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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-20
(45)【発行日】2025-01-28
(54)【発明の名称】電力変換装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/48 20070101AFI20250121BHJP
   H02M 7/493 20070101ALI20250121BHJP
【FI】
H02M7/48 Z
H02M7/493
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2024525878
(86)(22)【出願日】2022-10-31
(86)【国際出願番号】 JP2022040817
(87)【国際公開番号】W WO2024095348
(87)【国際公開日】2024-05-10
【審査請求日】2024-05-01
(73)【特許権者】
【識別番号】501137636
【氏名又は名称】株式会社TMEIC
(74)【代理人】
【識別番号】110003199
【氏名又は名称】弁理士法人高田・高橋国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】萩原 拓己
(72)【発明者】
【氏名】多和田 義大
【審査官】冨永 達朗
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-522843(JP,A)
【文献】特開2020-14380(JP,A)
【文献】特開2018-133864(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0138689(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2022/0190736(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/48
H02M 7/493
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体と、前記筐体内にそれぞれ同一構造の第1の三相一括半導体ユニットと第2の三相一括半導体ユニットと、を備える電力変換装置であって、
前記第1の三相一括半導体ユニットと前記第2の三相一括半導体ユニットとは、
それぞれ冷却器と、半導体と、ゲートドライバ基板と、第1交流端子と、第2交流端子と、第3交流端子とを有し、
それぞれ前記筐体内の外側に前記冷却器が配され、前記筐体内の内側に前記半導体と、前記ゲートドライバ基板と、前記第1交流端子と、前記第2交流端子と、前記第3交流端子とが配されるように、前記筐体内で、前記第1交流端子と、前記第2交流端子と、前記第3交流端子とが向かい合わせに配置され、
前記第1の三相一括半導体ユニットは、前記電力変換装置が有する信号分配基板によって、前記第1交流端子にはU相の信号が送信され、前記第2交流端子にはV相の信号が送信され、前記第3交流端子にはW相の信号が送信されるよう構成され、
前記第2の三相一括半導体ユニットは、前記電力変換装置が有する前記信号分配基板によって、U相とW相とが反転するように配線が入れ替えられ、前記第1交流端子にはW相の信号が送信され、前記第2交流端子にはV相の信号が送信され、前記第3交流端子にはU相の信号が送信されるよう構成される
ことを特徴とする電力変換装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電力変換装置において、
前記信号分配基板によって、それぞれ前記U相の信号が送信される前記第1の三相一括半導体ユニットの前記第1交流端子と、前記第2の三相一括半導体ユニットの前記第3交流端子とは、前記筐体内の内側で向かい合わせに正面で接続され、
前記信号分配基板によって、それぞれ前記V相の信号が送信される前記第1の三相一括半導体ユニットの前記第2交流端子と、前記第2の三相一括半導体ユニットの前記第2交流端子とは、前記筐体内の内側で向かい合わせに正面で接続され、
前記信号分配基板によって、それぞれ前記W相の信号が送信される前記第1の三相一括半導体ユニットの前記第3交流端子と、前記第2の三相一括半導体ユニットの前記第1交流端子とは、前記筐体内の内側で向かい合わせに正面で接続される
ことを特徴とする電力変換装置。
【請求項3】
請求項1に記載の電力変換装置において、
前記筐体は、
前記筐体内の外側の半導体冷却エリアを冷却する外気を取り入れる第1吸気口と、
前記筐体内の内側の電子部品エリアを冷却するクリーンな空気を、エアフィルタを介して取り入れる第2吸気口と、
冷却ファンと、
を備え、
前記半導体冷却エリアには前記第1吸気口から取り入れられた前記外気のみが流れ、前記電子部品エリアには前記エアフィルタを介して前記第2吸気口から取り入れられた前記クリーンな空気のみが流れるよう、前記半導体冷却エリアと前記電子部品エリアとは、前記筐体内で分離されており、
前記冷却ファンは、前記筐体内を別々に流れた後に合流した前記外気と前記クリーンな空気とを排気するよう構成される
ことを特徴とする電力変換装置。
【請求項4】
請求項1に記載の電力変換装置において、
前記筐体は、
前記筐体内の外側の半導体冷却エリアを冷却する外気を取り入れる第1吸気口と、
前記筐体内の内側の電子部品エリアを冷却する内気の熱を吸熱する熱交換器と、
冷却ファンと、
を備え、
前記半導体冷却エリアには前記第1吸気口から取り入れられた前記外気のみが流れ、前記電子部品エリアには前記熱交換器により吸熱されて冷却された前記内気のみが循環して流れるよう、前記半導体冷却エリアと前記電子部品エリアとは、前記筐体内で分離されており、
前記冷却ファンは、前記外気のみを排気するよう構成される
ことを特徴とする電力変換装置。
【請求項5】
請求項2に記載の電力変換装置において、
前記筐体内には、前記第1の三相一括半導体ユニットと前記第2の三相一括半導体ユニットとの組が上下方向に複数配置され、
前記筐体内の内側で向かい合わせに正面で接続された複数組の前記第1の三相一括半導体ユニットの前記第1交流端子と、前記第2の三相一括半導体ユニットの前記第3交流端子とは、上下方向でさらに接続され、
前記筐体内の内側で向かい合わせに正面で接続された複数組の前記第1の三相一括半導体ユニットの前記第2交流端子と、前記第2の三相一括半導体ユニットの前記第2交流端子とは、上下方向でさらに接続され、
前記筐体内の内側で向かい合わせに正面で接続された複数組の前記第1の三相一括半導体ユニットの前記第3交流端子と、前記第2の三相一括半導体ユニットの前記第1交流端子とは、上下方向でさらに接続される
ことを特徴とする電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電力変換装置(PCS:Power Conditioning System)では、盤(筐体)一つに対して一つの三相一括半導体ユニットが配置されていた(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
