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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-20
(45)【発行日】2025-01-28
(54)【発明の名称】固定構造
(51)【国際特許分類】
   E04H 12/00 20060101AFI20250121BHJP
   E04B 1/34 20060101ALI20250121BHJP
   F16B 37/14 20060101ALI20250121BHJP
   F16B 1/02 20060101ALI20250121BHJP
   F16B 37/04 20060101ALI20250121BHJP
   F03D 80/50 20160101ALI20250121BHJP
   F03D 13/20 20160101ALI20250121BHJP
【FI】
E04H12/00 Z
E04B1/34 Z
F16B37/14 C
F16B1/02 C
F16B37/04 M
F03D80/50
F03D13/20
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2021190731
(22)【出願日】2021-11-25
(65)【公開番号】P2023077468
(43)【公開日】2023-06-06
【審査請求日】2024-04-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100122781
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 寛
(74)【代理人】
【識別番号】100182006
【弁理士】
【氏名又は名称】湯本 譲司
(72)【発明者】
【氏名】中島 与博
(72)【発明者】
【氏名】浅香 康弘
(72)【発明者】
【氏名】蒲田 幸穂
(72)【発明者】
【氏名】長崎 耕欣
【審査官】須永 聡
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-310460(JP,A)
【文献】特表2014-534115(JP,A)
【文献】国際公開第2020/035119(WO,A1)
【文献】特開2001-027216(JP,A)
【文献】特開2001-317525(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04H 12/00-12/34
E04B 1/34
F16B 37/14
F16B 1/02
F16B 37/04
F03D 80/00-80/80
F03D 13/00-13/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造物の柱状部分へのステージ構造の固定構造であって、
前記柱状部分から突出しており、前記ステージ構造を支持する支持梁と、
前記支持梁を前記ステージ構造に緊結する緊結構造と、
を備え、
前記緊結構造は、
前記ステージ構造から下方に延びる側部、及び、前記側部の下端に位置しており前記支持梁が載せられる下部を有する梁支持部と、
ボルト及びナットを含む緊結材とを有し、
前記梁支持部の前記下部には、前記ボルトが挿入されるインサート孔と、前記インサート孔の下端に位置しており前記ボルトに締結される前記ナットが下から入り込む穴部とが形成されており、
前記穴部は、回転しようとする前記ナットが当接する内面によって画成されている、
固定構造。
【請求項2】
前記緊結構造は、前記ナット、及び前記ナットから下方に突出する前記ボルトを被覆するキャップを備える、
請求項1に記載の固定構造。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ボルト及びナットを含む緊結材を備えた固定構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2003-27401号公報には、まくら木の固定構造が記載されている。まくら木は道床に載せられた状態で道床に固定される。まくら木は、Tボルトが通される貫通孔と、貫通孔の上端において上面に開口する凹部とを有する。貫通孔には、道床に挿通されたTボルトが通されており、Tボルトの上端には凹部においてナットが締結される。凹部には、ロックナットワッシャ、ワッシャ及びナットが設けられ、ロックナットワッシャ及びワッシャが凹部の底面に載せられた状態でTボルトにナットが締結される。
【0003】
