(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-20
(45)【発行日】2025-01-28
(54)【発明の名称】乾燥食肉様製品の製造方法
(51)【国際特許分類】
A23J 3/00 20060101AFI20250121BHJP
A23J 3/16 20060101ALI20250121BHJP
【FI】
A23J3/00 502
A23J3/16 501
(21)【出願番号】P 2020179051
(22)【出願日】2020-10-26
【審査請求日】2023-09-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000118497
【氏名又は名称】伊藤ハム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】沖田 雅俊
(72)【発明者】
【氏名】杉本 安喜子
【審査官】戸来 幸男
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/169205(WO,A1)
【文献】特開昭54-002366(JP,A)
【文献】特開昭62-055058(JP,A)
【文献】特開昭62-074246(JP,A)
【文献】「食品の安全確保とHACCP-農場から食卓まで-」(食品の安全確保に係わるリスクコミュニケーション),2005年10月21日,p.1
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23J 3/00-3/34
A23L 13/00-13/77
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(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の工程:
(i)組織加工大豆たん白と水とを混合して戻したん白を調製する工程、
(ii)戻したん白と調味液とを混合してベース組成物を調製する工程、
(iii)ベース組成物を加熱する工程、
(iv)ベース組成物を成形する工程、
(v)加熱及び成形後のベース組成物を乾燥させる工程、及び
(vi)乾燥後のベース組成物を圧延する工程、
を含む、乾燥食肉様食品の製造方法
であって、
前記乾燥食肉様食品が、組織加工大豆たん白含有量が15~50%であり、水分活性が0.75~0.87であり、食肉を含まない、方法。
【請求項2】
前記(i)の工程において、組織加工大豆たん白と水とを重量比1:1~1:5で混合する、請求項
1に記載の方法。
【請求項3】
前記(ii)の工程において、戻したん白と調味液とを重量比1:1~3:1で混合する、請求項
1又は
2に記載の方法。
【請求項4】
(v)の工程において、乾燥後のベース組成物の水分活性を0.75~0.87とする、請求項
1~
3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
請求項
1~
4のいずれか1項に記載の方法で製造され
た乾燥食肉様製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物由来成分を主原料とする新規の乾燥食肉(ジャーキー)様製品及び植物由来成分を主原料として使用する新規の乾燥食肉様製品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、食肉を使用せず、植物由来成分を主原料としながら、食肉のような食感、風味を得られる食肉様食品について、人々の健康への関心の向上、嗜好の変化、環境への配慮、経済的事情等により、その需要が高まっている。例えば、特許文献1に記載されるような、大豆たん白等の植物性たん白を主原料として製造された食肉様加工食品は広く普及している。
【0003】
乾燥食肉(ジャーキー)とは、一般に、牛肉、豚肉、鶏肉、馬肉等の肉を乾燥させて保存食として利用可能な食品をいう。乾燥食肉は、通常、原料となる肉類にまず味付けをした後、加熱・乾燥することで製造される。このような乾燥食肉についても、これに代わる、畜肉を使用しない乾燥食肉様製品の需要がある。例えば、特許文献2には、大豆たん白、デンプンおよび食用油脂を主原料とする乾燥畜肉様食品の製造法が開示されている。ここで開示される乾燥畜肉様食品は、水を加えた大豆たん白をエクストルーダーで加工して調製した繊維状大豆たん白に、調味液を加えて乾燥させる製造法で製造される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2012-75358号公報
