(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-20
(45)【発行日】2025-01-28
(54)【発明の名称】検出装置および検出方法
(51)【国際特許分類】
H04N 25/704 20230101AFI20250121BHJP
G02B 7/34 20210101ALI20250121BHJP
H04N 23/67 20230101ALI20250121BHJP
H10F 39/18 20250101ALI20250121BHJP
H04N 25/62 20230101ALI20250121BHJP
【FI】
H04N25/704
G02B7/34
H04N23/67
H01L27/146 A
H04N25/62
(21)【出願番号】P 2020149838
(22)【出願日】2020-09-07
【審査請求日】2023-08-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000000376
【氏名又は名称】オリンパス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109209
【氏名又は名称】小林 一任
(72)【発明者】
【氏名】菊地 哲央
(72)【発明者】
【氏名】畠山 陵
【審査官】▲うし▼田 真悟
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-126680(JP,A)
【文献】特開2013-149743(JP,A)
【文献】特開2015-136087(JP,A)
【文献】特開2004-032018(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 25/704
H04N 23/67
H04N 25/62
G02B 7/34
H01L 27/146
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロレンズに対応する複数の受光部を有する画素を複数備え、上記複数の受光部は所定の複数の位相差検出方向に対応して設けられ、上記位相差検出方向に応じて上記複数の受光部の出力信号を加算して加算信号を出力することが可能な撮像素子と、
上記撮像素子の上記加算信号に基づく位相差検出によって焦点検出または奥行き検出を行う制御部と、
を具備し、
上記撮像素子は、上記複数の位相差検出方向に応じて上記受光部の間のポテンシャル障壁の高さを異ならせ、
上記制御部は、上記撮像素子へ特定の位相差検出方向を指示して上記撮像素子の蓄積動作を実行させ、上記位相差検出方向に応じて異なる蓄積判定レベルを設定し、上記加算信号と上記蓄積判定レベルに基づいて上記撮像素子の蓄積動作を制御
し、
上記撮像素子は、上記指示された特定の位相差検出方向が上記複数の位相差検出方向のうちの上記受光部の間のポテンシャル障壁の高さがより高い第1の位相差検出方向である場合に、
上記第1の位相差検出方向に垂直な第2の位相差検出方向の位相差検出に対応する上記出力信号同士を上記複数の画素内にて加算するとともに、
上記第1の位相差検出方向の第1の側に対応する上記加算した出力信号同士、および第1の側と反対側の第2の側に対応する上記加算した出力信号同士をそれぞれ上記第2の位相差検出方向の所定数の上記複数の画素にて加算平均し、上記第1の位相差検出方向については加算平均しないで上記加算信号を生成する、
ことを特徴とする検出装置。
【請求項2】
上記制御部は、上記撮像素子が出力する上記加算信号に基づいて表示部にてライブビュー表示を行うライブビュー動作を実行可能であり、
上記撮像素子は、
上記ライブビュー動作において、上記第2の位相差検出方向の位相差検出に対応する上記出力信号同士を上記複数の画素内にて加算するとともに、
上記第1の位相差検出方向と上記第2の位相差検出方向の両方について上記複数の画素の同じ側に対応する上記加算した出力信号同士をそれぞれ所定数の上記複数の画素について加算平均して上記加算信号を生成することを特徴とする請求項1に記載の検出装置。
【請求項3】
上記制御部は、
上記ライブビュー動作において、上記加算信号を上記撮像素子から入力し、上記第2の位相差検出方向に対をなす上記加算信号を加算して表示用画像データを生成することを特徴とする請求項2に記載の検出装置。
【請求項4】
上記制御部は、上記位相差検出方向に対応する上記ポテンシャル障壁の高さに応じて、上記蓄積判定レベルを設定することを特徴とする請求項1
乃至3のいずれか一項に記載の検出装置。
【請求項5】
上記制御部は、上記加算信号と上記蓄積判定レベルを比較し、比較結果に基づいて上記撮像素子の蓄積動作を制御することを特徴とする請求項1
乃至3のいずれか一項に記載の検出装置。
【請求項6】
上記撮像素子は、上記加算信号を増幅して出力することが可能であり、
上記制御部は、上記撮像素子の増幅率を設定し、設定した増幅率に応じて上記蓄積判定レベルを設定することを特徴とする請求項1乃至
5のいずれか一項に記載の検出装置。
【請求項7】
上記制御部は、上記位相差検出方向に対応する上記ポテンシャル障壁の高さに応じ飽和判定レベルを設定し、上記撮像素子の出力する上記加算信号と上記飽和判定レベルを比較して飽和を判定することを特徴とする請求項1乃至
6のいずれか一項に記載の検出装置。
【請求項8】
上記制御部は、上記判定結果に基づき焦点検出または奥行き検出を行うことを特徴とする請求項
7に記載の検出装置。
【請求項9】
請求項1に記載の検出装置を有する撮像装置であって、
上記撮像素子の上記複数の受光部の出力信号の全部を加算した加算信号に基づく静止画の連続撮影が可能であり、
上記制御部は、上記静止画の連続撮影の間で、上記位相差検出方向に応じた上記複数の受光部の加算信号を上記撮像素子により撮像させて取得する場合に、上記位相差検出方向に応じた上記複数の受光部の加算信号として、上記ポテンシャル障壁をより高く設定した位相差検出方向に対応する加算信号だけを読み出すことを特徴とする撮像装置。
【請求項10】
マイクロレンズに対応する複数の受光部を有する画素を複数備え、上記複数の受光部は所定の複数の位相差検出方向に対応して設けられ、上記位相差検出方向に応じて上記複数の受光部の出力信号を加算して加算信号を出力することが可能な撮像素子を有する検出装置の検出方法において、
上記撮像素子は、上記複数の位相差検出方向に応じて上記受光部の間のポテンシャル障壁の高さを異ならせ、
上記撮像素子へ特定の位相差検出方向を指示して上記撮像素子の蓄積動作を実行させ、上記位相差検出方向に応じて異なる蓄積判定レベルを設定し、上記加算信号と上記蓄積判定レベルに基づいて上記撮像素子の蓄積動作を制御し、
上記撮像素子の上記加算信号に基づく位相差検出によって焦点検出または奥行き検出を行い、
上記撮像素子は、上記指示された特定の位相差検出方向が上記複数の位相差検出方向のうちの上記受光部の間のポテンシャル障壁の高さがより高い第1の位相差検出方向である場合に、
上記第1の位相差検出方向に垂直な第2の位相差検出方向の位相差検出に対応する上記出力信号を上記複数の画素内にて加算するとともに、
上記第1の位相差検出方向の第1の側に対応する上記加算した出力信号同士、および第1の側と反対側の第2の側に対応する上記加算した出力信号同士をそれぞれ上記第2の位相差検出方向の所定数の上記複数の画素にて加算平均し、上記第1の位相差検出方向については加算平均しないで上記加算信号を生成する、
ことを特徴とする検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロレンズに対応する複数の画素を備える撮像素子を有し、複数の画素出力を用いて出力信号の位相差を求め、この位相差に基づいて、焦点検出または奥行き検出を行うことのできる検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
撮像素子の撮像面に複数のマイクロレンズと、各マイクロレンズに対応して複数の画素を配置し、結像光学系の射出瞳を分割した領域を通る複数の光束を、各画素によってそれぞれ光電変換し、この光電変換された出力信号の位相差を検出し、この位相差に基づいて結像光学系のデフォーカス量を検出する焦点検出装置が知られている。また、この分割された各画素の出力信号を加算することにより、1画素分の画像信号として使用することも知られている。
【0003】
例えば、特許文献1に示される光電変換装置は、撮像素子のマイクロレンズ1個に対応して4分割フォトダイオード(PD)を配置する構成を有し、4分割PDのうちの上下(TB)のPDの電荷を加算した画素出力を使用して左右(RL)方向の位相差検出を行っている。また、左右(RL)のPDの電荷を加算した画素出力を使用して上下(TB)方向の位相差検出を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
撮像素子の画素に斜めから光が入射すると、一対の画素のそれぞれにおいて光電変換によって発生する電荷量が相違し、一部の画素の電荷が飽和してしまう。この場合には、一対の画素信号(電荷)を加算して合成した画像信号の線形性が失われてしまう。特許文献1では、4分割PDのいずれか1個において、光電変換された電荷量が飽和すると、RL、TBの両方とも位相差検出が不能となってしまう。そのため、特許文献1では、1PDのポテンシャル障壁に相当する電荷量(飽和)に対応する閾値電圧を、通常の閾値電圧の1/4に設定する必要がある。
【0006】
特許文献1に示されるように、PD間のポテンシャル障壁を下げるようにすれば、一部の画素(PD)が飽和してしまっても、合成した画像信号は飽和することがない。しかしながら、特許文献1では、閾値電圧を通常の閾値電圧の1/4に設定しなければならないことから、焦点検出(AF)用信号のダイナミックレンジが不十分になってしまい、検出精度が低下してしまう。
【0007】
本発明は、このような事情を鑑みてなされたものであり、高精度かつ高速な焦点検出または奥行き検出ができる検出装置および検出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため第1の発明に係る検出装置は、マイクロレンズに対応する複数の受光部を有する画素を複数備え、上記複数の受光部は所定の複数の位相差検出方向に対応して設けられ、上記位相差検出方向に応じて上記複数の受光部の出力信号を加算して加算信号を出力することが可能な撮像素子と、上記撮像素子の上記加算信号に基づく位相差検出によって焦点検出または奥行き検出を行う制御部と、を具備し、上記撮像素子は、上記複数の位相差検出方向に応じて上記受光部の間のポテンシャル障壁の高さを異ならせ、 上記制御部は、上記撮像素子へ特定の位相差検出方向を指示して上記撮像素子の蓄積動作を実行させ、上記位相差検出方向に応じて異なる蓄積判定レベルを設定し、上記加算信号と上記蓄積判定レベルに基づいて上記撮像素子の蓄積動作を制御し、上記撮像素子は、上記指示された特定の位相差検出方向が上記複数の位相差検出方向のうちの上記受光部の間のポテンシャル障壁の高さがより高い第1の位相差検出方向である場合に、上記第1の位相差検出方向に垂直な第2の位相差検出方向の位相差検出に対応する上記出力信号同士を上記複数の画素内にて加算するとともに、上記第1の位相差検出方向の第1の側に対応する上記加算した出力信号同士、および第1の側と反対側の第2の側に対応する上記加算した出力信号同士をそれぞれ上記第2の位相差検出方向の所定数の上記複数の画素にて加算平均し、上記第1の位相差検出方向については加算平均しないで上記加算信号を生成する。
【0009】
第2の発明に係る検出装置は、上記第1の発明において、上記制御部は、上記撮像素子が出力する上記加算信号に基づいて表示部にてライブビュー表示を行うライブビュー動作を実行可能であり、上記撮像素子は、上記ライブビュー動作において、上記第2の位相差検出方向の位相差検出に対応する上記出力信号同士を上記複数の画素内にて加算するとともに、上記第1の位相差検出方向と上記第2の位相差検出方向の両方について上記複数の画素の同じ側に対応する上記加算した出力信号同士をそれぞれ所定数の上記複数の画素について加算平均して上記加算信号を生成する。
第3の発明に係る検出装置は、上記第2の発明において、上記制御部は、上記ライブビュー動作において、上記加算信号を上記撮像素子から入力し、上記第2の位相差検出方向に対をなす上記加算信号を加算して表示用画像データを生成する。
第4の発明に係る検出装置は、上記第1乃至第3の発明において、上記制御部は、上記位相差検出方向に対応する上記ポテンシャル障壁の高さに応じて、上記蓄積判定レベルを設定する。
第5の発明に係る検出装置は、上記第1乃至第3の発明において、上記制御部は、上記加算信号と上記蓄積判定レベルを比較し、比較結果に基づいて上記撮像素子の蓄積動作を制御する。
