(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-20
(45)【発行日】2025-01-28
(54)【発明の名称】電動スクータ
(51)【国際特許分類】
B62K 5/027 20130101AFI20250121BHJP
B62M 7/12 20060101ALI20250121BHJP
B62K 5/08 20060101ALI20250121BHJP
【FI】
B62K5/027
B62M7/12
B62K5/08
(21)【出願番号】P 2021212823
(22)【出願日】2021-12-27
【審査請求日】2024-05-22
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】519312865
【氏名又は名称】FreeMile株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106220
【氏名又は名称】大竹 正悟
(72)【発明者】
【氏名】三本 茜
【審査官】三宅 龍平
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3232835(JP,U)
【文献】登録実用新案第3161882(JP,U)
【文献】特開2015-229490(JP,A)
【文献】特開2014-133488(JP,A)
【文献】特開2009-176295(JP,A)
【文献】特表2019-529224(JP,A)
【文献】特開2005-088742(JP,A)
【文献】特開2016-002789(JP,A)
【文献】特許第5066745(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62K 5/00 - 5/10
B62K 17/00
B62K 25/00 - 25/32
B62M 7/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動スクータであって、
前輪と、
第1の後輪及び第2の後輪と、
前記前輪と前記後輪との間に位置し前記電動スクータの前後方向に沿って長い箱形状であり内部に少なくともバッテリーが搭載される本体と、
前記本体と前記第1の後輪とを接続し、前記第1の後輪を上下動可能に支持する第1の後輪支持部と、
前記本体と前記第2の後輪とを接続し、前記第2の後輪を上下動可能に支持する第2の後輪支持部と、
前記本体と前記第1の後輪支持部及び前記第2の後輪支持部とに接続される傾斜調整部とを備え、
前記本体は、その上面の全面が、常時立位で乗車する乗員の両足を載せるための乗車位置となり、前記乗員が座位で乗車するシートを有さず、路面と平行な平坦な面で構成されており、
前記傾斜調整部は、前記本体に対して軸部を介して回動可能に構成されており、前記本体の路面に対する傾斜角度にかかわらず、前記第1の後輪と前記第2の後輪とを路面に対して傾斜可能にするものであり、
前記電動スクータは、前記本体の前記傾斜角度が前記第1の後輪及び前記第2の後輪の路面に対する傾斜角度よりも小さい状態で旋回可能に構成さ
れ、
前記傾斜調整部は、前記本体が路面に対して傾斜していない状態で、前記第1の後輪と前記第2の後輪とを路面に対して傾斜可能にする、
電動スクータ。
【請求項2】
請求項
1に記載の電動スクータにおいて、
前記傾斜調整部は、前記第1の後輪と前記第2の後輪とのうち、一方の傾斜角度に応じて他方を傾斜させる、
電動スクータ。
【請求項3】
請求項
2に記載の電動スクータにおいて、
前記傾斜調整部は、前記第1の後輪と前記第2の後輪とを平行に保つ、
電動スクータ。
【請求項4】
請求項1乃至請求項
3のいずれか1項に記載の電動スクータにおいて、
前記傾斜調整部は、復元機構を備え、
前記復元機構は、前記第1の後輪及び前記第2の後輪が傾斜している状態で、該第1の後輪及び該第2の後輪を正立状態に復元する、
電動スクータ。
【請求項5】
請求項
4に記載の電動スクータにおいて、
前記復元機構は、前記第1の後輪及び前記第2の後輪の傾斜方向への振動を抑制する制振機構として動作する、
電動スクータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動スクータに関する。
【背景技術】
【0002】
一般にキックボードと称される車両に電動機を搭載して自走できるようにしたものが存在する(例えば、特許文献1を参照)。電動機を搭載したキックボードや電動スクータには、2輪車と3輪車とが存在する。3輪車には、その操作性が2輪車に近いものがあり、これらは、車両の旋回時に、路面に対して車輪が傾斜するものもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、比較的低速で走行する種類の電動スクータや、立位で操縦を行う電動キックボード等は、比較的高速で走行する種類の電動スクータとは、その操作性が異なることがある。
