(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-20
(45)【発行日】2025-01-28
(54)【発明の名称】特異的結合剤により認識されるエピトープタグ
(51)【国際特許分類】
C07K 19/00 20060101AFI20250121BHJP
C07K 7/08 20060101ALI20250121BHJP
C07K 16/44 20060101ALI20250121BHJP
C07K 17/00 20060101ALI20250121BHJP
C12N 15/13 20060101ALI20250121BHJP
C12N 15/62 20060101ALI20250121BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20250121BHJP
C07K 1/22 20060101ALI20250121BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20250121BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20250121BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20250121BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20250121BHJP
G01N 33/53 20060101ALI20250121BHJP
【FI】
C07K19/00 ZNA
C07K7/08
C07K16/44
C07K17/00
C12N15/13
C12N15/62 Z
C12N15/63 Z
C07K1/22
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
G01N33/53 D
(21)【出願番号】P 2021537505
(86)(22)【出願日】2019-09-11
(86)【国際出願番号】 EP2019074153
(87)【国際公開番号】W WO2020053239
(87)【国際公開日】2020-03-19
【審査請求日】2022-09-08
(32)【優先日】2018-09-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(32)【優先日】2019-03-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】521101332
【氏名又は名称】ナノタグ バイオテクノロジーズ ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】フレイ シュテッフェン
(72)【発明者】
【氏名】ゲッケ ハンスイェルク
(72)【発明者】
【氏名】オパソ ダビラ ルイス フェリペ
(72)【発明者】
【氏名】ステンマルク ポール エリク グスタフ
(72)【発明者】
【氏名】マルティネス カランサ マーケル
【審査官】團野 克也
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第03/052076(WO,A1)
【文献】特表平08-500487(JP,A)
【文献】Science,2005年,Vol.307/No.5713,P.1321-1324
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
IPC C12N、G01N
DB名 CAplus/REGISTRY/MEDLINE/
BIOSIS/EMBASE(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)MPSRLEEELRRRLTEP (SEQ ID NO: 05);
PSRLEEELRRRLTEP (SEQ ID NO: 06);
PSRLEEELRRRLTE (SEQ ID NO: 07); および
MSGRLEEELRRRLSP (SEQ ID NO: 33)
からなる群から選択される配列を含むペプチドと、
(b)ポリペプチドと
を含む、融合タンパク質。
【請求項2】
前記ペプチドが、前記ポリペプチドのN末端またはC末端に融合されているか、あるいは該N末端と該C末端との間の位置で融合されている、請求項1記載の融合タンパク質。
【請求項3】
請求項1または2記載の融合タンパク質に含まれる前記ペプチドに特異的に結合する、単一ドメイン抗体であって、
(a)CDR1配列GVTISALNAMAMG(SEQ ID NO:115)、CDR2配列AVSERGNAM(SEQ ID NO:116)、およびCDR3配列LEDRVDSFHDY(SEQ ID NO:117)
、または
(b)CDR1配列GVTISALNAMAMG(SEQ ID NO:118)、CDR2配列AVSSRGNAM(SEQ ID NO:119)、およびCDR3配列LEDRVDSFHDY(SEQ ID NO:120)
を含む、単一ドメイン抗体。
【請求項4】
前記抗体が、CDR1配列GVTISALNAMAMG(SEQ ID NO:115)、CDR2配列AVSERGNAM(SEQ ID NO:116)、およびCDR3配列LEDRVDSFHDY(SEQ ID NO:117)を含む、請求項
3記載の抗体。
【請求項5】
前記抗体が、CDR1配列GVTISALNAMAMG(SEQ ID NO:118)、CDR2配列AVSSRGNAM(SEQ ID NO:119)、およびCDR3配列LEDRVDSFHDY(SEQ ID NO:120)を含む、請求項
3記載の抗体。
【請求項6】
EVQLQESGGGLVQPGGSLRLSCTASGVTISALNAMAMGWYRQAPGERRVMVAAVSERGNAMYRESVQGRFTVTRDFTNKMVSLQMDNLKPEDTAVYYCHVLEDRVDSFHDYWGQGTQVTVSS (SEQ ID NO: 133)、または
EVQLQESGGGLVQPGGSLRLSCTASGVTISALNAMAMGWYRQAPGEERVMVAAVSSRGNAMYRESVQGRFTVTRDFTNKMVSLQMDNLKPEDTAVYYCHVLEDRVDSFHDYWGQGTQVTVSS (SEQ ID NO: 134)
と少なくとも90%の配列同一性を有するVHH配列を含む、請求項
3~5のいずれか一項記載の抗体。
【請求項7】
EVQLQESGGGLVQPGGSLRLSCTASGVTISALNAMAMGWYRQAPGERRVMVAAVSERGNAMYRESVQGRFTVTRDFTNKMVSLQMDNLKPEDTAVYYCHVLEDRVDSFHDYWGQGTQVTVSS (SEQ ID NO: 133)、または
EVQLQESGGGLVQPGGSLRLSCTASGVTISALNAMAMGWYRQAPGEERVMVAAVSSRGNAMYRESVQGRFTVTRDFTNKMVSLQMDNLKPEDTAVYYCHVLEDRVDSFHDYWGQGTQVTVSS (SEQ ID NO: 134)
と少なくとも95%の配列同一性を有するVHH配列を含む、請求項3~6のいずれか一項記載の抗体。
【請求項8】
EVQLQESGGGLVQPGGSLRLSCTASGVTISALNAMAMGWYRQAPGERRVMVAAVSERGNAMYRESVQGRFTVTRDFTNKMVSLQMDNLKPEDTAVYYCHVLEDRVDSFHDYWGQGTQVTVSS (SEQ ID NO: 133)
のVHH配列を含む、請求項
3~4および6~7のいずれか一項記載の抗体。
【請求項9】
EVQLQESGGGLVQPGGSLRLSCTASGVTISALNAMAMGWYRQAPGEERVMVAAVSSRGNAMYRESVQGRFTVTRDFTNKMVSLQMDNLKPEDTAVYYCHVLEDRVDSFHDYWGQGTQVTVSS (SEQ ID NO: 134)
のVHH配列を含む、請求項
3および5~7のいずれか一項記載の抗体。
【請求項10】
検出可能な標識、アフィニティータグ、または固体支持体にコンジュゲートされている、請求項
3~9のいずれか一項記載の抗体。
【請求項11】
(a)融合タンパク質と、
(b)抗体と
を含み、
該融合タンパク質が、請求項1もしくは2記載の融合タンパク質であり、かつ/または、該抗体が、請求項
3~10のいずれか一項記載の抗体である、
複合体。
【請求項12】
請求項1もしくは2記載の融合タンパク質または請求項
3~10のいずれか一項記載の抗体をコードする、核酸。
【請求項13】
請求項
12記載の核酸を含む、ベクター。
【請求項14】
請求項
12記載の核酸もしくは請求項
13記載のベクターを含むか、または、請求項1もしくは2記載の融合タンパク質もしくは請求項
3~10のいずれか一項記載の抗体を発現する、宿主細胞。
【請求項15】
請求項1または2記載の融合タンパク質を検出する方法であって、該融合タンパク質を請求項
3~10のいずれか一項記載の抗体と接触させる工程を含み、該抗体が検出可能な標識にコンジュゲートされている、前記方法。
【請求項16】
請求項1または2記載の融合タンパク質または該融合タンパク質に含まれる抗体部分の特異的標的を単離する方法であって、該融合タンパク質を請求項
3~10のいずれか一項記載の抗体と接触させる工程を含む、前記方法。
【請求項17】
請求項1または2記載の融合タンパク質に含まれるペプチドをコードし、任意で請求項
3~10のいずれか一項記載の抗体をコードする、核酸または核酸発現コンストラクト
を含む、キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2018年9月11日に出願された欧州特許出願公開第18193663.4号明細書および2019年3月4日に出願された欧州特許出願公開第19160485.9号明細書に基づく優先権を主張し、これら欧州特許出願公開明細書の内容は、全ての用途において参照により本明細書にその全体が組み込まれている。
【0002】
発明の分野
本発明は、関心対象のポリペプチドに融合させうるエピトープタグとして有用なペプチド、ならびにこれらペプチドに特異的に結合する抗体を提供する。これらペプチドおよび/または抗体は、そのようなペプチドおよび/または抗体にコンジュゲートされた分子を検出、固定化、単離、または精製するために使用することができる。
【背景技術】
【0003】
背景
エピトープタグは、実質的に生命科学のあらゆる面で重要な役割を果たす。これらは、例えば、組み換えタンパク質の発現および精製を促進するために、バイオテクノロジー用途に利用される(Waugh,D.S. Making the most of affinity tags. Trends Biotechnol 23,316-320(2005)(非特許文献1))。細胞生物学では、エピトープタグは、しばしば所与の関心対象のタンパク質(POI)の生合成またはトポロジーをモニターするために利用される(Nooh,M.M.&Bahouth,S.W. Visualization and quantification of GPCR trafficking in mammalian cells by confocal microscopy. Methods Cell Biol. 142,67-78(2017)(非特許文献2);Kocaoglu,O.&Carlson,E.E. Progress and prospects for small-molecule probes of bacterial imaging. Nat Chem Biol 12,472-478(2016)(非特許文献3))。タグはまた、質量分析技術を用いて研究されるタンパク質複合体の免疫沈降法の手段であり続けている(Shi,Y. et al. A strategy for dissecting the architectures of native macromolecular assemblies. Nat Methods 12,1135-1138(2015)(非特許文献4);Smits,A.H.&Vermeulen,M. Characterizing Protein-Protein Interactions Using Mass Spectrometry:Challenges and Opportunities. Trends Biotechnol 34,825-834(2016)(非特許文献5))。長年にわたり、少なくとも12種の異なるタグが、大部分の科学的状況のための複数のツールを研究者に提供し、進化してきた(Waugh,D.S. Making the most of affinity tags. Trends Biotechnol 23,316-320(2005)(非特許文献1);Brizzard,B. Epitope tagging. BioTechniques 44,693-695(2008)(非特許文献6))。所与のタグはしかし、特定の用途においては並外れて良好に機能するかもしれないが、一方で他の用途においては全く機能しない。結果としてほとんどの研究者が、必要とされる用途の範囲を網羅するために様々なタグに頼ることとなる。
【0004】
真に普遍的なタグは現在まで存在していないようである。その説明の一つとして、ほとんどのタグは天然起源のタンパク質に対する結合剤(典型的にはモノクローナル抗体)のスクリーニング中に副産物として発見されたということがありうる。このことは、例えばc-mycタグ(Evan,G.I.,Lewis,G.K.,Ramsay,G.&Bishop,J.M. Isolation of monoclonal antibodies specific for human c-myc proto-oncogene product. Mol Cell Biol 5,3610-3616(1985)(非特許文献7))、HAタグ(Field,J. et al. Purification of a RAS-responsive adenylyl cyclase complex from Saccharomyces cerevisiae by use of an epitope addition method. Mol Cell Biol 8,2159-2165(1988)(非特許文献8))、またはSpotタグ(登録商標)(Virant,D. et al. A peptide tag-specific nanobody enables high-quality labeling for dSTORM imaging. Nat Commun 1-14(2018). doi:10.1038/s41467-018-03191-2(非特許文献9)、Braun,M.B. et al. Peptides in headlock-a novel high-affinity and versatile peptide-binding nanobody for proteomics and microscopy. Sci Rep 6,19211(2016)(非特許文献10))に当てはまる。典型的には、タグは、当初からそれぞれの結合剤が効率的に認識する最小ペプチドである。結果として、このようなタグの特性は、選択した結合剤に依存して、主として偶然に限定され、一般に特定の実験の要求や条件に対して再調整することができない。一方で、ある特定の用途に合理的にデザインされてきたタグもいくつかある。例えばHisタグは、金属イオンキレート樹脂上の組み換え発現タンパク質の初期粗精製に理想的に適しており、これがHisタグが開発された目的である(Hochuli,E.,Dobeli,H.&Schacher,A. New metal chelate adsorbent selective for proteins and peptides containing neighbouring histidine residues. J.Chromatogr. 411,177-184(1987)(非特許文献11))。しかし高親和性結合剤が不足していることから、Hisタグは現在まで細胞生物学における顕微鏡的用途には広範囲に利用されてきていない。
【0005】
本発明の目的は、改良されたエピトープタグおよびそれに対する特異的結合分子を提供することである。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【文献】Waugh,D.S. Making the most of affinity tags. Trends Biotechnol 23,316-320(2005)
【文献】Nooh,M.M.&Bahouth,S.W. Visualization and quantification of GPCR trafficking in mammalian cells by confocal microscopy. Methods Cell Biol. 142,67-78(2017)
【文献】Kocaoglu,O.&Carlson,E.E. Progress and prospects for small-molecule probes of bacterial imaging. Nat Chem Biol 12,472-478(2016)
【文献】Shi,Y. et al. A strategy for dissecting the architectures of native macromolecular assemblies. Nat Methods 12,1135-1138(2015)
【文献】Smits,A.H.&Vermeulen,M. Characterizing Protein-Protein Interactions Using Mass Spectrometry:Challenges and Opportunities. Trends Biotechnol 34,825-834(2016)
【文献】Brizzard,B. Epitope tagging. BioTechniques 44,693-695(2008)
【文献】Evan,G.I.,Lewis,G.K.,Ramsay,G.&Bishop,J.M. Isolation of monoclonal antibodies specific for human c-myc proto-oncogene product. Mol Cell Biol 5,3610-3616(1985)
【文献】Field,J. et al. Purification of a RAS-responsive adenylyl cyclase complex from Saccharomyces cerevisiae by use of an epitope addition method. Mol Cell Biol 8,2159-2165(1988)
【文献】Virant,D. et al. A peptide tag-specific nanobody enables high-quality labeling for dSTORM imaging. Nat Commun 1-14(2018). doi:10.1038/s41467-018-03191-2
【文献】Braun,M.B. et al. Peptides in headlock-a novel high-affinity and versatile peptide-binding nanobody for proteomics and microscopy. Sci Rep 6,19211(2016)
【文献】Hochuli,E.,Dobeli,H.&Schacher,A. New metal chelate adsorbent selective for proteins and peptides containing neighbouring histidine residues. J.Chromatogr. 411,177-184(1987)
【発明の概要】
【0007】
(a)X1-X2-X3-X4-X5-X6-X7-X8-X9-R-L-X12-X13の配列(SEQ ID NO:01)を含み、
X1はGまたはSまたはTまたはPであり、
X2はRまたはGまたはAまたはEまたはPであり、
X3はLまたはVであり、
X4はEまたはQであり、
X5はEまたはQであり、
X6はEまたはQであり、
X7はLまたはIまたはVであり、
X8はRまたはAまたはQまたはEであり、
X9はRまたはAまたはQまたはEであり、
X12はSまたはTまたはDまたはEまたはPまたはAまたはアミノ酸無しであり、
X13はEまたはKまたはPまたはSまたはAまたはDまたはアミノ酸無しである、
ペプチドと、
(b)ポリペプチドと
を含む融合タンパク質に、本発明は関する。
【0008】
本発明はまた、本発明の融合タンパク質に含まれるペプチドに特異的に結合する抗体に関する。
【0009】
本発明はまた、本発明の抗体が結合するペプチドを含む融合タンパク質に関する。
【0010】
本発明はまた、本発明の融合タンパク質と本発明の抗体とを含む複合体に関する。
【0011】
本発明はまた、本発明の融合タンパク質をコードするかまたは本発明の抗体をコードする核酸に関する。
【0012】
本発明はまた、本発明の核酸を含むベクターに関する。
【0013】
本発明はまた、本発明の核酸または本発明のベクターを含む宿主細胞、または本発明の融合タンパク質または本発明の抗体を発現する宿主細胞に関する。
【0014】
本発明はまた、本発明の融合タンパク質の検出、固定化、単離、または精製のための本発明の抗体の使用に関する。
【0015】
本発明はまた、本発明の融合タンパク質を本発明の抗体と接触させる工程を含む、本発明の融合タンパク質を検出する方法に関する。
【0016】
本発明はまた、融合タンパク質を本発明の抗体と接触させる工程を含む、本発明の融合タンパク質を単離する方法に関する。本発明の融合タンパク質が抗体部分を含む場合、本発明はまた、抗体部分の特異的標的の単離の方法に関する。
【0017】
本発明はまた、本発明の融合タンパク質に含まれるペプチドと任意で本発明の抗体とをコードする核酸または核酸発現コンストラクトを含むキットに関する。
[本発明1001]
(a)X1-X2-X3-X4-X5-X6-X7-X8-X9-R-L-X12-X13の配列(SEQ ID NO:01)を含み、
X1はGまたはSまたはTまたはPであり、
X2はRまたはGまたはAまたはEまたはPであり、
X3はLまたはVであり、
X4はEまたはQであり、
X5はEまたはQであり、
X6はEまたはQであり、
X7はLまたはIまたはVであり、
X8はRまたはAまたはQまたはEであり、
X9はRまたはAまたはQまたはEであり、
X12はSまたはTまたはDまたはEまたはPまたはAまたはアミノ酸無しであり、
X13はEまたはKまたはPまたはSまたはAまたはDまたはアミノ酸無しである、
ペプチドと、
(b)ポリペプチドと
を含む、融合タンパク質。
[本発明1002]
前記ペプチドが、前記ポリペプチドのN末端またはC末端に融合されているか、あるいは該N末端と該C末端との間の位置で融合されている、本発明1001の融合タンパク質。
[本発明1003]
前記ペプチドがエピトープタグである、本発明1001および1002のいずれかの融合タンパク質。
[本発明1004]
前記ポリペプチドが、前記ペプチドに依存しない安定した折りたたみを有する、前記本発明のいずれかの融合タンパク質。
[本発明1005]
前記ペプチドがαヘリカル二次構造を有する、前記本発明のいずれかの融合タンパク質。
[本発明1006]
前記ペプチドが、CDR配列GVTISALNAMAMG(SEQ ID NO:115)、AVSERGNAM(SEQ ID NO:116)、およびLEDRVDSFHDY(SEQ ID NO:117)を含むラクダ科VHHドメインに特異的に結合する、前記本発明のいずれかの融合タンパク質。
[本発明1007]
前記ペプチドと前記ポリペプチドとを連結する1つまたは複数のリンカーをさらに含む、前記本発明のいずれかの融合タンパク質。
[本発明1008]
前記ポリペプチドが、少なくとも1つのタンパク質ドメインを含む、前記本発明のいずれかの融合タンパク質。
[本発明1009]
前記ペプチドが、前記少なくとも1つのタンパク質ドメインの外側にある位置で前記ポリペプチドに融合されている、本発明1008の融合タンパク質。
[本発明1010]
前記ポリペプチドが、球状タンパク質、膜タンパク質、繊維状タンパク質、もしくは天然に折りたたまれていないタンパク質であるか、または球状タンパク質、膜タンパク質、繊維状タンパク質、もしくは天然に折りたたまれていないタンパク質のサブユニットである、前記本発明のいずれかの融合タンパク質。
[本発明1011]
前記ペプチドが、8個から25個のアミノ酸の長さを有する、前記本発明のいずれかの融合タンパク質。
[本発明1012]
前記ポリペプチドが、少なくとも3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、40、50、60、70、80、90、または100個のアミノ酸の長さを有する、前記本発明のいずれかの融合タンパク質。
[本発明1013]
前記ペプチドが、X1-X2-L-E-X5-E-X7-R-R-R-L-X12-X13の配列(SEQ ID NO:02)を含み、
X1はGまたはSまたはPまたはTであり、
X2はRまたはGまたはPであり、
X5はEまたはQであり、
X7はLまたはIであり、
X12はSまたはTまたはPまたはAまたはDまたはEであり、
X13はPまたはAまたはSまたはAまたはDまたはEまたはアミノ酸無しである、
前記本発明のいずれかの融合タンパク質。
[本発明1014]
前記ペプチドが、アミノ酸Xa-XbであるX1というN末端を含み、
XaはDまたはSまたはGまたはMまたはPまたはアミノ酸無しであり、
XbはSまたはDまたはPまたはMまたはRまたはGまたはアミノ酸無しである、
前記本発明のいずれかの融合タンパク質。
[本発明1015]
前記ペプチドが、アミノ酸Xy-XzであるX13というC末端を含み、
XyはGまたはSまたはPまたはDまたはAまたはEまたはKまたはアミノ酸無しであり、
XzはSまたはPまたはアミノ酸無しである、
前記本発明のいずれかの融合タンパク質。
[本発明1016]
前記ペプチドが、アミノ酸Xy-XzであるX13というC末端を含み、
XyはGまたはPまたはAまたはEまたはKまたはSまたはDまたはアミノ酸無しであり、
XzはPまたはSまたはアミノ酸無しである、
本発明1013または1014の融合タンパク質。
[本発明1017]
前記ペプチドが、X1-X2-L-E-X5-E-L-R-R-R-L-X12-X13の配列(SEQ ID NO:03)を含み、
X1はSまたはTであり、
X2はRまたはGであり、
X5はEまたはQであり、
X12はTまたはDまたはEであり、
X13はAまたはDまたはEまたはアミノ酸無しである、
前記本発明のいずれかの融合タンパク質。
[本発明1018]
前記ペプチドが、S-R-L-E-E-E-L-R-R-R-L-T-Eの配列(SEQ ID NO:04)またはそのバリアントを含み、
(SEQ ID NO:04)と比較すると、該バリアントが、S1→T、R2→G、E5→Q、T12→D、T12→E、E13→A、E13→D、およびE13の欠失からなる群より選択される1つから5つの変異を有する、
前記本発明のいずれかの融合タンパク質。
[本発明1019]
SEQ ID NO:04と比較すると、前記バリアントが、次の変異:
(a)S1→TおよびE13→A、
(b)R2→G、
(c)R2→GおよびE5→Q、
(d)R2→G、E5→Q、およびE13→A、
(e)R2→G、E5→Q、T12→D、およびE13→A、
(f)R2→G、E5→Q、T12→E、およびE13→A、
(g)T12→DおよびE13→A、
(h)T12→EおよびE13→A、
(i)およびE13→A、
(j)およびE13→D、または
(k)E13の欠失
を有する、
本発明1018の融合タンパク質。
[本発明1020]
前記ペプチドが、アミノ酸Xa-XbであるX1というN末端を含み、
XaはSまたはGまたはMまたはPまたはアミノ酸無しであり、
XbはRまたはGまたはSまたはPまたはMまたはアミノ酸無しである、
本発明1017~1019のいずれかの融合タンパク質。
[本発明1021]
Xa-Xbが、P、M-P、G-R、P-G、P-S、S-P、G-P、S-P、M、およびM-Sからなる群より選択され、好ましくはPまたはM-Pである、本発明1020の融合タンパク質。
[本発明1022]
前記ペプチドが、アミノ酸Xy-XzであるX13というC末端を含み、
XyはPまたはDまたはAまたはアミノ酸無しであり、
XzはPまたはSまたはアミノ酸無しである、
本発明1017~1021のいずれかの融合タンパク質。
