IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ヘレーウス コナミック ノース アメリカ エルエルシーの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-20
(45)【発行日】2025-01-28
(54)【発明の名称】多層焼結セラミック体
(51)【国際特許分類】
   C04B 35/119 20060101AFI20250121BHJP
   B32B 18/00 20060101ALI20250121BHJP
   C04B 35/44 20060101ALI20250121BHJP
   C04B 35/488 20060101ALI20250121BHJP
   C04B 35/505 20060101ALI20250121BHJP
   H01L 21/3065 20060101ALI20250121BHJP
【FI】
C04B35/119
B32B18/00 A
C04B35/44
C04B35/488 500
C04B35/505
H01L21/302 101G
【請求項の数】 32
(21)【出願番号】P 2023535974
(86)(22)【出願日】2021-12-17
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-12
(86)【国際出願番号】 US2021063973
(87)【国際公開番号】W WO2022133180
(87)【国際公開日】2022-06-23
【審査請求日】2023-06-13
(31)【優先権主張番号】63/177,232
(32)【優先日】2021-04-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/127,984
(32)【優先日】2020-12-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】521442051
【氏名又は名称】ヘレーウス コナミック ノース アメリカ エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】Heraeus Conamic North America LLC
【住所又は居所原語表記】301 N. Roosevelt Avenue, Chandler, AZ 85226, United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ウォーカー、ルーク
(72)【発明者】
【氏名】ドネロン、マシュー、ジョセフ
(72)【発明者】
【氏名】ワグマーレ、サウラブ
(72)【発明者】
【氏名】トンプソン、リリアン
【審査官】小川 武
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-217478(JP,A)
【文献】特開2020-050536(JP,A)
【文献】特開2002-356837(JP,A)
【文献】特開2003-277051(JP,A)
【文献】特表2019-504470(JP,A)
【文献】特開2002-080270(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 35/00-35/84
H01L 21/3065
B32B 9/00
B32B 18/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多層焼結セラミック体であって、
多結晶YAG(イットリウムアルミニウムガーネット)を含む少なくとも1つの第1の層であって、前記多結晶YAGを含む少なくとも1つの第1の層が細孔を含み、前記細孔が0.1~5μmの最大サイズを有する、少なくとも1つの第1の層と、
アルミナ及びジルコニアを含む少なくとも1つの第2の層であって、前記ジルコニアが、安定化ジルコニア及び部分安定化ジルコニアのうちの少なくとも1つを含む、少なくとも1つの第2の層と、
YAG、アルミナ及びジルコニアを含む少なくとも1つの第3の層と
を備え、
前記少なくとも1つの第2の層は、前記少なくとも1つの第1の層と前記少なくとも1つの第3の層との間に配置され、
前記少なくとも1つの第1及び2のの間の熱膨張係数(CTE)の差の絶対値は、ASTM E228-17に従って測定して0~0.75×10-6/℃であり、
前記少なくとも1つの第1、第2及び第3の層は、単一の焼結セラミック体を形成し、
前記少なくとも1つの第1の層が、90~99.9体積%の量の多結晶YAGを含み、
前記少なくとも1つの第2の層が、70~95体積%の量のアルミナ、並びに、5~30体積%の量の安定化ジルコニア及び部分安定化ジルコニアのうちの少なくとも1つを含む、多層焼結セラミック体。
【請求項2】
前記少なくとも1つの第1及び第2のの間の熱膨張係数の差の絶対値が0~0.7×10 -6 /℃である、請求項1に記載の多層焼結セラミック体。
【請求項3】
前記少なくとも1つの第1及び2のの間の熱膨張係数(CTE)の差の絶対値が200~1400℃の温度範囲にわたって維持される、請求項1に記載の多層焼結セラミック体。
【請求項4】
前記少なくとも1つの第1の層が、ASTM B962-17に従って測定して4.47~4.56g/ccの密度を有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の多層焼結セラミック体。
【請求項5】
前記少なくとも1つの第1の層が、ISO規格25178-2-2012に従って測定して0.0005~2μmのSa又はISO規格25178-2-2012に従って測定して0.3~5μmのSzを有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の多層焼結セラミック体。
【請求項6】
前記少なくとも1つの第2の層が、前記少なくとも1つの第2の層の体積に対して、70~90体積%の量のアルミナ、並びに、10~30体積%の量の安定化ジルコニア及び部分安定化ジルコニアのうちの少なくとも1つを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の多層焼結セラミック体。
【請求項7】
前記少なくとも1つの第2の層が、部分安定化ジルコニアを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の多層焼結セラミック体。
【請求項8】
100~625mmの最大寸法を有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の多層焼結セラミック体。
【請求項9】
前記少なくとも1つの第2の層が、前記少なくとも1つの第2の層の体積に対して、80~95体積%の量のアルミナ、並びに、5~20体積%の量安定化ジルコニア及び部分安定化ジルコニアのうちの少なくとも1つを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の多層焼結セラミック体。
【請求項10】
前記少なくとも1つの第1の層が、XRD(X線回折)、SEM(走査型電子顕微鏡)及び画像処理方法を用いて測定して、98~99.9体積%の量の多結晶YAGと、不純物と、酸化アルミニウム、酸化イットリウム、YAM(イットリウムアルミニウム単斜晶)及びYAP(イットリウムアルミニウムペロブスカイト)並びにそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの結晶相を含む残部からなる、請求項1~3のいずれか一項に記載の多層焼結セラミック体。
【請求項11】
前記多結晶YAGを含む少なくとも1つの第1の層が細孔を含み、前記細孔が、SEM(走査型電子顕微鏡)を用いて測定して0.1~1μmの最大サイズを有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の多層焼結セラミック体。
【請求項12】
前記多結晶YAGを含む少なくとも1つの第1の層が、SEM(走査型電子顕微鏡)を用いて測定して2~800μm/mmの累積細孔分布を有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の多層焼結セラミック体。
【請求項13】
前記多結晶YAGを含む少なくとも1つの第1の層が、SEM(走査型電子顕微鏡)を用いて測定して0.0005~2%の表面積百分率による多孔率を有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の多層焼結セラミック体。
【請求項14】
前記多結晶YAGを含む少なくとも1つの第1の層が、ICPMS法(誘導結合プラズマ質量分析法)を用いて測定して、前記少なくとも1つの第1の層の質量に対して5~50ppm未満の総不純物含有量を有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の多層焼結セラミック体。
【請求項15】
前記少なくとも1つの第2の層が、ASTM B962-17に従って測定して4.19~4.46g/ccの密度を有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の多層焼結セラミック体。
【請求項16】
前記少なくとも1つの第2の層が16体積%の量の安定化ジルコニア及び部分安定化ジルコニアのうちの少なくとも1つと、不純物と、残部のアルミナからなり、且つ、ASTM B962-17に従って測定して4.31~4.33g/ccの密度を有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の多層焼結セラミック体。
【請求項17】
前記少なくとも1つの第2の層が、ASTM E228-17に従って測定して、200℃~1400℃の温度範囲にわたって、6.98×10-6/℃~9.26×10-6/℃の熱膨張係数(CTE)を有する、請求項16に記載の多層焼結セラミック体。
【請求項18】
前記少なくとも1つの第2の層が、ASTM D150に従って測定して、周囲温度で1MHzの周波数で7×10-4以下の誘電損失を有する、請求項16に記載の多層焼結セラミック体。
【請求項19】
前記少なくとも1つの第2の層が、ICPMS法(誘導結合プラズマ質量分析法)を用いて測定して、前記少なくとも1つの第2の層の質量に対して5~200ppmの総不純物含有量を有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の多層焼結セラミック体。
【請求項20】
前記少なくとも1つの第1の層が厚さd1を有し、前記少なくとも1つの第2の層が厚さd2を有し、前記少なくとも1つの第3の層が厚さd3を有し、前記少なくとも1つの第2の層の前記厚さd2が、前記少なくとも1つの第1、第2及び第3の層を合わせた厚さの60%~85%である、請求項1~3のいずれか一項に記載の多層焼結セラミック体。
【請求項21】
多層焼結セラミック体を作製する方法であって、前記方法が、
a.イットリア及びアルミナを含む粉末を組み合わせて第1の粉末混合物を作製する工程と、
b.アルミナ粉末と、部分安定化ジルコニア粉末及び安定化ジルコニア粉末のうちの少なくとも1つとを組み合わせて第2の粉末混合物を作製する工程と、
c.アルミナ粉末と、イットリア粉末と、非安定化ジルコニア、部分安定化ジルコニア、及び安定化ジルコニア粉末のうちの少なくとも1つとを組み合わせて少なくとも1つの第3の粉末混合物を作製する工程と、
d.前記第1、第2及び第3の粉末混合物のうちの少なくとも1つを、熱を加えて前記粉末混合物うちの少なくとも1つの温度を焼成温度に上昇させ、前記焼成温度を維持して焼成を行ない、少なくとも1つの第1、第2、及び第3の焼成粉末混合物を形成することによって、焼成する工程と、
e.焼結装置のツールセットによって画定された内容積内に前記第1、第2、及び第3の粉末混合物を別々に配置して、前記第1の粉末混合物の少なくとも1つの層、前記第2の粉末混合物の少なくとも1つの層、及び前記第3の粉末混合物の少なくとも1つの層を形成し、前記容積内に真空条件を作り出す工程であって、前記ツールセットが、内壁及び外壁を含む側壁を含むダイと、前記ダイと動作可能に結合された上部パンチ及び下部パンチとを備え、前記内壁は、前記粉末を受け入れることができる前記内容積を画定する直径を有し、前記上部パンチ及び前記下部パンチの各々は、前記ダイの前記内壁の直径よりも小さい直径を画定する外壁を有し、それにより、前記上部パンチ及び前記下部パンチのうちの少なくとも1つが前記ダイの前記内容積内で移動するときに、前記上部パンチ及び前記下部パンチの各々と前記ダイの前記内壁との間に間隙を画定し、前記間隙は10μm~100μmの幅である、工程と、
f.焼結温度まで加熱しながら前記第1、第2及び第3の粉末混合物の層に圧力を加え、焼結を行って多層焼結セラミック体を形成する工程であって、前記第1の粉末混合物の前記少なくとも1つの層が少なくとも1つの第1の層を形成し、前記第2の粉末混合物の前記少なくとも1つの層が少なくとも1つの第2の層を形成し、前記第3の粉末混合物の前記少なくとも1つの層が少なくとも1つの第3の層を形成する、工程と、
g.前記多層焼結セラミック体の温度を低下させる工程であって、
前記少なくとも1つの第1の層が多結晶YAG(イットリウムアルミニウムガーネット)を含み、前記少なくとも1つの第2の層がアルミナ及びジルコニアを含み、前記ジルコニアが安定化ジルコニア及び部分安定化ジルコニアのうちの少なくとも1つを含み、前記少なくとも1つの第3の層がYAG、アルミナ、並びに非安定化ジルコニア、安定化ジルコニア及び部分安定化ジルコニアのうちの少なくとも1つを含み、前記少なくとも1つの第2の層が前記少なくとも1つの第1の層と前記少なくとも1つの第3の層との間に配置されている、工程とを含み、
前記少なくとも1つの第1及び第2の層の間の熱膨張係数(CTE)の差の絶対値は、ASTM E228-17に従って測定して0~0.75×10 -6 /℃であり、
前記少なくとも1つの第1の層が、90~99.9体積%の量の多結晶YAGを含み、
前記少なくとも1つの第2の層が、70~95体積%の量のアルミナ、並びに、5~30体積%の量の安定化ジルコニア及び部分安定化ジルコニアのうちの少なくとも1つを含む、方法。
【請求項22】
前記第1、第2及び第3の粉末混合物が、ICPMS法(誘導結合プラズマ質量分析法)を用いて測定して200ppm以下の合計総不純物含有量を有する、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記第2の粉末混合物が、前記第2の粉末混合物の重量に対して15重量%以上34重量%以下の量の部分安定化ジルコニア又は安定化ジルコニアを含む、請求項21又は22に記載の方法。
【請求項24】
前記第1、第2及び第3の粉末混合物が、X線回折法によって決定して結晶性である、請求項21又は22に記載の方法。
【請求項25】
前記第2の粉末混合物が部分安定化ジルコニアを含む、請求項21又は22に記載の方法。
【請求項26】
前記第2の粉末混合物が部分イットリア安定化ジルコニアを含む、請求項21又は22に記載の方法。
【請求項27】
前記第2の粉末混合物が3モル%の部分イットリア安定化ジルコニアを含む、請求項21又は22に記載の方法。
【請求項28】
前記第1、第2及び第3の粉末混合物の層に加えられる圧力が5MPa~100MPaである、請求項21又は22に記載の方法。
【請求項29】
前記焼成する工程の温度が600℃~1200℃である、請求項21又は22に記載の方法。
【請求項30】
前記焼結温度が1000~1700℃である、請求項21又は22に記載の方法。
【請求項31】
.アニーリング温度に達するまで熱を加えて前記多層焼結セラミック体の温度を上昇させてアニーリングを行なうことにより、前記多層焼結セラミック体をアニーリングする工程と、
i.前記アニーリングした多層焼結セラミック体の温度を低下させる工程と
を更に含む、請求項21又は22に記載の方法。
【請求項32】
j.前記多層焼結セラミック体を機械加工して、プラズマ処理チャンバで使用するための、窓、蓋、誘電体窓、RF窓、リング、フォーカスリング、プロセスリング、堆積リング、ノズル、インジェクタ、ガスインジェクタ、シャワーヘッド、ガス分配プレート、ディフューザ、イオンサプレッサエレメント、チャック、静電ウエハチャック(ESC)、及びパックの形状の多層焼結セラミック構成要素を作製する工程を更に含む、請求項21又は22に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐食性多層焼結セラミック及びそれから形成された構成要素、当該セラミックの製造方法、並びに半導体プラズマ処理チャンバ内での使用に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体処理は、プラズマ環境を作り出すために、高電界及び高磁界と組み合わせてハロゲン系ガスを使用することを必要とする。このプラズマ環境は、半導体基板上に材料をエッチング又は堆積するために真空チャンバ内で作られる。これらの真空チャンバは、ディスク又はウィンドウ、ライナー、インジェクタ、リング、及びシリンダなどの構成要素を含む。半導体プラズマ処理中、基板は、典型的には、例えば米国特許第5,262,029号及び米国特許第5,838,529号に開示されているように、基板ホルダによって真空チャンバ内に支持される。プラズマ処理環境を作り出すためのプロセスガスは、様々なガス供給システムによってチャンバに供給することができる。いくつかのプロセスは、高周波(RF)場の使用を伴い、プロセスガスは処理チャンバに導入され、一方、RF場はプロセスガスに印加されてプロセスガスのプラズマを生成する。これらの構成要素を形成するために使用されるセラミック材料は、特にRF用途では、1×10-3以下のオーダーの低い誘電正接を有することが必要とされる。これより高い誘電損失は、使用中に構成要素内に過熱及びホットスポットを引き起こし、プロセス変動及び歩留まり損失につながる。高純度の出発粉末から製造された構成要素及び初期純度を保持する製造プロセスの使用は、これらの低損失要件を満たす焼結セラミックを提供する。過酷なプラズマ処理環境では、チャンバ構成要素に耐腐食性及び耐浸食性の高い材料を使用する必要がある。これらの構成要素は、プラズマ環境における腐食及び浸食に対する耐性を提供する材料から形成されており、例えば、米国特許第5,798,016号、米国特許第5,911,852号、米国特許第6,123,791号、及び米国特許第6,352,611号に記載されている。更に、プラズマ処理チャンバは、処理されるウェハ上にプラズマを閉じ込めるディスク、リング、及びシリンダなどの部品を含むように設計されている。しかしながら、プラズマ処理チャンバ内で使用されるこれらの部品は、プラズマによって継続的に攻撃され、その結果、最終的には、腐食、浸食、又は汚染物質及びポリマービルドアップを蓄積する。プラズマエッチング及び堆積条件は、プラズマに曝されるチャンバ部品の表面の浸食及び粗面化を引き起こす。この腐食は、構成要素表面からチャンバ内への粒子の放出を通じてウェハレベルの汚染の一因となり、半導体デバイスの歩留まり損失をもたらす。
【0003】
これに対処するために、多くの場合、チャンバ構成要素は、プロセスガスに曝されたときの腐食及び浸食に対して耐性のある表面層を有する。表面層は、優れた機械的特性、電気的特性又は他の好ましい特性を有し得る基部又は基板の上に形成され得る。例えば、酸化イットリウム又はイットリウムアルミニウムガーネット(YAG)の耐食性膜又は被覆が、ほとんどの耐食性材料よりも安価で強度が高い異なる材料で形成された基部又は基板の上に堆積されることが知られている。そのような膜又は被覆は、いくつかの方法によって作製されてきた。蒸着法は、基板上に耐食性膜を堆積させるために使用されてきたが、蒸着は、内部膜応力のために比較的薄い層に限定され、多くの場合、小さな孔が薄膜に存在する。これらの内部膜応力は、不十分な層間接着を引き起こし、典型的には耐食性膜と基材との間の界面で層間剥離をもたらし、これらの層を亀裂及び剥離しやすくし、それによって望ましくない粒子汚染につながる。エアロゾル又はプラズマスプレー技術によって作製された耐食性被覆又は膜は、典型的には、3%~約50%の高レベルの多孔率、及びそれに対応して低い密度を示す。更に、エアロゾル又はスプレー法によって生成されたこれらの膜は、基板材料と耐食層との間の不十分な界面接着を示し、剥落及び剥脱並びにその後のチャンバ汚染をもたらす。図1は、セラミック基板上に堆積された膜の層間剥離及び亀裂を概略的に示す。
【0004】
焼結基板上への膜堆積のための商業的に利用可能な方法は、膜厚を約0.45mm未満に制限する。そのような膜厚は、多くの場合、ベースとなる基板の不均一性に起因する孔を有し、孔の存在及び制限された膜厚により、膜表面層に亀裂が入りやすくなり、ベースとなる基板が処理中に腐食性のプロセスガス及び粒子生成に曝される。
【0005】
耐食性で高強度の焼結体及び/又は構成要素を形成するための他の手法は、プレキャスト膜を積層し、膜に圧力を加えて積層体を形成し、続いて積層体を共焼結することを含む。これらの方法は、典型的には、常圧焼結を使用し、焼結体の平坦度は、それぞれの膜の焼結速度を厳密に一致させることに依存する。図2に概略的に示すように、上部膜(膜A)の焼結速度が下部膜(膜B)の焼結速度よりも大きい場合、焼結セラミック積層体は凹状の湾曲を有することになり、一方、下部膜(膜B)の焼結速度が上部膜(膜A)の焼結速度よりも大きい場合、焼結セラミック積層体は凸状の湾曲を有することになる(両方とも上部膜の膜Aを上向きにして構成される)。焼結速度のばらつきは、焼結された積層体に残留応力を生じさせ、特に大きな寸法での破損、微小亀裂及びその後の粒子放出を起こしやすくする。したがって、共焼結のために選択される材料は、当業者に知られているように、時間、温度、及び持続時間の同じ又は非常に類似した焼結プロファイルを有するものに限定される。更に、これらの焼結された積層体は、多くの場合、層間の不十分な界面接着を示し、その結果、低密度と相まって、最上層のピーリング及びスポーリングが起こり、破損、層間剥離及び亀裂が生じやすくなる。
【0006】
セラミック焼結体から構成要素を形成するための穴の穿孔及び特徴の機械加工は、これらの脆い非金属材料の下(表面下)及び表面上に小さな視覚的に検出できない微小亀裂をもたらす可能性がある。この表面及び表面下の損傷は、脆性材料の浸食若しくはスポーリング及び/又は破壊による粒子汚染につながる可能性がある。脆性材料から形成された構成要素の機械加工性は、特に大きな構成要素寸法において、プラズマ処理チャンバ内への粒子の放出を防止し、且つ/又は破壊及び亀裂を防止することがますます困難になっている。
【0007】
その結果、プラズマ処理チャンバで使用するための、耐プラズマ性、層間の高い接着性、高い機械的強度及び、及び改善された機械加工性の組み合わせの特性を有する多層焼結セラミック体が当該技術分野において必要とされている。特に、大規模な半導体デバイスの製造を可能にするために、大きな寸法(100mm超、例えば100mm~625mmなど)の耐食性で高強度の焼結セラミック体が必要とされている。
【発明の概要】
【0008】
これら及び他の必要性を満たすために、その目的を考慮して、本開示は、多層焼結セラミック体、並びに改善された機械的特性、電気的特性及び熱的特性並びに取り扱い能力を有する大きな多層焼結セラミック体を調製するための方法の実施形態を提供する。
【0009】
本明細書では多層焼結セラミック体又は耐食性体とも呼ばれる焼結セラミック体、及び製造方法が本明細書に記載されている。これらの焼結セラミック体は、塩素及びフッ素系のプロセスガスに対する高い耐食性、低い誘電損失、高い熱伝導率及び向上した機械加工性を提供し、ひいてはハロゲン系プロセスガスを利用する半導体処理チャンバ内の構成要素として使用するのに望ましい。セラミック体は、寸法100mm以上の大きなチャンバ構成要素として使用するのに特に適している。
【0010】
実施形態1.多結晶YAGを含む少なくとも1つの第1の層であって、多結晶YAGを含む少なくとも1つの第1の層は0.1~5μmの最大サイズを有する、少なくとも第1の層と、アルミナ及びジルコニアを含む少なくとも1つの第2の層であって、ジルコニアが安定化ジルコニア及び部分安定化ジルコニアのうちの少なくとも1つを含む、少なくとも1つの第2の層と、YAG、アルミナ及びジルコニアからなる群から選択される少なくとも1つを含む少なくとも1つの第3の層とを備え、少なくとも1つの第2の層が少なくとも1つの第1の層と少なくとも1つの第3の層との間に配置され、少なくとも1つの第1、第2及び第3の層のいずれかの間の熱膨張係数(CTE)の差の絶対値がASTM E228-17に従って測定して0~0.75×10-6/℃であり、少なくとも1つの第1、第2及び第3の層が単一の焼結セラミック体を形成する、多層焼結セラミック体。
【0011】
実施形態2.層のいずれかの間の熱膨張係数の差の絶対値が0~0.7×10-6/℃である、実施形態1に記載の多層焼結セラミック体。
【0012】
実施形態3.少なくとも1つの第1、第2及び第3の層のいずれかの間の熱膨張係数(CTE)の差の絶対値が200~1400℃の温度範囲にわたって維持される、先行する実施形態のいずれか1つに記載の多層焼結セラミック体。
【0013】
実施形態4.少なくとも1つの第1の層が、ASTM B962-17に従って測定して4.47~4.56g/ccの密度を有する、先行する実施形態のいずれか1つに記載の多層焼結セラミック体。
【0014】
実施形態5.少なくとも1つの第1の層が、ISO規格25178-2-2012に従って測定して0.0005~2μmのSa又はISO規格25178-2-2012に従って測定して0.3~5μmのSzを有する、先行する実施形態のいずれか1つに記載の多層焼結セラミック体。
【0015】
実施形態6.少なくとも1つの第2の層が、少なくとも1つの第2の層の体積に対して10~30体積%の量のジルコニアを含む、先行する実施形態のいずれか1つに記載の多層焼結セラミック体。
【0016】
実施形態7.少なくとも1つの第2の層が、部分安定化ジルコニアを含む、先行する実施形態のいずれか1つに記載の多層焼結セラミック体。
【0017】
実施形態8.100~約625mmの最大寸法を有する、先行する実施形態のいずれか1つに記載の多層焼結セラミック体。
【0018】
実施形態9.少なくとも1つの第2の層が、少なくとも1つの第2の層の体積に対して約16体積%のジルコニアを含む、先行する実施形態のいずれか1つに記載の多層焼結セラミック体。
【0019】
実施形態10.少なくとも1つの第1の層が、XRD、SEM及び画像処理方法を用いて測定して、98~99.9体積%の量の多結晶YAGと、酸化アルミニウム、酸化イットリウム、YAM及びYAP並びにそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの結晶相を含む残部とを含む、先行する実施形態のいずれか1つに記載の多層焼結セラミック体。
【0020】
実施形態11.多結晶YAGを含む少なくとも1つの第1の層が細孔を含み、当該細孔が、SEMを用いて測定して0.1~1μmの最大サイズを有する、先行する実施形態のいずれか1つに記載の多層焼結セラミック体。
【0021】
実施形態12.多結晶YAGを含む少なくとも1つの第1の層が、SEMを用いて測定して約2~約800μm/mmの累積細孔分布を有する、先行する実施形態のいずれか1つに記載の多層焼結セラミック体。
【0022】
実施形態13.多結晶YAGを含む少なくとも1つの第1の層が、SEMを用いて測定して0.0005~2%の表面積百分率による多孔率を有する、先行する実施形態のいずれか1つに記載の多層焼結セラミック体。
【0023】
実施形態14.多結晶YAGを含む少なくとも1つの第1の層が、ICPMS法を用いて測定して、少なくとも1つの第1の層の質量に対して5~50ppm未満の総不純物含有量を有する、先行する実施形態のいずれか1つに記載の多層焼結セラミック体。
【0024】
実施形態15.少なくとも1つの第2の層が、ASTM B962-17に従って測定して4.19~4.46g/ccの密度を有する、先行する実施形態のいずれか1つに記載の多層焼結セラミック体。
【0025】
実施形態16.少なくとも1つの第2の層が16体積%の量のジルコニアを含み、ASTM B962-17に従って測定して約4.32g/ccの密度を有する、先行する実施形態のいずれか1つに記載の多層焼結セラミック体。
【0026】
実施形態17.少なくとも1つの第2の層が、ASTM E228-17に従って測定して、200℃~1400℃の温度範囲にわたって、6.98×10-6/℃~9.26×10-6/℃の熱膨張係数(CTE)を有する、実施形態20に記載の多層焼結セラミック体。
【0027】
実施形態18.少なくとも1つの第2の層が、ASTM D150に従って測定して、周囲温度で1MHzの周波数で7×10-4以下の誘電損失を有する、実施形態19~21のいずれか1つに記載の多層焼結セラミック体。
【0028】
実施形態19.少なくとも1つの第2の層が、ICPMS法を用いて測定して、少なくとも1つの第2の層の質量に対して5~200ppmの総不純物含有量を有する、先行する実施形態のいずれか1つに記載の多層焼結セラミック体。
【0029】
実施形態20.少なくとも1つの第1の層が厚さd1を有し、少なくとも1つの第2の層が厚さd2を有し、少なくとも1つの第3の層が厚さd3を有し、少なくとも1つの第2の層の厚さd2が、少なくとも1つの第1、第2及び第3の層を合わせた厚さの60%~85%である、先行する実施形態のいずれか1つに記載の多層焼結セラミック体。
【0030】
実施形態21.多層焼結セラミック体の作製方法であって、当該方法が、a)イットリア及びアルミナを含む粉末を組み合わせて第1の粉末混合物を作製する工程と、b)アルミナ粉末と、部分安定化ジルコニア粉末及び安定化ジルコニア粉末のうちの少なくとも1つとを組み合わせて第2の粉末混合物を作製する工程と、c)アルミナ粉末と、イットリア粉末と、非安定化ジルコニア、部分安定化ジルコニア、及び安定化ジルコニア粉末のうちの少なくとも1つとを組み合わせて少なくとも1つの第3の粉末混合物を作製する工程と、d)第1、第2及び第3の粉末混合物のうちの少なくとも1つを、熱を加えて粉末混合物うちの少なくとも1つの温度を焼成温度に上昇させ、焼成温度を維持して焼成を行ない少なくとも1つの第1、第2、及び第3の焼成粉末混合物を形成することによって、焼成する工程と、e)焼結装置のツールセットによって画定された内容積内に第1、第2、及び第3の粉末混合物を別々に配置して、第1の粉末混合物の少なくとも1つの層、第2の粉末混合物の少なくとも1つの層、及び第3の粉末混合物の少なくとも1つの層を形成し、容積内に真空条件を作り出す工程であって、ツールセットが、内壁及び外壁を含む側壁を含むダイと、ダイと動作可能に結合された上部パンチ及び下部パンチとを備え、内壁は、粉末を受け入れることができる内容積を画定する直径を有し、上部パンチ及び下部パンチの各々は、ダイの内壁の直径よりも小さい直径を画定する外壁を有し、それにより、上部パンチ及び下部パンチのうちの少なくとも1つがダイの内容積内で移動するときに、上部パンチ及び下部パンチの各々とダイの内壁との間に間隙を画定し、間隙は10μm~100μmの幅である、工程と、f)焼結温度まで加熱しながら第1、第2及び第3の粉末混合物の層に圧力を加え、焼結を行って多層焼結セラミック体を形成する工程であって、第1の粉末混合物の少なくとも1つの層が少なくとも1つの第1の層を形成し、第2の粉末混合物の少なくとも1つの層が少なくとも1つの第2の層を形成し、第3の粉末混合物の少なくとも1つの層が少なくとも1つの第3の層を形成する、工程と、g)多層焼結セラミック体の温度を低下させる工程であって、少なくとも1つの第1の層が多結晶YAGを含み、少なくとも1つの第2の層がアルミナを含み、アルミナが安定化ジルコニア及び部分安定化ジルコニアのうちの少なくとも1つを含み、少なくとも1つの第3の層がイットリア、アルミナ、並びに非安定化ジルコニア、安定化ジルコニア及び部分安定化ジルコニアのうちの少なくとも1つを含み、少なくとも1つの第2の層が少なくとも1つの第1の層と少なくとも1つの第3の層との間に配置されている、工程とを含む、方法。
【0031】
実施形態22.第1、第2及び第3の粉末混合物が、ICPMSを用いて測定して200ppm以下の合計総不純物含有量を有する、実施形態21に記載の方法。
【0032】
実施形態23.第2の粉末混合物が、第2の粉末混合物の重量に対して15重量%以上34重量%以下の量の部分安定化ジルコニア又は安定化ジルコニアを含む、実施形態21又は22に記載の方法。
【0033】
実施形態24.第1、第2及び第3の粉末混合物が、X線回折法によって決定して結晶性である、実施形態21~23のいずれか1つに記載の方法。
【0034】
実施形態25.第2の粉末混合物が部分安定化ジルコニアを含む、実施形態21~24のいずれか1つに記載の方法。
【0035】
実施形態26.第2の粉末混合物が部分イットリア安定化ジルコニアを含む、実施形態21~25のいずれか1つに記載の方法。
【0036】
実施形態27.第2の粉末混合物が3モル%の部分イットリア安定化ジルコニアを含む、実施形態21~26のいずれか1つに記載の方法。
【0037】
実施形態28.第1、第2及び第3の粉末混合物の少なくとも1つの第1、第2及び第3の層に加えられる圧力が5MPa~100MPaである、実施形態21~27のいずれか1つに記載の方法。
【0038】
実施形態29.焼成工程の温度が600℃~1200℃である、実施形態21~28のいずれか1つに記載の方法。
【0039】
実施形態30.焼結温度が1000~1700℃である、実施形態21~29のいずれか1つに記載の方法。
【0040】
実施形態31.h)必要に応じて、熱を加えて多層焼結セラミック体の温度を、アニーリングを行なうアニーリング温度に達するように上昇させることによって多層焼結セラミック体をアニーリングする工程と、i)アニーリングした多層焼結セラミック体の温度を低下させる工程とを更に含む、実施形態21~30のいずれか1つに記載の方法。
【0041】
実施形態32.j)多層焼結セラミック体を機械加工して、窓、蓋、誘電体窓、RF窓、リング、フォーカスリング、プロセスリング、堆積リング、ノズル、インジェクタ、ガスインジェクタ、シャワーヘッド、ガス分配プレート、ディフューザ、イオンサプレッサエレメント、チャック、静電ウエハチャック(ESC)、及びパックの形状の多層焼結セラミック構成要素を作製する工程を更に含む、実施形態21~31のいずれか1つに記載の方法。
【0042】
実施形態33.実施形態21~32のいずれか1つに記載のプロセスによって作製された、多層焼結セラミック体。
【0043】
実施形態34.100~約625mmの最大寸法を有する、実施形態33に記載の多層焼結セラミック体。
【0044】
本発明の実施形態は、単独で、又は互いに組み合わせて使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
本開示は、添付の図面に関連して読まれるとき、以下の詳細な説明から最もよく理解される。一般的な慣行に従って、図面の様々な特徴は縮尺通りではないことが強調される。逆に、様々な特徴の寸法は、明確にするために任意に拡大又は縮小されている。図面には、以下の図が含まれる:
図1図1は、当該技術分野で知られている積層構造を示す。
図2図2は、当該技術分野で知られている積層構造を示す。
図3図3は、ある温度範囲にわたってアルミナと比較した、YAG、スピネル、及びイットリア/ジルコニア(Y/Zrとして示される)の少なくとも1つの相の間のCTE差を示す。
図4図4は、少なくとも1つの第1の層と第2の層との間の不一致なCTE値を有する単一の多層構造を示す。
図5図5は、当該技術分野で知られている積層構造の界面のSEM顕微鏡写真を示す。
図6図6は、本明細書に開示される実施形態による多層焼結セラミック体の例示的な概略図を示す。
図7図7は、本明細書に開示される実施形態による、ジルコニアを含む少なくとも1つの第2の層102のCTEの変動を示す。
図8図8は、本明細書に開示される実施形態による少なくとも1つの第2の層102のX線回折結果を示す。
図9-01】図9のa)、b)及びc)は、本明細書に開示される実施形態による、YAGを含む少なくとも1つの第1の層と少なくとも1つの第2の層の組成物とを含む多層焼結セラミック体のCTEの変動を示す。
図9-02】図9のa)、b)及びc)は、本明細書に開示される実施形態による、YAGを含む少なくとも1つの第1の層と少なくとも1つの第2の層の組成物とを含む多層焼結セラミック体のCTEの変動を示す。
図9-03】図9のa)、b)及びc)は、本明細書に開示される実施形態による、YAGを含む少なくとも1つの第1の層と少なくとも1つの第2の層の組成物とを含む多層焼結セラミック体のCTEの変動を示す。
図10図10は、酸化イットリウム/酸化アルミニウムの2成分状態図を示す。
図11図11のa)は、後方散乱検出(BSD)法を用いた、多結晶YAGを含む少なくとも1つの第1の層100の表面のSEM顕微鏡写真を示し、図11のb)は、本明細書に開示される実施形態による、多孔性及びアルミナ相を明らかにするための閾値処理後の表面の同じ領域からのSEM画像を示す。
図12図12のa)は、図11のYAGを含む少なくとも1つの第1の層の表面のトポグラフィSEM顕微鏡写真(トポグラフィ撮像方法を使用)を示し、図12のb)は、本明細書に開示される実施形態による、多孔性及びアルミナ相を明らかにするための閾値処理後の表面の同じ領域からのトポグラフィSEM画像を示す。
図13図13は、本明細書に開示される実施形態による、YAGを含む少なくとも1つの第1の層100のX線回折結果を示す。
図14図14は、YAGを含む少なくとも1つの第1の層100と、約16体積%のジルコニアを含む少なくとも1つの第2の層102とを含む単一の多層焼結セラミック体の細孔面積対細孔径を示す。
図15図15は、本明細書に開示される実施形態による、YAGを含む少なくとも1つの第1の層100と、約16体積%のジルコニア及び残部のアルミナを含む少なくとも1つの第2の層102とを含む多層焼結セラミック体の累積細孔面積対細孔径を示す。
図16図16のa)は、YAGを含む多層焼結セラミック体の少なくとも1つの層の表面のSEM顕微鏡写真を示し、図16のb)は、図14及び図15の7枚の画像内の多孔性を含む表面積の合計%を示す。
図17-01】図17のa)、b)及びc)は、本明細書に開示される実施形態による、スピネルを含む少なくとも1つの第1の層100と、少なくとも1つの第2の層102とを含む多層焼結セラミック体のCTEの変動を示す。
図17-02】図17のa)、b)及びc)は、本明細書に開示される実施形態による、スピネルを含む少なくとも1つの第1の層100と、少なくとも1つの第2の層102とを含む多層焼結セラミック体のCTEの変動を示す。
図17-03】図17のa)、b)及びc)は、本明細書に開示される実施形態による、スピネルを含む少なくとも1つの第1の層100と、少なくとも1つの第2の層102とを含む多層焼結セラミック体のCTEの変動を示す。
図18図18は、アルミン酸マグネシウムスピネルを含む少なくとも1つの第1の層100を形成するための組成物の焼成粉末混合物のX線回折結果を示す。
図19図19は、本明細書に開示される実施形態によるアルミン酸マグネシウムスピネルを含む少なくとも1つの第1の層100の表面のSEM顕微鏡写真を示す。
図20-01】図20のa)、b)及びc)は、イットリア及びジルコニアを含むセラミック材料の少なくとも1つの結晶相を含む少なくとも1つの第1の層100と、本明細書に開示される実施形態による少なくとも1つの第2の層102の実施形態とを含む単一の多層焼結セラミック体のCTEの変動を示す。
図20-02】図20のa)、b)及びc)は、イットリア及びジルコニアを含むセラミック材料の少なくとも1つの結晶相を含む少なくとも1つの第1の層100と、本明細書に開示される実施形態による少なくとも1つの第2の層102の実施形態とを含む単一の多層焼結セラミック体のCTEの変動を示す。
図20-03】図20のa)、b)及びc)は、イットリア及びジルコニアを含むセラミック材料の少なくとも1つの結晶相を含む少なくとも1つの第1の層100と、本明細書に開示される実施形態による少なくとも1つの第2の層102の実施形態とを含む単一の多層焼結セラミック体のCTEの変動を示す。
図21図21のa)は、単一の多層焼結セラミック体の非線形界面104を示し、図21のb)は、本明細書に開示される実施形態による、約20モル%のジルコニアと約80モル%のイットリアとを含む少なくとも1つの第1の層100の表面の500倍のSEM画像を示す。
図22図22のa)は、多層焼結セラミック体98の概略図を示し、図22のb)は、本明細書に開示される実施形態による非線形界面104及び第2の界面105を示す拡大概略図を示す。
図23図23のa)は、屈曲度(T)を示し、図23のb)は、本明細書に開示される実施形態による非線形界面104を特徴付ける平均界面線(IL)を示す。
図24図24のa)は、多層焼結セラミック体の非線形界面104の5000倍でのSEM顕微鏡写真を示し、図24のb)は、本明細書に開示される実施形態による非線形界面104の屈曲度(T)の測定を示す。
図25図25のa)は、非線形界面104のμm単位の界面長さ当たりの結晶粒の数を示し、図25のb)は、本明細書に開示される実施形態による非線形界面104の屈曲度(T)を示す。
図26図26のa)及びb)は、本明細書に開示される多層焼結セラミック体の少なくとも1つの第3の層の1000倍(及び5000倍)でのSEM顕微鏡写真を示す。
図27図27のa)、b)及びc)は、本明細書に開示される実施形態による貫通孔112を含む多層焼結部品を作製するための機械加工プロセスの前後の、本明細書に開示される多層焼結セラミック体の実施形態の例示的な断面図を示す。
図28図28は、本明細書に開示される実施形態による圧力支援焼結装置のツールセットの概略図を示す。
図29図29は、セラミック材料の焼結に使用される真空チャンバ(図示せず)内に簡単な配置で置かれたツールセットを有するSPS焼結装置の断面図を示す。
図30A図30Aは、1つのホイル層を示す図29の実施形態を示す。
図30B図30Bは、2つのホイル層を示す図29の代替の実施形態を示す。
図30C図30Cは、3つのホイル層を示す図29の別の代替の実施形態を示す。
図31A図31A及び図31Bは、図29のSPS焼結装置の上面図である。
図31B図31A及び図31Bは、図29のSPS焼結装置の上面図である。
図32図32は、1200℃におけるグラファイト材料A及びBの平均熱膨張係数(CTE)の半径方向の分散を示したグラフである。
図33図33図34は、半導体プラズマ処理システム9500及び9600を示す。
図34図33図34は、半導体プラズマ処理システム9500及び9600を示す。
【発明を実施するための形態】
【0046】
以下の詳細な説明は、本開示が、半導体ウェハ基板上へのデバイスの作製の一部として必要なエッチングチャンバ又は堆積チャンバなどの装置内で実施されると仮定する。しかしながら、本開示はそれに限定されない。ワークピースは、様々な形状、サイズ、及び材料であってもよい。半導体ウェハ処理に加えて、本発明を利用することができる他のワークピースには、微細な特徴サイズの無機回路基板、磁気記録媒体、磁気記録センサ、ミラー、光学素子、マイクロメカニカルデバイスなどの様々な物品が含まれる。
【0047】
耐腐食性セラミック、特に半導体反応器チャンバで構成要素として使用するための2つ以上の層を有する多層焼結セラミック体、及びその作製が本明細書に記載される。半導体エッチング及び堆積反応器は、処理に必要なハロゲン含有プラズマによる腐食及び浸食に対して高い耐性を有する表面を有する反応器構成要素を必要とする。表面は、好ましくは、構成要素表面からチャンバ内への粒子の放出を最小限に抑える。加えて、チャンバ構成要素は、特に大きな(直径>100mm)構成要素寸法において、取り扱い性及び使用のために十分な機械的強度を有していなければならない。焼結セラミック体は、焼結構成要素に機械加工されてもよく、したがって、耐食性、低粒子発生及び高い機械的強度を提供しながら、大きな寸法で取り扱い及び機械加工することができなければならない。本明細書に開示される焼結セラミック体は、(約3.5の比でイットリウム及びアルミナを含む組成で)ガーネット構造を有する式YAl12のYAG(酸化イットリウムアルミニウム又はアルミン酸イットリウム)と、スピネル(アルミン酸マグネシウムスピネル、MgAl)と、イットリア及びジルコニアとを含むセラミック材料の少なくとも1つの結晶相を有する少なくとも1つの第1の層を含み、ジルコニアは、10モル%以上のZrO及び25モル%以下のZrOの量でイットリア中に存在する。これらの材料は、優れた耐腐食性及び耐浸食性を有する。これらの材料の使用は、ハロゲン系プラズマエッチング及び堆積条件に供されたときに、他の材料よりも改善されたプラズマ耐性を提供する表面を有する半導体プラズマ処理チャンバ構成要素をもたらす。
【0048】
一実施形態では、本明細書に開示されるのは、少なくとも1つの第1の層であって、YAG、アルミン酸マグネシウムスピネル、並びにイットリア及びジルコニアからなる群から選択される多結晶セラミック材料を含み、ジルコニアが10モル%以上25モル%以下の量で存在する、少なくとも1つの第1の層と、アルミナ及びジルコニアを含む少なくとも1つの第2の層であって、ジルコニアが安定化ジルコニア及び部分安定化ジルコニアのうちの少なくとも1つを含む、少なくとも1つの第2の層と、YAG、アルミナ及びジルコニアからなる群から選択される少なくとも1つを含む少なくとも1つの第3の層とを備え、少なくとも1つの第2の層が少なくとも1つの第1の層と少なくとも1つの第3の層との間に配置され、少なくとも1つの第1、第2及び第3の層の間の熱膨張係数(CTE)の差の絶対値が、ASTM E228-17に従って測定して0~0.75×10-6/℃であり、少なくとも1つの第1、第2及び第3の層が単一の焼結セラミック体を形成する、多層焼結セラミック体である。
【0049】
半導体製造産業がより大きな半導体基板直径に向かっているので、直径100~約625mmのオーダーのより大きな寸法のチャンバ構成要素が必要とされる。したがって、本明細書に開示される多層焼結セラミック体は、破損を回避するために、使用中及び取り扱い中に十分な強度を有しなければならない。本明細書に開示される多層焼結セラミック体は、ジルコニア及びアルミナを含む少なくとも1つの第2の層を更に含み、この第2の層は、機械的強度が高く、以下に開示されるような好ましい電気特性及び材料特性も有する。
【0050】
図6参照すると、開示されているのは、ハロゲン系プラズマ及びイオン衝撃の腐食及び浸食作用に対する耐性、小さな細孔サイズでの制御された多孔性分布、高純度、高密度、及び低い表面粗さを提供するプラズマ対向面106を有する、最外層である少なくとも1つの第1の層100を有する多層焼結セラミック体98である。好ましくは、少なくとも1つの第1の層100は、ASTM E228-17に従って測定して、少なくとも1つの第2の層102及び少なくとも1つの第3の層103のCTEと0~0.75×10-6/℃(絶対値で)の量で異なる熱膨張係数(CTE)を有する。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの第1及び第2の層のCTEは実質的に同じである。更に、本開示の実施形態の多層焼結セラミック体98は、少なくとも1つの第1の層100及び少なくとも1つの第2の層102によって画定される非線形界面104(図21参照)を含み、それによって、非線形界面104は、層間の向上した接着を提供することができる。
【0051】
