(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-20
(45)【発行日】2025-01-28
(54)【発明の名称】表示装置
(51)【国際特許分類】
G09F 9/00 20060101AFI20250121BHJP
B65H 75/34 20060101ALI20250121BHJP
G09F 9/30 20060101ALI20250121BHJP
G09F 19/00 20060101ALI20250121BHJP
H10K 59/10 20230101ALI20250121BHJP
H10K 77/10 20230101ALI20250121BHJP
【FI】
G09F9/00 350Z
B65H75/34
G09F9/00 351
G09F9/30 308Z
G09F9/30 365
G09F19/00 Z
H10K59/10
H10K77/10
(21)【出願番号】P 2023194672
(22)【出願日】2023-11-15
【審査請求日】2023-11-15
(73)【特許権者】
【識別番号】505205731
【氏名又は名称】レノボ・シンガポール・プライベート・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】土橋 守幸
(72)【発明者】
【氏名】藤井 一男
【審査官】新井 重雄
(56)【参考文献】
【文献】特表2021-525400(JP,A)
【文献】特開2016-130853(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0133019(US,A1)
【文献】特開2011-038340(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-0449516(KR,B1)
【文献】実開昭59-150894(JP,U)
【文献】特開昭58-199990(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09F 9/00
B65H 75/34
G09F 9/30
G09F 19/00
H10K 59/10
H10K 77/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
OLEDと、
前記OLEDを一端から巻き取る巻取体と、
前記巻取体に対して前記OLEDの巻取り力を付与する定荷重バネと、
前記OLEDに対して巻き出し延在方向に沿って両縁に設けられ、前記巻取体に対して前記OLEDとともに巻取り可能で、巻き出し時には前記OLEDを直線状に維持する帯材と、
前記OLEDの巻き出し方向が、相対的に前記巻取体に対する巻回方向に沿う方向であるときに前記OLEDを開放し、相対的に前記巻取体に対する反巻回方向に沿う方向であるときに前記OLEDを巻取り不能に固定する固定機構と、
を有
し、
前記固定機構は、
前記OLEDの前記巻取体に対する巻取り外面に沿って全幅を横断するように設けられたガイドバーと、
前記OLEDの前記巻取体に対する巻取り内面に沿って全幅を横断するように設けられたストップローラーと、
を有し、
前記ストップローラーと前記ガイドバーとは近傍で平行しており、前記OLEDの巻き出し方向へ一体的に弾性付勢されており、
前記OLEDの巻き出し方向が、相対的に前記巻取体に対する巻回方向に沿う方向であるときに、前記ガイドバーおよび前記ストップローラーは弾性付勢の作用によって巻き出し方向に変位して前記OLEDの固定を解除する位置にあり、
前記OLEDの巻き出し方向が相対的に前記巻取体に対する反巻回方向に沿う方向であるときに、前記ガイドバーは前記OLEDの前記巻取り外面が接することによって摩擦力により前記OLEDとともに巻取り方向に変位し、前記ストップローラーは前記OLEDの前記巻取り内面と前記巻取体との間に形成される鋭角状隙間に入り込む
ことを特徴とする表示装置。
【請求項2】
請求項
1に記載の表示装置において、
前記ストップローラーの表面はゴム材である
ことを特徴とする表示装置。
【請求項3】
OLEDと、
前記OLEDを一端から巻き取る巻取体と、
前記巻取体に対して前記OLEDの巻取り力を付与する定荷重バネと、
