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特許7622879前処理装置及びこれを備えた検査システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-20
(45)【発行日】2025-01-28
(54)【発明の名称】前処理装置及びこれを備えた検査システム
(51)【国際特許分類】
   G01N 35/04 20060101AFI20250121BHJP
   G01N 35/10 20060101ALI20250121BHJP
   G01N 35/00 20060101ALI20250121BHJP
   G01N 35/02 20060101ALI20250121BHJP
【FI】
G01N35/04 H
G01N35/10 B
G01N35/00 A
G01N35/02 D
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2023567523
(86)(22)【出願日】2022-06-28
(86)【国際出願番号】 JP2022025749
(87)【国際公開番号】W WO2023112362
(87)【国際公開日】2023-06-22
【審査請求日】2024-04-11
(31)【優先権主張番号】P 2021203393
(32)【優先日】2021-12-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100141852
【弁理士】
【氏名又は名称】吉本 力
(72)【発明者】
【氏名】花房 信博
(72)【発明者】
【氏名】篠山 智生
【審査官】黒田 浩一
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-213466(JP,A)
【文献】特開2020-134381(JP,A)
【文献】国際公開第2020/075803(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 35/04
G01N 35/10
G01N 35/00
G01N 35/02
C12M 1/00
C12Q 1/686
G01N 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれ液体試料を収容する複数の試料容器から、混合容器内に液体試料を分注して混合することができる前処理装置であって、
試料容器を複数保持する試料容器保持部、及び、混合容器を複数保持する混合容器保持部が形成された本体と、
前記試料容器保持部に対して着脱可能であり、所定数の試料容器を一体的に保持可能な試料容器用ラックと、
前記混合容器保持部に対して着脱可能であり、前記所定数の混合容器を一体的に保持可能な混合容器用ラックとを備え、
前記試料容器用ラックに保持される前記所定数の試料容器の配列と、前記混合容器用ラックに保持される前記所定数の混合容器の配列とが一致している、前処理装置。
【請求項2】
前記試料容器用ラックは、一直線上に前記所定数の試料容器を並べて保持可能であり、
前記混合容器用ラックは、一直線上に前記所定数の混合容器を並べて保持可能である、請求項1に記載の前処理装置。
【請求項3】
前記試料容器保持部に装着される前記試料容器用ラックにおいて前記所定数の試料容器が並ぶ直線上に、前記混合容器保持部に装着される前記混合容器用ラックにおける1つの混合容器が位置する、請求項2に記載の前処理装置。
【請求項4】
前記試料容器保持部には、前記所定数の試料容器用ラックを着脱可能であり、
前記試料容器保持部に装着される各試料容器用ラックにおいて前記所定数の試料容器が並ぶ各直線上に、前記混合容器保持部に装着される前記混合容器用ラックにおける各混合容器が位置する、請求項3に記載の前処理装置。
【請求項5】
前記試料容器保持部には、前記所定数の試料容器用ラックに加えて、追加の試料容器用ラックを着脱可能であり、
前記試料容器保持部に装着される各試料容器用ラックにおいて前記所定数の試料容器が並ぶ各直線上に、前記試料容器保持部に装着される前記追加の試料容器用ラックにおける各試料容器が位置する、請求項4に記載の前処理装置。
【請求項6】
前記所定数の試料容器用ラックのそれぞれに対して着脱可能なハンドル部材をさらに備え、
前記所定数の試料容器用ラックは、前記ハンドル部材を取り外した状態で前記試料容器保持部に着脱可能である、請求項4に記載の前処理装置。
【請求項7】
請求項4~6のいずれか一項に記載の前処理装置と、
前記混合容器用ラックにおける各混合容器に関する情報と、各混合容器と同一の前記直線上に位置する各試料容器に関する情報とを対応付けて、検体情報として記憶する記憶部と、
前記検体情報を前記記憶部から読み出す検査装置とを備える、検査システム。
【請求項8】
前記検体情報の入力画面が表示される表示部をさらに備え、
前記検体情報の入力画面には、前記混合容器用ラックにおける各混合容器に関する情報の入力領域と、各混合容器と同一の前記直線上に位置する各試料容器に関する情報の入力領域とが対応付けて表示される、請求項7に記載の検査システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、それぞれ液体試料を収容する複数の試料容器から、混合容器内に液体試料を分注して混合することができる前処理装置、及び、これを備えた検査システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、下記特許文献1で開示されるような遺伝子解析装置では、先端に分注チップが装着されたノズルを移動させることにより、液体の分注が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2007-175004号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
遺伝子解析装置などの検査装置の中には、それぞれ液体試料を収容する複数の試料容器から、混合容器内に液体試料を分注して混合することにより、いわゆるプール検査法を用いて検査を行うことができるものがある。この種の検査装置を用いて検査を行う場合には、前処理装置において予め複数の試料容器から混合容器内に液体試料が分注され、当該混合容器が検査装置にセットされる。
【0005】
検査装置では、混合容器内に混合された液体試料に対してPCR検査を行うことにより、その結果が陰性の場合には、混合された各試料容器内の液体試料がいずれも陰性であることを一度に確認することができる。したがって、検査の効率を向上することができるとともに、検査にかかるコストを低減することができる。
【0006】
