(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-20
(45)【発行日】2025-01-28
(54)【発明の名称】ガス吸着素材を含む二次電池および二次電池モジュール
(51)【国際特許分類】
H01M 50/124 20210101AFI20250121BHJP
H01M 50/105 20210101ALI20250121BHJP
H01M 50/131 20210101ALI20250121BHJP
H01M 50/117 20210101ALI20250121BHJP
H01M 50/133 20210101ALI20250121BHJP
H01M 50/342 20210101ALI20250121BHJP
【FI】
H01M50/124
H01M50/105
H01M50/131
H01M50/117
H01M50/133
H01M50/342 101
(21)【出願番号】P 2023535718
(86)(22)【出願日】2022-10-07
(86)【国際出願番号】 KR2022015169
(87)【国際公開番号】W WO2023090642
(87)【国際公開日】2023-05-25
【審査請求日】2023-06-15
(31)【優先権主張番号】10-2021-0157299
(32)【優先日】2021-11-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】521065355
【氏名又は名称】エルジー エナジー ソリューション リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】チャ、イン ヨウン
(72)【発明者】
【氏名】ユ、スン ホーン
(72)【発明者】
【氏名】スン、ナク ギ
【審査官】山下 裕久
(56)【参考文献】
【文献】特表2020-513151(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第106159122(CN,A)
【文献】特表2020-527455(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2021-0009263(KR,A)
【文献】特表2015-504000(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/10-198
H01M 50/342
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極組立体と、
前記電極組立体が収容されるケースと、を含み、
前記ケースは、内側面に、ケース内の温度によって内部ガスを吸着または脱着するガス吸着物質を含有するコーティング層を備
え、
前記ガス吸着物質は、70~150℃の臨界温度を有し、前記臨界温度未満で内部ガスを吸着し、前記臨界温度以上で内部ガスを脱着し、
前記ガス吸着物質は、mmen-M
2
(dobpdc)(mmenはN,N-ジメチルエチレンジアミン、dobpdcは4,4'-ジオキシドビフェニル-3,3'-ジカルボキシラート、Mは2価金属を意味する)を含む、
二次電池。
【請求項2】
前記ガス吸着物質は、マグネシウム、マンガン、鉄、亜鉛およびコバルトのうち1種以上の金属を含むジアミン化合物を含む、請求項1に記載の二次電池。
【請求項3】
前記ジアミン化合物は、mmen-Mg
2(dobpdc)、mmen-Mn
2(dobpdc)、mmen-Fe
2(dobpdc)、mmen-Zn
2(dobpdc)およびmmen-Co
2(dobpdc)のうち1種以上を含む、請求項
2に記載の二次電池。
【請求項4】
前記ガス吸着物質は、炭素繊維、活性炭、ゼオライト、アルミナ、シリカ、ボーキサイトおよび分子篩のうち1種以上を含む、請求項1に記載の二次電池。
【請求項5】
前記コーティング層は、
70~110℃の臨界温度を有する第1ガス吸着物質と、
110~140℃の臨界温度を有する第2ガス吸着物質と、
バインダーと、を含
み、
前記第1ガス吸着物質は、mmen-M
2
(dobpdc)(mmenはN,N-ジメチルエチレンジアミン、dobpdcは4,4'-ジオキシドビフェニル-3,3'-ジカルボキシラート、Mは2価金属を意味する)を含む、
請求項1に記載の二次電池。
【請求項6】
前記第1ガス吸着物質および第2ガス吸着物質はそれぞれ、前記コーティング層全体の重量に対して60~80重量%および19~50重量%で含まれる、請求項
5に記載の二次電池。
【請求項7】