本開示の実施形態は更に、ジルコニア及びアルミナを含む組成の範囲を有する少なくとも1つの第2の層102を含む特定の多層焼結セラミック体に関する。イットリア及びジルコニアの組成範囲にわたって、少なくとも1つの第2の層102は、高い機械的強度、向上した剛性(ヤング率)、高い熱伝導率、低い誘電損失、高い誘電率、並びに開示された範囲内で少なくとも1つの第1の層100及び少なくとも1つの第3の層103の熱膨張係数(CTE)と一致するCTEを示す。
【0052】
少なくとも1つの第3の層103は、YAG、アルミナ及びジルコニアのうちの少なくとも1つの多相を含み、それによって、少なくとも1つの第3の層は、改善された機械加工性を提供する。少なくとも1つの第3の層103は、少なくとも1つの第1の層100の焼結プロファイルと同様の焼結プロファイルを提供することができ、それによって、焼結中に層全体にわたってより高い均一性を提供する。少なくとも1つの第3の層103のCTEは、本明細書に開示される範囲内で少なくとも1つの第1及び第2の層にCTEが一致される。
【0053】
本明細書に開示される範囲内のCTE値を有する少なくとも1つの第1、第2及び第3の層は、単一の多層焼結体及びそれから製造される大きな寸法(100mm~約625mm)のチャンバ構成要素の調製を提供する。更に、そのような耐食性多層焼結セラミックの調製方法及びプラズマ処理チャンバにおけるその使用が開示される。
【0054】
定義-本明細書で使用される場合、以下の用語は次のように定義される。「アルミナ」は、Alを含む酸化アルミニウムであると理解され、「ジルコニア」は、ZrOを含む酸化ジルコニウムであると理解され、「イットリア」は、Yを含む酸化イットリウムであると理解される。
【0055】
本明細書で使用される場合、「半導体ウェハ」、「ウェハ」、「基板」、及び「ウェハ基板」という用語は互換的に使用される。半導体デバイス産業で使用されるウェハ又は基板は、典型的には、200mm、又は300mm、又は450mmの直径を有する。
【0056】
本明細書で使用される場合、「焼結セラミック体」という用語は、「多層焼結セラミック体」、「多層耐食性セラミック」、「耐食性体」、「焼結セラミック」、「多層単一体」及び類似の用語と同義であり、単一の高密度多層焼結セラミック体を作製する圧力及び熱を加えることによって2つ以上の粉末混合物を共圧縮することから形成される単一の一体型焼結セラミック物品を指す。単一の多層焼結セラミック体は、プラズマ処理用途におけるチャンバ構成要素として有用な単一の多層焼結セラミック構成要素に機械加工することができる。したがって、本明細書に開示される多層焼結セラミック体は、予備成形された層を一緒に積層することによって形成されず、すなわち、本明細書に開示される多層焼結セラミック体は積層体ではない。
【0057】
本明細書で使用される場合、「共圧縮する(co-compacting)」又は「共圧縮(co-compaction)」という用語は、少なくとも2つのばらの粉末材料がダイ内に配置され、圧力を受けて粉末圧縮体を形成するプロセスを指す。粉末圧縮体は、当該技術分野で一般的であるグリーン体若しくは成形体、又はテープの形成に必要とされる結合剤、分散剤、及び他の同様の有機物質を含まない。
【0058】
「単一の」とは、追加のピースなしで、それ自体で完全な単一のピース又は単一の部品を意味し、すなわち、部品は、別の部品と共に1つのユニットとして形成された1つのモノリシックピースである。
【0059】
本明細書で使用される「実質的に」という用語は、近似を示す記述用語であり、「かなりの程度」又は「指定されたものの全体ではなく大部分」を意味し、指定されたパラメータに対する厳密な数値境界を回避することを意図している。
【0060】
本明細書で使用される場合、「焼結セラミック構成要素」又は「多層焼結セラミック構成要素」という用語は、セラミックを本明細書に開示される半導体処理チャンバで使用するための所望の構成要素の特定の形状に形成する機械加工工程後の焼結セラミック体、多層焼結セラミック体、又は耐食性セラミックを指す。
【0061】
本明細書で使用される場合、「粉末混合物」という用語は、焼結プロセスの前に一緒に混合された2つ以上の出発粉末を意味し、焼結工程の後にそれによって多層焼結セラミック体の少なくとも1つの層に形成される。
【0062】
セラミックの熱処理に適用される場合の「アニーリング」という用語は、本明細書では、開示された多層焼結セラミック体に対して、応力を緩和し、及び/又は化学量論を正規化するために空気中で行なわれ得る熱処理を意味すると理解される。
【0063】
本明細書で使用される場合、「ツールセット」という用語は、少なくとも1つのダイ及び少なくとも2つのパンチを備え得る。完全に組み立てられると、ツールセットは、開示されるように、粉末混合物を配置するための容積を画定する。
【0064】
本明細書で使用される「相」という用語は、特定の結晶学的構造を有する焼結セラミック体の別個の結晶領域、部分又は層を意味すると理解される。
【0065】
本明細書で使用される「固溶体」は、同じ結晶格子構造を共有する異なる元素の混合物として定義される。格子内の混合物は、一方の出発結晶の原子が他方の出発結晶の原子と置き換わる置換型であってもよいし、原子が格子内の通常空いている位置を占める侵入型であってもよい。
【0066】
本明細書で使用される場合、「ナノ粉末」という用語は、20m/g以上の比表面積を有する粉末を包含することが意図される。
【0067】
本明細書で使用される「相」という用語は、特定の結晶学的構造を有する焼結セラミック体の別個の結晶領域、部分又は層を意味すると理解される。
【0068】
本明細書で使用される場合、「層」という用語は、材料の厚さ、典型的にはいくつかのうちの1つを意味すると理解される。材料は、例えば、セラミック粉末、粉末混合物、焼成粉末混合物、又は焼結領域若しくは焼結部分とすることができる。
【0069】
本明細書で使用される場合、「周囲温度」は、約22℃~25℃の温度範囲を指す。
【0070】
本明細書で使用される場合、「純度」という用語は、a)粉末混合物が形成され得る出発材料、b)処理後の粉末混合物(又は焼成粉末混合物)、及びc)本明細書に開示される多層焼結セラミック体又は構成要素中に様々な汚染物質が存在しないことを指す。より高い純度(100%に近い)は、汚染物質又は不純物を本質的に含まないか、又は非常に少量しか含まない材料であって、開示される出発粉末中に存在する材料組成物を実質的に含む材料を表す。
【0071】
本明細書で使用される場合、「不純物」という用語は、意図された化合物自体(マグネシア、アルミナ、イットリア及びジルコニアの出発粉末、適用可能な場合は安定化化合物、粉末混合物及びそれらから形成されたセラミック)以外の粉末又は焼結セラミック中に存在する化合物/汚染物質を指す。不純物は、出発粉末、粉末混合物、処理後の粉末混合物、及び焼結セラミック体中に存在し得る。ICPMS法を用いて、本明細書に開示される粉末、粉末混合物、並びに焼結体の第1及び第2の層の不純物含有量を決定した。
【0072】
本明細書で使用される「ドーパント」という用語は、セラミック材料に所望の特性をもたらすために(例えば、電気的特性を変えるために)バルク材料に添加される物質である。典型的には、ドーパントは、使用される場合、低濃度、すなわち、>0.002重量%~<0.05重量%で存在する。
【0073】
不純物は、本明細書で定義されるドーパントが、例えば、多層焼結セラミック体中の粒径の修正などの特定の電気的、機械的、光学的、又は他の特性を得るために出発粉末又は粉末混合物に意図的に添加される化合物であるという点で、ドーパントとは異なる。本明細書で使用される「ドーパント」という用語は、酸化ジルコニウムの出発材料に含まれるHf及びYを、それらが多層焼結セラミック体中に残存し得る程度までは含まない。
【0074】
本明細書で使用される「焼結助剤」という用語は、焼結プロセス中に緻密化を高め、それによって多孔率を減少させる、シリカ(SiO)、リシア(LiO)、フッ化リチウム(LiF)、マグネシア(MgO)、及び/又はカルシア(CaO)などの化合物を指す。出発粉末中に存在し、焼結セラミック中に残る程度のHf及びYは、本明細書で定義される焼結助剤、不純物又はドーパントを含まない。
【0075】
本明細書で使用される場合、「実質的に」及び「約」という用語は、本明細書に開示される数又は特徴と関連して使用されるためプラス又はマイナス10%の分散が許容される。
【0076】
本明細書で使用される場合、「熱膨張係数(CTE)」という用語は、ASTM E228-17に従って、25~200℃~25~1400℃、好ましくは25~1200℃、より好ましくは25~1000℃、より好ましくは25~800℃、より好ましくは25~600℃、より好ましくは25~400℃、より好ましくは25~200℃の温度範囲にわたって測定される。CTEは、物体のサイズが温度の変化と共にどのように変化するかを記述する。具体的には、一定の圧力での温度変化度当たりのサイズ変化率を測定する。ある温度での係数を決定するために、材料の体積は基準温度で測定され、材料の体積は、CTEを決定したい温度で測定される。その後、体積及び温度の差に基づいて、わずかな変化が決定される。
【0077】
本開示の全てのCTE値は、ASTM E228-17に従って作成された。特に、使用した基準温度は、周囲温度、特に25℃であった。したがって、所与の温度(すなわち、200℃)でのCTEが開示される場合、CTEは、当該温度での体積(又は等方性材料の線膨張)を周囲温度、特に25℃での体積(又は等方性材料の線膨張)と比較することによって決定されている。CTEに関して矛盾するいずれの場合でも、ASTM E228-17が常に支配的な開示である。開示された実施例において、CTEは、垂直膨張計、特にLinseis Messgeraete GmbH(Selb,Germany)から入手可能なL75モデルを使用して測定された。
【0078】
半導体デバイスの処理中、耐腐食性チャンバ構成要素は、エッチング及び/又は堆積チャンバ内で使用され、チャンバ内への粒子の放出を引き起こす過酷な腐食及び浸食環境に曝され、その結果、ウェハレベルの汚染による歩留まり損失をもたらす。本明細書に開示される多層焼結セラミック体及びそれから製造された関連構成要素は、以下に説明される特定の材料特性及び特徴によって、半導体処理チャンバで使用するための改善されたプラズマ耐性、熱伝導率及び向上した機械的強度を提供する。
【0079】
一実施形態によれば、本明細書に開示されるのは、少なくとも1つの第1の層であって、YAG、アルミン酸マグネシウムスピネル、及びイットリアからなる群から選択されるセラミック材料の少なくとも1つの多結晶相を含み、ジルコニアが10モル%以上25モル%以下の量で存在する、少なくとも1つの第1の層と、アルミナを含む少なくとも1つの第2の層であって、アルミナが安定化ジルコニア(SZ)及び部分安定化ジルコニア(PSZ)の少なくとも1つを含む、少なくとも1つの第2の層と、少なくともYAG、アルミナ及びジルコニアを含む多相を含む少なくとも第3の層とを備え、少なくとも1つの第1の層と少なくとも1つの第2の層との間の熱膨張係数(CTE)の差の絶対値が0~0.75×10-6/℃(ASTM E228-17に従って測定)であり、少なくとも1つの第1の層及び少なくとも1つの第2、第3の層が単一の多層焼結セラミック体を形成する、多層焼結セラミック体である。
【0080】
一実施形態では、各層は、25~1700℃の温度範囲にわたって、又は200~1400℃の温度範囲にわたって、ASTM E228-17に従って測定して、少なくとも1つの第1、第2及び第3の層の間で、0~0.75×10-6/℃、好ましくは0~0.7×10-6/℃、好ましくは0~0.6×10-6/℃、好ましくは0~0.5×10-6/℃、好ましくは0~0.45×10-6/℃、好ましくは0.~0.4×10-6/℃、好ましくは0~0.35×10-6/℃、好ましくは0~0.3×10-6/℃、好ましくは0~0.25×10-6/℃、好ましくは0~0.2×10-6/℃、好ましくは0~0.15×10-6/℃、好ましくは0~0.1×10-6/℃、好ましくは0~0.08×10-6/℃、好ましくは0~0.04×10-6/℃、好ましくは0~0.02×10-6/℃の量のCTEの差の絶対値を示す。少なくとも1つの第1、第2及び第3の層の間のCTEの差の絶対値のこれらの範囲は、少なくとも1つの第1、第2及び第3の層のいずれかの間の百分率によるCTEの差が、(少なくとも1つの第1の層100に対して測定して)少なくとも1つの第1、第2及び第3の層の約10%以下、好ましくは9%以下、好ましくは8%以下、好ましくは6%以下、好ましくは4%以下、好ましくは3%以下、好ましくは2.5%以下、好ましくは2%以下、好ましくは1.5%以下、好ましくは1%以下、好ましくは0.5%以下、好ましくは0.25%以下であることに対応する。少なくとも1つの第1の層100と少なくとも1つの第2の層102と少なくとも1つの第3の層103との間のCTEがこれらの範囲内で変動する場合、より具体的には、少なくとも1つの第1、第2及び第3の層のCTEが、ASTM E228-17に従って測定して、周囲温度から約1700℃(又は図に示されるように約200℃~約1400℃)の温度範囲にわたってこれらの範囲内で変動する場合、本明細書に開示される圧力支援方法を用いて、高い強度及び層間の高い接着性を有する、特に大きな(>100mm~約625mm)寸法の単一の多層焼結セラミック体を形成することができる。本明細書に開示される少なくとも1つの第1、第2及び第3の層を含むセラミック材料の等方性特性により、本明細書で使用される熱膨張係数(CTE)は、線形又は体積CTEのいずれかを互換的に指すことができる。少なくとも1つの第1、第2及び第3の層の間のCTEの差は、層間の界面応力を低減するために最小化されることが好ましい。少なくとも1つの第1、第2及び第3の層の間のCTEの差が、本明細書に開示されるものよりも大きいと、多層焼結セラミック体の破壊及び/又は亀裂が生じる可能性がある。
【0081】
図6を参照すると、本明細書に開示される多層焼結セラミック体98の概略図が示されており、100は厚さd1を有する少なくとも1つの第1の層を表し、102は厚さd2を有する少なくとも1つの第2の層102を示し、103は厚さd3を有する少なくとも1つの第3の層103を示す。本明細書に開示される方法に従って製造される多層焼結セラミック体98(第1の層がある厚さを有する少なくとも1つの第1の層100、第2の層がある厚さを有する第2の層102、及び第3の層がある厚さを有する第3の層103を示す)は、好ましくは、3つの層100、102及び103を合わせた厚さの70%~95%、好ましくは70%~90%、好ましくは70%~85%、好ましくは80%~95%、好ましくは85%~95%である第2の層102の厚さを有する。
【0082】
少なくとも1つの第2の層102は、低誘電正接(1MHzで7×10-4未満)及び約12の高誘電率の機械的強度及び電気的特性を提供する。したがって、いくつかの実施形態では、厚さd2が最大化されることが好ましい場合がある。本明細書に開示される多層焼結体から焼結セラミック構成要素を形成するための機械加工性と組み合わせて高い機械的強度及び剛性を提供するために、図6に示される少なくとも1つの第2の層102の厚さd2は、好ましくは、少なくとも1つの第1の層100の厚さd1及び/又は少なくとも1つの第3の層103の厚さd3の各々よりも大きい。少なくとも1つの第1の層100の厚さd1及び/又は少なくとも1つの第3の層の厚さd3の各々は、0.5~5mm、好ましくは0.5~4mm、好ましくは0.5~3mm、好ましくは0.5~2mm、好ましくは0.5~1mm、好ましくは0.75~5mm、好ましくは0.75~3mm、好ましくは1~5mm、好ましくは1~4mm、好ましくは1~3mmであり得る。本明細書に開示される多層焼結セラミック体は、約5~約50mm、好ましくは約5~約40mm、好ましくは約5~約35mm、好ましくは約5~約33mm、好ましくは約5~約30mm、好ましくは約8~約25mm、好ましくは約10~約20mmの全厚さ(d1+d2+d3)を有し得る。特定の実施形態では、少なくとも1つの第1の層100の厚さd1及び/又は少なくとも1つの第3の層103の厚さ(d3)を最小化することが望ましい場合があり、多層焼結セラミック体は、焼結後及び/又はアニーリング後に層100及び/又は103の厚さd1及び/又はd3を減少させるために機械加工されて、多層焼結セラミック体98又はそれから形成された構成要素の誘電損失、誘電率、熱伝導率又は他の特性などの電気的特性を修正することができる。
【0083】
本明細書に開示される多層焼結セラミック体は、ある厚さを有する少なくとも1つの第1の層100と、ある厚さを有する少なくとも1つの第2の層102と、ある厚さを有する少なくとも1つの第3の層103とを有し、少なくとも1つの第2の層102の厚さは、3つの層100、102及び103をそれぞれ合わせた厚さの70%~95%、好ましくは70%~90%、好ましくは70%~85%、好ましくは80%~95%、好ましくは85%~95%である。
【0084】
特定の実施形態では、少なくとも1つの第2の層の厚さd2は、少なくとも1つの第1、第2及び第3の層の合わせた厚さ(d1+d2+d3)の60%~85%、好ましくは60%~80%、好ましくは60%~75%、好ましくは60%~70%、好ましくは70%~85%、好ましくは75%~85%、好ましくは70%~80%、好ましくは70%~75%である。厚さd1を有する少なくとも1つの第1の層は、ハロゲン系プラズマに対する耐腐食性及び耐浸食性を提供するプラズマ対向面106を含む。実施形態では、少なくとも1つの第1の層の厚さd1は、少なくとも1つの第1、第2及び第3の層の合わせた厚さ(d1+d2+d3)の0.75%~20%、好ましくは0.75%~15%、好ましくは0.75%~12%、好ましくは3%~20%、好ましくは5%~20%、好ましくは3%~15%、好ましくは5%~12%である。
【0085】
CTE不一致を有する材料を含む層から生じる応力は、多層焼結セラミック体の機械的強度及び完全性に影響を与える可能性がある。したがって、焼結セラミック体の少なくとも1つの第1の層100と少なくとも1つの第2の層102と少なくとも1つの第3の層103との間のCTEの絶対値の差が大きすぎる場合、多層焼結セラミック体の少なくとも1つの層は、本明細書に開示される方法の工程を行った際に亀裂及び/又は破壊し得る。このCTEの差は、全てのプロセス温度にわたって、特に、焼結中、アニーリング中、及び冷却時に経験されるような高温で重要であり、CTEの差は、焼結体の層間の著しい界面応力をもたらし得る。結果として、高い機械的強度、層間の高い接着強度、及び十分な取り扱い性(亀裂又は破損がない)を有する多層単一の焼結セラミック体を形成するために、多層焼結セラミック体の少なくとも1つの第1の層100と少なくとも1つの第2の層102と少なくとも1つの第3の層103との間のCTE差は、開示された範囲内であることが好ましく、更に可能な限り厳密に一致することが好ましい。好ましい実施形態では、少なくとも1つの第1、第2及び第3の層は、開示される方法に従って、周囲温度(又は図に開示されるように約200℃)~約1700℃(又は図に示されるように少なくとも1400℃)の温度範囲にわたって、CTEの絶対値が同じ又は実質的に同じであるそれぞれのCTEを有し得る。本明細書で使用される「CTE一致」という用語は、開示される好ましい範囲内(絶対値で0~約0.75×10-6/℃)でCTEが異なる少なくとも1つの第1の層100と少なくとも1つの第2の層102と少なくとも1つの第3の層103との組み合わせを指す。一実施形態によれば、少なくとも1つの第1の層100は、YAG、アルミン酸マグネシウムスピネル、及びイットリア及びジルコニアからなる群から選択されるセラミック材料の多結晶相を含むことができ、ジルコニアは、10モル%以上のZrO及び25モル%以下のZrOの量で存在し、それによって、少なくとも1つの第1の層100は、少なくとも1つの第2の層102(アルミナと、安定化ジルコニア及び部分安定化ジルコニアのうちの少なくとも1つとを含む)及び少なくとも1つの第3の層103(少なくとも1つの第1及び第2の層の組み合わせを含む)とCTEが一致して、単一の多層焼結セラミック体を形成する。百分率に基づいて、少なくとも1つの第1の層100と少なくとも1つの第2の層102と少なくとも1つの第3の層103との組み合わせは、(少なくとも1つの第1の層100に対して測定して)少なくとも1つの第1、第2及び第3の層の約10%以下、好ましくは9%以下、好ましくは8%以下、好ましくは6%以下、好ましくは4%以下、好ましくは3%以下、好ましくは2.5%以下、好ましくは2%以下、好ましくは1.5%以下、好ましくは1%以下、好ましくは0.5%以下、好ましくは0.25%以下の百分率で互いに一致するCTE値(本明細書に開示された温度範囲にわたって)を有し得る。
【0086】
少なくとも1つの第2の層102の組成は、図2に示すように、アルミナ中のジルコニアの体積%に基づいて特定のCTE特性を生成するように選択することができ、図7は、第2の層が10~30体積%の量のジルコニアを含み、残部がAlを含む、本明細書に開示される少なくとも1つの第2の層102の例示的なCTE結果を示す。ジルコニアの量、及び結果として得られる少なくとも1つの第2の層102のCTE値は、好ましくは、本明細書に開示される単一の多層焼結体を製造するために、周囲温度(又は図によれば200℃)~1700℃(又は図によれば1400℃)の、本方法の温度範囲に対応する温度範囲にわたって、少なくとも1つの第1及び第3の層とCTEが一致する。
【0087】
一実施形態によれば、少なくとも1つの第2の層102はアルミナ及びジルコニアを含み、ジルコニアは、少なくとも1つの第2の層の体積に対して5~30体積%、好ましくは5~25体積%、好ましくは5~20体積%、好ましくは5~16体積%、好ましくは10~30体積%、好ましくは16~30体積%、好ましくは10~25体積%、好ましくは15~20体積%の量の安定化ジルコニア及び部分安定化ジルコニアのうちの少なくとも1つを含む(残部はAlを含む)。少なくとも1つの第2の層102のこれらの体積百分率は、約7%~約40%、好ましくは約7%~約35%、好ましくは約7%~約28%、好ましくは約7%~約23%、好ましくは約15%~約40%、好ましくは約23%~約40%、好ましくは約15%~約34%、好ましくは約21%~約28%、好ましくは約23%のジルコニア(及び残部アルミナ)を含む第2の粉末混合物の重量百分率に対応する。この組成及び温度範囲にわたって、少なくとも1つの第2の層102の熱膨張係数(CTE)は、200℃で測定して約6.8×10-6/℃のCTEを有する5体積%のジルコニアを含む少なくとも1つの第2の層102から、1400℃で測定して約9.75×10-6/℃のCTEを有する約30体積%のジルコニアを含む少なくとも1つの第2の層102まで変化し得る。少なくとも1つの第2の層102における安定化ジルコニア又は部分安定化ジルコニアのうちの少なくとも1つの体積量は、少なくとも1つの第1の層100及び少なくとも1つの第3の層103のCTEと同じであるか、又は実質的に同じであり、開示されたCTE一致範囲内にあるように、CTEを調整する能力を提供する。
【0088】
図7を参照すると、10、16、及び20体積%のZrO(及び残部のアルミナ)組成物について、ASTM E228-17に従って行われるような膨張率測定法を用いて、少なくとも1つの第2の層102の熱膨張係数(CTE)を測定するために実験データが取られた。約16体積%のジルコニアを含む例示的な少なくとも1つの第2の層102は、ASTM E228-17に従って測定して、約200℃~約1400℃の温度範囲にわたって6.98×10-6/℃~9.26×10-6/℃の熱膨張係数(CTE)を有すると測定された。少なくとも1つの第2の層102は、図8のX線回折結果から示されるように、ジルコニア及びアルミナの少なくとも2つの別個の結晶相(本明細書では、複合酸化物若しくは微粒子複合材料又はジルコニア強化アルミナ(ZTA)と呼ばれる)を含む。したがって、当業者に知られている体積混合則を使用して、5体積%、25体積%、及び30体積%のジルコニアのCTE値を計算した(図7に示すように)。5体積%のジルコニアを含む少なくとも1つの第2の層(図示せず)の温度に対するCTE値は、典型的には、純粋なアルミナの範囲と10体積%のジルコニアを含む少なくとも1つの第2の層の範囲との間である。少なくとも1つの第2の層102のCTE特性を修正する能力は、特に、本明細書に開示される方法の温度範囲及び焼結温度と一致する温度範囲にわたって、少なくとも1つの第2の層102と少なくとも1つの第3の層103と少なくとも1つの第1の層100との間のCTE一致を提供する。少なくとも1つの第2の層102及び少なくとも1つの第3の層103の組成の選択は、本明細書に開示される範囲内で第2の層102及び第3の層103のCTEと同じ又は実質的に同じCTEを有する少なくとも1つの第1の層100について、限定されないが、様々な材料の使用を可能にする。いくつかの実施形態では、周囲温度から約1700℃の開示された温度範囲(又は図に示されるように、200℃から1400℃まで)にわたって、少なくとも1つの第2の層102のCTEは、少なくとも1つの第1の層のCTEよりも大きくても小さくてもよく、それによって、温度範囲にわたって0のCTE差を有する。他の実施形態では、開示された温度範囲(図に示されるように周囲温度から約1700℃、又は200℃から1400℃)にわたって、少なくとも1つの第2の層102のCTEは、少なくとも1つの第1の層100のCTEよりも大きいか又は小さいかのいずれかであってもよく、したがって、少なくとも1つの第1の層100と少なくとも1つの第2の層102との間の熱膨張係数(CTE)の差の絶対値は、25~1700℃の温度範囲にわたって、又は200~1400℃の温度範囲にわたって、ASTM E228-17に従って測定して、0.003×10-6/℃~0.75×10-6/℃、好ましくは0.003×10-6/℃~0.7×10-6/℃、好ましくは0.003×10-6/℃~0.6×10-6/℃、好ましくは0.003×10-6/℃~0.5×10-6/℃、好ましくは0.003×10-6/℃~0.45×10-6/℃、好ましくは0.003×10-6/℃~0.4×10-6/℃、好ましくは0.003×10-6/℃~0.35×10-6/℃、好ましくは0.003×10-6/℃~0.3×10-6/℃、好ましくは0.003×10-6/℃~0.25×10-6/℃、好ましくは0.003×10-6/℃~0.2×10-6/℃、好ましくは0.003×10-6/℃~0.15×10-6/℃、好ましくは0.003×10-6/℃~0.1×10-6/℃、好ましくは0.003×10-6/℃~0.08×10-6/℃、好ましくは0.003×10-6/℃~0.06×10-6/℃、好ましくは0.003×10-6/℃~0.04×10-6/℃、好ましくは0.003×10-6/℃~0.02×10-6/℃、好ましくは0.003×10-6/℃~0.01×10-6/℃であってもよい。
【0089】
他の実施形態では、少なくとも1つの第2の層102は、約600℃~約1700℃(又は図に示されるように少なくとも1400℃)の温度範囲にわたって少なくとも1つの第1の層100のCTEよりも大きいCTE、及び周囲温度(又は図に示されるように少なくとも200℃)から約600℃の温度範囲にわたって少なくとも1つの第1の層100のCTEよりも小さいCTEを有し得る。少なくとも1つの第1の層と第2の層との間でCTEの大きさが変化する温度は、約200℃~約800℃の任意の温度で生じ得る。特定の理論に束縛されることを意図するものではないが、より低い温度(例えば、800℃から周囲温度)での少なくとも1つの第1の層100に対する少なくとも1つの第2の層102のより低いCTEは、少なくとも1つの第1の層100の圧縮を提供するように機能し、それによって、半導体プラズマ処理チャンバ内の構成要素としての使用中に粒子生成をもたらし得る亀裂伝播、破壊、及びスポーリングの可能性を低減する。
【0090】
少なくとも1つの第3の層103は、典型的には、少なくとも1つの第1及び第2の層に関して開示された範囲内のCTEを有する。少なくとも1つの第3の層103のCTEは、ジルコニアの量の変動を通して、少なくとも1つの第1及び第2の層のCTEに一致するように調整され得る。したがって、少なくとも1つの第1の層100と少なくとも1つの第2の層102と少なくとも1つの第3の層103との間の熱膨張係数(CTE)の差の絶対値は、いくつかの実施形態では、25~1700℃の温度範囲にわたって、又は200~1400℃の温度範囲にわたって、ASTM E228-17に従って測定して、0~0.75×10-6/℃、好ましくは0~0.7×10-6/℃、好ましくは0~0.6×10-6/℃、好ましくは0~0.5×10-6/℃、好ましくは0~0.45×10-6/℃、好ましくは0~0.4×10-6/℃、好ましくは0~0.35×10-6/℃、好ましくは0~0.3×10-6/℃、好ましくは0~0.25×10-6/℃、好ましくは0~0.2×10-6/℃、好ましくは0~0.15×10-6/℃、好ましくは0~0.1×10-6/℃、好ましくは0~0.08×10-6/℃、好ましくは0~0.06×10-6/℃、好ましくは0~0.04×10-6/℃、好ましくは0~0.02×10-6/℃、好ましくは0~0.01×10-6/℃であってもよい。
【0091】
他の実施形態では、少なくとも1つの第1の層100と少なくとも1つの第2の層102と少なくとも1つの第3の層103との間の熱膨張係数(CTE)の差の絶対値は、25~1700℃の温度範囲にわたって、又は200~1400℃の温度範囲にわたって、ASTM E228-17に従って測定して、0.003×10-6/℃~0.75×10-6/℃、好ましくは0.003×10-6/℃~0.7×10-6/℃、好ましくは0.003×10-6/℃~0.6×10-6/℃、好ましくは0.003×10-6/℃~0.5×10-6/℃、好ましくは0.003×10-6/℃~0.45×10-6/℃、好ましくは0.003×10-6/℃~0.4×10-6/℃、好ましくは0.003×10-6/℃~0.35×10-6/℃、好ましくは0.003×10-6/℃~0.3×10-6/℃、好ましくは0.003×10-6/℃~0.25×10-6/℃、好ましくは0.003×10-6/℃~0.2×10-6/℃、好ましくは0.003×10-6/℃~0.15×10-6/℃、好ましくは0.003×10-6/℃~0.1×10-6/℃、好ましくは0.003×10-6/℃~0.08×10-6/℃、好ましくは0.003×10-6/℃~0.06×10-6/℃、好ましくは0.003×10-6/℃~0.04×10-6/℃、好ましくは0.003×10-6/℃~0.02×10-6/℃、好ましくは0.003×10-6/℃~0.01×10-6/℃であってもよい。
【0092】
対照的に、同じ方法によって作製されたが、本明細書に開示されるようなCTE一致要件を満たさなかった(したがって、CTE差の絶対値が不一致である)材料の組み合わせが、YAG第1の層と酸化アルミニウム基板(第2の層)とから形成された焼結セラミック体を示す図4に示されている(実施例セクションの「比較例」による)。図3に示すように、アルミナは、YAG、スピネル及び80%イットリア/20%ジルコニアのいずれよりも低いCTEを有することが示されている。焼結セラミック体は、アニーリング中に層間の界面近くのアルミナ基板内で破壊した。破壊は焼結体中の最も弱い領域で起こり、バルクアルミナ内で起こる破壊は、バルクアルミナ基板の界面強度とほぼ同じか、又はそれより大きい界面強度を示し得る。破壊の位置(アルミナ内)は、本明細書に開示される材料及び方法の使用によって達成される非常に高い界面強度(バルクの第1及び第2の層の界面強度を超え得る)を表す。YAGとアルミナとの間のCTEの差は、2つの層の間の界面における完全性を維持しながら、バルク焼結体内で破壊を引き起こすのに十分であった。積層体を形成するためのフィルム堆積及び/又はフィルム積層方法は、典型的には、はるかに低い界面強度を示し、それに応じて、フィルム層間の界面で破壊及び/又は亀裂が生じる(図1の概略図に示されるような層間破壊又は層間剥離)。図3に示されるように、YAGは、CTE一致においてアルミナに最も近く、したがって、アルミナに対してより大きな量で変化する熱膨張係数を有する少なくとも1つの第1の層100のためのセラミック材料(例えば、酸化アルミニウム基板層と組み合わせた第1の層としてのスピネルなど)の使用は、基板材料としてアルミナを使用するとき、焼結後に破壊しやすい多層焼結体を同様に生成することが予想される。したがって、本明細書に開示される温度範囲にわたるアルミナの熱膨張係数(CTE)は、基板材料としてアルミナを使用する単一の多層焼結体の形成を防止するのに十分な量という点で、多くの耐食性材料のCTEとは異なる。
【0093】
CTE一致に加えて、多層焼結セラミック体は、好ましくは、半導体プラズマ処理チャンバ内の構成要素として使用するために高い熱伝導率を有する。少なくとも1つの第2の層102(及び少なくとも1つの第3の層103の少なくとも一部)として使用するために選択されるジルコニア強化アルミナ(ZTA)組成物は、単一の多層焼結体の特性に有意に影響を与える。少なくとも1つの第2の層102の高い熱伝導率は、特に、誘電体又はRF窓構成要素として使用される場合、熱を効果的に分散させ、それによって使用中に少なくとも1つの第2の層内の局所的な過熱を回避するための重要な材料特性である。この局所的な過熱は、単一の多層焼結体の亀裂又は破壊をもたらし得る。ジルコニアは、アルミナの熱伝導率よりも低い熱伝導率を有することが文献に報告されており、したがって、ジルコニアの量は、少なくとも1つの第2の層102の熱伝導率に影響を及ぼす。純粋な酸化アルミニウムは、高い熱伝導率を有することが知られているが、CTEの不一致により、本明細書に開示される少なくとも1つの第1の層100として使用するための材料と組み合わせて使用することができない。熱伝導率の理由から、少なくとも1つの第2の層102内のジルコニアの最小量に実際的な下限は存在しない場合があるが、少なくとも1つの第1の層100に適合するCTE並びに高い熱伝導率(アルミナの熱伝導率とほぼ同じ)を提供するために、約5体積%以上30体積%以下の量の安定化ジルコニア及び部分安定化ジルコニアのうちの少なくとも1つを含む(残部は約70体積%~95体積%のアルミナの第2の結晶相を含む)少なくとも1つの第2の層102が好ましい。
【0094】
例えば高周波用途(RF又は誘電体窓又は蓋の構成要素など)で使用するのに十分な熱伝導率を有する少なくとも1つの第2の層102を提供するために、約30体積%以下、いくつかの実施形態では、好ましくは25体積%以下のジルコニアを有する少なくとも1つの第2の層102が好ましい場合がある。30体積%超のジルコニアを有する第2の層102は、高い熱伝導率が要件である半導体プラズマ処理チャンバ内の構成要素として使用するのに十分な熱伝導率を提供しない場合がある。30体積%超のジルコニアを有する少なくとも1つの第2の層102の組成は、少なくとも1つの第2の層102中に高い熱勾配をもたらす場合があり、破壊及び/又は亀裂につながる可能性がある。
【0095】
図7は、10~30体積%の量で存在するジルコニアを有する、本明細書に開示される少なくとも1つの第2の層102についての200~1400℃での熱膨張係数の結果を示す。5体積%のジルコニアを含む少なくとも1つの第2の層(図示せず)の温度に対するCTE値は、典型的には、純粋なアルミナの範囲と10体積%のジルコニアを含む少なくとも1つの第2の層の範囲との間である。少なくとも1つの第2の層102は、図8に示すように、ジルコニア及びアルミナの少なくとも2つの別個の結晶相を含み、したがって、当業者に知られている体積混合則を使用して、5体積%、25体積%及び30体積%のジルコニアのCTE値を計算した。CTEは、図7に示すように、ジルコニアの体積量の増加とともに増加することが示されている。ZTA(ジルコニア強化アルミナ)、少なくとも1つの第2の層102中のジルコニアの体積に依存して、少なくとも1つの第2の層のCTEは、単一の多層焼結セラミック体を含む少なくとも1つの第1の層100(YAG、スピネル、又はイットリア及びジルコニアを含む)のCTEよりも大きく、実質的に等しく、同等であるか、又は小さくなり得る(本明細書に開示する範囲内の量で変化する)。したがって、本明細書で使用されるCTEの差とは、特に断りのない限り、典型的にはCTEの差の絶対値を意味する。
【0096】
少なくとも1つの第2の層102の高い靭性値は、取り扱い性を向上させ、多層焼結セラミック体における破壊及び/又は亀裂を防止するために好ましい。アルミナ及びジルコニアを含む少なくとも1つの第2の層102の靭性を高めるために、少なくとも1つの第2の層の強化及び/又は安定化が好ましい。特定の理論に束縛されることを意図するものではないが、本明細書に開示される強化及び安定化機構は、ジルコニアの正方晶相の安定化の目的を果たすことができ、それによって、約4.5%の大きな体積変化を伴う、単斜晶相への変態(より低い温度で)を制限し、ジルコニアの正方晶型の相安定性を好ましいものにする。正方晶ジルコニアの安定化は、限定されることなく、当業者に知られている任意の安定化方法によって達成され得る。
【0097】
少なくとも1つの第2の層におけるジルコニアとアルミナとの組み合わせは、正方晶ジルコニア粒子の分散を通じて変態強化効果を提供することができ、その少なくとも一部は亀裂伝播時に単斜晶に変態する。正方晶ジルコニアから単斜晶ジルコニアへの体積膨張は、当業者に知られているように、少なくとも1つの第2の層102における変態又は分散強化効果を提供する。実施形態では、少なくとも1つの第2の層102は、開示された体積による量のジルコニア及びアルミナの結晶相の粒子複合体(本明細書において複合酸化物又はZTAとも呼ばれ、分散又は変態強化セラミックを表す)を含んでもよい。この強化方法は、アルミナマトリックス中の正方晶及び単斜晶の分散ジルコニア相の粉末粒子サイズ、形状及び位置によって影響を及ぼされ得る。
【0098】
安定化の更なる方法は、イットリア、カルシア、酸化ランタン(La)、セリア(CeO)、サマリア(Sm)及びマグネシア、並びにそれらの組み合わせを様々なモル量で含む安定化化合物を利用して、好ましくは正方晶又は立方晶の結晶相でジルコニアを安定化する(ジルコニアの単斜晶結晶相は室温で安定である;したがって、正方晶相及び立方晶相は、室温で存在する場合に準安定相と考えられる)。これらの安定化化合物の相対的な量及び種類は、完全安定化(SZ)及び部分安定化(PSZ)のうちの少なくとも1つを含むジルコニアを含む少なくとも1つの第2の層102を生成することができる。典型的には、安定化化合物は、ジルコニウム(Zr)に対するそれらの原子価及び原子半径について選択されてもよい。ジルコニウムよりも大きい原子半径を有するこれらの安定化化合物は、正方晶相及び/又は立方晶相の安定化に有利である。いくつかの実施形態では、イットリアは、ジルコニア(160pmの原子半径を有する)よりも低い原子価(+3)及び大きい原子半径(180ピコメートル、pm)を有する正方晶相安定化化合物として選択され得る。典型的には、ジルコニアよりも低い原子価状態(配位数)を有する安定化化合物が好ましい。特定の理論に束縛されることを意図するものではないが、ジルコニアの原子価状態(+4)よりも低い原子価状態を有するこれらの安定化化合物の使用は、酸素空孔の導入をもたらし得、これは、高周波数(例えば、RF又はマイクロ波周波数)における誘電損失を増加させ得る。したがって、いくつかの実施形態では、ジルコニアと同じ原子価(+4)及びより大きい原子半径(185pm)を有する酸化セリウム(CeO2)などの安定化化合物は、酸素空孔を導入することなく、正方晶及び/又は立方晶相を安定化させることができる。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの第2の層102及び/又は少なくとも1つの第3の層103を含むジルコニアを安定化させるために、安定化化合物のうちの少なくとも2つの組み合わせが好ましく、本明細書に開示される量で任意の組み合わせで組み合わされてもよい。安定化化合物は、開示される方法に従って、少なくとも1つの第2及び/又は第3の粉末混合物に添加されてもよい。表1は、安定化ジルコニア(SZ)及び/又は部分安定化ジルコニア(PSZ)を生成するための安定化化合物並びにそれらのモル量及び重量パーセントを列挙する。開示される安定化化合物を使用したジルコニアの安定化は、少なくとも1つの第3の層のCTEの変化をもたらし得、それに応じてジルコニアの量を調整することができる。
【0099】
【表1】
【0100】
実施形態では、少なくとも1つの第2の層102は、アルミナのホストマトリックス中に分散されたジルコニア(PSZ、SZ及びそれらの組み合わせ)の粒子又は結晶粒を含んでもよく、少なくとも1つの第2の層は、アルミナ及びジルコニアの2つの別個の結晶相を有する粒子複合体(複合酸化物)を含む。好ましくは、少なくとも1つの第2の層102は固溶体を形成しない。固溶体の形成は、熱伝導率を低下させる場合があり、したがって、少なくとも1つの第2の層102は、ジルコニア及びアルミナの別個の結晶相を含む。図8は、X線回折結果からのジルコニア及びアルミナの別個の結晶相を示し、少なくとも1つの第2の層102が、固溶体の形成なしに別個の結晶相を含むことが確認される。本明細書に開示される全ての測定についてのX線回折は、約+/-5%までの結晶相同定が可能なPANanlytical AerisモデルXRDを使用して行った。図8のX線回折パターンに存在する少量のイットリアは、少なくとも1つの第2の層の実施形態によるジルコニア部分安定化(部分イットリア安定化ジルコニア、PYSZ)から生じ得る。
【0101】
更に、少なくとも1つの第2の層102内で、焼結助剤としてガラスを形成することが知られている化合物(マグネシア、シリカ、及びカルシアなど)を使用すると、結晶粒間に存在する低熱伝導率のガラス相が生じ、したがって熱伝導率に悪影響を及ぼす可能性がある。結果として、いくつかの実施形態では、少なくとも1つの第2の層102は、ICPMS法を用いて測定して、少なくとも1つの第2の層の質量に対して約2~100ppm、好ましくは約2~75ppm、好ましくは約2~50ppm、好ましくは約2~25ppm、好ましくは約2~20ppm、好ましくは約2~10ppm、好ましくは約8ppm、好ましくは約2ppm以下の範囲のマグネシア及び/又はカルシアを含むことが好ましい。更なる実施形態では、少なくとも1つの第2の層102は、少なくとも1つの第2の層102の質量に対して、約14ppm~100ppm、好ましくは約14ppm~約75ppm、より好ましくは約14ppm~約50ppm、好ましくは約14ppm~約30ppm、好ましくは約14ppm以下(ICPMS法を用いて測定)の量のシリカを含んでもよい。開示された範囲内の焼結助剤を含む第2の層102は、ガラス相を含まない、又は実質的に含まない多層焼結セラミック体を提供することができ、多層焼結セラミック体の高い熱伝導率を提供する。本明細書に開示されるのは、本明細書に開示されるドーパント及び/又は焼結助剤を含まないか、又は実質的に含まない少なくとも1つの第2の層102を含む多層焼結セラミック体である。
【0102】
熱伝導率は、約16%体積の部分イットリア安定化ジルコニア(3モル%)及び残部のアルミナを含む少なくとも1つの第2の層102上でASTM E 1461-13に従って(周囲温度及び200℃で)実行された熱拡散率測定から(拡散率、密度、及び既知の熱容量の積として)計算された。実施形態では、約16体積%の部分イットリア安定化ジルコニアを含む少なくとも1つの第2の層102は、周囲温度で約25W/m-Kの熱伝導率、及び200℃で約14W/m-Kの熱伝導率を有すると計算された。したがって、少なくとも1つの第2の層102は、好ましくは、少なくとも1つの第2の層102の体積に対して、約5~約30%、好ましくは約5~約20%、好ましくは約10~約20%、好ましくは約15~約20%の体積量のジルコニアを含む。本明細書に開示される範囲内の組成を有する少なくとも1つの第2の層102は、例えば、誘電体窓、RF窓、蓋、及び本明細書に開示されるプラズマ処理チャンバ内で高い熱伝導率を必要とする他の構成要素として使用するのに十分な熱伝導率を提供する。
【0103】
使用中の局所的なホットスポット及び過熱を防止するために、特にRF用途では、低い誘電損失が好ましい。誘電損失は、例えば、結晶粒サイズ並びに不純物、焼結助剤及び/又はドーパントの存在などの材料特性によって影響を及ぼされる可能性がある。少なくとも1つの第2の層102における、特にシリカなどの不純物及び/又は焼結助剤及び/又はドーパントの存在は、より高い誘電損失をもたらし得る。高純度/低不純物含有量の出発粉末及び純度を維持する方法の使用は、高い全純度及び対応して低い総不純物含有量の少なくとも1つの第2の層102をもたらす。したがって、実施形態では、開示される少なくとも1つの第2の層102は、ICPMS法を用いて測定して、少なくとも1つの第2の層の質量に対して5~200ppm、好ましくは5~150ppm、好ましくは100ppm未満、好ましくは50ppm未満、好ましくは25ppm未満、好ましくは15ppm未満、好ましくは10~100ppm、好ましくは10~80ppm、好ましくは10~60ppm、好ましくは10~40ppm、好ましくは20~80ppm、好ましくは30~60ppmの総不純物含有量を有し得る。実施形態では、少なくとも1つの第2の層102は、焼成粉末混合物の総質量に対して約14~100ppm、好ましくは約14~75ppm、好ましくは約14~50ppm、好ましくは約14~25ppm、好ましくは約14ppmの量のシリカを含む粉末混合物から形成される。実施形態では、少なくとも1つの第2の層102は、マグネシア(MgO)を、ICPMS法を用いて測定して、少なくとも1つの第2の層102の質量に対して約2~100ppm、好ましくは約2~75ppm、好ましくは約2~50ppm、好ましくは約2~25ppm、好ましくは約2~20ppm、好ましくは約2~10ppm、好ましくは約8ppm以下、好ましくは約2ppmの量で含み得る。
【0104】
プラズマ処理チャンバ、特にRF範囲で動作するプラズマ処理チャンバで使用するために、誘電損失(正接δ)が低い多層焼結セラミック体98が好ましい。少なくとも1つの第2の層102は、実施形態では、多層焼結セラミック体98の最大厚さ(したがって最大体積)を含むことができ、したがって、少なくとも1つの第2の層の関連する特性は、焼結体の電気特性及び熱伝導率などの他の特性に大きく影響を及ぼすことができる。焼結体の誘電損失は、少なくとも1つの第2の層102の純度、特にシリカ含有量によって影響を受ける可能性がある。したがって、少なくとも1つの第2の層102は、マグネシア及び/又はカルシアを、複合酸化物の第2の層102の質量に対して、各々約2~100ppm、好ましくは約2~75ppm、好ましくは約2~50ppm、好ましくは約2~25ppm、好ましくは約2~20ppm、好ましくは約2~10ppm、好ましくは約2ppmの量で含み得る。更なる実施形態では、本明細書に開示される少なくとも1つの第2の層102は、第2の層102の総質量に対して約14ppm以上、好ましくは14~100ppm、好ましくは14~75ppm、好ましくは14~50ppm、好ましくは14~25ppm、好ましくは14~20ppm、好ましくは約14ppmのSi含有量を有する少なくとも1つの粉末混合物から形成され得る。実施形態では、第2の層は、第2の層の総質量に対して、5~200ppm、好ましくは5~150ppm、好ましくは100ppm未満、好ましくは50ppm未満、好ましくは25ppm未満、好ましくは15ppm未満、好ましくは10~100ppm、好ましくは10~80ppm、好ましくは10~60ppm、好ましくは10~40ppm、好ましくは20~80ppm、好ましくは30~60ppmの総不純物含有量を有し得る。