前記OLEDに対して巻き出し延在方向に沿って両縁に設けられ、前記巻取体に対して前記OLEDとともに巻取り可能で、巻き出し時には前記OLEDを直線状に維持する帯材と、
前記OLEDの巻き出し方向が、相対的に前記巻取体に対する巻回方向に沿う方向であるときに前記OLEDを開放し、相対的に前記巻取体に対する反巻回方向に沿う方向であるときに前記OLEDを巻取り不能に固定する固定機構と、
を有し、
前記巻取体との間に前記OLEDの巻取り空間を確保し、スリットから前記OLEDが巻き出されるカバーを有し、
前記スリットにおける前記OLEDの前記巻取体に対する反巻回方向の側の端部が前記固定機構を構成し、
前記OLEDの巻き出し方向が、相対的に前記巻取体に対する巻回方向に沿う方向であるときに前記端部は前記OLEDから離れ、
前記OLEDの巻き出し方向が相対的に前記巻取体に対する反巻回方向に沿う方向であるときに、前記OLED
が平面状に復帰しようとする力により前記端部が該OLEDを前記巻取体に対して押さえつける
ことを特徴とする表示装置。
【請求項4】
請求項1~
3のいずれか1項に記載の表示装置において、
前記OLEDは第1シートに貼られており、
前記OLEDの巻き出し側端部には第1シートより硬く、該第1シートを延長するような第2シートが設けられており、
前記第2シートには前記OLEDを巻き出す把持用の引出しバーが設けられている
ことを特徴とする表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、巻取り可能な表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には巻取り可能な表示装置が開示されている。この表示装置は据え置き型のハウジングの内部に表示部が巻取って格納されており、リンク機構を用いてモーターの作用下に表示部を昇降させるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の装置は縦型で昇降量を調整することは可能と思われるが、据え置き型であって横向きにすることはできない。巻取り可能な表示装置はモバイル用途や簡易スタンドで支持できる程度に小型化できると好ましく、また、可搬性のある表示装置は表示面積が変えられ、さらに縦型および横型のいずれにも対応可能であると様々な使用態様での利用が可能になって好ましい。
【0005】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであって、様々な使用態様での利用が可能な表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の実施態様に係る表示装置は、OLEDと、前記OLEDを一端から巻き取る巻取体と、前記巻取体に対して前記OLEDの巻取り力を付与する定荷重バネと、前記OLEDに対して巻き出し延在方向に沿って両縁に設けられ、前記巻取体に対して前記OLEDとともに巻取り可能で、巻き出し時には前記OLEDを直線状に維持する帯材と、前記OLEDの巻き出し方向が、相対的に前記巻取体に対する巻回方向に沿う方向であるときに前記OLEDを開放し、相対的に前記巻取体に対する反巻回方向に沿う方向であるときに前記OLEDを巻取り不能に固定する固定機構と、を有する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の上記態様によれば、OLEDの巻き出し量が任意に調整可能であり、しかも任意の向きで維持され、様々な使用態様での利用が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態である表示装置とその外部機器を示す模式図である。
【
図2】
図2は、第1の実施形態にかかる表示装置の模式断面側面図である。
【
図3】
図3は、第1の実施形態にかかる表示装置の模式断面正面図である。
【
図5】
図5は、フレキシブル表示体の模式図である。
【
図6】
図6は、フレキシブル表示体を巻き出す際の表示装置の模式断面側面図である。
【
図7】
図7は、フレキシブル表示体の固定を解除する際の表示装置の模式断面側面図である。
【
図8】
図8は、フレキシブル表示体を巻取り収納する際の表示装置の模式断面側面図である。
【
図9】
図9は、第1変形例にかかる固定機構の模式図である。
【
図10】
図10は、第2変形例にかかる固定機構の模式図である。
