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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-20
(45)【発行日】2025-01-28
(54)【発明の名称】単層ポリマーフィルム及び電子機器
(51)【国際特許分類】
   C08J 5/18 20060101AFI20250121BHJP
   C08L 79/08 20060101ALI20250121BHJP
   C08G 73/10 20060101ALI20250121BHJP
   H05K 3/28 20060101ALI20250121BHJP
【FI】
C08J5/18 CFG
C08L79/08 A
C08G73/10
H05K3/28 C
H05K3/28 F
【請求項の数】 3
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021055073
(22)【出願日】2021-03-29
(65)【公開番号】P2021155739
(43)【公開日】2021-10-07
【審査請求日】2024-03-07
(31)【優先権主張番号】63/000,759
(32)【優先日】2020-03-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】519372065
【氏名又は名称】デュポン エレクトロニクス インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヒュスヌ アルプ アリデデオール
(72)【発明者】
【氏名】トーマス エドワード カーニー
(72)【発明者】
【氏名】ジョセフ ケイシー ジョンソン
(72)【発明者】
【氏名】リン ジュー
(72)【発明者】
【氏名】マイケル トーマス クワスニー
(72)【発明者】
【氏名】ライラ マクラフリン
(72)【発明者】
【氏名】グジェゴジ スラヴィンスキ
【審査官】大村 博一
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-042381(JP,A)
【文献】特開2011-128598(JP,A)
【文献】特開2010-149334(JP,A)
【文献】特開2020-029094(JP,A)
【文献】特開2014-141575(JP,A)
【文献】特開2016-047863(JP,A)
【文献】特表2013-501850(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0030845(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 5/00-5/02;5/12-5/22
B29C 41/00-41/52
C08G 73/00-73/26
C08L 1/00-101/14
H05K 3/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
20~100%の範囲のゲル分率及び1.74以下の屈折率を有する、60~99重量%の架橋ポリイミドと、
1~40重量%の着色剤と、
を含む単層ポリマーフィルムであって、
前記単層ポリマーフィルムの表面が、テクスチャー加工されており、6μm以上の最大粗さ(Spv)、30以下のL*色、及び15以下の60°光沢を有する、単層ポリマーフィルム。
【請求項2】
艶消し剤を更に含む、請求項1に記載の単層ポリマーフィルム。
【請求項3】
請求項1に記載の単層ポリマーフィルムを含むプリント回路基板のカバーレイ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の分野は、単層ポリマーフィルム、カバーレイ及び電子機器、並びにこれを形成するためのプロセスである。
【背景技術】
【0002】
電子機器用途のためのポリイミドフィルムが、無光沢の外観であり、特定色を有し、取り扱い及び回路処理に対する耐久性を有し、且つカバーレイとして使用する場合に、カバーレイによって保護された電子部品の不必要な目視検査に対する保護を提供することが工業的にますます求められている。単層無光沢フィルムは、工業的に望ましい濃厚な飽和色を提供する30未満のL*色を有さない。典型的に、艶消し剤の量が増加すると、フィルムの色は抑制される。艶消し剤によって表面の粗さが増加することの影響は、より明るく、且つより飽和していないように見えるような顔料色の希釈である。これは、正反射率の散乱の増加(白色光)による、(顔料色が知覚されるところでの)拡散反射率の希釈化に起因する。表面が粗いほど、光沢が低く、且つ正反射率の散乱が高い。従って、光沢が減少すると、L*(明度)は典型的に増加する。より多くの着色剤を添加することは、L*色を減少させない。従って、低い光沢及び低いL*色を同時に達成することは困難である。これらの課題を克服するために、特許文献1、特許文献2、及び特許文献3は、艶消し剤とカーボンブラックとサブミクロン粒子とのブレンドが配合された薄いポリイミド層がより厚いベースポリイミド層に接着された多層構造を使用しており、結果として多層フィルムは低いL*色と低い光沢の両方の望ましい組み合わせを実現することができる。
【0003】
回路の作製における多層カバーレイの成功は、軽石、デスミア、及びプラズマプロセスの間のエッチングの厚さに依存する。多層フィルムの外層が非常に薄いと、これらのプロセス中にフィルムの外層がエッチングされてベース層が露出し、結果として光沢と色が大幅に変化し得るリスクが存在する。従って、外層は、これらのプロセス中に除去されるのに耐える十分な厚さでなければならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】米国特許第9,469,781号明細書
【文献】米国特許第9,481,150号明細書
【文献】米国特許第9,481,809号明細書
【非特許文献】
【0005】
【文献】Y.Terui and S.Ando,J Polym Sci:Part B Polymer Physics,42,2354-2366(2004)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
電子機器とその電子部品がますます薄くコンパクトになっていくのに伴い、低い光沢と低い色の両方を備えたカバーレイを形成するという課題は更に困難になる。いくつかの場合では、より薄いカバーレイの必要性は、フィルムの厚さと同等の粒径を有することができる艶消し剤の使用を制限し、更に多層カバーレイ内の層の全体の厚さを制限する。容認できる電気特性(例えば、絶縁耐力)、機械特性、並びに取り扱い及び回路処理に対する耐久性を有しながら、外観が無光沢であり、濃厚な飽和色を有し、且つカバーレイとして使用した場合に視覚的保護を提供するために十分な光学密度も提供する単層ポリマーフィルムが要求されている。このフィルムは、後処理エッチングプロセスに対しても、より耐性を有する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の態様では、単層ポリマーフィルムは、20~100%の範囲のゲル分率及び1.74以下の屈折率を有する、60~99重量%の架橋ポリイミド、及び1~40重量%の着色剤を含む。単層ポリマーフィルムの表面は、テクスチャード加工されており、6μm以上の最大粗さ(Spv)、30以下のL*色、及び15以下の60°光沢を有する。
【0008】
第2の態様では、プリント回路基板のカバーレイは、第1の態様の単層ポリマーフィルムを含む。
【0009】
第3の態様では、二無水物とジアミンを含む架橋ポリイミドフィルムを含む単層ポリマーフィルムを形成するためのプロセスが開示されている。二無水物、ジアミン、又は二無水物とジアミンの両方は、脂環式モノマー、脂肪族モノマー、又は脂環式モノマーと脂肪族モノマーの両方を含む。ポリマーフィルムは、30以下のL*色及び15以下の60°光沢を有する。架橋ポリイミドフィルムは、
(a)溶媒の存在下で二無水物とジアミンを重合させてポリアミック酸溶液を得る工程、
(b)ポリアミック酸溶液をイミド化して十分にイミド化された溶液を形成する工程、
(c)架橋剤及び着色剤を十分にイミド化された溶液に添加する工程、
(d)6μm以上の最大粗さ(Spv)を有するテクスチャード加工された表面を有する除去可能な基材に十分にイミド化された溶液をキャストして、フィルムを形成する工程、
(e)フィルムを乾燥させながら、ポリイミドを架橋する工程、及び
(f)テクスチャード加工された基材から単層ポリマーフィルムを除去する工程によって形成される。
【0010】
第4の態様では、二無水物とジアミンを含む架橋ポリイミドフィルムを含む単層ポリマーフィルムを形成するためのプロセスが開示されている。二無水物、ジアミン又は二無水物及びジアミンの両方は、脂環式モノマー、脂肪族モノマー、又は脂環式モノマーと脂肪族モノマーの両方を含む。ポリマーフィルムは、30以下のL*色及び15以下の60°光沢を有する。架橋ポリイミドフィルムは、
(a)第1の溶媒の存在下で二無水物とジアミンを重合してポリアミック酸溶液を得る工程、
(b)ポリアミック酸溶液をイミド化して第1の十分にイミド化された溶液を形成する工程、
(c)逆溶剤で第1の十分にイミド化された溶液を析出させる工程、
(d)第1の十分にイミド化された溶液を濾過し乾燥させて固体ポリイミド樹脂を得る工程、
(e)第2の溶媒に固体ポリイミド樹脂を溶解し、架橋剤及び低導電率カーボンブラックを添加して第2の十分にイミド化された溶液を形成する工程、
(f)6μm以上の最大粗さ(Spv)を有するテクスチャード加工された表面を有する除去可能な基材に第2の十分にイミド化された溶液をキャストして、フィルムを形成する工程、
(g)フィルムを乾燥させながら、ポリイミドを架橋する工程、及び
(h)テクスチャード加工された基材から単層ポリマーフィルムを除去する工程によって形成される。
【0011】
前述の一般的な説明及び以下の詳細な説明は、例示的且つ説明的であるにすぎず、添付の特許請求の範囲において規定されるような、本発明を限定しない。
【発明を実施するための形態】
【0012】
第1の態様では、単層ポリマーフィルムは、20~100%の範囲のゲル分率及び1.74以下の屈折率を有する60~99重量%の架橋ポリイミド、及び1~40重量%の着色剤を含む。単層ポリマーフィルムの表面は、テクスチャード加工されており、6μm以上の最大粗さ(Spv)、30以下のL*色、及び15以下の60°光沢を有する。
【0013】
第1の態様の一実施形態では、単層ポリマーフィルムは、更に艶消し剤を含む。
【0014】
第1の態様の別の実施形態では、架橋ポリイミドは、芳香族二無水物、脂肪族二無水物、及びこれらの混合物からなる群から選択される二無水物を含む。特定の実施形態では、二無水物は、4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物(6FDA)、シクロブタン二無水物(CBDA)、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(BTDA)、ビスフェノールA二無水物(BPADA)、4,4’-オキシジフタル酸無水物(ODPA)、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)スルホキシド二無水物(DSDA)及びヘキサヒドロ-4,8-エタノ-1H,3H-ベンゾ[1,2-c:4,5-c’]ジフラン-1,3,5,7-テトロン(BODA)並びにこれらの混合物からなる群から選択される。