[本発明1023]
Xy-Xzが、アミノ酸無し、P、D-P、A、およびA-Sからなる群より選択され、好ましくはアミノ酸無しまたはPである、本発明1022の融合タンパク質。
[本発明1024]
前記ペプチドが、
(a)M-PとP、
(b)PとP、および
(c)Pとアミノ酸無し
からなる群より選択されるXa-XbとXy-Xzの組み合わせを含む、
本発明1017~1023のいずれかの融合タンパク質。
[本発明1025]
前記ペプチドが、
からなる群より選択される配列を含む、
前記本発明のいずれかの融合タンパク質。
[本発明1026]
前記ペプチドが、X1-X2-L-E-X5-E-X7-R-R-R-L-X12-X13の配列(SEQ ID NO:31)を含み、
X1はGまたはSまたはPであり、
X2はRまたはGであり、
X5はEまたはQであり、
X7はLまたはIであり、
X12はSまたはTまたはPまたはAであり、
X13はPまたはAまたはSまたはアミノ酸無しである、
本発明1001~1016のいずれかの融合タンパク質。
[本発明1027]
前記ペプチドが、G-R-L-E-E-E-L-R-R-R-L-Sの配列(SEQ ID NO:32)またはそのバリアントを含み、
(SEQ ID NO:32)と比較すると、該バリアントが、G1→S、G1→P、R2→G、E5→Q、L7→I、S12→T、S12→P、S12→A、P13の付加、A13の付加、およびS13の付加からなる群より選択される1つから6つの変異を有する、
前記本発明のいずれかの融合タンパク質。
[本発明1028]
SEQ ID NO:32と比較すると、前記バリアントが、次の変異:
(a)G1→S、R2→G、E5→Q、およびP13の付加、
(b)R2→G、E5→Q、S12→T、およびA13の付加、
(c)G1→P、R2→G、E5→Q、S12→T、およびA13の付加、
(d)G1→S、R2→G、E5→Q、S12→T、およびP13の付加、
(e)G1→S、R2→G、S12→T、およびA13の付加、
(f)G1→S、R2→G、E5→Q、およびS12→T、
(g)G1→S、R2→G、E5→Q、S12→T、およびA13の付加、
(h)G1→SおよびS12→P、およびP13の付加、
(i)G1→S、R2→G、E5→Q、S12→T、およびP13の付加、
(j)E5→Q L7→I、およびP13の付加、
(k)P13の付加、または
(l)S12→A
を有する、
本発明1027の融合タンパク質。
[本発明1029]
前記ペプチドが、アミノ酸Xa-XbであるX1というN末端を含み、
XaはMまたはSまたはPまたはDまたはGまたはアミノ酸無しであり、
XbはSまたはDまたはPまたはアミノ酸無しである、
本発明1026~1028のいずれかの融合タンパク質。
[本発明1030]
Xa-Xbが、M-S、S-D、P-D、P-S、D-S、S-P、およびG-Pからなる群より選択され、好ましくはM-Sである、本発明1029の融合タンパク質。
[本発明1031]
前記ペプチドが、アミノ酸Xy-XzであるX13というC末端を含み、
XyはGまたはPまたはAまたはEまたはKまたはSまたはアミノ酸無しであり、
XzはPまたはSまたはアミノ酸無しである、
本発明1026~1030のいずれかの融合タンパク質。
[本発明1032]
Xy-Xzが、アミノ酸無し、G、P、A、E-P、A-S、K、およびSからなる群より選択され、好ましくはアミノ酸無しである、本発明1031の融合タンパク質。
[本発明1033]
前記ペプチドが、M-Sとアミノ酸無しであるXa-XbとXy-Xzの組み合わせを含む、本発明1026~1032のいずれかの融合タンパク質。
[本発明1034]
前記ペプチドが、
からなる群より選択される配列を含む、
前記本発明のいずれかの融合タンパク質。
[本発明1035]
前記ペプチドが、X1-X2-L-E-X5-E-L-R-R-R-L-X12-X13の配列(SEQ ID NO:49)を含み、
X1はSまたはGまたはPであり、
X2はRまたはGまたはPであり、
X5はEまたはQであり、
X12はSまたはTまたはDまたはEであり、
X13はPまたはAまたはDまたはアミノ酸無しである、
本発明1001~1016のいずれかの融合タンパク質。
[本発明1036]
前記ペプチドが、アミノ酸Xa-XbであるX1というN末端を含み、
XaはPまたはDまたはSまたはGまたはアミノ酸無しであり、
XbはDまたはSまたはPまたはアミノ酸無しである、
本発明1035の融合タンパク質。
[本発明1037]
前記ペプチドが、アミノ酸Xy-XzであるX13というC末端を含み、
XyはGまたはPまたはEまたはDまたはSまたはアミノ酸無しであり、
XzはPまたはアミノ酸無しである、
本発明1035または1036の融合タンパク質。
[本発明1038]
前記ペプチドが、
からなる群より選択される配列を含む、
前記本発明のいずれかの融合タンパク質。
[本発明1039]
前記ペプチドが、X1-X2-X3-X4-X5-X6-X7-X8-X9-R-L-X12-X13の配列(SEQ ID NO:61)を含み、
X1はGまたはSであり、
X2はRまたはGまたはAまたはEであり、
X3はLまたはVであり、
X4はEまたはQであり、
X5はEまたはQであり、
X6はEまたはQであり、
X7はLまたはIまたはVであり、
X8はRまたはAまたはQまたはEであり、
X9はRまたはAまたはQまたはEであり、
X12はSまたはTまたはLまたはアミノ酸無しであり、
X13はKまたはPまたはSまたはアミノ酸無しである、
本発明1001~1016のいずれかの融合タンパク質。
[本発明1040]
前記ペプチドが、アミノ酸Xa-XbであるX1というN末端を含み、
XaはDまたはSまたはGまたはMまたはアミノ酸無しであり、
XbはSまたはDまたはPまたはMまたはアミノ酸無しである、
本発明1039の融合タンパク質。
[本発明1041]
前記ペプチドが、アミノ酸Xy-XzであるX13というC末端を含み、
XyはGまたはSまたはPまたはアミノ酸無しであり、
XzはSまたはアミノ酸無しである、
本発明1039または1040の融合タンパク質。
[本発明1042]
前記ペプチドが、
からなる群より選択される配列を含む、
前記本発明のいずれかの融合タンパク質。
[本発明1043]
前記融合タンパク質に含まれる前記ペプチドに特異的に結合する結合パートナーと複合体を形成している、前記本発明のいずれかの融合タンパク質。
[本発明1044]
抗体を含む、前記本発明のいずれかの融合タンパク質。
[本発明1045]
本発明1001~1044のいずれかの融合タンパク質に含まれる前記ペプチドに特異的に結合する、抗体。
[本発明1046]
一価の抗体である、本発明1045の抗体。
[本発明1047]
単一ドメイン抗体である、本発明1045または1046の抗体。
[本発明1048]
ラクダ科VHHドメインを含む、本発明1045~1047のいずれかの抗体。
[本発明1049]
CDR1配列GVTISALNAMAMG(SEQ ID NO:115)または該配列に対して1つもしくは2つの変異を有する配列、
CDR2配列AVSERGNAM(SEQ ID NO:116)または該配列に対して1つもしくは2つの変異を有する配列、および
CDR3配列LEDRVDSFHDY(SEQ ID NO:117)または該配列に対して1つもしくは2つの変異を有する配列
を含む、本発明1045~1048のいずれかの抗体。
[本発明1050]
CDR1配列GVTISALNAMAMG(SEQ ID NO:118)または該配列に対して1つもしくは2つの変異を有する配列、
CDR2配列AVSSRGNAM(SEQ ID NO:119)または該配列に対して1つもしくは2つの変異を有する配列、および
CDR3配列LEDRVDSFHDY(SEQ ID NO:120)または該配列に対して1つもしくは2つの変異を有する配列
を含む、本発明1045~1048のいずれかの抗体。
[本発明1051]
CDR1配列GVTVSALNAMAMG(SEQ ID NO:121)または該配列に対して1つもしくは2つの変異を有する配列、
CDR2配列AVSERGNAM(SEQ ID NO:122)または該配列に対して1つもしくは2つの変異を有する配列、および
CDR3配列LEDRVDSFHDY(SEQ ID NO:123)または該配列に対して1つもしくは2つの変異を有する配列
を含む、本発明1045~1048のいずれかの抗体。
[本発明1052]
CDR2のアミノ酸位置4のEまたはSが、G、A、L、I、S、T、V、C、M、D、N、E、Q、F、Y、H、W、K、R、またはPへ、好ましくはD、N、またはHへと変異されている、本発明1049~1051のいずれかの抗体。
[本発明1053]
FR1配列
であって、X
1
はQ、V、E、もしくはLであり、X
2
はQもしくはPであり、X
3
はLもしくはMである、FR1配列(SEQ ID NO:124)、または
該配列と少なくとも80%、85%、90%、もしくは95%の配列同一性を有する配列
を含む、本発明1049~1052のいずれかの抗体。
[本発明1054]
FR1配列
または該配列と少なくとも80%、85%、90%、もしくは95%の配列同一性を有する配列を含む、本発明1049~1052のいずれかの抗体。
[本発明1055]
FR2配列
WYRQX
1
PGEX
2
RVMVA
であって、X
1
はAもしくはRであり、X
2
はRもしくはEである、FR2配列(SEQ ID NO:126)、または
該配列と少なくとも80%、85%、90%、もしくは95%の配列同一性を有する配列
を含む、本発明1049~1054のいずれかの抗体。
[本発明1056]
FR2配列WYRQAPGERRVMVA(SEQ ID NO:127)または該配列と少なくとも80%、85%、90%、もしくは95%の配列同一性を有する配列を含む、本発明1049~1054のいずれかの抗体。
[本発明1057]
FR2配列WYRQAPGEERVMVA(SEQ ID NO:128)または該配列と少なくとも80%、85%、90%、もしくは95%の配列同一性を有する配列を含む、本発明1049~1054のいずれかの抗体。
[本発明1058]
FR3配列
であって、X
1
はKもしくはQであり、X
2
はTもしくはMである、FR3配列(SEQ ID NO:129)、または
該配列と少なくとも80%、85%、90%、もしくは95%の配列同一性を有する配列
を含む、本発明1049~1057のいずれかの抗体。
[本発明1059]
FR3配列
または該配列と少なくとも80%、85%、90%、もしくは95%の配列同一性を有する配列を含む、本発明1049~1057のいずれかの抗体。
[本発明1060]
FR4配列
WGQGX
1
QVTVSS
であって、X
1
はTもしくはIである、FR4配列(SEQ ID NO:131)、または
該配列と少なくとも80%、85%、90%、もしくは95%の配列同一性を有する配列
を含む、本発明1049~1059のいずれかの抗体。
[本発明1061]
FR4配列WGQGTQVTVSS(SEQ ID NO:132)または該配列と少なくとも80%、85%、90%、もしくは95%の配列同一性を有する配列を含む、本発明1049~1059のいずれかの抗体。
[本発明1062]
VHH配列
または該配列のいずれか1つと少なくとも80%、85%、90%、もしくは95%の配列同一性を有する配列を含む、本発明1049~1061のいずれかの抗体。
[本発明1063]
CDR1配列GTMSAINALN(SEQ ID NO:143)または該配列に対して1つもしくは2つの変異を有する配列、
CDR2配列AITDNGNAH(SEQ ID NO:144)または該配列に対して1つもしくは2つの変異を有する配列、および
CDR3配列LEEEKLGVWVDY(SEQ ID NO:145)または該配列に対して1つもしくは2つの変異を有する配列
を含む、本発明1045~1048のいずれかの抗体。
[本発明1064]
CDR1配列GTMSAINALN(SEQ ID NO:146)または該配列に対して1つもしくは2つの変異を有する配列、
CDR2配列AITDNGNAH(SEQ ID NO:147)または該配列に対して1つもしくは2つの変異を有する配列、および
CDR3配列LEEKLGAWVDY(SEQ ID NO:148)または該配列に対して1つもしくは2つの変異を有する配列
を含む、本発明1045~1048のいずれかの抗体。
[本発明1065]
CDR1配列GTMSAINALN(SEQ ID NO:149)または該配列に対して1つもしくは2つの変異を有する配列、
CDR2配列AITDNGNAH(SEQ ID NO:150)または該配列に対して1つもしくは2つの変異を有する配列、および
CDR3配列LEKEKLGVWVDY(SEQ ID NO:151)または該配列に対して1つもしくは2つの変異を有する配列
を含む、本発明1045~1048のいずれかの抗体。
[本発明1066]
FR1配列
であって、X
1
はVもしくはLである、FR1配列(SEQ ID NO:152)、または
該配列と少なくとも80%、85%、90%、もしくは95%の配列同一性を有する配列
を含む、本発明1063~1065のいずれかの抗体。
[本発明1067]
FR2配列
WYRQX
1
PGKERKMVA
であって、X
1
はPもしくはAである、FR2配列(SEQ ID NO:153)、または
該配列と少なくとも80%、85%、90%、もしくは95%の配列同一性を有する配列
を含む、本発明1063~1066のいずれかの抗体。
[本発明1068]
FR3配列
であって、X
1
はKもしくはEである、FR3配列(SEQ ID NO:154)、または
該配列と少なくとも80%、85%、90%、もしくは95%の配列同一性を有する配列
を含む、本発明1063~1067のいずれかの抗体。
[本発明1069]
FR4配列WGQGTQVTVSS(SEQ ID NO:155)または該配列と少なくとも80%、85%、90%、もしくは95%の配列同一性を有する配列を含む、本発明1063~1068のいずれかの抗体。
[本発明1070]
VHH配列
または該配列のいずれか1つと少なくとも80%、85%、90%、もしくは95%の配列同一性を有する配列を含む、本発明1063~1069のいずれかの抗体。
[本発明1071]
検出可能な標識にコンジュゲートされている、本発明1045~1070のいずれかの抗体。
[本発明1072]
前記検出可能な標識が蛍光標識である、本発明1071の抗体。
[本発明1073]
前記検出可能な標識がアフィニティータグである、本発明1071の抗体。
[本発明1074]
前記検出可能な標識が、FLAGタグ、Strepタグ、Mycタグ、Hisタグ、HAタグ、VSV-Gタグ、HSVタグ、V5タグ、GSTタグ、Spotタグ、BC2タグ、EPEAタグ、マルトース結合タンパク質(MBP)、キチン結合タンパク質(CBP)、チオレドキシン、およびビオチンからなる群より選択される、本発明1071または1073の抗体。
[本発明1075]
固体支持体にコンジュゲートされている、本発明1045~1074のいずれかの抗体。
[本発明1076]
前記抗体が特異的に結合するエピトープと複合体を形成している、本発明1045~1075のいずれかの抗体。
[本発明1077]
本発明1045~1076のいずれかの抗体が結合するペプチドを含む、融合タンパク質。
[本発明1078]
(a)融合タンパク質と、
(b)抗体と
を含み、
該融合タンパク質が、本発明1001~1044および1077のいずれかの融合タンパク質であり、かつ/または、該抗体が、本発明1045~1076のいずれかの抗体である、
複合体。
[本発明1079]
本発明1001~1044および1077のいずれかの融合タンパク質または本発明1045~1076のいずれかの抗体をコードする、核酸。
[本発明1080]
本発明1079の核酸を含む、ベクター。
[本発明1081]
本発明1079の核酸もしくは本発明1080のベクターを含むか、または、本発明1001~1044および1077のいずれかの融合タンパク質もしくは本発明1045~1076のいずれかの抗体を発現する、宿主細胞。
[本発明1082]
本発明1001~1045および1076のいずれかの融合タンパク質のエピトープタグとしての、または該融合タンパク質の検出、固定化、単離、もしくは精製のための、本発明1001~1044および1077のいずれかのペプチドの使用。
[本発明1083]
本発明1001~1044および1077のいずれかの融合タンパク質の検出、固定化、単離、または精製のための、本発明1045~1076のいずれかの抗体の使用。
[本発明1084]
本発明1001~1044および1077のいずれかの融合タンパク質を検出する方法であって、該融合タンパク質を本発明1071~1074のいずれかの抗体と接触させる工程を含む、前記方法。
[本発明1085]
前記融合タンパク質および前記抗体を、前記抗体に含まれる検出可能な標識に対する特異的結合パートナーと接触させる工程をさらに含む、本発明1084の方法。
[本発明1086]
前記特異的結合パートナーが、第二の検出可能な標識にコンジュゲートされている、本発明1085の方法。
[本発明1087]
前記第二の検出可能な標識が、蛍光標識である、本発明1086の方法。
[本発明1088]
前記検出可能な標識または前記第二の検出可能な標識を検出する工程をさらに含む、本発明1084~1087のいずれかの方法。
[本発明1089]
前記融合タンパク質を前記抗体と接触させる前に、該融合タンパク質を発現させる工程をさらに含む、本発明1084~1088のいずれかの方法。
[本発明1090]
前記融合タンパク質の検出が、該融合タンパク質の存在、細胞内局在性、または量を判定することを含む、本発明1084~1089のいずれかの方法。
[本発明1091]
本発明1001~1044および1077のいずれかの融合タンパク質を単離するかまたは本発明1044の融合タンパク質に含まれる抗体部分の特異的標的を単離する方法であって、該融合タンパク質を本発明1045~1076のいずれかの抗体と接触させる工程を含む、前記方法。
[本発明1092]
前記融合タンパク質に結合する前、結合している間、または結合した後に、前記抗体を固体支持体に付着させる、本発明1091の方法。
[本発明1093]
前記融合タンパク質を溶出する工程をさらに含む、本発明1091または1092の方法。
[本発明1094]
前記溶出が、前記融合タンパク質と前記抗体との複合体を、該抗体との結合について該融合タンパク質と競合する物質と接触させることによって行われる、本発明1093の方法。
[本発明1095]
前記物質が、本発明1001~1043または1076のいずれかのペプチドである、本発明1094の方法。
[本発明1096]
本発明1044の融合タンパク質を、該融合タンパク質に含まれる前記抗体部分の特異的標的と接触させる工程をさらに含む、本発明1091~1095のいずれかの方法。
[本発明1097]
前記特異的標的が、細胞表面受容体である、本発明1096の方法。
[本発明1098]
洗浄工程をさらに含む、本発明1091~1097のいずれかの方法。
[本発明1099]
本発明1001~1044および1077のいずれかのペプチドをコードし、任意で本発明1045~1076のいずれかの抗体をコードする、核酸または核酸発現コンストラクト
を含む、キット。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1A】
図1:ALFA
STおよびALFA
PEと、NbALFA
STとの相互作用。A:ALFA結合アッセイに使用されるタンパク質の略図。この図において、shGFP2融合体に使用されるALFAタグは、ALFA
ST(SEQ ID NO:05~07)でもALFA
PE(SEQ ID NO:33)でもどちらでもよい。
【
図1B】B:NbALFA
ST(SEQ ID NO:133)を提示する20μlのALFA Selector
ST樹脂を、ALFA
STまたはALFA
PEが異なる位置で(中間(左)、N末端(中央)、C末端(右))融合したGFPバリアントで(shGFP2、Frey and Gorlich;Cell. 2018 Jun 28;174(1):202-217.e9.doi:10.1016/j.cell. 2018.05.045)、飽和させた。PBSで4回洗浄した後、ビーズを200μMのALFA
STペプチド(Ac-PSRLEEELRRRLTEP-Amide、SEQ ID NO:179)を含有する10倍超のPBS中に懸濁し、室温で緩やかに混合した。図に示された時点で、上清内に放射されたGFP蛍光を利用してビーズからの特異的溶出を定量化した。並行して実施した3つの独立した実験からの平均蛍光値、および各時点の標準偏差を示す。ALFA
PE融合物の効率的なペプチド溶出は、室温ですでに20~30分後に観察された。対照的に、ALFA
STが融合した全てのGFPバリアントは、樹脂に堅固に結合したままであった。ここで留意すべきは、溶出動態は、融合タンパク質内での各ALFAタグバリアントの局在位置にほとんど依存しないことである。
【
図1C】C:ALFA
ST-shGFP2(上段)またはALFA
PE-shGFP2(下段)で飽和させた10μlのALFA Selector
ST樹脂を、PCRストリップ8ウェルの中に移した。残液を除去した後、ビーズを室温で60分間、図に示した100μlの物質とインキュベートした。ビーズの沈降後、写真を撮影した。アスタリスク(*)は、GFP蛍光の部分的または完全な喪失と分かる状態を示す。
【
図2A】
図2:ALFA Selector
STを使用した、複合ライセートからのALFAタグ付き標的タンパク質およびALFAタグ付きタンパク質複合体のプルダウン。A:ALFA
ST(SEQ ID NO:07;ALFA
ST-sfGFP2、左)またはALFA
PE(SEQ ID NO:33;ALFA
PE-GFP、右)がN末端に融合したshGFP2。タンパク質を大腸菌(E. coli)内で過剰発現させ、そのC末端His
6タグを介したニッケルアフィニティークロマトグラフィーによって精製し、続いてSuperdex75サイズ排除カラムでゲルろ過した。
【
図2B】B+C:ALFA Selector
STを使用したワンステップアフィニティー精製のための規定インプット材料を得るため、大腸菌(B)またはHeLa細胞(C)のモック抽出物をそれぞれの基質3μMと混合した。モックライセートを特異性対照とした。1mLの各ライセート/基質混合物を、4℃で1時間、NbALFA
ST(SEQ ID NO:133)を含む25μlのALFA-Selector
STとインキュベートした。1mLのPBSで4回洗浄した後、結合されたタンパク質を、25μlの200μM ALFA
STペプチド(SEQ ID NO:179)のPBS溶液で、室温で10分間、2回溶出した。その後、ビーズに残っているタンパク質をSDS試料緩衝液で溶出した。0.5μL(B)または1.5μL(C)のインプット画分および非結合画分を、SDS-PAGE(12%)およびクーマシー染色法で分析した。図に示されている溶出液画分は、1μlのALFA-Selector
ST樹脂から溶出した物質に相当する。ここで留意すべきは、ALFA
STタグかALFA
PEタグかのいずれかでタグ付けされたタンパク質は、ALFA-Selector
STを使用して天然条件下で特異的にプルダウンできることである。ALFA
PEタグが融合したタンパク質の高効率で特異的な溶出は、ALFA
ST遊離ペプチドとの競合によって天然条件下で達成することができる。ここでさらに留意すべきは、ALFA-Selector
ST樹脂を使用したいずれのライセートから抽出したタンパク質も、従来の2段階クロマトグラフィーによって精製されたそれぞれの基質タンパク質よりも含有する不純物が顕著に少ないことである。
【
図2D】D:左:YfgM-PpiD複合体略図。右:タグなし(-)(SEQ ID NO:198)またはC末端ALFA
PEタグ付きYfgM(+)(SEQ ID NO:197)を、yfgM欠失染料中で発現させた。膜タンパク質複合体を、総ライセートの1%DDMを使用して、可溶化した。YfgM-ALFA
PE含有複合体を、SEQ ID NO:133のナノボディを含むALFA Selector
STアフィニティー樹脂を使用して単一工程で精製した。YfgM-PpiD複合体に対して産生された血清は、インプット画分内のPpiDとYfgMとの両方を認識した。ALFA Selector
STは、YfgM-ALFA
PEとその相互作用パートナーであるPpiDとの天然タンパク質複合体を特異的に免疫沈降させた。
【
図3A】
図3:ナノボディに基づいた、免疫蛍光用途でのALFA
STタグ付きタンパク質の検出。A:ALFA
STタグ(左)またはALFA
PEタグ(右)が結合したNbALFA
STの略図。様々な位置でのタグ付けに使用する、ALFAタグ配列を示す(N末端ALFA
STタグ:SEQ ID NO:05、中間位置ALFA
STタグ:SEQ ID NO:06、C末端ALFA
STタグ:SEQ ID NO:07)。
【
図3B】B:NbALFA
STの配列(NbALFAクローン1G5、SEQ ID NO:133)。灰色ボックスはCDR1~3(AbM定義、SEQ ID NO:115~117)を示す。
【
図3C】C:Tom70-EGFP-ALFA
ST(上段)またはTom70-EGFP-ALFA
PE(下段)を導入したCOS-7細胞を、4%パラホルムアルデヒドで固定した。AbberiorStar635P(FluoTag-X2抗ALFA AbberiorStar635P)と共役したNbALFA
STを用いた染色を、透過処理後に実施した。1列目:FluoTag-X2抗ALFA、2列目:EGFP自家蛍光を使用した標的検出、3列目:DAPI染色を含めたオーバーレイ、4列目:蛍光標識したNbALFA
STにより検出された標的タンパク質の略図。全スケールバー:20μm。
【
図3D】D:N末端にALFA
STタグが付いたビメンチン(上段)またはN末端にALFA
PEタグが付いたビメンチン(下段)を、4%パラホルムアルデヒド(PFA)、2%グルタルアルデヒド(GA)、または100%メタノール(MeOH)で固定化した後に、FluoTag-X2抗ALFA AbberiorStar635Pを用いて検出した。右列:蛍光標識したNbALFA
STにより検出されたALFAタグ付きビメンチンの略図。
【
図3E】E:細胞内抗体に基づいた、ALFA
STタグ付きタンパク質の検出。COS-7細胞に、NbALFA
ST-mScarlet-I融合物とALFA
STタグ付き標的タンパク質とを同時導入した。EGFP蛍光(TOM70-EGFP-ALFA
ST用)またはFluoTag抗ALFA AbberiorStar635P(ALFA
ST-FLAG-ビメンチン用)を使用した免疫蛍光を介して、標的タンパク質を検出した。並行してNbALFA
ST-mScarlet-Iを、赤色のmScarlet-I蛍光により検出した。ここで留意すべきは、標的タンパク質(左列)とmScarlet-Iシグナル(中央列)との間の優れた共局在性である。
【
図4】ALFAタグ付きタンパク質は、融合タンパク質内でのその局在位置に関係なく、蛍光標識NbALFA
STにより検出することができる。COS-7細胞に、N末端にALFAタグが融合したタンパク質(ALFA
ST-FLAG-ビメンチンまたはALFA
PE-FLAG-ビメンチン、A)、または個々のタンパク質ドメインの間にALFAタグが融合したタンパク質(EGFP-ALFA
ST-myc-TM、B)をコードする、コンストラクトを導入した。細胞を4%PFAで固定し、図のように染色した。AおよびBについては、細胞を0.1%TritonX-100で透過処理し、Cについては、細胞を透過処理しない条件下で染色した。TM:膜貫通ドメイン。略図は、基質のトポロジーおよび蛍光標識NbALFA
ST(FluoTag-X2抗ALFA)による検出を示す。
【
図5】N末端またはC末端にALFA
STタグが融合したGFPは、正常な細胞内局在性を示す。3T3細胞に、N末端またはC末端にALFA
STタグを有するEGFP融合体を一時的に導入した。pEGFP-N1からの、タグなしEGFPを対照とした。それぞれのEGFPバリアントの局在性を、各コンストラクトにつき6~7の個別画像で分析した。合わせて、120~130個の細胞をコンストラクトごとに画像化し、EGFPの局在性を分析した。概して、各EGFPコンストラクトは、サイトゾルと核にわたって分布を示した。細胞を、観察されたEGFPの核細胞質内局在性に従って、3つのグループ(「若干の核寄り」、「均一」、「その他」)に分類した。各画像から得られた値から標準偏差を推定した。タグ付きEGFPバリアントとタグなしEGFPバリアントとの間では、局在性に統計学的に有意な差はなかった(スチューデントt検定)。