一方、混合容器内に混合された液体試料に対してPCR検査を行った結果が陽性の場合には、混合される前の複数の試料容器を検査装置にセットし、各試料容器内の液体試料(検体)を個別に検査することにより、いずれの検体が陽性であったかを特定することができる。しかしながら、各試料容器を個別に検査装置にセットする作業は煩雑であり、その結果、検体を取り違えるおそれもある。
【0007】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、複数の試料容器又は混合容器の取り扱いが容易な前処理装置及びこれを備えた検査システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の態様は、それぞれ液体試料を収容する複数の試料容器から、混合容器内に液体試料を分注して混合することができる前処理装置であって、本体と、試料容器用ラックと、混合容器用ラックとを備える。前記本体には、試料容器を複数保持する試料容器保持部、及び、混合容器を複数保持する混合容器保持部が形成されている。前記試料容器用ラックは、前記試料容器保持部に対して着脱可能であり、所定数の試料容器を一体的に保持可能である。前記混合容器用ラックは、前記混合容器保持部に対して着脱可能であり、前記所定数の混合容器を一体的に保持可能である。前記試料容器用ラックに保持される前記所定数の試料容器の配列と、前記混合容器用ラックに保持される前記所定数の混合容器の配列とは一致している。
【0009】
本発明の第2の態様は、前記前処理装置と、記憶部と、検査装置とを備える、検査システムである。前記試料容器保持部には、前記所定数の試料容器用ラックを着脱可能であり、前記試料容器保持部に装着される各試料容器用ラックにおいて前記所定数の試料容器が並ぶ各直線上に、前記混合容器保持部に装着される前記混合容器用ラックにおける各混合容器が位置する。前記記憶部は、前記混合容器用ラックにおける各混合容器に関する情報と、各混合容器と同一の前記直線上に位置する各試料容器に関する情報とを対応付けて、検体情報として記憶する。前記検査装置は、前記検体情報を前記記憶部から読み出す。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、複数の試料容器又は混合容器の取り扱いが容易な前処理装置及びこれを備えた検査システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本実施形態に係る検査システムの構成例を示すブロック図である。
図2】本実施形態に係る前処理装置の一部の構成例を示す分解斜視図である。
図3】テーブルの構成例を示す概略平面図である。
図4】前処理装置の内部構成を示す概略断面図である。
図5】コンテナの構成例を示す斜視図である。
図6】第1ラックの構成例を示す斜視図である。
図7】ハンドル部材の構成例を示す斜視図である。
図8】第2ラックの構成例を示す斜視図である。
図9】ユーザ端末の電気的構成の一例を示すブロック図である。
図10】ユーザ端末の表示部における表示画面の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
1.検査システムの概略構成
図1は、本実施形態に係る検査システム10の構成例を示すブロック図である。図1に示すように、検査システム10は、前処理装置12、検査装置14及びユーザ端末16を含む。
【0013】
前処理装置12は、液体を吸引及び吐出して分注動作と攪拌動作を行うことにより、当該液体に対して予め処理を施すための装置である。本実施形態では、分注動作を少なくとも1回以上実施することにより、一連の分注処理が実行される。前処理に使用される液体としては、液体試料又は液体試薬等を例示することができる。本実施形態における前処理装置12は、チップ40(図3参照)を介して液体の吸引及び吐出が可能である。
【0014】
検査装置14は、前処理装置12により前処理が施された後の液体に対して検査を行うための装置である。検査の一例としては、PCR(Polymerase Chain Reaction)検査を挙げることができるが、これに限られるものではない。検査装置14においても、前処理装置12と同様に、チップ40を介して液体の吸引及び吐出が可能である。
【0015】
ユーザ端末16は、少なくともCPU(Central Processing Unit)、外部と通信を行うための通信部及び不揮発性メモリ等を備える装置であって、デスクトップPC、ノート(ラップトップ)PC又はタブレットPC等である。
【0016】
前処理装置12、検査装置14及びユーザ端末16は、ネットワーク18を介して接続される。ここでのネットワーク18としては、LAN(Local Area Network)やインターネットなどがある。また、前処理装置12、検査装置14及びユーザ端末16は、直接接続されてもよい。
【0017】
2.前処理装置の全体構成
図2は、本実施形態に係る前処理装置12の一部の構成例を示す分解斜視図である。前処理装置12は、本体20及びテーブル21を備える。本体20は、幅方向(X方向)の長さが奥行き方向(Y方向)の長さよりも短い中空状の筐体により構成されている。本体20は、高さ方向(X方向及びY方向に直交するZ方向)の長さがX方向の長さよりも長い縦長形状を有している。また、テーブル21は、容器保持部22及び第1チップ保持部24を備える。テーブル21には、コンテナ23を着脱可能であり、当該コンテナ23に容器保持部22がセットされている。
【0018】
さらにまた、前処理装置12は、第2チップ保持部26を備える。第2チップ保持部26は、使用済のチップ40を保持するためのものである。図2では、第2チップ保持部26は、テーブル21から分離された状態で図示されているが、この第2チップ保持部26は、テーブル21の空間28に収容された状態で使用される。
【0019】
図2では、テーブル21は、本体20から分離された状態で図示されているが、このテーブル21は、本体20の空間30内に内蔵されている。さらに、空間30を区画する壁には、開口部32が設けられている。
【0020】
第2チップ保持部26については、開口部32を介して、テーブル21から取り外すこと及びテーブル21に取り付けることができる。また、上述したように、テーブル21は、本体20に内蔵されるため、第2チップ保持部26については、本体20から取り外すこと及び本体20に取り付けることができるともいえる。
【0021】
図3は、テーブル21の構成例を示す概略平面図である。図4は、前処理装置12の内部構成を示す概略断面図である。図3及び図4に示すように、容器保持部22は、前処理に使用される液体を収容する容器を複数保持する。また、容器保持部22は、試料容器保持部22a及び混合容器保持部22bを含む。すなわち、前処理装置12の本体20内には、試料容器保持部22a及び混合容器保持部22bが形成されている。
