(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-20
(45)【発行日】2025-01-28
(54)【発明の名称】ストレッチ器具
(51)【国際特許分類】
A61F 5/042 20060101AFI20250121BHJP
【FI】
A61F5/042 C
A61F5/042 A
(21)【出願番号】P 2019130837
(22)【出願日】2019-07-16
【審査請求日】2022-03-31
【審判番号】
【審判請求日】2024-03-20
(73)【特許権者】
【識別番号】599083411
【氏名又は名称】株式会社 MTG
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】弁理士法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松下 剛
【合議体】
【審判長】小川 恭司
【審判官】平城 俊雅
【審判官】内田 博之
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-159818(JP,A)
【文献】特開2008-6230(JP,A)
【文献】特開2013-116201(JP,A)
【文献】米国特許第5279310(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 5/00-5/41
A61G 7/00-7/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面側に使用者が仰臥して使用されるとともに、前記使用者の背骨に沿う方向に長いストレッチ器具であって、
前記使用者の上背部が上面に載置される上背部載置部と、
前記使用者の首部が上面に載置される首部載置部と、を有し、
前記首部載置部の上面は、前記上背部載置部の上面より上方に位置し、
前記首部載置部の上面に前記使用者の首部を載置することにより、前記使用者の後頭部が前記首部載置部の上面より下方に下がった状態になり、
下面
の左右方向の中央部が支持面に接触した状態において、前記下面は、前記中央部から左右方向の両端側に向かって前記ストレッチ器具を設置した支持面から離れるように湾曲し
た湾曲部を有しているストレッチ器具。
【請求項2】
前記上背部載置部の左右方向の寸法は、前記首部載置部の左右方向の寸法よりも小さい請求項1に記載のストレッチ器具。
【請求項3】
前記上背部載置部の上面と前記首部載置部の上面との間に下方に窪んだ窪み部が形成され、
前記使用者の腰部が上面に載置される腰部載置部を有する請求項1又は請求項2に記載のストレッチ器具。
【請求項4】
前記首部載置部の上面は、長さ方向と交差する方向の中央部が前記交差する方向の両端部よりも下方に位置する請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のストレッチ器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ストレッチ器具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、支持面に設置され、上面側に使用者が仰臥して使用されるとともに、使用者の背骨に沿って長尺に形成されたストレッチ器具が知られている。例えば下記特許文献1に記載されたストレッチ器具は、使用者の背中が載置される第1載置面と、使用者の臀部が載置される第2載置面と、使用者の頭部が載置される第3載置面とを有している。第1載置面と第2載置面との間、及び第1載置面と第3載置面との間には、谷部が形成されている。使用者が、ストレッチ器具の上面側に仰臥し、背筋を伸ばした姿勢を維持することにより、筋肉が効果的に伸ばされストレッチ効果が高まる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで近年、スマホやPCの操作を長時間行うことにより、姿勢が崩れて猫背になる人が増えている。猫背になると頭を前に突き出した状態が続き、頸椎の正常な湾曲が失われて頸椎がまっすぐになる、いわゆるストレートネックの状態になりやすい。頸椎がストレートネックの状態になると、頭部を支えにくくなり、頭痛や肩こりなど様々な不調の原因になりうる。このため、頚椎を湾曲状態に伸ばして、ストレートネックの状態を改善できるストレッチ器具が要望されている。
