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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-20
(45)【発行日】2025-01-28
(54)【発明の名称】紙カップ用原紙
(51)【国際特許分類】
   D21H 17/37 20060101AFI20250121BHJP
   D21H 21/18 20060101ALI20250121BHJP
   B65D 3/06 20060101ALI20250121BHJP
   B65D 3/22 20060101ALI20250121BHJP
【FI】
D21H17/37
D21H21/18
B65D3/06 B
B65D3/22 B
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021138647
(22)【出願日】2021-08-27
(65)【公開番号】P2023032487
(43)【公開日】2023-03-09
【審査請求日】2023-09-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000241810
【氏名又は名称】北越コーポレーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100139527
【弁理士】
【氏名又は名称】上西 克礼
(74)【代理人】
【識別番号】100164781
【弁理士】
【氏名又は名称】虎山 一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100221981
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 大成
(72)【発明者】
【氏名】田村 篤
(72)【発明者】
【氏名】東 和宏
(72)【発明者】
【氏名】神崎 洋光
【審査官】當間 庸裕
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-243009(JP,A)
【文献】特開2012-183825(JP,A)
【文献】特開2020-196959(JP,A)
【文献】特開2015-124464(JP,A)
【文献】特開2019-077967(JP,A)
【文献】特開2009-102771(JP,A)
【文献】特開2009-228158(JP,A)
【文献】特開2002-201598(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D21H 17/37
D21H 21/18
B65D 3/06
B65D 3/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パルプを主成分とする単層抄きの基紙を有する紙カップ用原紙において、前記基紙がパルプ100質量部に対して、0.3質量%以上の両性ポリアクリルアミドを含有し、横方向の引張破断伸びが5%以上であることを特徴とする紙カップ用原紙。
【請求項2】
前記基紙の縦方向の引張破断伸びが2%以上であることを特徴とする請求項1に記載の紙カップ用原紙。
【請求項3】
水分率が7%以上であることを特徴とする請求項1または2に記載の紙カップ用原紙。
【請求項4】
パルプ100質量部に対して、0.3~1.0質量%の両性ポリアクリルアミドを含有することを特徴とする請求項1~3のいずれか一つに記載の紙カップ用原紙。
【請求項5】
基紙にカルボキシメチルセルロースが塗工されていないことを特徴とする請求項1~4のいずれか一つに記載の紙カップ用原紙。
【請求項6】
基紙に用いるパルプのフリーネスが、200ml以上500ml以下であることを特徴とする請求項1~5のいずれか一つに記載の紙カップ用原紙。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一つに記載の紙カップ用原紙を基紙とする紙カップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙カップの成型においてトップカール割れが生じにくい紙カップ原紙に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、紙カップは、紙の表面にポリエチレンを薄くラミネートした紙を使用し、必要に応じて印刷をした後、ポリエチレンがラミネートされた面を内側となるようにカップ成型することで得ることができる。このカップ成型は、刃のついた型で扇形に打ち抜ぬく打ち抜き工程、カップ状の型に紙を巻き付けて、両端を接着する胴体成型工程、カップの底を別のロール紙から打ち抜く底面打ち抜き工程、カップの底と側面を結合するボトム成型工程、飲み口になるカップの上部を熱で丸めるトップカール成型工程の各工程を含み、その後、検査、包装され、紙カップとして出荷される。ここでトップカール成型工程ではカールアイロンと呼ばれる加熱された金属で押し付け強制的に丸めるため、原紙の柔軟性が乏しいとトップカール割れと呼ばれるカール部が割れる(割ける)現象が発生することがある。
