(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-20
(45)【発行日】2025-01-28
(54)【発明の名称】流体混合方法およびシステム
(51)【国際特許分類】
B01F 23/10 20220101AFI20250121BHJP
B01F 25/20 20220101ALI20250121BHJP
【FI】
B01F23/10
B01F25/20
(21)【出願番号】P 2022196442
(22)【出願日】2022-12-08
【審査請求日】2022-12-08
(32)【優先日】2021-12-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】521251545
【氏名又は名称】エコナ パワー インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【氏名又は名称】鈴木 博子
(74)【代理人】
【識別番号】100128428
【氏名又は名称】田巻 文孝
(72)【発明者】
【氏名】ティム コールマン
(72)【発明者】
【氏名】ケネス ウィリアム クラットシュマール
(72)【発明者】
【氏名】デヴィッド アーロン レボー
(72)【発明者】
【氏名】クリストファー エドウィン ジョン リード
【審査官】小久保 勝伊
(56)【参考文献】
【文献】特表2008-514428(JP,A)
【文献】特表平10-502014(JP,A)
【文献】国際公開第2020/118417(WO,A1)
【文献】特開2001-139303(JP,A)
【文献】特開2009-107613(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102011116503(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01F 23/10
B01F 25/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の流体と第2の流体を混合する方法であって、
混合チャンバに第1の流体を投入
し、次に、前記混合チャンバを封止するステップと、
前記
封止された混合チャンバ内の前記第1の流体の体積が一定である間、
第2の流体の第1の流れを第1の注入方向に沿って前記
封止された混合チャンバ中に注入するステップと、
前記第2の流体の第2の流れを前記第1の注入方向と交差する第2の方向に沿って前記
封止された混合チャンバ中に注入するステップとを含み、
前記第2の流体の前記第1および前記第2の流れを、前記
封止された混合チャンバ内に注入した結果として、前記第2の流体の前記第1の流れと前記第2の流れが互いに当たり、それにより、前記第1の流体と混合しそして前記第1および前記第2の注入方向とは異なる方向に流れる前記第2の流体の少なくとも1つの別の流れを前記
封止された混合チャンバ内に生じさせる、方法。
【請求項2】
前記
封止された混合チャンバの容積は、一定である、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記第1の流れを前記
封止された混合チャンバ中に注入する前記ステップは、前記第1の流れを第1の流体インゼクタから注入するステップを含み、
前記第2の流れを前記
封止された混合チャンバ中に注入する前記ステップは、前記第2の流れを第2の流体インゼクタから注入するステップを含み、
前記方法は、
前記第1の流体インゼクタから前記第2の流体の第3の流れを第3の注入方向に沿って前記
封止された混合チャンバ中に注入するステップと、
前記第2の流体インゼクタから前記第2の流体の第4の流れを前記第3の注入方向と交差する第4の注入方向に沿って前記
封止された混合チャンバ中に注入するステップとをさらに含み、
前記第1の注入方向は、約180゜の角度をなして前記第2の注入方向と交差しており、
前記第3の注入方向は、10゜~180゜の角度をなして前記第4の注入方向と交差している、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
前記第1の流体インゼクタから前記第2の流体の第5の流れを、第5の注入方向に沿って前記
封止された混合チャンバ中に注入するステップと、
前記第2の流体インゼクタから前記第2の流体の第6の流れを前記第5の注入方向と交差する第6の注入方向に沿って前記
封止された混合チャンバ中に注入するステップとをさらに含み、
前記第5の注入方向は、10゜~180゜の角度をなして前記第6の注入方向と交差している、請求項3記載の方法。
【請求項5】
前記第2の流体の第3の流れを前記
封止された混合チャンバ中に注入するステップと、
前記第2の流体の第4の流れを前記
封止された混合チャンバ中に注入するステップとをさらに含み、
前記第2の流体の前記第3および前記第4の流れを前記
封止された混合チャンバ中に注入した結果として、前記第2の流体の前記第3の流れと前記第4の流れは、互いに当たって前記
封止された混合チャンバ内に、
前記第1の流体と混合して前記第3および前記第4の注入方向とは異なる方向に流れ、
前記第2の流体の前記第1の流れと前記第2の流れの衝突によって生じた前記少なくとも1つの別の流れに当たる前記第2の流体の少なくとも1つの別の流れを生じさせる、請求項1または2記載の方法。
【請求項6】
前記第1の流体は、炭化水素を含む、請求項1記載の方法。
【請求項7】
前記炭化水素は、メタンまたは天然ガスである、請求項6記載の方法。
【請求項8】
前記第2の流体は、一酸化炭素、メタン、水素、酸素、空気、二酸化炭素、および水のうちの1つ以上を含む、請求項6または7記載の方法。
【請求項9】
前記第2の流体は、一酸化炭素、二酸化炭素、および水のうちの1つ以上を含む、請求項6または7記載の方法。
【請求項10】
前記第1の流体は、炭化水素を含み、
前記第2の流体は、酸化体を含み、
前記混合チャンバに前記第1の流体を投入した後であって前記第2の流体の前記第1および前記第2の流れを前記
