層51内に存在している。そのため、クラック58の先端の近傍には、粉粒体53が存在している。なお、上述のとおり、混合層51中には、ガラス52及び粉粒体53が存在する。そして、粉粒体53の熱膨張係数はガラス52の熱膨張係数よりも大きい。したがって、混合層51が加熱されたときに、ガラス52のうち粉粒体53の近傍の部分では、膨張しようとする粉粒体53から力をうける。このような力に起因して、絶縁膜50、特にガラス52のうちの粉粒体53の近傍に、クラック58が発生する。
【0035】
素体20の外表面21に直交する断面視において、素体20の外表面21から最も離れた粉粒体53を特定粉粒体53Sとする。また、特定粉粒体53Sのうちの最も素体20の外表面21から遠い点を特定点Pとする。さらに、素体20の外表面21から特定点Pまでの最短の距離を、第1厚さT1とする。また、特定点Pから当該粉粒体53を覆うガラス層56の表面までの最短の距離を、第2厚さT2とする。このとき、第1厚さT1は、第2厚さT2よりも大きい。
【0036】
<電子部品の製造方法の一実施形態>
(全体構成について)
次に、電子部品10の製造方法について説明する。
【0037】
図5に示すように、電子部品10の製造方法は、積層体準備工程S11と、R面取り加工工程S12と、溶媒投入工程S13と、触媒投入工程S14と、素体投入工程S15と、ポリマー投入工程S16と、金属アルコキシド投入工程S17と、を備えている。また、電子部品10の製造方法は、成膜工程S18と、乾燥工程S19と、導電体塗布工程S20と、硬化工程S21と、めっき工程S22と、をさらに備えている。
【0038】
先ず、素体20を形成するにあたって、積層体準備工程S11では、境界面23及びコーナ面24を備えない素体20である積層体を準備する。すなわち、積層体は、R面取りする前の状態であり、6つの平面22を有する直方体状である。例えば、先ず、素体20となる複数のセラミックスのシートを準備する。当該シートは、薄い板状である。当該シート上に、第1内部電極41となる導電性ペーストを積層する。当該導電性ペースト上に、素体20となるセラミックスのシートを積層する。当該シート上に、第2内部電極42となる導電性ペーストを積層する。このように、セラミックスのシートと導電性ペーストとを積層する。そして、所定のサイズにカットすることで、未焼成の積層体を形成する。その後、未焼成の積層体を高温で焼成することで、積層体を準備する。
【0039】
次に、R面取り加工工程S12を行う。R面取り加工工程S12では、積層体準備工程S11で準備した積層体に対して境界面23及びコーナ面24を形成する。例えば、バレル研磨により、積層体の角がR面取り加工されることによって、曲面を有する境界面23及び曲面を有するコーナ面24が形成される。これにより、素体20が形成される。また、積層体を構成していたセラミックスのシートの一部が粉粒体53として、素体20の外表面21に付着する。したがって、粉粒体53の材質は、素体20と同一である。
【0040】
次に、溶媒投入工程S13を行う。
図6に示すように、溶媒投入工程S13では、反応容器81内に、溶媒82として、2-プロパノールを投入する。
次に、
図5に示すように、触媒投入工程S14を行う。
図7に示すように、触媒投入工程S14では、先ず、反応容器81内の溶媒82の撹拌を開始する。そして、反応容器81内に、触媒を含む水溶液83として、アンモニア水を投入する。この実施形態における触媒は、水酸化物イオンであり、後述する金属アルコキシド85の加水分解を促進する触媒として機能する。
【0041】
次に、
図5に示すように、素体投入工程S15を行う。
図8に示すように、素体投入工程S15では、反応容器81内に、上述したようにR面取り加工工程S12において予め形成した複数の素体20を投入する。
【0042】
次に、
図5に示すように、ポリマー投入工程S16を行う。
図9に示すように、ポリマー投入工程S16では、反応容器81内に、ポリマー84として、ポリビニルピロリドンを投入する。これにより、反応容器81内に投入されたポリマー84は、素体20の外表面21に吸着する。
【0043】
次に、
図5に示すように、金属アルコキシド投入工程S17を行う。
図10に示すように、金属アルコキシド投入工程S17では、反応容器81内に、金属アルコキシド85として、液状のオルトケイ酸テトラエチルを投入する。なお、オルトテトラケイ酸テトラエチルは、テトラエトキシシランと呼称されることもある。本実施形態において、金属アルコキシド投入工程S17において投入する金属アルコキシド85の量は、素体投入工程S15において投入した素体20の外表面21の面積を基に算出している。具体的には、素体20の外表面21を覆う絶縁膜50を形成するために必要な素体20の1個当たりの金属アルコキシド85の量に、素体20の数を乗算して算出する。
