(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-20
(45)【発行日】2025-01-28
(54)【発明の名称】ピストンエンジン
(51)【国際特許分類】
F03G 3/00 20060101AFI20250121BHJP
【FI】
F03G3/00 E
(21)【出願番号】P 2024157236
(22)【出願日】2024-09-11
【審査請求日】2024-09-11
【権利譲渡・実施許諾】特許権者において、実施許諾の用意がある。
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】724014811
【氏名又は名称】秋友 厚
(72)【発明者】
【氏名】秋友 厚
【審査官】津田 真吾
(56)【参考文献】
【文献】特開平7-247951(JP,A)
【文献】特開2010-164011(JP,A)
【文献】韓国公開特許第2003-0065254(KR,A)
【文献】特開昭56-88969(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F03G 3/00
F03G 7/00
H02K 33/00
H02K 53/00
H02N 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
頭部が開口し、内部にクランク機構を備えるシリンダと、
前記シリンダの前記開口の開閉を行うとともに、一端を支軸として回転運動を行う上蓋と、
前記シリンダの側方に配置される補助シリンダと、
前記補助シリンダ内を直線運動する主軸と、
前記主軸と前記上蓋とを連結し、前記主軸の直線運動を前記上蓋の回動運動に変換するクランクジョイントと、
前記クランク機構の回転軸と同軸に配置されて、前記クランク機構の回転運動に同期して回転するカムを備え、前記カムによって前記主軸の
外力による直線運動を制御する制御機構とを備え、
前記上蓋及び前記クランク機構に、それぞれ永久磁石
がその同極が対向する様に配置されていることを特徴とするピストンエンジン。
【請求項2】
前記制御機構は、前記カムによって、極性が切り替わる電磁石と、前記主軸に連結されるともに、前記主軸と同軸上に前記電磁石に対向して配置される永久磁石とを備えることを特徴とする請求項1記載のピストンエンジン。
【請求項3】
前記制御機構は、外部から流体が流入されるとともに、前記主軸が配置される流路と、前記カムによって前記流路の開閉を行うバルブとを備えることを特徴とする請求項1記載のピストンエンジン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、往復機関において、爆発燃焼を供なわず、永久磁石の反発力のみで、ピストンを動かしクランクを回し動力を得るピストンエンジンに関する。
【背景技術】
【0002】
昨今、化学燃料使用による大気汚染、資源開発による自然破壊が問題となっており、このような問題を解決するためのものとして、例えば特許文献1記載のピストンエンジンがある。
【0003】
特許文献1のピストンエンジンは、ピストンヘッドの先端部に永久磁石を埋設し、シリンダの端部に電磁石を設け、電磁石への通電方向を適時変更して、永久磁石との間で吸引と反発を交互に行わせることで、ピストンを往復運動されるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1記載のピストンエンジンでは、電磁石の通電方向を切り替えるための電力が必要となってしまい、省エネには貢献しえない。また、電磁石の通電方向を切り替えるための制御機構も必要になるため、装置が複雑になるという課題もある。
【0006】
本発明は、上記課題を鑑み、電力を補助的に使用、永久磁石の力を主とし、簡単な構造で複雑な制御を行わず高効率の往復機関に開発を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のピストンエンジンは、頭部が開口し、内部にクランク機構を備えるシリンダと、前記シリンダの前記開口の開閉を行うとともに、一端を支軸として回転運動を行う上蓋と、前記シリンダの側方に配置される補助シリンダと、前記補助シリンダ内を直線運動する主軸と、前記主軸と前記上蓋とを連結し、前記主軸の直線運動を前記上蓋の回動運動に変換するクランクジョイントと、前記クランク機構の回転軸と同軸に配置されて、前記クランク機構の回転運動に同期して回転するカムを備え、前記カムによって前記主軸の直線運動を制御する制御機構とを備え、前記上蓋及び前記クランク機構に、それぞれ同極の永久磁石が配置されていることを特徴とする。