特許第4855699号公報には、金属管柱の基部構造が記載されている。基部構造は基礎コンクリートに載置されたベースプレートを備える。ベースプレートは、鉛直上方に開口する凹部と、凹部の底面から鉛直下方に延びる貫通孔とを有する。基礎コンクリートにはアンカーボルトが埋設されており、ベースプレートは、貫通孔及び凹部にアンカ-ボルトが挿通された状態で基礎コンクリートに載せられる。アンカーボルトには凹部においてナットが締結される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2003-27401号公報
【文献】特許第4855699号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述したようにボルトにナットを締結する固定構造は、ボルトに腐食又は緩み等が生じていないかどうかを確認するために定期的に点検を行う必要がある。ところで、柱状部分にステージ構造を固定する固定構造では、ボルトに対して下からナットを締結する場合がある。ナットを下からボルトに締結する固定構造では、下からボルト及びナットの点検をしなければならないため、点検作業が困難となる場合がある。特に、ステージ構造が柱状部分の高所にある場合、足場を組んで下からボルト及びナットの点検をしなければならないため、点検作業が困難になることが懸念される。
【0006】
本開示は、ボルト及びナットの点検を容易に行うことができる固定構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係る固定構造は、構造物の柱状部分へのステージ構造の固定構造である。固定構造は、柱状部分から突出しており、ステージ構造を支持する支持梁と、支持梁をステージ構造に緊結する緊結構造と、を備える。緊結構造は、ステージ構造から下方に延びる側部、及び、側部の下端に位置しており支持梁が載せられる下部を有する梁支持部と、ボルト及びナットを含む緊結材とを有する。梁支持部の下部には、ボルトが挿入されるインサート孔と、インサート孔の下端に位置しておりボルトに締結されるナットが下から入り込む穴部とが形成されている。穴部は、回転しようとするナットが当接する内面によって画成されている。
【0008】
この固定構造は、ステージ構造を支持する柱状部分の支持梁を備え、支持梁は緊結構造によってステージ構造に緊結される。緊結構造は支持梁を支持する梁支持部と緊結材とを備え、梁支持部は、ステージ構造から下方に延びる側部と、側部の下端において支持梁を支持する下部とを有する。梁支持部の下部には、インサート孔と、インサート孔の下端に位置する穴部が形成されている。緊結材は、インサート孔に挿入されるボルトと、インサート孔の下端に形成された穴部でボルトに締結されるナットとを有し、穴部は回転しようとするナットが当接する内面によって画成されている。従って、上からインサート孔にボルトを挿入し、穴部に嵌め込んだナットでボルトを締結した後には、穴部でナットが回転しようとしても穴部の内面にナットが当接するので、穴部におけるナットの回転が内面に当接することで規制される。従って、支持梁及び緊結構造の下部においてナットに緩みが生じることがないので、下からのボルト及びナットの点検を不要とすることができる。よって、足場を組んで下からボルト及びナットの点検をする必要がないため、ボルト及びナットの点検作業を容易に行うことができる。
【0009】
緊結構造は、ナット、及びナットから下方に突出するボルトを被覆するキャップを備えてもよい。この場合、キャップによって下方に突出するボルトとナットを保護することが可能になるので、ボルト及びナットの腐食を抑制できる。従って、下部からのボルト及びナットの点検を不要とできるので、ボルト及びナットの点検作業を一層容易に行うことができる。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、ボルト及びナットの点検を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施形態に係る固定構造が適用される対象の一例である洋上風力発電装置を示す側面図である。
図2図1の洋上風力発電装置の基礎及びトランジションピースを示す側面図である。
図3図2のトランジションピースを示す斜視図である。
図4図2のトランジションピースの着船設備を示す斜視図である。
図5図2のトランジションピースの外部プラットフォームを示す斜視図である。
図6図2のトランジションピースの各プラットフォームを模式的に示す断面斜視図である。
図7図2のトランジションピースの外部プラットフォームを上方から見た斜視図である。
図8図2のトランジションピースの外部プラットフォームを下方から見た斜視図である。
図9図8の外部プラットフォームのステージ構造と柱状部分から延び出す支持梁とを示す斜視図である。
図10図9のステージ構造の上側に露出するキャップを示す斜視図である。
図11図10のキャップを外して露出するボルト及びナットを示す斜視図である。
図12図11のボルト及びナットを図10とは異なる方向から見た斜視図である。
