(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-20
(45)【発行日】2025-01-28
(54)【発明の名称】モータ制御ユニット、パワートレイン、制御方法、及び電気自動車
(51)【国際特許分類】
H02P 27/06 20060101AFI20250121BHJP
B60L 9/18 20060101ALI20250121BHJP
B60L 50/60 20190101ALI20250121BHJP
B60L 58/27 20190101ALI20250121BHJP
【FI】
H02P27/06
B60L9/18 J
B60L50/60
B60L58/27
(21)【出願番号】P 2023545911
(86)(22)【出願日】2021-01-29
(86)【国際出願番号】 CN2021074492
(87)【国際公開番号】W WO2022160286
(87)【国際公開日】2022-08-04
【審査請求日】2023-09-06
(73)【特許権者】
【識別番号】521531171
【氏名又は名称】ファーウェイ デジタル パワー テクノロジーズ カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100135079
【氏名又は名称】宮崎 修
(72)【発明者】
【氏名】シ,チャオジエ
(72)【発明者】
【氏名】ウ,チャオチアン
(72)【発明者】
【氏名】チェン,シャンカイ
【審査官】島倉 理
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第111347936(CN,A)
【文献】特開2012-165526(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 27/06
B60L 9/18
B60L 50/60
B60L 58/27
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータ制御ユニットであって、前記モータ制御ユニットの入力端が動力バッテリパックに接続するように構成され、前記モータ制御ユニットの出力端がモータのモータ巻線の3相に接続するように構成され、前記モータ制御ユニットは、インバータ回路及びコントローラを有し;
前記インバータ回路の入力端が前記モータ制御ユニットの前記入力端であり、前記インバータ回路の出力端の各相が前記モータのモータ巻線の1相に接続し;
前記コントローラは:前記モータ巻線の3相に同時に電流を出力するように前記インバータ回路を制御し、順次プリセット電流に達するように前記モータ巻線の相の全てに入力される前記電流を制御
し;
プリセット位置角度及び前記プリセット電流に基づいて、前記モータ巻線の各相の入力電流の振幅及び位相を決定し、前記プリセット位置角度は、前記プリセット電流と前記モータのd軸との間の角度を表し;
前記モータ巻線の各相の入力電流の前記振幅及び前記位相と、モータ巻線の各相のインピーダンスとに基づいて、モータ巻線の各相の入力電圧の振幅及び位相を決定し;
前記入力電圧の前記振幅に基づいて前記インバータ回路の制御信号のデューティサイクルを決定し、前記入力電圧の前記位相に基づいて前記インバータ回路の前記制御信号の送信時間を決定する;ように構成される、
モータ制御ユニット。
【請求項2】
前記コントローラは、前記動力バッテリパックの温度に基づいて前記プリセット電流を決定するようにさらに構成され、前記プリセット電流の大きさは前記動力バッテリパックの前記温度と負の相関を有する、
請求項1に記載のモータ制御ユニット。
【請求項3】
前記コントローラは、取得された加熱命令に基づいて前記プリセット電流を決定するようにさらに構成され、前記加熱命令は前記プリセット電流の大きさを示すために使用される、
請求項1に記載のモータ制御ユニット。
【請求項4】
前記コントローラは、プリセット角度範囲内で周期的に変化するように前記プリセット位置角度を制御するように構成される、
請求項
1乃至3のいずれか1項に記載のモータ制御ユニット。
【請求項5】
前記プリセット角度範囲は0°から360°であり、前記コントローラは、プリセット時間間隔及びプリセット角度増分に基づいて周期的に変化するように前記プリセット位置角度を制御し、前記プリセット角度増分の値は120の正の約数である、
請求項
4に記載のモータ制御ユニット。
【請求項6】
前記プリセット角度範囲は0°から120°であり、前記コントローラは、プリセット時間間隔及びプリセット角度増分に基づいて周期的に変化するように前記プリセット位置角度を制御し、前記プリセット角度増分の値は60の正の約数である、
請求項
4に記載のモータ制御ユニット。
【請求項7】
前記コントローラは、前記モータ巻線の3相のそれぞれへの前記インバータ回路によって出力される前記電流を次の波形:
正弦波、矩形波、又は三角波
のうちの1つになるように制御するように構成される、
請求項1に記載のモータ制御ユニット。
【請求項8】
前記インバータ回路は、3相2レベルインバータ回路又は3相3レベルインバータ回路である、
請求項1に記載のモータ制御ユニット。
【請求項9】
前記コントローラはさらに、ポンプ装置の動作状態を制御するように構成され、前記モータは、第1の冷却ループにより熱交換を行い、前記ポンプ装置を使用して、前記第1の冷却ループ内を循環する冷却媒体を駆動する、
請求項1乃至
8のいずれか1項に記載のモータ制御ユニット。
【請求項10】
モータ制御ユニットの制御方法であって、前記方法は、動力バッテリパックを加熱するために使用され、前記モータ制御ユニットは、インバータ回路及びコントローラを有し、前記インバータ回路の入力端が、前記モータ制御ユニットの入力端であり、前記動力バッテリパックに接続するように構成され、前記インバータ回路の出力端の各相がモータのモータ巻線の1相に接続し、前記モータ制御ユニットの制御方法は:
前記動力バッテリパックを加熱するためにモータ巻線の全相によって使用するプリセット電流を決定するステップと;
前記モータ巻線の3相に同時に電流を出力するように前記インバータ回路を制御するステップ、及び順次前記プリセット電流に達するように前記モータ巻線の相の全てに入力される前記電流を制御するステップ;を含
み、
前記モータ巻線の3相に同時に電流を出力するように前記インバータ回路を制御するステップ、及び順次前記プリセット電流に達するように前記モータ巻線の相の全てに入力される前記電流を制御するステップは:
プリセット位置角度及び前記プリセット電流に基づいて、前記モータ巻線の各相の入力電流の振幅及び位相を決定するステップであって、前記プリセット位置角度は、前記プリセット電流と前記モータのd軸との間の角度を表す、ステップ;
前記モータ巻線の各相の入力電流の前記振幅及び前記位相並びにモータ巻線の各相のインピーダンスに基づいて、モータ巻線の各相の入力電圧の振幅及び位相を決定するステップ;及び
前記入力電圧の前記振幅に基づいて前記インバータ回路の制御信号のデューティサイクルを決定するステップ、及び前記入力電圧の前記位相に基づいて前記インバータ回路の前記制御信号の送信時間を決定するステップ;を含む、
制御方法。
【請求項11】
前記動力バッテリパックを加熱するためにモータ巻線の全相によって使用されるプリセット電流を決定するステップは:
前記動力バッテリパックの温度に基づいて前記プリセット電流を決定するステップを含み、前記プリセット電流の大きさは、前記動力バッテリパックの温度と負の相関を有する、
請求項
10に記載の制御方法。
【請求項12】
前記動力バッテリパックを加熱するためにモータ巻線の全相によって使用されるプリセット電流を決定するステップは:
取得された加熱命令に基づいて前記プリセット電流を決定するステップを含み、前記加熱命令は、前記プリセット電流の大きさを示すために使用される、
請求項
10に記載の制御方法。
【請求項13】
順次前記プリセット電流に達するように前記モータ巻線の相の全てに入力される前記電流を制御するステップは:
前記プリセット位置角度をプリセット角度範囲内で周期的に変化するように制御するステップを含む、
請求項
10乃至12のいずれか1項に記載の制御方法。
【請求項14】
前記プリセット角度範囲は0°から360°であり、前記プリセット位置角度をプリセット角度範囲内で周期的に変化するように制御するステップは:
前記プリセット位置角度をプリセット時間間隔及びプリセット角度増分に基づいて周期的に変化するように制御するステップを含み、前記プリセット角度増分の値は、120の約数である、
請求項
13に記載の制御方法。
【請求項15】
前記プリセット角度範囲は、0°から120°であり、前記プリセット位置角度をプリセット角度範囲内で周期的に変化するように制御するステップは:
