(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-20
(45)【発行日】2025-01-28
(54)【発明の名称】導電性フィルム、及び表示装置
(51)【国際特許分類】
H01B 5/14 20060101AFI20250121BHJP
B32B 9/00 20060101ALI20250121BHJP
B32B 27/00 20060101ALN20250121BHJP
B32B 27/36 20060101ALN20250121BHJP
【FI】
H01B5/14 A
H01B5/14 B
B32B9/00 A
B32B27/00 A
B32B27/36
(21)【出願番号】P 2022572020
(86)(22)【出願日】2021-11-29
(86)【国際出願番号】 JP2021043671
(87)【国際公開番号】W WO2022138000
(87)【国際公開日】2022-06-30
【審査請求日】2023-05-29
(31)【優先権主張番号】P 2020217491
(32)【優先日】2020-12-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【氏名又は名称】三上 敬史
(72)【発明者】
【氏名】新開 浩
(72)【発明者】
【氏名】園田 大介
(72)【発明者】
【氏名】玉川 祥久
(72)【発明者】
【氏名】張原 康正
(72)【発明者】
【氏名】五井 智之
(72)【発明者】
【氏名】手塚 謙一
【審査官】遠藤 尊志
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-005013(JP,A)
【文献】特開2017-175542(JP,A)
【文献】特開2020-178208(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第03683809(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 5/14
B32B 9/00
B32B 27/00
B32B 27/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルム状の光透過性基材と、
前記光透過性基材の一方の主面のうちの一部を占める第一領域上に設けられた導電性層と、
前記光透過性基材の一方の主面のうち前記第一領域以外の領域を含む第二領域の全体を覆うように設けられた光透過性樹脂層と、
を備え、
前記導電性層が、前記光透過性基材の主面の面内方向に延在し開口を含むパターンを有する部分を含む導体部と、前記導体部の開口内を埋める絶縁樹脂部と、を有
し、
前記導体部、前記絶縁樹脂部、及び前記光透過性樹脂層が実質的に同じ厚みを有する、
導電性フィルム。
【請求項2】
前記第一領域の面積が、前記第二領域の面積よりも小さい、請求項1に記載の導電性フィルム。
【請求項3】
前記導体部の開口を含むパターンが、メッシュ状のパターンである、請求項1又は2に記載の導電性フィルム。
【請求項4】
前記光透過性樹脂層及び前記絶縁樹脂部が硬化性樹脂組成物の硬化物である、請求項1~3のいずれか一項に記載の導電性フィルム。
【請求項5】
前記光透過性樹脂層と前記絶縁樹脂部とが同じ樹脂によって形成されている、請求項1~4のいずれか一項に記載の導電性フィルム。
【請求項6】
前記光透過性基材の屈折率と、前記光透過性樹脂層の屈折率との差が0.1以下である、請求項1~
5のいずれか一項に記載の導電性フィルム。
【請求項7】
請求項1~
