(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-20
(45)【発行日】2025-01-28
(54)【発明の名称】自動分析装置
(51)【国際特許分類】
G01N 35/00 20060101AFI20250121BHJP
【FI】
G01N35/00 F
(21)【出願番号】P 2023537779
(86)(22)【出願日】2021-07-27
(86)【国際出願番号】 JP2021027678
(87)【国際公開番号】W WO2023007573
(87)【国際公開日】2023-02-02
【審査請求日】2023-12-20
(73)【特許権者】
【識別番号】501387839
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテク
(74)【代理人】
【識別番号】110001829
【氏名又は名称】弁理士法人開知
(72)【発明者】
【氏名】寺山 大登
(72)【発明者】
【氏名】成川 沙希子
(72)【発明者】
【氏名】西田 哲也
【審査官】鴨志田 健太
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/35471(WO,A1)
【文献】特開2013-76678(JP,A)
【文献】特開平7-159414(JP,A)
【文献】特開2008-14637(JP,A)
【文献】実開昭60-84667(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
分析対象である試料を分析して検査データを取得する自動分析装置であって、
隔壁で確定された領域の内部で前記試料の分析を行う分析部と、
前記分析部の内部の環境状態を制御する内部環境制御装置と、
前記分析部の内部の環境状態を計測する内部環境データ取得装置と、
前記分析部の外部の環境状態を計測する外部環境データ取得装置と、
前記分析部の内部と外部とを隔てる前記隔壁に設けられ、前記分析部の外部から内部へのアクセスを可能とするドアと、
前記ドアの開閉可否を制御する制御装置とを備え、
前記制御装置は、前記分析部の内部に分析の終了していない前記試料が存在し、かつ、前記内部環境データ取得装置での計測結果が予め定めた内部環境仕様の範囲内であり、かつ、前記外部環境データ取得装置での計測結果が予め定めた外部環境仕様の範囲外である場合に、前記ドアの開扉を禁止することを特徴とする自動分析装置。
【請求項2】
請求項1記載の自動分析装置において、
前記制御装置は、前記ドアの開扉を禁止した際に、
前記外部環境データ取得装置において計測した環境状態が前記外部環境仕様の範囲内になった場合、前記内部環境データ取得装置において計測した前記環境状態が前記内部環境仕様の範囲外になった場合、又は、前記分析部の内部の試料の検査が全て完了した場合のうちの少なくとも1つの場合に、前記ドアの開扉を許可することを特徴とする自動分析装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の自動分析装置において、
前記内部環境データ取得装置及び前記外部環境データ取得装置において計測する環境状態は、気温、湿度、気圧、明るさのうちの少なくとも1つであることを特徴とする自動分析装置。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の自動分析装置において、
前記内部環境仕様と前記外部環境仕様とに同じ範囲を設定することを特徴とする自動分析装置。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の自動分析装置において、
前記制御装置は、前記分析部の内部に分析の終了していない前記試料が存在し、かつ、前記内部環境データ取得装置での計測結果が予め定めた内部環境仕様の範囲内であり、かつ、前記内部環境データ取得装置での計測結果と前記外部環境データ取得装置での計測結果との差が予め定めた差分環境仕様の範囲外である場合に、前記ドアの開扉を禁止することを特徴とする自動分析装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
生体試料の検査においては、一般に、生体から採取した血液や尿、便、細胞などの試料(生体試料、検体)を自動分析装置のような検査装置の内部に格納して各種データを取得する。生体試料は検査装置内部に格納されて一定時間留め置かれるため、検査装置内部の温度、湿度、明るさなどの環境を適切に保たないと、正確な検査結果が得られなくなる可能性がある。
【0003】
