IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社村田製作所の特許一覧

特許7622871フィルタ装置、アンテナ装置、およびアンテナモジュール
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-20
(45)【発行日】2025-01-28
(54)【発明の名称】フィルタ装置、アンテナ装置、およびアンテナモジュール
(51)【国際特許分類】
   H03H 5/02 20060101AFI20250121BHJP
   H03H 7/09 20060101ALI20250121BHJP
   H01Q 5/335 20150101ALI20250121BHJP
   H01Q 1/52 20060101ALI20250121BHJP
   H01Q 21/28 20060101ALI20250121BHJP
【FI】
H03H5/02
H03H7/09 Z
H01Q5/335
H01Q1/52
H01Q21/28
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2023561561
(86)(22)【出願日】2022-11-10
(86)【国際出願番号】 JP2022041921
(87)【国際公開番号】W WO2023090250
(87)【国際公開日】2023-05-25
【審査請求日】2024-01-22
(31)【優先権主張番号】P 2021189150
(32)【優先日】2021-11-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】立花 真也
【審査官】福田 正悟
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-029753(JP,A)
【文献】特開2016-092525(JP,A)
【文献】特開2004-336250(JP,A)
【文献】特開2000-036721(JP,A)
【文献】特開2016-122706(JP,A)
【文献】特開2015-159488(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03H 5/02
H03H 7/09
H01Q 5/335
H01Q 1/52
H01Q 21/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1周波数帯の通過帯域と、前記第1周波数帯よりも低い第2周波数帯の通過帯域と、前記第1周波数帯と前記第2周波数帯との間の第3周波数帯の減衰帯域と、を有するフィルタ装置であって、
第1インダクタと、前記第1インダクタと直列に接続される第1キャパシタと、により前記第1周波数帯の第1共振周波数で直列共振する第1直列共振器と、
第2インダクタと、前記第2インダクタと直列に接続される第2キャパシタと、により前記第2周波数帯の第2共振周波数で直列共振する第2直列共振器と、を備え、
前記第1直列共振器と前記第2直列共振器とが並列に接続され、前記第3周波数帯の第3共振周波数で並列共振し、
前記第2共振周波数は、前記第1共振周波数よりも低く、
前記第3共振周波数は、前記第1共振周波数と前記第2共振周波数との間であり、
前記第1インダクタと前記第2インダクタとは、互いに磁気結合する、フィルタ装置
【請求項2】
前記第1インダクタと前記第2インダクタとは、互いに加極性結合をする、請求項1に記載のフィルタ装置。
【請求項3】
前記第1インダクタと前記第2インダクタとは、互いに減極性結合をする、請求項1に記載のフィルタ装置。
【請求項4】
前記第1インダクタは、寄生インダクタンスである、請求項1に記載のフィルタ装置。
【請求項5】
前記フィルタ装置は、前記第1共振周波数と前記第2共振周波数とを共振周波数として放射可能なアンテナ装置に設けられる、請求項1~請求項4のいずれか1項に記載のフィルタ装置。
【請求項6】
前記フィルタ装置は、一体化された部品として構成されている、請求項1~請求項4のいずれか1項に記載のフィルタ装置。
【請求項7】
前記第1直列共振器および前記第2直列共振器にさらに並列に接続された第3キャパシタもしくは第3インダクタを備える、請求項1~請求項4のいずれか1項に記載のフィルタ装置。
【請求項8】
前記第1直列共振器および前記第2直列共振器にさらに並列に接続された第3キャパシタもしくは第3インダクタを備え、
前記フィルタ装置は、前記第1直列共振器の一端および前記第2直列共振器の一端と接続される入力端子と、前記第1直列共振器の他端および前記第2直列共振器の他端と接続される出力端子と、を含み、
前記第3キャパシタまたは前記第3インダクタは、前記入力端子と前記出力端子との間において別素子として接続される、請求項6に記載のフィルタ装置。
【請求項9】
高周波信号を入出力する第1給電回路と、
前記第1共振周波数と前記第2共振周波数とを共振周波数として放射可能な第1アンテナと、
前記第1給電回路と前記第1アンテナとの間に配置される請求項1~請求項4のいずれか1項に記載のフィルタ装置と、を備える、アンテナ装置。
【請求項10】
第1アンテナ装置と、第2アンテナ装置とを備えるアンテナモジュールであって、
前記第1アンテナ装置は、
高周波信号を入出力する第1給電回路と、
第1共振周波数と第2共振周波数とを共振周波数として放射可能な第1アンテナと、
前記第1給電回路と前記第1アンテナとの間に配置されるフィルタ装置と、を備え、
前記フィルタ装置は、
第1周波数帯の通過帯域と、前記第1周波数帯よりも低い第2周波数帯の通過帯域と、前記第1周波数帯と前記第2周波数帯との間の第3周波数帯の減衰帯域と、を有し、
第1インダクタと、前記第1インダクタと直列に接続される第1キャパシタと、により前記第1周波数帯の前記第1共振周波数で直列共振する第1直列共振器と、
第2インダクタと、前記第2インダクタと直列に接続される第2キャパシタと、により前記第2周波数帯の前記第2共振周波数で直列共振する第2直列共振器と、を備え、
前記第1直列共振器と前記第2直列共振器とが並列に接続され、前記第3周波数帯の第3共振周波数で並列共振し、
前記第2アンテナ装置は、
高周波信号を入出力する第2給電回路と、
前記第3共振周波数を共振周波数として放射可能な第2アンテナと、を備え、