【0044】
次に、
図5に示すように、成膜工程S18を行う。成膜工程S18では、上述した溶媒投入工程S13で開始した溶媒82の撹拌を、金属アルコキシド投入工程S17によって金属アルコキシド85が反応容器81内に投入されてから、所定時間だけ続ける。
【0045】
次に、乾燥工程S19を行う。乾燥工程S19では、成膜工程S18において所定時間だけ撹拌を続けた後に、素体20を反応容器81から取り出して、乾燥させる。これにより、ゾル状の絶縁膜50は乾燥され、ゲル状の絶縁膜50となる。このとき、特に、素体20の外表面21に付着した粉粒体53も覆うようにガラス52が成長する。そのため、混合層51とガラス層56とを有する絶縁膜50が形成される。なお、本実施形態においては、溶媒投入工程S13と、触媒投入工程S14と、素体投入工程S15と、ポリマー投入工程S16と、金属アルコキシド投入工程S17と、成膜工程S18と、によって、素体20に絶縁膜50を製膜する成膜方法が構成されている。
【0046】
次に、導電体塗布工程S20を行う。導電体塗布工程S20では、絶縁膜50の表面のうち、素体20の第1端面22Aを覆う部分を含む一部分と、素体20の第2端面22Bを覆う部分を含む一部分と、の2箇所に導電体ペーストを塗布する。具体的には、導電体ペーストを、第1端面22Aの全域と4つの側面22C上の一部との絶縁膜50を覆うように塗布する。また、導電体ペーストを、第2端面22Bの全域と4つの側面22C上の一部との絶縁膜50を覆うように塗布する。
【0047】
次に、硬化工程S21を行う。具体的には、硬化工程S21は、絶縁膜50及び導電体ペーストが塗布された素体20を加熱する。これにより、ゲル状の絶縁膜50から水及びポリマー84が気化することで、
図3に示すように、素体20の外表面21を覆う絶縁膜50が焼成され、硬化する。これとともに、導電体塗布工程S20において塗布された導電体ペーストが焼成されることによって、第1下地電極61A及び第2下地電極62Aが形成される。このように、導電体塗布工程S20と硬化工程S21とによって、下地電極形成工程が構成されている。つまり、本実施形態において硬化工程S21は、絶縁膜50を硬化させる工程としてだけではなく、下地電極形成工程の一部工程も兼ねている。
【0048】
本実施形態においては、硬化工程S21における加熱の際に、第1内部電極41と第1下地電極61Aとの拡散速度の違いから生じるカーケンドール効果により、銀を含む第1下地電極61A側に、第1内部電極41側に含まれるパラジウムが引き寄せられる。これにより、第1内部電極41から第1下地電極61Aに向かって第1貫通部71が絶縁膜50を貫通して延びることで、第1内部電極41と第1下地電極61Aとが接続する。この点、第2内部電極42と第2下地電極62Aとを接続する第2貫通部72においても同様である。
【0049】
次に、めっき工程S22を行う。第1下地電極61A及び第2下地電極62Aの部分に、電気めっきを行う。これにより、第1下地電極61Aの表面に、第1金属層61Bが形成される。また、第2下地電極62Aの表面に、第2金属層62Bが形成される。図示は省略するが、第1金属層61B及び第2金属層62Bは、ニッケル、錫の2種類で電気めっきされることで、2層構造となる。このようにして、電子部品10が形成される。
【0050】
(実施形態の作用について)
仮に、絶縁膜50が、ガラス57のみからなっているとする。この場合、ガラス57の各箇所での内部応力が合わさって、特定の箇所において大きな内部応力が発生することがある。そのため、外部から衝撃が加わると、その外部からの衝撃と内部応力とが重畳して、ガラス57が変形しようとする。その結果、ガラス57にき裂が進展したり、ガラス57が厚さ方向に湾曲したりすることで、ガラス57が素体20の外表面21から剥がれる。
【0051】
(実施形態の効果について)
(1)上記実施形態によれば、絶縁膜50は、混合層51と、ガラス層56を備えている。そして、混合層51は、ガラス52及び粉粒体53を含んでいる。そのため、混合層51では、ガラス層56と比べて、粉粒体53の含有割合が大きい分だけ、ガラス52の内部応力が緩和される。さらに、粉粒体53が存在する各箇所においては、微小な空隙が発生しやすい。具体的には、粉粒体53内における粒子間、及び、粉粒体53とガラス52との間には、微小な空隙が発生することで、ガラス52同士の密着性よりも、密着性の低い箇所が生じる。このような微小な空隙により、粉粒体53が存在する各箇所においては、ガラス52の内部応力が各粉粒体53に分断されるので、大きな内部応力が特定の箇所に集中して作用しにくい。したがって、電子部品10に外部からの衝撃が加わった際に、内部応力に起因して絶縁膜50が素体20から剥がれることは抑制できる。
