(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-20
(45)【発行日】2025-01-28
(54)【発明の名称】基板支持器
(51)【国際特許分類】
H01L 21/683 20060101AFI20250121BHJP
【FI】
H01L21/68 R
(21)【出願番号】P 2021036683
(22)【出願日】2021-03-08
【審査請求日】2023-09-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】山口 伸
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 康晴
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 功英
【審査官】鈴木 孝章
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-207806(JP,A)
【文献】特開昭60-094247(JP,A)
【文献】特開2020-096136(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/683
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基台と、
前記基台の上に配置され、絶縁材料で形成された基板支持層と、
前記基板支持層内に配置され、平面視で円形状の本体部分と前記本体部分から放射状に突出する複数の突出部分とを有する静電内部電極層と、を備え
、
前記静電内部電極層は、平面視で対称な形状を有する、
基板支持器。
【請求項2】
基台と、
前記基台の上に配置され、絶縁材料で形成された基板支持層と、
前記基板支持層内に配置され、平面視で円形状の本体部分と前記本体部分から放射状に突出する複数の突出部分とを有する静電内部電極層と、を備え
、
前記基板支持層は、平面視で環状エッジ領域を有し、
前記環状エッジ領域は、内側環状部分と外側環状部分とを有し、
前記複数の突出部分の各々は、前記内側環状部分と前記外側環状部分との境界上に1つの頂点を有する略三角形状を有し、
前記複数の突出部分の各々は、前記頂点において90度以下の角度を有する、
基板支持器。
【請求項3】
基台と、
前記基台の上に配置され、絶縁材料で形成された基板支持層と、
前記基板支持層内に配置され、平面視で円形状の本体部分と前記本体部分から放射状に突出する複数の突出部分とを有する静電内部電極層と、を備え
、
前記基板支持層は、平面視で環状エッジ領域を有し、
前記環状エッジ領域は、内側環状部分と外側環状部分とを有し、
前記複数の突出部分の各々は、前記内側環状部分と前記外側環状部分との境界上に2つの頂点を有する略矩形の形状を有する、
基板支持器。
【請求項4】
前記内側環状部分は、0.1~5mmの範囲内の幅を有する、
請求項
2または請求項3に記載の基板支持器。
【請求項5】
前記静電内部電極層は、平面視で非対称な形状を有する、
請求項
2乃至請求項4のいずれか1項に記載の基板支持器。
【請求項6】
前記基板支持層は、
前記静電内部電極層の上に配置される上側部分と、
前記静電内部電極層の下に配置される下側部分と、
前記静電内部電極層を囲み、前記上側部分と前記下側部分との間に配置される中間環状部分と、を有する、
請求項
1乃至請求項5のいずれか1項に記載の基板支持器。
【請求項7】
前記絶縁材料は、セラミック材料を含む、
請求項1
乃至請求項
6のいずれか1項に記載の基板支持器。
【請求項8】
前記基板支持層は、前記基板支持層の上面から上方に突出する環状突起部を有し、
前記環状突起部は、平面視で前記複数の突出部分と重複する、
請求項1乃至請求項
7のいずれか1項に記載の基板支持器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、基板支持器に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、ウェハ等の基板に所定の処理を施すプラズマ処理システムにおいて、基板を支持する基板支持器が知られている。
【0003】
特許文献1には、一主面を板状試料を載置する載置面とするとともに静電吸着用内部電極を内蔵した基体と、この静電吸着用内部電極に直流電圧を印加する給電用端子とを備えた静電チャック部と、この静電チャック部の基体の他の主面に固定されて一体化され、高周波発生用電極となる金属ベース部とを備える、静電チャック装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、プラズマ処理システムにおいて、プラズマの熱が基板支持器に支持された基板に入熱する。このため、基板支持器に支持された基板の温度の面内均一性を向上することが求められている。
【0006】
一の側面では、本開示は、基板の温度の面内均一性を向上する基板支持器を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、一の態様によれば、基台と、前記基台の上に配置され、絶縁材料で形成された基板支持層と、前記基板支持層内に配置され、平面視で円形状の本体部分と前記本体部分から放射状に突出する複数の突出部分とを有する静電内部電極層と、を備え、前記静電内部電極層は、平面視で対称な形状を有する、基板支持器が提供される。
【発明の効果】
【0008】
