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7623122化合物、重合性組成物、硬化物及び硬化物の製造方法
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  • -化合物、重合性組成物、硬化物及び硬化物の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-20
(45)【発行日】2025-01-28
(54)【発明の名称】化合物、重合性組成物、硬化物及び硬化物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08F 20/30 20060101AFI20250121BHJP
   C08F 290/06 20060101ALI20250121BHJP
   C08G 59/17 20060101ALI20250121BHJP
   G03F 7/027 20060101ALN20250121BHJP
【FI】
C08F20/30
C08F290/06
C08G59/17
G03F7/027 501
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020170374
(22)【出願日】2020-10-08
(65)【公開番号】P2022062394
(43)【公開日】2022-04-20
【審査請求日】2023-09-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000000387
【氏名又は名称】株式会社ADEKA
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】弁理士法人翔和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】篠塚 豊史
(72)【発明者】
【氏名】後藤 雅治
(72)【発明者】
【氏名】川原 友泰
(72)【発明者】
【氏名】六谷 翔
【審査官】中川 裕文
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-210820(JP,A)
【文献】特開2015-111264(JP,A)
【文献】特開2006-003860(JP,A)
【文献】特開2012-241083(JP,A)
【文献】国際公開第2009/017064(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 59/00 - 59/72
C08F 6/00 -246/00
283/01
290/00 -290/14
299/00 -299/08
G03F 7/004- 7/04
7/06
7/075- 7/115
7/16 - 7/18
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(I)で表される化合物にラジカル重合性基を有する酸無水物が付加した構造を有する化合物。
【化1】
(式中、R及びR10は、それぞれ独立に、水素原子又はメチル基を表し、
、R、R、R、R、R、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1~20の炭化水素基、又は炭化水素基中のメチレン基の1つ以上が、酸素原子が隣り合わない条件で、-O-に置換された炭素原子数1~20の基を表し、
及びXは、それぞれ独立に、2価の炭素原子数1~20の炭化水素基又は該炭化水素基中のメチレン基の1つ以上が、酸素原子が隣り合わない条件で、-O-に置換された炭素原子数1~20の基を表し、
は下記式(a)、(b)又は(d)で表される基を表す。)
【化2】
(式中、R21、R22、R23、R24、R25、R26、R27、R28、R29、R30、R31、R32、R33、R34、R35、R36、R45、R46、R47、R48及びR49は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1~20の炭化水素基、炭素原子数2~10の複素環基、複素環を含有する炭素原子数3~20の基又は炭化水素基中のメチレン基の1つ以上が下記<群A>から選ばれる2価の基で置換された炭素原子数1~20の基を表し、
<群A>:-O-、-CO-、-COO-、-OCO-、-NR51-、-NR51CO-、-S-
51は、水素原子又は炭素原子数1~20の炭化水素基を表し、分子中にR51が複数存在する場合、それらは同一であっても異なっていてもよく、
21、R22、R23、R24、R25、R26、R27、R28、R29、R30、R31、R32、R33、R34、R35、R36、R45、R46、R47、R48及びR49は、炭化水素基中の水素原子の1つ以上がハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、水酸基、-OR52、-COOR52、-CO-R52又は-SR52で置換された炭素原子数1~20の基であってもよく、
52は、水素原子又は炭素原子数1~20の炭化水素基を表し、分子中にR52が複数存在する場合、それらは同一であっても異なっていてもよく、
21とR22、R22とR23、R23とR24、R29とR30、R30とR31、R31とR32、R45とR46、R46とR47、R47とR48及びR48とR49は、互いに結合して水素原子及び炭素原子からなる炭素原子数3~10の環を形成していてもよく、
Cyは、炭素原子数3~10のシクロアルキル基を表し、
*は、(a)、(b)及び(d)で表される基が隣接する基と結合する部位を意味する。)
【請求項2】
上記一般式(I)中のMが、上記式(a)で表される基である請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
重合性基を有する酸無水物が、脂環構造を有する酸無水物である請求項1又は2に記載の化合物。
【請求項4】
更に酸二無水物が付加した構造を有する請求項1~3のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載の化合物(A)、及び重合開始剤(B)を含有する重合性組成物。
【請求項6】
更に着色剤(C)を含有する請求項に記載の重合性組成物。
【請求項7】
請求項5又は6に記載の重合性組成物の硬化物。
【請求項8】
請求項7に記載の硬化物を含有する表示装置。
【請求項9】
請求項5又は6に記載の重合性組成物に対して光照射又は加熱する工程を含む硬化物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定の構造を有するエポキシ化合物にアクリル酸又はメタクリル酸が付加した構造を有する化合物に、重合性基を有する酸無水物が付加した構造を有する化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
アルカリ現像性感光性樹脂組成物は、エチレン性不飽和結合を有する化合物を含有するアルカリ現像性樹脂及び光重合開始剤を含有するものである。このアルカリ現像性感光性樹脂組成物は、紫外線又は電子線を照射することによって重合硬化させることができるので、光硬化性インキ、感光性印刷版、プリント配線版、各種フォトレジスト等に用いられている。最近、電子機器の軽薄短小化や高機能化の進展に伴い、微細パターンを精度良く形成することができるアルカリ現像性感光性樹脂組成物が望まれている。
【0003】
特許文献1には、エポキシアクリレートをベースとしたカルボキシル基を有する光重合性不飽和化合物及びこれを用いた感光性樹脂組成物が開示されている。
特許文献2には、ビスフェノール類から誘導される芳香族エポキシ化合物と(メタ)アクリル酸との反応物を、更にa)飽和ジカルボン酸又はその酸無水物及びb)飽和テトラカルボン酸又はその酸二無水物とを反応させて得られた不飽和基含有化合物を含む感光性樹脂組成物が開示されている。
特許文献3には、置換基を有するベンゾ又はナフトシクロアルカン骨格を有する新規エポキシ化合物に不飽和一塩基酸を付加させたエポキシ付加物と、多塩基酸無水物とのエステル化反応生成物である光重合性不飽和化合物を含有するアルカリ現像性感光性樹脂組成物が開示されている。
特許文献4、5には、ビスフェノールフルオレン骨格を有するカルボキシル基含有樹脂を含有する感光性樹脂組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平05-339356号公報
【文献】特開2006-003860号公報
【文献】特開2012-241083号公報
【文献】特開2017-090491号公報
【文献】特開2017-090493号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した公知のアルカリ現像性感光性樹脂組成物は、感度、解像度及び密着性等が充分でなく、適切なパターン形状や微細パターンを得ることが困難であった。
【0006】
本発明の課題は、高感度な重合性組成物の重合性成分として有用な化合物及び該化合物を用いた重合性組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、鋭意検討を重ねた結果、特定の構造を有するエポキシ化合物にアクリル酸又はメタクリル酸が付加した構造を有するエポキシアクリレート化合物に、重合性基を有する酸無水物が付加した構造を有する化合物が、上記目的を達成し得ることを知見し、本発明に至った。
