(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-20
(45)【発行日】2025-01-28
(54)【発明の名称】車両用表示装置
(51)【国際特許分類】
B60K 35/23 20240101AFI20250121BHJP
B60R 11/02 20060101ALI20250121BHJP
B60K 35/00 20240101ALI20250121BHJP
G01D 11/28 20060101ALI20250121BHJP
G01D 7/00 20060101ALI20250121BHJP
【FI】
B60K35/23
B60R11/02 C
B60K35/00
G01D11/28 T
G01D7/00 K
(21)【出願番号】P 2022155909
(22)【出願日】2022-09-29
【審査請求日】2024-02-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】弁理士法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】山田 吉寿
(72)【発明者】
【氏名】久保山 輝一
【審査官】齊藤 彬
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-187429(JP,A)
【文献】特開2013-100032(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0175798(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第111301166(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 35/23
B60R 11/02
B60K 35/00
G01D 11/28
G01D 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像を表示する上部表示領域および下部表示領域を有し、前記上部表示領域を車両のアイポイントと対向させて配置される画像表示装置と、
前記上部表示領域を車両前方から覆うフード部と、
前記上部表示領域に対して前記アイポイントの側に配置されたコンバイナと、
前記下部表示領域を収容しており、かつ上方に向く開口部を有し、前記開口部が前記画像表示装置に対して前記アイポイントの側に位置している収容部と、
前記収容部の内部に配置され、かつ前記開口部を介して前記コンバイナと対向しており、前記下部表示領域の表示光を前記コンバイナに向けて反射する反射部材と、
前記反射部材を回動させることにより前記下部表示領域の画像による虚像の画像縦方向における位置を調節するモータと、
前記画像表示装置および前記モータを制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、車両上下方向の第一の位置にある前記アイポイントから前記虚像を見る場合の視線と、車両上下方向の第二の位置にある前記アイポイントから前記虚像を見る場合の視線とを前記コンバイナと前記上部表示領域との間の位置において交差させるように、前記反射部材を位置付け
、
前記制御部は、画像縦方向において前記虚像を正規の位置に位置付けるように、位置合わせ用の画像による前記反射部材の位置調整を実行し、
前記位置調整では、前記上部表示領域による実像および前記下部表示領域による前記虚像にそれぞれ前記位置合わせ用の画像が表示され、かつ前記アイポイントから見た場合に画像縦方向における前記位置合わせ用の画像の位置が一致するように、ドライバの操作に応じて前記モータが駆動される
ことを特徴とする車両用表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コンバイナを有する車両用表示装置がある。特許文献1には、表示光を出射する表示装置本体と、該表示装置本体の上部に固定されて表示装置本体から出射される表示光が投影されるコンバイナと、を備えた車両用表示装置が開示されている。特許文献1のコンバイナは、表示光が投影される表示領域と、この表示領域の少なくとも片側に設けられた透明透過部とを有し、コンバイナの透明透過部の背面側には、画像を表示させる画像表示部が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