一の側面によれば、基板の温度の面内均一性を向上する基板支持器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図3】基板支持部の本体部の静電チャック内の静電電極層の形状を示す平面図の一例。
【
図6】基板支持部の本体部と基板との静電吸着力を模式的に示す図の一例。
【
図7】静電電極層の外周形状と平均電束密度との関係を示すシミュレーション結果の一例。
【
図8】静電チャック内の静電電極層の形状を示す平面図の一例。
【
図9】静電チャック内の静電電極層の形状を示す平面図の他の一例。
【
図10】静電チャック内の静電電極層の形状を示す平面図の更に他の一例。
【
図11】静電チャック内の静電電極層の形状を示す平面図の更に他の一例。
【
図12】静電チャック内の静電電極層の形状を示す平面図の更に他の一例。
【
図13】静電電極層の外周形状と平均電束密度との関係を示すシミュレーション結果の一例。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して種々の例示的実施形態について詳細に説明する。なお、各図面において同一又は相当の部分に対しては同一の符号を附すこととする。
【0011】
プラズマ処理システムについて、
図1を用いて説明する。
図1は、プラズマ処理システムの一例の構成図である。
図2は、プラズマ処理装置1の一例の構成図である。
【0012】
一実施形態において、プラズマ処理システムは、プラズマ処理装置1及び制御部2を含む。プラズマ処理装置1は、プラズマ処理チャンバ10、基板支持部11及びプラズマ生成部12を含む。プラズマ処理チャンバ10は、プラズマ処理空間を有する。また、プラズマ処理チャンバ10は、少なくとも1つの処理ガスをプラズマ処理空間に供給するための少なくとも1つのガス供給口と、プラズマ処理空間からガスを排出するための少なくとも1つのガス排出口とを有する。ガス供給口は、後述するガス供給部20に接続され、ガス排出口は、後述する排気システム40に接続される。基板支持部11は、プラズマ処理空間内に配置され、基板を支持するための基板支持面を有する。
【0013】
プラズマ生成部12は、プラズマ処理空間内に供給された少なくとも1つの処理ガスからプラズマを生成するように構成される。プラズマ処理空間において形成されるプラズマは、容量結合プラズマ(CCP;Capacitively Coupled Plasma)、誘導結合プラズマ(ICP;Inductively Coupled Plasma)、ECRプラズマ(Electron-Cyclotron-resonance plasma)、ヘリコン波励起プラズマ(HWP:Helicon Wave Plasma)、又は、表面波プラズマ(SWP:Surface Wave Plasma)等であってもよい。また、AC(Alternating Current)プラズマ生成部及びDC(Direct Current)プラズマ生成部を含む、種々のタイプのプラズマ生成部が用いられてもよい。一実施形態において、ACプラズマ生成部で用いられるAC信号(AC電力)は、100kHz~10GHzの範囲内の周波数を有する。従って、AC信号は、RF(Radio Frequency)信号及びマイクロ波信号を含む。一実施形態において、RF信号は、 200kHz~150MHzの範囲内の周波数を有する。
【0014】
制御部2は、本開示において述べられる種々の工程をプラズマ処理装置1に実行させるコンピュータ実行可能な命令を処理する。制御部2は、ここで述べられる種々の工程を実行するようにプラズマ処理装置1の各要素を制御するように構成され得る。一実施形態において、制御部2の一部又は全てがプラズマ処理装置1に含まれてもよい。制御部2は、例えばコンピュータ2aを含んでもよい。コンピュータ2aは、例えば、処理部(CPU:Central Processing Unit)2a1、記憶部2a2、及び通信インターフェース2a3を含んでもよい。処理部2a1は、記憶部2a2に格納されたプログラムに基づいて種々の制御動作を行うように構成され得る。記憶部2a2は、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、又はこれらの組み合わせを含んでもよい。通信インターフェース2a3は、LAN(Local Area Network)等の通信回線を介してプラズマ処理装置1との間で通信してもよい。
【0015】
以下に、プラズマ処理装置1の一例としての容量結合プラズマ処理装置の構成例について説明する。容量結合プラズマ処理装置1は、プラズマ処理チャンバ10、ガス供給部20、電源30及び排気システム40を含む。また、プラズマ処理装置1は、基板支持部11及びガス導入部を含む。ガス導入部は、少なくとも1つの処理ガスをプラズマ処理チャンバ10内に導入するように構成される。ガス導入部は、シャワーヘッド13を含む。基板支持部11は、プラズマ処理チャンバ10内に配置される。シャワーヘッド13は、基板支持部11の上方に配置される。一実施形態において、シャワーヘッド13は、プラズマ処理チャンバ10の天部(ceiling)の少なくとも一部を構成する。プラズマ処理チャンバ10は、シャワーヘッド13、プラズマ処理チャンバ10の側壁10a及び基板支持部11により規定されたプラズマ処理空間10sを有する。側壁10aは接地される。シャワーヘッド13及び基板支持部11は、プラズマ処理チャンバ10筐体とは電気的に絶縁される。
