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特許7623511光学系の光学特性を測定するための装置及び方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-20
(45)【発行日】2025-01-28
(54)【発明の名称】光学系の光学特性を測定するための装置及び方法
(51)【国際特許分類】
   G01M 11/02 20060101AFI20250121BHJP
   G02B 19/00 20060101ALI20250121BHJP
【FI】
G01M11/02 A
G02B19/00
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2023546406
(86)(22)【出願日】2022-01-10
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-31
(86)【国際出願番号】 EP2022050313
(87)【国際公開番号】W WO2022161756
(87)【国際公開日】2022-08-04
【審査請求日】2023-09-27
(31)【優先権主張番号】102021102246.0
(32)【優先日】2021-02-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】518193696
【氏名又は名称】トライオプティクス ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】Trioptics GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100230514
【弁理士】
【氏名又は名称】泉 卓也
(72)【発明者】
【氏名】リスケ ガブリエル
(72)【発明者】
【氏名】サスニング スヴェン
(72)【発明者】
【氏名】ループレヒト アイコ
【審査官】小野寺 麻美子
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-212620(JP,A)
【文献】特開平02-216428(JP,A)
【文献】特開2019-007845(JP,A)
【文献】特開平10-288565(JP,A)
【文献】特開2002-039913(JP,A)
【文献】特表2019-522781(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0021305(US,A1)
【文献】独国特許出願公開第102007057260(DE,A1)
【文献】独国特許出願公開第102006059823(DE,A1)
【文献】特開2007-10328(JP,A)
【文献】特開2012-53389(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 11/00 - G01M 11/02
G02B 19/00 - G02B 21/00
G02B 21/06 - G02B 21/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
異なるズーム位置で異なる焦点距離を有するズーム対物レンズを備えた光学系(12、112、212)の光学特性を測定するための装置であって、
平面内に配置され、互いに分離された複数の構造(18)を有する結像対象物体(16)と、
2次元画像センサ(32)と、
焦点距離fを有する収集光学素子(30)であって、前記画像センサ(32)が、0.9・f≦a≦1.1・fである前記収集光学素子(30)からの距離aを有する、収集光学素子(30)と、
前記光学系が前記物体(16)と前記収集光学素子(30)との間のビーム経路内に位置するように配置された、前記光学系(12、112、212)のための保持器(13)と、
を備え、
前記画像センサ(3)及び前記収集光学素子(30)が、前記光学系(212)の前記ズーム位置の影響を受けず、前記装置の前記収集光学素子(30)及び/又は前記画像センサ(32)を調整することなく、全ての構造(18)が前記光学系(12、112、212)及び前記収集光学素子(30)によって前記画像センサ(32)上に同時に結像され得るように構成されていることを特徴とする、装置。
【請求項2】
前記物体が、照明されたレチクル(16)であることを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記構造(18)が十字線であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の装置。
【請求項4】
前記保持器(13)が発散ビーム経路内に配置されていることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の装置。
【請求項5】
コリメータ(42)が前記物体(16)と前記保持器(13)との間の光路内に配置されていることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の装置。
【請求項6】
前記コリメータ(42)がコノスコープレンズであることを特徴とする、請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記物体(16)が、前記コリメータ(42)と前記物体(16)との間の距離を変化させるよう前記装置(310)の光軸(34)に沿って可動であることを特徴とする、請求項5又は6に記載の装置。
【請求項8】
前記画像センサ(32)が前記装置の光軸(34)に沿って可動であることを特徴とする、請求項1~7のいずれか一項に記載の装置。
【請求項9】
異なるズーム位置で異なる焦点距離を有するズーム対物レンズを備えた光学系(12、112、212)の光学特性を測定する方法であって、以下のステップ、
2次元画像センサ(32)、焦点距離fを有する収集光学素子(30)であって、前記画像センサ(32)が、0.9・f≦a≦1.1・fである前記収集光学素子(30)からの距離aを有する、収集光学素子(30)、及び物体(16)を提供するステップと、