しかし、近年、例えば太陽光発電用や蓄電池用の電力変換装置では、インバータの容量拡大に伴い、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor:絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)等の半導体素子の個数が増加傾向にある。このため、近年では、電力変換装置において、三相一括半導体ユニットが一つの盤に複数配置されることがある。
【0004】
ところで、三相一括半導体ユニットが盤に複数配置される場合、当該三相一括半導体ユニットは、製造性等の観点から同一構造であることが好ましい。例えば、三相一括半導体ユニットが盤に複数配置されている従来機種では、同一構造の複数の三相一括半導体ユニットがサーバーラックのように盤に多段積みとされている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】日本特開2017-204901号公報
【文献】国際公開第2019/207723号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、近年の電力変換装置(インバータ)の容量増大に伴い、半導体素子の使用個数がさらに増加する傾向にあり、また、インバータの容量拡大に伴い、半導体素子一個当たりの発熱量も増加する傾向にある。これにより、冷却器の責務も増加し、冷却器のサイズも大きくなる傾向にある。そのため、従来よりも、三相一括半導体ユニットのサイズも大きくなる傾向にあり、冷却効率や交換性を考慮した場合、従来のように、複数の三相一括半導体ユニットを盤に多段積みするようなレイアウトが困難となってきている。
【0007】
また、三相一括半導体ユニットは、主に冷却器と半導体と制御基板とで構成されているが、半導体と制御基板とは、汚損のリスクがある外気からなるべく隔離する必要がある。しかし、複数の三相一括半導体ユニットを盤に多段積みするようなレイアウトでは、半導体と制御基板とを外気からなるべく隔離させようとする場合、冷却流路が複雑となり圧損が大きくなってしまう。あるいは、複数の三相一括半導体ユニットを均等に冷却させようとする場合、使用するファンの個数も多くなってしまう。
【0008】
そこで、本件開示は、電力変換装置の筐体に三相一括半導体ユニットを複数配置する場合において、従来よりも、耐環境性の向上、冷却性の担保、冷却流路の単純化、交換性の向上を図りつつ、導体使用量の削減、導体接続の簡易化、最適化を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
一態様に係る電力変換装置は、筐体と、筐体内にそれぞれ同一構造の第1の三相一括半導体ユニットと第2の三相一括半導体ユニットと、を備える電力変換装置であって、第1の三相一括半導体ユニットと第2の三相一括半導体ユニットとは、それぞれ冷却器と、半導体と、ゲートドライバ基板と、第1交流端子と、第2交流端子と、第3交流端子とを有し、それぞれ筐体内の外側に冷却器が配され、筐体内の内側に半導体と、ゲートドライバ基板と、第1交流端子と、第2交流端子と、第3交流端子とが配されるように、筐体内で、第1交流端子と、第2交流端子と、第3交流端子とが向かい合わせに配置され、第1の三相一括半導体ユニットは、電力変換装置が有する信号分配基板によって、第1交流端子にはU相の信号が送信され、第2交流端子にはV相の信号が送信され、第3交流端子にはW相の信号が送信されるよう構成され、第2の三相一括半導体ユニットは、電力変換装置が有する信号分配基板によって、U相とW相とが反転するように配線が入れ替えられ、第1交流端子にはW相の信号が送信され、第2交流端子にはV相の信号が送信され、第3交流端子にはU相の信号が送信されるよう構成される。
【発明の効果】
【0010】
本件開示によれば、電力変換装置の筐体に三相一括半導体ユニットを複数配置する場合において、従来よりも、耐環境性の向上、冷却性の担保、冷却流路の単純化、交換性の向上を図りつつ、導体使用量の削減、導体接続の簡易化、最適化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】第1実施形態に係る電力変換装置の構成の一例を示す図である。
図2図1に示すIGBTユニットの構成の一例を示す図である。
図3図1に示す電力変換装置の筐体内部における各構成の配置構造の一例を示す図である。
図4図3に示す電力変換装置の筐体内部の配置構造における半導体冷却エリアと電子部品エリアとの区分けの一例を示す側面図である。
図5図3に示す電力変換装置の筐体内部の配置構造における半導体冷却エリアと電子部品エリアとの区分けの一例を示す背面図である。
図6図1から図5に示す電力変換装置の制御構成の一例を示す図である。
図7図1から図5に示す電力変換装置の制御構成の一例を示す図である。
図8】電力変換装置におけるIGBTユニットの配置構造及び従来の信号分配基板の制御構成の一例を示す図である。
図9】第1実施形態に係る電力変換装置におけるIGBTユニットの配置構造及び信号分配基板の制御構成の一例を示す図である。
図10】第2実施形態に係る電力変換装置における各構成の配置構造及び半導体冷却エリアと電子部品エリアとの区分けの一例を示す図である。
図11】第3実施形態に係る電力変換装置におけるIGBTユニットの配置構造の一例を示す図である。
図12】第1比較例に係る電力変換装置におけるIGBTユニットの配置構造の一例を示す図である。
図13】第2比較例に係る電力変換装置におけるIGBTユニットの配置構造の一例を示す図である。
図14】第3比較例に係る電力変換装置におけるIGBTユニットの配置構造の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本件開示に係る三相一括半導体ユニットの配置構造、三相一括半導体ユニット、及び電力変換装置の実施形態について、図面を用いて説明する。
【0013】
<第1実施形態>
図1は、第1実施形態に係る電力変換装置10の構成の一例を示す図である。なお、本実施形態では、電力変換装置10が用いられる電力変換システムの一例として、直流電源が太陽光パネル2である太陽光発電システム1について説明する。しかし、これには限られず、本実施形態の電力変換装置10が用いられる電力変換システムは、例えば、直流電源が、蓄電池であっても、太陽電池と蓄電池とが組み合わされたものであってもよい。
【0014】
図1に示すとおり、太陽光発電システム1は、太陽光パネル2と、変圧器3と、交流電力系統4と、電力変換装置10と、直流母線5と、交流回路6とを有する。電力変換装置10は、図1中左側の直流端(入力端)で直流母線5を介して太陽光パネル2と接続され、図1中右側の交流端(出力端)で交流回路6及び変圧器3を介して交流電力系統4と接続される。太陽光発電システム1において、太陽光パネル2で発電された直流電力は、電力変換装置10を介して交流電力に変換され、変換された交流電力は、変圧器3を介して交流電力系統4に供給される。