コンバイナを用いて実像および虚像を表示する場合の視認性を向上できることが好ましい。例えば、実像と虚像とを画像縦方向に並べて表示する場合に、目の位置に応じて実像に対する虚像の相対位置が変動してしまうと、視認性の低下を招くことがある。
【0005】
コンバイナを用いて実像および虚像を表示する構成において、コンバイナの必要高さを低減できることが好ましい。例えば、高さ方向の異なる位置から虚像を視認できるようにする場合、コンバイナの高さを大きくすれば対応可能である。しかしながら、コンバイナの高さを大きくすると、装置の大型化につながる。
【0006】
本発明の一つの目的は、視認性を向上させることができる車両用表示装置を提供することである。
【0007】
本発明の他の一つの目的は、コンバイナの必要高さを低減できる車両用表示装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の車両用表示装置は、画像を表示する上部表示領域および下部表示領域を有し、前記上部表示領域を車両のアイポイントと対向させて配置される画像表示装置と、前記上部表示領域を車両前方から覆うフード部と、前記上部表示領域に対して前記アイポイントの側に配置されたコンバイナと、前記下部表示領域を収容しており、かつ上方に向く開口部を有し、前記開口部が前記画像表示装置に対して前記アイポイントの側に位置している収容部と、前記収容部の内部に配置され、かつ前記開口部を介して前記コンバイナと対向しており、前記下部表示領域の表示光を前記コンバイナに向けて反射する反射部材と、前記反射部材を回動させることにより前記下部表示領域の画像による虚像の画像縦方向における位置を調節するモータと、前記画像表示装置および前記モータを制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記アイポイントから見た場合の前記上部表示領域に対する前記虚像の相対位置を予め定められた所定位置に調節できるように構成されていることを特徴とする。
【0009】
本発明の車両用表示装置は、画像を表示する上部表示領域および下部表示領域を有し、前記上部表示領域を車両のアイポイントと対向させて配置される画像表示装置と、前記上部表示領域を車両前方から覆うフード部と、前記上部表示領域に対して前記アイポイントの側に配置されたコンバイナと、前記下部表示領域を収容しており、かつ上方に向く開口部を有し、前記開口部が前記画像表示装置に対して前記アイポイントの側に位置している収容部と、前記収容部の内部に配置され、かつ前記開口部を介して前記コンバイナと対向しており、前記下部表示領域の表示光を前記コンバイナに向けて反射する反射部材と、前記反射部材を回動させることにより前記下部表示領域の画像による虚像の画像縦方向における位置を調節するモータと、前記画像表示装置および前記モータを制御する制御部と、を備え、前記制御部は、車両上下方向の第一の位置にある前記アイポイントから前記虚像を見る場合の視線と、車両上下方向の第二の位置にある前記アイポイントから前記虚像を見る場合の視線とを前記コンバイナにおいて交差させるように、前記反射部材を位置付けることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る車両用表示装置の制御部は、アイポイントから見た場合の上部表示領域に対する虚像の相対位置を予め定められた所定位置に調節できるように構成されている。この車両用表示装置によれば、視認性を向上させることができるという効果を奏する。
【0011】
本発明に係る車両用表示装置の制御部は、車両上下方向の第一の位置にあるアイポイントから虚像を見る場合の視線と、車両上下方向の第二の位置にあるアイポイントから虚像を見る場合の視線とをコンバイナにおいて交差させるように、反射部材を位置付ける。この車両用表示装置によれば、コンバイナの必要高さを低減できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、第1実施形態に係る車両用表示装置の断面図である。
【
図2】
図2は、第1実施形態に係る表示光の光路を示す図である。
【
図3】
図3は、第1実施形態の表示画像を示す図である。