【0022】
試料容器保持部22aは、液体試料を収容する試料容器34を複数保持する。液体試料は、たとえば生体から採取される検体試料であり、唾液又は血液等を例示することができる。混合容器保持部22bは、複数の試料容器34内から分注される液体試料を混合するための混合容器36を複数保持する。第1チップ保持部24は、チップ40を複数保持する。分注動作の際には、第1チップ保持部24に保持されているチップ40が、チップ脱着部48b(図4参照)に装着される。混合容器36は、チップ40内に吸引された液体の吐出先の一例である。
【0023】
また、テーブル21には、カバー部材42が設けられる。このカバー部材42は、薄い板状の部材であって、テーブル21内の空間28を覆う。つまり、第2チップ保持部26がテーブル21に取り付けられている場合、カバー部材42は、その第2チップ保持部26を覆う。
【0024】
カバー部材42は、貫通孔42aを有する。また、カバー部材42には、貫通孔42aを通過しようとするチップ40を引っ掛けるための引っ掛け部42bが複数形成されている。引っ掛け部42bのY方向の幅は、チップ脱着部48bの下端部の外径よりも大きく、チップ40の上端部の外径よりも小さい。
【0025】
分注動作に使用された後のチップ(使用済チップ)40は、その上端面を引っ掛け部42bに引っ掛けるようにチップ脱着部48bを変位させることにより、チップ脱着部48bから取り外して第2チップ保持部26に保持することができる。チップ40は、分注動作の度に第1チップ保持部24からチップ脱着部48bに新たに装着され、使用後に第2チップ保持部26に保持される。第2チップ保持部26には、使用済のチップ40を複数保持することができる。
【0026】
本実施形態では、試料容器保持部22aに対して着脱可能な第1ラック25と、混合容器保持部22bに対して着脱可能な第2ラック27とが用いられる。第1ラック25は、所定数の試料容器34を一体的に保持可能な試料容器用ラックである。第2ラック27は、所定数の混合容器36を一体的に保持可能な混合容器用ラックである。第1ラック25が保持可能な試料容器34の数と、第2ラック27が保持可能な混合容器36の数は、一致している。試料容器34と混合容器36は、少なくとも外径が同一であってもよいし、同一でなくてもよいが、本実施形態では、有底円筒状の同一形状を有している。
【0027】
混合容器保持部22bには、1つの第2ラック27を装着することができる。これに対して、試料容器保持部22aには、複数の第1ラック25を装着することができる。具体的には、第2ラック27に保持可能な混合容器36の数と同数以上の第1ラック25を試料容器保持部22aに着脱できることが好ましい。
【0028】
本実施形態では、第2ラック27に保持可能な混合容器36の数と同数の第1ラック25aに加えて、1つの追加の第1ラック25bを試料容器保持部22aに着脱可能である。ただし、追加の第1ラック25bは、1つに限らず、2つ以上であってもよい。また、追加の第1ラック25bを設けず、第2ラック27に保持可能な混合容器36の数と同数の第1ラック25を試料容器保持部22aに着脱可能な構成であってもよい。
【0029】
各第1ラック25には、試料容器34を1つずつ収容するための開口部251が複数形成されている。この例では、4つの開口部251が一直線上に等間隔で並べて形成されている。これにより、各第1ラック25には、4つの試料容器34を一直線上に並べて保持することができる。ただし、各第1ラック25に保持可能な試料容器34の数は、4つに限らず、3つ以下であってもよいし、5つ以上であってもよい。また、各第1ラック25は、一直線上とは異なる配列で試料容器34を保持可能な構成であってもよい。
【0030】
一方、第2ラック27には、混合容器36を1つずつ収容するための開口部271が形成されている。この例では、4つの開口部271が一直線上に等間隔で並べて形成されている。これにより、第2ラック27には、4つの混合容器36を一直線上に並べて保持することができる。ただし、第2ラック27に保持可能な混合容器36の数は、4つに限らず、3つ以下であってもよいし、5つ以上であってもよい。また、第2ラック27は、一直線上とは異なる配列で混合容器36を保持可能な構成であってもよい。
【0031】
本実施形態では、第1ラック25の開口部251と第2ラック27の開口部271は同一形状であり、試料容器34及び混合容器36よりも若干大きい円形状に形成されている。また、第1ラック25における各開口部251間の間隔と、第2ラック27における各開口部271間の間隔とは、一致している。すなわち、第1ラック25における各開口部251の位置関係と、第2ラック27における各開口部271の位置関係とは、一致している。したがって、第1ラック25に保持される複数の試料容器34の配列と、第2ラック27に保持される複数の混合容器36の配列とが一致していると言える。なお、ここでの「一致」とは、「略一致」を意味しており、配列が一致していると言える程度の若干の配置の違い(ずれ)があったとしても、「一致」の概念に含まれるものとする。
【0032】
図3のように、第2ラック27を混合容器保持部22bに装着した状態では、第2ラック27に保持されている複数の混合容器36が、X方向に一直線上に並んでいる。これに対して、第1ラック25aを試料容器保持部22aに装着した状態では、第1ラック25aに保持されている複数の試料容器34が、Y方向に一直線上に並んでいる。また、各第1ラック25aにおいて複数の試料容器34が並ぶ直線上(Y方向の延長線上)に、第2ラック27における1つの混合容器36が位置している。すなわち、第2ラック27に保持されている各混合容器36は、各第1ラック25aにおける複数の試料容器34が並ぶ各直線上に位置している。
【0033】
一方、追加の第1ラック25bを試料容器保持部22aに装着した状態では、第1ラック25bに保持されている複数の試料容器34が、X方向に一直線上に並んでいる。すなわち、追加の第1ラック25bにおいて複数の試料容器34が並ぶ方向は、第2ラック27において複数の混合容器36が並ぶ方向と平行である。また、各第1ラック25aにおいて複数の試料容器34が並ぶ各直線上(Y方向の延長線上)に、追加の第1ラック25bにおける各試料容器34が位置している。
【0034】
これにより、本実施形態では、試料容器保持部22aにおいて、X方向に4列、Y方向に5行の計20個の試料容器34を保持することができる。各試料容器34内には、異なる生体から採取された試料が収容される。また、第1チップ保持部24には、試料容器34と同数(X方向に4列、Y方向に5行の計20個)のチップ40を保持することができる。混合容器保持部22bには、X方向に並べて4個の混合容器36を保持することができる。ただし、試料容器34の数、混合容器36の数及びチップ40の数は、上記のような数に限られるものではない。