【0010】
第6の発明に係る検出装置は、上記第1乃至第5の発明において、上記撮像素子は、上記加算信号を増幅して出力することが可能であり、上記制御部は、上記撮像素子の増幅率を設定し、設定した増幅率に応じて上記蓄積判定レベルを設定する。
第7の発明に係る検出装置は、上記第1乃至第6の発明において、上記制御部は、上記位相差検出方向に対応する上記ポテンシャル障壁の高さに応じ飽和判定レベルを設定し、上記撮像素子の出力する上記加算信号と上記飽和判定レベルを比較して飽和を判定する。
第8の発明に係る検出装置は、上記第7の発明において、上記制御部は、上記判定結果に基づき焦点検出または奥行き検出を行う。
【0011】
第9の発明に係る撮像装置は、第1の発明に係る検出装置を有し、上記撮像素子の上記複数の受光部の出力信号の全部を加算した加算信号に基づく静止画の連続撮影が可能であり、上記制御部は、上記静止画の連続撮影の間で、上記位相差検出方向に応じた上記複数の受光部の加算信号を上記撮像素子により撮像させて取得する場合に、上記位相差検出方向に応じた上記複数の受光部の加算信号として、上記ポテンシャル障壁をより高く設定した位相差検出方向に対応する加算信号だけを読み出す。
【0012】
第10の発明に係る検出方法は、マイクロレンズに対応する複数の受光部を有する画素を複数備え、上記複数の受光部は所定の複数の位相差検出方向に対応して設けられ、上記位相差検出方向に応じて上記複数の受光部の出力信号を加算して加算信号を出力することが可能な撮像素子を有する検出装置の検出方法であって、上記撮像素子は、上記複数の位相差検出方向に応じて上記受光部の間のポテンシャル障壁の高さを異ならせ、上記撮像素子へ特定の位相差検出方向を指示して上記撮像素子の蓄積動作を実行させ、上記位相差検出方向に応じて異なる蓄積判定レベルを設定し、上記加算信号と上記蓄積判定レベルに基づいて上記撮像素子の蓄積動作を制御し、上記撮像素子の上記加算信号に基づく位相差検出によって焦点検出または奥行き検出を行い、上記撮像素子は、上記指示された特定の位相差検出方向が上記複数の位相差検出方向のうちの上記受光部の間のポテンシャル障壁の高さがより高い第1の位相差検出方向である場合に、上記第1の位相差検出方向に垂直な第2の位相差検出方向の位相差検出に対応する上記出力信号を上記複数の画素内にて加算するとともに、上記第1の位相差検出方向の第1の側に対応する上記加算した出力信号同士、および第1の側と反対側の第2の側に対応する上記加算した出力信号同士をそれぞれ上記第2の位相差検出方向の所定数の上記複数の画素にて加算平均し、上記第1の位相差検出方向については加算平均しないで上記加算信号を生成する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、高精度かつ高速な焦点検出または奥行き検出ができる検出装置および検出方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施形態に係る撮像装置の主として電気的構成を示すブロック図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る撮像装置の撮像素子の主として電気的構成を示すブロック図である。
【
図3A】本発明の一実施形態に係る撮像装置において、4PD画素タイプの画素の構成を示す図である。
【
図3B】本発明の一実施形態に係る撮像装置において、4PD画素タイプの画素部における、マイクロレンズの光軸方向に沿った断面図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係る撮像装置において、4PD画素タイプの画素部における、 RL画素優先の際のポテンシャル障壁を説明する図である。
【
図5】本発明の一実施形態における撮像装置において、AF時およびLV時のシーケンスを示す図である。
【
図6】本発明の一実施形態における撮像装置において、RL読出し時の画素加算を説明する図である。
【
図7】本発明の一実施形態における撮像装置において、TB読出し時の画素加算を説明する図である。
【
図8】本発明の一実施形態における撮像装置において、連写撮影時のシーケンスを示す図である。
【
図9A】本発明の一実施形態における撮像装置の動作を示すフローチャートである。
【
図9B】本発明の一実施形態における撮像装置の動作を示すフローチャートである。
【
図9C】本発明の一実施形態における撮像装置の動作を示すフローチャートである。
【
図10】本発明の一実施形態の第1の変形例に係る撮像装置において、撮像素子の増幅率を設定するための回路を示すブロック図である。
【
図11】本発明の一実施形態の第1の変形例に係る撮像装置において、撮像素子のゲインと、飽和閾値の関係を示すグラフである。
【
図12】本発明の一実施形態の第2の変形例に係る撮像装置において、レンズ装着時の各画素における補正量を示すグラフおよび図表である。
【
図13】本発明の一実施形態の第3の変形例に係る撮像装置において、L画素が飽和し、R画素側に電荷が溢れている状態を示す図である。
【
図14】本発明の一実施形態における4PD画素の構成を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態に係る撮像装置について説明する。この撮像装置は、撮像部を有し、この撮像部によって被写体像を画像データに変換し、この変換された画像データに基づいて、被写体像を本体の背面等に配置した表示部にライブビュー表示する。撮影者はライブビュー表示を観察することによって、構図やシャッタタイミングを決定する。レリーズ操作時には、画像データが記録媒体に記録される。記録媒体に記録された画像データは、再生モードを選択すると、表示部に再生表示することができる。
【0016】
また、本実施形態に係る撮像装置の撮像素子208は、マイクロレンズに対応する複数の受光部を有する画素を複数備え、この複数の受光部は所定の複数の位相差検出方向に対応して設けられている(
図3A、
図3B、
図6、
図7参照)。また、撮像素子208は、位相差検出方向に応じて、受光部間のポテンシャル障壁の高さを異ならせている(
図4(a)参照)。
【0017】
本実施形態において、具体的には、撮像素子のマイクロレンズ1個に対応して4分割フォトダイオードを配置し(
図3A参照)、位相差の検出に当たって横方向(左右方向)を縦方向(上下方向)に対して優先的に位相差検出を行うものとする。右側に配置され上下加算されたR画素(以下R画素)と左側に配置され上下加算されたL画素(以下L画素)の間のポテンシャル障壁と上側に配置され左右加算されたT画素(以下T画素)と下側に配置され左右加算されたB画素(以下B画素)の間のポテンシャル障壁について、RL画素優先に適合したポテンシャル障壁を持たせている(
図4(a)参照)。具体的には、上側に配置されたT画素と下側に配置されたB画素の間のポテンシャル障壁を、R画素とL画素の間のポテンシャル障壁より低く設定する(たとえば1/2、
図4(a)参照)。上下(左右)加算で水平(垂直)位相差検出を行うための2PD(R/L画素またはT/B画素)読み出しの場合には、読み出す画素対のポテンシャル障壁の高さに応じた閾値電圧(後述する蓄積判定レベル、飽和判定レベル)を設定して蓄積動作を行う。
【0018】
位相差検出用の2PD読み出しの場合で、R/L画素として読み出す際の画素データの飽和判定用閾値電圧を、R/L画素のポテンシャル障壁に対応する2PD分の電荷量に対応する閾値電圧(例えば1PD分の閾値電圧の2倍(4PD分の閾値電圧の1/2))に設定する。これにより、読出し速度の高速化が容易で読出し効率が高いR/L画素の信号のダイナミックレンジをより大きくとることができ、AFの精度向上と高速化が可能となる。
【0019】
図1は、本発明の一実施形態に係る焦点検出装置を含む撮像装置(具体的には例えばデジタルカメラ)1の構成の一例を示すブロック図である。なお、
図1中において、矢印付き実線はデータの流れを、矢印付き破線は制御信号の流れをそれぞれ示している。
【0020】
撮像装置1は、交換式レンズ100と、カメラ本体200とを有する。交換式レンズ100は、カメラ本体200に着脱できるように構成されている。交換式レンズ100とカメラ本体200とは、交換式レンズ100がカメラ本体200に装着されたときに、互いに通信できるように接続される。なお、撮像装置1は、必ずしもレンズ交換式の撮像装置でなくてもよい。例えば、撮像装置1は、レンズ一体型の撮像装置であってもよい。また、スマートフォン等、携帯機器内に設けられた撮像装置であってもよい。
【0021】
交換式レンズ100は、撮像光学系102と、駆動部104と、レンズCPU(Central Processing Unit)106と、レンズ側記憶部108とを備える。ここで、交換式レンズ100の各ブロックは、例えばハードウェアによって構成されている。しかしながら、必ずしもハードウェアによって構成されている必要はなく、一部はソフトウェアによって構成されていてもよい。また、交換式レンズ100の各ブロックは、単一のハードウェア又はソフトウェアによって構成されていなくてもよく、複数のハードウェア又はソフトウェアによって構成されていてもよい。また、交換式レンズとカメラ本体が一体に構成されている場合には、レンズCPU106とCPU212が1つのCPUで構成されていてもよい。
【0022】
撮像光学系102は、被写体からの光束をカメラ本体200の撮像素子208に結像させるための光学系である。撮像光学系102は、フォーカスレンズ102aと、絞り102bとを有する。フォーカスレンズ102aは、光軸方向に移動することによって、撮像光学系102の焦点位置を調節できるように構成されている。
【0023】
絞り102bは、フォーカスレンズ102aの光軸上に配置される。絞り102bの口径は可変である。絞り102bは、フォーカスレンズ102aを通過して撮像素子208に入射する被写体からの光量を調節する。駆動部104は、駆動モータと駆動回路等を有し、レンズCPU106から出力される制御信号に基づいて、フォーカスレンズ102aと絞り102bを駆動する。ここで、撮像光学系102は、ズームレンズとして構成されていてもよい。この場合、駆動部104がズーム駆動も行ってもよく、またユーザが手動操作によって焦点距離を変化させてもよい。駆動部104は、撮像光学系に含まれる絞りを駆動する絞り駆動部(アクチュエータ、ドライバ)として機能する。
【0024】
レンズCPU106は、CPUとその周辺回路を含むプロセッサであり、レンズ側記憶部108に記憶されているプログラムに従って動作する。レンズCPU106は、インターフェース(I/F)110を通じてカメラ本体200のCPU212との間で通信できるように構成されている。レンズCPU106は、カメラ本体200のCPU212からの制御信号に従って駆動部104を制御する。また、レンズCPU106は、I/F110を通じて、絞り102bの絞り値(F値)及びレンズ側記憶部108に記憶されているレンズ情報等の各種情報をCPU212に送信する。レンズCPU106は、撮像光学系に含まれるフォーカスレンズの位置を制御するフォーカスレンズ制御部としての機能を果たす。このフォーカスレンズ制御部は、制御部と通信して撮像素子の第1の撮像動作および第2の撮像動作に同期してフォーカスレンズの位置制御を実行する。
【0025】
なお、レンズCPU106は、必ずしもCPUとして構成されていなくてもよい。すなわち、レンズCPU106と同様の機能は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)等のプロセッサによって実現されてもよい。また、レンズCPU106と同様の機能は、ソフトウェアによって実現されてもよい。
【0026】
レンズ側記憶部108は、電気的書き換え可能な不揮発性メモリを有し、上述のプログラム以外にも交換式レンズ100に関するレンズ情報等を記憶している。レンズ情報は、例えば撮像光学系102の焦点距離の情報や収差の情報を含む。
【0027】
カメラ本体200は、メカシャッタ202と、駆動部204と、操作部206と、撮像素子208と、手振れ補正回路210と、CPU212と、画像処理回路214と、画像圧縮展開部216と、焦点検出回路218と、露出制御回路220と、表示部222と、バス224と、DRAM(Dynamic Random Access Memory)226と、本体側記憶部228と、記録媒体230とを有する。ここで、カメラ本体200の各ブロックは、例えばハードウェアによって構成されている。しかしながら、必ずしもハードウェアによって構成されている必要はなく、一部はソフトウェアによって構成されていてもよい。また、カメラ本体200の各ブロックは、単一のハードウェア又はソフトウェアによって構成されていなくてもよく、複数のハードウェア又はソフトウェアによって構成されていてもよい。
