(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-20
(45)【発行日】2025-01-28
(54)【発明の名称】チップ型電子部品
(51)【国際特許分類】
H01F 27/00 20060101AFI20250121BHJP
H01F 17/00 20060101ALI20250121BHJP
H01G 4/40 20060101ALI20250121BHJP
H03H 7/48 20060101ALI20250121BHJP
H03H 7/075 20060101ALI20250121BHJP
【FI】
H01F27/00 S
H01F17/00 D
H01G4/40 321A
H03H7/48 C
H03H7/075 A
(21)【出願番号】P 2020207227
(22)【出願日】2020-12-15
【審査請求日】2023-07-18
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115738
【氏名又は名称】鷲頭 光宏
(74)【代理人】
【識別番号】100121681
【氏名又は名称】緒方 和文
(72)【発明者】
【氏名】三嶽 幸生
(72)【発明者】
【氏名】大塚 隆史
【審査官】後藤 嘉宏
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-106898(JP,A)
【文献】特開平11-145754(JP,A)
【文献】特開平11-103229(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 27/00
H01F 17/00
H01G 4/40
H03H 7/48
H03H 7/075
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1及び第2の端子電極と、
第1の導体層と、
前記第1の導体層を覆う第1の絶縁層と、
前記第1の絶縁層上に設けられた第2の導体層と、
前記第2の導体層を覆う第2の絶縁層と、
前記第2の絶縁層上に設けられた第3の導体層と、
前記第3の導体層を覆う第3の絶縁層と、
前記第3の絶縁層上に設けられた第4の導体層と、を備え、
前記第1の導体層は、それぞれ前記第1及び第2の端子電極と重なる位置に設けられた第1及び第2の接続パターンと、前記第1の接続パターンと前記第2の接続パターンに挟まれるようこれらの間に位置し、前記第1及び第2の端子電極の一方に接続された第1の下部電極パターンとを含み、
前記第2の導体層は、
前記第1の絶縁層を介して前記第1の下部電極パターンと重なる位置に設けられ、前記第1及び第2の端子電極の他方に接続された第1の上部電極パターンを含み、
前記第1の下部電極パターン及び前記第1の上部電極パターンは、第1のキャパシタを構成し、
前記第3の導体層は、
それぞれ前記第1及び第2の端子電極と重なる位置に設けられた第3及び第4の接続パターンと、前記第3の接続パターンと前記第4の接続パターンに挟まれるようこれらの間に位置し、前記第3及び第4の端子電極の一方に接続された第5の接続パターンとを含み、
前記第4の導体層は、一端が前記第1の端子電極に接続された第1のインダクタパターンを含み、
前記第1のインダクタパターンは、前記第1のキャパシタと重なる第1の区間と、前記第1のキャパシタと重ならない第2の区間を含
み、
前記第1のインダクタパターンの前記第1の区間は、前記第3の絶縁膜を介して前記第5の接続パターンと重なりを有しており、これにより、前記第1のインダクタパターンの前記第1の区間と前記第5の接続パターンは、第3のキャパシタを構成することを特徴とするチップ型電子部品。
【請求項2】
第3及び第4の端子電極をさらに備え、
前記第1の導体層は、それぞれ前記第3及び第4の端子電極と重なる位置に設けられた第
6及び第
7の接続パターンと、前記第
6の接続パターンと前記第
7の接続パターンに挟まれるようこれらの間に位置し、前記第3及び第4の端子電極の一方に接続された第2の下部電極パターンとをさらに含み、
前記第2の導体層は、
前記第1の絶縁層を介して前記第2の下部電極パターンと重なる位置に設けられ、前記第3及び第4の端子電極の他方に接続された第2の上部電極パターンをさらに含み、
前記第2の下部電極パターン及び前記第2の上部電極パターンは、第2のキャパシタを構成し、
前記第3の導体層は、
それぞれ前記第3及び第4の端子電極と重なる位置に設けられた第8及び第9の接続パターンと、前記第8の接続パターンと前記第9の接続パターンに挟まれるようこれらの間に位置し、前記第8及び第9の端子電極の一方に接続された第10の接続パターンとを含み、
前記第4の導体層は、一端が前記第1の端子電極に接続された第2のインダクタパターンと、前記第1の端子電極