前記第1アンテナ装置と前記第2アンテナ装置とが近接して配置される、アンテナモジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、フィルタ装置、アンテナ装置、およびアンテナモジュールに関し、より特定的には、信号のロスを低減するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
高周波回路には、帯域阻止フィルタや帯域通過フィルタなどのフィルタ装置が設けられる。高周波回路に設けられるフィルタ装置の一例として、特許第6531824号公報(特許文献1)のフィルタ装置がある。特許文献1に開示されているフィルタ装置は、第1直列回路を構成する第1インダクタおよび第1キャパシタと、第1直列回路に並列接続される第2インダクタとを備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第6531824号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のフィルタ装置では、並列共振の減衰帯域よりも低い周波数において、第2インダクタを単体で用いる場合よりもリアクタンス特性が増大してしまう。これにより、特許文献1のフィルタ装置では、インピーダンスのズレによる信号のロスが発生する。
【0005】
本開示は、このような課題を解決するためになされたものであり、その目的は高周波信号におけるフィルタ装置において、並列共振の減衰帯域よりも低い周波数帯での信号のロスを低減することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に従うフィルタ装置は、第1インダクタと、第1インダクタと直列に接続される第1キャパシタと、により第1共振周波数で直列共振する第1直列共振器と、第2インダクタと、第2インダクタと直列に接続される第2キャパシタと、により第2共振周波数で直列共振する第2直列共振器と、を備える。第1直列共振器と第2直列共振器とが並列に接続され、第3共振周波数で並列共振し、第2共振周波数は、第1共振周波数よりも低く、第3共振周波数は、第1共振周波数と第2共振周波数との間である。
【発明の効果】
【0007】
本開示によるフィルタ装置においては、第1インダクタと、第1キャパシタと、により第1共振周波数で直列共振する第1直列共振器と、第2インダクタと、第2キャパシタと、により第2共振周波数で直列共振する第2直列共振器と、を備え、第1直列共振器と第2直列共振器とが並列に接続され、第3周波数帯の第3共振周波数で並列共振するように構成される。このような構成とすることによって、並列共振の減衰帯域よりも低い周波数帯での信号のロスを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施の形態1におけるアンテナ装置の構成を示す図である。
図2】実施の形態1におけるフィルタ装置のリアクタンス特性の一例を示す図である。
図3】実施の形態1におけるフィルタ装置の挿入損失の一例を示す図である。
図4】実施の形態2におけるフィルタ装置の回路図および等価回路図である。
図5】実施の形態2におけるフィルタ装置のリアクタンス特性の一例を示す図である。
図6】実施の形態2におけるフィルタ装置の挿入損失の一例を示す図である。
図7図6に示す領域の縦軸拡大図である。
図8】実施の形態2におけるフィルタ装置のリアクタンス特性の一例を示す図である。
図9】実施の形態2におけるフィルタ装置の挿入損失の一例を示す図である。
図10図9に示す領域の縦軸拡大図である。
図11】実施の形態2の変形例1におけるフィルタ装置のリアクタンス特性の一例を示す図である。
図12】実施の形態2の変形例1におけるフィルタ装置の挿入損失の一例を示す図である。
図13図12に示す領域の縦軸拡大図である。
図14】実施の形態2の変形例2におけるフィルタ装置の回路図である。
図15】実施の形態2の変形例2におけるフィルタ装置のリアクタンス特性の一例を示す図である。
図16】実施の形態2の変形例2におけるフィルタ装置の挿入損失の一例を示す図である。
図17図16に示す領域の縦軸拡大図である。
図18】その他の変形例におけるアンテナ装置の構成を示す図である。
図19】実施の形態3のアンテナモジュールの構成を示す図である。
図20】実施の形態3のアンテナモジュールの外観図である。
図21】実施の形態4におけるフィルタ装置の回路図である。
図22】インダクタを追加する前後におけるリアクタンス特性の変化の一例を示す図である。
図23】インダクタを追加する前後における挿入損失の変化の一例を示す図である。
図24】インダクタを追加する前後におけるリアクタンス特性の変化の一例を示す図である。
図25】インダクタを追加する前後における挿入損失の変化の一例を示す図である。
図26】実施の形態5におけるフィルタ装置の回路図である。
図27】キャパシタを追加する前後におけるリアクタンス特性の変化の一例を示す図である。
図28】キャパシタを追加する前後における挿入損失の変化の一例を示す図である。
図29】キャパシタを追加する前後におけるリアクタンス特性の変化の一例を示す図である。
図30】キャパシタを追加する前後における挿入損失の変化の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0010】
[実施の形態1]
<アンテナ装置の基本構成>
図1は、実施の形態1におけるアンテナ装置1000の構成を示す図である。アンテナ装置1000は、給電回路RF1と、フィルタ装置100と、アンテナ155とを含む。アンテナ装置1000は、たとえば、携帯電話、スマートフォンあるいはタブレットなどの携帯端末や、通信機能を備えたパーソナルコンピュータなどの通信装置に搭載される。
【0011】
給電回路RF1は、f1帯の周波数帯域の高周波信号、およびf2帯の周波数帯域の高周波信号をアンテナ155に供給する。アンテナ155は、給電回路RF1から供給されたf1帯の高周波信号、およびf2帯の高周波信号を電波として空気中に放射可能である。f1帯の周波数帯域は、たとえば、Wi-Fi(登録商標)の5GHz帯(5.15-5.7GHz)である。f2帯の周波数帯域は、たとえば、Wi-Fi(登録商標)の2.4GHz帯(2.4-2.5GHz)である。アンテナ155は、たとえば、モノポールアンテナである。
【0012】