【
図4】
図4は、第1実施形態の視線の交点を示す図である。
【
図5】
図5は、第1実施形態に係る位置合わせ用の画像を示す図である。
【
図6】
図6は、第1実施形態に係る位置合わせ用の画像を示す図である。
【
図7】
図7は、第2実施形態における視線の交点を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明の実施形態に係る車両用表示装置につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記の実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるものあるいは実質的に同一のものが含まれる。
【0014】
[第1実施形態]
図1から
図6を参照して、第1実施形態について説明する。本実施形態は、車両用表示装置に関する。
図1は、第1実施形態に係る車両用表示装置の断面図、
図2は、第1実施形態に係る表示光の光路を示す図、
図3は、第1実施形態の表示画像を示す図、
図4は、第1実施形態の視線の交点を示す図、
図5および
図6は、第1実施形態に係る位置合わせ用の画像を示す図である。
【0015】
図1に示すように、本実施形態の車両用表示装置1は、筐体2、画像表示装置3、反射部材4、コンバイナ5、モータ8、制御部9、およびカメラ10を有する。車両用表示装置1は、自動車等の車両100に搭載される。本実施形態の車両用表示装置1は、コンバイナ5によってドライバの前方に虚像を表示させることが可能なメータ装置である。例示された車両用表示装置1は、インストルメントパネル120に配置されている。
【0016】
本実施形態の車両用表示装置1は、車両100のアイポイントEPに対して実像および虚像を表示するように構成されている。より詳しくは、車両用表示装置1は、画像表示装置3の上部に表示される画像を実像としてドライバに視認させ、かつ画像表示装置3の下部に表示される画像を虚像としてドライバに視認させる。なお、アイポイントEPは、ドライバの目の位置であり、例えば、カメラ10によって検出される。
【0017】
筐体2は、収容部6、およびフード部7を有する。収容部6およびフード部7は、一体であってもよく、別の部材であってもよい。収容部6は、インストルメントパネル120に収容される。収容部6は、箱形状を有しており、かつ遮光性を有する。収容部6は、上方に向けて開口する開口部61を有する。開口部61は、収容部6の上部に位置している。開口部61は、画像表示装置3に対して後側X2、すなわちアイポイントEPの側に位置している。
【0018】
開口部61には、透明なカバー62が配置されている。カバー62は、開口部61を閉塞する。カバー62の形状は、収容部6の内方に向けて湾曲した湾曲形状である。カバー62は、外光を遮光壁に向けて反射するように形成されている。例えば、カバー62は、ウインドシールド110を透過した外光をフード部7の壁面又はアイポイント以外の方向に向けて反射する。
【0019】
以下の説明において、車両前後方向Xにおける前側を「前側X1」と称し、車両前後方向Xにおける後側を「後側X2」と称する。また、車両上下方向Zにおける上側を「上側Z1」と称し、車両上下方向Zにおける下側を「下側Z2」と称する。車両用表示装置1によって表示される画像の画像縦方向は、車両上下方向Zに対応している。
【0020】
画像表示装置3は、画像を表示する装置であり、例えば、TFT-LCD(Thin Film Transistor-Liquid Crystal Display)等の液晶表示装置である。画像表示装置3は、バックライトユニットを有しており、バックライトユニットの光によって表示光を出力する。
図1に示すように、画像表示装置3は、上部表示領域30uおよび下部表示領域30dを有する。上部表示領域30uおよび下部表示領域30dは、表示光を出力する発光領域である。上部表示領域30uは、画像表示装置3の表示面30における上側Z1に位置している。下部表示領域30dは、表示面30における下側Z2に位置している。
【0021】
画像表示装置3は、上部表示領域30uをアイポイントEPと対向させて配置される。画像表示装置3は、例えば、筐体2に固定され、筐体2によって保持される。