【0015】
第1の態様の更に別の実施形態では、架橋ポリイミドは、芳香族ジアミン、脂肪族ジアミン、及びこれらの混合物からなる群から選択されるジアミンを含む。特定の実施形態では、ジアミンは、1,6-ヘキサメチレンジアミン(HMD)、トランス-1,4-ジアミノシクロヘキサン(CHDA)、3-(4-アミノフェニル)-1,1,3-トリメチル-5-インダナミン(PIDA)、イソホロンジアミン(IPDA)、m-トリジン(MTB)、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(TFMB)、m-フェニレンジアミン(MPD)、1,3-ビス-(4-アミノフェノキシ)ベンゼン(RODA)、2,2-ビス-(4-[4-アミノフェノキシノキシ]フェニル)プロパン(BAPP)、及び3,4’-ジアミノジフェニルエーテル(3,4-ODA)並びにこれらの混合物からなる群から選択される。
【0016】
第1の態様の更に別の実施形態では、単層ポリマーフィルムは、2~125μmの範囲の厚さを有する。
【0017】
第1の態様の更に別の実施形態では、架橋ポリイミドは、1.69以下の屈折率を有する。
【0018】
第1の態様の更なる実施形態では、着色剤は、低導電率カーボンブラックを含む。
【0019】
第2の態様では、プリント回路基板のカバーレイは、第1の態様の単層ポリマーフィルムを含む。
【0020】
第3の態様では、二無水物とジアミンを含む架橋ポリイミドフィルムを含む単層ポリマーフィルムを形成するためのプロセスが開示されている。二無水物、ジアミン、又は二無水物とジアミンの両方は、脂環式モノマー、脂肪族モノマー、又は脂環式モノマーと脂肪族モノマーの両方を含む。ポリマーフィルムは、30以下のL*色及び15以下の60°光沢を有する。架橋ポリイミドフィルムは、
(a)溶媒の存在下で二無水物とジアミンを重合させてポリアミック溶液を得る工程、
(b)ポリアミック酸溶液をイミド化して十分にイミド化された溶液を形成する工程、
(c)架橋剤及び着色剤を十分にイミド化された溶液に添加する工程、
(d)6μm以上の最大粗さ(Spv)を有するテクスチャード加工された表面を有する除去可能な基材に十分にイミド化された溶液をキャストして、フィルムを形成する工程、
(e)フィルムを乾燥させながら、ポリイミドを架橋する工程、及び
(f)テクスチャード加工された基材から単層ポリマーフィルムを除去する工程によって形成される。
【0021】
第4の態様では、二無水物とジアミンを含む架橋ポリイミドフィルムを含む単層ポリマーフィルムを形成するためのプロセスが開示されている。二無水物、ジアミン、又は二無水物とジアミンの両方は、脂環式モノマー、脂肪族モノマー、又は脂環式モノマーと脂肪族モノマーの両方を含む。ポリマーフィルムは、30以下のL*色及び15以下の60°光沢を有する。架橋ポリイミドフィルムは、
(a)第1の溶媒の存在下で二無水物とジアミンを重合してポリアミック酸溶液を得る工程、
(b)ポリアミック酸溶液をイミド化して第1の十分にイミド化された溶液を形成する工程、
(c)逆溶剤で第1の十分にイミド化された溶液を析出させる工程、
(d)第1の十分にイミド化された溶液を濾過し乾燥させて固体ポリイミド樹脂を得る工程、
(e)第2の溶媒に固体ポリイミド樹脂を溶解し、架橋剤及び低導電率カーボンブラックを添加して第2の十分にイミド化された溶液を形成する工程、
(f)6μm以上の最大粗さ(Spv)を有するテクスチャード加工された表面を有する除去可能な基材に第2の十分にイミド化された溶液をキャストして、フィルムを形成する工程、
(g)フィルムを乾燥させながら、ポリイミドを架橋する工程、及び
(h)テクスチャード加工された基材から単層ポリマーフィルムを除去する工程によって形成される。
【0022】
第4の態様のプロセスの一実施形態では、(e)の後及び(f)の前に、第2の十分にイミド化された溶液を濾過して溶液の不溶性成分を除去する。
【0023】
第4の態様のプロセスの別の実施形態では、第1及び第2の溶媒は、同じである又は異なる。
【0024】
多くの態様及び実施形態が上述されてきたが、これらは、例示的であるにすぎず、限定的ではない。本明細書を読んだ後に、当業者は、他の態様及び実施形態が本発明の範囲から逸脱することなく可能であることを十分理解する。本発明の他の特徴及び利点は、以下の詳細な説明及び特許請求の範囲から明らかであろう。
【0025】
一実施形態では、架橋ポリイミドを有する単層ポリマーフィルムは、従来のカバーレイ材料を使用したフィルムよりもエッチングに耐性がある非常に薄いカバーレイの形成を可能にする。フィルム形成後に架橋されている可溶性ポリイミドを使用すると、これらのフィルムに必要とされる低いL*色及び低い光沢特性を維持する改善された耐薬品性を有する単層ポリマーフィルムが得られる。
【0026】
文脈に応じて、本明細書で使用される場合、「ジアミン」は、(i)未反応の形態(即ちジアミンモノマー)、(ii)部分的に反応した形態(即ちジアミンモノマーに由来するか起因するオリゴマー又は他のポリマー前駆体の一部分又は複数部分)、或いは(iii)完全に反応した形態(ジアミンモノマーに由来するか起因するポリマーの一部分又は複数部分)を意味することを意図する。ジアミンは、本発明の実施において選択される具体的な実施形態に応じて、1つ以上の部位で官能化されることができる。
【0027】
実際、用語「ジアミン」は、ジアミン成分中のアミン部位の数に関して制限する(又は文字通り解釈される)ことを意図しない。例えば、上の(ii)及び(iii)は、2つ、1つ、又は0のアミン部位を有し得るポリマー系材料を含む。或いは、ジアミンが更なるアミン部位で官能化されることができる(二無水物と反応してポリマー鎖を成長させるモノマー末端のアミン部位に加えて)。このような更なるアミン部位は、ポリマーを架橋するために又は他の官能基をポリマーに提供するために用いることができよう。
【0028】
同様に、本明細書で使用される場合、用語「二無水物」は、ジアミンと反応する(補完的な)成分を意味することを意図し、これは、組み合わせで反応して中間体(次いで、これはポリマーへと硬化し得る)を形成することができる。文脈に応じて、本明細書で使用される場合、「無水物」は、無水物部位自体だけでなく、以下のような無水物部位の前駆体も意味する場合がある:(i)一対のカルボン酸基(これは脱水又は同様のタイプの反応によって無水物へと変換可能である)、或いは(ii)無水物官能基に変換することができる酸ハロゲン化物(例えば塩化物)エステル官能基(又は現在知られているか、将来開発される任意の他の官能基)。
【0029】
文脈に応じて、「二無水物」は以下を意味し得る:(i)未反応の形態(即ち無水物官能基が真の無水物形態であるか前駆体無水物形態であるかに関わらず、上の段落で説明した二無水物モノマー)、(ii)部分的に反応した形態(即ち二無水物モノマーから反応したかこれに起因するオリゴマー又は他の部分的に反応した又は前駆体のポリマー組成物の一部分又は複数部分)、又は(iii)完全に反応した形態(二無水物モノマー由来であるかこれに起因するポリマーの一部分又は複数部分)。
【0030】
二無水物は、本発明の実施において選択される特定の実施形態に応じて、1つ以上の部位で官能化することができる。実際、用語「二無水物」は、二無水物成分中の無水物部位の数に関して制限する(又は文字通り解釈される)ことを意図しない。例えば、(i)、(ii)、及び(iii)(上の段落中)は、無水物が前駆体状態であるか反応した状態であるかに応じて、2つ、1つ、又は0の無水物部位を有し得る有機物質を含む。或いは、二無水物成分が更なる無水物型の部位で官能化されることができる(ジアミンと反応してポリマーを与える無水物部位に加えて)。このような更なる無水物部位は、ポリマーを架橋するために、或いはポリマーに他の官能基を付与するために使用できるであろう。
【0031】
単層ポリマーフィルムを調製するために、いくつかのポリイミド製造プロセスのいずれかを使用することができる。本発明の実施において有用な全ての可能な製造プロセスを議論又は説明することは不可能であろう。本発明のモノマー系は、様々な製造プロセスにおいて上述した有利な特性を付与できることが理解されるべきである。本発明の組成物は、本明細書に記載の通りに製造することができ、任意の従来の又は従来のものではない製造技術を使用して、当業者の多くの(おそらく無数の)方法のいずれかで容易に製造することができる。
【0032】
本明細書に記載のものと同様の又は均等な方法及び材料を本発明の実施又は試験において使用することができるが、適切な方法及び材料は、本明細書に記載される。
【0033】
量、濃度又は他の値又はパラメーターが、範囲、好ましい範囲又は上方の好ましい値及び下方の好ましい値の一覧のいずれかとして示される場合、これは、範囲が個別に開示されているかどうかに関わらず、任意の上方の範囲限界又は好ましい値と、任意の下方の範囲限界又は好ましい値との任意の対から形成される全ての範囲を具体的に開示していると理解されるべきである。ある範囲の数値が本明細書において列挙される場合、特に明記しない限り、その範囲は、その終点並びにその範囲内の全ての整数及び分数を含むことを意図する。本発明の範囲は、範囲を明確にする場合に列挙された具体的な値に限定されることを意図しない。
【0034】
特定のポリマーの記載において、それらを作製するために使用されるモノマー又はそれらを作製するために使用されるモノマーの量により、本出願人らがポリマーに言及する場合があることが理解されるべきである。このような記載は、最終ポリマーを記述するために用いられる特定の命名法を含まなくてもよいか又はプロダクトバイプロセス専門用語を含まなくてもよいが、モノマー及び量へのいかなるこのような言及も、ポリマーがそれらのモノマー又はその量のモノマーから作製されること並びに対応するポリマー及びこれらの組成を意味すると解釈されるべきである。
【0035】
本明細書における材料、方法及び実施例は、例示的であるにすぎず、具体的に述べられる場合を除き、限定的であることを意図しない。本明細書で使用される場合、用語「含む(comprises)」、「含む(comprising)」、「含む(includes)」、「含む(including)」、「有する(has)」、「有する(having)」又はこれらのいかなる他の変形も、非排他的な含有を網羅することを意図する。例えば、要素の一覧を含む方法、プロセス、物品又は装置は、それらの要素のみに必ずしも限定されず、明確に列挙されていないか、又はこのような方法、プロセス、物品又は装置に固有の他の要素を含み得る。更に、明確にそれとは反対を述べられない限り、「又は」は、包括的な又はを意味し、排他的な又はを意味しない。例えば、条件A又はBは、下記のいずれか1つによって満たされる:Aが真であり(又は存在し)且つBが偽である(又は存在しない)、Aが偽であり(又は存在せず)且つBが真である(又は存在する)、並びにA及びBが両方とも真である(又は存在する)。
【0036】
又、「1つの(a)」又は「1つの(an)」の使用は、本発明の要素及び成分を記載するために用いられる。これは、便宜上及び本発明の一般的な意味を示すために行われるにすぎない。この記載は、1つ又は少なくとも1つを含むように読まれるべきであり、単数形は、そうではないことを意味していることが明らかでない限り、複数形も含む。
