IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社コスメックの特許一覧

<>
  • 特許-クランプユニット 図1
  • 特許-クランプユニット 図2
  • 特許-クランプユニット 図3
  • 特許-クランプユニット 図4
  • 特許-クランプユニット 図5
  • 特許-クランプユニット 図6
  • 特許-クランプユニット 図7
  • 特許-クランプユニット 図8
  • 特許-クランプユニット 図9
  • 特許-クランプユニット 図10
  • 特許-クランプユニット 図11
  • 特許-クランプユニット 図12
  • 特許-クランプユニット 図13
  • 特許-クランプユニット 図14
  • 特許-クランプユニット 図15
  • 特許-クランプユニット 図16
  • 特許-クランプユニット 図17
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-20
(45)【発行日】2025-01-28
(54)【発明の名称】クランプユニット
(51)【国際特許分類】
   B23Q 3/06 20060101AFI20250121BHJP
   B23Q 7/00 20060101ALI20250121BHJP
   F15B 1/02 20060101ALI20250121BHJP
【FI】
B23Q3/06 302B
B23Q3/06 304B
B23Q7/00 J
F15B1/02 Z
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2023178453
(22)【出願日】2023-10-16
【審査請求日】2024-09-18
(73)【特許権者】
【識別番号】391003989
【氏名又は名称】株式会社コスメック
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】吉村 画
【審査官】山本 忠博
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-059108(JP,A)
【文献】特開平08-323570(JP,A)
【文献】特開昭56-108360(JP,A)
【文献】特開平3-186462(JP,A)
【文献】特開2002-103262(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23Q 3/00-3/154,3/16-3/18,
7/00-7/18;
B25B 1/00-1/24,5/00-5/16;
F15B 1/00-7/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワーク(W)を固定するクランプ装置(3,3A)と、
前記クランプ装置(3,3A)を動作させる作動流体(23)を該クランプ装置(3,3A)に対して給排する流体給排装置(4,4A)と、
前記クランプ装置(3,3A)と前記流体給排装置(4,4A)とに連通し、前記作動流体(23)を通す流体通路(21)と、
前記流体通路(21)に接続される蓄圧装置(70,70A)であって、前記流体給排装置(4,4A)から前記クランプ装置(3,3A)へ供給される昇圧された前記作動流体(23)である圧力流体(23A)の一部を貯蔵する蓄圧室(72)を含み、前記流体通路(21)内の前記圧力流体(23A)の圧力低下に応じて、前記蓄圧室(72)に貯蔵した前記圧力流体(23A)を前記流体通路(21)へ排出する蓄圧装置(70,70A)と、
軌道に沿って移動可能に構成された搬送部材(2)と、
を備え
前記搬送部材(2)に、前記クランプ装置(3,3A)、前記流体給排装置(4,4A)及び前記蓄圧装置(70,70A)が搭載される、クランプユニット(1,1A,1B)。
【請求項2】
前記蓄圧装置(70,70A)は、
前記蓄圧室(72)が内部に形成されるハウジング(71)と、
前記ハウジング(71)内に軸方向へ移動可能に挿入され、前記軸方向の一方側に前記蓄圧室(72)が配置されるピストン部材(73)と、
前記蓄圧室(72)側へ向けて前記ピストン部材(73)を付勢する付勢部材(74,74A)と、
を含む、請求項のクランプユニット(1,1A,1B)。
【請求項3】
前記蓄圧装置(70,70A)は、前記ピストン部材(73)の前記軸方向の他方側に該軸方向に突出して設けられるロッド部材(77)をさらに含み、
前記ロッド部材(77)の先端部(77B)は、前記ピストン部材(73)の前記他方側への移動に伴い、前記ハウジング(71)の前記他方側に形成された貫通孔(71C)を通って該ハウジング(71)の外部へ突出する、請求項のクランプユニット(1,1A,1B)。
【請求項4】
前記流体通路(21)に配置され、前記流体給排装置(4,4A)から供給される前記圧力流体(23A)を減圧して前記クランプ装置(3,3A)に供給する減圧装置(80)をさらに備える、請求項のクランプユニット(1A,1B)。
【請求項5】
前記搬送部材(2)は、厚さ方向に対向する第1面(2A)及び第2面(2B)を含み、
前記流体給排装置(4,4A)は、前記第1面(2A)に搭載され、
前記蓄圧装置(70,70A)は、前記第2面(2B)に搭載され、
前記流体給排装置(4,4A)と前記蓄圧装置(70,70A)とは、前記搬送部材(2)を挟んで互いに対向して搭載される、請求項のクランプユニット(1,1A,1B)。
【請求項6】
前記クランプ装置(3,3A)は、複数の旋回式クランプを含む、請求項のクランプユニット(1,1A,1B)。
【請求項7】
前記流体給排装置(4)は、前記クランプ装置(3)がロック状態からリリース状態にリリース駆動する時に前記圧力流体(23A)を前記クランプ装置(3)に供給する、請求項のクランプユニット(1,1A)。
【請求項8】