6のいずれか一項に記載の導電性フィルムを具備する表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性フィルム、及び表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置等の表示装置において、金属細線によって形成された、開口を含むパターンを有する導体部を有する導電部材が用いられることがある。その場合、導体部が設けられた部分と導体部が設けられない部分との境界が視認されることを防ぐために、実際に導体として機能する導体部以外に、ダミー部材としてのメッシュ状のパターンを形成する金属細線が画像表示領域全体にわたって設けられることが一般的である(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ダミー部材としてのメッシュ状のパターンを形成する金属細線が画像表示部全体にわたって設けられると、金属細線と表示装置の画素との干渉に起因して、表示画像にモアレが発生することがある。そのため、モアレ抑制の観点からは、フィルム状の基材と、開口を含むパターンを有する導体部とを有し、当該導体部以外の領域においてダミー部材としての金属細線が設けられていない導電性フィルムを、表示装置に組み込むことが有効であると考えられる。特に、導体部の開口を埋める絶縁樹脂部を更に有する導電性フィルムは、その製造が容易であることが期待される。ところがその場合、主に絶縁樹脂部の屈折率と空気の屈折率との差異に起因して、絶縁樹脂部を透過する光と、それ以外の部分を透過する光とで光路長に差異が生じ、そのために正常な画像表示に支障をきたすことがある。
【0005】
そこで、本発明は、表示装置に組み込まれたときに、表示画像のモアレの発生を抑制するとともに、均一性の高い光路長を確保し易い導電性フィルムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、フィルム状の光透過性基材と、前記光透過性基材の一方の主面のうちの一部を占める第一領域上に設けられた導電性層と、前記光透過性基材の一方の主面のうち前記第一領域以外の領域を含む第二領域の全体を覆うように設けられた光透過性樹脂層と、を備える導電性フィルムを提供する。前記導電性層は、前記光透過性基材の主面の面内方向に延在し開口を含むパターンを有する部分を含む導体部と、前記導体部の開口内を埋める絶縁樹脂部と、を有する。
【0007】
上記導電性フィルムは、絶縁樹脂部を含む導電性層が設けられた第一領域以外の領域を含む第二領域の全体に光透過性樹脂層が設けられていることから、これが表示装置に組み込まれたときに、ダミー部材に起因するモアレの発生が抑制されるとともに、画像を表示する光のための均一性の高い光路長が確保され易い。
【0008】
前記第一領域の面積が、前記第二領域の面積よりも小さくてもよい。第一領域の面積が相対的に小さいと、画像表示への影響をより小さくしながら、導体部を設けることができる。
【0009】
前記導体部の開口を含むパターンが、メッシュ状のパターンであってもよい。メッシュ状のパターンを有する部分の導体部は、例えばアンテナの放射素子として良好に機能することができる。
【0010】
前記透明樹脂層及び前記絶縁樹脂部が硬化性樹脂組成物の硬化物であってもよい。硬化性樹脂組成物の硬化物を透明樹脂層及び絶縁樹脂部として有する導電性フィルムは、良好な光透過性を有し易く、また、その製造も容易である。
【0011】
前記透明樹脂層と前記絶縁樹脂部とが同じ樹脂によって形成されていてもよい。同じ樹脂によって形成された透明樹脂層及び絶縁樹脂部は屈折率が等しいことから、当該導電性フィルムを透過する光路長がより一層安定することができる。同様の観点から、前記導体部、前記絶縁樹脂部、及び前記光透過性樹脂層が実質的に同じ厚みを有していてもよい。
【0012】
前記光透過性基材の屈折率と、前記光透過性樹脂層の屈折率との差が0.1以下であってもよい。これにより、表示画像の良好な視認性がより一層確保され易い。
【0013】
本発明の別の一側面は、上記導電性フィルムを具備する表示装置を提供する。
【発明の効果】
【0014】
本発明の一側面に係る導電性フィルムは、表示装置に組み込まれたときに、表示画像のモアレの発生を抑制するとともに、光路長の高い均一性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】導電性フィルムの一実施形態を示す平面図である。
【