【0028】
メカシャッタ202は、開閉自在に構成され、撮像素子208への被写体からの光束の入射時間(撮像素子208の露光時間)を調節する。メカシャッタ202としては、例えばフォーカルプレーンシャッタが採用される。このフォーカルプレーンシャッタ以外にも、レンズシャッタをレンズ鏡筒側に設けてもよい。駆動部204は、CPU212からの制御信号に基づいてメカシャッタ202を駆動する。駆動部204は、メカシャッタ202を駆動するアクチュエータと、このアクチュエータの駆動回路等を有し、メカシャッタ202の開閉動作を行う。
【0029】
操作部206は、ユーザの指示を撮像装置1に入力するためのインターフェースであり、電源ボタン、レリーズボタン、動画ボタン、モードダイヤル、再生ボタン、メニューボタン等の各種の操作ボタン及びタッチパネル等の各種の操作部材を含む。この操作部206は、各種の操作部材の操作状態を検知し、検知結果を示す信号をCPU212に出力する。
【0030】
撮像素子208は、撮像光学系102の光軸上であって、メカシャッタ202の後方で、かつ、撮像光学系102によって被写体からの光束が結像される位置付近に配置されている。撮像素子208は、被写体を撮像して被写体に係る画素信号を生成する。
【0031】
撮像素子208は、複数の画像用画素(撮像用画素)が2次元状に配列された画素部22(
図2参照)を有する。画像用画素は、マイクロレンズL(
図3参照)に対応し、複数の焦点検出用画素に分割された構成となっている。焦点検出用画素は、撮像光学系である撮像レンズ2の射出瞳を複数に瞳分割した領域を通過する光束をそれぞれ光電変換して光電変換信号を生成する。撮像素子208は、例えば、原色ベイヤ配列のカラーフィルタを備える単板式CMOS撮像素子として構成されているが、もちろんこの構成に限定されるものではない。
【0032】
撮像素子208は、マイクロレンズに対応する複数の受光部を有する画素を複数備え、複数の受光部は所定の複数の位相差検出方向に対応して設けられ、位相差検出方向に応じて複数の受光部の出力信号を加算して加算信号を出力することが可能な撮像素子である。撮像素子は、複数の位相差検出方向に応じて受光部の間のポテンシャル障壁の高さを異ならせる(例えば、
図4参照)。撮像素子は、加算信号を増幅して出力することが可能である(
図2および
図10のアナログ処理部23参照)。撮像素子208の詳しい構成については、
図2および
図3を用いて後述する。
【0033】
手振れ補正回路210は、カメラ本体200に発生した手振れが抑制されるように、撮像素子208をその受光面と平行な方向に移動させる。手振れの動きを打ち消すように撮像素子208が移動されることによって、手振れに起因して画像データに発生する被写体像のぶれが抑制される。なお、手振れ補正回路は、交換式レンズ100に設けられていてもよい。この場合の手振れ補正回路は、撮像光学系102に含まれる手振れ補正光学系を移動させるように構成される。
【0034】
CPU212は、CPUとその周辺回路を含むプロセッサであり、本体側記憶部228に記憶されているプログラムに従ってカメラ本体200の全体制御を行う。CPU212は、例えば撮像素子208による撮像動作(撮像駆動モード、読出モード等も含む)を制御する。また、CPU212は、焦点検出回路218によって検出されたフォーカスレンズ102aの焦点状態に応じて、フォーカスレンズ102aを駆動するための制御信号をレンズCPU106に対して出力する。また、CPU212は、露出制御回路220によって算出された露出設定値をレンズCPU106及び撮像素子208に対して出力する。ここで、CPU212は、必ずしもCPUとして構成されていなくてもよい。すなわち、CPU212と同様の機能は、ASIC、FPGA等によって実現されてもよい。また、CPU212と同様の機能は、ソフトウェアによって実現されてもよい。
【0035】
画像処理回路214は、画素データに対して各種の画像処理を施す。例えば画像処理回路214は、静止画撮影(連写も含む)の際には、静止画記録用の画像処理を施し、静止画データを生成する。同様に、画像処理回路214は、動画撮影の際には、動画記録用の画像処理を施し、動画データを生成する。さらに、画像処理回路214は、ライブビュー表示時には、表示用の画像処理を施し、表示画像データを生成する。
【0036】
画像圧縮展開部216は、画像圧縮回路および画像伸張回路を有する。画像圧縮展開部216は、画像データの記録時には、画像処理回路214で生成された画像データ(静止画データ又は動画データ)を圧縮する。また、画像データの再生時には、記録媒体230に圧縮状態で記録された画像データを伸張する。
【0037】
焦点検出回路218は、撮像素子208の焦点検出用画素から出力される焦点検出画素データを用いた位相差方式によってフォーカスレンズ102aの焦点検出を行う。また、焦点検出回路218は、位相差検出結果を用いて、物体の奥行を検出することも可能である。
【0038】
焦点検出回路218は、撮像素子の加算信号に基づく位相差検出によって焦点検出または奥行き検出を行う制御部として機能する。なお、この制御部の機能は、焦点検出回路218に限らず、他の回路、プロセッサ等、例えば、CPU212等が担うようにしてもよい。制御部は、撮像素子へ特定の位相差検出方向を指示して撮像素子の蓄積動作を実行させ(例えば、
図9AのS5、
図9BのS23参照)、位相差検出方向に応じて異なる蓄積判定レベルを設定し(例えば、
図9AのS9、S13、
図9BのS27、S31参照)、加算信号と蓄積判定レベルに基づいて撮像素子の蓄積動作を制御する。
【0039】
また、上述の制御部は、位相差検出方向に対応するポテンシャル障壁の高さに応じて、蓄積判定レベルを設定する(例えば、
図9AのS9、S13、
図9BのS27、S31参照)。制御部は、加算信号と蓄積判定レベルを比較し、比較結果に基づいて撮像素子の蓄積動作を制御する(例えば、
図9AのS9、S13、
図9BのS27、S31参照)。
【0040】
また、上述の制御部は、撮像素子の増幅率を設定し、設定した増幅率に応じて蓄積判定レベルを設定する(例えば、
図11参照)。制御部は、位相差検出方向に対応するポテンシャル障壁の高さに応じ飽和判定レベルを設定し、撮像素子の出力する加算信号と飽和判定レベルを比較して飽和を判定する(例えば、
図11参照)。制御部は、判定結果に基づき焦点検出または奥行き検出を行う。
【0041】
また、上述の制御部は、静止画の連続撮影の間で、位相差検出方向に応じた複数の受光部の加算信号を撮像素子により撮像させて取得する場合に、位相差検出方向に応じた複数の受光部の加算信号として、ポテンシャル障壁をより高く設定した位相差検出方向に対応する加算信号だけを読み出す(例えば、
図8参照)。
【0042】
露出制御回路220は、測光部としての機能を果たし、撮像素子208の画素データに基づいて露出設定値を算出する。この露出制御回路220は、撮像素子208の画素データから被写体輝度を測定し、測定した被写体輝度から撮影時の被写体の輝度を適正値にするために必要な露出設定値を算出する。露出設定値は、絞り102bの開口量(絞り値)、撮像素子208の露光時間(シャッタースピード)を含む。
【0043】
表示部222は、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイ等のディスプレイを有し、カメラ本体200の背面等に配置され、または電子ビューファインダとして配置される。この表示部222は、CPU212の制御に従って画像を表示する。表示部222は、ライブビュー表示や記録済み画像の再生表示等に使用される。
【0044】
バス224は、撮像素子208、CPU212、画像処理回路214、画像圧縮展開部216、焦点検出回路218、露出制御回路220、表示部222、DRAM226、本体側記憶部228、記録媒体230に接続され、これらのブロックで発生した各種のデータを転送するための転送路として動作する。
【0045】
DRAM226は、電気的に書き換え可能な揮発性メモリであり、撮像素子208から出力される画素データ、静止画データ、動画データ、表示画像データ、CPU212における処理データ等の各種データを一時的に記憶する。なお、一時記憶用としてSDRAM(Synchronous Dynamic Random Access Memory)が用いられてもよい。
【0046】
本体側記憶部228は、電気的に書き換え可能な不揮発性メモリである。本体側記憶部228は、CPU212で使用されるプログラムと、カメラ本体200の調整値等の各種データを記憶する。記録媒体230は、電気的に書き換え可能な不揮発性メモリであり、カメラ本体200に内蔵されるか又は装填されるように構成されている。記録媒体230は、記録用の画像データを所定の形式の画像ファイルとして記録する。なお、DRAM226、本体側記憶部228及び記録媒体230は、それぞれ1つのメモリ等で構成されてもよいし、複数のメモリ等が組み合わされて構成されてもよい。
【0047】
次に、
図2を用いて、撮像素子208の構成について説明する。撮像素子208は、画像用画素を有し、この画像用画素は複数の焦点検出用画素に分割されている。画像用画素は、焦点検出用画素によって光束を光電変換して生成された光電変換信号に基づいて画像用画素信号と焦点検出用画素信号を生成する。なお、本実施形態における画像用画素は、受光部としてフォトダイオードが使用されている。
【0048】
撮像素子208は、
図2に示す例において、垂直走査部21と、画素部22と、アナログ処理部23と、ADC処理部24と、メモリ部25と、水平走査部26と、出力部27と、入力部28と、素子制御部29と、を備える。
【0049】
画素部22には、画像用画素および焦点検出用画素が配列されている。画像用画素信号と焦点検出用画素信号は、被写体像を光電変換することによって生成され、この生成された信号の読み出しは、垂直走査部21~出力部27までの少なくとも一部、および素子制御部29などが行う。
【0050】
垂直走査部21は、垂直走査回路を有し、画素部22の画素の水平方向の並び(行)を順次、選択することによって、走査を垂直方向に行う。この垂直走査部21が、特定の行を選択して、選択された行にある各画素のリセットや転送を行うことで、画素の電荷蓄積時間(露光時間)が制御される。
【0051】
アナログ処理部23は、アナログ処理回路を有し、画素部22から読み出されたアナログの画素信号をアナログ信号処理する回路である。このアナログ処理部23は、例えば、画素信号を増幅するプリアンプ、画素信号からリセットノイズを低減する相関二重サンプリング(CDS)回路などを含んでいる。
【0052】
アナログ・デジタル変換処理部(ADC処理部)24は、AD変換回路を有し、アナログ処理部23から出力されたアナログの画素信号をデジタルの画素データに変換する。このADC処理部24は、例えば、カラムADCに代表されるような、画素部22から読み出された画素信号を列毎のアナログ・デジタル・コンバータ(ADC)でAD変換する構成が採用されている。
【0053】
メモリ部25は、メモリを有し、ADC処理部24で変換された画素データを一時的に保持する電気的書き換え可能な揮発性メモリ回路等で構成されている。水平走査部26は、水平走査回路を有し、メモリ部25から、画素データ(画像用画素データと焦点検出用画素データ)を列順に読み出す。
【0054】
出力部27は、出力回路を有し、水平走査部26によって読み出された画素信号を配列して画素信号列を生成し、シリアル信号や差動信号などの出力信号形式に変換して出力する。なお、この出力部27または上述したADC処理部24等は、増感処理(設定されているISO感度に応じた信号増幅処理)を行う増感部としても機能するようになっている。
【0055】
入力部28は、入力回路を有し、CPU212や不図示の撮像素子駆動部から、撮像素子208の制御に係る同期信号、基準クロック、動作設定の情報などを受信する。
【0056】
素子制御部29は、撮像制御回路を有し、入力部28を通じて受信した同期信号および基準クロックに合わせて、撮像素子208内の各ブロックを制御するものであり、読出方法選択部30を備えている。また、素子制御部29は、CPU212から入力部28を通じて撮像駆動モードを切り換える指示等の動作設定指示を受信して、撮像素子208内の各ブロックを制御する。
【0057】