前記流体給排装置(4A)は、前記クランプ装置(3A)がリリース状態からロック状態にロック駆動する時に前記圧力流体(23A)を前記クランプ装置(3A)に供給する、請求項のクランプユニット(1B)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クランプ装置と該クランプ装置に対して作動流体を給排する流体給排装置とを含むクランプユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ワークを固定するために、作動室に供給及び排出される作動流体によってロック状態またはリリース状態が切り換えられるクランプ装置が知られている(特許文献1)。この種のクランプ装置は、該クランプ装置に対して作動流体の供給及び排出を行う流体給排装置とともに、軌道に沿って移動可能に構成された搬送部材に搭載されてクランプユニットとして使用され得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2018/186136号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のクランプユニットは、例えば作動流体の漏れ等によって作動流体の圧力低下が生じた場合、クランプ装置が正常に動作しない可能性があった。
【0005】
本発明の一態様は、作動流体の圧力低下による動作不良を緩和できるクランプユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記の目的を達成するため、本発明は、例えば、図3図5図7図8図9図11図13図16及び図17に示すように、クランプユニットを次のように構成した。
クランプユニット1,1A,1Bは、ワークWを固定するクランプ装置3,3Aと、クランプ装置3,3Aを動作させる作動流体23を該クランプ装置3,3Aに対して給排する流体給排装置4,4Aと、クランプ装置3,3Aと流体給排装置4,4Aとに連通し、作動流体23を通す流体通路21と、流体通路21に接続される蓄圧装置70,70Aと、を備える。蓄圧装置70,70Aは、流体給排装置4,4Aからクランプ装置3,3Aへ供給される昇圧された作動流体23である圧力流体23Aの一部を貯蔵する蓄圧室72を含み、流体通路21内の圧力流体23Aの圧力低下に応じて、蓄圧室72に貯蔵した圧力流体23Aを流体通路21へ排出する。
【0007】
従って、本発明の一態様は次の作用効果を奏する。
流体給排装置からクランプ装置へ供給される圧力流体の一部が蓄圧装置の蓄圧室に貯蔵される。そして、流体通路内の圧力流体の圧力低下が生じた場合、該圧力低下に応じて蓄圧室に貯蔵した圧力流体が流体通路へ排出される。従って、圧力流体の圧力低下を緩和して流体圧を維持することができる。
【0008】
本発明は、下記(1)から(8)の構成を加えることが好ましい。
(1)例えば、図3図5図7図9図11図13図16及び図17に示すように、クランプユニット1,1A,1Bは、軌道に沿って移動可能に構成された搬送部材2をさらに備える。搬送部材2に、クランプ装置3,3A、流体給排装置4,4A及び蓄圧装置70,70Aが搭載される。
この場合、クランプユニット単位で移動可能になっているため、クランプユニットを軌道上の所望の位置に移動させてワークを固定することができる。
【0009】
(2)例えば、図4及び図8に示すように、蓄圧装置70,70Aは、蓄圧室72が内部に形成されるハウジング71と、ハウジング71内に軸方向へ移動可能に挿入され、軸方向の一方側に蓄圧室72が配置されるピストン部材73と、蓄圧室72側へ向けてピストン部材73を付勢する付勢部材74,74Aと、を含む。
この場合、流体通路内の圧力流体の圧力低下に応じて、付勢部材の付勢力によってピストン部材が蓄圧室を圧縮する。これにより、蓄圧室に貯蔵された圧力流体が流体通路へ排出されるため、圧力流体の圧力低下を緩和することができる。
【0010】
(3)例えば、図4図7図8図12図17に示すように、蓄圧装置70,70Aは、ピストン部材73の軸方向の他方側に該軸方向に突出して設けられるロッド部材77をさらに含む。ロッド部材77の先端部77Bは、ピストン部材73の他方側への移動に伴い、ハウジング71の他方側に形成された貫通孔71Cを通って該ハウジング71の外部へ突出する。
この場合、圧力流体が蓄圧室に貯蔵されていると、ロッド部材の先端部がハウジングの外部へ突出した状態となる。このため、先端部の突出状態に基づいて、ピストン部材が正常に移動しているか否かを目視で確認することができる。従って、蓄圧装置の不具合を発見することが容易になる。
【0011】
(4)例えば、図9図11図13図16及び図17に示すように、クランプユニット1A,1Bは、流体通路21に配置され、流体給排装置4,4Aから供給される圧力流体23Aを減圧してクランプ装置3,3Aに供給する減圧装置80をさらに備える。
この場合、減圧装置に対してクランプ装置側(二次側)の圧力を一定に保ち、クランプ装置の破損及び圧力流体の漏れを低減することができる。
【0012】
(5)例えば、図3図5図7図9図11図13図16及び図17に示すように、搬送部材2は、厚さ方向に対向する第1面2A及び第2面2Bを含み、流体給排装置4,4Aは、第1面2Aに搭載され、蓄圧装置70,70Aは、第2面2Bに搭載される。流体給排装置4,4Aと蓄圧装置70,70Aとは、搬送部材2を挟んで互いに対向して搭載される。
この場合、流体給排装置と蓄圧装置とが搬送部材の表裏面に互いに対向するように搭載される。従って、搬送部材の表裏面の搭載スペースを有効活用して、クランプユニットを小型化することができる。
【0013】
(6)例えば、図2に示すように、クランプ装置3,3Aは、複数の旋回式クランプを含む。
この場合、流体給排装置から給排される圧力流体の流体圧により複数の旋回式クランプが動作してワークをロックまたはリリースすることができる。
【0014】
(7)例えば、図5図7図11及び図12に示すように、流体給排装置4は、クランプ装置3がロック状態からリリース状態にリリース駆動する時に圧力流体23Aをクランプ装置3に供給する。
この場合、流体給排装置から供給される圧力流体によりクランプ装置がロック状態からリリース状態にリリース駆動することができる。
【0015】
(8)例えば、図16及び図17に示すように、流体給排装置4Aは、クランプ装置3Aがリリース状態からロック状態にロック駆動する時に圧力流体23Aをクランプ装置3Aに供給する。
この場合、流体給排装置から供給される圧力流体によりクランプ装置がリリース状態からロック状態にロック駆動することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の一態様によれば、作動流体の圧力低下による動作不良を緩和できるクランプユニットを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】第1実施形態に係る油圧クランプユニットの平面図である。