【0005】
本発明は、かかる事情を鑑みてなされたものであり、比較的低速で走行する際の操作性を向上させることのできる電動スクータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様によれば、電動スクータが提供される。この電動スクータは、本体と、前輪と、傾斜調整部と、第1の後輪と、第2の後輪とを備える。本体及び前輪は、路面に対して傾斜可能に構成される。傾斜調整部は、本体の路面に対する傾斜角度にかかわらず、第1の後輪と第2の後輪とを路面に対して傾斜可能にする。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一態様によれば、比較的低速で走行する際の操作性を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】電動スクータ1の外観を示した斜視図である。
【
図2】電動スクータ1の後面(進行方向の後ろ側)を示した図である。
【
図3】座位で運転を行う場合の電動スクータ1の外観を示した斜視図である。
【
図4】本体10の後面から見た傾斜調整部17を示した図である。
【
図5】本体10の前面から見た傾斜調整部17を示した図である。
【
図6】本体10の後面から見た第1の後輪15及び第2の後輪16が傾斜している状態の傾斜調整部17を示した図である。
【
図7】本体10の前面から見た第1の後輪15及び第2の後輪16が傾斜している状態の傾斜調整部17を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を用いて本発明の実施形態について説明する。以下に示す実施形態中で示した各種特徴事項は、互いに組み合わせ可能である。
【0010】
1.全体構成
図1は、電動スクータ1の外観を示した斜視図である。また、
図2は、電動スクータ1の後面(進行方向の後ろ側)を示した図である。
【0011】
図1及び
図2に示すように、電動スクータ1は、本体10と、ハンドルバー11と、フレームバー12と、前輪13と、後輪支持部14と、第1の後輪15と、第2の後輪16と、傾斜調整部17とを備える。また、電動スクータ1は、
図3に示すように、シート20と、シート支持部21とを設けることにより、乗員が座位で運転を行うようにすることもできる。
図3は、座位で運転を行う場合の電動スクータ1の外観を示した斜視図である。
【0012】
本体10は、乗員が乗車する部位であるとともに、バッテリー等の機器が搭載される部位でもある。ハンドルバー11は、前輪13の方向を変更し、電動スクータ1の操舵を可能とする。また、ハンドルバー11には、アクセルやブレーキ、灯火スイッチ等の操作部や、メータ等の表示部が設けられている。このハンドルバー11は、フレームバー12を介して本体10と接続されるとともに、前輪13とも直接接続されている。例えば、フレームバー12が、中空の円柱状の形状を有し、その中空部にハンドルバー11を貫通させることにより、ハンドルバー11による前輪13の操作を可能にする。このため、ハンドルバー11が直線状のものであれば、ハンドルバー11と本体10の上面(乗員が立位で乗車する際の乗車位置)は平行となる。また、ハンドルバー11と前輪13の直径方向は、一致する。
【0013】
後輪支持部14は、本体10と第1の後輪15及び第2の後輪16を接続し、第1の後輪15及び第2の後輪16を支持する。また、後輪支持部14は、路面に凹凸があった場合等に、第1の後輪15及び第2の後輪16の接地を維持するために、第1の後輪15及び第2の後輪16の上下動を許容する。このため、サスペンションとして動作するバネ等を、後輪支持部14に備えるようにしてもよい。
【0014】
また、後輪支持部14は、第1の後輪15及び第2の後輪16の傾斜を許容する。これにより、本体10及び前輪13は、路面に対して傾斜可能となる。なお、第1の後輪15及び第2の後輪16の傾斜は、傾斜調整部17により調整される。傾斜調整部17については、後述する。
【0015】
2.傾斜調整部17
次に、傾斜調整部17について説明する。
図4は、本体10の後面から見た傾斜調整部17を示した図であり、
図5は、本体10の前面から見た傾斜調整部17を示した図である。また、
図6は、本体10の後面から見た第1の後輪15及び第2の後輪16が傾斜している状態の傾斜調整部17を示した図であり、
