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特許7622894電流検出装置、漏電遮断器及び漏電リレー
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-20
(45)【発行日】2025-01-28
(54)【発明の名称】電流検出装置、漏電遮断器及び漏電リレー
(51)【国際特許分類】
   G01R 15/18 20060101AFI20250121BHJP
   G01R 33/02 20060101ALI20250121BHJP
   G01R 31/52 20200101ALI20250121BHJP
   G01R 19/00 20060101ALI20250121BHJP
   G01R 19/32 20060101ALI20250121BHJP
   H01F 38/32 20060101ALI20250121BHJP
【FI】
G01R15/18 C
G01R33/02 D
G01R31/52
G01R19/00 N
G01R19/32
H01F38/32
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2024108468
(22)【出願日】2024-07-04
【審査請求日】2024-07-23
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004381
【氏名又は名称】弁理士法人ITOH
(72)【発明者】
【氏名】山内 芳准
(72)【発明者】
【氏名】栗原 晋
(72)【発明者】
【氏名】菱沼 兼次
(72)【発明者】
【氏名】米澤 隆仁
【審査官】青木 洋平
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-050921(JP,A)
【文献】特開2017-157431(JP,A)
【文献】国際公開第2023/281696(WO,A1)
【文献】特開2016-194510(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 15/18
G01R 33/02
G01R 31/52
G01R 19/00
G01R 19/32
H01F 38/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検出電流が流れる導体を囲む磁気コアと、
前記磁気コアに巻回される励磁コイルと、
前記磁気コアを励磁することで矩形波電圧を発生させる発振回路と、
前記矩形波電圧の変化に基づいて前記被検出電流を検出する電流検出回路と、
前記発振回路又は前記電流検出回路のオフセット誤差を補償する補償回路と、を備え
前記電流検出回路は、増幅回路を含み、
前記補償回路は、前記増幅回路の入力電圧を調整することで、前記増幅回路の出力電圧に含まれるオフセット電圧を調整する調整回路を含み、
前記電流検出回路は、前記増幅回路の増幅率を切り替え信号により切り替える切り替え回路を含む、電流検出装置。
【請求項2】
前記切り替え信号は、前記電流検出装置の外部からの信号である、請求項1に記載の電流検出装置。
【請求項3】
前記切り替え信号は、ユーザによる信号である、請求項1に記載の電流検出装置。
【請求項4】
前記切り替え回路は、前記切り替え信号に従って前記増幅率を切り替えるスイッチを含む、請求項1に記載の電流検出装置。
【請求項5】
前記増幅回路は、オペアンプを含み、
前記切り替え回路は、前記オペアンプに接続される帰還抵抗を前記切り替え信号に従って選択することで、前記増幅率を切り替える、請求項1に記載の電流検出装置。
【請求項6】
前記入力電圧は、前記増幅回路の基準電圧である、請求項1に記載の電流検出装置。
【請求項7】
前記調整回路は、前記入力電圧を可変抵抗器により調整する、請求項1に記載の電流検出装置。
【請求項8】
前記電流検出回路は、前記矩形波電圧のデューティ比に応じた電圧を発生させるフィルタ回路を含み、
前記増幅回路は、前記フィルタ回路の出力電圧を増幅する、請求項に記載の電流検出装置。
【請求項9】
前記補償回路は、前記オフセット電圧を温度補償する温度補償回路を含む、請求項に記載の電流検出装置。
【請求項10】
前記温度補償回路は、前記増幅回路の基準電圧を調整することで前記オフセット電圧を温度補償する、請求項に記載の電流検出装置。
【請求項11】
前記温度補償回路は、前記基準電圧を調整するサーミスタを含む、請求項10に記載の電流検出装置。
【請求項12】
前記増幅回路は、前記矩形波電圧に応じて第1出力電圧を出力する第1増幅回路と、前記第1出力電圧に応じて第2出力電圧を出力する第2増幅回路と、を含み、
前記温度補償回路及び前記調整回路は、前記第2出力電圧に含まれるオフセット電圧を調整する、請求項9に記載の電流検出装置。
【請求項13】
前記温度補償回路は、前記第1増幅回路の入力電圧を温度に応じて調整することで、前記第2出力電圧に含まれるオフセット電圧を調整し、
前記調整回路は、前記第2増幅回路の入力電圧を調整することで、前記第2出力電圧に含まれるオフセット電圧を調整する、請求項12に記載の電流検出装置。
【請求項14】
前記電流検出回路は、
前記増幅回路の出力電圧に基づいて、前記被検出電流の発生を判定する判定回路と、
