(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-20
(45)【発行日】2025-01-28
(54)【発明の名称】手術器具、手術器具を製造する方法および手術器具の切断工具を形成するための回転ジョイントの使用
(51)【国際特許分類】
A61B 10/02 20060101AFI20250121BHJP
【FI】
A61B10/02 110H
A61B10/02 110K
(21)【出願番号】P 2022521255
(86)(22)【出願日】2020-10-08
(86)【国際出願番号】 EP2020078286
(87)【国際公開番号】W WO2021069594
(87)【国際公開日】2021-04-15
【審査請求日】2023-09-12
(31)【優先権主張番号】102019126965.2
(32)【優先日】2019-10-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】522140943
【氏名又は名称】モルフォイス アー・ゲー
【氏名又は名称原語表記】Morpheus AG
【住所又は居所原語表記】Bahnhofstr. 18, 78549 Spaichingen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ティーモ ラック
(72)【発明者】
【氏名】ハイコ ブレッスィング
【審査官】増渕 俊仁
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2018/0206877(US,A1)
【文献】特開2005-224426(JP,A)
【文献】特表2002-538875(JP,A)
【文献】特開2001-104316(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 9/00-10/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
生検材料を分離し摘出する手術器具(1)であって、
シャフト(2)内に、遠位領域(4)から近位領域(5)の方向に向かって前記生検材料を吸引するための吸引通路(3)が形成されており、
前記シャフト(2)の遠位領域または前記遠位領域(4)に、切断工具(7)が形成されており、該切断工具(7)が、固定された切断部分(8)と、可動の対向切断部分(9)とを有しており、
前記対向切断部分(9)が、回転ジョイント(10)により形成された回転軸線を中心として前記固定された切断部分(8)に対して相対的に調節可能であり、
前記回転ジョイント(10)が、2つの取付け要素(11)により形成されており、該取付け要素(11)が、内側から外側に向かってそれぞれ導入されており、ここで、内側が、前記吸引通路(3)の平面状の吸引通路内面(12)に関し、
前記取付け要素(11)の端面(15)が、前記吸引通路(3)の壁部(17)と一緒に吸引通路内面(12)を形成する
ことを特徴とする、手術器具(1)。
【請求項2】
前記吸引通路(3)
の横断面(6)が、拡張領域(14)において拡
張する、請求項1記載の手術器具(1)。
【請求項3】
前記横断面(6)が、連続的に、かつ/または線形に拡張する、請求項2記載の手術器具(1)。
【請求項4】
前記吸引通路(3)が、拡張領域
(14)または前記拡張領域
(14)の手前および/または背後で、同一に寸法設計された横断面(6)および/または形状が同一である横断面を有している、請求項1
から3までのいずれか1項記載の手術器具(1)。
【請求項5】
前記拡張領域(14)が、前記シャフト(2)の遠位端から、最大で前記シャフト(2)の中心に至るま
で延びている、請求項
2から
4までのいずれか1項記載の手術器具(1)。
【請求項6】
前記取付け要素(11)の端面(15
)が、前記吸引通路内面(12)に位置している、請求項1から
5までのいずれか1項記載の手術器具(1)。
【請求項7】
前記取付け要素(11)
の頭部(16)
の端面(15)が、前記吸引通路(3)の壁部(17)と一緒に平面状の吸引通路内面(12)を形成
している、請求項
6記載の手術器具(1)。
【請求項8】
前記取付け要素(11)の前記頭部(16)の縁部が、少なくとも部分的に丸み付けされており、かつ/または
、
前記端面(15)が凸状に湾曲させられている、
請求項
7記載の手術器具(1)。
【請求項9】
前記シャフト(2)が、ガイドレール(18)と、該ガイドレール(18)に対して相対的に調節可能なスライドレール(19)とを有している、かつ/または前記吸引通路(3)が、部分的にまたは完全に前記ガイドレール(18)および/または前記スライドレール(19)により形成されている、請求項1から
