(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-20
(45)【発行日】2025-01-28
(54)【発明の名称】コイル部品
(51)【国際特許分類】
H01F 17/00 20060101AFI20250121BHJP
【FI】
H01F17/00 C
(21)【出願番号】P 2020177158
(22)【出願日】2020-10-22
【審査請求日】2023-06-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115738
【氏名又は名称】鷲頭 光宏
(74)【代理人】
【識別番号】100121681
【氏名又は名称】緒方 和文
(72)【発明者】
【氏名】奥澤 信之
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 一彦
(72)【発明者】
【氏名】高久 宗裕
(72)【発明者】
【氏名】占部 順一郎
【審査官】久保田 昌晴
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-197427(JP,A)
【文献】特開2018-061008(JP,A)
【文献】特開2006-324489(JP,A)
【文献】特開2008-198923(JP,A)
【文献】特開2020-145223(JP,A)
【文献】特開2019-114735(JP,A)
【文献】特開2015-103723(JP,A)
【文献】特開2003-188019(JP,A)
【文献】特開2007-266105(JP,A)
【文献】特開2003-086426(JP,A)
【文献】特開平09-246046(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 17/00-19/08、27/28-27/29、37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の樹脂系絶縁材料及び前記第1の樹脂系絶縁材料よりも比誘電率の低い第2の樹脂系絶縁材料を含む樹脂素体と、
前記樹脂素体に埋め込まれ、複数ターンに亘ってヘリカル状に巻回されたコイルパターンと、
前記樹脂素体の表面に設けられ、前記コイルパターンの一端及び他端にそれぞれ接続された第1及び第2の端子電極と、を備え、
前記コイルパターンは、前記第1の樹脂系絶縁材料で覆われた部分と、前記第2の樹脂系絶縁材料で覆われた部分を有しており、
前記第1及び第2の端子電極と前記コイルパターンの間には、前記第2の樹脂系絶縁材料が設けられており、且つ、前記第1の樹脂系絶縁材料が設けられて
おらず、
前記第1及び第2の端子電極は、前記コイルパターンの軸方向に配列されており、
前記第1及び第2の端子電極は、前記軸方向に対して垂直な前記樹脂素体の表面に形成されることなく、前記軸方向に沿った前記樹脂素体の表面に形成されていることを特徴とするコイル部品。
【請求項2】
前記第2の樹脂系絶縁材料は、前記コイルパターンの隣接するターン間に設けられていることを特徴とする請求項1に記載のコイル部品。
【請求項3】
前記樹脂素体は、第1の樹脂層と、第2の樹脂層と、前記第1の樹脂層と前記第2の樹脂層の間に位置する第3の樹脂層とを含み、
前記コイルパターンは、
前記第1の樹脂層上に設けられ、前記第3の樹脂層に埋め込まれた複数の第1水平区間と、
前記第3の樹脂層上に設けられ、前記第2の樹脂層に埋め込まれた複数の第2水平区間と、
前記第3の樹脂層を貫通して設けられ、前記複数の第1水平区間の一端及びこれらに対応する前記複数の第2水平区間の一端を接続する複数の第1垂直区間と、
前記第3の樹脂層を貫通して設けられ、前記複数の第1水平区間の他端及びこれらに対応する前記複数の第2水平区間の他端を接続する複数の第2垂直区間と、を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載のコイル部品。
【請求項4】
前記第1及び第2の端子電極は、前記第2の樹脂層上に設けられており、
前記第2の樹脂層は、前記第2の樹脂系絶縁材料からなることを特徴とする請求項3に記載のコイル部品。
【請求項5】
前記第3の樹脂層のうち、前記複数の第1水平区間を埋め込む部分は前記第2の樹脂系絶縁材料からなり、残りの部分は前記第1の樹脂系絶縁材料からなることを特徴とする請求項3又は4に記載のコイル部品。
【請求項6】
前記第1の樹脂系絶縁材料にはフィラーが添加されており、前記第2の樹脂系絶縁材料にはフィラーが添加されていないことを特徴とする