【0016】
基板支持部(基板支持器ともいう。)11は、本体部111及びリングアセンブリ112を含む。本体部111は、基板(ウェハ)Wを支持するための中央領域(基板支持面)111aと、リングアセンブリ112を支持するための環状領域(リング支持面)111bとを有する。本体部111の環状領域111bは、平面視で本体部111の中央領域111aを囲んでいる。基板Wは、本体部111の中央領域111a上に配置され、リングアセンブリ112は、本体部111の中央領域111a上の基板Wを囲むように本体部111の環状領域111b上に配置される。一実施形態において、本体部111は、基台50(
図4で後述)及び静電チャック60(
図4で後述)を含む。基台50は、導電性部材を含む。基台50の導電性部材は下部電極として機能する。静電チャック60は、基台50の上に配置される。静電チャック60の上面は、基板支持面111aを有する。リングアセンブリ112は、1又は複数の環状部材を含む。1又は複数の環状部材のうち少なくとも1つはエッジリングである。また、図示は省略するが、基板支持部11は、静電チャック60、リングアセンブリ112及び基板Wのうち少なくとも1つをターゲット温度に調節するように構成される温調モジュールを含んでもよい。温調モジュールは、ヒータ、伝熱媒体、流路、又はこれらの組み合わせを含んでもよい。流路には、ブラインやガスのような伝熱流体が流れる。また、基板支持部11は、基板Wの裏面と基板支持面111aとの間に伝熱ガスを供給するように構成された伝熱ガス供給部を含んでもよい。
【0017】
シャワーヘッド13は、ガス供給部20からの少なくとも1つの処理ガスをプラズマ処理空間10s内に導入するように構成される。シャワーヘッド13は、少なくとも1つのガス供給口13a、少なくとも1つのガス拡散室13b、及び複数のガス導入口13cを有する。ガス供給口13aに供給された処理ガスは、ガス拡散室13bを通過して複数のガス導入口13cからプラズマ処理空間10s内に導入される。また、シャワーヘッド13は、導電性部材を含む。シャワーヘッド13の導電性部材は上部電極として機能する。なお、ガス導入部は、シャワーヘッド13に加えて、側壁10aに形成された1又は複数の開口部に取り付けられる1又は複数のサイドガス注入部(SGI:Side Gas Injector)を含んでもよい。
【0018】
ガス供給部20は、少なくとも1つのガスソース21及び少なくとも1つの流量制御器22を含んでもよい。一実施形態において、ガス供給部20は、少なくとも1つの処理ガスを、それぞれに対応のガスソース21からそれぞれに対応の流量制御器22を介してシャワーヘッド13に供給するように構成される。各流量制御器22は、例えばマスフローコントローラ又は圧力制御式の流量制御器を含んでもよい。さらに、ガス供給部20は、少なくとも1つの処理ガスの流量を変調又はパルス化する少なくとも1つの流量変調デバイスを含んでもよい。
【0019】
電源30は、少なくとも1つのインピーダンス整合回路を介してプラズマ処理チャンバ10に結合されるRF電源31を含む。RF電源31は、ソースRF信号及びバイアスRF信号のような少なくとも1つのRF信号(RF電力)を、基板支持部11の導電性部材及び/又はシャワーヘッド13の導電性部材に供給するように構成される。これにより、プラズマ処理空間10sに供給された少なくとも1つの処理ガスからプラズマが形成される。従って、RF電源31は、プラズマ生成部12の少なくとも一部として機能し得る。また、バイアスRF信号を基板支持部11の導電性部材に供給することにより、基板Wにバイアス電位が発生し、形成されたプラズマ中のイオン成分を基板Wに引き込むことができる。
【0020】
一実施形態において、RF電源31は、第1のRF生成部31a及び第2のRF生成部31bを含む。第1のRF生成部31aは、少なくとも1つのインピーダンス整合回路を介して基板支持部11の導電性部材及び/又はシャワーヘッド13の導電性部材に結合され、プラズマ生成用のソースRF信号(ソースRF電力)を生成するように構成される。一実施形態において、ソースRF信号は、13MHz~150MHzの範囲内の周波数を有する。一実施形態において、第1のRF生成部31aは、異なる周波数を有する複数のソースRF信号を生成するように構成されてもよい。生成された1又は複数のソースRF信号は、基板支持部11の導電性部材及び/又はシャワーヘッド13の導電性部材に供給される。第2のRF生成部31bは、少なくとも1つのインピーダンス整合回路を介して基板支持部11の導電性部材に結合され、バイアスRF信号(バイアスRF電力)を生成するように構成される。一実施形態において、バイアスRF信号は、ソースRF信号よりも低い周波数を有する。一実施形態において、バイアスRF信号は、400kHz~13.56MHzの範囲内の周波数を有する。一実施形態において、第2のRF生成部31bは、異なる周波数を有する複数のバイアスRF信号を生成するように構成されてもよい。生成された1又は複数のバイアスRF信号は、基板支持部11の導電性部材に供給される。また、種々の実施形態において、ソースRF信号及びバイアスRF信号のうち少なくとも1つがパルス化されてもよい。
【0021】