8までのいずれか1項記載の手術器具(1)。
【請求項10】
切断工具(7)を製造する方法であって、
前記切断工具(7)は、手術器具(1)の、シャフト(2)の遠位領域(4)に形成され、
吸引通路(3)が前記シャフト(2)内に形成され、
内側から挿入される2つの取付け要素(11)を有する回転ジョイント(10)が前記切断工具(7)を形成するために使用され、
前記回転ジョイント(10)の前記取付け要素(11)が、前記吸引通路(3)の吸引通路内面(12)を平坦に構成するために使用される
ことを特徴とする、方法。
【請求項11】
前記手術器具(1)が、請求項1から9までのいずれか1項記載の手術器具(1)である、請求項10記載の方法。
【請求項12】
生検材料を分離し摘出する手術器具(1)を製造する方法であって、
前記手術器具(1)が、切断工具(7)を含んでおり、該切断工具(7)が、回転ジョイント(10)を有しており、
前記切断工具(7)が、請求項10に記載の方法によって製造され、
遠位領域(4)から近位領域(5)の方向に向かって前記生検材料を吸引するため
に、前記吸引通路(3)
が、前記手術器具(1)の前記シャフト(2)内に形成され、
前記取付け要素(11)の端面(15)と、
前記吸引通路(3)の壁部(17)との内面とが、
前記吸引通路(3)の平面状の吸引通路内面(12)を形成するように
、前記回転ジョイント(10)を形成するために使用される前記取付け要素(11)が、吸引通路(3)の前記壁部(17)を通して内側から外側に向かって開口内に導入され、該開口内で位置固定される
ことを特徴とする方法。
【請求項13】
前記手術器具(1)が、請求項1から9までのいずれか1項記載の手術器具(1)である、請求項12記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シャフト内に、遠位領域から近位領域の方向に向かって生検材料を吸引するための吸引通路が形成されている、生検材料(組織試料とも呼ばれる)を切断し摘出するための手術器具に関する。
【0002】
このような種類の手術器具は、既に公知であり、たとえば組織パンチとして形成されていてよい。このような種類の手術器具は、二重の機能を有している。手術器具は、一方では、組織片を切断するために働く。しかし、手術器具により、切断が可能にされているだけではなく、さらに組織試料を切断場所から、組織試料を受け取るために設けられたコレクタ内へと直接摘出することが可能にされていなければならない。このためには、手術器具は、上述の吸引通路を有しており、吸引通路は、切断工具に連結されており、これにより、切断された組織試料を直接に切断箇所から吸引することができ、その際に、外科医または付加的なオペレータが組織試料を手で取り出さなければならないことは必要とならない。
【0003】
「遠位」および「近位」という用語は、それぞれ、手術器具の規定された使用状況に関して理解することができる。その限りでは、「遠位」という用語は、手術器具を持っているユーザの手から遠ざかっている位置がこの用語により意図されており、かつ/または「近位」という用語は、手術器具を持っているユーザの手に近い位置が、この用語により意図されていると理解することができる。
【0004】
しかしながら、生検材料の吸引が、実地において頻繁に失敗していることがわかった。つまり、冒頭に述べた種類の手術器具の使用時に、手術器具によって切断された組織試料が吸引中に詰まったままとなり、したがって外科医が、詰まりを取り除く期間または手術器具の交換の期間のために手術を中断しなければならないことが定期的に生じてしまう。最悪の場合、摘出された生検材料が、たとえば詰まりの取り除き時に使用不能となってしまうので、その後に、別の診断のためにもはや使用できなくなってしまうことがある。
【0005】
さらに本発明は、シャフトの遠位領域に、切断工具が形成されており、切断工具が、固定された切断部分と、可動の対向切断部分、特に回転ジョイントによって形成された回転軸を中心として固定された切断部分に対して相対的に調節可能な対向切断部分とを有している、生検材料を切断し摘出するための手術器具に関する。
【0006】
さらに本発明は、手術器具を製造する方法と、手術器具の切断工具を形成するための回転ジョイントの使用とに関する。