【0015】
太陽光パネル(太陽電池パネル)2は、直流母線5を介して電力変換装置10の直流端と接続される。太陽光パネル2は、太陽光によって発電を行い、発電された直流電力は、直流母線5を介して電力変換装置10に供給される。以下、本明細書において、太陽光パネル2は、「PV(Photovoltaics)パネル2」とも称される。なお、PVパネル2は、「直流電源」の一例であり、「直流電源」は、例えば、「蓄電池(ESS:Energy Storage System)」であってもよい。
【0016】
変圧器3は、交流回路6を介して一端が電力変換装置10の交流端(出力端)と接続され、他端が交流電力系統4と接続される。変圧器3は、電力変換装置10から出力される交流電力を所定の電圧の高さに変圧して交流電力系統4に出力する。
【0017】
交流電力系統(系統)4は、変圧器3と接続され、変圧器3によって変圧された交流電力を需要家の受電設備に供給するための、発電・変電・送電・配電を統合したシステムであり、例えば、不特定の負荷が接続されている。以下、本明細書において、交流電力系統4は、「系統4」とも称される。
【0018】
直流母線5は、一端が太陽光パネル2と接続され、他端が後述の三相一括半導体ユニット30の直流端(入力端)と接続される。直流母線5は、太陽光パネル2によって発電された直流電力を三相一括半導体ユニット30に供給する。
【0019】
交流回路6は、一端が後述の三相一括半導体ユニット30の交流端(出力端)と接続され、他端が変圧器3を介して系統4と接続される。交流回路6は、例えば、電流又は電圧の位相を互いにずらした3系統の単相交流を組み合わせた三相交流電力を3本の電線・ケーブル・導体を用いて供給する三相三線式の三相交流回路である。交流回路6は、三相一括半導体ユニット30によって変換された交流電力を系統4側に供給する。
【0020】
電力変換装置(PCS:Power Conditioning System)10は、例えば、太陽光発電(PV:Photovoltaics)用の電力変換装置(PV-PCS:Photovoltaics-Power Conditioning System)である。電力変換装置(PCS)10は、太陽光パネル2から供給される直流電力を交流電力に変換し、変換された交流電力を、変圧器3を介して系統4側に出力する。以下、本明細書において、電力変換装置10は、「PCS10」とも称される。なお、PCS10は、蓄電池(ESS)用の電力変換装置(ESS-PCS:Energy Storage System-Power Conditioning System)であってもよい。
【0021】
PCS10は、筐体(盤)11を有し、筐体11の内部において、直流スイッチ21と、三相一括半導体ユニット30と、交流フィルタ24と、交流スイッチ25と、制御装置40とを有する。
【0022】
PCS10は、太陽光パネル2と接続される直流母線5において、太陽光パネル2側から三相一括半導体ユニット30に向けて順に、直流スイッチ21と、三相一括半導体ユニット30とが配置される。太陽光パネル2と三相一括半導体ユニット30との間には、各種センサが配置される。
【0023】
PCS10は、変圧器3を介して系統4と接続される交流回路6において、三相一括半導体ユニット30から変圧器3(系統4)側に向けて順に、三相一括半導体ユニット30と、交流フィルタ24と、交流スイッチ25とが配置される。交流フィルタ24と変圧器3との間には、各種センサが配置される。
【0024】
なお、PCS10における筐体11内部の具体的な配置構造は、後述する(図3~5等参照)。
【0025】
直流スイッチ(直流遮断器)21は、直流母線5において、太陽光パネル2と三相一括半導体ユニット30との間に直列に設けられる。以下、本明細書において、直流スイッチ21は、「直流遮断器21」又は「DC(Direct Current)スイッチ21」とも称される。
【0026】
交流フィルタ24は、AC(Alternating Current)フィルタとも称され、例えば、交流リアクトル24aと交流コンデンサ24bとがL型に接続されたLCフィルタ回路(フィルタ回路)として構成される。以下、本明細書において、交流フィルタ24は、「ACフィルタ24」とも称され、交流リアクトル24aは、「ACリアクトル24a」とも称され、交流コンデンサ24bは、「ACコンデンサ24b」とも称される。
【0027】
交流スイッチ(交流遮断器)25は、交流回路6において、交流フィルタ24と変圧器3との間に直列に設けられる。以下、本明細書において、交流スイッチ25は、「交流遮断器25」又は「ACスイッチ25」とも称される。
【0028】
三相一括半導体ユニット30は、後述の直流コンデンサ22と、冷却器31と、半導体32と、ゲートドライバ基板33とを有する。三相一括半導体ユニット30は、直流端である一端側が直流母線5を介してDCスイッチ21と接続され、交流端である他端側が交流回路6を介して交流フィルタ24と接続される。
【0029】
三相一括半導体ユニット30は、例えば、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor:絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)等の複数のスイッチング素子(半導体素子32)を有する。三相一括半導体ユニット30は、太陽光パネル2から供給される直流電力を直流端から取得し、パルス幅変調信号(ゲート信号)による制御に従い、取得した直流電力を交流電力に変換して、交流端から出力して交流回路6に供給する。以下、本明細書において、三相一括半導体ユニット30は、「IGBTユニット30」とも称される。
【0030】
直流コンデンサ22は、直流スイッチ21と半導体32との間に設けられ、太陽光パネル2からの直流電力により充電されて電圧が上昇し、DCスイッチ21が開放されているときは、例えば、不図示の放電回路や放電抵抗等により放電されて電圧が低下する。以下、本明細書において、直流コンデンサ22は、「DCコンデンサ22」とも称される。
【0031】
なお、三相一括半導体ユニット(IGBTユニット)30のその他の具体的な構成及び配置構造は、後述する(図2等参照)。
【0032】
制御装置40は、例えば、後述の制御基板41等を有し、図中配線等は一部省略されているが、IGBTユニット30を始めとするPCS10の各要素と、有線又は無線によって電気的に接続されている(図6等参照)。
【0033】
制御装置40は、例えば、プログラムを実行することにより動作するCPU(Central Processing Unit)等の不図示のプロセッサと不図示のメモリとを有する。制御装置40は、例えば、不図示のメモリに記憶された所定のプログラムを実行することにより不図示のプロセッサを動作させてPCS10の動作を統括的に制御する。なお、制御装置40は、不図示の上位装置から受け付けた指示や、不図示のオペレータから不図示の操作部を介して受け付けた指示に従って、PCS10の動作を制御してもよい。
【0034】
