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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-20
(45)【発行日】2025-01-28
(54)【発明の名称】筆記具のクリップ装置
(51)【国際特許分類】
   B43K 25/02 20060101AFI20250121BHJP
【FI】
B43K25/02 140
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020207427
(22)【出願日】2020-12-15
(65)【公開番号】P2022094501
(43)【公開日】2022-06-27
【審査請求日】2023-10-06
(73)【特許権者】
【識別番号】303022891
【氏名又は名称】株式会社パイロットコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】上原 康孝
【審査官】内藤 万紀子
(56)【参考文献】
【文献】実開昭56-159283(JP,U)
【文献】実公昭49-035649(JP,Y1)
【文献】実公平05-003356(JP,Y2)
【文献】実公昭39-037900(JP,Y1)
【文献】実開昭51-149238(JP,U)
【文献】実開平07-011384(JP,U)
【文献】特開2005-131797(JP,A)
【文献】実開平05-002993(JP,U)
【文献】特開2000-296692(JP,A)
【文献】特開2005-014493(JP,A)
【文献】実開昭60-075095(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B43K 25/02
B43K 23/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筆記具のクリップ装置であって、
軸筒と、
上記軸筒の外周部側に配置されるクリップ外側部材、上記軸筒の内周部側に配置されるクリップ内側部材、および上記クリップ外側部材とクリップ内側部材とを連結する外内部材連結部を有するクリップと、
上記クリップ外側部材とクリップ内側部材との間における上記軸筒の内周部と上記クリップ内側部材との間に設けられ、上記クリップ外側部材が上記軸筒に密着する方向に付勢する塊状の弾性部材と、
を備え、
上記クリップの上記クリップ外側部材は板状の部分を有する形状に形成され、上記クリップは、上記クリップ外側部材の上記板状の部分が上記軸筒の外周部に密着した状態と離間した状態とに移動可能に設けられていることを特徴とする筆記具のクリップ装置。
【請求項2】
請求項1の筆記具のクリップ装置であって、
上記クリップ内側部材は、上記外内部材連結部に一端側が接続され、クリップの幅方向両側の縁部位置に沿った1対の棒状部材と、上記軸筒の内周部に対応して湾曲した形状に形成されて上記1対の棒状部材における他端側どうしを連結する内側部材連結部とを有し、 上記1対の棒状部材の間に、軸筒の内部の空間が形成されるように構成されていることを特徴とする筆記具のクリップ装置。
【請求項3】
請求項1から請求項2のうち何れか1項の筆記具のクリップ装置であって、
上記クリップ外側部材または外内部材連結部は、クリップ外側部材からクリップ内側部材側に向けて幅方向寸法が小さく設定された部分を有することを特徴とする筆記具のクリップ装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のうち何れか1項の筆記具のクリップ装置であって、
上記クリップが軸筒の頭部側から軸筒に差し込まれ得るように構成されていることを特徴とする筆記具のクリップ装置。
【請求項5】
請求項4の筆記具のクリップ装置であって、
さらに、上記軸筒における上記クリップよりも頭部側に設けられ、クリップが抜け出すのを阻止するクリップ固定部材が設けられていることを特徴とする筆記具のクリップ装置。
【請求項6】
請求項4の筆記具のクリップ装置であって、
上記クリップと軸筒との接触部に、クリップが抜け出すのを阻止する係止部が設けられていることを特徴とする筆記具のクリップ装置。
【請求項7】
請求項1から請求項6のうち何れか1項の筆記具のクリップ装置であって、
上記クリップ外側部材における先端部付近の内面側に凸部が形成されるとともに、軸筒の表面側における上記凸部に対応する位置に凹部または孔が形成されていることを特徴とする筆記具のクリップ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軸筒に対してクリップを引き出しおよび引き込み可能な筆記具のクリップ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