独国特許出願公開第102015112716号明細書、米国特許出願公開台2005264503号明細書、欧州特許出願公開第11161183号明細書、独国特許出願公開第102018102854号明細書、米国特許出願公開第2004/068291号明細書および独国特許出願公開第102015114306号明細書からは、生検材料を分離するための種々異なる切断工具を備えた、冒頭で述べた器具が既に知られている。それぞれの切断工具のために回転ジョイントが使用されている場合、回転ジョイントの回転軸線を定義している取付け要素は、典型的には、取付け要素における材料増厚部が形成されるように取り付けられ、この材料増厚部は、突出して、それぞれ必要となる貫通孔内における取付け要素のアンカ固定を引き起こす。
【0007】
この背景を起点として、本発明の根底にある課題は、改善された使用特性を有する、冒頭で述べた種類の手術器具を提供することである。
【0008】
この課題は、本発明によれば、請求項1に記載の特徴を有する、冒頭に述べた種類の手術器具によって解決される。
【0009】
特に、本発明によれば、課題を解決するために、吸引通路の横断面の直径が、吸引方向で遠位領域から近位領域に向かって拡張する、冒頭で述べた種類の手術器具が提案される。したがって、切断された生検材料は、たとえば適切なポンプを使用することによる、かつ/または接続部材を介して吸引通路を外部のポンプに接続することによる吸引によって、シャフトの遠位領域から吸引通路を通って近位領域にまで、たとえば出口開口にまで搬送することができる。出口開口を介して、組織試料は、最終的に組織コレクタ内へと移送することができる。吸引通路の横断面拡張に基づいて、吸引通路の詰まりをより改善して阻止することができる。なぜならば、生検材料は、遠位領域、特に切断工具における十分な吸引力の形成後に吸引通路内に吸い込まれるが、吸引壁の壁部に沿って滑ることにより発生する摩擦を、吸引通路の横断面拡張に基づいて最小限にすることができるからである。生検体自体が、負圧の形成により吸引力の閾値が超過された後に解放され、吸引される一種の栓体として働く。したがって、切断工具の内径は、遠位端における吸引通路の横断面の直径に一致することができる。
【0010】
「吸引通路の横断面」という用語は、本明細書では、吸引通路の対向する2つの壁部の間の中空室の、好適には吸引通路の長手方向軸線に対して垂直方向に延びる延在長さに関していてよい。
【0011】
特に、代替的または補足的には、本発明によれば、課題を解決するために、回転ジョイント、たとえば既に述べた回転ジョイントが、2つの取付け要素により形成されており、これらの取付け要素が、内側から外側に向かってそれぞれ導入されている、冒頭に述べた種類の手術器具が提案される。ここで、特に内側は、吸引通路内面に関し、かつ/または外側は、シャフトの外面に関する。したがって、取付け要素が吸引通路内に過度に突入することおよび/または生検材料が吸引時に取付け要素に引っかかったままになることを阻止することができる。従来から知られている手術器具では、取付け要素は、少なくとも部分的に吸引通路内に突入するか、または吸引通路を貫通していることさえある。これにより、取付け要素は、組織試料による吸引通路の詰まりにつながる障害物を成す。本発明による解決手段により、いまや妨げられることなしに組織試料を吸引することができる。本段落に記載された特徴は、同様に本発明により含まれる対象を形成するために、上述の解決手段の特徴と組み合わせて、本発明による別の解決手段を形成することができる。
【0012】
特に、代替的にまたは補足的に、本発明によれば、課題を解決するために、冒頭に述べた種類の手術器具であって、取付け要素の端面、好適には取付け要素の頭部の端面が、吸引通路の壁部と一緒に平面状の吸引通路内面を形成する、手術器具が提案される。特に、頭部と壁部との間の移行部は、滑らかに、かつ/または段差なしに構成されていてよい。したがって、切断工具によって切断された付着した組織試料による吸引通路の詰まりが生じることが可能である。さらに、取付け要素の、吸引通路内にある部分のエッジのとがった箇所における刺激による生検材料の損傷が生じることを、より改善して阻止することができる。本段落に記載された特徴は、同様に本発明により含まれる対象を形成するために、上述の解決手段の特徴と組み合わせて、本発明による別の解決手段を形成することができる。
【0013】
「取付け要素の頭部」という用語は、取付け要素の、開口内に導入される部分(導入部分)とは反対側に位置する端部に配置または形成されている取付け要素の部分に関していてよい。好適には、取付け要素の頭部は、少なくとも部分的に、導入部分よりも幅広の直径を有していてよい。取付け要素は、たとえば、リベット、ピン、ねじおよび/または釘として形成されていてよい。
【0014】