読出方法選択部30は、選択回路を有し、入力部28を通じて受信した動作設定の情報(例えば、静止画撮影、動画撮影、ライブビュー、AF等のカメラモード)に基づいて、撮像素子208からの読み出し方式を選択して設定する。読み出し方式としては、1PD単純読み出し方式、2PD加算読み出し方式、焦点検出画素の全加算値を読み出す位相差情報なしの4PD加算読み出し方式、等の全部または一部などを設けてもよい。また後述するAF読出(AF(rl))は、2PD加算読み出し方式で、光電変換信号に基づいて第1の瞳分割方向における一対の焦点検出用画素信号(R/L画素信号)の両方を生成して読み出す。ライブビュー(LV)読出(LV+AF(tb))は、2PD加算読み出し方式で、光電変換信号に基づいて第2の瞳分割方向における一対の焦点検出用画素信号(T/B画素信号)の両方を生成して読み出す。本露光・読出は、4PD加算読み出し方式で、1つの画像用画素内で生成された全ての光電変換信号を加算することで画像用画素信号を生成し、生成した画像用画素信号のみを読み出す。
【0058】
次に、
図3Aおよび
図3Bを用いて、画素部22に配置された焦点検出用画素および画像用画素の構造について説明する。画素部22は、上述したように、画像用画素および焦点検出用画素が2次元状(垂直方向(列方向)および水平方向(行方向))に配列された画素アレイ部である。
【0059】
図3Aは、4PD画素の例を示し、1つのマイクロレンズLeに4つのフォトダイオードPDが配置される画素構造である。
図3Aに示す4PD画素は、1つのマイクロレンズLeに対して、1つのカラーフィルタFと4つのフォトダイオードPDa、PDb、PDc、PDdを配置する。各画素は、
図3Bに示すように、物体側から像側へ向かう積層方向の順に、マイクロレンズLeとカラーフィルタFとフォトダイオードPDa~PDdとが配設された構成となっている。マイクロレンズLeは、光を集めることによって画像用画素としての4PD画素に到達する光量を増加させ、画像用画素の開口率を実質的に大きくするものである。カラーフィルタFは、例えば原色ベイヤ配列のカラーフィルタの場合には、赤色(R)フィルタ、緑色(G)フィルタ、または青色(B)フィルタの何れかが、その画素位置に応じて配設されている。
【0060】
図3Aおよび
図3Bに示す4PD画素では、1つのマイクロレンズLeの結像範囲に、フォトダイオードPDa~PDdが瞳分割方向に配設され、4つのフォトダイオードPDa~PDdは、水平方向および垂直方向の位相差を検出することができるように上下左右に4分割されている。4つのフォトダイオードPDが、左上、左下、右上、右下の位置にそれぞれ配置される。すなわち、1つの画素が、4つのフォトダイオードPDa,PDb,PDc,PDdを有し、瞳分割方向は水平方向と垂直方向の2つである。
【0061】
フォトダイオードPDの出力を垂直2PD加算する場合、つまり、
図3Aにおける(PDa+PDb)と(PDc+PDd)とを生成する場合は、水平方向の位相差を検出(縦線検知)するための焦点検出用画素信号となる。
図3Aの右上側に示すように、左側の2PD加算値Lと右側の2PD加算値Rが得られる。また、フォトダイオードPDの出力を水平2PD加算する場合、つまり、(PDa+PDc)と(PDb+PDd)とを生成する場合は、垂直方向の位相差を検出(横線検知)するための焦点検出用画素信号Tとなる。
図3Aの右下側に示すように、上側の2PD加算値Tと下側の2PD加算値Bが得られる。また、フォトダイオードPDの出力を4PD加算する場合、つまり、(PDa+PDb+PDc+PDd)を生成する場合、4PD加算の画素信号は画像用画素信号となる。
【0062】
図14に示す回路図を用いて4PD画素の構成とPD加算について説明する。4つのフォトダイオードPDa~PDdには、スイッチ用トランジスタTr1~Tr4がそれぞれ接続されている。垂直走査部21から制御信号TX1~TX4が、スイッチ用トランジスタTr1~Tr4にそれぞれ印加されるとTr1~Tr4が選択的にオンされる。スイッチ用トランジスタTr1~Tr4がオンされると、フォトダイオードPDa~PDdとフローティングディフュージョンFDが接続され、オンされたトランジスタTrに対応するフォトダイオードPDの信号電荷がフォローティングディフュージョンFDに転送される。たとえば、Tr1とTr2をオンすることにより、PDaとPDbの信号電荷を加算した信号電荷をFDに転送することができる。
【0063】
スイッチ用トランジスタTr1~Tr4とフォローティングディフュージョンFDの接続点には、スイッチ用トランジスタTr5の一端が接続され、その他端は電源電圧VDDに接続される。Tr5にリセット信号RESを印加すると、電源電圧VDDとFDが接続されてFDのリセットが行われる。スイッチ用トランジスタTr1~Tr4をオンにした状態でスイッチ用トランジスタTr5をオンにすることにより、フォトダイオードPDa~PDdのリセットが行われる。フォローティングディフュージョンFDは、スイッチ用トランジスタTr6と、電源電圧VDDに接続される増幅用のトランジスタTr7とを介して出力OUTに接続される。スイッチ用トランジスタTr6に選択信号SELを印加すると、フォローティングディフュージョンFDの電圧値がトランジスタTr7により増幅され出力OUTに出力され、この出力電圧がアナログ処理部23へ入力される。
【0064】
また、詳しくは、
図4を用いて説明するが、フォトダイオードPDa、PDbからなる一対の間と、フォトダイオードPDc、PDdからなる一対の間には第1の境界B2が存在し、またフォトダイオードPDa、PDcからなる一対の間と、フォトダイオードPDb、PDdからなる一対の間には第2の境界B1が存在している。この第2の境界B1におけるポテンシャル障壁は、第1の境界B2におけるポテンシャル障壁と比較すると、高くなるように設定される。
【0065】
次に、
図4を用いて、4PD画素のポテンシャル障壁の設定について説明する。複数の位相差検出方向に応じて受光部(PD)の間のポテンシャル障壁の高さを異ならせるが、R/L画素優先の方が、読出し効率が良いので、本実施形態においては、R/L画素を優先的に使用する。
【0066】
図4(a)は、RL画素優先の場合において、画素と受光部PD間のポテンシャル障壁(以下、単に障壁と記す)の高さを示す。
図4(a)において、LTとLBは、それぞれ、上側左受光部LT(PDa)と下側右受光部LB(PDb)を示し、RTとRBは、それぞれ上側右受光部RT(PDc)と下側右受光部RB(PDd)を示す。
図3Aを用いて説明したように、位相差の検出方向が矢印A(RL方向ともいう)の場合には、LTとLBの電荷を加算することによってL画素信号を生成でき、RTとRBの電荷を加算することによって、R画素信号を生成できる。R/L画素優先の場合には、LTとLBの間に位置し、RTとRBの間に位置する障壁Ptb(境界B2に相当)のレベルは、LTとRTの間に位置し、LBおよびRBの間に位置する障壁Prl(境界B1に相当)のレベルに対して、低くなるように設定する。
【0067】
このように、障壁Ptbのレベルが障壁Prlのレベルに対して低くなるように設定しているので、例えば、LTへの入射光量が他の受光部よりも多く、電荷が多量に発生して、蓄積された電荷が障壁Ptbを超えて溢れるような場合がある。この場合には、この溢れ出た電荷はLBに流れ込む。このように、電荷が障壁を超えて溢れる場合を電荷の飽和と記す。L画素(LT+LB)において発生した電荷が障壁Prlを超えない限り、R画素(RT+RB)に電荷が流れ出てしまうことがない。このため、位相差方向Aにおいて位相差を検出する場合には、受光部LT、LB、RT、RBのいずれか1つにおいて、障壁Ptbに関する電荷の飽和が発生しても、R画素(RT+RB)とL画素(LT+LB)のそれぞれでは電荷の飽和が発生しない。したがって、R画素、L画素のそれぞれの画素値(画素出力電圧)としては、飽和することがないので、位相差方向Aについての位相差を検出することができる。次に、障壁に関する優先度を持たせない場合と比較して、優先度を持たせる効果について説明する。
【0068】
図4(b)に示すように、障壁に関する優先度を持たせない場合、すなわち、障壁PaのレベルがRL方向およびTB方向で等しい場合には、受光部LT、LB、RT、RBのいずれか1つでも、蓄積された電荷が飽和して障壁Paを超えて、電荷が流れ出した場合、RL方向の位相差、TB方向の位相差の両方とも電荷量のバランスが崩れ、位相差検出が不能となってしまう。このような電荷の飽和を回避するためには、電荷蓄積量を監視して蓄積時間を調節する必要がある。撮像素子208では、PDに蓄積された電荷が、容量(フローティングディフュージョン)に転送され電圧に変換されて信号電圧として読み出される。この容量は、4PD加算の画素信号である画像用画素信号として最適化された容量値に設定されている。4PD加算の画素信号の電荷の飽和に相当する信号電圧を1とすると、上記受光部LT,LB、RT、RBの電荷の飽和に相当する信号電圧は1/4となる。
【0069】
このため、1PDの画素信号は、1PDの障壁Paのレベルに相当する電荷量(電荷の飽和に相当する電荷量)に相当する閾値電圧レベル、つまり4PD加算の画素信号の電荷の飽和に相当する閾値電圧レベルの1/4に閾値電圧レベルを設定し、この閾値電圧レベルを超えないように蓄積時間を制御する必要がある。このように障壁Paのレベルを同一とし優先度を持たせない場合、閾値電圧レベルとしては4PD加算の画素信号の閾値電圧レベルの1/4倍した値を電荷の飽和判定レベルとしなければならない。2PD加算の画素信号の場合も同じであり、1PDの電荷の飽和を判定するためには、4PD加算の画素信号の閾値電圧レベルの1/4倍した値を電荷の飽和判定レベルとしなければならない。したがって、障壁に優先度を持たせない場合、位相差検出用画素(R/L画素、T/B画素)の信号電圧のダイナミックレンジは画像用画素(4PD加算)の信号電圧のダイナミックレンジの1/4に縮小され、位相差検出の精度が低下する問題がある。
【0070】
一方、上述したRL画素優先のように、障壁に関する優先度を持たせると、R/L画素を読み出す場合は、4PDの内の1PDのLT(またはLB)の電荷量が障壁Ptbを越えても、LT、LBの2PD分の電荷量が障壁Prlを越えなければ、R/L画素のそれぞれの信号電圧は飽和しない。R/L画素間の障壁Prlのレベルを、優先度を持たせない場合の障壁Paのレベルと同一とする場合、R/L画素の障壁Paのレベルに対応する2PD分(LT、LB、またはRT,RB)の電荷量は、障壁Paのレベルに対応する4PD加算の電荷量の1/2となる。従って、R/L画素の信号電圧については、4PD加算の信号電圧の電荷飽和判定レベルの1/2に電荷飽和判定レベルを設定することが可能となる。これによって、RL方向の位相差検出用画素(R/L画素)の信号電圧のダイナミックレンジは、画像用画素(4PD加算)の信号電圧のダイナミックレンジの1/2とすることが可能である。優先度を持たせない場合に比較してダイナミックレンジを2倍に拡大することができる。なお、ポテンシャル障壁の設定は、撮像素子の製造工程にて半導体の不純物濃度の調節により設定可能であり、詳細説明を省略する。
【0071】
次に、
図4(a)を用いて説明した障壁のレベルの設定に基づき、画素データの飽和判定レベルの設定の仕方について説明する。RL画素優先でR/L画素の画素データを読み出す場合には、前述したように、飽和判定レベルをR画素とL画素の間の障壁Prlのレベルに相当する電圧レベルに設定する。一般的に、障壁Prlのレベルは、4PD加算画素のリニアリティを確保するために、4PD加算画素の電荷の飽和レベルPの70%程度と設定する。4PD加算画素の画素信号を読み出す場合の信号電圧の飽和レベルを、たとえば4096(量子化12ビットに相当)とする場合には、R/L画素の信号電圧の飽和レベルはそれぞれ2PD分の電荷量に相当する信号電圧の4096×70%/2=1433程度に相当する。従って、R/L画素の信号電圧(画素データ)の飽和判定レベルは、たとえば1300程度に設定すればよい(
図9AのS9、
図9BのS27参照)。
【0072】
T/B画素の画素データを読み出す場合は、飽和判定レベルをT画素とB画素の間の障壁Ptbのレベルに相当する電圧レベルに設定する。障壁Ptbのレベルは、障壁Prlのレベルの70%程度に設定する。4PD加算画素を読み出す場合の信号電圧の飽和レベルを4096とする場合には、T/B画素の信号電圧の飽和レベルそれぞれ2PD分の電荷量に相当する信号電圧である4096×70%×70%/4=501程度に相当する。従って、T/B画素の信号電圧(画素データ)の飽和判定レベルは、たとえば450程度に設定すればよい(
図9AのS13、
図9BのS31参照)。
【0073】