フィルタ装置100は、特定の周波数帯の高周波信号の通過を妨げ、減衰させるトラップフィルタである。フィルタ装置100は、バンドエリミネートフィルタとも称される。実施の形態1におけるフィルタ装置100は、f3帯の周波数帯域の高周波信号を減衰させるように構成されている。f3帯の周波数帯域は、たとえば、5G-NR(New Radio)のn77(3.3-4.2GHz)、n78(3.3-3.8GHz)を含む帯域である。
【0013】
f1帯~f3帯は、近接する周波数帯域である。周波数帯域が近接するか否かは、帯域幅とその帯域幅に対する中心周波数を用いて定めることができる。たとえば、f1帯の周波数端とf2帯の周波数端との帯域幅とその帯域幅に対する中心周波数の比が所定の範囲内にある場合、f1帯とf2帯とが近接していると判断する。なお、その他の手法によって、周波数帯域が近接しているか否かを定めてもよい。フィルタ装置100において、f1帯およびf2帯が通過帯域であり、f3帯が減衰帯域である。
【0014】
図1に示すフィルタ装置100は、端子P1および端子P2を有している。端子P1は、フィルタ装置100を給電回路RF1側の伝送線路と接続するための端子である。端子P2は、フィルタ装置100をアンテナ155側の伝送線路と接続するための端子である。
【0015】
給電回路RF1がフィルタ装置100を介して高周波信号をアンテナ155に供給する場合、端子P1は入力端子となり、端子P2は出力端子となる。アンテナ155が受信した高周波信号がフィルタ装置100を介して給電回路RF1側の回路に伝達される場合、端子P1は出力端子となり、端子P2は入力端子となる。フィルタ装置100は、接地電極を有さず、配線パターンの影響を考慮する必要がなく、各機器への実装を容易にすることができる。
【0016】
フィルタ装置100は、図1に示すようにインダクタL1、キャパシタC1、インダクタL2、キャパシタC2を含む。LC直列共振器RC1は、インダクタL1とキャパシタC1とが直列接続されることによって形成されるLC直列共振器である。LC直列共振器RC2は、インダクタL2とキャパシタC2とが直列接続されることによって形成されるLC直列共振器である。
【0017】
LC直列共振器RC1とLC直列共振器RC2とは、並列に接続される。LC並列共振器RC3は、LC直列共振器RC1とLC直列共振器RC2とが並列接続されることによって形成されるLC並列共振器である。LC直列共振器RC1、LC直列共振器RC2、およびLC並列共振器RC3は、端子P1と端子P2との間に配置される。
【0018】
図2は、実施の形態1におけるフィルタ装置100のリアクタンス特性の一例を示す図である。図2において、横軸は周波数、縦軸はリアクタンスである。図3は、実施の形態1におけるフィルタ装置100の挿入損失の一例を示す図である。図3において、横軸は周波数、縦軸は挿入損失である。
【0019】
図2において、実施の形態1のフィルタ装置100のリアクタンス特性が線Ln1で示され、比較対象のフィルタ装置のリアクタンス特性が線Ln2で示されている。なお、比較対象のフィルタ装置は、図示していないが、インダクタL1とキャパシタC1とで構成されるLC直列共振器に対してインダクタL2が並列接続された構成である。
【0020】
具体的に、フィルタ装置100は、インダクタL1を1.4nH、インダクタL2を3.98nH、キャパシタC1を0.6pF、キャパシタC2を1.1pFとしとしてシミュレーションを行った。比較対象のフィルタ装置は、インダクタL1を2.6nH、インダクタL2を3.98nH、キャパシタC1を0.32pFとしてシミュレーションを行った。
【0021】
図2の線Ln2に示すように、比較対象のフィルタ装置は、通過帯域(f1帯)の直列共振周波数F1は、5.5GHz、減衰帯域(f3帯)の並列共振周波数F3は3.5GHzとなる。しかしながら、比較対象のフィルタ装置では、並列共振周波数F3よりも低い周波数においてリアクタンスを0とすることができない。
【0022】
それに対し、フィルタ装置100は、線Ln1のように、通過帯域(f1帯)の直列共振周波数F1は、5.5GHz、通過帯域(f2帯)の直列共振周波数F2は、2.4GHz、減衰帯域(f3帯)の並列共振周波数F3は3.5GHzとなる。このように、フィルタ装置100では、並列共振周波数F3よりも低い周波数F2においてリアクタンスを0とすることができる。
【0023】
図3において、実施の形態1のフィルタ装置100の挿入損失が線Ln3で示され、比較対象のフィルタ装置の挿入損失が線Ln4で示されている。図3に示すように、周波数F2における挿入損失は、比較対象のフィルタ装置における点aの値からフィルタ装置100の点bの値へと信号のロスが減少していることが分かる。このように、フィルタ装置100では、並列共振周波数F3よりも低い周波数F2において信号のロスを低減することができる。
【0024】
フィルタ装置100は、直列共振周波数F1と直列共振周波数F2とを共振周波数として放射可能なアンテナ装置1000に設けられている。これにより、アンテナ装置1000は、通過帯域(f1帯)、および通過帯域(f2帯)の信号を適切に送受信することができる。
【0025】
[実施の形態2]
<フィルタ装置の基本構成>
図4は、実施の形態2におけるフィルタ装置110の回路図および等価回路図である。図4(A)に示す回路図のように、実施の形態2のフィルタ装置110は、インダクタL1とインダクタL2とが互いに磁気結合をしている点以外の構成は、実施の形態1のフィルタ装置100と同じである。フィルタ装置110は、インダクタL1とインダクタL2との間に、相互インダクタンスMが発生する。フィルタ装置110は、インダクタL1とインダクタL2とを構成するコイルの巻き方向が逆である加極性の回路である。
【0026】
図4(B)に示す等価回路図は、図4(A)に示すフィルタ装置110の回路の等価回路図を示している。図4(B)においては、経路上に相互インダクタンス+M、相互インダクタンス-Mがそれぞれ示されている。
【0027】
図5は、実施の形態2におけるフィルタ装置110のリアクタンス特性の一例を示す図である。図5において、横軸は周波数、縦軸はリアクタンスである。図6は、実施の形態2におけるフィルタ装置110の挿入損失の一例を示す図である。図6において、横軸は周波数、縦軸は挿入損失である。図7は、図6に示す領域Rg1の縦軸拡大図である。
【0028】
図5において、実施の形態1の磁気結合なしのフィルタ装置100のリアクタンス特性が線Ln5で示され、実施の形態2の磁気結合ありのフィルタ装置110のリアクタンス特性が線Ln6で示され、比較対象のフィルタ装置のリアクタンス特性が線Ln7で示されている。フィルタ装置110は、磁気結合により相互インダクタンスMが発生する。