図1に示すように、収容部6は、下部表示領域30dを収容して画像表示装置3を保持する。画像表示装置3は、収容部6における前側X1の端部に配置され、かつ表示面30を後側X2に向けている。上部表示領域30uは、収容部6から上方に向けて突出している。上部表示領域30uは、フード部7の内部空間に収容される。フード部7は、遮光性を有しており、上部表示領域30uを車両前方から覆っている。フード部7は、上部表示領域30uを外光に対して遮蔽できるように形成されている。
【0022】
図1に示すように、コンバイナ5は、フード部7の内部空間70を覆うように配置されている。つまり、コンバイナ5は、アイポイントEPから見て内部空間70を遮蔽するように配置されている。画像表示装置3の上部表示領域30uは、アイポイントEPから見てコンバイナ5の背後に位置している。言い換えると、コンバイナ5は、上部表示領域30uに対してアイポイントEPの側に配置されている。
【0023】
コンバイナ5は、例えば、ハーフミラーで構成される。コンバイナ5は、背面側から入射する光を透過させることができ、かつ前面側から入射する光を反射することができる反射部材である。コンバイナ5は、アイポイントEPと対向する反射面5aを有している。反射面5aは、コンバイナ5におけるアイポイントEPの側を向く表面、又はアイポイントEPの側とは反対側を向く裏面の何れかに配置される。反射面5aには、アイポイントEPの側に光を反射するコーティング処理等がなされている。コンバイナ5の裏面側には、反射抑制部5bが設けられている。反射抑制部5bは、上部表示領域30uの表示光が前側X1に向けて反射されることを抑制する。反射抑制部5bは、コンバイナ5に対する反射抑制の表面処理であってもよく、コンバイナ5に貼り付けられるシートであってもよい。
【0024】
図1に示すように、反射部材4は、収容部6の内部に配置され、かつ開口部61を介してコンバイナ5の反射面5aと対向している。反射部材4は、収容部6における後側X2の端部に配置されており、下部表示領域30dと対向している。反射部材4は、例えば、平面ミラーである。
図2に示すように、反射部材4は、下部表示領域30dから出力される表示光Ltをコンバイナ5に向けて反射する。コンバイナ5の反射面5aは、下部表示領域30dの表示光LtをアイポイントEPに向けて反射する。アイポイントEPで視認される虚像Viは、反射面5aよりも前側X1の位置で結像する。虚像Viは、下部表示領域30dの虚像であり、下部表示領域30dに表示された画像を含んでいる。
【0025】
本実施形態の反射部材4は、回動自在に支持されている。反射部材4の回転方向は、
図1に矢印AR1で示すように、車両上下方向Zに対する反射部材4の傾斜角度を変化させる方向である。反射部材4の傾斜角度が大きくなると、コンバイナ5への画像の投影位置が上方に移動する。一方、反射部材4の傾斜角度が小さくなると、コンバイナ5への画像の投影位置が下方に移動する。モータ8は、反射部材4を回動させることにより、反射部材4の傾斜角度を所望の角度に調整する。モータ8は、例えば、ステッピングモータである。
【0026】
制御部9は、画像表示装置3およびモータ8を制御する。制御部9は、例えば、演算部、メモリ、通信インターフェース等を含むコンピュータである。制御部9は、例えば、予め記憶しているプログラムに従ってモータ8および画像表示装置3を制御する。
【0027】
カメラ10は、ドライバを撮像してアイポイントEPの位置を検出する。例示されたカメラ10は、メータ表示部内の上部中央(又は左右等)に配置されており、ドライバを撮像できるように設置されている。カメラ10は、例えば、
図3に示す位置に配置される。例示されたカメラ10の位置は、画像横方向GHの中央部で、かつ画像縦方向GVの上部である。なお、カメラ10の位置は、
図3に示す位置C1や位置C2であってもよい。車両上下方向ZにおけるアイポイントEPの位置は、カメラ10によって生成された画像に対する画像認識によって検出される。カメラ10は、車幅方向におけるアイポイントEPの位置を算出してもよい。カメラ10は、検出したアイポイントEPの座標値を出力することができる。
【0028】