複数の取付け要素のうちの1つの取付け要素のための孔または2つの取付け要素のための孔が、吸引通路の壁部、特に前述の壁部において、外側よりも内側においてより大きな直径を有していることが規定されていてよい。壁部の外面から壁の内面への孔の移行は、段部によって行うことができる。この段部は、内側から外側に向かって挿入される取付け手段のためのストッパを形成する。代替的には、移行が円錐状に行われてもよい。たとえば、移行部が丸みを有していることにより、連続的な移行も可能である。取付け手段と孔とは、好適には、互いに調整されている。
【0015】
以下では、単独または別の構成の特徴との組み合わせにおいて、請求項1に記載の特徴に任意に組み合わせることができる本発明の有利な構成を説明する。
【0016】
有利な1つの構成によれば、吸引通路の横断面が、拡張領域において拡張することが規定されていてよい。特に、吸引通路の横断面は、拡張領域において連続的および/または線形に拡張することができる。したがって、組織試料の切断後に、まず、吸引通路内、特に初期に組織試料により詰まっている吸引通路内で十分に大きな吸引力を形成することができ、その後に組織試料は吸引力が摩擦力よりも大きくなる閾値への到達時に組織試料が吸引通路を通して吸い込まれる。拡張領域は、吸引通路の長手方向に沿って、切断工具から離間して、かつ/または直接に切断工具に隣接して形成されていてよい。したがって、組織試料と吸引通路の壁部との間の種々異なる摩擦力を簡単に定義することができる。
【0017】
別の有利な1つの改良形によれば、吸引通路が、拡張領域、たとえば前述の拡張領域の手前および/または背後において、同一に寸法設計された横断面および/または形状が同一である横断面を有していることが規定されていてよい。特に、吸引通路は、拡張領域の手前および/または背後で円筒状に形成されていてよい。したがって、生検材料は、特に少ない摩擦で吸引通路を通って滑る。同一の横断面サイズを有する吸引通路に対して、本手術器具の吸引通路は、組織試料による吸引通路の初期の詰まりによってまず吸引力を構築することが依然として可能であるが、十分に高い吸引力への到達後かつ組織試料の搬出後に、組織試料と吸引通路の壁部との間の摩擦を残りの搬送区間にわたってできるだけ小さく維持することができるという利点を有している。
【0018】
別の有利な1つの構成によれば、拡張領域、たとえば前述した拡張領域が、シャフトの遠位端から最大でシャフトの中心に至るまで、特にシャフトの長さの最大で3分の1に至るまで延びていることが規定されていてよい。したがって、拡張領域は、初期の所望の詰まりを引き起こし、生検材料が拡張領域内に位置している間に吸引力を形成するために利用することができる。少なくともほぼ一貫して同一のままの幅の横断面を有する吸引通路を備えた従来公知の手術器具では、同様に、初期の詰まりが引き起こされる。しかし、この場合、組織試料は、さらなる搬送中に、吸引通路内に引っかかったままとなり、この状態では、生検材料による吸引通路の閉塞が生じ、したがって生検材料が吸引通路内に固着することが生じてしまう。
【0019】
別の有利な1つの構成によれば、取付け要素の端面が、吸引通路内面、たとえば前述した吸引通路内面に位置していることが規定されていてよい。特に、取付け要素の頭部が、吸引通路内面に位置していてよい。したがって、上述の課題を解決し、手術器具のくぼみ形成(Narbenproduktion)にとって適している、簡単な構造的解決手段が得られる。
【0020】
別の有利な1つの構成によれば、シャフトが、ガイドレールと、このガイドレールに対して相対的に調節可能なスライドレールとを有していることが規定されていてよい。このためには、代替的または補足的に、別の有利な1つの構成によれば、吸引通路が、ガイドレール、たとえば前述したガイドレールおよび/またはスライドレール、たとえば前述したスライドレールにより形成されていることが規定されていてよい。特に、吸引通路は、部分的または完全にガイドレールおよび/またはスライドレールにより形成されていてよい。
【0021】
摘出すべき生検材料が吸引通路を通る搬出時に刺激されたり損傷されたりすることをより改善して阻止することができるように、取付け要素の頭部の縁部が、少なくとも部分的に丸み付けされており、かつ/または端面が凸状に湾曲されていてよい。
【0022】
別の有利な1つの構成によれば、吸引通路が、少なくとも半円形、特に円弧状の横断面を有していることが規定されていてよい。
【0023】