【0029】
具体的に、実施の形態1の磁気結合なしのフィルタ装置100は、インダクタL1を1.4nH、インダクタL2を3.98nH、キャパシタC1を0.6pF、キャパシタC2を1.1pFとしとしてシミュレーションを行った。実施の形態2の磁気結合ありのフィルタ装置110は、インダクタL1を3.1nH、インダクタL2を1.0nH、キャパシタC1を0.4pF、キャパシタC2を3.8pF、結合係数kを0.5、相互インダクタンスMを0.88nHとしてシミュレーションを行った。比較対象のフィルタ装置は、インダクタL1を2.6nH、インダクタL2を3.98nH、キャパシタC1を0.32pFとしてシミュレーションを行った。
【0030】
図5の線Ln7に示すように、比較対象のフィルタ装置は、通過帯域(f1帯)の直列共振周波数F1は、5.5GHz、減衰帯域(f3帯)の並列共振周波数F3は3.5GHzとなる。しかしながら、比較対象のフィルタ装置では、並列共振周波数F3よりも低い周波数においてリアクタンスを0とすることができない。
【0031】
それに対し、フィルタ装置100、およびフィルタ装置110では、線Ln5、線Ln6に示すように、通過帯域(f1帯)の直列共振周波数F1は5.5GHz、通過帯域(f2帯)の直列共振周波数F2は2.4GHz、減衰帯域(f3帯)の並列共振周波数F3は3.5GHzとなる。このように、フィルタ装置100、およびフィルタ装置110では、並列共振周波数F3よりも低い周波数F2においてリアクタンスを0とすることができる。
【0032】
図6において、実施の形態1のフィルタ装置100の挿入損失が線Ln8で示され、実施の形態2のフィルタ装置110の挿入損失が線Ln9で示され、比較対象のフィルタ装置の挿入損失が線Ln10で示されている。図6に示すように、フィルタ装置100、およびフィルタ装置110は、直列共振周波数F2を持つことで比較対象のフィルタ装置に比べて直列共振周波数F2付近での挿入損失が抑制することができる。すなわち、フィルタ装置100、およびフィルタ装置110は、比較対象のフィルタ装置に比べて並列共振周波数F3の近傍において減衰特性が急峻に変化する狭帯域なフィルタ装置を実現することができる。
【0033】
図7では、図6に示す領域Rg1の縦軸(挿入損失)方向が拡大された波形が示されている。各線Ln8、Ln9の違いをわかりやすくするため、図における横軸(周波数)方向の比率は、図と同様であり、縦軸(挿入損失)方向の比率のみ拡大されている。
【0034】
図7に示すように、フィルタ装置110の線Ln9は、フィルタ装置100の線Ln8よりも並列共振周波数F3の近傍において減衰特性が急峻に変化している。このように、フィルタ装置110は、相互インダクタンスMが発生することにより、磁気結合なしのフィルタ装置100よりも直列共振周波数F1の通過帯域(f1帯)周辺の広帯域d2において信号のロスを低下することができるとともに、直列共振周波数F2の通過帯域(f2帯)周辺の広帯域d1において信号のロスを低下することができる。
【0035】
次に、並列共振周波数F3における挿入損失が同等となるL値C値の組み合わせで再度比較を行なった場合について説明する。図8図10は、上記の図5図7と比較し、磁気結合なしのフィルタ装置100の減衰帯域のリアクタンス、挿入損失が、磁気結合ありのフィルタ装置110の減衰帯域のリアクタンス、挿入損失と同水準となるようにインダクタL1の値を小さくした図である。
【0036】
図8は、実施の形態2におけるフィルタ装置110のリアクタンス特性の一例を示す図である。図8において、横軸は周波数、縦軸はリアクタンスである。図9は、実施の形態2におけるフィルタ装置110の挿入損失の一例を示す図である。図9において、横軸は周波数、縦軸は挿入損失である。図10は、図9に示す領域Rg2の縦軸拡大図である。
【0037】
図8において、磁気結合なしのフィルタ装置100のリアクタンス特性が線Ln11で示され、実施の形態2の磁気結合ありのフィルタ装置110のリアクタンス特性が線Ln12で示されている。
【0038】
具体的に、フィルタ装置100は、インダクタL1を0.8nH、インダクタL2を2.3nH、キャパシタC1を1.1pF、キャパシタC2を1.8pFとしとしてシミュレーションを行った。フィルタ装置110は、インダクタL1を3.1nH、インダクタL2を1.0nH、キャパシタC1を0.4pF、キャパシタC2を3.8pF、結合係数kを0.5、相互インダクタンスMを0.88nHとしてシミュレーションを行った。
【0039】
図8の線Ln11、線Ln12に示すように、フィルタ装置100、およびフィルタ装置110は、通過帯域(f1帯)の直列共振周波数F1は5.5GHz、通過帯域(f2帯)の直列共振周波数F2は2.4GHz、減衰帯域(f3帯)の並列共振周波数F3は3.5GHzとなる。
【0040】
図9において、フィルタ装置100の挿入損失が線Ln13で示され、実施の形態2のフィルタ装置110の挿入損失が線Ln14で示されている。図9に示すように、フィルタ装置100、およびフィルタ装置110は、並列共振周波数F3のリアクタンスが点cのように同水準となっている。
【0041】
図10では、図9に示す領域Rg2の縦軸(挿入損失)方向が拡大された波形が示されている。各線Ln13、Ln14の違いをわかりやすくするため、図10における横軸(周波数)方向の比率は、図9と同様であり、縦軸(挿入損失)方向の比率のみ拡大されている。
【0042】
図10に示すように、フィルタ装置110の線Ln14は、フィルタ装置100の線Ln13よりも並列共振周波数F3の近傍において減衰特性が急峻に変化している。これにより、挿入損失が同水準である場合においても、磁気結合させることによって、フィルタ装置110は、フィルタ装置100よりも直列共振周波数F1の通過帯域(f1帯)周辺の広帯域d2において信号のロスを低下することができるとともに、直列共振周波数F2の通過帯域(f2帯)周辺の広帯域d1において信号のロスを低下することができる。
【0043】
[実施の形態2の変形例1]
実施の形態2の変形例1では、実施の形態2と比較し、並列共振周波数F3に近い周波数帯で直列共振周波数F1の通過帯域(f1帯)を設定する必要が無い場合について説明する。
【0044】