【0052】
(2)仮に、製造過程において、絶縁膜50が素体20の外表面21から剥がれた状態で、第1金属層61B及び第2金属層62Bを形成すると、絶縁膜50がはがれた箇所に第1金属層61B及び第2金属層62Bとなるめっき液が入り込む。これにより、素体20がめっき液に溶解するおそれがある。上記実施形態によれば、絶縁膜50が素体20の外表面21の全体を覆っている。そのため、素体20とめっき液との接触を防止することで、めっき工程S22において、素体20がめっき液に溶解することを防止できる。
【0053】
(3)上記実施形態によれば、粉粒体53の材質は、素体20と同じ材質である。そのため、粉粒体53として、特別な材料を準備する手間を省ける。また、上記実施形態では、R面取り加工工程S12で生じるセラミックスのシートの一部を、そのまま粉粒体53として活用している。したがって、絶縁膜50中に粉粒体53を含有させる手間も不要である。
【0054】
(4)上記実施形態によれば、粉粒体53の平均粒径は、100nm以上である。そのため、混合層51において、1つの粉粒体53とガラス52との境界の面積として、十分な面積が確保できる。したがって、粉粒体53の平均粒径が小さすぎて、粉粒体53とガラス52との境界において内部応力を十分に分断できない、といった事態は生じにくい。
【0055】
(5)第1厚さT1は、混合層51の厚さに相当する。また、第2厚さT2は、ガラス層56の厚さに相当する。すなわち、上記実施形態によれば、混合層51の厚さは、ガラス層56の厚さよりも大きい。このように、絶縁膜50における混合層51の割合が相当に大きいことで、絶縁膜50が、素体20の外表面21からより剥がれにくくなる。
【0056】
(6)上記実施形態によれば、絶縁膜50は、クラック58を有する。クラック58は、ガラス層56における混合層51とは反対側の面に開口している。絶縁膜50の内部応力は、クラック58の内部空間を避けるように合わさる。そのため、クラック58がない場合と比べて、絶縁膜50の内部応力が合わさりにくくなる。また、外部からの衝撃によって、新たなクラックが生じたときに、当該クラックの進展が、既存のクラック58によって妨げられる。したがって、絶縁膜50の剥がれの原因となるような大きなクラックは生じにくい。なお、クラック58は、素体20まで至っていない。したがって、クラック58そのものが、絶縁膜50の剥がれの原因となる可能性は低い。
【0057】
(7)上記実施形態によれば、素体20の材質は、セラミックスである。また、混合層51は、他の層を介することなく素体20の外表面21を覆っている。その結果、混合層51は、外表面21に直交する方向から視たときに、素体20の粒子間の粒界を覆うように、粉粒体53が位置する可能性が高い。そのため、絶縁膜50の外部から衝撃が加わることで、絶縁膜50に新たなクラックが進展したとしても、粉粒体53が新たなクラックの進展を防ぐことで、素体20の粒界まで新たなクラックが進展することを抑制できる。素体20の粒界まで新たなクラックが進展することを抑制できれば、絶縁膜50の新たなクラックが、素体20の粒界に沿って進展することが防げる。
【0058】
<その他の実施形態>
上記実施形態は以下のように変更して実施することができる。上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で組み合わせて実施することができる。
【0059】
・上記実施形態において、電子部品10は、負特性サーミスタ部品に限られない。例えば、負特性以外のサーミスタ部品であってもよいし、積層コンデンサ部品やインダクタ部品であってもよい。
【0060】
・素体20の材質は、上記実施形態の例に限られない。例えば、素体20の材質は、樹脂と金属粉体とのコンポジット体であってもよい。
・素体20の形状は、上記実施形態の例に限られない。例えば、素体20は、中心軸線CAを有する四角形柱状以外の多角形柱状であってもよい。また、素体20は、巻線型のインダクタ部品のコアであってもよい。例えば、コアは、いわゆるドラムコア形状であってもよい。具体的には、コアは、柱状の巻芯部と、巻芯部の各端部に設けられた鍔部とを有していてもよい。
【0061】
・素体20の外表面21は、曲面を含むコーナ面24を有していなくてもよい。例えば、素体20の外表面21のうち、隣り合う平面22の境界が面取り形状になっていない場合、当該境界には曲面が存在しない。そのため、このような境界が3つ交わった箇所においては、曲面を含むコーナ面24が存在しないこともある。