【0005】
しかしながら、上記のような構成のストレッチ器具では、使用者の頸椎が第1載置面と第3載置面との間の谷部に位置するため、頸椎を湾曲状態に伸ばすことは困難である。また、仮に頚椎を湾曲状態に伸ばしたとしても、猫背が改善されない場合には、再びストレートネックの状態になりやすいという問題もある。このため、頚椎を湾曲状態に伸ばすとともに、猫背を改善するべく胸椎を伸ばしてストレートネックの状態を改善できるストレッチ器具が望まれていた。
【0006】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、頸椎及び胸椎を伸ばしてストレートネックの状態を改善できるストレッチ器具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のストレッチ器具は、上面側に使用者が仰臥して使用されるとともに、前記使用者の背骨に沿う方向に長いストレッチ器具であって、前記使用者の上背部が上面に載置される上背部載置部と、前記使用者の首部が上面に載置される首部載置部と、を有し、前記首部載置部の上面は、前記上背部載置部の上面より上方に位置し、前記首部載置部の上面に前記使用者の首部を載置することにより、前記使用者の後頭部が前記首部載置部の上面より下方に下がった状態になる。本発明において、上背部は、起立状態の身体のうち上半身の上部であって、胸椎の高さに位置する部分であり、身体の背面を含む部分である。首部は、頭部と胴部とをつなぐ細い部分であって、起立状態の身体のうち頸椎の高さに位置する部分である。すなわち上背部は、胸椎及びその周辺部であり、首部は、頸椎及びその周辺部である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、使用者がストレッチ器具の上面側に仰臥し、首部を首部載置部の上面に載置すると、後頭部が首部載置部の上面より下方に下がって頸椎が伸びるから、頸椎を湾曲状態に伸ばすことができる。また、首部載置部の上面が、上背部載置部の上面よりも上方に位置しているから、頸椎(首部)に過度の負担がかかることを防ぐことができる。さらに、使用者が上背部を上背部載置部の上面に載置することにより、胸椎を伸ばすことができる。したがって、頸椎及び胸椎を伸ばして、ストレートネックの状態を改善できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本実施例におけるストレッチ器具の使用状態を示す図
【
図5】ストレッチ器具を示す断面図であって、
図4のA-A位置における断面に相当する断面図
【
図6】ストレッチ器具を示す断面図であって、
図5のB-B位置における断面に相当する断面図
【
図7】ストレッチ器具を示す断面図であって、
図5のC-C位置における断面に相当する断面図
【
図8】ストレッチ器具を示す断面図であって、
図5のD-D位置における断面に相当する断面図
【
図9】ストレッチ器具を示す断面図であって、
図5のE-E位置における断面に相当する断面図
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の好ましい形態を以下に示す。
本発明のストレッチ器具は、前記上背部載置部の上面と前記首部載置部の上面との間に下方に窪んだ窪み部が形成されているものとしてもよい。このような構成によれば、使用者の背中が上背部載置部の上面を中心に支持されて胸椎が反るから、より効果的にストレッチできる。
【0011】
また、本発明のストレッチ器具は、前記使用者の腰部が上面に載置される腰部載置部を有するものとしてもよい。ここで、ストレッチ器具のストレッチ効果を高めるためには、支持面から上背部載置部の上面までの高さ寸法は大きい方が望ましい。なぜなら、支持面から上背部載置部の上面までの高さ寸法が大きいと、使用者の肩甲骨の可動域が大きいため、使用者は両腕を動かしやすいからである。腰部載置部を有しない場合、使用者の腰部は、ストレッチ器具が設置される支持面に載置される。このようなものにおいて支持面から上背部載置部の上面までの高さ寸法を大きくすると、使用者の腰部の載置位置と上背部の載置位置とに大きな高低差が生じ、ストレッチ器具が使用しにくい。一方、支持面から上背部載置部の上面までの高さ寸法を小さくすると、使用者の肩甲骨が支持面に当接しやすく、肩甲骨の可動域が小さくなり、使用者が両腕を動かしにくい。しかしながら、本発明の構成によれば、使用者の腰部は、支持面より高い腰部載置部の上面に載置されるから、支持面から上背部載置部の上面までの高さ寸法を大きくできる。これにより、使用者の肩甲骨の可動域を大きくでき、ストレッチ効果を高めることができる。