前記判定回路の判定感度を調節する調節回路と、を含む、請求項1から13のいずれか一項に記載の電流検出装置。
【請求項15】
被検出電流が流れる導体を囲む磁気コアと、
前記磁気コアに巻回される励磁コイルと、
前記磁気コアを励磁することで矩形波電圧を発生させる発振回路と、
前記矩形波電圧の変化に基づいて前記被検出電流を検出する電流検出回路と、
前記発振回路又は前記電流検出回路のオフセット誤差を補償する補償回路と、を備え
前記電流検出回路は、増幅回路を含み、
前記補償回路は、前記増幅回路の出力電圧に含まれるオフセット電圧を温度補償する温度補償回路を含む、電流検出装置。
【請求項16】
導体に流れる被検出電流を検出する電流検出装置と、
前記被検出電流が前記電流検出装置により検出された場合、電路を遮断する遮断手段と、を備え、
前記電流検出装置は、
被検出電流が流れる導体を囲む磁気コアと、
前記磁気コアに巻回される励磁コイルと、
前記磁気コアを励磁することで矩形波電圧を発生させる発振回路と、
前記矩形波電圧の変化に基づいて前記被検出電流を検出する電流検出回路と、
前記発振回路又は前記電流検出回路のオフセット誤差を補償する補償回路と、を備え
前記電流検出回路は、増幅回路を含み、
前記補償回路は、前記増幅回路の入力電圧を調整することで、前記増幅回路の出力電圧に含まれるオフセット電圧を調整する調整回路を含み、
前記電流検出回路は、前記増幅回路の増幅率を切り替え信号により切り替える切り替え回路を含む、漏電遮断器。
【請求項17】
導体に流れる被検出電流を検出する電流検出装置と、
前記被検出電流が前記電流検出装置により検出された場合、接点出力を行うリレーと、を備え、
前記電流検出装置は、
被検出電流が流れる導体を囲む磁気コアと、
前記磁気コアに巻回される励磁コイルと、
前記磁気コアを励磁することで矩形波電圧を発生させる発振回路と、
前記矩形波電圧の変化に基づいて前記被検出電流を検出する電流検出回路と、
前記発振回路又は前記電流検出回路のオフセット誤差を補償する補償回路と、を備え
前記電流検出回路は、増幅回路を含み、
前記補償回路は、前記増幅回路の入力電圧を調整することで、前記増幅回路の出力電圧に含まれるオフセット電圧を調整する調整回路を含み、
前記電流検出回路は、前記増幅回路の増幅率を切り替え信号により切り替える切り替え回路を含む、漏電リレー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電流検出装置、漏電遮断器及び漏電リレーに関する。
【背景技術】
【0002】
測定電流が流れる導線を囲む磁気コアに巻回した励磁コイルと、前記磁気コアを飽和状態又はその近傍とした状態で、前記励磁コイルに供給する励磁電流の向きを反転させる矩形波電圧を発生する発振回路と、前記発振回路から出力される前記矩形波電圧のデューティ変化に基づいて前記測定電流を検出する電流検出回路と、前記矩形波電圧の振幅を、温度変化による当該矩形波電圧の振幅変動を抑制する振幅範囲に制限するツェナーダイオードと、を備える、電流検知装置が知られている。この電流検知装置は、電流検出回路の増幅回路にサーミスタを配置し、温度に応じて増幅回路の増幅率を変化させることで、ツェナーダイオードの温度依存性による増幅回路から出力される電流検出電圧の変動を補償している(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-50921号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の技術では、発振回路又は電流検出回路が持つオフセット誤差によって、高精度な電流検出が難しい場合がある。
【0005】
本開示は、高精度な電流検出が可能な電流検出装置、漏電遮断器及び漏電リレーを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1態様の電流検出装置は、
被検出電流が流れる導体を囲む磁気コアと、
前記磁気コアに巻回される励磁コイルと、
前記磁気コアを励磁することで矩形波電圧を発生させる発振回路と、
前記矩形波電圧の変化に基づいて前記被検出電流を検出する電流検出回路と、
前記発振回路又は前記電流検出回路のオフセット誤差を補償する補償回路と、を備える。
【0007】
第2態様の漏電遮断器は、
導体に流れる被検出電流を検出する電流検出装置と、
前記被検出電流が前記電流検出装置により検出された場合、電路を遮断する遮断手段と、を備え、
前記電流検出装置は、
被検出電流が流れる導体を囲む磁気コアと、
前記磁気コアに巻回される励磁コイルと、
前記磁気コアを励磁することで矩形波電圧を発生させる発振回路と、
前記矩形波電圧の変化に基づいて前記被検出電流を検出する電流検出回路と、
前記発振回路又は前記電流検出回路のオフセット誤差を補償する補償回路と、を備える。
【0008】
第3態様の漏電リレーは、
導体に流れる被検出電流を検出する電流検出装置と、
前記被検出電流が前記電流検出装置により検出された場合、接点出力を行うリレーと、を備え、
前記電流検出装置は、
被検出電流が流れる導体を囲む磁気コアと、
前記磁気コアに巻回される励磁コイルと、
前記磁気コアを励磁することで矩形波電圧を発生させる発振回路と、
前記矩形波電圧の変化に基づいて前記被検出電流を検出する電流検出回路と、
