(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-20
(45)【発行日】2025-01-28
(54)【発明の名称】粒子捕集容器、粒子捕集装置、及び粒子捕集方法
(51)【国際特許分類】
B03C 3/53 20060101AFI20250121BHJP
B03C 3/02 20060101ALI20250121BHJP
B03C 3/40 20060101ALI20250121BHJP
B03C 3/41 20060101ALI20250121BHJP
B03C 3/70 20060101ALI20250121BHJP
A61L 9/16 20060101ALI20250121BHJP
C12M 1/28 20060101ALI20250121BHJP
H01T 19/04 20060101ALI20250121BHJP
【FI】
B03C3/53
B03C3/02 A
B03C3/02 B
B03C3/40 A
B03C3/41 A
B03C3/70 A
A61L9/16 Z
C12M1/28
H01T19/04
(21)【出願番号】P 2020159014
(22)【出願日】2020-09-23
【審査請求日】2023-08-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000101617
【氏名又は名称】アマノ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111202
【氏名又は名称】北村 周彦
(72)【発明者】
【氏名】福田 恭平
(72)【発明者】
【氏名】水野 彰
(72)【発明者】
【氏名】勝島 慎二郎
(72)【発明者】
【氏名】北林 功一
(72)【発明者】
【氏名】巻嶋 優治
【審査官】宮部 裕一
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-215162(JP,A)
【文献】特開2020-141887(JP,A)
【文献】特開2014-078491(JP,A)
【文献】国際公開第2001/072428(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第107402145(CN,A)
【文献】特開平01-180257(JP,A)
【文献】特開2002-066378(JP,A)
【文献】特開平06-159093(JP,A)
【文献】特開2003-329552(JP,A)
【文献】中国実用新案第203648695(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B03C 3/53
B03C 3/16
F24F 8192
A61L 9/16
B03C 3/02
B03C 3/40
B03C 3/41
B03C 3/70
C12M 1/28
H01T 19/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気中の粒子を帯電させて捕集する粒子捕集容器であって、
開口部を有する容器本体と、
前記開口部に設けられ、前記容器本体の外部から内部に空気を流入させる流入路を有する吸込部と、
前記開口部に設けられ、前記容器本体の内部から外部に空気を流出させる流出路を有する排出部と、
前記容器本体の内部に設けられ、高電圧が印加される放電用電極と、
前記容器本体の内部に設けられ、前記放電用電極により帯電された空気中の粒子を捕集する媒体を収容可能な媒体収容部と、
を備え、
前記媒体は、液体または、ジェル状であり、
前記媒体収容部は、底部上に前記媒体を膜状に収容可能であることを特徴とする粒子捕集容器。
【請求項2】
前記媒体は、導電性の液体であることを特徴とする請求項1に記載の粒子捕集容器。
【請求項3】
前記吸込部は、一端が前記容器本体の外部に開放されると共に他端が前記容器本体の内部に開放される導電性の筒体を備え、該筒体の他端には、前記放電用電極が前記液体に向かって設けられていることを特徴とする請求項2に記載の粒子捕集容器。
【請求項4】
前記吸込部の他端側の開口面積は該吸込部の一端側の開口面積より小さく設定されていることを特徴とする請求項3に記載の粒子捕集容器。
【請求項5】
前記放電用電極は繊維を束ねた束状部を有する線電極で構成されていることを特徴とする請求項2~4のいずれかの請求項に記載の粒子捕集容器。
【請求項6】
前記放電用電極は前記吸込部の周方向に沿って等間隔で配置され、該各放電用電極の先端部は、前記吸込部より前記液体の液面側に向かって突出して設けられ、該液面から一定の距離を隔てた位置に配置されていることを特徴とする請求項2~5のいずれかの請求項に記載の粒子捕集容器。
【請求項7】
前記容器本体の開口部から内部に向かって延出して前記液体に接触する接地部を備え、該接地部の外周部は非導電性の絶縁部材により覆われていることを特徴とする請求項2~6のいずれかの請求項に記載の粒子捕集容器。
【請求項8】
前記接地部の前記液体側の端部には導電性を有する付勢部材が設けられていることを特徴とする請求項7に記載の粒子捕集容器。
【請求項9】
前記吸込部に反発部が設けられ、該反発部は、前記液体の液面から一定の距離を隔てた位置において液面に沿うように設けられていることを特徴とする請求項7又は8に記載の粒子捕集容器。
【請求項10】
前記反発部は、前記容器本体の開口部と相似形で該開口部より小さい平面形状を有し、前記吸込部の他端に支持されると共に絶縁体を介して前記接地部に支持されていることを特徴とする請求項9に記載の粒子捕集容器。
【請求項11】
前記液体の主成分は水であり、該液体は、厚さ1mm以下の液膜で形成され、界面活性剤を含んでいることを特徴とする請求項2~10のいずれかの請求項に記載の粒子捕集容器。
【請求項12】
前記液体は抗酸化剤を含んでいることを特徴とする請求項2~11のいずれかの請求項に記載の粒子捕集容器。
【請求項13】
前記液体は潮解性を有する塩を含んでいることを特徴とする請求項2~12のいずれかの請求項に記載の粒子捕集容器。
【請求項14】
前記容器本体の開口部は、該容器本体の底部と対向する上部に形成され、該底部は平坦状に形成され、該容器本体の内面は撥水性を有していることを特徴とする請求項1~13のいずれかの請求項に記載の粒子捕集容器。
【請求項15】
前記容器本体はバイアル瓶であることを特徴とする請求項1~14のいずれかの請求項に記載の粒子捕集容器。
【請求項16】
前記放電用電極と給電接触部とを有する前記吸込部と、前記排出部と、前記液体に接触する接地部と、が設けられた電極ユニットを備え、該電極ユニットは前記容器本体の開口部に着脱可能に設けられていることを特徴とする請求項2~15のいずれかの請求項に記載の粒子捕集容器。
【請求項17】