また、電源30は、プラズマ処理チャンバ10に結合されるDC電源32を含んでもよい。DC電源32は、第1のDC生成部32a及び第2のDC生成部32bを含む。一実施形態において、第1のDC生成部32aは、基板支持部11の導電性部材に接続され、第1のDC信号を生成するように構成される。生成された第1のDC信号は、基板支持部11の導電性部材に印加される。一実施形態において、第1のDC信号が、静電チャック60内の電極のような他の電極に印加されてもよい。一実施形態において、第2のDC生成部32bは、シャワーヘッド13の導電性部材に接続され、第2のDC信号を生成するように構成される。生成された第2のDC信号は、シャワーヘッド13の導電性部材に印加される。種々の実施形態において、第1及び第2のDC信号がパルス化されてもよい。なお、第1及び第2のDC生成部32a,32bは、RF電源31に加えて設けられてもよく、第1のDC生成部32aが第2のRF生成部31bに代えて設けられてもよい。
【0022】
排気システム40は、例えばプラズマ処理チャンバ10の底部に設けられたガス排出口10eに接続され得る。排気システム40は、圧力調整弁及び真空ポンプを含んでもよい。圧力調整弁によって、プラズマ処理空間10s内の圧力が調整される。真空ポンプは、ターボ分子ポンプ、ドライポンプ又はこれらの組み合わせを含んでもよい。
【0023】
次に、基板支持部11の本体部111について、
図3から
図5を用いて更に説明する。
図3は、基板支持部11の本体部111の静電チャック60内の静電電極層62の形状を示す平面図の一例である。
図4は、基板支持部11の本体部111のA-A断面図の一例である。
図5は、基板支持部11の本体部111のB-B断面図の一例である。なお、
図3は、静電チャック60を基板Wの載置面の方向から平面視した際の、静電電極層62の形状を示す図である。
【0024】
基板支持部11の本体部111は、基台50と、基台50の上に配置される静電チャック60と、を有する。また、静電チャック60は、絶縁材層(基板支持層)60aと、絶縁材層60a内に配置された静電電極層(静電内部電極層)62と、を有する。
【0025】
絶縁材層60aは、下側絶縁体(下側部分)61と、中間環状絶縁体(中間環状部分)63と、上側絶縁体(上側部分)64と、を有する。下側絶縁体61は、静電電極層62の下に配置される。上側絶縁体64は、静電電極層62の上に配置される。中間環状絶縁体63は、静電電極層62を囲み、上側絶縁体64と下側絶縁体61との間に配置される。なお、絶縁材層60aは、一体に形成されていてもよい。
【0026】
絶縁材層60aは、例えばセラミック材料等の絶縁材料(誘電体)で形成される。なお、下側絶縁体61、中間環状絶縁体63及び上側絶縁体64は、同じ材料で形成されてもよく、異なる材料で形成されてもよい。
【0027】
静電電極層62は、例えば金属等の導電性材料で形成される。静電電極層62は、図示しない電源から電圧が印加されることにより、静電チャック60の上面に載置された基板W(
図2参照)を静電吸着する。
【0028】
また、静電チャック60の上面(絶縁材層60aの上面)は、基板Wを支持する基板支持面111aを有する。基板支持面111aは、内周部71と、環状突起部72と、を有する。内周部71は、堀込部71aと、堀込部71aの底面から立設する突起部71bと、を有する。環状突起部72は、基板支持面111aの外周縁部に、堀込部71aの底面よりも立設する円環形状に形成されている。従って、絶縁材層60aは、平面視で環状エッジ領域90の全周に渡って配置され、絶縁材層60aの上面から上方に突出する環状突起部72を有する。
【0029】
本体部111で基板Wを支持する際、突起部71bの上面は、基板Wの裏面と当接して、基板Wを支持する。また、環状突起部72の上面は、基板Wの裏面の外周縁部と当接して、基板Wを支持する。堀込部71aによって形成される基板Wの裏面と基板支持面111aとの間の空間には、伝熱ガス供給部(図示せず)から伝熱ガス(例えば、Heガス)が供給される。また、環状突起部72の上面と基板Wの裏面の外周縁部とが密着することで、伝熱ガスの漏れを抑制する円環状のシールバンドを形成する。環状突起部72の幅(シールバンドの幅)は、例えば1~5mmの範囲内にある。
【0030】
ここで、
図3に示すように、基板支持面111aに垂直な方向からみて、中間環状絶縁体63の外周端の輪郭形状は、円形状を有している。これに対し、基板支持面111aに垂直な方向からみて、静電電極層62の外周端の輪郭形状は、複数の屈曲部分81,82を有している。換言すれば、静電電極層62の外周端の輪郭形状は、複数の角を有している。また、静電電極層62の外周端の輪郭形状は、中間環状絶縁体63の外周端の輪郭形状と平行となる部分がないように形成されている。
【0031】
図3に示す例において、静電電極層62の外周端の輪郭形状は、二点鎖線で示す外周円91及び内周円92で形成される内側環状部分(円環領域)90aにおいて、外周円91と内周円92との間を往復するように形成されている。静電電極層62の外周端の輪郭形状が外周円91で折り返すことで、径方向外側に山形状(凸形状)となる屈曲部分81が形成される。静電電極層62の外周端の輪郭形状が内周円92で折り返すことで、径方向内側に谷形状(凹形状)となる屈曲部分82が形成される。なお、以下の説明において、屈曲部分81と屈曲部分82との径方向の幅(内側環状部分90aの径方向の幅)を、山谷長hとも称する。また、山形状となる屈曲部分81の角度を先端角θとも称する。
【0032】
従って、静電電極層62の輪郭は、平面視で絶縁材層60aの環状エッジ領域90の全周に渡って複数の屈曲部分81,82を有する。