本発明はさらに、回転ジョイントを有する切断工具を備えた、特に本明細書に記載され、かつ/または特許請求されているような手術器具を製造する方法に関する。ここで、本発明によれば、回転ジョイントを形成するために使用される取付け要素を、吸引通路の壁部を通して内側、つまり吸引通路内面から、外側に向かって開口内に導入し、開口内で位置固定することが規定されている。特に、取付け要素の端面と壁部の内面とが、平面状の吸引通路内面を形成することができる。したがって、本発明に係る方法は、これにより少ない作業ステップおよび少ない材料消費を必要とする、手術器具の生産が可能であるという利点を有している。したがって、製造のためのコストを、従来公知の製造方法に比べて著しく減少させることができる。なぜならば、吸引通路における特に手間のかかる後加工ステップを省くことができるからである。たとえば、取付け要素の、吸引通路に突出する部分の研削を省略することが可能である。取付け要素の頭部は、好適には壁面と一緒に平坦な面を形成するために、吸引通路内面に設けられた材料の切欠き内に挿入することができる。
【0024】
開口内に導入された取付け要素を位置固定するために、取付け要素は、外側から、特に、シャフトおよび/または切断部分および/または対向切断部分の外面において溶接することができる。任意には、溶接点および/または取付け要素の、外面において突出する区分は、次いで、滑らかな外側表面を提供するために研削することができ、これにより操作者が、研削されていないかどのとがった領域によって不注意に患者に怪我をさせないようになっている。
【0025】
本発明はさらに、特に本明細書に記載され特許請求されているような、吸引通路を有する手術器具の切断工具を形成するための、内側から挿入される2つの取付け要素を有する回転ジョイントの使用に関する。
【0026】
本発明を、以下に複数の実施例につきより詳細に説明するが、これらの実施例に限定されるものではない。別の実施例は、個々の請求項または複数の請求項に記載の特徴の互いに対する組み合わせおよび/または実施例の個々の特徴または複数の特徴との組み合わせにおいて生じる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】切断工具を備えた、生検材料を切断して摘出するための手術器具の第1の可能な構成バリエーションを示しており、吸引通路の横断面が、吸引方向で遠位領域から近位領域に向かって拡張領域内で連続的に拡張している。
【
図2】
図1に示した構成バリエーションの水平方向の縦断面を上から見た平面図である。
【
図3】
図1示した構成バリエーションの鉛直方向の縦断面を示す側面図である。
【
図4】生検材料を切断して摘出するための手術器具の別の可能な構成バリエーションを示しており、この構成バリエーションも同様に、少なくとも部分的に直径が吸引方向で大きくなる横断面を有する吸引通路を有しており、切断工具が、2つの取付け要素を有する回転ジョイントを有しており、取付け要素が、取付け要素の、かどのとがった部分が吸引通路内に突出しないように、内側から外側に向かってそれぞれ導入されている。
【
図5】
図4に示した手術器具のシャフトの正面図であり、シャフトは、切断工具を操作するための把持部なしに描かれている。
【
図6】
図4に示した手術器具のシャフトの背面図であり、シャフトは、シャフトは、切断工具を操作するための把持部なしに描かれている。
【
図7】回転可能な切断工具を備えた、本発明により形成された手術器具の別の実施例の代替的に構成された遠位領域を示す図である。
【
図8】
図7に示した手術器具1を、部分的に構成要素を省略して示している。
【0028】
図1~
図6は、生検材料、つまり特に生検介入中に取り出される身体材料を切断し摘出するための手術器具の可能な構成が示されており、手術器具は全体として参照符号1で示されている。
【0029】
手術器具1は、たとえば、図面に部分的に示されているように、組織パンチとして構成されていてよい。
【0030】
このような手術器具1は、通常、把持部20を有しており、この把持部20によりユーザが切断工具8を操作することができ、つまり特に切断工具8の調節を達成することができる。切断工具8は、基本的には、組織の切断のために適している、かつ/または設計されている、手術器具1のあらゆる工具であると理解することができる。
【0031】
把持部20は、シャフト2に固定的に結合されているか、または結合可能である。シャフト2は、しばしば複数部品から構成されている。
【0032】
シャフト2を通って、さらに吸引通路3が形成されている。この吸引通路3は、切断工具8によって切断された生検材料を遠位領域4から手術器具1の近位領域5の方向に搬送することができるように、特に遠位領域から吸引することができるように働く。吸引工程は、たとえば、吸引通路4へ負圧を加えることによって行うことができる。特に、手術器具1は、負圧を形成するための外部の負圧装置および/または固有の負圧装置に接続するための接続部を有していてよい。