図2】前記油圧クランプユニットが備える一対の旋回式クランプの側面図である。
図3】前記油圧クランプユニットの要部を示す断面図である。
図4】前記クランプユニットが備える蓄圧装置を示す拡大断面図である。
図5】前記油圧クランプユニットの動作を示す断面図である。
図6】前記圧油給排装置の動作を示す断面図である。
図7】前記蓄圧装置に圧油が供給された状態を示す断面図である。
図8図4に示した蓄圧装置の変形例を示す断面図である。
図9】第2実施形態に係るクランプユニットの要部を示す図断面図である。
図10】前記クランプユニットが備える減圧装置を示す拡大断面図である。
図11】前記油圧クランプユニットの動作を示す断面図である。
図12】前記蓄圧装置に圧油が供給された状態を示す断面図である。
図13】第3実施形態に係る油圧クランプユニットの要部を示す断面図である。
図14】前記油圧クランプユニットが備える旋回式クランプを示す拡大断面図である。
図15】前記油圧クランプユニットが備える圧油給排装置を示す拡大断面図である。
図16】前記圧油給排装置の動作を示す断面図である。
図17】前記蓄圧装置に圧油が供給された状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
〔第1実施形態〕
以下、本発明の一実施形態について説明する。なお、以下の説明は本発明に係るクランプユニットの一例であり、本発明の技術的範囲は図示例に限定されるものではない。
【0019】
(油圧クランプユニット1の構成)
図1は第1実施形態に係る油圧クランプユニット1(クランプユニット)の平面図である。図2は油圧クランプユニット1が備える一対の旋回式クランプ3の側面図である。
【0020】
油圧クランプユニット1は、軌道に沿って移動可能に構成された搬送部材2と、搬送部材2上に設けられた圧油給排装置4(流体給排装置)と、圧油給排装置4から作動油(作動流体)が供給されるとともに、圧油給排装置4に作動油を排出するように搬送部材2上に設けられた一対の旋回式クランプ(クランプ装置)3と、を備える。また、油圧クランプユニット1は、例えば作動油の漏れ等によって圧力低下(油圧低下)が生じた場合、作動油の油圧を維持するための蓄圧装置70を備える(図1参照)。
【0021】
搬送部材2は、板状であり、厚さ方向に対向する第1面(表面)2A及び第2面(裏面)2Bを含む。一対の旋回式クランプ3は、ワークWを上から押えて搬送部材2の表面2A上に固定するために設けられる。一対の旋回式クランプ3の間に、ワークWを下から支持するための支持装置22が設けられる。
【0022】
油圧クランプユニット1は、例えば、加工機の中で作業員が旋回式クランプ3を動作させてワークWを搬送部材2上に固定し、加工機の扉を閉じて作業員が離れた状態でワークWを加工機により加工する。その後、再び扉を開けて作業員が旋回式クランプ3を動作させてワークWを搬送部材2から解放するように使用される。
【0023】
また、油圧クランプユニット1は、例えば、加工機の外で作業員が旋回式クランプ3を動作させてワークWを搬送部材2上に固定した後、異なる場所に設置された加工機の中まで油圧クランプユニット1が搬送されてもよい。そして、ワークWを加工機により加工し、加工機から油圧クランプユニット1が戻ってきたら、作業員がワークWを搬送部材2から解放するように使用されてもよい。
【0024】
なお、油圧クランプユニット1が備える旋回式クランプ3の数は特に限定されず、固定するワークWの形状、寸法、重量等に応じて適宜変更可能である。図示例のように、油圧クランプユニット1が複数の旋回式クランプ3を含むことにより、1つの圧油給排装置4から給排される作動油の油圧により複数の旋回式クランプ3が動作してワークWをロックまたはリリースすることができる。
【0025】
例えば、油圧クランプユニット1が3つ以上の旋回式クランプ3を備える場合、旋回式クランプ3は、搬送部材2の厚さ方向から視た平面視で、支持装置22を中心とした円の円周方向に沿って等間隔に並ぶように搬送部材2上に搭載されていてもよい。これにより、搬送部材2上にワークWをより確実に固定して、加工機によるワークWの加工精度を高めることができる。
【0026】
図3は油圧クランプユニット1の要部を示す断面図である。なお、図3は旋回式クランプ3がワークWを固定したロック状態を示している。
【0027】
圧油給排装置4は、筒形状のハウジング10内に軸方向へ移動可能に挿入されるピストン5と、ピストン5に軸方向に形成される収容孔11に設けられる雌ネジ部材6と、雌ネジ部材6と螺合する雄ネジ部材7と、雄ネジ部材7の雄ネジ形成端の反対端に軸方向に摺動可能に嵌合し、且つ、その軸心回り方向への回転力を雄ネジ部材7に伝達可能に嵌合するキャップ部材8と、ピストン5のキャップ部材8側に形成されるとともに、ピストン5の移動により作動油23が供給及び排出される作動室9と、キャップ部材8を軸方向に押圧する押圧機構とを備える。この押圧機構は、ピストン5の移動により作動室9に供給及び排出される作動油23を含む。
【0028】
キャップ部材8は、雄ネジ部材7と嵌合する嵌合穴13と、嵌合穴13の内壁に軸方向に延伸するガイド溝14とを有する。雄ネジ部材7は、ガイド溝14と係合するピン部材12を有する。
【0029】
キャップ部材8は、雄ネジ部材7と反対側の先端に、軸心回り方向への回転力を受け取るための操作部15を有する。
【0030】
この操作部15は、軸方向へ突出した多角形の凸部を有する。操作部15は陥没した多角形の凹部を有してもよい。本実施形態では、図1に示すように操作部15が六角形の凸部を有する例を図示している。
【0031】
ハウジング10は、作動油(作動流体)23の油圧(流体圧)に押されてキャップ部材8が脱落することを防ぐための受け部20を有する。キャップ部材8は、受け部20と係合可能な止め部16を有する。
【0032】
キャップ部材8は、作動油23の油圧の減少に応じてピストン5側に摺動するように構成される。
【0033】