【0105】
本明細書に開示される量のカルシア、シリカ及びマグネシアを含む少なくとも1つの第2の層102の総不純物含有量は、約16体積%の部分イットリア安定化(イットリア3モル%)ジルコニア及び残部のアルミナを含む少なくとも1つの第2の層102について表7に記載されるように、ASTM D150に従って測定して、周囲温度で1MHzの周波数で7×10-4未満の誘電損失を有する少なくとも1つの第2の層102を提供する。実施形態では、少なくとも1つの第2の層102は、本明細書に開示されるドーパント及び/又は焼結助剤を含まないか(0ppm若しくは検出限界未満)、又は実質的に含まない(2~5ppm)。本明細書に開示される少なくとも1つの第2の層102は、チャンバ構成要素として、特に高周波RFプラズマ処理チャンバで使用するための窓又は蓋の構成要素として使用するのに適した低い誘電損失を有する多層焼結セラミック体又はそれから製造された構成要素を提供する。
【0106】
半導体デバイスの製造のためのプラズマ処理チャンバは、ますます増大する直径を有する基板を収容するように設計されており、それに対応して大きな寸法のチャンバ構成要素を必要とする。本明細書に開示される多層焼結セラミック体から製造されるこれらのチャンバ構成要素は、例えば、100~約625mm、好ましくは100~622mm、好ましくは200~約625mm、好ましくは300~約625mm、好ましくは400~約625mm、好ましくは500~約625mm、好ましくは300~622mm、好ましくは400~622mm、好ましくは500~622mmの最大寸法を有し得る。
【0107】
腐食及び浸食に対する耐性を提供する多くの材料は、焼結が困難であることが知られており、その結果、低密度となり、それに対応して焼結強度が低くなり、破損又は亀裂が生じ得る。これは、これらの耐食性材料からの大きな単一のモノリシック固体本体構成要素の製造を困難にする。大型のチャンバ構成要素の製造を可能にするために、少なくとも1つの第2の層102を含む高強度材料(これは本明細書に開示される耐食性材料とCTEが一致する)が必要とされている。少なくとも1つの第2の層102は、本明細書に開示される単一の多層耐食性焼結体(及びそれから製造された構成要素)に機械的強度及び剛性を提供する。少なくとも1つの第2の層102は、非常に高密度に焼結されてもよく、実施形態では、十分に高密度の物体に焼結されてもよく、これは、大きな寸法の多層焼結体の製造に必要な機械的強度及び剛性を提供し、多層焼結体は、例えば、100~約625mm、好ましくは100~622mm、好ましくは200~約625mm、好ましくは300~約625mm、好ましくは400~約625mm、好ましくは500~約625mm、好ましくは300~622mm、好ましくは400~622mm、好ましくは500~622mmの最大寸法を有する。10~16体積%の量のジルコニア(アルミナを残部として含む)を有する焼結体について、ASTM B962-17に従って密度測定を行い、体積混合則を使用して、5、20、25及び30%のジルコニアを有する少なくとも1つの第2の層について密度を計算した。理論密度の99%が、計算された密度において仮定された。表2は、本明細書に開示されるジルコニア及びアルミナの結晶相を含む少なくとも1つの第2の層の密度を記載する。
【0108】
【表2】
【0109】
ジルコニアは6.09g/ccの理論密度を有すると報告されており、アルミナは3.98g/ccの理論密度を有すると報告されている。少なくとも1つの第2の層102の理論密度は、当業者に知られている体積混合則に従って(これらの密度値とジルコニア及びアルミナのそれぞれの結晶相の体積分率とを使用して)計算された。非常に高い密度(理論密度の99~100%)が、表2に開示されるように、少なくとも1つの第2の層102の実施形態について測定された。本明細書に開示される約16体積%の量のジルコニア(及び残部のアルミナ)を含む少なくとも1つの第2の層102は、ASTM B962-17に従って測定して、約4.32g/ccの密度を有すると測定された。これらの高密度は、最大寸法が約625mm以下の大きな寸法の単一の多層焼結体の形成に十分な機械的強度及び剛性(ヤング率)を提供する。
【0110】
本明細書に開示される約16体積%の量のジルコニア(及び残部のアルミナ)を含む少なくとも1つの第2の層102を、ASTM規格C 1161-3「Standard Test Method for Flexural Strength of Advanced Ceramics at Ambient Temperature」に従って4点曲げ試験で試験して、曲げ強さを決定した。4点曲げ試験は、より大きな体積の試料を均一な最大応力に曝し、したがって被試験材料をより代表する強度をもたらすので、3点曲げ試験よりも好ましい。3点曲げ試験は、比較的小さな体積の試料を最大応力に曝し、したがって、報告された3点曲げ試験強度値は、多くの場合、より高い。したがって、3点曲げ試験と4点曲げ試験との間の比較は、それらの測定設定及び方法における著しい変動に起因する課題をもたらす。ASTM規格C 1161-3を使用して、16体積%のジルコニアを含む少なくとも1つの第2の層102について、4点曲げ構成において非常に高い強度値が達成された。表3は、約16%の部分安定化ZrO及び残部のアルミナを含む少なくとも1つの層102についての曲げ強度(破壊係数、MOR)及び他の材料特性を列挙する。
【0111】
真空条件下での半導体反応器における使用中に、本明細書に開示される多層焼結セラミック体から製造された耐食性多層構成要素は、500mmを超える構成要素寸法にわたる曲げ応力を受ける可能性がある。高強度及び増大した剛性/ヤング率の特性は、本明細書に開示される構成要素として使用するための材料を大規模エッチング及び/又は堆積チャンバに適用するために必要であり得る。98%緻密酸化アルミニウムの曲げ強さは約375MPaであると報告されており、剛性(弾性率/ヤング率)は約350GPaであると報告されている(Coorstek Advanced Aluminaデータシート、オンラインで入手可能)。本明細書に開示される少なくとも1つの第2の層102は、少なくとも1つの第1の層100及び少なくとも1つの第3の層103に一致する必要なCTEを提供しながら、アルミナの機械的強度及び剛性/ヤング率とほぼ同じか又はそれを超える機械的強度及び剛性/ヤング率を提供することができる。本明細書に開示される少なくとも1つの第2の層102の使用は、多層焼結セラミック体から製造される単一の多層構成要素の曲げ強さ及び剛性を著しく向上させて、半導体プラズマ処理チャンバでの構成要素としての使用に必要な、高強度、高剛性、並びにハロゲン系腐食及び浸食に対する耐性の両方を有する大きな(>100~約625mm以上の寸法)構成要素の作製を可能にし得る。
【0112】
少なくとも1つの第1の層100は、ハロゲンプロセスガスの腐食作用及びプラズマイオン衝撃の浸食作用(多くの場合、当該技術分野で知られている他のプロセスガスとともに、例えばアルゴンなどの不活性ガスを使用することができる)に対して耐性のある、化学的に不活性なプラズマ対向面106を提供し、一方で、少なくとも1つの第2の層102は、本明細書に開示される多層耐食性焼結体に機械的強度を提供する。少なくとも1つの第2の層102は、非常に高密度に焼結されてもよく、実施形態では、例えば、直径100~約625mm、好ましくは200~約625mm、好ましくは250~約625mm、好ましくは300~約625mm、より好ましくは350~約625mm、より好ましくは400~約625mm、より好ましくは450~約625mm、より好ましくは500~約625mmの大きな寸法の多層焼結体の製造に必要な機械的強度を提供する十分に緻密なボディに焼結されてもよい。表3は、16体積%の部分安定化ジルコニア及び残部のアルミナを含む少なくとも1つの第2の層102の特性を列挙する。
【0113】
【表3】
【0114】
ここで図6の実施形態を参照すると、少なくとも1つの第3の層103を備える多層焼結セラミック体98が開示されている。少なくとも1つの第3の層103は、YAG、アルミナ及びジルコニアのうちの少なくとも1つを含む多結晶相を含む。ジルコニアは、非安定化ジルコニア、部分安定化ジルコニア及び安定化ジルコニアのうちの少なくとも1つを含み得る。
【0115】
実施形態では、少なくとも1つの第3の層103は、少なくとも1つの第3の層の例示的な研磨された表面の面積に対して、50%超~90%、好ましくは50%超~80%、好ましくは50%超~60%、より好ましくは約51%~55%の面積量のYAGを含む。面積測定は、ImageJソフトウェアにインポートされたSEMからの後方散乱検出画像を使用して完了し、その後、YAG及びアルミナ/ジルコニアのそれぞれの相を、例示的な画像面積にわたる表面積のそれらの百分率に関して測定した。多層焼結セラミック体の少なくとも1つの第3の層103は、一体型ボディを含み得、したがって、本明細書に開示されるプロセスに従って作製された少なくともYAG、ジルコニア及びアルミナの結晶相を全体にわたって含む。換言すれば、表面上で測定される構造は、バルクの少なくとも1つの第3の層の体積内の構造を表す。したがって、多層焼結セラミック体の少なくとも1つの第3の層は、焼結体の表面上及び体積全体にわたって同じ相対量のYAG、ジルコニア及びアルミナの結晶相を含み得る。
【0116】
少なくとも1つの第3の層103の多相構造は、図26のa)及び図26b)の1000倍のSEM顕微鏡写真に示されている。図26のa)は、YAG相の大きな(最大寸法が約80μm~約200μm)領域(白色/薄灰色領域)と、その中に分散されたジルコニア相を有するアルミナ相(全体を通して黒色領域)(小さな寸法、アルミナ相内の約10μm直径の白色領域)とを含む少なくとも1つの第3の層103の微細構造を示す。図26のa)の微細構造は、本明細書に開示される実施形態による第3の粉末混合物を形成するために、粉砕/混合媒体を使用せずに、アルミナ、イットリア、並びに非安定化ジルコニア、部分安定化ジルコニア及び安定化ジルコニアのうちの少なくとも1つの粉末を約16時間乾式混合することによって達成され得る。粉砕媒体及び乾式混合条件が存在しないことは、図26のa)に示されるような微細構造に寄与し得る。
【0117】
図26のb)は、微細に分散した(最大寸法が約5μm~約20μm)YAG相(白色/薄灰色領域)と、その中に分散されたジルコニア相を有するアルミナ相(黒色領域)(小さな寸法、アルミナ相内の約3μm直径の白色領域)とを含む少なくとも1つの第3の層103の1000倍及び5000倍(挿入図)の微細構造を示す。図26のb)の微細構造は、本明細書に開示される実施形態による第3の粉末混合物を形成するために、アルミナ、イットリア、並びに非安定化ジルコニア、部分安定化ジルコニア及び安定化ジルコニアのうちの少なくとも1つの粉末を含む40重量%のエタノールスラリーを形成することによって達成され得る。アルミナ媒体を粉末重量に対して約100%の負荷量で添加し、粉末を20時間タンブル粉砕した。図26のb)に示されるように、高い媒体負荷及び延長された粉砕時間は、微細に分散された高度に均一な微細構造に寄与し得る。
【0118】
少なくとも1つの第3の層103はまた、少なくとも1つの第1の層100及び少なくとも1つの第2の層102に対して改善された機械加工性及びCTE一致(本明細書に開示される範囲内)を提供する。図22のa)によれば、薄灰色/白色領域(YAGを含む)及びアルミナ/ジルコニア領域(内部に白色領域を有する濃灰色又は黒色として示される)は各々、多相の第3の層103を示すSEM内に示されるように、約100μm以上の寸法の領域を形成する。ImageJを用いて複数のSEM画像を分析して、多相層103の各相を含む面積百分率を決定した。図26のa)のSEM画像(及び同じ倍率500倍で撮影された他の画像)を使用すると、多層焼結体は、アルミナリッチ相(YAGを含む)の面積基準で約51~約63%、好ましくは約51~約60%、好ましくは約55~約60%、及び好ましくは約60%の量のYAG相と、アルミナ及びジルコニアを含む残部とを含む少なくとも1つの第3の層103を備え、ジルコニアは、非安定化ジルコニア、部分安定化ジルコニア及び安定化ジルコニアのうちの少なくとも1つを含む。YAGを含む領域と、アルミナ及びジルコニアを含む領域とを有する多相構造は、領域間の界面に沿った亀裂の偏向によって、改善された破壊靱性及び亀裂伝播に対する抵抗を提供し、それによって亀裂長さを増加させ得る。更に、少なくとも1つの第3の層103は、機械加工中に形成され得る欠陥の寸法及び頻度を低減することができ、それによって、多相の少なくとも1つの第3の層103内で機械加工中に生成されるエネルギーを吸収することによって機械的強度及び靱性を維持することができる。
【0119】
実施形態では、少なくとも1つの第3の相は、約16体積%の量の非安定化ジルコニア、部分安定化ジルコニア、又は安定化ジルコニアのうちの少なくとも1つと、残部のアルミナとを含むジルコニア強化アルミナ(ZTA)相を含む。
【0120】
いくつかの実施形態では(図26に示すように)、少なくとも1つの第3の層103は、面積(したがって体積)で50%超~約55%の量のYAG相(白色/薄灰色領域)と、アルミナ相(黒色/灰色)と、アルミナ相内に分散したジルコニア相(黒色/灰色内の白色領域)とを含み、ジルコニアは、約16体積%の3モル%イットリア部分安定化ジルコニアを約45%~50%未満の量で含む。
【0121】
少なくとも1つの第3の層103はまた、イットリア、ジルコニア、及びアルミナ粉末を組み合わせて、少なくとも1つの第1の粉末混合物の焼結特性と同様の焼結特性を有する第3の粉末混合物を形成することによって、焼結中の改善された均一性を提供する。第3の粉末混合物は、より均一な熱伝達を提供することができ、それによって、本明細書に開示される方法による焼結中に粉末混合物全体にわたってより均一な焼結特性(焼結温度及びそれぞれの層の緻密化速度など)を提供することができる。
【0122】
少なくとも1つの第3の層103と少なくとも1つの第2の層102との間の第2の界面105が、図22のa)及び図22のb)の概略図に示されている。図示のように、第2の境界面105(本明細書でより詳細に説明される)は、少なくとも1つの第3の層103と少なくとも1つの第2の層102との間の靭性を高めることができる。この改善された靭性は、亀裂伝播を偏向させるために相の間の面積を増加させることができる第2の界面105の多相特性、並びに多相の形態及び第2の界面105の非線形性によってもたらされるインターロッキング効果などのいくつかの要因によって達成され得る。少なくとも1つの第3の層103と少なくとも1つの第2の層102とを形成する粉末混合物間の混合は、いくつかの実施形態では、第3の層103と第2の層102との間に明確に線引きされた境界を有しなくてもよい第2の界面105を提供する。第2の界面105は、いくつかの実施形態では、拡散境界を含むことができ、したがって、組成、強度、破壊靱性などの特性は、第2の界面105にわたって勾配を有し得る。他の実施形態では、第2の界面105は、少なくとも1つの第2の層102と少なくとも1つの第3の層103との間に明確な非線形境界を提供する。少なくとも1つの第3の粉末混合物について本明細書に開示される様々な粉末を組み合わせる方法は、図22のb)に示されるような少なくとも1つの第2の界面105を生成することができる。実施形態では、少なくとも1つの第2及び第3の層は、接触して、第2の界面105を形成してもよく、したがって、第2及び第3の層は、隣接している。他の実施形態では、回路、加熱要素、RFコイル/アンテナ等は、特定の構成要素用途によって要求されるように、第2の層と第3の層との間に配置されてもよく、これらの特徴にかかわらず、第1の層及び第2の層は、隣接又は実質的に隣接していてもよい。
【0123】
好ましい実施形態では、組成物が、少なくとも1つの第3の層103、少なくとも1つの第1の層100、及び少なくとも1つの第2の層102について選択され、少なくとも1つの第1、第2及び第3の層の熱膨張係数(CTE)の差の絶対値は、25~1700℃の温度範囲にわたって、又は200~1400℃の温度範囲にわたって、ASTM E228-17に従って測定して、0~0.75×10-6/℃、好ましくは0~0.7×10-6/℃、好ましくは0~0.6×10-6/℃、好ましくは0~0.5×10-6/℃、好ましくは0~0.45×10-6/℃、好ましくは0~0.4×10-6/℃、好ましくは0~0.35×10-6/℃、好ましくは0~0.3×10-6/℃、好ましくは0~0.25×10-6/℃、好ましくは0~0.2×10-6/℃、好ましくは0~0.15×10-6/℃、好ましくは0~0.1×10-6/℃、好ましくは0~0.08×10-6/℃、好ましくは0~0.04×10-6/℃、好ましくは0~0.02×10-6/℃である。少なくとも1つの第1の層100と第2の層102と第3の層103との間のCTE一致は、本明細書に開示される方法の温度範囲に従って、周囲温度から約1700℃の温度範囲にわたって提供され得る。このCTEの差を提供するこれらの材料の選択は、非線形界面104及び第2の界面105上の界面応力を低減することができ、それによって、多層焼結セラミック体の層とそこから形成された構成要素との間の接着を改善する。
【0124】
一実施形態によれば、本明細書に開示されるのは、単一の多層焼結セラミック体であり、多結晶YAGを含む少なくとも1つの第1の層100と、アルミナ及びジルコニアを含む少なくとも1つの第2の層102であって、ジルコニアが安定化ジルコニア及び部分安定化ジルコニアのうちの少なくとも1つを含む、少なくとも1つの第2の層102と、YAG、アルミナ及びジルコニアからなる群から選択される少なくとも1つの多相を含む少なくとも1つの第3の層103であって、ジルコニアが非安定化ジルコニア、部分安定化ジルコニア及び安定化ジルコニアのうちの少なくとも1つを含む、少なくとも1つの第3の層103とを備え、少なくとも1つの第1、第2及び第3の層の間の熱膨張係数(CTE)の差の絶対値は、25~1700℃の温度範囲にわたって、又は200~1400℃の温度範囲にわたって、ASTM E228-17に従って測定して、0~0.75×10-6/℃、好ましくは0~0.7×10-6/℃、好ましくは0~0.6×10-6/℃、好ましくは0~0.5×10-6/℃、好ましくは0~0.45×10-6/℃、好ましくは0~0.4×10-6/℃、好ましくは0~0.35×10-6/℃、好ましくは0~0.3×10-6/℃、好ましくは0~0.25×10-6/℃、好ましくは0~0.2×10-6/℃、好ましくは0~0.15×10-6/℃、好ましくは0~0.1×10-6/℃、好ましくは0~0.08×10-6/℃、好ましくは0~0.04×10-6/℃、好ましくは0~0.02×10-6/℃であり、少なくとも1つの第1、第2及び第3の層が単一の多層焼結セラミック体を形成する。多結晶YAGを含む少なくとも1つの第1の層と、第2の層と、第3の層との間のCTEの差の絶対値のこれらの範囲は、(多結晶YAGを含む少なくとも1つの第1の層100に対して測定して)少なくとも1つの第1、第2及び第3の層の約10%以下、好ましくは9%以下、好ましくは8%以下、好ましくは6%以下、好ましくは4%以下、好ましくは3%以下、好ましくは2.5%以下、好ましくは2%以下、好ましくは1.5%以下、好ましくは1%以下、好ましくは0.5%以下、好ましくは0.25%以下の少なくとも1つの第1、第2及び第3の層のいずれかの間の百分率によるCTEの差に相当する。
【0125】
少なくとも1つの第1、第2及び第3の層は、周囲温度(又は図に示されるように少なくとも200℃)から約1700℃(又は図に示されるように少なくとも1400℃)の温度範囲にわたって開示される範囲内でCTEが一致して、単一の多層焼結セラミック体を形成する。実施形態では、少なくとも1つの第1の層100は、X線回折、SEM画像化及びImageJ分析によって決定して、少なくとも1つの第1の層100の各々が5体積%未満、好ましくは3体積%未満、より好ましくは1体積%未満の量で存在する、YAP(イットリウムアルミニウムペロブスカイト)、YAM(イットリウムアルミニウム単斜晶)、イットリア、アルミナ及びそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの結晶相を更に含んでもよい。YAG、YAP及びYAMの各結晶相は、好ましくは多結晶である。図9のa)、b)及びc)は、実施形態による単一の多層焼結セラミック体の少なくとも1つの第1及び第2の層を形成するための例示的な材料の周囲温度(又は図に示されるように少なくとも200℃)から約1700℃(又は図に示されるように少なくとも1400℃)の温度範囲にわたるCTE測定を示す。本明細書に開示される全てのCTE測定は、25~1700℃の温度範囲にわたって、又は200~1400℃の温度範囲にわたって、ASTM E228-17に従って行われた。例示的なバルク材料に対してCTE測定が行われた。図9のa)は、多結晶YAGの第1の層100(実線)と、少なくとも1つの第2の層102の総体積に対して約10体積%の安定化ジルコニア及び部分安定化ジルコニアのうちの少なくとも1つと残部(90体積%)のアルミナとを含む第2の層(ZTA、破線)102とを示す。図9のb)は、多結晶YAGの第1の層100(実線)と、少なくとも1つの第2の層の総体積に対して約20体積%のジルコニアと残部(80体積%)のアルミナとを含む第2の層(ZTA、破線)102とを示す。図9のc)は、多結晶YAGを含む少なくとも1つの第1の層100と、少なくとも1つの第2の層の総体積に対して約16体積%のジルコニア(及び残部のアルミナ)を含む少なくとも1つの第2の層102とを示す。
【0126】
一実施形態では、少なくとも1つの第2の層102の組成の範囲(約5体積%~約30体積%のジルコニア及び残部のアルミナ)は、CTE一致及び百分率範囲内で多結晶YAGを含む少なくとも1つの第1の層100とCTE一致するのに好適であり得る。したがって、アルミナと、少なくとも1つの第2の層の体積に対して約5~約30体積%、好ましくは約10~約30体積%、好ましくは約5~約20体積%、好ましくは約10~約20体積%の量の安定化ジルコニア及び部分安定化ジルコニアのうちの少なくとも1つとを含む少なくとも1つの第2の層102と、多結晶YAGを含む少なくとも1つの第1の層100とを備える多層焼結セラミック体98が本明細書に開示される。好ましい実施形態では、多結晶の少なくとも1つのYAGの第1の層100とより密接にCTEを一致させるために、少なくとも1つの第2の層102は、少なくとも1つの第2の層102の体積に対して各々約13体積%~約19体積%、好ましくは約14体積%~約18体積%、好ましくは約15体積%~約17体積%、より好ましくは約16体積%の量の部分安定化ジルコニア及び安定化ジルコニアのうちの少なくとも1つ並びに(残部のアルミナ)を含み得る。少なくとも1つの第2の層102のこれらの組成範囲は、YAGの少なくとも1つの第1の層100に対して、周囲温度(又は図に示されるように少なくとも200℃)から約1700℃(又は図に示されるように少なくとも1400℃)の温度範囲にわたって、ASTM E228-17に従って測定して、約0.4×10-6/℃以下、好ましくは0.3×10-6/℃以下、好ましくは0.25×10-6/℃以下、好ましくは約0.2×10-6/℃以下、好ましくは0.15×10-6/℃以下、好ましくは0.1×10-6/℃以下、好ましくは0.08×10-6/℃以下、好ましくは0.06×10-6/℃以下、好ましくは0.04×10-6/℃以下、好ましくは0.02×10-6/℃以下、好ましくは0.01×10-6/℃以下の量で一致するCTEを提供する。少なくとも1つの第1の層に対する百分率として、(一実施形態による少なくとも1つの第1、第2及び第3の層のいずれかの間の)百分率によるCTEの差は、(少なくとも1つの第1の層100に対して測定して)少なくとも1つの第1、第2及び第3の層の約5%以下、好ましくは4%以下、好ましくは3%以下、好ましくは2.5%以下、好ましくは2%以下、好ましくは1.5%以下、好ましくは1%以下、好ましくは0.5%以下、好ましくは0.25%以下、好ましくは0.1%以下であってもよい。少なくとも1つの第2の層のジルコニアは、本明細書に開示される方法及び安定化化合物に従って安定化されたもの及び部分安定化されたジルコニアのうちの少なくとも1つを含み得る。100~約625mmの最大寸法を有し、多結晶YAGを含む少なくとも1つの第1の層100と、約16体積%の部分安定化ジルコニアを含む少なくとも1つの第2の層102とを備える単一の多層焼結体が形成された。
【0127】
プラズマ処理チャンバ内の構成要素としての用途に適した耐腐食性及び耐浸食性を提供するために、高度に相純粋な多結晶YAG(>90体積%)を含む少なくとも1つの第1の層100を有する多結晶単一の多層セラミック体が望ましい。しかしながら、実質的に相純粋なYAGの形成は、化学量論を維持し、ひいては(37.5+/-0.1モル%の酸化イットリウム及び62.5+/-0.1モル%の酸化アルミニウムの組成の)相純粋なYAGを含む焼結セラミック体を形成するために、慎重な組成及び加工制御を必要とする。多くの場合、他の結晶相、例えばアルミナ、イットリア、YAP、YAlO;イットリウムアルミニウムペロブスカイト相)、及びYAM(YAl;イットリウムアルミニウム単斜相)及びこれらの組み合わせが存在してもよい。参考として、図10は、酸化イットリウム/酸化アルミニウムの2成分状態図を示す。横軸はイットリアとアルミナの混合割合(モル%)に対応し、縦軸は温度(摂氏)である。横軸の左側は100%アルミナに対応し、右側は100%イットリアに対応する。図10の相図は、YAG、YAP、及びYAMの酸化イットリウムアルミニウム相が形成される領域、並びにこれらの形態を生成するのに必要なモル組成及び温度の条件を示す。
【0128】
本明細書に開示される一実施形態による多層焼結セラミック体のYAGを含む少なくとも1つの第1の層100の結晶相及び画像ベースの多孔率の測定は、X線回折(XRD)、SEM撮像、及び画像処理ソフトウェア(ImageJ)の使用の組み合わせを用いて行われた。XRDは、約+/-5体積%までの結晶相同定が可能なPANanitical AerisモデルXRDを用いて行った。図13は、少なくとも1つの第1の層100を含む高相純度の多結晶YAGの形成を確認するX線回折結果を示す。XRDの検出限界内では、他の相は同定されなかった。YAGは、既知の相図によれば線状化合物として存在し、したがって、相純粋なYAGの形成は課題を提起し、慎重な組成及びプロセス制御を必要とする。そのような相純粋YAGは、2020年11月17日に出願された国際特許出願第PCT/US20/60918号に開示されており、これは参照により本明細書に組み込まれる。一実施形態によるYAGの少なくとも1つの第1の層100は、いくつかの実施形態では、過剰なアルミナ及び/又は過剰なイットリアを含んでもよく、ドーパントを実質的に含まなくてもよく、及び/又は本明細書に開示される焼結助剤を実質的に含まなくてもよい。他の実施形態では、YAGを含む第1の層は、本明細書に開示される量で焼結助剤及び/又はドーパントを含んでもよい。実施形態では、多結晶YAGの第1の層100は、ドーパントを実質的に含まず、又はドーパントを含まず、本明細書に開示される量で焼結助剤を含んでもよい。本明細書に開示される多層焼結セラミック体の少なくとも1つの第1の層100のXRDは、約95体積%以下の相純度を測定することができる。したがって、単一の多層焼結セラミック体の少なくとも1つの第1の層100は、図13のxrd結果に示される実施形態では少なくとも約95体積%のYAG相を含む。
【0129】
より高い精度で、例えば約99.8体積%以下の相純度を決定するために、当業者に知られている後方散乱検出(BSD)法を用いて、SEM画像を撮影した。BSDを用いると、YAG相は灰色に見え、酸化アルミニウム相は黒色に見え、酸化イットリウム相は白色に見え、多孔性も、存在する場合は黒色に見える。本明細書に開示される実施形態による多結晶YAG焼結セラミック体について、図11のa)に示すように、BSD法を用いて5000倍で画像を撮影して、YAG相、アルミナ相及びイットリア相、並びに存在する任意の多孔性を同定した。
【0130】
アルミナを含む黒色領域と多孔性を含む黒色領域とを区別するために、図11のb)の同じ領域に示されるように、多孔性又はアルミナのいずれかを含み得るBSD画像における黒色領域を強調するために、ImageJ処理ソフトウェアを用いてBSD画像を黒と白の閾値で処理した。ImageJは、米国国立衛生研究所(NIH)で開発されており、科学的多次元画像の画像処理のためのJavaベースでパブリックドメインの画像処理及び解析プログラムである。本明細書に開示される測定のために使用されるBSD検出器は、トポグラフィ特徴を測定する更なる能力を有し、それによって、表面多孔性などの表面トポグラフィにおける任意の偏差を強調する。BSD検出器のトポグラフィモードを使用して、図11のa)に示すように、実施例7による多結晶YAG焼結セラミック体の同じ領域の表面にわたって5000倍でトポグラフィ画像を撮影し、トポグラフィ画像を図12のa)に示す。表面多孔性を含む領域は、ImageJにおけるトポグラフィ画像を閾値処理した後、図12のb)に示されるように強調された。その後、図12のb)のトポグラフィ画像内の表面多孔性を含む面積を、図12のa)のBSD画像内のアルミナ及び/又は多孔性を含む面積から差し引き、本明細書に開示される実施形態による多結晶YAG焼結セラミック体中のアルミナ相を含む面積%、したがって体積%を得た。本明細書に開示される多層焼結セラミック体98の少なくとも1つの第1の層100は、表面上及びボディ全体の両方に多孔性及び/又は酸化アルミニウム相を有し得る。したがって、実施形態では、多層焼結セラミック体は、本明細書に開示されるプロセスにより作製されたYAGを含む一体型ボディを含み得、この一体型ボディは、酸化アルミニウム相及びボディ全体にわたって分布した多孔性を更に含む。換言すれば、表面(例えば、プラズマ対向面106)上で測定された構造は、YAGを含み、実施形態では酸化アルミニウムを更に含むバルク多層焼結セラミック体の体積内の構造を表す。複数のSEM画像化モード及びImageJ分析のこれらの分析ツールの組み合わせは、約+/-0.1体積%の信頼度で相純度の決定を提供し得る。開示された方法を用いて、実施例7による多結晶YAG焼結セラミック体は、約0.1~約0.2体積%のアルミナ相、約0.1~約0.2体積%の多孔率、及び約99.6~約99.8体積%のYAG相を含むと測定された。測定のばらつきを考慮して、多結晶YAG焼結セラミック体は、99.4~99.8体積%の量のYAG相を含むことができ、0.1~0.3体積%の量の多孔率、及び0.1~約0.3体積%の量の酸化アルミニウムを更に含むことができる。
【0131】
したがって、各々が少なくとも1つの第1の層100の90~99.9体積%、好ましくは90~99.8体積%、好ましくは90~99.7体積%、好ましくは90~99.6体積%、好ましくは93~99.8体積%、好ましくは93~99.7体積%、好ましくは93~99.6体積%の量のYAG相を含む少なくとも1つの第1の層100を有する多層焼結セラミック体は、本明細書に開示される材料及び方法を用いて形成され得る。
【0132】
多結晶YAGを含む少なくとも1つの第1の層100の結晶粒サイズを評価するために、ASTM規格E112-2010「Standard Test Method for Determining Average Grain Size」に記載されているHeyn Linear Intercept Procedureに従って、線形切片結晶粒サイズ測定を行った。(表4に記載されるように)結晶粒サイズ測定を、例示的なプラズマ対向面106で行い、25回の繰り返しにわたって1.1~6.3μmの平均結晶粒サイズを測定した。2~7.7μmの最大及び最小結晶粒サイズも、YAGを含む少なくとも1つの第1の層100の例示的なプラズマ対向面106上で測定された。単一の多層焼結セラミック体は、例えば、最大結晶粒サイズが約8μm以下、好ましくは最大結晶粒サイズが6μm以下の結晶粒サイズを有するプラズマ対向面106を有し得る。実施形態では、単一の多層焼結セラミック体は、0.4~6.5μm、好ましくは0.4~5μm、好ましくは0.4~3μm、好ましくは0.8~6.5μm、好ましくは0.8~5μm、好ましくは0.8~3μm、好ましくは1~7μm、好ましくは1~6.5μmの平均結晶粒サイズを有するプラズマ対向面106を有し得る。
【0133】
【表4】
【0134】
半導体処理チャンバ内の構成要素として使用するための耐腐食性及び耐浸食性の要件を満たすために、プラズマ対向面106にわたって及び/又は層100内に低い多孔性を有する少なくとも1つの第1の層100を含む多層焼結セラミック体が好ましい。多孔性は、腐食及び浸食の開始部位としての役割を果たすことができ、したがって、多層焼結体の少なくとも1つの第1の層100内及び/又は第1の層100のプラズマ対向面106上に多孔性、細孔又は空隙が最小限で存在するか、全く存在しないことが好ましい。本明細書に開示される少なくとも1つの第1の層は、表面上及び全体の両方に非常に小さい細孔を有し得る。好ましくは、本明細書に開示されるプロセスに従って作製された、YAG、アルミン酸マグネシウムスピネル、並びにイットリア及びジルコニアからなる群から選択されるセラミック材料の少なくとも1つの結晶相を含む少なくとも1つの第1の層100は、したがって、全体に均一に分布した細孔を有する一体型層である。換言すれば、プラズマ対向面106上で測定した細孔又は空隙又は多孔性は、少なくとも1つの第1の層100のバルク内の細孔又は空隙又は多孔性を表し得る。
【0135】
多孔率のレベルは、Phenom XL走査型電子顕微鏡から5000倍の倍率で得られたSEM画像を使用することによって、試料表面にわたって測定した。画像を分析のためにImageJソフトウェアにインポートした。ImageJは、米国国立衛生研究所(NIH)で開発されており、科学的多次元画像の画像処理のためのJavaベースでパブリックドメインの画像処理及び解析プログラムである。
【0136】
本明細書に開示されるImageJソフトウェア方法を用いて、7つのSEM画像にわたって細孔径及び多孔性を含む総面積を測定した。約2885μmの単一画像測定面積に対応する約53.7μm×53.7μmの総面積を各々有する画像を5000倍で撮影した。
【0137】
図14は、YAGを含む少なくとも1つの第1の層100の例示的なプラズマ対向面106上で測定された多孔率の結果を示し、縦軸上に全細孔面積(μm)を示し、横軸はミクロン単位の細孔サイズを表す。測定は、5000倍で撮影された7枚の画像にわたって行われ、各画像は、約2885μmの全測定面積に対して53.7μm×53.7μmの面積であった。7枚の画像のうちのいずれか1枚の画像内の多孔性を含む総面積は、約0.015~約0.3μm、好ましくは約0.015~約0.2μm、好ましくは約0.015~約0.15μmとして測定された。0.7μm以下のYAGを含む少なくとも1つの第1の層100のプラズマ対向面106上の最大細孔径が測定され、多孔性を含む最大面積は約0.3μm以下であることが分かった。少なくとも1つの第1の層100の多結晶YAGのプラズマ対向面106内で分析された7枚の画像にわたって、0.7μmより大きい細孔サイズの細孔は測定されなかった。
【0138】
図15は、mm単位の面積にわたるμm単位の多孔性(累積細孔面積)を含む累積部分面積を示し、図14で参照される(プラズマ対向面106からの)7枚の画像の所与の細孔サイズについての累積細孔面積(μm/mm単位)として表される。本明細書に開示されるSEM画像及びImageJ画像処理方法を用いて、多孔率を各画像内で測定し(μm単位)、測定された全画像面積(mm)を計算して累積細孔面積を計算する。本明細書に開示されるYAGを含む少なくとも1つの第1の層100は、本明細書に開示されるSEM及び画像処理方法を用いて測定して約2~約800μm/mm、好ましくは約2~約600μm/mm、好ましくは約2~約400μm/mm、好ましくは約2~約300μm/mmの累積細孔面積を含む。多層焼結セラミック体の少なくとも1つの第1の層100のYAGのプラズマ対向面106上で分析した7枚の画像にわたって、0.6μmより大きい細孔径の細孔は測定されなかった。したがって、各々約54μm×54μmの面積の7枚の画像にわたって、本明細書に開示される多層焼結セラミック体は、非常に低い(<0.1面積%)面積百分率で1μm未満の細孔径に対応する多孔率を含むプラズマ対向面106を有する少なくとも1つの第1の層100を有し、したがって、プラズマ処理チャンバで使用するための多層焼結セラミック体の耐腐食性及び耐浸食性のプラズマ対向面106を提供する。
【0139】
図16のa)は、多結晶YAG相を含む少なくとも1つの第1の層100のプラズマ対向面106の熱エッチングプロセス後の高密度焼結微細構造を示す5000倍のSEM画像を示す。YAGの少なくとも1つの第1の層100のプラズマ対向面106上に、細孔がほとんどない非常に微細なスケールの多孔性が示されている。ほぼ完全に緻密な微細構造が示されており、最小多孔率及び約1μm以下の細孔径を有している。一実施形態による多層焼結セラミック体は、細孔を含むプラズマ対向面106を有する多結晶YAGを含む少なくとも1つの第1の層100を含み、細孔は、5μm以下のオーダーの細孔径、約0.1~約5μm、好ましくは約0.1~約4μm、好ましくは約0.1~約3μm、好ましくは約0.1~約2μm、好ましくは約0.1~約1μmのサブミクロンスケールの細孔径を有する。この実施形態では、材料及びプロセスから形成される多層焼結セラミック体98のYAGを含む少なくとも1つの第1の層100は、本明細書に開示されるSEM及び画像処理方法を用いて測定して0.1~5μm、好ましくは0.1~4μm、好ましくは0.1~3μm、好ましくは0.1~2μm、及び0.1~1μmの最大サイズを有する細孔を含み得る。54μm×54μmのプラズマ対向面106にわたって、約22の細孔が計数された。
【0140】
図16のb)は、縦軸上の図15について測定された7つのSEM画像の各々についての細孔又は多孔率(表面積の%)を含む全表面積の合計を示し、横軸は、ミクロン単位の所与の%細孔面積についての対応する細孔径を表す。所与の画像内で、多孔性を含む総面積及び総画像測定面積を使用して、%細孔面積を計算した。図16に示されるように、7つのSEM画像にわたる測定値は、YAGを含むプラズマ対向面106を有する少なくとも1つの第1の層100に対応し、YAGは、SEM画像から、並びに本明細書に開示されるImageJソフトウェア及び方法を用いて測定して、0.0005~2%、好ましくは0.0005~1%、好ましくは0.0005~0.5%、好ましくは0.0005~0.05%、好ましくは0.0005~0.03%、好ましくは0.0005~0.005%、好ましくは0.0005~0.003%、好ましくは0.0005~0.001%、好ましくは0.005~2%、好ましくは0.05~2%、好ましくは0.5~2%、好ましくは0.005~2%、好ましくは0.005~1%、好ましくは0.05~2%、好ましくは0.05~1%、好ましくは0.5~2%の量の総面積のパーセントでの多孔率を含む。したがって、各々約54μm×54μmの面積の画像にわたって、本明細書に開示される多層焼結セラミック体は、非常に低い(総面積で<1%)百分率の多孔率を含むプラズマ対向面106を含み、したがって、プラズマ処理チャンバで使用するための多層焼結セラミック体98の耐腐食性及び耐浸食性表面を提供する。
【0141】
多層焼結体の少なくとも1つの第1の層100の小さな細孔/空隙最大サイズ及び最小多孔率%面積は、半導体反応器での使用に必要とされる粒子生成並びに腐食及び浸食の低減を可能にし得る。この最小多孔率は高密度に対応し、これはまた、半導体エッチング及び堆積用途における構成要素としてのそれらの使用を可能にする腐食性及び浸食性に対する耐性を提供する。
【0142】
多層体の密度測定は、層の密度の差のために困難であることが判明している。密度測定は、多層焼結セラミック体(実施例4に開示される)に対して、多層焼結体の全厚から切断された試料をその第1及び第2の層に区分し、個々の層の密度測定を行うことにより行った。測定は、ASTM B962-17のアルキメデス浸漬法に従って行われ、4.55~4.57g/cc、好ましくは約4.56g/ccの密度が、多結晶YAGの少なくとも1つの第1の層100について測定された。報告された密度値は5回の測定にわたる平均値であり、測定値における標準偏差(既知の標準を使用)は、約0.002であると測定された。バルクYAGの市販の単結晶試料を、本明細書に開示される方法を用いて密度について測定した。5回の測定にわたって4.56g/ccのアルキメデス密度が得られ、この値を、本明細書で使用されるYAGの理論密度とする。したがって、一実施形態による単一の多層焼結セラミック体のYAGを含む少なくとも1つの第1の層100は、YAGの理論密度の98.5~100%、好ましくは99~100%、好ましくは99.5~100%、好ましくは99.7~100%、好ましくは約100%の密度を有する。約16体積%の安定化ジルコニア及び部分安定化ジルコニアのうちの少なくとも1つ(及び残部のアルミナ)を含む少なくとも1つの第2の層102の密度を、ASTM B962-17のアルキメデス浸漬法に従って測定し、約4.32g/ccの密度が計算された。アルミナと、約16体積%の安定化ジルコニア及び部分安定化ジルコニアのうちの少なくとも1つとを含む少なくとも1つの第2の層の理論密度を計算するために、当該技術分野で知られている体積混合則を使用し、4.31~4.33g/cc、好ましくは約4.32g/ccの密度が測定され、少なくとも1つの第2の層102の理論密度とした。したがって、(約16体積%のジルコニア及び残部のアルミナを含む)多層焼結セラミック体の少なくとも1つの第2の層102は、理論密度の98~100%、好ましくは99~100%、好ましくは99.5~100%、好ましくは理論密度の約100%の理論密度パーセントを有する。この実施形態に従って開示される単一の多層焼結セラミック体は少なくとも1つの第1及び第2の層を備え、各々は、単一の多層焼結セラミック体の理論密度の98%超、好ましくは98~100%、好ましくは99~100%、好ましくは99.5~100%、好ましくは約100%である理論密度(相対密度、RDとも表される)%を有する。
【0143】
所与の材料の相対密度(RD)は、以下の式に示されるように、同じ材料の報告された理論密度に対する試料の測定された密度の比として定義される。体積多孔率(Vp)は密度測定値から以下のように計算される:
【0144】
【数1】
式中、ρ試料は、ASTM B962-17に従って測定された(アルキメデス)密度であり、ρ理論は、本明細書に開示される報告された理論密度であり、RDは相対(分率)密度である。この計算を使用して、0.04~2%、好ましくは0.04~1%、好ましくは0.04~0.8%、好ましくは0.04~0.6%、好ましくは0.04~0.5%、好ましくは0.04~0.4%のパーセントの体積多孔率(Vp)レベルが、本明細書に開示される実施例4及び実施形態による多層焼結セラミック体のYAGを含む少なくとも1つの第1の層並びにアルミナと約16体積%の部分安定化ジルコニア及び部分安定化ジルコニアのうちの少なくとも1つを含む少なくとも1つの第2の層の各々について測定された密度値から計算され得る。
【0145】
多結晶YAGを含む少なくとも1つの第1の層の非常に高い密度(例えば、実施例4参照)は、少なくとも1つのプラズマ対向面106を非常に低い表面粗さSa及び低い山対谷Szに研磨することを可能にする。研磨は、当業者に知られている方法を使用して行われ、多結晶YAGを含む少なくとも1つの第1の層100のプラズマ対向面106は、本明細書に開示されるISO規格25178-2-2012による測定方法を用いて、8nmの平均表面粗さSa、及び0.14μmの平均山対谷Szを有すると測定された。測定値を10回の繰り返しにわたって平均した。多結晶YAGを含む少なくとも1つの第1の層100のプラズマ対向面106は、10nmの最大表面粗さSa、及び0.21μmの最大山対谷Szを有すると測定された。多結晶YAGを含む少なくとも1つの第1の層100のプラズマ対向面106は、5nmの最小表面粗さSa、及び0.057μmの最小山対谷Szを有すると測定された。YAGを含む高密度の少なくとも1つの第1の層の開示された表面特性は、腐食及び浸食に対する向上した耐性を提供し、それによって、半導体プラズマ処理チャンバ内の構成要素としての使用中の粒子生成の低減を提供し得る。
【0146】
例えばテープキャスト及び噴霧乾燥層を含む、当該技術分野において一般的な積層体は、典型的には、本明細書に開示されるものよりも低い密度を有するプラズマ処理に曝露される積層体又は層を有し、したがって、本明細書に開示されるような非常に低い表面粗さまで研磨されなくてもよい。したがって、これらの積層体又は層は、半導体処理中に使用される過酷なプラズマの腐食及び浸食作用に対する十分な耐性を提供しない場合があり、使用中にプラズマチャンバ内への粒子の放出をもたらす。
【0147】
高密度の多結晶YAGの少なくとも1つの第1の層の高密度は、少なくとも1つの第1の層のプラズマ対向面106の高い硬度値を可能にし得、これは、典型的なプラズマプロセス中に使用されるイオン衝撃の浸食効果に対する耐性を提供することができる。浸食又はスポーリングは、Arなどの不活性プラズマガスの使用による構成要素又は層表面のイオン衝撃から生じ得る。高い硬度値を有するこれらの材料は、イオン衝撃及びそれによる浸食に対するより大きな耐性を提供するそれらの硬度値の向上に起因して、構成要素のための材料として使用するために好ましい場合がある。したがって、ASTM規格C1327「Standard Test Method for Vickers Indentation Hardness of Advanced Ceramics」に従って、多結晶YAGを含む少なくとも1つの第1の層100の例示的なプラズマ対向面106に対してビッカース硬度測定を行った。全ての硬度測定に使用した試験装置は、Wilson Micro Hardness Tester Model VH1202であった。本明細書に開示される多層焼結セラミック体98の少なくとも1つの第1の層100のプラズマ対向面106について、少なくとも1200HV、好ましくは少なくとも1400HV、好ましくは少なくとも1800HV、好ましくは少なくとも2000HV、1300~1600HV、1300~1500HV、1300~1450HV、1300~1400HV、1400~1600HV、1450~1600HV、1450~1550HVの硬度値が測定された。当該技術分野で知られているビッカース硬度法を用いて行った測定値を、GPaのSI単位に変換した。12.75~15.69GPa、12.75~14.71GPa、12.75~14.22GPa、12.75~13.73GPa、13.73~15.69GPa、14.22~15.69GPa、好ましくは14.22~15.20GPaの硬度値が測定された。これらの高い硬度値は、半導体エッチングプロセス中のイオン衝撃に対する耐性の向上及び使用中の浸食の低減に寄与し得、多層焼結セラミック体が微細スケール特徴を有する多層焼結セラミック構成要素に機械加工されるときの構成要素の寿命の延長を提供する。表5は、本明細書に開示される多層焼結セラミック体の硬度値を列挙する。試料A、C及びBについては2kgfロードセル/適用荷重を、試料Dについては0.025kgf荷重を用いて、8回の試験反復にわたって平均を報告する。
【0148】
【表5】
【0149】