【0062】
・粉粒体53は、積層体を構成していたセラミックスシートに由来するのみではなく、例えば、積層体を研磨する際に使用する研磨剤に由来することもある。
図11に示す例では、素体20は、微小な窪み部26を有している。窪み部26の内面は、素体20の外表面21に対して内側に窪んでいる。なお、窪み部26は、R面取り加工工程S12において、セラミックスの粒子が素体20から脱落することにより形成され、その後、十分に研磨ができていないような場合に素体20に残存する。
図11に示す例では、窪み部26の内部空間には、R面取り加工工程S12において使用する研磨剤の研磨粒子53Bが存在している。1つの研磨粒子53Bの一部は、素体20に刺さるように固定されている。この場合、窪み部26の内部空間に残る研磨粒子53Bは、粉粒体53として機能する。研磨粒子53Bの材質は、例えば、アルミナ及びジルコニアが挙げられる。
【0063】
また、
図11に示す例では、窪み部26は、外表面21に直交する方向から視たときに、外表面21における開口が、内部空間の最大範囲よりも小さくなっている。そのため、R面取り加工工程S12において研磨された素体20の一部である素体由来粒子53Aが、粉粒体53となって窪み部26の内部空間に存在している。このように、素体20が窪み部26を有すると、窪み部26の内部空間に、素体由来粒子53Aを多く存在させやすい。そのため、混合層51を形成しやすくするうえで、好適である。なお、
図11に示す窪み部26の形状は簡略化したものであり、素体20には、様々な形状の窪み部26が形成され得る。
【0064】
・
図11に示す例において、研磨粒子53Bは、素体20に刺さるように固定されている場合だけでなく、研磨粒子53Bが素体20の表面に静電引力により付着している場合もあるし、両者が混在していることもある。
【0065】
・上記実施形態において、粉粒体53の材質は、素体20及び研磨剤と同じ材質でなくてもよい。例えば、予め、コーティング液に粉粒体53を混入しておいてもよい。粉粒体53の熱膨張係数が、ガラス52の熱膨張係数よりも大きくなるように、0.6×10-6以上15×10-6(/K)以下であればよい。
【0066】
・上記実施形態において、粉粒体53の平均粒径は、100nm以下であってもよい。この場合、複数の粉粒体53が凝集していてもよいし、拡散していてもよい。なお、粉粒体53の平均粒径が小さいほど、複数の粉粒体53が互いに凝集しやすい。
【0067】
・上記実施形態において、第1内部電極41及び第2内部電極42の形状は、対応する第1外部電極61及び第2外部電極62との電気的導通を確保できる形状であれば問わない。また、第1内部電極41及び第2内部電極42の数は問わず、第1内部電極41の数が1つであってもよいし、3つ以上であってもよい。
【0068】
・第1外部電極61の構成は、上記実施形態の例に限られない。例えば、第1外部電極61は、第1下地電極61Aのみから構成されていてもよいし、第1金属層61Bが、2層構造でなくてもよい。なお、第1外部電極61が、第1金属層61Bを含んでいると、絶縁膜50が素体20の外表面21の全体を覆うことによって、素体20のめっき液への溶解を抑制できる効果が得られる。この点、第2外部電極62についても同様である。
【0069】
・上記実施形態において、第1内部電極41と第1下地電極61Aとの材質の組み合わせは、パラジウム及び銀の組み合わせに限らない。例えば、銅及びニッケル、銅及び銀、銀及び金、ニッケル及びコバルト、又は、ニッケル及び金、の組み合わせであってもよい。また例えば、一方が銀で、他方が銀及びパラジウムの組み合わせであってもよい。また例えば、一方がパラジウムで、他方が銀及びパラジウムの組み合わせであってもよいし、一方が銅で、他方が銀及びパラジウムの組み合わせであってもよい。また例えば、一方が金で、他方が銀及びパラジウムの組み合わせであってもよい。
【0070】
なお、第1内部電極41と第1下地電極61Aとの組み合わせによっては、カーケンドール効果を得られない場合がある。この場合には、外部電極形成工程の前に、第1内部電極41が露出するように、例えば、素体20の第1端面22A側を研磨して絶縁膜50の一部を物理的に除去すればよい。その後、下地電極形成工程を行うことで、第1内部電極41と第1下地電極61Aとを接続することができる。また例えば、第1下地電極61Aを形成した後に、第1下地電極61Aの表面も含めて絶縁膜50を形成して、第1下地電極61Aの表面を覆う絶縁膜50を除去してもよい。この点、第2内部電極42と第2下地電極62Aとの材質の組み合わせにおいても同様である。