キャップ部材8は、嵌合穴13の内壁に配置された止め輪30を有する。ハウジング10は、作動室9のキャップ部材8側の内壁に配置された止め輪31を有する。ピストン5は、その収容孔11の内壁に軸方向に形成されたガイド溝32を有する。雌ネジ部材6は、ガイド溝32と対向して軸方向に形成されたガイド溝33と、ガイド溝32と対向してガイド溝33に設けられるピン34とを有する。ピストン5は、その外周壁に軸方向に形成されたガイド溝36と、雄ネジ部材7が挿入可能に形成されたガイド穴38とを有する。ハウジング10は、ガイド溝36に対向して配置されたピン37を有する。ピストン5の下側には、リング状のゴムまたは樹脂で構成されたリング部材39が設けられる。
【0034】
作動室9のキャップ部材8側に受け止め部材56が、軸心回りに回転可能となるように雄ネジ部材7に装着される。この受け止め部材56が、作動室9の内周壁に配置された止め輪31によって抜け止めされている。この受け止め部材56の外周壁に摺動溝58が周方向に形成され、受け止め部材56の内周壁に摺動溝57が周方向に形成される。摺動溝58に複数のボール部材59が装着され、摺動溝57に複数のボール部材60が装着される。外周壁側のボール部材59は、受け止め部材56の外周壁の摺動溝58と作動室9の内周壁との間で転動可能となっている。内周壁側のボール部材60は、受け止め部材56の内周壁に形成される摺動溝57と、雄ネジ部材7の外周壁にキャップ部材8側に向けて広がるようにテーパ状に形成される係合部との間で転動可能となっている。
【0035】
旋回式クランプ3と圧油給排装置4とは、作動油23を通す流体通路21によって互いに連通している。圧油給排装置4から排出された作動油23は、流体通路21を通って旋回式クランプ3に供給される。また、旋回式クランプ3から排出された作動油23は、流体通路21を通って圧油給排装置4に供給される。流体通路21は、少なくとも一部が搬送部材2の内部に設けられていてもよい。
【0036】
図4図3に示した蓄圧装置70を示す拡大断面図である。蓄圧装置70は、流体通路21に接続されたアキュムレータである。蓄圧装置70は、作動油23を貯蔵する蓄圧室72が内部に形成されるハウジング71と、ハウジング71内に軸方向(図中、左右方向)へ移動可能に挿入される蓄圧ピストン(ピストン部材)73と、この蓄圧室72側へ向けて蓄圧ピストン73を付勢する弾性部材である圧縮バネ(付勢部材)74と、を含む。
【0037】
ハウジング71は、その内部に、第1収容孔71Aと、第1収容孔71Aよりも大径の第2収容孔71Bとを含む。第1収容孔71Aには、蓄圧ピストン73が軸方向へ移動可能に保密状に嵌入される。この蓄圧ピストン73の軸方向の左側(一方側)に、蓄圧室72が配置される。
【0038】
蓄圧室72は、ハウジング71に設けられた給排路75を介して、流体通路21と連通している。この給排路75を通って、流体通路21内の作動油23が蓄圧室72に供給されるとともに、蓄圧室72に貯蔵された作動油23が流体通路21に排出される。また、蓄圧ピストン73の外周壁に対向する第1収容孔71Aの内周壁には、その周方向に封止部材76が設けられる。封止部材76は、蓄圧ピストン73の外周壁に保密状に係合可能になっている。
【0039】
また、蓄圧装置70は、蓄圧ピストン73の軸方向の右側(他方側)に該軸方向に突出して設けられるインジケータロッド(ロッド部材)77をさらに含む。インジケータロッド77は、第2収容孔71Bに収容される。インジケータロッド77の外周壁と第2収容孔71Bの内周壁との間には、圧縮バネ74を収容するバネ室78になっている。このバネ室78には、インジケータロッド77を蓄圧室72側へ付勢する圧縮バネ74が、インジケータロッド77の外周壁の周囲に配置される。インジケータロッド77は、蓄圧ピストン73に接続される端部側にフランジを有し、該フランジが圧縮バネ74を受けるバネ受け77Aとして機能する。
【0040】
後述するように、インジケータロッド77のバネ受け77Aとは反対側の先端部77Bは、蓄圧ピストン73の右側への移動に伴い、ハウジング71に形成された貫通孔71Cを通って該ハウジング71の外部へ突出するようになっている(図7参照)。このため、蓄圧室72に作動油23が貯蔵されている場合、インジケータロッド77の先端部77Bがハウジング71の外部へ突出した状態となる。これにより、先端部77Bの突出状態に基づいて、蓄圧ピストン73が正常に移動しているか否かを目視で確認することができ、蓄圧装置70の不具合を発見することが容易になる。
【0041】
圧油給排装置4は、搬送部材2の第1面2Aに搭載されている。また、蓄圧装置70は、蓄圧ピストン73の軸方向が搬送部材2と平行になるように、搬送部材2の第2面2Bに搭載されている。
【0042】
圧油給排装置4と蓄圧装置70とは、搬送部材2を挟んで互いに対向して搭載されてもよい。換言すれば、圧油給排装置4と蓄圧装置70とは、搬送部材2の厚さ方向から視た平面視で、少なくとも一部分が互いに重なり合うように、搬送部材2の表裏面に分かれて搭載されてもよい。これにより、圧油給排装置4と蓄圧装置70とが搬送部材2の表裏面に互いに対向するように搭載されるため、搬送部材2の搭載スペースを有効活用して、油圧クランプユニット1を小型化することができる。
【0043】
(油圧クランプユニット1の動作)
次に、油圧クランプユニット1の動作例を説明する。図5は油圧クランプユニット1の動作を示す断面図である。図6は圧油給排装置4の動作を示す断面図である。なお、図5は旋回式クランプ3がワークWを解放したリリース状態を示している。前述した構成要素と同様の構成要素には同様の参照符号を付し、これらの構成要素の詳細な説明は繰り返さない。
【0044】
圧油給排装置4は、旋回式クランプ3が図3に示すロック状態から図5に示すリリース状態にリリース駆動する時に作動油23を旋回式クランプ3に供給する。
【0045】
まず、図3に示すように、旋回式クランプ3がロック状態にあるとき、圧油給排装置4のピストン5はキャップ部材8から離れた下方の位置に存在している。キャップ部材8は、作動室9内の作動油23により押圧されて、止め部16がハウジング10の受け部20と係合する位置まで上昇している。
【0046】
そして、図6に示すように、キャップ部材8に回転力を伝達するための回転力伝達工具25の先端に形成された凹部が、キャップ部材8の操作部15に嵌合する過程において、回転力伝達工具25が水平方向にずれて回転力伝達工具25の先端が操作部15に接触して操作部15を押圧した場合、操作部15を押圧されたキャップ部材8は、作動室9内の作動油23の油圧に抗して下方向に摺動する。