図3に示す例では、環状エッジ領域90は、内側環状部分90aと、外側環状部分90bと、を有する。静電電極層62は、平面視で内側環状部分90aの全周に渡って配列された複数の略三角形状の突出部分62bを有する。複数の突出部分62bの各々は、内側環状部分90aの外周円91上に第1の頂点を有し、内側環状部分90aの内周円92上に第2の頂点及び第3の頂点を有する。静電電極層62の輪郭は、平面視で複数の突出部分62bの各々の第1の頂点において1つの屈曲部分81を有する。また、静電電極層62の輪郭は、平面視で複数の突出部分62bの各々の第2の頂点または第3の頂点において1つの屈曲部分82を有する。
【0033】
換言すると、静電電極層62は、平面視で円形状の本体部分62aと、この本体部分62aから平面視で放射状に突出する複数の突出部分62bと、を有する。突出部分62bの数は、例えば数十~数万のオーダーである。本体部分62aは、径方向寸法R2を有する。各突出部分62bは、内側環状部分90aの外周円91上に第1の頂点を有し、内側環状部分90aの内周円92上に第2の頂点及び第3の頂点を有する略三角形状を有する。即ち、複数の突出部分62bの各々は、内側環状部分90aと外側環状部分90bとの境界上に1つの頂点を有する略三角形状を有する。なお、静電電極層62は、平面視で外側環状部分90bまで延在しない。即ち、外側環状部分90bは、平面視で静電電極層62を含まない。
【0034】
また、
図4に示すように、屈曲部分81は、環状突起部72の下方に配置される。また、
図5に示すように、屈曲部分82は、環状突起部72の下方に配置される。即ち、基板支持面111aに垂直な方向からみて、内側環状部分90aは、環状突起部72の範囲と重複するように形成されている。換言すれば、基板支持面111aに垂直な方向からみて、静電電極層62の外周端の輪郭形状は、環状突起部72の範囲と重複するように形成されている。
【0035】
図6は、基板支持部11の本体部111と基板Wとの静電吸着力を模式的に示す図の一例である。ここでは、基板Wを吸着する吸着力を黒塗り矢印で模式的に示す。
【0036】
ここで、静電電極層62に電圧を印加した際、屈曲部分81,82に電界集中が発生する。これにより、静電電極層62の外周縁部における単位面積当たりの電界強度を向上させることができる。換言すれば、シールバンドにおける単位面積当たりの電界強度を向上させる。これにより、シールバンドにおける吸着力を、基板Wの内周部71の吸着力よりも強くすることができる。
【0037】
基板Wの裏面の外周縁部と環状突起部72とで形成されるシールバンドのシール性が向上する。また、充填された伝熱ガスが基板Wの外周方向に漏れ出ることを防止することができる。これにより、基板Wと静電チャック60との伝熱性を均一化することができ、基板Wの温度の面内均一性を向上させることができる。これにより、温度に依存するプロセスにおいて、例えば、成膜速度の面内均一性(膜厚の面内均一性)、エッチングレートの面内均一性を向上させることができる。
【0038】
ここで、環状突起部72の外周端の輪郭形状と基板Wの外周縁部における平均電束密度との関係について、説明する。ここでは、本実施形態の基板支持部11と参考例の基板支持器について、シミュレーションを行った。ここでは、基板Wの半径を150mmとし、静電電極層への印加電圧を4000Vとし、リングアセンブリ112及び基板Wの電位をGNDとした。
【0039】
ここで、参考例の基板支持器として、円形状の静電電極層を有する基板支持器において、シミュレーションを行った。参考例の基板支持器において、基板Wの中心部(半径0mm~6mmの領域)における平均電束密度は4.43×10-4[C/m2]、基板Wの外周縁部(半径140mm~の領域)における平均電束密度は4.72×10-4[C/m2]、基板Wの外周縁部(半径140mm~の領域)における静電エネルギーは6.31×10-2[J]となった。
【0040】
一方、本実施形態の基板支持部11の一例として、外周円91の直径293mm、山谷長h=1.5mm,3mm,5mm、先端角θ=70deg,91deg,128degの静電電極層を有する基板支持器において、シミュレーションを行った。本実施形態の基板支持部11において、基板Wの中心部(半径0mm~6mmの領域)における平均電束密度は4.43×10-4[C/m2]であり、参考例の基板支持器と同様であることが確認できた。また、本実施形態の基板支持部11において、基板Wの外周縁部(半径140mm~の領域)における平均電束密度は7.25×10-4[C/m2]、基板Wの外周縁部(半径140mm~の領域)における静電エネルギーは7.97×10-2[J]であり、参考例の基板支持器よりも平均電束密度及び静電エネルギーが向上することが確認できた。換言すれば、基板Wの外周縁部における吸着力が向上する。
【0041】
次に、静電電極層62の外周形状と平均電束密度との関係について、
図7を用いて更に説明する。
図7は、静電電極層62の外周形状と平均電束密度との関係を示すシミュレーション結果の一例である。
【0042】
図7(a)は、山谷長hと基板Wの外周縁部における平均電束密度との関係を示すシミュレーション結果の一例である。ここでは、山谷長hを変化させながら平均電束密度を算出した。
図7(a)に示すように、山谷長hが小さいほど、平均電束密度が増加することが確認できた。
【0043】