【0012】
また、本発明のストレッチ器具において、前記首部載置部の上面は、長さ方向と交差する方向の中央部が前記交差する方向の両端部よりも下方に位置するものとしてもよい。このような構成によれば、首部載置部の幅方向(長さ方向と交差する方向)の中央部に首部を載置しやすいから、ストレッチ器具を容易に使用できる。
【0013】
また、本発明のストレッチ器具において、前記首部載置部は、前記ストレッチ器具の長さ方向の端部に位置してもよい。このような構成によれば、首部載置部の上面から支持面までの高さ範囲に頭部を下げることができるから、頸椎を十分に伸ばすことができる。また、ストレッチ器具は、首部載置部よりも長さ方向の端側に位置する部位を有しないから、ストレッチ器具の長さ寸法をコンパクトにできる。
【0014】
また、本発明のストレッチ器具は、前記上背部載置部の前記幅方向の寸法が、前記首部載置部の前記幅方向の寸法より小さいものであってもよい。このような構成によれば、上背部載置部の幅寸法が首部載置部の幅寸法より大きいものに比して、肩甲骨の可動域をより大きくできるから、ストレッチ効果を高めることができる。
【0015】
また、本発明のストレッチ器具において、前記ストレッチ器具の下面は、前記幅方向の中央側から両端側に向かって前記支持面から離れるように湾曲した湾曲部を有していてもよい。このような構成によれば、ストレッチ器具を幅方向に揺らして、筋肉の緊張をほぐすことができる。
【0016】
また、本発明のストレッチ器具において、前記腰部載置部はクッションを有し、前記腰部載置部のクッションは、前記首部載置部のクッションよりも上下方向の厚さ寸法が大きいものであってもよい。このような構成によれば、使用者の腰部がクッションに支持されるから、使用中に腰部が痛くなることを防止できる。
【0017】
<実施例>
以下、本発明を具体化した一実施例について、
図1~
図10を参照しつつ詳細に説明する。
本実施例におけるストレッチ器具Sは、
図1に示すように、支持面Mに設置され、上面側に使用者60が仰臥して使用される。ストレッチ器具Sは、使用者60の背骨65に沿う方向に長いものである。以下、各構成部材において、ストレッチ器具Sの長手方向を前後方向、長手方向と交差する方向を左右方向として説明する。その上で使用者60の頭部が配される側(
図1の右側)を前方、使用者60の臀部が配される側(
図1の左側)を後方とし、ストレッチ器具Sを支持面Mに設置した状態における上側(
図1の上側)を上方、下側(
図1の下側)を下方として説明する。また仰臥した状態の使用者60の右腕が配される側(
図2の左奥側)を右方、左腕が配される側(
図2の右手前側)を左方として説明する。
【0018】
ストレッチ器具Sは、
図1に示すように、長手方向の一端側から順に、首部載置部10、上背部載置部30、腰部載置部40及び臀部載置部50を備えている。首部載置部10の上面11には使用者60の首部が載置される。上背部載置部30の上面31には、使用者60の上背部が載置される。腰部載置部40の上面41には、使用者60の腰部が載置される。臀部載置部50の上面51には、使用者60の臀部が載置される。なお、ストレッチ器具Sは、左右方向の中央を基準に対称形状である。
【0019】
首部載置部10の上面11は、ストレッチ器具Sを支持面Mに設置した状態で、ストレッチ器具Sにおいて最も高い位置に配される。ストレッチ器具Sの上面は、首部載置部10、上背部載置部30、腰部載置部40、臀部載置部50の順に高さ位置が低くなっている。
【0020】
ストレッチ器具Sは、
図5に示すように、器具本体70と、クッション71と、カバー72とを備えている。器具本体70は、ストレッチ器具Sの概ね全体を構成する。クッション71は、ストレッチ器具Sの一部を構成する。クッション71は、腰部載置部40に備えられる。カバー72は、クッション71が備えられた状態の器具本体70の全体を覆う。器具本体70は、硬くて軽い素材、例えば発泡スチロール(EPS)からなる。クッション71は、弾力性を有する素材、例えば軟質ウレタンフォーム(発泡ポリウレタン)からなる。カバー72は、柔らかくて薄い素材、例えばジャージ等からなる。なお、器具本体70、クッション71及びカバー72の材料は適宜変更できる。