【0047】
このため、回転力伝達工具25が水平方向にずれて回転力伝達工具25の先端が操作部15に接触した場合であっても、キャップ部材8及びこれに関連する部材の破損等の不具合を回避することができる。
【0048】
また、作動室9内の作動油23により押圧されて、止め部16がハウジング10の受け部20と係合する位置まで上昇しているキャップ部材8は、雄ネジ部材7と軸方向に摺動可能に嵌合しているので、作動油23の油圧が減少すると下降する。
【0049】
従って、作動油23の油圧が減少する不具合が発生したときには、通常は上昇しているはずのキャップ部材8が下降しているので、圧油給排装置4の不具合を発見することが容易になる。
【0050】
次に、図5に示すように、回転力伝達工具25の先端に形成された凹部がキャップ部材8の操作部15に嵌合すると、キャップ部材8は、作動油23の油圧により、キャップ部材8の止め部16がハウジング10の受け部20に係合するまで軸方向に摺動する。
【0051】
その後、回転力伝達工具25が作業者またはロボットの操作によって軸心回りの第1方向に回転すると、操作部15が回転力伝達工具25の凹部に嵌合したキャップ部材8は、該回転力を雄ネジ部材7に伝達する。該回転力によって雄ネジ部材7が回転すると、雄ネジ部材7に螺合する雌ネジ部材6が設けられたピストン5が図5に示すようにキャップ部材8に近づくように軸方向上側へ移動する。
【0052】
このため、作動室9内で作動油23が昇圧され、昇圧された作動油23である圧油(圧力流体)23Aが流体通路21を通って旋回式クランプ3に供給される。作動油23Aが供給された旋回式クランプ3は、図3に示すロック状態(クランプ状態)から図5に示すリリース状態(アンクランプ状態)にリリース駆動される。
【0053】
旋回式クランプ3の作動室40に圧油給排装置4の作動室9から流体通路21を通って圧油23Aが供給されていくと、作動室40に供給された圧油23Aに基づく押圧力がロックバネ41の付勢力(押圧力)に抗してピストン42を出力ロッド44側へ移動させるように作用する。すると、ピストン42が圧縮バネ43を介して出力ロッド44をピストン42と反対側の上方へ真っ直ぐに移動させていく。次いで、出力ロッド44の段差部44aがスラストベアリング45に上方から受け止められると、ピストン42が圧縮バネ43を押し縮めていく。すると、ピストン42の操作溝46が伝動ボール47を介して出力ロッド44の旋回溝48を上方へ押圧していき、ピストン42に対して出力ロッド44が平面視で反時計回りの方向へ90度だけ回転される。
【0054】
引き続いて、ピストン42の収容孔49の底壁が出力ロッド44の下端部に上方から受け止められる。これにより、旋回式クランプ3が図3のロック状態から図5のリリース状態に切り換わる。
【0055】
次いで、図5に示すリリース状態において、圧油給排装置4のキャップ部材8を回転力伝達工具25が軸心回りの第1方向にさらに回転させる。すると、ピストン5が移動して圧油23Aがさらに昇圧される。これにより、圧油給排装置4の作動室9内の圧油23Aが、流体通路21を通って蓄圧装置70の蓄圧室72に供給されていく。
【0056】
図7は、蓄圧装置70に圧油23Aが供給された状態を示す断面図である。なお、図7は、旋回式クランプ3がワークWを解放したリリース状態を示している。図7に示すように、蓄圧室72に供給された圧油23Aの油圧に応じた押圧力が、圧縮バネ74の付勢力に抗して蓄圧ピストン73を軸方向右側へ移動させる。蓄圧ピストン73の右側への移動この移動に伴って、インジケータロッド77の先端部77Bがハウジング71の外部へ突出した状態となる。これにより、先端部77Bの突出状態に基づいて、蓄圧室72に圧油23Aが供給されていることを目視で確認することができる。
【0057】
蓄圧装置70の圧縮バネ74の付勢力は、旋回式クランプ3のロックバネ41の付勢力に比べて大きくなるように設定される。つまり、各バネの付勢力(押圧力)の大小関係は、圧縮バネ74>ロックバネ41になっている。このため、油圧クランプユニット1の流体通路21を通る圧油23Aの油圧が上昇していく際、まず旋回式クランプ3のロックバネ41が押し縮められて、旋回式クランプ3がリリース状態に切り換わる。その後、蓄圧装置70の圧縮バネ74が押し縮められて、蓄圧室72に圧油23Aが貯蔵される。
【0058】
例えば圧油23Aの漏れ等によって流体通路21内の圧油23Aの圧力低下が生じた場合、蓄圧装置70は、圧縮バネ74の付勢力によって蓄圧ピストン73が蓄圧室72を圧縮する。このため、圧油23Aの圧力低下に応じて蓄圧室72に貯蔵した圧油23Aが流体通路21へ排出される。このため、圧油23Aの圧力低下を緩和することができる。
【0059】
一方、図7に示すリリース状態において、回転力伝達工具25が軸心回りの第1方向とは逆の第2方向に回転すると、ピストン5はキャップ部材8から離れるように軸方向下側へ移動する。すると、圧油23Aが減圧し、まず蓄圧装置70の蓄圧室72に貯蔵された圧油23Aが圧縮バネ74の付勢力によって流体通路21に排出され、次に旋回式クランプ3内の圧油23Aが流体通路21を通って圧油給排装置4の作動室9内に排出される。これにより、油圧クランプユニット1は、図7に示すリリース状態から図3に示すロック状態にロック駆動される。
【0060】
(油圧クランプユニット1のまとめ)
このように、本実施形態に係るクランプユニット1は、ワークWを固定する旋回式クランプ3と、旋回式クランプ3を動作させる作動油23を該旋回式クランプ3に対して給排する圧油給排装置4と、旋回式クランプ3と圧油給排装置4とに連通し、作動油23Aを通す流体通路21と、流体通路21に接続される蓄圧装置70と、を備える。蓄圧装置70は、圧油給排装置4から旋回式クランプ3へ供給される昇圧された作動油23である圧油23Aの一部を貯蔵する蓄圧室72を含み、流体通路21内の圧油23Aの圧力低下に応じて、蓄圧室72に貯蔵した圧油23Aを作動油21へ排出する。
【0061】
油圧クランプユニット1では、圧油給排装置4から旋回式クランプ3へ供給される圧油23Aの一部が蓄圧装置70の蓄圧室72に貯蔵される。そして、流体通路21内の圧油23Aの圧力低下が生じた場合、圧力低下に応じて蓄圧室72に貯蔵した圧油23Aが流体通路21へ排出される。従って、油圧クランプユニット1によれば、圧油23Aの圧力低下を緩和することができる。