ここで、山谷長hは、例えば0.1~5mmの範囲内にある。即ち、内側環状部分90aは、0.1~5mmの範囲内の幅を有する。山谷長hを5mm以下とすることにより、平均電束密度が参考例の基板支持器よりも向上する。また、山谷長hが小さくなりすぎると、電界集中が低下する。
【0044】
図7(b)は、先端角θと基板Wの外周縁部における平均電束密度との関係を示すシミュレーション結果の一例である。ここでは、先端角θを変化させながら平均電束密度を算出した。
図7(b)に示すように、先端角θが小さいほど、平均電束密度が増加することが確認できた。
【0045】
一実施形態において、先端角θは、例えば130deg以下である。即ち、複数の突出部分62bの各々は、内側環状部分90aと外側環状部分90bとの境界上にある頂点において130度以下の角度θを有する。一実施形態において、先端角θは、例えば90deg以下である。即ち、複数の突出部分62bの各々は、内側環状部分90aと外側環状部分90bとの境界上にある頂点において90度以下の角度θを有する。先端角θを90deg以下とすることにより、平均電束密度が参考例の基板支持器よりも向上する。
【0046】
なお、静電電極層62の形状は、
図3に示すものに限られない。静電電極層62の形状について
図8から
図12を用いてさらに説明する。なお、以下の
図8,9,11,12において、静電電極層62は、複数のセグメント(62c,62d,62g,62h)からなる形状を明示するために二点鎖線で分割して図示しているが、静電電極層62は複数のセグメントを含んで一体に形成されていてもよい。
【0047】
図8は、静電チャック60内の静電電極層62の形状を示す平面図の一例である。なお、
図8に示す静電電極層62の外周端の輪郭形状は、
図3に示した静電電極層62の外周端の輪郭形状と同様である。静電電極層62は、第1セグメント62cと、第2セグメント62dと、を周方向に複数配列した形状を有する。複数の第1セグメント62c及び複数の第2セグメント62dは、一体化される。即ち、静電電極層62は、一体成形された複数の第1セグメント62c及び複数の第2セグメント62dを有する。第1セグメント62cは、外周円91(
図3参照)に向かって径方向外側に山形状(凸形状)を有する。第2セグメント62dは、内周円92(
図3参照)に向かって径方向内側に谷形状(凹形状)を有する。また、第1セグメント62cと第2セグメント62dとは、絶縁材層60a(中間環状絶縁体63)の最外周からの距離が異なる。また、
図8に示す静電電極層62は、第1セグメント62cと第2セグメント62dとが交互に配置されている。これにより、静電チャック60の中心を通る線に対して、対称な形状となっている。
【0048】
また、第1セグメント62cには、外周円91(
図3参照)に向かって径方向外側に山形状(凸形状)となる屈曲部分81が形成されている。第2セグメント62dには、内周円92(
図3参照)に向かって径方向内側に谷形状(凹形状)となる屈曲部分82が形成されている。第1セグメント62cと隣接する第2セグメント62dにおいて、屈曲部分81から屈曲部分82へと向かう輪郭形状は、直線形状となっている。
【0049】
換言すれば、
図8に示す静電電極層62の外周端の輪郭形状は、外周円91(
図3参照)及び内周円92(
図3参照)で形成される内側環状部分90a(
図3参照)において、外周円91と内周円92との間を往復するように形成されている。具体的には、
図8に示す静電電極層62の外周端の輪郭形状は、外周円91から内周円92へと延びる辺(屈曲部分81から屈曲部分82へ向かう辺)、内周円92から外周円91へと延びる辺(屈曲部分82から屈曲部分81へ向かう辺)、を繰り返して形成される。
【0050】
図9は、静電チャック60内の静電電極層62の形状を示す平面図の他の一例である。静電電極層62は、第1セグメント62cと、第2セグメント62dと、を周方向に複数配列した形状を有する。複数の第1セグメント62c及び複数の第2セグメント62dは、一体化される。即ち、静電電極層62は、一体成形された複数の第1セグメント62c及び複数の第2セグメント62dを有する。また、
図9に示す静電電極層62は、第1セグメント62cと第2セグメント62dとが不規則に配置されている。これにより、静電チャック60の中心を通る線に対して、非対称な形状となっている。
【0051】
また、第1セグメント62cには、外周円91(
図3参照)に向かって径方向外側に山形状(凸形状)となる屈曲部分81が形成されている。第2セグメント62dには、内周円92(
図3参照)に向かって径方向内側に谷形状(凹形状)となる屈曲部分82が形成されている。第1セグメント62cと隣接する第2セグメント62dにおいて、屈曲部分81から屈曲部分82へと向かう輪郭形状は、直線形状となっている。第1セグメント62cと隣接する第1セグメント62cにおいて、径方向内側に谷形状(凹形状)となる屈曲部分83が形成される。第2セグメント62dと隣接する第2セグメント62dにおいて、径方向外側に山形状(凸形状)となる屈曲部分84が形成される。屈曲部分83,84は、内側環状部分90a内に配置される。
【0052】
図10は、静電チャック60内の静電電極層62の形状を示す平面図の更に他の一例である。
【0053】
図10に示す静電電極層62の外周端の輪郭形状は、外周円91(
図3参照)及び内周円92(
図3参照)で形成される内側環状部分90a(
図3参照)において、外周円91と内周円92との間を往復するように形成されている。具体的には、
