(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-20
(45)【発行日】2025-01-28
(54)【発明の名称】探索装置、システム、探索方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
H04L 45/42 20220101AFI20250121BHJP
H04L 45/16 20220101ALI20250121BHJP
【FI】
H04L45/42
H04L45/16
(21)【出願番号】P 2022057447
(22)【出願日】2022-03-30
【審査請求日】2024-02-02
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和3年度、総務省「新たな社会インフラを担う革新的光ネットワーク技術の研究開発 技術課題III高効率光アクセスメトロ技術」委託事業、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】599108264
【氏名又は名称】株式会社KDDI総合研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】角田 聖也
【審査官】長谷川 未貴
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-174417(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 12/00-101/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ネットワークのリソースを探索する探索装置であって、
前記光ネットワークのリソースの収容情報、および前記光ネットワークのリソース候補の組み合わせを示す収容パターンを取得するデータ取得部と、
前記収容情報および前記収容パターンから、前記リソース候補の組み合わせのうちいずれかが収容可能か否かを判断できる探索データをN次元高速離散フーリエ変換で算出する探索データ算出部と、
前記探索データの要素のうち、所定のしきい値より大きくなる前記要素から前記光ネットワークの収容可能な前記リソース候補の組み合わせを示す収容可能パターンを算出する収容可能パターン算出部と、を備えることを特徴とする探索装置。
【請求項2】
前記収容パターンは、前記収容パターンのある軸の要素を循環シフトさせて等しくなる複数の前記収容パターンを集約した探索パターンであり、
前記収容可能パターン算出部は、前記収容パターンと前記探索パターンとの関係を示すマッピング情報から前記収容可能パターンを算出することを特徴とする請求項1記載の探索装置。
【請求項3】
前記収容情報の各軸の最大値から前記収容パターンを作成し、作成した前記収容パターンから前記探索パターンおよび前記マッピング情報を作成する探索パターン作成部をさらに備えることを特徴とする請求項2記載の探索装置。
【請求項4】
前記収容情報および前記収容パターンは、少なくとも周波数軸を含み、
前記探索パターンは、所定の個数連続する周波数スロットの組み合わせが選択される前記リソース候補の組み合わせを含むことを特徴とする請求項2または請求項3記載の探索装置。
【請求項5】
前記収容情報および前記収容パターンは、少なくともコア軸を含み、
前記探索パターンは、所定の限定されたコアの組み合わせが選択される前記リソース候補の組み合わせのみ含むことを特徴とする請求項2から請求項4のいずれかに記載の探索装置。
【請求項6】
前記収容情報および前記収容パターンは、少なくともリンク軸を含み、
前記探索パターンは、複数の異なるパスのリソースが選択される前記リソース候補の組み合わせを含むことを特徴とする請求項2から請求項5のいずれかに記載の探索装置。
【請求項7】
光ネットワークのリソースを探索し、設定するシステムであって、
請求項1から請求項6のいずれかに記載の探索装置と、
前記探索装置に算出された前記収容可能パターンに基づいて、前記光ネットワークのリソースを設定する設定装置と、
前記光ネットワークのリソースの探索および設定に必要な情報が管理されるネットワークリソース管理DBと、を含むことを特徴とするシステム。
【請求項8】
光ネットワークのリソースを探索する探索方法であって、
前記光ネットワークのリソースの収容情報、および前記光ネットワークのリソース候補の組み合わせを示す収容パターンを取得するデータ取得ステップと、
前記収容情報および前記収容パターンから、前記リソース候補の組み合わせのうちいずれかが収容可能か否かを判断できる探索データをN次元高速離散フーリエ変換で算出する探索データ算出ステップと、
前記探索データの要素のうち、所定のしきい値より大きくなる前記要素から前記光ネットワークの収容可能な前記リソース候補の組み合わせを示す収容可能パターンを算出する収容可能パターン算出ステップと、を含むことを特徴とする探索方法。
【請求項9】
光ネットワークのリソースを探索するプログラムであって、
前記光ネットワークのリソースの収容情報、および前記光ネットワークのリソース候補の組み合わせを示す収容パターンを取得する処理と、
前記収容情報および前記収容パターンから、前記リソース候補の組み合わせのうちいずれかが収容可能か否かを判断できる探索データをN次元高速離散フーリエ変換で算出する処理と、
前記探索データの要素のうち、所定のしきい値より大きくなる前記要素から前記光ネットワークの収容可能な前記リソース候補の組み合わせを示す収容可能パターンを算出する処理と、の一連の処理をコンピュータに実行させることを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の伝送路を有するネットワークにおける通信チャネルのリソースを探索する探索装置、システム、探索方法、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
