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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-20
(45)【発行日】2025-01-28
(54)【発明の名称】円偏波アンテナおよび通信装置
(51)【国際特許分類】
   H01Q 21/24 20060101AFI20250121BHJP
   H01Q 21/06 20060101ALI20250121BHJP
   H01Q 13/08 20060101ALI20250121BHJP
【FI】
H01Q21/24
H01Q21/06
H01Q13/08
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021149676
(22)【出願日】2021-09-14
(65)【公開番号】P2023042399
(43)【公開日】2023-03-27
【審査請求日】2024-06-25
(73)【特許権者】
【識別番号】593165487
【氏名又は名称】学校法人金沢工業大学
(74)【代理人】
【識別番号】100114074
【弁理士】
【氏名又は名称】大谷 嘉一
(74)【代理人】
【識別番号】100222324
【弁理士】
【氏名又は名称】西野 千明
(72)【発明者】
【氏名】牧野 滋
【審査官】白井 亮
(56)【参考文献】
【文献】特許第6452477(JP,B2)
【文献】特開2021-010097(JP,A)
【文献】特開昭61-007707(JP,A)
【文献】特開2013-201496(JP,A)
【文献】特開2001-244727(JP,A)
【文献】特開2005-341063(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q 21/24
H01Q 21/06
H01Q 13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属層と、前記金属層に対向配置した複数の放射素子層と、前記金属層と前記複数の放射素子層の間又は前記複数の放射素子層の上に誘電体層を介して配置した複数の非接触励振素子とを有し、
前記複数の放射素子層は第1放射素子層と、前記第1放射素子層に対してスリットを介してX軸方向に配置した第2放射素子層と、前記第1放射素子層に対してY軸方向に配置した第3放射素子層とからなり、
前記複数の非接触励振素子は、前記第1放射素子層と第2放射素子層に跨がって配置した第1励振素子と前記第1放射素子層と第3放射素子層に跨がって配置した第2励振素子とからなり、前記第1励振素子と第2励振素子は相互にπ/2の位相差を有していることを特徴とする円偏波アンテナ。
【請求項2】
前記複数の放射素子層は第1,第2,第3及び第4放射素子層の4つの放射素子層をX軸方向にスリットを介して2列、Y軸方向にスリットを介して2列に配置してあり、
前記複数の非接触励振素子はX軸方向であって、第1放射素子層と第2放射素子層に跨がって配置した第1励振素子とY軸方向であって、第1放射素子層と第3放射素子層に跨がって配置した第2励振素子からなることを特徴とする請求項1記載の円偏波アンテナ。
【請求項3】
前記複数の非接触励振素子は第1,第2,第3及び第4励振素子の4つが順次、π/2位相差を有しながら、第1励振素子は前記第1及び第2放射素子層に跨がり、
第2励振素子は前記第1及び第3放射素子層に跨がり、
第3励振素子は前記第3及び第4放射素子層に跨がり、
第4励振素子は前記第4及び第2放射素子層に跨がって配設されていることを特徴とする請求項記載の円偏波アンテナ。
【請求項4】
請求項1~のいずれかの円偏波アンテナを用いた通信装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、円偏波特性を有する小型アンテナに関する。
【背景技術】
【0002】
互いに直交する偏波が等振幅で±π/2の位相差を有していると円偏波が出現する。
近年、移動体通信や衛星通信の発展に伴い円偏波アンテナが着目されているが、一般的には直線偏波のアンテナが2個必要であるために円偏波アンテナのサイズが大きくなる問題がある。