【
図6】蛍光標識NbALFA
ST(FluoTag-X2抗ALFA)を使用したALFAタグ付き標的タンパク質のウエスタンブロット検出およびドットブロット検出。A:ALFA
ST-FLAG-ビメンチンまたはALFA
PE-FLAG-ビメンチンを導入したCOS-7細胞をSDSバッファーに溶解した。無関係なプラスミドを導入した細胞を対照とした。同数の細胞に対応するライセートを、SDS-PAGEおよびウエスタンブロット法により分析した。ビメンチン融合タンパク質を、IRDye800と共役したNbALFA
ST(FluoTag-X2抗ALFA IRDye800)を用いて可視化した。チューブリンをローディング対照とし、これをマウス抗チューブリン、続いてIRDye680と共役したFluoTag-X2抗マウスによって検出した。完全レーンを
図7Aに示す。B:CおよびDに示した実験に使用される複数のエピトープタグ(FLAG、HA、myc、およびALFA
ST)を有する組み換え大腸菌マルトース結合タンパク質(MBP)の略図。C:Bの略図のタンパク質の希釈系列を、ニトロセルロースメンブレンにスポットした。既成のモノクローナル抗体(抗FLAG M2-Sigma #F1804、抗myc 9E10 SynapticSystems #343 011、抗HA F-7-SantaCruz #sc-7392)を二次抗マウスIgG IRDye800CW(Li-Cor #925-32210、希釈1:1000)と組み合わせて使用して、FLAGタグ、mycタグ、およびHAタグをそれぞれ検出した。ALFA
STタグを、IRDye800CWと直接共役したFluoTag-X2抗ALFAを利用して検出した。ナノボディおよび全一次抗体を、提供業者が推奨する範囲には十分である、最終濃度2.7nMで使用した。内部標準を含めた全実験結果を
図7Bに示す。D:Cで得られたシグナルの定量化を、両対数プロットで示した。線は、得られた数値に対する直線的当てはめを表す。二次抗体によるシグナル増幅がなくとも、NbALFA
STによって得られたシグナルは、エピトープタグを認識する既成の試薬よりも3倍~10倍超強かった。同時に、NbALFA
STを用いた検出は10倍感度がよく、約3桁を超える幅の優れた直線性を示した。
【
図7】蛍光標識NbALFA
ST(FluoTag-X2抗ALFA)を使用したALFAタグ付き標的タンパク質の、高感度ウエスタンブロット検出およびドットブロット検出。A:
図6Aに示したものと同じ実験結果。しかしここでは完全なレーンを示す。ここで留意すべきは、ALFA
STタグ付きタンパク質をコードするいかなるベクターもないと、非常に微量のバンド(*)しか、蛍光標識NbALFA(FluoTag-X2抗ALFA)を使用して検出できないことである。B:
図6Cに示したものと同じ実験。
図6Cに提示されたデータに加えて、MBP(SynapticSystems)を認識するウサギポリクローナル血清と抗ウサギIgG IRDye680RD(Li-Cor #925-68071)との組み合わせによるMBPの検出結果を、内部ローディング標準として示す。オーバーレイについては、MBPシグナルは赤で、エピトープタグに対応するシグナルは緑で示す。
【
図8】ALFA
STタグ付きタンパク質と、ALFA Selector
STおよびALFA Selector
PE樹脂との相互作用。A:shGFP2-ALFA
STが結合したALFA Selector樹脂の略図。この略図では、ALFA Selector樹脂は、ALFA Selector
STまたはALFA Selector
PEとすることができる。BおよびC:NbALFA共役アフィニティー樹脂からのペプチド溶出。NbALFA
ST(SEQ ID NO:133、ALFA Selector
ST、左)またはNbALFA
PE変異体(SEQ ID NO:134、ALFA Selector
PE、右)と共役したアガロース系樹脂に、C末端にALFA
STタグを有するshGFP2を負荷した。オフレートを推定するため、この樹脂をALFA
ST遊離ペプチドを過剰に含有するPBSに懸濁し、25℃でインキュベートした。対照反応はペプチドなしで実施した。図に示された時点で、樹脂から遊離したshGFP2を定量化した。Bは、各時点に対する、3つの実験の平均蛍光読取り値ならびに標準偏差を示す。線は、単一指数関数との当てはめを表す。ALFA Selector
PEからのshGFP2-ALFA
STの効率的なペプチド溶出が、室温ですでに15~20分後に観察された。対照的に、ALFA Selector
STからのペプチド溶出は、インキュベーションを延長した後でも不十分であった。溶出の間、ALFA
ST遊離ペプチドがないと、ALFA
STタグ付き標的タンパク質は両樹脂に堅固に結合したままであった。溶出の3時間後、紫外線照明で写真を撮影した(C)。D:ストリンジェントな洗浄工程に対する抵抗性。Bに記載したALFA SelectorバリアントにALFA
ST-shGFP2かshGFP2-ALFA
STかいずれかを負荷し、10倍体積の図示した物質で25℃で1時間、振盪しながらインキュベートした。さらなる洗浄工程なしで、ビーズが沈降した後、紫外線照明で写真を撮影した。E:非生理的pHに対する抵抗性。Dと同様に実施。しかしここでは、図に示したpHで30分間インキュベートした後、樹脂を洗浄して非結合物質を除去した。PBS中で再平衡化してGFP蛍光を回復させた後、写真を撮影した。
【
図9-1】
図9:ALFA Selector
STおよびALFA Selector
PEを使用した、複合ライセートからのALFA
STタグ付き標的タンパク質およびALFA
STタグ付きタンパク質複合体のプルダウン。A:実験に使用したインプットタンパク質を(BおよびC)に記載した。BおよびC:ALFA Selector樹脂を使用したワンステップアフィニティー精製結果。3μMの精製ALFA
STタグ付きshGFP2(A)と混合した大腸菌(A)ライセートまたはHeLa(B)ライセートを、ALFA Selector
ST、ALFA Selector
PE、または固定化されたsdAbのない類似樹脂(Selector対照)とインキュベートした。PBSで洗浄した後、樹脂を200μMのALFA
STペプチドと20分間インキュベートした。ビーズに残っているタンパク質をSDS試料緩衝液で溶出した。SDS-PAGEおよびクーマシー染色法で分析した画分を図に示す。樹脂1μlから溶出した物質に相当する溶出液画分を示す。
【
図9-2】D:ALFA Selector
PEを使用した天然の大腸菌YfgM-PpiD内膜タンパク質複合体のプルダウン。左:YfgM-PpiD膜タンパク質複合体の略図。右:yfgM欠失株を、低コピーベクターから発現した、C末端にALFA
STタグが付いたYfgM(左側パネル)かタグなしYfgM(右側パネル、対照反応)かのいずれかで補足した。膜タンパク質複合体をDDMを使用して総ライセートから可溶化した。YfgM-ALFA
STを含有する複合体を、ALFA Selector
PEアフィニティー樹脂を使用して単一工程で精製し、200μMのALFA
STペプチドを使用して天然条件下で溶出した。インプット材料および非結合材料の1/800、または溶出液画分の1/80に相当するサンプルを、SDS pageによって分離し、ウエスタンブロット法により分析した。YfgM-PpiD複合体に対して産生されたウサギ血清(Gotzke et al.,YfgM is an ancillary subunit of the SecYEG translocon in Escherichia coli. J Biol Chem 289,19089-19097(2014))は、インプット画分内のPpiDとYfgMとの両方を認識した。ALFA Selector
PEは、ALFA
STタグ付きYfgMとその相互作用パートナーであるPpiDとを含む天然タンパク質複合体を特異的に免疫沈降させた。対照反応(ALFA
STタグなしYfgM)では、両タンパク質は溶出液内に存在しなかった。
【
図10】ALFA Selector樹脂からのALFA
STタグ付きGFPのペプチド溶出。20μlのALFA Selector
ST(NbALFA
STを提示、SEQ ID NO:133)またはALFA Selector
PE(NbALFA
PEを提示、SEQ ID NO:134)に、shGFP2-ALFA
ST(A)、bdSUMO-ALFA
ST-shGFP2(B)、またはALFA
ST-shGFP2(C)を負荷した。PBSで洗浄した後、ビーズを、200μMのALFA
ST遊離ペプチドを含有する10倍超のPBS中に懸濁し、25℃で緩やかに混合した。対照反応はペプチドなしで実施した。図に示された時点で、上清内に放射されたGFP蛍光を利用し、ビーズからの特異的溶出を定量化した。各時点に対する、3つの実験の平均蛍光読取り値ならびに標準偏差を示す。線は、単一指数関数との当てはめを表す。ALFA Selector
PEからのペプチド溶出のみ半減時間を提示した。全ての基質タンパク質について、ALFA Selector
STからのペプチド溶出は、インキュベーションを延長した後でも不十分であった。ALFA
STペプチドがない状態では、ALFA
STタグ付き標的タンパク質は両樹脂に堅固に結合したままであった。
図10Aは
図8Bに示したデータを再現したものであり、直接の比較を可能にするために、ここに繰り返した。左側パネル:実験用の構成を示した略図。ALFA Selector樹脂は、ALFA Selector
STであってもよいし、ALFA Selector
PEであってもよい。中央パネル:ALFA Selector
STで実施した実験。右側パネル:ALFA Selector
PEで実施した実験。
【
図11】ALFA
STペプチドが結合したNbALFA
STのX線構造解析。A~C:NbALFA
ST-ALFA
STペプチド構造図。A:ALFA
STペプチドのN末端側の図。B:ALFA
STペプチドの側面図。C:ALFA
STペプチドのC末端側の図。NbALFA
STは薄灰色で示し、側鎖は線で表す。ALFA
STペプチドに接触する残基は棒で表す。ALFA
STペプチドは濃い灰色で描写し、側鎖は棒で表す。ALFA
STペプチドは、N末端をアセチル化し、C末端をアミド化して使用する(SEQ ID NO:179)。D:NbALFA
ST(SEQ ID NO:133)配列。
図3Bにある通り、ボックスはCDR1~3(SEQ ID NO:115~117)を示す。ALFA
STペプチドに直接接触する残基がボックスに入れられている。塗りつぶされたボックス内の残基は、ALFA
STペプチドに対する親和性を低減するために変異された。
【
図12】CD62Lを認識するALFAタグ付きナノボディを使用したナイーブリンパ球単離。総ヒトPBMCを、未処理のまま放置(選別前)、またはALFAタグ付き抗ヒトCD62Lナノボディを付加したALFA Selector
PE樹脂を使用して単離した(選別後)。アフィニティー精製方法の略図を(a)に示す。細胞を抗CD62L抗体で染色し、フローサイトメトリー解析によって分析した(b)。(b)と同じ細胞を、CD3、CD19、およびCD62Lに対する抗体で染色し、フローサイトメトリー解析によって分析した(c)。全ての分析のリンパ球に対して、前方錯乱光/側方錯乱光ゲートをセットした。
【発明を実施するための形態】
【0019】
詳細な説明
最先端技術のいくつかの欠点を克服するために、本出願の発明者らは、高親和性ナノボディによって認識される小型エピトープタグを創造した。このようなシステムは、関心対象のタンパク質の生理的機能を意図せず干渉することなく、最小限セットの組み換えコンストラクトおよび細胞株を使用した、限定はされないが、その局在性の分析、ライセートからの精製によるその相互作用パートナーの分析、またはタンパク質の誤った局在化や枯渇の誘導を含めたインビボ操作を含む、多局面でのタンパク質の機能の分析を可能にする。
【0020】
現在のエピトープタグの限界に鑑みて、本出願の発明者らは、この問題に取り組み、理想的なエピトープタグシステムが有すべき特徴を探し出すことを決断した。真に万能なタグは、潜在的な副作用を最小化するために小型であるべきである(Kocaoglu,O.&Carlson,E.E. Progress and prospects for small-molecule probes of bacterial imaging. Nat Chem Biol 12,472-478(2016))。タグ付きタンパク質の人為的な多量体化を最小限にするために、タグは単量体であることが好ましい。またタグ付きタンパク質への正味電荷の付加を回避するため、タグは電気的中性であるべきであり、同時に可溶性であるべきである(Esposito,D.&Chatterjee,D.K. Enhancement of soluble protein expression through the use of fusion tags.Curr.Opin. Biotechnol.17,353-358(2006))。理想的なタグは、そのタグ付きタンパク質の天然構造、トポロジー、または局在性に影響を与えるべきではない(Stadler,C. et al. Immunofluorescence and fluorescent-protein tagging show high correlation for protein localization in mammalian cells. Nat Methods 10,315-323(2013)、Hoffmann,C. et al. A FlAsH-based FRET approach to determine G protein-coupled receptor activation in living cells. Nat Methods 2,171-176(2005))。加えて、タグは真核宿主生物および原核宿主生物において良好に発現し、タンパク質分解に対して抵抗性がなければならない。理想的には、タグは固定化に対して抵抗性があり、その配列は宿主の内在性タンパク質の意図しない検出を回避するために、一般的なモデル生物内に存在しないものであるべきである。
【0021】
理想的エピトープタグと同様、その対応する結合剤も、理想的なタグ検出にするためのいくつかの特徴を有すべきである。例えば、結合剤は、密集した領域への容易な接近のために小型であるべきで、様々な用途に対して最高の結合親和性を提供すべきである。現在の高度な用途(例えば生体内ライブイメージング)が必要とするものは、タグに対し高い親和性を有する、特異的で遺伝学的に到達可能なプローブであり、これは様々な宿主生物の生体内で自律的に折りたたむことが可能であるべきである。生化学的用途ではしかし、好ましい結合剤は、天然条件下で免疫沈降する物質の競合的溶出を可能にするために、優先的に中程度の親和性を有すべきである。これまで存在している一般的に使用されているエピトープタグを評価する場合、最先端技術を適用するものは、最終的に述べられてきた特徴の少なくとも1つを犠牲にする必要があるだろう(下記表1参照)。述べられてきた全ての境界条件を満たす究極の万能性をもつエピトープタグを製作するために、本出願の発明者らは、最も直接的なアプローチは、これを新規にデザインすることであると認識した。
【0022】
(表1)一般的なエピトープタグシステムの特性
n.a.:該当なし
n.d.:データなし
mAb:モノクローナル抗体
sdAb:単一ドメイン抗体
1最適なパフォーマンスのために、しばしば複数のタグを並行して使用する。(Hernan,R.,Heuermann,K.&Brizzard,B. Multiple epitope tagging of expressed proteins for enhanced detection. BioTechniques 28,789-793(2000);Ross-Macdonald,P.,Sheehan,A.,Roeder,G.S.&Snyder,M. A multipurpose transposon system for analyzing protein production,localization,and function in Saccharomyces cerevisiae. Proc Natl Acad Sci USA 94,190-195(1997);Sharrock,R.A.&Clack,T. Heterodimerization of type II phytochromes in Arabidopsis. Proc Natl Acad Sci USA 101,11500-11505(2004);Graumann,J. et al. Applicability of tandem affinity purification MudPIT to pathway proteomics in yeast. Mol.Cell Proteomics 3,226-237(2004))
2結合剤はビオチン化タンパク質も認識する。
3結合剤は複数の到達可能なヒスチジンを有する内在性タンパク質を認識する。
4使用したキレートおよびポリHisタグによる。
5結合剤は内在性β-カテニンも認識する。
6高プロファイルイメージング用途のために、結合剤を二量体化する必要がある。(Virant,D. et al. A peptide tag-specific nanobody enables high-quality labeling for dSTORM imaging. Nat Commun 1-14(2018). doi:10.1038/s41467-018-03191-2)
7アミン反応性の固定剤および架橋剤による固定化。配列より推定。
【0023】
この明白な目的を掲げて、本出願の発明者らは本明細書に記載されるエピトープタグをデザインした。本発明のエピトープタグは、好ましくは約8から25個のアミノ酸からなり、まとめてALFAタグと呼ぶ。
【0024】
本出願の発明者らは、新たなエピトープタグを生成するための新規のアプローチをすることを決断した。本発明によるエピトープタグは、好ましくは最小サイズを有する15aa以下の、小型で単量体のエピトープタグである。配列は、好ましくは生理的pHにおいて無電荷かつ親水性であり、最も好ましくはアミン反応性の固定剤および架橋剤によって修飾されやすい残基を持たない。そのサイズは、結合力を増大させるため一般的に直列に3xで使用される、例えばFLAGタグ三量体などの大型タグ、またはさらに大型の蛍光性タンパク質とは対照的である。さらに本発明のエピトープタグは、真核生物または原核生物の配列データバンク内にカウンターパートがなく、天然構造と架橋結合するリスクを最小化する。これは、国際公開第2017/085086 A1号に記載されるSPOT-tag(登録商標)とは対照的である。
【0025】
本発明のエピトープタグのさらなる利点は、例えばMycタグと違い、これが一般的なアミン反応性固定剤(パラホルムアルデヒド(PFA)、グルタルアルデヒド(GA))と適合性があることである。これはメタノール固定とも適合性がある。本発明のエピトープタグのさらなる利点は、これが国際公開第2011/147890 A1号に記載されるEPEAタグと違い、局在位置(N、C、またはタンパク質間)の点において限定されないことである。
【0026】
理論に拘束されることを望むものではないが、本発明によるエピトープタグは、安定したαヘリカル構造を形成すると考えられる。単一ドメイン抗体(sdAb)またはナノボディなどある種の抗体は、結合のために明確な三次元表面を好むと考えられることから、安定したαヘリックスを形成することが、異なって折りたたまれた構造、折りたたみのない構造、または不安定に折りたたまれた構造よりも有利であると考えられる。従来より、天然の折りたたまれていないペプチドに結合する単一ドメイン抗体を生成することは非常に困難であり、結果として弱程度から中程度の結合親和性をもつsdAbのみとなった。したがって本出願の発明者らは、その構造が単量体として安定した二次構造を形成する最も小さい実体であることから、溶液中で安定して折りたたまれる小型のαヘリックスを形成すると考えられるエピトープタグを提供することに集中した。理論に拘束されることを望むものではないが、αヘリカル構造は、厳しい化学的処理への曝露後であっても、効率的で自発的な再折りたたみをすると考えられている。さらに、そのヘリカル構造のおかげで、タグはほとんどの不定形直鎖状エピトープタグよりも小型であると考えられる。加えて、本発明のエピトープタグは、標的タンパク質の適切な標的設定および折りたたみを損なうことなく、標的タンパク質のN末端もしくはC末端に、または2つの折りたたまれたタンパク質ドメインの間にさえ配置することができる。
【0027】
理想的な結合剤(1種または複数種)を探し出すことはしかし、挑戦的であることが判明した。従来の抗体は実際、ほとんどの必要条件を満たすだろうが、その大型サイズが現在の超解像顕微鏡には最適とならず(Fornasiero,E.F.&Opazo,F. Super-resolution imaging for cell biologists:Concepts,applications,current challenges and developments. Bioessays 37,436-451(2015)、Mikhaylova,M. et al. Resolving bundled microtubules using anti-tubulin nanobodies. Nat Commun 6,7933(2015))、生細胞内標的を対象とするためにこれを遺伝学的にコードすることができない。したがって本出願の発明者らは、設定基準を満たすラクダ科単一ドメイン抗体(sdAb、ナノボディとしても知られる(Muyldermans,S. Nanobodies:Natural Single-Domain Antibodies. Annu Rev Biochem(2013). doi:10.1146/annurev-biochem-063011-092449))を開発することを選択した。このための「セルライン(Celline)」と呼ばれる新規の自社の選択法により、本発明者らが極めて高い親和性をもつアルパカ由来sdAbを適時に生成することが可能となった。エピトープタグと組み合わせた本発明の抗体は、ALFASTタグ付き標的タンパク質のイメージングおよび細胞内検出に理想的であることが判明し、効率的できれいな免疫沈降を可能にした。
【0028】
本発明はまた、本発明のエピトープタグのための高親和性抗体も提供する。この抗体のいくつかは、一価のsdAbベースの結合剤である。一価の結合は、従来の抗体が結合するエピトープタグとは対照的である。SPOTタグ(登録商標)はsdAbによって結合されるが、SPOTタグ(登録商標)のいくつかの用途については、結合力を増大させるため、SPOTタグ(登録商標)結合sdAbは二量体として採用される。一価の抗体利用は、クラスター形成を防止することができるという利点を有する。このエピトープタグのαヘリカル構造のおかげで、本発明の発明者らが、例えば国際公開第2017/085086 A1号または国際公開第2011/147890 A1号に記載される通りの比較できるエピトープタグ/sdAbシステムより約1000倍高い親和性である約10 pM範囲のKdで本発明のエピトープタグに結合する単一ドメイン抗体を生成することが可能であったと、さらに考えられる。
【0029】
SEQ ID NO:05~07など、本発明のエピトープタグのいくつかについては、SEQ ID NO:133を含む抗体を天然条件下でタグから効率的に分離することは実質的に不可能であった。いくつか例では、このことが、天然タンパク質およびその相互作用パートナーの精製のためのSEQ ID NO:05~07の用途を制限するだろう。SEQ ID NO:133の抗体およびSEQ ID NO:179のペプチドの高親和性複合体の結晶構造を解析することによって、本発明者らが、相互作用決定基を詳細に位置づけること、および天然条件下でのALFASTタグ付き標的タンパク質と相互作用パートナーとの競合的溶出を可能にする新バージョンの単一ドメイン抗体を設計することが可能となった。この目的のための例示的な抗体は、SEQ ID NO:134のアミノ酸配列を含む。
【0030】
本明細書で提示されるエピトープタグと抗体とのシステムは、バイオテクノロジーから細胞生物学にわたる例外的に広範囲な用途に適する。したがって単一のタグは、同時に非常に多様な従来型エピトープタグと交換することができる。
【0031】
したがって本発明は、
(a)X1-X2-X3-X4-X5-X6-X7-X8-X9-R-L-X12-X13(SEQ ID NO:01)の配列を含み、
X1はGまたはSまたはTまたはPであり、
X2はRまたはGまたはAまたはEまたはPであり、
X3はLまたはVであり、
X4はEまたはQであり、
X5はEまたはQであり、
X6はEまたはQであり、
X7はLまたはIまたはVであり、
X8はRまたはAまたはQまたはEであり、
X9はRまたはAまたはQまたはEであり、
X12はSまたはTまたはDまたはEまたはPまたはAまたはアミノ酸無しであり、
X13はEまたはKまたはPまたはSまたはAまたはDまたはアミノ酸無しである、
ペプチドと、
(b)ポリペプチドと
を含む、融合タンパク質に関する。本発明の融合タンパク質では、ペプチドはエピトープタグとして使用されうる。
【0032】
用語「ペプチド」は、本明細書では、好ましくはα-アミノと隣接残基のカルボキシ基との間をペプチド結合によって相互に接続する一連の直鎖状アミノ酸を指す。本明細書では用語「アミノ酸」は、グリシンおよびD体とL体との両方の光学異性体、ならびにアミノ酸アナログおよびペプチド模倣体を含めた、天然および/または非天然のアミノ酸か合成アミノ酸かのいずれかを指すが、タンパク質原生のアミノ酸が好ましい。「タンパク質原生アミノ酸」とは、タンパク合成中に生合成的にタンパク質に組み込むことができるアミノ酸である。現在、22種の遺伝学的にコードされた(タンパク質原生の)アミノ酸が存在し、20種は標準遺伝暗号に存在し、追加の2種は特殊なタンパク合成機構によって組み込むことができる。用語「ペプチド」は、本明細書では、好ましくは最大約50個のアミノ酸を含む。
【0033】
用語「ポリペプチド」は、本明細書では、通常少なくとも約30個のアミノ酸、少なくとも約40個のアミノ酸、または少なくとも約50個のアミノ酸を有するペプチドを指す。用語「タンパク質」は、本明細書では、1つまたは複数のポリペプチドを含む。
【0034】
用語「融合タンパク質」は、本明細書では、2つ以上のサブユニットを含むポリペプチドまたはタンパク質を指す。サブユニットの少なくとも1つは、好ましくはタンパク質またはポリペプチドであり、サブユニットの少なくとも1つは、好ましくはペプチドである。融合タンパク質内では、これらのサブユニットは、共有結合または非共有結合によって結合することができる。好ましくは、融合タンパク質は、2つ以上のサブユニット間の翻訳融合である。翻訳融合は、読み枠の一サブユニット用の符号化ヌクレオチド配列を、さらなるサブユニットの符号化ヌクレオチド配列と遺伝子学的に操作することによって起こすことができる。サブユニットは、リンカーによって散在させることができる。
【0035】
1つまたは複数のサブユニットが、1つより多くのポリペプチド鎖からなるタンパク質(複合体)の一部である場合、用語「融合タンパク質」は、このタンパク質(複合体)の、融合した配列と他の全てのポリペプチド鎖(1つまたは複数)とを含む、タンパク質を指すこともできる。
【0036】
本明細書では、「エピトープタグ」は、それに対して特異的抗体または抗体様機能を有するタンパク質性分子を産生させることができる、一続きのアミノ酸を指す。このようなエピトープタグは、生物または培養細胞内に存在することができる、タグ付けされたポリペプチドまたはタグ付けされたタンパク質の詳細な特定および/または追跡を可能にする。タグ付き分子の検出は、多数の異なる技術を利用して達成することができる。そのような技術の例には、免疫組織化学的検査、免疫沈降法、フローサイトメトリー、免疫蛍光顕微鏡法、電子顕微鏡法、ELISA法、免疫ブロット法(「ウエスタンブロット法」)、およびアフィニティークロマトグラフィーが含まれる。エピトープタグは、既知でありしばしば高親和性の抗体の結合を可能にするために、既知のエピトープ(抗体結合部位)を対象ポリペプチドに付加する。エピトープタグはまた、例えばプルダウン処理によって、タグ付き分子の単離および/または精製のために使用することもできる。
【0037】