一実施形態では、本明細書に開示される焼結セラミック体は、ASTM規格C1327に従って測定される0.2kgfの適用荷重を用いた8回の試験反復から計算される13.0~16.0GPaの平均硬度を有する。別の実施形態では、本明細書に開示される焼結セラミック体は、ASTM規格C1327に従って測定される0.2kgfの適用荷重を用いた8回の試験反復から計算される約13.5~15GPaの平均硬度を有する。他の実施形態では、焼結セラミック体は、0.025kgfの適用荷重を用いた8回の試験反復から計算される約13.8~15.8GPaの平均硬度を有し得る。
【0150】
少なくとも1つの第1の層のプラズマ対向面106の表面粗さは、半導体処理チャンバにおける性能に影響を与え得る。表面粗さの測定は、クラス1のクリーンルームの環境条件下で、Keyenceの3Dレーザー走査型共焦点デジタル顕微鏡モデルVK-X250Xを用いて行なった。顕微鏡は2.8Hzの固有振動数を有するTMC tableTop CSP卓上型パッシブ除振台の上に置く。この非接触システムは、レーザービーム光と光学センサを使用して、表面を反射光の強度を介して解析する。Sa及びSzの表面粗さの特徴は、基礎となる技術分野において公知のパラメータであり、例えば、ISO標準25178-2-2012に記載されている。ISO規格の第4.17節には表面粗さSaが記載されており、第4.1.6節にはSzが記載されており、第4.3.2節にはSdrが記載されている。ISO25178表面テクスチャ(Areal Roughness測定)は表面粗さの分析に関連する国際標準集であり、この顕微鏡はそれに準拠している。Saは、多層焼結セラミック体の表面のユーザ定義領域(スケール制限表面の算術平均高さ)にわたって算出された平均粗さ値である。Szは、多層焼結セラミック体の表面のユーザ定義領域にわたる最大山から谷までの距離(スケール制限表面の最大高さ、山から谷まで)を表す。Sdrは、「展開界面面積比」として定義される計算数値であり、完全に平坦な表面に対する実際の表面積の増加分の比例表現である。平坦な表面には0のSdrが割り当てられ、その値は表面の勾配と共に増加する。より大きな数値は、表面積のより大きな増加と一致する。これにより、試料の表面積増加の程度の数値比較が可能になる。それは、平面領域と比較して、テクスチャ又は表面特徴から生じる追加の表面積を表す。
【0151】
共焦点顕微鏡を使用して50倍の倍率で試料の表面をレーザースキャンして、試料の詳細な画像をキャプチャした。Sa(算術平均高さ)、Sz(最大高さ)、Ra(ライン粗さ)及びSdr(展開界面面積)のパラメータは、多層焼結セラミック体の少なくとも1つの層100の研磨面(プラズマ対向面106)の選択された領域で測定された。7つの区画化されたブロックのプロファイルで粗さを得た。測定サンプリング長を表すラムダカイ(λ)を、ISO規格4288:Geometrical Product Specifications(GPS)--Surface texture:Profile method--Rules and procedures for the assessment of surface textureに従って、ラインの読取りが7つのうち5つの中央ブロックからの測定値に制限されるように調整した。表面積は、測定のために試料の研磨された表面内で選択された。領域は、典型的な試料表面を最も代表するように選択し、Sa、Sz及びSdrを計算するために使用した。
【0152】
少なくとも1つの第1の層のプラズマ対向面106がYAGを含む一実施形態では、表面粗さ測定は、ISO規格25178-2-2012に従って行われ、表面にわたって0.0005~2μm、好ましくは0.0005~1.5μm、好ましくは0.0005~1μm、好ましくは0.0005~0.75μm、好ましくは0.0005~0.5μm、好ましくは0.0005~0.25μm、好ましくは0.0005~0.125μm、好ましくは0.0005~0.075μm、好ましくは0.0005~0.050μm、好ましくは0.0005~0.025μm、好ましくは0.0005~0.020μm、好ましくは0.0005~0.015μm、好ましくは0.0005~0.010μm、好ましくは0.001~0.030μm、好ましくは0.001~0.020μm、好ましくは0.001~0.010μmのSa値が測定された。以下の表6は、本明細書に開示される実施形態による、YAGを含むプラズマ対向面106を含む少なくとも1つの第1の層100のSa、Sz、及びSdr値を記載する。
【0153】
【表6】
【0154】
したがって、開示される一実施形態による(及び表6に列挙される)多層焼結セラミック体のYAGを含む少なくとも1つの第1の層100は、ISO規格25178-2-2012に従って測定して、0.0005~2μm、好ましくは0.0005~1.5μm、好ましくは0.0005~1μm、好ましくは0.0005~0.75μm、好ましくは0.0005~0.5μm、好ましくは0.0005~0.25μm、好ましくは0.0005~0.125μm、好ましくは0.0005~0.075μm、好ましくは0.0005~0.050μm、好ましくは0.0005~0.025μm、好ましくは0.0005~0.020μm、好ましくは0.0005~0.015μm、好ましくは0.0005~0.010μm、好ましくは0.001~0.030μm、好ましくは0.001~0.020μm、好ましくは0.001~0.010μmの表面粗さSaを有するプラズマ対向面106を有し得る。
【0155】
表6によれば、本明細書に開示される一実施形態による多層焼結セラミック体のYAGを含む少なくとも1つの第1の層100は、ISO規格25178-2-2012に従って測定して、0.3~5μm、好ましくは0.3~4μm、好ましくは0.3~3μm、好ましくは0.3~2μm、好ましくは0.3~1μm、好ましくは0.65~5μm、好ましくは1~5μm、好ましくは2~5μm、好ましくは0.35~3μm、好ましくは0.5~1μmの山から谷までのSzを有するプラズマ対向面106を有し得る。
【0156】
表6によれば、本明細書に開示される一実施形態による多層焼結セラミック体のYAGを含む少なくとも1つの第1の層100は、ISO規格25178-2-2012に従って測定して、5×10-5~550×10-5、好ましくは30×10-5~400×10-5、好ましくは30×10-5~200×10-5、好ましくは40×10-5~100×10-5の展開界面面積Sdrを有するプラズマ対向面106を有し得る。
【0157】
ハロゲン系プラズマ用途における性能を評価するために、以下に記載されるように、YAGを含む少なくとも1つの第1の層100を備える一実施形態に従って調製された焼結セラミック体に対してエッチングが行われた。
【0158】
エッチング性能を評価するために、6mm×6mm×2mmの寸法のYAGの第1の層を含むプラズマ対向面を有する研磨されたセラミック試料を、シリコーン系ヒートシンク化合物を使用してc面サファイアウェハ上に取り付けた。各部分の領域は、5mm×5mmの正方形のサファイアセラミックを試料表面に接合することによって、エッチングプロセスへの曝露からブロックした。
【0159】
ドライエッチングプロセスは、業界の標準装置であるPlasma-Therm Versaline DESC PDC Deep Silicon Etchを用いて行なった。エッチングは、2工程プロセスを用いて合計6時間の持続時間で完了した。エッチング方法は、10ミリトルの圧力、600ボルトのバイアス、及び2000ワットのICP出力を用いて行なった。エッチング方法は、90標準立方センチメートル/分(sccm)のCF流量、30標準立方センチメートル/分(sccm)の酸素流量、及び20標準立方センチメートル/分(sccm)のアルゴン流量を有する第1のエッチング工程と、100標準立方センチメートル/分(sccm)の酸素流量及び20標準立方センチメートル/分(sccm)のアルゴン流量を有する第2のエッチング工程とを用いて行ない、第1及び第2のエッチング工程は、6時間の合計持続時間にわたって各々300秒間繰り返す。試料性能を評価するためにここで使用されるエッチング条件は、性能を区別するために、開示された材料を極端なエッチング条件に供するように選択された。エッチング手順が完了すると、Sa、Sz及びSdrの表面粗さパラメータが、本明細書に開示される方法を用いて測定された。表7は、YAGを含む少なくとも1つの第1の層100のプラズマ対向面106を有する種々の試料に対するエッチング(本明細書に開示されるような2工程プロセスを使用する)後の結果を記載する。
【0160】
【表7】
【0161】
YAGを含む少なくとも1つの第1の層100の例示的なプラズマ対向面106は、過剰のアルミナ(試料311及び322)、ジルコニアドーピング(試料298)、化学量論的YAG(試料454及び223)、並びに低下した相対密度(RD)、試料454-1を用いて作製された。表7に記載されるように、プロセス条件(プロセス)は、本明細書に開示される方法に従ってそれぞれの試料の各々を作製するために使用される温度T(℃)、圧力P(MPa)、及び時間t(分)として記載される。適用可能な場合、アニーリングは空気中1400℃で8時間行った。
【0162】
一実施形態では、本開示は、YAGを含む少なくとも1つの第1の層100を有する多層焼結セラミック体及び/又はそれから作製された構成要素であって、エッチング又は堆積プロセスの前に、ISO規格25178-2-2012の第4.1.7節に従って、エッチングされていない領域において、15nm未満、より好ましくは13nm未満、より好ましくは10nm未満、より好ましくは8nm未満、より好ましくは5nm未満の算術平均高さSa、表面粗さを提供し、特定の値を超えないプラズマ対向面106を有する、多層焼結セラミック体及び/又はそれから作製された構成要素に関する。
【0163】
一実施形態では、本開示は、プラズマ対向面106を有する多結晶YAGを含む少なくとも1つの第1の層100を有する多層焼結セラミック体及び/又はそれから作製された構成要素であって、エッチング又は堆積プロセスの前に、ISO規格25178-2-2012に従って、5.0μm未満、より好ましくは4.0μm未満、最も好ましくは3.5μm未満、より好ましくは2.5μm未満、より好ましくは2μm未満、より好ましくは1.5μm未満の最大高さSzを提供し、特定の値を超えない表面を有する、多層焼結セラミック体及び/又はそれから作製された構成要素に関する。
【0164】
一実施形態では、本開示は、プラズマ対向面106を有する多結晶YAGを含む少なくとも1つの第1の層100を有する多層焼結セラミック体及び/又はそれから作製された構成要素であって、エッチング又は堆積プロセス前に、ISO規格25178-2-2012の第4.1.7節に従って、1500×10-5未満、より好ましくは1200×10-5未満、より好ましくは1000×10-5未満、より好ましくは800×10-5未満、より好ましくは600×10-5未満、より好ましくは400×10-5未満の展開界面面積Sdr、表面粗さを提供し、特定の値を超えない表面を有する、多層焼結セラミック体及び/又はそれから作製された構成要素に関する。
【0165】
一実施形態では、本開示は、プラズマ対向面106を有する多結晶YAGを含む少なくとも1つの第1の層を有する多層焼結セラミック体及び/又はそれから作製された構成要素であって、本明細書に開示されるエッチング又は堆積プロセス前に、ISO規格25178-2-2012の第4.1.7節に従って、0.0005~2μm、好ましくは0.0005~1.5μm、好ましくは0.0005~1μm、好ましくは0.0005~0.75μm、好ましくは0.0005~0.5μm、好ましくは0.0005~0.25μm、好ましくは0.0005~0.125μm、好ましくは0.0005~0.075μm、好ましくは0.0005~0.050μm、好ましくは0.0005~0.025μm、好ましくは0.0005~0.020μm、好ましくは0.0005~0.015μm、好ましくは0.0005~0.010μm、好ましくは0.001~0.030μm、好ましくは0.001~0.020μm、好ましくは0.001~0.010μm、好ましくは0.008μmの算術平均高さ、表面粗さを提供し、特定の値を超えない表面を有する、多層焼結セラミック体及び/又はそれから作製された構成要素に関する。
【0166】
一実施形態では、本開示は、プラズマ対向面106を有する多結晶YAGを含む少なくとも1つの第1の層を有する多層焼結セラミック体及び/又はそれから作製された構成要素であって、本明細書に開示されるエッチング又は堆積プロセス後に、ISO規格25178-2-2012の第4.1.7節に従って、3.8μm未満、より好ましくは2.8μm未満、最も好ましくは2.5μm未満、より好ましくは0.1~2.5μm、より好ましくは0.1~1.5μm、より好ましくは0.1~1.0μm、より好ましくは0.1~0.5μm、より好ましくは約0.1~0.3μmの最大高さSz、表面粗さを提供し、特定の値を超えない表面を有する、多層焼結セラミック体及び/又はそれから作製された構成要素に関する。
【0167】
一実施形態では、本開示は、プラズマ対向面106を有する多結晶YAGを含む少なくとも1つの第1の層を有する多層焼結セラミック体及び/又はそれから作製された構成要素であって、本明細書に開示されるエッチング又は堆積プロセス後に、ISO規格25178-2-2012の第4.1.7節に従って、3000×10-5未満、より好ましくは2500×10-5未満、より好ましくは2000×10-5未満、より好ましくは1500×10-5未満、より好ましくは1000×10-5未満、より好ましくは800×10-5未満の展開界面面積Sdr、表面粗さを提供し、特定の値を超えない表面を有する、多層焼結セラミック体及び/又はそれから作製された構成要素に関する。本明細書に開示される一実施形態による上記の多層焼結セラミック体を使用することによって、エッチング及び堆積プロセスにおける構成要素としての連続的な長期使用を可能にする有意な耐腐食性及び耐浸食性材料が提供される。この耐腐食性及び耐浸食性材料は、本明細書に開示される改善された表面特性によって粒子生成を最小限に抑え、使用中の改善された性能及び処理中の半導体基板の低減された汚染を提供する。
【0168】
本明細書に開示され、非常に高い純度を有する少なくとも1つの第1の層100を作製するために使用される出発粉末及び粉末混合物は、半導体エッチング及び堆積用途における構成要素としての使用を可能にする耐腐食性及び耐浸食性を提供することができる。この高純度は、化学的に不活性なプラズマ対向面106(本明細書で使用される不活性という用語は、化学的に不活性であることを意味することが意図されている)を提供し、これは、少なくとも1つの第1の層100のプラズマ対向面106がハロゲン系ガス種によって粗面化することを防止することができ、そうでなければ、純度がより低い粉末及び粉末混合物から作製された材料を化学的に攻撃及びエッチングするか、又はイオン衝撃によって浸食され得る。少なくとも1つの第1の層100内の不純物及び汚染物質は、腐食及び浸食の開始部位としての役割を果たし、したがって、多層耐腐食性焼結セラミック体の少なくとも1つの第1の層100内で、特にプラズマ対向面106上で、高純度(及び汚染物質のppmで表される対応する低不純物含有量)が好ましい。表9は、実質的に相純粋な多結晶YAGを含む少なくとも1つの第1の層100を形成するために焼結される、一実施形態による例示的な粉末混合物の不純物を記載する。
【0169】
本明細書の開示によれば、90体積%超の量のイットリウムアルミニウムガーネット(YAG)相を含む少なくとも1つの第1の層のプラズマ対向面106を有する多層焼結セラミック体は、本明細書に開示される粉末混合物の粒径分布、純度及び/又は表面積の組み合わされた特性によって、焼結工程中にin situ反応焼結によって形成され得る。実施形態では、粉末混合物は、イットリア及びアルミナの結晶粉末を含む。他の実施形態では、イットリア及びアルミナの結晶性粉末に加えて、粉末混合物は焼成され得、約10体積%未満のYAG、好ましくは8体積%未満のYAG、好ましくは5体積%未満のYAGを含む。他の実施形態では、本明細書に開示されるのは、YAG相(イットリア及びアルミナの結晶性粉末を含む)を含まないか、又は実質的に含まない粉末混合物である。他の実施形態では、粉末混合物は、2m/g超の比表面積を有することが好ましい場合がある。他の実施形態では、粉末混合物は、本明細書に開示されるin situ反応相焼結プロセスによってYAGを含む多層焼結セラミック体の少なくとも1つの第1の層を形成するために、約2m/g以上の比表面積を有するYAG相を含まないことが好ましい場合がある。本明細書に開示される全ての純度測定値は、特定の元素の報告限界を超えて測定されたものであり、Agilent社の7900ICP-MSモデルG8403のICP-MSを用いて行なった。液体試料は、微細なエアロゾルとしてICP-MSに導入され、これはプラズマ放電中でイオン化され、その後、当業者に公知の四重極質量分析器を用いて分離される。より軽い元素の存在を同定するために本明細書に開示されるICP-MS法を使用する検出限界は、より重い元素の報告限界よりも高い。換言すれば、より重い元素、例えばSc以上の元素は、より軽い元素、例えばLiからAl(例えば0.7ppm程度の精度で検出される)よりも高い精度、例えば0.06ppm程度の低い精度で検出される。したがって、LiからAlまでのようなより軽い元素を含むこれらの粉末の不純物含有量は、約0.7ppm以上に決定することができ、Sc(スカンジウム)からU(ウラン)までのより重い元素の不純物含有量は、約0.06ppm以上に決定することができる。本明細書に開示されるICPMS法を用いると、シリカは約14ppm程度の低い量で検出され得るが、K(カリウム)及びCa(カルシウム)は1.4ppm以上の量で同定され得る。鉄は、0.14ppm以上という低い量の精度で検出することができる。本明細書に開示される総不純物含有量は、シリカを含まない。
【0170】
多結晶YAGを含む少なくとも1つの第1の層100のプラズマ対向面106は、ICPMS法を用いて測定して、多結晶YAGを含む少なくとも1つの第1の層の総質量に対して、100ppm未満、好ましくは75ppm未満、50ppm未満、好ましくは25ppm未満、好ましくは15ppm未満、好ましくは10ppm未満、好ましくは8ppm未満、好ましくは5ppm未満、好ましくは5~30ppm、好ましくは5~20ppmの総不純物含有量を有し得る。本明細書に開示される総不純物含有量は、シリカの形態のSiを含まない。
【0171】
より軽い元素の存在を同定するために本明細書に開示されるICP-MS法を使用する検出限界は、より重い元素の報告限界よりも高い。換言すれば、より重い元素、例えばSc以上の元素は、より軽い元素、例えばLiからAl(例えば0.7ppm程度の精度で検出される)よりも高い精度、例えば0.06ppm程度の低い精度で検出される。したがって、LiからAlまでのようなより軽い元素を含むこれらの粉末の不純物含有量は、約0.7ppm以上に決定することができ、Sc(スカンジウム)からU(ウラン)までのより重い元素の不純物含有量は、約0.06ppm以上に決定することができる。本明細書に開示されるICPMS法を用いると、シリカは約14ppm程度の低い量で検出され得るが、K(カリウム)及びCa(カルシウム)は1.4ppm以上の量で同定され得る。鉄は、0.14ppmという低い量の精度で検出することができる。
【0172】
SiO、MgO、CaO、LiO及びLiFなどの焼結助剤は、緻密化を促進することが知られており、特にLiFは、粒子成長を促進し、それによってYAG及びスピネルの結晶粒サイズを増大させるために使用されることが知られている。しかしながら、これらの焼結助剤は、エッチング及び堆積用途における耐食性、強度及び性能を低下させる場合がある。したがって、実施形態では、本明細書に開示される多層焼結セラミック体の少なくとも1つの第1の層100は、粉末混合物の総質量に対して、各々約2ppm以下のカルシア、マグネシア、リチア及び/又はフッ化リチウム含有量を有する少なくとも1つの粉末混合物から形成されてもよい。高純度の粉末混合物(これは焼成され得、その後、本明細書に開示される方法を用いて焼結され得る)は、それによって、多層焼結セラミック体に移される。本明細書に開示される実施形態では、例えば、多層焼結セラミック体は、YAG、アルミン酸マグネシウムスピネル及びイットリア及びジルコニアからなる群から選択されるセラミック材料の少なくとも1つの結晶相を含む少なくとも1つの第1の層100を有し得、少なくとも1つの第1の層100の各々は、少なくとも1つの第1の層100の質量に対して、各々14~100ppm、好ましくは14~75ppm、好ましくは14~50ppm、好ましくは14~25ppm、好ましくは14~20ppm、好ましくは約14ppmの量のシリカを含む。他の実施形態では、少なくとも1つの第1の層100の各々は、マグネシア、リチア/フッ化リチウム及び/又はカルシアのうちの少なくとも1つを、少なくとも1つの第1の層100の質量に対して、各々約2~100ppm、好ましくは約2~75ppm、好ましくは約2~50ppm、好ましくは約2~25ppm、好ましくは約2~20ppm、好ましくは約2~10ppmの量で含み得る。YAG、アルミン酸マグネシウムスピネル、並びにジルコニア及びアルミナからなる群から選択されるセラミック材料の少なくとも1つの結晶相を含む少なくとも1つの第1の層100において強度を高め、化学的不活性を提供するために、少なくとも1つの第1の層100の各々は、少なくとも1つの第1の層100の質量に対して、各々約2ppmを超える量のLi又はLiFを含まないことが好ましい。したがって、更なる実施形態では、YAG、アルミン酸マグネシウムスピネル、並びにジルコニア及びアルミナからなる群から選択されるセラミック材料の少なくとも1つの結晶相を含む少なくとも1つの第1の層100の各々は、少なくとも1つの第1の層100の総質量に対して、各々約2~100ppm、好ましくは2~75ppm、好ましくは2~50ppm、好ましくは2~25ppm、好ましくは2~20ppmの量でフッ化リチウム、カルシア及び/又はマグナシアを含み得る。
【0173】
好ましい実施形態では、多結晶YAGを含む少なくとも1つの第1の層は、本明細書に開示されるICPMS法を用いて測定して100%純度を有する材料に対して、各々99.99%以上、好ましくは99.995%以上の純度を有し得る。
【0174】
実施形態では、YAG、アルミン酸マグネシウムスピネル、及びイットリア及びジルコニアからなる群から選択される少なくとも1つの多結晶セラミック材料を含む少なくとも1つの第1の層100の各々は、少なくとも1つの第1の層の総質量に対して、各々14~100ppm、好ましくは14~75ppm、好ましくは14~50ppm、好ましくは14~25ppm、好ましくは14~20ppm、好ましくは約14ppmの量でシリカの形態のSiを含み得る。
【0175】
本明細書に開示される多層焼結セラミック体の実施形態では、YAG、アルミン酸マグネシウムスピネル、並びにイットリア及びジルコニアからなる群から選択される少なくとも1つの多結晶セラミック材料を含む少なくとも1つの第1の層100の各々は、例えば、Sc、La、Er、Ce、Cr、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Tm、Yb、及びLuからなる群から選択される希土類酸化物、並びにそれらの酸化物及び組み合わせの必要に応じてのドーパントを、>0.002重量%、好ましくは>0.0035重量%、好ましくは>0.005重量%、好ましくは>0.0075重量%の量で用いて作製することができ、これを工程a、b又はcで出発粉末又は粉末混合物に添加することができる。
【0176】
本明細書に開示される多層焼結セラミック体の実施形態の実施形態では、前述のセラミック焼結体の少なくとも1つの第1の層100は、例えば、Sc、La、Er、Ce、Cr、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Tm、Yb、及びLuからなる群から選択される希土類酸化物、並びにそれらの酸化物及び組み合わせの必要に応じてのドーパントを、<0.05重量%、好ましくは<0.03重量%、好ましくは<0.01重量%、好ましくは0.002~0.02重量%の量で用いて作製することができ、これらは、工程a、b又はcで出発粉末又は粉末混合物に添加することができる。
【0177】
本明細書に開示される多層焼結セラミック体の実施形態では、YAG、アルミン酸マグネシウムスピネル、並びにイットリア及びジルコニアからなる群から選択される少なくとも1つの多結晶セラミック材料を含む少なくとも1つの第1の層100は、前述のドーパントなしで作製されてもよい。特に、化学的不活性、並びに高強度と組み合わせた腐食及び浸食に対する耐性を必要とする半導体チャンバ用途では、多層焼結セラミック体のYAG、アルミン酸マグネシウムスピネル、並びにイットリア及びジルコニアからなる群から選択される少なくとも1つの多結晶セラミック材料を含む少なくとも1つの第1の層100の各々は、ドーパントを含まないか、又は実質的に含まないことが好ましい場合がある。したがって、特定の実施形態では、YAG、アルミン酸マグネシウムスピネル、及びイットリア及びジルコニアからなる群から選択される少なくとも1つの多結晶セラミック材料を含む少なくとも1つの第1の層100を有する多層焼結セラミック体は、前述のドーパントを実質的に含まないか、又は前述のドーパントの少なくとも1つ若しくはすべてを含まない。
【0178】
いくつかの実施形態によれば、多結晶YAG層100内の過剰なイットリア及び/又はアルミナは、少なくとも1つの第1の層に残留し得る程度まで、ドーパント又は焼結助剤とはみなされない。開示される少なくとも1つの第1の層のプラズマ対向面106の高純度及びそれに対応する低不純物は、半導体反応器での使用に必要とされる粒子生成並びに腐食及び浸食の低減を可能にし得る。多結晶YAGを含む少なくとも1つの第1の層100について、例えば99.99%以上、好ましくは99.995%以上、好ましくは99.999%以上、好ましくは99.9995%以上、好ましくは約99.9999%の純度を測定することができる。
【0179】
多結晶YAGの少なくとも1つの第1の層100及び少なくとも1つの第2の層102の誘電損失/正接デルタを以下の表8に列挙する。多層焼結セラミック体を含むそれぞれの層の高純度は、YAGを含む少なくとも1つの第1の層について、1MHzで5.5×10-3以下、1GHzで1×10-4未満の低い損失正接を提供し、アルミナ及び約16体積%の部分安定化ジルコニアを含む少なくとも1つの第2の層について0.0007未満の低い損失正接を提供する。測定は、各材料の例示的な固体ボディについて行った。
【0180】
【表8】
【0181】
しかしながら、これらの耐腐食性及び耐浸食性材料は、半導体エッチング及び堆積チャンバへの適用に必要とされる高密度に焼結するという課題を提起する。したがって、典型的には圧力支援焼結法、好ましい実施形態では圧力及び電流支援焼結法が必要とされる。
【0182】
別の実施形態によれば、本明細書に開示されるのは、単一の多層焼結セラミック体であり、アルミン酸マグネシウムスピネルを含む少なくとも1つの第1の層100と、アルミナ及びジルコニアを含む少なくとも1つの第2の層102であって、ジルコニアが安定化ジルコニア及び部分安定化ジルコニアのうちの少なくとも1つを含む、少なくとも1つの第2の層102と、少なくともYAG、アルミナ及びジルコニアを含む多相層を含む少なくとも1つの第3の層103であって、ジルコニアが非安定化ジルコニア、安定化ジルコニア及び部分安定化ジルコニアのうちの少なくとも1つを含む、少なくとも1つの第3の層103とを備え、少なくとも1つの第1、第2及び第3の層の間の熱膨張係数(CTE)の差の絶対値は、25~1700℃の温度範囲にわたって、又は200~1400℃の温度範囲にわたって、ASTM E228-17に従って測定して、0~0.75×10-6/℃、好ましくは0~0.7×10-6/℃、好ましくは0~0.6×10-6/℃、好ましくは0~0.5×10-6/℃、好ましくは0~0.45×10-6/℃、好ましくは0~0.4×10-6/℃、好ましくは0~0.35×10-6/℃、好ましくは0~0.3×10-6/℃、好ましくは0~0.25×10-6/℃、好ましくは0~0.2×10-6/℃、好ましくは0~0.15×10-6/℃、好ましくは0~0.1×10-6/℃、好ましくは0~0.08×10-6/℃、好ましくは0~0.04×10-6/℃、好ましくは0~0.02×10-6/℃である。アルミン酸マグネシウムスピネルを含む少なくとも1つの第1の層と、第2の層と、第3の層との間のCTEの差の絶対値のこれらの範囲は、(アルミン酸マグネシウムスピネルを含む少なくとも1つの第1の層100に対して測定して)少なくとも1つの第1、第2及び第3の層の9%以下、好ましくは7%以下、好ましくは5%以下、好ましくは3%以下、好ましくは2%以下、好ましくは1.5%以下、好ましくは1%以下、好ましくは0.5%以下、好ましくは0.1%以下の少なくとも1つの第1、第2及び第3の層のいずれかの間の百分率によるCTEの差に相当する。少なくとも1つの第1、第2及び第3の層は、周囲温度(又は図に示されるように少なくとも200℃)から約1700℃(又は図に示されるように少なくとも1400℃)の温度範囲にわたって開示される範囲内でCTEが一致して、単一の多層焼結セラミック体を形成する。
【0183】
図17のa)、b)及びc)は、一実施形態による単一の多層焼結セラミック体の少なくとも1つの第1及び第2の層を形成するための例示的な材料の周囲温度(又は図に示されるように少なくとも200℃)から約1700℃(又は図に示されるように少なくとも1400℃)の温度範囲にわたるCTE測定を示す。本明細書に開示される全てのCTE測定は、ASTM E228-17に従って行われた。例示的なバルク材料に対してCTE測定が行われた。図17a)は、アルミン酸マグネシウムスピネルの第1の層100並びにアルミナ及びジルコニアを含む第2の層102を示し、ジルコニアは、約25体積%の量の安定化ジルコニア及び部分安定化ジルコニアのうちの少なくとも1つを含む。図17のb)は、スピネルの第1の層並びにアルミナ及びジルコニアを含む第2の層102を示し、ジルコニアは、約16体積%のジルコニアの量の安定化ジルコニア及び部分安定化ジルコニアのうちの少なくとも1つ並びに残部のアルミナを含む。図17のc)は、アルミン酸マグネシウムスピネルの少なくとも1つの第1の層100並びにアルミナ及びジルコニアを含む少なくとも1つの第2の層102のCTE測定を示し、ジルコニアは、200℃~1400℃の温度範囲にわたって、約20体積%のジルコニアの量の安定化ジルコニア及び部分安定化ジルコニアのうちの少なくとも1つ並びに残部のアルミナを含む。ZTAの少なくとも1つの第2の層102及び少なくとも1つの第3の層103の組成は、スピネルを含む少なくとも1つの第1の層100とCTEが一致するように変更されてもよい。ジルコニア及びアルミナを含む少なくとも1つの第2の層102の組成の範囲(16体積%~25体積%のジルコニア及び残部のアルミナ)は、スピネルを含む少なくとも1つの第1の層100とCTE一致するのに好適であり得る。したがって、約16~約25体積%のジルコニア(及び残部のアルミナ)を含む少なくとも1つの第2の層と、アルミン酸マグネシウムスピネルを含む少なくとも1つの第1の層100と、少なくとも1つの第1及び第2の層とCTEが一致する少なくとも1つの第3の層とを備える多層焼結セラミック体が、本明細書に開示される。一実施形態によるスピネルの第1の層100と第2の層102と第3の層103とのCTEをより厳密に一致させるために、第2の層102は、各々が約15体積%~約25体積%、好ましくは約18体積%~約20体積%、より好ましくは約20体積%のジルコニア(及び残部のアルミナ)を含む。少なくとも1つの第2の層102のこれらの組成範囲は、スピネルの少なくとも1つの第1の層100に対して、周囲温度(又は図に示されるように少なくとも200℃)から約1700℃(又は図に示されるように少なくとも1400℃)の温度範囲にわたって、ASTM E228-17に従って測定して、約0.45×10-6/℃以下、好ましくは0.4×10-6/℃以下、好ましくは0.3×10-6/℃以下、好ましくは約0.25×10-6/℃以下、好ましくは0.2×10-6/℃以下、好ましくは0.15×10-6/℃以下、好ましくは0.1×10-6/℃以下、好ましくは0.08×10-6/℃以下、好ましくは0.06×10-6/℃以下、好ましくは0.04×10-6/℃以下、好ましくは0.02×10-6/℃以下、好ましくは0.01×10-6/℃以下の量で一致するCTEを提供し得る。少なくとも1つの第1の層に対する百分率として、(一実施形態による少なくとも1つの第1、第2及び第3の層のいずれかの間の)百分率によるCTEの差は、(スピネルを含む少なくとも1つの第1の層100に対して測定して)少なくとも1つの第1、第2及び第3の層の6%以下、約5%以下、好ましくは4%以下、好ましくは3%以下、好ましくは2%以下、好ましくは1.5%以下、好ましくは1%以下、好ましくは0.5%以下、好ましくは0.25%以下であってもよい。ジルコニアは、本明細書に開示される方法及び安定化化合物に従って安定化されたもの及び部分安定化されたジルコニアのうちの少なくとも1つであり得る。少なくとも1つの第2の層102(ジルコニア及びアルミナを含む)と、少なくとも1つの第1の層(アルミン酸マグネシウムスピネルを含む)と、少なくとも1つの第3の層(第1及び第2の層の組み合わせを含む)との間のCTEの変動は、本明細書に開示される単一の多層焼結セラミック体の製造を成功させるために開示される範囲内である。
【0184】
図18は、本明細書に開示される単一の多層焼結セラミック体の一実施形態による(焼結後に)アルミン酸マグネシウムスピネル相MgAlを含む少なくとも1つの第1の層100を形成するためにバッチ処理されたマグネシア及びアルミナ(少量のスピネル相形成を伴う)の焼成粉末混合物(850℃で4時間焼成)のX線回折結果を示す。スピネル相は、マグネシア及びアルミナの出発粉末を含む粉末混合物からin-situでの反応性焼結工程によって形成される。いくつかの実施形態では、スピネルを含む少なくとも1つの第1の層100は、ドーパントを実質的に含まないか又は含まず、焼結助剤を実質的に含まないか又は含まず、LiFを実質的に含まないか又は含まない。他の実施形態では、スピネルの第1の層は、本明細書に開示される量の焼結助剤を含んでもよい(スピネルの主成分であるマグネシアを除く)。
【0185】
図19は、本明細書に開示される一実施形態によるアルミン酸マグネシウムスピネルを含む少なくとも1つの第1の層100の高密度焼結微細構造の1000倍のSEM画像を示す。スピネルを含む少なくとも1つの第1の層100は、本明細書に開示されるドーパント、焼結助剤及びLiFを含まないか、又は実質的に含まない。最小多孔率を有するほぼ完全に緻密な微細構造が示されている。
【0186】
少なくとも1つの第1の層がスピネルを含むこの実施形態によれば、約5~約20nmのSaは、本明細書に開示される表面粗さ測定方法を用いて、表面にわたって測定され得る。
【0187】
別の実施形態によれば、本明細書に開示されるのは、単一の多層焼結セラミック体であり、イットリア及びジルコニアを含む少なくとも1つの多結晶セラミック材料を含む少なくとも1つの第1の層であって、ジルコニアが10モル%以上25モル%以下の量で存在する、少なくとも1つの第1の層と、アルミナ及びジルコニアを含む少なくとも1つの第2の層102であって、ジルコニアが安定化ジルコニア及び部分安定化ジルコニアのうちの少なくとも1つを含む、少なくとも1つの第2の層102と、少なくともYAG、アルミナ及びジルコニアの多相層を含む少なくとも1つの第3の層103とを備え、少なくとも1つの第1、第2及び第3の層の間の熱膨張係数(CTE)の差の絶対値は、25~1700℃の温度範囲にわたって、又は200~1400℃の温度範囲にわたって、ASTM E228-17に従って測定して、0~0.75×10-6/℃、好ましくは0~0.7×10-6/℃、好ましくは0~0.6×10-6/℃、好ましくは0~0.5×10-6/℃、好ましくは0~0.45×10-6/℃、好ましくは0~0.4×10-6/℃、好ましくは0~0.35×10-6/℃、好ましくは0~0.3×10-6/℃、好ましくは0~0.25×10-6/℃、好ましくは0~0.2×10-6/℃、好ましくは0~0.15×10-6/℃、好ましくは0~0.1×10-6/℃、好ましくは0~0.08×10-6/℃、好ましくは0~0.06×10-6/℃、好ましくは0~0.04×10-6/℃、好ましくは0~0.02×10-6/℃、好ましくは0~0.01×10-6/℃である。イットリア及びジルコニアを含む少なくとも1つの第1の層(ジルコニアは10モル%以上25モル%以下の量で存在する)と第2の層と第3の層との間のCTEの差の絶対値のこれらの範囲は、(少なくとも1つの第1の層100に対して測定して)少なくとも1つの第1、第2及び第3の層の8%以下、好ましくは6.5%以下、好ましくは5%以下、好ましくは4%以下、好ましくは3%以下、好ましくは2%以下、好ましくは1%以下、好ましくは0.5%以下、好ましくは0.1%以下の少なくとも1つの第1、第2及び第3の層のいずれかの間の百分率によるCTEの差に相当する。少なくとも1つの第1、第2及び第3の層は、周囲温度(又は図に示されるように少なくとも200℃)から約1700℃(又は図に示されるように少なくとも1400℃)の温度範囲にわたって開示される範囲内でCTEが一致して、単一の多層焼結セラミック体を形成する。
【0188】
図20のa)、b)及びc)は、一実施形態による単一の多層焼結セラミック体の少なくとも1つの第1及び第2の層を形成するための例示的な材料の周囲温度(又は図に示されるように少なくとも200℃)から約1700℃(又は図に示されるように少なくとも1400℃)の温度範囲にわたるCTE測定を示す。本明細書に開示される全てのCTE測定は、ASTM E228-17に従って行われた。例示的なバルク材料に対してCTE測定が行われた。図20のa)は、約20モル%のジルコニア及び残部のイットリアを含む少なくとも1つの第1の層100と、16体積%のジルコニア及び残部のアルミナを有する少なくとも1つの第2の層102とを示す。図20のb)は、約20モル%のジルコニア及び残部のイットリアを含む少なくとも1つの第1の層100と、約20体積%の部分安定化ジルコニア及び安定化ジルコニアのうちの少なくとも1つ並びに残部のアルミナを有する少なくとも1つの第2の層102とを示す。図20のc)は、約25モル%のジルコニア及び残部のイットリアを含む少なくとも1つの第1の層100と、(少なくとも1つの第2の層に体積に対して)約25体積%のジルコニア及び残部のアルミナを含む少なくとも1つの第2の層102とを示す。この実施形態の変形例は、イットリア及びジルコニアを含むセラミック材料の少なくとも1つの結晶相を含む少なくとも1つの第1の層100を含み得、ジルコニアは、10モル%以上のZrO及び25モル%以下のZrO、好ましくは12モル%以上23モル%以下のZrO、好ましくは15モル%以上25モル%以下のZrO、好ましくは18モル%以上25モル%以下のZrO、好ましくは10モル%以上23モル%以下のZrO、好ましくは10モル%以上20モル%以下のZrO、好ましくは15モル%以上23モル%以下のZrOの量で存在し、残部がYを含む。少なくとも1つの第1の層100のためのこれらの組成物は、本明細書に開示される少なくとも1つの第2の層102及び少なくとも1つの第3の層103の組成物と組み合わされてもよく、少なくとも1つの第2及び第3の層は、イットリア及びジルコニアの少なくとも1つの結晶相を含む少なくとも1つの第1の層100とCTE一致するために好適な(ジルコニア及びアルミナの)組成物を有する。実施形態では、少なくとも1つの第1の層100は、C型固溶体、又は蛍石固溶体とC型固溶体との組み合わせ、又はZr12を含む化合物相とC型固溶体との組み合わせからなる群から選択されるイットリア及びジルコニアの少なくとも1つの結晶相を含み得る。C型固溶体は、希土類イットリア型固溶体を指す。これらの結晶相は、「イットリア-ジルコニア系のイットリアが豊富な部分における相関係」で報告されているように、開示された組成範囲と一致している(J.Mater.Sci 12(1977)311-316,H.G.Scott)。一実施形態では、少なくとも1つの第1の層100(10~25モル%のジルコニア及び残部のイットリアを含む)のCTEは、(少なくとも1つの第2の層の体積に対して)約16体積%~約25体積%のジルコニア及び残部のアルミナを含む少なくとも1つの第2の層102によって一致されたCTEであり得る。この実施形態では、少なくとも1つの第1の層100(10~25モル%のジルコニア及び残部のイットリアを含む)のCTEは、約16~約25体積%の部分安定化ジルコニア及び安定化ジルコニアのうちの少なくとも1つ並びに残部のアルミナを含む少なくとも1つの第2の層102にCTEを一致させることができる。したがって、約16~約25体積%の部分安定化ジルコニア及び安定化ジルコニアのうちの少なくとも1つ(並びに残部のアルミナ)を含む少なくとも1つの第2の層102と、10~25モル%のジルコニア及び残部のイットリアを含む少なくとも1つの第1の層100とを備える多層焼結セラミック体98が本明細書に開示される。好ましい実施形態では、少なくとも1つの第1の層100(10~25モル%のジルコニア及び残部のイットリアを含む)と少なくとも1つの第2の層102(アルミナ並びに部分安定化ジルコニア及び安定化ジルコニアのうちの少なくとも1つを含む)とのCTEをより厳密に一致させるために、少なくとも1つの第2の層は、各々少なくとも1つの第2の層102の体積に対して、約16~約25%、好ましくは約20%~約25%、好ましくは約22%~約25%、より好ましくは約20%の部分安定化ジルコニア及び安定化ジルコニアのうちの少なくとも1つ(並びに残部のアルミナ)の体積量のジルコニアを含む。少なくとも1つの第2の層102のこれらの組成範囲は、少なくとも1つの第1の層100(10~25モル%のジルコニア及び残部のイットリアを含む)に対して、周囲温度(又は図に示されるように少なくとも200℃)から約1700℃(又は図に示されるように少なくとも1400℃)の温度範囲にわたって、ASTM E228-17に従って測定して、約0.55×10-6/℃以下、好ましくは0.5×10-6/℃以下、好ましくは0.4×10-6/℃以下、好ましくは約0.3×10-6/℃以下、好ましくは0.2×10-6/℃以下、好ましくは0.15×10-6/℃以下の量で一致するCTEを提供する。少なくとも1つの第2の層102のジルコニアは、本明細書に開示される方法及び安定化化合物に従って安定化ジルコニア及び部分安定化ジルコニアのうちの少なくとも1つであり得る。
【0189】
実施形態では、イットリア及びジルコニアの少なくとも1つの結晶相を含む少なくとも1つの第1の層100であって、ジルコニアが10モル%以上のZrO及び25モル%以下のZrOの量で存在する、少なくとも1つの第1の層100は、ドーパントを実質的に含まないか若しくは含まず、及び/又は焼結助剤を実質的に含まないか若しくは含まない。他の実施形態では、開示される量のイットリア及びジルコニアの少なくとも1つの結晶相を含む少なくとも1つの第1の層100は、本明細書に開示される量の焼結助剤及び/又はドーパントを含んでもよい。開示される量のイットリア及びジルコニアを含む少なくとも1つの第1の相100を含むジルコニアの出発粉末は、非安定化ジルコニア、部分安定化ジルコニア及び安定化ジルコニアからなる群から選択される少なくとも1つを含み得る。
【0190】
図21のa)は、一実施形態による単一の多層焼結セラミック体98の非線形界面104を示すSEM画像を示し、少なくとも1つの第1の層100は、イットリア及びジルコニアを含むセラミック材料の少なくとも1つの結晶相を含み、ジルコニアは、約20モル%の量で存在し、残部はイットリアである。特定の実施形態では、少なくとも1つの第1の層のジルコニアは、部分的に安定化されてもよく、安定化化合物として約3モル%のイットリアを含んでもよい。他の実施形態では、少なくとも1つの第1の層のジルコニアは、非安定化ジルコニア、部分安定化ジルコニア及び安定化ジルコニアのうちの少なくとも1つを含み得る。実施形態では、少なくとも1つの第1の層100は、少なくとも1つの第2の層102に隣接する反応層108を含み得、少なくとも1つの第2の層102及び反応層108は、各層の間で非線形界面104を形成する。図21のSEM結果に見られるように、反応層108は非常に高密度であり、最小多孔率を有する。反応層108は、SEM画像から測定して、10~30μm、好ましくは15~30μm、好ましくは20~30μm、好ましくは25~30μm、好ましくは約20μmの厚さを有し得る。反応層108によって非線形界面104の接着強度が向上し得る。実施形態では、反応層108は、YAG、YAP、YAM、立方晶相(イットリア、アルミナ及びジルコニアのうちの少なくとも2つの固溶体を含む)、及び立方晶蛍石結晶相(イットリア、アルミナ及びジルコニアのうちの少なくとも2つの固溶体を含む)、並びにそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの結晶相を含んでもよい。図21のb)は、約20モル%のジルコニア及び残部のイットリアを含む少なくとも1つの第1の層100のプラズマ対向面106の高密度焼結微細構造を示す。最小多孔率を有するほぼ完全に緻密な微細構造が示されている。
【0191】
少なくとも1つの第1の層が80モル%のイットリア及び20モル%のジルコニアの固溶体を含む一実施形態によれば、10~25nmの5回の測定にわたる平均Raが測定された。
【0192】
当業者に知られているような多層焼結体は、多くの場合、積層されて共焼結されるか、又は焼結基板上に積層又は堆積されて焼結されるプレキャスト層又はテープから形成される。しかしながら、これらの多層積層体は、多くの場合、層間の不十分な界面結合に起因して層間の界面で剥離し、その結果、半導体反応器での使用中にスポーリング及び粒子放出が生じる。典型的には、これらの積層体は、線形である界面を有し、したがって、本明細書に開示される単一の多層焼結セラミック体の特徴であるインターロッキング、非線形界面104の接着/結合強度の増加、及び多相の第2の界面105の靱性の向上という利点を提供しない。
【0193】
本明細書に開示されるのは、少なくとも1つの第1の層100及び少なくとも1つの第2の層102を含む多層焼結セラミック体であり、これらの層は、図22のa)及びb)の概略図に示されるように、連続しており、非線形界面104によって境界付けられている。また、図22のa)及びb)に示されるように、非線形界面105は、隣接層102と103との間にある。図示されるように、(本明細書でより詳細に説明されるように)非線形界面104は、少なくとも1つの第1の層100と少なくとも1つの第2の層102との間の向上した接着を提供し得る。この改善された接着は、界面長さの増加、及び関連する界面の面積の増加、屈曲度(T)、界面の算術平均(平均界面線からの界面の距離)、非線形性、及び界面104の形態によって提供されるインターロッキング効果を含む、いくつかの要因によって達成され得る。
【0194】
層の界面は、典型的には、界面層が、通常、少なくとも1つの第1の層と第2の層との間、及び少なくとも1つの第2の層と第3の層との間で蛇行するように、屈曲性及び非線形界面を有する。本明細書に開示される計算を使用する屈曲度は、1.2~2.2、特に1.4~2.0であり得る。屈曲度を決定するための測定は、以下で後述され、界面層の直線距離に対する界面長さの増加に基づく。したがって、本明細書に開示されるのは、少なくとも1つの第2の層と少なくとも1つの第1の層とによって画定され、少なくとも1つの第2の層と少なくとも1つの第3の層との間に界面を有する多層焼結セラミック体であり、界面長さは、20~70%、好ましくは20~60%、好ましくは20~40%、好ましくは30~80%、好ましくは40~80%、好ましくは50~70%増加している。