【
図11】
図11は、第1の実施形態にかかる表示装置の使用例を示す図であり、(a)は収納状態を示す図であり、(b)は使用準備状態を示す図であり、(c)は使用状態を示す図であり、(d)は収拾状態を示す図である。
【
図12】
図12は、フレキシブル表示体が解放されている状態の第2の実施形態にかかる表示装置の模式断面側面図である。
【
図13】
図13は、フレキシブル表示体カバーから所定量引き出され、固定機構によって固定されている状態の第2の実施形態にかかる表示装置の模式断面正面図である。
【
図14】
図14は、第2の実施形態にかかる表示装置の使用例を示す図であり、(a)は片手で持つ使用例を示す図であり、(b)はフレキシブル三脚を用いる使用例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本発明にかかる表示装置の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0010】
図1は、本発明の実施形態である表示装置10とその外部機器を示す模式図である。
【0011】
表示装置10は表示器としてOLED(Organic Light Emitting Display)11を用いている。OLED11は薄型軽量、低消費電力、コントラストや応答性に優れる特徴がある。また、OLED11は可撓性があることから巻取りが可能であるが曲げ弾性は比較的強く、外力がなければ平面状に復帰しようとする性質がある。表示装置10として第1実施形態にかかる表示装置10Aおよび第2実施形態に係る表示装置10Bを順に説明する。本実施例でOLED11のサイズは、例えば20インチまたは30インチ程度である。
【0012】
まず、第1実施形態にかかる表示装置10Aについて説明する。
図2は、表示装置10Aの模式断面側面図である。
図3は、表示装置10Aの模式断面正面図である。
図2、
図3はフレキシブル表示体12がカバー18から所定量引き出され、固定機構24Aによって固定されている状態を示す。
【0013】
表示装置10Aは、フレキシブル表示体12、シリンダー(巻取体)14、カバー18、定荷重バネ20、固定機構24A、引出しバー26、制御部28、及び表示制御部30を有する。フレキシブル表示体12にはOLED11がほぼ全面に設けられており、フレキシブル表示体12とOLED11とは巻取りおよび巻き出しに関して実質的に同義である。シリンダー14は筒状であってその表面にフレキシブル表示体12を一端12aから巻き取る。表示装置10Aの説明において、シリンダー14の延在方向をX方向とする。シリンダー14は筒状であり、X方向は該シリンダー14の筒軸方向に相当する。定荷重バネ20の側をX1方向、その反対側をX2方向とする。フレキシブル表示体12の巻出し、巻取り方向をY方向とし、シリンダー14側をY
2方向、引出しバー26側をY
1方向とする。また、
図2および後述する
図7では、相対的な周方向の表現としてフレキシブル表示体12がシリンダー14に対する巻回に沿う方向をCW方向とし、その反対をCCW方向とする。
【0014】
シリンダー14の中空部14aには制御部28および表示制御部30が設けられている。制御部28および表示制御部30は細長い形状であり、X方向に沿って設けられている。制御部28と表示制御部30とは制御線でつながっている。
【0015】
制御部28は通常のパソコンにおけるマザーボードに相当するものであり、表示装置10A全体の制御を行うとともに、インターフェースケーブル31を介して外部機器とつながっている。インターフェースケーブル31は螺旋部31aを形成し、シリンダー14の回転が外部に伝わらないようになっている。
【0016】
外部機器としてはキーボード32、マウス34、通信ポート36、および外部バッテリー38などが挙げられる。これらの外部機器は必要に応じて接続されるものであり、不要時には切り離しておいてよい。制御部28は表示装置10Aの外にあってもよい。バッテリーは表示装置10Aの中にあってもよい。
【0017】
表示制御部30はOLED11の表示制御を行うものであり、例えばタイミングコントローラーである。シリンダー14にはスリット14b(