前記電極ユニットの上面は平坦状に形成され、前記吸込部と前記排出部と前記接地部は該電極ユニットの上面より突出していないことを特徴とする請求項16に記載の粒子捕集容器。
【請求項18】
請求項1~17のいずれかの請求項に記載の粒子捕集容器を備える粒子捕集装置であって、
前記粒子捕集容器に対して着脱可能な給電ユニットを備え、該給電ユニットは、
前記吸込部の前記流入路と連通可能な吸込流路と、
前記排出部の前記流出路と連通可能な排出流路と、
前記吸込部に形成された給電接触部と接触可能な給電部材と、
前記媒体に接触する接地部と接触可能な接地部材と、
を備えていることを特徴とする粒子捕集装置。
【請求項19】
前記給電ユニットの前記吸込流路の上流側の流通路に設けられる開閉弁と、
前記給電ユニットの前記排出流路の下流側の流通路に設けられる吸引手段と、
を備え、
運転時に、前記吸引手段は連続的に動作し、前記開閉弁は開動作と閉動作を交互に行うように制御されることを特徴とする請求項18に記載の粒子捕集装置。
【請求項20】
運転時に、前記開閉弁は、閉状態の時間より開状態の時間が長くなるように制御されることを特徴とする請求項19に記載の粒子捕集装置。
【請求項21】
請求項18又は19に記載の粒子捕集装置を使用して空気中の粒子を捕集する粒子捕集方法であって、
前記媒体を前記容器本体内に供給する媒体供給工程と、
前記媒体供給工程の後に粒子を含む空気を前記容器本体内に吸い込む空気吸込み工程と、
前記放電用電極に高電圧を印加することにより前記空気吸込み工程で吸い込んだ空気中の粒子を帯電させる粒子帯電工程と、
前記媒体供給工程で前記容器本体内に供給された媒体に前記粒子帯電工程で帯電された粒子を捕集させる粒子捕集工程と、
を含むことを特徴とする粒子捕集方法。
【請求項22】
前記粒子は、微生物や細菌やウィルスを含むことを特徴とする請求項21に記載の粒子捕集方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気中の粒子を帯電させて捕集する粒子捕集容器、該粒子捕集容器を備える粒子捕集装置、及び空気中の粒子を捕集する粒子捕集方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、製薬工場や食品工場、病院、居住空間などで空気中に浮遊する微生物による汚染状況を調べるために捕集装置が利用されている。 例えば、特許文献1のように、捕集容器内に放電電極と集塵電極を備え、該捕集容器内に捕集された浮遊粒子状物質を透明な平板の集塵電極上に付着させる技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記した特許文献1に記載の技術には、以下のような問題がある。
【0005】
(1)特許文献1では、捕集容器に、上部の開口と、側部に大気が流入する流入口と、排出口に相当する連通口の3つの開口部が設けられている。そのため、粒子採取後の保管や輸送を安全に行うためには、全ての開口部を密閉する手間を必要とする。加えて、このような捕集容器は、市場に流通しておらず、市販品を追加工或いは新たに製作する必要があるため、コストが増大するという問題がある。
【0006】
(2)集塵電極が捕集容器の底部全体に配置されていないため、微粒子が底部に堆積・付着する虞があり、捕集性能の向上が難しい。また、特許文献1に示されているような流入口、放電電極、連通口の配置では、帯電された粒子が集塵電極に捕集されず、そのまま連通口(排出口)に流出する虞があり、捕集性能の向上が難しい。さらに、流入口が捕集容器の側面に配置されているため、捕集容器内に導入される空気中の微粒子は、必ずしも放電電極によって生成される帯電エリアを通過するとは限らず、帯電性能を向上させることが難しい。
【0007】
(3)捕集された微粒子は、透明な平板(透明板の表面に導電性の透明皮膜を形成している集塵電極)上に捕集されるため、平板上に捕集された粒子を、例えばPCR処理等の後工程で使用する場合、粒子を平板から掻き取る工程が必要となり、手間が掛かるという問題がある。
【0008】
本発明は、上記した課題を解決すべくなされたものであり、経済性に優れ、粒子捕集後の次工程を容易に行うことができ、帯電性能と捕集性能を向上させることのできる粒子捕集容器、粒子捕集装置、及び粒子捕集方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記した目的を達成するため、本発明の第1の粒子捕集容器は、空気中の粒子を帯電させて捕集する粒子捕集容器であって、開口部を有する容器本体と、前記開口部に設けられ、前記容器本体の外部から内部に空気を流入させる流入路を有する吸込部と、前記開口部に設けられ、前記容器本体の内部から外部に空気を流出させる流出路を有する排出部と、前記容器本体の内部に設けられ、高電圧が印加される放電用電極と、前記容器本体の内部に設けられ、前記放電用電極により帯電された空気中の粒子を捕集する媒体を収容可能な媒体収容部と、を備えていることを特徴とする。
本発明の第2の粒子捕集容器において、前記媒体は、導電性の液体であることを特徴とする。
【0010】
本発明の第1及び第2の粒子捕集容器によれば、容器本体の開口部に吸込部と排出部が設けられているため、市場に流通している容器を加工することなくそのまま使用することができ、経済性を高めることができる。また、容器本体内の媒体に粒子を捕集させるため、粒子捕集後(採取後)の工程(例えばPCR処理)を容易に行うことができ、取扱いを容易に行うことができる。
【0011】
本発明の第3の粒子捕集容器において、前記吸込部は、一端が前記容器本体の外部に開放されると共に他端が前記容器本体の内部に開放される導電性の筒体を備え、該筒体の他端には、前記放電用電極が前記液体に向かって設けられていることを特徴とする。
【0012】
本発明の第3の粒子捕集容器によれば、容器本体内に吸引された空気を液面の近くまで誘導し、空気を液面に衝突させることで、空気中の粒子を液体に接触・混合させることができるため、粒子の捕集効率を向上させることができる。また、放電用電極は、導電性の筒体に設けられているので、給電(高電圧の印加)の仕組みを容易にすることができる。
【0013】
本発明の第4の粒子捕集容器において、前記吸込部の他端側の開口面積は該吸込部の一端側の開口面積より小さく設定されていることを特徴とする。
【0014】
本発明の第4の粒子捕集容器によれば、吸込部から内部に流入した空気の液面に衝突する速度が上昇するので、粒子を液体に接触・混合させる度合いが高まり、粒子の捕集効率を向上させることができる。
【0015】
本発明の第5の粒子捕集容器において、前記放電用電極は繊維を束ねた束状部を有する線電極で構成されていることを特徴とする。
【0016】