【0021】
首部載置部10は、ストレッチ器具Sの長手方向の端部に位置している。首部載置部10の上面11に使用者60の首部を載置すると、使用者60の頭部は首部載置部10よりも前方に位置する。使用者60の後頭部は、首部載置部10の上面11より下方に下がった状態になる。
【0022】
首部載置部10の上面11は、上向きに突出している。首部載置部10の上面11は、
図3に示すように、側面視において、頂上部(第1頂上部12と称する。)を有する山状をなしている。首部載置部10の上面11は、ストレッチ器具Sの前側の端面(第1端面73と称する。)から第1頂上部12にわたる首部第1面13と、上背部載置部30側の端部から第1頂上部12にわたる首部第2面14とを有している。首部第1面13は、第1端面73から第1頂上部12にわたり、外方に膨らむように湾曲している。首部第2面14は、上背部載置部30側の端部から第1頂上部12にわたり、斜め上向きに直線状に延出している。なお、ストレッチ器具Sの第1端面73の下方には、側面視において、丸く湾曲した形状をなす第1曲面74が形成されている。
【0023】
第1頂上部12は、
図6に示すように、左右方向の中央部が、左右方向の両端部よりも下方に位置している。すなわち第1頂上部12の左右方向の中央部に凹み部15が形成され、左右方向の両端部に隆起部16が形成されている。これにより、使用者60の首部が左右の隆起部16の間に配され、首部(頭部)が第1頂上部12から左方または右方へ落下することが防止される。なお、凹み部15では、器具本体70からカバー72が浮いた状態になっている。
【0024】
首部載置部10において器具本体70の上面には、後述する第1溝部17の左右両側に傾斜面18が形成されている。2つの傾斜面18は、第1溝部17から首部載置部10の左端及び右端に向かってそれぞれ上っている。
首部載置部10の左右の側面19は、
図6に示すように、概ね垂直に立っている。
【0025】
首部載置部10の下面は、
図6に示すように、左端から右端まで全体にわたり湾曲している。すなわち首部載置部10の下面は、左右方向の中央から左右方向の両端に向かって支持面Mから離れるように湾曲した第1湾曲部21である。第1湾曲部21は、左右方向の中央部と両端部とで曲率が異なっている。本実施例では、第1湾曲部21の左右方向における中央部は、R138mmの円弧面であり、第1湾曲部21の左右方向における両端部は、中央部の半径より小さい半径の円弧面である。
【0026】
首部載置部10は、
図10に示すように、平面視において、左右両側に膨らんだ形状をなしている。首部載置部10の左側の側面19は、前後方向の中心部が最も左端に位置するように湾曲している。首部載置部10の右側の側面19は、前後方向の中心部が最も右端に位置するように湾曲している。
【0027】
上背部載置部30の上面31は、
図3に示すように、上向きに突出している。上背部載置部30の上面31は、側面視において、第1頂上部12より低い頂上部(第2頂上部32と称する。)を有した山状をなしている。上背部載置部30の上面31は、首部載置部10側の端部から第2頂上部32にわたる上背部第1面33と、腰部載置部40側の端部から第2頂上部32にわたる上背部第2面34とを有している。第2頂上部32は、側面視において、緩やかな湾曲形状をなしている。
【0028】
上背部載置部30の第2頂上部32には、
図7に示すように、後述する第2溝部35の左右両側に概ね水平な面が形成されている。
上背部載置部30の左右の側面36は、上面31から下端に向かって左右方向における両外側に若干開くように傾斜している。
【0029】
上背部載置部30の下面の左右方向における中央部は、概ね水平である。上背部載置部30の下面の左右方向における両端部には、左右方向の中央部から両端に向かって支持面Mから離れるように湾曲した第2湾曲部37が形成されている。第2湾曲部37は、首部載置部10の第1湾曲部21よりも小さい曲率で湾曲している。
【0030】
上背部載置部30の幅寸法(左右方向の寸法)は、
図10に示すように、首部載置部10の幅寸法よりも小さい。上背部載置部30の左右の側面36は、平面視において、前後方向の中央部がやや内側(左右方向の中心側)に窪んだ緩やかな湾曲形状をなしている。上背部載置部30の幅寸法は、
図7に示すように、人の肩甲骨66の間の左右方向の寸法よりも小さい。これにより、ストレッチ器具Sに仰臥した使用者60の両腕の可動域が広くなっている。