図2参照)が形成されており、フレキシブル表示体12の一端12aは該スリット14bから複数の表示制御線30aを介して表示制御部30と接続されている。表示制御部30は横方向の表示タイミングの観点からフレキシブル表示体12の一端12aの近傍で横方向に沿って設けられることが望ましく、中空部14a内でX方向に沿うレイアウトが好適である。
【0018】
カバー18は、表示装置10Aの全体を覆う筒状の筐体であり両端が蓋18a,18bで塞がれている。蓋18a,18bには電源スイッチ、OLED11の明るさ調整スイッチなどが設けられていてもよい。カバー18のX1方向には、定荷重バネ20を収納するための膨出部18dが形成されている。カバー18はシリンダー14よりもある程度大径であって、該シリンダー14との間にフレキシブル表示体12の巻取り空間16を確保している。カバー18の径は本実施例で30mm程度である。
【0019】
カバー18にはフレキシブル表示体12が巻き出されるスリット18c(
図2参照)が形成されている。フレキシブル表示体12の他端12bは該スリット18cの外に出ている。他端12bには全長に亘って引出しバー26が設けられている。引出しバー26は、フレキシブル表示体12を巻き出す際の把持用で、例えばステンレス材で構成されており、把持しやすい程度の径を有している。
【0020】
シリンダー14のX2側端部はベアリング39によって支持されている。ベアリング39は外輪39a、内輪39bを有する。内輪39bは蓋18bに固定されている。外輪39aは後述のシリンダー支持部42aと同径であって、ラバーリング48を介してシリンダー14の内壁と固定されている。
【0021】
図4は、定荷重バネ20の模式斜視図である。
図4では一部を仮想線で示している。
図3、
図4を参照して定荷重バネ20の説明をする。定荷重バネ20はカバー18におけるX1方向の端部に設けられている。定荷重バネ20は弾性帯40、第1プーリー42、第2プーリー44を有する。第1プーリー42、第2プーリー44は、バネ支持部材46の第1軸46a、第2軸46bによって支持されている。バネ支持部材46は蓋18aに固定されている。第1プーリー42と第1軸46aとの間には回転角度を検出するセンサを設け、制御部28によりフレキシブル表示体12の巻出し量を把握できるようにしてもよい。
【0022】
第1プーリー42のX2側端部のシリンダー支持部42aはX方向に適度に広く、ラバーリング48を介してシリンダー14の内壁と固定されている。第1プーリー42は第2プーリー44より大径になっている。第1プーリー42はX方向幅が第2プーリー44より大きく、第1軸46aとの間でベアリング構造になっている。このベアリング構造は例えば2列型であり、シリンダー14は安定的に支持されスムーズな回転が可能となっている。第1軸46aは中空構造であり、内部をインターフェースケーブル31が通っている。インターフェースケーブル31は第1軸46aの中空部でグロメット47により留められている。第1プーリー42はカバー18と同軸であり、第2プーリー44は膨出部18dにある。定荷重バネ20は一部が膨出部18dに配置されるが、ほとんどはカバー18の筒部内部に収まり十分小さく軽量である。
【0023】
弾性帯40は自然状態で渦巻くような曲げ弾性を有する金属のバネ材であり、いわゆるゼンマイバネのようなものである。弾性帯40は引っ張り方向にはほとんど伸びることがない。第1プーリー42は、シリンダー14のX1側端部に設けられ、弾性帯40が自然状態で渦巻く方向と逆方向に巻かれている。第2プーリー44は、第1プーリー42から巻き出された弾性帯40を自然状態の渦巻き方向に巻き取る。
【0024】
このような定荷重バネ20は、弾性帯40の巻き出し量にかかわらず常に一定の弾性力を発揮して第1プーリー42に回転力を与える。この回転力はシリンダー14に対してフレキシブル表示体12を巻取る力F(
図2参照)を与える。力Fはフレキシブル表示体12のサイズなどにもよるが、例えば800gf程度である。
【0025】