トラフィック需要は依然増加傾向である。しかし、基幹ネットワークを構成するシングルコアファイバ1本で伝送可能な容量は物理限界に近づきつつある。そのため、複数のシングルコアファイバやマルチコアファイバを用いたネットワーク構築の必要性が高まっている。
【0003】
また、複数種の周波数帯域幅の光パスが混在するネットワーク(Flex-grid)において、周波数軸方向の連続性(contiguity)を満たす経路・周波数帯域を探索することは、全ての光パスの周波数帯域幅が等しいネットワーク(Fixed-grid)に比べて計算量が大きくなる。また、上記の複数コアを用いてネットワークを構築した場合、経路中で使用するコアの組み合わせが増加し、さらに計算量が膨大となる。
【0004】
非特許文献1では、複数のコアを持つマルチコアファイバ環境において、光パス中の各リンク(ファイバ)において任意に割り当てコアを選択できるコアスイッチング構成にすることによって、収容可能性が向上することが説明されている。また、複数の割り当て規則による収容効率の違いに関して評価している。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【文献】H.Tode,and Y.Hirota,“Routing,Spectrum,and core and/or mode assignment on space division multiplexing optical networks” J.Opt.Commun.Netw,Vol.9,No.1,pp.99-113 Jan.2017.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
非特許文献1は、ある決まった規則でリソース探索を行い、リソースが空いていれば即時割り当てを行うアルゴリズムに関する評価であり、リソースの全探索に関する計算速度の定量的評価は行われていない。さらに収容率を高める場合や、ネットワーク運用者側で最終的な収容位置を決定したい場合などでは、リソースの全探索が必要になる。
【0007】
しかしながら、既存のシングルコアファイバの複数使用や将来のマルチコアファイバの使用によって、マルチコア環境で光ファイバネットワークを構築した際、コアスイッチング可能とすると各リンクにおけるコア選択の組み合わせ数は膨大となり、リソース全探索は計算時間が課題となる。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、複数の伝送路を有するネットワークにおける通信チャネルのリソースを探索する探索装置、システム、探索方法、およびプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)上記の目的を達成するため、本発明は、以下のような手段を講じた。すなわち、本発明の探索装置は、光ネットワークのリソースを探索する探索装置であって、前記光ネットワークのリソースの収容情報、および前記光ネットワークのリソース候補の組み合わせを示す収容パターンを取得するデータ取得部と、前記収容情報および前記収容パターンから、前記リソース候補の組み合わせのうちいずれかが収容可能か否かを判断できる探索データをN次元高速離散フーリエ変換で算出する探索データ算出部と、前記探索データの要素のうち、所定のしきい値より大きくなる前記要素から前記光ネットワークの収容可能な前記リソース候補の組み合わせを示す収容可能パターンを算出する収容可能パターン算出部と、を備える。
【0010】
このように、N次元高速離散フーリエ変換で探索データを算出し、所定のしきい値より大きくなる要素から光ネットワークの収容可能なリソース候補の組み合わせを示す収容可能パターンを算出することで、リソース探索の組み合わせが膨大になった場合でもこれまでより短時間でリソース探索をすることができ、全探索も容易にできる。
【0011】
(2)また、本発明の探索装置において、前記収容パターンは、前記収容パターンのある軸の要素を循環シフトさせて等しくなる複数の前記収容パターンを集約した探索パターンであり、前記収容可能パターン算出部は、前記収容パターンと前記探索パターンとの関係を示すマッピング情報から前記収容可能パターンを算出する。
【0012】
これにより、リソース探索時間をさらに短縮できる。
【0013】
(3)また、本発明の探索装置は、前記収容情報の各軸の最大値から前記収容パターンを作成し、作成した前記収容パターンから前記探索パターンおよび前記マッピング情報を作成する探索パターン作成部をさらに備える。
【0014】
これにより、探索装置が自動的に収容パターンおよび探索パターンを作成するので、ユーザが入力する必要がある情報が少なくなり、探索装置を扱いやすくなる。
【0015】
(4)また、本発明の探索装置において、前記収容情報および前記収容パターンは、少なくとも周波数軸を含み、前記探索パターンは、所定の個数連続する周波数スロットの組み合わせが選択される前記リソース候補の組み合わせを含む。
【0016】
これにより、周波数軸方向に所定の個数連続する周波数スロットの組み合わせを含むリソースを探索できる。
【0017】
(5)また、本発明の探索装置において、前記収容情報および前記収容パターンは、少なくともコア軸を含み、前記探索パターンは、所定の限定されたコアの組み合わせが選択される前記リソース候補の組み合わせのみ含む。
【0018】
これにより、所定の限定されたコアの組み合わせを含むリソースのみを探索できる。
【0019】