図7は、本体10の前面から見た第1の後輪15及び第2の後輪16が傾斜している状態の傾斜調整部17を示した図である。なお、
図4乃至
図7は、いずれも、説明を容易にするために簡略化した図である。
【0016】
図4乃至
図7に示すように、傾斜調整部17は、その軸部が本体10を貫通して配設され、当該軸部を中心に、回動可能に構成されている。また、傾斜調整部17は、復元機構18を備える。本体10の後面側の傾斜調整部17には、後輪支持部14が接続されるとともに、本体10の前面側の傾斜調整部17には、復元機構18が接続される。このような構成により、傾斜調整部17は、軸部を支点としてシーソーのように動作し、第1の後輪15及び第2の後輪16の傾斜を調整する。復元機構18は、バネやダンパ等の復元力を有するものであり、圧縮又は伸長された際に、元の状態に戻る力が生じるものである。つまり、復元機構18は、第1の後輪15及び第2の後輪16が傾斜している状態で、第1の後輪15及び第2の後輪16を正立状態に復元する。また、復元機構18は、第1の後輪15及び第2の後輪16の傾斜方向への振動を抑制する制振機構としても動作する。なお、復元機構18は、省略することも可能である。
【0017】
第1の後輪15及び第2の後輪16は、本体10に対する荷重の変化により傾斜するが、傾斜調整部17により、その傾斜角が調整されるため、結果として、第1の後輪15及び第2の後輪16の傾斜角は、本体10の路面に対する傾斜角と一致するとは限らない。つまり、傾斜調整部17は、本体10の路面に対する傾斜角度にかかわらず、第1の後輪15と第2の後輪16とを路面に対して傾斜可能にする。例えば、傾斜調整部17は、本体10が路面に対して傾斜していない状態で、第1の後輪15と第2の後輪16とを路面に対して傾斜可能にする。
【0018】
また、傾斜調整部17には、後輪支持部14を介して第1の後輪15及び第2の後輪16が接続されているため、傾斜調整部17は、第1の後輪15と第2の後輪16とのうち、一方の傾斜角度に応じて他方を傾斜させることになる。また、傾斜調整部17の大きさを適宜設定することにより、傾斜調整部17は、第1の後輪15と第2の後輪16とを平行に保つことも可能である。
【0019】
図8は、傾斜角の例を示した図である。同図に示すように、第1の後輪15の傾斜角をα、第2の後輪16の傾斜角をβ、本体10の傾斜角をγとすると、αとβは、同一又は略同一であり、γは、αとβとは、関連しない任意の角度となる。具体的には、γは、路面に対するハンドルバー11の傾斜角と一致し、乗員の操作によるものであり、αとβとは、乗員の荷重バランスによるものである。
【0020】
このため、乗員は、
図9に示すような状態で、電動スクータ1を旋回されることが容易となる。
図9は、乗員の乗車姿勢の例を示した図である。なお、同図に示す点線は、第1の後輪15の傾斜角を示したものであり、同図に示す破線は、本体10の傾斜角を示したものである。これらに示すように、乗員4は、本体10を、本体10の傾斜角が第1の後輪15の傾斜角よりも小さい状態で旋回させることが可能であるため、上半身を路面3に対して成立した状態での乗車が容易となり、比較的低速での旋回時に好適とされるリーンアウトの姿勢を取ることが容易となる。
【0021】
3.その他
本発明は、次に記載の各態様で提供されてもよい。
前記電動スクータにおいて、前記傾斜調整部は、前記本体が路面に対して傾斜していない状態で、前記第1の後輪と前記第2の後輪とを路面に対して傾斜可能にする電動スクータ。
前記電動スクータにおいて、前記傾斜調整部は、前記第1の後輪と前記第2の後輪とのうち、一方の傾斜角度に応じて他方を傾斜させる電動スクータ。
前記電動スクータにおいて、前記傾斜調整部は、前記第1の後輪と前記第2の後輪とを平行に保つ電動スクータ。
前記電動スクータにおいて、前記傾斜調整部は、復元機構を備え、前記復元機構は、前記第1の後輪及び前記第2の後輪が傾斜している状態で、該第1の後輪及び該第2の後輪を正立状態に復元する電動スクータ。
前記電動スクータにおいて、前記復元機構は、前記第1の後輪及び前記第2の後輪の傾斜方向への振動を抑制する制振機構として動作する電動スクータ。
もちろん、この限りではない。
【0022】
最後に、本発明に係る種々の実施形態を説明したが、これらは、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0023】
1 :電動スクータ
3 :路面
4 :乗員
10 :本体
11 :ハンドルバー
12 :フレームバー
13 :前輪
14 :後輪支持部
15 :第1の後輪
16 :第2の後輪
17 :傾斜調整部
18 :復元機構
20 :シート
21 :シート支持部