例えば細菌検査では、採取した試料を抗菌薬が塗られたウェルプレートに分注し、プレートを監視して細菌が増殖するペースを解析する。このとき、検査装置内部の環境が規定温度よりも高温になると細胞が死滅したり、規定湿度よりも低湿になると水分が蒸発したりして、細菌の増殖するペースが通常(正常な状態)とは異なってしまう。すなわち、このような状況では正確な検査結果が得られない。したがって、生体試料を格納する検査装置内部の環境を予め定められた仕様に則して適切に管理することが重要となる。
【0004】
検査装置における検査に用いる試薬の温度管理に係る技術としては、例えば、特許文献1に記載のものが知られている。特許文献1には、検体が収容された検体容器を保持する検体容器保持機構と、試薬が収容された試薬容器を保持する試薬容器保持機構と、検体と試薬とを混合して反応させる反応容器を保持する反応容器保持機構と、反応容器に収容された反応液の測定を行う検出機構と、前記試薬容器に収容された試薬の温度を測定する試薬温度測定機構と、予め定めた一定の温度環境下で前記試薬容器を保持する試薬恒温機構と、前記試薬恒温機構内に設けられ、変更可能な温度環境下で前記試薬容器を保持する試薬温度制御部と、前記試薬温度制御部を含む前記試薬恒温機構内部で前記試薬容器を搬送する試薬容器搬送機構と、前記試薬温度測定機構の測定結果に基づいて、前記試薬温度制御部の試薬容器を保持する温度環境を制御する制御装置とを備えた自動分析装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、検査装置に新しい試料を搬入したり、検査が完了した試料を搬出したりする際には、検査装置のドアを開閉する必要がある。その際、検査装置外部の空気が検査装置内部に流入することによって、検査装置内部の環境が適切な状態ではなくなる、すなわち、検査装置内部の環境が仕様の範囲から外れてしまう可能性がある。特に、検査装置外部の環境が仕様範囲外である場合には、検査装置外部の空気が検査装置内部に流入した際に検査装置内部の環境が大きく変化し、検査結果に影響を及ぼしてしまう可能性がある。
【0007】
本発明は上記に鑑みてなされたものであり、検査装置外部の環境が検査装置内部の環境に及ぼす影響を抑制し、検査装置内部の環境の変化による検査結果の精度の低下を抑制することができる自動分析装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願は上記課題を解決する手段を複数含んでいるが、その一例を挙げるならば、分析対象である試料を分析して検査データを取得する自動分析装置であって、隔壁で確定された領域の内部で前記試料の分析を行う分析部と、前記分析部の内部の環境状態を制御する内部環境制御装置と、前記分析部の内部の環境状態を計測する内部環境データ取得装置と、前記分析部の外部の環境状態を計測する外部環境データ取得装置と、前記分析部の内部と外部とを隔てる前記隔壁に設けられ、前記分析部の外部から内部へのアクセスを可能とするドアと、前記ドアの開閉可否を制御する制御装置とを備え、前記制御装置は、前記分析部の内部に分析の終了していない前記試料が存在し、かつ、前記内部環境データ取得装置での計測結果が予め定めた内部環境仕様の範囲内であり、かつ、前記外部環境データ取得装置での計測結果が予め定めた外部環境仕様の範囲外である場合に、前記ドアの開扉を禁止するものとする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、検査装置外部の環境が検査装置内部の環境に及ぼす影響を抑制し、検査装置内部の環境の変化による検査結果の精度の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】自動分析装置の要部である分析部の外観を概略的に示す図である。
【
図3】自動分析装置の処理機能を概略的に示す機能ブロック図である。
【
図4】画面表示装置の表示例を示す図であり、標準的な画面が表示されている様子を示す図である。
【
図5】画面表示装置の表示例を示す図であり、ドアの開扉が禁止されている旨の情報を示す画面が表示されている様子を示す図である。
【
図6】第1の実施の形態に係る制御装置における開扉判定処理の処理内容を示すフローチャートである。
【
図7】第2の実施の形態に係る制御装置における開扉判定処理の処理内容を示すフローチャートである。
【
図8】第3の実施の形態に係る制御装置における開扉判定処理の処理内容を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しつつ説明する。
【0012】