図5は、フレキシブル表示体12の模式図である。フレキシブル表示体12はOLED11の他に第1シート50、第2シート52、および一対の帯材54を有する。第1シート50はフレキシブル表示体12のベース材であり、シリンダー14に対して巻き取りが容易な柔軟で軽量なシートが用いられている。第1シート50の表側でX方向両端を除くほぼ全面にはOLED11が貼られている。帯材54は第1シート50におけるOLED11のない両端部でY方向のほぼ全長に亘って設けられているが、帯材54と第2シート52とは少しだけ離れている。帯材54はコンベックスと呼ばれる金属製巻き尺と同様の円弧状断面を有するものであり、シリンダー14に対してOLED11とともに巻取り可能で、巻き出し時にはOLED11を直線状に維持することができる。帯材54は基本的にはOLED11と重ならないが、表示を行うアクティブエリア以外や、第1シート50の裏面に設ける場合にOLED11の端部と重なっていてもよい。
【0026】
第2シート52は、フレキシブル表示体12のY2方向端部で第1シート50を延長するように設けられている。第2シート52は第1シート50より硬く、特にY方向の引っ張り強度が高い。OLED11のY2方向端部は第2シート52に掛かって貼られている。第2シート52には引出しバー26が設けられている。第2シート52のY方向寸法は短く、OLED11の端部と引出しバー26とは十分に近い。なお、本願における「シート」は広義であり、布材やメッシュ材などの可撓性材を含む。
【0027】
このように、OLED11はほぼ全面が柔らかい第1シート50に貼られているためシリンダー14に対して巻き取りやすい。また、OLED11およびフレキシブル表示体12は巻き出された状態では両端が帯材54によって直線状に維持されるため、任意の方向に向けて使用することができる。さらに、OLED11およびフレキシブル表示体12はY2方向端部が引出しバー26によって保持され、Y1方向端部は巻き出し口であるスリット18cにおいて後述するガイドバー62およびストップローラー64によって保持されるため、四周のほぼ全てが枠状に保持されて安定する。引出しバー26を把持して引くと、フレキシブル表示体12には定荷重バネ20による張力が発生するが、OLED11と引出しバー26との間は硬い第2シート52で繋がっており伸びや切断などの劣化がない。また、OLED11を巻き取った時に、OLED11と帯材54の間に巻取り誤差が生じるため巻き取った後に少し前後づれが生じ硬質の第2シート52に、帯材54を貼り付けてしまうと、この巻取り誤差を吸収できなくなり、OLED11に対してねじり歪みのような力を加えてしまう。これに対して本実施形態では帯材54と第2シート52とが離れているため、このような不都合がない。
【0028】
図2、
図3に示すように、固定機構24Aはカバー18におけるスリット18cの一方の縁に形成されたベース60に設けられており、ガイドバー62、ストップローラー64、プッシュバネ66、一対の支持アングル68を有する。ベース60は、カバー18の筒部に固定されたブロック60aと、該ブロック60aからY2方向に突出した突出壁60bとを有する。
【0029】
ストップローラー64は、フレキシブル表示体12のシリンダー14に対する巻取り内面12cに沿ってX方向の全幅を横断するように設けられている。巻取り内面12cはOLED11が貼られている面である。ガイドバー62は、フレキシブル表示体12のシリンダー14に対する巻取り外面12dに沿ってX方向の全幅を横断するように設けられている。
【0030】
支持アングル68は鈍角L字形状であってガイドバー62およびストップローラー64の両端を支持している。支持アングル68は、一端の軸支部68aが突出壁60bの先端に対して傾動可能に軸支され、他端部68bでストップローラー64を回転可能に支持し、屈曲部68cでガイドバー62を回転不能に支持している。ストップローラー64とガイドバー62とは近傍で平行しており、両者間の隙間70にはフレキシブル表示体12が通っている。隙間70は適度に狭く、引出しバー26がY1側に抜けることがない。プッシュバネ66は、一端がブロック60aに係合し、他端が軸支部68aと屈曲部68cとの中間部分に係合しており、支持アングル68をY2方向に向けて弾性付勢している。つまりガイドバー62およびストップローラー64は支持アングル68を介してY2方向へ一体的に弾性付勢されている。支持アングル68は所定のストッパに当たるまでY2方向に変位可能であるが(
図6参照)、変位量は小さい。プッシュバネ66の付勢力は小さい。ガイドバー62およびストップローラー64の表面はシリコーンゴム(ゴム材)でありフレキシブル表示体12に対して滑りにくくなっている。
【0031】