封止された混合チャンバ中に注入する前において、前記第1の流体の温度は、前記第2の流体の存在下において前記第1の流体の自己発火に必要な温度以上である、請求項1または2記載の方法。
【請求項11】
前記酸化体は、酸素または空気である、請求項10記載の方法。
【請求項12】
前記第1の流体は、メタンを含み、前記酸化体は、空気であり、自己発火に必要な前記温度は、少なくとも850Kである、請求項10記載の方法。
【請求項13】
前記第1の流体は、水素を含み、前記酸化体は、空気であり、自己発火に必要な前記温度は、少なくとも770Kである、請求項10記載の方法。
【請求項14】
前記第1の流体は、一酸化炭素を含み、前記酸化体は、空気であり、自己発火に必要な前記温度は、少なくとも880Kである、請求項10記載の方法。
【請求項15】
前記第2の流体の前記第1および前記第2の流れを前記
封止された混合チャンバ中に注入する前記ステップは、
可燃ガスを前記混合チャンバに連結された1つ以上の燃焼チャンバ内で燃焼させ、それにより前記第2の流体を生じさせるステップと、
前記第2の流体の前記第1および前記第2の流れを前記
封止された混合チャンバ中に注入するステップとを含む、請求項1または2記載の方法。
【請求項16】
前記第1の流れを前記
封止された混合チャンバ中に注入する前記ステップは、前記第1の流れを第1の流体インゼクタから注入するステップを含み、
前記第2の流れを前記
封止された混合チャンバ中に注入する前記ステップは、前記第2の流れを第2の流体インゼクタから注入するステップを含み、
前記第1の流体インゼクタと前記第2の流体インゼクタは、互いにオフセットしており、その結果、前記第2の流体の前記第1の流れと前記第2の流れの相互衝突に応答して、渦巻き運動が前記第1の流れ、前記第2の流れ、および前記第2の流体の前記少なくとも1つの別の流れのうちの1つ以上の中に引き起こされ、それにより前記第2の流体と前記第1の流体の混合具合を向上させるようになっている、請求項1または2記載の方法。
【請求項17】
第1の流体と第2の流体を混合するシステムであって、
入口および出口を備えた混合チャンバと、
前記混合チャンバ中への第1の注入方向を定める第1の流体フローチャネルと、
前記混合チャンバ中への第2の注入方向を定める第2の流体フローチャネルと、
前記混合チャンバ中への前記第1および前記第2の流体の流れを制御する弁装置と、
コントローラとを含み、前記コントローラは、
前記弁装置を制御して前記第1の流体を前記入口経由で前記混合チャンバ中に投入し、
次に、前記混合チャンバを封止し、
前記
封止された混合チャンバ内の前記第1の流体の体積が一定である間、
前記弁装置を制御して前記第1の流体フローチャネル経由で前記第2の流体の前記第1の流れを前記第1の注入方向に沿って前記
封止された混合チャンバ中に注入し、
前記弁装置を制御して前記第2の流体フローチャネル経由で前記第2の流体の前記第2の流れを前記第2の注入方向に沿って前記
封止された混合チャンバに注入し、前記第2の流体の前記第1および前記第2の流れを前記
封止された混合チャンバ中に注入した結果として、前記第2の流体の前記第1の流れと前記第2の流れが互いに当たって前記
封止された混合チャンバ内
で前記第1の流体と混合し、そして前記第1および前記第2の注入方向とは異なる方向に流れる前記第2の流体の少なくとも1つの別の流れを生じさせ、
前記弁装置を制御して
前記混合チャンバの封止を解除し、次に、前記混合状態の第1および第2の流体を前記出口経由で前記混合チャンバから排出するよう構成されている、システム。
【請求項18】
前記第1および前記第2の流体フローチャネルを介して前記混合チャンバに連結された1つ以上の燃焼チャンバと、
1つ以上の点火器とをさらに含み、
前記弁装置を制御して前記第2の流体の前記第1および前記第2の流れを前記
封止された混合チャンバ中に注入することは、
前記弁装置を制御して前記1つ以上の燃焼チャンバに可燃ガスを投入し、
前記1つ以上の点火器を制御して前記可燃ガスを燃焼させ、それにより前記第2の流体を生じさせることを含む、請求項17記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示(本発明)は、流体を混合する方法およびシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
原料の熱分解は、燃焼熱を用いて原料ガスを化学的に分解する方法である。例えば、可燃ガスに点火してこれを原料ガスと混合させる場合がある。燃焼生成物からの熱は、原料ガスといわば混合状態で作用し、それにより原料ガスの分解が生じる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
分解を効率的に行うことができるようにするためには、燃焼生成物が原料ガスと十分に混ぜ合わされることが重要である。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の第1の観点によれば、第1の流体と第2の流体を混合する方法であって、混合チャンバに第1の流体を投入するステップと、混合チャンバ内の第1の流体の体積が一定である間、第2の流体の第1の流れを第1の注入方向に沿って混合チャンバ中に注入するステップと、第2の流体の第2の流れを第1の注入方向と交差する第2の方向に沿って混合チャンバ中に注入するステップとを含み、第2の流体の第1および第2の流れを、混合チャンバ内に注入した結果として、第2の流体の第1の流れと第2の流れが互いに当たり、それにより、第1の流体と混合しそして第1および第2の注入方向とは異なる方向に流れる第2の流体の少なくとも1つの別の流れを混合チャンバ内に生じさせることを特徴とする方法が提供される。
【0005】
第2の流体の少なくとも1つの別の流れは、一般に、第2の流体を含む。しかしながら、少なくとも1つの別の流れは、必ずしも第2の流体に限定されることはなく、例えば、第2の流体と少なくとも1つの別の流れの中に同伴された第1の流体のうちの幾分かの両方を含んでもよい。