図11は、実施の形態2の変形例1におけるフィルタ装置のリアクタンス特性の一例を示す図である。図11において、横軸は周波数、縦軸はリアクタンスである。図12は、実施の形態2の変形例1におけるフィルタ装置の挿入損失の一例を示す図である。図12において、横軸は周波数、縦軸は挿入損失である。図13は、図12に示す領域Rg3の縦軸拡大図である。ここで、図11図13は、上記の図5図7と比較し、インダクタL1を小さくすることにより直列共振周波数F1の通過帯域(f1帯)を極めて高い周波数に設定した図である。
【0045】
図11において、実施の形態2のフィルタ装置110のリアクタンス特性が線Ln15で示され、実施の形態2の変形例1のフィルタ装置のリアクタンス特性が線Ln16で示されている。
【0046】
具体的に、フィルタ装置110は、インダクタL1を3.1nH、インダクタL2を1.0nH、キャパシタC1を0.4pF、キャパシタC2を3.8pF、結合係数kを0.5としてシミュレーションを行った。変形例1のフィルタ装置は、インダクタL1を0.01nH、インダクタL2を1.0nH、キャパシタC1を4.6pF、キャパシタC2を3.8pF、結合係数kを0.0としとしてシミュレーションを行った。
【0047】
図11の線Ln16に示すように、変形例1のフィルタ装置は、通過帯域(f1帯)の直列共振周波数F1は、23.5GHz、通過帯域(f2帯)の直列共振周波数F2は、2.4GHz、減衰帯域(f3帯)の並列共振周波数F3は3.5GHzとなる。このように、減衰帯域(f3帯)の高い側の近くで通過帯域を設定する必要がない場合、インダクタの値を小さくすることにより、直列共振周波数F2、並列共振周波数F3を同じにしつつ直列共振周波数F1の周波数のみを変えることができる。
【0048】
図12において、フィルタ装置110の挿入損失が線Ln17で示され、変形例1のフィルタ装置の挿入損失が線Ln18で示されている。図12に示す変形例1のフィルタ装置は、直列共振周波数F1が極めて高い周波数に設定されている。
【0049】
図13では、図12に示す領域Rg3の縦軸(挿入損失)方向が拡大された波形が示されている。各線Ln17、Ln18の違いをわかりやすくするため、図13における横軸(周波数)方向の比率は、図12と同様であり、縦軸(挿入損失)方向の比率のみ拡大されている。
【0050】
図13に示すように、変形例1のフィルタ装置の線Ln18は、フィルタ装置110の線Ln17よりも並列共振周波数F3に対して低い側である直列共振周波数F2の通過帯域(f2帯)周辺の広帯域d1において信号のロスが少なくなっている。このように、変形例1のフィルタ装置によれば、減衰帯域(f3帯)の高い側の近くで通過帯域を設定する必要がない場合に、他方側(たとえば、低い側)で信号のロスを低下させることができる。
【0051】
[実施の形態2の変形例2]
<フィルタ装置の基本構成>
図14は、実施の形態2の変形例2におけるフィルタ装置150の回路図である。図14に示す回路図のように、実施の形態2の変形例2のフィルタ装置150は、インダクタL1とインダクタL2とが互いに磁気結合をし、インダクタL1とインダクタL2との間に、相互インダクタンスMが発生する。フィルタ装置150は、インダクタL1とインダクタL2とを構成するコイルの巻き方向が同じである減極性の回路である。
【0052】
変形例2のフィルタ装置150における等価回路図は、図示を省略するが、図4(B)の経路上に示される相互インダクタンス+Mを-M、相互インダクタンス-Mを+Mとした図となる。
【0053】
図15は、実施の形態2の変形例2におけるフィルタ装置150のリアクタンス特性の一例を示す図である。図15において、横軸は周波数、縦軸はリアクタンスである。図16は、実施の形態2の変形例2におけるフィルタ装置150の挿入損失の一例を示す図である。図16において、横軸は周波数、縦軸は挿入損失である。図17は、図16に示す領域Rg5の縦軸拡大図である。
【0054】
図15において、実施の形態2の加極性のフィルタ装置110のリアクタンス特性が線Ln23で示され、実施の形態2の変形例2の減極性のフィルタ装置150のリアクタンス特性が線Ln24で示されている。
【0055】
具体的に、フィルタ装置110は、インダクタL1を3.1nH、インダクタL2を1.0nH、キャパシタC1を0.4pF、キャパシタC2を3.8pF、結合係数kを0.5としてシミュレーションを行った。変形例2のフィルタ装置150は、インダクタL1を3.1nH、インダクタL2を0.4nH、キャパシタC1を1.3pF、キャパシタC2を2.9pF、結合係数kを0.5としてシミュレーションを行った。
【0056】
図15に示すように、フィルタ装置110、および変形例2のフィルタ装置150は、線Ln23、線Ln24のように、通過帯域(f1帯)の直列共振周波数F1は、5.5GHz、通過帯域(f2帯)の直列共振周波数F2は、2.4GHz、減衰帯域(f3帯)の並列共振周波数F3は3.5GHzとなる。このように、フィルタ装置110、および変形例2のフィルタ装置150では、並列共振周波数F3よりも低い周波数F2においてリアクタンスを0とすることができる。
【0057】
図16において、フィルタ装置110の挿入損失が線Ln25で示され、変形例2のフィルタ装置150の挿入損失が線Ln26で示されている。図16の点aから点bへの矢印に示すように、加極性のフィルタ装置110の方が、変形例2の減極性のフィルタ装置150よりも並列共振周波数F3の近傍において減衰特性が急峻に変化する狭帯域なフィルタ装置となっている。
【0058】
図17では、図16に示す領域Rg5の縦軸(挿入損失)方向が拡大された波形が示されている。各線Ln25、Ln26の違いをわかりやすくするため、図17における横軸(周波数)方向の比率は、図16と同様であり、縦軸(挿入損失)方向の比率のみ拡大されている。
【0059】
図17に示すように、加極性のフィルタ装置110の線Ln25は、変形例2の減極性のフィルタ装置150の線Ln26よりも並列共振周波数F3の近傍の帯域d1において減衰特性が急峻に変化している。しかしながら、変形例2のフィルタ装置150は、フィルタ装置110のと比較して並列共振周波数F3の近傍において幅広い減衰特性を有するともいえる。
【0060】