【0195】
それに対応して、少なくとも1つの第2の層と少なくとも1つの第1の層と、そして少なくとも1つの第3の層と少なくとも1つの第2の層とは、界面層に沿った多層焼結セラミック体の最大寸法に界面面積が見合った界面で互いに接触してもよい。
【0196】
少なくとも1.2の上述の屈曲度を考慮する100~約625mmの最大寸法を有する単一の多層焼結体の場合、少なくとも1つの第2の層及び少なくとも1つの第1の層は、少なくとも113cm、好ましくは少なくとも452cm、好ましくは少なくとも1,018cm、好ましくは少なくとも1,810cmの面積を有する非線形界面で互いに接触する。
【0197】
少なくとも1.4の上述の屈曲度を考慮する100~約625mmの最大寸法を有する単一の多層焼結体の場合、少なくとも1つの第2の層及び少なくとも1つの第1の層は、少なくとも153cm、好ましくは少なくとも616cm、好ましくは少なくとも1,386cm、好ましくは少なくとも2,464cmの面積を有する非線形界面で互いに接触する。
【0198】
最大2.2の上述の屈曲度を考慮する100~約625mmの最大寸法を有する単一の多層焼結体の場合、少なくとも1つの第2の層及び少なくとも1つの第1の層は、最大15,085cm、好ましくは最大14,850cm、好ましくは最大14,128cm、好ましくは最大9,802cm、好ましくは最大6,083cm、好ましくは最大3,421cm、好ましくは最大1,520cmの面積を有する非線形界面で互いに接触する。
【0199】
最大2.0の上述の屈曲度を考慮する100~約625mmの最大寸法を有する単一の多層焼結体の場合、少なくとも1つの第2の層及び少なくとも1つの第1の層は、最大12,468cm、好ましくは最大12,272cm、好ましくは最大11,676cm、好ましくは最大7,852cm、好ましくは最大5,028cm、好ましくは最大2,828cm、好ましくは最大1,256cmの面積を有する非線形界面で互いに接触する。
【0200】
少なくとも1.2の上述の屈曲度を考慮する100~約625mmの最大寸法を有する単一の多層焼結体の場合、少なくとも1つの第2の層及び少なくとも1つの第1の層は、113~約4,488cm、好ましくは113~約4,418cm、好ましくは113~4,204cm、好ましくは113~2,827cm、好ましくは113~1,918cm、好ましくは113~1,018cm、好ましくは113~452cm、好ましくは452~約4,488cm、好ましくは452~約4,418cm、好ましくは452~4,203cm、好ましくは452~2,827cm、好ましくは452~1,810cm、好ましくは1,018~約4,418cm、好ましくは、1,810~4,376cmの面積を有する非線形界面で互いに接触する。
【0201】
少なくとも1.4の上述の屈曲度を考慮する100~約625mmの最大寸法を有する単一の多層焼結体の場合、少なくとも1つの第2の層及び少なくとも1つの第1の層は、153~約6,110cm、好ましくは153~約6,013cm、好ましくは153~5,722cm、好ましくは153~3,847cm、好ましくは153~2,464cm、好ましくは153~1,386cm、好ましくは153~616cm、好ましくは616~約6,110cm、好ましくは616~約6,013cm、好ましくは616~5,722cm、好ましくは616~3,847cm、好ましくは616~2,464cm、好ましくは1,386~約6,013cm、好ましくは2,464~5,957cmの面積を有する非線形界面で互いに接触する。
【0202】
最大2.2の上述の屈曲度を考慮する100~約625mmの最大寸法を有する単一の多層焼結体の場合、少なくとも1つの第2の層及び少なくとも1つの第1の層は、378~約15,085cm、好ましくは378~約14,850cm、好ましくは378~14,128cm、好ましくは378~9,502cm、好ましくは378~6,083cm、好ましくは378~3,421cm、好ましくは378~1,520cm、好ましくは1,520~約15,085cm、好ましくは1,520~約14,850cm、好ましくは1,520~14,128cm、好ましくは1,520~9,502cm、好ましくは1,1520~6,083cm、好ましくは3,421~約14,850cm、好ましくは6,083~14,710cmの面積を有する非線形界面で互いに接触する。
【0203】
最大2.0の上述の屈曲度を考慮する100~約625mmの最大寸法を有する単一の多層焼結体の場合、少なくとも1つの第2の層及び少なくとも1つの第1の層は、312~約12,468cm、好ましくは312~約12,272cm、好ましくは312~11,676cm、好ましくは312~7,852cm、好ましくは312~5,028cm、好ましくは312~2,828cm、好ましくは312~1,256cm、好ましくは1,256~約12,468cm、好ましくは1,256~約12,272cm、好ましくは1,256~11,676cm、好ましくは1,256~7,652cm、好ましくは1,256~5,028cm、好ましくは2,828~約12,272cm、好ましくは5,028~7,294cmの面積を有する非線形界面で互いに接触する。
【0204】
図24のa)及びb)は、少なくとも1つの第1の層100と少なくとも1つの第2の層102との間の界面104の特性を示すSEM画像を示し、図24のb)の例示的な画像に示すように、端部間の直線距離(L)は約54μmであり、界面104に沿って測定された界面長さ又は曲線(C)は約90μmである。本明細書に開示される計算を用いた図24のb)による屈曲度は約1.7である。本明細書に開示されるImageJソフトウェア分析を用いて、9つのSEM画像にわたって測定を行った。約90μmの平均界面長さが測定され、直線距離(L)に対して界面長さ(C)が約66%増加したことを示した。したがって、本明細書に開示されるのは、少なくとも1つの第2の層及び少なくとも1つの第1の層によって画定される界面104を有する多層焼結セラミック体であって、界面長さが20~70%、好ましくは20~60%、好ましくは20~40%、好ましくは30~80%、好ましくは40~80%、好ましくは50~70%増加している多層焼結セラミック体である。それに対応して、少なくとも1つの第2の層102及び少なくとも1つの第1の層100は、多層焼結セラミック体の最大寸法に界面面積が見合った界面で互いに接触してもよい。いくつかの実施形態では、100~約625mmの最大寸法を有する単一の多層焼結体の場合、少なくとも1つの第2の層102及び少なくとも1つの第1の層100は、約3,117cm、好ましくは約3,068cm以下、好ましくは2,919cm以下、好ましくは78~約3,117cm、好ましくは78~約3,068cm、好ましくは78~2,919cm、好ましくは78~1,963cm、好ましくは78~1,257cm、好ましくは78~707cm、好ましくは78~314cm、好ましくは314~約3,117cm、好ましくは314~約3,068cm、好ましくは314~2,919cm、好ましくは314~1,963cm、好ましくは、314~1,257cm、好ましくは707~約3,068cm、好ましくは1257~3,039cmの面積を有する非線形界面104で互いに接触する。実施形態では、第1及び第2の層が直接接触して非線形界面104を形成し、したがって、少なくとも1つの第1及び第2の層が隣接層であることが好ましい。他の実施形態では、回路、加熱要素、RFコイル/RFアンテナ等は、特定の構成要素用途によって要求されるように、第1の層と第2の層との間に配置されてもよく、これらの特徴にかかわらず、第1の層及び第2の層の少なくとも一部は、隣接又は実質的に隣接していてもよい。この増加した界面長さ及び界面面積は、少なくとも1つの第1の層100と少なくとも1つの第2の層102との間の非線形界面104における接着を強化する。
【0205】
再び図24のb)を参照すると、図示される界面層の幅は、典型的には1~200μm、特に5~100μm、より具体的には10~50μm、更により具体的には20~30μmである。
【0206】
上記の界面層の幅にわたる第1の層の体積は、5μm未満、特に3μm未満、特に1μm未満の最大サイズを有する細孔を有する。
【0207】
上記の界面層の幅にわたる第1の層の体積は、特に、5μm未満、特に3μm未満、特に1μm未満の最大サイズを有する細孔のみを有する。
【0208】
本明細書に開示される幅内の少なくとも第1の層の体積は、体積の0.2%未満、より好ましくは0.15%未満、最も好ましくは0.1%未満が上記の細孔によって占められる構造を有する。
【0209】
上記の界面層の幅にわたる第2の層の体積は、5μm未満、特に3μm未満、特に1μm未満の最大サイズを有する細孔を有する。
【0210】
上記の界面層の幅にわたる第2の層の体積は、特に、5μm未満、特に3μm未満、特に1μm未満の最大サイズを有する細孔のみを有する。
【0211】
本明細書に開示される幅内の少なくとも第2の層の体積は、体積の0.2%未満、より好ましくは0.15%未満、最も好ましくは0.1%未満が上記の細孔によって占められる構造を有する。
【0212】
図23のa)は、多層焼結セラミック体の非線形界面104の500倍でのSEM顕微鏡写真を示し、少なくとも1つの第2の層102及び少なくとも1つの第1の層100によって画定される非線形界面104は、不規則な非線形境界であり、これは、実施形態では、逆行角を含み得る。図23のa)に示すようないくつかの実施形態では、インターフェースは、少なくとも1つのダブテール構造及び/又はダブテール構造の少なくとも一部を含み得る。他の実施形態では、界面の少なくとも一部は、台形形状を含み得る。本明細書に開示される屈曲度(T)は、曲線(界面)の長さCとその端部間の直線距離Lとの比として数学的に定義され、T=C/Lである。図23のa)の画像は、2.7の屈曲度を有することが測定された。本明細書に開示される非線形界面104は、本明細書に開示されるSEM及び画像処理方法(ImageJソフトウェア内での測定)を用いて測定して、1.02超~約1.5、好ましくは1.02超~約2.0、好ましくは1.02超~約2.5、好ましくは1.02超~約3.0、好ましくは1.1超~約3.0、好ましくは1.3~約3、好ましくは1.5~約2.7の屈曲度Tを有し得る。
【0213】
直線界面(層が適用される予備焼結体を使用する積層体及び構造体に典型的である)は、約1~1.02の屈曲度を有する。本明細書に開示される多層体の界面104の増加した屈曲度は、層間のインターロッキング効果を提供し、それによって、不可分の単一の多層焼結セラミック体が形成されるように接着強度を増加させる。
【0214】
図23のb)は、SEM及び画像処理方法から計算された非線形界面104の平均界面線(IL)を示す。非線形界面104を示す、図23のb)の例示的なSEM画像をImageJソフトウェアにインポートし、界面に沿った点に対応するx/y座標を使用して、図23のb)に示すような平均界面線(IL)の一次方程式を得て、非線形界面104を、平均界面線(IL)からの非線形界面104の距離によって特徴付けた。平均界面線(IL)からの界面104の距離(D)は、SEM及び画像処理を用いて測定して、10~100μm、好ましくは20~100μm、好ましくは30~100μm、好ましくは40~100μm、50~100μm、好ましくは25~85μmの量で変化する。平均界面線(IL)からの距離(D)の増加は、本明細書に開示される多層焼結セラミック体の向上した接着及びインターロッキング効果に寄与し得る。
【0215】
これらの逆方向又は逆行性の角度、特性、及び構造は、アンカー効果を提供し、それによって、少なくとも1つの第2の層102及び少なくとも1つの第1の層100によって画定される界面104にわたる界面強度及び引張強度並びに結合を増加させ得る。
【0216】
比較すると、図5は、層又は基板Bが最初に焼結されて固体を形成し、その後、層Dが基板Bの上に堆積され、これら2つが時間、温度及び圧力にわたって接合された従来技術の試料の界面を示す。逆行角又は界面角を有さず、界面長さの増加が最小限であるか又は全くない実質的に線形の界面であることが明らかである。屈曲度測定値は、本明細書に開示されるように(図5に示されるような画像を使用して)計算され、それによって、曲線(界面)の長さ(C)及びその端間の直線距離Lは、本明細書に開示されるようにImageJ画像処理ソフトウェアにインポートされたSEM画像から測定された。従来技術の積層体の屈曲度(T)は、約1.02未満であると計算された。したがって、当該技術分野で知られている多層体の実施形態の界面は、本明細書に開示される対象の単一の多層焼結セラミック体の向上した層間接着及びインターロッキング効果の有益な特徴を提供しない。図5に示される明るい領域(画像の中央右の領域)は、金属層に対応する。
【0217】
図5の従来技術の積層体に示されているように、層Bと層Dとの間に著しい粒径のばらつきが存在する。層Bは、20~30μmのオーダーの大きな結晶粒を有し、これは、複数の焼結プロセスなどの広範な熱履歴を示し得る。層Dは、2~5μmのオーダーの結晶粒を有し、熱履歴及び焼結によって典型的に引き起こされる結晶粒成長がはるかに少ないことを示す。この結晶粒サイズの差は、層Dが層Bの上に堆積又は積層され、続いて焼結されて積層体又は積層体を形成する積層又は堆積プロセスを示し得る。
【0218】
(機械的強度、高いヤング率及び他の特性を付与するために)層Bに要求される高い密度は、長い焼結時間及び高温を必要とし、したがって、過度の結晶粒成長をもたらす。層Dは、その後、より低い温度で、より短い持続時間にわたって基板Bに接合され、それによって、層Dは、基板Bの過度の結晶粒成長を経験しなくてもよい。これは、結晶粒サイズにおいて著しい差異を有する層状構造をもたらす。結晶粒サイズを測定し(当業者に公知のHeyn Line Intercept法を使用して)、基板B及び層Dについてそれぞれ約12μm及び4μmの結晶粒サイズを測定した。この結晶粒サイズの差は、2つのボディ間の特性(機械的強度、ヤング率、誘電損失、及び他の特性など)の変動につながる可能性があり、その結果、破壊及び/又は亀裂が生じる可能性がある。
【0219】
対照的に、結晶粒サイズ測定は、YAGを含む少なくとも1つの第1の層と、アルミナを含む少なくとも1つの第2の層とを含み、アルミナが、約16体積%の量で存在する安定化ジルコニア及び部分安定化ジルコニアのうちの少なくとも1つを含む、一実施形態の多層焼結セラミック体について行われた。少なくとも1つのYAGの第1の層及び少なくとも1つの第2の層の結晶粒サイズは、それぞれ約0.78μm及び0.74μmであると測定された。これらの差は、測定精度の範囲内であり得、したがって、本明細書に開示される多層焼結セラミック体は、結晶粒を含む少なくとも1つの第1及び第2の層を含み得、結晶粒は、少なくとも1つの第1の層100と第2の層102との間で同じサイズ又は実質的に同じサイズを有する。
【0220】
界面を横切って接触している結晶粒の数もまた、非線形界面104の接着及び強度特性において役割を果たし得る。結晶粒の数を界面長さにわたって計数して、1μm当たりの結晶粒の数を得た。図25のa)は、10個の画像にわたる、少なくとも1つの第1の層100及び少なくとも1つの第2の層102によって画定される界面の(μm単位の)界面長さ当たりの結晶粒の数を示し、1ミクロン当たりの結晶粒の数は少ない方が好ましい。実施形態では、少なくとも1つの第1の層100としてのYAGと、アルミナマトリックス中に約16体積%のジルコニアの第2の層とを含む多層焼結セラミック体について、1ミクロン当たりの粒子数、好ましくは約0.5のμm当たりの平均粒子数は、0.2~0.8結晶粒/μm、好ましくは0.3~0.6結晶粒/μm、好ましくは0.4~0.55結晶粒/μmを含む。図25のb)は、10枚のSEM画像にわたる約54μmの、開示される画像領域にわたる線形測定値L(Cの端点間の線形距離であり、本明細書では屈曲度Tとして定義される)に対する界面長さ(C、曲線/界面の長さとしても定義される)の比を示す。非線形界面104は、1.02超~3、好ましくは1.1~3、好ましくは1.2~3、好ましくは1.3~3、好ましくは1.3~2.7の屈曲度(T)、好ましくはSEM及び画像処理方法を使用して測定される約1.7の平均屈曲度を有し得る。少なくとも1つの第1の層100と第2の層102との間の接着強度を増加させるためには、界面長さC対線形界面長さL(又は屈曲度T)のより高い比が好ましい。
【0221】
記載されるように、非線形界面104は、少なくとも1つの第1の層100と少なくとも1つの第2の層102との間の向上した接着強度を提供し得る。この改善された接着強度は、増加した界面長さ、界面線からの増加した距離、及び少なくとも1つの第1の層100と少なくとも1つの第2の層102との間の屈曲度Tによって測定されるインターロッキング効果によって達成され得る。
【0222】
ここで図26のa)及びb)を参照すると、少なくとも1つの第3の層103の微細構造のSEM顕微鏡写真が示されている。実施形態では、少なくとも1つの第3の層103は、YAG、アルミナ、並びに非安定化ジルコニア、部分安定化ジルコニア及び安定化ジルコニアのうちの少なくとも1つを含むセラミック材料の多相を含む。少なくとも1つの第3の層103の多相構造は、界面の増加した距離に沿った優先的な亀裂伝播を促進し得る、少なくとも2つの相の間の界面によって、強化効果を提供し得る。YAG及びZTA(ジルコニア強化アルミナ)を含む大きな領域が図26のa)及びb)に示されており、各々がSEM画像及びImageJソフトウェアを使用して測定したときに約50面積%を含む。
【0223】
少なくとも1つの第1、第2及び第3の層の間の開示される範囲内のCTE一致は、好ましくは、本明細書に開示される方法の温度範囲に従って、周囲温度(又は図に示されるように少なくとも200℃)から約1700℃(又は図に示されるように少なくとも1400℃)の温度範囲にわたって提供される。開示されるCTEの差を提供するそれぞれの少なくとも1つの第1、第2及び第3の層のための材料の選択は、非線形界面104及び第2の界面105上の界面応力を低減することができ、それによって、少なくとも1つの第1の層100と少なくとも1つの第2の層102と少なくとも1つの第3の層103との間の接着及び強度を改善する。
【0224】
開示される多層焼結セラミック体からプラズマ処理チャンバ構成要素を形成するために、多層焼結セラミック体は、図27に概略的に示されるように、構成要素設計に応じて、必要とされる貫通孔、表面仕上げ及び寸法公差を有する多層焼結部品にそれらを形成するために、必要に応じて、機械加工、穿孔、表面研削、ラッピング、研磨及び他のプロセスが行われてもよい。図27は、多層焼結セラミック体及びそれから製造される多層焼結セラミック構成要素の例示的な実施形態を示す。貫通孔112は、少なくとも1つの第1の層100、少なくとも1つの第2の層102、及び少なくとも1つの第3の層103を通して、当業者に知られているような任意の数の機械加工、研削、及び/又は穿孔プロセスによって作製され得る。本明細書に開示される焼結体から形成される多層焼結セラミック部品は、任意の数の貫通孔112を有してもよい。図27のa)、b)及びc)に示すように、貫通孔112は側壁110を備えることができ、側壁110は、YAG、アルミン酸マグネシウムスピネル、並びにイットリア及びジルコニアからなる群から選択されるセラミック材料の結晶相の少なくとも一部を含み、ジルコニアは10モル%以上25モル%以下の量で存在する。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの第2の層102を含む厚さは最大化され、少なくとも1つの第1の層100及び/又は少なくとも1つの第3の層103の厚さは最小化され、各々約0.5~3mm、好ましくは0.5~1.5mmの範囲である。少なくとも1つの第2の層102の厚さを最大化することによって、高い機械的強度、高い熱伝導率、高い誘電率及び低い誘電損失という好ましい特性と組み合わせて、耐食性及び機械加工性が提供される。開示される組成範囲内で作製される少なくとも1つの第2の層102は、高周波チャンバ用途に必要とされる前述の好ましい特性を提供することができる。本明細書に開示される多層焼結セラミック体の高強度、耐食性、低誘電損失及び熱伝導率の組み合わせは、多層焼結セラミック体98を、半導体プラズマ処理チャンバで使用するための誘電体又はRF窓及び多くの他の構成要素の製造のための材料として特によく適したものにする。これらは、窓、蓋、誘電体窓、RF窓、リング、フォーカスリング、プロセスリング、堆積リング、ノズル、インジェクタ、ガスインジェクタ、シャワーヘッド、ガス分配プレート、ディフューザ、イオンサプレッサエレメント、チャック、静電ウエハチャック(ESC)、及びパックを含む。
【0225】
しかしながら、これらの必要な研削及び研磨プロセスは、焼結されたセラミック構成要素における亀裂及び/又は微小亀裂(目で容易に見ることができない亀裂)又は表面下欠陥などの欠陥を常に作り出す。図6に示すような少なくとも1つの第1の層100のプラズマ対向面106からチャンバ内への粒子放出を最小限に抑えるために、機械加工中の表面及び/又は表面下の欠陥の生成が最小限に抑えられることが好ましい。これらの表面欠陥及び/又は表面下の欠陥は、第1の層100のプラズマ対向面106上に、容易に目に見えて明らかにすることができないスケールで微小亀裂を引き起こす可能性があり、その後、少なくとも1つの第1の層100のプラズマ対向面106からプラズマ処理チャンバ内への粒子のその後の放出につながる可能性がある。加えて、第2の層102におけるより大きなスケールでの欠陥の存在は、材料の種類自体(この場合、脆性な非金属セラミック)と、(機械加工から生じる)傷又は欠陥サイズと、(加工から残る、及び/又は層間のCTE差に起因する、及び/又は焼結セラミック構成要素としての使用中に生じる)適用応力との間の相互関係に従って、材料の典型的な強度よりも低い強度での焼結体の破壊をもたらし得る。材料、傷の大きさ及び応力の間のこの関係は、A.A.Griffith in「The phenomena of rupture and flow in solids」Phil.Trans.Roy.Soc.London,Volume 221,Issue 582-593,01 January 1921報告された破壊力学に従う。
【0226】
焼結体に残る残留応力は、本明細書の多層焼結セラミック体を形成するための加熱、焼結、アニーリング及び冷却工程中に現れ得る層間のCTEの差から生じ得る。したがって、対象材料のCTEの差によって生じるこれらの内部応力を、周囲温度から本明細書に開示される焼結及びアニーリング温度までの、周囲温度(又は図に示されるように少なくとも200℃)から約1700℃(又は図に示されるように少なくとも約1400℃)の温度範囲にわたって(開示される範囲内で)CTEが一致する層としてそれらの材料を提供することによって最小化することが好ましい。
【0227】
多層焼結セラミック体の少なくとも1つの第1の層100、少なくとも1つの第2の層102、及び/又は少なくとも1つの第3の層103のいずれかの間のCTEの差が0.75×10-6/℃よりも大きい場合、機械加工又は穿孔工程中に、CTE不一致から生じるより大きな応力が少なくとも1つの第1の層にかかる可能性があり、少なくとも1つの第1の層100における微小亀裂の形態の表面又は表面下の損傷をもたらす可能性がある。少なくとも1つの第1の層に対するこの損傷は、層のスポーリング及び/又は浸食の増加をもたらし、その後、使用中にプラズマ対向面106からプラズマ処理チャンバ内への粒子の放出をもたらし得る。結果として、高い強度、十分な取り扱い性、及び機械加工による少なくとも1つの第1の層への最小限の表面損傷を有する多層焼結セラミック体を形成するために、多層焼結セラミック体の少なくとも1つの第1の層100、少なくとも1つの第2の層102及び少なくとも1つの第3の層103の間のCTE差は、開示された範囲内であることが好ましく、開示された方法に従って、周囲温度(又は図に示されるように約200℃)から約1700℃の温度範囲にわたって、CTEの差が実質的に測定されなかった0の値を含む、CTEが可能な限り厳密に一致することが好ましい。本明細書で使用される「CTE一致」という用語は、周囲温度から約1700℃以下の焼結温度の温度範囲にわたって、それぞれのCTE値(絶対値)が0~0.75×10-6以下だけ異なる、少なくとも1つの第1の層100、少なくとも1つの第3の層103、及び少なくとも1つの第2の層102の組み合わせを指す。
【0228】
したがって、実施形態では、第1、第2及び第3の層の熱膨張係数(CTE)の絶対値が、25~1700℃の温度範囲にわたって、又は200~1400℃の温度範囲にわたって、ASTM E228-17に従って測定して、約0~0.75×10-6/℃未満、好ましくは0~0.7×10-6/℃、好ましくは0~0.6×10-6/℃、好ましくは0~0.5×10-6/℃、好ましくは0~0.45×10-6/℃、好ましくは0~0.4×10-6/℃、好ましくは0~0.35×10-6/℃、好ましくは0~0.3×10-6/℃、好ましくは0~0.25×10-6/℃、好ましくは0~0.2×10-6/℃、好ましくは0~0.15×10-6/℃、好ましくは0~0.1×10-6/℃、好ましくは0~0.08×10-6/℃、好ましくは0~0.06×10-6/℃、好ましくは0~0.04×10-6/℃、好ましくは0~0.02×10-6/℃、好ましくは、0~0.01×10-6/℃の量で異なる、第1、第2及び第3の層のために選択される材料が好ましい。
【0229】
第1、第2及び第3の層の各々のCTEが、開示される温度範囲にわたって互いに交差しない(すなわち、CTEの差の絶対値が温度範囲にわたって0でない)実施形態では、第1、第2及び第3の層の熱膨張係数(CTE)の絶対値は、25~1700℃の温度範囲にわたって、又は200~1400℃の温度範囲にわたって、ASTM E228-17に従って測定して、約0.003×10-6/℃~0.75×10-6/℃、好ましくは0.003×10-6/℃~0.7×10-6/℃、好ましくは0.003×10-6/℃~0.6×10-6/℃、好ましくは0.003×10-6/℃~0.5×10-6/℃、好ましくは0.003×10-6/℃~0.45×10-6/℃、好ましくは0.003×10-6/℃~0.4×10-6/℃、好ましくは0.003×10-6/℃~0.35×10-6/℃、好ましくは0.003×10-6/℃~0.3×10-6/℃、好ましくは0.003×10-6/℃~0.25×10-6/℃、好ましくは0.003×10-6/℃~0.2×10-6/℃、好ましくは0.003×10-6/℃~0.15×10-6/℃、好ましくは0.003×10-6/℃~0.1×10-6/℃、好ましくは0.003×10-6/℃~0.08×10-6/℃、好ましくは0.003×10-6/℃~0.06×10-6/℃、好ましくは0.003×10-6/℃~0.04×10-6/℃、好ましくは0.003×10-6/℃~0.02×10-6、好ましくは0.003×10-6/℃~0.01×10-6/℃の量で異なり得る。
【0230】
少なくとも1つの第1、第2及び第3の層の間の熱膨張係数の差の絶対値の開示された範囲は、好ましくは、本明細書に開示される方法に従って、ある温度範囲にわたって維持される。第1、第2及び第3の層の間の熱膨張係数の差の絶対値の所望の範囲は、好ましくは、周囲温度(又は図に示されるように少なくとも200℃)から約1700℃(又は図に示されるように少なくとも約1400℃)、好ましくは200℃~1400℃の温度範囲にわたって、好ましくは1000℃~1700℃の焼結温度範囲及び/又は900℃~1800℃のアニーリング温度範囲にわたって維持される。
【0231】
本明細書に開示されるCTEが一致した多層焼結セラミック体の使用は、少なくとも1つの第2の層102のいずれかの側に対称的にバランスのとれた一致するCTEによって、少なくとも1つの第3の層103を提供することによって、少なくとも1つの第1の層100上の応力(及びそれによってプラズマ処理チャンバ内の粒子生成の可能性)を低減し、(表面下及び/又は表面の損傷の低減によって)機械加工性を改善することができる。更に、少なくとも1つの第2の層102の組成は、開示された範囲内で少なくとも1つの第1の層100及び/又は少なくとも1つの第3の層103とCTEが一致するように選択されてもよい。
【0232】
層間及び層内のこの低減された応力は、機械加工中の表面及び表面下の損傷の影響を低減することができ、それによって、少なくとも1つの第1の層100のプラズマ対向面106からの粒子生成を低減することができる一方で、本明細書に開示される多層焼結セラミック体(及びそれから製造された構成要素)の全体的な強度及び機械加工性を改善することができる。
【0233】
層のいずれかの間のCTEの絶対値がこれらの範囲内で変化する場合、改善された機械加工性、低減された表面及び表面下の欠陥とともに高い強度を有する多層焼結セラミック体、特に大きな(>100mm)寸法のものが、本明細書に開示される圧力支援方法を使用して形成され得る。
【0234】
装置/放電プラズマ焼結ツール
本明細書に開示される多層焼結セラミック体を調製するための装置は、好ましくは、内壁及び外壁を含む側壁を含むダイであって、内壁が、少なくとも1つのセラミック粉末(又は場合によっては少なくとも1つの粉末混合物)を受け入れることができる内容積を画定する直径を有する、ダイと;ダイと動作可能に連結された上部パンチ及び下部パンチであって、上部パンチ及び下部パンチの各々が、ダイの内壁の直径よりも小さい直径を画定する外壁を有し、それによって、上部パンチ及び下部パンチの少なくとも一方がダイの内容積内で移動させられるときに、上部パンチ及び下部パンチの各々とダイの内壁との間に間隙を生成し、この間隙は、10μm~100μm幅であり、少なくとも1つの粉末混合物は、ASTM C1274に従って測定して1~10m/gの比表面積(SSA)を有する、上部パンチ及び下部パンチと、を備える、放電プラズマ焼結ツールである。
【0235】
図28に示すように、本明細書に開示される圧力支援焼結プロセス(及び好ましい実施形態では、SPSなどの圧力及び電流支援焼結プロセス)は、ドーパント及び/又は焼結助剤を使用することなく、ツールセット(粉末圧縮体)内に配置された少なくとも3層の粉末混合物から単一の多層焼結セラミック体98の調製を提供する。単一の多層焼結体98は、粉末混合物の層(少なくとも1つの第1の層100に対応する100a、少なくとも1つの第2の層102に対応する102a、及び少なくとも1つの第3の層103に対応する103aとして図28に示され(したがって粉末成形体を形成する))から(in-situ焼結後に)形成され、その後、焼結体の少なくとも1つの第1の層100、第2の層102、及び第3の層103にそれぞれ形成される(当該技術分野で一般的なフィルム、テープ、又はグリーン体の形成はない)。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの第1及び第3の粉末混合物の配置の順序は、逆であってもよい。実施形態では、粉末混合物の少なくとも1つを焼成することができ、一方で、他の実施形態では、全ての粉末混合物を焼成することができる。図1及び図2とは対照的に、圧力支援方法は、当業者に知られているような無圧法の焼結速度を適合させる必要なしに、高密度の単一の多層焼結セラミック体を生成する。多層焼結体の少なくとも1つの第1の層100と第2の層102と第3の層103との間のCTE差の絶対値は、図4に示されるように、開示された範囲外のCTE不一致(焼結中及びアニーリングなどの他の熱エクスカーション中に経験され得る)から生じる亀裂及び破壊を回避するために、本明細書に開示された範囲内であることが好ましい。
【0236】
図29は、セラミック粉末及び/又は粉末混合物を焼結するために使用される簡略化されたダイ/パンチ配置を有するSPSツール1を示す。典型的には、ダイ/パンチの配置は、当業者によって認識されるように真空チャンバ(図示せず)内にある。図29を参照すると、放電プラズマ焼結ツール1は、セラミック粉末又は粉末混合物5を受け入れることができる内容積を画定する直径を有する内壁8を含む側壁を有するダイシステム2を備える。
【0237】
更に図29を参照すると、放電プラズマ焼結ツール1は、ダイシステム2と動作可能に結合された上部パンチ4と下部パンチ4’を備え、上部パンチ4及び下部パンチ4’の各々はダイシステム2の内壁8の直径よりも小さい直径を画定する外壁11を有し、それによって、上部パンチ4及び下部パンチ4’の少なくとも1つがダイシステム2の内容積内で移動するときに、上部パンチ4及び下部パンチ4’の各々とダイシステム2の内壁8との間に間隙3を形成する。
【0238】
ダイシステム2及び上部パンチ4と下部パンチ4’は少なくとも1つのグラファイト材料を含み得る。特定の実施形態では、本明細書に開示するグラファイト材料は、少なくとも1つの等方性グラファイト材料を含み得る。他の実施形態では、本明細書に開示するグラファイト材料は、例えば、炭素-炭素複合体などの少なくとも1つの強化グラファイト材料、及び等方性グラファイト材料のマトリックス中の炭素などの他の導電性材料の繊維、粒子、又はシート又はメッシュ、又は積層体を含むグラファイト材料を含み得る。他の実施形態では、ダイと上部及び下部パンチはこれらの等方性及び強化グラファイト材料の組み合わせを含む。
【0239】
例えば、ダイ6及びパンチ4と4’などのツールの部品の一部又は全てに使用されるグラファイト材料は多孔性グラファイト材料を含んでもよく、それは、約5%~約20%、約5%~約17%、約5%~約13%、約5%~約10%、約5%~約8%、約8%~約20%、約12%~約20%、約15%~約20%、約11%~約20%、約5%~15%、6%~約13%、好ましくは約7%~約12%の多孔率を示す。
【0240】
好ましくは、グラファイト材料は、0.4~5.0μm、好ましくは1.0~4.0μmの平均細孔径(細孔直径)を有し、最大30μm、好ましくは最大20μm、好ましくは最大10μmの表面細孔径を有する細孔を含む。より好ましくは、10~30μmの表面細孔径を有する細孔が存在し得る。
【0241】
本明細書に開示するツールに使用されるグラファイト材料は、<0.05mm、好ましくは<0.04mm、好ましくは<0.03mm、好ましくは<0.028mm、好ましくは<0.025mm、好ましくは<0.02mm、好ましくは<0.018mm、好ましくは<0.015mm、好ましくは<0.010mmの平均結晶粒サイズを有し得る。
【0242】
本明細書に開示するツールに使用されるグラファイト材料は、>0.001mm、好ましくは>0.003mm、好ましくは>0.006mm、好ましくは>0.008mm、好ましくは>0.010mm、好ましくは>0.012mm、好ましくは>0.014mm、好ましくは>0.020mm、好ましくは>0.025mm、好ましくは>0.030mmの平均結晶粒サイズを有し得る。
【0243】
本明細書に開示するツールに使用されるグラファイト材料は、≧1.45g/cm、好ましくは≧1.50g/cm、好ましくは≧1.55g/cm、好ましくは≧1.60g/cm、好ましくは≧1.65g/cm、好ましくは≧1.70g/cm、好ましくは≧1.75g/cmの密度を有し得る。
【0244】
本明細書に開示されるツールに使用されるグラファイト材料は、<2.0g/cm、好ましくは1.90g/cm、好ましくは<1.85g/cm、好ましくは<1.80g/cmの密度を有し得る。
【0245】
実施形態では、グラファイト材料は、≧3.3×10-6/℃、≧3.5×10-6/℃、≧3.7×10-6/℃、≧4.0×10-6/℃、≧4.2×10-6/℃、≧4.4×10-6/℃、≧4.6×10-6/℃、≧4.8×10-6/℃の、約400~約1400℃の温度範囲にわたる熱膨張係数(CTE)を有する。
【0246】
実施形態では、グラファイト材料は、<7.2×10-6/℃、好ましくは<7.0×10-6/℃、好ましくは<6.0×10-6/℃、好ましくは<5.0×10-6/℃、好ましくは<4.8×10-6/℃、好ましくは<4.6×10-6/℃の、約400~1400℃の温度範囲にわたる熱膨張係数(CTE)を有し得る。
【0247】
表9に本明細書に開示する例示的なグラファイト材料の特性を列記する。
【0248】
【表9】
【0249】
図25のa)~図25のc)の実施形態に図示されるように、ダイシステム2は、ダイ6、及び必要に応じて、しかし好ましくはダイの内壁上に位置する少なくとも1つの伝導性ホイル7を含む。ダイの内壁上の伝導性ホイルの数に制限はなく、1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10個の伝導性ホイルを、ダイ6及び上部パンチ4と下部パンチ4’の各々との間の円周ライナーとして設けてもよく、それによって、ダイシステム2の内壁8(存在する場合少なくとも1つの伝導性ホイルを含む)と上部及び下部パンチの各々の外壁11が間隙3を画定する。少なくとも1つの伝導性ホイル7は、本明細書に開示する方法に従った温度範囲内で安定なグラファイト、ニオブ、ニッケル、モリブデン、白金、及び他の延性、導電性材料並びにそれらの組み合わせを含む。
【0250】
特定の実施形態では、伝導性ホイルは本明細書に開示する可撓性かつ圧縮性のグラファイトホイルを含み得、以下の特性、すなわち、
・ 99wt%超、好ましくは99.2wt%超、より好ましくは99.4wt%超、より好ましくは99.6wt%超、より好ましくは99.8wt%超、より好ましくは99.9wt%超、より好ましくは99.99wt%超、より好ましくは99.999wt%超の炭素含有量;
・ 500ppm未満、好ましくは400ppm未満、より好ましくは300ppm未満、より好ましくは200ppm未満、より好ましくは100ppm未満、より好ましくは50ppm未満、より好ましくは10ppm未満、より好ましくは5ppm未満、より好ましくは3ppm未満の不純物;
・ 4.0~6.0MPa、好ましくは4.2~5.8MPa、より好ましくは4.4又は5.6MPaの範囲のグラファイトホイルの引張強度、及び/又は
・ 好ましくは1.0~1.2g/cc、好ましくは1.02~1.18g/cc、より好ましくは1.04~1.16g/cc、より好ましくは1.06~1.16g/ccの好ましくは範囲内のグラファイトホイルのバルク密度のうちの1つ以上を有する。
【0251】
実施形態では、少なくとも1つのホイルは、典型的にはグラファイトを含む。特定の実施形態では、ダイシステムの一部としての少なくとも1つのホイルは、ダイの表面と上部及び下部パンチの各々との間の円周ライナーを含み得る。
【0252】
グラファイトホイルは、焼結中の粉末全体の温度分布を改善することができる。表10は、本明細書に開示される実施形態による例示的なグラファイトホイルの特性を列挙している。
【0253】
【表10】
【0254】
ここで図30のa)、図25のb)及び図30のc)を参照し、グラファイトホイル配置の実施形態を有するSPSツールセットを示す。少なくとも1つのセラミック粉末(又は粉末混合物)5は、上部パンチ4及び下部パンチ4’のうちの少なくとも1つの間に置かれ、間隙3は上部パンチ及び下部パンチの各々の外壁11とダイシステム2の内壁8との間に示されている。図30のa)、図30のb)及び図30のc)は、それぞれ1~3層の伝導性ホイル7を、またダイ6をダイシステム2の一部として示す。したがって、間隙は、ダイシステム2の内壁8から上部及び下部パンチの各々の外壁11まで延びる。間隙の間隔は、加熱及び焼結の前及び/又は最中に粉末を脱気できるように整えられ、また同時にパンチとダイとの間のオーミック接触も維持して加熱及び焼結中のセラミック粉末又は粉末混合物全体の温度分布を改善する。
【0255】
グラファイトホイル7は、例えば、0.025~0.260mm、好ましくは0.025~0.200mm、好ましくは0.025~0.175mm、好ましくは0.025~0.150mm、好ましくは0.025~0.125mm、好ましくは0.035~0.200mm、好ましくは0.045~0.200mm、好ましくは0.055~0.200mmの厚さを有し得る。
【0256】
間隙3の間隔は、上部パンチ4及び下部パンチ4’に最も近いホイル7の内向きの面から、上部及び下部パンチの各々の外壁11の外壁までで測定される。間隙3の間隔の好ましい範囲は、好ましくは10~100μm、好ましくは10~70μm、好ましくは10~60μm、好ましくは10~50μm、好ましくは30~70μm、好ましくは20~60μm、好ましくは30~60μmである。
【0257】
更に、ダイシステム2の内壁8と上部パンチ4及び下部パンチ4’の各々の外壁11との間の間隙3の幅は、一方では予熱、加熱、及び焼結プロセス中の粉末の脱気が十分に容易になるように、他方ではジュール又は抵抗加熱に十分な電気的接触を得て焼結を行なわれるように、当業者は決定することができる。間隙3の間隔が10μm未満である場合、ダイシステムの内容積内で上部及び下部パンチの少なくとも1つを移動させ、それによりツールセットを組み立てるために必要な力は、ツールセットに損傷を引き起こす場合がある。更に、10μm未満の間隙3は、粉末5内に吸着されたガス、有機物、湿気などを逃がすことができず、それにより、製造中のプロセス時間が延び、多孔性を残存させることにより、得られる焼結セラミック体の密度を低下させる場合がある。セラミック粉末又は粉末混合物を焼結するときに、間隙3の幅が70μmを超える場合、局所的な過熱が生じ、焼結中にツールセット内に熱勾配が生じる可能性がある。結果として、大きな寸法(最大寸法で約625mmまで)の多層焼結セラミック体(本明細書に開示されるものなど)を形成するためには、10~100μmの間隙が好ましい。したがって、いくつかの実施形態では、セラミック粉末又は粉末混合物を焼結するときのダイシステム2の内壁8と上部及び下部パンチの各々の外壁11との間の間隙3の間隔は、好ましくは10~100μm、好ましくは10~70μm、好ましくは10~60μm、好ましくは10~50μm、好ましくは10~40μm、好ましくは20~70μm、好ましくは30~70μm、好ましくは40~70μm、好ましくは50~70μm、好ましくは30~60μmである。
【0258】
これらの熱勾配は、低い全体バルク密度又は高い密度偏差、並びに壊れやすく破損しやすい焼結セラミック体をもたらす可能性がある。その結果、本明細書に開示されるようにセラミック粉末又は粉末混合物を焼結するときのダイシステム2の内壁8と上部及び下部パンチの各々の外壁11との間の間隙3の間隔は、10~100μm、好ましくは10~70μm、好ましくは10~60μm、好ましくは10~40μm、好ましくは20~70μm、好ましくは40~70μm、好ましくは50~70μm、好ましくは30~70μm、好ましくは40~60μmである。特定の理論に拘束されることを意図するものではないが、焼結中のダイシステム2の内壁8と上部及び下部パンチの各々の外壁11との間の間隙の間隔は、焼結プロセス中に粉末の有機物、水分、吸着分子などの脱気を促進するように機能すると考えられる。これにより、本明細書に開示される多層体などの焼結セラミック体は、高密度及び低い体積多孔率を有し、機械的特性が改善された大型のものとなり、その結果、セラミック体を容易に取り扱い、破損することなくチャンバ構成要素の所定の形態に機械加工することができる。本明細書に開示するように作製された多層焼結セラミック体は、多層焼結セラミック体98の最大寸法に関して100mm~約625mmの寸法を有し得る。
【0259】
実際には、上部パンチ4及び下部パンチ4’は、常に中心軸の周りに完全に整列されているわけではない。図31のa)及び図31のb)はツールセット1の平面図であり、中心軸9を中心とした上部パンチ4及び下部パンチ4’、間隙3、任意の数の伝導性ホイル7、及びダイシステム2の配置を示す。図31のa)Aに示した実施形態では、間隙は中心軸9を中心として軸対称であり得る。図31のb)に示した他の実施形態では、間隙は中心軸9を中心として非対称であり得る。間隙3は、セラミック粉末又は粉末混合物を焼結して、本明細書に開示されるような多層焼結セラミック体を形成するとき、図示されるような軸対称及び非対称の両方の実施形態では、10μm~100μmの間で延在し得る。
【0260】
間隙の非対称性能は、一定範囲の温度にわたるCTEの半径方向の絶対偏差解析を行なうことによって測定することができる。例えば、図32に、本明細書に開示する装置のパンチ及びダイとして使用される2つの等方性グラファイト材料(A及びB)の1200℃における平均CTEからの半径方向の偏差を示す。図32は、所望の間隙を大きな温度範囲にわたってうまく維持することができる材料では、例えば室温から2000℃までで、半径方向の偏差がx-y平面において最大で>0.3x10-6ppm/℃では変化し得ないことを示している。材料Bは、x-y平面内で許容できないCTEの広がりを示すが、材料Aは、温度範囲全体を通して許容可能なCTEの広がりを示した。
【0261】
一実施形態に従って使用される特定のツールセットの設計の利点は、高くて均一な密度及び低い体積多孔率を有する非常に高い純度の大きな多層焼結セラミック体を得るための全体的な技術的効果をもたらし得、それによって、本開示による焼結プロセス、特にSPSプロセスにおける破壊の傾向が低減される。したがって、ツールセットに関して開示される全ての特徴はまた、100mmを超え約625mm以下の寸法の多層焼結セラミック体の製品にも適用される。
【0262】
本明細書に開示するツールセットの使用により、焼結するセラミック粉末又は粉末混合物5中のより均質な温度分布を実現することが可能になり、非常に高く(所与の材料の理論密度の>98%)かつ均一な密度(最大寸法にわたって<4%の変動)を有する、それにより破壊の傾向が低減される焼結セラミック体、特に最大寸法で例えば100mm及び/又は200mmを超える大きな寸法(約625mm以上を含む)のものを作製することが可能になる。「均質」という用語は、材料又はシステムが全体として実質的に同じ特性を有し、不規則性がなく均一であることを意味する。したがって、「均質な温度分布」とは、温度分布が空間的に均一であり、著しい勾配を有さないこと、すなわち、セラミック粉末又は粉末混合物5に沿った水平x-y平面内の位置にかかわらず、実質的に均一な温度が存在することを意味する。
【0263】
開示するツールセットは更に、スペーサ要素、シム、ライナー、及び他のツールセット構成要素を含んでもよい。典型的には、そのような構成要素は、本明細書に開示する特性を有するグラファイト材料のうちの少なくとも1つから製造される。
【0264】
図33に示すように、本明細書に開示される技術の実施形態は、「エッチング処理システム」とも呼ばれる、半導体エッチングプロセスで使用するように構成することができるプラズマ処理システム9500で使用するための構成要素として有用であり得る。エッチング処理システム9500は、遠隔プラズマ領域を含むことができる。遠隔プラズマ領域は、遠隔プラズマ源(「RPS」)とも呼ばれる遠隔RF源/マッチングネットワーク9502を含むことができる。
【0265】
エッチング処理システム9500は、耐食性チャンバライナー(図示せず)を有する真空チャンバ9550と、真空源と、基板とも呼ばれるウェハ50が支持されるチャック又は静電チャック(「ESC」)9509とを備えることができる。カバーリング又は電極カバー9514、上部シールドリング9512、及びシールドリング9513は、ウェハ50及びパック9509を取り囲む。上部プレート/窓/蓋9507は、真空チャンバ9550の上壁を形成する。シャワーヘッド9517は、真空チャンバ9650の上壁を形成するか、又は上壁の下に取り付けられる。上部プレート/窓/蓋9507(RF窓又は誘電体窓を含んでいてもよい、ガス分配システム9506、シャワーヘッド9517、カバーリング又は電極カバー9514、上部シールドリング9512、シールドリング9513、チャンバライナー(図示せず)、並びにチャック又は静電チャック(ESC)9508及びパック9509は、本明細書に開示される多層焼結セラミック体の実施形態の少なくとも一部で作製されてもよい。