図6は、フレキシブル表示体12を巻き出す際の表示装置10Aの模式断面側面図である。フレキシブル表示体12をカバー18のスリット18cから巻き出す際は、ややCW側に寄せた状態で引出しバー26を把持して引く(矢印A1,A2)。フレキシブル表示体12は定荷重バネ20によって巻取り方向に力を受けているがユーザは引き出し量に拘わらず一定の力で引き出しが可能である。
【0032】
このとき、固定機構24Aの支持アングル68はプッシュバネ66によって押し出されており(矢印A3)、ストッパに当たる位置までY1方向に変位している。フレキシブル表示体12は隙間70を通り、ストップローラー64およびガイドバー62のいずれにも接触しないで引き出すことが可能である。
【0033】
また、OLED11を上方向に持ち上げえて引き出す時は、内面12cがストップローラー64に当接すると該ストップローラー64は回転自在であることからほとんど抵抗を受けることなく引き出すことが可能であり、内面12cのOLED11を傷つけることがない。さらに、フレキシブル表示体12の外面12dがガイドバー62に当接すると摩擦力は小さく引出すことに支障はない。
【0034】
フレキシブル表示体12を任意長さ引出して引出しバー26から手を離すと、
図2の状態となってフレキシブル表示体12は固定機構24Aによって固定される。つまり、フレキシブル表示体12は定荷重バネ20によってY2方向に一瞬巻き取られることにより、ややCCW方向に変位し、隙間70は狭いため外面12dはガイドバー62に即時に接する。そうすると支持アングル68はガイドバー62と外面12dとの摩擦力によりフレキシブル表示体12とともにY2方向に変位する(矢印A4)。プッシュバネ66の付勢力は小さいため支持アングル68の変位を妨げない。
【0035】
フレキシブル表示体12はスリット18cにおいてシリンダー14に対する積層巻回部(フレキシブル表示体12の全長が巻き出されている状態ではシリンダー14自体)に対して接線状となって鋭角状の隙間72を形成している。ストップローラー64は支持アングル68がY1方向に傾動することにより隙間72に入り込み、楔と同様の作用によりフレキシブル表示体12の引き込みを停止させて固定する(矢印A5)。ガイドバー62は外面12dとの摩擦によってY1方向に付勢され続けて支持アングル68の位置が維持される。実際上、引出しバー26から手を離してからストップローラー64による固定状態となるまでは一瞬であってフレキシブル表示体12の巻取り量は極めて少なく、ユーザに違和感を与えることなく任意位置での固定が可能となっている。固定機構24Aでは、少なくとも定荷重バネ20に抗してフレキシブル表示体12を巻取不能に固定するが、巻出し方向に対しても
図2の状態が維持され相応の固定力がある。
【0036】
ストップローラー64の表面はシリコーンゴムであるため、フレキシブル表示体12が滑りを生じながら巻き取られてしまうことがない。OLED11は曲げ弾性が比較的強いためストップローラー64によって確実に支持されフレキシブル表示体12が固定される。ストップローラー64はOLED11のX方向全長に亘って均一に作用する。ストップローラー64はOLED11だけでなく直線状に維持されている帯材54にも当接してフレキシブル表示体12を一層確実に固定することができる。
【0037】
図7は、フレキシブル表示体12の固定を解除する際の表示装置10の模式断面側面図である。
図8は、フレキシブル表示体12を巻取り収納する際の表示装置10の模式断面側面図である。
【0038】
フレキシブル表示体12の固定を解除する際には、
図7に示すように引出しバー26を把持してややCW方向に向けて動かす。そうすると、ストップローラー64が回転し、支持アングル68は、Y1方向にもY2方向にも移動せずに、弱い力のプッシュバネ66によって、若干Y1方向に押された状態でバランスする。プッシュバネ66のバネ力は、具体的には、
図2のストップバー62のシリコンラバー表面とOLED11との間の摩擦力よりも小さく、かつ、支持アングル68がフリーの時にY1方向に戻す強さがあればよい。
【0039】
ガイドバー62はフレキシブル表示体12から離れて開放され、プッシュバネ66によりY1方向へ弾性付勢され変位する(矢印A6)。ストップローラー64は隙間72から抜けて(矢印A7)フレキシブル表示体12の固定は解除される。この後、フレキシブル表示体12をさらに引き出すには