【0035】
各混合容器36は、X方向の同じ列にそれぞれ並ぶ5個の試料容器34及び5個のチップ40に対応付けられている。各混合容器36には、同じ列に並ぶ各チップ40を用いて、同じ列に並ぶ各試料容器34内の液体試料が分注される。これにより、各混合容器36内で、同じ列に並ぶ複数の試料容器34内の液体試料を混合することができる。
【0036】
具体的には、X方向における1列目の混合容器36内に各試料容器34内の液体試料を混合する際には、まず、第1チップ保持部24における1列目の1行目に保持されているチップ40がチップ脱着部48bに装着される。そして、試料容器保持部22aにおける1列目の1行目に保持されている試料容器34内の液体試料がチップ40内に吸引された後、混合容器保持部22bにおける1列目に保持されている混合容器36内にチップ40内の液体試料が吐出される。液体試料の吐出後は、使用されたチップ40が第2チップ保持部26において取り外されて保持される。
【0037】
次に、第1チップ保持部24における1列目の2行目に保持されているチップ40がチップ脱着部48bに装着される。そして、試料容器保持部22aにおける1列目の2行目に保持されている試料容器34内の液体試料がチップ40内に吸引された後、混合容器保持部22bにおける1列目に保持されている混合容器36内にチップ40内の液体試料が吐出される。これにより、混合容器36内に既に収容されている液体試料に、チップ40内から吐出された液体試料を混合することができる。液体試料の吐出後は、使用されたチップ40が第2チップ保持部26において取り外されて保持される。
【0038】
その後も同様に、第1チップ保持部24における1列目の各行に保持されているチップ40がチップ脱着部48bに装着されて、試料容器保持部22aにおける1列目の各行に保持されている試料容器34内の液体試料がチップ40内に順次吸引された後、混合容器保持部22bにおける1列目に保持されている混合容器36内に吐出される。このような動作が繰り返されることにより、混合容器保持部22bにおける1列目の混合容器36内に、試料容器保持部22aにおける1列目の各行に保持されている試料容器34内の液体試料が集約されて混合される。混合はチップ40の中に液体試料の吸引及び吐出を繰り返すことで行う。その他に容器を振る等の方法でもよい。他の列(2列目~4列目)についても、同様に分注動作を行うことにより、各列において、複数の試料容器34内から分注される液体試料を混合容器36内で混合することができる。
【0039】
このような分注の方法は、プール検査法と呼ばれる検査において用いられる。プール検査法では、混合容器36内に混合された液体試料に対してPCR検査を行うことにより、その結果が陰性の場合には、混合された各試料容器34内の液体試料がいずれも陰性であることを一度に確認することができる。したがって、検査の効率を向上することができるとともに、検査にかかるコストを低減することができる。
【0040】
図4に示すように、前処理装置12は、電気的に制御可能な分注機構48を備える。分注機構48は、液体を吸引及び吐出する機構であって、シリンジ48a、チップ脱着部48b及びプランジャ48cを備える。シリンジ48aは、円筒状の部材であって、プランジャ48cが摺動可能に挿入されている。
【0041】
チップ脱着部48bは、シリンジ48aよりも小径の円筒状の部材であって、チップ40の脱着が可能とされる。チップ脱着部48bとしては、たとえば、シリンジ48aの内部に連通する細長い円筒状のノズルが用いられる。チップ40は、下端に向かって徐々に先細りする細長い円筒状に形成されており、その上端部にチップ脱着部48bの下端部が圧入されることにより、チップ脱着部48bにチップ40が取り付けられる。
【0042】
また、図示は省略するが、分注機構48は、モータ等のアクチュエータ、プランジャ48cと連結される連結部材及びアクチュエータの駆動力をZ方向の動きとしてその連結部材に伝達する伝達機構等を備える。
【0043】
分注機構48によれば、プランジャ48cのストローク量に応じた量の液体を吸引及び吐出することができる。分注機構48を用いて、容器保持部22に保持されている容器(試料容器34)内の液体を吸引及び吐出することにより、分注動作を行うことができる。なお、上述した分注機構48は、あくまで一例であって、液体を吸引及び吐出することができるのであれば、分注機構48の構成は特に限定されない。
【0044】
また、図4に示すように、前処理装置12は、電気的に制御可能な支持機構50を備える。支持機構50は、分注機構48を変位可能に支持する機構であって、モータ等のアクチュエータ、分注機構48を構成するコンポーネントを支持する支持部材50a及びアクチュエータの駆動力をZ方向の動きとして支持部材50aに伝達する伝達機構等を備える。
【0045】
支持機構50によれば、分注機構48を支持しつつ、Z方向に変位させることができる。つまり、支持機構50によれば、チップ脱着部48bを支持しつつ、Z方向に変位させることができる。なお、上述した支持機構50は、あくまで一例であって、チップ脱着部48b等を支持しつつ、Z方向に変位させることができるのであれば、支持機構50の構成は特に限定されない。また、支持機構50は、分注機構48を水平方向(XY方向)にも変位可能とするように構成されてもよい。
【0046】
さらに、図4に示すように、前処理装置12は、電気的に制御可能な保持機構52を備える。保持機構52は、テーブル21を変位可能に保持する機構であって、モータ等のアクチュエータ、テーブル21を保持する保持部材等を備える。また、保持機構52は、アクチュエータの駆動力をX方向及びY方向の動きとして保持部材に伝達する伝達機構を備える。
【0047】
保持機構52によれば、テーブル21を保持しつつ、水平方向に変位させることができる。すなわち、保持機構52によれば、容器保持部22を保持し、当該容器保持部22を水平方向に変位させることにより分注機構48に対する位置合わせを行うことができる。これにより、第1チップ保持部24に保持されているチップ40をチップ脱着部48bの下方に位置合わせしたり、試料容器保持部22aに保持されている試料容器34又は混合容器保持部22bに保持されている混合容器36をチップ脱着部48bに装着されているチップ40の下方に位置合わせしたりすることができる。
【0048】
なお、上述した保持機構52は、あくまで一例であって、テーブル21を保持しつつ、水平方向に変位させることができるのであれば、テーブル21の構成は特に限定されない。また、保持機構52は、テーブル21をZ方向にも変位可能とするように構成されてもよい。
