(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-20
(45)【発行日】2025-01-28
(54)【発明の名称】エアゾール製品および毛髪処理方法
(51)【国際特許分類】
A61K 8/02 20060101AFI20250121BHJP
A61K 8/33 20060101ALI20250121BHJP
A61K 8/34 20060101ALI20250121BHJP
A61K 8/44 20060101ALI20250121BHJP
A61K 8/46 20060101ALI20250121BHJP
A61Q 5/02 20060101ALI20250121BHJP
【FI】
A61K8/02
A61K8/33
A61K8/34
A61K8/44
A61K8/46
A61Q5/02
(21)【出願番号】P 2019238472
(22)【出願日】2019-12-27
【審査請求日】2022-12-20
(73)【特許権者】
【識別番号】592255176
【氏名又は名称】株式会社ミルボン
(74)【代理人】
【識別番号】100111187
【氏名又は名称】加藤 秀忠
(74)【代理人】
【識別番号】100142882
【氏名又は名称】合路 裕介
(72)【発明者】
【氏名】松本 尚人
(72)【発明者】
【氏名】大野 孝斗
【審査官】山田 陸翠
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-010757(JP,A)
【文献】特開2007-131539(JP,A)
【文献】特表2008-542446(JP,A)
【文献】特開2005-126347(JP,A)
【文献】特開平10-236921(JP,A)
【文献】特開平10-265351(JP,A)
【文献】特開2016-006129(JP,A)
【文献】特開2004-035473(JP,A)
【文献】特開2013-133319(JP,A)
【文献】国際公開第2005/123025(WO,A1)
【文献】特開2015-101545(JP,A)
【文献】特表2008-502612(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61K 9/12
A61Q 1/00-90/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原液及び噴射剤が容器に充填されているエアゾール製品であって、
前記原液には、アニオン界面活性剤及び/又は両性界面活性剤、水、並びにエタノールが配合され、
前記噴射剤としてジメチルエーテルを有し、
前記容器から吐出される泡
の温度が15℃以下であり、前記泡が毛髪洗浄のために用いられることを特徴とするエアゾール製品。
【請求項2】
前記エタノールの配合により前記容器
におけるゲージ圧力が低減している請求項1に記載のエアゾール製品。
【請求項3】
前記容器の25℃におけるゲージ圧力が0.80MPa以下である請求項1又は2に記載のエアゾール製品。
【請求項4】
前記原液の質量に対する前記ジメチルエーテルの質量比であるD/Bが5/95以上である請求項1~3のいずれか1項に記載のエアゾール製品。
【請求項5】
前記原液におけるエタノールの配合量が0.5質量%以上である請求項1~4のいずれか1項に記載のエアゾール製品。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項のエアゾール製品を使用することを特徴とする毛髪処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、毛髪洗浄用途に適したエアゾール製品、及び当該製品を使用する毛髪処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
毛髪を洗浄するための製品における毛髪洗浄用組成物には、洗浄効果に優れたアニオン界面活性剤や、その組成物を毛髪から水洗除去する際の指通りを向上させるカチオン化高分子などが配合される。
【0003】
また、特に夏季に涼感が求められることに対応し、例えば特許文献1に提案されている通り、メントールを配合した毛髪洗浄用組成物(シャンプー)も存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の通り毛髪洗浄の際の涼感が求められる場合があり、近年の国内夏季気温が高い状況においては、涼感に優れる毛髪洗浄の提案が望まれる。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑み、毛髪を洗浄する際に優れた涼感を実現できるエアゾール製品、及び毛髪処理方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るエアゾール製品は、原液及び噴射剤が容器に充填されているものであって、前記原液には、アニオン界面活性剤及び/又は両性界面活性剤、水、並びにエタノールが配合され、前記噴射剤としてジメチルエーテルを有し、毛髪洗浄のために用いられることを特徴とする。