【0003】
本出願人は先に、薄くて小型化を図った直線偏波特性を有するアンテナ(薄型アンテナ)を提案している(特許文献1,2)。
本発明は、上記技術をベースに円偏波特性を有するアンテナに展開したものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第6452477号公報
【文献】特開2021-10097号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、小型でかつ広帯域な円偏波アンテナの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る円偏波アンテナは、金属層と、前記金属層に対向配置した複数の放射素子層と、前記金属層と前記複数の放射素子層の間又は前記複数の放射素子層の上に誘電体層を介して配置した複数の非接触励振素子とを有し、前記複数の非接触励振素子は相互にπ/2の位相差を有していることを特徴とする。
【0007】
ここで金属層とは、金属板あるいは各種基板に金属薄膜を形成したもの等、所定の広さ及び外形形状を有する。
放射素子層は、導電体層であり複数の放射素子層を所定の間隔(スリット)を設けて平面状に配置し、誘電体層を介して金属層と対向配置してある。
誘電体層は樹脂板等の誘電材でもよく、空気層でもよい。
したがって、金属層と放射素子層との間に非接触励振素子を配設する構造としては、金属層の上に第1誘電体層を配置し、この第1誘電体層の上に複数の非接触励振素子を配置し、この複数の非接触励振素子の上に第2誘電体層を配置し、さらに第2誘電体層の上に複数の放射素子を配置した積層構造になる。
なお、この第1及び第2誘電体層は空気層であってもよい。
また、この複数の非接触励振素子は、放射素子層の上側に誘電体層を介して配置しても同様の作用が生じる。
【0008】
非接触励振素子はスルーホール等を介して、外部と電気接続された給電点を有し、放射素子層に励振を発現させるための励振アンテナとして作用する。
【0009】
複数の放射素子層に円偏波特性を発現させる態様としては、次のような構造例が挙げられる。
前記複数の放射素子層は第1放射素子層と、前記第1放射素子層に対してX軸方向に配置した第2放射素子層と、前記第1放射素子層に対してY軸方向に配置した第3放射素子層とからなり、前記複数の非接触励振素子は、前記X軸方向に配置した第1励振素子と前記Y軸方向に配置した第2励振素子とからなる。
【0010】
あるいは、前記複数の放射素子層は第1,第2,第3及び第4放射素子層の4つの放射素子層をX軸方向2列、Y軸方向2列に配置してあり、前記複数の非接触励振素子はX軸方向に配置した第1励振素子とY軸方向に配置した第2励振素子からなる。
この場合に、非接触励振素子は2つに限定されず、複数の非接触励振素子は第1,第2,第3及び第4励振素子の4つが順次、π/2位相差を有しながら、第1励振素子は前記第1及び第2放射素子層に跨がり、第2励振素子は前記第1及び第3放射素子層に跨がり、第3励振素子は前記第3及び第4放射素子層に跨がり、第4励振素子は前記第4及び第2放射素子層に跨がって配設されていてもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る円偏波アンテナの詳細は後述するが、薄くて小型であり、広帯域であることから各種の移動体用等の通信アンテナに適用できる。
例えば、移動通信機器,電子機器,車載機器等、広い分野に展開できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】円偏波アンテナの実施例1、外観図を示す。
図2】実施例1のアンテナの分解図を示し、(a)は放射素子層の配置図、(b)は励振素子の配置図、(c)は金属層の外形を示す。
図3】実施例1のアンテナのX軸方向断面図を示す。
図4】実施例1のアンテナ特性の解析値を示す。
図5】実施例1のアンテナの放射パターンを示す。
図6】円偏波アンテナの実施例2、外観図を示す。
図7】実施例2のアンテナの分解図を示し、(a)は放射素子層の配置図、(b)は励振素子層の配置図、(c)は金属層の外形を示す。