(6)また、本発明の探索装置において、前記収容情報および前記収容パターンは、少なくともリンク軸を含み、前記探索パターンは、複数の異なるパスのリソースが選択される前記リソース候補の組み合わせを含む。
【0020】
これにより、複数の異なるパスのリソースの組み合わせを含むリソースを同時に探索できる。
【0021】
(7)また、本発明のシステムは、光ネットワークのリソースを探索し、設定するシステムであって、上記(1)から(6)のいずれかに記載のリソース探索装置と、前記リソース探索装置に算出された前記収容可能パターンに基づいて、前記光ネットワークのリソースを設定する設定装置と、前記光ネットワークのリソースの探索および設定に必要な情報が管理されるネットワークリソース管理DBと、を含む。
【0022】
これにより、リソース探索の組み合わせが膨大になった場合でもこれまでより短時間でリソース探索をすることができ、全探索も容易にできるので、リソースの設定も短時間に容易にできる。
【0023】
(8)また、本発明のリソース探索方法は、光ネットワークのリソースを探索するリソース探索方法であって、前記光ネットワークのリソースの収容情報、および前記光ネットワークのリソース候補の組み合わせを示す収容パターンを取得するデータ取得ステップと、前記収容情報および前記収容パターンから、前記リソース候補の組み合わせのうちいずれかが収容可能か否かを判断できる探索データをN次元高速離散フーリエ変換で算出する探索データ算出ステップと、前記探索データの要素のうち、所定のしきい値より大きくなる前記要素から前記光ネットワークの収容可能な前記リソース候補の組み合わせを示す収容可能パターンを算出する収容可能パターン算出ステップと、を含む。
【0024】
このように、N次元高速離散フーリエ変換で探索データを算出し、所定のしきい値より大きくなる要素から光ネットワークの収容可能なリソース候補の組み合わせを示す収容可能パターンを算出することで、リソース探索の組み合わせが膨大になった場合でもこれまでより短時間でリソース探索をすることができ、全探索も容易にできる。
【0025】
(9)また、本発明のプログラムは、光ネットワークのリソースを探索するリソース探索プログラムであって、前記光ネットワークのリソースの収容情報、および前記光ネットワークのリソース候補の組み合わせを示す収容パターンを取得する処理と、前記収容情報および前記収容パターンから、前記リソース候補の組み合わせのうちいずれかが収容可能か否かを判断できる探索データをN次元高速離散フーリエ変換で算出する処理と、前記探索データの要素のうち、所定のしきい値より大きくなる前記要素から前記光ネットワークの収容可能な前記リソース候補の組み合わせを示す収容可能パターンを算出する処理と、の一連の処理をコンピュータに実行させる。
【0026】
このように、N次元高速離散フーリエ変換で探索データを算出し、所定のしきい値より大きくなる要素から光ネットワークの収容可能なリソース候補の組み合わせを示す収容可能パターンを算出することで、リソース探索の組み合わせが膨大になった場合でもこれまでより短時間でリソース探索をすることができ、全探索も容易にできる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、リソース探索の組み合わせが膨大になった場合でもこれまでより短時間でリソース探索をすることができ、全探索も容易にできる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】Flex-gridのネットワークにおいて、4つの連続する周波数帯域の空きリソースを探索する例を示す概念図である。
【
図2】マルチコアの光ファイバケーブルを使用した光ネットワークのネットワークトポロジーおよび光ファイバケーブルの例を示す模式図である。
【
図3】あるリンクの周波数の収容状況を示す模式図である。
【
図4】ノードA-B-C-Dを通るパスを示す模式図である。
【
図5】ノードA-B-C-Dを通るパスおよび各リンクの使用状況を示す模式図である。
【
図6】それぞれのリンクにおける収容情報を、空きを黒、使用済みを白で表した模式図である。
【
図7】それぞれのリンクにおける収容パターンを、使用するリソースを黒、使用しないリソースを白で表した模式図である。
【
図8】収容パターン、探索パターン、およびマッピング情報を示す模式図である。
【
図9】収容情報およびそれをFFTした変換済収容情報を示す模式図である。
【
図10】探索パターンおよびそれをFFTして複素共役をとった変換済探索パターンを示す模式図である。
【
図11】変換済収容情報、変換済探索パターン、およびその要素積を示す模式図である。
【
図12】要素積、および探索データを示す模式図である。
【
図15】収容情報、探索パターン、および探索データを示す模式図である。
【
図16】本実施形態に係る探索装置の概略構成の一例を示すブロック図である。
【
図17】本実施形態に係る探索装置の概略構成の変形例を示すブロック図である。
【
図18】リソースの探索、設定をするシステムの概略構成の一例を示すブロック図である。
【
図19】(a)~(c)、それぞれ探索装置および設定装置と各ノードの関係を示す模式図である。
【
図20】(a)~(c)、それぞれ探索装置、設定装置、およびネットワークリソース管理DBと各ノードの関係を示す模式図である。
【
図21】探索装置の動作の一例を示すフローチャートである。
【
図22】探索装置の動作の変形例を示すフローチャートである。
【
図23】計算速度の比較試験の結果を示すグラフである。
【0029】
次に、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては同一の参照番号を付し、重複する説明は省略する。
【0030】
[原理]