図10に示す静電電極層62の外周端の輪郭形状は、外周円91に沿った円弧、外周円91から内周円92へと延びる径方向の辺(屈曲部分85から屈曲部分86へ向かう辺)、内周円92に沿った円弧、内周円92から外周円91へと延びる径方向の辺(屈曲部分86から屈曲部分85へ向かう辺)、を繰り返して形成される。
【0054】
従って、静電電極層62の輪郭は、平面視で絶縁材層60aの環状エッジ領域90の全周に渡って複数の屈曲部分85,86を有する。
図10に示す例では、環状エッジ領域90は、内側環状部分90aと外側環状部分90bとを有する。静電電極層62は、平面視で内側環状部分90aの全周に渡って配列された複数の略矩形の形状の突出部分62fを有する、いわゆる歯車形状を有する。複数の突出部分62fの各々は、内側環状部分90aの外周円91上に第1の頂点及び第2の頂点を有し、内側環状部分90aの内周円92上に第3の頂点及び第4の頂点を有する。静電電極層62の輪郭は、平面視で複数の突出部分62bの各々の第1の頂点及び第2の頂点において1つの屈曲部分85を有する。また、静電電極層62の輪郭は、平面視で複数の突出部分62bの各々の第3の頂点または第4の頂点において1つの屈曲部分86を有する。
【0055】
換言すると、静電電極層62は、平面視で円形状の本体部分62eと、この本体部分62eから平面視で放射状に突出する複数の突出部分62fと、を有する。突出部分62fの数は、例えば数十~数万のオーダーである。本体部分62aは、径方向寸法R2を有する。各突出部分62fは、内側環状部分90aの外周円91上に2つの頂点を有し、内側環状部分90aの内周円92上に2つの頂点を有する略矩形の形状を有する。即ち、複数の突出部分62fの各々は、内側環状部分90aと外側環状部分90bとの境界上に2つの頂点を有する略矩形の形状を有する。
【0056】
また、
図10に示す静電電極層62の外周端の輪郭形状について、
図11を用いて更に説明する。
図11は、静電チャック60内の静電電極層62の形状を示す平面図の更に他の一例である。なお、
図11に示す静電電極層62の外周端の輪郭形状は、
図10に示した静電電極層62の外周端の輪郭形状と同様である。
【0057】
静電電極層62は、平面視で周方向に交互に配列された複数の第1セグメント62g及び複数の第2セグメント62hを有する。複数の第1セグメント62g及び複数の第2セグメント62hは、一体化される。即ち、静電電極層62は、一体成形された複数の第1セグメント62g及び複数の第2セグメント62hを有する、いわゆる歯車形状を有する。第1セグメント62gは、平面視で内側環状部分90aの外周に沿って形成される第1の辺を有する。第2セグメント62hは、平面視で内側環状部分90aの内周に沿って形成される第2の辺を有する。第1の辺及び第2の辺は、直線であってもよく、湾曲していてもよい。従って、複数の第1セグメント62gの各々は、内側環状部分90aの外径寸法と同じ又はほぼ同じである第1の径方向寸法R1を有し、複数の第2セグメント62hの各々は、内側環状部分90aの内径寸法と同じ又はほぼ同じである第2の径方向寸法R2を有する。即ち、第2の径方向寸法R2は、第1の径方向寸法R1よりも小さい。第1の径方向寸法R1と第2の径方向寸法R2との差分は、0.1~5mmの範囲内にある。静電電極層62の輪郭は、平面視で複数の第1セグメント62gの各々において2つの屈曲部分85,85を有する。また、静電電極層62の輪郭は、平面視で第1セグメント62gと第2セグメント62hとの各接合部分において1つの屈曲部分86を有する。
【0058】
また、静電電極層62は、第1セグメント62gと、第2セグメント62hと、を周方向に複数配列した形状を有する。第1セグメント62gは、外周円91(
図10参照)に沿った円弧を有する扇形状を有する。第2セグメント62hは、内周円92(
図10参照)に沿った円弧を有する扇形状を有する。また、第1セグメント62gと第2セグメント62hとは、絶縁材層60a(中間環状絶縁体63)の最外周からの距離が異なる。また、第2セグメント62hは、第1セグメント62gよりも小径に形成されている。また、
図11に示す静電電極層62は、第1セグメント62gと第2セグメント62hとが交互に配置されている。これにより、静電チャック60の中心を通る線に対して、対称な形状となっている。
【0059】
また、第1セグメント62gと隣接する第2セグメント62hにおいて、第1セグメント62gの円弧と、第1セグメント62gの径方向の辺と、で形成される山形状(凸形状)となる屈曲部分85が形成されている。また、第1セグメント62gと隣接する第2セグメント62hにおいて、第2セグメント62hの円弧と、第1セグメント62gの径方向の辺と、で形成される谷形状(凹形状)となる屈曲部分86が形成される。屈曲部分85,86は、内側環状部分90a内に配置される。
【0060】
図12は、静電チャック60内の静電電極層62の形状を示す平面図の更に他の一例である。静電電極層62は、第1セグメント62gと、第2セグメント62hと、を周方向に複数配列した形状を有する。複数の第1セグメント62g及び複数の第2セグメント62hは、一体化される。即ち、静電電極層62は、一体成形された複数の第1セグメント62g及び複数の第2セグメント62hを有する。また、
図12に示す静電電極層62は、第1セグメント62gと第2セグメント62hとが不規則に配置されている。これにより、静電チャック60の中心を通る線に対して、非対称な形状となっている。