前記発振回路又は前記電流検出回路のオフセット誤差を補償する補償回路と、を備える。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、高精度に被検出電流を検出できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第1実施形態に係る電流検出装置の一構成例を示す図である。
図2】発振回路のアナログの回路構成例を示す図である。
図3】発振回路の出力電圧波形と励磁コイルの電流波形とを例示する模式図である。
図4】磁気コアの磁界の強さと磁束密度の関係を示す特性線図及び磁気コアのインダクタンス特性を例示する特性線図である。
図5】電流検出時の発振回路の出力電圧と電流検出回路の電流検出電圧との関係を例示する図である。
図6】オフセット誤差の影響を例示する模式図である。
図7】第1増幅回路、第2増幅回路、温度補償回路及び調整回路のアナログの回路構成例を示す図である。
図8】動作電流の切り替えの動作例を例示する模式図である。
図9】温度と温度補償回路出力の関係を例示する図である。
図10】絶対値回路、判定回路及び調節回路のアナログの回路構成例を示す図である。
図11】調節回路の動作例を示す模式図である。
図12】電流検出装置を備える漏電遮断器の構成例を示す図である。
図13】電流検出装置を備える漏電リレーの構成例を示す図である。
図14】フィルタ回路の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示の実施形態について説明する。なお、「接続」とは、物理的な接続に限られず、電気的な接続の意味を含んでよい。例えば、物体Aが物体Bに接続されるとは、物体Aが物体Bに導電的に(例えば、同電位に)接続される場合に限られず、物体Aが物体Cを介して物体Bに導電的に接続される場合を含んでよい。
【0012】
図1は、第1実施形態に係る電流検出装置の一例を示す構成図である。図1に示す電流検出装置1は、例えば、漏電遮断器100(図12参照)または漏電リレー300(図13参照)において、漏洩電流等の被検出電流を検出する検出手段として用いられてもよい。以下、電流検出装置1を、漏電遮断器100または漏電リレー300に適用された電流検出装置として説明する。また、漏洩電流等の被検出電流を総称して、以下、「被検出電流」という。ただし、電流検出装置1の用途は、これに限定されない。漏電遮断器100と漏電リレー300の構成例については、別途、図12図13を参照して説明する。
【0013】
導線2は、被検出電流が流れる導体の一例である。被検出電流が流れる導体は、導線2に限られず、導電性の導管などの他の形態でもよい。導線2は、例えば、電流検出装置1を設置する電力システムなどを接地するための接地線である。図1は、1本の導線2を例示するが、導線2の本数は二本以上でもよい。例えば、電流検出装置1は、複数の導線間の差電流を検出する零相変流器でもよい。
【0014】
ここで、健全状態では、導線2に流れる電流Iは、零である。しかし、漏電や地絡などが生じている異常状態では、導線2に流れる電流Iは零にならず、検出対象とする被検出電流、例えば15mA~500mA程度の微小な被検出電流が流れる。この導線2の回りにリング状の磁気コア3が配置されている。つまり、磁気コア3内に導線2が挿通されている。
【0015】
磁気コア3は、導線2を囲む環状の磁性部材である。磁気コア3を構成する物質の一例として、Fe-Ni系の磁性合金等の軟磁性体が挙げられる。ただし、磁気コア3を構成する物質は、限定されない。
【0016】
磁気コア3に作用する磁場が大きくなるに伴い、磁気コア3内を通過する磁束密度が大きくなる。また、磁気コア3に作用する磁場がさらに大きくなって、所定値を超えると、磁気コア3内を通過する磁束密度が変化しなくなる。すなわち、磁気コア3は、磁気飽和する。
【0017】
励磁コイル4は、磁気コア3に巻回される。励磁コイル4を構成する各巻線部の内側に、磁気コア3が挿通される。励磁コイル4に、直流又は交流の励磁電流が流れることで、励磁コイル4の内側に磁場が生じる。磁気コア3が磁気飽和していなければ、励磁コイル4の内側に生じた磁場の変化に応じて、磁気コア3内を通過する磁束密度が変化する。なお、励磁コイル4の巻数や断面積等は、限定されない。
【0018】
発振回路5は、磁気コア3を励磁する。発振回路5は、磁気コア3を励磁する励磁電流を励磁コイル4に流す。発振回路5は、磁気コア3を励磁することで矩形波電圧Vaを発生させる。発振回路5は、磁気コア3を飽和状態又はその近傍とした状態で、励磁コイル4に供給する励磁電流の向きを反転させる矩形波電圧Vaを発生させる。発振回路5から出力される矩形波電圧Vaは、電流検出回路6に供給される。
【0019】
電流検出回路6は、発振回路5から出力される矩形波電圧Vaの変化に基づいて被検出電流を検出する。例えば、電流検出回路6は、発振回路5から出力される矩形波電圧Vaのデューティ比の変化に基づいて被検出電流を検出する。
【0020】
電流検出回路6は、フィルタ回路7及び第1増幅回路8を含む。
【0021】