一方、RL画素優先としない場合、4つのPDのどれか1個でも電荷の飽和が発生すると、パランスが崩れ相関演算に影響が現れてしまう。この場合には、同じ条件の下で、R/L画素の信号電圧の飽和レベルは、4096×70%/4=716程度となってしまう。従って、RL画素優先とすることによりR/L画素の信号電圧(画素データ)は約2倍(1433/716)のダイナミックレンジを確保することができ、効果は大きい。
【0074】
後述する
図8に示す位相差検出を行うフレームにおいて、R/L画素信号の露光/読み出しの場合は、R/L画素用の飽和判定レベル、T/B画素信号を露光/読み出しの場合は、T/B画素用の飽和判定レベルを設定して飽和を判定する。
【0075】
図5は、後述するAF&LV(ライブビュー)用露光&読み出し処理(例えば、
図9AのS5、
図9BのS23参照)について説明するタイミングチャートである。「VD」は、素子制御部29に入力される同期信号(垂直同期信号)のタイミングを示している。VD(1)はAF用撮像・読み出しを含むAF動作のタイミングを示す垂直同期信号であり、VD(2)はLV用撮像・読み出しを含むLV動作のタイミングを示す垂直同期信号である。VD(1)とVD(2)とは1フレームの間に1回ずつ素子制御部29に入力され、AF&LV用露光&読み出しの処理は1フレーム毎に行われる。1フレームの長さは、LV表示の画面の更新間隔に応じて決められる。
【0076】
図5において、AF(rl)で示すAF動作は、第1の瞳分割方向に関する焦点検出画素信号の生成と読み出しのための動作である。第1の瞳分割方向は、例えば画素部22の水平方向(RL方向)である。AF動作に先立ち素子制御部29は、画素部22から左開口画素信号l(Rl、Grl、Gbl、Bl)と右開口画素信号r(Rr、Grr、Gbr、Br)であるR/L画素信号が出力されるように画素部22の設定を切り替える。素子制御部29は、画素信号の読み出し時間の短縮を図るために、画素部22の出力する同色、同一開口の複数のR/L画素信号を加算(平均)する画素加算の設定を行う。この画素加算(平均)は、アナログ処理部23で行われる。
【0077】
次に、
図6を用いて、AF(rl)動作において画素部22から読み出された水平位相差検出用のR/L画素の画素加算(平均)について説明する。
図6の上側の図は各画素に対応させた配置のイメージを示す。(m1、n1)に位置するRlは左側開口の赤色画素(R)を、(m2、n1)に位置するRrは右側開口の赤色画素(R)を意味する。(m1、n2)に位置するGblは左側開口の緑色画素(Gb)を、(m2、n2)に位置するGbrは右側開口の緑色画素(Gb)を意味する。「B」は青色画素を意味する。
【0078】
R/L画素の画素加算は、アナログ処理部23において、第1の瞳分割方向である水平方向については加算を行わずに、第2の瞳分割方向である垂直方向についてだけ加算が行うように設定される。水平方向については同一開口(左開口同士又は右開口同士)の画素信号を1/1画素加算(加算なし)するように設定され、垂直方向については同一開口(左開口同士又は右開口同士)の画素信号を5/9画素加算するように設定されている。5/9画素加算は、垂直方向の9画素(
図6のm1例では、n1からn17に対応するRl,n2からn18に対応するGblのそれぞれ9画素)のうち、n1からn9に対応するRlの5画素を加算し、n2からn10に対応するGblの5画素を加算することをいう。画素信号の加算数は、例えばフレームレートに応じて適宜に設定される。この設定によって画素信号の行数が圧縮されて画素信号の行数が減り、画素信号の読み出し時間が短縮される。一方で、画素信号の列数を圧縮しないので水平方向の位相差の検出精度は確保される。
【0079】
CPU212は、撮像素子208(素子制御部29)に対して制御信号を出力し、
図6に示すように画素加算モードを設定した後、撮像素子208(素子制御部29)に対して焦点検出画素信号を生成するために必要な露光時間での撮像を行うように制御信号を出力する。この露光時間は、被写体輝度や画素データの飽和の状態等に基づいて設定される。
【0080】
素子制御部29は、CPU212からの制御信号の入力を受けて、画素部22の行毎に撮像(電荷蓄積)を開始させ、垂直走査部21を制御して、撮像が完了した行の画素部22から順次にRL画素信号を出力させる。
【0081】
水平方向の位相差の検出は、高速化や消費電力削減のため、R/L画素信号としてGrの左開口画素信号Grlと右開口画素信号Grrの対、及びGbの左開口画素信号Gblと右開口画素信号Gbrの対を用いて行われる。Rの左開口画素信号Rlと右開口画素信号Rrの対、及びBの左開口画素信号Blと右開口画素信号Brの対は必ずしも読み出される必要はない。読み出しの際には、
図6の下側に示すようにしてGrlとGrrの対、及びGblとGbrの対だけを詰めて読み出してもよい。
【0082】
図6の下側の図は、画素加算後にA/D変換された画素データのメモリ部25のデータ配置のイメージ図である。
図6の下側におけるm1列では、
図6の上側の図のm3列の左開口側のGrl画素n1,n3,n5,n7,n9行の加算値Gr_L(
図6では、スペースの都合上、「Gr」とのみ記載)が配置され、m2列では、
図6の上側の図のm4列の右開口側のGrr画素n1,n3,n5,n7,n9の加算値Gr_R(
図6では、スペースの都合上、「Gr」とのみ記載)が配置される。また、同じくm1列では、
図6の上側の図のm1列の左開口側のGbl画素n2、n4、n6、n8、n10行の加算値Gb_L(
図6では、スペースの都合上、「Gb」とのみ記載)が配置され、m2列では、
図6の上側の図のm2列の右開口側のGbr画素n2、n4、n6、n8、n10行の加算値Gb_R(
図6では、スペースの都合上、「Gb」とのみ記載)が配置される。
図6の下側の図に示すように、その他の加算画素データも同様に配置される。
【0083】
このように、列毎に5画素のGrl、Grr画素、またはGbl、Gbr画素の加算値Gr_L、Gr_R、Gb_L、Gb_RがR/L画素信号として、
図6の下側の図表に示す形式でメモリ部25に記憶される。撮像素子208は、R/L画素信号として、この加算値Gr_LとGr_R、Gb_LとGb_Rを出力し、焦点検出回路218ではこの画素データ用いて、後述する相関演算等が実施される。RlとRrの対及びBlとBrの対も併せて読み出されてもよい。
【0084】
ここで、撮像素子208内の関連する処理について説明する。画素部22から読み出されたR/L画素信号は、アナログ処理部23においてCDS・ゲイン処理・画素加算処理等のアナログ処理を施される。アナログ処理された画素加算後のR/L画素信号は、ADC処理部24においてデジタル信号である画素加算後のR/L画素データに変換されメモリ部25に記憶される。水平走査部26は、素子制御部29からの制御信号を受けてメモリ部25に記憶されている画素加算後のR/L画素データ(
図6の下側の図)を列順で出力部27に転送させる。
【0085】
出力部27は、水平走査部26によって転送された画素データを配列して画素データ列を生成し、生成した画素データ列をシリアル信号及び差動信号等の所定の出力信号形式に変換して出力する。この画素データ列は、画素加算後R/L画素データ(焦点検出画素データrl)として、
図6の下側の図に示すような配列イメージの順に、DRAM226に記憶される。なお、画素加算は、アナログ処理部23において実行されると説明したが、アナログ処理部23で画素加算を行わずにADC処理部24やメモリ部25において行われてもよい。
【0086】
次に、AF(rl)動作に関連するAF用データ処理について説明する。AF(rl)動作による読み出し動作によってDRAM226に記憶された画素データ列(画素加算後のR/L画素データ)は、ピントずれ量算出のための相関演算に用いられる。焦点検出回路218は、DRAM226に記憶されている画素加算後のR/L画素データ(
図6の下側の図に示す焦点検出用画素データrl)であるGrlとタGrrの対及びGblとGbrの対を用いて相関演算を行う。
【0087】
次に、上述の
図5のライブビュー(LV)動作について説明する。LV+AF(tb)で示すLV動作は、表示画素信号の生成と読み出し(LV)を主とした動作であるが、LV動作において第2の瞳分割方向に関する焦点検出画素信号の生成と読み出し(AF(tb))も行われる。LV動作に先立ち、CPU212の指示に従い素子制御部29は、画素部22からT/B画素信号である上開口画素信号t(Rt、Grt、Gbt、Bt)と下開口画素信号b(Rb、Grb、Gbb、Bb)とが出力されるように画素部22の設定を切り替える。また、素子制御部29は、画素信号の読み出し時間の短縮を図るために、画素部22から出力されるT/B画素信号の画素加算の設定を行う。
【0088】
次に、
図7を用いて、LV動作における画素加算(平均)について説明する。LV動作では、第1の瞳分割方向である水平方向及び第2の瞳分割方向である垂直方向の両方で画素加算が行われるように設定がされる。
図7は、
図6と同様な配置のイメージ図だが、作図の都合上、T画素信号、B画素信号を上下ではなく左右に配置して示している。
【0089】
図7の上側の図において、水平方向に並ぶ3個の同一開口(上開口同士又は下開口同士)の画素信号(T画素信号同士又はB画素信号同士)を加算するとともに、垂直方向に並ぶ2個の同一開口(上開口同士又は下開口同士)の画素信号(T画素信号同士又はB画素信号同士)を加算するように設定されている。
【0090】
垂直方向の2/3画素加算は、垂直方向の同色の3画素のうちの2画素を加算し、
図7のm1列では、n1からn5に対応するRtの3画素のうちのn1、n5の2画素を加算し、n4からn8に対応するGbtの3画素のうちのn4、n8の2画素を加算するものである。水平方向の3/3画素加算は、水平方向に隣接する同色の3画素を加算し、
図7のn1行では、Rtの隣接するm1、m5、m7(Rbの隣接するm2、m6、m8)の3画素を加算する。また、Grtの隣接するm7、m11、m15(Grbの隣接するm8、m12、m16)の3画素を加算する。
【0091】
垂直方向の位相差検出用として、垂直方向の検出分解能を確保するため垂直方向の加算数を2画素としている。垂直方向の画素加算を無として検出分解能をさらに向上させることが可能だが、読み出し行数が増加し読み出し速度が低下する(読出し効率が低い)問題が発生するため、2/3画素加算と設定し読み出す行数を1/3に減少させ読み出し時間を短縮している。
図7では、2行目と3、4列目については加算が行われないように表記されてが、単に画素部22の行数及び列数が3の倍数でないために生じる余りのためである。
【0092】
CPU212は、撮像素子208(素子制御部29)に対して制御信号を送信し、
図7に示すように画素加算モードを設定した後、撮像素子208(素子制御部29)に対して焦点検出画素信号を生成するために必要な露光時間での撮像を行うように制御信号を出力する。この露光時間は、被写体輝度や画素データの飽和の状態等に基づいて設定される。
【0093】
ここで、撮像素子208内のLV動作に関連する処理について説明する。素子制御部29は、CPU212からの制御信号の入力を受信して画素部22の行毎に撮像(電荷蓄積)を開始させ、垂直走査部21を制御し、撮像が完了した行の画素部22から順次にT/B画素信号を出力させる。画素部22から読み出されたT/B画素信号は、アナログ処理部23においてアナログ処理され画素加算後のT/B画素信号としてADC処理部24においてデジタル信号である画素加算後のT/B画素データに変換されて
図7の下側の図に示すような配置でメモリ回部25に記憶される。
【0094】
LV動作では、表示画像データを生成するために、R、Gr、Gb、Bの画素データが必要であり、メモリ回路25には、上開口画素データ(T画素データ)Rt、Grt、Gbt、Btと下開口画素データ(B画素データ)Rb、Grb、Gbb、Bbのそれぞれが記憶される。水平走査部26は、素子制御部29からの制御信号を受けてメモリ部25に記憶されている画素加算後のT/B画素データを列順で出力部27に転送させる。出力部27は、水平走査部26によって転送された画素加算後のT/B画素データを配列して画素データ列を生成し、生成した画素データ列をシリアル信号及び差動信号等の所定の出力信号形式に変換して出力する。
【0095】
撮像素子208から出力されるこの画素データ列は、画素加算後のT/B画素データ(焦点検出用画素データtb)として
図7の下側の図に示すような形式でDRAM226に記憶される。なお、
図7において画素加算は、アナログ処理部23で実行されると説明したが、アナログ処理部23で実行せずにADC処理部24やメモリ部25において実行するようにしよい。
【0096】