本発明の第5の粒子捕集容器によれば、線電極は、針電極に比べて低電圧で帯電エリアを生成することができるので、例えば、携帯性に優れるバッテリ等により稼動させることが可能である。また、放電用電極が繊維を束ねた束状部を有する線電極で構成されているため、電極に汚れが付着し難く、例えば、放電している線電極が汚れにより放電できなくなったとしても、交番作用により別の線電極が放電を開始するので、優れた耐久性を実現することができる。
【0017】
本発明の第6の粒子捕集容器において、前記放電用電極は前記吸込部の周方向に沿って等間隔で配置され、該各放電用電極の先端部は、前記吸込部より前記液体の液面側に向かって突出して設けられ、該液面から一定の距離を隔てた位置に配置されていることを特徴とする。
【0018】
本発明の第6の粒子捕集容器によれば、放電用電極の先端部が、吸込部より液面側に向かって突出しているため、放電用電極によって生成される帯電エリアに吸込部が影響を及ぼすことがなく、吸込部から流入した空気中の粒子を確実に帯電させることができる。
【0019】
本発明の第7の粒子捕集容器は、前記容器本体の開口部から内部に向かって延出して前記液体に接触する接地部を備え、該接地部の外周部は非導電性の部材により覆われていることを特徴とする。
【0020】
本発明の第7の粒子捕集容器によれば、接地部は、容器本体の開口部を利用して容器本体内の液体に接触させているので、容器本体に対する追加工等を不要とし、液体を容易にアース処理することができる。また、接地部の外周を非導電性の部材で保護することで、帯電された粒子が接地部に付着するのを防止することができる。
【0021】
本発明の第8の粒子捕集容器において、前記接地部の前記液体側の端部には導電性を有する付勢部材が設けられていることを特徴とする。
【0022】
本発明の第8の粒子捕集容器によれば、例え接地部の取付具合や液体の貯留量のバラツキなどにより、容器本体の開口部から液面までの距離にバラツキが生じたとしても、付勢部材によって容器本体の開口部から液面までの距離のバラツキを吸収することができるので、確実に液体を接地(アース)させることができる。
【0023】
本発明の第9の粒子捕集容器において、前記吸込部に反発部が設けられ、該反発部は、前記液体の液面から一定の距離を隔てた位置において液面に沿うように設けられていることを特徴とする。
【0024】
本発明の第9の粒子捕集容器によれば、空気中の帯電された粒子は、液面の周囲に拡散するように流通するので、液面全体を有効に活用することができ、粒子の捕集効率の向上を図ることができる。また、反発部と液面との間を流通路とすることで、容器の内部空間を有効に活用することができる。
【0025】
本発明の第10の粒子捕集容器において、前記反発部は、前記容器本体の開口部と相似形で該開口部より小さい平面形状を有し、前記吸込部の他端に支持されると共に絶縁部材を介して前記接地部に支持されていることを特徴とする。
【0026】
本発明の第10の粒子捕集容器によれば、容器本体内に反発部を容易に収容することができる。また、反発部は、吸込部の他端及び接地部に支持されることで、反発部の取付が容易に行えると共に、容器本体内に収容された部材をユニット化することができ、容器本体に対する着脱作業を容易に行うことができる。
【0027】
本発明の第11の粒子捕集容器において、前記液体の主成分は水であり、該液体は、厚さ1mm以下の液膜で形成され、界面活性剤を含んでいることを特徴とする。
【0028】
本発明の第11の粒子捕集容器によれば、液体の量を少なく抑えることで、次工程(例えば、PCR処理等)での検体濃度の低下を防止することができる。また、液体に界面活性剤を混合することにより、液体中に捕集されたウィルスを不活性化させて、安全に次工程に移行することができる。
【0029】
本発明の第12の粒子捕集容器において、前記液体は抗酸化剤を含んでいることを特徴とする。
【0030】
本発明の第12の粒子捕集容器によれば、放電で発生する酸化性ラジカルによる遺伝子の損傷を低減化することができ、粒子サンプリング後の解析精度を高めることができる。
【0031】
本発明の第13の粒子捕集容器において、前記液体は潮解性を有する塩を含んでいることを特徴とする。
【0032】
本発明の第13の粒子捕集容器によれば、空気中の水分を吸収し、液体の蒸発を抑えることができるため、容器本体の内面を濡れた状態に保つことができ、粒子の捕集効果を高く保つことができる。
【0033】
本発明の第14の粒子捕集容器において、前記容器本体の開口部は、該容器本体の底部と対向する上部に形成され、該底部は平坦状に形成され、該容器本体の内面は撥水性を有していることを特徴とする。
【0034】
本発明の第14の粒子捕集容器によれば、上部が開口された容器は、市場に多く流通している形状であるため、容器本体の入手が容易で経済性に優れている。また、容器本体の底部が平坦形状のため、液面の高さが均一な液層を形成することができる。したがって、放電性能を安定的に維持することができる。また、容器本体の内面が撥水性を備えることで、捕集された粒子は、容器内面に付着(吸着)し難く、液体に確実に捕集されるので、捕集効率を向上させることができる。
【0035】
本発明の第15の粒子捕集容器において、前記容器本体はバイアル瓶であることを特徴とする。
【0036】
本発明の第15の粒子捕集容器によれば、容器本体を密閉可能なため、粒子採取後の保管や輸送を安全に行うことができる。また、バイアル瓶は、医薬分野、製薬分野、検体採取などで用いられる容器であり、流通性(市場性)に優れており、比較的安価で入手することができる。さらに、バイアル瓶の内面は、撥水性を備えており、採取した粒子が付着(吸着)し難く、液体に確実に捕集されるため、捕集効率を向上させることができる。
【0037】
本発明の第16の粒子捕集容器は、前記放電用電極と給電接触部とを有する前記吸込部と、前記排出部と、前記液体に接触する接地部と、が設けられた電極ユニットを備え、該電極ユニットは前記容器本体の開口部に着脱可能に設けられていることを特徴とする。
【0038】
本発明の第16の粒子捕集容器によれば、容器本体内に収容される複数の部品をユニット化したので、容器本体内に液体を供給後、電極ユニットを開口部に取り付ければ、捕集(採取)可能な状態となり、使い勝手を向上させることができる。また、電極ユニットを容器本体から取り外せば、液体の上方が開放状態となるので、液体の取扱いを容易に行うことができる。
【0039】
本発明の第17の粒子捕集容器において、前記電極ユニットの上面は平坦状に形成され、前記吸込部と前記排出部と前記接地部は該電極ユニットの上面より突出していないことを特徴とする。
【0040】
本発明の第17の粒子捕集容器によれば、蓋を確実に取り付けることができるため、容器本体内部の密閉性(密封性)を担保することができる。
【0041】