【0037】
有機溶媒
本発明のポリマーの合成に有用な有機溶媒は、好ましくは、ポリマー前駆体材料を溶解することができる。このような溶媒は、225℃未満などの比較的低い沸点を有する必要もあり、そのためポリマーは適度の(即ち、より便利でよりコストがかからない)温度で乾燥させることができる。210、205、200、195、190又は180℃未満の沸点が好ましい。
【0038】
本発明の溶媒は、単独で又は他の溶媒(即ち共溶媒)と組み合わせて使用され得る。有用な有機溶媒としては、N-メチルピロリドン(NMP)、ジメチルアセトアミド(DMAc)、N,N’-ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、テトラメチル尿素(TMU)、ジエチレングリコールジエチルエーテル、1,2-ジメトキシエタン(モノグライム)、ジエチレングリコールジメチルエーテル(ジグリム)、1,2-ビス-(2-メトキシエトキシ)エタン(トリグリム)、ビス[2-(2-メトキシエトキシ)エチル)]エーテル(テトラグリム)、γ-ブチロラクトン、及びビス-(2-メトキシエチル)エーテル、テトラヒドロフランが挙げられる。一実施形態では、好ましい溶媒としては、N-メチルピロリドン(NMP)及びジメチルアセトアミド(DMAc)が挙げられる。
【0039】
共溶媒は、一般的に、全溶媒の約5~50重量パーセントで使用され得、有用なこのような共溶媒としては、キシレン、トルエン、ベンゼン、「セロソルブ」(グリコールエチルエーテル)、及び「セロソルブアセテート」(ヒドロキシエチルアセテートグリコールモノアセテート)が挙げられる。
【0040】
ジアミン
一実施形態では、ポリイミドを形成するための適切なジアミンとしては、1,2-ジアミノエタン、1,6-ジアミノヘキサン(HMD)、1,4-ジアミノブタン、1,7-ジアミノヘプタン、1,8-ジアミノオクタン、1,9-ジアミノノナン、1,10-ジアミノデカン(DMD)、1,11-ジアミノウンデカン、1,12-ジアミノドデカン(DDD)、1,16-ヘキサデカメチレンジアミン、1,3-ビス(3-アミノプロピル)-テトラメチルジシロキサン、トランス-1,4-ジアミノシクロヘキサン(CHDA)、イソホロンジアミン(IPDA)、ビシクロ[2.2.2]オクタン-1,4-ジアミン及びこれらの組み合わせなどの脂肪族ジアミンを挙げることができる。本発明の実施に適した他の脂肪族ジアミンとしては、6~12個の炭素原子を有するものが挙げられ、或いは現像性と柔軟性の両方が維持される限り長鎖ジアミンと短鎖ジアミンの組み合わせが挙げられる。長鎖脂肪族ジアミンは柔軟性を高める。
【0041】
一実施形態では、ポリイミドを形成するのに適したジアミンとしては、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(TFMB)、トリフルオロメチル-2,4-ジアミノベンゼン、トリフルオロメチル-3,5-ジアミノベンゼン、2,2’-ビス-(4-アミノフェニル)-ヘキサフルオロプロパン、4,4’-ジアミノ-2,2’-トリフルオロメチルジフェニルオキシド、3,3’-ジアミノ-5,5’-トリフルオロメチルジフェニルオキシド、9.9’-ビス(4-アミノフェニル)フルオレン、4,4’-トリフルオロメチル-2,2’-ジアミノビフェニル、4,4’-オキシ-ビス-[2-トリフルオロメチル)ベンゼンアミン](1,2,4-OBABTF)、4,4’-オキシ-ビス-[3-トリフルオロメチル)ベンゼンアミン]、4,4’-チオ-ビス-[(2-トリフルオロメチル)ベンゼン-アミン]、4,4’-チオビス[(3-トリフルオロメチル)ベンゼンアミン]、4,4’-スルホキシル-ビス-[(2-トリフルオロメチル)ベンゼンアミン、4,4’-スルホキシル-ビス-[(3-トリフルオロメチル)ベンゼンアミン]、4,4’-ケト-ビス-[(2-トリフルオロメチル)ベンゼンアミン]、1,1-ビス[4’-(4”-アミノ-2”-トリフルオロメチルフェノキシ)フェニル]シクロペンタン、1,1-ビス[4’-(4”-アミノ-2”-トリフルオロメチルフェノキシ)フェニル]シクロヘキサン、2-トリフルオロメチル-4,4’-ジアミノジフェニルエーテル;1,4-(2’-トリフルオロメチル-4’,4”-ジアミノジフェノキシ)-ベンゼン、1,4-ビス(4’-アミノフェノキシ)-2-[(3’,5’-ジトリフルオロメチル)フェニル]ベンゼン、1,4-ビス[2’-シアノ-3’(“4-アミノフェノキシ)フェノキシ]-2-[(3’,5’-ジトリフルオロ-メチル)フェニル]ベンゼン(6FC-ジアミン)、3,5-ジアミノ-4-メチル-2’,3’,5’,6’-テトラフルオロ-4’-トリ-フルオロメチルジフェニルオキシド、2,2-ビス[4’(4”-アミノフェノキシ)フェニル]フタレイン-3’,5’-ビス(トリフルオロメチル)アニリド(6FADAP)、及び3,3’,5,5’-テトラフルオロ-4,4’-ジアミノ-ジフェニルメタン(TFDAM)などのフッ素化芳香族ジアミンを更に挙げることができる。特定の実施形態では、フッ素化ジアミンは、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(TFMB)である。一実施形態では、フッ素化芳香族ジアミンは、ポリイミドの全ジアミン成分に基づいて、40~95モルパーセントの範囲で存在することができる。より具体的な実施形態では、フッ素化芳香族ジアミンは、ポリイミドの全ジアミン成分に基づいて、50~75モルパーセントの範囲で存在することができる。
【0042】
一実施形態では、p-フェニレンジアミン(PPD)、m-トリジン(MTB)、m-フェニレンジアミン(MPD)、3-(4-アミノフェニル)-1,1,3-トリメチル-5-インダナミン(PIDA)、2,5-ジメチル-1,4-ジアミノベンゼン、2,5-ジメチル-1,4-フェニレンジアミン(DPX)、2,2-ビス-(4-アミノフェニル)プロパン、1,4-ナフタレンジアミン、1,5-ナフタレンジアミン、4,4’-ジアミノビフェニル、4,4”-ジアミノテルフェニル、4,4’-ジアミノベンズアニリド、4,4’-ジアミノフェニルベンゾエート、4,4’-ジアミノベンゾフェノン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン(MDA)、4,4’-ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン、ビス-(4-(4-アミノフェノキシ)フェニルスルホン(BAPS)、4,4’-ビス-(アミノフェノキシ)ビフェニル(BAPB)、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル(ODA)、3,4’-ジアミノジフェニルエーテル(3,4-ODA)、4,4’-ジアミノベンゾフェノン、4,4’-イソプロピリデンジアニリン、2,2’-ビス-(3-アミノフェニル)プロパン、N,N-ビス-(4-アミノフェニル)-n-ブチルアミン、N,N-ビス-(4-アミノフェニル)メチルアミン、1,5-ジアミノナフタレン、3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、m-アミノベンゾイル-p-アミノアニリド、4-アミノフェニル-3-アミノベンゾエート、N,N-ビス-(4-アミノフェニル)アニリン、2,4-ジアミノトルエン、2,5-ジアミノトルエン、2,6-ジアミノトルエン、2,4-ジアミン-5-クロロトルエン、2,4-ジアミン-6-クロロトルエン、2,4-ビス-(β-アミノ-t-ブチル)トルエン、ビス-(p-β-アミノ-t-ブチルフェニル)エーテル、p-ビス-2-(2-メチル-4-アミノペンチル)ベンゼン、m-キシリレンジアミン、及びp-キシリレンジアミンを含む、任意の数の更なるジアミンをポリイミドの形成に使用することができる。
【0043】
他の有用なジアミンとしては、1,2-ビス-(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス-(4-アミノフェノキシ)ベンゼン(RODA)、1,2-ビス-(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス-(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、1-(4-アミノフェノキシ)-3-(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4-ビス-(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4-ビス-(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、1-(4-アミノフェノキシ)-4-(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、2,2-ビス-(4-[4-アミノフェノキシ]フェニル)プロパン(BAPP)、2,2’-ビス-(4-フェノキシアニリン)イソプロピリデン、2,4,6-トリメチル-1,3-ジアミノベンゼン、及び2,4,6-トリメチル-1,3-ジアミノベンゼンが挙げられる。
【0044】
二無水物
一実施形態では、ポリイミドの形成に任意の数の適切な二無水物を使用することができる。二無水物は、それらのテトラ酸形態において(又はテトラ酸のモノ、ジ、トリ又はテトラエステルとして)或いはそれらのジエステル酸ハロゲン化物(塩化物)として使用することができる。しかしながら、いくつかの実施形態では、二無水物形態が、一般に酸又はエステルよりも反応性が高いために、好ましくあり得る。
【0045】
適切な二無水物の例としては、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)、1,2,5,6-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2-(3’,4’-ジカルボキシフェニル)5,6-ジカルボキシベンズイミダゾール二無水物、2-(3’,4’-ジカルボキシフェニル)5,6-ジカルボキシベンゾオキサゾール二無水物、2-(3’,4’-ジカルボキシフェニル)5,6-ジカルボキシベンゾチアゾール二無水物、2,2’,3,3’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(BTDA)、2,2’,3,3’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ビシクロ-[2,2,2]-オクテン-(7)-2,3,5,6-テトラカルボン酸-2,3,5,6-二無水物、4,4’-チオ-ジフタル酸無水物、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)スルホキシド二無水物(DSDA)、ビス(3,4-ジカルボキシフェニルオキサジアゾール-1,3,4)p-フェニレン二無水物、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)2,5-オキサジアゾール1,3,4-二無水物、ビス2,5-(3’,4’-ジカルボキシジフェニルエーテル)1,3,4-オキサジアゾール二無水物、4,4’-オキシジフタル酸無水物(ODPA)、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)チオエーテル二無水物、ビスフェノールA二無水物(BPADA)、ビスフェノールS二無水物、ビス-1,3-イソベンゾフランジオン、1,4-ビス(4,4’-オキシフタル酸無水物)ベンゼン、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、シクロペンタジエニルテトラカルボン酸二無水物、シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、エチレンテトラカルボン酸二無水物、ペリレン3,4,9,10-テトラカルボン酸二無水物、ピロメリット酸二無水物(PMDA)、テトラヒドロフランテトラカルボン酸二無水物、1,3-ビス-(4,4’-オキシジフタル酸無水物)ベンゼン、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,6-ジクロロナフタレン-1,4,5,8-テトラカルボン酸二無水物、2,7-ジクロロナフタレン-1,4,5,8-テトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7-テトラクロロナフタレン-1,4,5,8-テトラカルボン酸二無水物、フェナントレン-1,8,9,10-テトラカルボン酸二無水物、ピラジン-2,3,5,6-テトラカルボン酸二無水物、ベンゼン-1,2,3,4-テトラカルボン酸二無水物、及びチオフェン-2,3,4,5-テトラカルボン酸二無水物が挙げられる。