【文献】特開昭62-74246号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
大豆たん白等の植物由来成分を主原料とした食肉様製品は、主に特許文献1等に記載されるような、大豆たん白を挽肉様に加工したものを使用した製品、例えば、ハンバーグ、ソーセージ等が広く普及している。しかし、ジャーキーのように塊状の畜肉を乾燥させる製品は、挽肉を用いた製品とは異なる、独特の外観及び食感・風味を有する。これを、繊維状たん白に水を加えて成形して、塊状の畜肉と同様に、味付け、加熱・乾燥することで再現することは困難であり、乾燥食肉に代わる、独特の外観及び食感・風味を有する乾燥食肉様製品を製造するには到っていないといえる。
【0006】
さらに、近年では、食感が柔らかく、手で裂きやすい乾燥食肉が好まれる傾向があるが、このような性質を有する乾燥食肉様製品を従来技術で製造することはさらに困難であるといえる。
【0007】
本発明は、食肉を含まず、植物由来成分を主原料とする、乾燥食肉独特の外観及び食感・風味を有する乾燥食肉様製品を提供することを目的とする。さらには、食感が柔らかく、手で裂きやすい乾燥食肉様製品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、組織加工大豆たん白を主原料とする乾燥食肉様製品を製造するにあたり、組織加工大豆たん白の含有量、及び水分活性を最適に調整したベース組成物を、乾燥後に圧延することで、乾燥食肉独特の外観及び食感・風味を有する乾燥食肉様製品が得られることを見出した。
【0009】
すなわち、本発明は以下を提供するものである。
(1)組織加工大豆たん白含有量が15~50%であり、水分活性が0.75~0.87であり、食肉を含まない、乾燥食肉様製品。
(2)以下の工程:
(i)組織加工大豆たん白と水とを混合して戻したん白を調製する工程、
(ii)戻したん白と調味液とを混合してベース組成物を調製する工程、
(iii)ベース組成物を加熱する工程、
(iv)ベース組成物を成形する工程、
(v)加熱及び成形後のベース組成物を乾燥させる工程、及び
(vi)乾燥後のベース組成物を圧延する工程、
を含む、乾燥食肉様食品の製造方法。
(3)前記(i)の工程において、組織加工大豆たん白と水とを重量比1:1~1:5で混合する、(2)の方法。
(4)前記(ii)の工程において、戻したん白と調味液とを重量比1:1~3:1で混合する、(2)又は(3)の方法。
(5)(v)の工程において、乾燥後のベース組成物の水分活性を0.75~0.87とする、(2)~(4)のいずれかの方法。
(6)(2)~(5)のいずれかの方法で製造された、乾燥食肉様製品。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、食肉を含まず、植物由来成分を主原料とする、乾燥食肉独特の外観及び食感・風味を有する乾燥食肉様製品を提供することができる。さらには、食感が柔らかく、手で裂きやすい乾燥食肉様製品を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書において、「A~B」(A及びBは数値)は、特に説明のない限り、「A以上B以下」を表すものとする。本明細書において使用される「%」は、特に説明のない限り、「重量%」を表すものとする。
【0012】
<乾燥食肉様製品>
本発明の乾燥食肉様食品は、組織加工大豆たん白含有量が15~50%であり、水分活性が0.75~0.87であり、食肉を含まない、ことを特徴とする。
【0013】
本発明の乾燥食肉様食品は、主成分として組織加工大豆たん白を含む。本明細書において、大豆たん白は、大豆を脱脂して製造されるたん白質含有成分をいう。脱脂した大豆材料を、分離前又は分離後に、粒状又は繊維状に成形加工して乾燥又は冷凍させたものを、それぞれ粒状大豆たん白、繊維状大豆たん白と称し、これらをまとめて組織加工大豆たん白と称する。好ましくは、組織加工大豆たん白は、JAS規格0838:2019の「粒状植物性たん白」または「組織状植物性たん白」の規格に適合するものとする。
【0014】