本発明の第1の粒子捕集装置は、上記した粒子捕集容器を備える粒子捕集装置であって、前記粒子捕集容器に対して着脱可能な給電ユニットを備え、該給電ユニットは、前記吸込部の前記流入路と連通可能な吸込流路と、前記排出部の前記流出路と連通可能な排出流路と、前記吸込部に形成された給電接触部と接触可能な給電部材と、前記媒体に接触する接地部と接触可能な接地部材と、を備えていることを特徴とする。
【0042】
本発明の第1の粒子捕集装置によれば、吸込流路、排出流路、給電部材、及び接地部材を給電ユニットに集約したので、粒子捕集装置内に粒子捕集容器をセットし、給電ユニットを容器本体に装着することで、容易に空気中の粒子の帯電及び捕集作業を行うことができる。
【0043】
本発明の第2の粒子捕集装置は、前記給電ユニットの前記吸込流路の上流側の流通路に設けられる開閉弁と、前記給電ユニットの前記排出流路の下流側の流通路に設けられる吸引手段と、を備え、運転時に、前記吸引手段は連続的に動作し、前記開閉弁は開動作と閉動作を交互に行うように制御されることを特徴とする。
【0044】
本発明の第2の粒子捕集装置によれば、吸引手段が連続的に吸引している状態で開閉弁の閉動作が行われると容器内の圧力が高められ、その後、開閉弁を開動作に切換えると、吸込口から吸引される粒子を含む空気の液面に向かう速度が上昇し、空気が勢い良く液面に衝突するので、媒体に粒子を接触・混合させる度合いが向上し、空気中の粒子の捕集効率を高めることができる。
【0045】
本発明の第3の粒子捕集装置は、運転時に、前記開閉弁が、閉状態の時間より開状態の時間が長くなるように制御されることを特徴とする。
【0046】
本発明の第3の粒子捕集装置によれば、閉状態の時間よりも開状態の時間の方が長くなるように制御されることで、時間当たりの粒子の捕集度合いの影響を低く抑えながら、捕集効率の向上を図ることができる。
【0047】
本発明の第1の粒子捕集方法は、上記した粒子捕集装置を使用して空気中の粒子を捕集する粒子捕集方法であって、前記媒体を前記容器本体内に供給する媒体供給工程と、前記媒体供給工程の後に粒子を含む空気を前記容器本体内に吸い込む空気吸込み工程と、前記放電用電極に高電圧を印加することにより前記空気吸込み工程で吸い込んだ空気中の粒子を帯電させる粒子帯電工程と、前記媒体供給工程で前記容器本体内に供給された媒体に前記粒子帯電工程で帯電された粒子を捕集させる粒子捕集工程と、を含むことを特徴とする。
【0048】
本発明の第1の粒子捕集方法によれば、空気中の粒子は、必ず帯電された後、容器内に吸い込まれ、底部に貯留された媒体に混合されて捕集されるので、媒体を有効に活用することができる。また、空気中の粒子は容器内の媒体に捕集されるので、粒子捕集後の次工程における各処理(例えば、PCR処理等)を容易に行うことができる。
【0049】
本発明の第2の粒子捕集方法において、前記粒子は、微生物や細菌やウィルスを含むことを特徴とする。
【0050】
本発明の第2の粒子捕集方法によれば、微生物や細菌やウィルスを効率よく捕集することができる。
【発明の効果】
【0051】
本発明によれば、経済性に優れ、粒子捕集後の次工程における処理を容易に行うことができ、帯電性能や捕集性能の向上を図ることができる等、種々の優れた効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【
図1】本発明の実施形態に係る粒子捕集容器を斜め上方から示す分解斜視図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る粒子捕集装置を斜め上方から示す斜視図である。
【
図4A】本発明の実施形態に係る粒子捕集装置の給電ユニットを斜め上方から示す斜視図である。
【
図4C】本発明の実施形態に係る粒子捕集装置の給電ユニットを斜め下方から示す斜視図である。
【
図5】本発明の実施形態に係る別のタイプの粒子捕集容器を斜め上方から示す斜視図である。
【
図6】本発明の実施形態に係る別のタイプの粒子捕集容器から電極ユニットを取り外した状態を斜め上方から示す分解斜視図である。
【
図7】本発明の実施形態に係る別のタイプの粒子捕集装置を示す断面図である。
【
図9】本発明の実施形態に係る粒子捕集容器の吸込部の変形例を示す斜視図である。
【
図10】本発明の実施形態に係る粒子捕集装置の構成を示すブロック図である。
【
図11】本発明の実施形態に係る粒子捕集装置の作用を示すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0053】
以下、添付した図面を参照しつつ、本発明の実施形態について説明する。なお、以下の説明において、「上流」及び「下流」並びにこれらに類する用語は、空気の流通方向における「上流」及び「下流」並びにこれらに類する概念を指すこととする。
【0054】
[粒子捕集装置]
まず、
図1~
図4Cを参照しつつ、本発明の実施形態に係る粒子捕集装置について説明
する。ここで、
図1は本発明の実施形態に係る粒子捕集容器を斜め上方から示す分解斜視
図、
図2は本発明の実施形態に係る粒子捕集装置を斜め上方から示す斜視図、
図3は
図2
のZ1-Z1断面図、
図4Aは本発明の実施形態に係る粒子捕集装置の給電ユニットを斜
め上方から示す斜視図、
図4Bは
図4AのZ2-Z2断面図、
図4Cは本発明の実施形態
に係る粒子捕集装置の給電ユニットを斜め下方から示す斜視図である。
【0055】
本実施形態に係る粒子捕集装置1は、空気中の粒子を帯電させて捕集するための装置であり、粒子捕集装置1の捕集対象となる空気中の粒子には、塵埃の他に、微生物、細菌、ウィルスのようなバイオ粒子などが含まれる。粒子捕集装置1は、粒子捕集装置1に着脱可能に設けられる粒子捕集容器2と、粒子捕集容器2に対して着脱可能な給電ユニット3と、粒子捕集容器2に空気を流入させる吸込設備4と、粒子捕集容器2から空気を流出させる排出設備5と、粒子捕集装置1を制御する制御装置6(
図10参照)と、を備えて構成されている。
【0056】
<粒子捕集容器>
粒子捕集容器2は、上部が窄まった有底円筒形状を有する容器本体7を備えている。容器本体7の上端部には、開口部8が形成されており、容器本体7は、この開口部8を蓋9によって密封(密閉)可能な構造を有している。このように容器本体7を密封(密閉)可能な構造とすることにより、バイオ粒子捕集後の保管や輸送を安全に行うことができる。
【0057】