請求項1乃至5のいずれか一項に記載のコイル部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はコイル部品に関し、特に、樹脂素体にヘリカル状のコイルパターンが埋め込まれた構造を有するコイル部品に関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂素体にヘリカル状のコイルパターンが埋め込まれた構造を有するコイル部品としては、特許文献1に記載されたコイル部品が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載されたコイル部品においては、自己共振周波数(SRF)を十分に高めることが困難であった。
【0005】
したがって、本発明は、樹脂素体にヘリカル状のコイルパターンが埋め込まれた構造を有するコイル部品において、自己共振周波数を高めることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によるコイル部品は、第1の樹脂系絶縁材料及び第1の樹脂系絶縁材料よりも比誘電率の低い第2の樹脂系絶縁材料を含む樹脂素体と、樹脂素体に埋め込まれ、複数ターンに亘ってヘリカル状に巻回されたコイルパターンと、樹脂素体の表面に設けられ、コイルパターンの一端及び他端にそれぞれ接続された第1及び第2の端子電極とを備え、コイルパターンは、第1の樹脂系絶縁材料で覆われた部分と、第2の樹脂系絶縁材料で覆われた部分を有していることを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、第1の樹脂系絶縁材料によって十分な機械的強度を確保しつつ、比誘電率の低い第2の樹脂系絶縁材料によって浮遊容量を低減することができる。これにより、自己共振周波数を高めることが可能となる。
【0008】
本発明において、第2の樹脂系絶縁材料は、第1及び第2の端子電極とコイルパターンの間に設けられていても構わない。これによれば、第1及び第2の端子電極とコイルパターンの間に生じる浮遊容量を低減することが可能となる。
【0009】
本発明において、第2の樹脂系絶縁材料は、コイルパターンの隣接するターン間に設けられていても構わない。これによれば、コイルパターンの隣接するターン間に生じる浮遊容量を低減することが可能となる。
【0010】
本発明において、樹脂素体は、第1の樹脂層と、第2の樹脂層と、第1の樹脂層と第2の樹脂層の間に位置する第3の樹脂層とを含み、コイルパターンは、第1の樹脂層上に設けられ、第3の樹脂層に埋め込まれた複数の第1水平区間と、第3の樹脂層上に設けられ、第2の樹脂層に埋め込まれた複数の第2水平区間と、第3の樹脂層を貫通して設けられ、複数の第1水平区間の一端及びこれらに対応する複数の第2水平区間の一端を接続する複数の第1垂直区間と、第3の樹脂層を貫通して設けられ、複数の第1水平区間の他端及びこれらに対応する複数の第2水平区間の他端を接続する複数の第2垂直区間を含んでいても構わない。これによれば、コイルパターンのコイル軸を樹脂層の積層方向に対して垂直とすることが可能となる。
【0011】
この場合、第1及び第2の端子電極は第2の樹脂層上に設けられており、第2の樹脂層は第2の樹脂系絶縁材料からなるものであっても構わないし、第3の樹脂層のうち、複数の第1水平区間を埋め込む部分は第2の樹脂系絶縁材料からなり、残りの部分は第1の樹脂系絶縁材料からなるものであっても構わない。前者によれば、第1及び第2の端子電極とコイルパターンの第2水平区間との間に生じる浮遊容量や、隣接する第2水平区間の間に生じる浮遊容量を低減することが可能となる。後者によれば、隣接する第1水平区間の間に生じる浮遊容量を低減することが可能となる。
【0012】
本発明において、第1及び第2の端子電極はコイルパターンの軸方向に配列されていても構わない。これによれば、第1及び第2の端子電極とコイルパターンの間の電位差が抑えられることから、浮遊容量がより低減される。
【0013】
この場合、第1及び第2の端子電極は、軸方向に対して垂直な樹脂素体の表面に形成されることなく、軸方向に沿った樹脂素体の表面に形成されていても構わない。これによれば、磁束が第1及び第2の端子電極と干渉しにくいことから、渦電流の発生を抑制することが可能となる。
【0014】
本発明において、第1の樹脂系絶縁材料にはフィラーが添加されており、第2の樹脂系絶縁材料にはフィラーが添加されていなくても構わない。これによれば、第1の樹脂系絶縁材料の強度をより高めることができるとともに、第2の樹脂系絶縁材料の比誘電率をより低減することが可能となる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、樹脂素体にヘリカル状のコイルパターンが埋め込まれた構造を有するコイル部品において、自己共振周波数を高めることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、本発明の第1の実施形態によるコイル部品1の構成を説明するための略透視斜視図であり、(a)は上面側から見た図、(b)は実装面側から見た図である。