図17に示すように、変形例2の減極性のフィルタ装置150の線Ln26は、加極性のフィルタ装置110の線Ln25よりも並列共振周波数F3から離れた帯域(F1よりも高い帯域、あるいはF2よりも低い帯域)において信号のロスが低下している。このように、同じ構造のフィルタ装置であっても加極性であるか減極性であるかの違いにより特性に差が生じる。回路の設計者は、求める特性を考慮して加極性または減極性の回路を設計することができる。
【0061】
[その他の変形例]
図18は、その他の変形例におけるアンテナ装置2000の構成を示す図である。アンテナ装置2000は、給電回路RF1と、フィルタ装置200と、アンテナ155とを含む。アンテナ装置2000は、実施の形態1のアンテナ装置1000と比較し、フィルタ装置の構成が異なる。
【0062】
フィルタ装置200は、図18に示すようにインダクタL1、キャパシタC1、インダクタL2、キャパシタC2を含む。LC直列共振器RC1は、インダクタL1とキャパシタC1とが直列接続されることによって形成されるLC直列共振器である。LC直列共振器RC2は、キャパシタC2とインダクタL2とが直列接続されることによって形成されるLC直列共振器である。フィルタ装置200は、フィルタ装置100と比較し、インダクタL2とキャパシタC2との位置が入れ替わった構造である。なお、インダクタL1とキャパシタC1とが入れ替わった構造であってもよい。
【0063】
[実施の形態3]
図19は、実施の形態3のアンテナモジュール4000の構成を示す図である。アンテナモジュール4000は、アンテナ装置1000およびアンテナ装置3000を含む。アンテナ装置3000は、給電回路RF2とアンテナ165とを含む。アンテナモジュール4000は、たとえば、携帯電話、スマートフォンあるいはタブレットなどの携帯端末や、通信機能を備えたパーソナルコンピュータなどの通信装置に搭載される。
【0064】
アンテナ装置1000の構成は、実施の形態1の構成と同じであるので説明を省略する。アンテナ装置3000の給電回路RF2は、f3帯の周波数帯域の高周波信号をアンテナ165に供給する。アンテナ165は、給電回路RF2から供給されたf3帯の高周波信号を電波として、空気中に放射可能である。
【0065】
アンテナ装置1000において、同一のアンテナモジュール4000内に設けられているアンテナ装置3000から放射されるf3帯の高周波信号は、ノイズとなり得る。そのため、フィルタ装置100は、アンテナ装置1000においてノイズとなり得るf3帯の高周波信号を、並列共振による挿入損失を増大させることで取り除くために設けられている。
【0066】
アンテナ155およびアンテナ165は、同一の基板170に搭載されている。なお、図19では、アンテナ155およびアンテナ165は、同一の基板170に設けられているが、同一のアンテナモジュール4000内に設けられていれば、異なる基板に設けられていてもよい。
【0067】
アンテナモジュール4000では、アンテナ装置1000のフィルタ装置100によりアンテナ装置3000の影響を抑制することができる。このため、アンテナモジュール4000では、アンテナ装置1000とアンテナ装置3000とを近接して配置することができる。近接の目安としては、アンテナ装置3000の影響としてアンテナ装置1000の特性に変化がある場合を示す。
【0068】
図20は、実施の形態3のアンテナモジュール4000の外観図である。アンテナモジュール4000は、図20に示すようにアンテナ装置1000と、アンテナ装置3000とを備える。アンテナ装置1000は、モノポールアンテナであるアンテナ155と、フィルタ装置100と、給電回路RF1とを含む。アンテナ装置3000は、モノポールアンテナであるアンテナ165と、給電回路RF2とを含む。アンテナ155,165は、モノポールアンテナに限定されず、逆F型アンテナ、ループアンテナ、アレイアンテナなどであってもよい。アンテナ155はフィルタ装置100を介して給電回路RF1と接続する。アンテナ165は給電回路RF2と接続する。
【0069】
アンテナモジュール4000は、f1帯、f2帯、およびf3帯の電波を放射可能である。アンテナモジュール4000は、f1帯およびf2帯の電波を放射可能であるアンテナ装置1000と、f3帯の電波を放射可能であるアンテナ装置3000と、を備える。
【0070】
なお、上述したフィルタ装置は、インダクタL1、インダクタL2、キャパシタC1、キャパシタC2のみを考慮して設計されるものとして説明した。しかしながら、実際のフィルタ装置では、浮遊容量、寄生インダクタンスなどを加味して設計する必要がある。また、寄生インダクタンスをインダクタL1やインダクタL2として使用したり、インダクタ素子自身が持つ寄生容量成分をキャパシタとして使用したり、キャパシタ素子が持つ寄生インダクタンス成分をインダクタとして使用したりすることも可能である。
【0071】
上述したフィルタ装置は、端子P1および端子P2の位置にインピーダンスの整合を取るための整合回路、経路を結合して切り換えるためのスイッチを設けてもよい。
【0072】
上述したフィルタ装置は、一体化された部品として構成されるようにしてもよい。これにより、フィルタ装置は、配線パターンの影響を考慮する必要がなく、各機器への実装を容易にすることができる。
【0073】
[実施の形態4]
実施の形態1では、図1に示すように、インダクタL1とキャパシタC1とが直列接続されることによって形成されるLC直列共振器RC1と、インダクタL2とキャパシタC2とが直列接続されることによって形成されるLC直列共振器RC2と、が並列接続されることによって形成されるLC並列共振器について説明した。実施の形態2では、実施の形態1のフィルタ装置100において図4(A)に示すように、インダクタL1とインダクタL2とが互いに磁気結合するフィルタ装置110について説明した。実施の形態4では、実施の形態2のフィルタ装置110に対して並列にインダクタを設けたフィルタ装置300について説明する。
【0074】
図21は、実施の形態4におけるフィルタ装置300の回路図である。フィルタ装置300は、図21に示すようにインダクタL1、インダクタL2、インダクタL3、キャパシタC1、キャパシタC2を含む。インダクタL1とインダクタL2とは、互いに磁気結合をしているが、インダクタL3(第3インダクタ)は、インダクタL1およびインダクタL2と磁気結合していない。インダクタL3を追加する前のフィルタ装置は、実施の形態2のフィルタ装置110に対応する。なお、実施の形態4のフィルタ装置300において、実施の形態1のフィルタ装置100および実施の形態2のフィルタ装置110と同じ構成については同じ符号を付して詳細な説明を繰り返さない。また、実施の形態1のアンテナ装置1000において、フィルタ装置100の代わりに実施の形態4のフィルタ装置300を用いてもよい。