容器本体7は、ガラス製のバイアル瓶が好適であるが、プラスチック製であっても良い。容器本体7の内面には、撥水コート処理(例えば、シリコンコート処理やテフロン(登録商標)コート処理等)が施されていても良い。容器本体7がバイアル瓶の場合、開口部8にゴム栓を差し込むので、高い気密性があり、コンタミネーション(異物混入)のリスクが少ない。また、ガラス製のため、容器本体7内に保存したものが、容器本体7に由来する化学的変質からほとんど影響を受けないので、長期間安定して保存することができる。さらに、バイアル瓶は、研究施設や分析機関など多岐に亘って使用されており、流通性が高く、また、原料であるガラスには、撥水性があるので、容器本体7の内面に撥水コート処理を施さなくても、捕集したウィルスが容器本体7の内面に付着するのを最小限に抑制することができる。
【0058】
容器本体7の底部10は平坦形状を有しているのが好ましく、容器本体7には、底部10上に媒体を膜状に収容可能な媒体収容部50が形成されている。なお、容器本体7の底部10は、必ずしも平坦形状ではなく、中央部が盛り上がった非平坦形状でも良く、その場合には、膜を厚めに形成すれば良い。
【0059】
媒体は、導電性の液体11であるが、ジェル状やゼリー状や粉末状でも良い。液体11の主成分は、水(例えば、純水、滅菌水、蒸留水)であり、液体11に混合するものとしては、界面活性剤(例えば、AVLバッファ)、抗酸化剤(例えば、グルコース)、塩、抗酸化剤(例えば、ビタミンC)、ぶどう糖、蒸発防止材(例えば、グリセリン)がある。
【0060】
界面活性剤の濃度は、数%程度に設定され、具体的には5%程度に設定されている。界面活性剤は、ガラス面へ液体が広がりやすくなるように、表面張力を下げ、濡れ性を良くすることもできる。水に界面活性剤を混合することで、ウィルスを無害化(無毒化)させることができる。
【0061】
また、水に抗酸化剤を混合することで、放電で発生する酸化性ラジカルによる遺伝子の損傷を低減することができ、粒子サンプリング後の解析精度を高めることができる。
【0062】
塩の濃度は、数%程度の濃度に設定され、具体的には、2%程度に設定されている。水に潮解性を有する塩を混合することで、空気中の水分を吸収し、液体の蒸発を抑えることができるため、容器本体7の内面を濡れた状態に保つことができ、粒子の捕集効果を高く保つことができる。
【0063】
また、水に抗酸化剤(ビタミンC)、ぶどう糖を混合することで、DNAのストレスを緩和し、損傷を防止することができ、水に蒸発防止材を混合することで、液体の蒸発を防止することができる。
【0064】
液体11は、厚さが2mm以下であり、好適には1mm以下の液膜になるように、媒体収容部50に供給される。空気中からバイオ粒子を捕集するには、液膜で十分であり、捕集される液体の液量を少なく抑えることで、次工程(例えば、PCR処理)での検体濃度の低下を防止することができる。また、液膜とすることにより、粒子捕集容器2の姿勢が多少傾いたとしても、液体11が外部に漏れ出す虞がない。また、液膜には、予め微生物を特定するための酵素(試薬)を混合しておかなくても良い。捕集後の工程(例えば、PCR処理)の前に酵素を入れる方が、酵素が弱らないので、好ましいからである。
【0065】
容器本体7の開口部8には、電極ユニット12が着脱可能に設けられている。電極ユニット12は、支持体13と、吸込部14と、放電用電極15と、排出部16と、接地部17と、を備えて構成されている。
【0066】
支持体13は、非導電性の部材により形成され、例えば、ゴム栓を加工して形成されても良い。支持体13は、容器本体7の開口部8に着脱可能な円柱形状の胴部18と、胴部18の上方に形成される扁平な円柱形状のフランジ部19と、から構成されている。フランジ部19がストッパとなることで、支持体13が容器本体7の内部に落下するのを防止することができる。支持体13の上面はフラット形状を有しており、これにより、粒子サンプリング終了後、蓋9を確実に閉めて容器本体7内を密閉することができるため、容器本体7外への粒子の飛散を防止することができる。
【0067】
吸込部14は、縦長円筒形状の筒体20を有している。なお、筒体20は、多角筒形状等、円筒形状以外の筒形状を有していても良い。筒体20は支持体13を上下方向に貫通し、上部21が支持体13に支持されている。筒体20の上端は容器本体7の外部に開放され、筒体20の内部には流入路22が形成されている。筒体20の上端の一周縁部から支持体13の上面に沿うように板状の給電接触部23が張り出して形成されている(
図1参照)。筒体20は、その上端と給電接触部23が支持体13の上面とフラットな状態で支持体13に支持されている。
【0068】
容器本体7内において、筒体20は液体11に向かって下方に延出している。筒体20の下端には放電用電極15が下方に向かって突設されている。筒体20は、導電性のステンレス(SUS304)により形成されており、放電用電極15と同じ材質により形成されている。筒体20と放電用電極15の材質を同一にすることで、異種金属の接触による電解腐食(電食)を防止することができる。
【0069】
放電用電極15は、筒体20の周方向に沿って所定間隔で間欠的に設けられている。これにより、容器本体7内に吸引された空気中の微生物を偏り無く均一に帯電させることができる。なお、図示した例では、放電用電極15を90度間隔で4束配置しているが、例えば、60度間隔で6束配置する等、他の配置であっても良い。
【0070】
複数の放電用電極15は、全て略同じ全長に形成され、複数の放電用電極15の先端は略揃えられている。各放電用電極15は、繊維状の線電極24を束ねてブラシ状に形成された束状部25を備えている。線電極24は、直径12μmの非磁性のステンレス繊維で形成されている。このため、線電極24が束状部25から離間しやすく、放電性能を高めるこができる。これに対して、例えば、磁性を備えたフェライト系では、線電極24が束状部25より離間し難いため、束状部25との電界干渉による影響が大きく、強電界のコロナ放電を発生させることが難しい。
【0071】
1つの放電用電極15は、例えば、約100本の線電極24が束ねられることで形成されている。なお、放電用電極15は、直径5~25μmの線電極24を10~200本束ねて形成されていても良い。また、放電用電極15は、直径5~7μmのカーボン繊維で形成されていても良い。なお、本実施例において、放電用電極15は線電極24により形成されているが、針電極や突起部を備えた板状電極で形成されていても良い。
【0072】
放電用電極15に印加される電圧は、数kVであり、具体的には4~6kVの範囲である。放電用電極15の長さ(筒体20から突出している長さ)は、数mmであり、具体的には3~7mmの範囲である。このため、比較的低電圧でも、安定して放電することができる。
【0073】
放電用電極15には、直流でプラスの高電圧が印加される。このように直流方式を採用することで、他の方式(交流、パルス)に比べて、比較的簡単な構成とすることができる。特に、微生物や細菌やウィルスのようなバイオ粒子を捕集する場合、電極に印加される電圧は、バイオ粒子の細胞を破壊しないような電圧(例えば数kV)に設定される。また、高電圧の印加方式として、プラス荷電方式を採用することで、マイナス荷電方式に比べて、オゾンの生成を抑制することができるので、特に微生物や細菌やウィルスのようなバイオ粒子に与える影響を少なくすることができる。