図8】実施例2のアンテナ特性の解析値を示す。
図9】実施例2のアンテナの放射パターンを示す。
図10】円偏波アンテナの実施例3,外観図を示す。
図11】実施例3のアンテナの分解図を示し、(a)は放射素子層の配置図、(b)は励振素子の配置図、(c)は金属層の外形を示す。
図12】実施例3のアンテナ特性の解析値を示す。
図13】実施例3のアンテナの放射パターンを示す。
図14】実施例4のアンテナ構造例を示す。
図15】実施例5のアンンテナ構造例を示す。
図16】比較例のアンテナ、外観図を示す。
図17】比較例のアンテナの分解図を示し、(a)はパッチタイプの放射素子を示し、(b)は金属層の外形を示す。
図18】比較例のアンテナの断面図を示す。
図19】比較例のアンテナ特性の解析値を示す。
図20】比較例のアンテナの放射パターンを示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明に係る円偏波アンテナの構成例を図に基づいて説明するが、本実施例に限定されない。
【0014】
図1~3に実施例1として3枚の放射素子層と2つの励振素子から2点給電タイプの円偏波アンテナ100の構成例を示す。
図1に円偏波アンテナ100の外観図を示す。
アンテナの構成の説明上、放射素子層の配置方向をXY平面で表現し、X軸方向とこれに直交する方向をY軸方向と表示する。
図2(c)に示すようにL,L:81.2mmの銅板からなるL型の金属層20の上に同じ外形形状の第1誘電体層31を重ね、その上に図2(b)に示すようにX軸方向に配置した第1励振素子41,Y軸方向に配置した第2励振素子42を有し、その上に第2誘電体層32を重ねる。
さらにその上に図2(a)に示すようにW,W:36.6mmの正方形の放射素子層を3枚配置した積層構造になっている。
そのX軸方向断面図を図3に示す。
【0015】
第1励振素子41及び第2励振素子42は、パターニング等により幅d:1.0mm,長さL:29.0mmの線状に形成され、給電点F,F図3に示すようにスルーホール等により外部と電気接続されている。
放射素子層は厚さ0.018mmの銅箔で形成され、それぞれW,W:36.6mmの正方形の第1放射素子層11とスリットS:8mmを介してX軸方向に配置した第2放射素子層12及びスリットS:8mmを介して、Y軸方向に配置した第3放射素子層13をL型に配置した例になっている。
第1励振素子41は、第1放射素子層11と第2放射素子層12とに跨がって、かつ、第1,第2放射素子層11,12の中央部に沿ってX軸方向に配置してある。
第2励振素子42は同様にして第1放射素子層11と第3放射素子層13とにわたって、Y軸方向に配置してある。
第1励振素子41及び第2励振素子42とは3枚の放射素子層11,12,13に対して非接触型の励振アンテナとして作用し、図2(b)で説明すると第1励振素子41の左端部に設けた給電点Fに対して第2励振素子42の下端部に給電点Fを有している。
実施例1では、第1誘電体層31及び第2誘電体層32として厚みt,t:0.96mmのNPC-F260A(日本ピラー工業株式会社)多層板を用いた。
したがって、アンテナ全体の厚みTは約1.92mmとなる。
ここで、第1放射素子層11を共有し、この第1放射素子層11と第2放射素子層12にてX軸方向約1/2波長、第1放射素子層11と第3放射素子層13にてY軸方向約1/2波長になるように設定し、第1励振素子41と第2励振素子42とを90°位相差配置したことにより、従来の2つの直線偏波を用いた円偏波アンテナよりも小型になる。
【0016】
実施例1の円偏波のアンテナ特性の解析値を図4に示し、放射パターンを図5に示す。
図4及び図5にてfree(in free space)は自由空間での解析値を示し、on(on metal)は導体上での解析値を示す。
2.4GH帯域において、VSWR3以下の帯域幅,free:2.40~2.52GH,on metal:2.41~2.52GHであり、軸比特性3以下の帯域幅free:2.27~2.53GH,on metal:2.0~2.52GH,2.57~3.0GHであった。
また、放射パターンを図5に示す。