【0031】
腰部載置部40の上面41は、
図3に示すように、上向きに突出している。腰部載置部40の上面41は、側面視において、第2頂上部32より低い頂上部(第3頂上部42と称する。)を有した山状をなしている。腰部載置部40の上面41は、上背部載置部30側の端部から第3頂上部42にわたる腰部第1面43と、臀部載置部50側の端部から第3頂上部42にわたる腰部第2面44とを有している。第3頂上部42は、側面視において、第2頂上部32よりも大きい曲率で湾曲している。腰部載置部40の突出部分(山状をなす部分)は、クッション71によって形成されている。クッション71は、器具本体70に形成された台座面45(
図5参照)に固定されている。なお、腰部載置部40の前後方向の寸法は、上背部載置部30の前後方向の寸法よりも小さい。
【0032】
第3頂上部42には、
図8に示すように、左右方向においては概ね水平な面が形成されている。
腰部載置部40の幅寸法は、
図10に示すように、上背部載置部30の幅寸法よりも大きい。ストレッチ器具Sは、腰部載置部40の幅寸法が大きいから安定性があって使い心地がよい。
【0033】
クッション71は、
図5に示すように、前後方向の中央部に第3頂上部42を有する山状をなしている。クッション71は、平面視において、台座面45と同形状をなしている。クッション71の左右の側面46は、
図8に示すように、第3頂上部42の左右両側から下側に向かって、左右方向の外側に若干開くように斜めに垂下している。クッション71の側面46は、腰部載置部40の側面49の上側部分を構成する。
【0034】
台座面45は、
図10に示すように、平面視において、概ね方形状をなしている。台座面45は、腰部載置部40の左右方向の全幅にわたる平らな面である。台座面45の前縁及び後縁には、
図5に示すように、突条45Aが突出している。台座面45の左側縁及び右側縁には、
図8に示すように、腰部載置部40の器具本体70の左右の側面47に連なる弧状面48が形成されている。腰部載置部40の器具本体70の左右の側面47は、概ね垂直に立っている。器具本体70の左右の側面47は、腰部載置部40の側面49の下側部分を構成する。
【0035】
臀部載置部50の上面51は、
図3に示すように、側面視において、腰部載置部40の後端からストレッチ器具Sの長手方向の端面(第2端面75と称する。)に向かって緩やかに下っている。臀部載置部50の上面51は、腰部載置部40の腰部第2面44よりも緩い勾配である。臀部載置部50の上下方向の厚さ寸法は、腰部載置部40の後端から第2端面75に向かって次第に減じている。なお、第2端面75は、側面視において、上下方向の全体が円弧状に湾曲している。
【0036】
臀部載置部50の左右の側面52及び第2端面75は、
図10に示すように、平面視において、全体が湾曲した形状をなしている。
図8及び
図9に示すように、腰部載置部40及び臀部載置部50の下面の左右方向の中央部は概ね平らである。腰部載置部40及び臀部載置部50の下面の左右方向の両端部は、左右方向の中央部から両端に向かって上方に湾曲した第3湾曲部53である。
【0037】
腰部載置部40の左右の側面49及び臀部載置部50の左右の側面52は、
図8及び
図9に示すように、左右方向の外側に膨らんで、緩やかに湾曲している。腰部載置部40及び臀部載置部50の左右の側面49,52は、上方に向かって幅寸法が小さくなっている。
【0038】
ストレッチ器具Sの上面には、
図3に示すように、下方に窪んだ2つの窪み部(第1窪み部76及び第2窪み部77と称する。)が形成されている。第1窪み部76は、上背部載置部30と首部載置部10との間に形成されている。第2窪み部77は、上背部載置部30と腰部載置部40との間に形成されている。第1窪み部76の下端の高さ位置は、第2窪み部77の下端の高さ位置より上方に位置している。
【0039】
第1窪み部76は、首部載置部10の首部第2面14と上背部載置部30の上背部第1面33とによって形成されている。首部第2面14は上背部第1面33よりも急な勾配である。
【0040】
第2窪み部77は、上背部載置部30の上背部第2面34と腰部載置部40の腰部第1面43とによって形成されている。上背部第2面34は、腰部第1面43よりも緩い勾配である。
【0041】
器具本体70の上面には、
図10に示すように、前後方向に長く延びた2つの溝部(第1溝部17及び第2溝部35と称する。)が形成されている。第1溝部17及び第2溝部35は、器具本体70の幅方向の中央に位置している。