筆記具の使用時に軸筒に没入して筆記具の使用の邪魔にならないようにしたり、軸筒から突出して衣服のポケット等に掛け止めることができるようにした筆記具のクリップが知られている。具体的には、例えば基部が後軸内に後軸径方向に移動可能に導入されて出没可能となったクリップと、このクリップに没入方向のバネ力を付与する屈曲した板状のバネとを設け、カム作用によってクリップを突出させたり、バネ力によってクリップを没入させたりする技術が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】実公平5-3356号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のように屈曲した板状のバネやカムによってクリップを没入、突出させる構成では、バネやカムの設置スペースが必要となり、筆記具の全長が長くなったり太くなったりしがちである。
【0005】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであり、簡潔な構成でクリップを引き込み、引き出し可能にすることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、
本発明は、
筆記具のクリップ装置であって、
軸筒と、
上記軸筒の外周部側に配置されるクリップ外側部材、上記軸筒の内周部側に配置されるクリップ内側部材、および上記クリップ外側部材とクリップ内側部材とを連結する外内部材連結部を有するクリップと、
上記軸筒の内周部と上記クリップ内側部材との間に設けられる塊状の弾性部材と、
を備えたことを特徴とする。
【0007】
これにより、塊状などの弾性体の付勢力によってクリップが引き込まれるので、簡潔な構成でクリップを引き込み、引き出し可能にできる。
【発明の効果】
【0008】
本発明では、簡潔な構成でクリップを引き込み、引き出し可能にすることが容易にできる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】筆記具の頭部側付近の構成を示す部分断面分解斜視図である。
図2】クリップの引き込み状態を示す縦断面側面図である。
図3】クリップの突出状体を示す縦断面側面図である。
図4図2のIV-IV線断面図である。
図5図2のV-V線断面図である。
図6図2のVI-VI線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0011】
筆記具100は、頭部側(筆記先端部と反対側)の構造の例を図1図6に示すように、軸筒110と、クリップ120と、弾性部材130と、頭冠140とを備えている。なお、筆記具100は、さらに軸筒110の内部に収容される筆記体等を備えているが、便宜上説明を省略する。
【0012】
上記軸筒110は、四角柱状の軸筒張出部112を有し、上記軸筒張出部112の筆記具頭部側にはクリップ120が嵌まり込む切欠部113が形成されている。また、軸筒張出部112の所定の位置には、後述するクリップ120の凸部126が嵌まり込むクリップ凸部受孔114が形成されている。軸筒110の頭部側の頂部には、頭冠140が嵌合する軸筒頂部115が設けられている。上記軸筒頂部115は、横断面形状において円周の一部が除去された形状を有し、除去された部分の上端面は、軸筒本体部111の筆記具先端側に延びてクリップ受段部116が形成されている。
【0013】
クリップ120は、上記軸筒110の外周部側に配置されるクリップ外側部材121と、内周部側に配置されるクリップ内側部材122と、上記クリップ外側部材121とクリップ内側部材122とを連結する外内部材連結部123とを有している。上記クリップ内側部材122は、詳しくは、クリップの幅方向両側の縁部位置に沿った1対の棒状部材122aによって構成されている。各棒状部材122aの一端側は、外内部材連結部123に接続されるとともに、他端側どうしは、内側部材連結部124によって連結されている(図4図5)。また、上記クリップ外側部材121または外内部材連結部123は、クリップ外側部材121からクリップ内側部材122側に向けて幅方向寸法が小さく設定された凹部125が形成されている(図6)。さらに、クリップ外側部材121における先端部付近の内面側には凸部126が形成され、軸筒110の表面側における上記凸部126に対応する位置に前記クリップ凸部受孔114が形成されていることにより、衣服のポケット等を挟み込んだときに筆記具100が固定されやすいようになっている。なお、上記のようなクリップ凸部受孔114に代えて凹部が形成されたりしてもよいし、必ずしも軸筒110のクリップ凸部受孔114やクリップ120の凸部126は設けられなくてもよい。
【0014】