前記コーティング層は、平均厚さが50μm~500μmである、請求項1に記載の二次電池。
【請求項8】
前記コーティング層は、ケース全面積を基準として50~90%の面積率を有するパターン構造を有する、請求項1に記載の二次電池。
【請求項9】
前記内部ガスは、酸素(O
2)、水素(H
2)、エチレン(C
2H
4)、アセチレン(C
2H
2)、プロピレン(C
3H
6)、一酸化炭素(CO)、二酸化炭素(CO
2)、メタン(CH
4)、エタン(CH
3CH
3)、プロパン(CH
3CH
2CH
3)、一酸化窒素(NO)および二酸化窒素(NO
2)のうち1種以上を含む、請求項1に記載の二次電池。
【請求項10】
前記二次電池は、圧力によってベンティングされるガス排出手段をさらに含む、請求項1に記載の二次電池。
【請求項11】
請求項1
から10のいずれか1項に記載の二次電池を含む二次電池モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池ケースの内側面に、温度条件によってガスを吸着および脱着する素材がコーティングされた、二次電池およびそれを含む二次電池モジュールに関するものである。
【0002】
本出願は、2021年11月16日付の韓国特許出願第10-2021-0157299号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示されたすべての内容は本明細書の一部として含まれる。
【背景技術】
【0003】
最近、モバイル機器の技術開発と需要が増加し、電気自動車(EV)が大衆化するに伴い、エネルギー源としての電池の需要が急激に増加しており、それによって、多様なニーズに応えることができる電池に関する多くの研究が行われている。
【0004】
代表的に、電池の形状の観点から、薄い厚さで携帯電話などのような製品に適用できる角形二次電池とパウチ型二次電池の需要が高く、材料の観点から、高いエネルギー密度、放電電圧、出力安定性などの利点を有するリチウムイオン電池、リチウムイオンポリマー電池などのようなリチウム二次電池の需要が高い。
【0005】
しかしながら、このような利点にもかかわらず、リチウム二次電池は、安全性に短所を有している。具体的には、電池組立体に電解液注液直後の1次充電、Aging、充放電時に電解質が反応してガスが発生し、発生したガスは、電池内部に閉じ込められ、容量低下およびリチウム析出のような問題を発生させる。
【0006】
また、ガスの多量発生時、ケースと電極組立体との間であるデッドスペース(dead space)の圧力が上昇し、電極組立体の内部にトラップされたガスがデッドスペースに排出されることが難しくなり、上記トラップされたガスによって電池性能が退化することがある。さらに、電池内圧を上昇させて、円筒形または角形などの電池ケースの変形を誘発することがあり、二次電池が爆発するなど深刻な問題も発生するおそれがある。
【0007】
上述のような問題を解決するために、一般的に、二次電池のケース内部に発生したガスを外部に排出させて内部圧力を低下させるためのガス排出手段を上記ケースに形成する場合が多い。しかしながら、上記ガス排出手段は、比較的高い臨界温度で破裂し、電池内圧力がゆっくり増加するので、二次電池モジュール内で多数の個別二次電池中の1つの温度が異常上昇する場合、隣接する個別二次電池に熱伝播が行われ、正常な個別二次電池までも連鎖的にガス排出手段が破裂し、作動が中止したり、電池性能が低下するという短所がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上述のような問題点を解決するためになされたものであって、本発明の課題は、正常作動温度では、電池内部のガスを吸着しつつ、二次電池に異常な温度上昇が発生する場合には、迅速に気体を排出して内部圧力を高めることによって、圧力臨界点に迅速に到達してケースの外部にガスを排出し得る二次電池およびそれを含むモジュールを提供することにある。
【0009】
本発明の別の課題は、二次電池の正常駆動温度の範囲で発生するガスを吸着して電池ケース内の圧力を低減して上記電池ケースの変形を抑制し、電池性能を低下させない二次電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記問題を解決するために、
本発明は、一実施形態において、
電極組立体と、
上記電極組立体が収容されるケースと、を含み、
上記ケースは、内側面に、ケース内の温度によって内部ガスを吸着または脱着するガス吸着物質を含有する、コーティング層を備える二次電池を提供する。
【0011】