【0074】
なお、図示した例では、放電用電極15にコロナ放電が生成される高電圧を印加したが、コロナ放電が生成されない高電圧(コロナ放電電圧よりも低い電圧)を印加して粒子(全ての粒子)を帯電させる誘導帯電でも構わない。
【0075】
排出部16は、支持体13の内部を刳り貫いて形成される流出路26を備えている。流出路26は、円柱形状を有し、支持体13内を上下方向に貫通するように形成されている。流出路26は、吸込部14の筒体20と平行に形成され、平面視で筒体20からできるだけ距離を離すように配置されている。なお、流出路26は、支持体13の内部に筒体を収容し、該筒体の内部に形成してもよい。
【0076】
接地部17は、導電性を有し、縦長円形棒状に形成されている。なお、接地部17の形状は、板状又は筒状であっても良い。接地部17は、支持体13を上下方向に貫通し、上部が支持体13に支持されている。接地部17の上端部には、外径が一回り大きいアース接触部27が形成されている(
図1参照)。接地部17は、アース接触部27の上面が支持体13の上面とフラットな状態で支持体13に支持されている。
【0077】
容器本体7内において、接地部17は、液体11に向かって下方に延出し、非導電性で円筒形状の例えば樹脂製の絶縁部材28により覆われている。このように接地部17は容器本体7内で絶縁部材28に覆われて保護されているため、帯電された粒子が、接地部17に付着するのを防止することができる。
【0078】
接地部17の下端部には、導電性を有する付勢部材として、アース用スプリング29が接続されており、アース用スプリング29は、容器本体7の底部10に弾性的に接触している。したがって、仮に、支持体13の取付具合や液体11の貯留量のバラツキなどによって容器本体7の開口部8から液面までの距離にバラツキが生じたとしても、アース用スプリング29によって距離のバラツキが吸収されるので、アース用スプリング29が液体11に接触し、確実に液体11を接地(アース)させることができる。なお、図示した例では、付勢部材としては、コイルバネが使用されているが、板バネが使用されても良い。
【0079】
このように電極ユニット12を構成することで、
図1に示されているように、電極ユニット12の上面は平坦状に形成され、吸込部14と排出部16と接地部17は電極ユニット12の上面より突出していない。したがって、粒子捕集容器2に蓋9を確実に取り付けることができるため、容器本体7内の密閉性(密封性)を担保することができる。
【0080】
また、電極ユニット12を容器本体7の開口部8に装着することで、放電用電極15を容器本体7内に収容する工程と、接地部17を容器本体7内に収容して液体11と接触させる工程とが同時に行なわれるため、作業の効率化を図ることができる。
<給電ユニット>
【0081】
図2~
図4Cに示されているように、給電ユニット3は、電極ユニット12の上方において、手動(又は自動)で昇降可能に設けられており(
図3中の上下方向の太矢印参照)、粒子捕集容器2を粒子捕集装置1内の所定位置にセットした後、給電ユニット3を粒子捕集容器2に向かって下降させると、給電ユニット3と電極ユニット12が密着して接続される仕組みとなっている。給電ユニット3は、支持体30と、吸込流路31と、排出流路32と、給電部材33と、接地部材34と、を備えて構成されている。
【0082】
支持体30は、非導電性の部材により形成され、例えば樹脂製(又はゴム製)である。支持体30は、電極ユニット12の支持体13のフランジ部19と同径の円柱形状を有している。
【0083】
吸込流路31は、円柱形状を有し、支持体30内を上下方向に貫通するように形成されている。吸込流路31は、電極ユニット12の吸込部14の流入路22に対応した位置に配置され、吸込部14の流入路22と連通可能となっている。吸込流路31の下端には、下方(電極ユニット12側)に向かって延出する延出部35が形成され、延出部35は吸込部14の筒体20の上端部に篏合可能となっている。
【0084】
排出流路32は、円柱形状を有し、吸込流路31と平行に支持体30内を上下方向に貫通するように形成されている。排出流路32は、電極ユニット12の排出部16の流出路26に対応した位置に配置され、排出部16の流出路26と連通可能となっている。排出流路32の下端には、吸込流路31と同様に、下方(電極ユニット12側)に向かって延出する延出部36が形成され、延出部36は排出部16の流出路26の上端部に篏合可能となっている。
【0085】
このように吸込流路31と排出流路32にそれぞれ延出部35,36が形成されているため、給電ユニット3と電極ユニット12との接続時に、給電ユニット3の吸込流路31の延出部35が電極ユニット12の吸込部14に嵌合し、給電ユニット3の排出流路32の延出部36が電極ユニット12の排出部16に嵌合することで、空気の漏出を防止することができる。
【0086】
給電部材33は、導電性の部材で円柱状に形成され、支持体30内を上下方向に貫通し、電極ユニット12の吸込部14の給電接触部23に対応した位置に固定されている。給電部材33の上端部37は支持体30の上面より僅か上方に突出しており、この上端部37を介して高電圧が印加されるようになっている。給電部材33の下端部38は外径が一回り小さく形成され、該下端部38の外周には給電用スプリング39が巻き付き固定されている。これにより、給電ユニット3と電極ユニット12が密着すると、給電用スプリング39と給電接触部23とが接触するようになっている。
【0087】
接地部材34は、給電部材33と同様に、導電性の部材で円柱状に形成され、支持体30内を上下方向に貫通し、電極ユニット12の接地部17のアース接触部27に対応した位置に固定されている。接地部材34の上端部40は支持体30の上面より僅か上方に突出しており、この上端部40を介して接地されるようになっている。接地部材34の下端部41は外径が一回り小さく形成され、該下端部41の外周にはアース用スプリング42が巻き付き固定されている。これにより、給電ユニット3と電極ユニット12が密着すると、アース用スプリング42とアース接触部27が接触するようになっている。
【0088】
<吸込設備>
図3に示されているように、吸込設備4は、給電ユニット3の吸込流路31に接続される上流側の流通路43と、上流側の流通路43の上流端に設けられる吸込口45と、を備えている。吸込口45は漏斗状に拡径されており、粒子が含まれる空気を吸引しやすいようになっている。なお、特に図示しないが、吸込設備4は、塵埃などの比較的大きな粒子を捕集するための前処理フィルタや、ミスト噴霧器を備えても良い。ミスト噴霧器(噴霧する溶液は、例えば純水)を備えている場合には、空気と共にミストが容器本体7内に吸引されるので、液体が蒸発したとしても補充することができる。