前記プリセット位置角度をプリセット時間間隔及びプリセット角度増分に基づいて周期的に変化するように制御するステップを含み、前記プリセット角度増分の値は、60の約数である、
請求項
13に記載の制御方法。
【請求項16】
パワートレインであって、前記パワートレインは、請求項1乃至
9のいずれか1項に記載のモータ制御ユニットを有し、さらに、モータ、第1の冷却ループ、第2の冷却ループ、ポンプ装置、及び熱交換器を有し;
前記第1の冷却ループは、前記モータのための熱交換を行うように構成され;
前記第2の冷却ループは、前記モータ制御ユニットと動力バッテリパックとの間で熱交換を行うように構成され;
前記ポンプ装置は、循環するように前記第1の冷却ループ内の冷却媒体を駆動するように構成され;
前記熱交換器は、前記第1の冷却ループ内の前記冷却媒体と前記第2の冷却ループ内の冷却媒体との間で熱交換を行うように構成される;
パワートレイン。
【請求項17】
電気自動車であって、前記電気自動車は、請求項
16に記載のパワートレインを有し、さらに、動力バッテリパックを有し;
前記動力バッテリパックの出力端は、
前記モータ制御ユニットの
前記入力端に接続し;
前記動力バッテリパックは、前記パワートレインのための直流電流を供給するように構成される、
電気自動車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、電気自動車技術の分野、特に、モータ制御ユニット、パワートレイン、制御方法及び電気自動車に関する。
【背景技術】
【0002】
現代社会におけるエネルギー不足及び環境汚染の深刻化に伴い、新エネルギー自動車、及び電気自動車が広く注目されている。電気自動車は、動力バッテリパックを動力源とし、モータを用いて電気エネルギーを機械エネルギーに変換してモータを駆動する。
【0003】
大量の電気自動車が配備されているため、冬の寒い地域及び常時寒い地域で多くの電気自動車が使用されている。しかし、電気自動車の動力バッテリパックは低温での放電性能が比較的悪いため、動力バッテリパックが安全な温度範囲内でモータに電力を出力できることを保証するために、動力電池は効率的な低温加熱対策が必要である。
【0004】
図1は、従来技術における動力バッテリパックのための加熱装置の概略図である。
【0005】
加熱装置は、正の温度係数(Positive Temperature Coefficient、PTC)抵抗Rpと制御可能なスイッチングトランジスタSとを含む。PTC抵抗RpとSは、直列に接続され、それから電気自動車のバスコンデンサCoと並列に接続される。電気自動車のバッテリ管理システム(Battery Management System、BMS)が、バッテリ温度が比較的低いと決定するとき、制御可能なスイッチングトランジスタSは閉じられるように制御され、PTC抵抗Rpは回路に接続され、それから熱を放出し、動力バッテリパックを加熱する。しかし、この加熱方法では、追加の加熱装置が追加される必要があり、その結果スペースを占有し、コストが増大する。
【0006】
従来の技術の動力バッテリパックを加熱する別の方法は次の通りである:モータ巻線から発生する廃熱が、熱伝導媒体を用いて吸収され、動力バッテリパックを加熱するために使用される。しかし、この方法解決策には2つの問題点がある:第1に、モータ巻線のみから発生する熱が利用され、加熱出力(heating power)が比較的小さく、加熱速度が比較的低い。第2に、この方法では、モータの巻線の3相が電流ループとして利用され、電流が次の方法でモータ巻線に注入される:電流が巻線の1つの相に入力され、巻線の他の2つの相が電流を出力する;又は、電流が巻線の1つの相に入力され、巻線の1つの相が電流を出力し、巻線の第3の相の電流は0である。しかし、使用される方法にかかわらず、巻線の3相の電流は等しくなることができず、したがって、巻線の3相は不均一に熱を発生する。不均一な熱の発生により、比較的高い熱を発生する巻線の相は比較的早くエージングするため、3相の不均衡などの問題が発生しやすく、したがって、モータの性能に影響を与える。また、不均一な熱の発生により、最高温度の巻線の相によって巻線温度の上昇が制限される。この貫通電流加熱方式では、巻線の3相の熱発生能力を十分に活用することができない。
【発明の概要】
【0007】
本出願は、追加の加熱装置が動力バッテリパックを加熱するために追加される場合を回避し、占有スペースとコストを低減し、動力バッテリパックの加熱効果を向上させるためのモータ制御ユニット、パワートレイン、制御方法、及び電気自動車を提供する。
【0008】
第1の態様によれば、本発明は、モータ制御ユニット(Motor Control Unit、MCU)を提供する。モータ制御ユニットの入力端は、動力バッテリパックに接続し、モータ制御ユニットの出力端は、モータのモータ巻線の3相に接続する。モータ制御ユニットは、インバータ回路及びコントローラを含む。インバータ回路の入力端はモータ制御ユニットの入力端であり、インバータ回路の出力端の各相はモータのモータ巻線の1つの相に接続する。コントローラは:モータ巻線の3相に同時に電流を出力するようにインバータ回路を制御し、プリセット電流に順次達するようにモータ巻線の相の全てに入力される電流を制御する。
【0009】
コントローラは、モータ巻線の3相に同時に電流を出力するようにインバータ回路を制御する。この場合、モータ巻線の3相の全てが熱を発生するため、モータの全体的な加熱出力が増加する。また、コントローラは、モータ巻線の相の全ての電流が順次プリセット電流に達するように、インバータ回路の出力電流を制御する。モータ巻線の電流がプリセット電流であるとき、モータ巻線は比較的高い加熱出力を有するため、モータ巻線の3相が均一に熱を発生する。さらに、流れる電流の大きさの切り替えにより、モータ巻線の3相のそれぞれの加熱出力は比較的高い状態に維持され得る。これにより、モータ巻線の熱発生能力が十分に使用され、動力バッテリパックの加熱速度を向上させ、モータ巻線が長時間熱を発生するためにモータ巻線の1相の寿命が著しく短くなるケースを回避し、したがって、モータの対称性及び信頼性をさらに向上させる。また、本出願で提供する解決策では、追加の加熱装置が動力バッテリパックを加熱するために追加されるケースを回避し、占有スペース及びコストを削減する。
【0010】
コントローラは、特定用途向け集積回路(Application-Specific Integrated Circuit、ASIC)、プログラマブル論理デバイス(Programmable Logic Device、PLD)、デジタル信号プロセッサ(Digital Signal Processor、DSP)、又はそれらの組み合わせであり得る。PLDは、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device、CPLD)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(Field-programmable Gate Array、FPGA)、汎用アレイロジック(Generic Array Logic、GAL)、又はそれらの任意の組み合わせである。これは、本出願では特に限定されない。
【0011】
インバータ回路は、制御可能なスイッチングトランジスタを含む。制御可能なスイッチングトランジスタの種類は、本出願では特に限定されない。例えば、制御可能なスイッチングトランジスタは、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(Insulated Gate Bipolar Transistor、IGBT)、金属酸化物半導体電界効果トランジスタ(Metal Oxide Semiconductor Filed Effect Transistor、MOSFET)、又は炭化ケイ素電界効果トランジスタ(Silicon Carbide Metal Oxide Semiconductor、SiC MOSFET)であり得る。
【0012】
コントローラは、制御可能なスイッチングトランジスタの動作状態を制御するために、制御信号を制御可能なスイッチングトランジスタに送る。制御信号はパルス幅変調(Pulse Width Modulation、PWM)信号であり得る。
【0013】
可能な実装では、コントローラはさらに、動力バッテリパックの温度に基づいてプリセット電流を決定し、プリセット電流の大きさは動力バッテリパックの温度と負に相関する。
【0014】
動力バッテリパックについて、同じ加熱時間内で、動力バッテリパックの温度が低いほど、動力バッテリパックを加熱する高い速度が必要とされ、対応するプリセット電流の大きい大きさが必要とされることを示す。
【0015】