図3には、表示される実像Riおよび虚像Viの一例が示されている。実像Riは、画像表示装置3の上部表示領域30uに表示された画像である。虚像Viは、下部表示領域30dの表示光Ltによって生成される虚像である。すなわち、虚像Viは、反射部材4およびコンバイナ5によってアイポイントEPに向けて反射された表示光Ltによって視認される画像である。虚像Viは、実像Riに対して画像縦方向GVの上側に表示される。虚像Viは、例えば、車両100の走行速度を示すメータ画像G1を含む。実像Riは、例えば、背景画像G2等の奥行き感や立体感を演出する画像を含む。なお、虚像Viは、主に車両情報を表示し、実像Riは、パースの付いた背景画像等を表示する事で浮遊感・奥行感のある表示を行う事が出来る。
【0029】
本実施形態の車両用表示装置1は、実像Riの一部と虚像Viの一部とを重畳させて表示する。より詳しくは、実像Riにおける画像縦方向GVの上部に対して、虚像Viにおける画像縦方向GVの下部が重畳される。虚像Viは、実像Riと重なっている重畳範囲OLを有する。
図3に示す表示画像において、実像Riに対する虚像Viの相対位置は、予め定められた所定位置である。実像Riに対する虚像Viの相対位置は、画像縦方向GVにおける相対位置である。上記の所定位置は、重畳範囲OLの幅が規定の値となる位置である。所定位置における重畳範囲OLは、虚像Viの高さの1/3とされてもよく、実像Riの高さの1/3とされてもよい。
【0030】
虚像Viの位置が所定位置であると、実像Riの意匠に対する虚像Viの意匠の相対位置が最適となる。例えば、
図3では、背景画像G2に対してメータ画像G1が上側に位置しており、かつメータ画像G1は背景画像G2と重なっていない。つまり、背景画像G2は、メータ画像G1と干渉しておらず、メータ画像G1の視認性を阻害しない。また、画像縦方向GVにおける背景画像G2に対するメータ画像G1の相対位置は、奥行き感や浮遊感を演出できる最適な位置である。
【0031】
以下に説明するように、本実施形態の車両用表示装置1は、ドライバの目の位置にかかわらず重畳範囲OLの幅を一定の大きさにすることができる。言い換えると、車両用表示装置1は、画像縦方向GVにおける実像Riに対する虚像Viの相対位置を所定位置に調節できるように構成されている。
【0032】
制御部9は、例えば、検出されたアイポイントEPの位置に応じて自動的に反射部材4の傾斜角度を調節する。この場合、制御部9は、カメラ10から取得した車両上下方向ZにおけるアイポイントEPの位置に基づいてモータ8を駆動する。車両用表示装置1は、車両上下方向ZにおけるアイポイントEPの位置と、反射部材4の目標傾斜角度との対応関係を示すテーブルを予め記憶していることが好ましい。制御部9は、取得したアイポイントEPの位置に基づいて反射部材4の目標傾斜角度を決定する。制御部9は、反射部材4の傾斜角度を目標傾斜角度とするようにモータ8によって反射部材4を回動させる。予め記憶されるテーブルは、例えば、以下のような調節を実行できるように定められる。
【0033】
図4には、アイポイントEPの位置として、上端位置EPu、中央位置EPm、および下端位置EPdが示されている。三つの位置EPu,EPm,EPdのうち、上端位置EPuは車両上下方向Zの最も上側Z1に位置している。上端位置EPuは、例えば、車両100のアイレンジにおける上端の位置である。下端位置EPdは、三つの位置EPu,EPm,EPdのうち、最も下側Z2に位置している。下端位置EPdは、例えば、アイレンジにおける下端の位置である。中央位置EPmは、上端位置EPuと下端位置EPdとの間の中央の位置である。
【0034】
図4には、上端位置EPuに対応する視線VLu、中央位置EPmに対応する視線VLm、および下端位置EPdに対応する視線VLdが示されている。視線VLuは、上端位置EPuにあるアイポイントEPから虚像Viを見る場合の視線である。言い換えると、視線VLuは、コンバイナ5から上端位置EPuに向かう表示光Ltの光路である。視線VLmは、中央位置EPmにあるアイポイントEPから虚像Viを見る場合の視線である。視線VLdは、下端位置EPdにあるアイポイントEPから虚像Viを見る場合の視線である。
【0035】
なお、
図4に示す視線VLu,VLm,VLdは、下部表示領域30dの同じ画素に対応している。視線VLu,VLm,VLdは、例えば、下部表示領域30dにおける中央の画素に対応している。この場合、視線VLuは、中央の画素の表示光Ltが上端位置EPuへ向かう光路に対応する。同様に、視線VLmは中央の画素の表示光Ltが中央位置EPmへ向かう光路に対応し、視線VLdは中央の画素の表示光Ltが下端位置EPdへ向かう光路に対応する。