次に、LV動作に関連するAF(tb)のデータ処理について説明する。LV動作による読み出し動作によってDRAM226に記憶された画素データ列(画素加算後のT/B画素データ)は、ピントずれ量算出のための相関演算に用いられる。焦点検出回路218は、DRAM226に記憶されている画素加算後のT/B画素データ(
図7の下側の図に示す焦点検出用画素データtb)であるGrtとGrbの対及びGbtとGbbの対を用いて相関演算を行う。RtとRbの対、BtとBbの対を用いた相関演算も、必要に応じて実行される。また、LV動作に関連するLV用データ処理について説明する。LV動作による読み出し動作によってDRAM226に記憶された画素データ列(画素加算後のT/B画素データ)は、画像処理回路214により同色かつ同位置のT画素データとB画素データが加算されR、Gr、Gb、Bの画素データを有するLV表示用画像データが生成される。CPU212は、LV表示用画像データを使用して表示部222によりLV表示を行う。
【0097】
次に、
図8を用いて、高速連写モードにおける本露光(静止画フレーム)とAF露光(位相差フレーム)とレンズの同期制御について説明する。
図8は、連写モードかつコンティニュアスAF(CAF)モードでの電子シャッタによる静止画連写中に実行される動作を示す。例えば、ユーザが操作部206を操作して上記モードを設定する。また、ユーザにより2ndレリーズスイッチがオンされた状態で、メカシャッタ202は全開状態での連写動作である。本実施形態に係る撮像装置は、撮像素子の複数の受光部の出力信号の全部を加算した加算信号に基づく静止画の連続撮影が可能である。
【0098】
図8において、VDは撮像動作の垂直同期信号のタイミングを示し、横軸方向のT1~T13は時刻を示す。時刻T1において、最初(静止画1コマ目)の本露光が開始され、時刻T2において1ライン目の露光が終了し、以後、時刻T4において2コマ目の本露光が開始され、時刻T7において3コマ目の本露光が開始され、時刻T10において4コマ目の本露光が開始される。
【0099】
それぞれの本露光において、撮像素子208から4PD画素(
図3A参照)のフォトダイオードPDa~PDdの画素信号の4PD加算値を読み出すことによって、画像用画素信号のみの静止画用画像データが取得される。この画像データは、静止画用の画像データとして処理され記録されると共に、ライブビュー表示用の画像データとして処理されライブビュー表示が実行される。
【0100】
また、本露光と本露光の間では、位相差検出用の焦点検出用画素の画素データが読み出される。時刻T3において、最初(1コマ目)の位相差検出用の露光が開始され、時刻T4において1ライン目の露光が終了し、以後、時刻T6において2コマ目の位相差検出用の露光が開始され、時刻T9において3コマ目の位相差検出用の露光が開始される。それぞれの位相差検出用の露光において、位相差検出用の画像データとして4PD分割(
図3A)のフォトダイオードの画素信号のR/L画素信号である加算値PDa+PDb,PDc+PDd(水平位相差用)、フォトダイオードの画素信号のT/B画素信号であるPDa+PDc,PDb+PDd(垂直位相差用)が読み出される。
【0101】
本実施例では、撮像素子208にはRL画素優先のポテンシャル障壁が設定されており、ダイナミックレンジがより大きいR/L画素信号を優先して読み出す処理を行う。つまり、位相差検出用露光ではR/L画素信号だけを読み出して焦点検出演算を行う。また、後述するようにR/L画素信号に基づきデータの飽和を回避するように露光制御(蓄積時間制御)を行う。R/L画素信号の露光/読み出し動作として前述の
図5に示すAF(rl)動作を実行してもよい。ダイナミックレンジがより広いR/L画素信号だけを使用することにより、位相差検出用露光読み出し動作の時間短縮、焦点検出動作の高精度化を可能とし、より高速な連写動作が可能となる。
【0102】
また、各位相差検出露光では、水平位相差用)、垂直位相差用の画素信号の露光読み出しの両方が連続して実行されてもよい。また、水平位相差用画素信号の露光読み出しとして前述のAF(rl)動作、垂直位相差用画素信号の露光読み出しとして前述のLV+AF(tb)動作の両方が連続して実行されてもよい。また、時刻T3と時刻T4間の位相差検出露光は水平位相差用の画素信号、時刻T6と時刻T7間の位相差検出露光は垂直位相差用の画素信号の露光読み出しを行うというように、交互に水平位相差用/垂直位相差用の画素信号を切換えて露光読み出しを行ってもよい。また、画素毎に水平位相差用/垂直位相差用の露光読み出しを設定し、1フレームで両方の画素信号の露光、読み出しを同時に実行してもよい。このように位相差検出用の画像データが取得される。
【0103】
カメラ本体200は、撮像同期信号VDに同期するレンズ同期信号を交換レンズ100に出力して通信を行う。このレンズ同期信号は、撮像同期信号VDと周期を合わせてもよく、
図8に示すように、撮像同期信号VDに対して2倍の周期であってもよい。この例では、VDは、時刻T1、T2、T4、T5、T7、T8、T10、T11、T13のタイミングで出力される。一方、レンズ同期信号は、時刻t1、t4、t7、t10、t13に出力され、VDの2倍の周期である。なお、レンズ同期信号は、VDと同一周期、2倍の周期以外にも、他の周期であってもよい。レンズ同期信号の位相は、
図8に示すように撮像同期信号VDの位相と完全に一致させてもよいし、ずらしてもよい。
【0104】
カメラ本体200は、位相差検出の結果に基づき算出されるフォーカスレンズ駆動量(方向)をレンズ同期信号に同期してレンズ100へ送信する。例えば、カメラ本体200(CPU212)は、VDのT3-T4の位相差検出の結果に基づきフォーカスレンズ駆動量(方向)を算出し、レンズ100へレンズ同期信号t4の送信後にフォーカスレンズ駆動量(方向)を送信する。レンズCPU106は、受信したフォーカスレンズ駆動量(方向)に基づいてフォーカスレンズを駆動する。
【0105】
次に、
図9Aないし
図9Cに示すフローチャートを用いて、焦点検出装置を含む撮像装置の動作について説明する。このフローは、撮像装置1のAFモードがコンティニュアスAFモードに設定され、
図8とは異なる連写モードでありメカシャッタによる静止画撮影(本露光)を行う低速連写モードに設定されているときの動作を示している。コンティニュアスAFモードは、動く被写体に対して適したAFモードであり、被写体に追従するようにピント合わせを続行するAFモードである。例えば、ユーザが操作部206を操作して上記モードを設定する。このフローチャートは、カメラ本体200内のCPU212が、本体側記憶部228に記憶されたプログラムに従って、カメラ本体200および交換式レンズ100内の各部を制御することによって実現する。
【0106】
ユーザが撮像装置1の電源をオン操作したことが検出されると、
図9Aに示すカメラ電源オンのフローが開始する。電源のオン操作が検出されると、まず1stレリーズスイッチがオンか否かについて判定する(S1)。ここでは、CPU212は、操作部206の内のレリーズボタンの1stレリーズスイッチがオンの状態であるか否かを判定する。ユーザは、被写体にピントを合わせ、露光を決定する場合には、レリーズボタンを半押しする。ユーザがレリーズボタンを半押し操作すると、この操作に応答して1stレリーズスイッチがオンの状態となる。
【0107】
ステップS1における判定の結果、1stレリーズスイッチがオンでない場合、ライブビュー(LV)露光読み出しを行う(S3)。ここでは、CPU212は、メカシャッタ202を全開状態とするように駆動部204に対して制御信号を出力すると共に、絞り102bを所定量(例えば開放絞り)だけ駆動するように、レンズCPU106に対して制御信号を出力する。その後、CPU212は、所定時間毎に(表示フレームレートで決まる時間)、撮像素子208に対して制御信号を出力し、撮像素子208によるLV表示のための撮像を行う。LV表示のための撮像が完了する毎に、素子制御部29は、画素部22からの画素信号を読み出す。なお、画素信号の読み出しに際し、素子制御部29は、画素部22から出力される同一開口(同色)の画素信号を加算させて出力する。撮像素子208から出力された画素データは、表示用としてDRAM226に記憶される。
【0108】
ステップS3において表示用画素データが記憶されると、次に、CPU212はライブビュー(LV)表示を行い、画像処理回路214に表示画像データを生成させる。画像処理回路214は、撮像素子208から読み出された画素データに対して必要な処理を行って表示のための表示画像データを生成する。表示画像データは、同一の画素に属するフォトダイオードPDa~PDdの画素データを加算平均することで得られる。この加算平均処理は、画像処理回路214に限らず、撮像素子208の内部で実行されてもよい。CPU212は、画像処理回路214で生成された表示画像データに基づいて表示部222にLV画像を表示させLV表示を行うと、S1に戻る。
【0109】
ステップS1における判定の結果、1stレリーズスイッチがオンの場合には、次に、AF&LV用露光&読出しを行う(S5)。CPU212は、
図5にて説明したオートフォーカス(AF)及びLV表示のための撮像と読み出しを行う。AF用の撮像と読み出しは、AF動作AF(rl)を、またLV表示用の撮像と読み出しはLV動作(LV+AF(tb))を行う。ステップS5において算出された焦点検出用画素データrl、tbはDRAM226に記憶され、位相差法による相関演算の際に使用される。また、画像処理回路214は、DRAM226に記憶された焦点検出用画素データtbの対をなすデータを加算して表示用画素データを生成し、この生成された表示用画素データをDRAM226に記憶する。CPU212は、DRAM226に記憶された表示用画素データに基づいてライブビュー表示を行う。
【0110】
続いて、相関演算・信頼性判定を行う(S7)。ここでは、CPU212は、焦点検出回路218によって焦点検出演算を実行させる。焦点検出回路218は、DRAM226に記憶されている対をなす焦点検出画素データrl、tbを用いて相関演算を行う。相関演算は、複数の所定のAFエリア(焦点検出領域)内の焦点検出画素データに基づいて、位相差に相当する2像間隔値を、AFエリアについてそれぞれ生成する。相関演算が終了すると、次に、焦点検出回路218は、焦点検出の信頼性判定を行う。信頼性判定は、画素データから得られる被写体像のコントラストに相当する信頼性評価値や、相関演算の結果として算出される複数の相関値に基づいて判定される。
【0111】
信頼性判定を行うと、次に、R/L画素の飽和検出を行う(S9)。AF用露光読み出し(AF(rl))にて焦点検出用画素データとして読出したR/L画素データが飽和しているか否かを検出する。画素データと、R/L画素用に設定されている所定の閾値TH(飽和判定レベルの一例として1300)との比較を行い、所定の閾値よりも大きい場合(信号量が大きいに相当)に飽和していると判定する。
【0112】
ステップS9における判定の結果、R/L画素が飽和していた場合は、露出補正量Tv_RL+を1に設定する(S11)。設定された露出補正量Tv_RL+は、次回のステップS5のAF&LV用露光&読み出し(
図5:AF(rl))での露光時間の補正に使用される。次回のR/L画素に対応する露光時間は1Ev分増加された露光時間(1/2の露光時間)に設定され、飽和しないように露光制御される。1Evは1例で、0.5Evや2Evの変化量でもよい。また、飽和と検出されたR/L画素の位置をDRAM226に記憶させる。この飽和画素の位置情報は、飽和画素が複数の焦点検出領域のどの焦点検出領域に含まれるかを判別するために使用される(ステップS17のエリア選択)。このように、R/L画素データが飽和しないように露光時間(蓄積時間)を設定しており、飽和判定レベルは、目標とする蓄積レベルとして使用されるので蓄積判定レベルともいう。
【0113】
ステップS11において露出補正量を設定すると、またはステップS9における判定の結果、R/L画素の飽和を検出しなかった場合には、T/B画素の飽和検出を行う(S13)。LV動作(LV+AF(tb))において、焦点検出用画素データとして読出したT/B画素データが飽和しているか否かを検出する。画素データとT/B画素用に設定されている所定の閾値TH(飽和判定レベルの一例として450)との比較を行い、所定の閾値よりも大きい場合(信号量が大きいに相当)に飽和していると判定する。
【0114】
ステップS13における判定の結果、TB画素が飽和していた場合は、露出補正量Tv_TB+を1に設定する(S15)。設定された露出補正量Tv_TB+は、次回のステップS5のAF&LV用露光&読み出し(