【0008】
すなわち、本発明は、下記一般式(I)で表される化合物に重合性基を有する酸無水物が付加した構造を有する化合物である。
【0009】
【化1】
(式中、R及びR10は、それぞれ独立に、水素原子又はメチル基を表し、
、R、R、R、R、R、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1~20の炭化水素基、又は炭化水素基中のメチレン基の1つ以上が-O-に置換された炭素原子数1~20の基を表し、
及びXは、それぞれ独立に、2価の炭素原子数1~20の炭化水素基又は該炭化水素基中のメチレン基の1つ以上が-O-に置換された炭素原子数1~20の基を表し、
は下記式(a)、(b)、(c)又は(d)で表される基を表す。)
【0010】
【化2】
(式中、R21、R22、R23、R24、R25、R26、R27、R28、R29、R30、R31、R32、R33、R34、R35、R36、R37、R38、R39、R40、R41、R42、R43、R44、R45、R46、R47、R48及びR49は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1~20の炭化水素基、炭素原子数2~10の複素環基、複素環を含有する炭素原子数3~20の基又は炭化水素基中のメチレン基の1つ以上が下記<群A>から選ばれる2価の基で置換された炭素原子数1~20の基を表し、
<群A>:-O-、-CO-、-COO-、-OCO-、-NR51-、-NR51CO-、-S-
51は、水素原子又は炭素原子数1~20の炭化水素基を表し、分子中にR51が複数存在する場合、それらは同一であっても異なっていてもよく、
21、R22、R23、R24、R25、R26、R27、R28、R29、R30、R31、R32、R33、R34、R35、R36、R37、R38、R39、R40、R41、R42、R43、R44、R45、R46、R47、R48及びR49は、炭化水素基中の水素原子の1つ以上がハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、水酸基、-OR52、-COOR52、-CO-R52又は-SR52で置換された炭素原子数1~20の基であってもよく、
52は、水素原子又は炭素原子数1~20の炭化水素基を表し、分子中にR52が複数存在する場合、それらは同一であっても異なっていてもよく、
21とR22、R22とR23、R23とR24、R29とR30、R30とR31、R31とR32、R37とR38、R38とR39、R39とR40、R41とR42、R42とR43、R43とR44、R45とR46、R46とR47、R47とR48及びR48とR49は、互いに結合して水素原子及び炭素原子からなる炭素原子数3~10の環を形成していてもよく、
Cyは、炭素原子数3~10のシクロアルキル基を表し、
*は、(a)、(b)、(c)及び(d)で表される基が隣接する基と結合する部位を意味する。)
【0011】
また、本発明は、上記化合物(A)、及び重合開始剤(B)を含有する重合性組成物である。
【発明の効果】
【0012】
本発明の化合物を含有する重合性組成物は、高感度である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1(a)及び(b)は、パターンと基板との間の接合角度(テーパー角)を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の化合物、重合性組成物及び該化合物の製造方法について、好ましい実施形態に基づき詳細に説明する。
本発明の化合物は、上記一般式(I)で表される、特定の構造を有するエポキシ化合物にアクリル酸又はメタクリル酸が付加した構造を有するエポキシアクリレート化合物(以下、「化合物(I)」という。)に、重合性基を有する酸無水物(以下、「化合物(II)」という。)が付加した構造を有する化合物である。
【0015】
上記一般式(I)中、R、R、R、R、R、R、R及びR(以下、「R等」という。)で表される炭素原子数1~20の炭化水素基は、炭素原子及び水素原子からなる炭素原子数1~20の基であればよく、特に限定されるものではないが、炭素原子数1~20のアルキル基、炭素原子数2~20のアルケニル基、炭素原子数3~20のシクロアルキル基、炭素原子数4~20のシクロアルキルアルキル基、炭素原子数6~20のアリール基又は炭素原子数7~20のアリールアルキル基であることが、本発明の重合性組成物の感度が優れることから好ましく、原子数1~10のアルキル基、炭素原子数2~10のアルケニル基、炭素原子数3~10のシクロアルキル基、炭素原子数4~10のシクロアルキルアルキル基、炭素原子数6~10のアリール基又は炭素原子数7~10のアリールアルキル基であることが特に好ましい。
【0016】
上記炭素原子数1~20のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、イソブチル基、アミル基、イソアミル基、t-アミル基、ヘキシル基、ヘプチル基、イソヘプチル基、t-ヘプチル基、n-オクチル基、イソオクチル基、t-オクチル基、2-エチルヘキシル基、n-ノニル基、n-デシル基、n-ドデシル基、n-オクタデシル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロデシル基等の直鎖、分岐及び環状のアルキル基等が挙げられる。
【0017】
上記炭素原子数2~20のアルケニル基としては、例えば、ビニル基、2-プロペニル基、3-ブテニル基、2-ブテニル基、4-ペンテニル基、3-ペンテニル基、2-ヘキセニル基、3-ヘキセニル基、5-ヘキセニル基、2-ヘプテニル基、3-ヘプテニル基、4-ヘプテニル基、3-オクテニル基、3-ノネニル基、4-デセニル基、3-ウンデセニル基、4-ドデセニル基、3-シクロヘキセニル基、2,5-シクロヘキサジエニル-1-メチル基、及び4,8,12-テトラデカトリエニルアリル基等の直鎖及び環状のアルケニル基等が挙げられる。
【0018】
上記炭素原子数3~20のシクロアルキル基とは、3~20の炭素原子を有する、飽和単環式又は飽和多環式アルキル基を意味する。例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロデシル基、アダマンチル基、デカハイドロナフチル基、オクタヒドロペンタレン基、ビシクロ[1.1.1]ペンタニル基及びテトラデカヒドロアントラセニル基等が挙げられる。
【0019】
上記炭素原子数4~20のシクロアルキルアルキル基とは、アルキル基の水素原子が、シクロアルキル基で置換された4~20の炭素原子を有する基を意味する。例えば、シクロプロピルメチル基、シクロブチルメチル基、シクロペンチルメチル基、シクロヘキシルメチル基、シクロヘプチルメチル基、シクロオクチルメチル基、シクロノニルメチル基、シクロデシルメチル基、2-シクロブチルエチル基、2-シクロペンチルエチル基、2-シクロヘキシルエチル基、2-シクロヘプチルエチル基、2-シクロオクチルエチル基、2-シクロノニルエチル基、2-シクロデシルエチル基、3-シクロブチルプロピル基、3-シクロペンチルプロピル基、3-シクロヘキシルプロピル基、3-シクロヘプチルプロピル基、3-シクロオクチルプロピル基、3-シクロノニルプロピル基、3-シクロデシルプロピル基、4-シクロブチルブチル基、4-シクロペンチルブチル基、4-シクロヘキシルブチル基、4-シクロヘプチルブチル基、4-シクロオクチルブチル基、4-シクロノニルブチル基、4-シクロデシルブチル基、3-3-アダマンチルプロピル基及びデカハイドロナフチルプロピル基等が挙げられる。
【0020】
上記炭素原子数6~20のアリール基としては、例えば、フェニル基、トリル基、キシリル基、エチルフェニル基、ビフェニリル基、ナフチル基、アンスリル基、フェナントレニル基等、及びこれらの基が上記アルキル基、上記アルケニル基、カルボキシル基又はハロゲン原子等で1つ以上置換された基、例えば、4-クロロフェニル、4-カルボキシルフェニル、4-ビニルフェニル、4-メチルフェニル、2,4,6-トリメチルフェニル等が挙げられる。
【0021】
上記炭素原子数7~20のアリールアルキル基とは、アルキル基の水素原子がアリール基で置き換えられた、7~20個の炭素原子を有する基を意味する。例えば、ベンジル、α-メチルベンジル、α、α-ジメチルベンジル、フェニルエチル及びナフチルプロピル等が挙げられる。上記炭素原子数7~10のアリールアルキル基としては、アルキル基の水素原子がアリール基で置き換えられた、7~10個の炭素原子を有する基を意味し、例えば、ベンジル、α-メチルベンジル、α、α-ジメチルベンジル及びフェニルエチル等が挙げられる。
【0022】
上記一般式(I)中、R等で表される、炭化水素基中のメチレン基が、酸素原子が隣り合わない条件で、-O-に置換された炭素原子数1~20の基としては、上記R等で表される炭素原子数1~20の炭化水素基として例示した基中のメチレン基が、酸素原子が隣り合わない条件で、-O-に置換された基が挙げられる。
【0023】