【0266】
シャワーヘッド9517の表面の一部は、シールドリング9712で覆われてもよい。シャワーヘッド9517の表面の一部、特にシャワーヘッド9517の表面の半径方向側面は、上部シールドリング9710で覆われてもよい。シールドリング9712、カバーリング9517、及び上部シールドリング9710は、本明細書に開示される多層焼結セラミック体の実施形態から少なくとも部分的に作製されてもよい。
【0267】
遠隔プラズマ源9502は、加工されるウェハ50を収容するチャンバ9550の窓9507の外側に設けられる。遠隔プラズマ領域は、ガス送出システム9506を介して真空チャンバ9550と流体連通することができる。チャンバ9550内では、加工ガスをチャンバ9550に供給し、高周波数出力をプラズマ源9502に供給することによって、反応性プラズマを生成することができる。こうして生成された反応性プラズマを用いることによって、ウェハ50に対して所定のプラズマ処理が行なわれる。エッチング処理システム9500の高周波数アンテナには、所定のパターンを有する平面アンテナが広く用いられている。
【0268】
図34に示すように、本明細書に開示される技術の実施形態は、「堆積処理システム」とも呼ばれる、半導体堆積プロセスで使用するように構成され得るプラズマ処理システム9600における構成要素として有用であり得る。堆積処理システム9600は、真空チャンバ9650と、真空源と、半導体基板としても示されるウェハ50が支持されるチャック9609と、を含む。処理システムは、処理ガスを真空チャンバ9650の内部に供給するためのガス送出システム9616と流体連通するノズル又はインジェクタ9614を更に含み得る。チャンバ9650の上壁9700は、中央ガスインジェクタ(ノズルとも呼ばれる)9614を受け入れるように構成された中央開口部を含むことができる。特定の実施形態では、チャンバの上壁9700は、インジェクタ9614を収容するための中央開口部を有するように構成されたRF窓又は誘電体窓を備えることができる。RFエネルギー源は、プロセスガスにエネルギーを与えプラズマ状態にし、基板50を処理する。RF又は誘電体窓9700、ガス送出システム9616、及び中央ガスインジェクタ9614を含む上壁の実施形態は、本明細書に開示されるような多層焼結セラミック体の実施形態から全体的に又は部分的に作製され得る。
【0269】
堆積処理システム9600は、ウェハ50を保持するように設計された静電チャック9608を更に含むことができる。チャック9608は、ウェハ50を支持するため、パック9609を含むことができる。パック9609の支持面の一部は、堆積リング9615で覆われてもよい。堆積シールド又は堆積リングアセンブリなどの堆積リング9615の他の名称は、同義であると解釈され、本明細書では互換的に使用され得る。堆積リング9615は、本明細書に開示されるような多層焼結セラミック体の実施形態から全体的に又は部分的に作製することができる。
【0270】
パック9609は、本明細書に開示されるように多層焼結セラミック体の実施形態から全体的に又は部分的に形成されてもよく、パック9609上に配置された時にウェハ50を静電的に保持するためにパック9609の支持面に近接してパック内に配置されたチャッキング電極を有してもよい。チャック9608は、パック9609を支持するために延びるリング状を有するベース9611と、ベースとパックとの間に配置され、パック9609とベース9610との間に間隙が形成されるようにベースの上方でパックを支持するシャフト9610と、を含むことができ、シャフト9610は、パック9609の周縁部に近接してパックを支持する。チャック9608、パック9609、及び堆積リング9615は、全体的に又は部分的に、本明細書に開示されるような単一の多層焼結セラミック体の実施形態から作製することができる。
【0271】
調製方法
多層焼結セラミック体の調製は、例えば、電界支援焼結技術(FAST)としても知られる放電プラズマ焼結(SPS)又は直流焼結(DCS)などの圧力支援焼結の使用によって達成されてもよい。これらの直流焼結技術及び関連技術は、導電性ダイ構成又はツールセットを加熱し、それによって焼結される材料を加熱するために直流を使用する。この加熱様式によって、非常に高い加熱及び冷却速度を適用することができ、結晶粒成長を促進する拡散メカニズムを超える高密度化メカニズムを増強して、非常に微細な結晶粒径のセラミック焼結体の調製を容易にし、元の粉末の固有の特性をそれらのほぼ又は十分に高密度の生成物に移すことができる。本明細書に開示される直流圧力支援方法は、本明細書に開示されるツールセットを加熱するために、好ましくはパルス化されていない連続直流電流を利用する。
【0272】
本明細書に開示される多層焼結セラミック体の調製はまた、ダイ構成又はツールセットが、誘導加熱等の外部から適用される熱源によって加熱される、一軸ホットプレス等の圧力支援焼結法の使用によって達成されてもよい。
【0273】
多層焼結セラミック体は、次の一般的なプロセス工程:
a)イットリア、アルミナ、マグネシアからなる群から選択される少なくとも2つの粉末と、安定化ジルコニア、部分安定化ジルコニア及び安定化ジルコニア、並びにそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つとを組み合わせて、第1の粉末混合物を作製する工程と、b)アルミナ粉末と、部分安定化ジルコニア粉末及び安定化ジルコニア粉末のうちの少なくとも1つとを組み合わせて第2の粉末混合物を作製する工程と、c)イットリア粉末と、アルミナ粉末と、非安定化ジルコニア、部分安定化ジルコニア、及び安定化ジルコニア粉末のうちの少なくとも1つとを組み合わせて第3の粉末混合物を作製する工程と、d)第1、第2及び第3の粉末混合物のうちの少なくとも1つを、熱を加えて粉末混合物うちの少なくとも1つの温度を焼成温度に上昇させ、焼成温度を維持して焼成を行ない、少なくとも1つの第1、第2、及び第3の焼成粉末混合物を形成することによって、焼成する工程と、e)焼結装置のツールセットによって画定された内容積内に少なくとも1つの第1、第2、及び第3の粉末混合物を別々に配置して、第1の粉末混合物の少なくとも1つの層、第2の粉末混合物の少なくとも1つの層、及び第3の粉末混合物の少なくとも1つの層を形成し、容積内に真空条件を作り出す工程であって、ツールセットが、内壁及び外壁を含む側壁を含むダイと、ダイと動作可能に結合された上部パンチ及び下部パンチとを備え、内壁は、少なくとも1つの粉末を受け入れることができる内容積を画定する直径を有し、上部パンチ及び下部パンチの各々は、ダイの内壁の直径よりも小さい直径を画定する外壁を有し、それにより、上部パンチ及び下部パンチのうちの少なくとも1つがダイの内容積内で移動するときに、上部パンチ及び下部パンチの各々とダイの内壁との間に間隙を画定し、間隙は10μm~100μmの幅である、工程と、f)焼結温度まで加熱しながら第1、第2及び第3の焼成粉末混合物の層に圧力を加え、焼結を行って多層焼結セラミック体を形成する工程であって、第1の粉末混合物の少なくとも1つの層が少なくとも1つの第1の層を形成し、第2の粉末混合物の少なくとも1つの層が少なくとも1つの第2の層を形成し、第3の粉末混合物の少なくとも1つの層が少なくとも1つの第3の層を形成する、工程と、
g)多層焼結セラミック体の温度を低下させる工程とによって調製され、少なくとも1つの第1の層は、(i)YAG、(ii)アルミン酸マグネシウムスピネル、並びに(iii)イットリア及びジルコニアからなる群から選択されるセラミック材料の少なくとも1つの多結晶相を含み、ジルコニアは、10モル%以上のZrOの量及び25モル%以下のZrO、好ましくは12モル%以上25モル%以下のZrO、好ましくは15モル%以上25モル%以下のZrO、好ましくは18モル%以上25モル%以下のZrO、好ましくは10モル%以上23モル%以下のZrO、好ましくは10モル%以上20モル%以下のZrO、好ましくは15モル%以上23モル%以下のZrOを含み、(残部がYを含み)、少なくとも1つの第2の層は、アルミナ及びジルコニアを含み、ジルコニアは安定化ジルコニア及び部分安定化ジルコニアのうちの少なくとも1つを含み、少なくとも1つの第3の層は、イットリア、アルミナ、及びジルコニアからなる群から選択される少なくとも1つを含み、ジルコニアは非安定化ジルコニア、安定化ジルコニア及び部分安定化ジルコニアのうちの少なくとも1つを含み、少なくとも1つの第2の層が少なくとも1つの第1の層と少なくとも1つの第3の層との間に配置され、少なくとも1つの第1、第2及び第3の層のいずれかの間の熱膨張係数(CTE)の差の絶対値が、ASTM E228-17に従って測定して0~0.75×10-6/℃であり、少なくとも1つの第1、第2及び第3の層が単一の焼結セラミック体を形成する。好ましい実施形態では、イットリア、アルミナ、マグネシア、並びに工程a)、b)及びc)による非安定化ジルコニア、部分安定化ジルコニア及び安定化ジルコニアからなる群から選択される少なくとも1つからなる群から選択される粉末は各々、ASTM C1274に従って測定して、約18m/g以下、好ましくは約1~約18m/gの比表面積を有する。好ましくは、第1、第2及び第3の粉末混合物は、第1、第2及び第3の粉末混合物の質量に対して測定して200ppm以下の総不純物含有量を有する。
【0274】
少なくとも1つの第2の粉末混合物は、アルミナ及びジルコニアを含み、ジルコニアは、安定化ジルコニア及び部分安定化ジルコニアのうちの少なくとも1つを含む。少なくとも1つの第2の粉末混合物は、少なくとも1つの第2の粉末混合物の重量に対して60重量%~92.5重量%、好ましくは75重量%~85重量%、好ましくは約77重量%の量のアルミナを含む。少なくとも1つの第2の粉末混合物は、少なくとも1つの第2の粉末混合物の重量に対して7.5重量%~40重量%、好ましくは15重量%~25重量%、好ましくは約23重量%の量のジルコニア(安定化ジルコニア及び部分安定化ジルコニアのうちの少なくとも1つを形成するための安定剤を含む)を含む。焼結後に、少なくとも1つの第2の粉末混合物のこれらの組成範囲は、各々少なくとも1つの第2の層102の体積に対して、5~30体積%、好ましくは10~30体積%、好ましくは15~30体積%、好ましくは20~30体積%、好ましくは12~25体積%、好ましくは15~25体積%、好ましくは17~25体積%、好ましくは10~22体積%、好ましくは10~20体積%、好ましくは10~17体積%、好ましくは15~21体積%、好ましくは16~20体積%、好ましくは約16体積%の量のジルコニア(焼結後)を含む少なくとも1つの第2の層102に対応する(残部はアルミナを含む)。ジルコニアのこれらの体積量は、本明細書に開示される方法に従って、SEM画像化及びImageJ分析ソフトウェアの組み合わせを使用して測定され得る。
【0275】
少なくとも1つの第3の粉末混合物は、イットリア、アルミナ及びジルコニアからなる群から選択される少なくとも1つを含み、ジルコニアは、安定化ジルコニア、部分安定化ジルコニア及び安定化ジルコニアのうちの少なくとも1つを含む。少なくとも1つの第3の粉末混合物は、イットリアを、少なくとも1つの第3の粉末混合物の重量に対して1~57重量%、好ましくは3~57重量%、好ましくは5~57重量%、好ましくは1~40重量%、好ましくは1~30重量%、好ましくは3~30重量%、好ましくは5~30重量%、好ましくは5~15重量%、好ましくは約6重量%の量で含む。少なくとも1つの第3の粉末混合物は、少なくとも1つの第3の粉末混合物の重量に対して43重量%~92.5重量%、好ましくは65重量%~75重量%、好ましくは約73重量%の量のアルミナを含む。少なくとも1つの第3の粉末混合物は、少なくとも1つの第3の粉末混合物の重量に対して、約0.4重量%~40重量%、好ましくは4重量%~40重量%、好ましくは15重量%~40重量%、好ましくは15重量%~25重量%、好ましくは約21重量%の量のジルコニア(安定化及び/又は非安定化を形成するために適用可能な場合、安定剤を含む)を含む。焼結後に、少なくとも1つの第3の粉末混合物のこれらの組成範囲は、図26のa)及び図26のb)に示すように、YAG、ジルコニア及びアルミナの多相構造を含む少なくとも1つの第3の層103の例示的なSEM画像に対応し得る。好ましい実施形態では、少なくとも1つの第3の粉末混合物は、各々少なくとも1つの第3の層103の体積に対して、約5~約30体積%、好ましくは5~25体積%、好ましくは5~20体積%、好ましくは5~16体積%、好ましくは10~30体積%、好ましくは15~30体積%、好ましくは20~30体積%、好ましくは15~20体積%の量のZrOを含む少なくとも1つの第3の層(焼結後)のための量のジルコニアを含む(残部は、Y及びAlを含む)。
【0276】
以下の追加工程は必要に応じてである:h)アニーリング温度に達するまで熱を加えて多層焼結セラミック体の温度を上昇させてアニーリングを行なうことにより、多層焼結セラミック体をアニーリングする工程と、i)アニーリングした多層焼結セラミック体の温度を低下させる工程と、j)多層焼結セラミック体又はアニーリングした多層焼結セラミック体を機械加工して、窓、蓋、誘電体窓、RF窓、リング、フォーカスリング、プロセスリング、堆積リング、ノズル、インジェクタ、ガスインジェクタ、シャワーヘッド、ガス分配プレート、ディフューザ、イオンサプレッサエレメント、チャック、静電ウエハチャック(ESC)、及びパックの形状の多層焼結セラミック体を作製する工程とがある。
【0277】
いくつかの実施形態では、必要に応じてのアニーリング工程が行われてもよい。必要に応じて、アニーリングは、熱を加えて多層焼結セラミック体の温度を上昇させてアニーリング温度に到達させ、アニーリングを行い、焼結及びアニーリングした多層焼結セラミック体の温度を、ボディに適用された熱源を除去することによって周囲温度まで低下させ、多層焼結セラミック体を移すことによって行われる。
【0278】
一実施形態による耐食性多層焼結セラミック体の上述の特性は、部分的には、第1、第2及び第3の粉末混合物の純度及び比表面積(SSA)、第1、第2及び第3の粉末混合物への圧力、第1、第2及び第3の粉末混合物の温度、第1、第2及び第3の粉末混合物の焼結の持続時間、必要に応じてのアニーリング工程中の多層焼結セラミック体の温度、並びに必要に応じてのアニーリング工程の持続時間を適合させることによって達成される。
【0279】
多層焼結セラミック体を調製する方法が開示され、この方法は、a)イットリア、アルミナ、マグネシアからなる群から選択される少なくとも2つの粉末と、安定化ジルコニア、部分安定化ジルコニア及び安定化ジルコニア、並びにそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つとを組み合わせて、第1の粉末混合物を作製する工程と、b)アルミナ粉末と、部分安定化ジルコニア粉末及び安定化ジルコニア粉末のうちの少なくとも1つとを組み合わせて第2の粉末混合物を作製する工程と、c)イットリア粉末と、アルミナ粉末と、非安定化ジルコニア、部分安定化ジルコニア、及び安定化ジルコニア粉末のうちの少なくとも1つとを組み合わせて第3の粉末混合物を作製する工程と、d)第1、第2及び第3の粉末混合物のうちの少なくとも1つを、熱を加えて粉末混合物の温度を焼成温度に上昇させ、焼成温度を維持して焼成を行ない、少なくとも1つの第1、第2、及び第3の焼成粉末混合物を形成することによって、焼成する工程と、e)焼結装置のツールセットによって画定された内容積内に第1、第2、及び第3の粉末混合物を別々に配置して、第1の粉末混合物の少なくとも1つの層、第2の粉末混合物の少なくとも1つの層、及び第3の粉末混合物の少なくとも1つの層を形成し、容積内に真空条件を作り出す工程であって、ツールセットが、内壁及び外壁を含む側壁を含むダイと、ダイと動作可能に結合された上部パンチ及び下部パンチとを備え、内壁は、少なくとも1つの粉末を受け入れることができる内容積を画定する直径を有し、上部パンチ及び下部パンチの各々は、ダイの内壁の直径よりも小さい直径を画定する外壁を有し、それにより、上部パンチ及び下部パンチのうちの少なくとも1つがダイの内容積内で移動するときに、上部パンチ及び下部パンチの各々とダイの内壁との間に間隙を画定し、間隙は10μm~100μmの幅である、工程とを含む。f)焼結温度まで加熱しながら少なくとも1つの第1、第2及び第3の焼成粉末混合物の層に圧力を加え、焼結を行って多層焼結セラミック体を形成する工程であって、焼結後の第1の粉末混合物の少なくとも1つの層が少なくとも1つの第1の層を形成し、第2の粉末混合物の少なくとも1つの層が少なくとも1つの第2の層を形成し、第3の粉末混合物の少なくとも1つの層が少なくとも1つの第3の層を形成する、工程と、g)多層焼結セラミック体の温度を低下させる工程とを含み、少なくとも1つの第1の層は、(i)YAG、(ii)アルミン酸マグネシウムスピネル、並びに(iii)イットリア及びジルコニアからなる群から選択されるセラミック材料の少なくとも1つの結晶相を含み、ジルコニアは、10モル%以上のZrOの量及び25モル%以下のZrO、好ましくは12モル%以上25モル%以下のZrO、好ましくは15モル%以上25モル%以下のZrO、好ましくは18モル%以上25モル%以下のZrO、好ましくは10モル%以上23モル%以下のZrO、好ましくは10モル%以上20モル%以下のZrO、好ましくは15モル%以上23モル%以下のZrOを含む。少なくとも1つの第2の層はアルミナ及びジルコニアを含み、ジルコニアは非安定化、安定化ジルコニア及び部分安定化ジルコニアのうちの少なくとも1つを含み、少なくとも1つの第2の層は少なくとも1つの第1の層と少なくとも1つの第3の層との間に配置され、少なくとも1つの第1、第2及び第3の層のいずれかの間の熱膨張係数(CTE)の差の絶対値は、ASTM E228-17に従って測定して0~0.75×10-6/℃であり、少なくとも1つの第1、第2及び第3の層が単一の焼結セラミック体を形成する。好ましい実施形態では、イットリア、アルミナ、マグネシア、並びに非安定化ジルコニア、部分安定化ジルコニア及び安定化ジルコニアからなる群から選択される少なくとも1つからなる群から選択される粉末は各々、ASTM C1274に従って測定して、約18m/g以下、好ましくは約1~約18m/gの比表面積を有する。更なる好ましい実施形態では、少なくとも1つの第1、第2及び第3の粉末混合物(又は場合によっては焼成粉末混合物)は各々、ASTM C1274に従って測定して、約18m/g以下、好ましくは1~18m/gの比表面積を有する。好ましくは、第1、第2及び第3の粉末混合物は、第1、第2及び第3の粉末混合物の質量に対して測定して200ppm以下の総不純物含有量を有する。
【0280】
以下の追加工程は必要に応じてである:h)アニーリング温度に達するまで熱を加えて多層焼結セラミック体の温度を上昇させてアニーリングを行なうことにより、多層焼結セラミック体をアニーリングする工程と、i)アニーリングした多層焼結セラミック体の温度を低下させる工程と、j)多層焼結セラミック体又はアニーリングした多層焼結セラミック体を機械加工して、プラズマ処理チャンバで使用するための窓、蓋、誘電体窓、RF窓、リング、フォーカスリング、プロセスリング、堆積リング、ノズル、インジェクタ、ガスインジェクタ、シャワーヘッド、ガス分配プレート、ディフューザ、イオンサプレッサエレメント、チャック、静電ウエハチャック(ESC)、及びパックの形状の多層焼結セラミック体を作製する工程とがある。
【0281】
本明細書に開示される方法の工程a)は、イットリア、アルミナ、マグネシア、及びジルコニア(ジルコニアは、非安定化ジルコニア、部分安定化ジルコニア及び安定化ジルコニアのうちの少なくとも1つから選択される)からなる群から選択される少なくとも2つの粉末を組み合わせて、第1の粉末混合物を作製することを含む。第1の粉末混合物を含む出発粉末材料は、少なくとも1つの第1の粉末混合物が、焼結後に、YAG、アルミン酸マグネシウムスピネルを含む、又はイットリア及びジルコニアを含むセラミック材料の少なくとも1つの結晶相を含む少なくとも1つの第1の層を形成するような割合で組み合わされ、混合され、ジルコニアは、10モル%以上のZrO及び25モル%以下のZrOの量で存在し、残部はYを含む。少なくとも1つの第1の粉末混合物を形成するために選択される粉末は、好ましくは、高純度(>99.99%)の市販の粉末である。しかしながら、他の酸化物粉末、例えば化学合成プロセス及び関連する方法から生成されたものを使用してもよい。
【0282】
出発粉末、粉末混合物及び焼成粉末混合物の粒径は、10nm~5mmの粒径を測定することができるHoribaモデルLA-960レーザー散乱粒径分布分析器を使用して測定することができる。出発粉末、粉末混合物及び焼成粉末混合物の比表面積(SSA)は、ほとんどの試料について0.01~2000m/gの比表面積にわたって10%以下の精度で測定することができるHoriba BET Surface Area AnalyzerモデルSA-9601を用いて測定することができる。出発粉末、粉末混合物及び焼成粉末混合物の純度は、より軽い元素(Sc及びより小さい原子番号など)を約1.4ppmまで、及びより重い元素(Scより大きい原子番号など)を約0.14ppmまで分析することができるAgilent 7900 ICP-MSモデルG8403を用いるICP-MS測定を用いて測定することができる。純度は、本明細書では、不純物、ドーパント、焼結助剤などを含まず、意図された成分のみを含む材料を表す100%純度に対するパーセントとして報告される。不純物含有量は、本明細書において、評価中の材料の総質量に対するppmで報告される。シリカは、純度及び不純物の報告において開示されておらず、本明細書に開示されるICP-MS法を用いて約14ppmの量で測定され得る。
【0283】
当該技術分野で知られているように、d50粒径は、粒径中央値として定義され、粒径分布の半分がこの点を超えて存在し、半分がこの点を下回って存在する値を表す。同様に、分布の90%がd90を下回り、分布の10%がd10を下回る。
【0284】
イットリア、ジルコニア、マグネシア及びアルミナの出発粉末は、好ましくは結晶性であり、それによって長距離の結晶学的秩序を有する。イットリア、ジルコニア、マグネシア及びアルミナの出発粉末のいずれか1つ又は全てを、当業者に知られている方法に従って、篩い分け、タンブリング、ブレンド、粉砕などを行ってもよい。いくつかの実施形態では、イットリア、マグネシア、ジルコニア及び/又はアルミナの出発粉末は、必要に応じて、当業者に知られた方法に従って焼成してもよい。20m/gを超えるナノ粉末などの高い比表面積(SSA)を有する出発粉末、粉末混合物及び焼成粉末混合物は、ツールセットに粉末を装入するときの取り扱い性、粉末組み合わせ/混合工程中の均一な粒子分散及び混合の達成、並びに参照により本明細書に組み込まれる国際出願第PCT/US20/60918号に開示されているようなYAGを形成するためのin-situ反応性焼結方法中のYAG相を含む第1の層の形成に問題がある。本明細書に開示される方法による出発粉末は、イットリア、マグネシア、ジルコニア及びアルミナを含み、好ましくは18m/g以下の比表面積を有する。したがって、本明細書に開示される粉末混合物は、ナノ粉末を含まないか、又は実質的に含まず、約18m/g以下の比表面積(SSA)を有することが好ましい。
【0285】
約0.75m/g未満の比表面積を有する出発粉末、粉末混合物及び/又は焼成粉末混合物は、凝集を被る可能性があり、本明細書に開示される粉末混合物を形成するために組み合わせるために、混合により高いエネルギー及び長い混合時間を必要とする可能性がある。更に、この範囲の表面積を有する粉末は、本明細書に開示されるように高密度まで焼結するのに必要な駆動力を低減し、より低い密度及びより高い多孔率を有する焼結セラミック体を製造することができる。開示される方法における使用にとって好ましいのは、ASTM C1274に従って測定して1~18m/g、好ましくは2~15m/g、好ましくは3~12m/gのSSAを有する、本明細書に開示される出発粉末である。
【0286】
本発明の一実施形態による出発材料として使用される酸化イットリウム粉末のd10粒径は、好ましくは1~6μm、好ましくは1~5μm、好ましくは1~4μm、好ましくは2~6μm、好ましくは3~6μm、好ましくは4~6μm、好ましくは2~4μmである。
【0287】
本発明の一実施形態による出発材料として使用される酸化イットリウム粉末のd50粒径は、好ましくは3~9μm、好ましくは3~8.5μm、好ましくは3~8μm、好ましくは3~7μm、好ましくは4~9μm、好ましくは5~9μm、好ましくは6~9μm、好ましくは4~8μmである。本明細書に開示されるイットリア粉末は、約5~9μmの平均粒径を有し得る。
【0288】
本発明の一実施形態による出発材料として使用される酸化イットリウム粉末のd90粒径は、好ましくは6~16μm、好ましくは6~15μm、好ましくは6~14μm、好ましくは6.5~16μm、好ましくは7~16μm、好ましくは7.5~16μm、好ましくは7.5~14μmである。
【0289】
酸化イットリウム粉末は、典型的には、2~10m/g、好ましくは2~8m/g、好ましくは2~6m/g、好ましくは3~10m/g、好ましくは4~10m/g、好ましくは6~10m/g、好ましくは2~4m/gの比表面積(SSA)を有する。
【0290】
酸化イットリウム出発材料の純度は、好ましくは99.99%超、好ましくは99.995%超、より好ましくは99.999%超、より好ましくは99.9995%超、より好ましくは約99.9999%超である。これは、100ppm以下、好ましくは50ppm以下、好ましくは25ppm以下、好ましくは10ppm以下、より好ましくは約1ppm、好ましくは1~100ppm、好ましくは1~50ppm、好ましくは1~25ppm、好ましくは1~10ppm、好ましくは1~5ppmの不純物レベルに相当する。
【0291】
本発明の一実施形態による出発材料として使用される酸化マグネシウム粉末の平均又はd50粒径は、典型的には、1.5~5.5μm、2~5.5μm、2.5~5.5μm、3~5.5μm、1.5~5μm、1.5~4.5μm、より好ましくは2~4.5μmである。
【0292】
本発明の一実施形態による出発材料として使用される酸化マグネシウム粉末のd90粒径は、4~9μm、好ましくは5~9μm、好ましくは6~9μm、好ましくは4~8μm、好ましくは4~7μm、より好ましくは5~7.5μmである。
【0293】
酸化マグネシウム粉末は、典型的には、0.5~10m/g、好ましくは0.5~8m/g、好ましくは0.5~6m/g、好ましくは1~10m/g、好ましくは2~10m/g、好ましくは3~10m/g、好ましくは2~6m/gの比表面積(SSA)を有する。酸化マグネシウム出発材料の純度は、当該技術分野で公知のICPMS法を用いて測定して、好ましくは99.99%超、好ましくは99.995%超、より好ましくは99.9975%超、好ましくは99.999%超、好ましくは99.9992%超である。これに対応して、マグネシア粉末の不純物含有量は、100ppm以下、好ましくは50ppm以下、好ましくは25ppm以下、好ましくは約10ppm以下であり得る。
【0294】
工程a)に従ったジルコニア粉末は、非安定化ジルコニア、部分安定化ジルコニア及び安定化ジルコニアからなる群から選択されてもよい。少なくとも1つの結晶相を形成するためのジルコニア粉末とイットリア粉末との間の反応は、相純粋ジルコニアで生じる正方晶/単斜晶相変態の安定化を必要とせずに、任意のジルコニア粉末を使用することを可能にする。したがって、少なくとも1つの第1の層を形成するためのジルコニア粉末は、非安定化ジルコニア、部分安定化ジルコニア、及び安定化ジルコニアのいずれか1つ又はそれらの組み合わせを含み得る。ジルコニア及びアルミナ(第2の粉末混合物による)の更なる粉末特性は、以下の方法の工程b)において開示される。
【0295】
少なくとも2つのアルミナ、マグネシア、イットリア並びに非安定化ジルコニア粉末、部分安定化ジルコニア粉末及び安定化ジルコニア粉末のうちの少なくとも1つを組み合わせて少なくとも第1及び第2の粉末混合物を作製すること(工程a)及びb)のいずれか又は両方に従って)は、湿式又は乾式ボール(軸回転)粉砕、湿式又は乾式タンブリング(エンドオーバーエンド又は垂直)混合、ジェットミル処理、及びこれらの組み合わせの粉末調製技術を使用して行われ得る。これらの粉末組み合わせ方法の使用は、微粒子及び凝集体を分解する高エネルギープロセスを提供する。
【0296】
乾燥条件を使用して、出発粉末は、混合中に出発粉末の純度を維持するために、高純度(>99.9%)アルミナ媒体を使用してボールミリング又はエンドオーバーエンド/タンブリング混合され得る。他の実施形態では、ジルコニア媒体などの硬質媒体を使用して、硬質の凝集体を粉砕してもよい。高純度アルミナ媒体を本明細書に開示されるICPMS法を用いて試験し、約99.9~99.99%の純度を有することが見出された。ジルコニア媒体の使用は、多層焼結セラミック体中に100ppm未満などの微量のジルコニアをもたらし得る。乾式ボールミリングを行うために使用される媒体は、例えば直径5mm~15mmの範囲の寸法を有し得、粉末重量で約50~約100%の装入量で添加される。乾式タンブリング混合を行うために使用される媒体は、限定されないが、大きな寸法(直径約20~40mm)の少なくとも1つの媒体要素を含み得る。乾式ボールミリング及び/又は乾式タンブリング混合は、12~48時間、好ましくは16~48時間、好ましくは16~24時間、好ましくは18~22時間の期間にわたって行うことができる。乾式ボールミリング又はタンブリングミルプロセス(軸方向回転)は、各々約200mmの直径を有する容器で、50~250RPM、好ましくは75~200RPM、好ましくは75~150RPM、好ましくは100~125RPMのRPM(毎分回転数)を使用してよい。RPMは、使用に選択される容器の寸法に依存して変化し得、例えば、直径200mmより大きいものは、当業者に知られているように、対応して低いRPMを有し得る。乾式エンドオーバーエンド/タンブリング混合は、10~30rpm、好ましくは約20のRPMで行うことができる。乾式ボールミリング及び/又は乾式エンドオーバーエンド/タンブリングミリング/混合の後、当業者に知られているように反復又は順序に関して限定することなく、粉末混合物は、例えば例えば45~400μmの開口部を有し得る任意の番号のメッシュを用いて必要に応じて篩い分けしてブレンドしてもよい。
【0297】
湿式ボールミリング又は湿式エンドオーバーエンド/タンブリング混合は、出発粉末をエタノール、メタノール、及び他のアルコールなどの様々な溶媒中に懸濁させてスラリーを形成することによって行うことができる。いずれかのプロセス(ボールミル又はタンブリング粉砕/混合)におけるスラリーは、ミリング又は混合の間に、粉末重量で25~75%、好ましくは粉末重量で40~75%、好ましくは粉末重量で50~75%の粉末充填量を有して形成され得る。湿式ボールミリング又は湿式エンドオーバーエンド/タンブリング混合は、移動度の増加による粉末の分散の改善をもたらし、熱処理又は焼成の前に微細なスケールの均一な混合をもたらすことができる。実施形態では、分散剤は、任意の数の市販の分散剤、例えば、ポリメチルメタクリレート(PMMA)及びポリビニルピロリドン(PVP)及び当業者に公知の他の分散剤を使用して、スラリーに必要に応じて添加されてもよい。分散剤は、粉末重量の0.05~0.2%、好ましくは粉末重量の0.05~0.1%の量で必要に応じて添加されてもよい。湿式ボール又は湿式タンブリング/エンドオーバーエンド混合のいずれかのための媒体充填量は、粉末重量で30~100%、好ましくは粉末重量で30~75%、好ましくは粉末重量で30~60%の充填量で変動し得る。湿式ボールミリング又はタンブリング混合は、8~48時間、好ましくは12~48時間、好ましくは16~48時間、好ましくは8~36時間、好ましくは8~24時間、好ましくは16~24時間、好ましくは12~24時間の継続時間で行なわれ得る。ボールミリングは、各々約200mmの直径を有する容器について、50~250RPM、好ましくは75~200RPM、好ましくは75~150RPM、好ましくは100~125RPMのRPM(毎分回転数)を使用することができる。RPMは、使用に選択される容器の寸法に依存して変化し得、例えば、直径200mmより大きいものは、当業者に知られているように、対応して低いRPMを有し得る。湿式エンドオーバーエンド/タンブリング(又は垂直)混合は、10~30rpm、好ましくは約20のRPMで行なわれ得る。湿式ボールミリング及び/又は湿式エンドオーバーエンド/タンブリング混合の後、当業者に知られているように反復又は順序に関して限定することなく、粉末混合物は、例えば例えば45~400μmの開口部を有し得る任意の番号のメッシュを用いて必要に応じて篩い分けしてブレンドしてもよい。
【0298】
当業者に公知のジェットミル処理プロセスを使用して、粉末を完全に混合して、狭い粒度分布を有する粉末、粉末混合物又は焼成粉末混合物を形成してもよい。ジェットミル処理は、不活性ガス又は空気のいずれかの高速ジェットを使用して、ミリング又は混合媒体を使用せずに出発粉末及び/又は粉末混合物及び/又は焼成粉末混合物の粒子を衝突させ、したがってミリングされる粉末の初期純度を維持する。チャンバは、より大きな粒子のサイズを優先的に小さくすることができるように設計することができ、最終粉末、粉末混合物又は焼成粉末混合物に狭い粒径分布を提供することができる。粉末は、処理前の機械の設定で決定された所定の粒径に達すると、ジェットミリングチャンバを出て、プロセスを終了する。本明細書に開示する出発粉末、粉末混合物及び/又は焼成粉末混合物は本明細書に開示するように、開示された粉末粉砕/混合プロセスとして別々に、又はそれらの任意の組み合わせで、又はそれらの全てで、約100psiの圧力でジェットミル処理にかけてもよい。ジェットミル処理の後、粉末又は粉末混合物は、当業者に知られているように反復又は順序に関して限定することなく、粉末混合物は、例えば例えば45~400μmの開口部を有し得る任意の番号のメッシュを用いて必要に応じて篩い分けしてブレンドしてもよい。
【0299】
摩砕、高せん断混合、プラネタリーミリング、及び他の既知の手順の追加の粉末調製手順も適用することができる。上述の粉末調製技術は、単独で、又はそれらの任意の組み合わせで、又はその後焼結されて単一の多層焼結セラミック体を形成する2つ以上の粉末混合物に使用することができる。
【0300】
湿式混合またはミリングプロセスが使用される場合、スラリーは、当業者に知られているように、乾燥されるスラリーの体積に応じて、回転蒸発法によって、例えば約40℃~90℃の温度で1~4時間乾燥させることができる。他の実施形態では、スラリーは、当業者に公知の噴霧乾燥技術を使用して乾燥させることができる。乾燥後、粉末混合物を、反復又は順序に関して限定することなく、例えば45~400μmの開口部を有するメッシュを用いて必要に応じて篩い分けしてブレンドしてもよい。前述の粉末調製技術は、単独で、又はそれらの任意の組み合わせで使用され得る。
【0301】
乾燥後、工程a)の粉末混合物の比表面積は、ASTM C1274に従って測定して2~18m/g、好ましくは2~17m/g、2~14m/g、好ましくは2~12m/g、好ましくは2~10m/g、好ましくは4~17m/g、好ましくは6~17m/g、好ましくは8~17m/g、好ましくは10~17m/g、好ましくは4~12m/g、好ましくは4~10m/g、好ましくは5~8m/gであり得る。
【0302】
粉末混合物の純度は、高純度の粉砕媒体、例えば純度99.99%以上の酸化アルミニウム媒体を使用することによって、混合/粉砕後に出発材料の純度から維持することができる。実施形態では、酸化ジルコニウム粉砕媒体の使用が好ましい場合があり、15~100ppm、15~75ppm、好ましくは15~60ppm、好ましくは20~30ppmの量で多層焼結セラミック体の少なくとも1つの第1及び/又は第2の層内に残留する程度まで酸化ジルコニウムを導入することができる。
【0303】
本明細書に開示される方法の工程b)は、アルミナ粉末とジルコニア粉末(ジルコニア粉末は、部分安定化ジルコニア粉末及び安定化ジルコニア粉末のうちの少なくとも1つを含む)とを組み合わせて第2の粉末混合物を作製することを含む。第2の粉末混合物を含む出発粉末材料は、第2の粉末混合物が焼結後に少なくとも1つの第2の層102を形成するような割合で組み合わされて混合され、少なくとも1つの第2の層102は、5体積%以上のZrO及び30体積%以下のZrOの量で部分安定化ジルコニア及び安定化ジルコニアのうちの少なくとも1つ(及びそれらの組み合わせ)を含み、残部はAlを含む。少なくとも1つの第2の層102を形成するために選択される出発粉末は、好ましくは高純度の市販の粉末である。しかしながら、他の酸化物粉末、例えば化学合成プロセス及び関連する方法から生成されたものを使用してもよい。いくつかの実施形態では、必要とされるCTE一致特性、プラズマ処理チャンバ構成要素の靭性及び機械的強度要件に応じて、少なくとも1つの第2の層102は、少なくとも1つの第2の層102の体積に対して10体積%以上のZrO及び25体積%以下のZrOの量で部分安定化ジルコニア及び安定化ジルコニアのうちの少なくとも1つ(及びそれらの組み合わせ)を含み、残部はAlを含む。
【0304】
ジルコニア及びアルミナの粉末に関する以下の特性は、工程a)にも適用されるが、ただし、工程a)のジルコニアは、非安定化ジルコニア、部分安定化ジルコニア及び安定化ジルコニアのいずれか1つ又は組み合わせを含み得る。工程b)に従ったジルコニア粉末は、好ましくは安定化、部分的安定化、及びそれらの組み合わせである。
【0305】
酸化ジルコニウム粉末は、0.08~0.20μmのd10、0.3~0.7μmのd50、及び0.9~5μmのd90を有する粒径分布を有し得る。本発明の一実施形態による混合物の出発材料として使用される酸化ジルコニウム粉末の平均粒径は0.3~1μmであってもよい。
【0306】
ジルコニア粉末は、典型的には、ASTM C1274に従って測定して1~16m/g、好ましくは2~14m/g、好ましくは4~12m/g、好ましくは5~9m/gの比表面積を有する。
【0307】
ジルコニア粉末出発材料の純度は、典型的には99.8%超、好ましくは99.9%超、好ましくは99.95%超、好ましくは99.975%超、好ましくは99.99%超、好ましくは99.995%超である。これは、本明細書に開示されるICPMS法を用いて測定して2000ppm以下、好ましくは1000ppm以下、好ましくは500ppm以下、好ましくは250ppm以下、好ましくは100ppm以下、好ましくは50ppm以下、好ましくは25~150ppmの総不純物含有量に相当する。本明細書に開示される実施形態で使用されるジルコニアは、多くの市販のジルコニア粉末において一般的であるように、約2~5重量%の少量のHfを含む。ジルコニアのこれらの純度は、表1に従って開示されるように、Hf及び任意の安定化化合物を除外する。
【0308】
実施形態では、ジルコニア粉末は、イットリア、酸化ランタン(La)、セリア(CeO2)、マグネシア、サマリア(Sm)、及びカルシア、並びにこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つを含む安定化化合物を含み得る。部分安定化ジルコニア(PSZ)を形成するために、これらの安定化化合物は各々、0.5~50モル%、好ましくは0.5~30モル%、好ましくは0.5~15モル%、好ましくは0.5~10モル%、好ましくは1~50モル%、好ましくは1~30モル%、好ましくは1~10モル%、好ましくは1~5モル%、好ましくは約3モル%の量で存在し得る。安定化ジルコニア(SZ)を形成するために、これらの安定化化合物は各々、6超~約45モル%、好ましくは10超~約45モル%、好ましくは25超~約45モル%、好ましくは6超~30モル%、好ましくは6超~約15モル%、好ましくは8超~15モル%の量で存在し得る。表1は、ジルコニアを安定化又は部分的に安定化するための追加の指針を提供する。
【0309】
特定の実施形態では、少なくとも1つの第2の層102は、イットリア安定化され、アルミナ及びジルコニアを含む粉末混合物から形成され、ジルコニアは、部分イットリア安定化ジルコニア(PYSZ)又は完全イットリア安定化ジルコニア(YSZ)からなる群から選択される。部分イットリア安定化ジルコニア(PYSZ)は、約1~10モル%のイットリア、好ましくは1~8モル%のイットリア、好ましくは1~5モル%のイットリア、好ましくは2~4モル%のイットリア、好ましくは約3モル%のイットリアを含む粉末混合物から形成されてもよい。イットリア安定化ジルコニア(YSZ)は、約8~約15モル%のイットリア、好ましくは10~15モル%のイットリア、好ましくは12~15モル%のイットリアを含む粉末混合物から形成されることができる。
【0310】
第1及び第2の粉末混合物を含むアルミナ粉末は、以下に開示される粉末特性を有する。
【0311】
本開示の実施形態による出発材料として使用される酸化アルミニウム粉末のd10粒径は、好ましくは0.1~0.5μm、好ましくは0.1~0.4μm、好ましくは0.1~0.3μm、好ましくは0.2~0.5μm、好ましくは0.3~0.5μm、好ましくは0.4~0.5μm、好ましくは0.1~0.2μmである。
【0312】
本開示の実施形態による出発材料として使用される酸化アルミニウム粉末のd50粒径は、好ましくは2~8μm、好ましくは2~7μm、好ましくは2~6μm、好ましくは3~8μm、好ましくは4~8μm、好ましくは5~8μm、好ましくは2.5~5μmである。
【0313】
本開示の実施形態による出発材料として使用される酸化アルミニウム粉末のd90粒径は、好ましくは15~40μm、好ましくは15~30μm、好ましくは15~25μm、好ましくは20~40μm、好ましくは30~40μm、好ましくは20~30μmである。
【0314】
酸化アルミニウム粉末は、典型的には、4~18m/g、好ましくは4~14m/g、好ましくは4~10m/g、好ましくは4~6m/g、好ましくは6~18m/g、好ましくは6~14m/g、好ましくは8~18m/g、好ましくは10~18m/g、好ましくは8~10m/g、好ましくは6~10m/gの比表面積を有する。
【0315】
酸化アルミニウム出発材料の純度は、典型的には、ICPMS法を用いて測定して、99.99%超、好ましくは99.995%超、好ましくは99.999%超、好ましくは99.9995%超である。これに対応して、アルミナ粉末の不純物含有量は、100ppm以下、好ましくは50ppm以下、好ましくは25ppm以下、好ましくは10ppm以下、より好ましくは5ppm以下であり得る。
【0316】
アルミナ粉末及びジルコニア粉末は、ジルコニアが、多層焼結セラミック体の(焼結後の)少なくとも1つの第2の層102の各々10~30体積%、好ましくは10~25体積%、好ましくは10~20体積%、好ましくは15~25体積%、好ましくは20~25体積%、好ましくは15~20体積%の量で存在するような割合で混合される。
【0317】
アルミナと、部分安定化ジルコニア粉末及び安定化ジルコニア粉末の少なくとも1つとを組み合わせて第2の粉末混合物を作製することは、方法の工程a)において開示される材料及び方法に従って行われ得る。
【0318】
本明細書に開示される方法の工程c)は、アルミナと、イットリアと、非安定化ジルコニア、部分安定化ジルコニア及び安定化ジルコニアのうちの少なくとも1つとを組み合わせて少なくとも1つの第3の粉末混合物を作製することを含む。少なくとも1つの第3の粉末混合物は、各々少なくとも1つの第3の粉末混合物の重量に対して43%超92.5%以下の量のアルミナと、1%以上56%以下の量のイットリアと、0.4%以上40%以下の量の非安定化ジルコニア、部分安定化ジルコニア及び安定化ジルコニアのうちの少なくとも1つとを含んでもよい。好ましくは、少なくとも1つの第3の粉末混合物は、ASTM C1274に従って測定して1~18m/g、好ましくは1m/g~約14m/g、好ましくは約1m/g~約10m/g、好ましくは約1m/g~約8m/g、好ましくは約2m/g~約18m/g、好ましくは約2m/g~約14m/g、好ましくは約2m/g~約10m/g、好ましくは約3m/g~約9m/g、好ましくは約3m/g~約6m/gの比表面積(SSA)を有し得る。好ましい実施形態では、少なくとも1つの第3の粉末混合物は、各々少なくとも1つの第3の粉末混合物の重量基準で、約73%のアルミナと、約6%のイットリアと、約21%の安定化ジルコニア、部分安定化ジルコニア及び安定化ジルコニアのうちの少なくとも1つとを含み得る。更なる好ましい実施形態では、少なくとも1つの第3の粉末混合物は、各々少なくとも1つの第3の粉末混合物の重量基準で、約73%のアルミナと、約6%のイットリアと、約21%の3モル%イットリア部分安定化ジルコニアとを含む。少なくとも1つの第3の粉末混合物は、焼結後に、YAGと、アルミナと、非安定化ジルコニア、部分安定化ジルコニア及び安定化ジルコニアのうちの少なくとも1つとを含む多相を有する少なくとも1つの第3の層103を形成する。他の実施形態では、少なくとも1つの第3の粉末混合物は、焼結後にYAG相を形成するようにバッチ処理されてもよく、したがって、約43重量%のアルミナ及び57%のイットリアを含む。YAGを含む少なくとも1つの第3の層は、開示された範囲内でYAGを含む少なくとも1つの第1の層とCTEが一致する。
【0319】
イットリア、アルミナ及びジルコニア粉末を組み合わせて第3の粉末混合物を作製することは、工程a)に開示される材料及び方法に従って行われ得る。第3の粉末混合物は、乾式ボールミル粉砕、ローラーブレンド、湿式粉砕、湿式タンブル混合、及び当業者に公知の他の類似の混合方法であってもよい。
【0320】
先に開示されたように、少なくとも2つのアルミナ、イットリア、マグネシア、並びに非安定化ジルコニア粉末、部分安定化ジルコニア粉末及び安定化ジルコニア粉末のうちの少なくとも1つを組み合わせて少なくとも第1、第2及び第3の粉末混合物を作製すること(工程a)、工程b)及びc)のいずれか又は両方に従って)は、湿式又は乾式ボール(軸回転)粉砕、湿式又は乾式タンブリング(エンドオーバーエンド又は垂直)混合、ジェットミル処理、及びこれらの組み合わせの粉末調製技術を使用して行われ得る。これらの粉末組み合わせ方法の使用は、微粒子及び凝集体を分解する高エネルギープロセスを提供する。
【0321】
本明細書に開示される方法の工程d)は、第1、第2及び第3の粉末混合物のうちの少なくとも1つを、熱を加えて粉末混合物うちの少なくとも1つの温度を焼成温度に上昇させ、焼成温度を維持して焼成を行ない、少なくとも1つの第1、第2、及び第3の焼成粉末混合物を形成することによって、焼成することを含む。この工程は、水分を除去することができ、粉末混合物の表面状態が焼結前に均一になるように行うことができる。焼成は、600℃~1200℃、好ましくは600℃~1100℃、好ましくは600℃~1000℃、好ましくは600℃~900℃、好ましくは700℃~1100℃、好ましくは800℃~1100℃、好ましくは800℃~1000℃、好ましくは850℃~950℃の温度で行うことができる。焼成は、酸素を含有する環境において、4~12時間、好ましくは4~10時間、好ましくは4~8時間、好ましくは6~12時間、好ましくは4~6時間の持続時間で行なうことができる。焼成後、第1、第2及び第3の粉末混合物の少なくとも1つを形成するために、既知の方法に従って篩い分け及び/又はタンブリング及び/又はブレンドして少なくとも1つの第1、第2及び第3の焼成粉末混合物を形成することができる。少なくとも1つの第1の粉末混合物は、好ましくは焼成される。焼成は、比表面積の減少をもたらしても、もたらさなくてもよい。