制御装置40は、例えば、三相の出力電圧指令信号と三角波状のキャリア信号とに基づいてスイッチング素子(半導体素子32)のゲート駆動信号(ゲート信号)であるパルス幅変調(PWM:Pulse Width Modulation)信号を発生させる。制御装置40は、発生させたゲート信号により、IGBTユニット30のスイッチング素子(半導体素子32)を制御して、IGBTユニット30の動作を統括的に制御する。以下、本明細書において、パルス幅変調信号は、「PWM信号」とも称され、パルス幅変調信号に基づく制御は、「PWM制御」とも称される。
【0035】
図2は、図1に示すIGBTユニット30の構成の一例を示す図である。図2(a)は、IGBTユニット30の一部の構成の一例を示す側面図である。図2(b)は、IGBTユニット30の一部の構成の一例を示す斜視図である。図2(c)は、IGBTユニット30全体構成の一例を示す側面図である。図2(d)は、IGBTユニット30の全体構成の一例を示す斜視図である。
【0036】
図2(a)、(b)に示すとおり、IGBTユニット30は、複数のDCコンデンサ22と、冷却器31と、複数の半導体32とを有する。
【0037】
冷却器31は、図2(a)、(b)中、上面に複数の半導体32が当接して配置され、前面に複数のDCコンデンサ22が隣接して配置される。冷却器31は、例えば、冷媒の流れの中に配置された複数のフィンと、冷媒を循環させるファン等を有し、複数の半導体素子32から放熱される熱を冷媒に伝達することで、当接する複数の半導体素子32や、IGBTユニット30内のその他の要素を冷却する。
【0038】
複数の半導体(半導体素子)32は、冷却器31の一つの面に当接するように配置される。複数の半導体32は、例えば、IGBT等の複数のスイッチング素子であり、後述のゲートドライバ基板33を介した制御装置40(制御基板41)からのゲート信号による制御に従い、直流電力を交流電力に変換する。
【0039】
図2(c)、(d)に示すとおり、IGBTユニット30は、さらに、ゲートドライバ基板33と、主回路導体34と、支持部材35と、直流端子36と、交流端子37とを有する。
【0040】
ゲートドライバ基板33は、図2(c)、(d)中、複数の半導体32の上面に配置された支持部材35の上部に配置される。ゲートドライバ基板33は、制御装置40(制御基板41)から出力されるゲート信号を、複数の半導体(半導体素子)32のゲートに送信して半導体32を制御する。
【0041】
主回路導体34(積層ブスバー)は、図2(c)、(d)中、DCコンデンサ22及び半導体32の上部に配置され、冷却器31側に直流端子36が設けられ、DCコンデンサ22側に交流端子37が設けられる。主回路導体34は、例えば、直流端子36から交流端子37に至るまでに、複数の導電層と絶縁層とが所定の配列で積層される積層ブスバーである。
【0042】
支持部材35は、図2(c)、(d)中、冷却器31に支持されて主回路導体34の上部に配置され、支持部材35の上部には、ゲートドライバ基板33が配置される。
【0043】
直流端子36は、図2(c)、(d)中、主回路導体34の冷却器31側に設けられ、IGBTユニット30の外部で直流母線5と接続される(図1等参照)。
【0044】
交流端子37は、図2(c)、(d)中、主回路導体34のDCコンデンサ22側に設けられ、IGBTユニット30の外部で交流回路6と接続される(図1等参照)。交流端子37は、後述のとおり、交流端子37aと、交流端子37bと、交流端子37cとの3つの端子を有する(図9等参照)。なお、交流端子37aは、「第1交流端子」の一例であり、交流端子37bは、「第2交流端子」の一例であり、交流端子37cは、「第3交流端子」の一例である。
【0045】
図3は、図1に示す電力変換装置10の筐体11内部における各構成の配置構造の一例を示す図である。図3(a)は、図1に示す電力変換装置10の筐体11内部における各構成の配置構造の一例を示す正面図である。図3(b)は、図1に示す電力変換装置10の筐体11内部における各構成の配置構造の一例を示す側面図である。図3(c)は、図1に示す電力変換装置10の筐体11内部における各構成の配置構造の一例を示す背面図である。なお、図3(b)は、図3(a)の右側面図である。
【0046】
図3(a)に示すとおり、電力変換装置10は、正面視において、筐体11の内部に、上段に吸気口12を有し、中段左側に直流遮断器21を有し、中段右側に交流遮断器25を有し、下段左側に直流入力部5aを有し、下段右側に制御基板41等を有する。
【0047】
また、図3(b)に示すとおり、電力変換装置10は、側面視において、正面側中段に交流遮断器25を有し、正面側下段に制御基板41等を有する。また、電力変換装置10は、側面視において、中央部上段に吸気口12を有し、中央部中段にIGBTユニット30を有し、中央部下段に交流リアクトル24aを有する。また、電力変換装置10は、側面視において、背面側下段にファン13を有する。
【0048】
また、図3(c)に示すとおり、電力変換装置10は、背面視において、上段に吸気口12を有し、中段の左右両側にそれぞれIGBTユニット30を有し、下段の左右両側にそれぞれファン13を有する。なお、左右両側にそれぞれ配置される2つのIGBTユニット30は、製造性等の観点からそれぞれ同一構造である。
【0049】
なお、図3(a)~(c)において、制御基板41等は、後述のメイン制御基板42と、信号分配基板43とを実装する(図6等参照)。
【0050】
図4は、図3に示す電力変換装置10の筐体11内部の配置構造における半導体冷却エリアAと電子部品エリアBとの区分けの一例を示す側面図である。図4(a)は、図3に示す電力変換装置10の筐体11内部の配置構造における半導体冷却エリアAの一例を示す側面図である。図4(b)は、図3に示す電力変換装置10の筐体11内部の配置構造における電子部品エリアBの一例を示す側面図である。なお、図4(a)、(b)は、図3(b)と同様に、図3(a)の右側面図である。
【0051】
図4(a)において、半導体冷却エリアAは、例えば、正面視及び背面視におけるIGBTユニット30と、交流リアクトル24aとの左右の外側のエリアであり、吸気口12から外気が取り入れられ、ファン13から外気が排出される(図5等参照)。
【0052】
吸気口12は、例えば、パンチ加工された板金等で構成され、半導体32を冷却するために(半導体32を冷却する冷却器31のために)積極的に外気を取り入れる。半導体冷却エリアAは、外気による汚損のリスクの抑制よりも、冷却性能の向上の方が重視されるエリアである。半導体冷却エリアAには、IGBTユニット30のうち、外気による汚損のリスクよりも、冷却性能の向上の方が重視される冷却器31が配置される(図5等参照)。なお、吸気口12は、「第1吸気口」の一例である。
【0053】
ファン(冷却ファン)13は、筐体11の下部の背面側に設けられる。図4(a)中、風の流れを示す矢印で示されるとおり、吸気口12から取り入れられ、半導体冷却エリアAを通った外気は、ファン(冷却ファン)13から排気される。
【0054】