フィルタ回路7は、発振回路5から出力される矩形波電圧Vaの高周波成分を除去する。フィルタ回路7は、例えば、矩形波電圧Vaの高周波成分を除去する積分器として動作する。フィルタ回路7は、矩形波電圧Vaのデューティ比に応じた電圧としてフィルタ出力電圧Vfを発生させる。矩形波電圧Vaがフィルタ回路7に入力されることで、高周波成分が除去された矩形波電圧Vaであるフィルタ出力電圧Vfがフィルタ回路7から出力される。フィルタ回路7には、第1増幅回路8が接続される。
【0022】
第1増幅回路8は、矩形波電圧Vaに対応する入力電圧(この例では、フィルタ出力電圧Vf)を所定の増幅率で増幅した信号である出力電圧Vout1を出力する。出力電圧Vout1は、第1増幅回路の第1出力電圧の一例である。
【0023】
電流検出回路6は、発振回路5、フィルタ回路7、第1増幅回路8又は第2増幅回路10などが持つオフセット誤差eを温度補償する温度補償回路9を含んでもよい。温度補償回路9は、例えば、第1増幅回路8の入力部に接続される。温度補償回路9の詳細な説明は、後述する。
【0024】
電流検出回路6は、検出された被検出電流を異常電流と判定する電流値(動作電流値)を切り替える機能(動作電流切り替え機能)付きの第2増幅回路10を含む。第2増幅回路10は、第1増幅回路8の出力部に接続される。
【0025】
第2増幅回路10は、図示していない動作電流選択スイッチで選択された動作電流に応じた増幅率で第1増幅回路8の出力電圧Vout1を増幅した信号である出力電圧Vout2を出力する。出力電圧Vout2は、第2増幅回路の第2出力電圧の一例である。
【0026】
電流検出回路6は、発振回路5、フィルタ回路7又は第1増幅回路8などが持つオフセット誤差eの個体差を補償する調整回路11を含んでもよい。調整回路11は、例えば、第2増幅回路10の入力部に接続される。調整回路11の詳細な説明は、後述する。
【0027】
電流検出回路6は、絶対値回路12及び判定回路13を含む。絶対値回路12は、第2増幅回路10の出力部に接続される。判定回路13は、絶対値回路12の出力部に接続される。
【0028】
絶対値回路12は、第2増幅回路10からの出力電圧Vout2の絶対値である出力電圧Vout3を出力する。絶対値回路12は、例えば、基準電圧Vref以下の信号を反転増幅して出力する。
【0029】
判定回路13は、出力電圧Vout2に基づいて(この例では、出力電圧Vout2に基づく出力電圧Vout3に基づいて)、動作電流値以上の被検出電流の発生を判定する。判定回路13は、例えば、出力電圧Vout2又は出力電圧Vout3を閾値電圧Vth3と比較することで、動作電流値以上の被検出電流の発生有無を判定する。判定回路13は、出力電圧Vout2又は出力電圧Vout3が閾値電圧Vth3以上であると、動作電流値以上の被検出電流の発生が有ると判定する。判定回路13は、出力電圧Vout2又は出力電圧Vout3が閾値電圧Vth3未満であると、動作電流値以上の被検出電流の発生が無いと判定する。判定回路13は、出力電圧Vout2又は出力電圧Vout3が閾値電圧Vth3以上である場合、動作電流値以上の被検出電流の発生が有ると判定したことを表す判定出力信号を出力する。
【0030】
電流検出回路6は、判定回路13の判定感度を調節する調節回路14を含んでもよい。調節回路14は、例えば、判定回路13の入力部に接続される。調節回路14は、判定回路13の判定感度の個体差による動作電流値の変動を補償する。調節回路14は、例えば、判定回路13に設定される閾値電圧Vth3を調整することで、判定回路13の判定感度を調整する。調節回路14の詳細な説明は、後述する。
【0031】
次に、第1実施形態に係る電流検出装置の具体的な回路構成例と動作例について説明する。
【0032】
図2は、発振回路5のアナログの回路構成例を示す図である。発振回路5では、抵抗23と抵抗24との間の接続点Eの閾値電圧Vth1が、オペアンプ21の非反転入力側に供給されている。この閾値電圧Vth1は、抵抗23の抵抗値をR1、抵抗24の抵抗値をR2、オペアンプ21の出力電圧をVaとするとき、下記(1)式で表される。
【0033】
Vth1={R1/(R1+R2)}Va ・・・(1)
オペアンプ21は、抵抗23と抵抗24との間の接続点Eの閾値電圧Vth1と、励磁コイル4と抵抗22との間の接続点Dの電圧Vdとを比較し、その比較出力を、図3(a)に示す出力電圧Vaとして出力側から出力する。
【0034】
今、図3(a)に示すように、時点t1で、オペアンプ21の出力側の出力電圧Vaがハイレベルとなると、このハイレベルの出力電圧Vaが励磁コイル4に印加される。このため、励磁コイル4には、出力電圧Vaと抵抗22の抵抗値R12とに応じた励磁電流Iexが供給される。このとき、励磁電流Iexは、図3(b)に示すように、出力電圧Vaの立ち上がり時点t1から比較的急峻に上昇し、その後緩やかに上昇する放物線状に増加する。
【0035】
励磁電流Iexがこのように増加しているとき、オペアンプ21の非反転入力側には、出力電圧Vaを抵抗23の抵抗値R1及び抵抗24の抵抗値R2で分圧した閾値電圧Vth1が入力されている。一方、オペアンプ21の反転入力側の接続点Dの電圧Vdは、励磁コイル4の励磁電流Iexの増加に応じて増加する。その後、励磁電流Iexが再度急峻に増加して、電圧Vdが時点t2で図3(b)のF点で非反転入力側の閾値電圧Vth1を上回ると、オペアンプ21の出力電圧Vaは、図3(a)に示すように、ローレベルに反転する。