【0003】
このような紙カップ用原紙として、3層以上の多層抄き合わせにより抄造され、最表層に濾水度320~420mlCSFのLBKPを用い、最表層と最裏層の縦方向の引張強度の比(表/裏)が1.00以下とすることでトップカール適性を付与する提案がある。(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2012-219381号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1の紙カップ用原紙は、3層以上の多層抄きのため紙が硬くなりやすく、結果としてトップカール割れを十分に防ぐことができない場合がある。本発明の目的はこのような問題点を解消し、トップカール割れがより生じにくい紙カップ原紙、およびそれにより製造された紙カップを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、紙カップ原紙について鋭意検討を重ねた結果、次の構成によって、課題を達成できることを見出した。すなわち、本発明に係る紙カップ原紙は、パルプを主成分とする単層抄きの基紙を有する紙カップ用原紙において、前記基紙が両性ポリアクリルアミドを含有し、横方向の引張破断伸びが5%以上であることを特徴とする。さらに、パルプ100質量部に対して、0.2~1.0質量%の両性ポリアクリルアミドを含有することが好ましい。
【0007】
また、本発明においては、紙カップ用原紙の縦方向の引張破断伸びが2%以上であってもよい。このような構成とすることで、トップカール成形時に歪みが生じにくく、より加工適性に優れた紙カップ用原紙となる。また、本発明においては、紙カップ用原紙の含有水分率が7%以上であってもよい。このような構成とすることで、トップカール割れがより生じ難い紙カップ用原紙となる。
【0008】
さらに、本発明は、上記紙カップ原紙を基紙とする紙カップに関する。本発明の紙カップ原紙を基紙として使用する紙カップであれば、その製造時にトップカール割れが生じにくく、余分なコストを生じることなく、経済的に紙カップを製造することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、トップカール割れが生じにくい紙カップ原紙を提供することができる。さらに、当該紙カップ原紙を使用することで、製造時にトップカール割れが生じることなく、経済的に紙カップを製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に、本発明について実施形態を示して詳細に説明するが、本発明はこれらの記載に限定して解釈されない。本発明の効果を奏する限り、実施形態は種々の変形をしてもよい。
【0011】
本発明の紙カップ用原紙は、パルプを主成分とする単層抄きの基紙からなる。基紙に用いるパルプのフリーネスは、200ml以上500ml以下であることが好ましい。より好ましくは300ml以上400ml以下である。200ml未満では、基紙が緻密となりすぎるため紙カップの成型の際に硬くなりすぎ、トップカール割れを生じやすくなる。また、500mlを超えると繊維間結合が弱くなり、紙力の低下が生じ容器加工後の諸強度が低く使用に支障をきたすおそれがある。本発明におけるパルプのフリーネスは、カナダ標準形ろ水度試験機(JIS P 8121:1995「パルプのろ水度試験方法」に準拠)で測定することによって得られる。
【0012】
基紙に用いるパルプとしては、広葉樹漂白クラフトパルプ(LBKP)、針葉樹漂白クラフトパルプ(NBKP)、広葉樹漂白サルファイトパルプ(LBSP)、針葉樹漂白サルファイトパルプ(NBSP)、機械パルプ(GP、TMP、BCTMP)、脱墨パルプ(DIP)など既知のパルプを用いることができる。また、必要に応じて、木材パルプ以外に、非木材パルプ、合成パルプ、合成繊維などを適宜用いてもよい。なお、白色度、清潔感を得るためにはLBKP、NBKPを用いることが好ましい。パルプ繊維が短い方が平滑度を付与しやすく均一になりやすいためLBKPがより好ましい。パルプ配合を、使用するパルプ中において、LBKP90~100%またはLBKP95~100%とすることが好ましく、特にLBKP100%とすることが好ましい。