上記一般式(I)中、R等で表される、炭化水素基中のメチレン基が、酸素原子が隣り合わない条件で、-O-で置換された炭素原子数1~20の基としては、例えば、メトキシ基、メトキシエトキシ基、メトキシエトキシエトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、t-ブトキシ基、ペンチルオキシ基、イソペンチルオキシ基、t-ペンチルオキシ基、ネオペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、イソヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基、2-エチルヘキシルオキシ基、ノニルオキシ基、デシルオキシ基等が挙げられる。
【0024】
上記一般式(I)中、R等で表されるハロゲン原子としては、例えば、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等が挙げられる。
【0025】
上記一般式(I)中、X及びXで表される2価の炭素原子数1~20の炭化水素基としては、上記R等で表される炭素原子数1~20の炭化水素基として例示した基から水素原子を1つ除いた2価の基が挙げられる。
【0026】
上記一般式(I)中、X及びXで表される、炭化水素基中のメチレン基が、酸素原子が隣り合わない条件で、-O-に置換された炭素原子数1~20の基としては、上記X及びXで表される炭素原子数1~20の炭化水素基として例示した基中のメチレン基が、酸素原子が隣り合わない条件で、-O-に置換された基が挙げられ、例えば、上記「R等で表される、炭化水素基中のメチレン基が、酸素原子が隣り合わない条件で、-O-に置換された炭素原子数1~20の基」として例示した基から水素原子を1つ除いた2価の基が挙げられる。
【0027】
上記一般式(I)中のR、R、R、R、R、R、R及びRが、それぞれ独立に、水素原子又は炭素原子数1~10の炭化水素基である化合物は、安定性に優れ、該化合物を含有する重合性組成物の感度が優れ、製造が容易であることから好ましい。特に、上記一般式(I)中のR、R、R、R、R、R、R及びRが水素原子である化合物が好ましい。
【0028】
また、上記一般式(I)中のX及びXが、炭素原子数1~20のアルキレン基である化合物は、安定性に優れ、製造が容易であることから好ましく、炭素原子数1~4のアルキレン基はより好ましく、メチレン基が特に好ましい。
【0029】
上記式(a)、(b)、(c)及び(d)中、R21、R22、R23、R24、R25、R26、R27、R28、R29、R30、R31、R32、R33、R34、R35、R36、R37、R38、R39、R40、R41、R42、R43、R44、R45、R46、R47、R48及びR49(以下、「R21等」という。)で表される、炭素原子数1~20の炭化水素基及びハロゲン原子は、上記R等で表される炭素原子数1~20の炭化水素基及びハロゲン原子と同じである。
【0030】
上記式(a)、(b)、(c)及び(d)中、R21等で表される、複素環基とは、複素環式化合物から水素原子を1つ除いた基を意味する。
【0031】
上記複素環基としては、特に限定されるものではないが、例えば、ピロリル、ピリジル、ピリジルエチル、ピリミジル、ピリダジル、ピペラジル、ピペリジル、ピラニル、ピラニルエチル、ピラゾリル、トリアジル、トリアジルメチル、ピロリジル、キノリル、イソキノリル、イミダゾリル、ベンゾイミダゾリル、トリアゾリル、フリル、フラニル、ベンゾフラニル、チエニル、チオフェニル、ベンゾチオフェニル、チアジアゾリル、チアゾリル、ベンゾチアゾリル、オキサゾリル、ベンゾオキサゾリル、イソチアゾリル、イソオキサゾリル、インドリル、モルフォリニル、チオモルフォリニル、2-ピロリジノン-1-イル、2-ピペリドン-1-イル、2,4-ジオキシイミダゾリジン-3-イル及び2,4-ジオキシオキサゾリジン-3-イル等が挙げられる。
【0032】
上記式(a)、(b)、(c)及び(d)中、R21等で表される、複素環を含有する炭素原子数3~20の基とは、複素環基と複素環基以外の基が結合した基を意味する。
【0033】
上記複素環基以外の基としては、炭素原子数1~6の炭化水素基等が挙げられ、炭素原子数1~6の炭化水素基としては、例えば、上記R等で表される炭素原子数1~20の炭化水素基として例示した基から水素原子を1つ除いた2価の基のうち所定の炭素原子数を満たすものが挙げられる。
【0034】
また、上記複素環基以外の基は、上記炭素原子数1~6の炭化水素基中の水素原子がハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、水酸基、-OR’、-COOR’、-CO-R’又は-SR’等に置換された基であってもよく、炭化水素基中のメチレン基が-O-、-CO-、-COO-、-OCO-、-NR”-、-NR”CO-又は-S-等に置換された炭素原子数1~6の基であってもよい。
ここで、R’及びR”は、水素原子又は炭素原子数1~20の炭化水素基を表し、化合物中にR’及びR”が複数存在する場合、それらは同一であっても異なっていてもよい。上記炭素原子数1~20の炭化水素基は、上記R等で表される炭素原子数1~20の炭化水素基と同じである。
【0035】
複素環を含有する炭素原子数3~20の基としては、置換基等を含めて具体的に記載すると下記の構造を有する基等が挙げられる。
【0036】
【化3】
【0037】
上記式中、Rはそれぞれ独立して、水素原子又は炭素原子数1~6のアルキル基を表し、Zは炭素原子数1~6のアルキレン基、前記アルキレン基中の水素原子がハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、水酸基、-OR’、-COOR’、-CO-R’又は-SR’に置換された基、又は前記アルキレン基中のメチレン基が-O-、-CO-、-COO-、-OCO-、-NR”-、-NR”CO-又は-S-に置換された基を表す。式中の*は、これらの式で表される基が、*部分で、隣接する基と結合することを意味する。
ここで、R’及びR”は、水素原子又は炭素原子数1~20の炭化水素基を表し、化合物中にR’及びR”が複数存在する場合、それらは同一であっても異なっていてもよい。上記炭素原子数1~20の炭化水素基は、上記R等で表される炭素原子数1~20の炭化水素基と同じである。
【0038】
上記式(a)、(b)、(c)及び(d)中、R21等で表される、炭化水素基中の水素原子の1つ以上が、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、水酸基、-OR51、-COOR51、-CO-R51又は-SR51で置換された炭素原子数1~20の基としては、上記R等で表される炭素原子数1~20の炭化水素基として例示した基中の水素原子の1つ以上が、上記基で置換された基が挙げられる。
ここで、R51は、炭素原子数1~20の炭化水素基を表し、化合物中にR51が複数存在する場合、それらは同一であっても異なっていてもよい。上記炭素原子数1~20の炭化水素基は、上記R等で表される炭素原子数1~20の炭化水素基と同じである。
上記置換基を有する基における炭素原子数は、基全体の炭素原子数を規定するものである。
【0039】
上記式(a)、(b)、(c)及び(d)中、R21等で表される、炭化水素基中のメチレン基の1つ以上が、-O-、-CO-、-COO-、-OCO-、-NR52-、-NR52CO-又は-S-で置換された炭素原子数1~20の基としては、上記R等で表される炭素原子数1~20の炭化水素基として例示した基中のメチレン基の1つ以上が、上記基で置換された基が挙げられる。
ここで、R52は、水素原子又は炭素原子数1~20の炭化水素基を表し、化合物中にR52が複数存在する場合、それらは同一であっても異なっていてもよい。上記炭素原子数1~20の炭化水素基は、上記R等で表される炭素原子数1~20の炭化水素基と同じである。
上記炭化水素基中のメチレン基が置換された基における炭素原子数は、基全体の炭素原子数を規定するものである。
【0040】
上記式(a)、(b)、(c)及び(d)中、R21とR22、R22とR23、R23とR24、R29とR30、R30とR31、R31とR32、R37とR38、R38とR39、R39とR40、R41とR42、R42とR43、R43とR44、R45とR46、R46とR47、R47とR48及びR48とR49(以下、「R21とR22等」という。)が、互いに結合して形成する水素原子及び炭素原子からなる炭素原子数3~10の環としては、例えば、シクロペンタン環、シクロヘキサン環、シクロペンテン環、ベンゼン環、ピペリジン環、モルホリン環、ラクトン環、ラクタム環等の5~7員環の脂肪族環、芳香族環及び複素環、並びにナフタレン環、アントラセン環、フルオレン環、アセナフテン環、インダン環、テトラリン環等の縮合環が挙げられる。
【0041】
上記式(d)中、炭素原子数3~10のシクロアルキル基は、製造が容易で、保存安定性に優れることから、シクロヘキシル基が好ましい。
【0042】
上記一般式(I)中のMが式(a)、式(c)又は式(d)で表される基である化合物(I)は、高感度であり、絶縁性に優れた微細パターンを形成可能な硬化物が得られることから好ましい。なかでも、式(a)で表される基である化合物は、得られる硬化物が絶縁性に優れることからより好ましく、式(c)で表される基である化合物は、得られる硬化物が耐熱性に優れることからより好ましい。