図6のようにする。フレキシブル表示体12を巻取り収納する際には、
図8のようにCW方向に保ったまま引出しバー26を引く力を緩めれば(矢印A8)定荷重バネ20の巻取り力によってストップローラー64が内面12cに接触して回転し(矢印A9)、フレキシブル表示体12が巻き取られる(矢印A10)。
【0040】
図9は、第1変形例にかかる固定機構24AAの模式図である。
図10は、第2変形例にかかる固定機構24ABの模式図である。固定機構24AAでは、突出壁60bが軸支部68aよりもY1側に延びており先端にブロック60aがある。ブロック60aと支持アングル68との間にはプルバネ66Aが設けられており、支持アングル68はY1方向に弾性付勢されている。固定機構24ABでは、軸支部68aのまわりにトーションルバネ66Bが設けられており、支持アングル68をY1方向に弾性付勢している。各実施例で支持アングル68は鈍角L字形状となっていて、ガイドバー62およびストップローラー64が適正位置に配置されるとともに、屈曲部68cが軸支部68aとを結ぶ部分がY方向に対して略直交しており、Y1側およびY2側にバランスよく傾動可能となっている。ただし、支持アングル68はレイアウト要件により直角L字または直線形状などであってもよい。
【0041】
図11は、表示装置10Aの使用例を示す図であり、(a)は収納状態を示す図であり、(b)は使用準備状態を示す図であり、(c)は使用状態を示す図であり、(d)は収拾状態を示す図である。
【0042】
表示装置10Aは小型軽量であることから、
図11に示すように照明用デスクスタンドSに取り付けて任意の位置に移動させて用いることができる。
図11(a)に示すように、保管状態では縦向きとしておくと占有スペースを抑制することができる。また、使用時には表示装置10Aを任意の位置および高さに設定すればよい。
【0043】
使用時の表示装置10Aの向きは限定されることなく、
図11(b)に示すように、フレキシブル表示体12を下向きに引き下げてもよいし、
図11(c)に示すように、フレキシブル表示体12を上向きに引き上げてもよいし、
図11(d)に示すように、フレキシブル表示体12を横向きに引き出してもよい。フレキシブル表示体12の引き出し量は任意に設定可能であることは上記の通りである。表示装置10Aは水平のまま保管してもよい。
【0044】
上記の表示装置10Aによれば、OLED11およびフレキシブル表示体12の巻き出し方向が、スリット18cを基準として相対的にCW方向であるときに開放し(
図6参照)、相対的にCCW方向であるときに少なくとも巻取り不能に固定する。また、巻き出されたフレキシブル表示体12は引出しバー26、ガイドバー62、ストップローラー64、および2つの帯材54によって枠状に保持されて任意の向きで安定するため縦型および横型のいずれにも対応可能である。
【0045】
表示装置10Aは筒状のカバー18の内部にOLED11、定荷重バネ20が収まっており小型軽量であって廉価であり、可搬性に優れる。表示装置10Aは特許文献1に示されるようなリンク機構が不要であるとともに、該リンク機構を駆動させる動力が不要であることからモーターが不要である。表示装置10Aは巻取り可能で小型軽量のでありモバイル用途や簡易スタンドの支持が可能である。
【0046】
OLED12は平面状に復帰しようとする性質があるが常に定荷重バネ20によって付勢されているためシリンダー14に対して適切な巻回状態に維持され、空間16の内部で外径方向に広がってカバー18の内壁に当接することがない。そのため該カバー18との間で摺動し損傷し、または不要な摩擦力を受けることがない。表示装置10Aは表示面積が変えられることから、縦横比を1:3、3:4、4:3、16:9、21:9などとすることができる。このように表示装置10Aは様々な使用態様での利用が可能となっている。これにより、電車の中、デスクのメインディスプレイ、大型サブディスプレイなどの用途によって、サイズを変えて使うことができる。
【0047】
次に、第2実施形態にかかる表示装置10Bについて説明する。上記の表示装置10Aと同様の構成要素については同符号を付して詳細な説明を省略する。
【0048】
図12は、フレキシブル表示体12が解放されている状態の表示装置10Bの模式断面側面図である。