図13図9のステージ構造に支持梁を緊結する緊結構造を示す斜視図である。
図14図13の緊結構造の側部及び下部を示す斜視図である。
図15図14の下部に形成されたインサート孔及び穴部に挿通されたボルト、ナット及びキャップを模式的に示す断面図である。
図16図15の下部からキャップを外した状態を示す斜視図である。
図17図15の穴部を下から見た斜視図である。
図18図15の穴部に嵌まったナットを示す底面図である。
図19】実施形態に係るトランジションピース、タワー、及び傾き矯正部材を示す斜視図である。
図20】(a)は、図19の傾き矯正部材を示す平面図である。(b)は、図19の傾き矯正部材を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下では、図面を参照しながら本開示に係る固定構造の実施形態について説明する。なお、本発明は、以下の例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲に示され、特許請求の範囲と均等の範囲における全ての変更が含まれることが意図される。図面の説明において同一又は相当する要素には同一の符号を付し、重複する説明を適宜省略する。また、図面は、理解の容易化のため、一部を簡略化又は誇張して描いている場合があり、寸法比率等は図面に記載のものに限定されない。
【0013】
本実施形態に係る固定構造は、洋上構造物の基礎に設置された筒状のトランジションピースにおける固定構造である。洋上構造物は、例えば、風力発電機である。以下では、風力発電機に固定構造が適用される例について説明する。
【0014】
図1は、本実施形態に係る固定構造が適用される一例としての風力発電機1を示す側面図である。図2は、風力発電機1の基礎2及びトランジションピース3を示す側面図である。図1及び図2に示されるように、風力発電機1は、例えば、海底Bに設けられており、洋上風力発電を行う。但し、風力発電機1は、海洋に限られず、例えば、湖又は河川等、海洋とは異なる水中に設けられていてもよい。
【0015】
風力発電機1は、基礎2と、基礎2に設置されるトランジションピース3と、トランジションピース3に固定されるタワー4と、タワー4の上部に取り付けられたナセル5と、ナセル5に取り付けられたブレード6と、を備える。タワー4は、例えば、コンクリート製又は鋼製である。ナセル5の内部には発電機及び増速器等が収容されており、例えば、増速器からはローター軸がナセル5の外部に突出している。
【0016】
ブレード6は、ナセル5のローター軸に固定されている。風力発電機1は、例えば、3枚のブレード6を備える。ブレード6が風を受けて回転すると、この回転はナセル5の内部の増幅器により一定の回転数に上げられて、この回転運動はナセル5の内部の発電機によって電力に変換される。例えば、ナセル5は、風向風速計を備えており、風速及び風向に対応してローターの向きとブレード6の角度を制御することにより、効率的な発電を行う。
【0017】
風力発電機1は、例えば、モノパイルの基礎形式を備えており、モノパイルである基礎2の上方にトランジションピース3が設けられる。風力発電機1は、水中Wに打設されたモノパイルである基礎2と、基礎2から上方に延びると共にタワー4の下端に接続されたトランジションピース3とを備える。なお、基礎2は、モノパイルの基礎形式に代えて、トリパイル式の洋上風力基礎、又はジャケット式の洋上風力基礎を備えていてもよく、基礎2の形式は特に限定されない。
【0018】
例えば、海底Bにおける基礎2の周辺には、洗掘防止工7が設けられており、洗掘防止工7により海底Bの基礎2の周辺における地盤の洗掘が防止されている。例えば、水平面で切断したときの基礎2の断面形状は円形状とされている。一例として、基礎2は筒状を呈する。
【0019】
基礎2は、例えば、基礎2の内外に水が流出入する孔部2bを有する。基礎2の直径は、例えば、4m以上(一例として6m)である。基礎2は、例えば、水中Wに打ち込まれる円筒状の下部2cと、下部2cの上端から上方に向かうに従って徐々に縮径する上部2dとを有する。上部2dにはトランジションピース3が設置される。
【0020】
図3は、トランジションピース3を示す斜視図である。トランジションピース3は、風力発電機1の鉛直度を確保するために設けられる。図2及び図3に示されるように、トランジションピース3は、鉛直方向D1に沿って延びる筒状の柱状部分3bと、柱状部分3bの上端に位置する外部プラットフォーム10とを有する。トランジションピース3は、柱状部分3bを有する構造物に相当する。
【0021】
柱状部分3bは、例えば、外部プラットフォーム10が載せられる上部3dと、上部3dの下端から下方に向かうに従って徐々に拡径する下部3fとを有する。外部プラットフォーム10は、柱状部分3bの上端から水平方向に突出するように柱状部分3bに設置されている。