【0006】
第2の流体の少なくとも1つの別の流れの流れ方向は、第1および第2の注入方向に垂直であるのが良い。
【0007】
混合チャンバの容積は、一定であるのが良い。
【0008】
第1の注入方向は、第2の注入方向と約180゜の角度をなして交差するのが良い。
【0009】
混合チャンバは、長手方向軸線を定めるのがよく、第1および第2の注入方向は、長手方向軸線に垂直であるのが良い。
【0010】
第1の注入方向は、第2の注入方向と約180゜の角度をなして交差するのが良い。
【0011】
第1の注入方向は、第2の注入方向と10゜~180゜の角度をなして交差するのが良い。
【0012】
第1の注入方向は、第2の注入方向と約140゜~180゜の角度をなして交差するのが良い。
【0013】
第1の注入方向は、第2の注入方向と約160゜の角度をなして交差するのが良い。
【0014】
第1の流れを混合チャンバ中に注入するステップは、第1の流れを第1の流体インゼクタから注入するステップを含むのが良い。第2の流れを混合チャンバ中に注入するステップは、第2の流れを第2の流体インゼクタから注入するステップを含む。本方法は、第1の流体インゼクタから第2の流体の第3の流れを第3の注入方向に沿って混合チャンバ中に注入するステップと、第2の流体インゼクタから第2の流体の第4の流れを第3の注入方向と交差する第4の注入方向に沿って混合チャンバ中に注入するステップとをさらに含むのが良い。第1の注入方向は、約180゜の角度をなして第2の注入方向と交差するのが良い。第3の注入方向は、10゜~180゜の角度をなして第4の注入方向と交差するのが良い。
【0015】
本方法は、第1の流体インゼクタから第2の流体の第5の流れを第5の注入方向に沿って混合チャンバ中に注入するステップと、第2の流体インゼクタから第2の流体の第6の流れを第5の注入方向と交差する第6の注入方向に沿って混合チャンバ中に注入するステップとをさらに含むのが良い。第5の注入方向は、10゜~180゜の角度をなして第6の注入方向と交差するのが良い。
【0016】
第1の流れを混合チャンバ中に注入するステップは、第1の流れを第1の流体インゼクタから注入するステップを含むのが良い。第2の流れを混合チャンバ中に注入するステップは、第2の流れを第2の流体インゼクタから注入するステップを含むのが良い。本方法は、第3の流体インゼクタから第2の流体の第3の流れを混合チャンバ中に注入するステップをさらに含むのが良い。第3の流体インゼクタは、第1の流体インゼクタに隣接するとともに第1の流体インゼクタから混合チャンバの直径の約2~20倍の距離だけ間隔を置いて位置するのが良い。
【0017】
この距離は、混合チャンバの直径の約10倍であるのが良い。
【0018】
本方法は、第2の流体の第3の流れを混合チャンバ中に注入するステップと、第2の流体の第4の流れを混合チャンバ中に注入するステップとをさらに含むのが良い。第2の流体の第3および第4の流れを混合チャンバ中に注入した結果として、第2の流体の第3の流れと第4の流れは、互いに当たるのが良く、それにより、第1の流体と混合して第3および第4の注入方向とは異なる方向に流れ、そして第2の流体の第1の流れと第2の流れの衝突によって生じた少なくとも1つの別の流れに当たる第2の流体の少なくとも1つの別の流れを混合チャンバ内に生じさせる。
【0019】
第1の流体は、炭化水素を含むのが良い。
【0020】
炭化水素は、メタンまたは天然ガスであるのが良い。
【0021】
第2の流体は、一酸化炭素、メタン、水素、酸素、空気、二酸化炭素、および水のうちの1つ以上を含むのが良い。
【0022】
第2の流体は、一酸化炭素、二酸化炭素、および水のうちの1つ以上を含むのが良い。
【0023】
第1の流体は、炭化水素を含むのが良い。第2の流体は、酸化体を含むのが良い。混合チャンバに第1の流体を投入した後であって第2の流体の第1および第2の流れを混合チャンバ中に注入する前において、第1の流体の温度は、第2の流体の存在下において第1の流体の自己発火に必要な温度以上であるのが良い。
【0024】
酸化体は、酸素または空気であるのが良い。
【0025】
第1の流体は、メタンを含むのが良く、酸化体は、空気であり、自己発火に必要な温度は、少なくとも850Kであるのが良い。
【0026】
第1の流体は、水素を含むのが良く、酸化体は、空気であるのが良く、自己発火に必要な温度は、少なくとも770Kであるのが良い。
【0027】
第1の流体は、一酸化炭素を含むのが良く、酸化体は、空気であるのが良く、自己発火に必要な温度は、少なくとも880Kであるのが良い。
【0028】
第2の流体の第1および第2の流れを混合チャンバ中に注入するステップは、可燃ガスを混合チャンバに連結された1つ以上の燃焼チャンバ内で燃焼させ、それにより第2の流体を生じさせるステップと、第2の流体の第1および第2の流れを混合チャンバ中に注入するステップとを含むのが良い。
【0029】
第1の流れを混合チャンバ中に注入するステップは、第1の流れを第1の流体インゼクタから注入するステップを含むのが良い。第2の流れを混合チャンバ中に注入するステップは、第2の流れを第2の流体インゼクタから注入するステップを含むのが良い。第1の流体インゼクタと第2の流体インゼクタは、互いにオフセットしているのが良く、その結果、第2の流体の第1の流れと第2の流れの相互衝突に応答して、渦巻き運動が第1の流れ、第2の流れ、および第2の流体の少なくとも1つの別の流れのうちの1つ以上の中に引き起こされ、それにより第2の流体と第1の流体の混合具合を向上させるようになっている。
【0030】