【0043】
本発明の化合物は、上記化合物(I)に、重合性基を有する酸無水物(化合物(II))が付加した構造を有する化合物である。
重合性基とは、ラジカル、酸又は塩基等により重合反応を起こすことが可能な基を意味し、同種の基同士が付加反応するものであってもよく、異なる2種の基が付加反応又は縮合反応するものであってもよい。重合性基としては、例えば、アクリル基、メタクリル基、スチレニル基及びビニル基等のラジカル重合性基、水酸基、エポキシ基、メルカプト基、アリル基、イソシアネート基、アミノ基及びアルコキシシリル基等が挙げられる。
【0044】
上記化合物(II)における酸無水物構造としては、例えば、コハク酸無水物及びマレイン酸無水物等の脂肪族酸無水物、トリメリット酸無水物及びフタル酸無水物等の芳香族酸無水物、テトラヒドロフタル酸無水物、ナジック酸無水物、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸無水物及びシクロヘキサン-1,2,4-トリカルボン酸-1,2-無水物等の脂環構造を有する酸無水物に相当する構造が挙げられる。
【0045】
上記化合物(II)としては、例えば、トリメリット酸無水物又はヘキサヒドロトリメリット酸無水物のカルボキシル基に対して、アクリル酸2-ヒドロキシエチル、トリメチロールプロパンジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート等の重合性基を有するアルコール化合物を縮合反応させたもの等が挙げられる。
【0046】
重合性基がラジカル重合性基である化合物(II)が好ましく、特にアクリル基及びメタクリル基で化合物(II)が好ましい。重合性基が上記の基である化合物(II)は、得られる重合性組成物が感度に優れ、生成する硬化物が耐薬品性に優れることから好ましい。
【0047】
環状構造を有する化合物(II)が好ましく、環状構造が縮合環である場合が好ましく、特に芳香族環を含まない縮合環が特に好ましい。該化合物(II)は、得られる硬化物が絶縁性に優れることから好ましい。
【0048】
脂環構造を有する化合物(II)は、得られる硬化物が耐薬品性に優れることから好ましい。
【0049】
重合性基を有する酸無水物としては、例えば、下記の化合物(II-1)~(II-13)が挙げられるが、これらの化合物に限定されるものではない。
【0050】
【化4】
【0051】
【化5】
【0052】
本発明の化合物は、更に酸二無水物が付加した構造を有する化合物であってもよい。このような化合物は、酸価を調整することによって、所望のアルカリ現像性を有する化合物とすることができるため好ましい。
【0053】
酸二無水物としては、例えば、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、4,4’-オキシジフタル酸二無水物、2,3,5-トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物、1,2,3,4-シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、ピロメリット酸無水物、2,2’-3,3’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物、5-(2,5-ジオキソテトラヒドロフリル)-3-メチル-3-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸無水物、3,3’-4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物、エチレングリコールビスアンヒドロトリメリテート、meso-ブタン-1,2,3,4-テトラカルボン酸無水物等が挙げられる。
【0054】
上記化合物(I)は、公知の製造方法、例えば、国際公開第2008/139924号に記載の製造方法で製造することができる。具体的には、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3-フェニルインダン、9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フルオレンなどのビスフェノール化合物にエピクロロヒドリンを反応させて得られるエポキシ化合物に、アクリル酸又はメタクリル酸を付加させることにより製造することができる。
【0055】
本発明の化合物は、上記化合物(I)に上記化合物(II)を付加させる反応を行うことによって製造できる。反応は公知の方法で行えばよく、例えば、特開2007-183495号公報に記載の方法で行うことができる。具体的は、上記化合物(I)と、上記化合物(II)とを、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどの溶媒中で加熱して反応させることにより製造することができる。
上記反応は、上記化合物(I)中の水酸基と、上記化合物(II)中の酸無水物基によるエステル結合の生成反応が主体であると考えられるが、その他の反応形態を含んでいてもよく、上記化合物(I)に上記化合物(II)が付加した構造を有する化合物とは、反応生成物の総称を意味する。
【0056】
本発明においては、上記化合物(I)1モルに対して、上記化合物(II)が0.1~0.8モル付加した構造であることが、得られる重合性組成物の感度に優れ、絶縁性に優れた微細パターンを形成可能な硬化物が得られることから好ましく、0.2~0.6モル付加した構造であることが特に好ましい。換言すれば、上記化合物(I)中の水酸基1モルに対して、上記化合物(II)が0.05~0.4モル付加した構造であることが、密着性及び耐熱性に優れる硬化物が得られることから好ましく、0.1~0.3モル付加した構造であることが特に好ましい。
【0057】
上記化合物(I)が、酸二無水物が付加した構造を有する場合、上記化合物(I)1モルに対して、酸二無水物が0.2~1.0モル付加した構造であることが、得られる重合性組成物のアルカリ現像性が高いことから好ましく、0.3~0.8モル付加した構造であることが特に好ましい。換言すれば、上記化合物(I)中の水酸基1モルに対して、酸二無水物が0.1~0.5モル付加した構造であることが、密着性及び耐熱性に優れる硬化物が得られることから好ましく、0.15~0.4モル付加した構造であることが特に好ましい。
【0058】
酸二無水物を上記化合物(I)に付加させる反応は、上述の、上記化合物(I)に上記化合物(II)を付加させる反応と同様にして行うことができる。また、上記化合物(I)に上記化合物(I)に上記化合物(II)を付加させる反応と、上記化合物(I)に酸二無水物を付加させる反応を同時に行ってもよい。
【0059】
本発明の化合物の酸価は、70~150mg・KOH/gの範囲であることが、得られる重合性組成物のアルカリ現像性に優れることから好ましく、80~110mg・KOH/gの範囲であることが特に好ましい。
【0060】
本発明の化合物の重量平均分子量Mwは、2,000~15,000の範囲であることが、得られる重合性組成物の感度に優れ、絶縁性に優れた微細パターンを形成可能な硬化物が得られることから好ましく、3,000~10,000の範囲であることが特に好ましい。
【0061】
本発明の化合物の分子量分布(Mw/Mn)は、1.0~3.0の範囲であることが、解像度が高くなるため好ましく、1.5~2.5の範囲が特に好ましい。
【0062】
上記重量平均分子量及び分子量分布は、例えば、日本分光(株)製のGPC装置(LC-2000plusシリーズ)を用いて重合体のGPC測定を行い、ポリスチレンスタンダード(例えば、東ソー(株)社製 TSKgel標準ポリスチレン)により作成した校正曲線から算出することができる。例えば、下記の条件で好適に測定できる。
溶媒:THF
溶媒の流速:1.0 ml/min
カラム:KF-803、KF-802(有機溶媒系GPC用カラム、標準分析用、Shodex社)
カラム温度:40℃
【0063】
本発明の重合性組成物は、上記化合物(I)に上記化合物(II)が付加した構造を有する化合物(A)及び重合開始剤(B)を含有するものである。このような構成とすることで、感度に優れ、高精度でパターニングされた硬化物が得られる重合性組成物となる。
【0064】
上記化合物(A)の含有量は、感度に優れることから、上記重合性組成物の固形分100質量部に対して10~70質量部であることが好ましく、30~60質量部であることがより好ましい。
上記重合性組成物の固形分とは、重合性組成物から後述する溶剤を除いた成分の総量である。
【0065】