【0046】
一実施形態では、適切な二無水物としては、シクロブタン二無水物(CBDA)、シクロヘキサン二無水物、1,2,3,4-シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物(CPDA)、ヘキサヒドロ-4,8-エタノ-1H,3H-ベンゾ[1,2-c:4,5-c’]ジフラン-1,3,5,7-テトロン(BODA)、3-(カルボキシメチル)-1,2,4-シクロペンタントリカルボン酸1,4:2,3-二無水物(TCA)、及びメソ-ブタン-1,2,3,4-テトラカルボン酸二無水物などの脂環式二無水物を挙げることができる。
【0047】
一実施形態では、ポリイミドを形成するための適切な二無水物は、4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物(6FDA)及び9,9-ビス(トリフュオロメチル)-2,3,6,7-キサンテンテトラカルボン酸二無水物などのフッ素化二無水物を挙げることができる。
【0048】
架橋剤
一実施形態では、架橋剤がポリマーフィルムに使用される。ポリイミドを架橋することによって、ポリマーフィルムは、機械的特性を改善、及び耐薬品性を改善することができる。架橋剤としては、Jeffamine(登録商標)D-230、Jeffamine(登録商標)D-400、Jeffamine(登録商標)D-2000、Jeffamine(登録商標)D-2010、Jeffamine(登録商標)D-4000、Jeffamine(登録商標)ED-600、Jeffamine(登録商標)ED-900、Jeffamine(登録商標)D-2003、Jeffamine(登録商標)EDR-148、Jeffamine(登録商標)THF-100、Jeffamine(登録商標)THF-170、Jeffamine(登録商標)SD-2001、Jeffamine(登録商標)D-205及びJeffamine(登録商標)RFD-270などのポリエーテルアミン、ピペラジン、N,N’-ジイソプロピルエチレンジアミン、N,N’-ジイソプロピル-1,3-プロパンジアミン、及びN,N’-ジメチル-1,3-プロパンジアミンなどの2級アミン、並びに2,4,6-トリアミノピリミジン(TAP)、メラミン、ジエチレントリアミン、Jeffamine(登録商標)T-403、Jeffamine(登録商標)T-3000、Jeffamine(登録商標)T-5000などのトリアミンを挙げることができる。加えて又、上述したように、ポリイミドのためのジアミンモノマーとして使用されることができる多くのジアミンが、架橋剤として有用であり得る。
【0049】
着色剤
一実施形態では、ポリマーフィルムは、顔料又は染料などの約1~約40重量%の着色剤を含む。いくつかの実施形態では、ポリマーフィルムは、約1~約40重量%の顔料と染料の混合物を含む。いくつかの実施形態では、ポリマーフィルムは、以下の任意の2つの間及び任意の2つを含む:1,5,10,15,20,25,30,35及び40重量%の着色剤。
【0050】
十分にいずれの顔料(又は顔料の組合せ)も、本発明の実施において使用することができる。いくつかの実施形態では、有用な顔料は以下のものを含むがこれらに限定されない:バリウムレモンイエロー、カドミウムイエローレモン、カドミウムイエローレモン、カドミウムイエローライト、カドミウムイエローミドル、カドミウムイエローオレンジ、スカーレットレーキ、カドミウムレッド、カドミウムバーミリオン、アリザリンクリムゾン、パーマネントマゼンタ、バンダイクブラウン、ローアンバーグリーン、又はバーントアンバー。いくつかの実施形態では、有用な黒色顔料としては、酸化コバルト、Fe-Mn-Biブラック、Fe-Mn酸化物スピネルブラック、(Fe,Mn)2O3ブラック、亜クロム酸銅ブラックスピネル、ランプブラック、ボーンブラック、ボーンアッシュ、ボーンチャー、赤鉄鉱、ブラック酸化鉄、雲母酸化鉄、ブラック錯体無機色顔料(CICP)、(Ni,Mn,Co)(Cr,Fe)2O4ブラック、アニリンブラック、ペリレンブラック、アントラキノンブラック、クロムグリーンブラック赤鉄鉱、クロム鉄酸化物、ピグメントグリーン17、ピグメントブラック26、ピグメントブラック27、ピグメントブラック28、ピグメントブラウン29、ピグメントブラウン35、ピグメントブラック30、ピグメントブラック32、ピグメントブラック33又はこれらの混合物が挙げられる。
【0051】
いくつかの実施形態では、顔料は、リトポン、硫化亜鉛、硫酸バリウム、酸化コバルト、イエロー酸化鉄、オレンジ酸化鉄、レッド酸化鉄、ブラウン酸化鉄、赤鉄鉱、ブラック酸化鉄、雲母酸化鉄、クロム(III)グリーン、ウルトラマリンブルー、ウルトラマリンバイオレット、ウルトラマリンピンク、シアン化鉄ブルー、カドミウム顔料又はクロム酸鉛顔料である。
【0052】
いくつかの実施形態では、顔料は、スピネル顔料、ルチル顔料、ジルコン顔料又はバナジウム酸ビスマスイエローなどの錯体無機色顔料(CICP)である。いくつかの実施形態では、有用なスピネル顔料としては、これらに限定されないが、Zn(Fe,Cr)2O4ブラウン、CoAl2O4ブルー、Co(AlCr)2O4ブルーグリーン、Co2TiO4グリーン、CuCr2O4ブラック、又は(Ni,Mn,Co)(Cr,Fe)2O4ブラックが挙げられる。いくつかの実施形態では、有用なルチル顔料としては、これらに限定されないが、Ti-Ni-Sbイエロー、Ti-Mn-Sbブラウン、Ti-Cr-Sbバフ、ジルコン顔料、又はバナジウム酸ビスマスイエローが挙げられる。
【0053】
別の実施形態では、顔料は有機顔料である。いくつかの実施形態では、有用な有機顔料としては、これらに限定されないが、アニリンブラック(顔料ブラック1)、アントラキノンブラック、モノアゾタイプ、ジアゾタイプ、ベンズイミダゾロン、ジアリライドイエロー、モノアゾイエロー塩、ジニタニリンオレンジ、ピラゾロンオレンジ、アゾレッド、ナフトールレッド、アゾ縮合顔料、レイク顔料、銅フタロシアニンブルー、銅フタロシアニングリーン、キナクリドン、ジアリールピロロピロール、アミノアントラキノン顔料、ジオキサジン、イソインドリノン、イソインドリン、キノフタロン、フタロシアニン顔料、イダントロン顔料、ピグメントバイオレット1、ピグメントバイオレット3、ピグメントバイオレット19又はピグメントバイオレット23が挙げられる。又別の実施形態では、有機顔料は、これらに限定されないが、ペリレン、ペリレンブラック、ペリノン、又はチオインジゴなどの建染染料顔料(Vat dye pigment)である。単離された個々の顔料粒子(凝集体)の均一な分散体は、均一な色強度を生じる傾向がある。いくつかの実施形態では、顔料は製粉される。いくつかの実施形態では、顔料の平均粒径は、以下のサイズの任意の2つの間(及び場合により任意の2つ)を含む:0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、及び1.0μm。いくつかの実施形態では、単独で、或いは他の顔料又は染料と組み合わせて、発光性(蛍光性又はリン光性)或いは光沢性顔料を使用することができる。
【0054】
一実施形態では、着色剤は、低導電率カーボンブラックを含み得る。いくつかの実施形態では、着色剤は、以下の任意の2つの間及び任意の2つを含む:1,5,10,15及び20重量%の低導電率カーボンブラック。更に別の実施形態では、着色剤は、約2~約9重量%の低導電率カーボンブラックを含む。
【0055】
低導電率カーボンブラックは、チャネルタイプブラック、ファーネスブラック又はランプブラックを意味することを意図する。いくつかの実施形態では、低導電率カーボンブラックは、表面酸化カーボンブラックである。(カーボンブラックの)表面酸化の範囲を評価する1つの方法は、カーボンブラックの加熱減量を測定することである。加熱減量は、7分間にわたり950℃で焼成した時の重量損失を算出することで測定することができる。一般的に、高度に表面酸化されたカーボンブラック(高い加熱減量)は、次に、本開示の(十分に分散された)充填されたポリイミドベースポリマーにイミド化されることが可能なポリアミック酸溶液(ポリイミド前駆体)に容易に分散可能である。カーボンブラック粒子(凝集体)が互いに接触しない場合、電子トンネル効果、電子ホッピング又は他の電子流機構は一般に抑制され、低い導電率が得られると考えられる。いくつかの実施形態では、低導電率カーボンブラックは、1%以上の加熱減量を有する。いくつかの実施形態では、低導電率カーボンブラックは、5、9又は13%以上の加熱減量を有する。いくつかの実施形態では、ファーネスブラックは、加熱減量を増加させるために、表面処理されることができる。典型的には、低導電率カーボンブラックは、約6未満のpHを有する。
【0056】
単離されたカーボンブラック粒子(凝集体)の均一な分散体は、導電率を減少させるのみならず、追加的に、均一な色強度を生じる傾向がある。いくつかの実施形態では、低導電率カーボンブラックは製粉される。いくつかの実施形態では、低導電率カーボンブラックの平均粒径は、以下のサイズの任意の2つの間(及び場合により任意の2つ)を含む:0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、及び1.0μm。
【0057】
艶消し剤
一実施形態では、ポリマーフィルムは、シリカ、アルミナ、ジルコニア、窒化ホウ素、硫酸バリウム、ポリイミド粒子、リン酸カルシウム、タルク又はこれらの混合物からなる群から選択される約0.5~約20重量%の艶消し剤を含む。いくつかの実施形態では、ポリマーフィルムは、以下の任意の2つの間及び任意の2つを含む:0.5、1、5、10、15、及び20重量%の艶消し剤。一実施形態では、艶消し剤は、約2~約10μm、又は約3~約9μm、又は約5~約7μmの範囲の粒径を有する。
【0058】
サブミクロン粒子