本発明の乾燥食肉様食品は、食肉を含まず、組織加工大豆たん白を15~50%、好ましくは20~45%、さらに好ましくは22~40%含む。組織加工大豆たん白の含有量が15%未満であると、食肉に近い食感を再現することが困難であり、また、50%を超えると食感が硬くなり、手で裂きにくくなる。使用する組織加工大豆たん白は特に限定されないが、粒状たん白を使用することが好ましい。
【0015】
本明細書において、「水分活性」(Aw)とは、食品中で微生物が生育するために利用できる水分割合であり、食品を入れた密閉容器内の水蒸気圧(P)とその温度における純水の上記圧(PD)より、式 Aw=P/PD で求められる値を指す。本発明の乾燥食肉様食品の水分活性は0.75~0.87、好ましくは、0.80~0.87である。水分活性が0.75より低いと乾燥食肉様の食感が得られにくく、また、0.87より高いと製品の保存安定性が低くなりやすい。
【0016】
本発明の乾燥食肉様製品は、厚みを2~10mm、特に2.5~7mm、さらに3~6mmとすることが好ましい。本発明の乾燥食肉様製品は、圧延工程を経て製造されることが好ましい。したがって、前記の厚みは、好ましくは、圧延工程後の厚みである。
【0017】
乾燥食肉様製品全体の形状は特に限定するものではなく、正方形、長方形、楕円形、不定形であり得る。食品としての扱いやすさを考慮すれば、乾燥食肉製品の大きさは、特に限定するものではないが、例えば5cm×5cm~20cm×20cmの範囲となり得る。
【0018】
本発明の乾燥食肉様食品は、油脂を含有していてもよい。油脂としては、植物性油脂、動物性油脂のいずれを使用してもよいが、植物性油脂を使用することが好ましい。好ましい植物性油脂としては、例えば、大豆油、菜種油、キャノーラ油、ひまわり油、オリーブ油、コーン油、綿実油、ヤシ油、ゴマ油等が挙げられる。油脂の含有量は、組織加工大豆たん白1重量部に対して、0.1~1.0重量部、特に0.2~0.8重量部、さらに0.3~0.7重量部とすることが好ましい。
【0019】
本発明の乾燥食肉様製品は、トランスグルタミナーゼを含有していてもよい。トランスグルタミナーゼは、植物性たん白成分をゲル化し、食肉様の歯ごたえを与える作用を奏するため、より食肉に近い食感を得るために有用である。本発明の乾燥食肉様製品に使用されるトランスグルタミナーゼとしては、アクティバTG-S-NF(味の素株式会社)等の市販のグルタミナーゼ製剤を用いることができる。本発明の乾燥食肉様食品は、組織加工大豆たん白1重量部に対して、グルタミナーゼ製剤を0.005~0.03重量部含有することが好ましい。
【0020】
本発明の乾燥食肉様製品は、色素成分を含んでいてもよい。色素成分としては、赤たかきび粉、ココアパウダー、カラメル色素、クチナシ色素等の、食品添加物として使用可能なものから選択可能である。特に、消費者に対して、外観からも食肉を食しているような満足感を与えるために、このような色素成分は有用である。
【0021】
本発明の乾燥食肉様製品は、各種調味料(醤油、食塩、糖類、香辛料、酸味料、アミノ酸等)、pH調整剤、増粘多糖類、 乳清たん白、卵白等を含有してもよい。特に乳清たん白、卵白等の動物性たん白は、食肉風味を増すために有用である。
【0022】
本発明によって得られた乾燥食肉様製品は、必要に応じて更にカットし、包装して、適切な製品形態とすることができる。
【0023】
本発明の乾燥食肉様製品は、後述の本発明の乾燥食肉製品の製造方法によって製造される乾燥食肉様食品であることが好ましい。本発明の乾燥食肉様製品は、自然の食肉を乾燥させた乾燥食肉に近い外観、食感を持つことを特徴とするが、自然の食肉の外観や性状は一定ではなく、その特徴を完全に記載することは困難である。従って、本発明の乾燥食肉様製品は、以下の製造方法によって製造されるものとして記載することも必要となる。
【0024】
<乾燥食肉様製品の製造方法>
本発明の乾燥食肉様食品の製造方法は、以下の工程を含むことを特徴とする。
(i)組織加工大豆たん白と水とを混合して戻したん白を調製する工程、
(ii)戻したん白と調味液とを混合してベース組成物を調製する工程、
(iii)ベース組成物を加熱する工程、
(iv)ベース組成物を成形する工程、
(v)加熱及び成形後のベース組成物を乾燥させる工程、及び
(vi)乾燥後のベース組成物を圧延する工程。
【0025】
本発明の方法について、以下、各工程の順に詳説する。以下に使用される各用語の定義は、特に説明のない限り、<乾燥食肉様製品>の項で説明したものと同様である。また、本発明の方法で製造される乾燥食肉様製品は、特に説明のない限り、<乾燥食肉様製品>の項で説明した乾燥食肉様製品と同様の性状を有する。