【0062】
(変形例)
図8図4に示した蓄圧装置70の変形例である蓄圧装置70Aを示す断面図である。図8に示すように、蓄圧装置70Aは、蓄圧ピストン73を付勢する付勢部材として、圧縮バネ74に代えて流体バネ74Aを備える。流体バネ74Aは、例えば空気または窒素等の気体(流体)Gが流体室78Aに封入されたものである。蓄圧装置70Aでは、流体室78Aに封入された気体Gの圧力によって、蓄圧室72側へ向けて蓄圧ピストン73が付勢される。このように、圧縮バネ74に代えて流体バネ74Aを用いてもよい。また、圧縮バネ74とともに、流体バネ74Aを用いてもよい。
【0063】
〔第2実施形態〕
本発明の他の実施形態について、以下に説明する。前述した構成要素と同様の構成要素には同様の参照符号を付し、これらの構成要素の詳細な説明は繰り返さない。
【0064】
(油圧クランプユニット1Aの構成)
図9は第2実施形態に係る油圧クランプユニット1Aの要部を示す断面図である。図10は油圧クランプユニット1Aが備える減圧装置80を示す拡大断面図である。なお、図9は旋回式クランプ3がワークWを固定したロック状態を示している。
【0065】
図9に示すように、油圧クランプユニット1Aは、前述した油圧クランプユニット1と異なり、流体通路21に配置された減圧装置80を備えている。このため、油圧クランプユニット1Aは、減圧装置80に対して旋回式クランプ3側(二次側)の圧力を一定に保ち、旋回式クランプ3の破損及び圧油23Aの漏れを低減し得る。
【0066】
図10に示すように、減圧装置80は、搬送部材2の第2面2Bに搭載される。減圧装置80は、弁ケース81の上部に作動油23の入口孔82及び出口孔83が設けられる。入口孔82には、圧油給排装置4と連通する流体通路21が接続される。また、出口孔83には、旋回式クランプ3と連通する流体通路21が接続される。弁ケース81の内部に、入口室84と減圧弁座85と出口室86とが、弁ケース81の右端壁81A側から左端壁81B側へ直列状に形成される。入口孔82は、入口室84と減圧弁座85と出口室86とを通るように形成された流路87を経由して出口孔83に連通される。
【0067】
弁ケース81の右端壁81A側に収容孔88が形成され、この収容孔88に減圧部材89が左右方向へ進退可能に挿入される。右端壁81Aと減圧部材89との間に装着された閉弁バネ90が、減圧部材89を左方へ付勢する。収容孔88内の減圧部材89の右側に形成される孔室91が、減圧部材89の内部に貫設された左右方向(軸方向)に延びる通路89Aによって出口室86に連通されている。減圧弁座85の中央に開口部85Aが形成され、この開口部85Aを介して入口室84と出口室86とが連通される。
【0068】
出口室86に形成されたピストン孔92は、大径孔94と小径孔93とを有する。このピストン孔92に受圧ピストン95が左右方向へ進退可能に挿入される。この受圧ピストン95は、小径孔93に封止部材98を介して保密状に挿入される小径部分96と、大径孔94に嵌合される大径部分97とを有する。大径孔94と小径部分96との間に、流体室99が形成される。この流体室99と出口室86とは、並列に配置された第1通路100及び第2通路101によって連通される。
【0069】
本実施形態では、第1通路100は、受圧ピストン95の内部に設けられる。第1通路100にポペット式の逆止弁102が設けられ、この逆止弁102の弁室103が左右に延在するように形成されている。弁室103の左端壁に弁座104が設けられ、この弁座104にボール105がバネ106によって付勢される。弁座104の中央に入口路107が連通され、この入口路107が流体室99に連通される。また、弁室103は、出口路108を介して出口室86に連通される。第1通路100は、入口路107と弁室103と出口路108とからなる。
【0070】
第2通路101は、大径孔94と大径部分97との間の嵌合隙間によって形成され、この嵌合隙間の全体によって絞り部109が構成されている。大径部分97から右方へ操作ロッド110が突設される。この操作ロッド110は、前記開口部85Aを通って減圧部材89に当接する。
【0071】
なお、絞り部109は、嵌合隙間の全体によって構成されるのに代えて、この嵌合隙間の一部に形成されるようにしてもよい。
【0072】
弁ケース81の左端壁81Bと受圧ピストン95との間には、受圧ピストン95を右方へ付勢する圧力設定バネ111が、バネ受け112A,112Bを介して装着される。この圧力設定バネ111は、大径バネ111Aと小径バネ111Bとを有する。
【0073】
図9に示すロック状態では、減圧装置80の出口室86の油圧による押圧力が、圧力設定バネ111の付勢力よりも小さくなっている。このため、圧力設定バネ111が受圧ピストン95を右側に進出させるとともに、受圧ピストン95が操作ロッド110を介して減圧部材89を減圧弁座85から離間させている。このため、減圧装置80は、開弁した状態となっている。
【0074】
(油圧クランプユニット1Aの動作)
次に、上述した構成の減圧装置80を備えた油圧クランプユニット1Aの動作例を説明する。図11は油圧クランプユニット1Aの動作を示す断面図である。図12は、蓄圧装置70に圧油23Aが供給された状態を示す断面図である。なお、図11は、旋回式クランプ3がワークWを解放したリリース状態を示している。
【0075】
図9に示すロック状態において、圧油給排装置4のキャップ部材8を回転力伝達工具25が軸心回りの第1方向に回転させると、図11に示すように、ピストン5がキャップ部材8に近づくように軸方向上側へ移動する。
【0076】
このため、作動室9内で作動油23が昇圧され、圧油23Aが流体通路21に配置された減圧装置80を通って旋回式クランプ3に供給される。作動油23Aが供給された旋回式クランプ3は図9に示すロック状態から図11に示すリリース状態にリリース駆動される。すると、旋回式クランプ3の作動室40及び減圧装置80の出口室86の油圧が上昇していき、出口室86の圧油23Aの油圧が圧力設定バネ111の付勢力より大きくなり、受圧ピストン95が左側へ移動する。このため、減圧部材89が閉弁バネ90に押されて減圧弁座85に当接し、減圧装置80が閉弁される。
【0077】