複数種の周波数帯域幅の光パスが混在するネットワーク(Flex-grid)において、周波数軸方向の連続性(contiguity)を満たす経路・周波数帯域を探索することは、全ての光パスの周波数帯域幅が等しいネットワーク(Fixed-grid)に比べて計算量が大きくなる。
【0031】
図1は、Flex-gridのネットワークにおいて、4つの連続する周波数帯域の空きリソースを探索する例を示す概念図である。例えは、全4000GHzの周波数リソースにおいて、50GHzの空き帯域を探索することを想定する。50GHzのFixed-gridの場合、探索する必要のある領域は80通りであり、それぞれの領域全体が空いているか使用されているかいずれかであるため、計算量も80である(4000÷50=80(計算量:80))。一方、周波数帯域幅の粒度12.5GHz(1slot)のFlex-gridの場合、探索する必要のある領域は317通りであり、連続した4つのスロットが全て空いていることを確かめる必要があるため、計算量は1268となる(全リソース:320slots、必要帯域幅4slotsよりslotの組み合わせ317通り、4つのslotの空きを確認するため317×4=1268(計算量:1268))。
【0032】
トラフィック需要の増加、シングルコアファイバの容量限界により、複数のコアを使用したネットワークの構築・運用の必要性が高まっている。各局舎間ファイバケーブルのコアを任意に選択可能とする構成(コアスイッチング)では光パスの収容可能性は高くなるが、使用するコアの組み合わせは膨大になり(組合せ爆発)、リソース探索の計算時間が課題となる。
【0033】
図2は、マルチコアの光ファイバケーブルを使用した光ネットワークのネットワークトポロジーおよび光ファイバケーブルの例を示す模式図である。
図2は、ノード(局舎)A、B、C、Dが存在し、AB間、BC間、CD間、AC間、およびAD間にリンクがある。また、各リンクが4つのコアを使用した光ファイバケーブルを使用している。このような場合、例えば、AからDに至るパス(経路)を全て網羅しようとすると、A-B-C-D、A-C-D、A-Dというパスを検討する必要がある。また、コアスイッチングまで考慮すると、そのパスの組み合わせは膨大になる。
【0034】
図3は、あるリンクの周波数の使用状況を示す模式図である。
図3の上段は、コア#0の使用状況を示している。下段は、コア#0から#3の各コアの使用状況について、空きスロットを黒、使用済みスロットを白で表している。このように、各リンクの使用状況は、黒白の図またはこれに対応する1、0の配列で表現することができる。
【0035】
図4は、ノードA-B-C-Dを通るパスを示す模式図である。このとき、探索するコアの組合せは、4
3=64通りとなる。
図5は、ノードA-B-C-Dを通るパスおよび各リンクの使用状況を示す模式図である。使用状況は、
図3と同様に空きを黒(または斜線)、使用済みを白で表している。
図5の例で周波数スロット3の空きリソースを探索した場合、斜線で表示した組合せ等で収容可能である。しかしながら、このような空きリソースを人力で発見することには困難が伴う。
【0036】
そこで、本発明のリソースの探索方法は、周波数の収容状況を空き1、使用済み0と数値で表し(周波数リソースの1次元関数化)、同様に必要な周波数帯域も1次元関数化する。なお、図面では、見た目で分かりやすくするために、黒白の図で表す。これにより、周波数軸方向の連続性を満たす周波数帯域の探索は畳み込み積分(畳み込み和)を取ることとみなすことができる。そして、一般的な畳み込み積分は、以下の数式(1)のように高速離散フーリエ変換(FFT : Fast Fourier Transform)を使用することで高速化できる。
【0037】
【0038】
ここで、A*Bは関数Aと関数Bの畳み込み積分、F[A]、F-1[A]はそれぞれ関数Aのフーリエ変換、逆フーリエ変換、Aの上に―はAの複素共役、A・Bは関数Aと関数Bの要素積である。計算量をオーダ記法(O)で比較すると、標準的な畳み込み積分はO[N2]となるのに対し、FFTを用いた畳み込み積分はO[NlogN](NはAとBの要素数のうち大きい方)となる。
【0039】
ただし、この場合はFFT前の各要素の値が1bitで扱えるのに対して、FFT後の各要素の値は複素数(単精度小数を用いる場合64bits)となるため、計算機上の情報量は増大する。また、オーダ記法上は標準的な畳み込み積分の処理量O[N2]に対して、FFTを用いた処理量O[NlogN]の方が小さくなっている。しかしながら、これは以下の数式(2)の等号が成り立つ場合に限られる。なお、式(2)において、右辺第1項はFFT、右辺第2項は要素積、右辺第3項は逆FFTの計算量を示している。オーダ記法の性質上、Nの値が大きくない場合、式(2)において等号が成り立たず、右辺第2項(要素積)、第3項(逆FFT)等が無視できなくなる場合がある。そのため、標準的な畳み込み積分の方が速い結果となる場合もある。現在、商用環境で使用されている周波数帯域幅・管理粒度であれば、1次元FFTを用いた処理の高速化は優位な結果とはならないことが多い。
【0040】
【0041】
よって、本発明のリソースの探索方法を適用する場合、周波数軸に加えて、マルチコア環境にコアなどの多重化軸、パス中のリンク列等を加えたN次元関数においてN次元FFTを用いることで計算処理高速化を図ることが好ましい。また、FFTを用いた畳み込み積分は、関数を循環シフトさせて積分を取った結果(循環畳み込み積分)が得られる。そのため、この性質を利用して、複数の収容パターンを1つの探索パターンで同時に計算することで処理の高速化を図ることが好ましい。本発明の詳しい探索方法は、以下の実施形態で詳述する。なお、以下の実施形態は、将来技術のマルチコアファイバを例に挙げて説明しているが、本発明は、既存技術のシングルコアファイバを複数用いてマルチコア環境を構築した場合にも適用できる。