図4】導電性層の一例の一部を示す拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明のいくつかの実施形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0017】
図1は導電性フィルムの一実施形態を示す平面図であり、
図2は
図1のII-II線に沿う断面図である。
図1及び
図2に示される導電性フィルム20は、フィルム状の光透過性基材1と、光透過性基材1の一方の主面1Sのうちの一部を占める第一領域SA上に設けられた導電性層5と、光透過性基材1の一方の主面1Sのうち第一領域SA以外の領域を含む第二領域SBの全体を覆うように設けられた光透過性樹脂層7Bとを備える。導電性層5は、光透過性基材1の主面1Sの面内方向に延在し複数の開口3aを含むパターンを有する部分を含む導体部3と、導体部3の開口3a内を埋める絶縁樹脂部7Aとを有する。
【0018】
第一領域SAは、光透過性基材1の主面1Sのうち、
図2においてAで示される範囲に相当する部分であり、ここに導電性層5が設けられている。第二領域SBは、光透過性基材1の主面1Sのうち、
図2においてBで示される範囲に相当する部分であり、ここに光透過性樹脂層7Bが設けられている。導体部3のうち、主面1Sに垂直な方向から見たときに最も外側に位置する側面に沿う閉じた1本の線を、第一領域SAの外縁とみなすことができる。
図2に示されるように、第一領域SAの外縁上に位置する導体部3の側面に、光透過性樹脂層7Bが隣接していてもよい。
【0019】
図1及び
図2に例示される導電性フィルム20の場合、光透過性基材1の主面1Sのうち第一領域SAを除く部分の全体が第二領域SBであり、第二領域SBの全体を覆うように光透過性樹脂層7Bが設けられている。ただし、光透過性基材1の主面1Sは、第一領域SA及び第二領域SB以外の部分、すなわち導電性層5及び光透過性樹脂層7Bが設けられていない領域も含み得る。例えば、第二領域SBの周囲に導電性層5及び光透過性樹脂層7Bが設けられていない領域があってもよい。第二領域SBは、導電性フィルム20が表示装置に組み込まれたときに、表示装置の画像表示領域に相当する領域を含んでいてもよい。光透過性基材1の主面1Sのうち、第一領域SA及び第二領域SBの合計の割合が、例えば80~100面積%、90~100面積%、95~100面積%、又は100面積%であってもよい。
【0020】
第一領域SAの面積が、第二領域SBの面積よりも小さくてもよい。第一領域SAの面積が相対的に小さいと、画像表示への影響をより小さくしながら、導電性層5を設けることができる。同様の観点から、光透過性基材1の主面1Sの面積に対する、第一領域SAの面積、すなわち導電性層5の面積の割合が、30面積%以下、20面積%以下、10面積%以下、又は5面積%以下であってもよく、1面積%以上であってもよい。光透過性基材1の主面1Sにおける第一領域SAの位置は特に制限されないが、
図1及び
図2に例示されるように主面1Sの外縁近傍に第一領域SAが配置され、第二領域SBが主面1Sの中央部を含んでいてもよい。
【0021】
光透過性基材1は、導電性フィルム20が表示装置に組み込まれたときに必要とされる程度の光透過性を有する。具体的には、光透過性基材1の全光線透過率が90~100%であってもよい。光透過性基材1のヘイズが0~5%であってもよい。
【0022】
光透過性基材1は、例えば透明樹脂フィルムであってもよく、その例としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート(PC)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、シクロオレフィンポリマー(COP)、又はポリイミド(PI)のフィルムが挙げられる。あるいは、光透過性基材1がガラス基板であってもよい。
【0023】
光透過性基材1は、光透過性の支持フィルムと、支持フィルム上に設けられた下地層とを有する積層体であってもよい。支持フィルムは上記透明樹脂フィルムであることができる。下地層は無電解めっき等によって導体部3を形成するために設けられる層である。他の方法によって導体部3を形成する場合、下地層は必ずしも設けられなくてもよい。