一実施形態では、ポリマー層は、サブミクロンのヒュームド金属酸化物(発熱性金属酸化物としても知られる)又はサブミクロンのコロイド状金属酸化物或いはこれらの混合物などの少なくとも1つのサブミクロン粒子を約39重量%まで含む。いくつかの実施形態では、サブミクロンのヒュームド金属酸化物は、ヒュームドアルミナ、ヒュームドシリカ、又はこれらの混合物である。サブミクロンのヒュームド金属酸化物の添加は、驚くべきことに、ポリマーフィルムに必要とされる着色剤(サブミクロンのカーボンブラックなど)の量を低くして、約30未満のL*色を有するフィルムを作製する。サブミクロンのヒュームドアルミナ及びヒュームドシリカは、PIフィルム中では、それ自体白っぽかったり濁っていたりすることがあるため、これらを添加すると、濃厚な飽和色を生成するために必要とされる着色剤の量が実際には減少することは予測できなかった。他のサブミクロンの金属酸化物が同じ効果を有さないことも驚くべきことである。一実施形態では、ポリマー層は、約20重量%まで、又は約10重量%までの少なくとも1つのサブミクロン粒子を含む。一実施形態では、サブミクロン粒子は、約1μm未満の粒径を有する。一実施形態では、サブミクロン粒子は、約0.01~約1μm、又は約0.05~約0.5μmの範囲の粒径を有する。
【0059】
サブミクロン粒子、カーボンブラック及び艶消し剤の粒径は、LA-930(Horiba、Instruments、Inc.、Irvine CA)、Mastersizer3000(Malvern Instruments,Inc.,Westborough,MA)又はLS-230(Beckman Coulter,Inc.,Indianapolis,IN)などの粒径分析装置を使用してレーザー回折によってスラリーにて測定することができる。しかしながら、サブミクロン粒子の凝集する傾向のために、光学顕微鏡で観察することによってこれらの製粉されたスラリーの粒径を測定することがより正確である場合がある。
【0060】
単層ポリマーフィルム
本明細書で使用される場合、用語「単層ポリマーフィルム」は、ポリマーを形成するために使用されるモノマーが層の厚さを通して存在するように、層全体に本質的に均質な組成を有するポリマーフィルムの層を指し、又、艶消し剤、カーボンブラック及びサブミクロン粒子などの任意の充填剤が、層の厚さ全体に分布している。単層ポリマーフィルムは、本質的に均質であるが、ある領域にわたって、又はその厚さ全体に、及び特にフィルムの表面において、層の組成に若干の勾配を有することができる。対照的に、フィルムの領域又は厚さにわたって組成が明確に変化するポリマーフィルムは、単層ポリマーフィルムではないであろう。例えば、ある組成のコア層と、異なる組成の薄い外層(外層のポリマーを形成するために使用される異なるモノマー又は外層の異なる充填材など)とを有するポリイミドフィルムは、単層ポリマーではないであろう。
【0061】
一実施形態では、単層ポリマーフィルムはポリイミドを含み得、これは、ジアミン及び二無水物(モノマー又は他のポリイミド前駆体形態)を溶媒と組み合わせて、ポリアミック酸(ポリアミド酸とも呼ばれる)溶液を形成することによって作製できる。二無水物及びジアミンは、約0.90~1.10のモル比で組み合わせることができる。それらから形成されるポリアミック酸の分子量は、二無水物とジアミンとのモル比を調整することによって調節することができる。
【0062】
ポリイミドを含むポリマーフィルムを作製するための有用な方法は以下を含む:
(a)ジアミン成分及び二無水物成分が事前に一緒に混合され、次いで混合物が撹拌されている間に溶媒へ少しずつ添加される方法。
(b)溶媒がジアミン成分と二無水物成分との撹拌混合物に添加される方法。(上記の(a)とは反対に)
(c)ジアミンが溶媒中に排他的に溶解され、次いで反応速度を制御することを可能にするような比で二無水物がそれに添加される方法。
(d)二無水物成分が溶媒中に排他的に溶解され、次いで反応速度を制御することを可能にするような比でアミン成分がそれに添加される方法。
(e)ジアミン成分及び二無水物成分が溶媒中に別個に溶解され、次いでこれらの溶液が反応器内で混合される方法。
(f)過剰なアミン成分を含むポリアミック酸及び過剰な二無水物成分を含む別のポリアミック酸が事前に形成され、次いで特にノンランダムコポリマー又はブロックコポリマーを作製できるような方法で、反応器内で相互に反応される方法。
(g)アミン成分及び二無水物成分の特定部分が最初に反応され、次いで残留ジアミン成分が反応される、又はその逆の方法。
(h)成分が部分的に又は全体として、任意の順序で溶媒の一部又は全部のいずれかに添加され、更に任意の成分の一部又は全部も溶媒の一部又は全部の溶液として添加され得る方法。
(i)二無水物成分の1つをジアミン成分の1つと最初に反応させて第1のポリアミック酸を生じさせる方法。次いで、別の二無水物成分を別のアミン成分と反応させて、第2のポリアミック酸を得る。次いで、アミド酸をいくつかの方法のいずれかにおいて組み合わせる。
【0063】
一実施形態では、ポリアミック酸溶液は、以下のような変換化学物質と組み合わせることができる:(i)脂肪酸無水物(無水酢酸など)及び/又は芳香族酸無水物などの1つ以上の脱水剤、及び(ii)脂肪族3級アミン(トリエチルアミンなど)、芳香族3級アミン(ジメチルニリンなど)、及び複素環式3級アミン(ピリジン、α、β及びγピコリン(2-メチルピリジン、3-メチルピリジン、4-メチルピリジン)、イソキノリンなど)などの1つ以上の触媒。無水物である脱水物質は、多くの場合、ポリアミック酸中のアミド酸基の量と比べてモル過剰で使用される。使用される無水酢酸の量は、典型的にはポリアミック酸の当量(繰り返し単位)当たり約2.0から約4.0モルである。一般的に、同等量の3級アミン触媒が使用される。
【0064】
一実施形態では、変換化学物質は、イミド化触媒であり得る。イミド化触媒の使用は、イミド化温度を下げ、イミド化時間を短縮するのに役立ち得る。典型的なイミド化触媒は、イミダゾール、1-メチルイミダゾール、2-メチルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、ベンズイミダゾール、イソキノリン、又は置換ピリジン(メチルピリジン、ルチジン、及びトリアルキルアミンなど)などの塩基に及び得る。3級アミンと酸無水物との組み合わせを使用することができる。助触媒として機能し得るこれらの脱水剤としては、無水酢酸、無水プロピオン酸、無水n-酪酸、無水安息香酸などが挙げられる。これらの触媒の比及びポリアミック酸溶液中のこれらの濃度は、イミド化速度論に影響を与えるであろう。
【0065】
一実施形態では、ポリアミック酸溶液は、ポリアミック酸を部分的に又は完全にイミド化し、それをポリイミドに変換するために、任意選択的にイミド化触媒の存在下で加熱することができる。温度、時間、並びにイミド化触媒の濃度及び選択は、ポリアミック酸溶液のイミド化の程度に影響を与える場合がある。好ましくは、溶液は十分にイミド化されるべきである。一実施形態では、十分にポリイミド溶液の場合、赤外分光法によって決定される、約85%を超える、約90%を超える、又は約95%を超えるアミド酸基が、ポリイミドに変換される。
【0066】
一実施形態では、十分にポリイミド溶液は、これらに限定されないが、脂肪族スペーサー、エーテル、チオエーテル、置換アミン、アミド、エステル、及びケトン、弱い分子間相互作用、嵩高い置換基、非共鳴性、非線形性及び非対称性などの、柔軟な結合を含む、溶解度に重要な構造的特性を有するモノマー(ジアミン又は二無水物)を使用して形成される。これらの特性のいくつかを組み込んだジアミンの例は、HMD、CHDA及びIPDAなどの脂肪族ジアミン、並びにMTB TFMB、MPD、RODA、BAPP、及び3,4-ODAなどの芳香族ジアミンである。これらの特性のいくつかを組み込んだ二無水物の例は、6FDA、BPADA、ODPA、DSDA及びBODAである。
【0067】
一実施形態では、溶媒和混合物(十分にイミド化された溶液)を、架橋剤、及び顔料又は染料などの着色剤と混合し、次いでキャストして単層ポリイミドフィルムを形成することができる。一実施形態では、着色剤は、低導電率カーボンブラックであり得る。別の実施形態では、溶媒和混合物(第1の十分にイミド化された溶液)は、水又はアルコール(例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール)などの逆溶剤で析出させることができる。一実施形態では、触媒を除去するために析出物を洗浄することができる。洗浄後、析出物は十分に乾燥されてもよいが、完全に乾燥される必要はない。ポリイミド析出物は、メチルイソブチルケトン(MIBK)、メチルエチルケトン(MEK)、テトラヒドロフラン(THF)、シクロペンタノン、酢酸エチル、アセトン、DMAc、NMP、及びこれらの混合物などの第2の溶媒に再溶解して、第2の十分にイミド化された溶液(キャスト溶液)を形成することができる。第2の十分にイミド化された溶液に、架橋剤と着色剤を添加して、次いでキャストして単層のポリマーフィルムを形成することができる。一実施形態では、単層ポリマーフィルムは、約80~約99重量%の範囲の架橋ポリイミドを含む。いくつかの実施形態では、ポリマーフィルムは、以下の任意の2つの間及び任意の2つを含む:80,85,90,95及び99重量%の架橋ポリイミド。更に別の実施形態では、ポリマーフィルムは、約91~約98重量%の架橋ポリイミドを含む。
【0068】
ポリイミドの架橋は、様々な方法によって決定することができる。一実施形態では、ポリイミドのゲル分率は、架橋の前と後の乾燥されたフィルムの重量を比較し、平衡膨潤方法を使用することによって決定することができる。一実施形態では、架橋ポリイミドは、約20~約100%、又は約40~約100%、又は約50~約100%、又は約70~約100%、又は約85~約100%の範囲のゲル分率を有することができる。一実施形態では、架橋ネットワークは、レオロジー方法を用いて同定することができる。特定の歪み、周波数、及び温度での振動時間掃引測定は、架橋ネットワークの形成を確認するために使用することができる。最初に、損失弾性率(G’’)値は、貯蔵弾性率(G’)値よりも高く、ポリイミド溶液は、粘性液体のように挙動することを示している。時間の経過と共に、架橋ポリイミドネットワークの形成は、G’及びG’’曲線の交差によって証明される。「ゲル点」と呼ばれる交差(crossover)は、弾性成分が粘性成分を超えて優勢であり、ポリマーは弾性固体のように挙動し始めるときを表す。
【0069】
一実施形態では、十分にイミド化されたポリイミド溶液は、フィルムを形成するためにエンドレスベルト又は回転ドラムなどの支持体にキャスト又は塗布されることができる。或いは、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、他の形態のカプトン(登録商標)ポリイミドフィルム(例えば、Kapton(登録商標)HN又はKapton(登録商標)OLフィルム)又は他のポリマー担体などのポリマー担体にキャストすることができる。一実施形態では、支持体又は担体層は、テクスチャード加工されたPET基材のようにテクスチャード加工されることができる。次に、加熱してポリイミドを架橋させ、溶媒を部分的に又は完全に除去することにより、十分にイミド化された溶液をフィルムに変換することができる。フィルムを低温で加熱してポリイミド架橋を開始させ、ポリイミドフィルムを部分的に乾燥させる。典型的には、約100℃未満の温度が、初期の乾燥及び架橋に使用される。次に、フィルムを高温、約300℃まで加熱して、ポリイミド架橋を完了させ、更に溶媒を除去する。本発明のいくつかの態様では、フィルムは、完全に乾燥する前に担体から剥がされる。最終乾燥工程は、フィルムの寸法支持体(dimensional support)を用いて行うことができる。他の態様では、フィルムは担体上で直接加熱される。