【0036】
出力電圧Vaのローレベルへの反転に応じて、励磁コイル4を流れる励磁電流Iexの向きは反転する。励磁電流Iexは、最初は比較的急峻に低下し、その後、緩やかに低下する放物線状に減少する。
【0037】
励磁電流Iexがこのように減少しているとき、閾値電圧Vth1は、出力電圧Vaがローレベルとなっていることにより、基準電位よりも低い負電圧となっている。そして、オペアンプ21の反転入力側の接続点Dの電圧Vdが、励磁コイル4の励磁電流Iexの減少に応じて低下し、この電圧Vdが時点t3で非反転入力側の負の閾値電圧Vth1を下回ると、オペアンプ21の出力電圧Vaが図3(a)に示すように、時点t1と同様にハイレベルに反転する。
【0038】
このため、出力電圧Vaは、図3(a)に示すように、ハイレベル及びローレベルを繰り返す矩形波電圧となり、発振回路5が非安定マルチバイブレータとして動作する。そして、励磁コイル4の励磁電流Iexは、図3(b)に示すように増加及び減少を繰り返す波形となる。
【0039】
ところで、磁気コア3は、図4(a)に示すように角型比の大きな磁束密度Bと磁界の強さHとの関係を表すB-H特性を有し、高透磁率材料の非線形な特性を有する。このB-H特性を有する磁気コア3のインダクタンスLは、導線2の電流が零であるときに、図4(b)に示すように飽和電流付近Gで急激に消失する。磁気コア3を貫通する導線2に任意の検出対象となる微小な電流値Cの電流Iが生じると、図4(b)のLI特性は、破線図示のように電流値Cに応じて磁界の強さHの正方向にシフトしてインダクタンスが消失するタイミングが変化する。
【0040】
このため、電流が零のときにインダクタンスが飽和する電流(図4のG)と励磁電流Iexの向きが切り換わる電流(図3のF)とを一致させる。そうすると、インダクタンスが飽和する電流(図4のJ)が導線2の電流Iの電流値Cに応じて変化するので、励磁電流Iexの向きが切り換わる電流(図3(b)のH)も同様に変化することになる。
【0041】
この励磁電流Iexの向きが切り換わる電流値が変化することにより、接続点Dの電圧Vdが閾値電圧Vth1を上回るタイミングが遅れることになる。このため、オペアンプ21から出力される出力電圧Vaの立ち下がり時点が導線2の電流Iの電流値Cに応じて図3(a)で破線図示のように遅れる。この結果、矩形波の出力電圧Va(矩形波電圧Va)のデューティ比が導線2の電流Iの電流値Cに応じて変化する。
【0042】
発振回路5は、この矩形波電圧Vaを、矩形波電圧Vaのデューティ比を検出する電流検出回路6に供給する。電流検出回路6は、矩形波電圧Vaの高周波成分をフィルタ回路7によって除去して矩形波電圧Vaのデューティ比に応じたフィルタ出力電圧Vfを出力する。フィルタ出力電圧Vfは、第1増幅回路8に供給されて増幅される。フィルタ回路7は、矩形波電圧Vaの高周波成分を効率的に除去するため、例えば、オペアンプを用いた2次以上のアクティブフィルタにより構成される。
【0043】
次に、図5を用いて発振回路の出力電圧と電流検出回路の電流検出電圧について説明する。
【0044】
導線2の電流Iが0である状態では、発振回路5から出力される矩形波電圧Vaは、図5(a)で実線図示のようにデューティ比が50%となる。一方、導線2の電流Iが0である状態では、第1増幅回路8から出力される出力電圧Vout1は、図5(b)で実線図示のように、基準電圧Vb(例えば0V)を維持している。
【0045】
この状態から、導線2に微小な電流Iが流れたときには、発振回路5から出力される矩形波電圧Vaは、図5(a)で点線図示のように電流Iの電流値Cに応じてデューティ比が増加する。このため、フィルタ出力電圧Vfは第1増幅回路8により増幅されるので、出力電圧Vout1は基準電圧Vbより増加することになる。電流検出回路6は、この出力電圧Vout1の変化を捉えることによって、微小な電流Iを検出できる。
【0046】
図6は、オフセット誤差の影響を例示する模式図である。導線2に流れる電流Iが0の状態にも関わらず電流Iが流れた場合と同様のオフセット電圧Voff1が出力電圧Vout1に生じることがある。オフセット電圧Voff1は、例えば、発振回路5の出力電圧(矩形波電圧Va)の変動と発振回路5、フィルタ回路7及び第1増幅回路8で用いられているオペアンプなどの電子部品固有のオフセット誤差eとにより、出力電圧Vout1に発生する。
【0047】
回路の基準電圧Vbを0とした場合、理想的にはオフセット電圧Voff1は0であり、導線2に流れる電流Iと第1増幅回路8の出力電圧Vout1との関係は、図6(a)の破線のようになる。しかし、前述のオフセット誤差eによりオフセット電圧Voff1が0とはならず、導線2に流れる電流Iと第1増幅回路8の出力電圧Vout1との関係は、図6(a)の実線のように破線に対してシフトする。
【0048】
電流検出回路6は、後段の判定回路13で使用される閾値電圧Vth3を統一して回路や調整を簡略化するために、絶対値回路12により基準電圧Vref以下の信号を反転させる処理を行ってから、所定の閾値電圧Vth3により判定処理を行う。そのため、導線2に流れる電流Iと絶対値処理後の出力電圧Vout3との関係は、図6(b)の通りとなる。前述のオフセット誤差eの影響を受けている状態では、理想的な状態の動作電流(Id+,Id-)と比べて動作電流に誤差が生じ、かつ、同じ電流値にも関わらず通電方向の違いにより動作電流値が変動する(Id'+,Id'-)。更に、オフセット誤差eは温度依存性を持つことから、周囲温度に応じて動作電流値が変動し、周囲温度変化による誤検知や動作不良が生じるおそれがある。