このとき、上記ガス吸着物質は、70~150℃の臨界温度を有し、上記臨界温度未満で内部ガスを吸着し、臨界温度以上で内部ガスを脱着することができる。
【0012】
このようなガス吸着物質は、マグネシウム、マンガン、鉄、亜鉛およびコバルトのうち1種以上の金属を含むジアミン化合物を含んでもよいし、上記ジアミン化合物は、mmen-Mg2(dobpdc)、mmen-Mn2(dobpdc)、mmen-Fe2(dobpdc)、mmen-Zn2(dobpdc)およびmmen-Co2(dobpdc)のうち1種以上を含んでもよい。
【0013】
また、上記ガス吸着物質は、炭素繊維、活性炭、ゼオライト、アルミナ、シリカ、ボーキサイト(Bauxite)および分子篩(molecular sieves)のうち1種以上を含んでもよい。
【0014】
また、上記コーティング層は、70~110℃の臨界温度を有する第1ガス吸着物質と、110~140℃の臨界温度を有する第2ガス吸着物質と、バインダーと、を含んでもよい。
【0015】
また、上記第1ガス吸着物質および第2ガス吸着物質は、それぞれ、コーティング層全重量に対して60~80重量%および19~50重量%で含まれてもよい。
【0016】
また、上記コーティング層は、平均厚さが50μm~500μmであってもよい。
【0017】
また、上記コーティング層は、ケース全面積を基準として50~90%の面積率を有するパターン構造を有していてもよい。
【0018】
また、上記内部ガスは、酸素(O2)、水素(H2)、エチレン(C2H4)、アセチレン(C2H2)、プロピレン(C3H6)、一酸化炭素(CO)、二酸化炭素(CO2)、メタン(CH4)、エタン(CH3CH3)、プロパン(CH3CH2CH3)、一酸化窒素(NO)および二酸化窒素(NO2)のうち1種以上を含んでもよい。
【0019】
また、上記二次電池は、圧力によってベンティングされるガス排出手段をさらに含んでもよい。
【0020】
また、本発明は、一実施形態において、
上述したような本発明による二次電池を含む二次電池モジュールを提供する。
【発明の効果】
【0021】
本発明による二次電池は、臨界温度を基準として正常作動温度で内部ガスを吸着し、高温で吸着した内部ガスを脱着するガス吸着物質がケースの内側面にコーティングされることによって、異常な高温に露出時に、短時間に内圧臨界点に到達させて、内部ガス放出時点を早めることができるので、電池の熱伝播および火災に対する安全性をより高めることができる。
【0022】
また、上記二次電池は、正常駆動温度範囲で発生するガスを吸着して電池ケース内の圧力を低減して、上記電池ケースの変形を抑制し、電池性能を低下させないという効果に優れている。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の一実施形態によるパウチ型二次電池の構造を示す断面図である。
【
図2】本発明の他の一実施形態によるパウチ型二次電池の構造を示す断面図である。
【
図3】一般的なCO
2吸着剤のCO
2吸着等温線を示すグラフ(a)とmmen-M
2(dobpdc)の吸着剤のCO
2吸着等温線を示すグラフ(b)である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下では、本発明の実施形態による図面を参照して説明するが、これは、本発明のさらに容易な理解のためのものであり、本発明の範疇がそれによって限定されるわけではない。
【0025】
<二次電池>
本発明は、一実施形態において、
電極組立体と、
上記電極組立体が収容されるケースと、を含み、
上記ケースは、内側面に、ケース内の温度によって内部ガスを吸着または脱着するガス吸着物質を含有するコーティング層を備える二次電池を提供する。
【0026】
本発明による二次電池は、電極組立体を含み、上記電極組立体は、ケースに収容された形態を有する。ここで、上記ケースは、二次電池の形態、構造、製造方法によって多様に適用できるが、具体的には、円筒形、角形、パウチ型などを適用することができる。一例として、上記ケースは、パウチ型ケースであってもよい。
【0027】
また、上記ケースは、内側面に、二次電池の充放電時に発生する内部ガスを吸着または脱着するガス吸着物質を含有するコーティング層が設けられてもよい。具体的には、上記ケースは、電極組立体が配置される内側表面にガス吸着物質およびそれを固定させるバインダーが混合された形態のコーティング層を含んでもよい。
【0028】