【0061】
また、第1セグメント62gと隣接する第2セグメント62hにおいて、第1セグメント62gの円弧と、第1セグメント62gの径方向の辺と、で形成される山形状(凸形状)となる屈曲部分85が形成されている。また、第1セグメント62gと隣接する第2セグメント62hにおいて、第2セグメント62hの円弧と、第1セグメント62gの径方向の辺と、で形成される谷形状(凹形状)となる屈曲部分86が形成される。屈曲部分85,86は、内側環状部分90a内に配置される。
【0062】
ここで、環状突起部72の外端形状と基板Wの外周縁部における平均電束密度との関係について、説明する。ここでは、
図11に示す本実施形態の基板支持部11の本体部111と参考例の基板支持器について、シミュレーションを行った。ここでは、基板Wの半径を150mmとし、静電電極層への印加電圧を4000Vとし、リングアセンブリ112及び基板Wの電位をGNDとした。
【0063】
図11に示す本実施形態の基板支持部11の本体部111の一例として、外周円91を直径293mm、山谷長(外周円91の径と内周円92の径の差分)h=1.5mm,3mm,5mm、歯数(第1セグメント62gの数)=36,72,144の静電電極層を有する基板支持器において、シミュレーションを行った。本実施形態の基板支持部11の本体部111において、基板Wの中心部(半径0mm~6mmの領域)における平均電束密度は4.43×10
-4[C/m
2]であり、参考例の基板支持器と同様であることが確認できた。また、
図11に示す本実施形態の基板支持部11の本体部111において、基板Wの外周縁部(半径140mm~の領域)における平均電束密度は6.05×10
-4[C/m
2]、基板Wの外周縁部(半径140mm~の領域)における静電エネルギーは7.97×10
-2[J]であり、参考例の基板支持器よりも平均電束密度及び静電エネルギーが向上することが確認できた。換言すれば、基板Wの外周縁部における吸着力が向上する。
【0064】
次に、静電電極層62の外周形状と平均電束密度との関係について、
図13を用いて更に説明する。
図13は、静電電極層62の外周形状と平均電束密度との関係を示すシミュレーション結果の一例である。
【0065】
図13(a)は、山谷長hと基板Wの外周縁部における平均電束密度との関係を示すシミュレーション結果の一例である。ここでは、山谷長hを変化させながら平均電束密度を算出した。
図13(a)に示すように、山谷長hが小さいほど、平均電束密度が増加することが確認できた。
【0066】
ここで、山谷長hは、例えば0.1~5mmの範囲内にある。即ち、内側環状部分90aは、0.1~5mmの範囲内の幅を有する。山谷長hを5mm以下とすることにより、平均電束密度が参考例の基板支持器よりも向上する。また、山谷長hが小さくなりすぎると、電界集中が低下する。
【0067】
図13(b)は、歯数Nと基板Wの外周縁部における平均電束密度との関係を示すシミュレーション結果の一例である。ここでは、歯数Nを変化させながら平均電束密度を算出した。
図13(b)に示すように、歯数Nが多いほど、平均電束密度が増加することが確認できた。
【0068】
ここで、歯数Nは、例えば数十~数万のオーダーである。歯数Nを多くすればするほど、平均電束密度が参考例の基板支持器よりも向上する。
【0069】
以上、基板支持部11の本体部111について説明したが、本開示は上記実施形態等に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本開示の要旨の範囲内において、種々の変形、改良が可能である。
【0070】
図11及び
図12に示す基板支持部11の本体部111において、第1セグメント62g及び第2セグメント62hは扇形状であるものとして説明したがこれに限られるものではない。第1セグメント62g及び第2セグメント62hは円弧を直線とした三角形状であってもよい。例えば、静電電極層62の外周端の輪郭形状は、外周円91上の2点を結ぶ辺(弦)、外周円91から内周円92へと延びる径方向の辺、内周円92上の2点を結ぶ辺(弦)、内周円92から外周円91へと延びる径方向の辺、を繰り返して形成されてもよい。
【0071】
また、静電電極層62の外周端の輪郭形状が収まる内側環状部分90aは、環状突起部72の範囲と重複するように形成されているものとして説明したが、これに限られるものではない。例えば、外周円91が環状突起部72の範囲と重複するように形成され、内周円92が環状突起部72の範囲よりも内側に形成される構成であってもよい。これにより、山形状(凸形状)となる屈曲部分81,85が環状突起部72の範囲と重複するように形成することができるので、屈曲部分81,85に電界集中を発生させ、シールバンドのシール性を向上することができる。
【符号の説明】
【0072】
11 基板支持部(基板支持器)
50 基台
60 静電チャック
60a 絶縁材層(基板支持層)
61 下側絶縁体(下側部分)
62 静電電極層(静電内部電極層)
63 中間環状絶縁体(中間環状部分)
64 上側絶縁体(上側部分)
71 内周部
71a 堀込部
71b 突起部
72 環状突起部
81~86 屈曲部分
90 環状エッジ領域
90a 内側環状部分
90b 外側環状部分
91 外周円
92 内周円
62a,62e 本体部分
62b,62f 突出部分
62c,62g 第1セグメント
62d,62h 第2セグメント
111 本体部
111a 基板支持面