コントローラは、動力バッテリパックの温度を決定するために、車両制御ユニット(Vehicle Control Unit、VCU)又はBMSを使用して動力バッテリパックの温度情報を取得し得る。
【0016】
可能な実装では、コントローラは、取得された加熱命令に基づいてプリセット電流をさらに決定し、加熱命令は、プリセット電流の大きさを示すために使用される。ドライバは、実際の要件に基づいて、動力バッテリパックの加熱出力レベル(より高い加熱出力レベルは、より高い加熱速度を示す)を決定し得る、又は動力バッテリパックの加熱時間(より短い加熱時間は、より高い加熱出力レベルに相当する)を調整し得る。車両制御ユニット(Vehicle Control Unit、VCU)は、ドライバによって実行される入力操作に応答して、動力バッテリパックの現在の温度情報を参照して、対応する加熱命令を決定し、加熱命令をコントローラに送信する。加熱命令は、プリセット電流の大きさを示すために使用される。
【0017】
可能な実装では、コントローラは特に:プリセット位置角度及びプリセット電流に基づいて、モータ巻線の各相の入力電流の振幅と位相を決定し、プリセット位置角度は、プリセット電流とモータのd軸との間の角度を表し;モータ巻線の各相の入力電流の振幅と位相と、モータ巻線の各相のインピーダンスとに基づいて、モータ巻線の各相の入力電圧の振幅と位相を決定し;入力電圧の振幅に基づいてインバータ回路の制御信号のデューティサイクルを決定し、対応する制御信号を用いてモータ制御ユニットを制御するために、入力電圧の位相に基づいてインバータ回路の制御信号の送信時間を決定する;ように構成される。
【0018】
可能な実装では、コントローラは特に、モータ巻線の全ての相に入力される電流が順次プリセット電流に達するように、プリセット角度範囲内で周期的に変化するようにプリセット位置角度を制御するように構成される。
【0019】
可能な実施形態では、プリセット角度範囲は0°から360°であり、コントローラは、プリセット時間間隔及びプリセット角度増分に基づいて周期的に変化するようにプリセット位置角度を制御し、プリセット角度増分の値は120の正の約数(positive divisor)である。
【0020】
120の正の約数は、1、2、3、4、5、6、8、10、12、15、20、24、30、40、60、及び120を含む。
【0021】
可能な実装では、プリセット角度範囲は0°から120°であり、コントローラは、プリセット時間間隔及びプリセット角度増分に基づいて周期的に変化するようにプリセット位置角度を制御し、プリセット角度増分の値は60の正の約数である。
【0022】
60の正の約数は、1、2、3、4、5、6、10、12、15、20、30、及び60を含む。
【0023】
可能な実装では、コントローラは特に、モータ巻線の3相のそれぞれへのインバータ回路による電流出力を、次の波形:正弦波、矩形波、又は三角波のうちの1つになるよう制御するように構成される。
【0024】
可能な実装では、インバータ回路は、3相2レベルインバータ回路又は3相3レベルインバータ回路である。
【0025】
可能な実装では、コントローラはさらに、ポンプ装置の動作状態を制御するように構成され、モータは、第1の冷却ループを使用して熱交換を行い、ポンプ装置を使用して、第1の冷却ループ内を循環する冷却媒体を駆動する。
【0026】
第2の態様によれば、本出願は、パワートレインを提供する。パワートレインは、前述の実装で提供されるモータ制御ユニットを含み、さらに、モータ、第1の冷却ループ、第2の冷却ループ、ポンプ装置、及び熱交換器を含む。第1の冷却ループは、モータの熱交換を行うように構成される。第2の冷却ループは、モータ制御ユニットと動力バッテリパックとの間で熱交換を行うように構成される。ポンプ装置は、第1の冷却ループ内を循環するように冷却媒体を駆動するように構成される。熱交換器は、第1の冷却ループ内の冷却媒体と第2の冷却ループ内の冷却媒体との間で熱交換を実施するように構成される。
【0027】
パワートレインの第1の冷却ループ及び第2の冷却ループは、モータ制御ユニット及びモータ巻線から発生する熱を十分に吸収し、動力バッテリパックを加熱し、したがって、動力バッテリパックを加熱する速度が増加する。
【0028】
第3の態様によれば、本出願はさらに、モータ制御ユニットの制御方法を提供する。この方法は、上述の実装で提供されるモータ制御ユニットを制御するために使用される。この方法は、以下のステップを含む:
動力バッテリパックを加熱するためにモータ巻線の全相によって使用されるプリセット電流を決定するステップと;
モータ巻線の3相に同時に電流を出力するようにインバータ回路を制御するステップ、及び順次プリセット電流に達するようにモータ巻線の相の全てに入力される電流を制御するステップと;を含む。
【0029】
この制御方法によれば、モータ巻線の3相全てを、熱を発生するように制御することができ、したがってモータ全体の発熱出力が増加する。また、インバータ回路の出力電流は、モータ巻線の全ての相の電流が順次プリセット電流に達するように制御される。モータ巻線の電流がプリセット電流であるとき、モータ巻線は比較的高い加熱出力を有し、したがってモータ巻線の3相が均一に熱を発生する。さらに、流れる電流の大きさの切り替えにより、モータ巻線の3相のそれぞれの加熱出力は比較的高い状態に維持され得る。これにより、モータ巻線の加熱能力が十分に使用され、動力バッテリパックを加熱する速度が増加され、モータ巻線が長時間熱を発生するためにモータ巻線の1相の寿命が著しく短くなるケースを回避し、したがって、モータの対称性と信頼性がさらに向上する。また、追加の加熱装置を必要とせず、占有スペースとコストを削減することができる。
【0030】
可能な実装では、動力バッテリパックを加熱するためにモータ巻線の全ての相によって使用されるプリセット電流を決定するステップは特に:
動力バッテリパックの温度に基づいてプリセット電流を決定するステップを含む。プリセット電流の大きさは、動力バッテリパックの温度と負の相関を有する。
【0031】
動力バッテリパックの温度情報が、動力バッテリパックの温度を決定するために、VCU又はBMSを使用して、取得され得る。
【0032】
可能な実装では、動力バッテリパックを加熱するためにモータ巻線の全ての相によって使用されるプリセット電流を決定するステップは特に:
取得された加熱命令に基づいてプリセット電流を決定するステップを含む。加熱命令は、プリセット電流の大きさを示すために使用される。
【0033】
ドライバによって実行される入力操作に応答して、VCUは、動力バッテリパックの現在の温度情報を参照して対応する加熱命令を決定し、加熱命令をコントローラに送信する。加熱命令は、プリセット電流の大きさを示すために使用される。
【0034】
可能な実装では、モータ巻線の3相に同時に電流を出力するようにインバータ回路を制御するステップ、及び順次プリセット電流に達するようにモータ巻線の相の全てに入力される電流を制御するステップは特に:
プリセット位置角度及びプリセット電流に基づいて、モータ巻線の各相の入力電流の振幅及び位相を決定するステップであって、プリセット位置角度は、プリセット電流とモータのd軸との間の角度を表す、ステップ;
モータ巻線の各相の入力電流の振幅及び位相並びにモータ巻線の各相のインピーダンスに基づいて、モータ巻線の各相の入力電圧の振幅と位相を決定するステップ;及び
入力電圧の振幅に基づいてインバータ回路の制御信号のデューティサイクルを決定するステップ、及び入力電圧の位相に基づいてインバータ回路の制御信号の送信時間を決定するステップ;を含む。
【0035】
可能な実装では、モータ巻線の全ての相に入力される電流が順次プリセット電流に達するように制御するステップは特に:プリセット位置角度をプリセット角度範囲内で周期的に変化するように制御するステップを含む。
【0036】
可能な実装では、プリセット角度範囲は0°から360°であり、プリセット位置角度をプリセット角度範囲内で周期的に変化するように制御するステップは:
プリセット位置角度をプリセット時間間隔及びプリセット角度増分に基づいて周期的に変化するように制御するステップを含み、プリセット角度増分の値は120の約数である。120の正の約数は、1、2、3、4、5、6、8、10、12、15、20、24、30、40、60、及び120を含む。
【0037】
可能な実装では、プリセット角度範囲は0°から120°であり、プリセット位置角度をプリセット角度範囲内で周期的に変化するように制御するステップは:
プリセット位置角度をプリセット時間間隔及びプリセット角度増分に基づいて周期的に変化するように制御するステップを含み、プリセット角度増分の値は60の約数である。60の正の約数は、1、2、3、4、5、6、10、12、15、20、30、及び60を含む。