【0089】
<排出設備>
図3に示されているように、排出設備5は、給電ユニット3の排出流路32に接続される下流側の流通路46と、下流側の流通路46の途中に設けられる吸引手段としてのポンプ47と、下流側の流通路46の下流端に設けられる排出口(図示省略)と、を備えている。なお、吸引手段としては、ファンでも良いが、ポンプ47の方が吸引圧力が高いので好適である。なお、特に図示しないが、排出設備5は、比較的小さな粒子を捕集するためのHEPAフィルタを備えても良い。
【0090】
[別のタイプの粒子捕集装置]
次に、
図5~
図8を参照しつつ、本発明の実施形態に係る別のタイプの粒子捕集装置について説明する。ここで、
図5は本発明の実施形態に係る別のタイプの粒子捕集容器を斜め上方から示す斜視図、
図6は本発明の実施形態に係る別のタイプの粒子捕集容器から電極ユニットを取り外した状態を斜め上方から示す分解斜視図、
図7は本発明の実施形態に係る別のタイプの粒子捕集装置を示す断面図、
図8は
図7のX-X断面図である。なお、本発明の実施形態に係る別のタイプの粒子捕集装置に関する説明において、上記した粒子捕集装置1と同等の構成については、説明の簡略化のため、
図5~
図8中、
図1~
図4Cと同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0091】
本実施形態に係る別のタイプの粒子捕集装置60では、上記した粒子捕集装置1と同等の構成に加えて、粒子捕集容器2に反発部61と噴出板62が設けられている。また、吸込設備4には、上流側の流通路43の途中に開閉弁としての電磁弁44が設けられている。
【0092】
<反発部>
反発部61は、円形で平板状に形成された反発板64により構成されており、反発板64の外径は、容器本体7の開口部8よりも一回り小さい大きさに設定されている。反発板64は、吸込部14の筒体20の下端に固定されると共に、非導電性の絶縁体であるブッシュ65を介して接地部17の絶縁部材28に支持されている。反発板64には、筒体20とブッシュ65に対応する箇所にそれぞれ円形の開口66,67が形成されている(
図8参照)。
【0093】
反発板64は、容器本体7内の液面に対向するように配置されている。反発板64と液面と距離は、放電用電極15の先端部(下端部)と液面との距離より大きく設定されている。容器本体7の内面と反発板64の外周部の間には空気の流通路としての隙間が設けられている。
【0094】
反発板64に印加される印加電圧(高電圧)は、放電用電極15と同じ数KVに設定される。反発板64を含めた電極ユニット12は、容器本体7の開口部8より容器本体7内に収容可能であると共に容器本体7外に取り出し可能となっている。これにより、電極ユニット12としての取扱いを容易にすることができる。また、電極ユニット12を容器本体7から取り出せば、液層(液膜)の上方が開放状態となるので、液体11の取扱いも容易に行うことができる。さらに、スポイト等によりプレート上に液層を形成したり、粒子捕集後の液体11を採取したりすることも容易に行うことができる。
【0095】
<噴出板>
噴出板62は、反発板64の筒体20に対応する箇所に形成された開口66に設けられている。噴出板62は、液面と対向する位置に液面から所定距離離間して配置されている。噴出板62の中心部には、空気を勢い良く流出させるための小径の噴出口68が形成されている。噴出口68の口径は、直径1mm以下に設定されており、例えば、筒体20の内径が約10mmの場合、0.5mm程度に設定されている。
【0096】
なお、図示した例では、噴出板62を設けているが、噴出板62の代わりに、例えば、吸込部14の筒体20の上流側から下流側に向かって開口面積が次第に小さくなるように傾斜部69を設けても良い(
図7の破線参照)。
【0097】
また、図示した例では、反発板64と噴出板62が吸込部14の筒体20の下端部において同一高さに配置されているので、反発板64と噴出板62を一体にして一枚の円形板に形成して良い。さらにまた、噴出板62と反発板64のいずれか一方のみを設置する等、上記以外にも各種変更が可能である。
【0098】
<吸込部の変形例>
図9は、上記した粒子捕集装置1や別のタイプの粒子捕集装置60における変形例の吸込部70を示している。この変形例の吸込部70は、筒体20の下端部の周囲に、上記したブラシ状の放電用電極15の代わりに、鋸歯状に形成された放電用電極71を備えている。放電用電極71に尖った先端部が形成されることで、先端部に不平等電界を発生させ、電界を集中させることができるため、粒子を帯電させることができる。
【0099】
<制御装置>
図10に示されているように、制御装置6は、制御部80を備えており、制御部80は、CPU81と記憶部82とインターフェース部83とがバス84により相互に接続されて構成されている。制御部80には、インターフェース部83を介して、表示部85、設定操作部86、運転・停止スイッチ87、リミットスイッチ88、ポンプ47、電圧供給部89、電磁弁44などが接続されている。なお、特に図示しないが、電源としてバッテリを搭載している。また、特に図示しないが、容器本体7(特に液体11が貯留されている底部10)を冷却するための冷却手段(例えば、ペルチェ素子)を備えていても良い。冷却手段により、容器本体7内に貯留されている液体11を冷却することができて、液体の蒸発を防止することができる。
【0100】
運転・停止スイッチ87はON操作されると、ポンプ47が空気の吸引を開始し、電圧供給部89により所定の高電圧が放電用電極15,71や反発部61に印加されるようになっている。この時、リミットスイッチ88(安全スイッチ)は、粒子捕集容器2が所定の位置に収容されたか否かを検知し、リミットスイッチ88がONしないとポンプ47が吸引動作を開始しないようになっている。なお、ポンプ47は、予め設定された運転時間、空気を吸引した後に吸引動作を停止するように制御されても良い。
【0101】
[粒子捕集方法]
次に、
図1~
図11を参照しつつ、粒子捕集装置1,60を使用して空気中の粒子を捕集する粒子捕集方法について説明する。
【0102】