【0022】
トランジションピース3の下部3fは基礎2の上部2dが通される部位である。例えば、下部3fと基礎2の上部2dの間にグラウトが充填されることによって基礎2にトランジションピース3が接合(グラウト接合)する。なお、基礎にトランジションピースを接合する手段は、上記のグラウト接合に限られない。基礎にトランジションピースを接合する手段は、例えば、ボルト接合であってもよく特に限定されない。また、基礎に予め(例えば海底Bに打ち込まれる前に)トランジションピースが接合されていてもよい。
【0023】
例えば、トランジションピース3は、柱状部分3bに作業者が乗り降りするための梯子3hと、作業者が休むためのレストプラットフォーム3jとを備える。梯子3hは、例えば、柱状部分3bの下部3fから柱状部分3bの上端まで延在している。トランジションピース3は、例えば、複数のレストプラットフォーム3jを有し、複数のレストプラットフォーム3jのそれぞれが梯子3hの複数の途中部分のそれぞれに設けられる。
【0024】
図4は、トランジションピース3の柱状部分3bの一部を拡大した斜視図である。図3及び図4に示されるように、トランジションピース3は電線配管3kとグラウト配管3mとを有する。電線配管3kは、例えば、ICCP(Impressed Current Cathodic Protection:陰極防食)用の電線を収容する。
【0025】
トランジションピース3は、例えば、柱状部分3bから突出するように配置された電極3rを有する。電極3rは、水中Wに配置される陽極(ICCPシステムの外部陽極)である。電極3rに電流が流れることにより、トランジションピース3の各部の電位差によって生じる電食を抑制する。グラウト配管3mは、基礎2にトランジションピース3を固定するグラウトが通る配管である。
【0026】
トランジションピース3は柱状部分3bに着船設備3gを有する。着船設備3gには、トランジションピース3に上ってトランジションピース3で作業をする作業者が乗る船が到着する。着船設備3gは、例えば、鉛直方向D1に沿って延びる2本のポール3pと、ポール3pを柱状部分3bに接合する複数の接合部材3qとを備える。
【0027】
2本のポール3pの間には、作業者を乗せた船の船首が入り込む。例えば、2本のポール3pの間隔は、当該船から作業者がアクセスできる程度の広さとされている。2本のポール3pの間には梯子3hが設けられる。よって、船から下りた作業者が梯子3hを使ってトランジションピース3の外部プラットフォーム10に上ることが可能である。
【0028】
例えば、ポール3pの上方にはレストプラットフォーム3jが設けられる。例えば、着船設備3gの複数の接合部材3qは、ポール3pに沿って並ぶように配置されている。接合部材3qは、例えば、柱状部分3bから突出する柱状とされており、各ポール3pと柱状部分3bとを互いに接続する。ポール3p及び複数の接合部材3qは、例えば、一体化されている。
【0029】
図5は、トランジションピース3の外部プラットフォーム10を示す斜視図である。外部プラットフォーム10は、上部プラットフォームとも称される。外部プラットフォーム10は、タワー4の下端が接合されると共に、荷物が載置されるプラットフォームである。外部プラットフォーム10は、例えば、クレーン10bと、電源装置10cと、階段10dとを備える。
【0030】
外部プラットフォーム10は梯子3hの上端に設けられており、作業者が梯子3hを上って外部プラットフォーム10に入ることが可能である。例えば、クレーン10bはダビッドクレーンであり、電源装置10cはクレーン10bに電力を供給するクレーン電源装置である。
【0031】
タワー4は、外部プラットフォーム10からトランジションピース3及びタワー4の内部に出入り可能とされた開口4bを有する。作業者は開口4bからトランジションピース3の内部に移動することが可能である。タワー4の開口4bは、例えば、タワー4の下端よりも高い位置に設けられており、作業者は開口4bの前にある階段10dを上って開口4bに入ることが可能である。
【0032】
トランジションピース3は、例えば、柱状部分3bの上端部分に位置するフランジ部3y(図7参照)を有し、タワー4はその下端に位置するフランジ部4cを有する。例えば、トランジションピース3のフランジ部3yは柱状部分3bの上端において柱状部分3bの径方向外側及び径方向内側に突出する部位であり、タワー4のフランジ部4cはタワー4の下端においてタワー4の径方向外側及び径方向内側に突出する部位である。しかしながら、例えばトランジションピース3のフランジ部は柱状部分3bの上端において柱状部分3bの径方向内側のみに突出する部位であってもよく、タワー4のフランジ部4cはタワー4の下端においてタワー4の径方向内側のみに突出する部位であってもよい。トランジションピース3及びタワー4の内部には、トランジションピース3及びタワー4の各機器を操作するコンピュータ等が配置されている。