【0036】
図4に示す視線VLu,VLm,VLdは、交点XPにおいて交差する。本実施形態の制御部9は、交点XPを上部表示領域30uの位置に位置付けるようにモータ8を制御する。言い換えると、制御部9は、視線VLu,VLm,VLdを上部表示領域30uの位置において交差させるように、反射部材4を位置付ける。これにより、アイポイントEPから見た場合の上部表示領域30uに対する虚像Viの相対位置が一定となる。すなわち、車両上下方向Zの異なる位置から虚像Viを見る場合に、画像縦方向GVにおいて実像Riに対する虚像Viの相対位置が同じ位置となる。
【0037】
上記のような制御を可能とするテーブルは、例えば、上端位置EPu、中央位置EPm、および下端位置EPdのそれぞれに対する反射部材4の目標傾斜角度を有している。上端位置EPuと中央位置EPmとの間のアイポイントEPに対しては、線形補間等により目標傾斜角度が算出されてもよい。中央位置EPmと下端位置EPdとの間のアイポイントEPに対しては、線形補間等により目標傾斜角度が算出されてもよい。あるいは、テーブルは、上端位置EPu、中央位置EPm、および下端位置EPdの何れとも異なる複数の位置に対してそれぞれ目標傾斜角度を有していてもよい。この場合、検出されたアイポイントEPの位置に最も近い位置の目標傾斜角度が用いられてもよい。
【0038】
なお、交点XPは、上部表示領域30uの表示面に位置していてもよく、上部表示領域30uの表示面の延長線上に位置してもよい。言い換えると、交点XPは、上部表示領域30uの表示面を含む平面上に位置していればよい。
【0039】
本実施形態の車両用表示装置1は、実像Riに対する虚像Viの相対位置を一定にすることで、画像の視認性を向上させることができる。比較例として、反射部材4が固定されている場合、目の位置に応じて実像Riに対する虚像Viの相対位置が異なる。この場合、以下に説明するように、表示画像の視認性が低下する可能性がある。
【0040】
例えば、低身長のドライバの場合、アイポイントEPから見る虚像Viの位置が下側の位置となり、実像Riに対する虚像Viのラップ量が大きくなる。この場合、背景画像G2に対してメータ画像G1が重なってしまい、メータ画像G1の視認性が低下する可能性がある。一方、高身長のドライバの場合、アイポイントEPから見る虚像Viの位置が上側の位置となり、実像Riに対する虚像Viのラップ量が小さくなる。この場合、メータ画像G1の位置が最適な位置からずれてしまい、メータ画像G1の視認性が低下する可能性がある。また、背景画像G2に対してメータ画像G1が離れすぎてしまい、表示画像のバランスが崩れる。
【0041】
これに対して、本実施形態の車両用表示装置1は、実像Riに対する虚像Viの位置が最適な位置に調節される。よって、本実施形態の車両用表示装置1は、表示画像の視認性を向上させることができる。
【0042】
なお、制御部9は、ドライバの操作入力に応じて虚像Viの位置を調節してもよい。この場合、制御部9は、
図5に示すように位置合わせ用の画像G3,G4を画像表示装置3に表示させてもよい。画像G3は、虚像Viに含まれる画像であり、下部表示領域30dに表示される。画像G4は、実像Riに含まれる画像であり、上部表示領域30uに表示される。例示された画像G3,G4は、半円形状の画像である。
【0043】
制御部9は、ドライバに対して、二つの画像G3,G4が一つの円を構成するように調整操作を促す。ドライバは、スイッチ等の操作部材に対する操作入力により、画像縦方向GVにおける虚像Viの位置を調節する。制御部9は、ドライバの操作入力に応じてモータ8を駆動して反射部材4を回動させる。
図6には、虚像Viの位置調整が完了した状態が示されている。ドライバから見た虚像Viの位置は正規の位置であり、二つの画像G3,G4が一つの円を構成している。
【0044】
このときにドライバが虚像Viを見る視線は、車幅方向から見た場合に交点XPを通る。すなわち、虚像Viを見るドライバの視線は、上部表示領域30uにおいて