本発明の実施形態に係る粒子捕集方法は、粒子捕集容器2の蓋9を取り外して導電性の液体11を開口部8から容器本体7内に供給する液体供給工程と、該液体供給工程後に開口部8に電極ユニット12を装着した粒子捕集容器2を該粒子捕集容器2の収納部にセットして給電ユニット3を電極ユニット12に手動又は自動で接続する捕集容器据え付け工程と、前記捕集容器据え付け工程の後に粒子捕集装置1,60の運転を開始して粒子を含む空気を容器本体7内に吸い込む空気吸込み工程と、放電用電極15(及び反発部61)に高電圧を印加することにより前記空気吸込み工程で吸い込んだ空気中の粒子を帯電させる粒子帯電工程と、容器本体7内に供給された液体11に前記粒子帯電工程で帯電された粒子を捕集させる粒子捕集工程と、を含んでいる。そして、前記空気吸込み工程、前記粒子帯電工程、及び前記粒子捕集工程は、以下に説明する連続運転又は間欠運転に従って行われる。
【0103】
<連続運転>
まず、
図2、
図3、及び
図10を参照して、粒子捕集装置1において行われる連続運転時の作用について説明する。
【0104】
連続運転の場合、運転・停止スイッチ87がON操作されると、CPU81からの指令により、電圧供給部89から給電ユニット3の給電部材33を介して電極ユニット12の放電用電極15に高電圧V1が印加され、ポンプ47が駆動される。
【0105】
ポンプ47の駆動により、バイオ粒子や塵埃等の粒子を含む含塵空気は、吸込口45から吸込流路31及び吸込部14の筒体20を通って容器本体7内に吸い込まれて下降した後、液面に沿って周囲に拡散し、放電用電極15と液面との間を通過する。この時、放電用電極15の下端部(先端部)と液面との間に発生したコロナ放電によって各放電用電極15の下端部(先端部)と液面との間に帯電エリアEAが形成される。
【0106】
そして、放電用電極15と液面との間を通過した空気中の粒子は、コロナ放電によって各放電用電極15の下端部(先端部)と液面との間に形成された帯電エリアEAを通過することによって帯電されて液面に引き寄せられ、液体11に捕集される。
【0107】
このように液体11に粒子が捕集されて除去された清浄空気は、電極ユニット12の排出部16の流出路26及び給電ユニット3の排出流路32から排出設備5の流通路46を通って前記排出口から外部に排出される。
【0108】
その後、運転・停止スイッチ87がOFF操作されると、CPU81からの指令により、放電用電極15に対する高電圧の印加が停止され、ポンプ47は停止される。
【0109】
<間欠運転>
次に、
図7、
図10、及び
図11を参照して、高捕集効率が求められる場合に粒子捕集装置60において行われる間欠運転時の作用について説明する。
【0110】
間欠運転の場合、運転・停止スイッチ87がON操作されると、CPU81からの指令により、電磁弁44が閉状態から開状態に切り替えられ、電圧供給部89から給電ユニット3の給電部材33を介して放電用電極15及び反発板64に高電圧V1が印加され、ポンプ47が駆動される。
【0111】
ポンプ47の駆動により、容器本体7内に吸い込まれた含塵空気中の粒子は、帯電エリアEAを通過することによって帯電されて液面に引き寄せられると共に反発板64から反発して液面側に引き寄せられ、液体11に捕集される。
【0112】
この時、
図11において破線で示すように、運転・停止スイッチ87のON操作時に、ポンプ47を駆動させた後、電磁弁44を閉状態から開状態に切り替えるタイミングと放電用電極15に高電圧を印加させるタイミングをいずれも時間T3だけ遅らせても良い。これにより、粒子捕集容器2の内圧を下げる(-Pmax)ことができるため、粒子捕集容器2内に流入した空気の速度を上昇させ、空気中の粒子と液体11との混合度合いを高めることができる。
【0113】
以降、CPU81からの指令により、電磁弁44は、所定の間隔で閉状態(T2)から開状態(T1)への切り替え動作が繰り返し行われる。なお、この時の電磁弁の閉状態の間隔T2は開状態の間隔T1により短く設定される。
【0114】
このように電磁弁44が開状態から閉状態に切り替えられると、粒子捕集容器2の内圧が低下するため、その後に電磁弁44が閉状態から開状態に切り替えられた時に、空気が噴出板62の噴出口68から勢い良く液面に向かって流れるため、空気中の粒子と液体11との混合度合いを高めることができる。
【0115】
このように液体11に粒子が捕集されて除去された清浄空気は、電極ユニット12の排出部16の流出路26及び給電ユニット3の排出流路32から排出設備5の流通路46を通って前記排出口から外部に排出される。
【0116】
その後、運転・停止スイッチ87がOFF操作されると、CPU81からの指令により、電磁弁44が閉状態に切り替えられ、高電圧の印加が停止され、ポンプ47は停止される。
【0117】
なお、上記した粒子捕集装置1,60の作用に関する説明では、粒子捕集装置1において連続運転を行い、粒子捕集装置60において間欠運転を行う場合の作用について説明したが、例えば、粒子捕集装置1において吸込設備4に電磁弁44を設置して間欠運転を行ったり、或いは、粒子捕集装置60において連続運転を行ったりしても良い。
【0118】
[粒子の採取手順]
次に、上記したように液体11に捕集した粒子を粒子捕集容器2から採取する作業の手順について説明する。
【0119】
まず、
図3及び
図7に示すように、給電ユニット3を手動又は自動によって上昇させて電極ユニット12から離脱させ、粒子捕集容器2を粒子捕集装置1,60から取り外した後、粒子捕集容器2に蓋9(
図1参照)を装着して次の工程に移行するまで保管する。
【0120】
次の工程では、粒子捕集容器2から蓋9を取り外すと共に、容器本体7の開口部8に装着した電極ユニット12を取り外す。電極ユニット12にはウィルスが付着している虞があるので、電極ユニット12は使い捨てとし、廃棄する。その後、開口部8からピペット(スポイト)等を使用して、容器本体7内の粒子が捕集された液体を採取し、採取した液体を、次工程(例えば、PCR処理)で測定する。
【0121】
なお、上記した実施形態は本発明における好適な具体例であって、技術的に好ましい種々の限定を付している場合もあるが、本発明の技術範囲は、特に本発明を限定する記載がない限りこれらの態様に限定されるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0122】
本発明の技術は、空気中の微生物や細菌やウィルスを捕集して、微生物や細菌やウィルスの数を測定するエアーサンプラーや浮遊菌測定装置に好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0123】
1 粒子捕集装置
2 粒子捕集容器
3 給電ユニット
7 容器本体
8 開口部
11 液体
14 吸込部
15 放電用電極
16 排出部
17 接地部
20 筒体
22 流入路
24 線電極
25 束状部
26 流出路
28 絶縁部材
9 アース用スプリング(付勢部材)
31 吸込流路
32 排出流路
33 給電部材
34 接地部材
37 上端部
44 電磁弁(開閉弁)
47 ポンプ(吸引手段)
50 媒体収容部
61 反発部
65 ブッシュ(絶縁体)