【
図2】
図2は、
図1(b)に示すA-A線に沿った略断面図である。
【
図3】
図3は、樹脂素体10に埋め込まれたコイルパターンCの構造を説明するための略斜視図である。
【
図4】
図4は、コイルパターンCをz方向から見た状態を示す略透視
平面図である。
【
図5】
図5は、コイル部品1の製造方法を説明するための工程図である。
【
図6】
図6は、コイル部品1の製造方法を説明するための工程図である。
【
図7】
図7は、コイル部品1の製造方法を説明するための工程図である。
【
図8】
図8は、コイル部品1の製造方法を説明するための工程図である。
【
図9】
図9は、コイル部品1の製造方法を説明するための工程図である。
【
図10】
図10は、コイル部品1の製造方法を説明するための工程図である。
【
図11】
図11は、コイル部品1の製造方法を説明するための工程図である。
【
図12】
図12は、本発明の第2の実施形態によるコイル部品2の構成を説明するための略断面図である。
【
図13】
図13は、本発明の第3の実施形態によるコイル部品3の構成を説明するための略断面図である。
【
図14】
図14は、本発明の第4の実施形態によるコイル部品4の構成を説明するための略透視斜視図であり、(a)は上面側から見た図、(b)は実装面側から見た図である。
【
図15】
図15は、本発明の第5の実施形態によるコイル部品5の構成を説明するための略透視斜視図であり、(a)は上面側から見た図、(b)は実装面側から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の好ましい実施形態について詳細に説明する。
【0018】
<第1の実施形態>
図1は、本発明の第1の実施形態によるコイル部品1の構成を説明するための略透視斜視図であり、(a)は上面側から見た図、(b)は実装面側から見た図である。また、
図2は、
図1(b)に示すA-A線に沿った略断面図である。
【0019】
第1の実施形態によるコイル部品1は、表面実装が可能なチップ型電子部品であり、
図1及び
図2に示すように、樹脂素体10と、樹脂素体10に埋め込まれたコイルパターンCと、樹脂素体10の表面に設けられた端子電極E1,E2を備えている。
【0020】
樹脂素体10は、4層の樹脂層11~14がこの順にz方向に積層された構造を有している。このうち、樹脂層11,13は、エポキシ系又はアクリル系の樹脂材料にシリカなどのフィラーが添加された樹脂系絶縁材料からなる。樹脂層11を構成する樹脂系絶縁材料と樹脂層13を構成する樹脂系絶縁材料は、互いに同じであっても構わないし、互いに異なっていても構わない。これに対し、樹脂層12,14は、ビスマレイミドや液晶ポリマーなど、フィラーを含まない樹脂材料からなる。樹脂層12を構成する樹脂系絶縁材料と樹脂層14を構成する樹脂系絶縁材料は、互いに同じであっても構わないし、互いに異なっていても構わない。
【0021】
これにより、樹脂層11,13を構成する樹脂系絶縁材料は、樹脂層12,14を構成する樹脂系絶縁材料よりも強度が高く、且つ、加工性に優れる。一方、樹脂層12,14を構成する樹脂系絶縁材料は、比誘電率の低い樹脂材料からなるとともに、シリカなどのフィラーが添加されていないことから、樹脂層11,13を構成する樹脂系絶縁材料よりも比誘電率が低い。一例として、樹脂層11,13を構成する樹脂系絶縁材料の1GHzにおける比誘電率εは約3.3であり、樹脂層12,14を構成する樹脂系絶縁材料の1GHzにおける比誘電率εは約2.4である。
【0022】
図3は、樹脂素体10に埋め込まれたコイルパターンCの構造を説明するための略斜視図である。また、
図4は、コイルパターンCをz方向から見た状態を示す略透視
平面図である。
【0023】
図2~
図4に示すように、コイルパターンCは、xy平面に延在する第1水平区間31~34及び第2水平区間41~45と、z方向に延在する第1垂直区間51~54及び第2垂直区間61~64によって構成されている。
図2に示すように、第1水平区間31~34は
樹脂層11の表面に設けられ、樹脂層12に埋め込まれている。また、第2水平区間41~45は
樹脂層13の表面に設けられ、樹脂層14に埋め込まれている。第1垂直区間51~54及び第2垂直区間61~64は、
樹脂層12,13を貫通して設けられている。このうち、第1垂直区間51~54は、第1水平区間31~34の一端及びこれらに対応する第2水平区間41~44の一端を接続する。また、第2垂直区間61~64は、第1水平区間31~34の他端及びこれらに対応する第2水平区間42~45の一端を接続する。