図5:LV+AF(tb))での露光時間の補正に使用される。つまり、次回のT/B画素に対応する露光時間は1Ev分増加された露光時間(1/2の露光時間)に設定され、飽和しないように露光制御される。1Evは1例で、0.5Evや2Evの変化量でもよい。また、飽和と検出されたT/B画素の位置をDRAM226に記憶させる。この飽和画素の位置情報は、飽和画素が複数の焦点検出領域のどの焦点検出領域に含まれるかを判別するために使用される(ステップS17のエリア選択)。このように、T/B画素データが飽和しないように露光時間(蓄積時間)を制御し、飽和判定レベルは、目標とする蓄積レベルとして使用されるので蓄積判定レベルともいう。
【0115】
ステップS15において露出補正量を設定すると、またはステップS13における判定の結果、T/B画素の飽和を検出しなかった場合には、次に、エリア選択を行う(S17)。ここでは、焦点検出回路218は、信頼性判定によって信頼性が高いと判定された焦点検出領域の2像間隔値を用いてフォーカスレンズ102aのピントずれ量(デフォーカス量)を算出し、このピントずれ量に基づいて、焦点検出領域(および対応するデフォーカス量)を選択する。例えば、最も近い被写体距離(最至近)に対応するデフォーカス量を示す焦点検出領域を選択する。エリア選択処理は、最至近被写体に限らず、顔検出による人の顔が存在するエリアを選択してもよく、ユーザがマニュアルで選択したエリアであってもよい。なお、エリア選択は、CPU212が行ってもよい。エリア選択においては、飽和と検出されたR/L画素またはT/B画素のいずれかを所定数以上含む焦点検出領域を無効としてエリア選択の対象から除外する。飽和と検出された画素を含む焦点検出演算は、検出精度が低下するためである。所定数は、設定される条件(たとえば、焦点検出領域を構成する画素数等、に応じて適宜変更する。
【0116】
エリア選択を行うと、次に、合焦状態を判定する(S19)。ここでは、CPU212は、フォーカスレンズ102aが合焦状態にあるか否かを判定する。すなわち、エリア選択処理において選択された焦点検出領域におけるピントずれ量が予め定められた許容範囲内であるか否かを判定し、許容範囲内であるときには合焦状態と判定する。
【0117】
ステップS19における判定の結果、合焦状態でない場合には、フォーカスレンズ駆動を実行する(S21)。ここでは、CPU212は、ステップS17において選択された焦点検出領域について算出されたフォーカスレンズ位置に、フォーカスレンズ102aが駆動されるようにレンズCPU106と通信を行い、制御信号を出力する。レンズCPU106は、この制御信号を受けると、駆動部104を通じてフォーカスレンズ102aを指示された位置へ駆動する。フォーカスレンズ102aを駆動すると、S1に戻る。
【0118】
ステップS19における判定の結果、合焦状態の場合には、AF&LV用露光読出しを行う(S23)。ここでは、CPU212は、ステップS5と同様に、オートフォーカス(AF)及びライブビュー(LV)表示のための撮像(露光)と読み出しを行う。撮像素子208から画素信号が読み出され、AFのための焦点検出画素データがDRAM226に記憶され、またLVのための表示用画素データがDRAM226に記憶される。また、LVのための表示用画素データを用いてライブビュー(LV)表示を行う。
【0119】
続いて、相関演算・信頼性判定を行う(S25)。ここでは、CPU212は、ステップS23において読み出した画素データを用いて、ステップS7と同様に、焦点検出回路218によって焦点検出演算を実行させる。焦点検出回路218は、DRAM226に記憶されている対をなす焦点検出用画素データを用いて相関演算を行う。相関演算の後、焦点検出回路218は、焦点検出の信頼性判定を行う。
【0120】
信頼性判定を行うと、次に、R/L画素データが飽和しているか否かの検出を行い(S27)、この判定の結果、飽和していた場合には、露出補正量Tv_RL+を1に設定する(S29)。露出補正量の設定を行うと、またはステップS27における判定の結果、飽和していなかった場合には、次に、T/B画素が飽和しているか否かの判定を行い(S31)、この判定の結果、飽和していた場合には、露出補正量Tv_TB+を1に設定する(S33)。これらのステップS27~S33における処理は、前述とのステップS9~S15の処理と同様であるので、詳しい説明を省略する。
【0121】
ステップS33において露出補正量の設定を行うと、またはステップS31における判定の結果、飽和していなかった場合には、次に、ピントずれ量を検出し(S35)、エリアを選択する(S37)。ステップS35とS37においては、ステップS17と同様に、焦点検出回路218は、ステップS25における信頼性判定の際に信頼性が高いと判定された焦点検出領域の2像間隔値を用いてフォーカスレンズ102aのピントずれ量(デフォーカス量)を算出し、このピントずれ量に基づいて、焦点検出領域(および対応するデフォーカス量)を選択する。焦点検出領域(エリア)の選択例は、ステップS17と同様であるので、詳しい説明を省略する。
【0122】
エリアを選択すると、次に、履歴情報を保存する(S39)。ここでは、焦点検出回路218は、焦点検出に係る情報を履歴情報として例えばDRAM226に保存する。焦点検出に係る情報は、例えばステップS17で算出されたピントずれ量の情報、画素データ取得時刻、及び選択された焦点検出領域の情報を含む。なお、履歴情報の保存は、CPU212が、焦点検出に係る情報をDRAM226に保存するようにしてもよい。
【0123】
履歴情報を保存すると、次に、2ndレリーズスイッチがオンか否かについて判定する(S41)。ここでは、CPU212が、操作部206の内の2ndレリーズスイッチがオンされているか否かを判定する。ユーザは、静止画画像を撮影する場合にレリーズボタンを全押しする。ユーザがレリーズボタンを全押し操作すると、この操作に応答して2ndレリーズスイッチがオンの状態となる。
【0124】
ステップS41における判定の結果、2ndレリーズスイッチがオンでない場合は、合焦状態か否かを判定する(S43)。ここでは、ステップS19と同様の処理を行い、判定の結果、合焦状態の場合には、S23に戻る。
【0125】
一方、ステップS43における判定の結果、合焦状態でない場合には、フォーカスレンズを駆動する(S45)。ここでは、CPU212は、ステップS21と同様にフォーカスレンズ102aをピントずれ量に基づいて適切なフォーカスレンズ位置に移動させる。フォーカスレンズ駆動を行うと、ステップS23に戻る。
【0126】
ステップS41に戻り、このステップにおける判定の結果、2ndレリーズスイッチがオンの場合には、動体予測演算を行う(S47)。ここでは、CPU212は、焦点検出回路218に動体予測演算を実行させる。動体予測演算は、ステップS39において記憶させた過去のピントずれ量演算の結果(フォーカスレンズ位置)と検出時刻の履歴に基づいて、今回の静止画の露光時において合焦となるフォーカスレンズ102aの位置を予測する。
【0127】
動体予測演算を行うと、次に、シャッタ動作を開始する(S49)。ここでは、CPU212は、静止画取得のための撮像(本露光)を行うために、メカシャッタ202の動作を開始させる。このメカシャッタ202の動作は、本露光の前後のメカシャッタ202の開閉動作と、本露光の後でライブビュー及びAFのための撮像を開始するためのメカシャッタ202の全開動作とを含む(
図9Cのフローには、シャッタ動作の開始のタイミングのみを記載している)。CPU212は、シャッタ動作を開始すると、まず、メカシャッタ202を全閉状態とするように駆動部204の制御信号を切り替える。そして、ステップS53において、本露光の間、メカシャッタ202を全開した後に一旦全閉する。その後、CPU212は、メカシャッタ202を全開状態とするように駆動部204を制御する。
【0128】
シャッタ動作を開始すると、絞りの絞り込み駆動とフォーカスレンズ駆動(LD)を同時に開始する(S51)。ここでは、CPU212は、レンズCPU106に対してフォーカスレンズ102a及び絞り102bを同時に駆動させるように指示し、両者の動作を開始させる。フォーカスレンズ102aの駆動位置は、ステップS45の動体予測演算において予測された位置である。絞り102bの開口量は、直前の測光演算によって測定された被写体輝度に基づいて算出された絞り値に応じた開口量である。
【0129】
絞りとフォーカスレンズ駆動を行うと、次に、本露光を行う(S53)。ここでは、CPU212は、本露光を実行し、前述したように、メカシャッタ202によって予め決められた露光期間だけを露光させるように駆動部204を制御する。本露光は、静止画記録用の画像データを取得するための撮像であり、露光読出し動作では画素部ごとに4個のフォトダイオードの出力値を加算(4PD加算)した画素値を生成し出力する。CPU212は、本露光の終了後に、撮像素子208から画素信号を読み出す動作を実行させ、画素信号の読み出し後、記録用の静止画データを生成するための処理を画像処理回路214に行わせる。画像処理回路214は、記録用の画像データの生成に必要な処理を行って記録用の静止画データを生成する。画像処理の完了後、CPU212は、画像圧縮展開部216によって記録用の静止画データを圧縮する。圧縮の完了後、CPU212は、圧縮された記録用の静止画データを画像ファイルとして記録媒体230に記録する。
【0130】
続いて、絞りLD同時駆動(開放)を実行する(S55)。ここでは、CPU212は、レンズCPU106に対して絞り102bを開放させるように、またフォーカスレンズ102aを目標位置へ駆動するように指示する。ステップS47における動体予測演算によって予測された位置へ、ステップS51においてフォーカスレンズ102aを駆動している。しかしながら、本露光までの処理時間が限られるため目標位置に達せずに、駆動に残りが生ずることがある。ステップS55では、このようなフォーカスレンズの駆動残り分を駆動するように指示する。
【0131】
続いて、1stレリーズスイッチがオンか否について判定する(S57)。ここでは、CPU212は、操作部206の内のレリーズボタンの1stレリーズスイッチがオンの状態であるか否かを判定する。この判定の結果、1stレリーズスイッチがオンの場合には、ステップS23に戻り、前述の処理を実行する。
【0132】
一方、ステップS57における判定の結果、1stレリーズスイッチがオンでない場合には、カメラ電源がオフか否かを判定する(S59)。ここでは、CPU212は、カメラ本体200の電源をオフするか否かを判定する。例えば、ユーザの操作部206の操作によって電源のオフが指示された場合、又は所定時間のユーザの操作部206の操作がない場合には電源をオフすると判定される。この判定の結果、カメラ本体200の電源をオフしないと判定されたときには、処理はステップS1に戻る。一方、ステップS59において、カメラ本体200の電源をオフすると判定されたときには、このフローの処理は終了する。
【0133】
以上述べたように、本発明の一実施形態においては、4PDのLTとLBの間、RTとRBの間に位置する障壁Ptbのレベルを、LTとRTの間、LBとRBの間に位置する障壁Prlのレベルよりも低く設定してRL優先とする。これにより受光部LT、LB、RT、RBのいずれか1つにおいて、障壁Ptbに関する電荷の飽和が発生しても、R画素(RT+RB)、L画素(LT+LB)としては電荷の飽和が発生しない。したがって、障壁Prl、Ptbのレベルを同一とする場合に比較して、R/L画素の信号電圧の蓄積判定レベル(飽和判定レベル)をより高くすることが可能であり、ダイナミックレンジを拡大することができる。なお、RL優先の代わりにTB優先としてもよい。4PDのLTとLBの間、RTとRBの間に位置する障壁Ptbのレベルを、LTとRTの間、LBとRBの間に位置する障壁Prlのレベルよりも高く設定してTB優先と設定してもよい。また、4PD画素毎にRL優先とTB優先の障壁の一方を設定し、R/L画素信号を使用する場合はRL優先の4PD画素を選択して使用し、T/B画素信号を使用する場合はTB優先の4PD画素を選択して使用する構成としてもよい。
【0134】
次に、
図10および
図11を用いて、一実施形態の変形例について説明する。
図10および
図11は、撮像素子と焦点検出回路を含むブロック図である。撮像素子208において画素信号を増幅して出力することが可能な場合における、画素信号のA/D変換後のデジタル画素データ(以下、画素データ)の飽和判定レベルの設定方法について説明する。この例では、制御部(焦点検出回路218)は、撮像素子208の増幅率(ゲインともいう)を設定し、設定した増幅率に応じてA/D変換後の画素データの飽和判定レベルを設定する。なお、制御部は焦点検出回路218内に限らず、その一部の機能をCPU212等、他の回路等において実現してもよい。