上記化合物(A)はエチレン性不飽和結合を有する重合性の化合物であるため、上記重合開始剤(B)は、エチレン性不飽和結合を有する化合物の重合に用いられるラジカル開始剤であればよく、従来既知の化合物を用いることが可能である。具体的には、例えば、過酸化ベンゾイル、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、ベンゾフェノン、フェニルビフェニルケトン、1-ヒドロキシ-1-ベンゾイルシクロヘキサン、ベンジル、ベンジルジメチルケタール、1-ベンジル-1-ジメチルアミノ-1-(4’-モルホリノベンゾイル)プロパン、2-モルホリル-2-(4’-メチルメルカプト)ベンゾイルプロパン、チオキサントン、1-クロル-4-プロポキシチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、ジエチルチオキサントン、エチルアントラキノン、4-ベンゾイル-4'-メチルジフェニルスルフィド、ベンゾインブチルエーテル、2-ヒドロキシ-2-ベンゾイルプロパン、2-ヒドロキシ-2-(4’-イソプロピル)ベンゾイルプロパン、4-ブチルベンゾイルトリクロロメタン、4-フェノキシベンゾイルジクロロメタン、ベンゾイル蟻酸メチル、1,7-ビス(9’-アクリジニル)ヘプタン、9-n-ブチル-3,6-ビス(2’-モルホリノイソブチロイル)カルバゾール、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノプロパン-1-オン、p-メトキシフェニル-2,4-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-メチル-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-フェニル-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-ナフチル-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-(p-ブトキシスチリル)-s-トリアジン、2-(p-ブトキシスチリル)-5-トリクロロメチル-1,3,4-オキサジアゾール、9-フェニルアクリジン、9,10-ジメチルベンズフェナジン、ベンゾフェノン/ミヒラーズケトン、ヘキサアリールビイミダゾール/メルカプトベンズイミダゾール、チオキサントン/アミン、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキシド、並びに特開2000-80068号公報、特開2001-233842号公報、特開2005-97141号公報、特表2006-516246号公報、特許第3860170号公報、特許第3798008号公報、WO2006/018973号公報に記載の化合物等が挙げられる。
【0066】
上記重合開始剤(B)は、オキシムエステル基を有する化合物であることが、得られる重合性組成物が感度に優れ、高精度でパターニングされた硬化物が得られることから好ましい。
【0067】
上記重合開始剤(B)は、カルバゾール骨格を有する化合物であることが、得られる重合性組成物が感度に優れ、高精度でパターニングされた硬化物が得られることから好ましい。
【0068】
重合開始剤(B)は、電子求引性基を有する化合物であることが、絶縁性に優れる硬化物が得られることから好ましい。特に、電子求引性基がニトロ基であることが好ましい。
【0069】
上記重合開始剤(B)の含有量は、上記化合物(A)と後述する重合性化合物(D)との合計100質量部に対して0.1~10質量部であることが、本発明の重合性組成物の感度が優れることから好ましく、1~5質量部であることがより好ましい。
【0070】
上記重合性組成物は、更に着色剤(C)を含有していてもよい。着色剤(C)としては、顔料や染料が挙げられる。顔料及び染料としては、それぞれ、無機色材又は有機色材を用いることができる。これらは単独で又は2種以上を混合して用いることができる。ここで、顔料とは、一般的な溶剤に不溶の着色剤を意味し、無機又は有機色材の中でも溶剤に不溶であるもの、及び無機又は有機染料をレーキ化したものも含まれる。
【0071】
上記顔料としては、ファーネス法、チャンネル法又はサーマル法によって得られるカーボンブラック、或いはアセチレンブラック、ケッチェンブラック又はランプブラック等のカーボンブラック、上記カーボンブラックをエポキシ樹脂で調整又は被覆したもの、上記カーボンブラックを予め溶剤中で樹脂に分散処理し、20~200mg/gの樹脂で被覆したもの、上記カーボンブラックを酸性又はアルカリ性表面処理したもの、平均粒径が8nm以上でDBP吸油量が90ml/100g以下のカーボンブラック、950℃における揮発分中のCO及びCOから算出した全酸素量が、表面積100m当たり9mg以上であるカーボンブラック、黒鉛化カーボンブラック、黒鉛、活性炭、炭素繊維、カーボンナノチューブ、カーボンマイクロコイル、カーボンナノホーン、カーボンエアロゲル、フラーレン、アニリンブラック、ピグメントブラック7、チタンブラック、ラクタムブラック及びペリレンブラック等に代表される黒色顔料、酸化クロム緑、ミロリブルー、コバルト緑、コバルト青、マンガン系、フェロシアン化物、リン酸塩群青、紺青、ウルトラマリン、セルリアンブルー、ピリジアン、エメラルドグリーン、硫酸鉛、黄色鉛、亜鉛黄、べんがら(赤色酸化鉄(III))、カドミウム赤、合成鉄黒、アンバー、レーキ顔料等の有機又は無機顔料が挙げられる。
上記顔料の中でも、遮光性が高いことから黒色顔料を用いることが好ましい。
【0072】
上記顔料としては、市販品を用いることもでき、例えば、ピグメントレッド1、2、3、9、10、14、17、22、23、31、38、41、48、49、88、90、97、112、119、122、123、144、149、166、168、169、170、171、177、179、180、184、185、192、200、202、209、215、216、217、220、223、224、226、227、254、228、240及び254;ピグメントオレンジ13、31、34、36、38、43、46、48、49、51、52、55、59、60、61、62、64、65及び71;ピグメントイエロー1、3、12、13、14、16、17、20、24、55、60、73、81、83、86、93、95、97、98、100、109、110、113、114、117、120、125、126、127、129、137、138、139、147、148、150、151、152、153、154、166、168、175、180及び185;ピグメントグリ-ン7、10、36及び58;ピグメントブルー15、15:1、15:2、15:3、15:4、15:5、15:6、22、24、56、60、61、62及び64;ピグメントバイオレット1、19、23、27、29、30、32、37、40及び50等が挙げられる。
【0073】
上記染料としては、例えば、ニトロソ化合物、ニトロ化合物、アゾ化合物、ジアゾ化合物、キサンテン化合物、キノリン化合物、アントラキノン化合物、クマリン化合物、シアニン化合物、フタロシアニン化合物、イソインドリノン化合物、イソインドリン化合物、キナクリドン化合物、アンタンスロン化合物、ペリノン化合物、ペリレン化合物、ジケトピロロピロール化合物、チオインジゴ化合物、ジオキサジン化合物、トリフェニルメタン化合物、キノフタロン化合物、ナフタレンテトラカルボン酸、アゾ染料、シアニン染料の金属錯体化合物等が挙げられる。
【0074】
本発明の重合性組成物において、上記着色剤(C)の含有量は、特に限定されるものではないが、上記化合物(A)100質量部に対して、好ましくは10~500質量部、より好ましくは10~300質量部、更に好ましくは10~200質量部である。着色剤(D)の含有量が上記の範囲内である場合、重合性組成物が着色剤の凝集を伴わない保存安定性に優れたものとなり、重合性組成物の硬化物の遮光性が高くなることから好ましい。
例えば厚さ1~3μmの硬化物を形成する場合には、上記着色剤(C)の含有量は、特に限定されるものではないが、上記化合物(A)100質量部に対して、好ましくは、10~500質量部、より好ましくは10~300質量部、更に好ましくは10~200質量部である。
【0075】
上記重合性組成物は、更に上記化合物(A)以外の重合性化合物(D)を含有していてもよい。上記重合性化合物としては、例えば、アクリル酸-2-ヒドロキシエチル、アクリル酸-2-ヒドロキシプロピル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸-N-オクチル、アクリル酸イソオクチル、アクリル酸イソノニル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸メトキシエチル、アクリル酸ジメチルアミノエチル、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、メタクリル酸-2-ヒドロキシエチル、メタクリル酸-2-ヒドロキシプロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ターシャリーブチル、メタクリル酸シクロヘキシル、トリメチロールプロパントリアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリシクロデカンジメチロールジアクリレート等が挙げられる。
【0076】
上記重合性化合物(D)の含有量は、上記重合性組成物の感度を高め、耐薬品性に優れる硬化物が得られることから、上記化合物(A)100質量部に対して5~80質量部であることが好ましく、10~70質量部であることがより好ましい。
【0077】