本発明の別の観点によれば、第1の流体と第2の流体を混合するシステムであって、入口および出口を備えた混合チャンバと、混合チャンバ中への第1の注入方向を定める第1の流体フローチャネルと、混合チャンバ中への第2の注入方向を定める第2の流体フローチャネルと、混合チャンバ中への第1および第2の流体の流れを制御する弁装置と、コントローラとを含み、コントローラは、弁装置を制御して第1の流体を入口経由で混合チャンバ中に投入し、混合チャンバ内の第1の流体の体積が一定である間、弁装置を制御して第1の流体フローチャネル経由で第2の流体の第1の流れを第1の注入方向に沿って混合チャンバ中に注入し、弁装置を制御して第2の流体フローチャネル経由で第2の流体の第2の流れを第2の注入方向に沿って混合チャンバに注入し、第2の流体の第1および第2の流れを混合チャンバ中に注入した結果として、第2の流体の第1の流れと第2の流れが互いに当たって混合チャンバ内に第1の流体と混合し、そして第1および第2の注入方向とは異なる方向に流れる第2の流体の少なくとも1つの別の流れを生じさせ、弁装置を制御して混合状態の第1および第2の流体を出口経由で混合チャンバから排出するよう構成されていることを特徴とするシステムが提供される。
【0031】
本システムは、第1および第2の流体フローチャネルを介して混合チャンバに連結された1つ以上の燃焼チャンバと、1つ以上の点火器とをさらに含むのが良い。弁装置を制御して第2の流体の第1および第2の流れを混合チャンバ中に注入することは、弁装置を制御して1つ以上の燃焼チャンバに可燃ガスを投入し、1つ以上の点火器を制御して可燃ガスを燃焼させ、それにより第2の流体を生じさせることを含むのが良い。
【0032】
この発明の概要は、必ずしも、全ての観点の範囲全体を記載しているわけではない。他の観点、他の特徴、および他の利点は、特定の実施形態に関する以下の詳細な説明を読むと当業者には明らかであろう。
【0033】
次に、添付の図面と関連して本発明の実施形態について詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1A】本発明の実施形態に従って、投入段階において一次流体を二次流体と混合するシステムの概略側面図である。
【
図1B】本発明の実施形態に従って、投入段階において一次流体を二次流体と混合するシステムの概略端面図である。
【
図1C】本発明の実施形態に従って、混合段階における
図1‐1のシステムの概略側面図である。
【
図1D】本発明の実施形態に従って、混合段階における
図1‐1のシステムの概略端面図である。
【
図2A】本開示の実施形態に従って、一次流体を二次流体と角度付き流体インゼクタにより混合するシステムの別の概略側面図である。
【
図3A】本発明の別の実施形態に従って、一次流体を二次流体と混合するシステムの概略側面図である。
【
図4A】本発明の実施形態に従って、投入段階における原料熱分解を実施するシステムの概略側面図である。
【
図4B】混合段階における
図4Aのシステムの概略側面図である。
【
図4C】熱分解段階における
図4Aのシステムの概略側面図である。
【
図4D】放出段階における
図4Aのシステムの概略側面図である。
【
図5】本発明の実施形態に従って、一次流体を二次流体と混合するシステムの概略側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
本発明は、流体を混合する改良型の方法およびシステムを提供しようとするものである。本発明の種々の実施形態を以下に説明するが、本発明は、これら実施形態には限定されず、これら実施形態の変形例が添付の特許請求の範囲の記載にのみ基づいて定められる本発明の範囲に十分に属すると言える。
【0036】
一般に、本発明の実施形態によれば、一次流体と二次流体を混合する方法およびシステムについて説明する。例えば、幾つかの実施形態によれば、一次流体を入口弁経由で混合チャンバ中に投入し、次に混合チャンバを封止する。混合チャンバは、二次流体を混合チャンバ中に注入する複数の流体インゼクタを備えており、かかる流体インゼクタとしては、第1の流体インゼクタおよび第2の流体インゼクタが挙げられる。例えば、円筒形混合チャンバでは、第1の流体インゼクタと第2の流体インゼクタは、互いに直径方向反対側に配置されるのが良い。各流体インゼクタは、二次流体を混合チャンバ中に方向付ける1つ以上のオリフィス(例えば、レストリクタ(制流子)、ノズル、ディストリビュータ(分配器)、経路、または他の流体フローチャネル)を有する。各オリフィスは、混合チャンバ中へのそれぞれ対応の注入方向を定める。第1の流体インゼクタのオリフィスの注入方向は、第2の流体インゼクタのオリフィスの注入方向と交差している。
【0037】
幾つかの実施形態によれば、第1および第2の流体インゼクタは、互いに直径方向反対に配置される必要はなく、第1の流体インゼクタのオリフィスの注入方向が第2の流体インゼクタのオリフィスの注入方向と交差するよう混合チャンバの長手方向軸線に対して差し向けられるのが良い。さらに別の実施形態によれば、第1および第2の流体インゼクタは、第1および第2の注入方向が混合チャンバの長手方向軸に平行に差し向けられた状態で混合チャンバの各端部のところに配置されるのが良い。
【0038】
混合チャンバ内の一次流体の体積は、一定でありまたは動きがないが(例えば、一次流体は、静止しているとみなされる)、二次流体が流体インゼクタを用いて混合チャンバ中に注入され、そして一次流体と混ざる。例えば、混合チャンバ中への一次流体の投入前、投入中、または投入後、二次流体を圧力下で流体インゼクタ中に投入するのが良い。二次流体の混合チャンバ中への注入を開始するため、オリフィスを開くのがよく、それにより二次流体をオリフィスによって定められた注入方向に沿って混合チャンバ中に注入する。
【0039】
特に、二次流体の注入中、二次流体の第1の流れを第1の流体インゼクタのオリフィス経由で混合チャンバ中に注入し、第2の流体の流れを第2の流体インゼクタのオリフィス経由で混合チャンバ中に注入する。第1の注入方向と第2の注入方向の交差のために、二次流体の第1の流れは、二次流体の第2の流れと衝突しまたは違ったやり方で当たる。二次流体の第1の流れと第2の流れの衝突により、第1および第2の流れの流れ方向が第1および第2の注入方向から変化する。第1および第2の流れの流れ方向を変えることにより、第1および第2の二次流体の流れと一次流体との混合具体を向上させることができる。
【0040】