【0024】
かかる構成により、複数ターンに亘ってヘリカル状に巻回されたコイルパターンCが構成される。コイルパターンCのコイル軸はx方向である。第2水平区間41の他端はコイルパターンCの一端を構成し、樹脂層14を貫通して設けられたビア導体71を介して端子電極E1に接続される。一方、第2水平区間45の一端はコイルパターンCの他端を構成し、樹脂層14を貫通して設けられたビア導体72を介して端子電極E2に接続される。端子電極E1,E2は、樹脂素体10のxy表面にのみ形成された底面端子である。つまり、端子電極E1,E2は樹脂素体10のyz表面を覆っておらず、これにより、ハンダを用いて回路基板に実装した場合、樹脂素体10のyz表面がハンダのフィレットで覆われることがない。これにより、実装密度を高めることができるとともに、コイルパターンCによって生じる磁束が端子電極E1,E2やハンダと干渉しにくいことから、渦電流の発生を抑制することが可能となる。
【0025】
図4に示すように、端子電極E1は少なくとも第2水平区間41と重なりを有しており、端子電極E2は少なくとも第2水平区間45と重なりを有している。このため、端子電極E1と第2水平区間41との間、並びに、端子電極E2と第2水平区間45との間には浮遊容量が発生する。しかしながら、本実施形態においては、両者間に位置する樹脂層14が比誘電率の低い樹脂系絶縁材料からなることから、端子電極E1,E2と第2水平区間41,45との間に生じる浮遊容量を低減することが可能となる。しかも、第2水平区間41~45は樹脂層14に埋め込まれていることから、x方向に隣接する第2水平区間41~45間における浮遊容量、つまり、コイルパターンCの隣接するターン間において生じる浮遊容量を低減することが可能となる。これにより、浮遊容量に起因する自己共振周波数の低下を防止することが可能となる。
【0026】
また、本実施形態においては、端子電極E1が第2水平区間42の一部とも重なりを有し、端子電極E2が第2水平区間44の一部とも重なりを有している。このため、端子電極E1と第2水平区間42との間、並びに、端子電極E2と第2水平区間44との間にも浮遊容量が発生する。ここで、第2水平区間42は、第2水平区間41よりも端子電極E1からの配線距離が離れていることから、電圧降下の影響により、端子電極E1と第2水平区間42の単位面積当たりの浮遊容量は、端子電極E1と第2水平区間41の単位面積当たりの浮遊容量よりも大きくなる。同様に、第2水平区間44は、第2水平区間45よりも端子電極E2からの配線距離が離れていることから、電圧降下の影響により、端子電極E2と第2水平区間44の単位面積当たりの浮遊容量は、端子電極E2と第2水平区間45の単位面積当たりの浮遊容量よりも大きくなる。このように、端子電極E1,E2のそれぞれが複数本の第2水平区間41~45と重なりを有している場合、樹脂層14の材料として比誘電率の低い樹脂系絶縁材料を用いる効果はより大きくなる。
【0027】
さらに、本実施形態においては、第1水平区間31~34が樹脂層12に埋め込まれており、樹脂層12は比誘電率の低い樹脂系絶縁材料からなることから、x方向に隣接する第1水平区間31~34間における浮遊容量、つまり、コイルパターンCの隣接するターン間において生じる浮遊容量を低減することが可能となる。
【0028】
一方、第1垂直区間51~54及び第2垂直区間61~64の大部分は、強度の高い樹脂層13を貫通して設けられていることから、樹脂素体10全体の機械的強度を十分に確保することが可能となる。樹脂素体10の機械的強度を確保するためには、樹脂層13の厚みT13を樹脂層12,14の厚みT12,T14の3倍以上とすることが好ましい。一例として、T12=約20μm、T13=約115μm、T14=約30μmとすれば、樹脂素体10の機械的強度を確保しつつ、浮遊容量を低減することが可能となる。
【0029】
このように、本実施形態によるコイル部品1は、コイルパターンCが樹脂素体10に埋め込まれた構造を有し、コイルパターンCは、強度の高い樹脂系絶縁材料からなる樹脂層11,13と、比誘電率の低い樹脂系絶縁材料からなる樹脂層12,14で覆われた部分を有していることから、樹脂素体10の機械的強度を確保しつつ、浮遊容量に起因する自己共振周波数の低下を防止することが可能となる。
【0030】
また、本実施形態においては、端子電極E1,E2がコイルパターンCの軸方向(x方向)に配列されていることから、端子電極E1が配線距離の離れた第2水平区間(例えば第2水平区間44や45)と重なることがなく、同様に、端子電極E2が配線距離の離れた第2水平区間(例えば第2水平区間41や42)と重なることがない。これにより、端子電極E1,E2及びこれらと重なる第2水平区間41,42,44,45の電位差が抑えられることから、端子電極E1,E2をy方向に配列した場合と比べて、浮遊容量をより低減することが可能となる。