本発明の重合性組成物は、更にエポキシ化合物(E)を含有していてもよい。上記エポキシ化合物としては、例えば、グリシジルメタクリレート、メチルグリシジルエーテル、エチルグリシジルエーテル、プロピルグリシジルエーテル、イソプロピルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、イソブチルグリシジルエーテル、t-ブチルグリシジルエーテル、ペンチルグリシジルエーテル、ヘキシルグリシジルエーテル、ヘプチルグリシジルエーテル、オクチルグリシジルエーテル、ノニルグリシジルエーテル、デシルグリシジルエーテル、ウンデシルグリシジルエーテル、ドデシルグリシジルエーテル、トリデシルグリシジルエーテル、テトラデシルグリシジルエーテル、ペンタデシルグリシジルエーテル、ヘキサデシルグリシジルエーテル、2-エチルヘキシルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、プロパルギルグリシジルエーテル、p-メトキシエチルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、p-メトキシグリシジルエーテル、p-ブチルフェノールグリシジルエーテル、クレジルグリシジルエーテル、2-メチルクレジルグリシジルエーテル、4-ノニルフェニルグリシジルエーテル、ベンジルグリシジルエーテル、p-クミルフェニルグリシジルエーテル、トリチルグリシジルエーテル、2,3-エポキシプロピルメタクリレート、エポキシ化大豆油、エポキシ化アマニ油、グリシジルブチレート、ビニルシクロヘキサンモノオキシド、1,2-エポキシ-4-ビニルシクロヘキサン、スチレンオキシド、ピネンオキシド、メチルスチレンオキシド、シクロヘキセンオキシド及びプロピレンオキシド等の単官能エポキシ化合物が挙げられる。
【0078】
また、ビスフェノール型エポキシ化合物及びグリシジルエーテル類等の多官能エポキシ化合物も用いることができ、ビスフェノール型エポキシ化合物としては、例えば、アルキリデンビスフェノールポリグリシジルエーテル型エポキシ樹脂の他、水添ビスフェノール型エポキシ化合物等のビスフェノール型エポキシ化合物が挙げられる。
【0079】
上記グリシジルエーテル類としては、例えば、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、1,8-オクタンジオールジグリシジルエーテル、1,10-デカンジオールジグリシジルエーテル、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、トリエチレングリコールジグリシジルエーテル、テトラエチレングリコールジグリシジルエーテル、ヘキサエチレングリコールジグリシジルエーテル、1,4-シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテル、1,1,1-トリ(グリシジルオキシメチル)プロパン、1,1,1-トリ(グリシジルオキシメチル)エタン、1,1,1-トリ(グリシジルオキシメチル)メタン、1,1,1,1-テトラ(グリシジルオキシメチル)メタンが挙げられる。
【0080】
本発明の重合性組成物には、更に溶剤(F)を加えることができる。該溶剤とは、1気圧25℃において液状であり、化合物(A)、重合開始剤(B)、着色剤(C)及び重合性化合物(D)に分類されない成分である。上記溶剤としては、通常、必要に応じて上記の各成分(化合物(A)、重合開始剤(B)、着色剤(C)及び重合性化合物(D)等)を溶解又は分散し得る溶剤を用いることができる。例えば、メチルエチルケトン、メチルアミルケトン、ジエチルケトン、アセトン、メチルイソプロピルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン及び2-ヘプタノン等のケトン系溶剤;エチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、1,2-ジメトキシエタン、1,2-ジエトキシエタン及びジプロピレングリコールジメチルエーテル等のエーテル系溶剤;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸-n-プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸n-ブチル、3-メトキシブチルアセテート、酢酸シクロヘキシル、乳酸エチル、コハク酸ジメチル及びテキサノール等のエステル系溶剤;エチレングリコールモノメチルエーテル及びエチレングリコールモノエチルエーテル等のセロソルブ系溶剤;メタノール、エタノール、イソ-又はn-プロパノール、イソ-又はn-ブタノール及びアミルアルコール等のアルコール系溶剤;エチレングリコールモノメチルアセテート、エチレングリコールモノエチルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3-メトキシブチルアセテート及びエトキシエチルプロピオネート等のエーテルエステル系溶剤;ベンゼン、トルエン及びキシレン等のBTX系溶剤;ヘキサン、ヘプタン、オクタン及びシクロヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶剤;テレピン油、D-リモネン及びピネン等のテルペン系炭化水素油;ミネラルスピリット、スワゾール#310(以上、コスモ松山石油製);及びソルベッソ#100(以上、エクソン化学製);等のパラフィン系溶剤;四塩化炭素、クロロホルム、トリクロロエチレン、塩化メチレン及び1,2-ジクロロエタン等のハロゲン化脂肪族炭化水素系溶剤;クロロベンゼン等のハロゲン化芳香族炭化水素系溶剤;カルビトール系溶剤、アニリン、トリエチルアミン、ピリジン、酢酸、アセトニトリル、二硫化炭素、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド及び水等が挙げられ、これらの溶剤は1種又は2種以上の混合溶剤として使用することができる。
【0081】
これらの中でもケトン系溶剤、エステル系溶剤及びエーテルエステル系溶剤等、特にシクロヘキサノン、3-メトキシブチルアセテート、コハク酸ジメチル及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)等が、化合物(A)及び重合開始剤(B)の溶解性が良好であるため好ましい。
【0082】
本発明の重合性組成物における上記溶剤の含有量は、特に限定されるものではないが、重合性組成物中20~98質量%が好ましく、60~95質量%がより好ましい。溶剤の含有量が上記の範囲内である場合、重合性組成物が着色剤の凝集を伴わない保存安定性に優れたものとなり、硬化物の膜厚制御が容易となることから好ましい。
【0083】
本発明の重合性組成物は、必要に応じて、アニソール、ハイドロキノン、ピロカテコール、t-ブチルカテコール、フェノチアジン等の熱重合抑制剤;可塑剤;接着促進剤;充填剤;消泡剤;分散剤;レベリング剤;シランカップリング剤;難燃剤等の慣用の添加物を加えることができる。これらは1種類で、又は2種類以上混合して使用することができる。
【0084】
本発明の重合性組成物は、スピンコーター、ロールコーター、バーコーター、ダイコーター、カーテンコーター、各種の印刷、浸漬等の公知の手段で、ソーダガラス、石英ガラス、半導体基板、金属、紙、プラスチック等の支持基体上に適用することができる。また、一旦フィルム等の支持基体上に施した後、他の支持基体上に転写することもでき、その適用方法に制限はない。
【0085】
本発明の硬化物とは、上記重合性組成物を重合させることによって得られるものを意味する。重合方法は特に限定されないが、硬化性が高いことから、光照射若しくは加熱、又はそれら両方のいずれかの方法によって重合させることが好ましい。
【0086】
本発明の重合性組成物を硬化させる際に用いられる光源としては、超高圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、中圧水銀ランプ、低圧水銀ランプ、水銀蒸気アーク灯、キセノンアーク灯、カーボンアーク灯、メタルハライドランプ、蛍光灯、タングステンランプ、エキシマーランプ、殺菌灯、発光ダイオード、CRT光源等から得られる2000オングストロームから7000オングストロームの波長を有する電磁波エネルギーや電子線、X線、放射線等の高エネルギー線を利用することができるが、好ましくは、波長300~450nmの光を発光する超高圧水銀ランプ、水銀蒸気アーク灯、カーボンアーク灯、キセノンアーク灯等が挙げられる。
【0087】
加熱により硬化する場合、70~100℃において100秒間プリベークを行い、溶剤を除去した後、150℃~250℃にて30分~1時間加熱し硬化する方法が挙げられる。硬化温度が150℃より低いと、十分な硬化が起きない場合があり、250℃以上では、硬化膜の着色や分解が起きる可能性がある。
【0088】