【0042】
[実施形態]
(探索方法)
本発明のリソースの探索方法を具体的に説明する。以下では、マルチコアファイバを使用したマルチコア環境において、リンク軸、コア軸、周波数軸の3軸を有し、周波数軸方向の連続性を満たすパス・周波数帯域を探索する場合の説明をする。以下では、
図2に示されるように、ノード(局舎)はA、B、C、Dの4つとし、リンクはリンクIDが#0から#4まで存在するものとする。また、
図3に示されるように、各リンクのコアはコアIDが#0から#3の4つ存在し、周波数スロットは#0から#9の10に分かれているとする。なお、本発明は、ノードの数、リンクの数、コアの数、および周波数スロットの数は上記に限定されない。また、軸の種類および数は限定されず、例えば、時分割多重における時間軸、モード分割多重におけるモード軸等を有し、時間軸やモード軸方向の所定の条件を満たす経路を探索する場合であっても適用できる。
【0043】
以下では、ノードA-B-C-Dを経由する経路を探索する場合について説明する。最初に、光ネットワークのリソースの収容情報を保存するN次元領域を確保する。例えば、リンク軸、コア軸、周波数軸の3軸を有する場合、確保する領域は3次元となる。この際、各次元の要素数は最大のものに揃え、不足している要素は使用済みリソースとして扱う。例えば、3コアのファイバと4コアファイバが混在するネットワークにおいては、コアの次元の要素数は4に揃え、3コアファイバのリンクは4つ目のコアを全て使用済みのコアとして扱う。
【0044】
次に、光ネットワークのリソースの収容情報を取得する。収容情報は、リソースの収容状況を空き1、使用済み0と数値で表したN次元(本実施形態では3次元)の情報である。
図6は、それぞれのリンクにおける収容情報を、空きを黒、使用済みを白で表した模式図である。例えば、特定のリンクおよびコアを指定した収容情報は、周波数スロットごとに1または0を与えたベクトルとして表すことができる。
【0045】
例えば、
図6の収容情報の(リンクID#,コアID#)=(0,0)は、(1,1,0,1,0,1,1,1,1,0)との要素が並び、(1,2)は、(0,1,1,1,0,1,0,1,0,1)との要素が並んでいる様子を示している。
【0046】
また、光ネットワークのリソース候補の組み合わせを示す収容パターンを取得する。収容パターンは、使用するリソースを1、それ以外を0と数値で表したN次元(本実施形態では3次元)の情報である。
図7は、それぞれのリンクにおける収容パターンを、使用するリソースを黒、使用しないリソースを白で表した模式図である。収容パターンは、全ての使用リソース候補の組み合わせを可能な限り全て列挙することが好ましい。例えば、周波数軸方向に3つの連続する周波数帯域を有し、ノードA-B-C-Dを経由する経路を探索する場合、収容パターンは、各リンクのいずれかのコアの3つの連続するスロットが1で、他のコアおよびスロットが0であるパターンが選択される。
【0047】
次に、各収容パターンに対して、各次元の要素を循環シフトさせて等しくなるものを集約した組み合わせを示す探索パターンを作成することが好ましい。
図8は、周波数軸を除くリンク軸、コア軸に対して集約して探索パターンを作成した場合の収容パターン、探索パターン、およびマッピング情報の関係を示す模式図である。
図8の例では、リンク・コアの組み合わせ(収容パターン)64通りに対して、全探索をする際に計算が必要なパターン(探索パターン)は6通りとなる。次に、探索パターンそれぞれに対して、全要素の総和をとり、その結果を判定しきい値Tとして記録する。また、各収容パターンがどの探索パターンをどの次元をそれぞれいくつシフトさせたものと対応しているかを示すマッピング情報を作成する。なお、探索パターンを作成しない場合、しきい値Tは、収容パターンそれぞれに対して、全要素の総和をとることで求める。
【0048】
次に、現在の光ネットワークのリソースの収容情報をN次元高速離散フーリエ変換(FFT)して変換済収容情報を得る。
図9は、収容情報およびそれをFFTした変換済収容情報を示す模式図である。変換済収容情報は、各要素が複素数であるため、絶対値を取り濃淡で表している。
【0049】
また、探索パターンをFFTして、全要素に対して複素共役をとり、変換済探索パターンとして記録する。
図10は、探索パターンおよびそれをFFTして複素共役をとった変換済探索パターンを示す模式図である。変換済探索パターンも、各要素が複素数であるため、絶対値を取り濃淡で表している。なお、複素共役をとるのは、収容情報をFFTしたものであってもよい。また、探索パターンを算出しない場合、探索パターンの代わりに収容パターンを使用する。収容パターンまたは探索パターンの作成とFFTの計算、複素共役の計算は、収容情報の各次元の最大値からあらかじめ作成、計算したものを保存しておいてもよい。
【0050】
次に、変換済収容情報と変換済探索パターン内のN次元配列の要素積を取り、逆FFTをして探索データを得る。この際、計算機誤差がある場合、探索データの各要素は虚数成分が0でない複素数となるが、虚数成分を切り捨てるか絶対値をとることにより実数に変換する。
図11は、変換済収容情報、変換済探索パターン、およびその要素積を示す模式図である。
図12は、要素積、および探索データを示す模式図である。要素積も各要素が複素数であるため、絶対値を取り濃淡で表している。探索データの各要素は、実数値である。循環畳み込み積分の性質から、探索データは、ある収容パターンに対して各次元の要素を循環シフトさせて等しくなる別の収容パターンの結果も含むため、1回の計算で複数のコアID組み合わせを選択した場合の結果を同時に得ることができる。
【0051】