図4に示す視線VLu,VLm,VLdと交差する。このように、制御部9は、ドライバの操作に基づいて、アイポイントEPから見た場合の上部表示領域30uに対する虚像Viの相対位置を所定位置に調節することができる。
【0045】
なお、位置合わせ用の画像G3,G4の形状は、例示された半円形状には限定されない。位置合わせ用の画像G3,G4は、例えば、位置合わせされることにより三角形や四角形を構成する画像であってもよい。位置合わせ用の画像G3,G4は、例えば、それぞれ画像横方向GHに沿う線分であってもよい。この場合、画像G3,G4は、虚像Viの位置が正規の位置である場合に画像縦方向GVの位置が一致するように表示される。
【0046】
以上説明したように、本実施形態の車両用表示装置1は、画像表示装置3と、フード部7と、コンバイナ5と、収容部6と、反射部材4と、モータ8と、制御部9と、を有する。画像表示装置3は、画像を表示する上部表示領域30uおよび下部表示領域30dを有する。画像表示装置3は、上部表示領域30uを車両100のアイポイントEPと対向させて配置される。フード部7は、上部表示領域30uを車両前方から覆う。コンバイナ5は、上部表示領域30uに対してアイポイントEPの側に配置される。収容部6は、下部表示領域30dを収容しており、かつ上方に向く開口部61を有する。開口部61は、画像表示装置3に対してアイポイントEPの側に位置している。
【0047】
反射部材4は、収容部6の内部に配置され、かつ開口部61を介してコンバイナ5と対向している。反射部材4は、下部表示領域30dの表示光Ltをコンバイナ5に向けて反射する。モータ8は、反射部材4を回動させることにより下部表示領域30dの画像による虚像Viの画像縦方向GVにおける位置を調節する。制御部9は、画像表示装置3およびモータ8を制御する。
【0048】
制御部9は、アイポイントEPから見た場合の上部表示領域30uに対する虚像Viの相対位置を予め定められた所定位置に調節できるように構成されている。本実施形態の車両用表示装置1は、実像Riに対する虚像Viの相対位置を予め定められた所定位置に調節することで、表示画像の視認性を向上させることができる。
【0049】
また、実像Riに対する虚像Viの相対位置が変動しないように反射部材4が制御されることで、表示光Ltの光路範囲が低減される。反射部材4が固定されている場合、車両上下方向Zの目の位置にかかわらず画像が見切れないように、画像縦方向GVの光路範囲を広くする必要がある。これに対して、本実施形態の車両用表示装置1によれば、必要とされる光路範囲を狭くすることができ、コンバイナ5やカバー62の小型化が可能である。コンバイナ5やカバー62が小型化されることで、外光の入射範囲が狭くなり、外光入射の影響による視認性の低下が抑制される。また、光路が一定範囲に束ねられることで、コンバイナ5の下方に配置される遮光壁やその周辺構造が小型化される。
【0050】
本実施形態の制御部9は、異なるアイポイントEPから虚像Viを見る場合の視線を上部表示領域30uの位置において交差させるように反射部材4を位置付ける。例えば、上端位置EPuを第一の位置とし、中央位置EPmを第二の位置とした場合に、制御部9は、第一の位置から見る視線VLuと第二の位置から見る視線VLmとを上部表示領域30uの位置において交差させるように反射部材4を位置付ける。これにより、実像Riに対する虚像Viの相対位置が所定位置に調節される。なお、反射部材4を位置付けるモータ制御は、取得されたアイポイントEPの位置に基づいて自動的になされてもよく、ドライバの操作に基づいてなされてもよい。
【0051】
なお、第一の位置は上端位置EPuには限定されず、第二の位置は中央位置EPmには限定されない。第一の位置は、車両上下方向Zの所定の範囲における任意の位置であり、第二の位置は、所定の範囲における任意の位置であって、かつ第一の位置とは異なる位置である。
【0052】
本実施形態の車両用表示装置1は、車両上下方向ZにおけるアイポイントEPの位置を取得する取得部を有する。カメラ10は、取得部の一例である。制御部9は、取得されたアイポイントEPの位置に基づいて反射部材4を自動的に回動させてもよい。この場合、虚像Viの位置を調節するためのドライバの操作が不要となる。
【0053】
[第2実施形態]
図7を参照して、第2実施形態について説明する。第2実施形態については、上記第1実施形態で説明したものと同様の機能を有する構成要素には同一の符号を付して重複する説明は省略する。