本発明の重合性組成物及び硬化物は、硬化性塗料、ワニス、硬化性接着剤、プリント基板、表示装置(カラーテレビ、PCモニタ、携帯情報端末及びデジタルカメラ等のカラー表示の液晶表示パネルにおけるカラーフィルタ、種々の表示用途用のカラーフィルタ、CCDイメージセンサのカラーフィルタ、タッチパネル、電気発光表示装置、プラズマ表示パネル、有機ELの黒色隔壁)、粉末コーティング、印刷インク、印刷版、接着剤、ゲルコート、電子工学用のフォトレジスト、電気メッキレジスト、エッチングレジスト、はんだレジスト、絶縁膜、ブラックマトリクス、及びLCDの製造工程において構造を形成するためのレジスト、電気及び電子部品を封入するための組成物、ソルダーレジスト、磁気記録材料、微小機械部品、導波路、光スイッチ、めっき用マスク、エッチングマスク、カラー試験系、ガラス繊維ケーブルコーティング、スクリーン印刷用ステンシル、ステレオリトグラフィによって三次元物体を製造するための材料、ホログラフィ記録用材料、画像記録材料、微細電子回路、脱色材料、画像記録材料のための脱色材料、マイクロカプセルを使用する画像記録材料用の脱色材料、印刷配線板用フォトレジスト材料、UV及び可視レーザー直接画像系用のフォトレジスト材料、プリント回路基板の逐次積層における誘電体層形成に使用するフォトレジスト材料及び保護膜等の各種の用途に使用することができ、その用途に特に制限はないが、上記用途の中でも表示装置には、特に好適に用いることができる。
【実施例
【0089】
以下、実施例等を示して本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例等に
より限定されるものではない。
【0090】
[実施例1-1]化合物A-1溶液の調製
1,1-ビス〔4-(2,3-エポキシプロピルオキシ)フェニル〕3-フェニルインダン(以下、化合物a-1ともいう。)25.0g、アクリル酸(以下、化合物b-1ともいう。)7.29g、ジブチルヒドロキシトルエン0.065g、テトラブチルアンモニウムクロライド0.180g、及びPGMEA21.5gを仕込み、120℃で15時間撹拌した。反応液を室温まで冷却し、酸二無水物として3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(以下、BPDAともいう。)8.75g、重合性基を有する酸無水物として1,3-ジオキソオクタヒドロイソベンゾフラン-5-カルボン酸-2-(メタクリロイルオキシ)エチル(化合物(II-1))4.62g、ジブチルヒドロキシトルエン0.027g、テトラブチルアンモニウムクロライド0.180g、及びPGMEA15.8gを加えて、110℃で5時間撹拌した。室温まで冷却し、PGMEA22.0gを加えて、目的物である化合物A-1をPGMEA溶液(濃度43.8質量%)として得た。化合物A-1は、Mw=5300、Mn=2900、酸価(固形分)93mg・KOH/gであった。
化合物A-1は、化合物a-1に化合物b-1を付加させた化合物の水酸基1個に対し、酸二無水物であるBPDAが0.30個、重合性基を有する酸無水物である化合物(II-1)が0.15個の比率で反応させて得られたものである。
【0091】
【化6】
【0092】
[実施例1-2]化合物A-2溶液の調製
化合物a-1を25.0g、化合物b-1を7.29g、ジブチルヒドロキシトルエン0.065g、テトラブチルアンモニウムクロライド0.180g、及びPGMEA21.5gを仕込み、120℃で15時間撹拌した。反応液を室温まで冷却し、酸二無水物としてBPDAを8.75g、重合性基を有する酸無水物として1,3-ジオキソ1,3-ジヒドロイソベンゾフラン-5-カルボン酸-2-(メタクリロイルオキシ)エチル(化合物(II-2))4.53g、ジブチルヒドロキシトルエン0.027g、テトラブチルアンモニウムクロライド0.180g、及びPGMEA15.8gを加えて、110℃で5時間撹拌した。室温まで冷却し、PGMEA21.9gを加えて、目的物である化合物A-2をPGMEA溶液(濃度43.8質量%)として得た。化合物A-2は、Mw=5200、Mn=2900、酸価(固形分)93mg・KOH/gであった。
化合物A-2は、化合物a-1に化合物b-1を付加させた化合物の水酸基1個に対し、酸二無水物であるBPDAが0.30個、重合性基を有する酸無水物である化合物(II-2)が0.15個の比率で反応させて得られたものである。
【0093】
[実施例1-3]化合物A-3溶液の調製
化合物a-1を25.0g、化合物b-1を7.29g、ジブチルヒドロキシトルエン0.0650g、テトラブチルアンモニウムクロライド0.180g、及びPGMEA21.5gを仕込み、120℃で15時間撹拌した。反応液を室温まで冷却し、酸二無水物としてBPDAを8.75g、重合性基を有する酸無水物としてペンタエリスリトール-トリアクリレート-モノ酸無水物(化合物(II-6))7.09g、ジブチルヒドロキシトルエン0.032g、テトラブチルアンモニウムクロライド0.180g、及びPGMEA17.9gを加えて、110℃で5時間撹拌した。室温まで冷却し、PGMEA23.1gを加えて、目的物である化合物A-3をPGMEA溶液(濃度43.8質量%)として得た。化合物A-3は、Mw=5400、Mn=2900、酸価(固形分)89mg・KOH/gであった。
化合物A-3は、化合物a-1に化合物b-1を付加させた化合物の水酸基1個に対し、酸二無水物であるBPDAが0.30個、重合性基を有する酸無水物である化合物(II-6)が0.15個の比率で反応させて得られたものである。
【0094】
[実施例1-4]化合物A-4溶液の調製
9,9-ビス(4-グリシジルオキシフェニル)フルオレン(以下、化合物a-2ともいう。)25.0g、化合物b-1を7.95g、ジブチルヒドロキシトルエン0.066g、テトラブチルアンモニウムクロライド0.180g、及びPGMEA22.0gを仕込み、120℃で15時間撹拌した。反応液を室温まで冷却し、酸二無水物としてBPDAを9.55g、重合性基を有する酸無水物として化合物(II-1)を5.04g、ジブチルヒドロキシトルエン0.029g、テトラブチルアンモニウムクロライド0.180g、及びPGMEA16.9gを加えて、110℃で5時間撹拌した。室温まで冷却し、PGMEA22.9gを加えて、目的物である化合物A-4をPGMEA溶液(濃度44.6質量%)として得た。化合物A-4は、Mw=5500、Mn=2900、酸価(固形分)97mg・KOH/gであった。
化合物A-4は、化合物a-2に化合物b-1を付加させた化合物の水酸基1個に対し、酸二無水物であるBPDAが0.30個、重合性基を有する酸無水物である化合物(II-1)が0.15個の比率で反応させて得られたものである。
【0095】
【化7】
【0096】
[実施例1-5]化合物A-5溶液の調製
化合物a-2を25.0g、化合物b-1を7.29g、ジブチルヒドロキシトルエン0.065g、テトラブチルアンモニウムクロライド0.180g、及びPGMEA22.0gを仕込み、120℃で15時間撹拌した。反応液を室温まで冷却し、酸二無水物としてBPDAを9.55g、重合性基を有する酸無水物として化合物(II-2)を4.94g、ジブチルヒドロキシトルエン0.029g、テトラブチルアンモニウムクロライド0.180g、及びPGMEA16.8gを加えて、110℃で5時間撹拌した。室温まで冷却し、PGMEA22.8gを加えて、目的物である化合物A-5をPGMEA溶液(濃度43.8質量%)として得た。化合物A-5は、Mw=5400、Mn=2900、酸価(固形分)98mg・KOH/gであった。
化合物A-5は、化合物a-2に化合物b-1を付加させた化合物の水酸基1個に対し、酸二無水物であるBPDAが0.30個、重合性基を有する酸無水物である化合物(II-2)が0.15個の比率で反応させて得られたものである。
【0097】
[実施例1-6]化合物A-6溶液の調製
4,4-ビス〔4-(2,3-エポキシプロピルオキシ)フェニル〕(ビフェニル-4-イル)シクロヘキシルメタン(以下、化合物a-3ともいう。)25.0g、化合物b-1を6.56g、ジブチルヒドロキシトルエン0.063g、テトラブチルアンモニウムクロライド0.180g、及びPGMEA21.0gを仕込み、120℃で15時間撹拌した。反応液を室温まで冷却し、酸二無水物としてBPDAを7.88g、重合性基を有する酸無水物として化合物(II-1)を4.16g、ジブチルヒドロキシトルエン0.024g、テトラブチルアンモニウムクロライド0.180g、及びPGMEA14,6gを加えて、110℃で5時間撹拌した。室温まで冷却し、PGMEA21.0gを加えて、目的物である化合物A-6をPGMEA溶液(濃度44.6質量%)として得た。化合物A-6は、Mw=5200、Mn=2600、酸価(固形分)88mg・KOH/gであった。
化合物A-6は、化合物a-3に化合物b-1を付加させた化合物の水酸基1個に対し、酸二無水物であるBPDAが0.30個、重合性基を有する酸無水物である化合物(II-1)が0.15個の比率で反応させて得られたものである。
【0098】
【化8】
【0099】
[実施例1-7]化合物A-7溶液の調製
化合物a-1を25.0g、化合物b-1を7.29g、ジブチルヒドロキシトルエン0.065g、テトラブチルアンモニウムクロライド0.180g、及びPGMEA21.5gを仕込み、120℃で15時間撹拌した。反応液を室温まで冷却し、重合性基を有する酸無水物として化合物(II-1)を6.2g、コハク酸無水物6.0g、ジブチルヒドロキシトルエン0.024g、テトラブチルアンモニウムクロライド0.180g、及びPGMEA19.0gを加えて、100℃で3時間撹拌した。さらに、化合物a-1を12.5g加えて、90℃で90分、120℃で4時間撹拌した。さらに、コハク酸無水物5.0gを加えて100℃で2時間攪拌し、室温まで冷却し、PGMEA38.5gを加えて、目的物である化合物A-7をPGMEA溶液(濃度44.6質量%)として得た。化合物A-7は、Mw=4800、Mn=2000、酸価(固形分)76mg・KOH/gであった。