【0075】
図22は、インダクタL3を追加する前後におけるリアクタンス特性の変化の一例を示す図である。図22において、横軸は周波数、縦軸はリアクタンスである。図22(a)のグラフは、インダクタL3を追加する前の実施の形態2のフィルタ装置110のリアクタンス特性の一例である。図22(b)のグラフは、インダクタL3を追加した後の実施の形態4のフィルタ装置300のリアクタンス特性の一例である。
【0076】
図23は、インダクタL3を追加する前後における挿入損失の変化の一例を示す図である。図23において、横軸は周波数、縦軸は挿入損失である。図23(a)のグラフは、インダクタL3を追加する前の実施の形態2のフィルタ装置110の挿入損失の一例である。図23(b)のグラフは、インダクタL3を追加した後の実施の形態4のフィルタ装置300の挿入損失の一例である。
【0077】
図22において、実施の形態2のフィルタ装置110のリアクタンス特性が線Ln31で示され、実施の形態4のフィルタ装置300のリアクタンス特性が線Ln32で示されている。図23において、実施の形態2のフィルタ装置110の挿入損失が線Ln33で示され、実施の形態4のフィルタ装置300の挿入損失が線Ln34で示されている。具体的に、フィルタ装置110は、インダクタL1を3.1nH、インダクタL2を1.0nH、キャパシタC1を0.4pF、キャパシタC2を3.8pF、結合係数kを0.5としてシミュレーションを行った。フィルタ装置300は、インダクタL1を3.1nH、インダクタL2を1.0nH、インダクタL3を1.6nH、キャパシタC1を0.4pF、キャパシタC2を3.8pF、結合係数kを0.5としてシミュレーションを行った。つまり、フィルタ装置300は、インダクタL3の値以外は、フィルタ装置110の値と同じである。
【0078】
図22および図23に示すように、フィルタ装置300は、インダクタL3を並列接続することで、新たな並列共振周波数F4をC性領域に追加することができる。ここで、フィルタ装置300は、フィルタ装置110と比較して並列共振周波数F3がF3’へとグラフの高周波側へシフトしている。このように、フィルタ装置110に並列に磁界結合しないインダクタL3を加えることで、並列共振周波数F3を高周波側へシフトすることが可能となる。一方、このような高周波側へのシフトを抑制しながら新たな並列共振周波数F4を追加するには、各数値を調整すればよい。各数値の調整について、図24図25を用いて説明する。
【0079】
図24は、インダクタL3を追加する前後におけるリアクタンス特性の変化の一例を示す図である。図24において、横軸は周波数、縦軸はリアクタンスである。図24(a)のグラフは、インダクタL3を追加する前の実施の形態2のフィルタ装置110のリアクタンス特性の一例である。図24(b)のグラフは、インダクタL3を追加した後の実施の形態4のフィルタ装置300のリアクタンス特性の一例である。
【0080】
図25は、インダクタL3を追加する前後における挿入損失の変化の一例を示す図である。図25において、横軸は周波数、縦軸は挿入損失である。図25(a)のグラフは、インダクタL3を追加する前の実施の形態2のフィルタ装置110の挿入損失の一例である。図25(b)のグラフは、インダクタL3を追加した後の実施の形態4のフィルタ装置300の挿入損失の一例である。
【0081】
図24において、実施の形態2のフィルタ装置110のリアクタンス特性が線Ln31で示され、実施の形態4のフィルタ装置300のリアクタンス特性が線Ln35で示されている。図25において、実施の形態2のフィルタ装置110の挿入損失が線Ln33で示され、実施の形態4のフィルタ装置300の挿入損失が線Ln36で示されている。具体的に、フィルタ装置110は、インダクタL1を3.1nH、インダクタL2を1.0nH、キャパシタC1を0.4pF、キャパシタC2を3.8pF、結合係数kを0.5としてシミュレーションを行った。フィルタ装置300は、インダクタL1を1.4nH、インダクタL2を1.0nH、インダクタL3を1.5nH、キャパシタC1を0.86pF、キャパシタC2を3.8pF、結合係数kを0.5としてシミュレーションを行った。つまり、フィルタ装置300は、インダクタL1、インダクタL3、およびキャパシタCの値をフィルタ装置110の値から変更している。
【0082】
図24および図25に示すように、フィルタ装置300は、各数値を調整することにより、通過帯域(f1帯)の直列共振周波数F1、通過帯域(f2帯)の直列共振周波数F2、減衰帯域(f3帯)の並列共振周波数F3をフィルタ装置110の周波数と同様にすることができるとともに、減衰帯域(f4帯)の並列共振周波数F4を追加することができる。このように、フィルタ装置300は、インダクタL3を並列に設けることによりC性領域に減衰帯域を増やすことができるとともに、各数値を一部調整することによって、減衰帯域を増やしたとしても目的に応じたトラップフィルタとすることができる。
【0083】
[実施の形態5]
実施の形態1では、図1に示すように、インダクタL1とキャパシタC1とが直列接続されることによって形成されるLC直列共振器RC1と、インダクタL2とキャパシタC2とが直列接続されることによって形成されるLC直列共振器RC2と、が並列接続されることによって形成されるLC並列共振器について説明した。実施の形態2では、実施の形態1のフィルタ装置100において図4(A)に示すように、インダクタL1とインダクタL2とが互いに磁気結合するフィルタ装置110について説明した。実施の形態5では、実施の形態2のフィルタ装置110に対して並列にキャパシタを設けたフィルタ装置400について説明する。
【0084】
図26は、実施の形態5におけるフィルタ装置400の回路図である。フィルタ装置400は、図26に示すようにインダクタL1、インダクタL2、キャパシタC1、キャパシタC2、キャパシタC3(第3キャパシタ)を含む。インダクタL1とインダクタL2とは、互いに磁気結合をしている。キャパシタC3を追加する前のフィルタ装置は、実施の形態2のフィルタ装置110に対応する。なお、実施の形態5のフィルタ装置400において、実施の形態1のフィルタ装置100および実施の形態2のフィルタ装置110と同じ構成については同じ符号を付して詳細な説明を繰り返さない。また、実施の形態1のアンテナ装置1000において、フィルタ装置100の代わりに実施の形態5のフィルタ装置400を用いてもよい。