理解されるべきこととして、第1の流れと第2の流れが互いに衝突するために、第1および第2の流れは、一般に、第1の流れと第2の流れが互いに到達し、それにより互いに衝突するような十分なモーメントで混合チャンバ中に注入されるべきである。
【0041】
幾つかの実施形態によれば、注入方向は、混合チャンバの内壁に対して、5゜から90゜までの範囲にある角度を定める。したがって、オリフィスは、第1の注入方向と第2の注入方向が約180゜の角度をなして、あるいは、場合によっては、180゜未満の角度をなして交差することができるように差し向けられるのが良い。幾つかの実施形態によれば、注入方向は、約10゜~約180゜、特に約160゜の角度をなして交差するのが良い。例えば、幾つかの実施形態によれば、第1の注入方向と第2の注入方向は、混合チャンバの内壁に対して、約80゜の角度を定めるのがよく、そして約160゜の角度をなして互いに交差するのが良い。好ましくは、二次流体の注入は、混合チャンバの内壁に対して接線方向には行われず、というのは、このようにすると混合チャンバの内壁を覆うライナーが損傷を受ける場合があるからである。
【0042】
混合チャンバ中への注入時、二次流体の流れは、一般に、これら流れがオリフィスを出た後に外方に膨張しながら円錐(コーン)状の形を取ることになる。したがって、流れの円錐状の膨張に起因して、流れは、多くの異なる方向に進むが、流れの全体的な流れ方向(すなわち、主要な流れ方向)を本明細書で用いる「注入方向」であるとみなすことができる。注入方向はまた、オリフィスが向くまたは差し向けられる方向であるとみなされても良い。例えば、注入方向は、オリフィスの中心を通って垂直に通る軸線に沿っているとみなされても良い。
【0043】
さらに、本開示全体を通じて、第1の注入方向が第2の注入方向と交差するということについて言う場合、このことは、流体の流れが全体ではないにしても少なくとも部分的に第1の注入方向に沿って移動している流体の流れが第2の注入方向に沿って移動する流体の流れに当たるということを意味するものと解されるべきである。したがって、2つの流れ相互間の完全な正面衝突が起こらない場合があるが、1つにはこれら流れのそれぞれの円錐状膨張のために、第1の注入方向に沿って移動している流れのうちの少なくとも何割かは、第2の注入方向に沿って移動する流れの少なくとも何割かと衝突する。
【0044】
この関係で、幾つかの実施形態によれば、第1の流体インゼクタは、第2の流体インゼクタに対してわずかにオフセットしているのがよく、それにより意図的に第1の流れと第2の流れの主要な流れ方向を互いにオフセットさせる。この場合、第1の流れと第2の流れは、正面衝突しないが、第1の流れと第2の流れは、これらの流れの円錐状膨張に起因して、これらが混合チャンバ中に注入されるときに、依然として互いに衝突することになる。
【0045】
第1の流体インゼクタと第2の流体インゼクタを、オフセットしてこれらが互いに正確に直径方向反対側には位置しないようにすることによって、第1の流れと第2の流れの非直接的衝突により、第1の流れ、第2の流れ、および/または第1の流れと第2の流れの衝突の結果として生じた上述の別の流れ中に渦巻き運動を生じさせることができる。かかる渦巻き運動または乱流は、第2の流体と第1の流体の混合を促進することができる。
【0046】
図1A~
図1Dを参照すると、流体を混合するシステムの第1の実施形態が示されている。このシステムは、円筒形混合チャンバ101に取り付けられた2つの流体インゼクタ102a,102bを含む。流体インゼクタ102a,102bは、オリフィス103a,103bを介して混合チャンバ101に流体結合されている。幾つかの実施形態によれば、オリフィス103a,103bは、永続的に開いている。他の実施形態によれば、オリフィス103a,103bは、開いていても良く、あるいは混合段階が開始されたかどうかに応じて閉じられても良い(例えば、コントローラ、例えばコンピュータなどの制御下において適切な弁を用いて)。流体インゼクタ102a,102bは、オリフィス103a,103bがX方向およびZ方向に整列するよう差し向けられている。具体的に言えば、流体インゼクタ102a,102b(および、その延長線上で考えると、オリフィス103a,103b)は、互いにかつ混合チャンバ101の長手方向軸線に対して直径方向反対側に位置している。
【0047】
投入段階中、一次流体111を入口弁104経由で混合チャンバ101中に導入する。投入段階の間、混合チャンバ101内に残っている任意の流体112(例えば、以下にさらに詳細に説明するように先の混合サイクルからの混合流体)は、出口弁105から放出される。混合流体112の排出に続き、入口弁104と出口弁105の両方を閉じ、それにより密封混合チャンバ101を封止する。投入段階の最後において、混合チャンバ101を一次流体111で完全に満たし、一次流体111は、混合チャンバ101に対しての動きがない。したがって、一次流体111を静止状態であるとみなすことができる。
【0048】
投入段階の次に、混合段階中、二次流体113を圧力下で二次弁106a,106b経由で流体インゼクタ102a,102b中に導入する。他の実施形態では、二次流体113を流体インゼクタ102a、102b中に導入するのがよく、その後またはその間、一次流体111を混合チャンバ101中に投入する。混合を開始するため、オリフィス103a,103bを開き、その結果、二次流体113の流れがオリフィス103a,103bを通り、そしてオリフィス103a,103bによって定められた注入方向118a,118bに沿って混合チャンバ101中に移動する。二次流体113の流れは、混合チャンバ101内の中心で互いに当たる。二次流体113のこれら流れの衝突により、これらの流れ方向が変化し、それにより二次流体113の流れが静止状態の一次流体111と良好に混ざり合うことができる。
【0049】
例えば、
図1Cおよび