【0008】
上記構成により、上蓋と、クランク機構とにそれぞれ同極の永久磁石が配置されているので、シリンダは開口した状態となっている。この状態から、カムが回転すると、カムによって制御機構が主軸の直線運動を制御して主軸が鉛直下方に直線運動を行う。これにより、シリンダの開口を上蓋が閉塞する。上蓋と、クランク機構とには、それぞれ同極の永久磁石が配置されているので磁石の斥力によってクランク機構も鉛直下方に下がりクランク機構が回転を行う。そして、再度クランク機構が鉛直上方に上がり、磁石の斥力によって上蓋が開口する。このとき、クランク機構の回転軸と同軸に配置されるカムも回転するので、再度制御機構が主軸を鉛直上方に直線運動させるので、上述の運動が繰り返し行われることになる。この運動が繰り返されることで、燃料がなくてもクランク機構を回転させることができ、簡単な構造で複雑な制御を行わず高効率のピストンエンジンを実現することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、電力を補助的に使用、永久磁石の力を主とし、簡単な構造で複雑な制御を行わず高効率のピストンエンジンを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】第1実施形態におけるピストンエンジンを示す写真。
【
図2】第1実施形態におけるピストンエンジンのクランク機構を示す概略図。
【
図3】第1実施形態におけるピストンエンジンの制御機構(直流電源型)
【
図4】第2実施形態におけるピストンエンジンの制御機構(高圧流体型)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明のピストンエンジンについて、図面を用いながら詳細に説明する。
なお、以下に記載する実施形態は本発明の一例であって、本発明はこの実施形態に限定されることはない。
【0012】
<第1実施形態>
【0013】
第1実施形態におけるピストンエンジン1について、
図1~
図4を用いて以下説明する。
【0014】
第1実施形態におけるピストンエンジン1は、
図1に示すように、頭部が開口し、内部にクランク機構2を備えるシリンダ3と、シリンダ3の開口3aの開閉を行うとともに、一端を支軸として回転運動を行う上蓋4と、
図3に示すように、シリンダ3の側方に配置される補助シリンダ5と、補助シリンダ5内を直線運動する主軸6と、主軸6と上蓋4とを連結し、主軸6の直線運動を上蓋4の回動運動に変換するクランクジョイント7と、クランク機構2の回転軸と同軸に配置されて、クランク機構2の回転運動に同期して回転するカム8と、カム8によって、主軸6の直線運動を制御する制御機構9とを備える。
【0015】
クランク機構2は、
図1に示すように、シリンダ3の内部を往復運動するピストン部13と、ピストン部13の往復運動を回転運動に変換するクランク部14と、クランク部14の回転軸となるクランクシャフト15とを備える。ピストン部13は柱形状をなしており、上蓋に相対する一端面に永久磁石11cが設けられている。クランク部14は、ピストン部13に連結されており、クランクシャフト15を軸としてピストン部13の往復運動を回転運動に変換して回転運動を行う。クランクシャフト15はシリンダ3の外部まで延出しており、シリンダ3の外部に配置される一端部に後述するカム8が連結されている。
【0016】
補助シリンダ5は、シリンダ3に併設して設けられているものであり、鉛直方向に延伸する筒形状をなすものである。この補助シリンダ5の内部には主軸6が配置されている。
【0017】
クランクジョイント7は、上蓋の上面に連結される棒体17と、棒体17の外周面に回動可能に配置されるとともに、主軸6の一端部とを連結する連結部18とを備える。連結部18によって、主軸6の往復運動は上蓋4を開閉する円運動に変換される。