【0085】
図27は、キャパシタC3を追加する前後におけるリアクタンス特性の変化の一例を示す図である。図27において、横軸は周波数、縦軸はリアクタンスである。図27(a)のグラフは、キャパシタC3を追加する前の実施の形態2のフィルタ装置110のリアクタンス特性の一例である。図27(b)のグラフは、キャパシタC3を追加した後の実施の形態5のフィルタ装置400のリアクタンス特性の一例である。
【0086】
図28は、キャパシタC3を追加する前後における挿入損失の変化の一例を示す図である。図28において、横軸は周波数、縦軸は挿入損失である。図28(a)のグラフは、キャパシタC3を追加する前の実施の形態2のフィルタ装置110の挿入損失の一例である。図28(b)のグラフは、キャパシタC3を追加した後の実施の形態5のフィルタ装置400の挿入損失の一例である。
【0087】
図27において、実施の形態2のフィルタ装置110のリアクタンス特性が線Ln41で示され、実施の形態5のフィルタ装置400のリアクタンス特性が線Ln42で示されている。図28において、実施の形態2のフィルタ装置110の挿入損失が線Ln43で示され、実施の形態5のフィルタ装置400の挿入損失が線Ln44で示されている。具体的に、フィルタ装置110は、インダクタL1を3.1nH、インダクタL2を1.0nH、キャパシタC1を0.4pF、キャパシタC2を3.8pF、結合係数kを0.5としてシミュレーションを行った。フィルタ装置400は、インダクタL1を3.1nH、インダクタL2を1.0nH、キャパシタC1を0.4pF、キャパシタC2を3.8pF、キャパシタC3を1.55pF、結合係数kを0.5としてシミュレーションを行った。つまり、フィルタ装置400は、キャパシタC3の値以外は、フィルタ装置110の値と同じである。
【0088】
図27および図28に示すように、フィルタ装置400は、キャパシタC3を並列接続することで、新たな並列共振周波数F5をL性領域に追加することができる。ここで、フィルタ装置400は、フィルタ装置110と比較して並列共振周波数F3がF3’’へとグラフの低周波側へシフトしている。このように、フィルタ装置110に並列にキャパシタC3を追加することで、並列共振周波数F3を低周波側へシフトさせることができる。一方、このような並列共振周波数F3のシフトを抑制しながら新たな並列共振周波数F5を追加するには、各数値を調整すればよい。各数値の調整について、図29図30を用いて説明する。
【0089】
図29は、キャパシタC3を追加する前後におけるリアクタンス特性の変化の一例を示す図である。図29において、横軸は周波数、縦軸はリアクタンスである。図29の上側のグラフは、キャパシタC3を追加する前の実施の形態2のフィルタ装置110のリアクタンス特性の一例である。図29の下側のグラフは、キャパシタC3を追加した後の実施の形態4のフィルタ装置400のリアクタンス特性の一例である。
【0090】
図30は、キャパシタC3を追加する前後における挿入損失の変化の一例を示す図である。図30において、横軸は周波数、縦軸は挿入損失である。図30の上側のグラフは、キャパシタC3を追加する前の実施の形態2のフィルタ装置110の挿入損失の一例である。図30の下側のグラフは、キャパシタC3を追加した後の実施の形態5のフィルタ装置400の挿入損失の一例である。
【0091】
図29において、実施の形態2のフィルタ装置110のリアクタンス特性が線Ln41で示され、実施の形態5のフィルタ装置400のリアクタンス特性が線Ln45で示されている。図30において、実施の形態2のフィルタ装置110の挿入損失が線Ln43で示され、実施の形態5のフィルタ装置400の挿入損失が線Ln46で示されている。具体的に、フィルタ装置110は、インダクタL1を3.1nH、インダクタL2を1.0nH、キャパシタC1を0.4pF、キャパシタC2を3.8pF、結合係数kを0.5としてシミュレーションを行った。フィルタ装置400は、インダクタL1を3.1nH、インダクタL2を0.38nH、キャパシタC1を0.4pF、キャパシタC2を10pF、キャパシタC3を1.6pF、結合係数kを0.5としてシミュレーションを行った。つまり、フィルタ装置400は、インダクタL2、キャパシタC2、およびキャパシタC3の値をフィルタ装置110の値から変更している。
【0092】
図29および図30に示すように、フィルタ装置400は、各数値を調整することにより、通過帯域(f1帯)の直列共振周波数F1、通過帯域(f2帯)の直列共振周波数F2、減衰帯域(f3帯)の並列共振周波数F3をフィルタ装置110の周波数と同様にすることができるとともに、減衰帯域(f5帯)の並列共振周波数F5を追加することができる。このように、フィルタ装置400は、キャパシタC3を並列に設けることによりL性領域に減衰帯域を増やすことができるとともに、各数値を一部調整することによって、減衰帯域を増やしたとしても目的に応じたトラップフィルタとすることができる。
【0093】
なお、フィルタ装置110には、インダクタL3を並列に追加するとともに、さらにキャパシタC3をインダクタL3に対して並列に接続する構成としてもよい。このような場合、C性領域およびL性領域において減衰帯域を追加することができる。また、フィルタ装置110にインダクタL3やキャパシタC3を組み込んだ一体型としてもよいし、フィルタ装置110とは別のインダクタ素子やキャパシタ素子を用いて、フィルタ装置110の並列共振周波数の調整を行ってもよい。フィルタ装置110と分けることで、アンテナ装置1000に組み込んだ時の個体ごとの特徴を反映した周波数の調整が容易となる。
【0094】
今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0095】
100,110,150,200 フィルタ装置、155,165 アンテナ、170 基板、1000,2000,3000 アンテナ装置、4000 アンテナモジュール、C1,C2 キャパシタ、L1,L2 インダクタ、P1,P2 端子、RC1,RC2 直列共振器、RC3 並列共振器、RF1,RF2 給電回路。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30