図5で、LHCPは左旋円偏波,RHCPは右旋偏波を示し、広帯域で利得の高い円偏波が得られている。
【0017】
比較のために図16図17に示したパッチアンテナにて評価した。
,L:73mmの正方形の金属層20の上に同外形の誘電体層30を重ね、その上にL:36.5mm,カット寸法V:3.7mmにて対向する角部を切り欠いたパッチ型の放射素子層111を設け、給電点Fは図17(a)に示すように下辺部からa:11.58mmの位置に図18に示すようにスルーホールにて外部と電気接続した。
アンテナの厚みT:2mmとした。
この比較例パッチアンテナのアンテナ特性を図19に放射パターンを図20に示す。
VSWR3以下の帯域幅2.4~2.5GH,軸比特性3以下の帯域幅2.44~2.45軸比特性と非常に狭く、実用的でない。
これに対して、実施例1の円偏波アンテナは広帯域であり、小型のアンテナが実現している。
【0018】
図6に実施例2として4枚の放射素子層と、2つの励振素子からなる2点給電構造の例を示す。
,L:75.9mm,第1放射素子層11に対してX軸方向2列,Y軸方向2列の第2放射素子層12,第3放射素子層13,第4放射素子層14を配置した。
スリット部S,S:2.5mm。
第1励振素子41,第2励振素子42はd:1.0mm,L:29.0mmに設定し、アンテナの厚みT:1.92mmに設定した。
実施例2のアンテナ特性を図8に、放射パターンを図9に示す。
VSWR,軸比特性ともに広帯域になっている。
VSWR3以下の帯域幅free:2.34~2.49GH,on metal:2.35~2.49GHであり、特に軸比特性3以下の帯域幅がfree,on metalともに2.0~3.0GHと広くなっている。
【0019】
実施例3のアンテナを図10図11に示す。
本実施例3は4つの励振素子、第1~第4励振素子43,42,43,44を旋回配置した例である。
なお、L,L:69.12mm,S,S:0.5mmとした。
また、図11(b)にて寸法LX1は、Wの1/2である。
実施例2では、図7(b)に示すように、X軸方向の第1励振素子41とY軸方向の第2励振素子42による2点給電構造であったのに対して、実施例3は図11(b)に示すように、左側端部に給電点Fを有するX軸方向の第1励振素子41に対して、下側端部に給電点Fを有する第2励振素子42の他に、第3放射素子層13と第4放射素子層14とに跨がり、Y軸方向中央部に沿ってX軸方向に配置し、右側端部に給電点Fを有する第3励振素子43と、さらに第4放射素子層14から第2放射素子層12の中央部に沿って跨がり、上側端部に給電点Fを有する第4励振素子44を全体として旋回するように配置したものである。
このようにすると、図12にアンテナ特性の解析値、放射パターンを図13に示すように、高利得の広帯域円偏波アンテナが得られる。
【0020】
実施例4のアンテナ構造例を図14に示す。
本実施例は、図1,2に示した実施例1における非接触励振素子をダイポール素子型の励振素子とした例である。
この場合には、実施例1における第1励振素子41を第1素子41aと第2素子41bとの一対からなるダイポール素子であり、一対の給電点F,Fをスルーホール等にて外部と電気接続させてある。
第2励振素子42も第1素子42aと第2素子42bとの一対のダイポール素子にし、一対の給電点F,Fを有する。
【0021】
実施例5のアンテナ構成例を図15に示す。
実施例1が金属層20と放射素子層との間に非接触励振素子を配置したのに対して、本実施例は放射素子層の上に誘電体層を介して、非接触励振素子を配置した例であり、このように非接触励振素子は放射素子層の上側に配置しても円偏波アンテナとして作用する。
また、図15に示した非接触励振素子の例は、実施例5と同様にダイポール素子とした例になっている。
【符号の説明】
【0022】
11 第1放射素子層
12 第2放射素子層
13 第3放射素子層
20 金属層
31 第1誘電体層
32 第2誘電体層
41 第1励振素子
42 第2励振素子
100 円偏波アンテナ
給電点
給電点
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20