【0033】
シャフト2の近位領域5、特にシャフト2の近位端には、吸引された生検材料を受け取るために、組織コレクタが配置されているか、または配置可能であってよい。
【0034】
生検材料の吸引時には、生検材料の破壊が生じないように注意しなければならない。なぜならば、生検材料は通常、次いで検査されなければならないからである。したがって、生検試料の吸引のために加えられる負圧は、たとえば、大気圧と加えられる負圧との差が高くなり過ぎないようにすることによって、できるだけ穏やかな吸引を可能にすることが望ましい。
【0035】
しかし、存在している圧力と加えられる負圧との圧力差が小さすぎる場合に、生検材料が吸引されることが保証されておらず、吸引通路3の詰まりが生じることが起こり得る。
【0036】
この問題は、吸引通路3の横断面6が、吸引方向で遠位領域4から近位領域5に向かって少なくとも拡張領域14内で拡張することによって解決される。したがって、吸引通路3の拡張領域14は、吸引通路3の直径の変更がある部分に関する。
【0037】
したがって、吸引区間に沿った摩擦を減じることが可能である。吸引通路3の遠位端において、吸引通路3はより狭い断面を有しているので、この遠位端において切断された生検材料は、吸引通路内面12において比較的大きな面積で接触している。負圧、特に真空が加えられた後に、存在している外圧と、生検材料の、吸引通路3内で切断工具7とは反対側に存在している圧力との間の圧力差は、生検材料がこの圧力により引き込まれるまで、増大する。生検材料の初期の加速は、生検材料を近位領域5内に至るまで搬送するために十分であり、近位領域5において生検材料は場合によっては組織コレクタによって受け取られる。
【0038】
拡大した吸引通路3によって、吸引区間に沿った、生検材料と、吸引通路3の壁部17との間の摩擦および/または接触は、遠位領域4、つまり生検材料が切断工具によって切断された後の生検材料の初期位置におけるよりも小さくなる。
【0039】
手術器具1は、需要に応じて種々異なる切断工具7を有していてよい。
【0040】
図1~
図3には、ケリソンパンチとして形成されている実施例を示しており、切断工具7は、バヨネットとして形成されている。切断工具7は、固定された切断部分8と、長手方向軸線に沿って固定された切断部分8に対して相対的に軸方向に調節可能な対向切断部分9とを有している。
【0041】
図4~
図6は、切断工具7が口部形(Maulgeometrie)を有している第2の実施例を示している。切断工具7は、固定された切断部分8と、回転ジョイント10によって形成される回転軸線を中心として固定された切断部分8に対して相対的に調節可能な対向切断部分9とを有している。このような種類の手術器具1では、上述の回転ジョイント10が、少なくとも1つの取付け要素11によって形成されている。吸引通路3の長手方向軸線に対して垂直にシャフト2の一方の側から他方の側に延びている、たとえばロッド形の唯1つの取付け要素が使用される場合、取付け要素11は吸引通路3内で障害物を形成する。この障害物は、吸引時に生検材料の損傷につながり、かつ/または最悪の場合には、取付け要素11における生検材料の付着による吸引通路3の詰まりにつながってしまう。
【0042】
回転ジョイント10が、対向する2つの取付け要素11により構成されていたとしても、従来公知の手術器具の取付け要素11は、吸引通路3内に不利に突出している。なぜならば、取付け要素11は、簡略化された製造に基づいて、外側から内側に向かって挿入されているからである。したがって、従来公知の手術器具の取付け要素11の頭部16は、シャフトの外面13に位置している。
【0043】
図4~
図6に示した構成では、取付け要素11の端面15が吸引通路内面12にあることが規定されている。吸引通路3の壁部17の取付け開口から取付け要素11が脱落することを阻止するために、端面15には通常は幅広の頭部16が形成されている。壁部17の内側から外側に向かって取付け要素11を導入することによって、吸引通路内面12におけるかどのとがった構造体を回避することが可能である。
【0044】
横断面拡張は、種々様々な形式で形成されていてよい。したがってたとえば、連続的および/または線的であってもよい。横断面拡張は、吸引通路3の全体にわたって延びているか、または吸引通路3の一部(拡張領域14)だけにわたって延びていてよい。
【0045】