図1Dで理解できるように、二次流体113の流れは、全体として円形の形をなして少なくともX方向114およびZ方向115に沿って、静止した一次流体111と混ざり合う。オリフィス103aから来ている流れが混合チャンバ101に入る際の流れと、オリフィス103bから来ている流れが混合チャンバ101に入る際の流れとのなす、X‐Y平面内の角度121は、180゜である。オリフィス103aから来ている流れが混合チャンバ101に入る際の流れと、オリフィス103bから来ている流れが混合チャンバ101に入る際の流れとのなす、Y‐Z平面内の角度122は、180゜である。混合段階の終わりに、一次流体111と二次流体113の混合物から成る混合流体112で混合チャンバ101を満たす。
【0050】
図2Aおよび
図2Bを参照すると、流体を混合するシステムの別の実施形態が示されている。このシステムは、円筒形混合チャンバ201に取り付けられた2つの流体インゼクタ202a,202bを含む。流体インゼクタ202a,202bは、オリフィス203a,203b経由で混合チャンバ201に流体結合されており、オリフィス203a,203bは、開いていてもよく、あるいは混合段階が開始されたか否かに応じて閉じられても良い(例えば、適切な弁を用いて)。流体インゼクタ202a,202bが互いに直径方向反対側に配置されているが、流体インゼクタ202a,202bは、オリフィス203a,203bが混合チャンバ201の長手方向軸線に対して垂直ではない角度をなして差し向けられるよう混合チャンバ201の長手方向軸線に対して差し向けられており、これについては以下に詳細に説明する。
【0051】
図2Aおよび
図2Bのシステムは、
図1A~
図1Dのシステムと同様の投入段階を経る。したがって、分かりやすくするために、
図2Aおよび
図2Bのシステムからはある特定の要素、例えば弁が省略されている。
図2Aおよび
図2Bのシステムの混合段階中、二次流体213の流れは、オリフィス203a,203bを通ってオリフィス203a,203bによって定められた注入方向219a,219bに沿って混合チャンバ201中に移動する。二次流体213の流れは、混合チャンバ201内で互いに衝突する。二次流体213の流れの衝突によりこれらの流れの方向が変化し、それにより二次流体213の流れが静止した一次流体211と良好に混合することができる。
【0052】
オリフィス203aから来ている流れが混合チャンバ201に入る際の流れと、オリフィス203bから来ている流れが混合チャンバ201に入る際の流れとのなす、X‐Y平面内の角度221は、180゜未満である。オリフィス203aから来ている流れが混合チャンバ201に入る際の流れと、オリフィス203bから来ている流れが混合チャンバ201に入る際の流れとのなす、Y‐Z平面内の角度222は、180゜である。二次流体213の流れの衝突により、これらの流れの方向が変化し、それにより二次流体213の流れが静止した一次流体211と混合することができる。具体的に説明すると、二次流体213の流れは、主としてX‐Y平面内において一方向216に沿って一次流体211と混合し、方向216は、混合チャンバ201の長手方向軸線と整列している。さらに、二次流体213の流れは、主としてY‐Z平面内において2つの方向215に沿って一次流体211と混合し、方向215は、混合チャンバ201の長手方向軸線に垂直である。
【0053】
角度221および222は、オリフィス203a,203bが混合チャンバ201の長手方向軸線に対して異なる角度で差し向けられるよう流体インゼクタ202a,202bを構成することによって調節できる。
【0054】
図3Aおよび
図3Bを参照すると、流体を混合するシステムの別の実施形態が示されている。このシステムは、円筒形の混合チャンバ301に取り付けられた2つの流体インゼクタ302a,302bを含む。流体インゼクタ302a,302bは、オリフィス303a,303b,303c,303d,303e,303f経由で混合チャンバ301に流体結合されており、オリフィス303a,303b,303c,303d,303e,303fは、開いていてもよく、あるいは混合段階が開始されたかどうかに応じて閉じられても良い(例えば、適切な弁を用いて)。流体インゼクタ302a,302bは、互いに直径方向反対側に位置しているが、流体インゼクタ302a,302bは各々、混合チャンバ301の長手方向軸線に対して斜めに角度が付けられている2つのオリフィスおよび混合チャンバ301の長手方向軸線に垂直に差し向けられている1つのオリフィスを有する。
【0055】
図3Aおよび
図3Bのシステムは、
図1A~
図1Dのシステムと同様の投入段階を経る。したがって、分かりやすくするために、
図3Aおよび
図3Bのシステムからはある特定の要素、例えば弁が省略されている。
図3Aおよび
図3Bの混合段階中、二次流体313の流れ317,318,319は、オリフィス303a,303b,303cを通り、オリフィス303a,303b,303cによって定められた注入方向に沿って混合チャンバ301内に移動する。流れ317,318,319は、混合チャンバ301内で互いに衝突する。流れ317,318,319の衝突によりこれらの流れの方向が変化し、それにより流れ317,318,319が静止した一次流体311と良好に混合することができる。
【0056】
上側インゼクタ302aから来ている流れ317が混合チャンバ301に入る際の流れ317と、下側インゼクタ302bから来ている流れ317が混合チャンバ301に入る際の流れ317とのなす、X‐Y平面内かつY‐Z平面内の角度321,322は、180゜である。上側インゼクタ302aから来ている流れ318が混合チャンバ301に入る際の流れ318と、下側インゼクタ302bから来ている流れ318が混合チャンバ301に入る際の流れ318とのなす、X‐Y平面内の角度323は、180゜より大きい。上側インゼクタ302aから来ている流れ319が混合チャンバ301に入る際の流れ319と、下側インゼクタ302bから来ている流れ319が混合チャンバ301に入る際の流れ319とのなす、X‐Y平面内の角度324は、180゜未満である。流れ317,318,319の衝突により、これらの流れ方向が変化し、それにより流れ317,318,319は、静止した一次流体311と混合することができる。具体的に説明すると、流れ317は、主としてX‐Y平面内において2つの方向314に沿って一次流体311と混合し、方向314は、混合チャンバ301の長手方向軸線と平行である。さらに、流れ318は、主にX‐Y平面内において一方向316に沿って一次流体311と混合し、流れ319は、主にX‐Y平面内において一方向320に沿って一次流体311と混合し、方向316および320は、混合チャンバ301の長手方向軸線に平行である。さらに、流れ317,318,319は、主にY‐Z平面内において2つの方向315に沿って一次流体311と混合し、方向315は、混合チャンバ301の長手方向軸線に垂直である。一般的に言って、流れ314,316,320は、全体として円形の形をとる。