【0024】
光透過性基材1又はこれを構成する支持フィルムの厚みは、10μm以上、20μm以上、又は35μm以上であってよく、500μm以下、200μm以下、又は100μm以下であってよい。
【0025】
下地層は、触媒及び樹脂を含有する層であってもよい。樹脂は、硬化性樹脂組成物の硬化物であってもよい。硬化性樹脂組成物に含まれる硬化性樹脂の例としては、アミノ樹脂、シアネート樹脂、イソシアネート樹脂、ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂、オキセタン樹脂、ポリエステル、アリル樹脂、フェノール樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、キシレン樹脂、ケトン樹脂、フラン樹脂、COPNA樹脂、ケイ素樹脂、ジクロペンタジエン樹脂、ベンゾシクロブテン樹脂、エピスルフィド樹脂、エン-チオール樹脂、ポリアゾメチン樹脂、ポリビニルベンジルエーテル化合物、アセナフチレン、及び不飽和二重結合、並びに、環状エーテル、ビニルエーテル等の紫外線で重合反応を起こす官能基を含む紫外線硬化樹脂が挙げられる。触媒及び樹脂を含有する下地層と、光透過性基材1との間に、光透過性基材1と下地層との密着性を向上させる樹脂層が設けられていてもよい。
【0026】
下地層に含まれる触媒は、無電解めっき触媒であってもよい。無電解めっき触媒は、Pd、Cu、Ni、Co、Au、Ag、Pd、Rh、Pt、In、及びSnから選ばれる金属であってよく、Pdであってもよい。触媒は、1種類単独若しくは2種類以上の組合せであってもよい。通常、触媒は触媒粒子として樹脂中に分散している。
【0027】
下地層における触媒の含有量は、下地層全量を基準として、3質量%以上、4質量%以上、又は5質量%以上であってもよく、50質量%以下、40質量%以下、又は25質量%以下であってもよい。
【0028】
下地層の厚みは、10nm以上、20nm以上、又は30nm以上であってもよく、500nm以下、300nm以下、又は150nm以下であってもよい。
【0029】
導電性層5を構成する導体部3は、開口3aを含むパターンを有する部分を含む。開口3aを含むパターンは、互いに交差する複数の線状部によって形成された、規則的に配置された複数の開口3aを含むメッシュ状のパターンであってもよい。メッシュ状のパターンを有する導体部3は、例えばアンテナの放射素子として良好に機能することができる。導体部3は、開口3aを含むパターンを有する部分の他に、グランド端子、給電端子等の導電部材に相当する部分を有していてもよい。
【0030】
導体部3は、金属を含んでいてもよい。導体部3は、銅、ニッケル、コバルト、パラジウム、銀、金、白金及びスズから選ばれる少なくとも1種の金属を含んでいてもよく、銅を含んでいてもよい。導体部3は、めっき法によって形成された金属めっきであってもよい。導体部3は、適切な導電性が維持される範囲で、リン等の非金属元素を更に含んでいてもよい。
【0031】
絶縁樹脂部7Aは、導体部3の開口3aを埋めるように設けられており、絶縁樹脂部7Aと導体部3とで平坦な表面が形成されていてもよい。
【0032】
光透過性樹脂層7Bは、光透過性を有する樹脂によって形成されている。光透過性樹脂層7Bの全光線透過率が90~100%であってもよい。光透過性樹脂層7Bのヘイズが0~5%であってもよい。
【0033】
光透過性基材1(又は光透過性基材1を構成する支持フィルムの屈折率)と、光透過性樹脂層7Bの屈折率との差が0.1以下であってもよい。これにより、表示画像の良好な視認性がより一層確保され易い。光透過性樹脂層7Bの屈折率(nd25)は、例えば、1.0以上であってもよく、1.7以下、1.6以下、又は1.5以下であってよい。屈折率は、反射分光膜厚計により測定することができる。
【0034】