断面拡張が拡張領域14において生じる構成では、吸引通路3が、拡張領域14の上流側および/または下流側の区分において均一な寸法の横断面6および/または形状が維持された横断面6を有していることが規定されている。
【0046】
図1~
図6に示されているように、拡張領域14は、シャフト2の遠位端から、最大でシャフト2の中心にまで、特にシャフト2の長さの最大で1/3にまで延びていてよい。
【0047】
図4~
図6に示した構成では、取付け要素11の端面15、つまり好適には取付け要素11の頭部16の端面15は、吸引通路3の壁部17と一緒に、平面状な吸引通路内面12を形成する。取付け要素11と壁部17との間の移行部は、ここでは、滑らかかつ/または段部なしに構成されていてよい。したがって、組織試料が取付け要素11に引っかかったままとなり、これによって破壊されること、および/または、吸引通路3内で回転ジョイント10の領域において詰まりが生じることをさらに改善して阻止することができる。取付け要素11の頭部は、少なくとも部分的に壁部17の材料に陥没されていてよい。
【0048】
生検材料が取付け要素11に引っかかったままになることをさらに改善して阻止することができるようにするために、取付け要素11の、吸引通路内面12にある端部が、少なくとも部分的に丸み付けされていてよい。これに対して代替的にまたは補足的には、吸引通路内面12を部分的に形成する端面15が凸状に湾曲されていてよい。
【0049】
図7および
図8は、本発明により形成された手術器具1の別の実施例の代替的に構成された遠位領域4を示している。
図8では、内側から取付け要素11を見ることを可能にするために、いくつかの部分が省略されている。
【0050】
切断工具7は、固定された切断部分8と、この固定された切断部分8に対して調節可能な対向切断部分9とを有している。対向切断部分9は、回転ジョイント10において切断部分8に対して回転可能である。対向切断部分9は、ジョイント21を介してスライドレール19に枢着されている。スライドレール19は、上述したように、ガイドレール18上で滑ることができる。スライドレール19が前方に押し出されると、対向切断部分9が、回転ジョイント10を中心として切断部分8の開口内へ回転する。対向切断部分9は、切断部分8のU字形に形成された縁部24内で僅かな隙間しか有していないので、対向切断部分9と切断部分8との間に到達した組織は打ち抜かれるか、または切断される。このためには、対向切断部分9が、カッティングエッジ25を有している。
【0051】
スライドレール19の上面には、特に液体が供給可能である供給管路22が形成されている。スライドレール19が戻されると、供給管路22の先端部が対向切断部分9の切欠き23内に係合するので、対向切断部分9と切断部分8との間に形成される打抜き室に直接に液体を導入することができる。
【0052】
図8から詳細にわかるように、回転ジョイント10は、シャフト2の両側で、それぞれ1つの取付け要素11を形成している。この取付け要素11は、この箇所で内側に位置する固定された切断部分8と、この箇所で外側に位置する調節可能な対向切断部分9とを互いに回転可能に結合している。対向切断部分9には、凹部26が形成されているので、対向切断部分9の前部領域はもはや外側に位置するのではなく、切断部分8内へと内側で係合することができる。
【0053】
図8からわかるように、取付け要素11は、吸引通路3の壁部17の孔を通って内側から外側へと導入される。孔は、外側よりも内側で幅広に形成されているので、取付け要素11の残りの領域よりも幅広に形成されている取付け要素11の頭部16は、壁部17内に完全に埋没可能である。孔の内面は、取付け要素11の幾何学的形状に適合されている。
【0054】
図8において確認可能であるように、取付け要素11の端面15は、吸引通路3の壁部17と一緒に平面的な吸引通路内面12を形成する。同時に、頭部16と壁部17との間の移行部は、滑らかかつ段差なしに構成されている。
【0055】
図7および
図8に示した実施例では、前述したように、吸引通路3の横断面6の直径は、吸引方向で遠位領域4から近位領域5まで拡張されていてよい。
【符号の説明】
【0056】
1 手術器具
2 シャフト
3 吸引通路
4 遠位領域
5 近位領域
6 横断面
7 切断工具
8 固定された切断部分
9 調節可能な対向切断部分
10 回転ジョイント
11 取付け要素
12 吸引通路内面
13 シャフトの外面
14 拡張領域
15 端面側、端面
16 取付け要素の頭部
17 吸引通路の壁部
18 ガイドレール
19 スライドレール
20 把持部
21 ジョイント
22 供給管路
23 切欠き
24 縁部
25 刃
26 凹部