【0008】
本発明に係るエアゾール製品は、前記容器から吐出される泡の温度が15℃以下であるものが良い。このような泡の温度であれば、より向上した涼感が得られる。
【0009】
本発明に係るエアゾール製品は、前記容器の25℃におけるゲージ圧力が0.80MPa以下であるものが良い。ゲージ圧力が0.80MPa以下であれば、温度が高くなりがちな浴室内における使用においても安全性が高まる。
【0010】
本発明に係るエアゾール製品において、前記原液の質量に対する前記ジメチルエーテルの質量比であるD/Bは、5/95以上が良い。D/Bが5/95以上であると、涼感の向上に適する。
【0011】
本発明に係るエアゾール製品において、前記原液におけるエタノールの配合量は、0.5質量%以上が良い。エタノールの配合量が0.5質量%以上であると、上記D/Bを5/95以上に設定し易くなる。
【0012】
また、本発明に係る毛髪処理方法は、本発明に係るエアゾール製品を使用することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る毛髪洗浄のために用いられるエアゾール製品によれば、アニオン界面活性剤及び/又は両性界面活性剤が配合された原液に更にエタノールが配合され、ジメチルエーテルを有する噴射剤が容器に充填されるから、優れた涼感を実現できる。
【0014】
また、本発明に係る毛髪処理方法によれば、アニオン界面活性剤及び/又は両性界面活性剤が配合された原液に更にエタノールが配合され、噴射剤がジメチルエーテルを有するエアゾール製品をもって毛髪洗浄を行うから、優れた涼感を実現できる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施形態に基づき、本発明を以下に説明する。
本実施形態に係るエアゾール製品は、原液及び噴射剤が容器に充填された製品であり、吐出される泡を用いて毛髪を洗浄する目的で使用される。
【0016】
本実施形態の原液は、アニオン界面活性剤及び/又は両性界面活性剤と、エタノールと、水とが配合されたものである(この原液における水の配合量は、例えば65質量%以上である)。当該原液には、公知の毛髪洗浄用組成物に配合されている成分を任意に配合しても良い。
【0017】
上記の通り、本実施形態の原液には、アニオン界面活性剤及び両性界面活性剤、アニオン界面活性剤、又は、両性界面活性剤が配合される。これら界面活性剤は、毛髪や頭皮の汚れを除去する成分であり、原液の発泡性にも寄与する。本実施形態の原液におけるアニオン界面活性剤及び両性界面活性剤の総配合量は、汚れ除去及び発泡性を効果的とする観点から、3.0質量%以上25質量%以下が好ましく、5.0質量%以上20質量%以下がより好ましく、7.0質量%以上15質量%以下が更に好ましい。
【0018】
上記原液にアニオン界面活性剤を配合する場合、一種又は二種以上の公知のアニオン界面活性剤を配合すると良く、当該アニオン界面活性剤としては、例えば、N-アシルアミノ酸塩、アルキルエーテルカルボン酸塩などのカルボン酸系アニオン界面活性剤;N-アシルメチルタウリン塩などのスルホン酸系アニオン界面活性剤;アルキル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩などの硫酸系アニオン界面活性剤;ポリオキシエチレンスルホコハク酸アルキルなどのスルホサクシネート系アニオン界面活性剤;が挙げられる(アニオン界面活性剤の塩の形態としては、ナトリウム塩、カリウム塩、トリエタノール塩、モノエタノール塩などが挙げられる。)。本実施形態の原液におけるアニオン界面活性剤の配合量は、汚れ除去及び発泡性を効果的とする観点から、3.0質量%以上25質量%以下が好ましく、5.0質量%以上20質量%以下がより好ましく、7.0質量%以上15質量%以下が更に好ましい。
【0019】
上記原液に両性界面活性剤を配合する場合、一種又は二種以上の公知の両性界面活性剤を配合すると良く、当該両性界面活性剤としては、例えば、アルキルジメチルアミノ酢酸ベタイン、脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン、アルキルジヒドロキシエチルアミノ酢酸ベタインなどの酢酸ベタイン型両性界面活性剤;N-アルキル-N,N-ジメチルアンモニウム-N-プロピルスルホン酸塩、N-アルキル-N,N-ジメチルアンモニウム-N-(2-ヒドロキシプロピル)スルホン酸塩、N-脂肪酸アミドプロピル-N,N-ジメチルアンモニウム-N-(2-ヒドロキシプロピル)スルホン酸塩などのスルホベタイン型両性界面活性剤;が挙げられる。本実施形態の原液における両性界面活性剤の配合量は、例えば、3.0質量%以上10質量%以下である。