本実施の形態においては、試料の分析を行う自動分析装置の一例として、試料に光を照射して測定値を取得する自動分析装置を例示して説明するがこれに限られず、外部と隔てられた環境で分析を行う他の自動分析装置にも本発明を適用することができる。
【0013】
<第1の実施の形態>
本発明の第1の実施の形態を
図1~
図7を参照しつつ説明する。
【0014】
図1は、自動分析装置の要部である分析部の外観を概略的に示す図であり、
図2は、分析部の内部構成を概略的に示す図である。また、
図3は、自動分析装置の処理機能を概略的に示す機能ブロック図である。
【0015】
図1及び
図3に示すように、自動分析装置100は、隔壁101aで画定された領域の内部で試料の分析を行う分析部101と、分析部101の外部の環境状態を計測する外部環境データ取得装置102と、分析部101の内部の環境状態を計測する内部環境データ取得装置105(分析部101の内部に配置)と、分析部101の内部と外部とを隔てる隔壁101aに設けられ、分析部101の外部から内部へのアクセスを可能とするドア112と、画面などによるオペレータへの情報の提示機能とタッチパネルなどによる情報の入力機能とを有する入出力インタフェースである画面表示装置111とを有している。
【0016】
分析部101は、試料の分析を行う領域が隔壁101aで覆われることで、その内部と外部が隔てられており、分析部101の外部の環境状態が内部の環境状態に与える影響を抑制するように構成されている。隔壁101aは、分析部101の内部と外部を隔てることで、分析部101の外部環境の内部環境に与える影響を抑制し、分析部101の内部における試料の保持環境や分析環境を維持するためのものであり、断熱機能、遮光機能、密閉機能などを有している。
【0017】
外部環境データ取得装置102は、分析部101(隔壁101a)の外部の環境状態として、例えば、気温、湿度、気圧、明るさ(光度)等を計測するセンサである。外部環境データ取得装置102は、回路基板やソフトウェアなどで構成されている。外部環境データ取得装置102が温度を測定する抵抗温度計である場合には、測温抵抗体やサーミスタなどを有する。また、非接触温度計である場合には、サーモグラフィなどを有する。また、放射温度計である場合には、照射部や受光部を有する。また、湿度を測定する湿度計である場合には、感湿膜または感湿材などを有する。また、照度を測定する照度計である場合には、フォトダイオードや光学フィルタなどを有する。また、気圧を測定する気圧計である場合には、半導体やチャンバーを有する。なお、外部環境データ取得装置102は、1種類の環境状態のデータを取得する構成であっても良いし、複数種類の環境状態のデータを取得する構成であっても良いし、異なる種類の環境状態のデータを取得する外部環境データ取得装置102を複数設けても良い。
【0018】
内部環境データ取得装置105は、分析部101(隔壁101a)の内部の環境状態として、例えば、気温、湿度、気圧、明るさ(光度)等を計測するセンサである。内部環境データ取得装置105は、回路基板やソフトウェアなどで構成されている。内部環境データ取得装置105が温度を測定する抵抗温度計である場合には、測温抵抗体やサーミスタなどを有する。また、非接触温度計である場合には、サーモグラフィなどを有する。また、放射温度計である場合には、照射部や受光部を有する。また、湿度を測定する湿度計である場合には、感湿膜または感湿材などを有する。また、照度を測定する照度計である場合には、フォトダイオードや光学フィルタなどを有する。また、気圧を測定する気圧計である場合には、半導体やチャンバーを有する。なお、内部環境データ取得装置105は、1種類の環境状態のデータを取得する構成であっても良いし、複数種類の環境状態のデータを取得する構成であっても良いし、異なる種類の環境状態のデータを取得する内部環境データ取得装置105を複数設けても良い。
【0019】
ドア112には、オペレータに対して異常をなどの情報を通知するライト117と、オペレータが押下することで、ドア112の開扉許可時(後述)にはドア112を開扉することができるボタン118とが設けられている。オペレータがドア112のボタン118を押下すると、ドア112を開扉してよいか否かを判定する開扉判定処理(後述)が実施され、開扉が許可された場合にはドア112が開錠されて開扉し、開扉が許可されない場合(禁止された場合)にはドア112は施錠されて開扉されずにライト117の点灯などによってオペレータにその旨が報知される。ドア112は、分析部101の隔壁101aと同様に断熱機能、遮光機能、密閉機能などを有しており、ドア112が閉扉状態であるときには、分析部101の全体の断熱機能、遮光機能、密閉機能などが保持される。
【0020】
図2及び