【0071】
・第1外部電極61の配置箇所は、上記実施形態の例に限られない。例えば、第1外部電極61が第1端面22Aと1つの側面22Cとにのみ配置されていてもよい。この点、第2外部電極62についても同様である。
【0072】
・絶縁膜50について、ガラス層56には、粉粒体53が含まれていてもよい。少なくとも、ガラス層56における粉粒体53の含有割合は、混合層51における粉粒体53の含有割合よりも小さければよい。
【0073】
・第1厚さT1は第2厚さT2以下であってもよい。絶縁膜50は、混合層51とガラス層56とを有していればよい。混合層51とガラス層56との境界は、明確でなくてもよく、粉粒体53の含有割合が、絶縁膜50の表面側の部分よりも、素体20側の部分において大きければ、絶縁膜50は、混合層51とガラス層56とを有しているといえる。
【0074】
・絶縁膜50において、クラック58の位置は、上記実施形態の例に限られない。また、絶縁膜50において、クラック58は省かれてもよい。さらに、クラック58の数は、複数あってもよい。
【0075】
・絶縁膜50は、素体20の外表面21のすべての領域を覆っていなくてもよい。すなわち、素体20の外表面21の一部が、絶縁膜50から露出していてもよい。素体20の形状、第1外部電極61及び第2外部電極62の位置等に併せて、絶縁膜50が覆う範囲は、適宜変更されればよい。
【0076】
・絶縁膜50のうち、第1下地電極61Aに覆われている部分について、絶縁膜50におけるガラス52は、第1下地電極61Aにおけるガラスに拡散することで、両者が一体化していることもある。
【0077】
・混合層51は、素体20の外表面21を直接覆っていなくてもよい。例えば、混合層51と外表面21との間に、他の層が介在していてもよい。この場合であっても、混合層51が、ガラス層56から視て素体20側に位置していれば、絶縁膜50が他の層から剥がれることを抑制できる。その結果、素体20の外表面21から絶縁膜50から剥がれることを抑制できる。
【0078】
・絶縁膜50の材質は、上記実施形態の例に限られない。例えば、ガラス52及びガラス57は、二酸化ケイ素のみに限られず、B-Si系、Si-Zn系、Zr-Si系、Al-Si系の酸化物のように、Siを含む多成分系の酸化物であってもよい。また、ガラス52及びガラス57は、Al-Si系、Na-Si系、K-Si系、Li-Si系の酸化物のように、アルカリ金属とSiを含む多成分系の酸化物であってもよい。さらに、ガラス52及びガラス57は、Mg-Si系、Ca-Si系、Ba-Si系、Sr-Si系のようにアルカリ土類金属とSiを含む多成分系の酸化物であってもよい。そして、ガラス52及びガラス57は、Siを含まなくてもよく、これらの混合物であってもよい。
【0079】
・また、絶縁膜50の材質は、ガラス52及びガラス57に加えて、顔料、シリコーン系難燃剤、シランカップリング材、チタネートカップリング剤等の表面処理剤又は帯電防止剤を含んでいてもよい。
【0080】
より具体的には、絶縁膜50には、ガラス52及びガラス57と、粉粒体53と、に加えて、有機酸塩、酸化物、無機塩、有機塩、その他金属酸化物の微細な粒子及びナノ粒子の添加物を含んでいてもよい。
【0081】
有機酸塩としては、例えば、ソーダ灰、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、過炭酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、硝酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウムといったオキソ酸の塩やフッ化ナトリウム、塩化ナトリウム、臭化ナトリウム、ヨウ化ナトリウムといったハロゲン化合物が挙げられる。
【0082】
また、酸化物としては、例えば過酸化ナトリウム、水酸化物としては、例えば水酸化ナトリウムが挙げられる。
無機塩としては、例えば、水素化ナトリウム、硫化ナトリウム、硫化水素ナトリウム、珪酸ナトリウム、リン酸三ナトリウム、ほう酸ナトリウム、水素化ホウ素ナトリウム、シアン化ナトリウム、シアン酸ナトリウム、テトラクロロ金酸ナトリウムが挙げられる。
【0083】
無機塩としては、例えば、過酸化カルシウム、水酸化カルシウム、フッ化カルシウム、塩化カルシウム、臭化カルシウム、ヨウ化カルシウム、水素化カルシウム、炭化カルシウム、リン化カルシウムが挙げられる。
【0084】