【0031】
次に、本実施形態によるコイル部品1の製造方法について説明する。
【0032】
図5~
図11は、本実施形態によるコイル部品1の製造方法を説明するための工程図である。
図6~
図11において、(a)は略斜視図、(b)は略平面図、(c)は(b)に示すB-B線に沿った略断面図である。
【0033】
まず、
図5に示すように、アルミナや非磁性フェライトなどのセラミック材料からなる支持基板80を用意し、その表面に樹脂層11を形成する。次に、
図6に示すように、樹脂層11の表面に第1水平区間31~34を形成する。第1水平区間31~34の形成方法としては、樹脂層11の全面に薄い給電膜を形成した後、感光性フィルムを貼り付け、露光現像することによって感光性フィルムに開口部を形成し、電解メッキによって開口部に第1水平区間31~34を成長させることによって行うことができる。ここで、樹脂層11は強度の高い樹脂系絶縁材料からなることから、その表面に形成する第1水平区間31~34の加工精度を高く保つことが可能である。
【0034】
次に、
図7に示すように、第1水平区間31~34が埋め込まれるよう、樹脂層11の表面に樹脂層12を形成する。これにより、x方向に隣接する第1水平区間31~34は、比誘電率の低い樹脂系絶縁材料によって絶縁されることになる。次に、樹脂層12に開口部31a~34a,31b~34bを形成することによって、第1水平区間31~34の両端部を露出させる。
【0035】
次に、
図8に示すように、開口部31a~34aを介して第1水平区間31~34の一端にそれぞれ接続される第1垂直区間51~54、並びに、開口部31b~34bを介して第1水平区間31~34の他端にそれぞれ接続される第2垂直区間61~64を形成する。第1垂直区間51~54及び第2垂直区間61~64の形成方法としては、樹脂層12の全面に薄い給電膜を形成した後、感光性フィルムを貼り付け、露光現像することによって感光性フィルムに開口部を形成し、電解メッキによって開口部に第1垂直区間51~54及び第2垂直区間61~64を成長させることによって行うことができる。
【0036】
次に、
図9に示すように、第1垂直区間51~54及び第2垂直区間61~64が埋め込まれるよう、樹脂層13を形成する。樹脂層13の形成方法としては、第1垂直区間51~54及び第2垂直区間61~64の形成に用いた感光性フィルムを剥離した後、樹脂層13を構成する未硬化のシートをラミネートし、硬化させた後、表面を研磨することによって第1垂直区間51~54及び第2垂直区間61~64の頂部を露出させることにより行うことができる。第1垂直区間51~54及び第2垂直区間61~64の高さによっては、
図8に示す工程と
図9に示す工程を交互に複数回繰り返しても構わない。ここで、樹脂層13は加工性の高い樹脂系絶縁材料からなることから、第1垂直区間51~54及び第2垂直区間61~64の加工精度を高く保つことが可能である。
【0037】
次に、
図10に示すように、樹脂層13の表面に第2水平区間41~45を形成する。第2水平区間41~45の形成方法は、上述した第1水平区間31~34の形成方法と同じであっても構わない。ここで、樹脂層13は強度の高い樹脂系絶縁材料からなることから、その表面に形成する第2水平区間41~45の加工精度を高く保つことが可能である。
【0038】
次に、
図11に示すように、第2水平区間41~45が埋め込まれるよう、樹脂層13の表面に樹脂層14を形成する。これにより、x方向に隣接する第2水平区間41~45は、比誘電率の低い樹脂系絶縁材料によって絶縁されることになる。次に、樹脂層14に開口部71a,72aを形成することによって、第2水平区間41の他端と第2水平区間45の一端を露出させる。そして、開口部71a,72aと重なる位置にそれぞれ端子電極E1,E2を形成すれば、本実施形態によるコイル部品1が完成する。
【0039】
このように、本実施形態によるコイル部品1の製造方法によれば、強度及び加工性の高い樹脂層11,13の表面にそれぞれ第1水平区間31~34及び第2水平区間41~45を形成するとともに、第1垂直区間51~54及び第2垂直区間61~64の大部分が強度及び加工性の高い樹脂層13を貫通して設けられることから、樹脂素体10の全体を比誘電率の低い樹脂系絶縁材料によって構成した場合とは異なり、高い加工精度を確保することが可能となる。
【0040】
<第2の実施形態>
図12は、本発明の第2の実施形態によるコイル部品2の構成を説明するための略断面図である。
【0041】