次いで、図11に示すリリース状態において、圧油給排装置4のキャップ部材8を回転力伝達工具25が軸心回りの第1方向にさらに回転させる。すると、図12に示すように、ピストン5が移動して、圧油23Aがさらに昇圧される。これにより、圧油給排装置4の作動室9内の圧油23Aが、流体通路21を通って蓄圧装置70の蓄圧室72に供給されていく。
【0078】
油圧クランプユニット1Aでは、蓄圧装置70の圧縮バネ74の付勢力は、旋回式クランプ3のロックバネ41及び減圧装置80の圧力設定バネ111の付勢力に比べて大きくなるように設定される。また、減圧装置80の圧力設定バネ111の付勢力は、旋回式クランプ3のロックバネ41の付勢力に比べて大きくなるように設定される。つまり、各バネの付勢力(押圧力)の大小関係は、圧縮バネ74>圧力設定バネ111>ロックバネ41になっている。このため、油圧クランプユニット1Aの流体通路21を通る圧油23Aの油圧が上昇していく際、まず旋回式クランプ3のロックバネ41が押し縮められて、旋回式クランプ3がリリース状態に切り換わり、次に減圧装置80の圧力設定バネ111が押し縮められて、減圧装置80が閉弁する。その後、蓄圧装置70の圧縮バネ74が押し縮められて、蓄圧室72に圧油23Aが貯蔵される。
【0079】
例えば圧油23Aの漏れ等によって減圧装置80に対して旋回式クランプ3側(二次側)で圧油23Aの圧力低下が生じた場合、減圧装置80の出口室86の圧力が低下する。このため、圧力設定バネ111の付勢力によって受圧ピストン95が減圧部材89を右側へ押していき、減圧装置80が開弁することで、減圧装置80に対して圧油給排装置4側(一次側)の流体通路21に圧力低下が生じる。この圧力低下に応じて蓄圧装置70から圧油23Aが流体通路21へ排出されるため、圧油23Aの圧力低下を緩和することができる。
【0080】
一方、図12に示すリリース状態において、回転力伝達工具25が軸心回りの第1方向とは逆の第2方向に回転すると、ピストン5はキャップ部材8から離れるように軸方向下側へ移動する。すると、圧油23Aが減圧し、まず蓄圧装置70の蓄圧室72に貯蔵された圧油23Aが圧縮バネ74の付勢力によって流体通路21に排出され、次に入口室84の圧力低下に伴い減圧装置80が開弁する。その後、旋回式クランプ3内の圧油23Aが流体通路21を通って圧油給排装置4の作動室9内に排出される。これにより、油圧クランプユニット1Aは、図12に示すリリース状態から図9に示すロック状態にロック駆動される。
【0081】
〔第3実施形態〕
本発明の他の実施形態について、以下に説明する。前述した構成要素と同様の構成要素には同様の参照符号を付し、これらの構成要素の詳細な説明は繰り返さない。
【0082】
(油圧クランプユニット1Bの構成)
図13は第3実施形態に係る油圧クランプユニット1Bの要部を示す断面図である。なお、図13は旋回式クランプ3AがワークWを解放したリリース状態を示している。
【0083】
図13に示すように、油圧クランプユニット1Bは、旋回式クランプ3A及び圧油給排装置4Aを備える。旋回式クランプ3Aは、前述した旋回式クランプ3と異なり、圧油23Aが供給されない場合にリリース状態となり、圧油23Aが供給された場合にロック状態となる(図16参照)。また、圧油給排装置4Aは、前述した圧油給排装置4と異なり、作動室9がピストン5のキャップ部材8とは反対側に形成される。
【0084】
図14は、油圧クランプユニット1Bが備える旋回式クランプ3Aを示す拡大断面図である。図14に示すように、旋回式クランプ3Aは、ピストン42の上側に作動室40が形成される。このため、作動室40に圧油23Aが供給されると、ピストン42が下側へ移動する。ピストン42の下側には、バネ室50が設けられる。このバネ室50には、ピストン42を付勢するリリースバネ51が収容されている。リリースバネ51は、作動室40から圧油23Aが排出されると、ピストン42を上側へ移動させる。このため、ピストン42の上下方向への移動に伴って、バネ室50の容積が変化する。
【0085】
そこで、旋回式クランプ3Aの底部には、バネ室50内の空気を外部へ給排するための呼吸孔53が設けられている。呼吸孔53は、搬送部材2に設けられた空気通路2Cに連通している。この呼吸孔53には、逆止弁54が配置されている。逆止弁54は、バネ室50に空気を吸い込む際に、比較的大きな異物を吸い込まないようにする。
【0086】
出力ロッド44は、下側に突出した下側ロッド44Aを含む。下側ロッド44Aの外周面に、ガイド溝44Bが設けられる。出力ロッド44は、上下方向(軸方向)に移動する際、ガイド溝44Bと該ガイド溝44Bに挿入された伝動ボール47とによって周方向に回転する。
【0087】
ここで、リリースバネ51が出力ロッド44とともに回転すると、リリースバネ51が捩れて破損する可能性がある。このため、リリースバネ51を受け止めるバネ受け55に対して回転可能となるように、バネ受け55の内周面と出力ロッド44の外周面との間にボール(軸受け)61を設けている。
【0088】
図15は、油圧クランプユニット1Bが備える圧油給排装置4Aを示す拡大断面図である。図15に示すように、圧油給排装置4Aは、ピストン5の下側に作動室9が配置されている。また、雄ネジ部材7とキャップ部材8とが一体に形成されている。
【0089】
ピストン5は、有底の筒状部材であり、その内周面に雌ネジ部材6Aが設けられる。このため、雄ネジ部材7と雌ネジ部材6Aとが係合することにより発生する摩耗粉を含む異物が作動油23に混入することを防止することができ、作動油23を清浄な状態に維持することができる。
【0090】
また、圧油給排装置4Aは、作動室9に作動油23を供給するときに使用する供給ポートである作動油供給部62を有する。例えば作動油23の量が減少した場合、作動油供給部62から作動室9へ作動油23を供給することができる。作動油供給部62は、その内部に逆止弁が配置されており、作動油23が逆流しないようになっている。また、作動室9には、空気抜き孔63が設けられる。この空気抜き孔63には、封止部材(空気抜き弁)64が配置されている。
【0091】
旋回式クランプ3Aがリリース状態にあるとき、圧油給排装置4Bのピストン5は、キャップ部材8に近い上側の位置している。キャップ部材8は、弾性部材26により軸方向に押圧されて、止め部16がハウジング10の受け部20と係合する位置まで上昇している。
【0092】
(油圧クランプユニット1Bの動作)