また、添加物としては、炭酸カルシウム、炭酸水素カルシウム、硝酸カルシウム、硫酸カルシウム、亜硫酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、リン酸カルシウム、ピロリン酸カルシウム、次亜塩素酸カルシウム、塩素酸カルシウム、過塩素酸カルシウム、臭素酸カルシウム、ヨウ素酸カルシウム、亜ヒ酸カルシウム、クロム酸カルシウム、タングステン酸カルシウムモリブデン酸カルシウム、炭酸カルシウムマグネシウム、ハイドロキシアパタイト、といったオキソ酸塩であってもよい。また、添加物は、酢酸カルシウム、グルコン酸カルシウム、クエン酸カルシウム、リンゴ酸カルシウム、乳酸カルシウム、安息香酸カルシウム、ステアリン酸カルシウム、アスパラギン酸カルシウムが挙げられる。
【0085】
また例えば、添加物は、炭酸リチウム、塩化リチウム、チタン酸リチウム、窒化リチウム、過酸化リチウム、クエン酸リチウム、フッ化リチウム、ヘキサフルオロリン酸リチウム、酢酸リチウム、ヨウ化リチウム、次亜塩素酸リチウム、四ホウ酸リチウム、臭化リチウム、硝酸リチウム、水酸化リチウム、水素化アルミニウムリチウム、水素化トリエチルホウ素リチウム、水素化リチウム、リチウムアミド、リチウムイミド、リチウムジイソプロピルアミド、リチウムテトラメチルピペリジド、硫化リチウム、硫酸リチウム、リチウムチオフェノラート、リチウムフェノキシドであってもよい。
【0086】
また例えば、添加物は、三ヨウ化ホウ素、シアノ水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素ナトリウム、テトラフルオロほう酸、トリエチルボラン、硼砂、ほう酸であってもよい。
【0087】
また例えば、添加物は、ヒ化カリウム、臭化カリウム、炭化カリウム、塩化カリウム、フッ化カリウム、水素化カリウム、ヨウ化カリウム、三ヨウ化カリウム、アジ化カリウム、窒化カリウム、超酸化カリウム、オゾン化カリウム、過酸化カリウム、リン化カリウム、硫化カリウム、セレン化カリウム、テルル化カリウム、テトラフルオロアルミン酸カリウム、テトラフルオロホウ酸カリウム、テトラヒドロホウ酸カリウム、カリウムメタニド、シアン化カリウム、ギ酸カリウム、フッ化水素カリウム、テ、ラヨード水銀(II)酸カリウム、硫化水素カリウム、オクタクロロ二モリブデン(II)酸カリウム、カリウムアミド、水酸化カリウム、ヘキサフルオロリン酸カリウム、炭酸カリウム、テトラクロリド白金(II)酸カリウム、ヘキサクロリド白金(IV)酸カリウム、ノナヒドリドレニウム(VII)酸カリウム、硫酸カリウム、酢酸カリウム、シアン化金(I)カリウム、ヘキサニトロコバルト(III)酸カリウム、ヘキサシアノ鉄(III)酸カリウム、ヘキサシアノ鉄(II)酸カリウム、カリウムメトキシド、カリウムエトキシド、カリウムtert-ブトキシド、シアン酸カリウム、雷酸カリウム、チオシアン酸カリウム、硫酸カリウムアルミニウム、アルミン酸カリウム、ヒ酸カリウム、臭素酸カリウム、次亜塩素酸カリウム、亜塩素酸カリウム、塩素酸カリウム、過塩素酸カリウム、炭酸カリウム、クロム酸カリウム、二クロム酸カリウム、テトラキス(ペルオキソ)クロム(V)酸カリウム、銅(III)酸カリウム、鉄酸カリウム、ヨウ素酸カリウム、過ヨウ素酸カリウム、過マンガン酸カリウム、マンガン酸カリウム、次亜マンガン酸カリウム、モリブデン酸カリウム、亜硝酸カリウム、硝酸カリウム、リン酸三カリウム、過レニウム酸カリウム、セレン酸カリウム、ケイ酸カリウム、亜硫酸カリウム、硫酸カリウム、チオ硫酸カリウム、二亜硫酸カリウム、ジチオン酸カリウム、二硫酸カリウム、ペルオキソ二硫酸カリウム、ヒ酸二水素カリウム、ヒ酸水素二カリウム、炭酸水素カリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウム、セレン酸水素カリウム、亜硫酸水素カリウム、硫酸水素カリウム、ペルオキソ硫酸水素カリウムであってもよい。
【0088】
また例えば、添加物は、亜硫酸バリウム、塩化バリウム、塩素酸バリウム、過塩素酸バリウム、過酸化バリウム、クロム酸バリウム、酢酸バリウム、シアン化バリウム、臭化バリウム、シュウ酸バリウム、硝酸バリウム、水酸化バリウム、水素化バリウム、炭酸バリウム、ヨウ化バリウム、硫化バリウム、硫酸バリウムであってもよい。他にも、添加物は、酢酸ナトリウム、クエン酸ナトリウムであってもよい。
【0089】
また、添加物は、金属酸化物の微細な粒子又はナノ粒子であってもよく、例えば、金属酸化物としては、酸化ナトリウム、酸化カルシウム、酸化リチウム、酸化ホウ素、酸化カリウム、酸化バリウム、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化ジルコン、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化マグネシウムが挙げられる。