絶縁樹脂部7A及び光透過性樹脂層7Bを形成する樹脂は、硬化性樹脂組成物(光硬化性樹脂組成物又は熱硬化性樹脂組成物)の硬化物であってもよい。絶縁樹脂部7A及び/又は光透過性樹脂層7Bを形成する硬化性樹脂組成物は、硬化性樹脂を含み、その例としては、アクリル樹脂、アミノ樹脂、シアネート樹脂、イソシアネート樹脂、ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂、オキセタン樹脂、ポリエステル、アリル樹脂、フェノール樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、キシレン樹脂、ケトン樹脂、フラン樹脂、COPNA樹脂、ケイ素樹脂、ジクロペンタジエン樹脂、ベンゾシクロブテン樹脂、エピスルフィド樹脂、エン-チオール樹脂、ポリアゾメチン樹脂、ポリビニルベンジルエーテル化合物、アセナフチレン、並びに、不飽和二重結合、環状エーテル及びビニルエーテル等の紫外線で重合反応を起こす官能基を含む紫外線硬化樹脂が挙げられる。
【0035】
絶縁樹脂部7Aを形成する樹脂と光透過性樹脂層7Bを形成する樹脂とが同じであってもよい。同じ樹脂によって形成された絶縁樹脂部7A及び光透過性樹脂層7Bは屈折率が等しいことから、導電性フィルム20を透過する光路長の均一性がより一層向上することができる。絶縁樹脂部7Aを形成する樹脂と光透過性樹脂層7Bを形成する樹脂とが同じである場合、例えば1層の硬化性樹脂層からインプリント法等によってパターン形成することによって、絶縁樹脂部7A及び光透過性樹脂層7Bを容易に一括して形成することができる。
【0036】
光路長の均一性の観点から、導体部3、絶縁樹脂部7A、及び光透過性樹脂層7Bが実質的に同じ厚みを有していてもよい。例えば、導体部3、絶縁樹脂部7A及び光透過性樹脂層7Bの厚みの平均値がTであるとき、導体部3、絶縁樹脂部7A及び光透過性樹脂層7Bの厚みが、Tに対して±3μm以内、±2μm以内、±1μm以内、±0.5μm以内、又は±0.3μm以内であってもよい。導体部3、絶縁樹脂部7A、及び光透過性樹脂層7Bの厚みが、0.8μm以上、1.0μm以上、又は1.2μm以上であってもよく、5μm以下、4μm以下、又は3μm以下であってもよい。
【0037】
図3は、導体性層の一例を示す平面図である。
図3に示される導電性層5は、導体部3、絶縁樹脂部7A、及び給電端子8を有する。導体部3は、複数の線状部を含むメッシュ状のパターンを有し、放射素子を含む配線部31と、グランド電極33と、端子部6とを有する。端子部6は、2つのグランド端子32と、配線部31の外側に向けて延出した導体部3である端子パターン部80とを含む。グランド電極33は、配線部31の放射素子を囲みながら、2つのグランド端子32の間にわたって設けられている。グランド電極33を構成する線状部の幅及び形状は、配線部31を構成する線状部の幅及び形状と同様であることができる。給電端子8は、端子パターン部80の一部を覆うように平面状に延在する。給電端子8はベタの形態を有する導体層である。平面視において、給電端子8の外縁は、端子パターン部80(導体部3)の外縁より内側に位置していてもよい。この場合、給電端子8の外縁が導体部3の外縁からはみ出ることが抑制され、それにより、配線部31が端子部6に隣り合う他の端子部とショートすることを抑制できる。また、給電端子8が電極側にはみ出すことで導電性フィルムの視認性が向上してしまうことを抑制できる。給電端子8によって覆われた端子パターン部80(導体部3)が、給電端子8によって覆われていない導体部3と同様のメッシュ状のパターンを有していてもよい。
【0038】
図4は
図3の導電性層5のうち給電端子8が設けられた部分を示す拡大断面図である。
図3及び
図4に示される給電端子8は、端子パターン部80(導体部3)の表面、及び端子パターン部80の開口を埋める絶縁樹脂部7Aの表面を覆うように形成されている。
図3及び
図4に示す例では、給電端子8は、その外縁で囲まれる領域において隙間無く一体的に形成されている。給電端子8は、複数の領域に分割されてもよく、分割された領域間では、端子パターン部80(導体部3)及び絶縁樹脂部7Aがスリット状に露出してもよい。
【0039】