【0033】
トランジションピース3のフランジ部3y及びタワー4のフランジ部4cは、トランジションピース3の周方向D2に沿って並ぶと共に鉛直方向D1に貫通する複数の貫通孔(不図示)を有する。トランジションピース3のフランジ部3yの各貫通孔、及びタワー4のフランジ部4cの各貫通孔にボルトが挿通され当該ボルトがナットで締め付けられることにより、トランジションピース3にタワー4が接合される。
【0034】
図6は、トランジションピース3の内部構造を示す分解斜視図である。図6に示されるように、トランジションピース3は、水平方向に延在する部位を有するプラットフォーム3cを備える。プラットフォーム3cは、前述した外部プラットフォーム10と、複数のケーブルがまとめられるケーブルターミネーションプラットフォーム20と、鉛直上方への空気の流入を遮断するエアタイトプラットフォーム30と、基礎2が接合される接合部40Aの上側に位置する下部プラットフォーム40とを備える。トランジションピース3の内部には梯子3xが設けられており、梯子3xを用いて外部プラットフォーム10からケーブルターミネーションプラットフォーム20、エアタイトプラットフォーム30及び下部プラットフォーム40に降りることが可能である。
【0035】
ケーブルターミネーションプラットフォーム20は、外部プラットフォーム10の下方且つエアタイトプラットフォーム30の上方に設けられる。ケーブルターミネーションプラットフォーム20は、水中Wからのケーブルがタワー4のケーブルに接続されるプラットフォームである。
【0036】
エアタイトプラットフォーム30は、ケーブルターミネーションプラットフォーム20の下方且つ下部プラットフォーム40の上方に設けられる。エアタイトプラットフォーム30は、トランジションピース3の上部と下部との空気流通を遮断するプラットフォームである。エアタイトプラットフォーム30は、海水からの空気を遮断する機能を有する。
【0037】
エアタイトプラットフォーム30は、例えば、炭素鋼によって構成されており、錆が生じないように塗装されている。このエアタイトプラットフォーム30が海水からの空気を遮断することにより、エアタイトプラットフォーム30より上方におけるトランジションピース3の内部空間を腐食しにくい(錆等が生じにくい)環境とすることが可能である。
【0038】
下部プラットフォーム40は、例えば、基礎2にトランジションピース3を設置する作業が行われるプラットフォームである。一例として、下部プラットフォーム40では、基礎2の上部2dとトランジションピース3の下部3fとの間(接合部40A)にグラウトが充填され、当該グラウトが硬化することによって基礎2にトランジションピース3をグラウト接合させる作業が行われる。例えば、トランジションピース3の下部プラットフォーム40より下方の部位が基礎2に接合される接合部40Aに相当する。
【0039】
図7は、タワー4が設置されていない状態における外部プラットフォーム10を示す斜視図である。図7に示されるように、外部プラットフォーム10は、例えば、トランジションピース3の柱状部分3bの直上に位置する円弧状部分10Aと、円弧状部分10Aから張り出す矩形状部分10Bとを有する。例えば、クレーン10b及び電源装置10cは矩形状部分10Bに設けられる。
【0040】
外部プラットフォーム10は、外部プラットフォーム10の外縁に沿って設けられる手摺10fを備える。例えば、外部プラットフォーム10には、複数の荷物10gが載せられている。例えば、外部プラットフォーム10及びケーブルターミネーションプラットフォーム20のそれぞれには手摺構造50が配置されている。図7では、外部プラットフォーム10のフランジ部3yの内側に手摺構造50が配置された例を示している。
【0041】
図8は、外部プラットフォーム10を下側から見た斜視図である。本実施形態に係る固定構造60は、例えば、柱状部分3bと外部プラットフォーム10との連結部分に設けられる。外部プラットフォーム10は、柱状部分3bに対して外側に張り出すステージ構造11を有し、例えば、ステージ構造11に円弧状部分10A及び矩形状部分10Bが含まれる。固定構造60は、柱状部分3bへのステージ構造11の固定構造である。
【0042】
ステージ構造11の下面11bには、ステージ構造11の長手方向D3に延在する複数の第1梁12と、ステージ構造11の短手方向D4に延在する複数の第2梁13と、柱状部分3bの径方向の外側に延在する複数の第3梁14とが固定されている。更に、ステージ構造11の下面11bには、ステージ構造11の外周に沿って延びる外周梁部17と、柱状部分3bの径方向外側において環状に延びる内周梁部15とが固定されている。