このとき、上記コーティング層に含有されたガス吸着物質は、70~150℃の臨界温度を有し、上記臨界温度未満で内部ガスを吸着し、臨界温度以上で内部ガスを脱着することができる。すなわち、上記ガス吸着物質は、臨界温度未満の正常作動温度では、電池の充放電によって発生する内部ガスを吸着してケース内部の圧力を低下させ、電池の異常な作動によって臨界温度以上に熱が発生する場合、吸着したガスを脱着してケース内部のガス圧力を短時間内にまたは瞬間的に高めることによって、熱暴走前に迅速に内部ガスを放出(vent open)することができる。
【0029】
このために、上記ガス吸着物質は、70~150℃の臨界温度を有していてもよく、具体的には、70~130℃、70~110℃、70~90℃、90~120℃、100~110℃、110~125℃、または120~140℃の臨界温度を有していてもよい。本発明は、ガス吸着物質の臨界温度を上記範囲に調節することによって、電池の正常作動温度では、内部ガスを吸着し、異常作動温度、例えば、発熱条件では、効果的にガスを脱着して、内部圧力を短時間内にまたは瞬間的に増加させることができる。
【0030】
このようなガス吸着物質としては、70~150℃の臨界温度を基準としてガスを吸着または脱着するものであれば、特に制限されずに適用し得るが、具体的には、マグネシウム、マンガン、鉄、亜鉛およびコバルトのうち1種以上の金属を含むジアミン化合物を含んでもよいし、上記ジアミン化合物以外に多孔性構造を有してガスを捕集する素材、例えば、炭素繊維、活性炭、ゼオライト、アルミナ、シリカ、ボーキサイト(Bauxite)および分子篩(molecular sieves)などを単独で使用したり、併用したりし得る。
【0031】
一例として、上記ガス吸着物質は、70~90℃の臨界温度を有する、mmen-Mg2(dobpdc)、mmen-Mn2(dobpdc)、mmen-Fe2(dobpdc)、mmen-Zn2(dobpdc)およびmmen-Co2(dobpdc)のうち1種以上を含むジアミン化合物を含んでもよいし、ここで、「mmen」は、N,N-ジメチルエチレンジアミンを意味し、「Dobpdc」は、4,4'-ジオキシドビフェニル-3,3'-ジカルボキシラートを意味する。
【0032】
上記ジアミン化合物は、mmen分子の配位しないアミン化合物であり、強塩基として作用して隣り合うmmen分子の金属結合アミンから酸性プロトンを除去し、ガス(例えば、CO2)の吸着時にアンモニウムの対カチオンを有するカルバメート(carbamate)が形成される相転移が起こる。そこへ適切な温度と圧力を加えると、M-N bondが切れ、M-O bondが形成されるカルバメートの再配列が可能となる。ion-pairing相互作用がmmen分子を伸張させ、M-N bondを不安定にして、次の金属部位でガス(例えば、CO2)の挿入が促進される。このような協力効果は、完全な1次元アンモニウムカルバメート鎖が形成されるときまで伝播し、このような協力効果によって多量のガス(例えば、CO2)が吸着して、吸着等温線が急な垂直形態で現れる。
【0033】
これとは反対に、上記ガス(例えば、CO
2)が吸着したmmen-M
2(dobpdc)にさらに高い温度と圧力(
図3でT
mediumまたはT
highの温度とP
desの圧力)を加えた場合、上記ガス吸着メカニズムが逆に発生するが、M-O bondが切れ、M-N bondが形成されて、ガス(例えば、CO
2)が脱離しつつ、周辺のM-O bondを不安定にし、次の金属部位でガス(例えば、CO
2)の脱離を促進する協力効果が発生する。そのため、多量のガス(例えば、CO
2)の急激な脱離が起こる。
【0034】
一方、mmen-M2(dobpdc)で、2価金属Mの種類によって金属-アミン結合強度が異なり、そのため、ガス吸着段階およびガス脱着段階の位置が変わるが、与えられた同一温度でガス吸着段階および脱着段階の位置は、Mg<Mn<Fe<Zn<Coの順に変わる。すなわち、上記mmen-M2(dobpdc)が臨界温度より低い場合、内部ガスを吸収し、臨界温度より高い場合、内部ガスを放出することになり、上記Mを適切に選択して内部ガスの吸着および脱離が転換される臨界温度を調節することができる。
【0035】
本発明は、上記のようなmmen-M2(dobpdc)のガス(例えば、CO2)吸着および脱着特性を用いたものであり、二次電池の正常な充放電過程で発生するCO2などの内部ガスは、上記mmen-M2(dobpdc)のガス吸着物質を用いて吸着率を高め、二次電池の短絡による温度上昇など異常反応の発生時に上記ガス吸着物質内吸着していた内部ガスを上記臨界温度以上で迅速に脱着させて、二次電池ケースの内圧を急激に高めることによって、ガス排出手段の破裂部材を破裂させてガスを排出させる。これによって、二次電池モジュール内で異常反応が発生した二次電池を迅速に不能状態にして、隣接する二次電池への連鎖的な熱伝播を防止することができる。