図4(b)において、電子部品エリアBは、例えば、正面視及び背面視における内側のエリアであり(図5等参照)、筐体11の正面側に設けられる電子部品エリアB専用の吸気口14から空気が取り入れられる。電子部品エリアBは、半導体冷却エリアAよりも風量は少ないものの、半導体冷却エリアAよりもクリーンな空気が取り入れられる。
【0055】
吸気口14は、例えば、エアフィルタ14aを有し、エアフィルタ14aを介してクリーンな空気を取り入れる。電子部品エリアBは、冷却性能の向上よりも、外気による汚損のリスクの抑制の方が重視されるエリアである。電子部品エリアBには、IGBTユニット30のうち、汚損のリスクのある外気から隔離する必要のある半導体32とゲートドライバ基板33とが向かい合わせに配置される(図5等参照)。なお、吸気口14は、「第2吸気口」の一例である。
【0056】
なお、IGBTユニット30は、例えば、図2に示すとおり、半導体32やゲートドライバ基板33が外気に触れないよう、例えば、冷却器31が有する隔壁や板金等により、エリアが物理的に分けられるように予め設計されている。また、半導体冷却エリアAと電子部品エリアBとは、吸気部分が吸気口12と吸気口14とで異なり、筐体11の内部において、構造的に分離されるように設計されている。
【0057】
図4(b)中、風の流れを示す矢印で示されるとおり、吸気口14から取り入れられたクリーンな空気は、電子部品エリアBを通って、ファン(冷却ファン)13から排気される。すなわち、本実施形態では、排気部分は、半導体冷却エリアAと電子部品エリアBとで共通しており、半導体冷却エリアAを流れた外気と電子部品エリアBを流れたクリーンな空気とが合流して、同じファン13から排気される。しかし、これには限られず、半導体冷却エリアAを流れた外気と電子部品エリアBを流れたクリーンな空気とが合流せずに、別々に排気されてもよい。
【0058】
図5は、図3に示す電力変換装置10の筐体11内部の配置構造における半導体冷却エリアAと電子部品エリアBとの区分けの一例を示す背面図である。
【0059】
図5において、図3(c)で説明したとおり、電力変換装置10の筐体(盤)11は、背面視において、上段に吸気口12を有し、中段の左右両側にそれぞれIGBTユニット30を有し、下段の左右両側にそれぞれファン(冷却ファン)13を有する。図5に示すとおり、左右の外側が半導体冷却エリアAであり、内側が電子部品エリアBである。なお、図3(c)で説明したとおり、左右両側の2つのIGBTユニット30は、製造性等の観点からそれぞれ同一構造である。
【0060】
半導体冷却エリアAは、図4(a)で説明したとおり、吸気口12から積極的に外気が取り入れられるエリアであり、IGBTユニット30のうち汚損のリスクのある外気から隔離する必要の少ない冷却器31と、交流リアクトル24aとが配置される。これにより、IGBTユニット30の左右の外側に冷却器31が配置される。
【0061】
一方、電子部品エリアBは、図4(b)で説明したとおり、筐体11の正面側に設けられるエアフィルタ14aを有する電子部品エリアB専用の吸気口14からクリーンな空気が取り入れられる。電子部品エリアBは、半導体冷却エリアAよりも風量は少ないものの、半導体冷却エリアAよりもクリーンな空気が取り入れられるエリアである。電子部品エリアBには、IGBTユニット30のうち汚損のリスクのある外気から隔離する必要のある半導体32とゲートドライバ基板33とが配置される。これにより、IGBTユニット30の内側に半導体32とゲートドライバ基板33とが向かい合わせに配置される。
【0062】
図5中、風の流れを示す矢印で示されるとおり、吸気口12から取り入れられた外気は、半導体冷却エリアAを通って、ファン(冷却ファン)13から排気される。また、図5では図示されていないが、吸気口14から取り入れられたクリーンな空気は、電子部品エリアBを通って、外気と合流し、ファン(冷却ファン)13から排気される(図4(b)等参照)。
【0063】
上記の構成によれば、電力変換装置10(筐体11)におけるIGBTユニット30及び交流リアクトル24aの外側を半導体冷却エリアA、内側を電子部品エリアBとして区分けすることができる。これにより、汚損のリスクがあり外気から隔離する必要のある半導体32とゲートドライバ基板33とを電子部品エリアBに向かい合わせに配置することで、耐環境性の向上を図ることができる。また、上記の構成によれば、IGBTユニット30に対しての冷却流路が単純になり、圧損の少ないレイアウトを可能にすることができる。
【0064】
図6及び図7は、図1から図5に示す電力変換装置10の制御構成の一例を示す図である。
【0065】
図6及び図7に示すとおり、電力変換装置10の筐体11の内部において、制御装置40における制御基板41は、メイン制御基板42と、信号分配基板43とを有する。また、電力変換装置10の筐体11の正面視及び背面視において左右に配置された各IGBTユニット30は、それぞれゲートドライバ基板33を有する。
【0066】
メイン制御基板42は、実際に制御を行う基板であり、IGBTユニット30の半導体(半導体素子)32のゲートをオンオフさせるゲート信号を生成して出力する。
【0067】
信号分配基板43は、メイン制御基板42から出力された信号を各ゲートドライバ基板33に送信するために配線を入れ換える(分配する)基板である。信号分配基板43は、メイン制御基板42から出力された信号を分割(分配)して各ゲートドライバ基板33に出力する。
【0068】
ゲートドライバ基板33は、制御基板41から出力された電気信号を、例えばフォトカプラ等で絶縁した上で複数の半導体(半導体素子)32のゲートに送信して半導体32を制御する基板である(図2等参照)。
【0069】
IGBTユニット30は、メイン制御基板42から出力され、信号分配基板43で各ゲートドライバ基板33に分配されたゲート信号に基づいて、直流端子36から供給された直流電力を交流電力に変換して、交流端子37から出力する。このとき、図7に示すように、直流電力は、2つに分岐して2つのIGBTユニット30に供給され、2つのIGBTユニット30でそれぞれ変換されて出力された交流電力は、2つのIGBTユニット30から出力された後で1つに合流する。
【0070】
図8は、電力変換装置10におけるIGBTユニット30の配置構造及び従来の信号分配基板43’の制御構成の一例を示す図である。図8(a)は、電力変換装置10におけるIGBTユニット30の配置構造の一例を示す図である。図8(b)は、電力変換装置10における従来の信号分配基板43’の制御構成の一例を示す図である。
【0071】
図1から図5で説明したとおり、本実施形態では、2つのIGBTユニット30を筐体11に配置する場合、半導体32とゲートドライバ基板33とが電子部品エリアBに向かい合わせに配置される(図5等参照)。また、上述のとおり、左右両側の2つのIGBTユニット30は、製造性等の観点からそれぞれ同一構造である。このため、図6及び図7で説明したとおり、2つのIGBTユニット30から出力された交流電力を1つに合流させるためには、U相同士、V相同士、及びW相同士が接続されなければならない。
【0072】