【0038】
第4の態様によれば、本出願はさらに電気自動車を提供する。電気自動車は、前述の実装で提供されるパワートレインを含み、さらに動力バッテリパックを含む。動力バッテリパックの出力端は、モータ制御ユニットの入力端に接続し、動力バッテリパックは、パワートレインのための直流電流を供給するように構成される。
【0039】
以上の実施形態で提供されたモータ制御ユニットは、電気自動車に適用され、したがって、モータの全体的な加熱出力が増加する。また、モータ巻線の3相が均一に熱を発生するように制御される。これにより、動力バッテリパックを加熱する速度が増加し、モータ巻線が長時間熱を発生するためにモータ巻線の相の寿命が著しく短くなる場合が回避され、したがってモータの対称性及び信頼性が向上する。また、追加の加熱装置が動力バッテリパックを加熱するために追加される場合が回避され、したがって電気自動車のコストが低減する。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【
図1】従来技術における動力バッテリパックのための加熱装置の概略図である。
【0041】
【
図2】本出願の一実施形態による例示的な電気自動車の電気システムの概略図である。
【0042】
【
図3】本出願の一実施形態による例示的なモータの構造の概略図である。
【0043】
【
図4】本出願の一実施形態によるモータ制御ユニットの概略図である。
【0044】
【
図5】本出願の一実施形態による例示的な非対称3相電流の概略図である。
【0045】
【
図6】本出願の一実施形態による例示的な3相電流の概略図である。
【0046】
【
図7】本出願の一実施形態によるモータ制御ユニットのための制御方法の概略図である。
【0047】
【
図8】本出願の一実施形態によるパワートレインの概略図である。
【0048】
【
図9】本出願の一実施形態による電気自動車の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0049】
当業者に本出願の実施形態で提供される技術的解決策をよりよく理解させるために、本出願で提供される技術的解決策の適用シナリオを最初に以下に説明する。
【0050】
図2は、本出願の一実施形態による例示的電気自動車の電気システムの概略図である。
【0051】
図に示す電気自動車の電気システムは、主に、モータ制御ユニット10、モータ20、動力バッテリパック30、高圧配電ユニット40、DC-DC回路50、低電圧バッテリ60、直流充電回路70、及び交流充電回路80を含む。
【0052】
動力バッテリパック30は、高電圧直流を供給するように構成される。高電圧直流の一部は、高圧配電ユニット40及びモータ制御ユニット10を用いて交流電流に変換され、交流電流は、モータ20に供給されて電気自動車を駆動する。高電圧直流の他の部分は、高圧配電ユニット40及びDC-DC回路50を用いて低電圧直流に変換され、低電圧直流は低電圧バッテリ60及び電気自動車の低電圧システムのために供給される。
【0053】
電気自動車が充電されるとき、いくつかの実施形態では、電気自動車は直流充電回路70を用いて動力バッテリパック30を充電する。この場合、直流充電回路70は、直流充電パイルに接続する。この充電方法は、「直流急速充電」とも呼ばれる。
【0054】
他のいくつかの実施形態では、電気自動車は、交流充電回路80を使用して充電される。この場合、交流充電回路80は、交流充電パイルに接続する。この場合、交流充電回路80は、オンボード充電器(On-Board Charger、OBC)であり得る。OBCは、低電圧バッテリ60をさらに充電し得る。
【0055】
モータ20の動作原理を以下に説明する。
【0056】
図3は、本出願の一実施形態による例示的なモータの構造の概略図である。
【0057】
モータ20は、ハウジング201、回転軸202、ステータ203、及びロータ204を含む。
【0058】
モータ20は、油冷モータであり、モータ20のハウジング201のそれぞれの鉄心、回転軸202、及びロータ204は、冷却ループを備える。冷却媒体は、冷却ループ内に留まり、冷却ループ内を循環することができる。冷却媒体は、モータ20を冷却するように構成され、さらに、モータ20内のモータコンポーネント、例えば軸受を潤滑するように構成される。冷却媒体は、モータのハウジングからモータのキャビティに流入及び流出し得る、又は、モータの両端からモータのキャビティに流入及び流出し得る。
【0059】
モータのステータ203は、モータの静止部分であり、主に鉄心とステータ巻線とを含む。
【0060】
モータのロータ204は、モータの回転コンポーネントであり、電気エネルギーを機械エネルギーに変換するように構成される。
【0061】
モータ20の電力損失は、通常、銅損、鉄損、及び永久磁石損などの部分を含む。
【0062】
銅損は、銅導体に電流が流れる際に発生する熱を指し、銅損失の加熱出力P1は、I1
2・R1に等しく、ここでI1は銅導体を通って流れる電流であり、R1は銅導体の抵抗である。
【0063】
鉄損は、モータ20の強磁性材料、例えば鋼やシリコン鋼板によって交流磁場中で発生する損失であり、ヒステリシス損、渦電流損、漂遊損などを含む。
【0064】
永久磁石損は、モータ20の永久磁石材料が導電性を有し、したがって、交流磁場中での誘導により渦電流が発生するという事実のために発生する対応する渦電流損である。永久磁石損の加熱出力P2は、I2
2・R2に等しく、I2は誘導により永久磁石材料に発生する電流であり、R2は渦電流ループの抵抗である。
【0065】
現在、モータ20の3相電流に対して一般的に使用される解析方法は、解析を容易にするために、静止3相座標を回転dq軸座標に変換するパーク変換(Park's Transformation)である。d軸(direct axis)は直軸とも呼ばれ、d軸はモータの回転軸(フィールド(field)軸)に対して平行である。q軸(quadrature axis)は横軸とも呼ばれ、モータのフィールド軸に対して垂直である。
【0066】
現在、動力バッテリパックは、追加の加熱装置を配置する解決策を用いて加熱され得る。しかし、加熱装置のために余分なスペースが占有され、ハードウェアコストが増加する。また、加熱装置はさらに、加熱ムラや低い加熱効率などの問題を有し、動力バッテリパックの温度を効果的に上昇させることができず、その結果、動力バッテリパックの電気化学的性能を効果的に向上させることができない。
【0067】
本出願は、上記の問題を解決するために、モータ制御ユニット、パワートレイン、制御方法、及び電気自動車を提供する。交流電流がモータ制御ユニットを用いてモータのステータ巻線に注入され、交流電流のd軸の位置がプリセット位置角度に基づいて決定される。モータの3相の巻線が均等に熱を発生し、動力バッテリパックを加熱するために十分な熱を発生させるように、プリセット位置角度は、実際のd軸に対して周期的かつ規則的に変化する。
【0068】
当業者が本出願の解決策をよりよく理解できるように、本出願の実施の形態における技術的解決策を、本出願の実施の形態における添付図面を参照して以下に説明する。
【0069】
本出願の以下の説明における「第1」及び「第2」という用語は、単に説明の目的のために使用されるものであり、相対的重要性の表示若しくは含意又は表示された技術的特徴の量の暗黙の表示としては理解されないものとする。
【0070】
本出願においては、特に明確に規定及び限定されない限り、「接続」という用語は広い意味で理解されるべきである。例えば、「接続」は、固定接続であってもよく、取り外し可能な接続であってもよく、一体接続であってもよく、直接接続であってもよく、中間媒体を介した間接接続であってもよい。
【0071】
本出願の実施形態は、モータ制御ユニットを提供する。以下、添付図面を参照して具体的に説明する。
【0072】
図4は、本出願の一実施形態によるモータ制御ユニットの概略図である。
【0073】
モータ制御ユニット10の入力端は動力バッテリパック30に接続し、モータ制御ユニットの出力端はモータ20の巻線に接続する。
【0074】
モータ20は、それぞれU、V、及びWで表される3相の巻線を含む。
【0075】
モータ制御ユニット10は、3相の出力端を含み、出力端の各相は、モータのモータ巻線の1つの相に接続される。
【0076】
モータ制御ユニット10は、インバータ回路101及びコントローラ102を含む。
【0077】
インバータ回路101は、直流電流(Direct Current、DC)-交流電流(Alternating Current、AC)変換回路と呼ばれることがあり、インバータと呼ばれることがある。
【0078】