【0049】
3.コンテナの構成
図5は、コンテナ23の構成例を示す斜視図である。コンテナ23は、上面が開放されたボックス状の部材であり、第1ラック25を収容する第1収容部231と、第2ラック27を収容する第2収容部232とが形成されている。第1収容部231には、上方から第1ラック25を出し入れすることができ、第2収容部232には、上方から第2ラック27を出し入れすることができる。
【0050】
第1収容部231には、第1ラック25aを収容する4つの第1収容部231aと、追加の第1ラック25bを収容する1つの第1収容部231bとが含まれる。4つの第1収容部231a間は、区画壁233により区画されている。各区隔壁233は、薄い板状の部材であり、4つの第1ラック25aを近接させた状態で、それぞれ第1収容部231aに収容することができる。
【0051】
第2収容部232を構成する壁面の一部は、上方に向かって延長するように形成されることにより、ガイド部234を構成している。第2ラック27を第2収容部232内に収容する際には、第2ラック27の側面をガイド部234に沿って摺接させることにより、第2ラック27を第2収容部232内に案内することができる。ガイド部234の上端部は、外側(第2収容部232側とは反対側)に屈曲又は湾曲されることにより、第2ラック27を第2収容部232側へと挿入しやすい構成となっている。
【0052】
コンテナ23の上部には、当該コンテナ23を持ち運ぶ際に把持するためのハンドル部235が設けられている。ハンドル部235は、コンテナ23に対して変位可能に取り付けられている。この例では、コンテナ23に対してハンドル部235が回動可能であり、ハンドル部235が上方に延びる状態で把持される一方で、図5のように水平方向に延びる状態でハンドル部235が格納される。
【0053】
このように、コンテナ23には、全ての容器(試料容器34及び混合容器36)をセットすることが可能である。したがって、コンテナ23に全ての容器を予めセットした状態で、当該コンテナ23をテーブル21に装着することにより、前処理装置12に対して試料容器34及び混合容器36を容易にセットすることができる。
【0054】
4.第1ラックの構成
図6は、第1ラック25の構成例を示す斜視図である。各第1ラック25(4つの第1ラック25a及び追加の第1ラック25b)は、いずれも同一形状を有している。ただし、各第1ラック25が全て同一形状である必要はなく、以下に説明する形状とは異なる形状であってもよい。
【0055】
第1ラック25は、2つの横板252と、2つの縦板253と、1つの底板254とを有している。底板254は、長尺形状を有しており、その長手方向の両端部から上方に向かって各縦板253が延びている。2つの縦板253は、水平方向に互いに間隔を隔てて平行に延びている。
【0056】
2つの横板252は、底板254と同じ長さの長尺形状を有しており、水平方向に沿って底板254に対して平行に延びている。2つの横板252は、上下方向に互いに間隔を隔てて平行に延びており、それぞれの両端部が縦板253に固定されている。上側の横板252と下側の横板252との間隔は、下側の横板252と底板254との間隔と略同一である。
【0057】
各横板252には、上述した複数(例えば4つ)の開口部251が長手方向に並べて等間隔で形成されている。上方から見たときに、上側の横板252に形成された各開口部251と、下側の横板252に形成された各開口部251とは重なっている。したがって、上側の横板252の各開口部251に上方から挿入される各試料容器34は、下側の横板252における対向する各開口部251に挿入され、上下方向に延びるように保持される。
【0058】
底板254には、上下方向に延びる中間板255が形成されている。中間板255は、底板254の長手方向の中央部から上方に向かって延びるように1つ形成されているが、2つ以上形成されていてもよい。中間板255は、上側の横板252の高さまで延びており、上側の横板252と下側の横板252に連結されている。これにより、中間板255は、第1ラック25の形状を維持するための補強部材としての役割を果たしている。
【0059】
本実施形態では、底板254と中間板255との結合部から、中間板255の中央部を上方に向かって延びるように、長孔256が形成されている。この長孔256は、後述するハンドル部材29(図7参照)を第1ラック25に連結するためのものである。
【0060】
5.ハンドル部材の構成
図7は、ハンドル部材29の構成例を示す斜視図である。ハンドル部材29は、第1ラック25(各第1ラック25a,25b)を容易に持ち運ぶための部材であり、第1ラック25に対して着脱可能である。ただし、ハンドル部材29は、以下に説明する形状とは異なる形状であってもよい。
【0061】
ハンドル部材29は、縦板291と、底板292と、ハンドル部293とを有している。底板292は、長尺形状を有しており、その短手方向の一端部から上方に向かって縦板291が延びている。ハンドル部293は、U字状の部材であり、その両端部が縦板291の上端部に結合されるとともに、水平方向に延びるように底板292側とは反対側に屈曲又は湾曲されている。
【0062】
ハンドル部材29の縦板291には、上下方向に延びる係止部294が形成されている。この係止部294は、ハンドル部材29を第1ラック25の長孔256(図6参照)に係止させるためのものである。係止部294は、底板292の長手方向の中央部から上方に向かって延びるように1つ形成されているが、第1ラック25に複数の長孔256が形成されている場合には、その数と同数の係止部294が形成されていてもよい。
【0063】
係止部294は、例えば、縦板291から水平方向(底板292側)に向かって突出する根元部294aと、根元部294aの先端縁に結合され、縦板291に対して平行に延びる頭部294bとを有している。頭部294bは、根元部294aに対して直交方向に延びており、上方から見たときに、係止部294はT字形状を有している。
【0064】
ハンドル部材29を第1ラック25に連結させる際には、ハンドル部材29の縦板291における底板292側の面(係止部294が形成されている側の面)に沿って、第1ラック25を上方から接近させる。このとき、係止部294の根元部294aが、第1ラック25の長孔256を貫通するように、根元部294aの上端を長孔256の下端から挿入させる。その後、第1ラック25をハンドル部材29に対して下方にスライドさせることにより、長孔256の下端から上端まで係止部294の根元部294aが挿入され、第1ラック25の底板254がハンドル部材29の底板292に当接する。
【0065】