【0013】
本実施形態に係る紙カップ原紙の基紙では、填料を配合してもよい。使用する填料としては、例えば、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、タルク、クレー、カオリン、焼成クレー、二酸化チタン、水酸化アルミニウムである。しかし填料を配合することにより原紙強度が低下する恐れがあるため基紙中の填料配合率は2質量%以下が好ましく、1質量%以下がより好ましい。
【0014】
本実施形態に係る紙カップ用原紙においては、基紙に両性ポリアクリルアミドを含有させる。紙カップ用原紙は、カップ成形時の加工に耐えうる程度の紙力(例えば、所定の引張強度)が必要となるので基紙には紙力増強剤を内添させて紙力を向上させる。しかし、紙力増強剤の添加量が増えるにつれ紙は硬くなりやすい傾向があり、一定の紙力を求めようとするとトップカール割れが生じやすい紙となる。そこで、本発明においては、紙力増強剤として両性ポリアクリルアミドを使用する。両性ポリアクリルアミドを配合することにより紙が硬くなりすぎずに基紙の諸強度を向上させることができ、加えて、横方向の引張破断伸びを効率的に向上させることができる。結果的に、一定の紙力を得つつトップカール割れが生じにくい紙とすることができる。両性ポリアクリルアミドの含有量は基紙中のパルプ100質量部に対して0.2~1.0質量%となるように配合することが好ましく、0.3~0.7質量%となるように配合することがより好ましい。両性ポリアクリルアミドの含有量が0.2質量%未満となると、十分な紙力が得られず、また、所望する横方向の引張破断伸びが得られにくくなる。両性ポリアクリルアミドの含有量が1.0質量%を超えると基紙が硬くなりすぎてトップカール割れが生じやすくなるおそれがある。
【0015】
本実施形態に係る紙カップ用原紙においては、本発明の目的とする効果を損ねない範囲で公知の製紙用添加剤を使用することができる。例えば、硫酸バンド、サイズ剤、カチオン澱粉及び両性澱粉やアニオン性若しくはカチオン性のポリアクリルアミド系などの内添紙力増強剤、歩留り向上剤、濾水性向上剤、着色染料、着色顔料、蛍光増白剤、蛍光消色剤、電荷調整剤又はピッチコントロール剤などの各種助剤を配合してもよい。例えば、パルプ100質量部に対して、硫酸バンドを0.3~1.0質量%加えるとよい。また、パルプ100質量部に対して、サイズ剤として酸性ロジンエマルジョンサイズ剤を0.2~0.6質量%加えるとよい。ただし、両性ポリアクリルアミド以外の内添紙力増強剤、例えばカチオン澱粉などの澱粉系内添紙力増強剤は、基紙を硬くまた脆くしやすいため多量に添加することは好ましくない。澱粉系内添紙力増強剤の添加量は、基紙中のパルプに対して0.2質量%以下が好ましく、より好ましくは無添加である。また、アニオン性ポリアクリルアミド系内添紙力増強剤はパルプへの定着性に乏しいことから紙力の向上効果が得られにくく、結果的に横方向の引張破断伸びも満足しにくい。カチオン性ポリアクリルアミド系内添紙力増強剤もパルプへの定着性に乏しいことから紙力の向上効果が得られにくく、結果的に横方向の引張破断伸びも満足しにくい。更には、余剰のカチオン性資材が系内を循環することとなり、結果として製造時における工程汚れにもつながりやすい。
【0016】
本実施形態に係る紙カップ原紙では、単層抄紙であれば、基紙の製造方法は特に限定されるものではないが、例えば、長網抄紙機、円網抄紙機などの抄紙機を用いた単層抄紙とする。2層以上の多層抄きの場合、各層の坪量が小さくなるため層内の自由度が制限され結果として硬い紙となるため本発明においては採用しない。また多層抄きの基紙は、密度も高くなりやすく紙が硬くなる原因となる。また、紙カップ原紙の坪量が150g/m以上の場合、原紙を均一にするために抄紙機に振動を与えるシェーキング装置を使用することが好ましい。後述する紙の横方向の引張破断伸びを5%以上とする方法としては、両性ポリアクリルアミドを紙力増強剤として用いる他に、紙の繊維配向のコントロールや、地合をコントロールすることも有効である。シェーキング装置を用いて地合をコントロールする場合、例えばシェーキング条件としてはシェーキング幅10~20mmが好ましく、振動数2~4回/秒が好ましい。また同時に、抄紙機入口濃度であるインレット濃度を0.7~1.5質量%とすることが好ましい。
【0017】