【0036】
他の一例として、上記ガス吸着物質は、110~140℃の臨界温度を有するゼオライト、活性アルミナおよび/またはシリカゲルであってもよい。上記ゼオライト、活性アルミナおよび/またはシリカゲルは、同じ化学成分を含んでいても、熱処理、表面処理、表面コーティングなどの後処理工程や、製造時の工程条件や素材内ドーピングなどによって臨界温度が異なり、二次電池が駆動される条件によって予測される内部温度範囲に合わせて適切に臨界温度を調節することができる。
【0037】
また、上記コーティング層は、ガス吸着物質を含有し、かつ、臨界温度が異なる2種以上のガス吸着物質を含有していてもよい。臨界温度が異なる2種以上のガス吸着物質をコーティング層に含有する場合、内部ガスを放出しようとする所定の温度範囲に容易にコントロールすることができる。
【0038】
具体的には、上記コーティング層は、70~110℃の臨界温度を有する第1ガス吸着物質と、110~140℃の臨界温度を有する第2ガス吸着物質と、バインダーと、を含んでもよい。
【0039】
一例として、上記コーティング層は、80~95℃の臨界温度を有する第1ガス吸着物質と、115~130℃の臨界温度を有する第2ガス吸着物質と、バインダーと、を含んでもよい。
【0040】
他の一例として、上記コーティング層は、100~110℃の臨界温度を有する第1ガス吸着物質と、110~120℃の臨界温度を有する第2ガス吸着物質と、バインダーと、を含んでもよい。
【0041】
このとき、上記第1ガス吸着物質は、二次電池の正常作動時および/または臨界温度以下の内部温度条件で発生するガスを吸着して二次電池内部の圧力を低減させる一方で、二次電池の異常作動によって内部温度が臨界温度、具体的には、70~110℃を超過する場合、吸着したガスを脱着させて内部圧力を顕著に増加させる役割をすることができる。
【0042】
また、上記第2ガス吸着物質は、第1ガス吸着物質より高い臨界温度を有するので、二次電池の異常作動によって内部温度が第1ガス吸着物質の臨界温度を超過する場合、第1ガス吸着物質から脱着したガスを一部吸着して二次電池の内部に収容された電極組立体の損傷を防止する一方で、二次電池内部の当該二次電池と隣接する二次電池に熱伝播が行われる前に、吸着したガスを脱着して、二次電池内部の圧力を短時間内にまたは瞬間的に増加させる役割をすることができる。このために、上記第1ガス吸着物質は、二次電池の熱伝播が行われる温度より低い温度の臨界温度を有していてもよい。
【0043】
また、上記第1ガス吸着物質と第2ガス吸着物質は、一定の重量比でコーティング層に含まれてもよい。具体的には、本発明のコーティング層は、第1ガス吸着物質と第2ガス吸着物質を全重量に対してそれぞれ60~80重量%および19~50重量%で含まれてもよく、より具体的には、全重量に対してそれぞれ65~75重量%および24~40重量%、または62~70重量%および29~35重量%で含まれてもよい。
【0044】
本発明は、コーティング層に含有された第1ガス吸着物質と第2ガス吸着物質の含有量を上記範囲に調節することによって、電池の正常作動温度では、電池内圧を低く維持しつつ、電池の異常作動によって内部温度が120℃を超過する場合、より具体的には、140℃以上の温度条件下で内部ガスを脱着して電池の熱暴走前に内圧を瞬間的に増加させることができるので、より低い温度条件でケース外部に内部ガスを放出することができ、これによって、電池の安全性をより向上させることができる。
【0045】
また、上記コーティング層は、ケース内側面に形成され、かつケースに収容された電極組立体を取り囲むようにケース内側の全面に形成されてもよく、場合によっては、表面積を増加させるためにパターン構造を形成されてもよい。上記コーティング層は、電池の充放電時に電極組立体の活物質間および/または活物質と電解質間の副反応によって発生するガスを吸着するために、電極組立体を取り囲む形態でケース内側の全面に形成されてもよく、ケース内側の全面に形成され、かつパターン構造を有するように形成され、表面積を増加させることによって、電池内部のガスをより効率的に吸着させることができる。
【0046】
ここで、上記コーティング層がパターン構造を有する場合、コーティング層は、ケース全面積を基準として50~90%の面積率で形成されてもよく、具体的には、ケース全面積を基準として60~90%、70~90%、75~90%、または70~85%の面積率で形成されてもよい。