【0049】
そこで、第1実施形態に係る電流検出装置1は、図1で示したように、オフセット誤差eの個体差を補償する調整回路11と、オフセット誤差eを温度補償する温度補償回路9とを、備えることで、高精度な電流検出を実施する。
【0050】
調整回路11及び温度補償回路9は、発振回路又は電流検出回路のオフセット誤差を補償する補償回路の一例である。第1実施形態に係る電流検出装置1の補償回路は、調整回路11及び温度補償回路9の両方を含むが、調整回路11及び温度補償回路9のうちいずれか一方のみを含んでもよい。
【0051】
図7は、第1増幅回路8、第2増幅回路10、温度補償回路9及び調整回路11のアナログの回路構成例を示す図である。
【0052】
第1増幅回路8は、矩形波電圧Vaのデューティ比に応じた入力電圧(この例では、フィルタ出力電圧Vf)を増幅する。第1増幅回路8は、抵抗33,34,35,36及びオペアンプ31による反転増幅回路である。オペアンプ31の反転入力端子には、フィルタ出力電圧Vf(矩形波電圧Vaに対応する入力電圧の一例)が入力される。オペアンプ31の非反転入力端子には、前述のオフセット誤差eの温度特性を補償するための温度補償回路9が接続されている。
【0053】
温度補償回路9は、第2増幅回路10の出力電圧Vout2に含まれるオフセット電圧を温度補償する。温度補償回路9は、第1増幅回路8の基準電圧を温度に応じて調整することで、第2増幅回路10の出力電圧Vout2に含まれるオフセット電圧をゼロに低減する。温度補償回路9は、サーミスタ40と抵抗37,38,39とにより電源電圧(V+,V-)を分圧する分圧回路を含む。
【0054】
第2増幅回路10は、第1増幅回路8の出力電圧Vout1を増幅する。第2増幅回路10は、抵抗41,42,44、帰還抵抗49,50,51及びオペアンプ32による反転増幅回路である。オペアンプ31の反転入力端子には、出力電圧Vout1が入力される。オペアンプ32の非反転入力端子には、オフセット誤差eの電流検出装置1の個体差を調整するための調整回路11が接続されている。
【0055】
調整回路11は、第2増幅回路10の基準電圧を調整することで、第2増幅回路10の出力電圧Vout2に含まれるオフセット電圧をゼロに低減する。調整回路11は、抵抗45,46と可変抵抗器47とにより電源電圧(V+,V-)を分圧する分圧回路を含む。
【0056】
電流検出回路6は、第2増幅回路10の増幅率を切り替える切り替え回路43を動作電流切替機能として含む。切り替え回路43は、第2増幅回路10の増幅率を異なる値に切り替えるため、スイッチ48及び帰還抵抗49,50,51を含む。
【0057】
図8は、動作電流の切り替えの動作例を例示する模式図である。図8で示すように、切り替え回路43は、各設定の動作電流値における第2増幅回路10の出力電圧Vout2が互いに同一となるように第2増幅回路10の増幅率を設定する。これにより、後段の判定回路13は、同一(共通)の閾値電圧Vth3を用いて判定動作できる。切り替え回路43は、電流検出装置1外部からの切り替え信号(例えば、ユーザによる操作信号)に従って、帰還抵抗49,50,51の中から接続する帰還抵抗をスイッチ48により選択することで、第2増幅回路10の増幅率を切り替える。
【0058】
次に、オフセット誤差eの補償動作を説明する。
【0059】
まず、図7において、調整回路11は、常温(例えば25℃)におけるオフセット誤差eの電流検出装置1の個体差を調整する。例えば、調整回路11は、出力電圧Vout2に含まれるオフセット電圧をオペアンプ32の入力電圧に換算した電圧と同一の電圧がオペアンプ32の非反転入力端子に加わるように、オペアンプ32の非反転入力端子の基準電圧を調整する。出力電圧Vout2に含まれるオフセット電圧をオペアンプ32の入力電圧に換算した電圧とは、出力電圧Vout2を、第2増幅回路10の増幅率で除算した値である。この例では、調整回路11は、電源電圧(V+,V-)を抵抗45,46と可変抵抗器47により分圧した電圧を、オペアンプ32の非反転入力端子に印加する。これにより、オフセット誤差eの電流検出装置1の個体差を補償できる。
【0060】
調整回路11は、例えば、電流検出装置1外部からの切り替え信号(例えば、ユーザによる操作信号)に従って、可変抵抗器47の抵抗値を調整することで、オペアンプ32の非反転入力端子の基準電圧を調整する。
【0061】
調整回路11は、導線2に流れる電流Iが0の状態で出力電圧Vout2と基準電圧との差(オフセット電圧)をモニタしながら、その差が0となるように可変抵抗器47を調整する。この際、第2増幅回路10に設定される増幅率は、いずれの値でもよい。しかし、より高い増幅率に設定した方が、出力電圧Vout2の値が高くなるので、出力電圧Vout2と基準電圧との差(オフセット電圧)をモニタする測定器の分解能の影響を受けづらくなる。
【0062】