本発明の融合タンパク質においては、ペプチドすなわちエピトープタグは、この融合タンパク質のいかなる位置にも配置させることができる。このペプチドは、ポリペプチドのN末端またはC末端に融合させることができる。あるいは、このペプチドは、ポリペプチドのN末端とC末端との間の位置でポリペプチドに融合させることができる。具体的な例として、このペプチドは、ポリペプチドの2つのドメインの間に融合させることができる。
【0038】
融合タンパク質に含まれるポリペプチドは、このペプチドの存在または非存在に依存しない、安定した折りたたみを有することができる。これは、このペプチドが、好ましくもポリペプチドの天然構造を変化させない、または干渉しないことを意味する。
【0039】
ペプチドそのものは、好ましくはαヘリカル構造を有する。Ac-PSRLEEELRRRLTEP-アミドの配列(SEQ ID NO:179)を含むALFASTペプチドと複合体を形成するSEQ ID NO:133の配列を有する抗体の結晶構造解析によって、このエピトープタグが、安定して折りたたまれたαヘリックスとしてナノボディに結合することが示されている。この構造が並外れて堅固な結合を説明していると考えられる。「αヘリカル構造」は、本明細書では、αヘリックスという形態の二次構造を指す。このペプチドのαヘリカル二次構造は、融合するパートナーに依存しないことが好ましい。これは、このペプチドが単離ペプチドの形態である場合、またペプチドが融合タンパク質の一部である場合も、好ましくはペプチドが生理的バッファー中でαヘリカル二次構造を形成する能力があることを意味する。
【0040】
このペプチドは、CDR配列GVTISALNAMAMG(SEQ ID NO:115)、AVSERGNAM(SEQ ID NO:116)、およびLEDRVDSFHDY(SEQ ID NO:117)を含む、ラクダ科VHHドメインによって特異的に認識され得る。このペプチドはさらに、本明細書で記載される他の抗体によっても特異的に認識され得る。
【0041】
本発明の融合タンパク質においては、このペプチドは、直接的な融合によるかリンカーを通じてかのいずれかによってポリペプチドに融合されうる。「リンカー」は、本明細書では、本明細書で記載される通りの融合タンパク質の2つ以上のサブユニットを相互に連結させる。架橋は共有結合性であってもよい。好ましい共有結合性架橋は、アミノ酸間のペプチド結合など、ペプチド結合を介する。好ましいリンカーは、ペプチドリンカーである。リンカーは、好ましくは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20またはそれ以上のアミノ酸というように、1個または複数個のアミノ酸を含む。好ましいペプチドリンカーには、グリシン-セリン(GS)リンカー、グリコシル化GSリンカー、およびプロリン-アラニン-セリンポリマー(PAS)リンカーが含まれる。GSリンカーは、SEQ ID NO:159に記載される通りの(G4S)3リンカーであってもよい。
【0042】
本発明の融合タンパク質に含まれるポリペプチドは、少なくとも1つのタンパク質ドメインを含むことができる。「タンパク質ドメイン」は、本明細書では、所与のタンパク質配列の一部であり、残りのタンパク質鎖から独立して機能することができ、かつ/または存在することができる(三次)構造を指す。タンパク質ドメインは、好ましくは、コンパクトな三次元構造を形成し、しばしば独立して安定し、折りたたむことができる。タンパク質ドメインはさらに、機能単位を形成する。融合タンパク質に含まれるポリペプチドは、2、3、4、またはさらにそれ以上のタンパク質ドメインなど、1つよりも多いタンパク質ドメインを含むことができる。このペプチドにとって好ましい位置は、タンパク質ドメインの外側とすることができる。これは、ポリペプチドの少なくとも1つのタンパク質ドメインのN末端もしくはC末端、またはポリペプチドの2つのタンパク質ドメインの間とすることができる。本発明の融合タンパク質に含まれるポリペプチドは、球状タンパク質、膜タンパク質、繊維状タンパク質、もしくは天然に折りたたまれていないタンパク質、または球状タンパク質、膜タンパク質、繊維状タンパク質、もしくは天然に折りたたまれていないタンパク質のサブユニットもしくはドメインとすることができる。
【0043】
本発明の融合タンパク質に含まれるペプチドは、長さが約8から約25個のアミノ酸、好ましくは約10から約18個のアミノ酸、好ましくは約12から約17個のアミノ酸、好ましくは12から15個のアミノ酸を有することができる。本発明の融合タンパク質に含まれるポリペプチドは、少なくとも3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、40、50、60、70、80、90、または100個のアミノ酸の長さを有することができる。このポリペプチドは、本発明の融合タンパク質を発現する細胞内で天然に発生するポリペプチドまたはタンパク質とすることができる。
【0044】
本発明の融合タンパク質は、X1-X2-L-E-X5-E-X7-R-R-R-L-X12-X13の配列(SEQ ID NO:02)を含むペプチドであって、X1はGまたはSまたはPまたはTであり、X2はRまたはGまたはPであり、X5はEまたはQであり、X7はLまたはIであり、X12はSまたはTまたはPまたはAまたはDまたはEであって、X13はPまたはAまたはSまたはAまたはDまたはEまたはアミノ酸無しである、ペプチドを含むことができる。この配列によって、ペプチドのコア構造が規定され、さらにN末端に追加のアミノ酸を2つまで、C末端に追加のアミノ酸を2つまで含むことができる。このペプチドのコア構造の末端におけるこのような追加のアミノ酸は、通常、このペプチドの二次構造に、またはこのペプチドに対する特異的抗体とのペプチドの特異的結合に、必ずしも影響するわけではないが、融合タンパク質内でリンカー構造として働くことができる。したがって、追加のアミノ酸の種類および数は、融合タンパク質内のペプチドの位置に依存することがあり、このペプチドがN末端か、C末端か、ポリペプチドの中のどこかかに位置するかに応じて変わることがある。SEQ ID NO:02の配列を含むペプチドは、例えば基本的に実施例1に記載される通りのアッセイで測定する場合、SEQ ID NO:133の配列を含む単一ドメイン抗体からの解離のために、少なくとも約2分のT1/2を有することができる。このペプチドは、SEQ ID NO:133の配列を含む単一ドメイン抗体に結合するために、約30 nM以下のKdを有することができる。
【0045】
本発明の融合タンパク質に含まれるペプチドは、アミノ酸Xa-XbであるX1というN末端を含むことができ、XaはDまたはSまたはGまたはMまたはPまたはアミノ酸無しであり、XbはSまたはDまたはPまたはMまたはRまたはGまたはアミノ酸無しである。
【0046】
本発明の融合タンパク質に含まれるペプチドは、アミノ酸Xy-XzであるX13というC末端を含むことができ、XyはGまたはSまたはPまたはDまたはAまたはEまたはKまたはアミノ酸無しであり、XzはSまたはPまたはアミノ酸無しである。
【0047】
本発明の融合タンパク質は、コア構造としてX1-X2-L-E-X5-E-L-R-R-R-L-X12-X13の配列(SEQ ID NO:03)を含むペプチドであって、X1はSまたはTであり、X2はRまたはGであり、X5はEまたはQであり、X12はTまたはDまたはEであって、X13はAまたはDまたはEまたはアミノ酸無しである、ペプチドを含むことができる。このようなペプチドは、例えば実施例1に基本的に記載される通りのアッセイで測定する場合、SEQ ID NO:133の配列を含む単一ドメイン抗体からの解離のために、少なくとも約100分のT1/2を有することができる。そのペプチドは、SEQ ID NO:133の配列を含む単一ドメイン抗体に結合するために、約1 nM以下のKdを有することができる。このようなペプチドは、S-R-L-E-E-E-L-R-R-R-L-T-Eの配列(SEQ ID NO:04)またはそのバリアントを含むことができ、(SEQ ID NO:04)と比較すると、このバリアントは、S1→T、R2→G、E5→Q、T12→D、およびT12→E、E13→A、E13→D、ならびにE13の欠失からなる群より選択される1つから5つの変異を有する。SEQ ID NO:04と比較すると、このバリアントは、次の変異:(a)S1→TおよびE13→A;(b)R2→G;(c)R2→GおよびE5→Q;(d)R2→G、E5→Q、およびE13→A;(e)R2→G、E5→Q、およびT12→D、およびE13→A;(f)R2→G、E5→Q、およびT12→E、およびE13→A;(g)T12→DおよびE13→A;(h)T12→EおよびE13→A;(i)およびE13→A;(j)およびE13→D;または(k)E13の欠失を有することができる。
【0048】
コア構造としてSEQ ID NO:03の配列を含むペプチドは、アミノ酸Xa-XbであるX1というN末端を含むことができ、XaはSまたはGまたはMまたはPまたはアミノ酸無しであり、XbはRまたはGまたはSまたはPまたはMまたはアミノ酸無しである。Xa-Xbは、P、M-P、G-R、P-G、P-S、S-P、G-P、S-P、M、およびM-Sからなる群より選択することができ、好ましくはPまたはM-Pとすることができる。そのようなペプチドはまた、アミノ酸Xy-XzであるX13というC末端を含むことができ、PまたはDまたはAまたはアミノ酸無しであり、XzはPまたはSまたはアミノ酸無しである。Xy-Xzは、アミノ酸無し、P、D-P、A、およびA-Sからなる群より選択することができ、好ましくはアミノ酸無しまたはPとすることができる。このペプチドは、(a)M-PおよびP、(b)PおよびP、ならびに(c)Pおよびアミノ酸無しからなる群より選択される、Xa-XbとXy-Xzとの組み合わせを含むことができる。
【0049】
本発明の融合タンパク質に含まれるペプチドは、SEQ ID NO:03のコア構造を有することができ、
からなる群より選択される配列を含むことができる。
【0050】
本発明の融合タンパク質は、コア構造としてX1-X2-L-E-X5-E-X7-R-R-R-L-X12-X13の配列(SEQ ID NO:31)を含み、X1はGまたはSまたはPであり、X2はRまたはGであり、X5はEまたはQであり、X7はLまたはIであり、X12はSまたはTまたはPまたはAであり、X13はPまたはAまたはSまたはアミノ酸無しである、ペプチドを含むことができる。このようなペプチドは、例えば実施例1に基本的に記載される通りのアッセイで測定する場合、SEQ ID NO:133の配列を含む単一ドメイン抗体からの解離のために、約2.5分から約30分のT1/2を有することができる。そのペプチドは、SEQ ID NO:133の配列を含む単一ドメイン抗体に結合するために、約3~40 nM以下のKdを有することができる。
【0051】
このようなペプチドは、G-R-L-E-E-E-L-R-R-R-L-Sの配列(SEQ ID NO:32)またはそのバリアントを含むことができ、このバリアントは、(SEQ ID NO:32)と比較すると、G1→S、G1→P、R2→G、E5→Q、L7→I、S12→T、S12→P、およびS12→A、P13の付加、A13の付加、およびS13の付加からなる群より選択される、1つから6つの変異を有する。このバリアントは、SEQ ID NO:32と比較すると、次の変異:(a)G1→S、R2→G、E5→Q、およびP13の付加;(b)R2→G、E5→Q、S12→T、およびA13の付加;(c)G1→P、R2→G、E5→Q、S12→T、およびA13の付加;(d)G1→S、R2→G、E5→Q、S12→T、およびP13の付加;(e)G1→S、R2→G、S12→T、およびA13の付加;(f)G1→S、R2→G、E5→Q、およびS12→T;(g)G1→S、R2→G、E5→Q、S12→T、およびA13の付加;(h)G1→SおよびS12→P、およびP13の付加;(i)G1→S、R2→G、E5→Q、S12→T、およびP13の付加;(j)E5→Q L7→I、およびP13の付加;(k)P13の付加;または(l)S12→Aを有することができる。
【0052】
コア構造としてSEQ ID NO:31の配列を含むペプチドは、アミノ酸Xa-XbであるX1というN末端を含むことができ、XaはMまたはSまたはPまたはDまたはGまたはアミノ酸無しであり、XbはSまたはDまたはPまたはアミノ酸無しである。Xa-Xbは、M-S、S-D、P-D、P-S、D-S、S-P、およびG-Pからなる群より選択することができ、好ましくはM-Sとすることができる。このようなペプチドはまた、アミノ酸Xy-XzであるX13というC末端を含むことができ、XyはGまたはPまたはAまたはEまたはKまたはSまたはアミノ酸無しであり、XzはPまたはSまたはアミノ酸無しである。Xy-Xzは、アミノ酸無し、G、P、A、E-P、A-S、K、およびSからなる群より選択することができ、好ましくはアミノ酸無しとすることができる。そのペプチドは、M-Sおよびアミノ酸無しである、Xa-XbとXy-Xzとの組み合わせを含むことができる。
【0053】
本発明の融合タンパク質に含まれるペプチドは、SEQ ID NO:31のコア構造を有することができ、
からなる群より選択される配列を含むことができる。
【0054】
本発明の融合タンパク質は、コア構造としてX1-X2-L-E-X5-E-L-R-R-R-L-X12-X13の配列(SEQ ID NO:49)を含むペプチドであって、X1はSまたはGまたはPであり、X2はRまたはGまたはPであり、X5はEまたはQであり、X12はSまたはTまたはDまたはEであり、X13はPまたはAまたはDまたはアミノ酸無しである、ペプチドを含むことができる。このようなペプチドは、例えば実施例1に基本的に記載される通りのアッセイで測定する場合、SEQ ID NO:133の配列を含む単一ドメイン抗体からの解離のために、約20分から約100分のT1/2を有することができる。そのペプチドは、SEQ ID NO:133の配列を含む単一ドメイン抗体に結合するために、約1~5 nM以下のKdを有することができる。
【0055】
コア構造としてSEQ ID NO:49の配列を含むペプチドは、アミノ酸Xa-XbであるX1というN末端を含むことができ、XaはPまたはDまたはSまたはGまたはアミノ酸無しであり、XbはDまたはSまたはPまたはアミノ酸無しである。このようなペプチドはまた、アミノ酸Xy-XzであるX13というC末端を含むことができ、XyはGまたはPまたはEまたはDまたはSまたはアミノ酸無しであり、XzはPまたはアミノ酸無しである。
【0056】
本発明の融合タンパク質に含まれるペプチドは、SEQ ID NO:49のコア構造を有することができ、
からなる群より選択される配列を含むことができる。
【0057】
本発明の融合タンパク質は、コア構造としてX1-X2-X3-X4-X5-X6-X7-X8-X9-R-L-X12-X13の配列(SEQ ID NO:61)を含むペプチドであって、X1はGまたはSであり、X2はRまたはGまたはAまたはEであり、X3はLまたはVであり、X4はEまたはQであり、X5はEまたはQであり、X6はEまたはQであり、X7はLまたはIまたはVであり、X8はRまたはAまたはQまたはEであり、X9はRまたはAまたはQまたはEであり、X12はSまたはTまたはLまたはアミノ酸無しであり、X13はKまたはPまたはSまたはアミノ酸無しである、ペプチドを含む。このようなペプチドは、例えば実施例1に基本的に記載される通りのアッセイで測定する場合、SEQ ID NO:133の配列を含む単一ドメイン抗体からの解離のために、約2分から約10分のT1/2を有することができる。そのペプチドは、SEQ ID NO:133の配列を含む単一ドメイン抗体に結合するために、約10~50 nM以下のKdを有することができる。
【0058】
コア構造としてSEQ ID NO:61の配列を含むペプチドは、アミノ酸Xa-XbであるX1というN末端を含むことができ、XaはDまたはSまたはGまたはMまたはアミノ酸無しであり、XbはSまたはDまたはPまたはMまたはアミノ酸無しである。このようなペプチドはまた、アミノ酸Xy-XzであるX13というC末端を含むことができ、XyはGまたはSまたはPまたはアミノ酸無しであり、XzはSまたはアミノ酸無しである。
【0059】
本発明の融合タンパク質に含まれるペプチドは、SEQ ID NO:61のコア構造を有することができ、
からなる群より選択される配列を含むことができる。
【0060】
本発明の融合タンパク質は、この融合タンパク質に含まれるペプチドに特異的に結合する、結合パートナーと複合体を形成することができる。このような特異的な結合パートナーは、本明細書に開示される抗体とすることができる。
【0061】
本発明の融合タンパク質は、抗体部分を含むことができる。この抗体部分は、単一ドメイン抗体とすることができる。そのような抗体部分は、標的に特異的に結合することができる。そのような標的は、細胞であり得る。例えば、特異的標的は、細胞表面受容体など細胞表面上の構造体を含むことができる、またはその構造体とすることができる。好ましい標的は、CD62Lである。
【0062】
本発明はさらに、本発明の融合タンパク質に含まれるペプチドに特異的に結合する抗体を提供する。そのような抗体は、一価の抗体とすることができる。好ましい態様では、本発明の抗体は、ラクダ科VHHドメインを含むか、またはラクダ科VHHドメインからなる。好ましい態様では、本発明の抗体は、ラクダ科単一ドメイン抗体など、単一ドメイン抗体である。
【0063】
用語「抗体」は一般に、免疫グロブリン様の機能をもつタンパク質性結合分子を指す。抗体の典型的な例には、免疫グロブリンならびに結合特異性をなお保持するその誘導体またはその機能的断片があるが、これらに限定されない。抗体生成技術は、当分野でよく知られている。用語「抗体」にはまた、異なるクラス(すなわちIgA、IgG、IgM、IgD、IgE、IgY等)の免疫グロブリン(Ig類)およびサブクラス(例えばIgG1、lgG2等)が、例え外来性宿主内で当業者に知られている技術を使用して組み換えで産生されたとしても、含まれる。抗体の具体的な例には、全長免疫グロブリン、Fab断片、F(ab')2、Fv断片、単鎖Fv断片(scFv)、二重特異性抗体、またはドメイン抗体がある(Holt LJ et al.,Trends Biotechnol.21(11),2003,484-490)。ドメイン抗体は、他のV領域またはドメインとは独立して抗原またはエピトープに特異的に結合するVHまたはVLとすることができる可変ドメインを1つだけ有する、単一ドメイン抗体、単一可変ドメイン抗体、または免疫グロブリン単一可変ドメイン抗体とすることができる。特に好ましい単一ドメイン抗体は、重鎖抗体であるVHHドメインである。そのような免疫グロブリン単一可変ドメインは、単離された単一可変ドメイン抗体ポリペプチドだけでなく、1つまたは複数の単量体の単一可変ドメイン抗体ポリペプチド配列を含めた、またはその配列からなる、大型のポリペプチドも包含することができる。単一ドメイン抗体は、VHHドメインと、タンパク質タグまたはペプチドタグなど融合パートナーを含むことができると理解される。用語「抗体」の定義は、したがって、キメラの単鎖ヒト化抗体などの態様も含まれる。用語「抗体」はまた、抗体の断片も含めることができる。
【0064】
単一ドメイン抗体は、その相補的決定領域が単一ドメインポリペプチドの一部である抗体である。例としては、限定されることなく、重鎖抗体、天然に軽鎖を欠落した抗体、従来の4鎖抗体由来の単一ドメイン抗体、改変抗体、および抗体由来骨格以外の単一ドメイン骨格が含まれる。単一ドメイン抗体は、当技術分野のいずれか、または将来の任意の単一ドメイン抗体とすることができる。単一ドメイン抗体は、限定されることなく、マウス、ヒト、ラクダ、ラマ、ヤギ、ウサギ、またはウシを含めたいかなる種からも由来することができる。本発明によると、単一ドメイン抗体は、本明細書では、軽鎖を欠落した重鎖抗体として知られる天然起源の抗体が好ましい。そのような単一ドメイン抗体は、例えば国際公開第94/04678号に開示されている。明確にする理由から、天然に軽鎖を欠落した重鎖抗体由来のこの可変ドメインは、4鎖免疫グロブリンである従来のVHと区別するために本明細書ではVHHとして知られる。そのようなVHH分子は、例えばラクダ、ヒトコブラクダ、ラマ、ピクーナ、アルパカ、グアナコなどラクダ科種で産生される抗体由来とすることができる。ラクダ科以外の他種も、天然に軽鎖を欠落した重鎖抗体を産生することができる。具体的な例として、サメが天然に軽鎖を欠落した重鎖抗体(一般にIgNARと名付けられている)を産生することが知られており、これもVHHドメインを含む。加えて、VHHは合成ライブラリーから取得することもできる。このようなVHH全てが、本発明の範囲内である。
【0065】
本発明による、そして当業者に知られている通りのVHHは、好ましくは、国際公開第94/04678号に記載される通りのラクダ科由来の免疫グロブリンなど、天然に軽鎖を欠落した免疫グロブリン由来の重鎖可変ドメインである(以降はVHHドメインまたはナノボディと呼ぶ)。VHH分子は、IgG分子よりも約10倍小さい。VHH分子は、単一ポリペプチドで非常に安定しており、極度なpH条件および温度条件に抵抗性がある。さらにVHH分子は、プロテアーゼの活性に対して抵抗性が高く、これは従来の抗体には当てはまらない。さらに、組み換えタンパク質発現に適した、VHHのインビトロ発現または原核生物もしくは真核生物での発現は、高収率の、適切に折りたたまれた機能性VHHを産生する。本発明による単一ドメイン抗体は、好ましくはVHHであると理解される。
【0066】
本発明による抗体は、対応する天然に軽鎖を欠落した天然起源の免疫グロブリンのドメインと、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約92%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%の配列同一性を有する配列をもつ、1つまたは複数のドメインを有することができる。この点において留意すべきは、用語「約」または「およそ」は、本明細書では、所与の数値または範囲の、偏差10%以内または偏差5%以内など、偏差20%以内を意味することである。
【0067】
本明細書で開示されるアミノ酸配列に関した「配列同一性パーセント(%)」は、最大パーセントの配列同一性を達成するために必要とあれば配列をアライメントしてギャップを導入した後での、そしていかなる保存的置換もこの配列同一性の一部と考えない、参照配列中のアミノ酸残基と対で同一である候補配列中のアミノ酸残基の割合、すなわち、本開示の抗体分子の割合として定義される。アミノ酸配列同一性パーセントを決定するためのアライメントは、当業者が備えている技術の範囲内である様々な方法、例えばBLAST、ALIGN、またはMegalign(DNASTAR社)ソフトウエアなど、公的に入手可能なコンピューターソフトウエアを使用して達成することができる。当業者は、比較する配列の全長にわたる最大アライメントを達成するために必要ないかなるアルゴリズムも含めた、アライメントを測定するための適切なパラメータを決定することができる。同様のことは、本明細書で開示されるヌクレオチド配列にも当てはまる。
【0068】
用語「可変」は、その配列の可変性を示し、かつ、ある特定の抗体の特異性および結合親和性の決定に関与する、免疫グロブリンドメインの部分(すなわち「可変ドメイン(1つまたは複数)」)を指す。可変性は、抗体の可変ドメインにわたって均等に分布していない。これは重鎖および軽鎖の各可変領域のサブドメインに集中している。これらサブドメインは、「超可変領域」、「HVR」もしくは「HV」、または「相補性決定領域」(CDR)と呼ばれる。可変ドメインのより保存的な(すなわち超可変でない)部分は、「フレームワーク」領域(FR)と呼ばれる。天然起源の重鎖および軽鎖の可変ドメインにはそれぞれ4つのFR領域が含まれ、大部分はβシート構造を採用し、このβシート構造を接続するループまたはいくつかの場合その一部分を形成するループを形成する、3つの超可変領域によって接続される。各鎖の超可変領域は、FRによって互いに極めて接近して保持され、他の鎖の超可変領域と共に、抗原結合部位の形成に寄与する(Kabatら、下記参照)。一般に、天然起源の免疫グロブリンには、6つのCDRが含まれ(下記参照)、VHに3つ(H1、H2、H3)、VLに3つ(L1、L2、L3)ある。天然起源の免疫グロブリンにおいて、H3およびL3は、6つのCDRのうちで最も多くの多様性を示し、特にH3は、免疫グロブリンに見事な特異性もたらすことにおいて独特の役割を果たすと考えられる。免疫グロブリンには、天然に軽鎖を欠落しているが、VHH領域に存在する3つのCDRが含まれる。定常ドメインは抗原結合に直接関与しないが、例えば抗体依存性細胞傷害、細胞媒介性細胞傷害、および補体活性化など、様々なエフェクター機能を提示する。
【0069】
各VHH、VH、およびVLは、次の順序:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4で、アミノ末端(N末端)からカルボキシ末端(C末端)まで配置される、3つのCDRと4つのFRを有する。重鎖および/または軽鎖の可変領域は、抗原のエピトープと相互作用する結合ドメインを含有する。用語「免疫グロブリン」は、例えば軽鎖を欠落した抗体など、軽鎖のない2つの重鎖を有することができるタンパク質、またはその抗原結合部分を指すことができる。免疫グロブリンはまた、ジスルフィド結合によって連結する少なくとも2つの重(H)鎖と2つの軽(L)鎖、またはその抗原結合部分を含めることができる。
【0070】
免疫グロブリンは、本明細書では、ラクダ科重鎖単独IgG(hcIgG)またはサメIgNARなど、2つの重鎖で構成される二量体の糖化タンパク質とすることができる。免疫グロブリンはまた、本明細書では、それぞれおよそ25 kDaの2つの軽(L)鎖と、それぞれおよそ50 kDaの2つの重(H)鎖とで構成される、四量体の糖化タンパク質とすることもできる。
【0071】
用語「アミノ酸」または「アミノ酸残基」は、タンパク質またはペプチドと関連して使用する場合、典型的には、L-アラニン(AlaまたはA)、L-アルギニン(ArgまたはR)、L-アスパラギン(AsnまたはN)、L-アスパラギン酸(AspまたはD)、L-システイン(CysまたはC)、L-グルタミン(GlnまたはQ)、L-グルタミン酸(GluまたはE)、グリシン(GlyまたはG)、L-ヒスチジン(HisまたはH)、L-イソロイシン(IleまたはI)、L-ロイシン(LeuまたはL)、L-リジン(LysまたはK)、L-メチオニン(MetまたはM)、L-フェニルアラニン(PheまたはF)、L-プロリン(ProまたはP)、L-セリン(SerまたはS)、L-トレオニン(ThrまたはT)、L-トリプトファン(TrpまたはW)、L-チロシン(TyrまたはY)、およびL-バリン(ValまたはV)からなる群より選択されるアミノ酸など、当分野で認識される定義を有するαアミノカルボン酸を指し、例えばタウリン、オルニチン、セレノシステイン、ホモシスチン、ヒドロキシプロリン、チオプロニン、ヨードチロシン、3-ニトロチロシン、オルニチン、シトルリン、カナバニン、5-ヒドロキシトリプトファン、カルノシン、シクロロイシン、3,4-ジヒドロキシフェニルアラニン、N-アセチルシステイン、プロリノール、アリルグリシン、またはアセチジン-2-カルボン酸など改変、人工、または希少アミノ酸も、必要に応じて使用することができる。一般に、アミノ酸は、非極性側鎖(例えばAla、Cys、Ile、Leu、Met、Phe、Pro、Val)、負電荷の側鎖(例えばAsp、Glu)、正電荷の側鎖(例えばArg、His、Lys)、または無電荷極性側鎖(例えばAsn、Cys、Gln、Gly、His、Met、Phe、Ser、Thr、Trp、およびTyr)の所有に従ってグループ分けすることができる。
【0072】
本発明による標的は、本発明の抗体が直接的または間接的に検出可能な生物学的または化学的起源のいかなる物質でもある。標的は、例えば、タンパク質、ペプチド、核酸、オリゴ核酸、糖類、多糖類、糖タンパク質とすることができる。例には、限定されることなく、治療標的、診断用標的、受容体、受容体リガンド、ウイルスコートタンパク質、免疫系タンパク質、ホルモン、酵素、抗原、細胞シグナルタンパク質、またはその断片が含まれる。標的は、天然タンパク質またはその断片、その相同配列、その機能性部分、または相同配列の機能性部分とすることができる。
【0073】