【0057】
幾つかの実施形態によれば、追加の二次流体流れを
図3Aおよび
図3Bの二次流体流れに加えると(例えば、別のオリフィスを流体インゼクタ302a,302bに追加的に設けることによって)、二次流体313と静止一次流体311の混合を最適化することができる。
【0058】
図4A~
図4Dを参照すると、パルスメタン熱分解プロセスを用いて水素および固形炭素を製造するシステムの一実施形態が示されている。
図4A~
図4Dのシステムは、パルスメタン熱分解プロセスを改良するために本明細書において説明したような方法を用いて流体を混合する。
図4Aで理解できるように、燃焼室402a,402bが円筒形混合チャンバ401に取り付けられている。燃焼室402a,402bは、オリフィス403a,403b,403c,403d,403e,403fを介して混合チャンバ401に流体結合されており、これらオリフィスは、開いていてもよく、あるいは混合段階が開始されたかどうかに応じて閉じられても良い(例えば、適切な弁を用いて)。燃焼チャンバ402a,402bは、互いに直径方向反対側に位置しているが、燃焼チャンバ402a,402bは各々、混合チャンバ401の長手方向軸線に対して斜めに角度が付けられている2つのオリフィスおよび混合チャンバ401の長手方向軸線に垂直に差し向けられている1つのオリフィスを有し、このシステム構成は、
図3Aおよび
図3Bに見えるシステム構成と非常によく似ている。
【0059】
投入段階の際、原料ガス、例えば天然ガスまたはメタン、エタン、プロパン、または他の何らかの炭化水素411を入口弁404経由で混合チャンバ401中に導入する。投入段階中、混合チャンバ401内に残っている先のサイクルからの任意の生成物412および未反応の原料を出口弁405から放出する。生成物412の排出に続き、入口弁404と出口弁405を両方とも閉鎖し、それにより混合チャンバ401を封止する。それと同時に、燃料および酸化剤413を含むガス混合物を供給弁406経由で燃焼室402a,402b中に導入する。燃焼室402a,402bがガス混合物413でいったん満たされると、供給弁406を閉じる。投入段階の終わりに、燃焼室402a,402bをガス混合物413で満たし、混合チャンバ401を原料411で完全に満たし、原料411は、混合チャンバ401に対して動きがない。したがって、原料411を静止状態であるとみなすことができる。
【0060】
図4Bに見える混合段階の間、点火器407を用いてガス混合物413に点火し、それにより燃焼済みガスを生じさせ、この燃焼済みガスにより、燃焼室402a,402b内の温度および圧力が増大する。オリフィス403a~403fを開き、そして燃焼室402a,402bと混合チャンバ401との圧力差に起因して、燃焼生成物ガスの流れ417,418,419がオリフィス403a~403fを通り、そしてオリフィス403a~403fにより定められた注入方向に沿って混合チャンバ401中に移動する。流れ417,418,419は、混合チャンバ401内で互いに当たる。流れ417,418,419の衝突により、これらの流れ方向が変化し、それにより流れ417,418,419は、原料ガス411と良好に混合することができる。具体的に説明すると、流れ417,418,419は、
図3Aおよび
図3Bと関連して上述した二次流体と一次流体の混合とほぼ同じ仕方で原料ガス411と混合する。
【0061】
燃焼室402a,402b相互間の離隔距離は、混合チャンバ401の長手方向軸線に沿って出口弁405の方へ向けられた燃焼済みガス流416aが、混合チャンバ401の長手方向軸線に沿って入口弁404の方へ向けられた燃焼済みガス流416bに当たることができるようにするのに十分である。例えば、幾つかの実施形態によれば、燃焼室402a,402b相互間の離隔距離は、混合チャンバ401の直径の約10倍である。燃焼済みガス流416aと燃焼済みガス流416bの衝突は、結果的に、燃焼ガスが混合チャンバ401の長手方向軸線に垂直な2つの方向425に動くことにより、原料411との混合を一段と促進する。混合チャンバ401の端部のところの燃焼チャンバ402a,402b相互間の離隔距離は、燃焼済みガス流416cがこれらの領域において原料ガス411と効果的に混合することができるようにするのに十分である。一般的に言って、流れ414,416は、全体として円形の形をとる。
【0062】
一般的に言って、燃焼済みガス流416a,416b,416cと原料ガス411との混合により、燃焼室402a,402bから原料ガス411中への燃焼エネルギーの効率的な伝達が可能であり、それにより原料ガス411の圧力および温度が上昇する。混合段階の終わりでは、混合チャンバ401には、原料ガス411と燃焼室402a,402bからの燃焼済みガスの混合物が入っている。
【0063】
図4Cを参照すると、熱分解段階の間、混合段階中に起こった原料ガス411の温度および圧力の増大に起因して、原料ガス411の少なくとも一部分は、水素、固体炭素、および他のガスに解離し、それにより生成物426を生じさせる。熱分解段階の終わりでは、混合チャンバ401は、混合物412を生じさせるよう未反応の原料411と生成物426を収容している。
【0064】
次いで、放出段階(