化合物A-7は、化合物a-3に化合物b-1を付加させた化合物の水酸基1個に対し、重合性基を有する酸無水物である化合物(II-1)が0.2個と重合基を有さない酸無水物0.6個の比率で付加させて、化合物a-3のエポキシ基を0.5個の比率で反応させて、更に酸無水物0.5個を反応させて得られたものである。
【0100】
[製造例1]化合物A-8溶液の調製
1,1-ビス〔4-(2,3-エポキシプロピルオキシ)フェニル〕3-フェニルインダン100g、アクリル酸30g、2,6-ジ-tert-ブチル-p-クレゾール0.26g、テトラブチルアンモニウムブロミド0.71g、及びPGMEA86.0gを仕込み、120℃で16時間撹拌した。反応液を室温まで冷却し、PGMEA56.0g、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物35.0g、テトラ-n-ブチルアンモニウムブロミド0.24gを加えて、120℃で4時間撹拌した。更に、テトラヒドロ無水フタル酸9.1gを加え、120℃で4時間、100℃で3時間、80℃で4時間、60℃で6時間、40℃で11時間撹拌した後、PGMEA83.5gを加えて、目的物である化合物A-8をPGMEA溶液(濃度45.0質量%)として得た。化合物A-8は、Mw=5300、Mn=2100、酸価(固形分)99.7mgKOH/gであった。
【0101】
[製造例2]化合物A-9溶液の調製
9,9-ビス(4-グリシジルオキシフェニル)フルオレン75.0g、アクリル酸23.8g、2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾール0.273g、テトラブチルアンモニウムクロリド0.585g、及びPGMEA65.9gを仕込み、120℃で16時間撹拌した。反応液を室温まで冷却し、PGMEA44.5g、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物28.6g、テトラ-n-ブチルアンモニウムブロミド0.24gを加えて、120℃で4時間撹拌した。更に、テトラヒドロ無水フタル酸7.4gを加え、120℃で4時間、100℃で3時間、80℃で4時間、60℃で6時間、40℃で11時間撹拌した後、PGMEA65.0gを加えて、目的物である化合物A-9をPGMEA溶液(濃度45.0質量%)として得た。化合物A-9は、Mw=5100、Mn=2170、酸価(固形分)103.9mg・KOH/gであった。
【0102】
[製造例3]カーボンブラックNo.1の製造
MA100(三菱化学社製カーボンブラック)150g及びペルオキソ二硫酸ナトリウム脱イオン水溶液(濃度2.0N)3000mlを混合し、60℃で10時間撹拌した。ろ過し、得られたスラリーを水酸化ナトリウムで中和し、ダイアフィルトレーションにより処理し、得られた固体を75℃で一晩乾燥し、カーボンブラックNo.1を黒色粉末として得た。
【0103】
[製造例4]カーボンブラックNo.2の製造
MA100(三菱化学社製カーボンブラック)150g、及びスルホラン400mlを混合し、アミド硫酸15gを添加して140~150℃で10時間撹拌した。得られたスラリーを水酸化リチウムで中和し、ダイアフィルトレーションにより処理し、得られた固体を75℃で一晩乾燥し、カーボンブラックNo.2を黒色粉末として得た。
【0104】
[製造例5]表面処理カーボンブラック分散液No.1の調製
カーボンブラックNo.1を20g、製造例1で得られた化合物A-8溶液を4.45g、DISPERBYK-161を3g、及びPGMEAを72.55gそれぞれ秤量し、ビーズミルにより処理して、カーボンブラック分散液No.1(濃度20質量%)を得た。
【0105】
[製造例6]表面処理カーボンブラック分散液No.2の調製
カーボンブラックNo.2を20g、製造例1で得られた化合物A-8溶液を4.45g、DISPERBYK-161を3g、及びPGMEAを72.55gそれぞれ秤量し、ビーズミルにより処理して、カーボンブラック分散液No.2(濃度20質量%)を得た。
【0106】
[実施例2-1~2-9、比較例1~2]
表1及び2に記載した割合(質量部)で各成分を混合して重合性組成物を調製し、下記の方法により、感度、最小密着線幅、体積抵抗及びテーパー角の評価を行った。結果を表
1及び2に示した。
表中の各成分は以下の通りである。
【0107】
A-1:化合物A-1溶液(濃度43.8質量%)
A-2:化合物A-2溶液(濃度43.8質量%)
A-3:化合物A-3溶液(濃度43.8質量%)
A-4:化合物A-4溶液(濃度44.6質量%)
A-5:化合物A-5溶液(濃度43.8質量%)
A-6:化合物A-6溶液(濃度44.6質量%)
A-7:化合物A-7溶液(濃度44.6質量%)
A-8:化合物A-8溶液(濃度45.0重量%)
A-9:化合物A-9溶液(濃度45.0重量%)
B-1:化合物B1(下記構造の化合物)
B-2:化合物B2(下記構造の化合物)
C-1:表面処理カーボンブラック分散液No.1(濃度20質量%)
C-2:表面処理カーボンブラック分散液No.2(濃度20質量%)
D-1:カヤラッドDPHA(多官能アクリル化合物;日本化薬社製)
E-1:EP-4100(ビスフェノールA型液状エポキシ化合物;ADEKA社製)
F-1:PGMEA(溶媒)
G-1:KBM-403(エポキシ基を有するシランカップリング剤;信越化学社製)
【0108】
【化9】
【0109】
<感度>
ガラス基板上に実施例及び比較例の重合性組成物をスピンコート(1300rpm、50秒間)し乾燥させた。100℃で100秒間プリベークを行った、所定のマスクを用い、光源として超高圧水銀ランプを用いて露光後、0.04%KOH水溶液に23℃で30秒間浸漬して現像し、良く水洗した。水洗乾燥後、230℃で30分間ベークしてパターンを定着させた。
感度の評価は、露光量が40mJ/cmで現像後のパターンの定着が良好となるものをAとし、露光量が40mJ/cmで現像後のパターンの定着が不良で露光量が80mJ/cmにおいて現像後のパターンの定着が良好となるものをBとし、100mJ/cm以上の露光が必要なものをCとした。感度がAの重合性組成物はブラックマトリクスとして好ましく使用することができ、感度がBの重合性組成物はブラックマトリクスとして使用することができ、感度がCの重合性組成物はブラックマトリクスとして使用することが難しい。
【0110】
<最小密着線幅>
ガラス基板(10cm×10cm)に実施例及び比較例の重合性組成物をスピンコートし、100℃にて100秒間加熱することにより、ガラス基板の表面に1.0μmの塗布膜を形成させた。その後、マイクロテック社製プロキシミティ露光機を使用し、1~20μmのパターンが形成されたネガ型マスクを介して、露光量40mJ/cm(Gap 100μm)で露光させた。露光後の膜を、23℃の0.04質量%KOH水溶液で40秒間現像後、230℃にて30分間焼成処理を行なった。光学顕微鏡観察により、ガラス基板に硬化膜が密着しているフォトマスクパターンのうち、一番数字の小さいフォトマスクパターンを最小密着線幅とした。最小密着線幅が6μm以下の場合、高精細用ブラックマトリックスとして好ましく利用することができる。
【0111】
<体積抵抗>
Cr-ガラス基板に実施例及び比較例の重合性組成物を塗布し、90℃で90秒間プリベークして乾燥させた。塗布基板の端面部分において数mmのCr部分を露出させ、塗布基板を230℃で30分間ポストベークした後、真空蒸着機を用いて塗膜上にアルミニウムを蒸着することでアルミニウム電極を作製した。ADVANTEST R8340 ULTRA HIGH RESISTANCE METERを使用し、電圧10Vで抵抗値を測定した。体積抵抗が1.0×1013Ω・cm以上の場合、ブラックマトリックスとして好ましい。
【0112】
<テーパー角>
実施例及び比較例の重合性組成物をガラス基板(10cm×10cm)に900rpm5秒でスピンコートし、100℃にて100秒間加熱することにより、ガラス基板の表面に1.0μmの塗布膜を形成させた。その後、マイクロテック社製プロキシミティ露光機を使用し、6μmのパターンの形成されたネガ型マスクを介して、露光量40mJ/cm(Gap 100μm)で露光させた。露光後の膜を、23℃の0.04質量%KOH水溶液で40秒間現像後、230℃にて30分間焼成処理を行い、走査電子顕微鏡にてパターンと基板との間の接合角度(テーパー角)を測定した。このテーパー角は、図1の(a)及び(b)における角θに対応する。テーパー角が鋭角であれば、パターンにアンダーカットが存在しないことを意味し、テーパー角が鈍角であれば、パターンにアンダーカットが存在することを意味する。パターンにアンダーカットが存在するとコントラストが低下するため、不良となる。
【0113】
【表1】
【0114】
【表2】
【0115】
表1及び2に示した結果より、本発明の化合物を用いた重合性組成物は、感度に優れており、絶縁性に優れ、適切なパターン形状を有する微細パターンを形成可能であることが確認された。
図1