、並びに、前記第1
及び第3の接続パターンと重なる位置に設けられ、前記第1の端子電極
、並びに、前記第1
及び第3の接続パターンに接続された第
11の接続パターンと、前記第2の端子電極
、並びに、前記第2
及び第4の接続パターンと重なる位置に設けられ、前記第2の端子電極
、並びに、前記第2
及び第4の接続パターンに接続された第
12の接続パターンとをさらに含み、
前記第1のインダクタパターンの前記第1の区間は、前記第
11の接続パターンと前記第
12の接続パターンに挟まれるようこれらの間に位置し、
前記第1のインダクタパターンの他端は前記第3の端子電極に接続され、前記第2のインダクタパターンの他端は前記第4の端子電極に接続されることを特徴とする請求項1に記載のチップ型電子部品。
【請求項3】
前記第
4の導体層は、前記第3の端子電極
、並びに、前記第
6及び第8の接続パターンと重なる位置に設けられ、前記第3の端子電極
、並びに、前記第
6及び第8の接続パターンに接続された第
13の接続パターンと、前記第4の端子電極
、並びに、前記第
7及び9の接続パターンと重なる位置に設けられ、前記第4の端子電極
、並びに、前記第
7及び9の接続パターンに接続された第
14の接続パターンとをさらに含み、
前記第1のインダクタパターンの前記第2の区間の一部は、前記第
11の接続パターンと前記第
13の接続パターンに挟まれるようこれらの間に位置するか、または前記第
12の接続パターンと前記第
14の接続パターンに挟まれるようこれらの間に位置することを特徴とする請求項2に記載のチップ型電子部品。
【請求項4】
前記第2のインダクタパターンは、前記第
13の接続パターンと前記第
14の接続パターンに挟まれるようこれらの間に位置し、前記第2のキャパシタと重なる第3の区間と、前記第2のキャパシタと重ならない第4の区間を含
み、
前記第2のインダクタパターンの前記第3の区間は、前記第3の絶縁膜を介して前記第10の接続パターンと重なりを有しており、これにより、前記第2のインダクタパターンの前記第3の区間と前記第10の接続パターンは、第4のキャパシタを構成することを特徴とする請求項3に記載のチップ型電子部品。
【請求項5】
前記第2のインダクタパターンの前記第4の区間の一部は、前記第
11の接続パターンと前記第
13の接続パターンに挟まれるようこれらの間に位置するか、または前記第
12の接続パターンと前記第
14の接続パターンの間に位置することを特徴とする請求項4に記載のチップ型電子部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はチップ型電子部品に関し、特に、キャパシタとインダクタを含むチップ型電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、キャパシタとインダクタを含むチップ型電子部品が開示されている。特許文献1に記載されたチップ型電子部品は、インダクタパターンと重なるようパターン幅の細い容量電極パターンを設けることによって、チップサイズを抑えつつ、インダクタパターンに補助的なキャパシタンスを付加している。主となるキャパシタについては、平面視で端子電極間に配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載されたチップ型電子部品においては、主となるキャパシタの上部が有効活用されていないことから、十分なインダクタンスを得るためにはチップサイズを拡大しなければならない場合があった。
【0005】
したがって、本発明は、キャパシタとインダクタを含むチップ型電子部品のチップサイズを縮小することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によるチップ型電子部品は、第1及び第2の端子電極と、第1、第2及び第3の導体層とを備え、第1の導体層は、それぞれ第1及び第2の端子電極と重なる位置に設けられた第1及び第2の接続パターンと、第1の接続パターンと第2の接続パターンの間に位置し、第1及び第2の端子電極の一方に接続された第1の下部電極パターンとを含み、第2の導体層は、第1の下部電極パターンと重なる位置に設けられ、第1及び第2の端子電極の他方に接続された第1の上部電極パターンを含み、第1の下部電極パターン及び第1の上部電極パターンは第1のキャパシタを構成し、第3の導体層は、一端が第1の端子電極に接続された第1のインダクタパターンを含み、第1のインダクタパターンは、第1のキャパシタと重なる第1の区間と、第1のキャパシタと重ならない第2の区間を含むことを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、第1のインダクタパターンの一部が第1のキャパシタと重なるように設けられていることから、小さなチップサイズでより大きなインダクタンスを得ることができる。しかも、第1のインダクタパターンには、第1のキャパシタと重なる部分において補助的なキャパシタンスが生じることから、特性を改善することも可能となる。