インバータ回路101は、3相2レベルインバータ回路又は3相3レベルインバータ回路であり得る。これは、本実施形態では限定されるものではない。以下の説明では、インバータ回路101が3相2レベルインバータ回路である場合を例に説明する。
【0079】
インバータ回路101の入力端はモータ制御ユニット10の入力端であり、インバータ回路101の出力端の各相はモータ20のモータ巻線の1つの相に接続する。
【0080】
インバータ回路101は:動力バッテリパック30によって供給される直流電流を交流電流に変換し、交流電流をモータ巻線に出力するように構成される。
【0081】
コントローラ102は:モータ巻線の3相に同時に電流を出力するようにインバータ回路101を制御し、順次プリセット電流に達するようにモータ巻線の全相に出力される電流を制御するように構成される。プリセット電流は本出願の本実施形態では限定されない。
【0082】
まず、本出願の解決策の基礎となる原理及び考え方について説明する。
【0083】
図5は、本出願の一実施形態による例示的な非対称3相電流の概略図である。
【0084】
3相U、V、Wを含むモータの場合、モータの3相電流のベクトル座標軸を図に示す。
【0085】
積分電流ベクトルが、3相座標系(又はdq座標系)の全ての座標軸の電流ベクトルを含む和ベクトル(sum vector)を示す。図示された積分電流ベクトルは、Isで表される。
【0086】
モータに注入されるIsが直流電流であるか交流電流であるかにかかわらず、モータ巻線によって発生する熱を利用して動力バッテリパックを加熱することが想定されるとき、モータ巻線が不均一に熱を発生するという問題がある。これは、積分電流ベクトルIsがどのように与えられるかにかかわらず、3相の座標軸上のIsの投影(projections)Iu、Iv、Iwは必ずしも等しくないためである。したがって、比較的大きな電流成分を有する巻線の相は、高い加熱出力を有し、温度が急速に上昇し、急速に巻線温度限界に達する。さらに、比較的低い電流成分を有する巻線の相は、比較的低い加熱出力を有し、温度は依然として低い。
【0087】
しかし、この場合、モータの加熱出力は、電流の大きさをさらに増加させることによって増加させることができず、モータの加熱出力はボトルネックに遭遇する。そのため、モータ巻線の発熱能力を十分に使用することができず、その結果、動力バッテリパックの加熱速度が不足し、長時間熱を発生する巻線の相の寿命に比較的大きな影響を与える。この場合、モータの対称性や信頼性に大きな影響を与える。
【0088】
本出願の本実施形態のコントローラ102は、インバータ回路101がモータ巻線の3相に同時に電流を出力するようにインバータ回路101の動作状態を制御する。この場合、電流は、モータ巻線の3相それぞれに流れ、モータ巻線の3相が熱を発生し、したがってモータの加熱出力が増大する。さらに、コントローラは、プリセット電流に順次達するようにインバータ回路によってモータ巻線の全相に入力される電流を制御する。プリセット電流は、モータ巻線が比較的高出力で熱を発生することを可能にできる電流値であることが理解できる。いくつかの実施形態では、モータ巻線の加熱出力を最大化するために、プリセット電流は巻線に対応する最大電流値である。
【0089】
例えば、U相巻線が、最初にプリセット電流に達し、比較的高出力で熱を発生することを開始する。この場合、V相巻線及びW相巻線を流れる電流はプリセット電流よりも小さく、V相巻線及びW相巻線は比較的小さい出力で熱を発生する。その後、V相巻線はプリセット電流に達する。このとき、U相巻線及びW相巻線を流れる電流はプリセット電流よりも小さく、U相巻線及びW相巻線は比較的小さい出力で熱を発生し、U相巻線はバッファ期間に入り、温度はもはや上昇し続けることはない。その後、W相巻線はプリセット電流に達する。この場合、U相巻線及びV相巻線に流れる電流はプリセット電流よりも小さく、U相巻線及びV相巻線は比較的小さい出力で熱を発生し、V相巻線もバッファ期間に入り、温度はもはや上昇し続けることはない。このサイクルが繰り返される。
【0090】
モータ巻線の各相の電流がプリセット電流である時間が比較的短い時間の長さである場合、言い換えれば、モータ巻線の各相に流れる電流が比較的高い周波数でスイッチングされる場合、モータの巻線の3相は均一に熱を発生し、加熱出力は比較的高い状態で維持されて、モータ巻線の発熱能力を十分に使用し得る。
【0091】
いくつかの実施形態では、上述の説明におけるコントローラ102は、ASIC、PLD、DSP、又はそれらの組み合わせであり得る。PLDは、CPLD、FPGA、GAL、又はそれらの任意の組み合わせであり得る。これは、本出願の本実施形態では限定されない。
【0092】
インバータ回路101は、制御可能なスイッチングトランジスタを含む。制御可能なスイッチングトランジスタの種類は、本出願の本実施形態では限定されない。例えば、制御可能なスイッチングトランジスタは、IGBT、MOSFET、又はSiC MOSFETであり得る。
【0093】
コントローラ102は、制御可能なスイッチトランジスタの動作状態を制御するために、制御信号を制御可能なスイッチトランジスタに送信し得る。いくつかの実施形態では、制御信号はPWM信号である。
【0094】
結論として、本出願の本実施形態で提供されるモータ制御ユニットによれば、モータ巻線の3相の全てが熱を発生することができ、したがって、モータの全体的な加熱出力が増加する。また、モータ巻線の3相が均一に熱を発生することができるように、モータ巻線の3相の電流は順次プリセット電流になるように制御される。さらに、流れる電流の大きさを切り替えることにより、モータ巻線の3相のそれぞれの加熱出力は比較的高い状態に維持され得る。これにより、モータ巻線の発熱能力が十分に使用され、動力バッテリパックの加熱速度を向上させ、モータ巻線が長時間熱を発生するためにモータ巻線の1相の寿命が著しく短くなるケースを回避し、したがって、モータの対称性と信頼性がさらに向上する。
【0095】
モータ制御ユニットの具体的な制御方法について以下に説明する。
【0096】
図6は、本出願の一実施形態による3相電流の概略図である。
【0097】
ここで、Idは、モータ巻線の全相が順次到達するプリセット電流を表す。モータ巻線は、プリセット電流がモータ巻線を通過するときに熱を発生する。従って、モータ巻線パラメータの許容範囲内で、プリセット電流の大きさが大きいほど、モータ巻線の加熱出力が大きくなり、動力バッテリパックの加熱速度が高くなる。
【0098】
まず、プリセット電流の決定方法について以下に説明する。
【0099】
可能な実装では、コントローラは、動力バッテリパックの温度に基づいてプリセット電流を決定し、プリセット電流の大きさは動力バッテリパックの温度と負の相関を有する。
【0100】
動力バッテリパックについては、同じ加熱時間内で、動力バッテリパックの温度が低いほど、より多くの熱が必要であることを示し、言い換えれば、動力バッテリパックのより高い加熱速度が必要であり、モータ巻線のより高い加熱出力が必要であり、対応するプリセット電流のより大きい大きさが必要である。
【0101】
したがって、コントローラは、動力バッテリパックの温度に基づいてプリセット電流を決定し得る。より低い温度は、同じ加熱時間内に動力バッテリパックの加熱を完了するために、より大きいプリセット電流が必要であることを示す。温度とプリセット電流との間の対応は、予め決定され得、データテーブルの形で記憶され、使用のためにコントローラによって呼び出される。
【0102】
コントローラは、動力バッテリパックの温度を決定するために、VCUを使用して動力バッテリパックの温度情報を取得し得る。あるいは、コントローラは、動力バッテリパックの温度を決定ために、BMSから動力バッテリパックの温度情報を取得し得る。
【0103】
別の可能な実装では、コントローラは、取得された加熱命令に基づいてプリセット電流を決定し、加熱命令は、プリセット電流の大きさを示すために使用される。
【0104】
ドライバは、要件に基づいて動力バッテリパックの加熱出力レベル(より高い加熱出力レベルは、より高い加熱速度を示す)を決定し得る、又は動力バッテリパックの加熱時間(より短い加熱時間は、より高い加熱出力レベルに相当する)を調整し得る。ドライバによって実行される入力操作に応答して、VCUは、動力バッテリパックの現在の温度情報を参照して対応する加熱命令を決定し、加熱命令をコントローラに送信する。加熱命令は、プリセット電流の大きさを示すために使用される。
【0105】
動力バッテリパックの温度情報は、BMSによってVCUに送信される。
【0106】
加熱命令を取得した後、コントローラは対応するプリセット電流を決定する。加熱命令とプリセット電流との間の対応は予め決定されていてもよく、データテーブルの形で記憶され、使用のためにコントローラによって呼び出される。