【0070】
一実施形態では、単層ポリマーフィルムは、約1.74未満、又は約1.69未満、又は約1.60未満などの低屈折率を有するポリイミドを含む。ポリイミドの屈折率を下げると、L*と光沢の両方が低い単層ポリマーフィルムの形成が可能になる。従来のポリイミドは、他の一般的な光学ポリマーよりも芳香環とイミド構造の含有量が多いため、かなり高い屈折率(RI)を示す。しかしながら、可視領域での透明度が不十分であると、光トラッピングの深刻な障害になり、フィルム表面からの反射が増加する。可視領域でのポリイミドの光吸収は、主に、電子供与性ジアミンと電子受容性二無水物部位との間の分子内及び分子間電荷移動(CT)相互作用によって引き起こされる。一実施形態では、材料の平均屈折率、navは、ローレンツ・ローレンツの式によって見積もることができる:
【0071】
【数1】
【0072】
(式中、αavは平均分子分極率であり、Vintは繰り返し単位の固有体積であり、ρは密度であり、NAはアボガドロ数であり、Mは分子量である)。この式は、次式:
【0073】
【数2】
【0074】
のように簡略化することができ、式中のKpは分子充填係数であり、Vvdwは分子のファンデルワールス体積である(非特許文献1を参照されたい)。この式に基づいてポリマー配合物の屈折率を最小化する1つの方法は、αav/Vvdw比からの寄与を最小化することによるものである。この比の変数は、経験的、半経験的、又はab initioの原理から計算することができる。この計算された比を利用して、低屈折率を目標とするためにモノマーを選択又は排除することができる。この目的は、ポリイミド分子鎖の分極率を低下させ、ポリマーの屈折率を低下させることである。ポリマーの分極率は、電子求引性のフッ素原子又はフッ素化置換基の導入、脂環式部位の組み込み、及びメタ-置換構造及びかさ高い側鎖基による分子骨格の修飾によって低下させることができる。
【0075】
一実施形態では、単層ポリマーフィルムは、約30以下のL*及び約15以下の60°光沢(60GU)を有することができる。一実施形態では、単層ポリマーフィルムは、約25以下又は約20以下のL*を有することができる。一実施形態では、単層ポリマーフィルムは、約10以下又は約8以下又は約6以下の60°光沢を有することができる。
【0076】
単層ポリマーフィルムの厚さは、フィルムの意図する目的又は最終用途の仕様に応じて調整することができる。一実施形態では、単層ポリマーフィルムは、約2~約125μm、又は約4~約50μm、又は約5~約20μmの範囲の全厚さを有する。
【0077】
一実施形態では、単層ポリマーフィルムは、機械的又は化学的手段を使用してテクスチャード加工することができる。一実施形態では、機械的テクスチャード加工は、サンドブラスト又はレーザーアブレーションなど、フィルム表面の一部を物理的に除去するプロセスを含むことができる。一実施形態では、サンドブラストについては、回転インペラが遠心力を使用して砂を噴霧する研磨ブラスト(遠心ブラスト)プロセスにおいてフィルムの表面に微細な砂を噴霧することにより、単層ポリマーフィルムをテクスチャード加工することができる。一実施形態では、テクスチャーをフィルム表面にエンボス加工又はインプリントすることによって、テクスチャード加工を提供することができる。一実施形態では、インプリントでは、フィルムをテクスチャード加工された表面にキャストすることによって単層ポリマーフィルムがテクスチャード加工され、この場合、テクスチャード加工がポリマーフィルム表面に転写される。一実施形態では、化学的テクスチャード加工は、リソグラフィにより付与することができる。
【0078】
一実施形態では、テクスチャード加工されたフィルムは、フィルムが艶消し剤を含まない場合であっても、低いL*色と低い光沢の両方を有することができる。一実施形態では、テクスチャード加工された表面を有する単層ポリマーフィルムは、約6μm以上の最大粗さ(Spv)、約30以下のL*、及び約15以下の60°光沢(60GU)を有することができる。一実施形態では、テクスチャード加工された表面を有する単層ポリマーフィルムは、約7μm以上又は約8μm以上のSpvを有することができる。一実施形態では、テクスチャード加工された表面を有する単層ポリマーフィルムは、約25以下又は約20以下のL*を有することができる。一実施形態では、テクスチャード加工された表面を有する単層ポリマーフィルムは、約10以下又は約8以下又は約6以下の60°光沢を有することができる。一実施形態では、単層ポリマーフィルムの両側は、テクスチャード加工された表面を有することができる。
【0079】
用途
一実施形態では、単層ポリマーフィルムは、プリント回路基板用のカバーレイ又は電子機器内の他の電子部品などの電子機器用途で使用することができ、物理的損傷、酸化、及び電子部品の機能に悪影響を与え得る他の汚染物質からの保護を提供する。架橋ポリイミドを用いた単層ポリマーフィルムの非常に細いカバーレイは、より耐薬品性が高く、回路作製に使用される、軽石、デスミア、及びプラズマプロセスの間、エッチングに耐性であり得、良好な光学特性を維持する。
【0080】
本発明の有利な特性は、本発明を例示するがそれを限定しない以下の実施例を参照することによって認識することができる。全ての部及び百分率は、特に明記しない限り、重量による。
【実施例
【0081】
試験方法
CIE L*、a*、b*色
色の測定は、ColorQuest(登録商標)XEデュアルビーム分光光度計(Hunter Associates Laboratory,Inc.,Reston,VA)を使用して、反射率、正反射含有モードで行った。この装置は、それぞれの使用の前に標準化された。装置からの色データは、L*、a*、b*としてCIELAB10°/D65系において報告した。0のL*値は純粋な黒である一方で、100のL*値は純粋な白である。典型的には、1単位のL*値の差異は、目で識別できる。
【0082】
屈折率
屈折率測定は、633nm(632.8nm)のレーザー波長を使用するMetricon(登録商標)モデル2010プリズムカプラー(Metricon Corporation,Pennington,NJ)を使用して行った。この装置は、それぞれの使用の前に標準化された。屈折率測定は、フィルムの平面内の屈折率を報告するためにTEモードで行った。
【0083】
ゲル分率
ポリイミドのゲル分率は、ソックスレー抽出法(Soxhlet)を用いて測定した。ポリマーフィルム試料をガラスの円筒濾紙(thimble)に置き、これを窒素パージした溶媒が充填された丸底フラスコの上に乗っているソックスレー抽出器の主室に入れた。抽出溶媒(DMAc)を沸騰及び凝縮により試料を通して連続的に循環させた。十分な熱を丸底フラスコに加えた後、蒸気形態の溶媒をソックスレー抽出器の主室に移し凝縮した。あふれ出るレベルに達した後、溶媒をサイフォンチューブで丸底フラスコに流し戻した。
【0084】
約2×3インチのポリマーフィルムを使用した。フィルム試料をアセトンで拭いてきれいにし、ガラスの円筒濾紙に配置する前に風乾し、秤量し、折り目をつけた。DMAc(約300ml)の温度を165~175℃に設定し、少なくとも7時間の期間を通して抽出を行った。その後、試料を装置から取り出し、ホットプレートにて50℃で1時間まで乾燥し、120℃で炉内に入れた。炉を120から250℃(16℃/分)に加熱し、次いで250℃で20分間保持した。250℃に20分間加熱した後、フィルムをオーブンから「高温」で取り出し、空気中で放冷し、試料を再び秤量した。各試料に新鮮な溶媒を用いた。
【0085】
60°光沢
60°光沢(60GU)は、Micro-TRI-グロス光沢計(BYK-Gardner USA,Columbia,MD)を使用して測定した。この装置は、それぞれの使用の前に校正した。
【0086】
粒径
スラリー中の充填材粒子の粒径は、粒径分析装置(Mastersizer 3000,Malvern Instruments,Inc.,Westborough,MA)を使用したレーザー回折によって測定した。分散媒としてDMAcを使用した。
【0087】
表面粗さ
ZeGage(商標)Pro 3D光学プロファイラー(Zygo Corp.,Middlefield,CT)を使用して、167×167μmの領域(0.28mm2)にわたり表面粗さを測定した。最大粗さ(Spv、Sz、又はRz)は、測定される表面の最大ピーク高さ(Sp)と最大谷深さ(Sv)の合計、Spv=Sp+Svである。
【0088】
低導電率カーボンブラック
90重量%のDMAc及び10重量%のカーボンブラック粉末(Special Black 4、SB4、Orion Engineered Carbons LLC,Kingwood,TX)からなるカーボンブラック溶液を調製した。手で持って操作できる高剪断ミキサーを用いて成分を完全に混合した。
【0089】
比較例1及び実施例1
比較例1及び実施例1(CE1及びE1)では、可溶性熱可塑性ポリイミド(Matrimid(登録商標)9725、Huntsman Corp.、The Woodlands、TX)を、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物//3-(4-アミノフェニル)-1,1,3-トリメチル-5-インダミン(BTDA1.0//PIDA1.0)のモノマー組成を用いて、乾燥粉末として使用した。
【0090】
CE1では、5gの乾燥ポリマー樹脂を、17.4gのジメチルアセトアミド(DMAc、HPLCグレード)に添加し、遠心遊星ミキサー(THINKY USA,Laguna Hills,CA)にて混合して溶液を得た。ポリマーから気体を出すために、2000rpmで10分間、遠心遊星ミキサーを用いて溶液を脱気した。DMAcにおけるSB4炭素(Orion Engineered Carbons)の10重量%の溶液2.5gを、剥離剤と共にポリイミド溶液に添加して、キャスト基材からのフィルムの取り出しを容易にした。この溶液を、2200rpmで2分間遠心遊星ミキサーを用いて混合し、続いて2000rpmで5分間脱気した。
【0091】
溶液を25℃で艶消しのPET基材(Kaisei Industries,Inc.,Japan)にキャストして、1~2ミルの硬化フィルムを作製した。艶消しのPET基材のフィルムを、80℃で15分間加熱し、続いて艶消しのPET表面から持ち上げ、8×12インチのフレームに取り付けた。取り付けたフィルムを炉に入れた。炉を120から250℃(16℃/分)に加熱し、次いで250℃で20分間保持した。250℃に20分間加熱した後、フィルムをオーブンから「高温」で取り出し、空気中で放冷した。
【0092】
E1では、CE1について上述したように、カーボンブラックを有するポリイミド溶液を調製した。最終脱気工程の前に、DMAcにおけるJeffamine(登録商標)D-230(Huntsman)の10重量%の溶液1.04gを、ポリマー溶液に添加した。冷たいカップで冷却しながら2200rpmで30秒間遠心遊星ミキサーを用いて溶液を混合し、続いて2000rpmで5分間脱気し、冷たい温度で保持した。
【0093】