【0047】
また、上記コーティング層は、平均厚さが50μm~500μmであってもよく、具体的には、50μm~400μm、50μm~300μm、50μm~200μm、100μm~300μm、150μm~300μm、または80μm~150μmであってもよい。
【0048】
本発明は、コーティング層の面積率と平均厚さを上記範囲に調節することによって、電池のエネルギー密度が低下するのを防止し、ガス吸着率を最大に高めることができる。
【0049】
一方、二次電池の充放電時に、電池内部で発生する内部ガスは、電極組立体を構成する正極、負極および/または分離膜の分解に由来したり、電解質の分解に由来するものであり、その種類が特に制限されるものではない。
【0050】
具体的には、上記内部ガスは、酸素(O2)、水素(H2)、エチレン(C2H4)、アセチレン(C2H2)、プロピレン(C3H6)、一酸化炭素(CO)、二酸化炭素(CO2)、メタン(CH4)、エタン(CH3CH3)、プロパン(CH3CH2CH3)、一酸化窒素(NO)および二酸化窒素(NO2)のうち1種以上を含んでもよい。
【0051】
一例として、上記内部ガスは、一酸化炭素(CO)および/または二酸化炭素(CO2)であってもよい。電池の充放電時に異常作動によって発熱が発生すると、電解質が分解されて、相当量の一酸化炭素(CO)および/または二酸化炭素(CO2)が生成される。本発明は、このような一酸化炭素(CO)および/または二酸化炭素(CO2)を高い割合で吸着および脱着することによって、ガスによる内部圧力を効果的に制御することができる。
【0052】
また、本発明による二次電池は、電極組立体が収容されるケースにガスを排出するためのガス排出手段をさらに含んでもよい。
【0053】
図1および
図2は、本発明による二次電池の構造を示す断面図であり、本発明の二次電池の構造は、電極リード10と電極組立体14を受容するケース12とからなり、上記電極リード10は、ケース12とシーリング部15で連結されていて、ケース12の外部に一部が露出している。
【0054】
ここで、上記ケース12は、電池の異常作動によってコーティング層16で内部ガスが脱着することによって内部圧力が急激に高まる場合、高まった内部圧力により内部ガスをベンティングするガス排出手段11をさらに含んでもよい。
【0055】
具体的には、上記ガス排出手段11は、
図1に示されたように、上記ケース12の一側に形成されてもよく、
図2に示されたように、電極リード10と電極タップ10'との間に形成されてもよい。二次電池の充放電過程中に異常発熱による温度上昇などの理由でCO、CO
2などの内部ガスが二次電池内に発生するおそれがあり、そのため、上記二次電池ケース12の内圧が上昇し、ケースの変形を引き起こしたり、火災が発生するなど安全上の問題が生じることがある。上記ガス排出手段11は、前述のような問題を解決するためのもので、特に形態に制限されるものではないが、上記ガス排出手段11には、二次電池ケースの内部と外部を連結する開口部(図示せず)および二次電池ケースの内部を封止し、二次電池ケースの内部圧力増加時に破裂する破断部(図示せず)が含まれてもよい。
【0056】
また、本発明の一実施形態による二次電池は、電流遮断部材を含んでもよい。上記電流遮断部材は、温度上昇時に短絡が発生するフューズであってもよく、内部ガスの発生による増加した圧力で分離する構造で形成することができる。本発明がガス吸着物質の急激な内部ガスの脱着を用いたものであり、上記電流遮断部材は、圧力によって分離して電流を遮断する構造が好ましい。
【0057】
すなわち、本発明による二次電池は、電池内に異常発熱によって温度が上昇するとき、ガス吸着素材に吸着していた気体が脱着し、これによって、二次電池ケース12の内部に一定レベル以上の圧力が発生する場合、上記ガス排出手段11がベンティングされつつ、活性化ガス、電池の充放電によって生成されたガスおよび/または電池の高温露出によって生成されたガスなどが排出され、電流遮断部材13により二次電池は作動を中止する。
【0058】
<二次電池モジュール>
また、本発明は、上述した本発明による二次電池を含む二次電池モジュールを提供する。
【0059】
本発明による二次電池モジュールは、ケース内側面に、臨界温度を基準としてガスを吸着または脱着するガス吸着物質を含有する、コーティング層を備える本発明による二次電池を含む。
【0060】