【0090】
・上記実施形態の電子部品10の製造方法において、金属アルコキシド85は、上記実施形態の例に限られない。金属アルコキシド85を合成可能な元素としては、例えば、Li,Be,B,C,Na,Mg,Al,Si,P,K,Ca,Sc,Ti,V,Cr,Mn,Fe,Co,Ni,Cu,Zn,Ga,Ge,As,Rb,Sr,Y,Zr,Nb,Mo,Cd,In,Sn,Sb,Cs,Ba,La,Ce,Pr,Nd,Pm,Sm,Eu,Gd,Tb,Dy,Ho,Er,Tm,Yb,Lu,Hf,Ta,W,Hg,Tl,Pb,Bi,Th,Pa,U,Puが挙げられる。これらの元素のアルコキシドは、ガラスの前駆体として利用し得る。
【0091】
金属アルコキシド85は、例えば、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カルシウムジエトキシド、リチウムイソプロポキシド、リチウムエトキシド、リチウムtert-ブトキシド、リチウムメトキシド、ホウ素アルコキシド、カリウムt-ブトキシド、オルトケイ酸テトラエチル、アリルトリメトキシシラン、イソブチル(トリメトキシ)シラン、オルトケイ酸テトラプロピル、オルトケイ酸テトラメチル、[3-(ジエチルアミノ)プロピル]トリメトキシシラン、トリエトキシ(オクチル)シラン、トリエトキシビニルシラン、トリエトキシフェニルシラン、トリメトキシフェニルシラン、トリメトキシメチルシラン、ブチルトリクロロシラン、n-プロピルトリエトキシシラン、メチルトリクロロシラン、ジメトキシ(メチル)オクチルシラン、ジメトキシジメチルシラン、トリス(tert-ブトキシ)シラノール、トリス(tert-ペントキシ)シラノール、ヘキサデシルトリメトキシシラン、トリス(1,2-ベンゼンジオラート-O,O’)ケイ酸二カリウム、オルトケイ酸テトラブチル、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸テトラメチルアンモニウム溶液、クロロトリイソプロポキシチタン(IV)、チタン(IV)イソプロポキシド、チタン(IV)2-エチルヘキシルオキシド、チタン(IV)エトキシド、チタン(IV)ブトキシド、チタン(IV)tert-ブトキシド、チタン(IV)プロポキシド、チタン(IV)メトキシド、ジルコニウム(IV)ビス(ジエチルシトレート)ジプロポキシド、ジルコニウム(IV)ジブトキシド(ビス-2,4-ペンタンジオネート)、ジルコニウム(IV)2-エチルヘキサノエート、ジルコニウム(IV)イソプロポキシドイソプロパノール錯体、ジルコニウム(IV)エトキシド、ジルコニウム(IV)ブトキシド、ジルコニウム(IV)tert-ブトキシド、ジルコニウム(IV)プロポキシド、アルミニウムtert-ブトキシド、アルミニウムイソプロポキシド、アルミニウムエトキシド、アルミニウム-トリ-sec-ブトキシド、アルミニウムフェノキシド、であってもよい。
【0092】
・上記実施形態の電子部品10の製造方法において、金属アルコキシド85に代えて、金属アルコキシド85の前駆体である金属錯体や酢酸塩を用いてもよい。この場合、金属アルコキシド投入工程S17では、金属アルコキシド前駆体である金属錯体や酢酸塩を投入すればよい。金属錯体としては、例えば、リチウムアセチルアセトナート、チタン(IV)オキシアセチルアセトナート、チタンジイソプロポキシドビス(アセチルアセトナート)、ジルコニウム(IV)トリフルオロアセチルアセトナート、ジルコニウム(IV)アセチルアセトナート、アセチルアセトン酸アルミニウム、アルミニウム(III)アセチルアセトナート、カルシウム(II)アセチルアセトナート、亜鉛(II)アセチルアセトナートのようなアセチルアセトナートが挙げられる。また例えば、酢酸塩としては、酢酸ジルコニウム、酢酸水酸化ジルコニウム(IV)、塩基性酢酸アルミニウムが挙げられる。
【0093】
・上記電子部品10の製造方法において、外部電極形成工程は、上記実施形態の例に限られない。例えば、成膜工程S18の後に、加熱処理をすることで絶縁膜50を硬化させた後に、導電体塗布工程S20及び硬化工程S21を行うことで、第1外部電極61及び第2外部電極62を形成してもよい。また例えば、上述した変更例のように、第1内部電極41の一部が絶縁膜50から露出している場合、露出している部分に、めっき工法によって第1外部電極61を形成してもよい。
【0094】
・硬化工程S21は、絶縁膜50と導電体ペーストとを同時に硬化させる工程に限られない。例えば、導電体ペーストが紫外線照射によって硬化される材料であるならば、絶縁膜50を硬化させる硬化工程として、加熱工程を行い、導電体ペーストを硬化させる工程として紫外線照射をしてもよい。