【0018】
制御機構9は、カム8と、補助シリンダ5に設けられてカム8によって極性が切り替わる電磁石10と、主軸6と同軸上に電磁石10に対向して配置されて主軸6に設けられる永久磁石11aと、電磁石10の極性をカム8によって切り替えるマイクロスイッチ機構12とを備える。
【0019】
カム8は、円盤形状をなしその周面の一部に突出する突起部19を備え、当該円盤形状の中心がクランクシャフト15に連結されている。これにより、カム8はクランク機構2の回転軸と同軸に配置されることとなり、クランク機構2の回転機構と同期して回転を行う。突起部19は、後述する制御機構9のマイクロスイッチ機構12を作動させるものである。
【0020】
マイクロスイッチ機構12は、
図3に示すように、常時電磁石10に対して電流を流す電源部20と、電源部20から電磁石10がN極となるように電流を流す第1供給路21と、電源部20から電磁石10がS極となるように電流を流す第2供給路22と、カム8の突起部19における押圧動作によって第1供給路21と第2供給路22とを切り替えるスイッチ部23とを備える。カム8の突起部19が突起部19を押圧していない状態においては、電流は第1供給路21を流れ、電磁石10と永久磁石11aとは反発し合う磁性となるように設定される。カム8がスイッチ部23を押圧して第1供給路21から第2供給路22に切り替えると、電磁石10の極性が反転し、電磁石10と永久磁石11aは引き合うようになる。これにより、電磁石10と永久磁石11aが引き合うと、電磁石10が設けられた主軸6が鉛直下方に動き上蓋4が閉まる。カム8がスイッチ機構を押圧していない状態においては、電磁石10と永久磁石11aとが反発し、斥力によって主軸が鉛直上方に動き上蓋4が開く。
【0021】
上述した構成を備える第1実施形態のピストンエンジン1の動作について、以下
図1、
図2、
図3を用いて説明する。
【0022】
第1実施形態のピストンエンジン1が作動していない状態において、上蓋4はシリンダ3の開口3aを塞いでおらず、開口した状態となっている。
【0023】
この状態において、カム8を回転させてスイッチ部23を押圧すると、電磁石10に供給される直流が流れる経路が第1供給路21から第2供給路22へと変わり、極性が反転し、電磁石10と永久磁石11aとは異極同士となり吸引し合い、上蓋4は閉じてシリンダ3の開口3aが閉じた状態となる。
【0024】
上蓋4に設けられた永久磁石11bと、ピストン部13に設けられた永久磁石11cとは同極であるため、斥力によってピストン部13が下方に移動する。ピストン部13が下方に移動することでクランク部14が回転し、クランク部14と同軸のクランクシャフト15に連結されたカム8も回転を行う。これにより、カム8がスイッチ部23を押圧する位置より移動するので、電磁石10に供給される直流が流れる経路が第2供給路22から第1供給路21へと変わり、極性が反転し、電磁石10と永久磁石11aとは同極同士となり反発しあうため、上蓋4が開いてシリンダ3が開口した状態となる。
【0025】
ここで、クランク部14に働く慣性力によって、クランク部14と同軸のクランクシャフト15に連結されたカム8も回転を行う。そのため、上述の動作が連続して繰り返される。
【0026】
上述した構成を備える第1実施形態におけるピストンエンジン1は、燃焼を供なわず、静穏でCO2の排出をせず、最小の入力で最大の出力を発揮する高効率エンジンとなる。 また簡単な構造で複雑な制御を行わず既存の技術で簡単に対応できる。
【0027】
<第2実施形態>
【0028】
第2実施形態におけるピストンエンジン100について、
図4を用いて以下説明する。なお、第1実施形態と同様の部分には同一の符号を付し、説明を省略する。
【0029】
第2実施形態のピストンエンジン100は、第1実施形態と制御機構9の構成が異なる。第2実施形態の制御機構30は、カム8と、補助シリンダ5に設けられてカム8によって補助シリンダ5を流れる流体の流れ方向を切り替える流路32と、カム8によって流路32を切り替える高圧流体弁35とを備える。
【0030】