図7は、第2実施形態における視線の交点を示す図である。第2実施形態の制御部9は、コンバイナ5において視線を交差させるように構成されている。
図7には、コンバイナ5の位置において交差する視線VLu,VLm,VLdが示されている。交点XPの位置は、コンバイナ5の位置であり、例えば、反射面5aの位置である。
【0054】
制御部9は、例えば、検出されたアイポイントEPの位置に応じて自動的に反射部材4の傾斜角度を調整する。車両用表示装置1は、車両上下方向ZにおけるアイポイントEPの位置と、反射部材4の目標傾斜角度との対応関係を示すテーブルを予め記憶していることが好ましい。この場合、制御部9は、テーブルおよび取得したアイポイントEPの位置に基づいて反射部材4の目標傾斜角度を決定することができる。
【0055】
目標傾斜角度は、
図7に示すように、アイポイントEPから虚像Viを見る視線がコンバイナ5の位置において交差するように定められる。なお、制御部9は、ドライバの操作入力に応じて虚像Viの位置を調節してもよい。この場合、制御部9は、実像Riおよび虚像Viのそれぞれに位置合わせ用の画像を表示させてもよい。位置合わせ用の画像は、
図5に示す画像G3,G4であってもよい。
【0056】
虚像Viの所定位置は、車両上下方向Zの位置が異なる複数のアイポイントEPに対して視線をコンバイナ5の位置で交差させる位置である。すなわち、反射部材4は、車両上下方向Zにおける目の位置にかかわらず視線をコンバイナ5の同じ位置へ向かわせるように位置付けられる。
【0057】
視線をコンバイナ5において交差させるように反射部材4を位置付けることで、ドライバの目の位置にかかわらず表示光Ltをコンバイナ5の同じ領域でアイポイントEPに向けて反射することが可能となる。よって、コンバイナ5の必要高さを最小化することが可能である。
【0058】
以上説明したように、本実施形態の制御部9は、異なるアイポイントEPから虚像Viを見る場合の視線をコンバイナ5の位置において交差させるように反射部材4を位置付ける。例えば、中央位置EPmを第一の位置とし、下端位置EPdを第二の位置とした場合に、制御部9は、第一の位置から見る視線VLmと第二の位置から見る視線VLdとをコンバイナ5の位置において交差させるように反射部材4を位置付ける。なお、反射部材4を位置付けるモータ制御は、取得されたアイポイントEPの位置に基づいて自動的になされてもよく、ドライバの操作に基づいてなされてもよい。
【0059】
[各実施形態の変形例]
交点XPは、上部表示領域30uとコンバイナ5との間に設定されてもよい。例えば、第1実施形態において、交点XPは、アイポイントEPから見て上部表示領域30uよりもコンバイナ5の側に設定されてもよい。交点XPをコンバイナ5へ近づけるに従って、コンバイナ5の必要高さを減少させることができる。例えば、第2実施形態において、交点XPは、アイポイントEPから見てコンバイナ5よりも上部表示領域30uの側に設定されてもよい。交点XPを上部表示領域30uへ近づけるに従って、実像Riに対する虚像Viの相対位置の変動幅を小さくすることができる。
【0060】
反射部材4は、平面ミラーには限定されない。反射部材4は、例えば、凹状の反射面を有する拡大ミラーであってもよい。
【0061】
上記の各実施形態および変形例に開示された内容は、適宜組み合わせて実行することができる。
【符号の説明】
【0062】
1 車両用表示装置
2:筐体、 3:画像表示装置、 4:反射部材、 5:コンバイナ、 5a:反射面
5b:反射抑制部
6:収容部、 7:フード部、 8:モータ、 9:制御部、 10:カメラ
30:表示面、 30d:下部表示領域、 30u:上部表示領域
61:開口部、 62:カバー
100:車両、 110:ウインドシールド、 120:インストルメントパネル
EP:アイポイント、 EPu:上端位置、 EPm:中央位置、 EPd:下端位置
G1:メータ画像、 G2:背景画像、 G3,G4:画像(位置合わせ用)
GH:画像横方向、 GV:画像縦方向
Lt:表示光、 Ri:実像、 Vi:虚像
VLu,VLm,VLd:視線、 XP:交点
X:車両前後方向、 X1:前側、 X2:後側
Z:車両上下方向、 Z1:上側、 Z2:下側