本実施形態に係る紙カップ原紙では、基紙の表面に表面サイズ液を塗布してもよい。表面サイズ液としては、例えば、澱粉、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド系樹脂、アクリル系樹脂、ポリアミド系樹脂などの公知の水溶性高分子が上げられる。基紙片面当たり固形で0.1~2.0g/mとすることが好ましい。表面サイズ液として塗布する表面紙力増強剤は、紙の横方向の引張破断伸びに影響を与えにくいため、本発明の目的とする効果を損なわない範囲で、一般的な表面紙力増強剤なども使用することができる。
【0018】
表面サイズ液の塗布方法は、サイズプレスのようなポンドを設けるタイプ、ゲートロールサイズプレス若しくはシムサイザーのようなフィルムメタリングタイプ、ロッドコーター又はエアーナイフコーターなどの公知の塗布機を用いることができるが、特に限定されるものではない。
【0019】
本実施形態に係る紙カップ用原紙においては、基紙の表面に顔料を含有する塗工層を設けてもよい。塗工層は、基紙の一方の面に設けるか又は基紙の両面に設けてもよい。塗工層に用いる顔料は、カオリンクレー、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、酸化チタン、タルク、サチンホワイト、リトポン、シリカ、アルミナ、水酸化アルミニウム、酸化亜鉛、炭酸マグネシウム、焼成カオリンなどを用いることができる。また有機顔料も用いることができる。これらは単独で使用するか、又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。塗工層を基紙の両面に設ける場合は、一方の面に設ける塗工層と他方の面に設ける塗工層とは、同一の組成とするか、又は異なる組成としてもよい。
【0020】
本実施形態に係る紙カップ原紙において、塗工層形成用の塗料には、必要に応じて、接着剤、分散剤、消泡剤、耐水化剤、着色染料、着色顔料、増粘剤などの通常使用されている各種助剤を用いてもよい。
【0021】
本実施形態に係る紙カップ用原紙においては、基紙に塗工層形成用の塗料を塗工することで塗工層を設けることができる。基紙に塗工層形成用の塗料を塗工する方法は特に限定されるものではなく、メタリングサイズプレス、ゲートロール若しくはシムサイザーなどの各種フィルムトランスファーコーター、エアーナイフコーター、ロッドコーター、ブレードコーター、ダイレクトファウンテンコーター、スプレーコーター、カーテンコーターなどの各方式を適宜使用する。塗工層の片面当たり乾燥塗工量は本発明の目的とする効果を損ねない範囲であれば制限はないが、塗工量が多すぎるとトップカール割れが生じやすくなるため、例えば、7~30g/mの範囲が好ましい。
【0022】
本実施形態に係る紙カップ用原紙においては、紙カップ原紙の横方向の引張破断伸びを5%以上とする。5.2%以上が好ましく、5.5%以上がより好ましい。5.0%未満では伸縮性に乏しくカップの成型時にトップカール割れ(割け)が発生しやすいためである。上限は特に限定するものではないが、7.0%を超えると伸びが頭打ちになるだけでなく引張強度が低下傾向となるため、実質的に7.0%が上限となる。
【0023】
本実施形態に係る紙カップ用原紙においては、縦方向の引張破断伸びが2.0%以上であることが好ましい。より好ましくは2.2%以上である。横方向だけでなく、縦方向の引張破断伸びが十分に大きいことで、トップカール成形時における紙の歪みが生じ難く、結果として加工適性が向上する。3.0%を超えると伸びが頭打ちになるだけでなく引張強度が低下傾向となるため実質的に3.0%が上限となる。尚、紙の縦方向及び横方向の引張破断伸びは、JIS P8113:2006紙及び板紙-引張特性の試験方法-第2部:定速伸張法、に準じて測定し値である。また、本発明において、紙の縦方向とは抄紙方向(MD方向)であり、横方向とは抄紙方向に対して垂直方向(CD方向)である。本実施形態に係る紙カップ用原紙においては、含有水分率が6.5%~9%程度、例えば、7%以上であることが好ましい。含有水分率を7%以上とすることで紙の柔軟性が増すためか、トップカール割れがより発生しにくい紙カップ原紙とできる。含有水分率が9%を超えると紙の諸強度が低下する傾向となるため、より好ましくは含有水分率を7~9%とする。なお、含有水分率はJIS P8127:2010紙及び板紙-ロットの水分試験方法-乾燥機による方法により測定を行った。
【0024】
一実施形態においては、本発明は、紙カップ用原紙を基紙とする紙カップに関する。上記で得られた本発明の紙カップ原紙を使用することで、製造時にトップカール割れが生じることなく、紙カップを製造することができる。例えば、紙カップ用原紙の少なくとも片面をポリエチレンにより薄くラミネートした紙カップ用原紙を使用するとよい。それによって、紙カップとして適切に使用できる紙カップを得ることができる。