流路32は、流体を収容する収容部(不図示)と、収容部から流体を流出される供給路31と、供給路31から分岐して流体を補助シリンダ5内において下方から上方へ流す第1流路33と、流体を補助シリンダ5の上方から下方へ流す第2流路34とを備える。第1流路33及び第2流路34に分岐する分岐点には高圧流体弁35が配置しており、カム8が高圧流体弁35を押圧する動作によって、第1流路33から第2流路34へと切り替わるものである。
【0031】
上述した構成を備える第2実施形態のピストンエンジン100の動作について、以下
図4を用いて説明する。
【0032】
第2実施形態のピストンエンジン100が作動していない状態において、上蓋4はシリンダ3の開口3aを塞いでおらず、開口した状態となっている。
【0033】
この状態において、カム8を回転させると、高圧流体弁35によって第1流路33から第2流路34へと流体の流れ方向が切り替わり、主軸が下方に移動することで、上蓋4が閉じてシリンダ3の開口3aが閉じた状態となる。
【0034】
上蓋4に設けられた永久磁石11bと、ピストン部13に設けられた永久磁石11cとは同極であるため、斥力によってピストン部13が下方に移動する。ピストン部13が下方に移動することでクランク部14が回転し、クランク部14と同軸のクランクシャフト15に連結されたカム8も回転を行う。これにより、カム8が高圧流体弁35を押圧する位置より移動するので、流体の流れ方向が第2流路34から第1流路33へと変わり、主軸が上方へ移動するため、上蓋4が開いてシリンダ3が開口した状態となる。
【0035】
ここで、クランク部14に働く慣性力によって、クランク部14と同軸のクランクシャフト15に連結されたカム8も回転を行う。そのため、上述の動作が連続して繰り返される。
【0036】
第2実施形態エンジンの一例とし、家庭用太陽光発電施設における発電時と電力時の時間的不一致を改善するため、日中発電時、その電力を利用し、コンプレサを回し高圧空気をつくり圧力容器に貯蔵、電力使用時、高圧空気にてエンジンを稼働発電し、電力として使用する非常電源としても有効、蓄電池の様に数年で交換の必要がなく長期間の運転が可能となる。
【0037】
なお、第1実施形態及び第2実施形態においても、上蓋4に設けられた永久磁石11b及びピストン部13に設けられた永久磁石11cに、直径12mm、厚さ2mmのネオシム磁石を使用し、かつ、上蓋4の開度を60度以上に取ると、上蓋4に設けられた永久磁石11bとピストン部13に設けられた永久磁石11cの相互作用が減り、ピストン部13がスムーズに上昇することが実験で示された。
【符号の説明】
【0038】
1,
1,100・・・ピストンエンジン
2・・・クランク機構
3・・・シリンダ
3a・・・シリンダ開口
4・・・上蓋
5・・・補助シリンダ
6・・・主軸
7・・・クランクジョイント
8・・・カム
9・・・制御機構(直流電源型)
10・・・電磁石
11a・・・永久磁石
11b・・・永久磁石
11c・・・永久磁石
12・・・マイクロスイッチ
13・・・ピストン部
14・・・クランク部
15・・・クランクシャフト
17・・・棒体
18・・・連結部
19・・・突起部
20・・・電源部
21・・・第一供給路
22・・・第二供給路
23・・・スイッチ部
30・・・制御機構(高圧流体型)
31・・・供給路
32・・・流路
33・・・第一流路
34・・・第二流路
35・・・高圧流体弁
【要約】
【課題】電力を補助的に使用、永久磁石の力を主とし、簡単な構造で複雑な制御を行わず高効率のピストンエンジンを提供する。
【解決手段】本発明のピストンエンジン1は、頭部が開口3aし、内部にクランク機構2を備えるシリンダ3と、シリンダ3の開口3aの開閉を行うとともに、一端を支軸として回転運動を行う上蓋4と、シリンダ3の側方に配置される補助シリンダ5と、補助シリンダ5内を直線運動する主軸6と、主軸6と4上蓋とを連結し、主軸6の直線運動を上蓋4の回動運動に変換するクランクジョイント7と、クランク機構2の回転軸と同軸に配置されて、クランク機構2の回転運動に同期して回転するカム8を備え、カム8によって主軸6の直線運動を制御する制御機構9とを備え、上蓋4及びクランク機構2に、それぞれ同極の永久磁石11b、11cが配置されていることを特徴とする。
【選択図】
図1