図4の断面図に示されるように、給電端子8によって覆われる部分の端子パターン部80(導体部3)の光透過性基材1の主面1Sからの高さが、絶縁樹脂部7Aの主面1Sからの高さよりも大きくてもよい。給電端子8の導体部3とは反対側の表面8Sが、粗面化されていてもよい。言い換えると、表面8Sの表面粗さが、導体部3の表面粗さよりも大きくてもよい。表面8Sが粗面化されていると、外部の接続端子との接続強度が向上され得る。ここでの表面粗さは、例えば、算術平均粗さ Raであってもよい。給電端子8の厚みが、導体部3の厚みよりも大きくてもよい。
【0040】
グランド端子が、基材の主面上に延在する導体部とは別に設けられていてもよい。例えば、グランド端子が、開口を含むパターンを有する端子部としての端子パターン部を覆うように平面状に延在し、ベタの形態を有する導体層であってもよい。この場合、平面視において、グランド端子の外縁が、その下部に位置する端子パターン部(端子部、導体部)の外縁より内側に位置していてもよい。これにより、グランド端子が導体部の外縁からはみ出ることが抑制され、それにより、グランド端子が隣り合う他の端子部とショートすることを抑制できる。また、グランド端子が電極側にはみ出すことで導体部の視認性が向上してしまうことを抑制できる。ベタの形態を有するグランド端子によって覆われた端子パターン部が、グランド端子によって覆われていない部分の導体部と同様のメッシュ状のパターンを有していてもよい。導電性フィルムは、以上説明したような、端子部(端子パターン部)を覆うベタの形態を有する給電端子、端子部(端子パターン部)を覆うベタの形態を有するグランド端子、又はこれらの両方を有していてもよい。
【0041】
導電性フィルム20は、例えばインプリント法によるパターン形成を含む方法によって製造することができる。導電性フィルム20を製造する方法の一例は、支持フィルムと支持フィルムの一方の主面上に設けられた、触媒を含有する下地層とを有する光透過性基材1を準備することと、光透過性基材1の下地層側の主面1S上に、硬化性樹脂層を形成させることと、凸部を有するモールドを用いたインプリント法により、下地層が露出するトレンチを形成させることと、トレンチを充填する導体部3を、下地層から金属めっきを成長させる無電解めっき法により形成することとを含む。硬化性樹脂層にモールドが押し込まれた状態で硬化性樹脂層を硬化させることにより、モールドの凸部の反転形状を有する開口を含むパターンを有する絶縁樹脂部7Aと光透過性樹脂層7Bとが一括して形成される。開口を含むパターンを有する絶縁樹脂部7Aを形成する方法は、インプリント法に限られず、フォトリソグラフィー等の任意の方法を適用できる。
【0042】
以上例示的に説明された導電性フィルムを、例えば平面状の透明アンテナとして表示装置に組み込むことができる。表示装置は、例えば、液晶表示装置、又は有機EL表示装置であってもよい。
図5は、導電性フィルムが組み込まれた表示装置の一実施形態を示す断面図である。
図5に示される表示装置100は、画像表示領域10Sを有する画像表示部10と、導電性フィルム20と、偏光板30と、カバーガラス40とを備える。導電性フィルム20、偏光板30、及びカバーガラス40は、画像表示部10の画像表示領域10S側において、画像表示部10側からこの順に積層されている。表示装置の構成は
図5の形態に限られず、必要により適宜変更が可能である。例えば、偏光板30が画像表示部10と導電性フィルム20との間に設けられてもよい。画像表示部10は、例えば液晶表示部であってもよい。偏光板30及びカバーガラス40として、表示装置において通常用いられているものを用いることができる。偏光板30及びカバーガラス40は、必ずしも設けられなくてもよい。画像表示部10の画像表示領域10Sから出射される画像表示のための光が、導電性フィルム20を含む均一性の高い光路長の経路を通過する。これにより、モワレが抑制された均一性の高い良好な画像表示が可能である。
【符号の説明】
【0043】
1…光透過性基材、1S…基材の主面、3…導体部、3a…開口、5…導電性層、7A…絶縁樹脂部、7B…光透過性樹脂層、20…導電性フィルム、30…偏光板、40…カバーガラス、100…表示装置、SA…第一領域、SB…第二領域。