図12の例の場合、コアID組み合わせ[0,2,1]に対し計算を行ったため、[0,2,1],[1,0,2],[2,1,0],[1,3,2],[2,1,3],[3,2,1],[2,0,3],[3,2,0],[0,3,2],[3,1,0],[0,3,1],[1,0,3]の12通りのコアID組み合わせの結果が同時に得られた。なお、コアID組み合わせ[0,2,1]とは、リンク#1でコア#0を、リンク#2でコア#2を、リンク#3でコア#1を経由するパスを意味する。
【0052】
次に、探索データ内のN次元配列それぞれに対して、しきい値をT-αとして、これよりも大きくなる要素を1もしくはTrue、それ以外を0もしくはFalseと置き換え、収容可能位置として記録する。このとき、空きリソースを周波数の連続した帯域幅で確保する構成にしているため、周波数軸方向の末尾の(周波数スロット数-1)個の要素は、結果の候補から除外する。除外する要素は、しきい値の判定をせずに0もしくはFalseとしてもよい。
図13は、収容可能位置を示す模式図である。
図13の収容可能位置は、周波数スロット#8と周波数スロット#9の要素を0とした例を示している。また、収容可能となる位置に対応する要素の値は理論上Tと等しくなるが、計算機の誤差を考慮にいれてしきい値をT-αとしている。αは、0<α<1であり、実際に取れる値の範囲は計算機の精度に依存するが、例えば、α=0.5とすることが好ましい。
【0053】
そして、探索パターンと収容可能位置から収容可能パターンを出力する。収容可能位置の各要素に対して、値が1もしくはTrueの場合N次元配列上の座標を取得し、探索パターンを座標の分だけそれぞれの次元に循環シフトさせて収容可能パターンを得る。
図13の例の場合、収容可能位置の座標(リンクID#,コアID#,周波数ID#)=(0,1,3)の要素が1となっているため、
図7の探索パターンをリンク軸方向に0、コア軸方向に1、周波数軸方向に3循環シフトさせたパターンが収容可能パターンの1つとなる。
【0054】
このようにすることで、収容情報および収容パターンから収容可能パターンを算出することができ、これに基づいてリソースを設定することができる。
【0055】
(変形例1)
以下では、ノードA-B-C-Dを経由する経路を探索する場合において、コアスイッチングが不可である場合について説明する。本発明の探索方法は、コアスイッチングが不可である場合、収容パターンの構成を変更することで対応できる。
【0056】
上記の実施形態では、収容パターンは、全ての使用リソース候補の組み合わせを可能な限り全て列挙することが好ましいとしている。これに対し、本変形例では、収容パターンまたは探索パターンは、所定の限定されたコアの組み合わせが選択されるリソース候補の組み合わせのみ含むことが好ましい。所定の限定されたコアの組み合わせとは、同一のコアIDの組み合わせであってもよい。例えば、コアID組み合わせ[0,0,0]などである。
【0057】
このように、所定の限定されたコアID組み合わせについてFFT等の計算をして、収容可能パターンを算出することで、所定の限定されたコアの組み合わせを含むリソースのみを探索でき、これに基づいてリソースを設定することができる。
【0058】
(変形例2)
以下では、異なる複数のパスを同時に探索する場合について説明する。本発明の探索方法は、異なる複数のパスを同時に探索する場合、収容パターンの構成を変更することで対応できる。
【0059】
図14は、各リンクの収容情報を示す模式図である。本変形例では、ノードA-B-C-Dを経由する経路に拘らないため、収容情報は、リンク#0から#2だけでなく、リンク#3およびリンク#4の収容情報を含むように構成される。そして、本変形例では、収容パターンまたは探索パターンは、複数の異なるパスのリソースが選択されるリソース候補の組み合わせを含む。
【0060】
図15は、収容情報、探索パターン、および探索データを示す模式図である。例えば、
図15に示されるように、リンク#0から#4の収容情報に対して、隣接する2つのリンクのリソースのみ含む探索パターンを使用して計算を行うと、リンク#0と#1を使用するパス、リンク#1と#2を使用するパス、リンク#2と#3を使用するパス、リンク#3と#4を使用するパス、およびリンク#4と#0を使用するパスの中から収容可能なパスの位置が算出される。すなわち、異なる複数のパスを同時に探索できる。
【0061】
例えば、AからDに至るパスで、A-B-C-Dでないパスの収容可能な位置を知りたい場合、上記のリンク#2と#3を使用するパスの結果を参照すればよい。また、1つのリンクのリソースのみ含む探索パターンを使用して計算を行うことで、リンク#4のみ使用するパスの収容可能な位置を探索できる。
【0062】
このように、複数の異なるパスのリソースが選択される組み合わせについてFFT等の計算をして、収容可能パターンを算出することで、複数の異なるパスのリソースの組み合わせを含むリソースを同時に探索でき、これに基づいてリソースを設定することができる。
【0063】
(探索装置の構成)
図16は、本実施形態に係る探索装置の概略構成の一例を示すブロック図である。探索装置100は、データ取得部110、探索データ算出部120、および収容可能パターン算出部130によって構成されている。
【0064】
データ取得部110は、光ネットワークのリソースの収容情報、および光ネットワークのリソース候補の組み合わせを示す収容パターンを取得する。収容情報および収容パターンは、ユーザ(光ネットワークの管理者)の入力により取得してもよい。また、後述する設定装置またはネットワークリソース管理データベースから取得してもよい。
【0065】