【0026】
本発明の方法の工程(i)は、組織加工大豆たん白と水とを混合して、戻したん白を調製する工程である。組織加工大豆たん白は、特に限定されないが、粒状大豆たん白を使用することが好ましい。(i)の工程において、組織加工大豆たん白と水との混合比は、重量比で1:1~1:5、特に1:2~1:3とすることが好ましい。好ましくは、製造後に、本発明の乾燥食肉様製品の水分活性を実現可能な水分量とする。(i)の工程において、組織加工大豆たん白には、水に加え、調味料、トランスグルタミナーゼ等が添加されてもよい。混合は、バキュームミキサー、ミキサー、サイレントカッター、ロータリーマッサージ機等の通常使用される公知の攪拌装置を用いて行うことが好ましい。
【0027】
本発明の方法の工程(ii)は、戻したん白と調味液とを混合してベース組成物を調製する工程である。調味液は、ピックル液とも呼ばれ、調味料及び水が含まれる。調味液には、さらに、着色料、油脂、pH調整剤、増粘多糖類、 乳清たん白、卵白等が含まれていてもよい。調味料としては、例えば、醤油、食塩、糖類、香辛料、酸味料、アミノ酸等が挙げられる。戻したん白と調味液の混合比は、重量比で1:1~3:1、好ましくは5:4~7:3とする。混合は、バキュームミキサー、ミキサー、サイレントカッター、ロータリーマッサージ機等の通常使用される公知の攪拌装置を用いて行うことが好ましい。
【0028】
本発明の方法の工程(iii)は、ベース組成物を加熱する工程である。ベース組成物は、そのままの状態で加熱されてもよく、ケーシング等で密封された状態で加熱されてもよい。加熱手段は、水分以外の材料組成比に実質的に影響を与えない方法であれば、特に限定されないが、好ましくは、蒸煮、湯浴等を使用できる。なお、工程(iii)は、工程(iv)の後で実施されてもよい。この場合、例えば、成形後のベース組成物を真空パック等で密封し、これを蒸煮、湯浴等で加熱することができる。
【0029】
本発明の方法の工程(iv)は、ベース組成物を成形する工程である。工程(iv)は、工程(iii)の前に実施されても後で実施されてもよいが、好ましくは工程(iii)の後に実施される。工程(iii)の後で実施される場合、加熱後のベース組成物を成形する工程である。工程(iii)がケーシング等を使用して行われる場合、工程(iv)は、これを予め設定した厚みにスライスする工程を含んでもよい。工程(iii)の前に実施される場合、成形後のベース組成物は、前述の通り、1つずつ真空パック等で密封してもよい。
【0030】
工程(iv)において、ベース組成物は、厚さを4~12mm、特に5~9mm、さらに6~8mmとすることが好ましい。特に、工程(v)の乾燥後の厚さが3~11mm、さらに4~10mmとなるように成形することが好ましい。乾燥前の厚さを4mm未満とすると、工程(vi)の圧延による効果が得られにくく、12mm超とすると食べやすさ(裂きやすさ)が得られにくい。
【0031】
本発明の方法の工程(v)は、加熱及び成形後のベース組成物を乾燥させる工程である。乾燥手段は、特に限定されないが、乾燥機、スモークハウス等を使用し、食肉の種類、大きさ、重量等に応じて適宜乾燥温度、時間を調整しながら、実施することが出来る。乾燥工程は、ベース組成物の水分活性が所定値になるまで実施される。ここでいう水分活性の所定値は、0.75~0.87、好ましくは0.80~0.87のいずれかの値とする。水分活性を0.75よりも低くすると、完成後の製品の食感が硬くなる上に、後段の圧延工程において、ベース組成物の割れが生じやすくなったり、所望の柔らかさが得られなくなったりする。
【0032】
本発明の方法の工程(vi)は、乾燥後のベース組成物を圧延する工程である。圧延工程は、当分野において使用される圧延手段、例えば圧延ロールを用いることができる。圧延ロールによる圧延条件(圧縮力、ロール回転数等)は、ベース組成物の割れ等が生じにくく、かつ、よりロール間隙の小さな状態で圧延できるよう、ベース組成物の状態を確認しながら調整することが好ましい。圧延方向は、例えば大豆たん白の繊維方向に沿って、あるいは繊維方向と垂直に行うことができる。圧延に関しては10mm以上の厚みがあるものに関しては段階的に圧延を行うのが好ましい。圧延工程は、水分活性の過度な低下を防ぐため、加熱ロール等の加熱手段を用いずに行うことが好ましい。なお、圧延手段、圧延条件及び圧延方向等は、いずれも特に限定するものではない。