【0008】
本発明によるチップ型電子部品は、第3及び第4の端子電極をさらに備え、第1の導体層は、それぞれ第3及び第4の端子電極と重なる位置に設けられた第3及び第4の接続パターンと、第3の接続パターンと第4の接続パターンの間に位置し、第3及び第4の端子電極の一方に接続された第2の下部電極パターンとをさらに含み、第2の導体層は、第2の下部電極パターンと重なる位置に設けられ、第3及び第4の端子電極の他方に接続された第2の上部電極パターンをさらに含み、第2の下部電極パターン及び第2の上部電極パターンは第2のキャパシタを構成し、第3の導体層は、一端が第1の端子電極に接続された第2のインダクタパターンをさらに含み、第1のインダクタパターンの他端は第3の端子電極に接続され、第2のインダクタパターンの他端は第4の端子電極に接続されるものであっても構わない。これによれば、第1及び第2の端子電極の一方を入力端子とし、第3及び第4の端子電極を一対の出力端子とするスプリッタ回路を構成することが可能となる。
【0009】
本発明において、第1のインダクタパターンの第2の区間の一部は、第1の接続パターンと第3の接続パターンの間または第2の接続パターンと第4の接続パターンの間に位置しても構わない。これによれば、第3の導体層がより有効に活用されることから、チップサイズをより縮小することが可能となる。
【0010】
本発明において、第2のインダクタパターンは、第2のキャパシタと重なる第3の区間と、第2のキャパシタと重ならない第4の区間を含んでいても構わない。これによれば、第3の導体層がより有効に活用されることから、チップサイズをより縮小することが可能となる。しかも、第2のインダクタパターンには、第2のキャパシタと重なる部分において補助的なキャパシタンスが生じることから、特性を改善することも可能となる。
【0011】
本発明において、第2のインダクタパターンの第4の区間の一部は、第1の接続パターンと第3の接続パターンの間または第2の接続パターンと第4の接続パターンの間に位置しても構わない。これによれば、第3の導体層がより有効に活用されることから、チップサイズをより縮小することが可能となる。
【発明の効果】
【0012】
このように、本発明によれば、キャパシタとインダクタを含むチップ型電子部品のチップサイズを縮小することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態によるチップ型電子部品1の外観を示す略斜視図である。
【
図2】
図2は、チップ型電子部品1の部分的な略断面図である。
【
図3】
図3は、導体層M1のパターン形状を説明するための平面図である。
【
図4】
図4は、抵抗パターンRのパターン形状を説明するための平面図である。
【
図5】
図5は、絶縁層22のパターン形状を説明するための平面図である。
【
図6】
図6は、導体層MMのパターン形状を説明するための平面図である。
【
図7】
図7は、絶縁層23のパターン形状を説明するための平面図である。
【
図8】
図8は、導体層M2のパターン形状を説明するための平面図である。
【
図9】
図9は、絶縁層24のパターン形状を説明するための平面図である。
【
図10】
図10は、導体層M3のパターン形状を説明するための平面図である。
【
図11】
図11は、絶縁層25のパターン形状を説明するための平面図である。
【
図12】
図12は、導体層M4のパターン形状を説明するための平面図である。
【
図13】
図13は、絶縁層26のパターン形状を説明するための平面図である。
【
図14】
図14は、導体層M5のパターン形状を説明するための平面図である。
【
図16】
図16は、チップ型電子部品1の挿入損失を示すグラフである。
【
図17】
図17は、チップ型電子部品1の反射損失を示すグラフである。
【
図18】
図18は、チップ型電子部品1のアイソレーションを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の好ましい実施形態について詳細に説明する。
【0015】
図1は、本発明の一実施形態によるチップ型電子部品1の外観を示す略斜視図である。また、
図2は、チップ型電子部品1の部分的な略断面図である。
【0016】
本実施形態によるチップ型電子部品1は、高周波信号を2分岐させるスプリッタであり、
図1に示すように、本体部10と、本体部10の表面に形成された端子電極11~14とを備えている。端子電極11~14は、本体部10の表面の四隅に配置されている。