用語「エピトープ」は、「抗原決定基」としても知られるが、抗体が特異的に結合して複合体を形成する、抗原の部分を指す。したがって、用語「エピトープ」には、免疫グロブリンまたはT細胞受容体に特異的に結合する能力のあるいかなる分子またはタンパク質決定基も含まれる。本明細書で記載される抗体分子の結合部位(1つまたは複数)(パラトープ)は、高次構造的または連続的エピトープに特異的に結合/相互作用することができるが、このエピトープは、標的構造物にとっては独特である。エピトープの決定基は、通常、アミノ酸または糖側鎖など、化学的に活性な表面基の分子からなり、通常、特定の三次元構造特性ならびに特定の荷電特性を有する。エピトープ決定基には、アミノ酸、糖側鎖、ホスホリル、またはスルホニルなど、化学的に活性な表面基分子を含めることができ、いくつかの態様では、特定の三次元構造特性および/または特定の荷電特性を有することができる。ポリペプチド抗原に関しては、高次構造または不連続なエピトープは、離れた2つ以上のアミノ酸残基の存在によって特徴付けられ、一次配列になると離れるが、ポリペプチドが折りたたまれて天然のタンパク質/抗原となる場合、この分子の表面上で一定の構造を組み立てる(Sela,M.,Science(1969)166,1365-1374;Laver,W.G.,et al. Cell(1990)61,553-556)。エピトープの要素となる2つ以上の離れたアミノ酸残基は、1つまたは複数のポリペプチド鎖の離れたセクション上に存在することができる。これらの残基は、ポリペプチド鎖(1つまたは複数)が折りたたまれて三次元構造となり、エピトープを構成した場合に、この分子表面上で一体となる。対照的に、連続的または直鎖状エピトープは、ポリペプチド鎖の単一の直鎖状セグメントに存在する、離れた2つ以上のアミノ酸残基からなる。具体的な例として、「状況依存的」CD3エピトープは、前記エピトープの高次構造を指す。CD3のε鎖上に位置するこのような状況依存的エピトープは、残りのε鎖の中に組み込まれており、このε鎖とCD3γ鎖かCD3δ鎖かのいずれかとのヘテロ二量体化によって正しい位置に固定される場合のみ、正確な高次構造を展開することができる。これに対し、状況非依存的CD3エピトープは、N末端1~27アミノ酸残基ポリペプチドまたはそのCD3εの機能的断片とすることができる。一般に、エピトープは、天然に直鎖状または不連続なエピトープとすることができる。したがって、本明細書では、用語「高次構造エピトープ」は、抗原の一続きのアミノ酸ではなく、抗原のアミノ酸間の空間的な関係によって形成される、不連続なエピトープを指す。用語「エピトープ」には、例えばタンパク質などの大型分子など、大型の物質に結合すると、1つまたは複数の免疫学的に認識されるエピトープを提示すことにより抗原として働くことができる小型の分子として知られる、ハプテンの抗原決定基も含まれる。
【0074】
抗体または抗体分子/断片は、タンパク質および/または高分子の混成物内のその標的抗原を認識した場合、抗原に「特異的に」結合すると言われている。典型的には、抗体はその標的と特異的に相互作用するおよび/または結合する能力があるが、別のエピトープまたは抗原には必ずしも結合するとは限らない。抗体が相互競争し、その結果1つの抗体のみが任意の時点でエピトープに結合することができる、すなわち、1つの抗体が他の抗体の結合または修飾による影響を防止する場合、抗体は、「同一のエピトープに結合する」と言われる。
【0075】
典型的には、特異的と考えられる結合はまた、例えば結合親和性が(Kdの観点で)10-6 Mより高い場合、高親和性を有するとすることができる。具体的には、結合親和性は、約10-8から10-11 M(Kd)または約10-9から10-11 M(Kd)であってもよく、またはさらに高くてもよい。したがって、ピコモル範囲における親和性(9.9x10-10 Mから10-12 MのKd)をもつ抗体分子も、本発明に包含される。結合部位の非特異的結合は、必要に応じて、結合条件を変えることにより、実質的に特異的結合に影響を与えることなく低減することができる。
【0076】
本発明による抗体は、単離された抗体分子とすることができる。用語「単離された抗体分子」は、本明細書では、自然環境のある成分から識別されて、分離および/または回収された抗体分子を指す。自然環境の混入成分は、抗体の使用に干渉するであろう物質であり、酵素、ホルモン、および他のタンパク質性または非タンパク質性の溶質を含めることができるいくつかの態様では、抗体分子は、ローリー法によって判定すると、例えば99重量%より多いといったように、抗体の95重量%より多くまで精製される。いくつかの態様では、抗体分子は、回転カップ式配列決定装置の使用によって、アミノ酸配列のN末端または中間部の少なくとも15残基を取得するのに十分な程度まで精製される。いくつかの態様では、抗体は、クーマシーブルーまたは好ましくは銀染色を使用して、還元条件下または非還元条件下で、SDS-PAGEが決定する通り均一になるまで精製される。単離された抗体分子は、いくつかの態様では、抗体の自然環境の1つまたは複数の要素(1つまたは複数)がない状態で、外来性宿主細胞内で存在することができる。典型的には、単離された抗体は、少なくとも1つの精製工程によって調製される。
【0077】
他に指定のない限り、本開示のCDR配列は、Oxford Molecular's AbM antibody modelling softwareに利用されるAbMによる定義に従う。一般的には、例えばProtein Sequence and Structure Analysis of Antibody Variable Domains. In:Antibody Engineering Lab Manual(Ed.:Duebel,S.and Kontermann,R.,Springer-Verlag,Heidelberg)を参照されたい。Maass 2007(Journal of Immunological Methods 324(2007)13-25)による定義など、CDRを定義する他の基準も存在する。別の基準は、Sequences of Proteins of immunological Interest,US Department of Health and Human Services(1991),eds. Kabat et alに記載される通りの、Kabat CDRによる定義である。抗原結合部位を特徴付ける別の基準については、Chothiaによって記載される通り(例えば、Chothia,et al.(1992);J.MoI.Biol.227:799-817およびTomlinson et al.(1995)EMBO J.14:4628-4638参照)、超可変ループを参照することである。AbMのCDR定義に関して記載される態様は、代替方法として、例えばMaass、Kabat、またはChothia定義などに関して同様に記載された関係を使用して、実行することができると理解される。
【0078】
抗体の価数は、一般に、任意の所与の抗体の一分子ごとの抗原結合部位の数、または任意の所与の抗原ごとの抗体結合部位の数を表現するものである。ほとんどの抗体分子および免疫グロブリンクラスIgG、IgA、IgD、およびIgEに属する分子は、1分子につき2つの抗原結合部位を有する。一般に、一価の抗体は1つの抗原結合部位を含む。一価の抗体の例には、単一ドメイン抗体、VHHドメイン、単一Fab断片、Fv断片、scFv断片、または単一VHもしくはVLドメインがある。
【0079】
用語「Fab」、「Fab領域」、「Fab部分」、または「Fab断片」は、免疫グロブリンドメインVH、CH1、VL、およびCLを含めたポリペプチドを定義すると理解される。Fabは、この単離の領域、または本発明に従った抗体分子に関したこの領域、ならびに全長免疫グロブリンまたは免疫グロブリン断片を指すことができる。典型的には、Fab領域は抗体の軽鎖全体を含有する。Fab領域は、免疫グロブリン分子の「アーム」部を定義するとみなすことができる。これはIgのエピトープに結合する部分を含有する。天然起源の免疫グロブリンのFab領域は、部分的なパパイン消化によって、タンパク質分解断片として取得することができる。「F(ab')2部分」は、部分的にペプシン消化された免疫グロブリンの、タンパク質分解断片である。「Fab部分」は、F(ab')2部分のジスルフィド結合を還元することによりもたらされる産物である。本明細書では、用語「Fab」、「Fab領域」、「Fab部分」、または「Fab断片」には、抗体アーム(上記参照)のC末端の境界を定めるヒンジ領域もさらに含めることができる。このヒンジ領域は、全長免疫グロブリン中のCH1ドメインのC末端に見受けられるヒンジ領域に該当し、ここで抗体分子のアームがYを明瞭に示すとみなすことができる。用語ヒンジ領域は、免疫グロブリンがこの領域で何らかの可動性を有するため、当分野で使用される。
【0080】
「Fv」または「Fv断片」は、免疫グロブリンの「単一アーム」のVLドメインおよびVHドメインのみからなる。したがって、「Fv」は、完全な抗原認識部位と結合部位を含有する、最小の抗体断片である。「二本鎖」Fv断片は、堅固で非共有性会合の、1つの重鎖可変ドメインと1つの軽鎖可変ドメインとの二量体からなる。単鎖Fv種(scFv)には、免疫グロブリンのVHドメインとVLドメインが含まれ、これらのドメインは、可動性ペプチドリンカーによって互いに共有結合的に連結する、単一ポリペプチド鎖として存在する。典型的には、scFv断片では、軽鎖の可変ドメインと重鎖の可変ドメインとが、二本鎖Fv種の断片と類似した二量体構造で会合する。単鎖Fv断片では、単一ポリペプチド鎖のN末端に配置された軽鎖の可変ドメイン、それに続くリンカー、ポリペプチド鎖のC末端に配置された重鎖の可変ドメインを有するか、逆もまた同じであって、N末端に配置された重鎖の可変ドメインと、ペプチドリンカーが間に配置されてC末端の軽鎖の可変ドメインを有するかの、いずれかが可能である。ペプチドリンカーは、例えばグリシン残基またはセリン残基から作られる、当分野で知られるいかなる可動性リンカーでもよい。ジスルフィド結合を保存的なフレームワーク領域に導入することによって、VHドメインとVLドメインとの間のドメイン会合を追加的に安定化することも可能である(Reiter et al. Stabilization of the Fv fragments in recombinant immunotoxins by disulfide bonds engineered into conserved framework regions,Biochemistry 1994,33,6551-5459参照)。そのようなscFv断片はまた、ジスルフィド安定化scFv断片としても知られる(ds-scFv)。
【0081】
用語「Fc領域」または「Fc断片」は、本明細書では、天然配列Fc領域およびバリアントFc領域を含めた、免疫グロブリン重鎖のC末端領域の境界を定めるために使用される。Fc部分は、例えば補体系の活性化およびNK細胞などFc受容体を有する免疫エフェクター細胞の活性化など、抗体のエフェクター機能に関係する。ヒトIgG分子においては、Fc領域は、N末端をパパイン切断でCys226にすることによって生成される。免疫グロブリン重鎖のFc領域の境界は異なりうるが、ヒトIgG重鎖Fc領域は通常、Cys226位置またはPro230位置のアミノ酸残基からそのカルボキシ末端までの区間に境界が定められる。Fc領域のC末端リジン(EUナンバリングシステム(EU numbering system)によると残基447)は、例えば抗体分子の製作もしくは精製中に、または抗体分子の重鎖をコードする核酸を組み換え操作することによって、除去することができる。したがって、無処置の抗体の構成には、全K447残基が除去された抗体集団、K447残基が1つも除去されない抗体集団、およびK447残基の有無が混合した抗体集団を含めることができる。本発明の抗体の使用に適した天然配列Fc領域には、哺乳類、例えばヒトまたはマウスのIgG1、IgG2(IgG2A、IgG2B)、IgG3、およびIgG4が含まれる。Fc領域は、抗体のクラスに応じて、2つまたは3つの定常領域を含有する。免疫グロブリンがIgGである態様では、Fc領域はCH2ドメインおよびCH3ドメインを有する。
【0082】
本発明による抗体は、例えば細菌宿主(原核生物系)内または酵母菌、真菌、昆虫細胞、もしくは哺乳類細胞など真核生物系内で発現することによって、既知の十分に確立したいかなる発現システムおよび組み換え細胞培養技術を使用しても生成することができる。本発明の抗体分子は、ヤギや植物など形質転換体内で生成することもできる。抗体はまた、化学合成によっても生成することができる。
【0083】
本発明の抗体は、CDR1配列GVTISALNAMAMG(SEQ ID NO:115)またはこの配列に対して1つもしくは2つの変異を有する配列、CDR2配列AVSERGNAM(SEQ ID NO:116)またはこの配列に対して1つもしくは2つの変異を有する配列、およびCDR3配列LEDRVDSFHDY(SEQ ID NO:117)またはこの配列に対して1つもしくは2つの変異を有する配列を含むことができる。本発明の抗体は、CDR1配列GVTISALNAMAMG(SEQ ID NO:118)またはこの配列に対して1つもしくは2つの変異を有する配列、CDR2配列AVSSRGNAM(SEQ ID NO:119)またはこの配列に対して1つもしくは2つの変異を有する配列、およびCDR3配列を含むことができる。本発明の抗体は、CDR1配列GVTVSALNAMAMG(SEQ ID NO:121)またはこの配列に対して1つもしくは2つの変異を有する配列、CDR2配列AVSERGNAM(SEQ ID NO:122)またはこの配列に対して1つもしくは2つの変異を有する配列、およびCDR3配列LEDRVDSFHDY(SEQ ID NO:123)またはこの配列に対して1つもしくは2つの変異を有する配列を含むことができる。そのような抗体は、好ましくは、単一ドメイン抗体などのラクダ科VHHドメインまたは天然に軽鎖を欠落した抗体を含む、またはからなると理解される。1つもしくは2つの変異が1つ、2つ、または全3つのCDR配列に導入された抗体はなお、本発明の融合タンパク質に含まれるペプチド、具体的にはSEQ ID NO:05~07のいずれか1つのペプチドなどSEQ ID NO:3のコア構造を有するペプチドに、特異的に結合する能力があることがさらに理解される。そのような本発明の抗体では、CDR2のアミノ酸位置4のEまたはSは、G、A、L、I、S、T、V、C、M、D、N、E、Q、F、Y、H、W、K、R、またはPへ、好ましくはD、N、またはHへと変異させることができる。そのような本発明の抗体は、以下のFR1配列またはこの配列と少なくとも80%、85%、90%、もしくは95%の配列同一性を有する配列を含むことができる:
ここで、X
1はQ、V、E、もしくはLであり、X
2はQもしくはPであり、X
3はLもしくはMである(SEQ ID NO:124)。そのような本発明の抗体は、FR1配列
またはこの配列と少なくとも80%、85%、90%、もしくは95%の配列同一性を有する配列を含むことができる。そのような本発明の抗体は、以下のFR2配列またはこの配列と少なくとも80%、85%、90%、もしくは95%の配列同一性を有する配列を含むことができる:
WYRQX
1PGEX
2RVMVA
ここで、X
1はAもしくはRであり、X
2はRもしくはEである(SEQ ID NO:126)。そのような本発明の抗体は、FR2配列WYRQAPGERRVMVA(SEQ ID NO:127)またはこの配列と少なくとも80%、85%、90%、もしくは95%の配列同一性を有する配列を含むことができる。そのような本発明の抗体は、FR2配列WYRQAPGEERVMVA(SEQ ID NO:128)またはこの配列と少なくとも80%、85%、90%、もしくは95%の配列同一性を有する配列を含むことができる。そのような本発明の抗体は、以下のFR3配列またはこの配列と少なくとも80%、85%、90%、もしくは95%の配列同一性を有する配列を含むことができる:
ここで、X
1はKもしくはQであり、X
2はTもしくはMである(SEQ ID NO:129)。そのような本発明の抗体は、FR3配列
またはこの配列と少なくとも80%、85%、90%、もしくは95%の配列同一性を有する配列を含むことができる。そのような本発明の抗体は、以下のFR4配列またはこの配列と少なくとも80%、85%、90%、もしくは95%の配列同一性を有する配列を含むことができる:
WGQGX
1QVTVSS
ここで、X
1はTもしくはIである(SEQ ID NO:131)。そのような本発明の抗体は、FR4配列WGQGTQVTVSS(SEQ ID NO:132)またはこの配列と少なくとも80%、85%、90%、もしくは95%の配列同一性を有する配列を含むことができる。
【0084】
本発明の抗体は、
からなる群より選択されるVHH配列またはこれら配列のいずれか1つと少なくとも80%、85%、90%、もしくは95%の配列同一性を有する配列を含むか、またはそれからなる。
【0085】
本発明の抗体は、CDR1配列GTMSAINALN(SEQ ID NO:143)またはこの配列に対して1つもしくは2つの変異を有する配列、CDR2配列AITDNGNAH(SEQ ID NO:144)またはこの配列に対して1つもしくは2つの変異を有する配列、およびCDR3配列LEEEKLGVWVDY(SEQ ID NO:145)またはこの配列に対して1つもしくは2つの変異を有する配列を含むことができる。本発明の抗体は、CDR1配列GTMSAINALN(SEQ ID NO:146)またはこの配列に対して1つもしくは2つの変異を有する配列、CDR2配列AITDNGNAH(SEQ ID NO:147)またはこの配列に対して1つもしくは2つの変異を有する配列、およびCDR3配列LEEKLGAWVDY(SEQ ID NO:148)またはこの配列に対して1つもしくは2つの変異を有する配列を含むことができる。本発明の抗体は、CDR1配列GTMSAINALN(SEQ ID NO:149)またはこの配列に対して1つもしくは2つの変異を有する配列、CDR2配列AITDNGNAH(SEQ ID NO:150)またはこの配列に対して1つもしくは2つの変異を有する配列、およびCDR3配列LEKEKLGVWVDY(SEQ ID NO:151)またはこの配列に対して1つもしくは2つの変異を有する配列を含むことができる。そのような抗体は、好ましくは、単一ドメイン抗体などのラクダ科VHHドメインまたは天然に軽鎖を欠落した抗体を含む、またはからなると理解される。1つもしくは2つの変異が1つ、2つ、または全3つのCDR配列に導入された抗体はなお、本発明の融合タンパク質に含まれるペプチド、具体的にはSEQ ID NO:05~07のいずれか1つのペプチドなどSEQ ID NO:3のコア構造を有するペプチドに、特異的に結合する能力があることがさらに理解される。そのような本発明の抗体は、以下のFR1配列またはこの配列と少なくとも80%、85%、90%、もしくは95%の配列同一性を有する配列を含むことができる:
ここで、X1はVもしくはLである(SEQ ID NO:152)。そのような本発明の抗体は、以下のFR2配列またはこの配列と少なくとも80%、85%、90%、もしくは95%の配列同一性を有する配列を含むことができる:
WYRQX1PGKERKMVA
ここで、X1はPもしくはAである(SEQ ID NO:153)。そのような本発明の抗体は、以下のFR3配列またはこの配列と少なくとも80%、85%、90%、もしくは95%の配列同一性を有する配列を含むことができる:
ここで、X1はKもしくはEである(SEQ ID NO:154)。そのような本発明の抗体は、FR4配列WGQGTQVTVSS(SEQ ID NO:155)またはこの配列と少なくとも80%、85%、90%、もしくは95%の配列同一性を有する配列を含むことができる。
【0086】
本発明の抗体は、
からなる群より選択されるVHH配列、またはこれら配列のいずれか1つと少なくとも80%、85%、90%、もしくは95%の配列同一性を有する配列を含むか、またはそれからなることができる。
【0087】
本発明の抗体は、検出可能な標識にコンジュゲートさせることができる。一般に、このような「検出可能な標識」は、検出可能な化合物またはシグナルを、化学的、物理的、光学的、または酵素学的反応で直接的または間接的に発生させるいかなる適切な化学的物質または酵素であってもよい。例えば、検出可能なシグナルとしての蛍光またはX線を発生させるために、蛍光標識または放射性標識を抗体にコンジュゲートさせることができる。アルカリフォスファターゼ、西洋ワサビペルオキシダーゼ、およびβ-ガラクトシダーゼは、発色反応産物の形成を触媒する酵素標識の(同時に光ラベルの)例である。好ましい態様では、検出可能な標識は、顕微鏡法、免疫組織学的検査、またはフローサイトメトリーで、関心対象の標的の検出に使用することのできる、検出可能な実体を指す。標識は、この標識がコンジュゲートされる抗体の特徴に悪影響を与えないことが好ましい。標識の例には、数例を挙げただけでも、フィコエリトリン、アロフィコシアニン(APC)、ブリリアントバイオレット421、Alexa Fluor 488、クマリン、またはローダミンなどの蛍光標識がある。蛍光標識、発色団標識、同位体標識、または金属標識を含めた多くの種類の検出可能な標識が存在するが、蛍光標識が好ましい。本発明の融合タンパク質の存在は、この融合タンパク質を、検出可能な標識にコンジュゲートさせた本発明の抗体と接触させ、この検出可能な標識のシグナルを検出することによって、検出することができる。蛍光標識について述べると、これは蛍光標識の励起に対して放射する光の検出を意味する。完全に網羅してはいないが、適した蛍光標識の例には、「緑色」エミッタ(Atto488、Alexa488、Cy2等)、「オレンジ色」エミッタ(Atto542、alexa555、Cy3等)、「近赤外赤色」エミッタ(Alexa633、Atto 647N、Cy5等)、赤外線エミッタ(Atto700、LiCor IRDye700、LiCor IRDye800等)、紫外線吸収蛍光染料(Atto390またはAlexa405)がある。蛍光標識はまた、GFP、eGFP、YFP、RFP、CFP、BFP、mCherry、または近赤外線蛍光タンパク質など、蛍光タンパク質でもよい。完全に網羅してはいないが、適した発色団標識の例には、TMB(3,3',5,5'テトラメチルベンジジン)、DAB(3,3',4,4'ジアミノベンジジン)、および4CN(4-クロロ-1-ナフトール)に曝した、アルカリフォスファターゼまたはペルオキシダーゼがある。ABTS(2,2'-アジノ-ジ[3-エチル-ベンズチアゾリン]スルホン酸)、OPD(o-フェニレンジアミン)、およびBCIP/NBT(5-ブロモ-4-クロロ-3-インドリル-リン酸/ニトロブルーテトラゾリウム)にも曝せる。完全に網羅してはいないが、同位体標識の例には、13C、15N、19F、27Al、11B、127I、または様々なランタノイド同位体がある。完全に網羅してはいないが、金属標識の例には、Au、Pd、Pb、Pt、Ag、Hg、およびOsがある。標識は、直接的標識、すなわち直接に検出可能な標識とすることができる。あるいは、この標識を、間接的な標識、すなわち、例えば蛍光標識または発色団標識など別の検出可能な標識にコンジュゲートされた別の特異的結合パートナーが特異的に結合することができるアフィニティータグ(またはエピトープタグ)である標識とすることもできる。適したエピトープタグの例には、限定されることなく、FLAGタグ(配列:DYKDDDDK、SEQ ID NO:160)、Strepタグ(配列:WSHPQFEK、SEQ ID NO:178)、Mycタグ(配列:EQKLISEEDL、SEQ ID NO:161)、HAタグ(配列:YPYDVPDYA、SEQ ID NO:162)、VSV-Gタグ(配列:YTDIEMNRLGK、SEQ ID NO:163)、HSVタグ(配列:QPELAPEDPED、SEQ ID NO:164)、V5タグ(配列:GKPIPNPLLGLDST、SEQ ID NO:165)、SPOTタグ(配列:PDRVRAVSHWSS、SEQ ID NO:166)、BC2タグ(配列:PDRKAAVSHWQQ、SEQ ID NO:167)、およびEPEAタグ(配列:EPEA、SEQ ID NO:168)が含まれる。抗原はまた、タンパク質とすることもでき、例えば、グルタチオン-S-転移酵素(GST)、マルトース結合タンパク質(MBP)、キチン結合タンパク質(CBP)またはチオレドキシンを抗原とすることができる。検出可能な標識はさらに、認識配列を有するオリゴヌクレオチドなど、核酸とすることもできる。そのような認識配列は、ランダム配列でもよい。このランダム配列は、核酸分子に組み込まれたバーコード配列とすることができ、前記核酸にコンジュゲートされた標的分子を特定するために使用することができる。「本発明の抗体は、検出可能な標識にコンジュゲートされうる」とは、抗体それ自体が検出可能な標識であることも意味する。このことは、この抗体が、この抗体に特異的に結合する別の特異的結合パートナーが特異的に認識することができる、アフィニティー標的であることを意味する。例えば、そのような特異的結合パートナーは、ラクダ科VHHドメインを特異的に認識する抗体とすることができる。そのような特異的結合パートナーはさらに、蛍光標識など検出可能な標識にコンジュゲートされうる。
【0088】
本発明の抗体は、固体支持体にコンジュゲートされうる。本発明に関連した用語「固体支持体」は、抗体またはその一部など、アフィニティーリガンドの固定化に使用することができるいかなる種類の担体物質も指し、これは粒状の物質(例えば一般に抽出カラムに使用されるビーズまたは顆粒)またはシート状の物質(例えばメンブレンもしくはフィルター、ガラスもしくはプラスチックのスライド、マイクロタイターアッセイプレート、尿試験紙、キャピラリー充填用品、または同様のもの)で平面状、ひだ状、または中空繊維もしくは管状である物質を指すことができる。完全に網羅はしてはいないが、よく知られる適した基質は、シリカ(多孔性非晶質シリカ)、アガロース支持体もしくはポリアクリルアミド支持体、またはマクロ多孔性ポリマーである。例には、デキストラン、コラーゲン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリアクリルアミド、メタクリル酸エステル、セルロース、アルギン酸カルシウム、細孔性ガラス、アルミニウム、チタンおよび多孔性セラミック、合成ポリマーおよび合成コポリマー、ラテックス、シリカ、アガロース、金属、ガラス、ならびにカーボンが含まれる。あるいは、この固体表面は、例えば表面プラズモン共鳴検出器など、質量依存センサーの一部を含んでもよい。好都合には、本発明のエピトープタグに特異的に結合する能力のある抗体または抗体断片など複数の個別アフィニティーリガンドであって、固体表面に結合または固定されたアフィニティーリガンドを含むアレイが提供される。このアレイは、ある溶液が、抗体や抗体断片など固定化されたアフィニティーリガンドと接触するとすぐに、この溶液に含まれるタグ付きポリペプチドを捕捉するために使用することができる。固体支持体はまた、磁性ビーズもしくは重合体ビーズ、またはクロマトグラフィー固定相であってもよい。
【0089】
本発明の抗体は、この抗体が特異的に結合するエピトープと複合体を形成することができる。そのようなエピトープは、本発明の融合タンパク質に含まれるペプチドでもよい。本発明の抗体は、したがって本発明の融合タンパク質と複合体を形成することができる。本発明は、したがって、本発明の抗体が特異的に結合するペプチドを含む、融合タンパク質を包含する。
【0090】
本発明はまた、(a)融合タンパク質と(b)抗体とを含む複合体であって、融合タンパク質が本発明の融合タンパク質であり、かつ/または抗体が本発明の抗体である、複合体に関する。
【0091】