次に、温度補償回路9は、出力電圧Vout2に含まれるオフセット電圧をオペアンプ31の入力電圧に換算した電圧と同一の電圧がオペアンプ31の非反転入力端子に加わるように、オペアンプ31の非反転入力端子の基準電圧を調整する。出力電圧Vout2に含まれるオフセット電圧をオペアンプ31の入力電圧に換算した電圧とは、出力電圧Vout2に含まれるオフセット電圧を、第1増幅回路8の増幅率と第2増幅回路10の増幅率で除算した値である。温度補償回路9は、オペアンプ31の非反転入力端子の基準電圧を調整することで、オフセット誤差eの温度特性による影響を相殺し、出力電圧Vout2に含まれるオフセット電圧を0にする。
【0063】
図9は、温度と温度補償回路出力の関係を例示する図である。図9で示すように、温度補償回路9は、オペアンプ31の入力電圧に換算したオフセット誤差Vout2'と同一の電圧がオペアンプ31の非反転入力端子に加わるように、オペアンプ31の非反転入力端子の基準電圧を調整する。温度補償回路9は、あらかじめ測定されたオフセット誤差eの温度依存性とほぼ一致するように、温度補償回路9により生成される電圧によってオフセット誤差eを相殺する。
【0064】
ここで、第1増幅回路8、温度補償回路9、第2増幅回路10および調整回路11は、いずれの順番で配置されても(配置の順番を入れ替えても)、オフセット誤差eを低減する効果を奏する。しかし、第2増幅回路10の増幅率の切替動作を簡便にするためには、温度補償回路9は第1増幅回路8の入力側(入力部)に、調整回路11は第2増幅回路10の入力側(入力部)に配置されることが好ましい。温度補償回路9と調整回路11は、発振回路5と第2増幅回路10との間の信号伝達経路上に配置される。
【0065】
具体的には、増幅率切り替え機能(動作電流切替機能)を有する第2増幅回路10の前段に、温度補償回路9および調整回路11が配置される。増幅率切り替え機能よりも後段に温度補償回路9および調整回路11を配置した場合、第2増幅回路10の増幅率によって、調整段でのオフセット誤差が増幅率の設定毎に変わってしまう。それにより、増幅率切り替えのたびに調整量を変更することが求められるので、温度補償回路部に更なる調整機構を設ける、増幅率の切り替えのたびに調整機構によりオフセット誤差を調整するといった不都合が生じる。そのため、回路と調整の簡略化のためには、増幅率切り替え機能を有する第2増幅回路10の前段に温度補償回路9及び調整回路11を配置することが好ましい。
【0066】
調整回路11の前段では、できるかぎりセンサ出力(出力電圧)を高くしておくことが好ましいので、固定の増幅率を持つ第1増幅回路8による増幅処理があらかじめ行われる。調整回路11で用いられている可変抵抗器47は、放射ノイズなどの外来ノイズの影響を受けやすく、電圧変動が生じやすい。そのため、相殺する電圧レベルをあらかじめ高く設定しておく(増幅しておく)ことで、高精度なオフセット誤差eの調整が実現される。
【0067】
なお、例えば、第1増幅回路8の増幅率をG1、第2増幅回路10の増幅率をG2とするとき、トータルの増幅率Gtotal=G1×G2が最も低くなる動作電流値(図8の設定1)の場合に、G2=1としてGtotalはG1となるように設定される。
【0068】
次に、電流検出装置1の個体差による判定回路13の判定感度の変動を補償する動作について説明する。
【0069】
判定感度は、磁気コア3の磁気特性や信号処理で用いられている電子部品の精度などにより変動する。そのため、特に高感度な電流検出を要する小さい動作電流、すなわち高い増幅率の場合には、この変動は、無視できず、検出精度の悪化を招く。そこで、調節回路14は、電流検出装置1ごとに閾値電圧Vth3を調整し、電流検出装置1の個体差による変動を補償する。
【0070】
図10は、絶対値回路、判定回路及び調節回路のアナログの回路構成例を示す図である。
【0071】
絶対値回路12は、第2増幅回路10の出力電圧Vout2が入力される。絶対値回路12は、出力電圧Vout2を、基準電圧Vrefより低い負の値を正に反転させた出力電圧Vout3に変換する。絶対値回路12は、出力電圧Vout2の絶対値である出力電圧Vout3を生成する。
【0072】
絶対値回路12は、2つのオペアンプ61,62、ダイオード64,65および抵抗66~70を含む。オペアンプ61は、基準電圧より低いセンサ信号を0(基準電圧)として出力し、基準電圧より高い信号を反転させて出力する。次に、オペアンプ62は、電圧比率2:1でオペアンプ61からの信号と第2増幅回路10からの出力電圧Vout2とを加算した後、反転増幅して出力している。この動作により、出力電圧Vout3は、基準電圧より低い負のセンサ出力を正に反転させたセンサ出力として生成される。
【0073】
判定回路13は、コンパレータ63を含む。判定回路13は、出力電圧Vout3を所定の閾値電圧Vth3を比較し、出力電圧Vout3が閾値電圧Vth3以上でハイレベル、閾値電圧Vth3未満でローレベルの判定出力信号を出力する。
【0074】
調節回路14は、可変抵抗器74と抵抗72,73とにより電源電圧(V+,V-)を分圧する分圧回路を含む。調節回路14は、可変抵抗器74と抵抗72,73とにより電源電圧(V+,V-)を分圧することで、閾値電圧Vth3を調整することで、図11で示すように、判定感度の電流検出装置1の個体差を補償する。