この状態では、ハンドル部材29における係止部294の頭部294bと縦板291との間に、第1ラック25における中間板255が挟持される。これにより、ハンドル部材29に対して第1ラック25が水平方向に外れることを防止できる。
【0066】
なお、本実施形態では、ハンドル部材29の縦板291における水平方向の両端部に、上下方向に沿って延びるガイド部295が形成されている。各ガイド部295は、縦板291における底板292側の面(係止部294が形成されている側の面)から突出している。各ガイド部295間の距離は、第1ラック25の横幅(2つの縦板253間の距離)よりも若干大きい。したがって、ハンドル部材29を第1ラック25に連結させる際には、第1ラック25の各縦板253を各ガイド部295に沿わせるようにして、上方から下方に第1ラック25をスライドさせることにより、ハンドル部材29の係止部294を第1ラック25の長孔256に良好に案内することができる。
【0067】
6.第2ラックの構成
図8は、第2ラック27の構成例を示す斜視図である。第2ラック27は、第1ラック25にハンドル部材29を連結させた状態と同様の形状を有している。ただし、第1ラック25は、以下に説明する形状とは異なる形状であってもよい。
【0068】
第2ラック27は、縦板272と、底板273と、ハンドル部274と、2つの横板275とを有している。底板273は、長尺形状を有しており、その短手方向の一端部から上方に向かって縦板272が延びている。ハンドル部274は、U字状の部材であり、その両端部が縦板272の上端部に結合されるとともに、水平方向に延びるように底板273側とは反対側に屈曲又は湾曲されている。
【0069】
2つの横板275は、底板273と同じ長さの長尺形状を有しており、水平方向に沿って底板273に対して平行に延びている。2つの横板275は、上下方向に互いに間隔を隔てて平行に延びており、それぞれの短手方向の一端部が縦板272に結合されている。上側の横板275と下側の横板275との間隔は、下側の横板275と底板273との間隔と略同一である。
【0070】
各横板275には、上述した複数(例えば4つ)の開口部271が長手方向に並べて等間隔で形成されている。上方から見たときに、上側の横板275に形成された各開口部271と、下側の横板275に形成された各開口部271とは重なっている。したがって、上側の横板275の各開口部271に上方から挿入される各混合容器36は、下側の横板275における対向する各開口部271に挿入され、上下方向に延びるように保持される。
【0071】
このように、本実施形態では、混合容器保持部22bに保持されている複数の混合容器36は、第2ラック27を用いて一体的に保持されている。これにより、第2ラック27を混合容器保持部22bから取り外せば、複数の混合容器36を一度に検査装置14に持ち込むことができるような構成となっている。同様に、試料容器保持部22aに保持されている複数の試料容器34についても、第1ラック25を用いて、第1収容部231a,231bごとに一体的に複数の試料容器34を出し入れできるような構成となっている。
【0072】
本実施形態では、図2図5に示すように、第2ラック27は、ハンドル部274を有する形状のまま混合容器保持部22bに着脱可能である。これに対して、第1ラック25は、ハンドル部材29を取り外した状態で試料容器保持部22aに着脱可能である。すなわち、複数の第1ラック25については、ハンドル部材29を取り外すことにより、互いに近接させた状態でコンテナ23に収容し、より多くの試料容器34を試料容器保持部22aに省スペースで保持することができる。
【0073】
なお、図6及び図7に示すように、第1ラック25の上側の横板252と、ハンドル部材29のハンドル部293には、各開口部251に挿入される試料容器34に対応付けて、試料容器34(個別検体)を識別するための識別番号(例えば、「1」~「4」の数字)が表記されていてもよい。また、図8に示すように、第2ラック27のハンドル部274には、各開口部271に挿入される混合容器36に対応付けて、混合容器36(プール検体)を識別するための識別番号(例えば、「P1」~「P4」の番号)が表記されていてもよい。
【0074】
7.電気的構成
図9は、ユーザ端末16の電気的構成の一例を示すブロック図である。図9に示すように、ユーザ端末16は、制御部100、表示制御回路110、操作検出回路120、通信部130、表示部140及び操作部150を備える。
【0075】
制御部100、表示制御回路110、操作検出回路120及び通信部130の各々は、バス等の配線108を介して、互いに電気的に接続される。また、表示制御回路110には、表示部140が電気的に接続され、操作検出回路120には、操作部150が電気的に接続される。
【0076】
制御部100は、ユーザ端末16の全体的な制御を担う。制御部100は、CPU(Central Processing Unit)102を備える。また、制御部100は、CPU102が直接的にアクセス可能なRAM(Random Access Memory)104および記憶部106を備える。
【0077】
CPU102は、ユーザ端末16の各コンポーネントを制御する。RAM104は、CPU102のワーク領域およびバッファ領域として用いられる。記憶部106は、不揮発性メモリであり、たとえば、記憶部106としてHDD(Hard Disc Drive)またはSSD(Solid State Drive)等が用いられる。
【0078】
記憶部106には、ユーザ端末16の各コンポーネントを制御するための制御プログラムおよび制御プログラムの実行に必要とされるデータ(実行用データ)等が記憶される。なお、記憶部106がRAM104を含むように構成されてもよい。また、記憶部106が、ユーザ端末16とは別に、サーバとして設けられてもよい。この場合、サーバがネットワーク18に接続されてもよい。
【0079】
表示制御回路110は、GPUおよびVRAMなどを含み、GPUは、CPU102の指示の下、RAM104に記憶された画像データを用いて表示部140に種々の画面を表示するための信号を出力する。表示部140は、LCD(Liquid crystal display)又はEL(Electro-Luminescence)ディスプレイなどの汎用の表示装置である。
【0080】
操作検出回路120は、操作部150の操作に応じた信号を制御部100に出力する。操作部150は、ユーザ端末16に設けられるハードウェアキー(操作キー)を含む。ただし、各種操作キーの全てないし一部が、ソフトウェアキーとして、表示部140に表示されてもよい。また、操作部150には、たとえば、キーボード又はマウス等の入力装置が含まれていてもよい。さらに、入力装置には、タッチパネルが含まれてもよい。なお、この場合、タッチパネルは、表示部140の表示面上に設けられる。また、タッチパネルとディスプレイとが一体的に形成されたタッチパネルディスプレイが用いられてもよい。