溶液を25℃で艶消しのPET基材にキャストして、1~2ミルの硬化フィルムを作製した。艶消しのPET基材のフィルムを80℃で10分間加熱し、続いて艶消しのPET表面から持ち上げ、8×12インチのフレームに取り付けた。取り付けたフィルムを炉内に入れ、CE1について上述したように加熱した。
【0094】
比較例2及び実施例2
比較例2及び実施例2(CE2及びE2)のポリアミック酸(PAA)では、BPADA1.0//PIDA1.0のモノマー組成を用いて、6.77gの3-(4-アミノフェニル)-1,1,3-トリメチル-5-インダナミン(PIDA,Changzhou Sunlight Pharmaceutical Co.,Ltd.,China)を、180gのDMAcと共に、窒素がパージされたグローブボックス内の300mlビーカーに添加した。13.20gの4,4’-ビスフェノールA二無水物(BPADA、Sabic、Riyadh、Saudi Arabia)を3回の5~10分間隔で3つのアリコートにて添加した。これらの添加中に反応混合物を40℃に保持した。重量平均分子量、Mw=284,000g/モル、分散度1.85まで、反応を40℃で一晩保持した。
【0095】
CE2及びE2では、十分にイミド化されたポリイミド溶液(ポリイミドアミド酸溶液)を調製するために、9.47gのβ-ピコリン(Sigma Aldrich、Milwaukee、WI)及び10.38gの無水酢酸(Sigma Aldrich)をPAA溶液と合わせた。反応混合物を40℃で30分間撹拌し、次いで80℃に3時間加熱して溶液をイミド化した。200gの室温ポリマー溶液をブレンダー中で600mlのメタノール(Sigma Aldrich)に注ぎ、急速に撹拌してポリマー固体を粉砕した。粉砕されたポリマー固体をブレンダー内で10分間撹拌した後、濾過により収集した。ポリマーを一晩風乾し、次いで更に35℃で一晩真空乾燥した。
【0096】
CE2では、カーボンブラックを有するポリイミド溶液を調製し、キャストし加熱してCE1について上述したようにフィルムを形成した。
【0097】
E2では、CE1について上述したようにカーボンブラックを有するポリイミド溶液を調製した。最終脱気工程の前に、DMAcにおけるJeffamine(登録商標)D-230の10重量%の溶液0.77gをポリマー溶液に添加した。冷たいカップで冷却しながら2200rpmで30秒間遠心遊星ミキサーを用いて溶液を混合し、続いて2000rpmで5分間脱気し、冷たい温度で保持した。
【0098】
溶液を25℃で艶消しのPET基材にキャストして約2.5ミルの硬化フィルムを作製した。艶消しのPET基材のフィルムを80℃で15分間加熱し、続いて艶消しのPET表面から持ち上げ、8×12インチのフレームに取り付けた。取り付けたフィルムを炉内に入れ、CE1について上述したように加熱した。
【0099】
表1は、E1~E2及びCE1~CE2の特性を要約している。E1~E2及びCE1~CE2の全てが良好な色及び光沢特性を示すが、架橋フィルム(E1及びE2)は、ゲル分率測定によって実証されるように優れた耐薬品性を有する。更に、60GUの架橋フィルムは、これらの非架橋の対応物よりも低い。
【0100】
【表1】
【0101】
比較例3
比較例3(CE3)では、CE1及びE1で使用されるMatrimid(登録商標)9725ポリマーを、乾燥粉末として使用した。
【0102】
CE3では、2.5gの乾燥ポリマー樹脂を8.7gのDMAcに添加し、遠心遊星ミキサー中で混合して溶液を得た。ポリマーから気体を出すために、2000rpmで10分間、遠心遊星ミキサーを用いて溶液を脱気した。DMAcにおける亜リン酸トリフェニルベルト剥離剤(triphenyl phosphite belt release agent)の2.5重量%の溶液0.05g、及びDMAcにおけるSB4炭素の10重量%の溶液1.25gを、ポリイミド溶液に添加した。この溶液を、2200rpmで2分間遠心遊星ミキサーを用いて混合し、続いて2000rpmで10分間脱気した。DMAcにおけるJeffamine(登録商標)D-230の10重量%の溶液1.04gをポリマー溶液に添加した。冷たいカップで冷却しながら2200rpmで30秒間遠心遊星ミキサーを用いて溶液を混合し、続いて2000rpmで5分間脱気し、冷たい温度で保持した。
【0103】
溶液を、25℃でMylar(登録商標)ポリエステルフィルム(DuPont Teijin Films USA,Chester,VA)基材にキャストして1~2ミルの硬化フィルムを作製した。基材上のフィルムを15分間80℃に加熱し、続いてポリエステルフィルム表面から持ち上げ、8×12インチのフレームに取り付けた。取り付けたフィルムを炉内に入れ、CE1について上述したように加熱した。Mylar(登録商標)ポリエステルフィルムの滑らかな表面(低Spv)上のポリイミドのキャストは、その高度の架橋度にもかかわらず、高い光沢を有するポリマーフィルムをもたらす(表1を参照されたい)。
【0104】
実施例3
実施例3(E3)のポリアミック酸(PAA)溶液では、CBDA0.6/6FDA0.4//TFMB1.0のモノマー組成を用いて、2.268kgのトリフルオロメチル-ベンジジン(TFMB,Seika Corp.,Wakayama Seika Kogyo Co.,LTD.,Japan)を、72Lの窒素パージした樹脂ケトルに、32.191kgのDMAcと共に添加した。1.252kgの4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物(6FDA、Daikin America Incorporated、Decatur、AL)、及び0.829kgのシクロブタン二無水物(CBDA、Wilshire Technologies,Princeton,NJ)を、3回の60分間隔で3つのアリコートにて添加した。これらの添加中に反応混合物を40℃に保持した。6FDA粉末を少し添加してポリマーを重合(「完了」)して12ポアズにした。
【0105】
E3では、十分にイミド化されたポリイミド溶液(ポリイミドアミド酸溶液)を調製するために、更なる2.787kgのDMAcを添加し、60分間撹拌した。1.65kgのβ-ピコリン及び1.808kgの無水酢酸をPAA溶液と合わせた。反応混合物を2時間80℃に加熱して溶液をイミド化した。1,000gの室温ポリマー溶液をブレンダー中で2Lのメタノール中に注ぎ、急速に撹拌してポリマー固体を粉砕した。粉砕したポリマー固体をブレンダー内で10分間撹拌した後、濾過により回収した。ポリマーを一晩風乾し、次いで更に50℃で一晩真空乾燥した。
【0106】
E3では、21.2gのDMAcに2.5gの乾燥ポリマーを添加し、遠心遊星ミキサー中で混合して溶液を得た。ポリマーから気体を出すために、2000rpmで10分間、遠心遊星ミキサーを用いて溶液を脱気した。DMAcにおける亜リン酸トリフェニルベルト剥離剤の2.5重量%の溶液0.05gと、DMAcにおけるSB4炭素の10重量%の溶液1.25gを、ポリイミド溶液に添加した。この溶液を、2200rpmで2分間遠心遊星ミキサーを用いて混合した。DMAcにおけるJeffamine(登録商標)D-230の10重量%の溶液0.5gをポリマー溶液に添加した。冷たいカップで冷却しながら2200rpmで30秒間遠心遊星ミキサーを用いて溶液を混合し、続いて2000rpmで5分間脱気し、冷たい温度で保持した。
【0107】
溶液を25℃で艶消しのPET基材にキャストして、CE1について上述したように1~2ミルの硬化フィルムを作製した。
【0108】
実施例4
実施例4(E4)のポリアミック酸(PAA)溶液では、BPADA1.0//3,4-ODA1.0のモノマー組成を用いて、5.56gの3,4-オキシジフェニルアミン(3,4-ODA、Wakayama Seika Kogyo Co.,LTD.,Japan)を、180gのDMAcと共に、窒素パージしたグローブボックス内の300mlビーカーに添加した。14.415gのBPADAを、3回の5~10分間隔で3つのアリコートにて添加した。これらの添加中に反応混合物を40℃に保持した。重量平均分子量、Mw=184,000g/モル、分散度2.00まで、反応を40℃で一晩保持した。
【0109】
E4では、十分にイミド化されたポリイミド溶液(ポリイミドアミック酸溶液)を調製するために、10.34gのβ-ピコリンと11.33gの無水酢酸をPAA溶液と合わせた。反応混合物を40℃で30分間撹拌し、次いで80℃に3時間加熱して溶液をイミド化した。200gの室温ポリマー溶液をブレンダー中で600mlのメタノール中に注ぎ、急速に撹拌してポリマー固体を粉砕した。粉砕したポリマー固体をブレンダー内で10分間撹拌した後、濾過により回収した。ポリマーを一晩風乾し、次いで更に35℃で一晩真空乾燥した。
【0110】
E4では、2.5gの乾燥ポリマーを8.7gのDMAcに添加し、遠心遊星ミキサー中で混合して溶液を得た。ポリマーから気体を出すために、2000rpmで10分間、遠心遊星ミキサーを用いて溶液を脱気した。DMAcにおける亜リン酸トリフェニルベルト剥離剤の2.5重量%の溶液0.05gと、DMAcにおけるSB4炭素の10重量%の溶液1.25gを、ポリイミド溶液に添加した。この溶液を、2200rpmで2分間遠心遊星ミキサーを用いて混合した。DMAcにおけるJeffamine(登録商標)D-230の10重量%の溶液0.42gをポリマー溶液に添加した。冷たいカップで冷却しながら2200rpmで30秒間遠心遊星ミキサーを用いて溶液を混合し、続いて2000rpmで5分間脱気し、冷たい温度で保持した。
【0111】
溶液を25℃で艶消しのPET基材にキャストして、CE1について上述したように1~2ミルの硬化フィルムを作製した。
【0112】
実施例5
実施例5(E5)のポリアミック酸(PAA)溶液では、BPADA1.0//RODA1.0のモノマー組成を用いて、8.647gの1,3-ビス(4-アミノホノキシ)ベンゼン(RODA)を、180gのDMAcと共に、窒素パージしたグローブボックス内の300mlビーカーに添加した。8.630gのBPADAをより小さなアリコートにて添加し、完全に溶解するまで撹拌した。これらの添加中に反応混合物を40℃に保持した。重量平均分子量、Mw=184,000g/モル、分散度2.00まで、反応を40℃で一晩保持した。
【0113】
E5では、十分にイミド化されたポリイミド溶液(ポリイミドアミド酸溶液)を調製するために、PAA溶液に、10.31gのβ-ピコリン及び11.31gの無水酢酸と共に、更なる17.0gのDMAcを添加した。反応物を室温で約2時間撹拌した。この間、溶液の粘度がわずかに増加し、更なる50mlのDMACを添加した。溶液を一晩撹拌し続けた。
【0114】
200gのポリマー溶液を約600mlのメタノールと混合し、微粉末固体粒子を生成するまで実験室用ブレンダー中で混合した。次いで得られた懸濁液を濾過し、室温で一晩風燥し、50℃で一晩真空乾燥した。
【0115】
E5では、2.5gの乾燥ポリマーを12.9gのDMAcに添加し、遠心遊星ミキサー中で混合して溶液を得た。ポリマーから気体を出すために、2000rpmで10分間、遠心遊星ミキサーを用いて溶液を脱気した。DMAcにおける亜リン酸トリフェニルベルト剥離剤の2.5重量%の溶液0.05gと、DMAcにおけるSB4炭素の10重量%の溶液1.25gを、ポリイミド溶液に添加した。この溶液を、2200rpmで2分間遠心遊星ミキサーを用いて混合した。DMAcにおけるJeffamine(登録商標)D-230の10重量%の溶液0.42gをポリマー溶液に添加した。冷たいカップで冷却しながら2200rpmで30秒間遠心遊星ミキサーを用いて溶液を混合し、続いて2000rpmで5分間脱気し、冷たい温度で保持した。