図4D)の際、出口弁405を開き、混合物412の一部分を混合チャンバ401の内部と下流側機器(図示せず)との圧力差に起因して混合チャンバ401から放出する。放出は、混合チャンバ401内の圧力が原料411の圧力を下回るまで続く。この時点で、このサイクルを繰り返すのがよく、そして投入段階が新たに始まるのが良い。
【0065】
幾つかの実施形態によれば、燃焼室内の燃焼ガス混合物に点火するのではなく、燃焼ガスを十分な速度で混合チャンバ中に注入するのがよく、そして原料ガスは、十分に高い温度で混合チャンバ内に存在するのがよく、その結果、原料ガスの自発的燃焼が混合チャンバ内で起こることができるようになっている。
【0066】
例えば、
図4A~
図4Dの場合のように別々の燃焼室を用いるのではなく、インゼクタ(例えば、内燃機関で用いられる燃料噴射器に類似したインゼクタ)を用いると、酸化体(例えば酸素または空気)を定容積混合チャンバ中に直接噴射することができる。直接型インゼクタは、向かい合わせの形態に配置されるのが良く、それにより混合チャンバ中に注入された酸化体の流れが互いに衝突するが、直接的には混合チャンバの内壁に当たることがないようにする。幾つかの実施形態によれば、酸素を酸化体として用いることができ、それにより、混合チャンバ内のメタンまたは他の原料は、原料が対応の自己発火温度を超えている場合には自発的に着火する。かかるシステムは、システム圧力(系統圧力)を減少させることができ、というのは、酸化体を混合チャンバ中により制御可能に注入することができるからであり、また、混合チャンバの外部の燃焼が必要とされないからである。
【0067】
混合チャンバ中に注入された酸化体の量を効果的に制御するため、混合チャンバ中に注入された酸化剤の圧力は、混合チャンバ内に入っている原料の圧力の少なくとも2倍であることが必要な場合があり、それによりチョーク流れ状態を生じさせることができる。例えば、混合チャンバ内の所望の圧力が60barである場合、燃料送出システムは、燃料を120barで送出するよう構成される必要があるといえる。
【0068】
幾つかの実施形態によれば、混合チャンバの外部で二次流体を燃焼させる場合、二次流体は、一酸化炭素、メタン、水素、酸素、空気、二酸化炭素、および水のうちの1つ以上の混合物から成るのが良い。幾つかの実施形態によれば、二次流体は、一酸化炭素、二酸化炭素、および水のうちの1つ以上の混合物から成るのが良い。原料ガスが燃料(二次流体)との接触時に自己発火しまたは自己燃焼するよう設計されている場合、二次流体は、酸化体、例えば酸素または空気を含むのがよく、自己発火温度は、原料の種類で決まる。例えば、空気の存在下においてメタンは、約850Kの自己発火温度(1barで)を有し、水素は、約770Kの自己発火温度(1barで)を有し、一酸化炭素は、約880Kの自己発火温度(1barで)を有する。用いられる酸化体が純粋酸素である場合、自己発火温度は、当業者によって定めることができるように様々である。
【0069】
幾つかの実施形態によれば(例えば
図5で理解できるように)、混合チャンバの内壁と注入方向とのなす角度は、5゜から90゜までの範囲にあるのが良い。流体の2つの衝突する流れにより生じる対応の交差角は、
図5中の表に示されている。この表はまた、2つの流れの近似交差距離を記載しており、交差距離は、2つの流れが互いに正面衝突した場合の2つの流れの交差角(180゜の角度をなす)と2つの流れの実際の交差角とを隔てる距離のことである。
【0070】
幾つかの実施形態によれば、混合チャンバの長手方向軸線に対するオリフィスの差し向け角は、固定されてはおらず、作動中、例えば回動可能なインゼクタを用いることによって調節可能である。
【0071】
原文特許請求の範囲および/または原文明細書の“comprising”(訳文では「~を有する」としている場合が多い)または“including”(「~を含む」)と関連して用いられる用語“a”または“an”は、「1つ」を意味する場合があるが、この用語は、別段の明示の指定がなければ、「1つ以上」、「少なくとも1つ」、および「1つまたは2つ以上」の意味とも一致している。同様に、“another”(「もう1つ」または「別の」)という用語は、別段の明示の指定がなければ、少なくとも第2以上を意味する場合がある。
【0072】
本明細書で用いられる「結合され」、「結合し」、または「連結され」という用語は、これらの用語が用いられる文脈に応じて幾つかの互いに異なる意味を持つ場合がある。例えば、本明細書で用いられる「結合され」、「結合し」、または「連結され」という用語は、特定の文脈に応じて、2つの要素または装置が互いに直接連結されまたは1つ以上の中間要素または装置を介してまたは機械的要素を経て互いに連結されることを示す場合がある。アイテムの一覧と関連して用いられる場合に本明細書に記載されている「および/または」という用語は、この一覧を含むアイテムのうちの任意の1つ以上を示している。
【0073】
本明細書で用いられるように、数値について「約」または「ほぼ」と言った場合、または数値について「実質的に」等しいと言った場合、これは、その数値の±10%であることを意味している。
【0074】
本発明を特定の実施形態と関連して説明したが、理解されるべきこととして、本開示は、これら実施形態には限定されず、本発明の範囲から逸脱することなく、これら実施形態の変更、改造、および変形を当業者によって実施できる。
【0075】
さらに、本明細書において説明された任意の観点または実施形態の任意の部分を具体化でき、または本明細書において説明した任意他の観点または実施形態の任意の部分と組み合わせることができることが想定される。
【符号の説明】
【0076】
101,201等 混合チャンバ
102a,102b,202a,202b等 流体インゼクタ
103a,103,203a,203b,303a,303b,303c等 オリフィス
104,404 入口弁
105,405 出口弁
111,211等 一次流体
113,213等 二次流体
317,318,319,417,418,419 二次流体の流れ