【0043】
固定構造60は、柱状部分3bから突出する支持梁61と、支持梁61をステージ構造11に緊結する緊結構造70とを備える。支持梁61は、ステージ構造11を支持するために設けられる。柱状部分3bからは複数の支持梁61が突出するように配置されている。例えば、支持梁61は、長手方向D3に沿って延びる第1支持梁61Aと、柱状部分3bから柱状部分3bの径方向外側に延びる第2支持梁61Bとを含む。
【0044】
一例として、第1支持梁61Aは第2支持梁61Bよりも長い。例えば、第1支持梁61Aは第1梁12に固定され、第2支持梁61Bは内周梁部15に固定される。第2支持梁61Bの構成は、例えば、第1支持梁61Aの構成と同一である。従って、以下では、第1支持梁61A及び第2支持梁61Bを識別する必要がない場合には支持梁61としてまとめて説明する。
【0045】
図9は、ステージ構造11の下面11b、支持梁61(第1支持梁61A)及び緊結構造70を示す斜視図である。図9に示されるように、緊結構造70は、柱状部分3bから延び出す支持梁61を支持する梁支持部73を備える。梁支持部73は、ステージ構造11から下方に延びる側部71と、側部71の下端に位置しており支持梁61が載せられる下部72とを有する。
【0046】
例えば、緊結構造70は、側部71から支持梁61及び第1梁12の間に入り込む挿入部74と、側部71の上端に位置する上端部75とを有する。図10は、側部71の上端部75を示す斜視図である。図10に示されるように、ステージ構造11の上面には、例えば、複数のグレーチング16が設けられており、各グレーチング16は着脱可能とされている。ステージ構造11では、グレーチング16を外したときにステージ構造11の下方を視認可能とされており、上端部75はグレーチング16が外された状態で上方に露出する。
【0047】
上端部75には、キャップ80が設けられる。図11は、上端部75からキャップ80が外された状態を示す斜視図である。図9図11に示されるように、緊結構造70は、ボルト76及びナット77を含む緊結材78を備え、キャップ80はボルト76及びナット77を含む緊結材78を保護する。キャップ80を有しない状態でボルト76及びナット77は上方に露出している。
【0048】
図12は、緊結材78を図11とは異なる方向から見た斜視図である。図13は、緊結構造70を示す斜視図である。図12及び図13に示されるように、ボルト76は側部71の内部において鉛直方向D1に延在しており、ボルト76の上端及び下端のそれぞれにナット77が締結されている。例えば、上端部75に露出するボルト76には2個のナット77が締結されており、ナット77と上端部75の上面との間にはワッシャ79が介在している。
【0049】
図14は、緊結構造70を示す斜視図である。図13及び図14に示されるように、緊結構造70は、支持梁61の幅方向D5に沿って並ぶ一対の側部71と、一対の側部71の下端同士を連結する下部72と、一対の側部71の間で幅方向D5に延びる挿入部74とを有する。更に、緊結材78は、各側部71に挿通される2本のボルト76、及びボルト76の上端及び下端のそれぞれに締結される複数のナット77を有する。
【0050】
図15は、下部72、ボルト76及びナット77を示す縦断面図である。図16は、図14からキャップ80が外された状態を示す斜視図である。図15及び図16に示されるように、側部71及び下部72には、ボルト76が挿入されるインサート孔70bが形成されており、例えば、インサート孔70bは鉛直方向D1に沿って延在する。
【0051】
梁支持部73の下部72には、インサート孔70bの下端に位置しておりボルト76に締結されるナット77が下から入り込む穴部90が形成されている。穴部90に入り込んだナット77、及びナット77から下方に突出するボルト76は、キャップ80に被覆される。
【0052】
キャップ80は、例えば、樹脂製である。一例として、キャップ80は、高密度ポリエチレン(HDPE:High Density Poly Ethylene)によって構成されている。この場合、キャップ80の剛性及び耐久性を高めることができる。キャップ80は、有底筒状(例えば有底円筒状)を呈する。キャップ80は、ナット77が入り込む第1部分81と、ナット77から突出するボルト76がねじ込まれる第2部分82とを有する。
【0053】
第1部分81は、キャップ80の開口83からキャップ80の軸線方向に延在しており、内側面81bと、底面81cとを有する。第2部分82は、第1部分81の底面81cからキャップ80の軸線方向に延在する穴である。キャップ80は、第2部分82にボルト76がねじ込まれると共に第1部分81でナット77を覆うことにより、ボルト76及びナット77を保護する。