【0107】
コントローラがモータ巻線の3相の入力電流を調整するプロセスについて以下に詳細に説明する。
【0108】
コントローラは最初に現在のプリセット位置角度を取得する。プリセット位置角度は、プリセット電流とモータのd軸との間の角度を表す。
【0109】
図では、U相電流の方向がモータのd軸であり、プリセット電流Idとモータのd軸との間の角度θ0がプリセット位置角度である例を用いる。
【0110】
コントローラは、プリセット位置角度θ0及びプリセット電流Idに基づいて、モータ巻線の各相の入力電流の振幅及び位相を決定する。詳細は後述する。
【0111】
コントローラは、モータ巻線の3相それぞれにインバータ回路によって出力される電流を、正と負の変換を交互に行うことを示すことができる波形、例えば、正弦波、矩形波、三角波になるように制御する。以下、正弦波を例として使用して具体的に説明する。他の種類の波形を使用する場合も同様の原理がある。本実施形態では詳細を説明しない。
【0112】
tが時間を表し、ωが信号の周波数を表し、iu(t)、iv(t)、及びiw(t)がそれぞれ3相U、V、Wの電流の瞬間的な方向を表す場合、次の関係がある:
【数1】
【0113】
本出願の本実施形態では、モータ巻線の3相は、モータの加熱出力が増加させるために、同時に熱を発生するように制御される。プリセット位置角度θ0は、モータ巻線の3相の電流が異なる期間にプリセット電流に達することを実装するようにIdが異なる期間に3相U,V,Wに重なるために、周期的に変化するように制御される。モータ巻線の1相がプリセット電流で熱を発生するとき、モータ巻線のこの相は最大加熱出力を有し、モータ巻線の他の2相は比較的小さい加熱出力で熱を発生する。
【0114】
コントローラは、プリセット角度範囲内で周期的に変化するようにプリセット位置角度θ0を制御する。詳細は後述する。
【0115】
可能な実装では、プリセット角度範囲は0°から360°であり、コントローラはプリセット時間間隔及びプリセット角度増分に基づいて周期的に変化するようにプリセット位置角度を制御し、プリセット角度増分の値は120の正の約数である。
【0116】
本出願の本実施形態では、プリセット時間間隔は限定されない。プリセット時間間隔は、通常、比較的短い時間、例えば第2レベルの時間に設定される。
【0117】
120の正の約数は、1、2、3、4、5、6、8、10、12、15、20、24、30、40、60、及び120を含む。例を使用して以下に説明する。以下の説明では、Iu、Iv、Iwはそれぞれ3相U、V、Wの電流の振幅である。それぞれの電流に対応する瞬間的な式については、式(a)を参照されたい。式を一つ一つ列挙することはない。
【0118】
(1)まず、プリセット角度増分が120°である実装について説明し、プリセット時間間隔が10秒(略してs)である例を用いる。
【0119】
[0s、10s]、θ0=0°、つまり、IdはU相に位置合わせされる。この場合、Iu=Id、Iv=Iw=Id/2である。
【0120】
(10s,20s]、θ0=120°、つまり、IdはV相に位置合わせされる。この場合、Iv=Id、Iu=Iw=Id/2である。
【0121】
(20s,30s]、θ0=240°、つまり、IdはW相に位置合わせされる。この場合、Iw=Id、Iu=Iv=Id/2である。
【0122】
このプロセスは、その後、動力バッテリパックの加熱が完了するまで周期的に繰り返される。
【0123】
(2)以下に、プリセット角度増分が60°である実装を説明し、プリセット時間間隔を10sである例を再度使用する。
【0124】
[0秒、10秒]、θ0=0°、すなわち、IdはU相に位置合わせされる。この場合、Iu=Id、Iv=Iw=Id/2である。
【0125】
(10s,20s]、θ0=60°、すなわち、Idは-W相に位置合わせされる。この場合、Iw=Id、Iu=Iv=Id/2である。
【0126】
(20s,30s]、θ0=120°、すなわち、IdはV相に位置合わせされる。この場合、Iv=Id、Iu=Iw=Id/2である。
【0127】
(30s,40s]、θ0=180°、すなわち、Idは-U相に位置合わせされる。この場合、Iu=Id、Iv=Iw=Id/2である。
【0128】
(40s,50s]、θ0=240°、すなわち、IdはW相に位置合わせされる。この場合、Iw=Id、Iv=Iu=Id/2である。
【0129】
(50s,60s]、θ0=300°、つまり、Idは-V相に位置合わせされる。この場合、Iv=Id,Iu=Iw=Id/2である。
【0130】
このプロセスは、その後、動力バッテリパックの加熱が完了するまで周期的に繰り返される。
【0131】
(3)プリセット角度増分が120°である別の実装を以下に説明し、プリセット時間間隔は依然として10sである。この場合、Idは軸の1つの相に位置合わせされないが、軸の1つの相に対して常に一定の角度に保たれる。一定の角度が30°である例を使用する。この場合、以下のケースがある:
【0132】
[0秒、10秒]、θ0=30°。この場合、Iu=Iw=0.866*Id、Iv=0である。
【0133】
(10s,20s]、θ0=150°、この場合、Iv=Iu=0.866*Id、Iw=0である。
【0134】
(20s,30s]、θ0=270°。この場合、Iw=Iv=0.866*Id、Iu=0である。
【0135】
このプロセスは、その後、動力バッテリパックの加熱が完了するまで周期的に繰り返される。
【0136】
(4)プリセット角度増分が60°であるの実装を以下に説明し、プリセット時間間隔は依然として10sである。この場合、Idは軸の1つの相に位置合わせされず、軸の1つの相に対して常に一定の角度に保たれる。一定の角度が30°である例を使用する。この場合、以下のケースがある。
【0137】
[0s、10s]、θ0=30°。この場合、Iu=Iw=0.866*Id、Iv=0である。
【0138】
(10s,20s]、θ0=90°。この場合、Iv=Iw=0.866*Id、Iu=0である。
【0139】
(20s,30s]、θ0=150°。この場合、Iu=Iv=0.866*Id,Iw=0である。
【0140】
(30s,40s]、θ0=210°。この場合、Iu=Iw=0.866*Id,Iv=0である。
【0141】
(40s,50s]、θ0=270°。この場合、Iv=Iw=0.866*Id,Iu=0である。
【0142】
(50s,60s)、θ0=330°。この場合、Iu=Iv=0.866*Id,Iw=0である。
【0143】
このプロセスは、その後、動力バッテリパックの加熱が完了するまで周期的に繰り返される。
【0144】
別の可能な実装では、プリセット角度範囲は0°から120°であり、コントローラは、プリセット時間間隔及びプリセット角度増分に基づいて周期的に変化するようにプリセット位置角度を制御し、プリセット角度増分の値は60の正の約数である。
【0145】
60の正の約数は、1、2、3、4、5、6、10、12、15、20、30、及び60を含む。
【0146】
例を使用して以下に説明する。以下の説明では、Iu、Iv、Iwはそれぞれ3相U、V、Wの電流の振幅である。それぞれの電流に対応する瞬間的な式については、式(a)を参照されたい。式を一つ一つ列挙することはない。
【0147】
(1)まず、プリセット角度増分を60°である実装について説明し、プリセット時間間隔が10sである例を用いる。
【0148】
[0s、10s]、θ0=0°、つまり、IdはU相に位置合わせされる。この場合、Iu=Id、Iv=Iw=Id/2である。
【0149】
(10s,20s]、θ0=60°、つまり、IdはW相に位置合わせされる。この場合、Iw=Id、Iu=Iv=Id/2である。
【0150】
(20s,30s]、θ0=120°、つまり、IdはV相に位置合わせされる。この場合、Iv=Id、Iu=Iw=Id/2である。
【0151】
このプロセスは、その後、動力バッテリパックの加熱が完了するまで周期的に繰り返される。
【0152】
(2)プリセット角度増分が60°である実装を以下に説明し、プリセット時間間隔は依然として10sである。この場合、Idは軸の1つの相に位置合わせされないが、軸の1つの相に対して常に一定の角度に保たれる。一定の角度が30°である例が使用される。この場合、以下のケースがある:
【0153】
[0s、10s]、θ0=30°。この場合、Iu=Iw=0.866*Id、Iv=0である。
【0154】
(10s,20s]、θ0=90°。この場合、Iv=Iw=0.866*Id、Iu=0である。
【0155】
(20s,30s]、θ0=150°。この場合、Iu=Iv=0.866*Id、Iw=0である。
【0156】