しかし、図8(a)に示すとおり、それぞれ同一構造である2つのIGBTユニット30が単純に向かい合わせに配置されると、U相の交流端子37aとW相の交流端子37cとが向かい合わせに配置される。このため、U相同士、V相同士、及びW相同士が接続される場合、交流端子37aと交流端子37cとが接続されなければならず、U相、V相、及びW相の接続が交錯(交差)してしまう。
【0073】
これは、図8(b)の中段に示すとおり、従来、信号分配基板43’が2つのIGBTユニット30に信号を分配する場合、2つのIGBTユニット30それぞれの交流端子37a~37cにそれぞれ同一の信号を送っているためである。すなわち、信号分配基板43’は、ゲートドライバ基板33を介して、2つのIGBTユニット30のそれぞれの交流端子37aにU相の信号を送り、それぞれの交流端子37bにV相の信号を送り、それぞれの交流端子37相の信号を送っている。
【0074】
このため、図8(b)の上段に示すとおり、U相同士、V相同士、及びW相同士が接続されると、交流端子37aと交流端子37cとが接続されなければならず、U相、V相、及びW相の接続が交錯してしまう問題があった。U相、V相、及びW相の接続が交錯してしまう場合、各導体の接続距離が長くなり、最短距離で接続するよりも導体の使用量が多くなってしまう。
【0075】
図9は、第1実施形態に係る電力変換装置10におけるIGBTユニット30の配置構造及び信号分配基板43の制御構成の一例を示す図である。図9(a)は、第1実施形態に係る電力変換装置10におけるIGBTユニット30の配置構造の一例を示す図である。図9(b)は、第1実施形態に係る電力変換装置10における信号分配基板43の制御構成の一例を示す図である。
【0076】
図9(a)に示すとおり、本実施形態では、一方のIGBTユニット30は、交流端子37a、37b、37cが順にU相、V相、W相となっており、他方のIGBTユニット30は、交流端子37a、37b、37cが順にW相、V相、U相となっている。このため、図9(a)に示すとおり、製造性等の観点からそれぞれ同一構造である2つのIGBTユニット30が向かい合わせに配置された場合であっても、U相の交流端子37aとU相の交流端子37cとが向かい合わせに配置される。同様に、V相の交流端子37bとV相の交流端子37bとが向かい合わせに配置され、同様に、W相の交流端子37cとW相の交流端子37aとが向かい合わせに配置される。これにより、U相同士、V相同士、及びW相同士が接続された場合、接続が交錯(交差)せずに、U相同士、V相同士、及びW相同士が最短距離で接続される。
【0077】
すなわち、図9(b)の中段に示すとおり、本実施形態に係る信号分配基板43は、2つのIGBTユニット30に信号を分配する場合、一方のIGBTユニット30には、交流端子37a、37b、37cに順にU相、V相、W相の信号を送っている。一方、信号分配基板43は、他方のIGBTユニット30には、U相とW相との信号が反転するように配線を入れ替えて、交流端子37a、37b、37cに順にW相、V相、U相の信号を送っている。
【0078】
これにより、図9(b)の上段に示すとおり、U相同士が接続される場合、U相の交流端子37aと、当該U相の交流端子37aの正面に向かい合わせに対向して配置されるU相の交流端子37cとが交錯せずに、最短距離で、対面で接続される。同様に、V相同士が接続される場合、V相の交流端子37bと、当該V相の交流端子37bの正面に向かい合わせに対向して配置されるV相の交流端子37bとが交錯せずに、最短距離で、対面で接続される。同様に、W相同士が接続される場合、W相の交流端子37cと、当該W相の交流端子37cの正面に向かい合わせに対向して配置されるW相の交流端子37aとが交錯せずに、最短距離で、対面で接続される。
【0079】
このため、本実施形態によれば、U相、V相、及びW相の接続が交錯してしまうことも、各導体の接続距離が長くなることもない。また、U相同士、V相同士、及びW相同士が最短距離で接続されるため、従来よりも導体の使用量を削減することができ、導体の接続の簡易化、最適化を図ることができる。なお、一方のIGBTユニット30は、「第1の三相一括半導体ユニット」の一例であり、他方のIGBTユニット30は、「第2の三相一括半導体ユニット」の一例である。
【0080】
<第1実施形態の作用効果>
以上、図1図7及び図9に示す第1実施形態によれば、電力変換装置10(筐体11)の外側を半導体冷却エリアA、内側を電子部品エリアBとして区分けし、IGBTユニット30を向かい合わせに配置することとした。これにより、本実施形態によれば、2つの(複数の)IGBTユニット30が筐体11内に配置された場合であっても、冷却流路が単純になり、圧損の少ないレイアウトを可能にすることができる。
【0081】
また、図1図7及び図9に示す第1実施形態によれば、積極的に外気が取り入れられ、外気による汚損のリスクの抑制よりも冷却性能の向上の方が重視される半導体冷却エリアAには、IGBTユニット30のうち、冷却器31が配置される。これにより、本実施形態によれば、2つの(複数の)IGBTユニット30が筐体11内に配置された場合であっても、半導体32の冷却性が担保される。
【0082】
また、図1図7及び図9に示す第1実施形態によれば、電子部品エリアBには、2つの(複数の)IGBTユニット30のうち、汚損のリスクのある外気から隔離する必要のある半導体32とゲートドライバ基板33とが向かい合わせに配置される。これにより、汚損のリスクのある外気から隔離する必要のある半導体32とゲートドライバ基板33とが、半導体冷却エリアAよりも風量は少ないもののクリーンな空気が取り入れられる電子部品エリアBに配置されることになる。このため、本実施形態によれば、耐環境性を向上させることができる。
【0083】
また、図1図7及び図9に示す第1実施形態によれば、信号分配基板43は、2つの(複数の)IGBTユニット30に信号を分配する場合、一方のIGBTユニット30には、交流端子37a、37b、37cに順にU相、V相、W相の信号を送ることとした。その一方で、信号分配基板43は、他方のIGBTユニット30には、U相とW相との信号が反転するように配線を入れ替えて、交流端子37a、37b、37cに順にW相、V相、U相の信号を送ることとした。これにより、本実施形態によれば、2つの(複数の)IGBTユニット30が筐体11内に配置された場合であっても、U相、V相、及びW相の接続が交錯(交差)して複雑となることがなく、各導体の接続距離が長くなることが抑制される。このため、本実施形態によれば、U相同士、V相同士、及びW相同士が向かい合わせとなり、導体が最短距離で接続されるため、従来よりも導体の使用量を削減することができ、導体の接続の簡易化、最適化を図ることができる。
【0084】
また、図1図7及び図9に示す第1実施形態によれば、信号分配基板43の制御構成を変更し、向かい合わせの一方のIGBTユニット30は配線を入れ替えず、他方のIGBTユニット30のみU相とW相との信号が反転するように配線を入れ替えることとした。これにより、本実施形態によれば、2つの(複数の)IGBTユニット30が筐体11内に配置された場合であっても、2つのIGBTユニット30の構造は同一構造のままとすることができるため、製造性の向上や交換性の向上を図ることができる。