【0042】
第1溝部17及び第2溝部35は、浅い溝(深さ4mm程度)である。第1溝部17及び第2溝部35の深さ寸法は、長手方向に概ね一定である。第1溝部17及び第2溝部35は、器具本体70の長手方向に直線状に延びている。第2溝部35の長さ寸法は第1溝部17の長さ寸法よりも大きい。第1溝部17の幅寸法は第2溝部35の幅寸法と概ね等しい。
【0043】
第1溝部17は、首部載置部10に形成されている。第1溝部17は、首部載置部10の上面11の概ね全長にわたっている。第2溝部35は、上背部載置部30に形成されている。第2溝部35は、上背部載置部30の上面31の概ね全長にわたっている。
【0044】
第1溝部17及び第2溝部35が形成されていることにより、使用者60の背骨65は器具本体70の上面に強く当接することが防がれる(
図7参照)。よって、使用者60の背骨65が器具本体70に強く当たって痛みを感じることを軽減できる。
【0045】
ストレッチ器具Sは、例えば下記のような大きさで形成されている。
図3に示すように、ストレッチ器具Sの全長(第1端面73から第2端面75までにわたる長手方向の寸法)L1は、814mmである。ストレッチ器具Sの第1端面73から第2頂上部32までにわたる長手方向の寸法L2は298mmである。ストレッチ器具Sを支持面Mに設置した状態における支持面Mから隆起部16の上端までの高さ寸法(首部載置部10の最大厚さ寸法)H1は221mmである。ストレッチ器具Sを支持面Mに設置した状態における支持面Mから凹み部15のカバー72までの高さ寸法H2は208mmである。ストレッチ器具Sを支持面Mに設置した状態における支持面Mから第2頂上部32までの高さ寸法H3は181mmである。ストレッチ器具Sを支持面Mに設置した状態における支持面Mから第3頂上部42までの高さ寸法H4は175mmである。
図6に示すように、ストレッチ器具Sの左右の隆起部16の上端の左右方向の間隔B1は、200.5mmである。
【0046】
上記のようなストレッチ器具Sにおいて器具本体70は、下記のような大きさで形成されている。
図10に示すように、器具本体70の全長L3は、806mmである。器具本体70の首部載置部10の左右方向の最大寸法B2は222mmである。器具本体70の上背部載置部30の左右方向の最小寸法B3は136mmである。臀部載置部50の左右方向の最大寸法B4は200mmである。
図6に示すように、器具本体70の下面から隆起部16の上端までの上下方向の寸法(首部載置部10の器具本体70の最大厚さ寸法)H5は、216mmである。
図5に示すように、器具本体70の下面から凹み部15の下端(第1溝部17の上端)までの高さ寸法H6は、201mmである。
図7に示すように、器具本体70の下面から第2頂上部32までの高さ寸法(上背部載置部30の器具本体70の最大厚さ寸法)H7は、175mmである。
【0047】
上記のようなストレッチ器具Sにおいてクッション71は、下記のような大きさで形成されている。
図8に示すように、クッション71の厚さ寸法(下面から上端までの上下方向の寸法)H8は、52mmである。
このような寸法にすることによって、体格の異なる多くの人が以下に示すストレッチをすることができる。
【0048】
次に、本実施例におけるストレッチ器具Sの使用例を説明する。
使用者60は、
図1に示すように、ストレッチ器具Sを支持面Mに設置し、ストレッチ器具Sの上面に仰臥する。この際、使用者60は、先ず臀部を臀部載置部50に載せてから上体を後方に倒す。本実施例のストレッチ器具Sは、臀部載置部50が最も低く、腰部載置部40、上背部載置部30、首部載置部10の順に高くなっているから、使用者60は容易に仰臥姿勢になることができる。
【0049】
使用者60は、首部を首部載置部10の上面11に載置する。使用者60の後頭部は、首部載置部10より前方に位置して首部載置部10の上面11よりも下がる。これにより、使用者60の頸椎67は伸び、首の筋肉の緊張が取り去られる。首部載置部10の上面11はストレッチ器具Sにおいて最も高い位置にあるため、使用者60の頸椎67は十分に伸ばされる。そして、使用者60の頸椎67は湾曲状態に伸ばされる。
【0050】
使用者60は、上背部を上背部載置部30の上面31に載置する。これにより、使用者60の上背部が上背部載置部30の上面31を中心に支持されて胸椎68が反る。頸椎67及び胸椎68の両方が伸びることにより、効果的にストレッチでき、猫背及びストレートネックの状態が改善される。