これによって、上記二次電池モジュールは、電池の正常作動温度で内部ガスを吸着し、電池の異常作動による発熱時、吸着した内部ガスを脱着して、短時間に電池の内部圧力(すなわち、内圧)を臨界点に到達させることによって、内部ガス放出時点を容易に制御することができるので、安全性に優れているという利点がある。
【0061】
本発明による二次電池モジュールは、本発明の二次電池を備える構成を有することによって、高温露出時に安全性に優れている。そのため、高温安全性および長いサイクル特性と高いレート特性などが要求される中大型デバイスの電源に使用され得る。このような中大型デバイスの具体的な例としては、電気モーターにより動力を受けて動く電動工具(power tool)、電気自動車(Electric Vehicle,EV)、ハイブリッド電気自動車(Hybrid Electric Vehicle,HEV)、プラグインハイブリッド電気自動車(Plug-in Hybrid Electric Vehicle,PHEV)などを含む電気車、電気自転車(E-bike)、電気スクーター(Escooter)を含む電気二輪車、電気ゴルフカート(electric golf cart)、電力貯蔵用システムなどが挙げられ、より具体的には、ハイブリッド電気自動車(Hybrid Electric Vehicle,HEV)が挙げられるが、これに限定されない。
【0062】
以下、本発明を実施例および実験例に基づいてより詳細に説明する。
ただし、下記実施例および実験例は、ただ本発明を例示するものであり、本発明の内容が下記実施例および実験例に限定されるものではない。
【0063】
(実施例1~4.二次電池の製造)
正極と、負極と、上記正極と負極の間に介在した分離膜と、を備える電極組立体を準備し、準備した組立体をパウチ型ケースに挿入し、電解液を注入した後、シーリングして、二次電池を製作した。
【0064】
このとき、使用されたケースは、
図1のように、一側にガス排出手段が設けられ、内側面にコーティング層(平均厚さ:約50μm)が設けられたものを使用した。上記コーティング層は、ガス吸着物質97重量%およびバインダー3重量部%を含み、かつ下記表1に示されたように、第1ガス吸着物質(臨界温度:約75~80℃)、第2ガス吸着物質(臨界温度:約125~130℃)および面積率が調節された。
【0065】
【0066】
(比較例1.二次電池の製造)
内側面にコーティング層が形成されないケースを使用したことを除いて、実施例1と同じ方法で行って、二次電池を製作した。
【0067】
(実験例)
実施例および比較例で製作された二次電池を対象に過充電を行って、各二次電池のガス排出手段から内部ガスが排出(すなわち、ベンティング)されるまでかかる時間および内部ガス排出時の二次電池の内部温度を測定した。
【0068】
具体的には、実施例および比較例で製作された二次電池の内部に温度センサーを導入し、4.2Vで充電した後、充電した電池を0.05Cの定電流で10Vになるまで過充電した。過充電過程で、ガス排出手段が内部ガスを排出するとき、電池の内部温度を測定した。その結果を下記表2に示した。
【0069】
【0070】
上記表2に示されたように、本発明による二次電池は、ケース内側面に臨界温度によって内部ガスを吸着および脱着するガス吸着物質含有コーティング層を備えることによって、安全性が向上することが分かる。
【0071】
具体的には、実施例の二次電池は、ケース内側面にガス吸着物質が含有されたコーティング層が形成され、電池の異常作動による高温露出時に、電池内部圧力を容易に制御することができ、これによって、電池の熱暴走が誘導される前に、内部ガスの放出を行うことができる。
【0072】
一方、コーティング層が形成されていない比較例の二次電池は、電池の熱暴走後にベンティングが行われることが確認された。
【0073】
このような結果から、本発明による二次電池は、臨界温度を基準として正常作動温度で内部ガスを吸着し、高温で吸着した内部ガスを脱着するガス吸着物質がケース内側面にコーティングされることによって、電池の熱伝播および火災に対する安全性をより高めることができることが分かる。
【0074】
以上では、本発明の好ましい実施形態を参照して説明したが、当該技術分野における熟練した当業者または当該技術分野における通常の知識を有する者なら、後述する特許請求の範囲に記載された本発明の思想および技術領域を逸脱しない範囲内で本発明を多様に修正および変更させることができることが理解し得る。
【0075】
したがって、本発明の技術的範囲は、明細書の詳細な説明に記載された内容に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって定められるべきである。