本発明はまた、本明細書で記載される通りの本発明の融合タンパク質をコードする配列、または本明細書で記載される通りの本発明の抗体をコードする配列を含む、核酸分子に関する。核酸分子は、DNAまたはRNA分子とすることができる。本発明の核酸分子は、プラスミド、ファージミド、ファージ、バキュロウイルス、コスミド、または人工染色体など、ベクターの一部または他の任意の種類のクローニング媒体もしくは発現媒体の一部とすることができる。核酸分子は、融合タンパク質または抗体の発現を可能にすることができる。核酸分子には、翻訳および/または翻訳調節に関する情報を含有する配列エレメントを含めることができ、そのような配列は、タンパク質をコードするヌクレオチド配列と「動作可能に連結する」ことができる。動作可能な連結とは、調節配列エレメントと発現する配列とが、遺伝子発現を可能にするやり方で接続する連結である。遺伝子発現に必要な調節領域の詳細な特質は種間で異なることがあるが、一般にこれらの領域にはプロモーターが含まれ、このプロモーターは、原核生物では、両方のプロモーター、すなわち翻訳の開始を指示するDNAエレメントと、RNAに転写される時に翻訳の開始を合図するDNAエレメントとを、含有する。そのようなプロモーター領域には、通常、例えば原核生物では-35/-10ボックスおよびシャイン・ダルガーノエレメント、真核生物ではTATAボックス、CAAT配列、および5'キャッピングエレメントなど、翻訳の開始および翻訳に関与する5'非翻訳配列が含まれる。これらの領域にはまた、エンハンサーエレメントまたはリプレッサーエレメント、ならびに天然タンパク質を宿主細胞の特定の区画に向けさせる、翻訳シグナル配列および翻訳リーダー配列も含めることができる。
【0092】
本明細書で記載されるそのような媒体には、本明細書で記載される調節配列、および本明細書で記載されるペプチドまたはタンパク質をコードする核酸配列の他、発現に使用される宿主細胞と適合する種由来の複製配列および制御配列、ならびに形質転換または遺伝子導入した細胞に選択可能な表現型を与える、選択マーカーを含めることができる。多数の適切なクローニングベクターが当分野で知られており、市販で手に入れることができる。したがって、本発明はまた、本発明の核酸分子を含むベクターにも関する。
【0093】
本発明の核酸分子またはベクターのクローニングまたは発現は、少なくとも一部はインビボで、核酸もしくはベクターで形質転換した宿主細胞、または形質導入もしくは遺伝子導入を含めた他の手段によって核酸分子もしくはベクターが導入された宿主細胞を使用して遂行することができる。DNAの導入は、標準的な技術を使用して実施することができる。したがって、本開示は、本明細書で開示される通りの核酸分子またはベクターを含有する宿主細胞も対象にする。
【0094】
本発明のペプチドは、いくつかの用途に有用である。これら細胞性用途は、ペプチドをエピトープタグとして使用するという共通点を有することができる。ペプチドが有用である用途の非限定的な例には、本発明の融合タンパク質の検出、固定化、単離、または精製が含まれるが、それらに限定されるわけではない。同様に、本発明の抗体も、エピトープタグの特異的結合を含めた全ての用途に使用することができる。本発明の抗体は、例えば、本発明の融合タンパク質の検出、固定化、単離、または精製のために使用することができる。
【0095】
本発明はまた、本発明の融合タンパク質を検出する方法に関する。検出は、光検出、同位体検出、または電子顕微鏡法による検出が可能である。この方法は、好ましくは融合タンパク質に含まれるペプチドと抗体との複合体形成が可能な条件下で、融合タンパク質を本発明の抗体と接触させる工程を含む。本発明の抗体は、好ましくは、本明細書で記載される通りの検出可能な標識を有する。抗体に付着させる検出可能な標識が蛍光標識、発色団標識、同位体標識、または金属標識である場合、この抗体は、好ましくは、抗体に付着された規定数の標識を有すると理解される。この方法は、検出可能な標識を検出する工程を含むことができる。この方法は、本発明の融合タンパク質を抗体と接触させる前に、この融合タンパク質を発現させる工程を含むことができる。
【0096】
用語「検出」には、本明細書では、標的の直接的検出(すなわち標的は、標的由来のシグナルによって検出される)と、標的の間接的検出(すなわち標的は、この標的の直接的な由来でないシグナルによって、例えば標的に付着させた別の分子に由来するシグナルによって検出される)との両方が含まれる。用語「検出」はさらに、本明細書では、質的と量的との両方の検出を含む。用語「検出」は、本発明の融合タンパク質など、所与の分子または構造体の存在、細胞内局在性、または量を判定することを指すことができる。検出される、位置づけられる、および/または定量化される融合タンパク質は、例えば細胞核内、細胞膜内、または別の細胞区画内など宿主細胞の細胞内位置で検出することができる。検出および/または定量化される融合タンパク質はまた、例えば宿主細胞から取得した細胞ライセートや宿主細胞を含む組織ライセートなど、タグ付きポリペプチドまたはタグ付きタンパク質を含む溶液で検出することができる。
【0097】
用語「光」は、本明細書では、好ましくは可視光線を指すが、概してそれに限定されるわけではない。この用語はまた、赤外線、紫外線、および電磁スペクトルの他の領域も指すことができる。
【0098】
本明細書では、「同位体検出」は、1つまたは複数の原子が、一般的に検出可能な多様性を有する別の同位体と置き換わった(すなわち「標識された」)分子の検出に関する。同位体標識は、その質量(例えば質量分析法、マトリックス支援レーザー脱離イオン化(MALDI)、脱離エレクトロスプレーイオン化法(DESI)、レーザーアブレーション誘導結合型血漿質量分析法(LA-ICP-MS)、または二次イオン質量分析法(SIMS)による)、振動モード(例えば赤外分光法による)、磁気回転比(例えば核磁気共鳴法による)、または放射性崩壊(例えば電離箱、またはゲルのオートジオグラフィ)など、複数の手段によって検出することができる。
【0099】
電子顕微鏡法は、電子顕微鏡を使用した検出の方法に関する。電子顕微鏡の種類には、透過型電子顕微鏡(TEM)、走査型電子顕微鏡(SEM)、反射電子顕微鏡(REM)、走査型透過電子顕微鏡(STEM)、および光・電子相関顕微鏡法(CLEM)が含まれる。
【0100】
検出方法の最初の工程では、本発明の融合タンパク質に含まれるペプチドに特異的に結合する抗体を、この融合タンパク質を含むサンプルと接触させることができる。このサンプルは、宿主細胞、組織、宿主細胞の細胞ライセートを含む溶液、または宿主細胞を含む液体を遠心分離した後に得られる上清など融合タンパク質を含む他のいかなるサンプルであることができ、この時、宿主細胞が関心対象のポリペプチドを液体中または体液のような別の試料中に分泌することが可能である。
【0101】
この接触工程は、好ましくは、抗体と、この抗体が特異的に結合するペプチドとの特異的な相互作用を可能にする条件で、実施される。そのような条件は、当業者によく知られている。抗体をその抗原に接触する工程の後に、典型的には洗浄工程が続き、当業者は洗浄工程をいつどのように適用するかを知っている。サンプルと接触すると、抗体は融合タンパク質と特異的に相互作用するようになる。この相互作用は、検出可能な標識から得られたレポーターシグナルを測定または観察することによって、検出し、モニターし、定量化することができる。例えば、検出可能な標識が蛍光標識である場合、励起すると蛍光を測定および観察することができる。
【0102】
検出可能な標識がアフィニティータグ(またはエピトープタグ)である場合、蛍光標識または発色団標識など別の検出可能な標識にコンジュゲートされた別の特異的結合パートナーが、この標識に特異的に結合することができる。そのような場合、本発明の抗体に付着させた検出可能な標識の検出は、本発明の抗体にコンジュゲートされたこの検出可能な標識に特異的に結合する特異的結合パートナーと、この抗体を接触させることによって、行うことができる。特異的結合パートナーは、好ましくは蛍光標識または発色団標識など最初の検出可能な標識と区別できる、さらなる検出可能な標識で標識することができる。特異的結合パートナーはしかし、別の特異的な(標識された)結合試薬によって認識され得る構造であることもできる。例えば、本発明の抗体にコンジュゲートされた検出可能な標識に結合する特異的結合パートナーは(一次)抗体とすることができ、この抗体は、蛍光標識など第一の検出可能な標識と好ましくは識別できる検出可能な標識を有する(二次)抗体によって、特異的に認識され得る。本発明の融合タンパク質の検出方法は、したがって融合タンパク質と抗体とを、抗体に含まれる検出可能な標識に対する特異的結合パートナーと接触させる工程を含むことができる。第二の検出可能な標識が存在する場合、この方法は、第一および/または第二の検出可能な標識を検出する工程を含むことができる。
【0103】
本発明の抗体にコンジュゲートされる検出可能な標識がアフィニティータグである方法に従い、融合タンパク質を検出する方法は、最初の工程において、本発明の抗体と、本発明の融合タンパク質を含むまたは含むと考えられるサンプルとを接触させる工程を含むことができる。2番目の工程において、(二次)特異的結合パートナーは、本発明の抗体に結合した融合タンパク質を含むサンプルと接触させることができる。(二次)特異的結合パートナーが検出可能な標識にコンジュゲートされない場合、または検出可能な標識がアフィニティータグである場合、この方法はさらに、(二次)特異的結合パートナーまたはその検出可能な標識に特異的に結合するさらなる抗体など、さらなる特異的結合パートナーを接触させる工程を含む。このさらなる特異的結合パートナーは、融合タンパク質の検出に使用することができる蛍光標識など、検出可能な標識を含むことができる。タグ付きポリペプチドまたはタンパク質の存在、量、および/または局在性は、(二次)特異的結合パートナーまたはさらなる特異的結合パートナーに含まれる検出可能な標識から得られるレポーターシグナルを測定または観察することによって、検出または判定することができる。
【0104】
2つの種類の結合パートナーを使用した二段階検出法の利点は、タグ特異性相互作用が実際の検出工程と切り離されることである。この方法は、本発明の抗体が追加の検出可能部分を含む必要がないため、この抗体を変化させないままにしておける。いくつかの場合では、検出可能な標識が、本発明の融合タンパク質に含まれるペプチドと本発明の抗体との相互作用に影響を与えるため、検出可能な追加の標識を含む抗体と比較すると、この方法は、その特異性または親和性をいくつかの場合で向上することができる。したがっていくつかの場合では、検出方法の信頼性と有効性を向上させることができるだろう。さらに、本発明の抗体を、捕捉兼検出抗体としてではなく、単に捕捉抗体として使用することによって、融合タンパク質の存在および量を決定さえすれば、捕捉工程と検出工程との分離が可能になる。したがって、本発明の抗体を使用する最初の工程の後に、単離または濃縮の工程が続き、捕捉された関心対象の融合タンパク質が得られる。次にこの単離および/または濃縮された融合タンパク質に対する検出工程を実施することができ、得られる定量化の信頼性の向上と、より容易な検出工程操作をもたらす。
【0105】
エピトープタグと抗体との相互作用を質的に検出するための、適した生物物理学的および生体分子的検出方法は、当技術分野で知られているいかなる適切な方法も含む。そのような方法には、限定されることなく、例えば酵素結合免疫吸着測定法(Enzyme-linked Immunosorbent Assay)(ELISA)、エリスポット(ELISPOT)アッセイ、ウエスタンブロット法、または免疫測定法など、質的または量的アッセイに適用される方法が含まれる。そのような方法は、好ましくは上記の標識、マーカー、またはリンカーのいずれかを使用する場合、例えば光学的、放射性、またはクロマトグラフィー法を含み、より好ましくは、蛍光検出法、放射能検出法、クーマシーブルー染色法、銀染色または他のタンパク質染色法、電子顕微鏡法、免疫組織化学によるまたは直接的もしくは間接的免疫蛍光による組織断片染色法等を含む。このような方法は、抗体と共に適用するか、例えば融合タンパク質、抗体、または複合体の一部分に特異的に結合する二次結合パートナーの使用など、さらなるツールの使用を伴うかの、いずれかが可能である。
【0106】
いくつかの態様では、関心対象のタグ付きポリペプチドまたはタグ付きタンパク質の細胞内局在性も判定することができる。例えば、中間径フィラメントネットワークまたは複製機構の基本的部分など、個々の細胞内構造を可視化し、モニターすることができる。
【0107】
融合タンパク質の検出も、細胞内抗体である本発明の抗体を使用して実施することができる。「細胞内抗体」は、本明細書では、細胞内タンパク質に結合するために細胞の内部に位置する抗体を指す。抗体を細胞外環境から生細胞の中に入れる信頼できる機構がないため、これは、典型的には、標的細胞内の抗体の発現が必要となる。発現後、抗体は、細胞質内に留まることもできるし、核局在化シグナルを有することもできるし、KDEL配列を通じて小胞体の区画内に保持されるということであれば、膜を横切って小胞体のルーメンの中へ共翻訳トランスロケーションを起こすこともできる。細胞内抗体にコンジュゲートされた検出可能な標識は、細胞内抗体との融合タンパク質として発現することのできるタンパク質性標識とすることができる。理想的には、そのような標識は、蛍光等により光学的に検出可能である。検出可能な標識は、したがって蛍光タンパク質とすることができる。
【0108】
本発明はまた、本発明の融合タンパク質を単離する方法に関する。そのような方法は、好ましくは抗体と融合タンパク質に含まれるペプチドとの複合体形成が可能な条件下で、融合タンパク質を本発明の抗体と接触させる工程を含む。それによって、融合タンパク質と抗体との結合が可能となる。この接触させる工程は、捕捉工程とも呼ばれるが、融合タンパク質を含む例えば溶液などのサンプルを、抗体と接触させることによって遂行することができる。
【0109】
タグ特異的抗体と接触させるサンプルは、本発明の融合タンパク質を含む任意の種類のサンプルとすることができ、ポリペプチドを分離するために処理することができる。好ましくは、サンプルは、例えば、本発明の融合タンパク質を含む、宿主細胞のライセートや体液などの溶液であり、または例えば、本発明の融合タンパク質を含むまたは発現させる能力のある宿主細胞であって、本発明の融合タンパク質を液体に分泌する、あるいは輸送する能力のある宿主細胞を含む液体を遠心分離することによって取得可能な上清などの上清である。
【0110】
本発明の方法において単離および/または精製のために使用される抗体は、溶液で使用することができ、または固定化することができる。抗体を固体化するために、抗体を、サンプル担体、固体支持体、またはマトリックスと結合させることができる。この固体化工程は、抗体と、融合タンパク質に含まれるペプチドとの結合の前または後に行うことができる。抗体およびその部分を固定化する方法は、当業者によく知られており、固定化させるいかなる方法も、結合特性を障害することなく利用することができる。
【0111】
本発明の抗体が固体支持体に固定されない場合、この方法は、例えば複合体に特異的、または抗体に特異的、または抗体にコンジュゲートされたアフィニティータグなど検出可能な標識に特異的である二次抗体など、複合体のための例えば特異的結合パートナーを使用することによって、複合体を単離するさらなる工程を含むことができる。二次結合パートナーは、溶液にすることもできるし、固体化または固体支持体に固定することもできる。
【0112】
捕捉工程に続くさらなる任意の工程では、融合タンパク質に結合した固定化抗体を含む固体支持体を、結合しなかった成分および非特異的に結合した成分を除去するために洗浄する。
【0113】
任意で、さらなる工程において、単離融合タンパク質を得るため、融合タンパク質を溶出することができる。固定化された抗体に結合した融合タンパク質の溶出は、当分野で知られている方法で達成することができる。例えば、この融合タンパク質は、本明細書で記載される通りのエピトープペプチドを単離形態で用いた競合的溶出によって、溶出することができる。この単離エピトープペプチドは次に、固定化タグ特異的抗体と結合する融合タンパク質と競合することとなる。単離ペプチドが過剰濃度で付加された場合、結合の反応バランスは、固定化された抗体と単離エピトープタグとの結合に移行することとなる。これは、融合タンパク質の遊離をもたらす。溶出に使用されるエピトープペプチドは、融合タンパク質に含まれるエピトープペプチドと同じペプチドであることが可能である。溶出に使用されるエピトープペプチドはまた、融合タンパク質に含まれるエピトープペプチドと異なるペプチドであることもできる。溶出に使用されるエピトープペプチドが異なるものである場合、溶出に使用されるエピトープペプチドは、融合タンパク質に含まれるエピトープペプチドよりも高い抗体との結合親和性を有することが好ましい。当業者によく知られている方法の工程など、遊離したポリペプチドをさらに精製する追加の工程を任意で追加することができる。
【0114】
融合タンパク質はまた、(磁気)ビーズなど、固体支持体に固定化されたままでいることもでき、さらに質量分析法など下流アプリケーションで、溶出工程なしで処理することができる。
【0115】
融合タンパク質は、ペプチドを除去するために、例えばプロテアーゼなど適切な手段で切断することができる切断部位を有するリンカーを、含むことができる。これにより、融合タンパク質のポリペプチドは、固定化された抗体から遊離することができ、ポリペプチドを天然の形態で得ることができる。この態様については、融合タンパク質をコードする核酸配列は、エピトープタグをコードする配列を含むだけでなく、例えばプロテアーゼによって認識される切断部位など、切断部位を有するリンカーをコードする配列も含むべきである。酵素切断による遊離工程は、溶出工程と入れ替わる、または溶出工程に続くことができる。
【0116】
本発明の融合タンパク質が抗体部分を含む場合、本発明は、本発明の抗体部分の標的を単離する方法も想定する。原則上、この方法は、上述の融合タンパク質の単離の通りに実施することができる。この方法は、融合タンパク質を、この融合タンパク質に含まれる抗体部分の特異的標的と接触させる追加的な工程を含むことができる。この接触工程は、融合タンパク質と、この融合タンパク質に含まれるペプチドタグに結合する抗体とを接触させる前または後に遂行することができるが、後者の方が好ましい。好ましい方法では、最初にペプチドタグに特異的な抗体を固体支持体に固定化し、次に、このペプチドタグに特異的な抗体との結合を経て融合タンパク質を固定化し、その後融合タンパク質の抗体部分の標的を、この融合タンパク質と結合させる。溶出は上記の通り実施することができる。特異的標的は、細胞とすることができる。例えばCD62Lなど、細胞上の細胞表面受容体である。融合タンパク質の抗体部分は、CD62Lなど、細胞上の構造体に特異的であり得る。融合タンパク質の抗体部分は、単一ドメイン抗体とすることができる。
【0117】
本発明はまた、本発明の融合タンパク質の検出と単離とを併用することができることも想定している。したがって、本発明は、本発明の検出方法ならびに本発明の単離および/または精製方法を含む、本発明の融合タンパク質の検出および単離の方法を想定する。
【0118】
したがって、同じ融合タンパク質に対する、検出のために検出可能標識にコンジュゲートされた1つの抗体と、単離のために固体支持体にコンジュゲートされた別の抗体とを使用することによって、両方法の併用を実施することができる。両抗体は、本発明の任意の抗体とすることができる。この併用は、タグ付き融合タンパク質を1つだけ生成すればよく、検出と単離は同じ形質転換コンストラクト/細胞で実施すればよいという利点を有することができる。時には、両抗体が、同一の配列または少なくとも同一の抗原結合部位を有することが望ましいこともある。例えば、両抗体は、SEQ ID NO:115~117に記載されるCDR1~3配列を含むことができ、またはSEQ ID NO:133に記載される配列もしくはSEQ ID NO:133と少なくとも80%、85%、90%、もしくは95%の配列同一性を有する配列を含むことができる。時には、両抗体が、異なる配列または異なる抗原結合部位を有することが望ましいこともある。異なる抗体を使用することによって、堅固な結合剤、例えば融合タンパク質に含まれるペプチドに高親和性(例えば約1 pMから約1 nM)を有する抗体を検出用に使用することができ、一方で中程度の結合剤、すなわち中程度の親和性(例えば約1 nMから約500 nM)を有する抗体を融合タンパク質の単離用に使用することができる、という利点を有することができる。例えば、両抗体の1つは、SEQ ID NO:115~117に記載されるCDR1~3配列、またはSEQ ID NO:133に記載される配列もしくはSEQ ID NO:133と少なくとも80%、85%、90%、もしくは95%の配列同一性を有する配列を含むことができ、一方で、もう1つの抗体は、SEQ ID NO:118~120に記載されるCDR1~3配列、またはSEQ ID NO:134に記載される配列もしくはSEQ ID NO:134と少なくとも80%、85%、90%、もしくは95%の配列同一性を有する配列を含むことができる。融合タンパク質に含まれるペプチドは、本明細書で記載される通りのSEQ ID NO:3または4のコア配列を有するペプチドとすることができる。
【0119】
両方法の併用はまた、同一の抗体と、2つの異なる検出用ペプチドと精製用ペプチドとを使用することによっても、実施することができる。これは、用途に応じて、検出可能標識または固体支持体にコンジュゲートできる抗体を1つだけ生成すればよい、という利点を有する。2つの異なるペプチドを使用する場合、これらのペプチドは、抗体に対し異なる結合親和性を有することが好ましい。検出用に使用するペプチドは、例えば約1 pMから1 nMの高親和性を有することができ、一方で単離のために使用するペプチドは、約1 nMから500 nMの中程度の結合親和性を有することができる。異なる結合親和性を有するペプチドを使用することによって、中程度の親和性のペプチドが単離用の融合タンパク質に含まれる場合に、(より)高い親和性のペプチドを融合タンパク質の溶出に使用することができる、という利点を有することができる。したがって、1つのペプチドは本明細書で記載される通りのSEQ ID NO:3または4のコア配列を有するペプチドとすることができ、一方でもう1つのペプチドは本明細書で記載される通りのSEQ ID NO:31または32のコア配列を有するペプチドとすることができる。抗体は本発明の任意の抗体とすることができる。例えば、抗体はSEQ ID NO:115~117に記載されるCDR1~3配列を含むことができ、またはSEQ ID NO:133に記載される配列もしくはSEQ ID NO:133と少なくとも80%、85%、90%、もしくは95%の配列同一性を有する配列を含むことができる。
【0120】
両方法の併用は、2つのペプチドと2つの抗体とを使用することによっても実施することができる。関心対象の融合タンパク質は、所与の抗体に対する高親和性を有するペプチドを含むことができる。例えば、このペプチドは、本明細書で記載される通りのSEQ ID NO:3または4のコア配列を有するペプチドとすることができる。検出用の抗体は、SEQ ID NO:115~117に記載されるCDR1~3配列を含むことができ、またはSEQ ID NO:133に記載される配列もしくはSEQ ID NO:133と少なくとも80%、85%、90%、もしくは95%の配列同一性を有する配列を含むことができる。単離/精製用の抗体は、SEQ ID NO:118~120に記載されるCDR1~3配列を含むことができ、またはSEQ ID NO:134に記載される配列もしくはSEQ ID NO:134と少なくとも80%、85%、90%、もしくは95%の配列同一性を有する配列を含むことができる。溶出用に使用するペプチドは、本明細書に記載される別のペプチドなど融合タンパク質に含まれるペプチドよりも、溶出用抗体に対して高い親和性を有するペプチドとすることができる。
【0121】
本発明はさらに、本明細書で記載される通りの、1つのペプチドタグと2つの抗体、または2つのペプチドタグと1つの抗体、または2つのペプチドタグと2つの抗体を含むシステムに関する。
【0122】
本発明はまた、キットにも関する。キットは、本発明の方法を実施するために必要な構成要素を含む。融合タンパク質の検出用または精製用のキットは、融合タンパク質内に存在することができる本明細書で記載される通りのペプチド/エピトープタグをコードする核酸または核酸発現コンストラクトを含むことができる。この核酸は、ポリペプチドをペプチド/エピトープタグと融合させることを遺伝学的に促進させる切断部位や組み換え部位などの部位を含むことができる。ペプチド/エピトープタグをコードする核酸配列は、翻訳および/または翻訳調節に関する情報を含有する配列エレメントと動作可能に連結することができる。
【0123】
キットはまた、任意で本明細書に記載される検出可能な標識、好ましくは光学的に検出可能な標識またはアフィニティータグにコンジュゲートされうる、本発明の抗体も含むことができる。あるいは、またはそれに加えて、キットは、本発明の抗体にコンジュゲートされうる検出可能部分を含むことができる。
【0124】
キットはまた、本発明の単離/精製方法および/または検出方法のために必要なバッファーおよび試薬も含むことができる。
【0125】
キットはまた、キットに含まれる核酸または核酸発現コンストラクトを、宿主細胞の中に導入するのに必要なバッファーおよび試薬も含むことができる。
【0126】
キットはまた、本明細書で記載される通りの少なくとも1つの(二次)特異的結合パートナーも、またはこの本明細書で記載される通りの(二次)特異的結合パートナーに特異的に結合する、(さらなる)特異的結合パートナーも含むことができる。
【0127】
キットはまた、固体支持体に固定化または付着した本発明の抗体を含む、固体支持体も含むことができる。キットはまた、本発明の抗体に結合した融合タンパク質の競合的溶出、またはプロテアーゼなど融合タンパク質の溶出のための他の手段に適した、本明細書で記載される通りの単離ペプチドも含むことができる。
【0128】
他に指定のない限り、一連の要素に先行する用語「少なくとも」は、その一連の要素それぞれに言及すると理解される。当業者は、日常的な実験方法のみ、つまり本明細書に記載される発明の具体的な態様と同等の多数の方法のみを使用することを認識するであろうし、または確認することができる。本発明はそのような同等方法を包含することが意図される。
【0129】
本明細書で使用される用語「および/または」には、いずれの箇所でも、「および」、「または」、および「前記用語が関係する要素の全てまたは他の任意の組み合わせ」の意味が含まれる。
【0130】
用語「約」または「およそ」は、本明細書では、所与の数値または範囲の20%以内、好ましくは10%以内、より好ましくは5%以内を意味する。これにはしかし、例えば約20には20が含まれるなど、明確な数字も含まれる。
【0131】
この明細書およびそれに続く特許請求の範囲を通じて、その内容が他に要求しない限り、用語「含む(comprise)」、ならびに「含む(comprises)」および「含んでいる(comprising)」などの変化形は、述べられた整数もしくは工程、または整数群もしくは工程群の包含を暗示するが、他のいかなる整数もしくは工程、または整数群もしくは工程群の排除も暗示しないことは理解されるであろう。本明細書で使用される場合、用語「含んでいる」は、用語「含有している(containing)」または「含まれている(including)」と、または時には、本明細書で使用される場合、用語「有している(having)」と、置き換えることができる。
【0132】
本明細書で使用される場合、「からなる(consisting of)」は、請求要素の中に明記されないいかなる要素、工程、または成分をも排除する。本明細書で使用される場合、「から本質的になる(consisting essentially of)」は、請求の基礎的な新規の特徴に実質的に影響を与えない物質または工程を排除しない。
【0133】
本明細書のどの場合も、用語「含んでいる」、「から本質的になる」および「からなる」のいずれかは、他の2つの用語のどちらかと置き換えることができる。
【0134】
本発明は、本明細書で記載される特定の方法論、手順、材料、試薬、および物質等に限定さられず、そうであるから変動することができると理解されるべきである。本明細書で使用される専門用語は、特定の態様のみを記述する目的のためであり、特許請求の範囲によって単独に定められる本発明の範囲を制限することを意図するものではない。
【0135】
本明細書の本文を通じて引用された(全ての特許、特許申請、科学的出版物、製造業者の仕様書、取扱説明書等を含めた)全ての出版物は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれている。本明細書のいかなる内容も、本発明がその開示を先願発明によって以前の日付にすることができないという承認として解釈されることはない。参照により組み込まれている資料がこの明細書と矛盾するまたは一致しない場合、本明細書がいかなるそのような資料よりも優先するであろう。