図3に示すように、分析部101の内部には、分析対象である1つ以上の試料を収容した複数の試料容器11を保持して管理する試料管理部109と、試料管理部109から図示しない搬送装置によって搬送された試料容器11を測定位置に保持する試料設置部108と、試料設置部108に保持された試料容器11の試料12に測定用の光を照射する光源14と、光源14からの測定光の照射により試料12から得られる観測光(透過光、反射光、散乱光、発光など)を計測するカメラ15と、分析部101を含む自動分析装置100の全体の動作を制御する制御装置106と、分析部の内部の環境状態を、例えば、予め定めた内部環境仕様の範囲内となるように制御する内部環境制御装置104と、内部環境データ取得装置105と、ドアの開閉可否を制御するドア制御装置110とが配置されている。
【0021】
試料管理部109は、分析対象である試料12(生体試料)を収容した試料容器11が試料管理部109に設置されているか否かを検出する機能として、例えば、レーザースキャナなどを有している。試料管理部109が試料容器11の検出機能としてレーザースキャナを有している場合、物体の有無を検知するための関連構成としてレーザー出力部やレンズなどを有している。
【0022】
試料設置部108は、分析対象である試料12(生体試料)を収容した試料容器11が試料設置部108に設置されているか否かを検出する機能として、例えば、レーザースキャナなどを有している。試料設置部108が試料容器11の検出機能としてレーザースキャナを有している場合、物体の有無を検知するための関連構成としてレーザー出力部やレンズなどを有している。
【0023】
なお、試料管理部109及び試料設置部108は、試料容器11が試料設置部108に設置されているか否かを検出する機能を共用しても良い。
【0024】
試料管理部109は、分析部101の内部で有る必要はなく、分析部101の外部(或いは、自動分析装置100の外部)に独立して構成しても良い。
【0025】
光源14は、例えば、発光ダイオードや他の発光体である。また、カメラ15は、例えば、フォトダイオード等により構成される撮像素子によって光を受光し、受光光量を輝度値として測定するものである。なお、カメラ15は、例えば、一次元の光センサなどであっても良く、或いは、CMOSなどのイメージセンサレンズ、フィルタなどを有して画像を撮像する構成であっても良い。
【0026】
制御装置106は、回路基板やソフトウェア等により構成されるものであって、光源14の照射光量やカメラ15の露光時間等の制御を行いつつ、カメラ15が計測した観測光から、試料(検体)12による光の透過率、散乱光量、周波数(検体の色)、試料12に含まれる蛍光物質の発光量などを算出し、計測結果として記憶部106aなどに記憶する。
【0027】
記憶部106aは、カメラ103で取得した輝度値や制御装置106で光源の照射光量およびカメラの露光時間等を制御した制御値を記憶する。なお、記憶部106aは、分析部101(又は、制御装置106)の内部に有している必要はなく、ネットワークやユニバーサルシリアルバス(USB)等で接続された外部のシステムと結合しても良い。
【0028】
内部環境制御装置104は、分析部101の内部の環境状態(例えば、温度、湿度、明るさ、気圧など)を制御するものであり、例えば、加熱冷却機構、加湿除湿機構、明るさ(照度)調整機構、加圧減圧機構などの各機能を有している。
【0029】
ドア制御装置110は、回路基板やソフトウェア等により構成されるものであって、制御装置106の判断結果に基づいてドア112の開扉を許可または禁止する。ドア112の開扉が禁止された場合には、図示しないロック機構によりドア112が閉扉状態で施錠され、開扉が許可された場合には、ロック機構は開錠されてドア112の開扉が可能となる。なお、ドア制御装置110の機能がドア112に設けられていても良い。
【0030】
ここで、光源14及びカメラ15は、分析対象である試料を分析して検査データを取得する試料データ取得部107を構成している。また、制御装置106とドア制御装置110は、分析部101の内部の試料設置部108に試料データ取得部107による分析の終了していない試料12(試料容器11)が存在し、かつ、内部環境データ取得装置105での計測結果が予め定めた内部環境仕様の範囲内であり、かつ、外部環境データ取得装置102での計測結果が予め定めた外部環境仕様の範囲外である場合に、ドア112の開扉を禁止する制御装置を構成している。
【0031】
図4及び
図5は、画面表示装置の表示例を示す図であり、
図4は標準的な画面が表示されている様子を示す図であり、
図5はドアの開扉が禁止されている旨の情報を示す画面が表示されている様子を示す図である。