【0081】
通信部130は、ネットワーク18に有線または無線で接続するための通信回路を含み、CPU102の指示により、ネットワーク18を介して外部と通信を行う。ユーザ端末16は、通信部130を介して前処理装置12及び検査装置14と通信可能である。したがって、前処理装置12又は検査装置14から入力されるデータを記憶部106に記憶したり、記憶部106に記憶されているデータを前処理装置12又は検査装置14に出力したりすることが可能である。
【0082】
本実施形態では、各試料容器34に関する情報、及び、各混合容器36に関する情報が、検体情報としてユーザ端末16の記憶部106に記憶される。各試料容器34に関する情報は、例えば各試料容器34内の液体試料(個別検体)の情報であり、個別検体を識別するための識別情報(検体ID、検体名、患者名又は検体採取日など)を例示することができる。各混合容器36に関する情報は、例えば各混合容器36内の混合された液体試料(プール検体)の情報であり、プール検体を識別するための識別情報(検体ID、検体名、患者名又は検体採取日など)を例示することができる。なお、各識別情報は、ユーザが操作部150を操作することにより入力されてもよいし、試料容器34又は混合容器36に取り付けられた情報保持部(バーコード又は二次元コードなど)から読み取られてもよい。
【0083】
8.表示画面の一例
図10は、ユーザ端末16の表示部140における表示画面の一例を示す図である。この例では、検体情報を入力するための検体情報入力画面が表示部140に表示されている。検体情報入力画面には、配列表示領域141と検体情報入力領域142とが含まれる。
【0084】
配列表示領域141は、各試料容器34及び各混合容器36の相対的な位置関係(配列)を表示するための領域である。すなわち、配列表示領域141には、容器保持部22(試料容器保持部22a及び混合容器保持部22b)における各試料容器34及び各混合容器36の配列に対応するように、各試料容器34及び各混合容器36を表すシンボルが表示される。
【0085】
各混合容器36は、配列表示領域141においてシンボル「P1」~「P4」で示されている。すなわち、第2ラック27に保持される各混合容器36は、当該第2ラック27に対応付けて、シンボル「P1」~「P4」で示されている。
【0086】
各試料容器34は、配列表示領域141においてシンボル「1」~「5」で示されている。各試料容器34のうち、各第1ラック25aに保持される各試料容器34は、4つの第1ラック25aに対応付けて、それぞれシンボル「1」~「4」で示されている。また、追加の第1ラック25bに保持される各試料容器34は、当該第1ラック25bに対応付けて、シンボル「5」で示されている。
【0087】
したがって、各混合容器36に対応するシンボル「P1」~「P4」と、各混合容器36において混合される液体試料を収容する4つ又は5つの試料容器34に対応するシンボル「1」~「5」とは、一直線上に並べて表示される。
【0088】
本実施形態では、第2ラック27における各混合容器36に関する情報と、各混合容器36と同一の直線上に位置する各試料容器34に関する情報とを対応付けて、検体情報として記憶部106に記憶することができる。すなわち、配列表示領域141におけるシンボル「P1」~「P4」に対応する4つの混合容器36のそれぞれについて、同一の直線上(縦の列)に位置するシンボル「1」~「5」に対応する5つ(または4つ)の試料容器34が紐づけられ、それらの混合容器36及び試料容器34に関する検体情報が紐づけられた状態で記憶部106に記憶される。
【0089】
検体情報入力領域142は、各試料容器34及び各混合容器36に関する情報を入力するための領域である。検体情報入力領域142には、プール検体選択領域143と、情報入力領域144とが含まれる。
【0090】
プール検体選択領域143は、各混合容器36のいずれかを選択するための領域である。すなわち、プール検体選択領域143における「P1」~「P4」のいずれかを選択することにより、第2ラック27に保持されている4つの混合容器36のいずれかを選択することができる。
【0091】
情報入力領域144は、プール検体選択領域143で選択された混合容器36、及び、当該混合容器36に紐づけられた試料容器34について、それぞれの検体情報を入力するための領域である。図10は、プール検体選択領域143で「P1」が選択された状態であり、「P1」に対応する混合容器36に関する情報と、当該混合容器36に紐づけられた5つの試料容器34に関する情報とを、情報入力領域144で入力することができる。
【0092】
情報入力領域144には、個別検体情報入力領域144aと、プール検体情報入力領域144bとが含まれる。プール検体情報入力領域144bは、第2ラックにおける各混合容器36に関する情報(プール検体情報)を入力するための領域である。個別検体情報入力領域144aは、各混合容器36に紐づけられた試料容器34、すなわち、各混合容器36と同一の直線上に位置する各試料容器34に関する情報(個別検体情報)を入力するための領域である。
【0093】
この例では、個別検体情報入力領域144aとプール検体情報入力領域144bとが、1つの領域(情報入力領域144)に一覧表示されることにより、互いに対応付けて表示されている。個別検体情報入力領域144a及びプール検体情報入力領域144bには、各試料容器34又は各混合容器36について、例えば前処理を実施するか否かを選択するための選択欄の他、検体ID、検体名又は患者名といった各種情報を入力する欄が含まれる。
【0094】
ユーザは、各試料容器34又は各混合容器36のいずれに対して前処理を実施するか選択するとともに、検体IDを入力した上で、開始ボタン145を選択することにより、前処理を開始させることができる。すなわち、前処理装置12は、選択された各試料容器34及び各混合容器36についてのみ前処理を実施する。また、中止ボタン146を選択すれば、開始された前処理を中止させることができる。なお、検体名及び患者名などの他の情報の入力は任意であり、入力しなくても開始ボタン145を選択可能である。
【0095】
上記のようにして入力され、記憶部106に記憶された検体情報(各試料容器34及び各混合容器36に関する情報)は、検査装置14で読み出すことができる。すなわち、検査装置14では、記憶部106から読み出した検体情報を用いて検査を行うことができる。具体的には、記憶部106から読み出した検体情報に対して、いずれかの試料容器34又は混合容器36を任意に検索したり、絞り込み検索を行ったりすることができる。