【0085】
<第2実施形態>
図10は、第2実施形態に係る電力変換装置10Aにおける各構成の配置構造及び半導体冷却エリアAと電子部品エリアBとの区分けの一例を示す図である。図10(a)は、第2実施形態に係る電力変換装置10Aにおける各構成の配置構造及び半導体冷却エリアAと電子部品エリアBとの区分けの一例を示す側面図である。図10(b)は、第2実施形態に係る電力変換装置10Aにおける各構成の配置構造及び半導体冷却エリアAと電子部品エリアBとの区分けの一例を示す背面図である。なお、図10において、図1図7及び図9に示す第1実施形態の構成と同一又は同様の構成については同一の符号を付し、詳細な説明は省略又は簡略化する。
【0086】
上述のとおり、図1図7及び図9に示す第1実施形態に係る電力変換装置10では、筐体11の正面側に、エアフィルタ14aを有する電子部品エリアB専用の吸気口14が設けられていた(図4等参照)。そして、第1実施形態に係る電力変換装置10では、吸気口14からエアフィルタ14aを介して取り入れられたクリーンな空気は、電子部品エリアBを通過した後、半導体冷却エリアAの外気と合流し、共通のファン13から排気されていた。
【0087】
一方、図10に示すとおり、第2実施形態に係る電力変換装置10Aでは、筐体11Aの正面側には、エアフィルタ14aの代わりに熱交換器15が設けられ、電子部品エリアBとファン13との間には、例えば、隔壁16等が配置されている。
【0088】
熱交換器15は、電子部品エリアB内の半導体32等の放熱により加熱されたクリーンな空気(内気)の熱を吸熱して冷却する。
【0089】
隔壁16は、例えば、板金等であり、筐体(盤)11A内部にある電子部品エリアB側の排気部分(電子部品エリアBとファン13との間)を塞いでいる。なお、電子部品エリアB側の排気部分を塞ぐものは、隔壁16には限られない。例えば、電力変換装置10A(筐体11)は、元々電子部品エリアB側の排気部分が塞がれている構造を有するものであってもよい。
【0090】
図10(a)中、風の流れを示す矢印で示されるとおり、電子部品エリアB内で加熱されたクリーンな空気(内気)は、熱交換器15によって冷却される。そして、隔壁16によって、筐体(盤)11A内部にある電子部品エリアB側の排気部分が塞がれていることにより、電子部品エリアBの内気は、半導体冷却エリアAの外気と合流することはなく、ファン13からの外気の排気とは分離される。これにより、第2実施形態に係る電力変換装置10Aでは、内気と外気とは完全に分離され、電子部品エリアBには熱交換器15により吸熱されて冷却された内気の冷却風のみが循環して流れる。そして、ファン13からは外気のみが排気される。
【0091】
<第2実施形態の作用効果>
以上、図10に示す第2実施形態では、図1図7及び図9に示す第1実施形態と同様の効果を有する。
【0092】
また、図10に示す第2実施形態によれば、内外気を完全に分離することができるため、第1実施形態よりも、電子部品エリアB内をよりクリーンに保つことができ、より耐環境性を向上させることができる。
【0093】
また、図10に示す第2実施形態によれば、内外気を完全に分離することができるため、第1実施形態よりも、汚損のリスクを気にせず、より積極的に半導体冷却エリアA内に外気を取り入れることが可能である。これにより、本実施形態によれば、第1実施形態よりも、より冷却性能の向上や冷却性の担保を図ることができる。
【0094】
<第3実施形態>
図11は、第3実施形態に係る電力変換装置10BにおけるIGBTユニット30の配置構造の一例を示す図である。なお、図11において、図1図7及び図9に示す第1実施形態の構成と同一又は同様の構成については同一の符号を付し、詳細な説明は省略又は簡略化する。
【0095】
図11に示すとおり、第3実施形態に係る電力変換装置10Bでは、筐体11B内部にIGBTユニット30が4台配置されている。そして、図1図7及び図9に示す第1実施形態と同様に、IGBTユニット30は、向かい合わせに配置され、向かい合わせに配置された2台のIGBTユニット30の組が上下にそれぞれ配置されている。そして、第1実施形態と同様に、向かい合わせに配置されたIGBTユニット30の組のU相同士、V相同士、及びW相同士がそれぞれ対向する正面において最短距離で接続され、さらに上下のU相同士、V相同士、及びW相同士がそれぞれ上下方向で接続される。
【0096】
すなわち、第3実施形態においても、信号分配基板43は第1実施形態と同様の構成を有するため、信号分配基板43の制御構成が変更されている。換言すれば、向かい合わせに配置された一方のIGBTユニット30は、信号分配基板43によって配線が入れ替えられておらず、他方のIGBTユニット30は、信号分配基板43によってU相とW相との信号が反転するように配線が入れ替えられている。このため、第3実施形態では、向かい合わせに配置されたIGBTユニット30のU相同士、V相同士、及びW相同士がそれぞれ対向する正面において最短距離で接続され、さらに上下のU相同士、V相同士、及びW相同士がそれぞれ縦方向で接続することができる。
【0097】
なお、第3実施形態におけるIGBTユニット30は、4台には限られず、例えば6台等、偶数台であれば、何台であってもよい。この場合、向かい合わせに配置された2台のIGBTユニット30の組が上下方向(縦方向)に2台ずつ配置される。そして、上下方向に複数配置されたIGBTユニット30のU相同士、V相同士、及びW相同士の導体が水平方向に対面で接続されさらにそれぞれ上下方向(垂直方向)で接続されていく。
【0098】
<第3実施形態の作用効果>
以上、図11に示す第3実施形態では、IGBTユニット30が筐体11B内に4台以上の偶数台配置された場合であっても、図1図7及び図9に示す第1実施形態と同様の効果を有する。
【0099】
また、図11に示す第3実施形態では、IGBTユニット30が2台配置された場合と同様に、片側のIGBTユニット30のU相とW相とを反転させることで対面同士の各相の導体接続が容易になるとともに、上下の各相の導体接続も容易となる。
【0100】
<第1比較例>
図12は、第1比較例に係る電力変換装置110におけるIGBTユニット130の配置構造の一例を示す図である。図12(a)は、第1比較例に係る電力変換装置110におけるIGBTユニット130の配置構造の一例を示す斜視図である。図12(b)は、第1比較例に係る電力変換装置110におけるIGBTユニット130の配置構造の一例を示す側面図である。
【0101】
第1比較例に係る電力変換装置110は、例えば、列盤機種の屋外機等であり、図12(a)、(b)に示すとおり、一台の盤(筐体)111に対して、一台のIGBTユニット130が配置され、IGBTユニット130の下部にはファン113が配置されている。近年、例えば、太陽光発電用や蓄電池用の電力変換装置110では、インバータの容量拡大に伴い、IGBT等の半導体素子の個数が増加傾向にあり、一台の盤111に対して、複数のIGBTユニット130を配置する必要性が生じている。しかし、図12に示す第1比較例の構造では、一台の盤111に対して、複数のIGBTユニット130を配置することができない。