【0032】
図4に示すように、正常状態では、例えば、画面表示装置111には、分析対象である試料などの情報を示すサンプル情報や、分析結果などの情報を示す取得データ情報などのほか、自動分析装置100の電源を管理する電源ボタンや、ドアの開扉を行うための開錠を指示するドア開錠ボタン111aなどが表示されている。この状態で、ドア開錠ボタン111a(又は、ドア112のボタン118)がオペレータにより押下されると、制御装置106によって、ドア112を開扉してよいか否かを判定する開扉判定処理(後述)が実施され、開扉が許可された場合にはドア112が開錠されて開扉し、開扉が許可されない場合(禁止された場合)にはドア112は施錠されて開扉されずに、例えば、ドアの開扉が禁止されている旨の情報を示すダイアログ画面が表示される(
図5参照)。
【0033】
図5に示すように、画面表示装置111にドア112の開扉が禁止されている旨の情報を示すダイアログ画面が表示される場合には、ドア112を開扉できない理由を併せて表示しても良い。
【0034】
ここで、制御装置(制御装置106及びドア制御装置110)による開扉判定処理について説明する。
【0035】
図6は、制御装置における開扉判定処理の処理内容を示すフローチャートである。
【0036】
図6において、制御装置106は、ドア開錠ボタン111a(又は、ドア112のボタン118)がオペレータにより押下されると、まず、試料設置部108からの情報に基づいて、分析部101の内部に分析中の試料12(試料容器11)が有るか否かを判定する(ステップS201)。
【0037】
ステップS201での判定結果がYESの場合には、続いて、分析部101の内部の環境状態が予め定めた内部仕様範囲内であるか否かを判定する(ステップS202)。ここでの環境状態とは、例えば、気温、湿度、気圧、明るさなどのうちの少なくとも1つである。また、内部仕様範囲とは、試料データ取得部107により安定して正確な分析結果が得られるための環境状態の条件を示すものであり、例えば、事前に実験的に求めた範囲が設定される。
【0038】
ステップS202での判定結果がYESの場合には、続いて、分析部101の外部の環境状態が予め定めた外部仕様範囲内であるか否かを判定する(ステップS203)。ここでの環境状態とは、例えば、気温、湿度、気圧、明るさなどであり、ステップS202の判定で参照する環境状態と同じ種類のものが該当する。なお、外部仕様範囲としては、内部仕様範囲と同じ範囲を設定しても良いが、ドア112の開扉時に内部の環境状態に与える影響を考慮して、事前に実験的に求めた範囲を設定しても良い。
【0039】
ステップS203での判定結果がNOの場合には、制御装置106は、ドア112の開扉を禁止する。このとき、ドア制御装置110はドア112を施錠し、画面表示装置111にドア112の開扉が禁止であることを表示する。また、開扉が禁止である理由として、分析部101の外部の環境状態が仕様範囲外であること及び仕様範囲外になっている対象の環境状態の種類などを表示する。
【0040】
以上のように、制御装置(制御装置106及びドア制御装置110)は、ステップS201及びS202の判定結果がYESであり、かつ、ステップS203での判定結果がNOである場合、すなわち、分析部101の内部に分析の終了していない試料12が存在し、かつ、内部環境データ取得装置105での計測結果が予め定めた内部環境仕様の範囲内であり、かつ、外部環境データ取得装置102での計測結果が予め定めた外部環境仕様の範囲外である場合に、ドア112の開扉を禁止する。
【0041】
また、ステップS201,S202の何れかの判定結果がNOの場合、又は、ステップS203での判定結果がYESの場合には、続いて、ドア制御装置110は、ドア112の開扉を許可する。このとき、ドア制御装置110はドア112を解錠し、画面表示装置111にドア112の開扉が可能であることを表示する。
【0042】
以上のように構成した本実施の形態における効果を説明する。
【0043】
自動分析装置のような検査装置に新しい試料を搬入したり、検査が完了した試料を搬出したりする際には、検査装置のドアを開閉する必要がある。その際、検査装置外部の空気が検査装置内部に流入することによって、検査装置内部の環境が適切な状態ではなくなる、すなわち、検査装置内部の環境が仕様の範囲から外れてしまう可能性がある。特に、検査装置外部の環境が仕様範囲外である場合には、検査装置外部の空気が検査装置内部に流入した際に検査装置内部の環境が大きく変化し、検査結果に影響を及ぼしてしまう可能性がある。
【0044】