上記クリップ120は、軸筒110の頭部側から差し込まれ、外内部材連結部123が軸筒110の切欠部113に嵌まり込んだ状態で、軸筒頂部115に頭冠140(クリップ固定部材)が嵌装されている(図2)。これにより、クリップ外側部材121が軸筒110に密着した状態と離間、引き出した状態とに移動可能な状態で、クリップ120が軸筒110の頭部側に抜け出さないようになっている(図2図3)。
【0015】
上記軸筒110の内周部と上記クリップ120のクリップ内側部材122との間には、塊状の弾性部材130が設けられ、クリップ120がクリップ外側部材121が軸筒110に密着する方向に付勢されるようになっている(図5)。上記塊状の弾性部材130は、圧縮応力による圧縮ひずみが生じて付勢力を生じる弾性体を用いて構成される弾性部材、すなわち、コイルばねや板ばねなどのようにねじりや曲げなどの構造的変形によらない伸縮可能な部材である。そのような部材は、典型的には中実な素材から成ると考えられるが、例えば微細な気泡等はあっても全体として中実な素材と考えられる素材は含まれる。弾性部材130の外形形状は、直方体状やシート状、棒状部材122aの形状に対応した細長い線材状などでもよいし、球体などが集合したものや、ゲル状のように変形可能な部材でもよい。上記のような弾性部材130としては、より具体的には、スポンジ状のものであればウレタン、EPDM(エチレンプロピレンジエンゴム)、シリコンから成るものなどが例示でき、ゴムシートであれば、ウレタン、シリコン、NBR(ニトリルゴム)、フッ素ゴムから成るものなどが例示できる。その他、エラストマーで形成されたシートやフェルトなども適用することができる。
【0016】
上記のように、クリップ120が軸筒110に対して引き込まれた状態と引き出した状態とに移動可能にされていることにより、例えば筆記時や保管時は邪魔にならず、衣服のポケットを挟み込むときなど、必要なときに引き出してクリップとして機能させることができる。しかも、クリップ120が引き込まれる付勢力は、上記のように塊状の弾性部材130によって生じさせることにより、簡潔、コンパクトな構成でクリップを引き込み、必要なときに引き出し可能にすることが容易にでき、筆記具100の長さや太さを低減することなどが容易にできる。しかも、上記のような弾性部材130は、軸筒110とクリップ120のクリップ内側部材122との間に挟み込むだけでよいので、組み立てを容易にすることもできる。
【0017】
(その他の事項)
上記の例では、クリップ内側部材122が1対の棒状部材122aによって構成されることにより、軸筒110の内部の空間(内径)を確保したり外径を小さく押さえたりすることが容易にできるが、これに限らず、内部空間の確保等が可能な範囲で、クリップ内側部材122を板状に形成するなどしてもよい。
【0018】
また、弾性部材130も上記棒状部材122aに対応するような細長い形状にすることによって一層コンパクト化を図ることなどもできる。また、弾性部材130の幅方向中央部の肉厚を側部よりも相対的に薄くするなどしてもよい。
【0019】
また、上記のようにクリップ内側部材122が1対の棒状部材122aによって構成される場合、棒状部材122aの端部どうしを内側部材連結部124によって連結することにより、強度や剛性を確保することが容易にできるが、十分な強度や剛性が得られる場合には必ずしも内側部材連結部124は設けなくてもよい。
【0020】
また、上記のように外内部材連結部123等に、凹部125が形成されることによって、クリップ120を指先や爪などで摘まんだり挟んだりして引き出すことなどが比較的容易にできるが、これに限らず、クリップ外側部材121の軸筒110側の縁部に面取りを形成したり、クリップ外側部材121や外内部材連結部123の側方に幅方向の凸部を設けたり、軸筒張出部112の側部に凹部などを設けて、クリップ120を摘まんだりすることが容易になるようにしてもよい。
【0021】
また、上記クリップ120は、軸筒110の頭部側から差し込まれる場合、抜け出さないようにするためには、頭冠140に代えて、または頭冠140とともに、クリップ120と軸筒110との接触部に、凸部と凹部など、クリップが抜け出すのを阻止する係止部が設けられてもよい。
【0022】
また、頭冠140は、軸筒頂部115に嵌装されるのに限らず、螺合されるなどしてもよい。
【符号の説明】
【0023】
100 筆記具
110 軸筒
111 軸筒本体部
112 軸筒張出部
113 切欠部
114 クリップ凸部受孔
115 軸筒頂部
116 クリップ受段部
120 クリップ
121 クリップ外側部材
122 クリップ内側部材
122a 棒状部材
123 外内部材連結部
124 内側部材連結部
125 凹部
126 凸部
130 弾性部材
140 頭冠
図1
図2
図3
図4
図5
図6