測定対象の前記光学系(12、112、212)を前記物体(16)と前記収集光学素子(30)との間のビーム経路内に挿入するステップと、
前記光学系(12、112、212)及び前記収集光学素子(30)を用いて、前記光学系(212)の前記ズーム位置の影響を受けず、前記収集光学素子(30)及び/又は前記画像センサ(32)を調整することなく、前記光学系(12、112、212)及び前記収集光学素子(30)の視野(FOV)内の前記物体(16)を前記画像センサ(32)上に同時に結像するステップと、
前記画像センサ(32)上に形成された前記物体(16)の像を評価し、前記光学特性を決定するステップと、
を含む、方法。
【請求項10】
記光学系(212)の前記光学特性が少なくとも2つの異なる焦点距離のために測定されることを特徴とする、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記光学系(312)がアフォーカルであること、及びコリメータ(42)が前記物体(16)と前記光学系(312)との間の光路内に配設されていることを特徴とする、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
少なくとも1つの光学特性が、歪み、結像野湾曲、視野、及び周辺光量落ちからなる群から選択されることを特徴とする、請求項9~11のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学系の光学特性を測定するための装置及び方法に関する。光学特性は、例えば、変調伝達関数(MTF(modulation transfer function))、歪み、又は主光線角度によって記述され得るとおりの、屈折又はアフォーカル光学系の結像特性であり得る。
【背景技術】
【0002】
従来技術においては、MTFを測定するための装置であって、例えば、十字線、ドット、又は線パターンの配置から成ることができる、光パターンが測定対象光学系の焦平面内に生成される、装置が周知である。光パターンを生成するために、例えば、光源によって照明され、開口のパターンを有するレチクルを用いることができる。
【0003】
光学系の反対側には、レンズ、及びレンズの焦平面内に配置された画像センサを各々有する、複数の相互に独立したカメラが配置されている。カメラは、各カメラがその画像センサによって光パターンのちょうど1つの切り抜き(cutout)の(典型的にはちょうど1つの十字線の)像を取り込むという仕方で分布している。このように、変調伝達関数をいくつかの視野位置において互いに独立して測定することができる。
【0004】
光学系の結像特性に対する要求が絶えず増大していることを受けて、できるだけ多くの視野位置において光学系の変調伝達関数又は別の結像特性を測定することが望まれている。一定の構造体積を必要とする別個のカメラが光パターンの切り抜きごとに必要とされるため、より多数の視野位置を用いて、測定光が所望の方向から、対応するカメラに入ることができるほど高密度に、対応する数のカメラを配置することは困難になる。
【0005】
国際公開第2016/180525A1号パンフレット(米国特許第2018/0136079号明細書に対応する)から、MTFを測定するための装置であって、特殊なビーム折り曲げを用いて従来の配置の場合よりも多くのカメラを配置することができる、装置が周知である。
【0006】
しかし、たとえ、この方法を用いても、全ての視野点のためにMTFを測定することはできない。これは、測定対象光学系が可変焦点距離を有し、MTFが異なる焦点距離のために測定されることになる場合に、特に問題になる。焦点距離が変更されたとき、十字線の個々の像は異なる場所に作り出されるため、焦点距離が変更されるたびにカメラを整列させ直さなければならない。これは時間がかかり、したがって、大量製造される光学系、例えば、スマートフォンカメラの機械製の光学素子の高速測定のために経済的ではない。光学特性を測定するための他の装置も、台湾実用新案出願第579270号明細書、台湾実用新案出願第583048号明細書、台湾実用新案出願第579270号明細書,及び中国実用新案出願第206638403号明細書から周知である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、最小限の設備を用いてできるだけ多くの異なる視野点において測定が実施され得る、光学系の光学特性を測定するための装置及び方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、この目的は、光学系の光学特性を測定するための装置であって、平面内に配置され、互いに分離された複数の構造を有する結像対象物体を備える、装置によって達成される。装置は、2次元画像センサと、焦点距離fを有する収集光学素子であって、画像センサが、0.9・f≦a≦1.1・fである収集光学素子からの距離aを有する、収集光学素子と、光学系のための保持器と、をさらに備える。保持器は、光学系が物体と収集光学素子との間の光学経路内にあるように配置されている。画像センサ及び収集光学素子は、全ての構造が光学系及び収集光学素子によって画像センサ上に同時に結像され得るような仕方で構成されている。
【0009】
本発明は、少なくとも、長い焦点距離及び対応して小さい視野(FOV(field of view))を有する光学系の場合において、光学系及び収集光学素子を介して、物体全体、及びそれゆえ、互いに分離されたいくつかの構造を画像センサ上に同時に結像することができるという考え方に基づく。このために必要とされる大型の高分解能画像センサ-理想的には10メガピクセル超を有する-は、現在、妥当なコストで入手できる。全体的により大きいエタンデュのゆえに、収集光学素子はまた、現在まで用いられているカメラレンズの場合より複雑でもある。しかし、1つの画像センサ及び1つの収集光学素子のみが設けられ、好ましくは、軸方向に中心を有するように配置されるだけでよいため、本発明に係る装置のための設計及び製造の労力は、それにもかかわらず、多数のカメラが測定対象の光学系の上方にドーム状の様態で配置された従来の装置の場合よりも大幅に低い。物体は、従来技術において知られるように、照明されたレチクルであることができる。構造は、通例、線パターン、又は単一若しくは2重の照準線である。