【0033】
圧延後のベース組成物の厚みは、2~10mm、特に2.5~7mm、さらに3~6mmとすることが好ましい。圧延工程の前のベース組成物は、厚さが一定で定型的であり、乾燥食肉のもつ、不定形の外観とは異なるものである。食感もゴツゴツとした硬い食感であり、食肉の食感とは異質のものとなりやすい。また、乾燥食肉製品に求められる、手で裂きやすい性状も得られにくい。圧延工程を加えることで、繊維が開き、外観が乾燥食肉に近いものとなりやすい。また、繊維の開きが生じることで、食感が食肉に近くなり、さらに柔らかさも向上する。また、手で裂きやすい性状となる。
【実施例】
【0034】
以下に、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0035】
[実施例1 ビーフジャーキー様製品に与える水分活性の影響]
粒状大豆たん白3400重量部に水8500重量部を加え、バキュームミキサーで混合し、戻したん白を調製した。調味液(醤油、砂糖、着色料、香辛料、アミノ酸、粉末卵白、乳清たん白、増粘多糖類、トランスグルタミナーゼ製剤、オリーブ油、水を含む)を戻したん白と調味液の重量比が3:2となるように加え、バキュームミキサーで混合し、ベース組成物を調製した。調味液に含まれるトランスグルタミナーゼ製剤、オリーブ油の配合量は、粒状大豆たん白1重量部に対して、それぞれ0.013重量部、0.52重量部とした。
【0036】
ベース組成物をファイブラスケーシングに充填し、蒸煮による加熱を行った。加熱後のベース組成物を、7.5mmの厚さにスライスして金網に載せ、スモークハウス(乾燥処理設備)で水分活性が0.7、0.75、0.8及び0.86となるまで乾燥させた。
乾燥後のベース組成物の厚さは、平均4.4mmであった。
【0037】
次いで、乾燥したベース組成物を、圧延ロール(ウルトラロールL-500型、タイヨー製作所)を使用して圧延した。圧延は、製品の状態を確認しながら左右のハンドルを回し強度の調整を行った。圧延後のベース組成物の厚さは、平均3.8mmであった。圧延後の各ベース組成物を幅10mmにカットして、乾燥食肉様製品とした。
【0038】
<官能評価>
各乾燥食肉様製品の食べやすさ、食感及び外観について、以下の評価基準で6人のモニターによる官能評価を行った。評価結果を表1に示す。
食べやすさ
○:良好(手で裂きやすい)
△:やや良好(やや裂きやすい)
×:不良(裂きにくい)
食感
〇:良好(食肉様の柔らかい食感である)
△:やや良好(やや硬い食感が残る)
×:不良(硬い食感である)
外観
○:良好(繊維が開いている)
△:やや良好(繊維は部分的に開いているが割れも見られる)
×:不良(繊維の開きが見られず割れが見られる)
【0039】
【0040】
表1に示すように、水分活性が0.75以上で繊維の開きが見られる乾燥食肉様の外観が得られ、0.8以上で食肉様の柔らかい食感が得られることが分かった。
【0041】
[実施例2 ビーフジャーキー様製品に与える厚さの影響]
戻したん白の調整、調味液の調整、混合、及び加熱は、実施例1と同様の条件で行った。加熱後のベース組成物を所定の厚さにスライスして金網に載せ、スモークハウス(乾燥処理設備)で水分活性が0.86となるまで乾燥させた。乾燥後の各ベース組成物の厚さは、5、6、7、8、9、10mmとした。
【0042】
次いで、乾燥したベース組成物を、圧延ロールを使用して圧延した。圧延後の各ベース組成物の厚さは、それぞれ4、5、6、7、8、9mmであった。圧延後の各ベース組成物を幅10mmにカットして、乾燥食肉様製品とした。
【0043】
実施例1と同様の基準で、6人のモニターによる官能評価を行った。併せて、比較のため、圧延前の厚さ5mmのベース組成物について、圧延せずにカットして同様の官能評価を行った。評価結果を表2に示す。
【0044】
【0045】
厚さ4~9mmの乾燥食肉様製品について、圧延後の食べやすさ、食感及び外観は、いずれも良好であることが確認された。一方、圧延を行わなかった製品について、食べやすさ、食感及び外観は、いずれも乾燥食肉製品とは大きく異なるものであった。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明は、主に食品業界において、ジャーキーに代わる乾燥食肉様製品及びその製造方法として利用可能である。