【0116】
溶液を25℃で艶消しのPET基材にキャストして、CE1について上述したように1~2ミルの硬化フィルムを作製した。
【0117】
実施例6
実施例6(E6)では、CE1及びE1で使用されるMatrimid(登録商標)9725ポリマーを、乾燥粉末として使用した。
【0118】
E6では、2.5gの乾燥ポリマー樹脂を8.7gのDMAcに添加し、遠心遊星ミキサー中で混合して溶液を得た。ポリマーから気体を出すために、2000rpmで10分間、遠心遊星ミキサーを用いて溶液を脱気した。DMAcにおける亜リン酸トリフェニルベルト剥離剤の2.5重量%の溶液0.05gと、DMAcにおけるSB4炭素の10重量%の溶液1.25gを、ポリイミド溶液に添加した。この溶液を、2200rpmで2分間遠心遊星ミキサーを用いて混合し、続いて2000rpmで10分間脱気した。DMAcにおけるJeffamine(登録商標)D-230の10重量%の溶液2.08gをポリマー溶液に添加した。冷たいカップで冷却しながら2200rpmで30秒間遠心遊星ミキサーを用いて溶液を混合し、続いて2000rpmで5分間脱気し、冷たい温度で保持した。
【0119】
溶液を25℃で艶消しのPET基材にキャストして、CE1について上述したように1~2ミルの硬化フィルムを作製した。
【0120】
実施例7
実施例7(E7)では、CE1及びE1で使用されるMatrimid(登録商標)9725ポリマーを、乾燥粉末として使用した。
【0121】
E7では、2.5gの乾燥ポリマー樹脂を8.7gのDMAcに添加し、遠心遊星ミキサー中で混合して溶液を得た。ポリマーから気体を出すために、2000rpmで10分間、遠心遊星ミキサーを用いて溶液を脱気した。DMAcにおける亜リン酸トリフェニルベルト剥離剤の2.5重量%の溶液0.05gと、DMAcにおけるSB4炭素の10重量%の溶液1.25gを、ポリイミド溶液に添加した。この溶液を、2200rpmで2分間遠心遊星ミキサーを用いて混合し、続いて2000rpmで10分間脱気した。DMAcにおけるJeffamine(登録商標)T-403(Huntsman)の10重量%の溶液0.66gをポリマー溶液に添加した。冷たいカップで冷却しながら2200rpmで30秒間遠心遊星ミキサーを用いて溶液を混合し、続いて2000rpmで5分間脱気し、冷たい温度で保持した。
【0122】
溶液を25℃で艶消しのPET基材にキャストして、CE1について上述したように1~2ミルの硬化フィルムを作製した。
【0123】
実施例8
実施例8(E8)では、CE1及びE1で使用されるMatrimid(登録商標)9725ポリマーを、乾燥粉末として使用した。
【0124】
E8では、2.5gの乾燥ポリマー樹脂を8.7gのDMAcに添加し、遠心遊星ミキサー中で混合した。ポリマーから気体を出すために、2000rpmで10分間、遠心遊星ミキサーを用いて溶液を脱気した。DMAcにおける亜リン酸トリフェニルベルト剥離剤の2.5重量%の溶液0.05gと、DMAcにおけるSB4炭素の10重量%の溶液1.25gを、ポリイミド溶液に添加した。この溶液を、2200rpmで2分間遠心遊星ミキサーを用いて混合し、続いて2000rpmで10分間脱気した。DMAcにおけるm-キシリレンジアミン(MXD、Sigma Aldrich、Milwaukee、WI)の10重量%の溶液0.31gを、ポリマー溶液に添加した。冷たいカップで冷却しながら2200rpmで30秒間遠心遊星ミキサーを用いて溶液を混合し、続いて2000rpmで5分間脱気し、冷たい温度で保持した。
【0125】
溶液を25℃で艶消しのPET基材にキャストして、CE1について上述したように1~2ミルの硬化フィルムを作製した。
【0126】
実施例9
実施例9(E9)では、CE1及びE1で使用されるMatrimid(登録商標)9725ポリマーを、乾燥粉末として使用した。
【0127】
E9では、2.5gの乾燥ポリマー樹脂を4.95gのDMAcに添加し、遠心遊星ミキサー中で混合して溶液を得た。ポリマーから気体を出すために、2000rpmで10分間、遠心遊星ミキサーを用いて溶液を脱気した。DMAcにおける亜リン酸トリフェニルベルト剥離剤の2.5重量%の溶液0.05g及びDMAcにおけるペリレンブラック(Paliogen(登録商標)Black L0086、BASF SE、Germany)の10重量%の溶液5gを、ポリイミド溶液に添加した。この溶液を、2200rpmで2分間遠心遊星ミキサーを用いて混合し、続いて2000rpmで10分間脱気した。DMAcにおけるJeffamine(登録商標)D-230の10重量%の溶液1.04gをポリマー溶液に添加した。冷たいカップで冷却しながら2200rpmで30秒間遠心遊星ミキサーを用いて溶液を混合し、続いて2000rpmで5分間脱気し、冷たい温度で保持した。
【0128】
溶液を25℃で艶消しのPET基材にキャストして、CE1について上述したように1~2ミルの硬化フィルムを作製した。
【0129】
実施例10
実施例10(E10)では、CE1及びE1で使用されるMatrimid(登録商標)9725ポリマーを、乾燥粉末として使用した。
【0130】
E10では、2.5gの乾燥ポリマー樹脂を7.45gのDMAcに添加し、遠心遊星ミキサー中で混合して溶液を得た。ポリマーから気体を出すために、2000rpmで10分間、遠心遊星ミキサーを用いて溶液を脱気した。DMAcにおける亜リン酸トリフェニルベルト剥離剤の2.5重量%の溶液0.05g、DMAcにおけるSB4炭素の10重量%の溶液1.25g、及びDMAcにおけるシリカ艶消し剤(Syloid(登録商標)C807、W.R.Grace&Co.、Columbia、MD)の10重量%の溶液1.25gを、ポリイミド溶液に添加した。この溶液を、2200rpmで2分間遠心遊星ミキサーを用いて混合し、続いて2000rpmで10分間脱気した。DMAcにおけるJeffamine(登録商標)D-230の10重量%の溶液1.04gを、ポリマー溶液に添加した。冷たいカップで冷却しながら2200rpmで30秒間遠心遊星ミキサーを用いて溶液を混合し、続いて2000rpmで5分間脱気し、冷たい温度で保持した。
【0131】
溶液を25℃で艶消しのPET基材にキャストして、CE1について上述したように1~2ミルの硬化フィルムを作製した。表2に要約されているように、E3~E10は、十分な表面粗さを有するフィルムについて低い色及び光沢を有する低屈折率の様々な架橋ポリマーを実証している。
【0132】
比較例4
比較例4(CE4)のポリアミック酸溶液では、BPDA1.0//PPD1.0のモノマー組成を用いて、10.95gのp-フェニレンジアミン(PPD)を、160.17gの無水DMAcと共に、300mlの窒素パージした反応容器に添加した。28.89gの3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)を数分かけて添加した。全てのモノマーが反応するまで反応混合物を撹拌した。二無水物対ジアミンの全化学量論比は、約0.97:1であった。混合物は、約20%のポリアミック酸固形分で75~250ポアズのポリマー粘度を達成した。ポリマーを重合(「完了」)して分子量を増加させ、DMAcにおけるPMDA溶液を少量添加して目標粘度を得た。ポリマー溶液を使用まで冷凍庫で保管した。
【0133】
DMAcにおけるSB4炭素の10重量%の溶液8.42gを、91.58gのポリマー溶液に添加することによって溶液を調製し、遠心遊星ミキサー中で混合した。溶液を25℃で艶消しのPET基材にキャストして、1~2ミルの硬化フィルムを作製した。艶消しのPET基材のフィルムを90℃で20分間加熱し、続いて艶消しのPET表面から持ち上げ、8×12インチのフレームに取り付けた。取り付けたフィルムを炉内に入れた。炉を120から320℃(16℃/分)に加熱し、次いでフィルムをオーブンから「高温」で取り出し、400℃で5分間別のオーブンに入れ、その後、取り出し空気中で冷却した。
【0134】
比較例5
比較例5(CE5)のポリアミック酸溶液では、ODPA0.5/PMDA0.5//MPD0.5/BAPP0.5のモノマー組成を用いて、20.48gの2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン(BAPP)及び5.40gのm-フェニレンジアミン(MPD)を、148.2gのDMAcと共に、300mlの窒素パージした反応容器に添加した。10.45gのピロメリット酸二無水物(PMDA)及び15.48gの4,4’-オキシジフタル酸無水物(ODPA)を数分かけて添加した。全てのモノマーが反応するまで反応混合物を撹拌した。二無水物対ジアミンの全化学量論比は、約0.98:1であった。混合物は、約26%のポリアミック酸固体で75~250ポアズのポリマー粘度を達成した。ポリマーを重合(「完了」)して分子量を増加させ、DMAcにおけるPMDA溶液を少量添加して目標粘度を得た。ポリマー溶液を使用まで冷凍庫で保管した。
【0135】
溶液を、DMAcにおけるSB4炭素の10重量%の溶液11.84gを88.64gのポリマー溶液に添加することによって調製し、遠心遊星ミキサー中で混合した。溶液を25℃で艶消しのPET基材にキャストして1~2ミルの硬化フィルムを作製した。艶消しのPET基材のフィルムを90℃で20分間加熱し、続いて艶消しのPET表面から持ち上げ、8×12インチのフレームに取り付けた。取り付けたフィルムを炉内に入れた。炉を120から350℃(16℃/分)に加熱し、次いでフィルムをオーブンから「高温」で取り出し、空気中で放冷した。表2に要約されているように、CE4及びCE5は、屈折率が高すぎる場合、CE4、又は表面粗さが低すぎる場合、CE5、単層ポリマーフィルムにおいて低い色及び低い光沢の両方を達成しているという課題を実証している。
【0136】
【表2】
【0137】
一般的記載において上述した行為の全てが必要とされるわけではないこと、特定の行為の一部が必要とされなくてもよいこと、及び更なる行為が、記載されたものに加えて行われ得ることに留意されたい。更に、行為のそれぞれが列挙される順番は、必ずしもそれらが行われる順番であるわけではない。本明細書を読んだ後、当業者は、それらの具体的な必要又は要望のためにいずれの行為を用いることができるかを決定することができるであろう。
【0138】
前述の本明細書において、本発明は、具体的な実施形態に関連して説明されてきた。しかしながら、当業者は、以下の特許請求の範囲に説明されるような本発明の範囲から逸脱することなく様々な修正形態及び変更形態がなされ得ることを十分に理解する。本明細書で開示される全ての特徴は、同じ、均等な又は同様の目的に役立つ代わりの特徴によって置き換えられ得る。
【0139】
従って、本明細書は、限定的意味ではなく例示的なものと見なすべきであり、こうした改変は全て、本発明の範囲内に包含されることを意図する。
【0140】
特定の実施形態に関して、利益、その他の利点、及び問題に対する解決法を以上に記載してきた。しかしながら、これらの利益、利点、問題の解決法、並びに、なんらかの利益、利点、又は解決法を発生させたり、より顕著にしたりすることがある、いずれの要素も、特許請求の範囲のいずれか又は全ての重要、必要、又は本質的な特徴又は要素であるとして解釈すべきではない。