図2に示すように、本体部10は、基板20と、基板20の表面を覆う平坦化層21と、平坦化層21上に設けられたCuなどからなる導体層M1,MM,M2,M3,M4,M5、絶縁層22~26及び抵抗パターンRとを備えている。基板20の材料としては、化学的・熱的に安定で応力発生が少なく、表面の平滑性を保つことができる材料であればよく、特に限定されるものではないが、シリコン単結晶、アルミナ、サファイア、窒化アルミ、MgO単結晶、SrTiO
3単結晶、表面酸化シリコン、ガラス、石英、フェライトなどを用いることができる。平坦化層21としては、アルミナや酸化シリコンなどを用いることができる。
【0017】
導体層M1は最下層に位置する導体層であり、
図3に示すように、接続パターン31~34、下部電極パターン35,36及びインダクタパターン37,38を含んでいる。接続パターン31~34は、それぞれ端子電極11~14と重なる位置に設けられる。下部電極パターン35は、接続パターン31と接続パターン32の間に配置され、接続パターン32に接続される。下部電極パターン36は、接続パターン33と接続パターン34の間に配置され、接続パターン34に接続される。インダクタパターン37,38はいずれも約1ターン巻回されたパターンであり、その一端はいずれも接続パターン32に接続される。インダクタパターン37の一部は接続パターン31,32及び下部電極パターン35に沿って蛇行し、インダクタパターン38の一部は接続パターン33,34及び下部電極パターン36に沿って蛇行している。インダクタパターン37は、接続パターン31,32間に位置する区間、接続パターン31,33間に位置する区間、接続パターン32,34間に位置する区間を含んでいる。同様に、インダクタパターン38は、接続パターン33,34間に位置する区間、接続パターン31,33間に位置する区間、接続パターン32,34間に位置する区間を含んでいる。
【0018】
導体層M1と同じ層には、抵抗パターンRが設けられる。
図4に示すように、抵抗パターンRは接続パターン33と接続パターン34の間に配置される。
【0019】
導体層M1は、絶縁層22で覆われる。絶縁層22は窒化シリコンなどの無機絶縁材料からなる薄膜であり、キャパシタの容量絶縁膜を構成する。
図5に示すように、絶縁層22には開口部41~48が設けられる。このうち、開口部41~44はそれぞれ接続パターン31~34を露出させる位置に設けられ、開口部45,46はそれぞれインダクタパターン37,38の他端を露出させる位置に設けられ、開口部47,48は抵抗パターンRの両端を露出させる位置に設けられる。
【0020】
絶縁層22上には導体層MMが設けられる。
図6に示すように、導体層MMは、上部電極パターン51,52を含んでいる。上部電極パターン51,52は、それぞれ下部電極パターン35,36と重なる位置に設けられる。これにより、下部電極パターン35、上部電極パターン51及び絶縁層22によって第1のキャパシタが構成され、下部電極パターン36、上部電極パターン52及び絶縁層22によって第2のキャパシタが構成される。
【0021】
導体層MMは、ポリイミドなどの樹脂材料からなる絶縁層23で覆われる。
図7に示すように、絶縁層23には開口部60~69が設けられる。このうち、開口部61~64はそれぞれ開口部41~44を介して接続パターン31~34を露出させる位置に設けられ、開口部65,66はそれぞれ開口部45,46を介してインダクタパターン37,38の他端を露出させる位置に設けられ、開口部60,67はそれぞれ上部電極パターン51,52を露出させる位置に設けられ、開口部68,69はそれぞれ開口部47,48を介して抵抗パターンRの両端を露出させる位置に設けられる。
【0022】
絶縁層23上には導体層M2が設けられる。
図8に示すように、導体層M2は、接続パターン70~76,79及びインダクタパターン77,78を含んでいる。接続パターン71~74は、それぞれ端子電極11~14と重なる位置に設けられ、それぞれ開口部61~64と開口部41~44を介して接続パターン31~34に接続される。接続パターン75,76は、それぞれ開口部60,67を介して上部電極パターン51,52に接続される。接続パターン70,79は、それぞれ開口部68,69と開口部47,48を介して抵抗パターンRの両端に接続される。インダクタパターン77,78の一端は、それぞれ開口部65,66と開口部45,46を介してインダクタパターン37,38の他端に接続される。インダクタパターン77,78はいずれも約1ターン巻回されたパターンである。インダクタパターン77の一部は接続パターン71,72,75に沿って蛇行し、インダクタパターン78の一部は接続パターン70,73,74,79に沿って蛇行している。インダクタパターン77は、接続パターン71,72間に位置する区間、接続パターン71,73間に位置する区間、接続パターン72,74間に位置する区間を含んでいる。同様に、インダクタパターン78は、接続パターン73,74間に位置する区間、接続パターン71,73間に位置する区間、接続パターン72,74間に位置する区間を含んでいる。