【0054】
図17は、穴部90を下方から見た斜視図である。図18は、穴部90、及びナット77の外形を示す図である。図17及び図18に示されるように、穴部90は、回転しようとするナット77が当接する内面91によって画成されている。穴部90は、複数の内面91と、インサート孔70bが形成された底面92とによって画成されている。
【0055】
下方から見た穴部90の形状は、例えば、ナット77の形状と同一形状とされている。具体的には、穴部90の形状は、例えばナット77の形状と同一形状のナット形状を呈する。「ナット形状」とは、穴部に嵌まったナットの回転を規制可能な形状を示している。「ナット形状」は、ナットの形状と厳密に同一でなくてもよく、ナットの形状と異なっていてもナットの回転を規制できる形状であればよい。
【0056】
例えば、穴部90にナット77が嵌まり込んだ状態において、穴部90の複数の内面91のそれぞれは、ナット77の外面77bのそれぞれと正対する。一例として、穴部90は6つの内面91を有し、ナット77は6つの外面77bを有し、穴部90にナット77が嵌まり込んだ状態において各外面77bは各内面91に近接している。以上のように形成される内面91が穴部90に設けられることにより、穴部90に嵌まったナット77の回転を確実に規制することができる。
【0057】
次に、本実施形態に係る固定構造60の作用効果について詳細に説明する。図15図17に示されるように、固定構造60は、ステージ構造11を支持する柱状部分3bの支持梁61を備え、支持梁61は緊結構造70によってステージ構造11に緊結される。緊結構造70は支持梁61を支持する梁支持部73と緊結材78とを備え、梁支持部73は、ステージ構造11から下方に延びる側部71と、側部71の下端において支持梁61を支持する下部72とを有する。
【0058】
梁支持部73の下部72には、インサート孔70bと、インサート孔70bの下端に位置する穴部90が形成されている。緊結材78は、インサート孔70bに挿入されるボルト76と、インサート孔70bの下端に形成された穴部90でボルト76に締結されるナット77とを有し、穴部90は回転しようとするナット77が当接する内面91によって画成されている。
【0059】
従って、穴部90でナット77の回転が規制されることにより、支持梁61及び緊結構造70の下部72においてナット77に緩みが生じることがないので、下からのボルト76及びナット77の点検を不要とすることができる。よって、足場を組んで下からボルト76及びナット77の点検をする必要がないため、ボルト76及びナット77の点検作業を容易に行うことができる。なお、上端部75におけるボルト76及びナット77の点検は必要であるが、本実施形態では、上端部75の点検のみとすることが可能である。
【0060】
本実施形態において、緊結構造70は、ナット77、及びナット77から下方に突出するボルト76を被覆するキャップ80を備える。よって、キャップ80によって下方に突出するボルト76とナット77を保護することが可能になるので、ボルト76及びナット77の腐食を抑制できる。従って、下方からのボルト76及びナット77の点検の必要性を一層低減できるので、ボルト76及びナット77の点検作業を一層容易に行うことができる。
【0061】
以上、本開示に係る固定構造の実施形態について説明した。しかしながら、本開示に係る固定構造は、前述した実施形態に限定されることなく、特許請求の範囲に記載した要旨の範囲内において適宜変更されたものであってもよい。すなわち、固定構造の各部の構成、形状、大きさ、数、材料及び配置態様は、前述の実施形態に限られず適宜変更可能である。
【0062】
例えば、前述の実施形態では、トランジションピース3のフランジ部3yにタワー4のフランジ部4cが直接載せられる風力発電機1について説明した。しかしながら、図19に示されるように、風力発電機1は、フランジ部3yとフランジ部4cの間に介在する傾き矯正部材100を備えてもよい。傾き矯正部材100は、トランジションピース3とタワー4との間に介在してトランジションピース3に対するタワー4の傾きを矯正する。
【0063】
傾き矯正部材100は、例えば、板状を呈する。フランジ部4cはトランジションピース3にタワー4を固定するボルトが挿通される複数の挿通孔4dを有し、フランジ部3yは挿通孔4dに通されたボルトが通される複数の挿通孔を有する。平面視における挿通孔4dの位置は、平面視におけるフランジ部3yの挿通孔の位置と一致している。
【0064】
図20(a)は、傾き矯正部材100を示す平面図である。図20(b)は、傾き矯正部材100を示す側面図である。図19図20(a)及び図20(b)に示されるように、傾き矯正部材100は、例えば、円環状を呈する。傾き矯正部材100は、フランジ部4cの挿通孔4d、及びフランジ部3yの挿通孔に挿通されるボルトが通される挿通孔101を有する。傾き矯正部材100は複数の挿通孔101を有し、複数の挿通孔101は傾き矯正部材100の周方向D6に沿って並ぶように配置されている。また、2つの挿通孔101が傾き矯正部材100の径方向D7に沿って並んでいる。