このプロセスは、その後、動力バッテリパックの加熱が完了するまで周期的に繰り返される。
【0157】
プリセット位置角度及びプリセット電流に基づいてモータ巻線の各相の入力電流の振幅及び位相を決定した後、コントローラは、モータ巻線の各相の入力電流の振幅及び位相並びにモータ巻線の各相のインピーダンスに基づいてモータ巻線の各相の入力電圧の振幅及び位相を決定する。
【0158】
電圧は電流とインピーダンスの積に等しい。
【0159】
モータ巻線のインピーダンスはモータ巻線の固有パラメータであり、予め決定されるとともに記憶されてもよく、使用のためにコントローラによって呼び出される。
【0160】
次に、コントローラは入力電圧の振幅に基づいてインバータ回路の制御信号のデューティサイクルを決定し、入力電圧の位相に基づいてインバータ回路の制御信号の送信時間を決定して、制御信号を用いてインバータ回路の動作状態を制御する。
【0161】
モータ制御ユニットが電気自動車に適用される場合、モータ巻線によって発生した熱を動力バッテリパックに伝達するために、電気自動車の冷却ループが直接再利用され得る。以下に具体的に説明する。
【0162】
電気自動車の冷却ループは、第1の冷却ループ及び第2の冷却ループを含む。第1の冷却ループは、モータの熱交換を実行するように構成される。ループによるモータの冷却方法については、
図2の説明を参照のこと。第1の冷却ループの冷却媒体は、モータの巻線により発生する熱を吸収し、熱交換器を用いて第2の冷却ループの冷却媒体に熱を伝達する。第2の冷却ループは:モータ制御ユニットと動力バッテリパックとの間で熱交換を行い、モータ制御ユニットから得られた熱と熱交換器から得られた熱とを動力バッテリパックに伝達して動力バッテリパックを加熱するように構成される。
【0163】
第1の冷却ループにおける冷却媒体の熱サイクルは、ポンプ装置によって駆動される。いくつかの実施形態では、コントローラは、ポンプ装置の動作状態を制御するようにさらに構成され、例えば、ポンプ装置の出力パワー、起動時間、及び停止時間を制御し得る。ポンプ装置は、車両制御ユニットなどの別のコントローラによっても制御され得ることが理解され得る。いくつかの実装では、動力バッテリパックが加熱されるとき、コントローラは、ポンプ装置を起動するように制御して、第1の冷却ループ内で循環するように冷却媒体を駆動する。
【0164】
上記実施形態のインバータ回路は、3相2レベルインバータ回路又は3相3レベルインバータ回路であり得る。これは、本出願の本実施形態では限定されない。インバータ回路の具体的な動作原理及び実装は比較的成熟した技術である。詳細は本実施形態では説明しない。
【0165】
結論として、本出願の本実施形態で提供されるモータ制御ユニットによれば、モータの3相のモータ巻線を、同時に熱を発生するように制御することができ、したがって、モータの全体的な加熱出力が増加する。インバータ回路の出力電流が、モータ巻線の全相の電流が順次プリセット電流に達するようにさらに制御される。モータ巻線の電流がプリセット電流であるとき、モータ巻線は比較的高い加熱出力を有し、したがって、モータ巻線の3相は均一に熱を発生する。さらに、流れる電流の大きさを切り替えることにより、モータ巻線の3相それぞれの加熱出力は比較的高い状態に維持され得る。これにより、モータ巻線の発熱能力が十分に使用され、動力バッテリパックを加熱する速度が増加し、モータ巻線が長時間熱を発生するためにモータ巻線の1相の寿命が著しく短くなるケースが回避され、したがって、モータの対称性及び信頼性がさらに向上する。また、動力バッテリパックを加熱するために追加の加熱装置を追加するケースが回避され、したがって、ハードウェアコストが低減される。
【0166】
上記実施の形態で提供されたモータ制御ユニットに基づいて、本出願の実施の形態は、さらにモータ制御ユニットの制御方法を提供する。以下、添付図面を参照して具体的に説明する。
【0167】
図7は、本出願の一実施形態によるモータ制御ユニットの制御方法の概略図である。
【0168】
この方法は、以下のステップを含む。
【0169】
S701:動力バッテリパックを加熱するためにモータ巻線の全ての相によって使用されるプリセット電流を決定する。
【0170】
可能な実施形態では、プリセット電流は、動力バッテリパックの温度に基づいて決定され、プリセット電流の大きさは、動力バッテリパックの温度と負の相関を有する。
【0171】
動力バッテリパックについては、同じ加熱時間内で、動力バッテリパックの温度が低いほど、より多くの熱が必要であることを示し、言い換えれば、動力バッテリパックを加熱するより高い速度が必要であり、モータ巻線のより高い加熱出力が必要であり、対応するプリセット電流のより大きい大きさが必要である。
【0172】
したがって、プリセット電流は、動力バッテリパックの温度に基づいて決定され得る。低い温度は、同じ加熱時間内に動力バッテリパックの加熱を完了するために、プリセット電流のより大きい大きさが必要であることを示す。
【0173】
動力バッテリパックの温度情報は、動力バッテリパックの温度を決定するためにVCUを使用して取得され得る。あるいは、動力バッテリパックの温度情報は、動力バッテリパックの温度を決定するために、BMSから取得され得る。
【0174】
別の可能な実装では、プリセット電流は取得された加熱命令に基づいて決定され、加熱命令はプリセット電流の大きさを示すために使用される。
【0175】
ドライバは、要件に基づいて動力バッテリパックのための加熱出力レベル(より高い加熱出力レベルは、より高い加熱速度を示す)を決定し得る、又は動力バッテリパックの加熱時間(より短い加熱時間は、より高い加熱出力レベルに相当する)を調整し得る。ドライバによって実行される入力操作に応答して、加熱命令が生成される。加熱命令は、プリセット電流の大きさを示すために使用される。
【0176】
S702:モータ巻線の3相に同時に電流を出力するようにインバータ回路を制御し、順次プリセット電流に達するようにモータ巻線の全相に入力される電流を制御する。
【0177】
いくつかの実施形態では、S702は以下のプロセスを含む:
【0178】
S702a:プリセット位置角度及びプリセット電流に基づいて、モータ巻線の各相の入力電流の振幅及び位相を決定し、プリセット位置角度は、プリセット電流とモータのd軸との間の角度を表す。
【0179】
この場合、この方法では、モータ巻線の3相が均等に熱を発生することを実装するために、プリセット位置角度は、プリセット角度範囲内で周期的に変化するように制御される必要がある。
【0180】
まず、プリセット位置角度を調整する方法について以下に説明する。
【0181】
可能な実装では、プリセット角度範囲は0°から360°であり、コントローラはプリセット時間間隔及びプリセット角度増分に基づいて周期的に変化するようにプリセット位置角度を制御し、プリセット角度増分の値は120の正の約数である。
【0182】
本出願の本実施形態では、プリセット時間間隔は限定されない。プリセット時間間隔は、通常、比較的短い時間、例えば第2レベルの時間に設定される。
【0183】
120の正の約数は、1、2、3、4、5、6、8、10、12、15、20、24、30、40、60、及び120を含む。
【0184】
別の可能な実装では、プリセット角度範囲は0°から120°であり、コントローラは、プリセット時間間隔及びプリセット角度増分に基づいて周期的に変化するようにプリセット位置角度を制御し、プリセット角度増分の値は60の正の約数である。
【0185】
60の正の約数は、1、2、3、4、5、6、10、12、15、20、30、及び60を含む。
【0186】
S702b:モータ巻線の各相の入力電流の振幅及び位相並びにモータ巻線の各相のインピーダンスに基づいて、モータ巻線の各相の入力電圧の振幅及び位相を決定する。
【0187】
電圧は電流とインピーダンスの積に等しい。モータ巻線のインピーダンスは、モータ巻線固有のパラメータであり、あらかじめ決定され得る。
【0188】
S702c:入力電圧の振幅に基づいてインバータ回路の制御信号のデューティサイクルを決定し、入力電圧の位相に基づいてインバータ回路の制御信号の送信時間を決定する。
【0189】
インバータ回路の動作状態は、制御信号を用いて制御されて、対応する3相電流を発生させる。
【0190】