【0023】
導体層M2は、ポリイミドなどの樹脂材料からなる絶縁層24で覆われる。
図9に示すように、絶縁層24には開口部81~86が設けられる。このうち、開口部81~84はそれぞれ接続パターン71~74を露出させる位置に設けられ、開口部85,86はそれぞれインダクタパターン77,78の他端を露出させる位置に設けられる。
【0024】
絶縁層24上には導体層M3が設けられる。
図10に示すように、導体層M3は、接続パターン91~94及びインダクタパターン95,96を含んでいる。接続パターン91~94は、それぞれ端子電極11~14と重なる位置に設けられ、それぞれ開口部81~84を介して接続パターン71~74に接続される。インダクタパターン95,96の一端は、それぞれ開口部85,86を介してインダクタパターン77,78の他端に接続される。インダクタパターン95,96はいずれも約1.5ターン巻回されたパターンである。インダクタパターン95の一部は接続パターン91,92に沿って蛇行し、インダクタパターン96の一部は接続パターン93,94に沿って蛇行している。インダクタパターン95は、接続パターン91,92間に位置する区間、接続パターン91,93間に位置する区間、接続パターン92,94間に位置する区間を含んでいる。同様に、インダクタパターン96は、接続パターン93,94間に位置する区間、接続パターン91,93間に位置する区間、接続パターン92,94間に位置する区間を含んでいる。
【0025】
さらに、インダクタパターン95のうち、接続パターン91,92間に位置する区間の一部は、第1のキャパシタ及び接続パターン75と重なる位置に設けられる。その他の区間は、第1のキャパシタ及び接続パターン75とは重ならない位置に設けられる。同様に、インダクタパターン96のうち、接続パターン93,94間に位置する区間の一部は、第2のキャパシタ及び接続パターン76と重なる位置に設けられる。その他の区間は、第2のキャパシタ及び接続パターン76とは重ならない位置に設けられる。
【0026】
導体層M3は、ポリイミドなどの樹脂材料からなる絶縁層25で覆われる。
図11に示すように、絶縁層25には開口部101~106が設けられる。このうち、開口部101~104はそれぞれ接続パターン91~94を露出させる位置に設けられ、開口部105,106はそれぞれインダクタパターン95,96の他端を露出させる位置に設けられる。
【0027】
絶縁層25上には導体層M4が設けられる。
図12に示すように、導体層M4は、接続パターン111~114及びインダクタパターン115,116を含んでいる。接続パターン111~114は、それぞれ端子電極11~14と重なる位置に設けられ、それぞれ開口部101~104を介して接続パターン91~94に接続される。インダクタパターン115,116の一端は、それぞれ開口部105,106を介してインダクタパターン95,96の他端に接続される。インダクタパターン115,116の他端は、それぞれ接続パターン113,114に接続される。インダクタパターン115,116はいずれも約1ターン巻回されたパターンである。インダクタパターン115の一部は接続パターン111,112に沿って蛇行している。インダクタパターン115は、接続パターン111,112間に位置する区間、接続パターン111,113間に位置する区間、接続パターン112,114間に位置する区間を含んでいる。同様に、インダクタパターン116は、接続パターン113,114間に位置する区間、接続パターン111,113間に位置する区間、接続パターン112,114間に位置する区間を含んでいる。
【0028】
導体層M4は、ポリイミドなどの樹脂材料からなる絶縁層26で覆われる。
図13に示すように、絶縁層26には開口部121~124が設けられる。開口部121~124は、それぞれ接続パターン111~114を露出させる位置に設けられる。
【0029】
絶縁層26上には導体層M5が設けられる。
図14に示すように、導体層M5は、端子電極11~14を含んでいる。端子電極11~14は、それぞれ開口部121~124を介して接続パターン111~114に接続される。端子電極11~14の表面は、
図2に示すようにNi及びAuからなるメッキ膜Pで覆われていても構わない。
【0030】
かかる構成により、本実施形態によるチップ型電子部品1は、