【0322】
第1の粉末混合物は、0.06~4μm、好ましくは0.08~4μm、好ましくは0.1~4μm、好ましくは0.2~4μm、好ましくは0.3~4μm、好ましくは0.4~4μm、好ましくは0.08~3μm、好ましくは0.08~2μm、好ましくは0.08~1μm、好ましくは0.5~3μm、好ましくは1~2μm、好ましくは1~3μmのd10粒径を有し得る。
【0323】
第2の粉末混合物は、0.075~0.4μm、好ましくは0.075~0.3μm、好ましくは0.075~0.2μm、好ましくは0.1~0.4μm、好ましくは0.1~0.3μm、好ましくは0.1~0.2μm、好ましくは約0.2μmのd10粒径を有し得る。
【0324】
第1の粉末混合物は、0.7~50μm、好ましくは1~40μm、好ましくは1~30μm、好ましくは1~20μm、好ましくは1~10μm、好ましくは1~5μm、好ましくは5~50μm、好ましくは10~50μm、好ましくは20~50μm、好ましくは30~50μm、好ましくは3~8μm、好ましくは5~10μm、好ましくは6~15μmのd50粒径を有し得る。
【0325】
第2の焼成粉末混合物は、1~100μm、好ましくは1~80μm、好ましくは1~60μm、好ましくは1~40μm、好ましくは10~100μm、好ましくは20~100μm、好ましくは30~100μm、好ましくは20~80μm、好ましくは20~60μm、好ましくは20~40μmのd50粒径を有し得る。
【0326】
第1及の焼成粉末混合物は、10~350μm、好ましくは10~300μm、好ましくは10~250μm、好ましくは10~200μm、好ましくは10~175μm、好ましくは10~150μm、好ましくは10~100μm、好ましくは10~75μm、好ましくは10~50μm、好ましくは10~40μm、好ましくは10~25μm、好ましくは20~350μm、好ましくは40~350μm、好ましくは60~350μm、好ましくは100~350μm、好ましくは150~350μm、好ましくは200~350μm、好ましくは12~330μm、好ましくは100~330μm、好ましくは100~250μmのd90粒径を有し得る。
【0327】
第2の焼成粉末混合物は、20~250μm、好ましくは20~220μm、好ましくは20~150μm、好ましくは20~100μm、好ましくは50~220μm、好ましくは70~220μm、好ましくは約100~220μmのd90粒径を有し得る。
【0328】
特定の実施形態では、本明細書に開示されるより高い温度焼成条件は、結晶相の形成及び焼成粉末混合物の凝集をもたらし得、したがって、全体的な粒径分布のより大きな変動性、特に、より大きなd50及びd90粒径をもたらし得る。他の実施形態では、本明細書に開示されるより低い温度の焼成条件は、出発材料と比較して、焼成粉末混合物の粒径分布に影響を及ぼさない場合があり、それによって、粒径分布は、出発粉末材料と同じ範囲内にあるか、又は類似している。ロット間の変動及び焼成中の熱伝達の管理も粒径分布の変動に寄与し得る。したがって、広い範囲の粒径分布、特に粉末混合物のd50及びd90粒径は、本明細書に開示される焼成条件から生じ得る。
【0329】
少なくとも1つの第1、第2及び第3の焼成粉末混合物は各々、ASTM C1274に従って測定して、約1m/s~約18m/g、好ましくは1m/g~約14m/g、好ましくは約1m/g~約10m/g、好ましくは約1m/g~約8m/g、好ましくは約2m/g~約18m/g、好ましくは約2m/g~約14m/g、好ましくは2~12m/g、好ましくは約2m/g~10m/g、好ましくは約3m/g~約9m/g、好ましくは約3m/g~約6m/gの比表面積(SSA)を有し得る。
【0330】
第1の焼成粉末混合物は、第1の焼成粉末混合物の質量に対して5~200ppm、好ましくは5~150ppm、好ましくは100ppm未満、好ましくは75ppm未満、好ましくは50ppm未満、好ましくは25ppm未満、好ましくは15ppm未満、好ましくは10ppm未満、好ましくは8ppm未満、好ましくは5ppm未満、好ましくは5~50ppm、好ましくは5~30ppm、好ましくは3~20ppmの総不純物含有量を有し得る。
【0331】
表11は、多結晶YAG層に形成される前の例示的な第1の粉末混合物のICPMS純度結果を示す。
【0332】
【表11】
N/Aは粉末混合物を形成する出発粉末中に存在する元素を表す。
【0333】
表12は、スピネル層に形成される前の例示的な第1の粉末混合物のICPMS純度結果を示す。
【0334】
【表12】
N/Aは粉末混合物を形成する出発粉末中に存在する元素を表す。
【0335】
表13は、イットリア-ジルコニア層に形成される前の例示的な第1の粉末混合物のICPMS純度結果を示す。
【0336】
【表13】
N/Aは粉末混合物を形成する出発粉末中に存在する元素を表す;
【0337】
表10~14の各々について、N/Dは、元素がICPMSの報告限界未満で検出されたことを示す。報告された純度は、5つの粉末混合物ロットの平均にわたるものである。
【0338】
第2の粉末混合物は、第2の粉末混合物の質量に対して、5~200ppm、好ましくは5~150ppm、好ましくは100ppm未満、好ましくは50ppm未満、好ましくは25ppm未満、好ましくは15ppm未満、好ましくは10~100ppm、好ましくは10~80ppm、好ましくは10~60ppm、好ましくは10~40ppm、好ましくは20~80ppm、好ましくは30~60ppmの総不純物含有量を有し得る。
【0339】
表14は、少なくとも1つの第2の層102に形成される前の例示的な第2の粉末混合物のICPMS純度結果を示す。
【0340】
【表14】
【0341】
表14の結果は、5つの粉末ロットにわたって平均化されている。表14に示されるように、第2の粉末混合物は、少なくとも1つの第2の粉末混合物の質量に対して測定して、約5ppm以下、好ましくは3ppm以下の量のマグネシアを含み得る。本明細書に開示されるアルミナと、安定化ジルコニア及び部分安定化ジルコニアのうちの少なくとも1つとを含む粉末混合物は、本明細書に開示されるドーパント及び/又は焼結助剤を含まないか、又は実質的に含まない。Hf、Y及びZrは、不純物、ドーパント又は焼結助剤とは考えられず、表14に列挙されていない。
【0342】
少なくとも1つの第1及び第2の粉末混合物を含む出発粉末は、例えば、粒径及び純度などの様々な特性を有する。したがって、純度などの粉末混合物の特徴は、純度がより高くなり得る別の出発粉末と組み合わせることにより、少なくとも1つの出発粉末単独よりも高くなり得る。
【0343】
表10~14は、YAG、アルミン酸マグネシウムスピネル、イットリア及びジルコニア(ジルコニアは10モル%以上25モル%以下の量で存在する)、並びにアルミナ及びジルコニア(ジルコニアは安定化ジルコニア及び部分安定化ジルコニアうちの少なくとも1つを含む)の少なくとも1つの結晶相を(焼結後に)形成するためにバッチ処理された少なくとも1つの粉末混合物の非常に高い純度(純度100%の粉末に対して>99.99%)を示す。表に列挙されるように、粉末混合物の各々は、それぞれの粉末混合物の質量に対して0.5ppm未満、好ましくは0.25ppm未満の量の鉄(Fe)を含んでもよい。
【0344】
本明細書に開示される方法の工程e)は、第1、第2及び第3の焼成粉末混合物を、焼結装置のツールセットによって画定される容積内に別々に配置して、第1の粉末混合物の少なくとも1つの層、第2の粉末混合物の少なくとも1つの層、及び第3の粉末混合物の少なくとも1つの層を形成し、容積内に真空条件を作り出すことを含む。本明細書に開示されるプロセスで使用される放電プラズマ焼結(SPS)装置ツールセットは、通常は円筒形グラファイトダイである少なくとも1つのグラファイトダイを備える。グラファイトダイにおいて、第1、第2及び第3の粉末混合物は、3つのグラファイトパンチの間に別々に配置されて、少なくとも2つの別々の層を形成する。
【0345】
好ましい実施形態では、SPS装置は、内壁及び外壁を含む側壁を含むダイを備え、内壁は、少なくとも1つのセラミック粉末又は粉末混合物を受け入れることができる内容積を画定する直径と、ダイと動作可能に結合された上部パンチ及び下部パンチとを備え、上部パンチ及び下部パンチの各々は、ダイの内壁の直径よりも小さい直径を画定する外壁を有し、それによって上部パンチ及び下部パンチの少なくとも一方がダイの内容積内で移動するときに上部パンチ及び下部パンチの各々とダイの内壁との間に間隙を画定し、間隙は10μm~100μmの幅である。好ましくは、ダイ及びパンチはグラファイト製である。このようなSPSツールは、2020年10月3日に出願された米国仮特許出願第63/087,204号、及び2020年12月11日に出願された米国仮特許出願第63/124,547号に開示されており、その両方が参照により本明細書に組み込まれる。
【0346】
実施形態では、3つ以上の粉末混合物をグラファイトダイ内に配置することができる。当業者に知られているような真空条件は、内容積内に配置されたセラミック粉末又は粉末混合物内で確立される。典型的な真空条件としては10-2~10-3トルの圧力が挙げられる。主に空気を除去してグラファイトを燃焼から保護するために、また粉末から空気の大部分を除去するために真空にされる。粉末混合物の配置の順序は、多層焼結セラミック体及びそれから形成される構成要素の所望の構造を達成するために、必要に応じて逆にするか又は繰り返すことができる。好ましい実施形態では、第2の粉末混合物は、第1の粉末と第3の粉末との間に配置され、したがって、第2の粉末混合物は、焼結中に黒鉛ダイ内に配置されたときに第1の粉末混合物及び第3の粉末混合物の各々と隣接する。少なくとも1つの第1、第2及び第3の粉末層は、その後、焼結されて、第1、第2及び第3の層を形成し、それによって、第1及び第2の層が隣接し、それによって、多層焼結セラミック体の非線形界面104を形成し、第2及び第3の層が隣接し、それによって、第2の界面105を形成する。少なくとも1つの第1及び第2の粉末混合物をツールセットによって画定される容積内に配置することは、典型的には、第1の焼成粉末混合物と第2の粉末混合物との混合をもたらし、それによって、本明細書に開示される方法によって生成される多層焼結体の特徴である非線形界面104の上述のような屈曲度を作り出す。この非線形界面104は、少なくとも1つの第1の層と第2の層との間にインターロッキング効果及び向上した接着を提供することができる。混合はまた、少なくとも1つの第2の粉末混合物と第3の粉末混合物との間で起こり、それによって第2の界面105を生成する。この第2の界面105は、少なくとも1つの第2の層と第3の層との間にインターロッキング効果及び向上した靭性を提供することができる。非線形界面104及び第2の界面105は、実質的に線形(又は一次元)の界面を有する少なくとも1つの積層体又は予備焼結体から形成された積層体及び焼結体のものとは有意に異なり、したがって、本明細書に開示される多層焼結セラミック体は、積層物又は積層体ではない。少なくとも第1、第2及び第3の粉末混合物は、焼結装置のツールセットに直接装入され、汚染及び密度の低下の一因となり得る結合剤、分散剤などの使用などの予備焼結工程なしで焼結され得る。
【0347】
開示されたプロセスは、ミクロンサイズの平均(又はd50)粒径分布を有する市販の出発粉末、又は焼結前にグリーンテープ又はボディを形成するか又はそれを機械加工する必要なしに化学合成技術から調製されたものを利用する。
【0348】
開示されたプロセス及び粉末材料から得られる多層焼結セラミック体に関連する高密度及び低気孔率は、初期粉末中に結合剤又は焼結助剤を使用することなく達成される。他の焼結技術は、焼結温度を低下させるために焼結助剤の使用を必要とし、これはハロゲン系プラズマ耐性及び緻密化に悪影響を及ぼし得る。ポリマー結合剤もまた、多くの場合、前述のグリーン体を作製するために使用され、これは、結合剤バーンアウト時の残留多孔性及びより低い密度に寄与し得る。結合剤又は焼結助剤は、本明細書に開示される多層焼結耐食性セラミック体又はそれから形成される多層構成要素の作製において必要とされない。それぞれの層のCTEマッチングと圧力支援焼結との組み合わせは、高密度及び層間の高い接着強度を含む、本明細書に開示されるような特性を有する多層焼結セラミック体を形成するのに好ましい。
【0349】
本明細書に開示される方法の工程f)は、焼結温度まで加熱しながら第1、第2及び第3の焼成粉末混合物の層に圧力を加え、焼結を行って多層焼結セラミック体を形成することであって、第1の粉末混合物の少なくとも1つの層が少なくとも1つの第1の層を形成し、第2の粉末混合物の少なくとも1つの層が少なくとも1つの第2の層を形成し第3の粉末混合物の少なくとも1つの層が少なくとも1つの第3の層を形成する、ことと、f)多層焼結セラミック体の温度を低下させることとを含む。
【0350】
少なくとも1つの第1、第2及び第3の粉末混合物がダイの内容積内に配置された後、グラファイトパンチ間に配置された粉末混合物に軸方向に圧力が加えられる。圧力は、5MPa~100MPa、好ましくは5MPa~60MPa、好ましくは5MPa~40MPa未満、好ましくは5MPa~20MPa、好ましくは5MPa~15MPa、好ましくは10MPa~60MPa、好ましくは10MPa~40MPa、好ましくは10MPa~30MPa、好ましくは10~20MPa、好ましくは15~60MPa、好ましくは15~40MPa、好ましくは15~30MPa、好ましくは20MPa~40MPa、好ましくは15MPa~20MPa、好ましくは13MPa~18MPaに達するまで増加される。
【0351】
ダイの内容積に準備された粉末混合物に熱を加えることによって、1000~1700℃、好ましくは1200~1700℃、好ましくは1400~1700℃、好ましくは1500~1700℃、好ましくは1600~1700℃、好ましくは1200~1600℃、好ましくは1200~1400℃、好ましくは1400~1600℃、好ましくは1500~1650℃の焼結温度が容易になる。焼結は、典型的には、0.5~180分、好ましくは0.5~120分、好ましくは0.5~100分、好ましくは0.5~80分、好ましくは0.5~60分、好ましくは0.5~40分、好ましくは0.5~20分、好ましくは0.5~10分、好ましくは0.5~5分、好ましくは5~120分、好ましくは10~120分、好ましくは20~120分、好ましくは40~120分、好ましくは60~120分、好ましくは80~100分、好ましくは100~120分、好ましくは30~90分の時間で行なわれ得る。特定の実施形態では、焼結は等温時間なしで行なわれ得、焼結温度に達したら、本明細書に開示される速度で冷却が開始される。プロセスの工程g)によれば、焼結セラミック体は、熱源の除去によって受動的に冷却され得る。必要に応じてのアニーリングプロセスを容易に得る温度に達するまで、自然対流または強制対流を使用することができる。
【0352】
好ましい実施形態では、粉末混合物は焼結装置のパンチ及びダイによって直接加熱される。ダイは、抵抗加熱/ジュール加熱を容易にするグラファイトなどの導電性材料から構成されていてよい。焼結装置及び手順は米国特許出願公開第2010/0156008(A1)号に開示されており、それは参照により本明細書に組み込まれる。
【0353】
圧力下で粉末層を焼結することにより、共圧縮された単一の多層体が形成される。開示される方法によれば、第1の粉末混合物の少なくとも1つの層、第2の粉末混合物の少なくとも1つの層、及び第3の粉末混合物の少なくとも1つの層は、方法の工程f)の間に、それぞれ多層焼結セラミック体の第1、第2及び第3の層に同時にin-situで形成される。多層焼結セラミック体の少なくとも1つの第1、第2及び第3の層への少なくとも1つの第1、第2及び第3の焼成粉末混合物のこの単一工程である同時焼結は、多層焼結セラミック体の向上した接着性、高い機械的強度及び改善された平坦性を提供することができる。少なくとも1つの第1の層100、少なくとも1つの第2の層102、及び少なくとも1つの第3の層103のCTE一致は、特に本明細書に開示される焼結温度の範囲にわたって、焼結後の冷却時、及び開示される方法による任意の熱エクスカーション中に、少なくとも1つの第2の層102、少なくとも1つの第1の層100、及び少なくとも1つの第3の層103の間の界面におけるCTE不一致に起因する応力の発生を防止し、したがって、高強度、耐プラズマ性、及び高界面接着性を有する大寸法の多層焼結セラミック体(及びそれから形成された構成要素)の形成を可能にする。
【0354】
焼結中、典型的には体積の減少が生じ、その結果、セラミック焼結体は、焼結装置のツールセットに入れたときの出発粉末混合物の体積の約3分の1の体積を有し得る。
【0355】
本開示による焼結装置の温度は、通常、装置のグラファイトダイ内で測定される。それにより、示された温度が実際に焼結される粉末混合物内で実現されるように、処理される粉末混合物に可能な限り近い温度が測定されることが好ましい。
【0356】
圧力及び温度の適用の順序は、本明細書に開示されるように変動し得る。一実施形態では、示された圧力が加えられてもよく、その後、所望の焼結温度を達成するために熱が加えられてもよい。別の実施形態では、所望の焼結温度を達成するために熱が加えられてもよく、その後、示された圧力が加えられてもよい。更なる実施形態では、温度および圧力は、焼結される粉末混合物に同時に加えられ、示された値に達するまで上昇され得る。
【0357】
開示される方法は、特定の焼結前時間に達するまで、1~100℃/分、好ましくは2~50℃/分、好ましくは3~25℃/分、好ましくは3~10℃/分、より好ましくは5~10℃/分の特定の加熱勾配を有する焼結前工程を含み得る。
【0358】
開示される方法は、特定の焼結前時間に達するまで、0.50MPa/分~30MPa/分、好ましくは0.75MPa/分~10MPa/分、より好ましくは1~5MPa/分の特定の圧力勾配を有する焼結前工程を含み得る。
【0359】
本明細書に開示される方法は、上述の特定の加熱勾配及び上述の特定の圧勾配を有する焼結前工程を含み得る。
【0360】
前述の予備焼結工程において、温度及び圧力は10分~360分の期間にわたって維持される。
【0361】
誘導加熱又は輻射加熱の方法もまた、焼結装置を加熱してツールセット内の粉末を間接的に加熱するために使用することができる。
【0362】
本明細書に開示される方法の工程h)は、必要に応じて、熱を加えて多層焼結セラミック体の温度を、アニーリングを行なうアニーリング温度に達するように上昇させることによって多層焼結セラミック体(又はそれから形成された構成要素)をアニーリングすることと、i)アニーリングした多層焼結セラミック体(又はそれから形成された構成要素)の温度を低下させることとを含む。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される方法は、必要に応じてのアニーリング工程を更に含んでもよい。本明細書に開示される実施形態による必要に応じてのアニーリング工程において、多層焼結セラミック体は、焼結装置から取り出し、約900~約1800℃、好ましくは約1250~約1700℃、好ましくは約1300~約1650℃、好ましくは約1400~約1600℃の温度の炉内でアニーリングすることによってアニーリング手順に供されてもよい。
【0363】
実施形態では、多層焼結セラミック体の必要に応じてのアニーリングは、0.5℃/分~50℃/分、好ましくは0.5℃/分~25℃/分、より好ましくは0.5℃/分~10℃/分、より好ましくは0.5℃/分~5℃/分、より好ましくは1℃/分~50℃/分、より好ましくは3℃/分~50℃/分、より好ましくは5℃/分~50℃/分、より好ましくは25℃/分~50℃/分、好ましくは1℃/分~10℃/分、好ましくは2℃/分~10℃/分、好ましくは2℃/分~5℃/分の加熱及び/又は冷却速度で行われてもよい。
【0364】
必要に応じてのアニーリング工程の持続時間は、1~24時間、好ましくは1~18時間、好ましくは1~16時間、好ましくは1~8時間、好ましくは4~24時間、好ましくは8~24時間、好ましくは12~24時間、好ましくは4~12時間、好ましくは6~10時間であり得る。
【0365】
一実施形態では、本開示による必要に応じてのアニーリングは、焼結プロセスの後、焼結装置内で行われてもよい。必要に応じてのアニーリングプロセスは、好ましくは、強制対流などの酸化条件下で、又は空気中で実施することができる。アニーリングは、化学量論的補正のための酸素空孔の低減及び焼結体又は部品における応力の低減を通じて、多層焼結セラミック体又はそれから製造される部品の化学的及び物理的特性の改善をもたらす。焼結多層耐食性構成要素をアニーリングする必要に応じてのプロセス工程は、酸化性雰囲気中で行われ、それによってアニーリングプロセスは、アルベドの増加、機械的取り扱い性の改善及び多孔性の減少を提供し得る。
【0366】
いくつかの実施形態では、アニーリングの工程は、ガラス、セラミックおよび金属のアニーリングに使用される従来の方法によって行われてもよく、精密化の程度は、アニーリング温度およびアニーリングが行われる持続時間によって選択されてもよい。他の実施形態では、アニーリングは、焼結セラミック体に対して行われなくてもよい。
【0367】
多層焼結セラミック体をアニーリングする必要に応じてのプロセス工程が行われた後、焼結された、場合によってはアニーリングした多層焼結セラミック体の温度は、工程h)に従って多層焼結体(又はそれから製造された構成要素)への熱源の除去によって周囲温度まで下げられる。焼結及びアニーリングした多層焼結セラミック体又はそれから製造された構成要素は、その後、アニーリング工程が焼結装置の外部で行われる場合には炉から取り出されるか、又はアニーリングが焼結装置内で行われる場合にはツールセットから取り外される。
【0368】
本明細書に開示される方法の工程j)は、多層焼結セラミック体(又はアニーリングした多層焼結セラミック体を機械加工して、窓、蓋、誘電体窓、RF窓、リング、フォーカスリング、プロセスリング、堆積リング、ノズル、インジェクタ、ガスインジェクタ、シャワーヘッド、ガス分配プレート、ディフューザ、イオンサプレッサエレメント、チャック、静電ウエハチャック(ESC)、及びパックの形状の多層焼結セラミック構成要素を作製することを含む。当業者に知られている機械加工、穿孔、研削、ラッピング、研磨などを必要に応じて実施して、多層焼結セラミック体をプラズマ処理チャンバで使用するための構成要素の所定の形状に形成することができる。本明細書に開示される組成範囲の粉末混合物の使用は、CTEが一致した層の使用による改善された機械加工性を有する多層焼結セラミック体を提供することができ、それによって、開示される方法の機械加工工程中の応力を低減する。
【0369】
改善された多層焼結セラミック体及びその製造方法、特にプラズマ処理チャンバで使用するための大きな本体サイズのものが本明細書に開示される。開示される多層焼結セラミック体は、焼結体の最長伸長部に関して、約625mmを含む100mm~少なくとも622mmのサイズを有し得る。
【0370】
本明細書に開示されるプロセスは、少なくとも1つの第1の層の最大細孔径に対する改善された制御、特に少なくとも1つの第1の層内のより高い密度、プラズマ対向面のより低い表面粗さ、多層構成要素の層間の改善された接着、多層焼結セラミック体の高い機械的強度及びそれによる取り扱いのやすさ、並びに多層焼結セラミック体の機械加工性を提供する。
【0371】
一実施形態による多層焼結セラミック体の前述の特性は、特に、第1、第2及び第3の粉末の純度、第1、第2及び第3の粉末に加えられる圧力、第1、第2及び第3の粉末の焼結温度、焼結の持続時間、必要に応じてのアニーリング工程中の多層焼結体又は構成要素の温度、必要に応じてのアニーリング工程中の環境、及び必要に応じてのアニーリング工程の持続時間を適合させることによって達成される。
【0372】
開示されるプロセス工程は、開示されるものとは異なる順序及び反復を有してもよく、特定の順序又は特定の回数の反復で行われなくてもよい。更に、開示されたもの以外の追加の粉末を使用してもよいことが理解されよう。焼結助剤を含まず、99.9%~99.9999%、好ましくは99.99%~99.9999%、好ましくは99.999%~99.9999%、より好ましくは99.9995%~99.9999%の純度を有する高純度希土類元素又は化合物を出発材料として使用することにより、半導体製造装置などのプラズマ処理を伴う装置における多層耐食性部材としての使用に特に好適な改善されたプラズマ耐性を提供する、本明細書に開示される高純度の焼結多層耐食性体の製造が可能になる。更に、本明細書に開示されるプロセスは、少なくとも1つの第2の層102、少なくとも1つの第1の層100、及び少なくとも1つの第3の層103を接合するための焼結工程の前に、グリーン体又は焼結体の形成を必要としない。本明細書に開示される多層焼結セラミック体は、グリーン体の形成又はポリマー結合剤若しくは焼結助剤の使用なしに単一のプロセス工程内で焼結される粉末から直接形成される。
【0373】
本明細書に開示される好ましい実施形態による圧力及び電流支援プロセスは、例えば、100mm~約625mm、好ましくは200mm~約625mm、好ましくは300mm~約625mm、好ましくは400mm~約625mmの最大寸法を有するような大きな多層焼結セラミック体の調製における使用に適しており、多層焼結セラミック体は、例えば、最大寸法として直径を有するディスク形状に形成される。開示されるプロセスは、迅速な粉末圧密化及び高密度化を提供し、焼結セラミック体において約10μm以下の最大結晶粒サイズを保持し、最大寸法にわたって少なくとも1つの第1の層内で高密度及び低気孔率を達成する。微細な結晶粒サイズ、高い密度並びにCTE一致のこの組み合わせは、機械加工、取り扱い性及び半導体プラズマ処理チャンバ内の構成要素としての使用に適した大きな寸法の高強度多層焼結セラミック体を提供する。
【0374】
放電プラズマ焼結によって調製される多層焼結セラミック構成要素が、プラズマエッチング及び堆積処理チャンバにおける使用のために提案される。本明細書に開示される多層構成要素から形成され得るチャンバ構成要素は、窓、蓋、誘電体窓、RF窓、リング、フォーカスリング、プロセスリング、堆積リング、ノズル、インジェクタ、ガスインジェクタ、シャワーヘッド、ガス分配プレート、ディフューザ、イオンサプレッサエレメント、チャック、静電ウエハチャック(ESC)、及びパックを含む。
【0375】
上記で詳述したこれらの密度、純度及び多孔率レベルは、プラズマエッチング及び堆積処理から生じる浸食及び腐食の影響に対する耐性を向上させることができる。開示された方法及び材料は、大きな寸法、例えば200~625mmの最大寸法のセラミック焼結体の調製に特に有用である。セラミック焼結体の高い密度及びそれによる高い機械的強度はまた、特に大きな寸法において、向上した取り扱い性を提供する。焼結イットリウムアルミニウム酸化物体又は焼結イットリウムアルミニウム酸化物を含む多層体、特に、最長寸法(約200~625mm)にわたって本明細書に開示される範囲の純相YAGから形成される物体の製造の成功は、少なくとも1つの最長寸法にわたる密度の変動を制御することによって可能になり得る。最大寸法にわたって、5%以下、好ましくは4%以下、好ましくは3%以下、好ましくは2%以下、好ましくは1%以下の密度の変動で、98.5%以上又は99.5%以上の平均密度が得られ、それによって、最大寸法は、例えば、約625mm以下、622mm以下、610mm以下、好ましくは575mm以下、好ましくは525mm以下、好ましくは100~625mm、好ましくは100~622mm、好ましくは100~575mm、好ましくは200~625mm、好ましくは200~510mm、好ましくは400~625mm、好ましくは500~625mmであり得る。密度の変動を低減することにより、取り扱い性が向上し、セラミック焼結体全体の応力を低減することができる。微細な結晶粒サイズ、均一及び高密度のこの組み合わせは、機械加工、取り扱い性及び半導体処理チャンバ内の構成要素としての使用に適した大きな寸法の多層焼結セラミック体の高強度焼結YAG含有層を提供する。密度測定は、焼結体の最大寸法にわたってASTM B962-17に従って行うことができる。
【0376】
本明細書に開示される方法及び組成物は、以下の実施例を参照してより詳細に説明されるが、それらに限定されるとみなされないことが理解されるべきである。
【実施例
【0377】
以下の実施例に本開示の全体的な性質をより明確に示す。これらの実施例は本開示を例示するものであり、制限するものではない。
【0378】
実施例の項に開示される測定は、本明細書に記載される方法、規格及び手順に従って行われる。
【0379】
出発粉末(及び結果として、それから形成される粉末混合物)の特性は、異なる粉末ロット間で変動し得、したがって、粉末特性(比表面積、粒径及び不純物など)は、ロット間変動を表し得る範囲として開示される。このロット間変動、並びに焼成中の熱管理及び熱伝達は、本明細書に開示される出発粉末、粉末混合物及び焼成粉末混合物の広い粒径分布及び比表面積の変動に寄与し得る。したがって、広い範囲の粒径分布及び比表面積は、本明細書に開示されるロット間変動及び焼成条件から生じ得る。
【0380】
出発粉末及び粉末混合物のいずれも、当業者に知られている方法に従って、篩い分けし、タンブリングし、ブレンドし、焼成し、粉砕してよい。
【0381】
本明細書に開示される実施例に従った多層焼結セラミック体は、予備焼結体、鋳造体若しくはグリーン体、又はテープ、膜若しくは積層体を形成することなく、粉末混合物(いくつかの実施形態では焼成されてもよい)から単一の焼結工程で形成される。
【0382】
出発粉末、粉末混合物及び焼成粉末混合物の粒径は、10nm~5mmの粒径を測定することができるHoribaモデルLA-960レーザー散乱粒径分布分析器を用いて測定した。出発粉末、粉末混合物及び焼成粉末混合物の比表面積は、ほとんどの試料について0.01~2000m/gの比表面積にわたって10%以下の精度で測定することができるHoriba BET Surface Area AnalyzerモデルSA-9601を用いて測定した。比表面積(SSA)測定は、ASTM C1274に従って行った。
【0383】
以下の実施例を調製するために使用される装置は、上記で説明される放電プラズマ焼結(SPS)ツールであり、少なくとも1つのセラミック粉末を受け入れることができる内容積を画定する直径を有する内壁、及び外壁、を有する側壁を備えたダイと、ダイと動作可能に連結された上部パンチと下部パンチと、を備え、上部パンチと下部パンチの各々はダイの内壁の直径よりも小さい直径を画定する外壁を有し、それにより、上部パンチと下部パンチの少なくとも1つがダイの内容積内で移動するときに、上部パンチ及び下部パンチの各々とダイの内壁との間の間隙を画定し、間隙は10μm~100μmの幅を有する。
【0384】
比較例
YAGの第1の層及び酸化アルミニウムの第2の層を含む多層焼結セラミック体;
多層焼結セラミック体の第1の層を、アルミナ及びイットリアを含む第1の粉末混合物から形成して、本明細書に開示されるYAGを含む少なくとも1つの第1の層を形成した。第1の粉末混合物は、6.5~8.5m/gの比表面積、0.05~0.15μmのd10粒径、0.1~0.3μmのd50粒径、0.25~1μmのd90粒径を有するアルミナ粉末と、6~8m/gの比表面積、2~4.5μmのd10粒径、3.5~6μmのd50粒径、及び6~10μmのd90粒径を有するイットリア粉末とを含んでいた。アルミナ及びイットリア粉末の総不純物含有量は約2~約30ppmであった。アルミナ及びイットリア粉末は、焼結後にYAG(酸化イットリウムアルミニウム、ガーネット相)を含む第1の層を形成する比率で組み合わせた。アルミナ粉末とイットリア粉末とを組み合わせて第1の粉末混合物を作製することは、湿式ボールミリングの粉末調製技術を使用して行い、ジルコニア粉砕媒体を、粉末重量に対して媒体装入量の約2倍の重量で添加した。エタノールを添加して、スラリー重量の約45%の量のスラリーを形成した。媒体をスラリーに添加し、150のRPMで12時間粉砕し、その後、当業者に公知の方法に従って乾燥、タンブリング、及び篩い分けを行い、第1の粉末混合物を形成した。第1の粉末混合物を1100℃で8時間焼成して、第1の焼成粉末混合物を形成した。第1の焼成粉末混合物は、4.5~5.5m/gの比表面積(BET法を用いて測定)、4.5~6.5μmのd10粒径、9~15μmのd50粒径、及び20~30μmのd90粒径(レーザー粒径法を用いて測定)を有していた。
【0385】
多層焼結セラミック体の第2の層は、酸化アルミニウム粉末から形成された。酸化アルミニウム粉末は、本明細書に開示されるBET法及びレーザー粒径分析法を用いて、6.5~8.5m/gの比表面積、0.05~0.15μmのd10粒径、0.1~0.3μmのd50粒径、0.25~1μmのd90粒径を有すると測定された。アルミナ粉末の総不純物含有量は、ICPMSを用いて測定して約30ppmであった。
【0386】
第1の焼成粉末混合物及びアルミナ粉末を、本明細書に開示される焼結装置のツールセットによって画定される容積内に別々に配置して、第1の焼成粉末混合物の少なくとも1つの層及びアルミナ粉末の少なくとも1つの層を形成し、本明細書に開示される真空条件を容積内に作り出した。
【0387】
(焼結後にYAGを形成するようにバッチ処理した)イットリア及びアルミナを含む第1の焼成粉末混合物及びアルミナ粉末の層に30MPaの圧力を加えながら、1450℃の焼結温度に30分間加熱し、焼結を行って多層焼結セラミック体を形成し、焼結後の第1の焼成粉末混合物の層はYAGを含む第1の層を形成し、アルミナ粉末の層は酸化アルミニウムを含む第2の層を形成する。その後、多層焼結体を酸化性雰囲気中、1400℃で8時間アニーリングした。図4に概略的に示すように、多層焼結セラミック体は、YAGを含む第1の層とアルミナ層との間の界面付近のアルミナ層内で破断した。したがって、プロセス温度範囲にわたるYAGと酸化アルミニウムとの間のCTEの差は、酸化アルミニウム層内に破断を引き起こすのに十分な応力を生成した。
【0388】
実施例1:少なくとも1つのYAGの第1の層を含む多層焼結セラミック体;
第1、第2及び第3の粉末混合物から多層焼結セラミック体を形成した。第1の粉末混合物は、本明細書に開示されるYAGを含む第1の層100を形成する比率で組み合わされたアルミナ及びイットリアを含んでいた。第2の粉末混合物は、本明細書に開示されるように、約16体積%の部分安定化ジルコニアを含むジルコニア強化酸化アルミニウム(ZTA)の第2の層を形成する比率でアルミナ及び部分安定化ジルコニアを含んでいた。第3の粉末混合物は、イットリア、アルミナ及び部分安定化ジルコニアの粉末混合物を含んでいた。
【0389】
第1の粉末混合物は、5.5~9m/gの比表面積、0.05~1μmのd10粒径、2~6μmのd50粒径、15~30μmのd90粒径を有するアルミナ粉末と、1.75~3.5m/gの比表面積、2~4μmのd10粒径、5~9μmのd50粒径、及び10~14μmのd90粒径を有するイットリア粉末とを含んでいた。アルミナ粉末の平均不純物含有量は、3つの粉末ロットにわたって測定して約6ppmであり、100%純粋なアルミナに対して約99.9994%の純度に相当した。イットリア粉末の平均不純物含有量は、5つの粉末ロットにわたって測定して約17ppmであり、100%純粋なイットリア粉末に対して約99.9983の純度に相当した。本明細書に開示されるICPMSを使用してより軽い元素の存在を検出するための報告限界は、より重い元素の報告限界よりも高い。換言すれば、原子番号が大きいScなどの重い元素は、例えばLiからCaの軽い元素よりも高い精度で検出される。Li及びMgなどのより軽い元素を検出するためのICPMSの使用は、約2ppm以上の信頼範囲内で行うことができる。Siは、当業者に知られているICPMSを使用して、イットリア粉末及びアルミナ粉末中に検出されず、したがって、イットリア粉末及びアルミナ粉末は、約14ppm以下のシリカの形態のSiと、フッ化リチウム及びマグネシウムとしての2ppm以下のLi及びMgとを含む。焼結後にYAG(酸化イットリウムアルミニウム、ガーネット相)を含む耐食性の第1の層を形成するような比率で粉末を組み合わせた。
【0390】
イットリア粉末及びアルミナ粉末は、焼結後にYAG(酸化イットリウムアルミニウム、ガーネット相)を含む少なくとも1つの第1の層を形成する比率で組み合わせた。高純度(>99.9%)媒体を粉末重量に対して約55%~約65%の負荷量で使用した湿式ボールミル粉砕の従来の粉末調製技術を使用して、アルミナ粉末とイットリア粉末とを組み合わせて第1の粉末混合物を作製した。エタノールを添加することにより、スラリーを約35%~約45%で形成した。スラリーを150のRPMで約15時間粉砕し、その後、当業者にとって既知の方法に従って乾燥、タンブリング、又は篩い分けして、第1の粉末混合物を形成した。第1の粉末混合物を850℃で6時間焼成した。焼成後、第1の粉末混合物は、2~4m/gの比表面積及び9~13μmのd50粒径を有していた。第1の粉末混合物は、約8ppmの総不純物を有し、各々全粉末重量に対して、約14ppm以下のSiと約2ppm以下のMgとを含んでいた。
【0391】
第2の粉末混合物は、アルミナ粉末及び部分安定化ジルコニア(PSZ)粉末を含んでいた。
【0392】
アルミナ粉末は、6.5~8.5m/gの比表面積(SSA)、0.05~0.15μmのd10粒径、0.16~0.35μmのd50粒径、及び0.36~0.8μmのd90粒径を有していた。アルミナ粉末の総不純物含有量は、ICPMS法を用いて測定して約2~約11ppmであった。Li及びMgは、粉末中に1ppm未満の量で測定され、したがって、アルミナ粉末は、LiO、LiF及びMgOの形態で約1ppm以下のLi及びMgを含んでいた。カルシウム(CaO)は2ppm未満の量で測定された。Siは、本明細書に開示されるICPMSを使用してジルコニア粉末中に検出されず、したがって、アルミナ粉末は、SiO2の形態で約14ppm以下のSiを含んでいた。
【0393】
部分安定化ジルコニア(PSZ)粉末は、6~8m/gの表面積、0.08~0.25μmのd10粒径、0.27~0.60μmのd50粒径、及び1.0~3.0μmのd90粒径を有していた。PSZ粉末は、約2~4重量%のHfを含み、約3モル%の量のイットリアで安定化された。Hf及びYは、本明細書に開示されるジルコニア中の不純物とはみなされない。Hfは多くの市販のジルコニア粉末中に存在し、イットリアはジルコニアを部分的に安定化させるために安定化化合物として添加された。Hf及びYを除いて、部分イットリア安定化ジルコニア粉末は、全粉末質量に対して約61ppmの総不純物を有していた。Li、Ca及びMgなどのより軽い元素を検出するためのICPMSの使用は、約1ppm以上の信頼の範囲内で行うことができる。Li及びMgは、PSZ粉末中に1ppm未満の量で測定され、したがって、部分安定化ジルコニア粉末は、LiO、LiF及びMgOの形態で全粉末質量に対して約1ppm以下のLi及びMgを含んでいた。カルシウム(CaO)は、全粉末質量に対して約15ppmの量で測定された。Siは、本明細書に開示されるICPMSを使用してPSZ粉末中に検出されず、したがって、PSZ粉末は、シリカの形態で全粉末質量に対して約14ppm以下のSiを含んでいた。
【0394】
第2の粉末混合物を含む粉末を、焼結後に約16体積%の部分イットリア安定化(PYSZ)ジルコニア及び残部のアルミナを含む少なくとも1つの第2の層102を形成するような比率で組み合わせた。アルミナ粉末とPYSZジルコニア粉末とを組み合わせて第2の粉末混合物を作製することは湿式ボールミリングの従来の粉末調製技術を使用して行い、高純度(>99.99%)アルミナ媒体を、粉末重量に対して約75~80%の装入量で使用した。エタノールを添加することにより、約40体積%のスラリーを形成した。スラリーを約150のRPMで約20時間ボールミル粉砕し、その後、当業者にとって既知の方法に従って乾燥、タンブリング、篩い分けして、第1の粉末混合物を形成した。第2の粉末混合物を空気中600℃で8時間焼成した。第2の焼成粉末混合物は、6~8m/gの比表面積を有していた。第2の焼成粉末混合物は、約12ppmの総不純物(Hf及びYを除く)を有し、各々全粉末質量に対して、シリカの形態で約14ppm以下のSiと、マグネシア(MgO)の形態で約3ppm以下のMgとを含んでいた。第2の粉末混合物は、当業者に知られているように、篩い分け、タンブリング、ブレンドなどを行うことができる。
【0395】
第3の粉末混合物を作製するために、約6重量%のイットリア、約73重量%のアルミナ、及び約21重量%の3モル%イットリア部分安定化ジルコニアを、焼結後に多相の少なくとも1つの第3の層103を形成する比率で組み合わせた。粉末を組み合わせて第3の粉末混合物を作製することは、高純度(>99.99%)アルミナ媒体が粉末重量に対して約75%~約80%の装入量で添加される湿式ボールミリングプロセスを使用して行われた。エタノールを添加することにより、スラリー重量に対して約35~45%のスラリーを形成した。スラリーを約150のRPMで約20時間ボールミリングし、その後、当業者に公知の方法に従って乾燥、タンブリング、及び篩い分けを行い、第2の粉末混合物を形成した。第3の粉末混合物を900℃で8時間焼成し、6~8m/gの比表面積を有することが測定された。特定の実施形態では、本明細書に開示される焼成条件は、結晶相の形成及び粉末混合物の凝集をもたらし得、したがって、全体的な粒径分布のより大きな変動性、特に、より大きなd50及びd90粒径をもたらし得る。ロット間の変動及び焼成中の熱伝達の管理も粒径分布に寄与し得る。したがって、広い範囲の粒径分布、特に粉末混合物のd50及びd90粒径が生じ得る。
【0396】
第1、第2及び第3の粉末混合物は、当業者に知られているように、篩い分け、タンブリング、ブレンドなどを行うことができる。
【0397】
第1、第2及び第3の粉末混合物を、焼結装置のツールセットによって画定される容積内に別々に配置して、第1の粉末混合物の少なくとも1つの層、第2の粉末混合物の少なくとも1つの層、及び第3の粉末混合物の少なくとも1つの層を形成し、容積内に10-2~10-3の真空条件を作り出すことを含む。少なくとも1つの第1、第2及び第3の粉末混合物をツールセットによって画定される容積内に配置することは、典型的には、第1、第2及び第3の粉末混合物の混合をもたらし、それによって、焼結後に、少なくとも1つの第1の層と第2の層との間に非線形界面104を作りだし、少なくとも1つの第2の層と第3の層との間に第2の非線形界面105を作り出す。
【0398】
粉末混合物の層は、1625℃の焼結温度に60分間加熱しながら、第1、第2及び第3の粉末混合物の層に15MPaの圧力を加えることによって共圧縮し、ここで、第1の粉末混合物の少なくとも1つの層は少なくとも1つの第1の層100を形成し、第2の粉末混合物の少なくとも1つの層は少なくとも1つの第2の層102を形成し、第3の粉末混合物の少なくとも1つの層は少なくとも1つの第3の層103を形成し、したがって、572mmの最大寸法を有する単一の多層焼結セラミック体を形成した。
【0399】
約16体積%のPSZ及び残部のアルミナを含む例示的な部分イットリア安定化ジルコニア焼結体(本明細書に開示されるものと同様の温度、圧力及び持続時間の条件下で調製された)について密度を別個に測定し、密度は約4.319g/ccであると測定され、理論密度の約100%に相当した(理論密度は、当業者に知られている体積混合則を用いて約4.317g/ccであると計算された)。2つの測定値は、本明細書に開示されるアルキメデス密度測定値の測定分散内にあり、したがって、少なくとも1つの第2の層を含むPSZは、理論値の約100%の密度を有し得る。
【0400】
(本明細書に開示されるものと同様の温度、圧力、及び持続時間の条件下で調製された)例示的なYAG焼結体について密度を別個に測定し、密度は、YAGの理論密度の99%超に対応する4.55g/ccであると測定された(バルクYAGの市販の単結晶試料は、5回の測定にわたって4.56g/ccのアルキメデス密度を有すると測定され、この値は、本明細書で使用されるYAGの理論密度とみなされる)。2つの測定値は、本明細書に開示されるアルキメデス密度測定値の測定分散内にあり、したがって、少なくとも1つの第1の層を含む多結晶YAGは、理論値の約100%の密度を有し得る。この実施例による多層焼結セラミック体は、図9のc)に示すように、YAGを含む少なくとも1つの第1の層100及び少なくとも1つの第2の層とCTEが一致している。
【0401】
実施例2:YAGの第1の層及びジルコニア強化アルミナ(ZTA)の第2の層を含む多層焼結セラミック体(本明細書の図13~16、23~25に示される結果);
第1及び第2の粉末混合物から多層焼結セラミック体を形成した。第1の粉末混合物は、本明細書に開示されるYAGを含む少なくとも1つの第1の層100を形成する比率で組み合わされたアルミナ及びイットリアを含んでいた。第2の粉末混合物は、本明細書に開示されるように、約16体積%の部分安定化ジルコニアを含むジルコニア強化酸化アルミニウム(ZTA)の少なくとも1つの第2の層を形成する比率でアルミナ及び部分安定化ジルコニア(実施例1に従って開示される部分安定化ジルコニア)を含んでいた。
【0402】
実施例2によるイットリア粉末及びアルミナ粉末は、実施例1に開示されている通りであり、第1の粉末混合物を形成するために使用された。この実施例に従ってアルミナ粉末とイットリア粉末とを組み合わせて第1の粉末混合物を作製することは、当業者に知られているタンブリング(又は垂直/エンドオーバーエンド)混合を使用して行われ、高純度(>99.9%)アルミナ媒体が、粉末重量に対して80%~100%の媒体充填量で使用された。エタノールを添加して、スラリー重量に対して約35%~約45%でスラリーを形成した。スラリーを約20のRPMで約20時間混合し、その後、当業者に公知の方法に従って乾燥、タンブリング、及び篩い分けを行い、第1の粉末混合物を形成した。第1の粉末混合物を950℃で4時間焼成した。第1の焼成粉末混合物は、5~7m/gの比表面積、及び5~20μmのd50粒径を有していた。第1の焼成粉末混合物は、約2ppm以下のCa(CaO)及びKを含む約5ppmの総不純物(ICPMSを使用して測定)を有し、マグネシアMgOの形態のMg、並びにLi2O及びLiFの形態のLiを含む他のすべての元素について報告限界以下(例えば1ppm未満)であった。Siは、本明細書に開示されるICPMS法を用いて、第1の焼成粉末混合物中に検出されず、したがって、ICPMS法の精度内で、第1の焼成粉末混合物は、シリカの形態で約14ppm以下のSiを含む。(焼結後にYAGを形成するようにバッチ処理した)第1の焼成粉末混合物は、当業者に知られているように、篩い分け、タンブリング、ブレンドなどを行うことができる。
【0403】