【実施例】
【0136】
実施例1:システム
新規のエピトープタグ/結合剤システムを求めて、本発明者らは、溶液中で安定したαヘリックスを形成し、集合的に「ALFA
STタグ」と呼ばれる、SEQ ID NO:05~07のペプチドをデザインした。これらのペプチドは、既知のカウンターパートをいかなる真核生物モデル系にももたず、生理的pHにおいてほとんど中性であり、一般的な固定剤にとって標的となり得るいかなる一級アミンも含有しない。コアALFAタグ配列(
図3A、青で書かれたアミノ酸)は、溶液中で安定したαヘリックスを形成すると報告されている人工ペプチドを含む(Petukhov,M.e t al. Design of stable alpha-helices using global sequence optimization. J.Pept.Sci.15,359-365(2009))。ペプチドを次の特徴に基づき選択した。配列が、i)既知のカウンターパートをいかなる真核生物モデル系にももたない、ii)生理的pHにおいて中性である、およびiii)一般的なアミン反応性固定剤および架橋剤にとって標的となり得るいかなる一級アミンも含有しない。
【0137】
ALFA
STに対する高親和性ナノボディをアルパカで産生し、抗原特異性濃縮B細胞を用いた新規のナノボディ選出方法「セルライン」によって選出した。選択的アフィニティー樹脂を作り出すために、最も好ましいナノボディ(NbALFA
ST、クローン1G5、SEQ IS NO:133)を、可動性リンカーを介して、低度の非特異性タンパク質結合を特徴とするアガロース系樹脂と部位特異的に共役させた。得られたALFA Selector
ST樹脂は、大腸菌抽出物からALFA
ST-shGFP2融合タンパク質をプルダウンするのに非常に効率的であった。しかし驚くべきことに、ALFA
STペプチド(SEQ ID NO:179に記載されるAc-PSRLEEELRRRLTEP-アミド)との競合による、天然条件下で結合したタンパク質を溶出する全ての取り組みは失敗した。90分の10カラム体積の200μMペプチドとの競合後でさえ、95%を超えるALFA
ST-shGFP2タンパク質が樹脂上に残った(
図1B、中央パネル、灰色線)。本発明者らは、この樹脂に結合したALFA
ST融合タンパク質のオフレートは、ペプチドによる効率的な競合を可能にするには低すぎると推測した。したがって本発明者らは、NbALFA
STに十分に強固に結合して標的タンパク質の効率的なプルダウンを可能にするが、他方でALFA
STペプチドを使用してナノボディから溶出できる、ALFA
ST変異体を特定するため、系統的で合理的な変異誘発を実施した。分析したペプチドを表2に示す。
【0138】
(表2)
n.d.:未決定
位置:N:N末端、M:2つの折りたたまれたドメイン間、C:C末端
【0139】
sdAb用に一般的に認められる概算オンレート2*105(1/(M*sec))に基づいた大まかな概算として、2分未満のt1/2は約30 nMを超えるKdに相当し、2~30分のt1/2は約2~30 nMのKdに相当し、20~100分のt1/2は約0.6~3 nMのKdに相当し、100分を超えるt1/2は約1 nM以下のKdに相当する。
【0140】
本発明者らは、あるALFA変異体(ALFA
PE(ペプチド溶出可能(Peptide Elutable)))(SEQ ID NO:33)が、これらの判断基準を満たすことを発見した。ALFA
PEが融合したタンパク質は、効率的にALFA Selector
STに結合した。結合は、厳しい洗浄工程(例えば最大3M NaCl、1M MgSO
4、4M尿素、1%TX-100まで、さらに100mM DTT、
図1C)に対しても抵抗性があった。しかし200μMのALFA
STペプチド(SEQ ID NO:179)との競合によって、天然条件下での効率的な溶出が、室温で15~20分以内に達成することができた(
図1B)。興味深いことに、両ALFAタグバリアント(ALFA
STおよびALFA
PE)は、NbALFA
STとの結合へのほんのわずかな影響しか伴わずに、標的タンパク質のいずれかの末端で、さらに2つのタンパク質ドメイン間でも、使用することができる(
図1B)。
【0141】
実施例2:ALFAタグ付き標的タンパク質のプルダウンのためのNbALFA
STの適用
ALFA Selector
STの特異性を特定するために、複合ライセートからのプルダウン実験を生理的条件下で実施した。この目的のために、先に大腸菌内で発現し、ニッケルキレートクロマトグラフィーに続いてサイズ排除クロマトグラフィーで精製したALFA
STまたはALFA
PEのいずれかでN末端にタグ付けした3μMのshGFP2を、PBS内で調製した大腸菌またはHeLaライセートにスパイク添加した(Frey,S. et al. Surface Properties Determining Passage Rates of Proteins through Nuclear Pores. Cell 174,202-217.e9(2018))。精製したインプットタンパク質を
図2Aに示す。全てのライセートから両融合タンパク質が効率的にALFA-Selector
STに結合した(
図2Bおよび
図2C)。先の実験(
図1)から予想された通り、ALFA
PEでタグ付けされたGFPは、200μMのALFA
STペプチドを使用した天然条件下で、20分以内に効率的に溶出することができた一方、ALFA
STタグ付き標的タンパク質は、効率的な溶出のためにより厳しい(変性させる)条件を必要とした。際立っていたのは、両ライセートからのプルダウンが非常に特異的であったことである。SDSバッファーでの溶出後でさえも、ライセートタンパク質起源の検出可能な不純物の数と強度は非常に少なかった。ALFA
PE-GFP融合タンパク質をALFA
STペプチドを使用して溶出する場合、基本的に、全ての検出可能なバンドは両ライセートから得られた溶出液画分内で同じであった。したがって、これらのバンドは、標的タンパク質自体によって作り出された人為的産物に起因する可能性がある(例えば成熟バンドまたはDTT抵抗性二量体)。興味深いことに、特にペプチド溶出後では、溶出液画分が含有していた混入タンパク質は、インプット材料として使用された基質(2つの連続したクロマトグラフィー工程を使用して精製されていた;
図2A)よりも顕著に少なかった。
【0142】
実施例3:ALFA
PEタグ付き標的タンパク質とALFA Selector
STとを使用した免疫共沈降
より慎重性を要する免疫共沈降実験にもALFAシステムを適用できるかを確認するため、2成分の大腸菌内膜タンパク質複合体YfgM-PpiD(Gotzke,H. et al. YfgM is an ancillary subunit of the SecYEG translocon in Escherichia coli. J Biol Chem 289,19089-19097(2014))を、天然条件下でプルダウンすることを試みた(
図2D)。この目的のために、野生型YfgMかYfgM-ALFA
PEかのいずれかを、yfgMΔ種で発現させた。ほぼ生理学的な発現レベルを確実にするため、両YfgMバリアントを、内在性プロモーターの制御下で低コピープラスミドから発現させた。インプットとして、マイルドな非イオン性界面活性剤DDMの存在下で調製したYfgM-ALFA
PE含有総ライセートを使用した場合、ALFA Selector
STは、特異的にかつ界面活性剤に抵抗性を示してYfgM-PpiD複合体をプルダウンすることができた。このことによって、ALFA
PEタグがこの不安定な膜複合体の形成に適合性があることが示された。重要なことは、天然の非変性膜タンパク質複合体を、200μMのALFA
STペプチドを使用して、生理的条件下で20分以内にALFA Selector
ST樹脂から回収できたことである。YfgMおよびその相互作用パートナーPpiDは、この複合体をタグなしYfgMを発現する対照ライセートから精製することができなかったことから、YfgMの(ペリプラズムの)C末端上に存在するALFA
PEタグを介してALFA Selector
STと特異的に会合していた。したがってALFA
PEタグはALFA Selector
ST樹脂と共に、様々な供給源からのタンパク質の精製に利用できるだけでなく、挑戦的である(膜)タンパク質複合体の天然条件プルダウンにも適する。
【0143】
実施例4:直接免疫蛍光法によるALFA
STタグ付きタンパク質の検出
まず最初に、蛍光標識したNbALFA
STが、PFA固定サンプル中のALFAタグ付きタンパク質の免疫検出に適用できるかどうかについて試験した。実際、2つのフルオロフォア(FluoTag-X2抗ALFA AbberiorStar635P)と共役したNbALFA
ST(SEQ ID NO:133)を利用して、特異的染色パターンを、標的タンパク質中のALFA
STタグまたはALFA
PEタグの局在位置とは無関係に、哺乳類細胞内で取得することができた。より具体的には、C末端に配置したALFAタグ付き標的タンパク質(Tom70-EGFP-ALFA
ST、
図3C;Tom70-EGFP-ALFA
PE、
図3C)、N末端に配置したALFAタグ付き標的タンパク質(ALFA
ST-FLAG-ビメンチン、
図3Dおよび
図4A;ALFA
PE-FLAG-ビメンチン、
図4A)、または折りたたみドメインと膜貫通ドメインとの間に配置したALFAタグ付き標的タンパク質(EGFP-ALFA
ST-TM、
図4B)を試験することに成功した。
【0144】
実施例5:ALFA
STタグ付きタンパク質は通常の折りたたみ、ターゲティング、および多量体形成状況を示す
重要なのは、試験した全ての標的タンパク質は、その特徴的な局在性を示し(Tom70-EGFP-ALFA:ミトコンドリア外膜、ALFA-ビメンチン:特徴的線維状構造体、EGFP-ALFA
ST-TM:原形質膜)、ALFAタグが、タグ付けされたタンパク質の通常の折りたたみや適切な標的志向化に干渉しなかったことを示したことである。さらにALFA
ST-ビメンチンおよびALFA
PE-ビメンチンの特徴的な中間径フィラメント構造への適切な組み入れ(
図3Dおよび
図4A)により、ALFAタグが適切なフィラメントアセンブリに干渉しないことが示唆される。
【0145】
ALFA
STタグが関心対象の融合タンパク質の細胞内局在性に影響を与えるかどうかをより細かく特定するため、哺乳類細胞の中に導入したN末端ALFA
STタグまたはC末端ALFA
STタグを有するサイトゾルEGFPの局在性を統計学的に分析した(
図5)。このアッセイにおいて、いずれかの末端でALFA
STでタグ付けされたEGFPの核原形質の分布は、タグのないEGFPと識別不能であった。重要なのは、分析されたALFA
ST融合タンパク質と、細胞区画(例えば膜や細胞小器官)との、いかなる非定型的会合の兆候も観察されなかったことである。さらに、組み換えALFA
STタグ付きEGFPバリアントのゲルろ過により、これが単量体状態であることが確認され、ALFA
STタグが多量体化を誘発しないことを示唆している。したがってALFA
STタグは、概して標的タンパク質の行動を障害しないと結論づけられる。しかし、(他の任意のタグについては、)所与の標的タンパク質に対する特異的影響について、タンパク質対タンパク質ベースで分析しなければならないことが留意される。
【0146】
実施例6:ALFAタグは、一般的な固定化条件に適合する
免疫蛍光(IF)用途には、しばしば固定化条件の最適化が必要とされる。特に、異なる固定化条件が要求されるタンパク質が同じ試料内で局在する必要がある場合に、固定化条件が複雑になる可能性がある。加えて、既成のエピトープタグはしばしば、アミン反応性固定剤による修飾に対してタグを潜在的に敏感させる、リジンを含有している(表1)。対照的に、ALFAタグはリジンを含まない。これらの考察と一致して、ALFA
STタグおよびALFA
PEタグは、4%のパラホルムアルデヒド(PFA)での標準的な固定化や100%メタノールでの沈殿性固定化の後に検出することができ、さらに2%のグルタルアルデヒドでの固定化に対しても抵抗性があった(
図3D)。したがって両ALFAタグは、最も標準的な固定化法に適合し、さらにナノスケールで構造を保持するその能力からグルタルアルデヒドが好まれる電子顕微鏡用途でも有用であることを立証することができた。
【0147】
実施例7:ALFA
STタグ付きタンパク質のインビボ検出
次に本発明者らは、NbALFA
STが細胞内抗体としても使用できるかどうか知ろうと臨んだ。標的細胞の細胞質(または他の区画)内でインサイチューで発現したナノボディは、標的タンパク質を生細胞内で局在させる、または操作するためにしばしば利用される(Caussinus,E.,Kanca,O.&Affolter,M. Fluorescent fusion protein knockout mediated by anti-GFP nanobody. Nat Struct Mol Biol 19,117-121(2012)、Kirchhofer,A. et al. Modulation of protein properties in living cells using nanobodies. Nat Struct Mol Biol 17,133-138(2010))。そのような用途は、真核宿主細胞の細胞質の還元性環境内にある所与のナノボディの安定性および機能性に依存する。そのような条件下で本発明者らのナノボディを試験するために、ALFA
STタグ付き標的タンパク質(ALFA
ST-ビメンチンまたはTom70-EGFP-ALFA
ST)を、mScarlet-Iが融合したNbALFA
STと同時発現させた(Bindels,D.S. et al. mScarlet:a bright monomeric red fluorescent protein for cellular imaging. Nat Methods 11,121-122(2016))。実際、両コンストラクトで同時導入した細胞内では、mScarlet-Iシグナルは、それぞれの対応するALFA
STタグ付き標的タンパク質と堅固に共局在した(
図3E)。
【0148】
実施例8:ウエスタンブロット法
ALFAタグがウエスタンブロット法で蛍光標識したNbALFA
STを使用して検出できるかどうか試験するため、ALFA
STタグ付きビメンチン(
図6Aおよび
図7A)またはALFA
PEタグ付きビメンチン(
図6A)を導入したCOS-7細胞からライセートを分析した。関係のないプラスミドを導入した細胞からのライセートを対照とした。SDS-PAGEおよびウエスタンブロットの後、IRDye800CWで標識したNbALFA
ST(FluoTag-X2抗ALFA IRDye800CW)を使用して、ALFAタグ付きビメンチンを特異的に検出することができた。ALFAタグ付きタンパク質のない対照ライセート内では、限られた数のみの、目立たない非特異性バンドしか検出できなかった(
図7A)。
【0149】
NbALFA
STの性能を、一般的に使用される、エピトープタグを認識するモノクローナルツールと直接比較するため、本発明者らは、複数のエピトープタグ(HA、myc、FLAG、およびALFA
ST、
図6B)が融合したマルトース結合タンパク質(MBP)を生成した。同一濃度の一次抗体(またはナノボディ)を用いた各エピトープタグの個別検出では、シグナル強度およびシグナル感度において顕著な相違を示した(
図6C、
図7B)。蛍光標識したNbALFA
STを採用したALFA
STタグが取得した検出シグナルは、他の全てのエピトープタグが取得したシグナルと比較して全体で3~10倍強かった。この結果は、モノクローナル抗体(抗FLAG M2、抗HA F-7、抗myc 9E10)を用いた検出がポリクローナル二次抗体の使用によるシグナル増幅を含む一方、ALFA
STタグはNbALFA
ST標識に排他的に直接的に依存することから、特に際立っている。検出条件をさらに最適化するまでもなく、NbALFA
STは、少なくとも3桁を超える幅の著しい直接的なシグナルをもたらし(
図6D)、100pgの低値まで標的タンパク質量を検出することができた。したがって検出限界は、他の全てのペプチドタグで観察されたものより約10倍低かった。
【0150】
実施例9:ALFA Selector樹脂を使用したALFA
STタグ付き標的タンパク質の捕獲
次に、本発明者らは、NbALFA
STを、親水性の可動性リンカーを介して、超低バックグラウンドでアガロース系樹脂上に部位特異的に固定化させた。ALFA
STタグ付きGFPバリアントを使用して、ナノボディ共役樹脂との結合を分析した(shGFP2、Frey,S. et al. Surface Properties Determining Passage Rates of Proteins through Nuclear Pores. Cell 174,202-217.e9(2018)、
図8A、B)。予想通り、shGFP2-ALFA
STは、生成された樹脂に効率的に堅固に結合した。しかし結合が強固すぎたため、著しく過剰な遊離ALFA
STペプチドを使用した場合でさえ、樹脂からの競合的ペプチド溶出はできなかった(
図8A、黒色実線)。60分の10カラム体積の200μMペプチドとの競合後でさえ、95%を超えるshGFP2-ALFA
STタンパク質が樹脂上に残った。したがって本発明者らは、NbALFA
STを負荷した樹脂を(超堅固(Super-Tight)にちなんで)「ALFA Selector
ST」を呼んだ。NbALFA
ST-ALFA
ST複合体構造に基づき、遊離ALFA
STペプチドの非存在下で、ALFA
STタグ付きタンパク質と安定して会合すると同時に、効果的なペプチド溶出を可能にするであろう弱型NbALFA
ST変異体を特定するため、本発明者らは、合理的な変異誘発性のアプローチを追及した。本発明者らは、これらの判断基準:shGFP2-ALFA
STに堅固に結合する固定化NbALFA
PEを有するアガロース系樹脂(ALFA Selector
PE)、を満たすNbALFA変異体NbALFA
PE(ペプチド溶出(Peptide Elution))を発見した。1時間を超える洗浄に対してさえ、標的タンパク質は樹脂に安定して結合したままであった。しかしこの標的タンパク質は、天然条件下で遊離ALFA
STペプチドとの競合によって、室温で約15~20分(t
1/2 約3分)以内で効率的に放出された(
図8Bおよび
図10A、黒色実線)。同様の溶出動態はALFA
STタグが2つの折りたたまれたドメイン間に配置された場合に見られたが(
図10B)、一方でN末端のALFA
STタグ付きshGFP2の方は、若干速くALFA Selector
PEから溶出した(t
1/2約50秒、
図10C)。注目すべきことに、競合するペプチドの非存在下では、ALFA Selector
STとALFA Selector
PEとの両方からの全標的タンパク質の自発的溶出はわずかであった(
図8Bおよび
図10、灰色点線)。
【0151】
実施例10:ALFAタグ付きタンパク質とALFA Selectorとの相互作用は、ストリンジェントな洗浄と適合する。
本発明者らは、両ALFA Selector樹脂の生化学的特徴をさらに分析することにした。この目的のために、両樹脂にALFA
ST-shGFP2かshGFP2-ALFA
STかのいずれかを負荷し、ストリンジェントな洗浄工程に供した(
図8D)。樹脂と基質の全ての組み合わせについて、その相互作用は、最大3M NaCl、1M MgSO
4、2M塩酸グアニジニウム、またはTX-100、DDM、もしくはデオキシコール酸ナトリウムのような1%非変性界面活性剤を含めた厳しい洗浄工程に対してさえ抵抗性があった。室温での100mM DTTとのインキュベーション後でさえも、解離は観察されなかった。変性条件下で若干の相違が、異なる樹脂/基質の組み合わせの間で観察された。4Mまたは6Mの尿素での洗浄に対して、ALFA Selector
PEからのALFA
ST-shGFP2の部分的放出が、さらに少ない程度のshGFP2-ALFA
STの放出が観察された。一方で、両標的タンパク質は同じ条件下でALFA Selector
STに堅固に結合したままであった。驚くべき相違が0.1%SDSとのインキュベーション後に観察された。ALFA Selector
PEに付着させたALFA
ST-shGFP2が、樹脂に結合したまま部分的に蛍光を喪失した。この作用は、他の樹脂と基質とのいかなる組み合わせにも観察されなかった。
【0152】
実施例11:pH抵抗性
同様のアッセイにおいて、付加されたALFA Selector樹脂を、異なるpHに調整したバッファーで洗浄した(
図8E)。相互作用はpH7.5から9.5で抵抗性を示し、pH4.5で若干の影響を受けた。しかし中和後であっても、両ALFA Selector樹脂は100mMグリシン、pH2.2で洗浄後は完全に無蛍光のままであった。対照的に、溶出物質は、中性pHでその蛍光を順調に回復し(図示なし)、グリシンpH2.2での酸性溶出は、堅固に結合するALFA Selector
STからでさえも可能であることを示している。
【0153】
実施例12:親和性評価
shGFP2-ALFA
STの、NbALFA
STとNbALFA
PEとの両方に対する親和性を、溶液中でマイクロスケール熱泳動(MST)によって決定した。この技術により、NbALFA
PEが約15nMの解離定数を有し、一方でNbALFA
STは、機器よりも低い検出限界である約10pMのK
dでもshGFP2-ALFA
STに結合するというエビデンスが提供された。これらの数値は、約2x10
5/M*secのオンレートを想定した場合、ペプチド溶出中に観察された解離動態(
図8B)と十分に一致し、これはナノボディと標的との相互作用に一般的に観察される。
【0154】
実施例13:複合ライセートからのALFA
STタグ付き標的タンパク質のプルダウン
本発明者らのALFA Selector樹脂の特異性を特定するため、生理学的条件下で複合ライセートからのプルダウン実験を実施した(
図9A~C)。この目的のために、PBSで調製した大腸菌またはHeLaライセートに、精製した3μMの組み換えALFA
ST-shGFP2をスパイク添加した(
図9A)。融合タンパク質は両ALFA Selectorに特異的に結合したが、共役ナノボディのない対照樹脂(「Selector対照」)には結合しなかった。先の実験から予想された通り、ALFA
ST-shGFP2は、天然条件下で200μMのALFA
STペプチドを使用して、ALFA Selector
PEから効率的に溶出した。対照的に、ALFA Selector
STからの順調な溶出は、SDSサンプルバッファーを用いた処理後のみに観察された。際立ったのは、大腸菌ライセートとHeLaライセートとの両方からのプルダウンが高度に特異的だったことである(
図9BおよびC)。ALFA Selector
PEからのペプチド溶出後は、全ての可視バンドは基本的にインプットタンパク質に起因する可能性があり、SDS溶出液においてさえも、ライセートタンパク質起源の検出可能な不純物の数および強度は、非常に低い。実際、単一工程でのALFA Selector
PEからペプチド溶出によって得られたALFA
ST-shGFP2が含有した混入物は、インプットライセートにスパイク添加するために使用したタンパク質よりも顕著に少なかった(
図9A)。この観察結果は、インプットタンパク質は2つの連続するクロマトグラフィー工程を利用して精製されていたことから、特に際立っている。
【0155】
実施例14:ALFA Selector
PE樹脂を使用した免疫共沈降
ALFAシステムがより慎重性を要する免疫共沈降実験にも適用できるかどうかを確認するため、2成分の大腸菌内膜タンパク質複合体YfgM-PpiD(Gotzke,H. et al. YfgM is an ancillary subunit of the SecYEG translocon in Escherichia coli. J Biol Chem 289,19089-19097(2014))を、天然条件下でプルダウンすることを試みた(
図9D)。この目的のために、野生型YfgMかYfgM-ALFA
STかのいずれかをyfgMΔ種で発現させた。ほぼ生理学的な発現レベルを確実にするため、両YfgMバリアントを、内在性プロモーターの制御下で低コピープラスミドから発現させた。インプットとしてのマイルドな非イオン性界面活性剤DDMの存在下で調製したYfgM-ALFA
ST含有総ライセートを使用した場合、ALFA Selector
PEでは、特異的にかつ界面活性剤に抵抗性を示してYfgM-PpiD複合体をプルダウンすることができた。このことによって、ALFA
STタグがこの不安定な膜複合体の形成に適合することが示された。重要なのは、天然の非変性膜タンパク質複合体を、200μMのALFA
STペプチドを使用して、生理的条件下で20分以内にALFA Selector
PE樹脂から回収できたことである。YfgMおよびその相互作用パートナーPpiDは、タグなしYfgMを発現する対照ライセートからこの複合体を精製することができないことから、YfgMの(ペリプラズムの)C末端上に存在するALFA
STタグを介して、ALFA Selector
PEと特異的に会合していた。したがってALFA
STタグはALFA Selector
PE樹脂と共に、様々な供給源からのタンパク質の精製に利用できるだけでなく、挑戦的である(膜)タンパク質複合体の天然条件プルダウンにも適する。
【0156】
実施例15:生存リンパ球単離
想定したALFA Selector
PEの用途は、生理的条件下での細胞の特異的濃縮である。これは、例えば、通常その前駆体が血液から得られる、キメラ抗原受容体改変T(CAR-T)細胞の産生において特に興味深いと言える(Tokarew,N. et al. Teaching an old dog new tricks:next-generation CAR T cells. Br.J.Cancer(2018). doi:10.1038/s41416-018-0325-1)。ALFAシステムが濃縮生存血液細胞に適用できるかどうかを調査するため、ヒト末梢血単核球(PBMC)を、ナイーブT細胞に通常存在する表面マーカーCD62Lを認識するALFAタグ付きナノボディを前もって負荷したALFA Selector
PEカラムを通過させた(Lefrancois,L. Development,trafficking,and function of memory T-cell subsets. Immunological Reviews(2006). doi:10.1111/j.0105-2896.2006.00393.x)(
図12a)。洗浄後、結合した細胞を、ALFA
STペプチドを使用して溶出し、CD62L、汎T細胞マーカーCD3、および汎B細胞マーカーCD19を認識する抗体で染色し、FACSで分析した(
図12)。総PBMCを対照とした。この方法を利用して、CD62L+リンパ球は71.8%から97.7%に濃縮された(
図12b)。さらに、ALFAペプチドによって溶出した大多数の細胞はCD3陽性T細胞であった一方、B細胞は単離された細胞のうちの少数の集団であったことが確認された(
図12c)。
【0157】
考察
本発明者らは、ALFAシステムの開発と初期評価を報告した。このシステムは、それぞれが並外れて高い親和性または適度な親和性を有する、ALFASTタグ、新規の高度に万能なエピトープタグ、その変異バリアント(ALFAPEタグ)、およびALFASTタグを認識する一連の関連単一ドメイン抗体(ナノボディ)を含む。重要なのは、選択した合理的アプローチによって、汎用化に決定的な機能をALFAシステムに装備させることができたことである。ALFAタグ配列を選択する場合、タグは、小型で、リジンをもたず、いかなる正味電荷も流さない親水性であり、関連するモデル生物のプロテオーム内に存在せず、しかし溶液中で安定した折りたたみ型を取るであろうことが好まれた。結果として、ALFAタグが、高特異性であり、アミン反応性固定剤に対し非感受性であり、一般にタグ付き標的タンパク質に良好に許容され、変性後は容易に再折りたたみするものがデザインされることが好ましい。
【0158】