【0096】
検査装置14において、第2ラック27に保持された各混合容器36内のプール検体(各混合容器36内に混合された液体試料)に対して検査を行った結果が陽性の場合には、その陽性と判断された混合容器36に紐づけられた各試料容器34に関する情報(個別検体情報)を検索して記憶部106から読み出すことができる。このときの検索操作は、例えば表示部140に表示された検査結果(グラフなど)に対するクリック操作など、1回の操作で自動的に検索が行われるような構成であってもよい。
【0097】
ユーザは、上記のようにして、陽性と判断された混合容器36に紐づけられた各試料容器34に関する情報(個別検体情報)を記憶部106から読み出すとともに、それらの個別検体情報に対応する複数の試料容器34を第1ラック25ごと検査装置14内にセットすることにより、検体を取り違えることなく個別検体の検査を行うことができる。
【0098】
9.態様
上述した複数の例示的な実施形態は、以下の態様の具体例であることが当業者により理解される。
【0099】
(第1項)一態様に係る前処理装置は、
それぞれ液体試料を収容する複数の試料容器から、混合容器内に液体試料を分注して混合することができる前処理装置であって、
試料容器を複数保持する試料容器保持部、及び、混合容器を複数保持する混合容器保持部が形成された本体と、
前記試料容器保持部に対して着脱可能であり、所定数の試料容器を一体的に保持可能な試料容器用ラックと、
前記混合容器保持部に対して着脱可能であり、前記所定数の混合容器を一体的に保持可能な混合容器用ラックとを備え、
前記試料容器用ラックに保持される前記所定数の試料容器の配列と、前記混合容器用ラックに保持される前記所定数の混合容器の配列とが一致していてもよい。
【0100】
第1項に記載の前処理装置によれば、配列が一致する試料容器用ラック及び混合容器用ラックを用いて前処理を行うことができる。前処理後の試料容器又は混合容器を検査装置にセットする際には、試料容器用ラック又は混合容器用ラックを移動させるだけでよいため、複数の試料容器又は混合容器の取り扱いが容易である。
【0101】
(第2項)第1項に記載の前処理装置において、
前記試料容器用ラックは、一直線上に前記所定数の試料容器を並べて保持可能であり、
前記混合容器用ラックは、一直線上に前記所定数の混合容器を並べて保持可能であってもよい。
【0102】
第2項に記載の前処理装置によれば、試料容器用ラック及び混合容器用ラックにより、複数の試料容器又は混合容器を一直線上に配列して、容易に取り扱うことができる。
【0103】
(第3項)第2項に記載の前処理装置において、
前記試料容器保持部に装着される前記試料容器用ラックにおいて前記所定数の試料容器が並ぶ直線上に、前記混合容器保持部に装着される前記混合容器用ラックにおける1つの混合容器が位置してもよい。
【0104】
第3項に記載の前処理装置によれば、混合容器と、当該混合容器内で混合される液体試料を収容する複数の試料容器とを、一直線上に配列することができるため、前処理を円滑に行うことができるとともに、検体の取り違えを防止することができる。
【0105】
(第4項)第3項に記載の前処理装置において、
前記試料容器保持部には、前記所定数の試料容器用ラックを着脱可能であり、
前記試料容器保持部に装着される各試料容器用ラックにおいて前記所定数の試料容器が並ぶ各直線上に、前記混合容器保持部に装着される前記混合容器用ラックにおける各混合容器が位置してもよい。
【0106】
第4項に記載の前処理装置によれば、複数の混合容器を混合容器用ラックで保持し、各混合容器と、当該混合容器内で混合される液体試料を収容する複数の試料容器とを、一直線上に配列することができる。したがって、混合容器と試料容器との紐づけが複数組となり、前処理の効率が向上する。
【0107】
(第5項)第4項に記載の前処理装置において、
前記試料容器保持部には、前記所定数の試料容器用ラックに加えて、追加の試料容器用ラックを着脱可能であり、
前記試料容器保持部に装着される各試料容器用ラックにおいて前記所定数の試料容器が並ぶ各直線上に、前記試料容器保持部に装着される前記追加の試料容器用ラックにおける各試料容器が位置してもよい。
【0108】
第5項に記載の前処理装置によれば、追加の試料容器用ラックに保持されている試料容器も混合容器と紐づけて、一直線上に配列することができるため、前処理の効率がさらに向上する。
【0109】
(第6項)第4項又は第5項に記載の前処理装置において、
前記所定数の試料容器用ラックのそれぞれに対して着脱可能なハンドル部材をさらに備え、
前記所定数の試料容器用ラックは、前記ハンドル部材を取り外した状態で前記試料容器保持部に着脱可能であってもよい。
【0110】
第6項に記載の前処理装置によれば、ハンドル部材を試料容器用ラックに取り付けることにより、ハンドル部材を把持して試料容器用ラックを容易に移動させることができる。また、ハンドル部材を取り外せば、複数の試料容器用ラックを試料容器保持部に近接させた状態で収容し、より多くの試料容器を試料容器保持部に省スペースで保持することができる。
【0111】
(第7項)一態様に係る検査システムは、
第4項~第6項のいずれか一項に記載の前処理装置と、
前記混合容器用ラックにおける各混合容器に関する情報と、各混合容器と同一の前記直線上に位置する各試料容器に関する情報とを対応付けて、検体情報として記憶する記憶部と、
前記検体情報を前記記憶部から読み出す検査装置とを備えてもよい。
【0112】
第7項に記載の検査システムによれば、検査装置において記憶部から検体情報を読み出し、その検体情報を用いて検査を行うことができる。
【0113】
(第8項)第7項に記載の検査システムにおいて、
前記検体情報の入力画面が表示される表示部をさらに備え、
前記検体情報の入力画面には、前記混合容器用ラックにおける各混合容器に関する情報の入力領域と、各混合容器と同一の前記直線上に位置する各試料容器に関する情報の入力領域とが対応付けて表示されてもよい。
【0114】
第8項に記載の検査システムによれば、混合容器と、当該混合容器内で混合される液体試料を収容する複数の試料容器について、それぞれの容器に関する情報の入力領域が対応付けて表示されるため、対応関係が分かりやすく、誤入力を防止することができる。
【符号の説明】
【0115】
10 検査システム
12 前処理装置
14 検査装置
16 ユーザ端末
22a 試料容器保持部
22b 混合容器保持部
25 第1ラック
27 第2ラック
29 ハンドル部材
34 試料容器
36 混合容器
106 記憶部
140 表示部
142 検体情報入力領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10