実施例1に従って開示された部分安定化ジルコニア(PSZ)及びアルミナ粉末を使用して、第2の粉末混合物を形成した。この実施例に従ってアルミナ粉末とPSZ粉末とを組み合わせて第2の粉末混合物を作製することは、当業者に知られているタンブリング(又は垂直/エンドオーバーエンド)混合を使用して行われ、高純度(>99.9%)アルミナ媒体が、粉末重量に対して70%~90%の媒体充填量で使用された。エタノールを添加して、スラリー重量に対して約40%~約50%でスラリーを形成した。スラリーを約20のRPMで16~24時間混合し、その後、当業者に公知の方法に従って乾燥、タンブリング、及び篩い分けを行い、第2の粉末混合物を形成した。第2の粉末混合物を900℃で8時間焼成した。第2の焼成粉末混合物は、6~8m/gの比表面積、及び90~110μmのd50粒径を有していた。第2の焼成粉末混合物は、マグネシアMgOの形態の約3ppm以下のMg、約4ppmのTi、並びにLiO及びLiFの形態のLiを含む約0.75ppm以下のすべての他の元素を含む、約12ppmの総不純物(ICPMSを使用して測定され、Hf及びYを除く)を有していた。Siは、本明細書に開示されるICPMS法を用いて、第2の焼成粉末混合物中に検出されず、したがって、ICPMS法の精度内で、第2の焼成粉末混合物は、シリカの形態で約14ppm以下のSiを含む。(焼結後に約16体積%のPSZを形成するようにバッチ処理した)第2の焼成粉末混合物は、当業者に知られているように、篩い分け、タンブリング、ブレンドなどを行うことができる。
【0404】
第1及び第2の焼成粉末混合物を、本明細書に開示される焼結装置のツールセットによって画定される容積内に別々に配置して、第1の焼成粉末混合物の少なくとも1つの第1の層、及び第2の焼成粉末混合物の少なくとも1つの第2の層を形成し、容積内に10-2~10-3トルの真空条件を作り出した。
【0405】
少なくとも1つの第1の焼成粉末混合物及び少なくとも1つの第2の焼成粉末混合物をツールセットによって画定される容積内に配置することは、典型的には、第1の焼成粉末混合物と第2の焼成粉末混合物との混合をもたらし、それによって、焼結後に少なくとも1つの第1の層と第2の層との間に非線形界面を作り出す。
【0406】
焼成粉末混合物の層を、1500℃の焼結温度に30分間加熱しながら、第1及び第2の焼成粉末混合物の層に20MPaの圧力を加えることによって共圧縮し、焼結を行い、最大寸法150mmを有する単一の多層焼結セラミック体を形成した。
【0407】
図13は、この実施例による少なくとも1つの第1の層100を含む高相純度の多結晶YAGの形成を確認するX線回折結果を示す。本明細書に開示される多層焼結セラミック体の少なくとも1つの第1の層100のXRDは、約95体積%以下の相純度を測定することができる。したがって、この例によれば、単一の多層焼結セラミック体の少なくとも1つの第1の層100は、少なくとも約95体積%のYAG結晶相と、約5体積%以下の、YAP、YAM、イットリア及びアルミナ並びにそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの結晶相とを含む。
【0408】
画像処理ソフトウェア(米国国立衛生研究所(NIH)で開発されたImageJ、科学的多次元画像の画像処理及び分析プログラム)と組み合わせた走査型電子顕微鏡(SEM)を使用して、YAGを含む第1の層100の微細構造を分析した。図14図16は、多結晶YAGを含む少なくとも1つの第1の層100の微細構造の特徴を示す。
【0409】
図14は、この実施例によるYAGを含む少なくとも1つの第1の層100のプラズマ対向面106上で測定された多孔率の結果を示し、縦軸上に全細孔面積(μm)を示し、横軸はミクロン単位の細孔サイズを表す。測定は、5000倍で撮影された7枚の画像にわたって行われ、各画像は、約2885μmの全測定面積に対して53.7μm×53.7μmの面積であった。7枚の画像のうちのいずれか1枚の画像内の多孔性を含む総面積は、約0.015~約0.3μm、好ましくは約0.015~約0.2μm、好ましくは約0.015~約0.15μmとして測定された。0.7μm以下のYAGを含む少なくとも1つの第1の層100のプラズマ対向面106上の最大細孔径が測定され、多孔性を含む最大面積は約0.3μm以下であることが分かった。この実施例による少なくとも1つの第1の層100の多結晶YAG内で分析された7枚の画像にわたって、0.7μmより大きい細孔サイズの細孔は測定されなかった。
【0410】
図15は、mm単位の面積にわたるμm単位の多孔性(累積細孔面積)を含む累積部分面積を示し、図14で参照される7枚の画像の所与の細孔サイズについての累積細孔面積(μm/mm単位)として表される。本明細書に開示されるSEM画像及びImageJ画像処理方法を用いて、多孔率を各画像内で測定し(μm単位)、測定された全画像面積(mm)を計算して累積細孔面積を計算する。本明細書に開示されるYAGを含む少なくとも1つの第1の層100は、本明細書に開示されるSEM及び画像処理方法を用いて測定して約2~約800μm/mm、好ましくは約2~約600μm/mm、好ましくは約2~約400μm/mm、好ましくは約2~約300μm/mmの累積細孔面積を含む。多層焼結セラミック体の少なくとも1つの第1の層100のYAG内で分析した7枚の画像にわたって、0.6μmより大きい細孔径の細孔は測定されなかった。したがって、各々約54μm×54μmの面積の7枚の画像にわたって、本明細書に開示される多層焼結セラミック体は、非常に低い(<0.1面積%)面積百分率で1μm未満の細孔径に対応する多孔率を含むプラズマ対向面106を有する少なくとも1つの第1の層100を有し、したがって、プラズマ処理チャンバで使用するための多層焼結セラミック体の耐腐食性及び耐浸食性表面を提供する。
【0411】
図16のa)は、多結晶YAG相を含む少なくとも1つの第1の層100のプラズマ対向面106の熱エッチングプロセス後の高密度焼結微細構造を示す5000倍のSEM画像を示す。YAGの少なくとも1つの第1の層100のプラズマ対向面106上に、細孔がほとんどない非常に微細なスケールの多孔性が示されている。ほぼ完全に緻密な微細構造が示されており、最小多孔率及び約1μm以下の細孔径を有している。一実施形態による多層焼結セラミック体は、細孔を含むプラズマ対向面106を有する多結晶YAGを含む少なくとも1つの第1の層100を含み、細孔は、5μm以下のオーダーの細孔径、約0.1~約5μm、好ましくは約0.1~約4μm、好ましくは約0.1~約3μm、好ましくは約0.1~約2μm、好ましくは約0.1~約1μmのサブミクロンスケールの細孔径を有する。材料及びプロセスから形成される多層焼結セラミック体98のYAGを含む少なくとも1つの第1の層100は、本明細書に開示されるSEM及び画像処理方法を用いて測定して0.1~5μm、好ましくは0.1~4μm、好ましくは0.1~3μm、好ましくは0.1~2μm、及び0.1~1μmの最大サイズを有する細孔を含み得る。54μm×54μmの表面積にわたって、約22の細孔が計数された。
【0412】
図16のb)は、縦軸上の図15について測定された7つのSEM画像の各々についての細孔又は多孔率(表面積の%)を含む全表面積の合計を示し、横軸は、ミクロン単位の所与の%細孔面積についての対応する細孔径を表す。所与の画像内で、多孔性を含む総面積及び総画像測定面積を使用して、%細孔面積を計算した。図16に示されるように、7つのSEM画像にわたる測定値は、YAGを含むプラズマ対向面106を有する少なくとも1つの第1の層100に対応し、YAGは、SEM画像から、並びに本明細書に開示されるImageJソフトウェア及び方法を用いて測定して、0.0005~2%、好ましくは0.0005~1%、好ましくは0.0005~0.5%、好ましくは0.0005~0.05%、好ましくは0.0005~0.03%、好ましくは0.0005~0.005%、好ましくは0.0005~0.003%、好ましくは0.0005~0.001%、好ましくは0.005~2%、好ましくは0.05~2%、好ましくは0.5~2%、好ましくは0.005~2%、好ましくは0.005~1%、好ましくは0.05~2%、好ましくは0.05~1%、好ましくは0.5~2%の量の総面積のパーセントでの多孔率を含む。したがって、各々約54μm×54μmの面積の画像にわたって、本明細書に開示される多層焼結セラミック体は、非常に低い(総面積で<1%)百分率の多孔率を含むプラズマ対向面106を含み、したがって、プラズマ処理チャンバで使用するための多層焼結セラミック体98の耐腐食性及び耐浸食性表面を提供する。
【0413】
多層焼結体のYAGを含む少なくとも1つの第1の層100の小さな細孔/空隙最大サイズ及び最小多孔率%面積は、半導体反応器での使用に必要とされる粒子生成並びに腐食及び浸食の低減を可能にし得る。この最小多孔率は高密度に対応し、これはまた、半導体エッチング及び堆積用途における構成要素としてのそれらの使用を可能にする腐食性及び浸食性に対する耐性を提供する。
【0414】
図23のa)は、多層焼結セラミック体の非線形界面104の500倍でのSEM顕微鏡写真を示し、少なくとも1つの第2の層102及び少なくとも1つの第1の層100によって画定される界面は、不規則な非線形境界であり、これは、実施形態では、逆行角を含み得る。図23のa)に示すようないくつかの実施形態では、インターフェースは、少なくとも1つのダブテール構造及び/又はダブテール構造の少なくとも一部を含み得る。他の実施形態では、界面の少なくとも一部は、台形形状を含み得る。本明細書に開示される屈曲度(T)は、曲線の長さCとその端部間の直線距離Lとの比として数学的に定義され、T=C/Lである。図23のa)の画像は、2.7の屈曲度を有することが測定された。本明細書に開示される非線形界面104は、本明細書に開示されるSEM及び画像処理方法(ImageJソフトウェア内での測定)を用いて測定して、1.02超~約1.5、好ましくは1.02超~約2.0、好ましくは1.02超~約2.5、好ましくは1.02超~約3.0、好ましくは1.1超~約3.0、好ましくは1.3~約3.0、好ましくは1.5~約2.7の屈曲度Tを有し得る。直線界面(層が適用される予備焼結体を使用する積層体及び構造体に典型的である)は、約1又は1.02の屈曲度を有する。本明細書に開示される多層体の非線形界面104(少なくとも1つの第1及び第2の層によって画定される)の増加した屈曲度は、層間のインターロッキング効果を提供し、それによって、単一の多層焼結セラミック体が形成されるように接着強度を増加させる。
【0415】
図23のb)は、SEM及び画像処理方法から計算された非線形界面104の界面線(IL)を示す。図示のように、非線形界面104を示す例示的なSEM画像をImageJソフトウェアにインポートし、界面に沿った点に対応するx/y座標を使用して、図23のb)に示すような界面線(IL)の一次方程式を得て、非線形界面104を、界面線(IL)からの非線形界面104の距離によって特徴付けた。界面線(IL)からの非線形界面104の距離(D)は、SEM及び画像処理を用いて測定して、10~100μm、好ましくは20~100μm、好ましくは30~100μm、好ましくは40~100μm、50~100μm、好ましくは25~85μmの量で変化する。界面線(IL)からの距離(D)の増加は、開示される多層焼結セラミック体の向上した接着及びインターロッキング効果に寄与し得る。
【0416】
これらの逆方向又は逆行性の角度、特性、及び構造は、アンカー効果を提供し、それによって、少なくとも1つの第2の層102及び少なくとも1つの第1の層100によって画定される非線形界面104にわたる界面強度及び引張強度並びに結合を増加させ得る。
【0417】
図24のa)及びb)は、少なくとも1つの第1の層100と少なくとも1つの第2の層102との間の非線形界面104の特性を示すSEM画像を示し、図24のb)の例示的な画像に示すように、端部間の直線長さ(L)は約54μmであり、非線形界面104に沿って測定された界面長さ又は曲線(C)は約90μmである。本明細書に開示される計算を用いた図24のb)による屈曲度は1.7である。本明細書に開示されるImageJソフトウェア分析を用いて、9つのSEM画像にわたって測定を行った。約90μmの平均界面長さが測定され、直線距離(L)に対して界面長さ(C)が約66%増加したことを示した。したがって、本明細書に開示されるのは、少なくとも1つの第2の層及び少なくとも1つの第1の層によって画定される非線形界面104を有する多層焼結セラミック体であって、界面長さが20~70%、好ましくは20~60%、好ましくは20~40%、好ましくは30~80%、好ましくは40~80%、好ましくは50~70%増加している多層焼結セラミック体である。それに対応して、少なくとも1つの第2の層102及び少なくとも1つの第1の層100は、多層焼結セラミック体の最大寸法に界面面積が見合った界面で互いに接触してもよい。100~約625mmの最大寸法を有する単一の多層焼結体の場合、少なくとも1つの第2の層102及び少なくとも1つの第1の層100は、約3,117cm、好ましくは約3,068cm以下、好ましくは2,919cm以下、好ましくは78~約3,117cm、好ましくは78~約3,068cm、好ましくは78~2,919cm、好ましくは78~1,963cm、好ましくは78~1,257cm、好ましくは78~707cm、好ましくは78~314cm、好ましくは314~約3,117cm2、好ましくは314~約3,068cm、好ましくは314~2,919cm、好ましくは314~1,963cm好ましくは、314~1,257cm、好ましくは707~約3,068cm、好ましくは1257~3,039cmの面積を有する非線形界面104で互いに接触する。実施形態では、第1及び第2の層が直接接触して非線形界面104を形成し、したがって、少なくとも1つの第1及び第2の層が隣接層であることが好ましい。他の実施形態では、回路、加熱要素、RFコイル/RFアンテナ等は、特定の構成要素用途によって要求されるように、第1の層と第2の層との間に配置されてもよく、これらの特徴にかかわらず、第1の層及び第2の層は、隣接又は実質的に隣接していてもよい。この増加した界面長さ及び界面面積は、少なくとも1つの第1の層100と少なくとも1つの第2の層102との間の非線形界面104における接着を強化する。
【0418】
界面を横切って接触している結晶粒の数もまた、非線形界面104の接着及び強度特性において役割を果たし得る。結晶粒の数を界面長さにわたって計数して、1μm当たりの結晶粒の数を得た。図25のa)は、10個の画像にわたる、少なくとも1つの第1の層100及び少なくとも1つの第2の層102によって画定される界面のμm単位の界面長さ当たりの結晶粒の数を示し、1ミクロン当たりの結晶粒の数は少ない方が好ましい。実施形態では、少なくとも1つの第1の層としてのYAGと、アルミナマトリックス中に約16体積%のジルコニアの少なくとも1つの第2の層とを含む多層焼結セラミック体について、1ミクロン当たりの粒子数は、0.2~0.8結晶粒/μm、好ましくは0.3~0.6結晶粒/μm、好ましくは0.4~0.55結晶粒/μmを含む。図25のb)は、約54μmの、開示された画像にわたる線形測定値(本明細書では屈曲度Tとも定義される)に対する界面長さの比を示す。少なくとも1つの第1の層100と第2の層102との間の接着強度を増加させるためには、界面長さ対線形界面長さ(屈曲度、T)のより高い比が好ましい。
【0419】
表面粗さの測定は、クラス1のクリーンルームの環境条件下で、Keyenceの3Dレーザー走査型共焦点デジタル顕微鏡モデルVK-X250Xを用いて行なった。顕微鏡は2.8Hzの固有振動数を有するTMC tableTop CSP卓上型パッシブ除振台の上に置く。この非接触システムは、レーザービーム光と光学センサを使用して、表面を反射光の強度を介して解析する。Sa及びSzの表面粗さの特徴は、基礎となる技術分野において公知のパラメータであり、例えば、ISO標準25178-2-2012に記載されている。Saは、多層焼結セラミック体の表面のユーザ定義領域(スケール制限表面の算術平均高さ)にわたって算出された平均粗さ値である。Szは、多層焼結セラミック体の表面のユーザ定義領域にわたる最大山から谷までの距離(スケール制限表面の最大高さ、山から谷まで)を表す。Sdrは、「展開界面面積比」として定義される計算数値であり、完全に平坦な表面に対する実際の表面積の増加分の比例表現である。平坦な表面には0のSdrが割り当てられ、その値は表面の勾配と共に増加する。YAGを含む少なくとも1つの第1の層100のプラズマ対向面106にわたって、0.0005~2μm、好ましくは0.0005~1.5μm、好ましくは0.0005~1μm、好ましくは0.0005~0.75μm、好ましくは0.0005~0.5μm、好ましくは0.0005~0.25μm、好ましくは0.0005~0.125μm、好ましくは0.0005~0.075μm、好ましくは0.0005~0.050μm、好ましくは0.0005~0.025μm、好ましくは0.0005~0.020μm、好ましくは0.0005~0.015μm、好ましくは0.0005~0.010μm、好ましくは0.001~0.030μm、好ましくは0.001~0.020μm、好ましくは0.001~0.010μmのSa値が測定された。YAGを含む少なくとも1つの第1の層100のプラズマ対向面106にわたる山対谷、すなわちSzは、0.3~5μm、好ましくは0.3~4μm、好ましくは0.3~3μm、好ましくは0.3~2μm、好ましくは0.3~1μm、好ましくは0.65~5μm、好ましくは1~5μm、好ましくは2~5μm、好ましくは0.35~3μm、好ましくは0.5~1μmであると測定され、少なくとも1つの第1の層100のプラズマ対向面106の展開界面面積Sdrは、5×10-5~550×10-5、好ましくは30×10-5~400×10-5、好ましくは30×10-5~200×10-5、好ましくは40×10-5~100×10-5の展開界面面積Sdrを有し得る。表6は、この実施例による表面粗さの結果を記載する。
【0420】
少なくとも1つの第2の層(約16体積%の部分安定化ジルコニア及び残部のアルミナを含む)を含む本実施形態による多層焼結セラミック体は、YAGを含む少なくとも1つの第1の層とCTEが一致する(図9cに示されるように)。少なくとも1つの第1の層と第2の層との間のCTEの差の絶対値は、(ASTM E228-17に従って行われるような膨張率測定法を用いて)周囲温度から約1700℃(又は図に示されるように少なくとも約200℃~約1400℃)の温度範囲にわたって約0.27×10-6/℃以下であると測定された(少なくとも1つの第1の層のCTEに対して約2%以下の百分率差)。
【0421】
実施例3:化学量論的YAG及び変形例を含む少なくとも1つのプラズマ耐性の第1の層;
YAG及びその変形を含む例示的な少なくとも1つの第1の層100は、実施例2及び表7の態様に従って開示される方法及び材料に従って作製された。出発粉末及び粉末を組み合わせる方法は、実施例2に従って開示されている通りである。YAG(及び開示される変形)を含む少なくとも1つの第1の層は、表6に記載される焼結圧力、温度及び時間条件を使用して形成された。
【0422】
化学量論的YAG及び変形(過剰なアルミナ、ジルコニアがドープされ、密度が低下したもの)を、腐食及び浸食性能を分析するためにハロゲン系プラズマ処理に供した。
【0423】
10ミリトルの圧力、600ボルトのバイアス及び2000ワットのICP出力を有する2段階エッチングプロセスを実行し、第1のエッチング工程は、90標準立方センチメートル/分(sccm)のCF流量、30標準立方センチメートル/分(sccm)の酸素流量、及び20標準立方センチメートル/分(sccm)のアルゴン流量を有し、第2のエッチング工程は、100標準立方センチメートル/分(sccm)の酸素流量及び20標準立方センチメートル/分(sccm)のアルゴン流量を有し、第1及び第2のエッチング工程は、6時間の合計持続時間にわたって各々300秒間繰り返す。
【0424】
エッチング手順が完了すると、Sa、Sz及びSdrの表面特徴パラメータが、表6に記載されるように、ISO規格25178-2-2012に従って測定された。化学量論的YAG、過剰なアルミナ(0.25%及び0.5%)を有するYAG、及びわずかに低減された密度のYAGは各々、プラズマ曝露前に測定されたものと同じ、又は実質的に同じSa(プラズマ処理後)を有していた。
【0425】
ZrドープYAG、過剰なアルミナ(0.25%)を有するYAG、及びわずかに低減された密度のYAGは各々、プラズマ曝露前に測定されたものと実質的に同じSz(プラズマ処理後)を有していた。
【0426】
化学量論的YAG、過剰なアルミナ(0.25体積%及び0.5体積%)を有するYAG、及びZrドープYAGは各々、プラズマ曝露前に測定されたものと実質的に同じSdr(プラズマ処理後)を有していた。
【0427】
Sa、Sz及びSdrの他の特徴は、この実施例に従って開示される通りであり、表6に記載される通りである。本明細書に開示されるYAGを含む少なくとも1つの第1の層は、ハロゲン系プラズマの腐食作用及び浸食作用に耐性のある表面を提供する。
【0428】
実施例4:高密度YAGの第1の層を含む多層焼結セラミック体;
0.5%体積%過剰のアルミナを有する多層焼結セラミック体を形成した。第1の粉末混合物は、0.5体積%過剰のアルミナを有する本明細書に開示されるYAGを含む少なくとも1つの第1の層100を形成する比率で組み合わされたアルミナ及びイットリアを含んでいた。
【0429】
この実施例による第1の粉末混合物を形成するアルミナおよびイットリア粉末は、多結晶YAGを含む少なくとも1つの第1の層を形成する粉末混合物に添加された過剰のアルミナを0.5%体積で添加した実施例2に従って開示されている通りである。
【0430】
アルミナ粉末とイットリア粉末とを組み合わせて焼成して第1の粉末混合物を作製することを、実施例2に従って開示される通りに行った。
【0431】
第2の粉末混合物は、実施例2による粉末及び組み合わせ方法を用いて形成された。
【0432】
第1及び第2の焼成粉末混合物を、本明細書に開示される焼結装置のツールセットによって画定される容積内に別々に配置して、第1の焼成粉末混合物の少なくとも1つの第1の層、及び第2の焼成粉末混合物の少なくとも1つの第2の層を形成し、容積内に10-2~10-3トルの真空条件を作り出した。
【0433】
少なくとも1つの第1の焼成粉末混合物及び少なくとも1つの第2の焼成粉末混合物をツールセットによって画定される容積内に配置することは、典型的には、第1の焼成粉末混合物と第2の焼成粉末混合物との混合をもたらし、それによって、焼結後に少なくとも1つの第1の層と第2の層との間に非線形界面を作り出す。
【0434】
第1及び第2の焼成粉末混合物の層を、15MPaの圧力を加えることによって共圧縮し、1625℃の温度で60分間焼結して、約625mmの最大寸法を有する多層焼結セラミック体を形成した。
【0435】
密度測定は、この実施例による多層焼結セラミック体について、多層焼結体の全厚から切り取った試料をそのそれぞれの層に区分し、各層について別々に密度測定を行うことによって行った。測定は、ASTM B962-17のアルキメデス浸漬法に従って行われ、約4.57g/ccの密度が、YAGの少なくとも1つの第1の層100について測定された。報告された密度値は、5回の測定にわたる平均である。バルクYAGの市販の単結晶試料を、本明細書に開示される方法を用いて密度について測定した。5回の測定にわたって4.56g/ccのアルキメデス密度が得られ、この値を、本明細書で使用されるYAGの理論密度とする。したがって、多層焼結セラミック体のYAGを含む少なくとも1つの第1の層100は、YAGの理論密度の99~100%、好ましくは99.5~100%、好ましくは99.7~100%、好ましくは約100%の理論密度を有する。
【0436】
約16体積%の部分安定化ジルコニア(及び残部のアルミナ)を含む少なくとも1つの第2の層102を、同じ方法を用いて密度について測定し、約4.32g/ccの密度が計算された。ジルコニア及びアルミナが別個の結晶相を含むため、当該技術分野において既知の体積混合則を用いて、約16体積%のジルコニアを含むZTAの理論密度を計算することができる。4.32の密度が測定され、約16体積%の部分安定化ジルコニアを含む少なくとも1つの第2の層102の理論密度とみなされた。したがって、約16体積%のジルコニアを含む多層焼結セラミック体の少なくとも1つの第2の層102は、理論密度の99~100%、好ましくは99.5~100%、好ましくは理論密度の約100%の理論密度パーセントを有する。
【0437】
この実施例に従って開示される多層焼結セラミック体は、非常に高い密度(理論密度の約100%、相対密度としても表される)を有し、これは、実施形態では、少なくとも1つの第1及び第2の層を含む単一の多層焼結セラミック体の理論密度の99%超、好ましくは99~100%、好ましくは99.5~100%、好ましくは99.8~100%、好ましくは約100%であり得る。したがって、単一の多層焼結セラミック体は、理論密度の99%超を有するYAGを含む少なくとも1つの第1の層を含み、更に、アルミナと、少なくとも1つの第2の層の理論密度の99%超を有する約16体積%の部分安定化ジルコニア(ZTA)とを含む少なくとも1つの第2の層を含む。
【0438】
少なくとも1つの第2の層(約16体積%の部分安定化ジルコニア及び残部のアルミナを含む)を含むこの実施形態による多層焼結セラミック体は、好ましくは、YAGを含む少なくとも1つの第1の層とCTEが一致する(図9cに示されるように)。少なくとも1つの第1の層と第2の層との間のCTEの差の絶対値は、(ASTM E228-17に従って行われるような膨張率測定法を用いて)周囲温度から約1700℃(又は図に示されるように少なくとも約200℃~約1400℃)の温度範囲にわたって約0.27×10-6/℃以下であると測定された(少なくとも1つの第1の層のCTEに対して約2%以下の百分率差)。
【0439】
実施例5:イットリアの少なくとも1つの結晶相と20モル%のジルコニアとを含む少なくとも1つの第1の層と、ジルコニア強化アルミナ(ZTA)を含む少なくとも1つの第2の層とを含む単一の多層焼結セラミック体。
第1及び第2の粉末混合物から多層焼結セラミック体を形成した。第1の粉末混合物は、80モル%のイットリア及び20モル%のジルコニアの少なくとも1つの結晶相を含む少なくとも1つの第1の層を形成する量で組み合わされたジルコニア及びイットリアを含んでいた。第2の粉末混合物は、本明細書に開示されるように、(約16体積%のジルコニアを含む)ジルコニア強化酸化アルミニウム(ZTA)の第2の層を形成する比率でアルミナ及び部分安定化ジルコニア(実施例1に従って開示される部分安定化ジルコニア)を含んでいた。
【0440】
第1の粉末混合物は、6~8m/gの表面積、0.5~0.2μmのd10粒径、0.2~0.5μmのd50粒径、及び1.2~3μmのd90粒径を有する部分安定化ジルコニア粉末(ジルコニア中約3モル%のイットリアによる安定化)と、2~3m/gの比表面積、2~4μmのd10粒径、6~8μmのd50粒径、及び11~13μmのd90粒径を有するイットリア粉末とを含んでいた。少なくとも1つの結晶相を形成するためのジルコニア粉末とイットリア粉末との反応は、相純粋ジルコニアで生じる正方晶/単斜晶相変態の安定化を必要とせずに、任意のジルコニア粉末を使用することを可能にする。したがって、少なくとも1つの第1の層を形成するためのジルコニア粉末は、非安定化ジルコニア、部分安定化ジルコニア、及び安定化ジルコニアのいずれか1つ又はそれらの組み合わせを含み得る。ジルコニア及びイットリア粉末の総不純物含有量は約2~10ppmであった。Ca、Li及びMgなどのより軽い元素を検出するための本明細書に開示されるICPMS法の使用は、約2ppm以上の信頼の範囲内で行うことができる。Ca、Li及びMgは、イットリア及びジルコニア粉末中に検出されず(本明細書に開示されるICPMS法を用いて)、したがって、イットリア及びジルコニア粉末は、カルシア、リチア又はフッ化リチウム及びマグネシアの形態で、約2ppm以下のCa、Li及びMgを含む。Siはジルコニア粉末中にSiは検出されず、したがって、イットリア粉末及びジルコニア粉末は、シリカの形態で約14ppm以下のSiを含む(開示されるICPMS法による)。これらの粉末を、焼結後に20モル%のジルコニア及び残部のイットリアを含む少なくとも1つの結晶相を含む少なくとも1つの第1の層を形成するような比率で組み合わせた。部分安定化ジルコニア粉末とイットリア粉末とを組み合わせて第1の粉末混合物を作製することは、湿式ボールミリングを使用して行われ、3モル%のイットリア安定化ジルコニア媒体が、粉末重量に対して約90%の添加量で使用された。エタノールを添加することにより、約40体積%のスラリーを形成した。スラリーを150のRPMで約12時間粉砕し、その後、当業者に公知の方法に従って乾燥、タンブリング、及び篩い分けを行い、第1の粉末混合物を形成した。第1の粉末混合物を850℃で6時間焼成した。第1の焼成粉末混合物は、2~4m/gの比表面積、及び約5~10μmのd50粒径を有していた。第1の焼成粉末混合物は、約8ppmの総不純物を有し、シリカの形態で約14ppm(又はそれ未満)のSiを含み、当業者に知られているように、篩い分け、タンブリング、ブレンドなどを行うことができる。
【0441】
第2の粉末混合物は、アルミナ及び部分安定化ジルコニア(実施例1に従って開示される部分安定化ジルコニア)を含み、本明細書に開示される少なくとも1つの第2の層を形成した。第2の粉末混合物は、6~8m/gの比表面積、0.05~0.15μmのd10粒径、0.2~0.5μmのd50粒径、0.51~1μmのd90粒径を有するアルミナ粉末と、6~8m/gの表面積、0.08~0.2μmのd10粒径、0.2~0.8μmのd50粒径、及び1.2~5μmのd90粒径を有する部分安定化ジルコニア(PSZ)粉末とを含んでいた。アルミナ粉末の総不純物含有量は約2~10ppmであった。ジルコニア粉末は、約2~4モル%のHfを含み、約3モル%の量のイットリアで安定化された。Hf及びYは、本明細書に開示されるジルコニア中の不純物とはみなされない。Hf及びYを除いて、ジルコニア粉末は約20ppmの総不純物を有していた。Siなどのより軽い元素を検出するためのICPMSの使用は、約14ppm以上の信頼の範囲内で行うことができる。Mg、Ca及びLiなどのより軽い元素を検出するためのICPMSの使用は、約2ppm以上の信頼の範囲内で行うことができる。Mg、Ca及びLiは、ジルコニア及びアルミナ粉末中に検出されず(本明細書に開示されるICPMS法を用いて)、したがって、ジルコニア及びアルミナ粉末は、マグネシア、カルシア及びリチア又はフッ化リチウムの形態で約2ppm(又はそれ未満)のMg、Ca及びLiを含む。
【0442】
焼結後に約16体積%のジルコニアと残部のアルミナとを含む少なくとも1つの第2の層を形成するような比率で粉末を組み合わせた。アルミナ粉末とジルコニア粉末とを組み合わせて第2の粉末混合物を作製することは湿式ボールミリングの従来の粉末調製技術を使用して行い、高純度(>99.99%)アルミナ媒体を、粉末重量に対して約75~80%の装入量で使用した。エタノールを添加することにより、約40体積%のスラリーを形成した。スラリーを約150のRPMで約20時間ボールミリングし、その後、当業者に公知の方法に従って乾燥、タンブリング、及び篩い分けを行い、第2の粉末混合物を形成した。第2の粉末混合物を900℃で6時間焼成した。第2の焼成粉末混合物の比表面積は5~7m/gであった。第2の焼成粉末混合物は、約15ppmの総不純物を有し、シリカの形態で約14ppm又はそれ未満のSiを含み、当業者に知られているように、篩い分け、タンブリング、ブレンドなどを行うことができる。
【0443】
第1及び第2の焼成粉末混合物を、本明細書に開示される焼結装置のツールセットによって画定される容積内に別々に配置して、第1の焼成粉末混合物の少なくとも1つの第1の層、及び第2の焼成粉末混合物の少なくとも1つの第2の層を形成し、容積内に10-2~10-3トルの真空条件を作り出した。
【0444】
少なくとも1つの第1の焼成粉末混合物及び少なくとも1つの第2の焼成粉末混合物をツールセットによって画定される容積内に配置することは、典型的には、第1の焼成粉末混合物と第2の焼成粉末混合物との混合をもたらし、それによって、焼結後に少なくとも1つの第1の層と第2の層との間に非線形界面を作り出す。
【0445】
第1及び第2の焼成粉末混合物の層を、15MPaの圧力を加え、1500℃の温度で45分間焼結することによって共圧縮して、最大寸法150mmを有する多層焼結セラミック体を形成した。16体積%のジルコニア及び残部のアルミナを含む例示的な複合酸化物焼結体について密度を測定したところ、密度は4.319g/ccであると測定され、理論密度(当業者に知られている体積混合則を用いて計算される)のほぼ100%に相当した。
【0446】
約16体積%のジルコニア及び残部のアルミナの少なくとも1つの第2の層を含む、この例による多層焼結セラミック体は、好ましくは、80モル%のイットリア及び20モル%のジルコニアの少なくとも1つの結晶相を含む少なくとも1つの第1の層に厳密にCTE一致される(図20のa)に示される実施形態による)。少なくとも1つの第1の層と第2の層との間のCTEの差の絶対値は、(ASTM E228-17に従って行われるような膨張率測定法を用いて)周囲温度から約1700℃(又は図に示されるように少なくとも約200℃~約1400℃)の温度範囲にわたって約0.48×10-6/℃以下であると測定された(少なくとも1つの第1の層のCTEに対して約6.5%以下の百分率差)。
【0447】
実施例6:イットリア及び20モル%ジルコニアの少なくとも1つの結晶相の少なくとも1つの第1の層と、ジルコニア強化アルミナ(ZTA)の第2の層とを含む多層焼結セラミック体;
第1及び第2の粉末混合物から多層焼結セラミック体を形成した。第1の粉末混合物は、本明細書に開示されるように、80モル%のイットリア及び20モル%のジルコニアの少なくとも1つの結晶相を含む少なくとも1つの第1の層を形成する量で組み合わされたジルコニア及びイットリアを含んでいた。第2の粉末混合物は、本明細書に開示されるように、(約16体積%の部分安定化ジルコニアを含む)ジルコニア強化酸化アルミニウム(ZTA)の第2の層を形成する比率でアルミナ及び部分安定化ジルコニア(実施例1に従って開示される部分安定化ジルコニア)を含んでいた。
【0448】
第1及び第2の粉末混合物を含むイットリア、ジルコニア及びアルミナの出発粉末は、実施例5に従って開示された通りである。
【0449】
ジルコニア粉末とイットリア粉末とを組み合わせて第1の粉末混合物を作製することは、当業者に知られているようなタンブリング(又は垂直/エンドオーバーエンド)混合を使用して行われ、高純度(>99.9%)アルミナ媒体が、粉末重量に対して約80%~約100%の装入量で使用された。エタノールを添加することにより、スラリー重量で約35%~約45%のスラリーを形成した。スラリーを約20のRPMで約20時間混合し、その後、当業者に公知の方法に従って乾燥、タンブリング、及び篩い分けを行い、第1の粉末混合物を形成した。第1の粉末混合物を850℃で6時間焼成し、当業者に知られているように、篩い分け、タンブリング、ブレンドなどを行った。
【0450】
実施例2に従って、アルミナ粉末と部分安定化ジルコニア粉末とを組み合わせて第2の粉末混合物を形成する(続いて少なくとも1つの第2の層を形成する)ことを行った。粉末混合物を、酸素を含有する環境において、850℃で6時間、焼成した。
【0451】
第1及び第2の焼成粉末混合物を、本明細書に開示される焼結装置のツールセットによって画定される容積内に別々に配置して、第1の焼成粉末混合物の少なくとも1つの第1の層、及び第2の焼成粉末混合物の少なくとも1つの第2の層を形成し、容積内に10-2~10-3トルの真空条件を作り出した。
【0452】
少なくとも1つの第1の焼成粉末混合物及び少なくとも1つの第2の焼成粉末混合物をツールセットによって画定される容積内に配置することは、典型的には、第1の焼成粉末混合物と第2の焼成粉末混合物との混合をもたらし、それによって、焼結後に少なくとも1つの第1の層と第2の層との間に非線形界面を作り出す。
【0453】
焼成粉末混合物の層を、1600℃の焼結温度に60分間加熱しながら、第1及び第2の焼成粉末混合物の層に15MPaの圧力を加えることによって共圧縮し、焼結を行い、最大寸法約575mmを有する単一の多層焼結セラミック体を形成した。
【0454】
図21のa)は、この実施例による単一の多層焼結セラミック体98の非線形界面104を示すSEM画像を示し、第1の層100は、イットリア及びジルコニアを含むセラミック材料の少なくとも1つの結晶相を含み、ジルコニアは、部分的に安定化され、約3モル%のイットリアを含み、約20モル%の量で存在し、残部はイットリアである。実施形態では、少なくとも1つの第1の層100は、少なくとも1つの第2の層102に隣接する反応層108を含むことができ、少なくとも1つの第2の層102及び反応層108は、非線形界面108を含む境界を形成する。図21のSEM結果に見られるように、反応層は非常に高密度であり、最小多孔率(面積で<1%の量)を有する。反応層108は、SEM画像から測定して、10~30μm、好ましくは15~30μm、好ましくは20~30μm、好ましくは25~30μm、好ましくは約20μmの厚さを有し得る。反応層108によって非線形界面104の接着強度が向上する。実施形態では、反応層108は、YAG、YAP、YAM、立方晶相(イットリア、アルミナ及びジルコニアのうちの少なくとも2つの固溶体を含む)、及び蛍石結晶相(イットリア、アルミナ及びジルコニアのうちの少なくとも2つの固溶体を含む)、並びにそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの結晶相を含んでもよい。図21のb)は、約20モル%のジルコニア及び残部のイットリアを含む少なくとも1つの第1の層100の高密度焼結微細構造を示す。最小多孔率を有するほぼ完全に緻密な微細構造が示されている。
【0455】
(実施例1に開示される約16体積%の部分安定化ジルコニア及び残部のアルミナの少なくとも1つの第2の層を含む)この実施例による多層焼結セラミック体は、好ましくは、図20のa)に示されるように、80モル%のイットリア及び20モル%のジルコニアの少なくとも1つの結晶相を含む少なくとも1つの第1の層に厳密にCTE一致される。少なくとも1つの第1の層と第2の層との間のCTEの差の絶対値は、(ASTM E228-17に従って行われるような膨張率測定法を用いて)周囲温度から約1700℃(又は図に示されるように少なくとも約200℃~約1400℃)の温度範囲にわたって約0.48×10-6/℃以下であると測定された(少なくとも1つの第1の層のCTEに対して約6.5%以下の百分率差)。
【0456】
実施例7:多結晶YAGを含む少なくとも1つの第1の層:
約1~2m/gの比表面積、3.5~6.5μmのd10粒径、7.5~10.5μmのd50粒径及び15~20μmのd90粒径を有するイットリアの粉末(100%純粋なイットリアに対して約99.9992%の純度)と、5~7m/gの比表面積、1~3μmのd10粒径、3.5~6.5μmのd50粒径及び50~70μmのd90粒径を有するアルミナの粉末(100%純粋なアルミナに対して約99.9998%の純度)とを、焼結後に立方晶イットリウムアルミニウムガーネット(YAG)相を含む少なくとも1つの第1の層を形成する第1の粉末混合物を形成するモル比で組み合わせた。高純度アルミナ媒体(ICPMS法によって測定して>99.9%)を粉末重量で約100%の装入量で添加し、エタノールをエタノールと粉末との合計重量で約40%の量で添加してスラリーを形成した。150rpmで横軸を中心とした軸転作用を使用するボールミリングを20時間行い、その後、エタノールを、既知の方法による回転蒸発を使用して粉末混合物から抽出した。空気中、1050℃で6時間焼成すると、焼成粉末混合物は、2~4m/gの比表面積、1~4μmのd10粒径、3.5~6.5μmのd50粒径及び75~95μmのd90粒径を有すると測定された。粉末、粉末混合物及び/又は焼成粉末混合物は、例えば45~400μmの開口サイズを使用して篩い分けされ得、当業者に公知の方法に従って様々なプロセス工程で焼成、ブレンド及び/又はミリングされ得る。純度を、本明細書に開示されるICPMS法を用いて測定し、全構成成分から計算される酸化物の総質量に対して約5ppmの焼成粉末混合物の総不純物含有量が測定され、これは99.9995%の純度に相当していた。イットリア及びアルミナの出発粉末、並びに本明細書に開示される焼成粉末混合物の純度限界及び不純物含有量は、Siを含まない。Siについて本明細書に開示される純度を測定するためにICPMS法を使用する検出限界は約14ppmであり、したがって、イットリア及びアルミナの出発粉末並びに焼成粉末混合物は、約14ppm以下の検出レベルでシリカの形態のSiを含み得る。
【0457】
焼成粉末混合物を、本明細書に開示される焼結装置のツールセットによって画定される容積内に入れ、10-2~10-3トルの真空条件を容積内に作り出した。
【0458】
5MPaの圧力を加え、容積内の焼成粉末混合物を周囲温度から約10℃/分で800℃まで加熱し、その後、圧力を約0.4~約0.6MPa/分の速度で上昇させ、昇温を前で開示したように継続して1500℃及び20MPaで30分間の焼結条件に到達させて、多結晶YAG焼結セラミック体を形成した。多結晶YAG焼結セラミック体の一部を同じ条件に従って焼結し、その後、炉中で空気中1400℃で8時間アニーリングした。密度測定は、ASTM B962-17に従って、焼結されたままの多結晶YAG焼結セラミック体及びアニーリングされた多結晶YAG焼結セラミック体について行った。4.547g/cc及び4.542g/ccの密度は、それぞれ、焼結されたままのYAG焼結セラミック体試料及びアニーリングされたYAG焼結セラミック体試料について5回の測定にわたって平均化した。これは、YAGについての理論密度の99.81%及び99.70%に対応し、本明細書に開示される密度測定から計算されるように、それぞれ0.19%及び0.30%の対応する体積多孔率に対応する。
【0459】
多結晶YAG焼結セラミック体の結晶相純度の測定は、本明細書に開示されるように、XRD、SEM撮像、及び画像処理ソフトウェアの使用の組み合わせを使用して行われた。XRDは、約+/-5体積%までの結晶相同定が可能なPANanlytical AerisモデルXRDを使用して行われ、したがって、この実施例による多結晶YAG焼結セラミック体は、XRDを使用して約95体積%の上限までYAGを含むと測定された。より高い精度で、例えば約99.8%以下の相純度を決定するために、当業者に知られている後方散乱検出(BSD)法を用いて、SEM画像を撮影した。BSDを用いると、YAG相は灰色に見え、結晶粒配向に多少依存して変化し、酸化アルミニウム相は黒色に見え、酸化イットリウム相は白色に見え、多孔性も、存在する場合は黒色に見える。多結晶YAG焼結セラミック体に対応する図11のa)に示されているように、YAG相、アルミナ相及びイットリア相、並びに存在する任意の多孔性を同定するために、当業者に知られているBSD法を使用して5000倍で画像を撮影した。アルミナを含む黒色領域と多孔性を含む黒色領域とを区別するために、図11のb)の同じ領域に示されるように、多孔性又はアルミナのいずれかを含み得る領域を強調するために、ImageJ処理ソフトウェアを用いてBSD画像を黒と白の閾値で処理した。ImageJは、米国国立衛生研究所(NIH)で開発されており、科学的多次元画像の画像処理のためのJavaベースでパブリックドメインの画像処理及び解析プログラムである。本明細書に開示される測定のために使用されるBSD検出器は、トポグラフィ特徴を測定する更なる能力を有し、それによって、多孔性などの表面トポグラフィにおける任意の偏差を強調する。BSD検出器のトポグラフィモードを使用して、図11のa)の多結晶YAG焼結セラミック体の焼結セラミック体の同一領域の表面を5000倍で撮影し、そのトポグラフィ画像を図12のa)に示す。多孔性を含む領域は、ImageJにおける閾値処理後に図12のb)に示されるように強調された。その後、図12のb)のトポグラフィ画像内の多孔性を含む面積を、図11のb)のBSD画像内のアルミナ及び/又は多孔性を含む面積から差し引き、多結晶YAG焼結セラミック体に対応する焼結セラミック体中のアルミナを含む面積%、したがって体積%を得た。これらの分析ツールおよび方法の組み合わせは、約+/-0.1体積%までの相純度の決定を提供し得る。アルキメデス密度測定、XRD、SEM撮像及び画像分析ソフトウェアの開示された方法を用いて、この実施例による多結晶YAG焼結セラミック体は、約0.2体積%のアルミナ相、約0.19体積%の多孔率、及び約99.6体積%のYAG相を含み得る。この例による多結晶YAG焼結セラミック体は、本明細書に開示されるプロセスに従って作製された一体型ボディを含むことができ、したがって、表面上及び本体全体に分布したYAG相、酸化アルミニウム相、及び体積多孔率を含み得る。換言すれば、表面上で測定される構造は、バルク焼結セラミック体の体積内の構造を表す。したがって、各々90~99.8体積%、好ましくは90~99.6体積%、好ましくは90~99.4体積%、好ましくは95~99.8体積%、好ましくは95~99.6体積%、好ましくは95~99.4体積%の量のYAG相を含む多結晶YAG焼結セラミック体は、本明細書に開示される材料及び方法を用いて形成され得る。測定のばらつきを考慮して、本明細書で特定される量のYAG相を含む多結晶YAG焼結セラミック体は、0.1~0.3体積%の量の多孔率、及び0.1~約0.3体積%の量の酸化アルミニウムを更に含み得る。
【0460】
実施例8:層機械加工性:
3層焼結セラミック体を、本明細書に開示されるように調製した。外側腐食層はYAGであり、第2の層(すなわち、支持層)はZTAであり、第3の層は51%YAGと49%ZTAとの混合物(「YAG/ZTA層」)であった。
【0461】
5.6インチ長のピースの焼結セラミック体を、この実験のためにより大きなピースから切断した。Continental Diamond Tool Corporation社のダイヤモンド砥石を使用して、このピースの0.400インチの厚さを研削した。研削プロセスの開始時に、ダイヤモンド砥石は2.574インチの直径を有していた。研削プロセス後、ZTA層に面するダイヤモンド砥石の部分は、2.535インチの直径を有していた。具体的には、ZTA層を研削するのに0.039インチのダイヤモンド砥石が消費された。このプロセスは、0.400インチが研削されるまで、部品の長さに沿ってダイヤモンド砥石を前後に通過させることを含んでいた。
【0462】
YAG/ZTA層に面するダイヤモンド砥石の部分は、2.544インチの直径を有していた。したがって、ZTA層によって消費された0.039インチと比較して、YAG/ZTA層を研削する際に消費されたダイヤモンド砥石はわずか0.030インチであった。焼結セラミック体の0.400インチを除去するのに合計55分の研削が必要であった。
【0463】
ダイヤモンド砥石の摩耗に基づいて、YAG/ZTA層は機械加工するのが著しく容易である。同じ試験において、YAG層に面するダイヤモンド砥石の0.001インチのみが消費された。したがって、YAG層は機械加工が最も容易な層である。
【0464】
多くの実施形態を本明細書に開示されるとおり記載した。しかしながら、本明細書に開示された実施形態の趣旨及び範囲から逸脱することなく、様々な改変を行なうことができることが理解されよう。したがって、他の実施形態も以下の特許請求の範囲内にある。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9-01】
図9-02】
図9-03】
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17-01】
図17-02】
図17-03】
図18
図19
図20-01】
図20-02】
図20-03】
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30A
図30B
図30C
図31A
図31B
図32
図33
図34