【0065】
傾き矯正部材100は、フランジ部3yに接触する下面102と、フランジ部4cに接触する上面103とを有する。上面103は、下面102に対して傾斜している。これにより、傾き矯正部材100は、径方向D7の一方側に位置する肉厚部104と、径方向D7の他方側に位置する肉薄部105とを有する。肉厚部104及び肉薄部105を有する傾き矯正部材100がフランジ部3yとフランジ部4cの間に挿入されることにより、トランジションピース3に対するタワー4の傾きが矯正される。
【0066】
下面102に対する上面103の傾斜角度は、例えば、予めトランジションピース3に対するタワー4の傾斜具合が計測され、計測された傾斜具合に応じて設計される。当該傾斜角度を有する傾き矯正部材100がトランジションピース3とタワー4との間に介在することにより、タワー4の鉛直度をより確実に確保できる。
【0067】
例えば、前述の実施形態では、側部71、下部72、挿入部74、上端部75、ボルト76及びナット77を備える緊結構造70について説明した。緊結構造の構成は上記の例に限られず適宜変更可能である。また、キャップについても、第1部分81及び第2部分82を備えたキャップ80に限られず、材料、形状又は大きさ等を適宜変更可能である。
【0068】
前述の実施形態では、トランジションピース3の外部プラットフォーム10のステージ構造11に設けられる固定構造60について説明した。しかしながら、本開示に係る固定構造は、ケーブルターミネーションプラットフォーム20等、他の場所に設けられる固定構造であってもよい。また、前述の実施形態では、着船設備3g、梯子3h、電線配管3k及びグラウト配管3mを有するトランジションピース3について説明した。しかしながら、トランジションピースの構成要素については、トランジションピース3の前述した例に限られず適宜変更可能である。トランジションピース3のプラットフォーム3cの構造についても適宜変更可能である。
【0069】
前述の実施形態では、基礎2、トランジションピース3、タワー4、ナセル5及びブレード6を備える風力発電機1のトランジションピース3について説明した。しかしながら、基礎、トランジションピース、タワー、ナセル及びブレードの構成は、前述した実施形態に限られず適宜変更可能である。
【0070】
前述の実施形態では、柱状部分3bを有する構造物が風力発電機1のトランジションピース3である例について説明した。しかしながら、本開示に係る固定構造は、風力発電機1のトランジションピース3以外の構造物にも適用可能である。本開示に係る固定構造は、例えば、石油プラットフォーム等の他の洋上構造物、又は洋上構造物以外の構造物にも適用可能である。
【符号の説明】
【0071】
1…風力発電機、2…基礎、2b…孔部、3…トランジションピース(構造物)、3b…柱状部分、3c…プラットフォーム、3g…着船設備、3h…梯子、3j…レストプラットフォーム、3k…電線配管、3m…グラウト配管、3p…ポール、3q…接合部材、3r…電極、3x…梯子、3y…フランジ部、4…タワー、4b…開口、4c…フランジ部、5…ナセル、6…ブレード、7…洗掘防止工、10…外部プラットフォーム、10A…円弧状部分、10b…クレーン、10B…矩形状部分、10c…電源装置、10d…階段、10f…手摺、10g…荷物、11…ステージ構造、11b…下面、12…第1梁、13…第2梁、14…第3梁、15…内周梁部、16…グレーチング、17…外周梁部、20…ケーブルターミネーションプラットフォーム、30…エアタイトプラットフォーム、40…下部プラットフォーム、40A…接合部、50…手摺構造、60…固定構造、61…支持梁、61A…第1支持梁、61B…第2支持梁、70…緊結構造、70b…インサート孔、71…側部、72…下部、73…梁支持部、74…挿入部、75…上端部、76…ボルト、77…ナット、77b…外面、78…緊結材、79…ワッシャ、80…キャップ、81…第1部分、81b…内側面、81c…底面、82…第2部分、83…開口、90…穴部、91…内面、92…底面、100…傾き矯正部材、101…挿通孔、102…下面、103…上面、104…肉厚部、105…肉薄部、B…海底、D1…鉛直方向、D2…周方向、D3…長手方向、D4…短手方向、D5…幅方向、W…水中。

図1
図2
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図4
図5
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