【実施例
【0025】
次に、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。また、例中の「部」、「%」は、特に断らない限りそれぞれ「質量部」、「質量%」を示す。なお、添加部数は、固形分換算の値である。
【0026】
以下に示す各実施例及び各比較例で得られた紙カップ用原紙について次の評価を行った。評価結果を表1に示す。また、評価方法については次に示す。
【0027】
<トップカール割れ>
各実施例及び各比較例で得られた紙カップ用原紙にエクストリュージョンコーター(溶融押出し機)にて低密度ポリエチレン(東ソー社製、ペトロセンDLZ19A)を塗工量が30g/mになるようにラミネートを施し、ラミネート面をカップの内側とし、カップ成形機にてカール部の直径が3mmとなるようにトップカール加工を行い、トップカールの割れを目視にて評価した。
◎:カール部分に割れは全く見られない。(合格)
○:カール部分に割れは殆ど見られない。(合格)
△:カール部分に割れが見られるものの、実際の使用には問題がない。(合格)
×:カール部分に明らかに割れが見られ、実際に使用できない。(不合格)
【0028】
<縦方向及び横方向の引張破断伸び>
JIS P8113:2006紙及び板紙-引張特性の試験方法-第2部:定速伸張法により縦方向(引張破断伸びT)及び横方向(引張破断伸びY)の引張破断伸びを測定した。
【0029】
<含有水分率>
JIS P8127:10の紙及び板紙-ロットの水分試験方法-乾燥機による方法により測定した。
【0030】
(実施例1)
<基紙の作製>
広葉樹パルプ(L-BKP)100%からなるCSF350mlに調整したパルプを用い、トップワイヤーを装備した長網抄紙機によって坪量250g/mの基紙を抄速150m/minで抄紙した。抄紙原料には紙力増強剤として両性ポリアクリルアミド(荒川化学工業社製、ポリストロン387)をパルプ量に対して0.5%、凝集助剤として硫酸バンドをパルプ量に対して0.6%、サイズ剤として酸性ロジンエマルジョンサイズ剤(星光PMC社製、AL-1203)をパルプ量に対して0.4%、を添加した。抄紙機のシェーキング条件は3回/秒、振幅幅は12mmであった。
【0031】
<サイズプレス>
基紙に酸化澱粉(日本食品化工社製 MS3800)の2%水溶液となるサイズ液をポンド式サイズプレスによって片面当たりの付着量が固形分換算で0.5g/mとなるように両面に塗布、乾燥した。
【0032】
<平滑加工処理>
乾燥させた基紙を線圧50kg/cmにてキャレンダー処理を行い、紙カップ用原紙を得た。この時の紙カップ用原紙の含有水分率は7.2%であった。
【0033】
(実施例2)
実施例1において、紙力増強剤である両性ポリアクリルアミド(荒川化学工業社製 ポリストロン387)の添加量を、パルプ量に対して0.5%から0.3%に変更した以外は実施例1と同様にして紙カップ用原紙を得た。
【0034】
(実施例3)
実施例1において、紙力増強剤である両性ポリアクリルアミド(荒川化学工業社製 ポリストロン387)の添加量を、パルプ量に対して0.5%から0.7%に変更した以外は実施例1と同様にして紙カップ用原紙を得た。
【0035】
(実施例4)
実施例1において、サイズプレス後の乾燥条件を変更し、平滑加工処理後の含有水分率を7.2%から6.8%に変更した以外は実施例1と同様にして紙カップ用原紙を得た。
【0036】
(比較例1)
実施例1において、紙力増強剤である両性ポリアクリルアミド(荒川化学工業社製 ポリストロン387)を、アニオン性ポリアクリルアミド(荒川化学工業社製 ポリストロン117)に変更した以外は実施例1と同様にして紙カップ用原紙を得た。
【0037】
(比較例2)
実施例1において、紙力増強剤である両性ポリアクリルアミド(荒川化学工業社製 ポリストロン387)をカチオン性ポリアクリルアミド(荒川化学工業社製 ポリストロン705)に変更した以外は実施例1と同様にして紙カップ用原紙を得た。
【0038】
(比較例3)
実施例1において、紙力増強剤である両性ポリアクリルアミド(荒川化学工業社製 ポリストロン387)を添加しなかった以外は実施例1と同様にして紙カップ用原紙を得た。
【0039】
【表1】
【0040】
表1から明らかなように、実施例1~4で得られた紙カップ用原紙は、いずれも、トップカール割れの評価は良好であった。
【0041】
一方、基紙に両性ポリアクリルアミドを添加していない比較例1~3で得られた紙カップ用原紙は、所望する横方向の伸びが得られずトップカール割れが発生した。