これに対して本実施の形態においては、分析対象である試料を分析して検査データを取得する自動分析装置であって、隔壁で確定された領域の内部で試料の分析を行う分析部と、分析部の内部の環境状態を制御する内部環境制御装置と、分析部の内部の環境状態を計測する内部環境データ取得装置と、分析部の外部の環境状態を計測する外部環境データ取得装置と、分析部の内部と外部とを隔てる隔壁に設けられ、分析部の外部から内部へのアクセスを可能とするドアと、ドアの開閉可否を制御する制御装置とを備え、制御装置は、分析部の内部に分析の終了していない試料が存在し、かつ、内部環境データ取得装置での計測結果が予め定めた内部環境仕様の範囲内であり、かつ、外部環境データ取得装置での計測結果が予め定めた外部環境仕様の範囲外である場合に、ドアの開扉を禁止するように構成したので、検査装置外部の環境が検査装置内部の環境に及ぼす影響を抑制し、検査装置内部の環境の変化による検査結果の精度の低下を抑制することができる。
【0045】
すなわち、本実施の形態によれば、試料の検査中に装置外部の環境が仕様範囲外となった場合に、装置のドアを開けることが禁止され、装置外部の空気が装置内部に流入することを防ぐことができる。すなわち、装置外部が装置内部へ及ぼす影響を低減させ、装置内部の環境を仕様範囲内に保つことができる。これにより、試料の再検査や試料再調整のリスクを減らし、その結果、試料の喪失や時間的なロスを防ぐことができる。
【0046】
なお、
図6のステップS205においてドア112の開扉を許可した後に、ドア112の開扉時間に制限を設けても良い。これにより、長時間に渡って装置外部の空気が装置内部に流入することにより装置内部の環境が仕様範囲外になることを未然に防ぐ効果が得られる。
【0047】
また、一度ドア112を開閉操作した後に、一定時間だけドア112の開扉を禁止したり、ドア112を開けられる時間を短くしたりしても良い。このように制御することにより、頻繁にドアの開閉を行うことによって、装置内部の環境が仕様範囲外になる可能性を抑制することができる。
【0048】
<第2の実施の形態>
本発明の第2の実施の形態を
図7を参照しつつ説明する。
【0049】
本実施の形態は、開扉判定処理の対象となる環境状態を具体的に温度とした場合を示すものである。
【0050】
図7は、本実施の形態に係る制御装置における開扉判定処理の処理内容を示すフローチャートである。図中、第1の実施の形態と同様の事項については説明を適宜省略する。
【0051】
図7において、制御装置106は、ドア開錠ボタン111a(又は、ドア112のボタン118)がオペレータにより押下されると、まず、試料設置部108からの情報に基づいて、分析部101の内部に分析中の試料12(試料容器11)が有るか否かを判定する(ステップS301)。
【0052】
ステップS301での判定結果がYESの場合には、続いて、分析部101の内部の温度が予め定めた内部仕様範囲内であるか否かを判定する(ステップS302)。
【0053】
ステップS302での判定結果がYESの場合には、続いて、分析部101の外部の温度が予め定めた外部仕様範囲内であるか否かを判定する(ステップS303)。
【0054】
ステップS303での判定結果がNOの場合には、制御装置106は、ドア112の開扉を禁止する。このとき、ドア制御装置110はドア112を施錠し、画面表示装置111にドア112の開扉が禁止であることを表示する。また、開扉が禁止である理由として、分析部101の外部の温度が仕様範囲外であることなどを表示する。
【0055】
以上のように、制御装置(制御装置106及びドア制御装置110)は、ステップS301及びS302の判定結果がYESであり、かつ、ステップS303での判定結果がNOである場合、すなわち、分析部101の内部に分析の終了していない試料12が存在し、かつ、内部環境データ取得装置105での温度に係る計測結果が予め定めた内部環境仕様の範囲内であり、かつ、外部環境データ取得装置102での温度に係る計測結果が予め定めた外部環境仕様の範囲外である場合に、ドア112の開扉を禁止する。
【0056】
また、ステップS201,S202の少なくとも一方の判定結果がNOの場合、又は、ステップS203での判定結果がYESの場合には、続いて、ドア制御装置110は、ドア112の開扉を許可する。このとき、ドア制御装置110はドア112を解錠し、画面表示装置111にドア112の開扉が可能であることを表示する。
【0057】
その他の構成は第1の実施の形態と同様である。
【0058】
以上のように構成した本実施の形態においても第1の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0059】
<第3の実施の形態>