探索データ算出部120は、収容情報および収容パターンから、リソース候補の組み合わせのうちいずれかが収容可能か否かを判断できる探索データをN次元高速離散フーリエ変換で算出する。また、探索データ算出部120は、収容情報のFFT、収容パターンまたは探索パターンのFFT、複素共役、これらの要素積、そして逆FFTの一連の計算を行うことができる。探索データ算出部120は、収容パターンまたは探索パターンのFFT、複素共役をあらかじめ計算して、その値(配列)を記憶しておき、必要になったときに参照してもよい。
【0066】
収容可能パターン算出部130は、探索データの要素のうち、所定のしきい値より大きくなる要素から光ネットワークの収容可能なリソース候補の組み合わせを示す収容可能パターンを算出する。収容可能パターン算出部130は、探索データの要素のうち、所定のしきい値より大きくなる要素を1もしくはTrue、それ以外を0もしくはFalseと置き換え(2値に置き換え)、収容可能位置として記録することが好ましい。また、収容可能パターン算出部130は、探索パターンと収容可能位置から収容可能パターンを算出することが好ましい。
【0067】
探索装置100は、上記機能とは別に、外部インターフェース140を有する。外部インターフェース140は、ユーザの入力の受け付けやユーザへの通知の出力を行う機能を有している。外部インターフェース140は、必要な場合ネットワークや設定装置との情報通信を行う。
【0068】
図17は、本実施形態に係る探索装置の概略構成の変形例を示すブロック図である。探索装置100は、データ取得部110、探索パターン作成部115、探索データ算出部120、および収容可能パターン算出部130によって構成されている。データ取得部110、探索データ算出部120、および収容可能パターン算出部130は上記と同様であるので、説明を省略する。
【0069】
探索パターン作成部115は、収容情報の各軸の最大値から収容パターンを作成し、作成した収容パターンから探索パターンおよびマッピング情報を作成する。例えば、ユーザが周波数スロット3を入力した場合、探索パターン作成部115は、連続する3つの周波数スロットを収容するための収容パターン、探索パターン、およびマッピング情報を作成する。これにより、探索装置100が自動的に収容パターンおよび探索パターンを作成するので、ユーザが入力する必要がある情報が少なくなり、探索装置100を扱いやすくなる。
【0070】
探索パターン作成部115は、光ネットワークのネットワークトポロジーが分かっている場合は、これに基づいて収容パターン、探索パターンおよびマッピング情報を作成してもよい。例えば、ユーザがリンクA-B-C-D、周波数スロット3を入力した場合、探索パターン作成部115は、ノードA-B-C-Dを経由し、連続する3つの周波数スロットを収容するための収容パターン、探索パターン、およびマッピング情報を作成することが好ましい。また、探索パターン作成部115は、光ネットワークの各リンク間のコアスイッチングの可否が分かっている場合は、これに基づいて収容パターン、探索パターンおよびマッピング情報を作成してもよい。
【0071】
(システムの構成)
図18は、リソースの探索、設定をするシステムの概略構成の一例を示すブロック図である。システム10は、探索装置100、設定装置200、およびネットワークリソース管理DB(データベース)300、によって構成されている。探索装置100は、上記で説明した機能を有する。設定装置200は、光ネットワークの各ノードに対し、リソースの設定を行う。
【0072】
ネットワークリソース管理DB300は、光ネットワークのリソースの探索および設定に必要な情報が管理される。光ネットワークのリソースの探索および設定に必要な情報は、例えば、ノードの数、リンクの数、ネットワークトポロジー、各リンクのコアの数、周波数スロットの数、各リンク間のコアスイッチングの可否、現在の収容情報、収容パターン、探索パターン、探索データ、収容可能パターン等である。これらの情報の全てが保存されていなくてもよい。
【0073】
ネットワークリソース管理DB300は、探索装置100の内部にあってもよいし、設定装置200の内部にあってもよいし、クラウド上にあってもよい。また、ネットワークリソース管理DB300は、各ノードに分散されていてもよい。ネットワークリソース管理DB300は、それをメインの集中型DBとして扱い、各ノードにその設定を反映させる構成、各ノードがもつ分散型DBをメインとして、その設定情報を読み込み集約する構成等が考えられる。
【0074】
(探索装置および設定装置と各ノードの関係)
図19(a)~(c)は、それぞれ探索装置および設定装置と各ノードの関係を示す模式図である。本発明の探索装置100は、
図19(a)のようにネットワークから分離されている構成、
図19(b)のように設定装置200と独立している構成、
図19(c)のように設定装置200内部と同一ソフトウェア上に実装する構成等であってもよい。
【0075】
図20(a)~(c)は、それぞれ探索装置、設定装置、およびネットワークリソース管理DBと各ノードの関係を示す模式図である。探索装置のネットワークリソース管理データベース(DB)300は、
図20(a)のように探索の都度各DB300の情報をユーザが読み取り探索装置100に与える構成、
図20(b)のように設定装置200がメインの集約DB300を持ち、その情報を探索時にユーザが与えるまたは探索装置100が設定装置200から取得する構成、
図20(c)のように探索・設定装置とした統合型プラットフォーム上にメインの集約DB300を持ち、探索・設定時に自動で連動する構成等であってもよい。
【0076】
(探索装置の動作)