【0051】
使用者60は、腰部を腰部載置部40の上面41に載置する。使用者60の腰部は腰部載置部40のクッション71に支持される。使用者60の腰部は器具本体70に当接しないから、使用中に腰部が痛くなることを防止できる。
【0052】
使用者60は、臀部を臀部載置部50の上面51に載置する。使用者60は、仰臥姿勢のままストレッチ器具Sを左右に揺らして筋肉の緊張をほぐすことができる。使用者60は、両腕を動かして、大胸筋や腹直筋をストレッチすることができる。この際、ストレッチ器具Sは、上背部載置部30を除く部位(首部載置部10、腰部載置部40及び臀部載置部50)が幅広であることにより、使用時の横転を抑制できる。
【0053】
このようにして、使用者60は、ストレッチ器具Sに仰臥してストレッチし、ストレッチが終了すると起き上がる。この際、ストレッチ器具Sの上面の高さが、首部載置部10が最も高く、上背部載置部30、腰部載置部40、臀部載置部50の順に低くなっているから、使用者60は容易に起き上がることができる。
【0054】
次に、上記のように構成された実施例の作用および効果について説明する。
本実施例のストレッチ器具Sは、上面側に使用者60が仰臥して使用されるとともに、使用者60の背骨65に沿う方向に長いストレッチ器具Sである。ストレッチ器具Sは、使用者60の上背部が上面31に載置される上背部載置部30と、使用者60の首部が上面11に載置される首部載置部10と、を有している。首部載置部10の上面11は、上背部載置部30の上面31より上方に位置している。首部載置部10の上面11に使用者60の首部を載置することにより、使用者60の後頭部が首部載置部10の上面11より下方に下がった状態になる。
【0055】
この構成によれば、使用者60がストレッチ器具Sの上面側に仰臥し、首部を首部載置部10の上面11に載置すると、後頭部が首部載置部10の上面11より下方に下がって頸椎67が伸びるから、頸椎67を湾曲状態に伸ばすことができる。また、首部載置部10の上面11が、上背部載置部30の上面31よりも上方に位置しているから、頸椎67(首部)に過度の負担がかかることを防ぐことができる。さらに、使用者が上背部を上背部載置部30の上面31に載置することにより、胸椎68を伸ばすことができる。したがって、頸椎67及び胸椎68を伸ばして、ストレートネックの状態を改善できる。
【0056】
また、上背部載置部30の上面31と首部載置部10の上面11との間に下方に窪んだ第1窪み部76が形成されている。この構成によれば、使用者60の背中が上背部載置部30の上面31を中心に支持されて胸椎68が反るから、より効果的にストレッチできる。
【0057】
また、使用者60の腰部が上面41に載置される腰部載置部40を有する。ここで、腰部載置部40を有しない場合、使用者60の腰部は支持面Mに載置されるため、上背部載置部の高さ寸法を大きくすることは難しい。上背部載置部の高さ寸法が小さいと、使用者60の肩甲骨66が支持面Mに当接しやすいため、肩甲骨66の可動域は小さくなる。しかしながら、本発明の構成によれば、使用者60の腰部は腰部載置部40に載置されるから、支持面Mからの上背部載置部30の高さ寸法を大きくできる。これにより、使用者60の肩甲骨66の可動域を大きくでき、ストレッチ効果を高めることができる。
【0058】
また、首部載置部10の上面11は、左右方向の中央部が左右方向の両端部よりも下方に位置する。この構成によれば、首部載置部10の左右方向の中央部に首部を載置しやすいから、ストレッチ器具Sを容易に使用できる。
【0059】
また、首部載置部10は、ストレッチ器具Sの長さ方向の端部に位置している。この構成によれば、首部載置部10の上面11から支持面Mまでの高さ範囲に頭部を下げることができるから、頸椎67を十分に伸ばすことができる。また、ストレッチ器具Sは、首部載置部10よりも長手方向の端側に位置する部位を有しないから、ストレッチ器具Sの長さ寸法をコンパクトにできる。
【0060】
また、上背部載置部30の左右方向の寸法が、首部載置部10の左右方向の寸法よりも小さい。この構成によれば、上背部載置部の左右方向の寸法が首部載置部の左右方向の寸法より大きいものに比して、肩甲骨66の可動域をより大きくできるから、ストレッチ効果を高めることができる。
【0061】