【0135】
図10において、撮像素子208は、
図2に示す撮像素子208と同様であり、画素部22から読み出された画素信号は、アナログ処理部23において増幅処理され、ADC処理部24においてA/D変換された後、画素データとして出力される。なお、
図2におけるメモリ部25、水平走査部26、出力部27は、
図10において省略している。
【0136】
また、制御部(焦点検出回路218)内には、位相差画素列生成部218a、位相差画素データ加工部218b、および相関演算部218cを有する。位相差画素列生成部218aは、位相差画素列生成回路を有し、撮像素子208から出力される加算信号を、AFエリア(焦点検出領域)単位の画素列として出力するブロックである。AFエリアが、例えば100個の場合、100個の画素列分の出力を行う。
【0137】
位相差画素データ加工部218bは、位相差画素データ加工回路を有し、相関演算を行うための前処理(後述する照度補正等の各種補正)を行う。位相差画素データ加工部218b内には、飽和検出部218baが設けられている。この飽和検出部218baは、飽和検出回路を有し、AFエリア毎に、画素データが飽和判定レベルを超えた場合に、飽和NGと判定し、その結果を出力する。飽和判定レベルについては、
図11を用いて後述する。相関演算部218cは、相関演算回路を有し、位相差画素データ加工部218bの出力を用いて、相関演算を行う。
【0138】
撮像素子208のゲインを変化させる場合と、画素信号の飽和レベルも変化するので、これに対応してデジタル出力である画素データの飽和判定レベルを変更する必要がある。撮像装置1では、画素データの飽和判定レベルとして、撮像素子208のゲインが1倍の時の画素信号の飽和判定レベルに対応するADC処理部24の出力値を記憶しておく。そして、焦点検出回路218は、ゲインを増加させる場合に、ゲイン倍率分だけ、飽和判定レベルを増加させる。この飽和判定レベルの値が、焦点検出回路218内のデジタルデータのダイナミックレンジを超える場合、飽和判定レベルは、そのダイナミックレンジの最大値で当て付かせる。
【0139】
図11(b)に撮像素子208におけるゲインに対する飽和判定レベルを示し、
図11(a)に撮像素子208におけるアナログゲインに対するRL飽和判定レベルの変化をグラフで示す。
図11(b)に示すように、R/L画素の飽和判定レベル(
図9BのS27参照)と、T/B画素の飽和判定レベル(
図9BのS31参照)は異なり(
図4(a)参照)、ゲインに応じてR/L飽和判定レベルと、T/B飽和判定レベルを記憶しておく。焦点検出回路218(飽和検出部218ba)は、
図11(b)に従い、ゲインが増加するにつれて、
図9BのステップS27、S31における飽和判定レベルを変更する。飽和検出部218baは、飽和か否かを判定する画素データの条件、つまり、R/L画素データかT/B画素データか、ゲイン、に応じて飽和判定レベルを設定する。そして、画素データが飽和判定レベルを超えた場合に飽和していると判定する。なお、
図11では、焦点検出回路218内のデジタルデータを12ビット(4096LSB)で扱い、ダイナミックレンジの上限を1例として3800LSBとしている。
【0140】
次に、
図12を用いて、第2の変形例として、光学系の収差により生ずる光量分布特性を補正するための照度補正を実行する場合に、照度補正を施す画素データの飽和検出について説明する。この例では、撮像素子208の出力するR/L画素データを読み出し、このR/L画素データに対して照度補正処理を行って補正後データを生成する。この補正を行う前の画素データを飽和判定レベルと比較して、補正前データが飽和しているか否かを判定する。
【0141】
撮像素子208のR/L画素(RT+RB、LT+LB)の受光感度特性と撮影レンズの光学特性によって導き出すことができる照度補正値(
図12)を用いて光量分布特性を補正する。補正後の画素データPIaftは、補正前の画素データPIpreと補正値Cを用いて、下記(1)式によって算出できる。位相差画素データ加工部218bは、下記(1)式の計算を実行する。なお、iは、画素番号であり、補正値は、通常1.0~5.0程度である。
PIaft(i)=PIpre(i)×C(i) ・・・(1)
【0142】
図12は、ある特定の撮影レンズをカメラ本体に装着した時のR/L画素の補正値(照度補正値)Cを示す。
図12において、横軸は撮像素子208上における画素位置を示し、縦軸は補正値Cを示す。L開口の画素(L画素(LT+LB))と、R開口の画素(R画素(RT+RB))の補正値は、光学系の特性により撮像素子208の中心を境に左右対称となっている。補正値Cは、予め測定、または計算により求められメモリに記憶されている。各画素値に対して、上記(1)式を用いて補正することによって、照度補正を行うことができる。
【0143】
焦点検出回路218(飽和検出部218ba)は、照度補正前の画素データPIpreがRL飽和判定レベル(
図11)を超える場合は飽和していると判定する(
図9A:S9、
図9B:S27)。前述のように、飽和している画素データを含んで相関演算を行うと誤検出や検出精度の低下を招くため、飽和している画素データを所定個数以上、含むAFエリア(焦点検出領域)を検出不能とする。または、飽和している画素データを他の画素データ(例えば周辺の画素データ)に置換える等の処理を行って相関演算を行ってもよい。上記説明は、R/L画素データに関するが、T/B画素データ(RT+LT/RB+LB)についても同様であり、メモリに記憶されているT/B画素用の照度補正値を用いて照度補正を行う前に、TB飽和判定レベル(
図11(b))を用いて飽和の判定を行う。このように、照度補正前の画素データについて飽和検出を行うことにより、適切な画素データだけを焦点検出演算にて使用し高精度な焦点検出が可能となる。
【0144】
次に第3の変形例について説明する。本実施形態においては、R画素データおよびL画素データをそれぞれ読み出す場合について説明した。画素データの読み出し方法の別の方法として、R画素(RT+RB)信号を1ライン分読み出した後、同じ画素ラインの(R+L)画素(4PD加算)を1ライン分読み出す方式がある。この読出し方式は、R画素のみの画素データ(R)と、R画素信号とL画素信号を加算した信号に対応する画素データ(R+L)との2つの画素データの差分{(R+L)-R}を算出することによって、L画素の画素データを取得することができる。この場合は、{(R+L)-R}画素データに対して飽和判定レベルを超えているか否かを判断する。
【0145】
図13は、L/R画素の電荷のイメージ図である。例えば、
図13に示すように、L画素の電荷CLが飽和して障壁を超え、R画素に電荷CRが漏れ出てしまっている状態では、R画素で光電変換した電荷CRとは別に、L画素からあふれた電荷CsがR画素に蓄積されてしまう。この場合、R画素は電荷が飽和していないので、R画素データの飽和判定により飽和となることはない。しかし、(R+L)画素データとR画素データの差分{(R+L)-R}を演算して求めたL画素データの飽和判定により飽和と判定される。従って、L画素の電荷の飽和が発生してしまっており飽和NGと判断できる。この場合も、相関演算結果が不正確であることを正しく判断できる。
【0146】
以上説明したように、本発明の一実施形態における検出装置は、マイクロレンズに対応する複数の受光部を有する画素を複数備え、複数の受光部は所定の複数の位相差検出方向に対応して設けられ、位相差検出方向に応じて複数の受光部の出力信号を加算して加算信号を出力することが可能な撮像素子(例えば、
図3A、
図3B参照)と、撮像素子の加算信号に基づく位相差検出によって焦点検出または奥行き検出を行う制御部(例えば、
図1の焦点検出回路218、CPU212、
図9BのS35参照)を有する。また、撮像素子は、複数の位相差検出方向に応じて受光部の間のポテンシャル障壁の高さを異ならせている(例えば、
図4(a)のPtbとPrl参照)。制御部は、撮像素子へ特定の位相差検出方向を指示して撮像素子の蓄積動作を実行させ、位相差検出方向に応じて異なる蓄積判定レベルを設定し、加算信号と蓄積判定レベルに基づいて撮像素子の蓄積動作を制御する(例えば、
図9AのS9、S13、
図9BのS27、S31参照)。このため、位相差検出用の画素の信号のダイナミックレンジをより大きくとることができ、AFの精度向上と高速化が可能となる。
【0147】
なお、本発明の一実施形態においては、焦点検出回路218、画像処理回路214、画像圧縮展開部216、露出制御回路220等の全部または一部を、CPU212およびその周辺回路と一体化してもよい。また、焦点検出回路218、画像処理回路214、画像圧縮展開部216、露出制御回路220等は、ヴェリログ(Verilog)によって記述されたプログラム言語に基づいて生成されたゲート回路等のハードウェア構成でもよく、またDSP(Digital Signal Processor)等のソフトを利用したハードウェア構成を利用してもよく、FPGA(Field Programmable Gate Array)等の集積回路で構成されたプロセッサにおける各回路部であってもよい。また、これらを適宜組み合わせてもよいことは勿論である。または、1つ以上のCPUで構成されるプロセッサが、記録媒体に記録されたコンピュータプログラムを読み込んで実行することによって、各部としての機能を実行するようにしても構わない。
【0148】
また、本発明の一実施形態においては、撮影のための機器として、デジタルカメラを用いて説明したが、カメラとしては、デジタル一眼レフカメラでもミラーレスカメラでもコンパクトデジタルカメラでもよく、ビデオカメラ、ムービーカメラのような動画用のカメラでもよく、さらに、携帯電話、スマートフォン、携帯情報端末、パーソナルコンピュータ(PC)、タブレット型コンピュータ、ゲーム機器等に内蔵されるカメラ、医療用カメラ(例えば、医療用内視鏡)、顕微鏡等の科学機器用のカメラ、工業用内視鏡、自動車搭載用カメラ、監視用カメラでも構わない。いずれにしても、撮像面において位相差AFを採用する撮影のための機器であれば、本発明を適用することができる。
【0149】
また、本明細書において説明した技術のうち、主にフローチャートで説明した制御に関しては、プログラムで設定可能であることが多く、記録媒体や記録部に収められる場合もある。この記録媒体、記録部への記録の仕方は、製品出荷時に記録してもよく、配布された記録媒体を利用してもよく、インターネットを通じてダウンロードしたものでもよい。
【0150】
また、本発明の一実施形態においては、フローチャートを用いて、本実施形態における動作を説明したが、処理手順は、順番を変えてもよく、また、いずれかのステップを省略してもよく、ステップを追加してもよく、さらに各ステップ内における具体的な処理内容を変更してもよい。
【0151】
また、特許請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず」、「次に」等の順番を表現する言葉を用いて説明したとしても、特に説明していない箇所では、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。
【0152】
本発明は、上記実施形態にそのまま限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせによって、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素の幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0153】
1・・・撮像装置、21・・・垂直走査部、22・・・画素部、23・・・アナログ処理部、24・・・ADC処理部、25・・・メモリ部、26・・・水平走査部、27・・・出力部、28・・・入力部、29・・・素子制御部、30・・・読出方法選択部、100・・・交換式レンズ、102・・・撮像光学系、102a・・・フォーカスレンズ、102b・・・絞り、104・・・駆動部、106・・・レンズCPU、108・・・レンズ側記憶部、200・・・カメラ本体、202・・・メカシャッタ、204・・・駆動部、206・・・操作部、208・・・撮像素子、210・・・手振れ補正回路、212・・・CPU、214・・・画像処理回路、216・・・画像圧縮展開部、218・・・焦点検出回路、218a・・・位相差画素列生成部、218b・・・位相差画素データ加工部、218ba・・・飽和検出部、218c・・・相関演算部、220・・・露出制御回路、222・・・表示部、224・・・バス、226・・・DRAM、228・・・本体側記憶部、230・・・記録媒体