【0020】
本実施形態の原液には、上記の通り、エタノールが配合される。エタノールを原液に配合すると、ジメチルエーテルの充填量を多くすることで生じる容器ゲージ圧力の上昇傾向を低減できる。本実施形態の原液におけるエタノールの配合量は、容器のゲージ圧力を抑えつつ涼感を向上させるためにジメチルエーテルの充填量を高める観点から、0.5質量%以上が良く、1.0質量%以上が好ましく、1.5質量%以上がより好ましく、2.0質量%以上が更に好ましく、2.5質量%以上がより更に好ましい。一方、原液におけるエタノール配合量の上限は、頭皮への刺激抑制および染毛処理した毛髪の退色抑制の観点から、20質量%が良く、15質量%が好ましく、10質量%がより好ましく、5.0質量%が更に好ましい。
【0021】
本実施形態の原液には、上記の通り、公知の毛髪洗浄用組成物に配合されている成分を任意に配合できる。この任意成分としては、例えば、カチオン性高分子、低級アルコール、多価アルコール、ノニオン界面活性剤、糖類、アミノ酸、動植物抽出物、無機化合物、香料、防腐剤が挙げられる。
【0022】
上記原液にカチオン性高分子を配合すれば、この原液を毛髪から洗い流すときの指通り性が向上する。当該カチオン性高分子としては、カチオン化セルロース、カチオン化グアーガム、ビニルピロリドン・N,N-ジメチルアミノエチルメタクリル酸共重合体ジエチル硫酸塩、アクリルアミド・アクリル酸・塩化ジメチルジアリルアンモニウム共重合体、N,N-ジメチルアミノエチルメタクリル酸ジエチル硫酸塩・N,N-ジメチルアクリルアミド・ジメタクリル酸ポリエチレングリコール共重合体などが挙げられる。原液におけるカチオン性高分子の配合量は、例えば0.1質量%以上1.0質量%以下である。
【0023】
本実施形態の原液の剤型は、液状であると良い。液状である原液の粘度は、B型粘度計を使用して測定(温度:25℃、ロータ:粘度に応じて適宜設定、ロータの回転速度:粘度に応じて適宜設定)した場合、例えば、粘度計測開始から60秒後の値が10mPa・s以上500mPa・s以下である。
【0024】
本実施形態の原液のpHは、例えば4.0以上7.5以下である。
【0025】
本実施形態の発泡性エアゾール製品において、容器内での原液の充填量は、適宜設定される。その充填量は、例えば、容器の容積100mlあたり、40g以上65g以下が良く、40g以上60g以下が好ましい。40g以上にすることで、製品の使用期間が長くなり、65g以下にすることで、容器に充填する噴射剤の増量に好ましい。
【0026】
本実施形態の噴射剤は、ジメチルエーテルを有する。また、ジメチルエーテル以外の公知の噴射剤を任意に用いても良い。
【0027】
上記の通り、本実施形態のエアゾール製品における容器にジメチルエーテルが充填される。ジメチルエーテルは、その容器から泡を吐出させると共に、毛髪洗浄時の涼感向上に必要な泡の温度低下を実現する。本実施形態のエアゾール製品において、原液の質量に対するジメチルエーテルの質量比であるD/Bは、5/95以上が良く、10/90以上が好ましく、15/85以上がより好ましく、20/80以上が更に好ましく、25/75以上が更により好ましく、30/70以上が最も好ましい。一方、D/Bの上限は、容器のゲージ圧力をある程度抑える観点から、40/60である。
【0028】
なお、ジメチルエーテルの充填量増加は、容器のゲージ圧力の上昇傾向を伴う。毛髪洗浄用製品は、屋内でも比較的気温が高い浴室で使用される場合が多いため、ジメチルエーテルによるゲージ圧力上昇が生じやすい。そのため、毛髪洗浄用製品においてジメチルエーテルを充填しないのが技術常識である。しかし、本実施形態では原液へのエタノール配合で低減可能なので、そのゲージ圧力の上昇を低減しつつ、D/B(原液の質量に対するジメチルエーテルの質量比)を5/95以上に設定できる。
【0029】
本実施形態では、血行促進作用が知られている二酸化炭素を任意の噴射剤としても良い。このとき充填する二酸化炭素の量は、原液100質量部に対して、0.3質量部以上が良く、0.5質量部以上が好ましい。一方の二酸化炭素の充填量の上限は、容器ゲージ圧力の上昇を抑制する観点から、原液100質量部に対して1.5質量部である。
【0030】