図15に示すスプリッタ回路を構成する。実使用時においては、端子電極11がグランドGNDに接地され、端子電極12に入力信号が供給され、端子電極13,14から出力信号が出力される。ここで、端子電極11と端子電極12の間に接続される第1のキャパシタC1は、下部電極パターン35、上部電極パターン51及び絶縁層22によって構成される。端子電極13と端子電極14の間に接続される第2のキャパシタC2は、下部電極パターン36、上部電極パターン52及び絶縁層22によって構成される。端子電極13と端子電極14の間には、抵抗パターンRも接続される。端子電極12と端子電極13の間に接続される第1のインダクタL1は、インダクタパターン37,77,95,115によって構成される。端子電極12と端子電極14の間に接続される第2のインダクタL2は、インダクタパターン38,78,96,116によって構成される。
【0031】
さらに、本実施形態によるチップ型電子部品1は、導体層M3に位置するインダクタパターン95の一部区間が導体層M2に位置する接続パターン75と重なりを有している。このため、インダクタパターン95と接続パターン75の間にキャパシタンスが生じる。つまり、
図15に示すように、端子電極11と第1のインダクタL1の間に補助的な第3のキャパシタC3が追加される。同様に、導体層M3に位置するインダクタパターン96の一部区間が導体層M2に位置する接続パターン76と重なりを有しているため、インダクタパターン96と接続パターン76の間にキャパシタンスが生じる。つまり、
図15に示すように、端子電極13と第2のインダクタL2の間に補助的な第4のキャパシタC4が追加される。ここで、導体層M2,M3間を分離する絶縁層24は容量絶縁膜である絶縁層22よりも大幅に厚いため、第3及び第4のキャパシタC3,C4のキャパシタンスは僅かであるが、このようなキャパシタC3,C4が追加されることにより、後述する各種特性が改善される。
【0032】
図16~
図18は、それぞれ挿入損失、反射損失及びアイソレーションを示すグラフであり、実線は本実施形態によるチップ型電子部品1の特性を示し、破線は第3及び第4のキャパシタC3,C4が存在しない場合の特性を示している。挿入損失は端子電極12に入力した信号が端子電極13及び14から出力される際に生じる損失であり、反射損失は端子電極12に入力した信号が端子電極12に反射する成分であり、アイソレーションは端子電極13と端子電極14の間のアイソレーションである。
図16~
図18に示すように、第3及び第4のキャパシタC3,C4が付加されることにより、挿入損失、反射損失及びアイソレーションがいずれも改善されていることが分かる。
【0033】
以上説明したように、本実施形態によるチップ型電子部品1は、インダクタパターン95,96がそれぞれキャパシタC1,C2と重なりを有しており、これによって補助的な第3及び第4のキャパシタC3,C4が付加されることから、スプリッタに求められる各種特性を向上させることが可能となる。しかも、インダクタパターン95のうち隣接する接続パターン91,92間に位置する区間は、接続パターン91,92に沿って蛇行するとともにキャパシタC1と重なり、インダクタパターン96のうち隣接する接続パターン93,94間に位置する区間は、接続パターン93,94に沿って蛇行するとともにキャパシタC2と重なることから、インダクタパターン95,96の配線長を長くすることができる。これにより、必要となるインダクタンスを確保しつつ、チップサイズを縮小することも可能となる。
【0034】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は、上記の実施形態に限定されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることはいうまでもない。
【0035】
例えば、上記実施形態では、第3及び第4のキャパシタC3,C4の両方が付加されているが、本発明においてこの点は必須でなく、第3のキャパシタC3のみを付加しても構わない。
【符号の説明】
【0036】
1 チップ型電子部品
10 本体部
11~14 端子電極
20 基板
21 平坦化層
22~26 絶縁層
23 絶縁層
24 絶縁層
25 絶縁層
26 絶縁層
31 接続パターン
31~34 接続パターン
35,36 下部電極パターン
36 下部電極パターン
37,38 インダクタパターン
41~48 開口部
51,52 上部電極パターン
60~69 開口部
70~76,79 接続パターン
77,78 インダクタパターン
81~86 開口部
91~94 接続パターン
95,96 インダクタパターン
101~106 開口部
111~114 接続パターン
115,116 インダクタパターン
121~124 開口部
C1 第1のキャパシタ
C2 第2のキャパシタ
C3 第3のキャパシタ
C4 第4のキャパシタ
L1 第1のインダクタ
L2 第2のインダクタ
M1,MM,M2,M3,M4,M5 導体層
P メッキ膜
R 抵抗パターン