【0102】
一方、図1図7及び図9図11に示す第1~第3実施形態によれば、複数のIGBTユニット30を配置することができる。また、図1図7及び図9図11に示す第1~第3実施形態によれば、第1比較例よりも、耐環境性の向上、冷却性の担保、冷却流路の単純化、交換性の向上を図りつつも、導体使用量の削減、導体接続の簡易化、最適化を図ることができる。
【0103】
<第2比較例>
図13は、第2比較例に係る電力変換装置210におけるIGBTユニット230の配置構造の一例を示す図である。図13(a)は、第2比較例に係る電力変換装置210におけるIGBTユニット230の配置構造の一例を示す斜視図である。図13(b)は、第2比較例に係る電力変換装置210におけるIGBTユニット230の配置構造の一例を示す側面図である。
【0104】
図13(a)、(b)に示すとおり、電力変換装置210は、例えば、屋内機等であり、一台の盤(筐体)211に対して、複数台のIGBTユニット230がサーバーラックのように盤211に多段積みで配置されている。この場合、一台の盤211において、IGBTユニット230の台数に応じてIGBTユニット230と水平方向に、複数のファン213が配置されなければならない。これは、例えば、図12に示す第1比較例のように、下部にファン213が配置された場合、サーバーラックのように多段積みされた上方のIGBTユニット230と、下方のIGBTユニット230とを均一に冷却することができないためである。このため、図13に示す第2比較例の構造では、複数のIGBTユニット230を均等に冷却させようとする場合、使用するファン213の個数が多くなってしまう。
【0105】
一方、図1図7及び図9図11に示す第1~第3実施形態によれば、複数のIGBTユニット30を配置した場合であっても、図13に示す第2比較例よりも、使用するファン13の個数を少なくすることができる。さらに、図1図7及び図9図11に示す第1~第3実施形態によれば、第2比較例よりも、耐環境性の向上、冷却性の担保、冷却流路の単純化、交換性の向上を図りつつも、導体使用量の削減、導体接続の簡易化、最適化を図ることができる。
【0106】
<第3比較例>
図14は、第3比較例に係る電力変換装置310におけるIGBTユニット330の配置構造の一例を示す図である。
【0107】
図14に示すとおり、電力変換装置310は、図13に示す第2比較例のように、複数台のIGBTユニット330がサーバーラックのように盤(筐体)311に多段積みで配置されている。図14において、IGBTユニット330の上方が、例えば、半導体32やゲートドライバ基板33等が配置される電子部品エリアBであり、下方が、例えば、冷却器31等が配置される半導体冷却エリアAである。
【0108】
例えば、図14に示す第3比較例の構造において、エリアを区分けする場合、電子部品エリアBは、半導体冷却エリアAと比べて外気の汚損をできる限り抑えており風量が小さいため、できる限り単純な構造の方が、圧損が少なく冷却面で有利である。しかし、第3比較例のように、IGBTユニット330が縦一列に多段積みされた場合において、エリアを区分け(内外気を分離)した場合、電子部品エリアBは、ゲートドライバ基板33等の精密機械が搭載されるため、構造が複雑になってしまう。また、そもそも、第3比較例のように、IGBTユニット330が縦一列に多段積みされる配置構造では、IGBTユニット330内で外気からの汚損を保護したいゲートドライバ基板33等が配置される電子部品エリアBと半導体冷却エリアAとの区分けが難しい。
【0109】
一方、図1図7及び図9図11に示す第1~第3実施形態によれば、IGBTユニット30が向い合わせの配置構造であるため、図14に示す第3比較例の構造と比べて電子部品エリアBの構造が単純であり、圧損が少なく、効率的な冷却をすることができる。そして、図1図7及び図9図11に示す第1~第3実施形態によれば、第3比較例よりも、耐環境性の向上、冷却性の担保、冷却流路の単純化、交換性の向上を図りつつも、導体使用量の削減、導体接続の簡易化、最適化を図ることができる。
【0110】
<実施形態の補足事項>
以上、図1図7及び図9図11に示す第1~第3実施形態によれば、図1図7及び図9に示す第1実施形態と、図10に示す第2実施形態と、図11に示す第3実施形態とに分かれているが、これらの実施形態が直列に又は並列に組み合わされてもよい。組み合わされた実施形態もまた、組み合わされる前の各実施形態が奏する各作用効果と同様の作用効果を奏することができる。
【0111】
以上の詳細な説明により、実施形態の特徴点および利点は明らかになるであろう。これは、特許請求の範囲がその精神および権利範囲を逸脱しない範囲で前述のような実施形態の特徴点および利点にまで及ぶことを意図するものである。また、当該技術分野において通常の知識を有する者であれば、あらゆる改良および変更に容易に想到できるはずである。したがって、発明性を有する実施形態の範囲を前述したものに限定する意図はなく、実施形態に開示された範囲に含まれる適当な改良物および均等物に拠ることも可能である。
【符号の説明】
【0112】
1…太陽光発電システム(電力変換システム);2…太陽光パネル;3…変圧器;4…交流電力系統(系統);5…直流母線;5a…直流入力部;6…交流回路;10,10A,10B…電力変換装置(PCS);11,11A,11B…筐体(盤);12…吸気口(第1吸気口);13…ファン(冷却ファン);14…吸気口(第2吸気口);14a…エアフィルタ;15…熱交換器;16…隔壁(板金);21…直流スイッチ(直流遮断器,DCスイッチ);22…直流コンデンサ(DCコンデンサ);24…交流フィルタ(ACフィルタ);24a…交流リアクトル(ACリアクトル);24b…交流コンデンサ(ACコンデンサ);25…交流スイッチ(交流遮断器,ACスイッチ);30…三相一括半導体ユニット(IGBTユニット,第1の三相一括半導体ユニット,第2の三相一括半導体ユニット);31…冷却器;32…半導体(半導体素子,IGBT);33…ゲートドライバ基板;34…主回路導体(積層ブスバー);35…支持部材;36…直流端子;37…交流端子;37a…交流端子(第1交流端子);37b…交流端子(第2交流端子);37c…交流端子(第3交流端子);40…制御装置;41…制御基板;42…メイン制御基板;43,43’…信号分配基板;110…電力変換装置(PCS);111…筐体(盤);113…ファン(冷却ファン);130…三相一括半導体ユニット(IGBTユニット);210…電力変換装置(PCS);211…筐体(盤);213…ファン(冷却ファン);230…三相一括半導体ユニット(IGBTユニット);310…電力変換装置(PCS);311…筐体(盤);330…三相一括半導体ユニット(IGBTユニット);A…半導体冷却エリア;B…電子部品エリア
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