【0075】
図11は、調節回路の動作例を示す模式図である。破線は理想的なセンサ出力の場合を表す。実線は、磁気コア3の磁気特性や信号処理で用いられている電子部品の精度などにより、センサ出力が理想的でない場合を表す。調節回路14は、閾値電圧をVth3'に調整することで、狙いの動作電流(Id+,Id-)で判定回路13の判定処理を実施させる。
【0076】
調節回路14は、工場出荷時などにあらかじめ狙いの動作電流を流し、判定回路13の出力をモニタしながら、電流検出無しの状態から徐々に電流検出ありと判定されるまで、閾値電圧Vth3を上げていく。
【0077】
なお、個体差によるセンサ出力感度の変動を補償する方法として、示した実施例のように閾値を調整する他に、増幅率を外部調整して補償する方法も考えられる。しかし、前述と同様に、オフセット誤差を補償する温度補償回路9及び調整回路11の前段に、増幅率が変動する機構を配置することは望ましくない。そのような制約のもとで、簡素な回路でセンサ出力感度の変動を補償するためには、本開示の回路構成が望ましい。
【0078】
以上の構成により、動作電流の切り替えが容易で周囲温度に依存しない高精度で安価な直流検出可能な電流検出装置を実現することができる。調整回路11の調整および調節回路14の調節は、例えば、工場出荷時に行っておくだけでもよい。
【0079】
図12は、電流検出装置を備える漏電遮断器の構成例を示す図である。漏電遮断器100は、電流検出装置1と、遮断手段200と、を備える。遮断手段200は、例えば、漏洩電流等の被検出電流が電流検出装置1により検出された場合、電路15を遮断する遮断機構である。遮断手段200は、電流検出装置1からの判定出力信号に基づき、電路15を遮断する。
【0080】
遮断手段200は、例えば、電流検出装置1の電流検出回路6に接続され、判定出力信号に応じて、電路15を遮断するよう動作するアクチュエータである。また、遮断手段200は、電路15を開閉する電磁接触器等を備えていてもよい。さらに、遮断手段200は、半導体スイッチング素子を含む電子回路等であってもよい。ただし、遮断手段200の構成は、これらに限定されない。
【0081】
図13は、電流検出装置を備える漏電リレーの構成例を示す図である。漏電リレー300は、電流検出装置1と、リレー301と、を備える。リレー301は、漏洩電流等の被検出電流が電流検出装置1により検出された場合、接点出力を行う。リレー301は、例えば、電流検出装置1からの判定出力信号に基づき、漏電リレー300の外部に対して、接点出力を発する。漏電リレー300の外部に設けられる遮断手段200は、接点出力を受けた場合、電路を遮断する。
【0082】
図14は、フィルタ回路7の構成例を示す図である。フィルタ回路7は、矩形波電圧Vaのデューティ比に応じた電圧としてフィルタ出力電圧Vfを発生させる。図14は、フィルタ回路7が、オペアンプ85を用いたアクティブフィルタの場合を例示する。このアクティブフィルタは、抵抗81,82、コンデンサ83,84及びオペアンプ85による非反転回路構成を有する、サレンキー型の二次ローパスフィルタである。フィルタ回路7は、この構成に限られるものではない。
【0083】
以上の通り、実施形態を説明したが、上記実施形態は、例として提示したものであり、上記実施形態により本発明が限定されるものではない。上記実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の組み合わせ、省略、置き換え、変更などを行うことが可能である。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0084】
本実施形態において、コントローラ又は制御回路は、CPU(Central Processing Unit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)又はASIC(Application Specific Integrated Circuit)等の電子回路である。コントローラ又は制御回路は、メモリ及びプロセッサを有するコンピュータでもよい。コントローラ又は制御回路は、メモリに格納された命令コード等のプログラムを実行することにより、または特殊用途向けに回路設計されることにより、本願明細書に記載の各種制御動作を実行してもよい。
【符号の説明】
【0085】
1 電流検出装置
2 導線
3 磁気コア
4 励磁コイル
5 発振回路
6 電流検出回路
7 フィルタ回路
8 第1増幅回路
9 温度補償回路
10 第2増幅回路
11 調整回路
12 絶対値回路
13 判定回路
14 調節回路
15 電路
43 切り替え回路
100 漏電遮断器
200 遮断手段
300 漏電リレー
301 リレー
【要約】
【課題】高精度に被検出電流を検出すること。
【解決手段】被検出電流が流れる導体を囲む磁気コアと、前記磁気コアに巻回される励磁コイルと、前記磁気コアを励磁することで矩形波電圧を発生させる発振回路と、前記矩形波電圧の変化に基づいて前記被検出電流を検出する電流検出回路と、前記発振回路又は前記電流検出回路のオフセット誤差を補償する補償回路と、を備える、電流検出装置。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14