また、ストレッチ器具Sの下面は、左右方向の中央側から両端側に向かって支持面Mから離れるように湾曲した第1湾曲部21、第2湾曲部37及び第3湾曲部53を有している。この構成によれば、ストレッチ器具Sを左右方向に揺らして、筋肉の緊張をほぐすことができる。
【0062】
また、腰部載置部40に、上下方向の厚さ寸法が大きいクッション71が備えられている。この構成によれば、使用者60の腰部がクッション71に支持されるから、使用中に腰部が痛くなることを防止できる。
【0063】
<他の実施例>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施例に限定されるものではなく、例えば次のような実施例も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)上記実施例では、ストレッチ器具Sを支持面Mに設置して使用するが、例えばストレッチ器具にフックやリングを備えて、ストレッチ器具の不使用時に、ストレッチ器具を壁に引っ掛けるようにしてもよい。これにより、不使用時にストレッチ器具が邪魔になる事態を防ぐことができる。
(2)上記実施例では、ストレッチ器具Sの上面に第1窪み部76が設けられているが、これに限らず、ストレッチ器具の上面に第1窪み部を設けなくてもよい。すなわち、ストレッチ器具の上面は、上背部載置部から首部載置部にわたり、窪みのない傾斜面によって構成されていてもよい。
(3)上記実施例では、ストレッチ器具Sが腰部載置部40を有しているが、必ずしもストレッチ器具は腰部載置部を有さなくてもよい。すなわち、ストレッチ器具は上背部載置部及び首部載置部のみを有するものであってもよい。
(4)上記実施例では、首部載置部10の第1頂上部12に凹み部15が形成されているが、これに限らず、第1頂上部12は左右方向に平らであってもよいし、また逆に、左右方向における中央部が両端部よりも上方に隆起した形状であってもよい。
(5)上記実施例では、首部載置部10は、ストレッチ器具Sの長手方向の端部に位置しているが、これに限らず、ストレッチ器具は、首部載置部よりも長手方向に延出した部分を有していてもよい。
(6)上記実施例では、上背部載置部30の左右方向の寸法が、首部載置部10の左右方向の寸法より小さいが、これに限らず、上背部載置部の左右方向の寸法は首部載置部の左右方向の寸法と同等もしくは左右方向の寸法より大きくてもよい。
(7)上記実施例では、ストレッチ器具Sの下面が第1湾曲部21、第2湾曲部37及び第3湾曲部53を有しているが、これに限らず、ストレッチ器具の下面は湾曲部を有していなくてもよい。すなわちストレッチ器具の下面を平坦な面のみで構成してもよい。
(8)上記実施例では、ストレッチ器具Sの下面の概ね全長に湾曲部を形成しているが、これに限らず、湾曲部はストレッチ器具の長さ方向の一部のみに形成してもよい。
(9)上記実施例では、ストレッチ器具Sの下面に形成された第1湾曲部21、第2湾曲部37及び第3湾曲部53が異なる曲率で湾曲しているが、これに限らず、ストレッチ器具の下面に、曲率が等しい湾曲部を形成してもよい。
(10)上記実施例では、第1湾曲部21がストレッチ器具Sの下面の左右方向の全体に形成され、第2湾曲部37及び第3湾曲部53がストレッチ器具Sの下面の左右方向の両端部のみに形成されているが、これに限らず、ストレッチ器具の下面の湾曲部は、少なくとも左右方向の両端部に形成されていればよく、湾曲部の形成範囲は任意に変更できる。
(11)上記実施例では、ストレッチ器具Sがクッション71を有するが、これに限らず、ストレッチ器具はクッションを有さなくてもよい。すなわち、ストレッチ器具を、器具本体及びカバーのみにより構成してもよい。なお、カバーは必ずしも備えなくてもよい。
(12)上記実施例では、腰部載置部40のみがクッション71を有するが、これに限らず、首部載置部、上背部載置部または臀部載置部にクッションを設けてもよい。クッションを設ける位置やクッションの厚さ寸法などは適宜設定できる。
(13)上記実施例では、ストレッチ器具S、器具本体70及びクッション71の大きさについて具体的な数値を例示したが、これに限らず、ストレッチ器具、器具本体及びクッションの寸法は適宜変更できる。
【符号の説明】
【0064】
S…ストレッチ器具
10…首部載置部
11…首部載置部の上面
30…上背部載置部
31…上背部載置部の上面
40…腰部載置部
60…使用者
65…背骨
76…第1窪み部