結論として、本出願の本実施形態で提供されるモータ制御ユニットの制御方法によれば、モータ巻線の3相全てを、熱を発生するように制御することができ、したがってモータの全体の加熱出力が増加する。また、インバータ回路の出力電流が、モータ巻線の全相の電流が順次プリセット電流に達するように、制御される。モータ巻線の電流がプリセット電流であるとき、モータ巻線は比較的高い加熱出力を有し、したがってモータ巻線の3相は均一に熱を発生する。さらに、流れる電流の大きさを切り替えることにより、モータ巻線の3相のそれぞれの加熱出力は比較的高い状態に維持され得る。これにより、モータ巻線の熱発生能力が十分に使用され、動力バッテリパックの加熱速度が増加し、モータ巻線が長時間熱を発生するためにモータ巻線の1相の寿命が著しく短くなるケースを回避し、したがって、モータの対称性及び信頼性がさらに向上する。また、追加の加熱装置を必要とせず、占有スペースとコストを削減することができる。
【0191】
上記実施形態で提供されたモータ制御ユニットに基づいて、本出願の実施形態はさらにパワートレインを提供する。以下、添付図面を参照して具体的に説明する。
【0192】
図8は、本出願の実施形態によるパワートレインの概略図である。
【0193】
図に示すパワートレインは、モータ制御ユニット10、モータ20、第1の冷却ループ801、第2の冷却ループ802、ポンプ装置803、及び熱交換器804を含む。
【0194】
第1の冷却ループ801は、モータ20のための熱交換を行うように構成される。
【0195】
ポンプ装置803は、循環するように第1の冷却ループ801内の冷却媒体を駆動するように構成される。いくつかの実施形態では、第1の冷却ループ内の冷却媒体は冷却油であり、本出願では冷却油の種類は限定されない。
【0196】
第2の冷却ループ802は、モータ制御ユニット10と動力バッテリパック30との間で熱交換を行うように構成される。いくつかの実施態様では、第2の冷却ループ802内の冷却媒体は冷却水である。
【0197】
熱交換器804は、第1の冷却ループ内の冷却媒体と第2の冷却ループ内の冷却媒体との間の熱交換を実施するように構成される。
【0198】
パワートレインによる動力バッテリパックを加熱するプロセスを以下に詳細に説明する。
【0199】
第1の冷却ループ801における冷却媒体の循環を
図8の破線矢印で示す。第1の冷却ループ801における冷却媒体がモータ巻線により発生する熱を吸収するために、熱交換がモータのために行われる。モータ巻線による熱を発生する原理及びプロセスについては、上記実施形態の関連説明を参照のこと。詳細については、本出願の本実施形態においてここでは説明しない。その後、第1の冷却ループ801内の冷却媒体は、熱交換器804を用いて第2の冷却ループ802内の冷却媒体に熱を伝達する。
【0200】
第2の冷却ループ802内の冷却媒体は、A点から流入し、まずモータ制御ユニット10から熱を吸収し、その後、熱交換器804を通過するときに、第1の冷却ループ801内の冷却媒体によって伝達された熱を吸収して十分に温度を上昇させ、その後、動力バッテリパック30を通過して動力バッテリパック30を十分に加熱する。動力バッテリパック30を加熱した後、冷却媒体はB点に達する。いくつかの実施形態では、A点とB点は、電気自動車の放熱器、放熱システム、別の熱交換器などに接続してループを形成し得る。これは、本出願の本実施形態では限定されない。
【0201】
結論として、前述の実施形態で提供されるモータ制御ユニットが本出願の本実施形態において提供されるパワートレインに適用され、モータ制御ユニットのコントローラは、モータ巻線の3相に同時に電流を出力するようにインバータ回路を制御する。この場合、モータ巻線の3相の全てが熱を発生し、したがって、モータの全体の加熱出力が増加する。また、コントローラは、モータ巻線の全相の電流が順次プリセット電流に達するように、インバータ回路の出力電流を制御する。モータ巻線の電流がプリセット電流であるとき、モータ巻線は比較的高い加熱出力を有し、したがって、モータ巻線の3相が均一に熱を発生する。さらに、流れる電流の大きさを切り替えることにより、モータ巻線の3相のそれぞれの加熱出力が比較的高い状態に維持され得る。これにより、モータ巻線の熱発生能力が十分に利用され、動力バッテリパックの加熱速度が増加し、モータ巻線が長時間熱を発生するためにモータ巻線の1相の寿命が著しく短くなるケースが回避され、したがって、モータの対称性と信頼性がさらに向上する。パワートレインの第1の冷却ループ及び第2の冷却ループは、モータ制御ユニット及びモータ巻線が発生する熱を十分に吸収して動力バッテリパックを加熱し、したがって、動力バッテリパックの加熱速度がさらに向上する。また、追加の加熱装置が動力バッテリパックを加熱するために追加されるケースが回避され、したがって、パワートレインのコストが低減され、小型化及び高集積化されたパワートレインが設計されるケースの実現が容易になる。
【0202】
上記実施の形態で提供されたモータ制御ユニット及びパワートレインに基づいて、本出願の実施形態は、さらに電気自動車を提供する。以下、添付図面を参照して説明する。
【0203】
図9は、本出願の一実施形態による電気自動車の概略図である。
【0204】
図に示される電気自動車900は、パワートレイン800及び動力バッテリパック101を含む。
【0205】
パワートレイン800は、モータ制御ユニット、モータ、第1の冷却ループ、第2の冷却ループ、ポンプ装置、及び熱交換器を含む。パワートレイン800及びモータ制御ユニットの具体的な動作原理については、上記実施形態の関連説明を参照されたい。詳細については、本実施形態においてここでは説明しない。
【0206】
動力バッテリパック101は、パワートレイン800に直流電流を供給するように構成される。
【0207】
電気自動車が低温環境で始動されるとき、モータ制御ユニットの作用の下で、パワートレイン800のために動力バッテリパック101によって供給される直流電流は、モータの3相のモータ巻線が十分に熱を発生することを可能にし、この場合、モータ制御ユニットの電力スイッチング装置も対応する熱を発生する。パワートレイン800は、モータ巻線の3相によって発生した熱とモータ制御ユニットによって発生した熱とを冷却ループを用いて動力バッテリパック101に伝達し、動力バッテリパック101を加熱する。
【0208】
結論として、前述の実施形態で提供されるモータ制御ユニットが電気自動車に適用され、モータ制御ユニットのコントローラは、モータ巻線の3相に同時に電流を出力するようにインバータ回路を制御する。この場合、モータ巻線の3相の全てが熱を発生し、したがって、モータの全体の加熱出力が増加する。また、コントローラは、モータ巻線の全相の電流が順次プリセット電流に達するように、インバータ回路の出力電流を制御する。モータ巻線の電流がプリセット電流であるとき、モータ巻線は比較的高い加熱出力を有し、したがって、モータ巻線の3相は均一に熱を発生する。さらに、流れる電流の大きさを切り替えることにより、モータ巻線の3相のそれぞれの加熱出力が比較的高い状態に維持され得る。これにより、モータ巻線の熱発生能力が十分に使用され、動力バッテリパックの加熱速度が増加し、モータ巻線が長時間熱を発生するためにモータ巻線の1相の寿命が著しく短くなるケースが回避され、したがってモータの対称性と信頼性がさらに向上する。電気自動車のパワートレインの第1の冷却ループ及び第2の冷却ループは、モータ制御ユニット及びモータ巻線によって発生する熱を十分に吸収して動力バッテリパックを加熱し、したがって、動力バッテリパックを加熱する速度がさらに向上する。
【0209】
また、追加の加熱装置が動力バッテリパックを加熱するために追加される場合を回避し、したがって、電気自動車のコストが低減する。
【0210】
本出願において、「少なくとも1つ(のアイテム)」とは、1以上を意味し、「複数」とは、2以上を意味することが理解されるべきである。「及び/又は」という用語は、関連するオブジェクト間の関連関係を記述するために使用され、3つの関係が存在し得ることを示す。例えば、「A及び/又はB」は、次の3つの場合を示し得る:Aのみが存在する、Bのみが存在する、及びAとBの両方が存在し、ここで、AとBは単数又は複数であり得る。文字「/」は、通常、関連付けられたオブジェクト間の「又は」の関係を示す。「次のアイテム(ピース)のうちの少なくとも1つ」又はその同様の表現は、単一のアイテム(ピース)又は複数のアイテム(ピース)の任意の組み合わせを含む、これらのアイテムの任意の組み合わせを示す。例えば、a、b、又はcのうちの少なくとも1つのアイテム(ピース)は:a、b、c、「aとb」、「aとc」、「bとc」、又は「a、b、及びc」を示し得、ここで、a、b、及びcは単数又は複数であり得る。
【0211】
上述の実施形態は、単に本出願の技術的解決策を説明することを意図しているが、本出願を限定することを意図していないことに留意されたい。本出願は、前述の実施形態を参照して詳細に説明されているが、当業者は、本出願の実施形態の技術的解決の範囲から逸脱することなく、前述の実施形態に記載された技術的解決に修正を加える又はそのいくつかの技術的特徴に均等な置換を行い得ることが理解されるべきである。