本発明の第3の実施の形態を
図8を参照しつつ説明する。
【0060】
本実施の形態は、開扉判定処理の対象となる環境状態を具体的に温度及び湿度とした場合を示すものである。
【0061】
図8は、本実施の形態に係る制御装置における開扉判定処理の処理内容を示すフローチャートである。図中、第1及び第2の実施の形態と同様の事項については説明を適宜省略する。
【0062】
図8において、制御装置106は、ドア開錠ボタン111a(又は、ドア112のボタン118)がオペレータにより押下されると、まず、試料設置部108からの情報に基づいて、分析部101の内部に分析中の試料12(試料容器11)が有るか否かを判定する(ステップS401)。
【0063】
ステップS401での判定結果がYESの場合には、続いて、分析部101の内部の温度が予め定めた内部仕様範囲内であるか否かの判定と(ステップS402)、分析部101の内部の湿度が予め定めた内部仕様範囲内であるか否かの判定とを行う(ステップS403)。
【0064】
ステップS402及びS403の判定結果がYESの場合には、続いて、分析部101の外部の温度が予め定めた外部仕様範囲内であるか否かの判定と(ステップS404)、分析部101の外部の湿度が予め定めた外部仕様範囲内であるか否かの判定とを行う(ステップS405)。
【0065】
ステップS402及びS403の少なくとも一方の判定結果がNOの場合には、制御装置106は、ドア112の開扉を禁止する。このとき、ドア制御装置110はドア112を施錠し、画面表示装置111にドア112の開扉が禁止であることを表示する。また、開扉が禁止である理由として、分析部101の外部の温度及び湿度の少なくとも一方が仕様範囲外であることなどを表示する。
【0066】
以上のように、制御装置(制御装置106及びドア制御装置110)は、ステップS401~S403の判定結果がYESであり、かつ、ステップS404,S405での判定結果の少なくとも一方がNOである場合、すなわち、分析部101の内部に分析の終了していない試料12が存在し、かつ、内部環境データ取得装置105での温度及び湿度に係る計測結果が予め定めた内部環境仕様の範囲内であり、かつ、外部環境データ取得装置102での温度及び湿度に係る計測結果の少なくとも一方が予め定めた外部環境仕様の範囲外である場合に、ドア112の開扉を禁止する。
【0067】
また、ステップS401~S403の少なくとも一方の判定結果がNOの場合、又は、ステップS404及びS404の判定結果がYESの場合には、続いて、ドア制御装置110は、ドア112の開扉を許可する。このとき、ドア制御装置110はドア112を解錠し、画面表示装置111にドア112の開扉が可能であることを表示する。
【0068】
その他の構成は第1及び第2の実施の形態と同様である。
【0069】
以上のように構成した本実施の形態においても第1及び第2の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0070】
<付記>
なお、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内の様々な変形例や組み合わせが含まれる。
【0071】
例えば、分析部の内外の環境状態の差の大きさをドアの開扉を禁止するか否かの判定条件に加え、分析部の内部に分析の終了していない試料が存在し、かつ、内部環境データ取得装置での計測結果(温度、湿度など)が予め定めた内部環境仕様の範囲内であり、かつ、内部環境データ取得装置での計測結果と外部環境データ取得装置での計測結果との差が予め定めた差分環境仕様の範囲外である場合に、ドアの開扉を禁止するように構成しても良い。
【0072】
また、本発明は、上記の実施の形態で説明した全ての構成を備えるものに限定されず、その構成の一部を削除したものも含まれる。また、上記の各構成、機能等は、それらの一部又は全部を、例えば集積回路で設計する等により実現してもよい。また、上記の各構成、機能等は、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することによりソフトウェアで実現してもよい。
【符号の説明】
【0073】
11…試料容器、12…試料、14…光源、15…カメラ、100…自動分析装置、101…分析部、101a…隔壁、102…外部環境データ取得装置、103…カメラ、104…内部環境制御装置、105…内部環境データ取得装置、106…制御装置、106a…記憶部、107…試料データ取得部、108…試料設置部、109…試料管理部、110…ドア制御装置、111…画面表示装置、111a…ドア開錠ボタン、112…ドア、117…ライト、118…ボタン