図21は、探索装置の動作の一例を示すフローチャートである。探索装置は、探索に先立って、リンク列、周波数以外の多重化軸、周波数軸などに応じて、リソース情報を格納するN次元の領域を確保しておく。そして、探索装置は、収容パターンを取得する(ステップS1)。収容パターンは、ユーザに入力されたものでも、探索装置がリソース管理DBから取得したものでもよい。また、探索装置が作成したものを取得してもよい。探索装置が作成したものを取得する場合、収容パターンに代えて、あらかじめ作成して記録しておいた探索パターンをN次元FFTし、複素共役をとった変換済探索パターンを取得してもよい。このようにすることで、探索にかかる時間を短縮できる。
【0077】
次に、収容パターンから探索パターンを作成し、記録する(ステップS2)。探索パターンは、全ての収容パターンがいずれかの探索パターンに集約されるように網羅的に作成することが好ましい。これにより、リソースの全探索を容易に行うことができる。次に、探索パターンからしきい値を算出し、記録する(ステップS3)。また、収容パターンと探索パターンの関係を示すマッピング情報を作成し、記録する(ステップS4)。次に、各探索パターンをそれぞれN次元FFTし、複素共役をとった変換済探索パターンを算出し、記録する(ステップS5)。なお、ステップS1からステップS5は、ネットワークの構築時またはネットワークの構成変更時に、一度だけ実施されることが好ましい。
【0078】
次に、光ネットワークのリソースの収容情報を取得する(ステップS6)。収容情報は、ユーザに入力されたものでも、探索装置がリソース管理DBから取得したものでもよい。次に、収容情報をN次元FFTした変換済収容情報を算出し、記録する(ステップS7)。次に変換済収容情報と変換済探索パターンの要素積を算出し、記録する(ステップS8)。次に、要素積をN次元逆FFTした探索データを算出し、記録する(ステップS9)。そして、探索データの要素のうちしきい値より大きい値となる要素を抽出し、収容可能パターンを算出し、必要に応じて出力する(ステップS10)。
【0079】
そして、作成した全ての探索パターンを処理した場合(ステップS11-YES)、終了する。一方、作成した全ての探索パターンを処理していない場合(ステップS11-NO)、処理していない探索パターンを選択し、ステップS8からステップS10までの処理を繰り返す。ステップS6からステップS11は、リソース探索の都度実施される。なお、全ての探索パターンについて変換済探索パターンを算出していない場合、ステップS5に戻る構成にしてもよい。
【0080】
(探索装置の動作の変形例)
図22は、探索装置の動作の変形例を示すフローチャートである。
図22のフローでも、探索装置は、探索に先立って、リンク列、周波数以外の多重化軸、周波数軸などに応じて、リソース情報を格納するN次元の領域を確保しておく。そして、探索装置は、収容パターンを取得する(ステップT1)。収容パターンは、ユーザに入力されたものでも、探索装置がリソース管理DBから取得したものでもよい。また、探索装置が作成したものを取得してもよい。探索装置が作成したものを取得する場合、収容パターンに代えて、あらかじめ作成して記録しておいた収容パターンをN次元FFTし、複素共役をとった変換済収容パターンを取得してもよい。このようにすることで、探索にかかる時間を短縮できる。
【0081】
次に、収容パターンからしきい値を算出し、記録する(ステップT2)。次に、収容パターンをN次元FFTし、複素共役をとった変換済収容パターンを算出し、記録する(ステップT3)。なお、ステップT1からステップT3は、ネットワークの構築時またはネットワークの構成変更時に、一度だけ実施されることが好ましい。
【0082】
次に、光ネットワークのリソースの収容情報を取得する(ステップT4)。収容情報は、ユーザに入力されたものでも、探索装置がリソース管理DBから取得したものでもよい。次に、収容情報をN次元FFTした変換済収容情報を算出し、記録する(ステップT5)。次に変換済収容情報と変換済収容パターンの要素積を算出し、記録する(ステップT6)。次に、要素積をN次元逆FFTした探索データを算出し、記録する(ステップT7)。そして、探索データの要素のうちしきい値より大きい値となる要素を抽出し、収容可能パターンを算出し、必要に応じて出力する(ステップT8)。その後、終了する。ステップT4からステップT8は、リソース探索の都度実施される。変形例の動作は、例えば、ユーザが指定したリソースに空きがあるかどうかだけを探索したい場合などに適用できる。
【0083】
(実施例)
本発明の探索方法および従来の方法を使用した計算速度の比較試験を行った。以下の条件でリンク数を2から8まで増大させたとき、組み合わせ候補を全探索するのにかかる時間をそれぞれ測定した。ネットワークトポロジーは、リニアとした。また、ネットワークリソースは、コア数は全リンク共通で4、周波数スロット数は10、要求される周波数スロット数は3とした。また、比較のためforループの使用回数を揃えて測定した。
【0084】
図23は、計算速度の比較試験の結果を示すグラフである。
図23のグラフに示される通り、ネットワークリソースが多い領域では、本発明の探索方法は、従来の方法と比較して、計算時間は約40分の1になった。なお。ネットワークリソースが非常に少ない条件では、その差が小さくなった。これは、FFT処理のオーバヘッドの影響と考えられる。
【0085】
以上の結果により、本発明の探索装置、システム、探索方法、およびプログラムは、リソース探索の組み合わせが膨大になった場合でもこれまでより短時間でリソース探索をすることができ、全探索も容易にできることが確かめられた。
【符号の説明】
【0086】
10 システム
100 探索装置
110 データ取得部
115 探索パターン作成部
120 探索データ算出部
130 収容可能パターン算出部
140 外部インターフェース
200 設定装置
300 ネットワークリソース管理DB