図13は、フレキシブル表示体12がカバー18から所定量引き出され、固定機構24Bによって固定されている状態の表示装置10Bの模式断面正面図である。
【0049】
表示装置10Bでは、上記の固定機構24Aに代えて固定機構24Bによってフレキシブル表示体12が固定される。表示装置10Bでは、スリット18cでシリンダー14に対するフレキシブル表示体12の反巻回側(CCW側)が端部18ca、巻回側(CW側)が端部18cbとなっている。このうち、端部18caが固定機構24Bとして作用する。端部18ca,18cbは例えば円形断面でありやや厚くなっている。
【0050】
図12に示すように、引出しバー26を把持しておきカバー18をシリンダー14に対して相対的にCCW方向に回すと(矢印A12)、フレキシブル表示体12の巻き出し方向はスリット18cを基準として相対的にCW方向に寄る。そうすると、フレキシブル表示体12はスリット18cにおいてCCW側の端部18caから離れて巻き出しおよび巻取りが可能になる(矢印A13)。
【0051】
図13に示すように、引出しバー26を開放すると、OLED11および帯材54が平面状に復帰しようとする力により、フレキシブル表示体12はスリット18cにおいてCCW側へと変位する。つまり、フレキシブル表示体12を基準とすればカバー18は相対的にCW方向に回転する(矢印A14)。そしてフレキシブル表示体12はスリット18cにおいて端部18caによって押さえつけられる(矢印A15)。フレキシブル表示体12はスリット18cにおいてシリンダー14に対する積層巻回部(フレキシブル表示体12の全長が巻き出されている状態ではシリンダー14自体)に対して押さえつけられるため固定される。このような表示装置10Bは構造が簡便であって小型軽量化することができ、例えばタブレット端末として利用することができる。表示装置10B表示装置10Aと同様にフレキシブル表示体12を任意長さだけ引出し、そのまま任意の向きで利用することができる。
【0052】
図14(a)に示すように、小型軽量な表示装置10Bは片手で持ちながら利用することができ、手を離してもフレキシブル表示体12の向きが維持される。
図14(b)に示すように、小型軽量な表示装置10Bは小型のフレキシブル三脚Tをカバー18の端部に接続し、柱Pに取り付けて利用することができる。また、重心位置によってはフレキシブル三脚Tを用いて卓上で利用することができる。表示装置10Aと表示装置10Bでは利用形態を
図11と
図14とに分けて説明したが、表示装置10Aを
図14で示す利用形態とすること、および表示装置10Bを
図11で示す利用形態とすることが可能である。表示装置10A,10Bは小型軽量であることから壁掛け式、または磁石取付式として用いることも可能である。
【0053】
本発明は、上記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で自由に変更できることは勿論である。
【符号の説明】
【0054】
10,10A,10B 表示装置
11 OLED
12 フレキシブル表示体
14 シリンダー
14b スリット
16 巻取り空間
18 カバー
18c スリット
20 定荷重バネ
24A,24AA,24AB,24B 固定機構
26 引出しバー
50 第1シート
52 第2シート
54 帯材
62 ガイドバー
64 ストップローラー
66 プッシュバネ
68 支持アングル
70 隙間
72 隙間
【要約】
【課題】様々な使用態様での利用が可能な表示装置を提供する。
【解決手段】表示装置10Aは、OLED11が貼られたフレキシブル表示体12と、フレキシブル表示体12を一端から巻き取るシリンダー14と、シリンダー14に対してフレキシブル表示体12の巻取り力を付与する定荷重バネと、フレキシブル表示体12に対して巻き出し延在方向に沿って両縁に設けられ、シリンダー14に対してフレキシブル表示体12とともに巻取り可能で、巻き出し時にはフレキシブル表示体12を直線状に維持する帯材54と、フレキシブル表示体12の巻き出し方向が、相対的にシリンダー14に対する巻回方向に沿う方向であるときにフレキシブル表示体12を開放し、相対的にシリンダー14に対する反巻回方向に沿う方向であるときにフレキシブル表示体12を巻取り不能に固定する固定機構24Aとを有する。
【選択図】
図2