従来の抗体とは対照的に、遺伝学的手段によって容易に改変でき、様々な発現システムで組み換えで生成することができる、小型で一価の頑強なプローブであることから、ナノボディが結合剤として好まれた。ついては、ナノボディを部位特異的に固定化すること、または定量的に蛍光標識を導入することが可能である(Pleiner,T. et al. Nanobodies:site-specific labeling for super-resolution imaging,rapid epitope-mapping and native protein complex isolation. Elife 4,(2015))。ALFASTタグを認識する、本発明者らの好ましい高特異性ナノボディNbALFASTは、したがって例えば直接的免疫蛍光法などに容易に利用することができる。ナノボディが小型サイズ(直径約3~4nm)であること、および付着色素の数と位置が明確であることにより、蛍光標識したNbALFASTは高解像または定量的なイメージングに理想的なツールである。本発明者らは、NbALFASTが、哺乳類細胞内で発現した様々なALFASTタグ付き標的タンパク質と忠実に相互作用することを示すことができた。重要なのは、NbALFASTは、真核細胞の細胞質内で折りたたむこともでき、したがってALFAタグ付き標的タンパク質をインビボで検出または操作するための「細胞内抗体」として使用できることである(Rothbauer,U. et al. Targeting and tracing antigens in live cells with fluorescent nanobodies. Nat Methods 3,887-889(2006)、Kirchhofer,A. et al. Modulation of protein properties in living cells using nanobodies. Nat Struct Mol Biol 17,133-138(2010)、Roder,R. et al. Intracellular Delivery of Nanobodies for Imaging of Target Proteins in Live Cells. Pharm.Res.(2016). doi:10.1007/s11095-016-2052-8)。この知見は、NbALFASTが、室温で少なくとも100mMのDTTに対して抵抗性があることを示す本発明者らの生化学的エビデンスと一致し、全てのナノボディに共通する保存的内部ジスルフィド架橋は、ALFASTタグとの忠実な相互作用にはほとんど必要でないことを示唆する。細胞内抗体用途については、CMVまたはPGKプロモーター制御下での、蛍光レポーターが融合したNbALFASTと、標的タンパク質との両方の発現は、低バックグラウンドで良好な結果をもたらしたことを発見した。低量のALFASTタグ付き標的タンパク質の最適な結果または検出については、より複雑な相対的発現レベルのタイトレーションが必要な可能性がある。
【0159】
一般に、ほとんどのナノボディはその標的タンパク質の表面上の三次元エピトープを認識し、よって変性タンパク質は認識しない(例えばウエスタンブロット法で)。NbALFASTはウエスタンブロット用途で高感度標的タンパク質検出にも利用できることから、本発明者らは、NbALFASTがこの定義から除外されることを示すことができた。この事実は、ALFASTタグおよびALFAPEタグが、膜への導入後およびSDSの除去後、効率的に再折りたたみができることを示唆する。直接比較によって、NbALFASTが、その一価の結合様式にもかかわらず、絶対シグナル強度および検出限界に関して既成のモノクローナル抗エピトープタグツールより顕著に優れていることが示された。高感度を要求するELISAまたはマイクロアレイアッセイのような他の用途においても、同様の利点が予想される。そのアミン反応性固定剤に対する抵抗性により、将来、ALFAシステムを免疫電子顕微鏡用途に適用させることも可能であろうと考えられる。
【0160】
NbALFASTのALFASTタグに対する親和性は並外れて高い。これは高プロファイルイメージング用途および高感度検出には理想的であるが、生理的条件下での合理的な時間枠内での溶出を妨げ、よって生化学的用途を制限する。したがって本発明者らは、基質に対するナノボディの親和性を、ナノボディの特異性に影響を与えることなく、低下させることを目指した。2つの別々の方法でこれに取り組んだ。1)幅広い種類のALFAペプチドを、結合力の低さで選別した。このアプローチによって、NbALFASTに効率的に結合するが、遊離ALFASTペプチドを用いた競合によって効率的に溶出できる、ALFAPEタグに辿り着いた。2)ALFASTペプチドと複合体を形成するNbALFASTの結晶構造に基づき、生理的条件下で効率的なペプチド溶出が可能なレベルにまでオフレートを上首尾に増加させたNbALFASTの特異的変異を導入した。低バックグラウンド結合でアガロース樹脂に固定化した場合、変異ナノボディ(NbALFAPE)は、生理的条件下で様々なライセートからのタンパク質およびタンパク質複合体の天然精製に理想的に適していることを証明した。高親和性野生型ナノボディ(NbALFAST)を示すALFA SelectorSTは、最大6Mの尿素または最大0.1%のSDSでの厳しい洗浄を必要とする特殊な用途で、または極度に低量のタンパク質を希釈ライセートから取り出す必要がある場合に利点があるだろう。しかし、ALFA SelectorSTからの溶出は、一般に天然の標的タンパク質高次構造とは適合しない、強度な変性下または酸性下の溶出(例えば1%SDSまたはグリシンpH2.2)も必要とされる。
【0161】
ALFASTペプチドに結合したNbALFASTの構造は、NbALFASTがαヘリカル高次構造の中のALFASTペプチドを認識することを示す。隣接する二次構造による、ALFASTタグ高次構造への潜在的な影響を最小化するために、コアALFAST配列(SRLEEELRRRLTE、SEQ ID NO:04)を、「絶縁体」として働く2つのプロリンの間に配置した。このアプローチを利用することにより、NbALFASTとALFASTタグとの相互作用はタンパク質内のタグの局在位置から大きく独立する。すなわち、NbALFASTとNbALFAPEとの両方とも、標的タンパク質のN末端とC末端との両方、またはさらに2つのタンパク質ドメインの範囲内に配置されたALFASTタグを認識するであろう。
【0162】
総合的に考えると、本発明者らは、並外れて広範囲な用途での新規エピトープタグシステムを本明細書で紹介した。ALFAシステムを利用することで、(超分解能)イメージング、タンパク質のインビボ操作、ウエスタンブロット法によるインビトロ検出、または特異的相互作用パートナーの検出を目的とする天然条件プルダウンも含めた異なる豊富な用途に、ALFA
STタグ付き標的タンパク質を有する遺伝子導入細胞株または生物は、1つで十分である。ALFA Selector
PEは、さらにPBMC調製物からのCD62L陽性リンパ球の選択的濃縮にも適用することができた(
図12)。本発明者らは、この技術は、細胞単離アプローチおよび同様の目的に現在利用されている高度に検証された組み換えFab断片およびscFv断片(Mohr,F. et al. Minimally manipulated murine regulatory T cells purified by reversible Fab Multimers are potent suppressors for adoptive T-cell therapy. Eur.J.Immunol.(2017). doi:10.1002/eji.201747137)、ならびにALFAタグに容易に装備することができ、表面マーカーを認識する新規ナノボディに容易に導入することができると考える。したがって本発明者らの新規技術は、CAR-T技術を含めた、生物医学研究および治療における現代の進歩に貢献できる(Tokarew,N. et al. Teaching an old dog new tricks:next-generation CAR T cells. Br.J.Cancer(2018). doi:10.1038/s41416-018-0325-1)。本発明者らは、ALFAシステムは、その広範囲な用途により、科学界を大きく刺激するであろう重要な貢献を果たすと強く信じる。
【0163】
材料および方法
3T3細胞およびCOS-7細胞のトランスフェクション
免疫蛍光実験については、PolyJetトランスフェクションキット(SignaGen社)を製造業者の推奨に従って使用して、表3に列挙された適切なプラスミドを3T3細胞またはCOS-7細胞に一過性に導入した。手短に言えば、各実験用に細胞を12ウェルプレートに播種した。体積はウェルのサイズに従って調整した。1μgの各プラスミドを38μlの無血清培地と先に混合し、続いて38μlの無血清培地で希釈したPolyJetトランスフェクション試薬を追加した。この懸濁液を室温で15分間インキュベートした後、細胞に滴下した。細胞を、5%CO2、37℃で、24時間インキュベートした。共発現実験については、プラスミドDNAを1:1の割合で先に混合した上で、上記の通りに処理した。
【0164】
COS-7細胞の固定および染色
一過性に遺伝子導入した細胞を、トランスフェクション後24時間、4%のパラホルムアルデヒド(PFA)(w/v)または2%のグルタルアルデヒド(GA)(v/v)のいずれかで室温で30分間、固定した。あるいは氷冷メタノール中で-20℃で15分間、固定化を実施した。細胞を、10%のヤギ正常血清(v/v)および0.1%のTriton-X 10(v/v)を含有するPBSで15分間、ブロッキングおよび透過処理した。蛍光標識したNbALFAST(FluoTag-X2抗ALFA AbberiorStar635P、NanoTag Biotechnologies社 N1502-Ab635P-L)を、3%のヤギ正常血清(v/v)および0.1%のTriton-X 100(v/v)を含有するPBSで1:500に希釈した。細胞をこの染色溶液中で1時間、室温でインキュベートし、続いてPBSで5分間の洗浄を3回行った。核を染色するために、このPBS洗浄工程のうちの1回に、DAPI(0.4μg/ml)を含めた。カバーガラスをMOWIOL溶液を使用してカバースライドの上に載せ、これを37℃で乾燥させ、20xレンズを備える落射蛍光顕微鏡(Axio、Zeiss社)を使用して画像化した。3%ヤギ正常血清および0.1%Triton-X 100(v/v)を含有するPBSでそれぞれ1:1000と1:500で希釈した抗FLAG M2(一次抗体、Sigma社 F1804)とFluoTag-X2抗マウスIgG Atto488(二次ナノボディ、NanoTag,社 N1202-At488-L)とを用いて、細胞表面で発現したコンストラクトを共染色した。
【0165】
EGFPの局在性に対するALFAタグの影響
一過性に遺伝子導入した3T3細胞を、40x 1.3オイルレンズを備える落射蛍光顕微鏡(Axio、Zeiss社)を使用して画像化した。pCMV ALFAST-EGFP、pCMV EGFP-ALFAST、またはpEGFP-N1のいずれかを導入した細胞については、107~133の細胞を全部で6つから7つの個別画像に画像化した。各個別画像について、細胞をEGFPの局在位置に従ってグループ分けし(「若干の核寄り」、「均一」、「その他」)、カウントした。各グループの細胞の画分を、スチューデントt検定を使用して、統計学的に分析した。
【0166】
COS-7ライセートでのウエスタンブロット
コンフルエントな10 cmペトリ皿からの遺伝子導入細胞をPBSで洗浄し、2 mLのSDSサンプルバッファーに溶解した。このライセートを、SDS-PAGEにより分離し、ニトロセルロースメンブレンに移した。5%ミルクパウダーのTBS-T溶液でのブロッキング後、メンブレンをマウス抗チューブリン(SYSY社#302 211、希釈1:1000)、続いてFluoTag-X2抗マウスIgG IRDye680(NanoTag Biotechnologies社#N1202、希釈1:1000)およびFluoTag-X2抗ALFA IRDye800(NanoTag Biotechnologies社 #1502、希釈1:1000)とインキュベートした。このメンブレンをOdyssey CLx(Li-COR)を使用してスキャンした。
【0167】
感度アッセイ
FLAGタグ、HAタグ、mycタグ、およびALFASTタグが融合したMBPの段階希釈を、PBS pH7.4、0.1μg/mL BSAで行った。各希釈物1μlを、ニトロセルロースメンブレンにスポットした。
【0168】
このメンブレンを5%ミルクパウダーのTBS-T溶液でブロッキングし、洗浄した。既成のモノクローナル抗体(抗FLAG M2-Sigma #F1804、抗myc 9E10-SynapticSystems #343 011、抗HA F-7-SantaCruz #sc-7392)を、二次ヤギ抗マウスIgG IRDye800CW(Li-COR #925-32210、希釈1:500)と組み合わせて使用して、FLAGタグ、mycタグ、およびHAタグをそれぞれ検出した。ALFASTタグは、FluoTag-X2抗ALFA(NanoTag Biotechnologies社 #N1502)と直接共役したIRDye800CWを利用して検出した。全ての一次抗体およびナノボディは、最終濃度2.7nMで使用した。MBP(SynapticSystems)を認識するウサギポリクローナル血清および抗ウサギIgG IRDye680RD(Li-COR #925-68071)によるMBPの検出を、内部ローディング対照とした。このメンブレンをOdyssey CLx(Li-COR)を使用してスキャンした。ImageStudioLight(Li-COR社)を使用して、定量化を実施した。
【0169】
オフレートアッセイ
20μlのALFA SelectorSTまたはALFA SelectorPE(NanoTag Biotechnologies社)を、それぞれの組み換え標的タンパク質で飽和させた。PBSで4回洗浄した後、このビーズを200μMのALFAST遊離ペプチドを含有する10倍超のPBS中に懸濁し、25℃で混合した。対照反応はペプチドなしで実施した。図に示された時点で、上清内に放射されたGFP蛍光を利用して、ビーズからの特異的溶出を定量化した(Q-Bit 3.0、Thermo-Fischer Scientific社)。独立した3つの実験を並行して実施した。平均値、標準偏差、および指数関数当てはめをGraphPad Prism 5.0を使用して算出した。写真を105mmマイクロレンズ(Nikon社)を備えるNikon D700を使用して紫外線照明で撮影した。
【0170】
ストリンジェントな洗浄およびpHに対する抵抗性
実験手順に基づき、図に示されたALFAタグ付きshGFP2融合タンパク質で飽和させた10~15μlのALFA SelectorSTまたはALFA SelectorPEを、PBSで洗浄し、図に示された基質100μlと室温で60分間、インキュベートした。ビーズの沈降後、紫外線照明で写真を撮影した。pH抵抗性試験をするために、同ビーズを、様々なpHで(100mM Glycin-HCl pH2.2、100mM Na-Acetate pH4.5、100mM Tris-HCl pH 7.5、100mM Carbonate pH9.5)、緩衝処理をした150mMのNaClとRTで30分間、インキュベートした。樹脂は同じバッファーで2回洗浄した。PBSで何度か平衡化した後、写真を撮影した。
【0171】
ALFA Selector樹脂を使用したワンステップアフィニティー精製
大腸菌ライセートまたはHeLaライセートからのプルダウン実験用の規定インプット材料を得るために、それぞれのモックライセートと、図に示された3μMのALFAタグ付きshGFP2バリアントとを混合した。1mLの各ライセート/基質混合物を、25μlのALFA-SelectorSTまたはALFA SelectorPEと4℃で1時間、インキュベートした。実験設定により、固定化されたsdAbのない類似樹脂(Selector対照)か、標的タンパク質のないモックライセートかのいずれかを、特異性対照とした。600μLのPBSでの3回の洗浄後、樹脂をMiniSpinカラム(NanoTag Biotechnologies社)に移した。過剰バッファーを遠心分離によって除去し(3000x g、30sek)、各回50μlの200μM ALFASTペプチドのPBS溶液と2回、室温で10分間、インキュベートした。その後ビーズに残っているタンパク質をSDSサンプルバッファーで溶出した。0.5μL(大腸菌)または1.5μL(HeLa)のインプット画分および非結合画分を、SDS-PAGE(12%)およびクーマシー染色法で分析した。図に示されている溶出液画分は、対応する樹脂から溶出した物質1μlに相当する。
【0172】
ALFA SelectorPEを使用したYfgMプルダウン
yfgM欠失株を、内在性プロモーターの制御下でpSC系低コピーベクターから発現したC末端ALFASTタグ付きYfgMまたはタグなしYfgMのいずれかで補完した。両膜タンパク質複合体を、1%のDDMを使用したバッファーLS(50mM Tris pH7.5、300mM NaCl、5mM MgCl2)で調製した総ライセートから、氷上で1時間以内で可溶化した(Maddalo,G. et al. Systematic analysis of native membrane protein complexes in Escherichia coli. J Proteome Res 10,1848-1859(2011))。両ライセートを、20μlのALFA SelectorPE樹脂とローラードラムで4℃で1時間、インキュベートした。PBS+0.3% DDMで洗浄後、結合したタンパク質を、200μMのALFASTペプチドを含有する50μl PBSと2回、天然条件下で経時的にインキュベートすることにより溶出した。1/800のインプット材料および非結合材料、または1/80の溶出液画分に相応するサンプルを、SDS PAGEにより分離した。YfgM-PpiD複合体に対して産生されたウサギポリクローナル抗血清(Gotzke,H. et al. YfgM is an ancillary subunit of the SecYEG translocon in Escherichia coli. J Biol Chem 289,19089-19097(2014))、続いてHRPが共役したヤギ抗ウサギIgG(Dianova社)を使用して、ウエスタンブロット法により分析を実施した。Western Lightning Plus-ECL Kit(Perkin Elmer社)を使用してブロットを展開し、LAS 4000 mini luminescence imager(Fuji Film社)を使用して画像化した。
【0173】
ALFA SelectorSTを使用したYfgMプルダウン
yfgM欠失株を、内在性プロモーターの制御下でpSC系低コピーベクターから発現したC末端ALFAPEタグ付きYfgMまたはタグなしYfgMのいずれかで補完した。両膜タンパク質複合体を、1%のDDMを使用したバッファーLS(50mM Tris pH7.5、300mM NaCl、5mM MgCl2)で調製した総ライセートから、氷上で1時間以内で可溶化した(Maddalo,G. et al. Systematic analysis of native membrane protein complexes in Escherichia coli. J Proteome Res 10,1848-1859(2011))。両ライセートを、20μlのALFA SelectorST樹脂とローラードラムで4℃で1時間、インキュベートした。PBS+0.3% DDMで洗浄後、結合したタンパク質を、200μMのALFASTペプチドを含有する50μl PBSと2回、天然条件下で経時的にインキュベートすることにより溶出した。1/800のインプット材料および非結合材料、または1/80の溶出液画分に相応するサンプルを、SDS PAGEにより分離した。YfgM-PpiD複合体に対して産生されたウサギポリクローナル抗血清(Gotzke,H. et al. YfgM is an ancillary subunit of the SecYEG translocon in Escherichia coli. J Biol Chem 289,19089-19097(2014))、続いてHRPが共役したヤギ抗ウサギIgG(Dianova社)を使用して、ウエスタンブロット法により分析を実施した。Western Lightning Plus-ECL Kit(Perkin Elmer社)を使用してブロットを展開し、LAS 4000 mini luminescence imager(Fuji Film社)を使用して画像化した。
【0174】
(表3)プラスミド
(a)Gotzke,H. et al. YfgM is an ancillary subunit of the SecYEG translocon in Escherichia coli. J Biol Chem 289,19089-19097(2014)
【0175】
大腸菌株
大腸菌MC4100 ΔyfgM ΔppiD(Gotzke,H. et al. YfgM is an ancillary subunit of the SecYEG translocon in Escherichia coli. J Biol Chem 289,19089-19097(2014))
【0176】
(表4)抗体
(a)Gotzke,H. et al. YfgM is an ancillary subunit of the SecYEG translocon in Escherichia coli. J Biol Chem 289,19089-19097(2014)
【0177】
【0178】
タンパク質発現および精製
全ての組み換えタンパク質を、Tacプロモーターの制御下で、カナマイシンに対する抵抗性をもたらすColE1由来発現ベクターから発現させた。
【0179】
複数のエピトープタグ、すなわちALFAST-shGFP2、ALFAPE-shGFP2、およびTwinStrepTag-bdNEDD8-ALFAminを有するMBP融合タンパク質をN末端His14-bdSUMO融合物として発現させた。タンパク質発現については、大腸菌を0.3mMのIPTGを追加したTerrific broth(TB)内で23℃で14~16時間、培養した。収集後、この大腸菌を15 mMのイミダゾール/HCl、pH 7.5と10 mMのDTTとを追加したLSバッファー(50 mM Tris/HCl pH 7.5、300 mM NaCl)に溶解し、ニッケル(II)キレートビーズに結合させることによって精製した。広範囲に洗浄した後、タンパク質を先に記載した通りbdSENP1を用いたオンカラム切断によって溶出した(Frey,S.&Gorlich,D. A new set of highly efficient,tag-cleaving proteases for purifying recombinant proteins. J Chromatogr A 1337,95-105(2014)、Frey,S.&Gorlich,D. Purification of protein complexes of defined subunit stoichiometry using a set of orthogonal,tag-cleaving proteases. J Chromatogr A 1337,106-115(2014))。
【0180】
ALFAST-shGFP2-His6、ALFAPE-shGFP2-His6、His14-bdSUMO-ALFAST-shsfGFP、およびHis14-bdSUMO-ALFAPE-shsfGFPを同様の様式で発現させ、精製した。しかし溶出は、250mMイミダゾールのバッファーLS溶液を使用して実施した。
【0181】
複合ライセートからの親和性判定および結合調査のために、基質タンパク質をさらにSuperdex200 10/30 column(GE Healthcare社)でサイズ排除クロマトグラフィーにより精製した。
【0182】
B細胞「セルライン」のアフィニティー精製による特異的sdAbクローン選出
1mLのT-Catch樹脂(IBA Lifesciences社)をB細胞単離バッファー(PBS pH7.4、1%BSA、1mM EDTA)で洗浄し、飽和量のTwinStrepTag-bdNEDD8-ALFAmin融合タンパク質と30分間、RTで回転させながらインキュベートした。この樹脂をB細胞単離バッファーで十分に洗浄することにより、余剰ベイトタンパク質を除去した。ALFAペプチド融合物で免疫化したアルパカから100mLの血液サンプルを取得し、凝固を防止するため即座に5000 IU/mLのヘパリン(Sigma社)とインキュベートした。新鮮血(採取後4時間未満)から、Ficoll-Paque PLUS(GE Healthcare社)を使用してPBMCを単離した。残留血清を除去するため、PBMCをB細胞単離バッファーで3回、継続的に洗浄した。負荷されたT-Catch樹脂上にPBMCを3回通過させ、この樹脂を10カラム体積のB細胞単離バッファーで洗浄した。結合したB細胞を、2μMのNEDP1とRTで30分間インキュベートすることによって樹脂から溶出した(Frey,S.&Gorlich,D. A new set of highly efficient,tag-cleaving proteases for purifying recombinant proteins. J Chromatogr A 1337,95-105(2014)、Frey,S.&Gorlich,D. Purification of protein complexes of defined subunit stoichiometry using a set of orthogonal,tag-cleaving proteases. J Chromatogr A 1337,106-115(2014))。溶出したB細胞からsdAb特異的cDNAライブラリーを多段階ネステッドRT-PCRにより増幅させ、細菌発現ベクターにクローニングした。96個の単一クローンを、ALFA反応性sdAbの発現についてELISAで検査した。
【0183】
ヒトPBMCの調製
新鮮血から、ヒト末梢血単核球(PBMC)を標準密度勾配遠心分離を利用して取得した。短時間のうちに新鮮血60 mLを1 mMのEDTAを追加したリン酸緩衝食塩水(PBS)40 mLで希釈し、この希釈物を50 mL LEUCOSEPチューブ(Greiner Bio-One)内のCELLPURE Roti-Sep 1077(Carl Roth社)層の上部に配置し、室温で800 x gで20分間、遠心分離した。続いてPBMC含有層を採取し、低温のPBS+EDTAで5回洗浄して血小板を除去した。
【0184】
CD62L陽性リンパ球の単離
約2 x 107のPBMCに、ALFAタグ付き抗ヒトCD62Lナノボディを付加したALFA SelectorPE樹脂内を重力流で通過させ、続いて1 mMのEDTA 1と1%(w/v)のウシ血清アルブミンを追加したPBSで広範囲にわたって洗浄した。続いて、結合した細胞を、200μMのALFAペプチドを含有する同じバッファーで溶出した。
【0185】
本明細書で例示的に記載される本発明は、本明細書で明示的に開示されていない、いかなる1つまたは複数の要素、1つまたは複数の制限のない場合でも、適切に実行することができる。加えて、本明細書で採用された用語および表現は、限定のためではなく説明のための用語として使用されており、そのような用語および表現の使用において、図示および説明された特徴またはその部分に相当するいかなるものも除外する意図はなく、しかし様々な修正は、特許請求される発明の範囲内で可能であることは、認識されるものとする。したがって本発明は、例示的態様および選択的特徴によって明示的に開示されてきたが、本明細書で開示され例示された本発明の修正および改変は、当業者により行うことができ、そのような修正および改変は本発明の範囲内であると考えられることは、理解されるべきである。
【0186】
本明細書において本発明を広範的かつ概括的に記載した。上位開示内に入る狭義種および準上位分類それぞれも、本発明の一部を構成する。これには、除外される内容が本明細書で明示的に記載されているかどうかに関わらず、任意の発明主題をその上位記載から除く条件または否定的限定を伴った発明の上位説明が含まれる。
【0187】
他の態様は、以下の特許請求の範囲内にある。加えて、本発明の特徴または局面がマーカッシュ群の見地から記載されている箇所では、当業者は、本発明がマーカッシュ群の各要素または要素の亜群のいずれかの見地からも記載されていることを認識するであろう。
【配列表】