本実施形態では、液化ガス、イソペンタン、又は、液化ガス及びイソペンタンを、泡を持続させるための任意の噴射剤としても良い。ただし、容器から吐出される泡の温度について、液化ガスとイソペンタンはジメチルエーテルによる温度低下を阻害するので、充填する液化ガス及びイソペンタンの総量は、原液100質量部に対して、1.0質量部未満が良く、0.5質量部未満が好ましく、0.3質量部未満がより好ましく、0.1質量部未満が更に好ましい。一方の二酸化炭素の充填量の上限は、容器ゲージ圧力の上昇を抑制する観点から、原液100質量部に対して1.5質量部である。
【0031】
本実施形態のエアゾール製品における容器は、公知の耐圧性容器であると良く、その材質は、例えばアルミニウム、アルミニウム合金、ブリキ、鋼などの金属製のものである。この容器は、内面に樹脂層が積層されているもの、内部に内袋を有するものであってもよい。
【0032】
本実施形態のエアゾール製品における容器のゲージ圧力は、安全性の観点から、25℃の温度条件で0.80MPa以下であり、0.75MPa以下が良く、0.70MPa以下が好ましく、0.65MPa以下がより好ましく、0.60MPa以下が更に好ましく、0.55MPa以下がより更に好ましい。このようなゲージ圧力上限を設定しても、原液にエタノールが配合されているので、室内温度が高い浴室内でのゲージ圧力を低減できる。一方、25℃でのゲージ圧力の下限は、容器内へのジメチルエーテルの充填量を増加させるためには、0.25MPaが良く、0.30MPaが好ましく、0.35MPaがより好ましく、0.40MPaが更に好ましい。
【0033】
本実施形態のエアゾール製品は、毛髪洗浄のための毛髪処理方法で使用される。この使用の際には、容器から吐出させた泡を、頭部に塗布し、水洗する工程を経る。吐出させる泡の温度は、涼感ないし冷感を高める観点から、15℃以下が良く、10℃以下が好ましく、5℃以下がより好ましく、0℃以下が更に好ましい。その泡の温度低下は、ジメチルエタノールの充填量の増加により可能となる。
【実施例】
【0034】
以下、実施例に基づき本発明を詳述するが、この実施例の記載に基づいて本発明が限定的に解釈されるものではない。
【0035】
泡吐出が可能な実施例及び比較例のエアゾール製品を、容器に原液及び噴射剤を充填することで製造した。詳細は以下の通りとした。
【0036】
(原液)
オレフィン(C14-16)スルホン酸Naを4質量%、ラウレス-11酢酸Naを3質量%、ココイルグルタミン酸Naを2質量%、スルホコハク酸ラウレス2Naを1質量%、ラウリルベタインを3質量%、水を79質量%、エタノールを3質量%、クエン酸を0.6質量%、乳酸Alを0.5質量%、ポリクオタニウム-10を0.4質量%、ポリクオタニウム-52を0.1質量%、PEG-32を0.3質量%、メントールを0.6質量%、オレンジ油を0.2質量%、防腐剤を0.7質量%、香料を0.4質量%配合した液状の原液を調製した。この原液のpHについては、5程度に調整した。
【0037】
上記原液を実施例1a、実施例2a~2bの原液とした。実施例1bの原液は、実施例1aの原液100質量部に対してエタノールを5質量部添加したものとした(実施例1bの原液におけるエタノール濃度は、7.6質量%)。実施例1cの原液は、実施例1aの原液100質量部に対してエタノールを10質量部添加したものとした(実施例1cの原液におけるエタノール濃度は、11.8質量%)。実施例1dの原液は、実施例1aの原液100質量部に対してエタノールを20質量部添加したものとした(実施例1dの原液におけるエタノール濃度は、19.2質量%)。
【0038】
(容器)
直径53mm、高さ17cmの金属製容器。
【0039】
(実施例1a~1d)
総量160gの原液と噴射剤(ジメチルエーテルのみ)を容器に充填し、実施例1a~1dのエアゾール製品を製造した。原液に対する噴射剤の質量比(噴射剤/原液)は、下記表1の通りとした。
【0040】
実施例1a~1dのエアゾール製品の容器ゲージ圧力を、25℃、50℃の雰囲気温度で測定した。各ゲージ圧力は下記表1の通りであり、エタノールの配合量の増加がゲージ圧力の低下に効果的であることを確認できる。
下記表1において、
【0041】
【0042】
(実施例2a~2b)
総量160gの原液と噴射剤(ジメチルエーテルのみ)を容器に充填し、実施例2a~2bのエアゾール製品を製造した。原液に対する噴射剤の質量比(噴射剤/原液)は、下記表2の通りとした。
【0043】
アズワン社製デジタル温度計「TM-150」を使用して、吐出させた泡の温度を測定した。この測定においては、デジタル温度計の棒状センサーを挿し入れた状態のステンレス製容器(内容量500ml程度)の内部に、実施例2a~2bのエアゾール製品から吐出した泡を注入した。その後、デジタル温度計が表示する最低温度を記録した。その温度は下記表2の通りであり、ジメチルエーテルの充填量の増加が泡の温度低下に効果的であることを確認できる。
【0044】