次に、上述した構成の旋回式クランプ3A及び圧油給排装置4Aを備えた油圧クランプユニット1Bの動作例を説明する。図16は油圧クランプユニット1Bの動作を示す断面図である。図17は蓄圧装置70に圧油23Aが供給された状態を示す断面図である。なお、図16及び図17は、旋回式クランプ3AがワークWを固定したロック状態を示している。
【0093】
図13に示すリリース状態において、圧油給排装置4Bのピストン5は、キャップ部材8に近い上側の位置には配置されている。この状態で、圧油給排装置4Aのキャップ部材8を回転力伝達工具25が軸心回りの第1方向に回転させると、図16に示すようにピストン5がキャップ部材8から離れるように軸方向下側へ移動する。
【0094】
このため、作動室9内で作動油23が昇圧され、圧油23Aが流体通路21に配置された減圧装置80を通って旋回式クランプ3Aに供給される。旋回式クランプ3Aの作動室40に圧油23Aが供給されていくと、圧油23Aに基づく押圧力がリリースバネ51の付勢力に抗してピストン42を下側へ移動させ、旋回式クランプ3AのクランプアームがワークWに上側から当接する。
【0095】
この後、作動室40に圧油23Aがさらに供給されていく。すると、旋回式クランプ3Aの作動室40の圧力が上昇していき、クランプアームがワークWを搬送部材2に向けて強力に押圧する。その作動室40の圧力が、減圧装置80の圧力設定バネ111によって設定される圧力を上回ると、減圧装置80は閉弁される。これにより、旋回式クランプ3Aは、図13に示すリリース状態から図16に示すロック状態にロック駆動される。このように、圧油給排装置4Aは、旋回式クランプ3Aがリリース状態からロック状態にロック駆動する時に圧油23Aを旋回式クランプ3Aに供給する。
【0096】
次いで、図16に示すロック状態において、圧油給排装置4Aのキャップ部材8を回転力伝達工具25が軸心回りの第1方向にさらに回転させる。すると、図17に示すように、ピストン5が移動して、圧油23Aがさらに昇圧される。これにより、圧油給排装置4Aの作動室9内の圧油23Aが、流体通路21を通って蓄圧装置70の蓄圧室72に供給されていく。
【0097】
油圧クランプユニット1Bでは、蓄圧装置70の圧縮バネ74の付勢力は、旋回式クランプ3Aのリリースバネ51及び減圧装置80の圧力設定バネ111の付勢力に比べて大きくなるように設定される。また、減圧装置80の圧力設定バネ111の付勢力は、旋回式クランプ3Aのリリースバネ51の付勢力に比べて大きくなるように設定される。つまり、各バネの付勢力(押圧力)の大小関係は、圧縮バネ74>圧力設定バネ111>リリースバネ51になっている。このため、油圧クランプユニット1Bの流体通路21を通る圧油23Aの油圧が上昇していく際、まず旋回式クランプ3Aのリリースバネ51が押し縮められて、旋回式クランプ3Aがロック状態に切り換わり、次に減圧装置80の圧力設定バネ111が押し縮められて、減圧装置80が閉弁する。その後、蓄圧装置70の圧縮バネ74が押し縮められて、蓄圧室72に圧油23Aが貯蔵される。
【0098】
例えば圧油23Aの漏れ等によって減圧装置80に対して旋回式クランプ3A側(二次側)で圧油23Aの圧力低下が生じた場合、減圧装置80が開弁することで、減圧装置80に対して圧油給排装置4B側(一次側)の流体通路21に圧力低下が生じる。この圧力低下に応じて蓄圧装置70から圧油23Aが流体通路21へ排出されるため、圧油23Aの圧力低下を緩和することができる。
【0099】
一方、図17に示すロック状態において、回転力伝達工具25が軸心回りの第1方向とは逆の第2方向に回転すると、ピストン5はキャップ部材8に近づくように軸方向上側へ移動する。すると、圧油23Aが減圧し、まず蓄圧装置70の蓄圧室72に貯蔵された圧油23Aが圧縮バネ74の付勢力によって流体通路21に排出され、次に入口室84の圧力低下に伴い減圧装置80が開弁する。その後、旋回式クランプ3内の圧油23Aが流体通路21を通って圧油給排装置4Aの作動室9内に排出される。これにより、油圧クランプユニット1Bは、図17に示すロック状態から図13に示すリリース状態にリリース駆動される。
【0100】
なお、上述した実施形態では、旋回式クランプ3と圧油給排装置4とを組み合わせた構成(第1及び第2実施形態)、旋回式クランプ3Aと圧油給排装置4Aとを組み合わせた構成(第3実施形態)について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、旋回式クランプ3と圧油給排装置4Aとを組み合わせてもよく、または旋回式クランプ3Aと圧油給排装置4とを組み合わせてもよい。
【0101】
また、上述した各実施形態では、クランプ装置に油圧を供給する圧油給排装置の例を挙げて説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば油圧に代えて圧縮エアをクランプ装置に供給するエア給排装置に対しても本発明を適用することができる。
【0102】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0103】
1,1A,1B 油圧クランプユニット(クランプユニット)
2 搬送部材
2A 第1面
2B 第2面
3,3A 旋回式クランプ(クランプ装置)
4,4A 圧油給排装置(流体給排装置)
21 流体通路(流体通路)
23 作動油(作動流体)
23A 圧油(圧力流体)
70,70A 蓄圧装置
71 ハウジング
71C 貫通孔
72 蓄圧室
73 蓄圧ピストン(ピストン部材)
74 圧縮バネ(付勢部材)
74A 流体バネ(付勢部材)
77 インジケータロッド(ロッド部材)
77B 先端部
80 減圧装置
【要約】
【課題】作動流体の圧力低下による動作不良を緩和できるクランプユニットを提供する。
【解決手段】油圧クランプユニット(1)は、流体通路(21)に接続される蓄圧装置(70)を備える。蓄圧装置(70)は、圧油給排装置(4)から旋回式クランプ(3)へ供給される圧油(23A)の一部を貯蔵する蓄圧室(72)を含み、流体通路(21)内の圧油(23A)の圧力低下に応じて、蓄圧室(72)に貯蔵した圧油(23A)を流体通路(21)へ排出する。
【選択図】図7
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17