図12に示すように、第2の実施形態によるコイル部品2は、樹脂層12が樹脂層11,13と同じ樹脂系絶縁材料によって構成されている点において、第1の実施形態によるコイル部品1と相違している。その他の基本的な構成は、第1の実施形態によるコイル部品1と同一であることから、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。本実施形態によるコイル部品2が例示するように、本発明において、第1水平区間31~34が比誘電率の低い樹脂系絶縁材料によって覆われている点は必須ではない。
【0042】
<第3の実施形態>
図13は、本発明の第3の実施形態によるコイル部品3の構成を説明するための略断面図である。
【0043】
図13に示すように、第3の実施形態によるコイル部品3は、樹脂層14が樹脂層11,13と同じ樹脂系絶縁材料によって構成されている点において、第1の実施形態によるコイル部品1と相違している。その他の基本的な構成は、第1の実施形態によるコイル部品1と同一であることから、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。本実施形態によるコイル部品3が例示するように、本発明において、第2水平区間41~45が比誘電率の低い樹脂系絶縁材料によって覆われている点は必須ではない。
【0044】
<第4の実施形態>
図14は、本発明の第4の実施形態によるコイル部品4の構成を説明するための略透視斜視図であり、(a)は上面側から見た図、(b)は実装面側から見た図である。
【0045】
図14に示すように、第4の実施形態によるコイル部品4は、樹脂素体10に埋め込まれたコイルパターンCの軸方向がz方向である点において、第1の実施形態によるコイル部品1と相違している。コイルパターンCの一端は、引き出し配線Caを介して端子電極E1に接続され、コイルパターンCの他端は端子電極E2に接続される。
【0046】
そして、端子電極E1,E2と、端子電極E2を始点としたコイルパターンCの第1ターンの間に位置する樹脂層14の材料として、比誘電率の低い樹脂系絶縁材料を用いている。コイルパターンCの大部分は、強度の高い樹脂層13で埋め込まれている。さらに、コイルパターンCの所定の隣接ターン間に位置する樹脂層12についても、樹脂層13よりも比誘電率の低い樹脂系絶縁材料を用いている。これにより、端子電極E1,E2とコイルパターンCの第1ターンの間に生じる浮遊容量や、コイルパターンCの所定の隣接ターン間に生じる浮遊容量を低減することが可能となる。
【0047】
本実施形態によるコイル部品4が例示するように、本発明において、コイルパターンCのコイル軸は積層方向(z方向)を向いていても構わない。
【0048】
<第5の実施形態>
図15は、本発明の第5の実施形態によるコイル部品5の構成を説明するための略透視斜視図であり、(a)は上面側から見た図、(b)は実装面側から見た図である。
【0049】
図15に示すように、第5の実施形態によるコイル部品5は、樹脂層12が省略されている点において、第4の実施形態によるコイル部品4と相違している。その他の基本的な構成は、第4の実施形態によるコイル部品4と同一であることから、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。本実施形態によるコイル部品5が例示するように、コイルパターンCの全体を樹脂層13で埋め込み、端子電極E1,E2とコイルパターンCの第1ターンの間にのみ比誘電率の低い樹脂層14を配置しても構わない。
【0050】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は、上記の実施形態に限定されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることはいうまでもない。
【0051】
例えば、上述した各実施形態においては、樹脂層11,13を構成する樹脂系絶縁材料にはフィラーが添加され、樹脂層12,14を構成する樹脂系絶縁材料にはフィラーが添加されていないが、本発明においてこの点は必須ではない。また、樹脂層11,13と樹脂層12,14に同じ樹脂材料を用い、樹脂層11,13に対してはフィラーを添加することによって強度を高める一方、樹脂層12,14に対しては比誘電率が増加しないよう、フィラーを添加しなくても構わない。
【符号の説明】
【0052】
1~5 コイル部品
10 樹脂素体
11~14 樹脂層
31~34 第1水平区間
31a~34a,31b~34b 開口部
41~45 第2水平区間
51~54 第1垂直区間
61~64 第2垂直区間
71,72 ビア導体
71a,72a 開口部
80 支持基板
C コイルパターン
Ca 引き出し配線
E1,E2 端子電極