【0095】
・上記電子部品10の製造方法において、乾燥工程S19によって充分に水及びポリマー84が気化されることで絶縁膜50が硬化されてもよい。この場合、乾燥工程S19が絶縁膜50を硬化させる硬化工程として機能する。
【0096】
・上記電子部品10の製造方法において、溶媒投入工程S13、触媒投入工程S14、素体投入工程S15、の順番は問わない。反応容器81内に、溶媒82と素体20とポリマー84とが投入された状態で、反応容器81内で金属アルコキシド85と触媒とが反応を始めればよい。
【0097】
・上記電子部品10の製造方法において、ポリマー84は、ポリビニルピロリドンに限られない。例えば、ポリマー84は、アクリル系であるアクリル酸、メタクリル酸又はそれらのエステルの単独重合体又は共重合体であってもよい。アクリル系は、例えば、アクリル酸エステル共重合体、メタクリル酸エステル共重合体、アクリル酸エステル-メタクリル酸エステル共重合体が挙げられる。また例えば、ポリマー84は、セルロース系、ポリビニルアルコール系、ポリ酢酸ビニル系、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレンカーボネート系等の単独重合体又は共重合体が挙げられる。セルロース系は、例えば、ヒドロキシプロピルセルロース、セルロースエーテル、カルボキシメチルセルロース、アセチルセルロース、アセチルニトロセルロースが挙げられる。さらに、ポリマー84は、複数種を含んでいてもよく、例示した中から選ばれる少なくとも1種を含有していればよい。
【0098】
・上記電子部品10の製造方法において、溶媒82は、2-プロパノールに限られない。溶媒82は、金属アルコキシド85を充分に分散させることができれば、適宜変更されればよい。
【0099】
・ところで、特開2020-36002号公報に記載の成膜方法は、溶媒投入工程と、触媒投入工程と、素体投入工程と、金属アルコキシド投入工程と、を備えている。また、当該成膜方法は、成膜工程を備えている。成膜工程では、金属アルコキシドの加水分解及び重縮合反応により、素体の外表面にシリコン酸化物からなる絶縁膜を形成している。
【0100】
特開2020-36002号公報に記載のような成膜方法では、成膜工程において、シリコン酸化物の大きさが過度に大きくなることがある。絶縁膜の表面に、サイズの大きいシリコン酸化物の粒子が存在していると、素体20の外部からの衝撃が、当該粒子近傍に加わると、当該粒子が近傍の絶縁膜50を素体20の外表面21から剥がしてしまうことがある。
【0101】
ここで、上記実施形態の電子部品10の製造方法における成膜方法によれば、ポリマー投入工程S16によって、ポリマー84を投入している。絶縁膜50の成膜過程において、ポリマー84が、素体20の外表面21に吸着する。その後、金属アルコキシド投入工程S17によって、金属アルコキシド85由来のガラスの微粒子が、ポリマー84に取り込まれる。そして、過度に大きく成長したガラスの粗大な粒子は、ポリマー84に取り込まれることができなくなる。その結果、絶縁膜50には、過度に大きい粒子が含まれなくなる。
【0102】
このように、ガラスの粗大な粒子の過度の成長を軽減するという観点では、絶縁膜50における混合層51は必須ではない。すなわち、例えば絶縁膜50は、ガラス57のみから構成されていてもよい。
【0103】
また、金属アルコキシド85の濃度、アルカリ濃度、反応温度、反応時間、溶媒82の種類、素体20の表面電荷などを制御することで、ガラスの粗大な粒子のサイズをより小さくすることができる。
【0104】
上記実施形態及び変更例から把握できる技術的思想を以下に追記する。
<付記1>
素体の外表面に金属酸化物を含む絶縁膜を成膜する成膜方法であって、
反応容器内に前記素体を投入する素体投入工程と、
前記反応容器内に、前記素体の外表面に吸着するポリマーを投入するポリマー投入工程と、
前記容器内に金属アルコキシド又は金属アルコキシド前駆体を投入する金属アルコキシド投入工程と、
前記反応容器内に、前記金属アルコキシドの加水分解を促進する触媒を投入する触媒投入工程と、
前記金属アルコキシドを加水分解及び脱水縮合して前記素体の外表面に前記絶縁膜を製膜する成膜工程と、を備える
成膜方法。
【符号の説明】
【0105】
10…電子部品
20…素体
21…外表面
41…第1内部電極
42…第2内部電極
50…絶縁膜
51…混合層
52…ガラス
53…粉粒体
56…ガラス層
57…ガラス
58…クラック
61…第1外部電極
62…第2外部電極
71…第1貫通部
72…第2貫通部
81…反応容器
82…溶媒
83…水溶液
84…ポリマー
85…金属アルコキシド