【0010】
保持器が発散ビーム経路(diverging beam path)内に配置されている場合には、それは特に有利である。測定対象光学系は可変焦点距離を有し、特に、ズームレンズとして設計することができる。従来の装置では、測定対象光学系の焦点距離が変更されたとき、構造の像は、概して、個々のカメラの結像野外へ完全に、又は部分的に移動するのに対して、本発明に係る装置では、焦点距離が変更されたとき、像は画像センサによって常に完全に取り込まれ得る。それゆえ、光学系の焦点距離が変更された場合に、調整又は再調整が行われなくてもよい。これは、装置はまた、スマートフォン又はウェブカメラなどのデバイスにおける使用のために意図されたズームレンズの品質管理の部分として結像特性をチェックするために用いることもできることを意味する。
【0011】
別の実施形態では、コリメータが物体と保持器との間の光路内に配置されている。この場合には、測定対象光学系は発散ビーム経路内になく、平行ビーム経路内にある。このような配置は、測定対象光学系自体が屈折力を有せず、したがって、アフォーカルであるときに、有利である。このような光学系の例は、両側テレセントリックレンズ、プリズム、又は導波路である。このとき、測定対象の光学特性は、角度依存性輝度又は色分布などの測光量であることができる。
【0012】
コリメータがコノスコープレンズである場合には、それは特に有利である。これは、仮想的な開口が試験物の表面と平行な平面内に作り出されることを可能にする。コノスコープのこの特性は、物理的な開口が試験物の近くのビーム経路内に導入されなくてもよいという利点を有する。
【0013】
物体は、コリメータと物体との間の距離を変化させるよう装置の光軸に沿って動くように配置することができる。物体がコリメータの焦平面内に厳密に位置決めされている場合には、測定対象光学系は、コリメートされたビーム経路内にある。物体の全ての他の軸方向変位位置では、ビーム経路はおおよそコリメートされているにすぎない。このように、例えば、測定対象光学系はどの光学条件において最良の光学特性を有するのかを決定することが可能である。好ましくは、物体及びコリメータはこの目的のために共通ハウジング内に配置されている。コリメータがまた、可変焦点距離を有する場合には、コリメータの焦点距離及び物体までの距離を変更することで、光学系内で照明される区域の直径を変更することができる。
【0014】
測定対象光学系から出てきた測定光は、完璧にコリメートされた状態(すなわち、物体の像が無限遠にある状態)でなくてもよい。遠方にある、例えば、2メートル超の所にある像でさえも、測定精度を大きく犠牲にすることを必要とせず、光学特性の高度に正確な測定を可能にする。コリメートされたビーム経路からの逸脱がもはや許容可能でなくなった場合には、これは、画像センサを光軸に沿って動かすことによって対応され得る。収集光学素子が可変焦点距離を有する場合には、同じ効果が達成され得る。したがって、収集光学素子と画像センサとの間の距離aは収集光学素子の焦点距離fから最大10%だけ逸脱することができ、条件、0.9・f≦a≦1.1・fをもたらす。実施形態によっては、逸脱は最大5%であり、他の実施形態では、逸脱は許されない。
【0015】
方法に関して、冒頭で定められた目的は、光学系の光学特性を測定するための方法であって、以下のステップ、
2次元画像センサ、焦点距離fを有する収集光学素子であって、画像センサが、0.9・f≦a≦1.1・fである収集光学素子からの距離aを有する、収集光学素子、及び平面内に配置され、互いに分離された複数の構造を有する物体を提供するステップと、
物体と収集光学素子との間のビーム経路内への測定対象光学系の挿入と、
光学系及び収集光学素子を用いた画像センサ上への試験物及び収集光学素子の視野内の物体の同時結像と、
画像センサ上に形成された物体の像を評価し、光学特性を決定するステップと、
を含む、方法によって解決される。以上において本発明に係る装置に関して説明された考察及び利点はその通りに方法に適用される。
【0016】
一実施形態では、光学系は可変焦点距離を有する。光学系の光学特性は少なくとも2つの異なる焦点距離のために測定される。
【0017】
別の実施形態では、光学系はアフォーカルである。この場合には、コリメータが物体と光学系との間の光路内に配置されている。物体は、同じ光学系の連続した測定の合間、又は異なる光学系の測定の合間に装置の光軸に沿って動かすことができる。
【0018】
本発明に係る方法は、歪み、結像野湾曲、視野、及び周辺光量落ち(edge light fall-off)からなる群から選択される少なくとも1つの光学特性を測定するために用いることができる。本発明に係る方法は、試験物の視野全体内の物体を結像することができるよう、大型画像センサを用いるため、高い測定点密度が得られる。その結果、試験物の上述の光学特性を高精度で、及びより高い次数で測定することができる。例えば、周知の測定装置では、限られた程度でのみ可能であった、高次の歪み多項式を決定することが可能である。加えて、大型画像センサは、結像野全体にわたって広がる構造、例えば、実線が結像されることを可能にする。これは、とりわけ、視野を測定するために有利である、評価のための新たなアプローチを可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0019】
以下において、図面を参照して本発明の実施形態がより詳細に説明される。
図1】従来技術に係る測定装置を通した概略子午断面図である。
図2】第1の実施形態に係る測定装置を通した概略子午断面図である。
図3図2に係る実施形態において物体として用いられるレチクルの上面図である。
図4】同様の測定対象光学系のための追加的に描かれた光線及び給送デバイスを有する図3に示される装置である。
図5a-5b】ズームレンズの異なる変位位置におけるズームレンズの測定中の図2に示される装置を通した子午断面図である。
図6】アフォーカル光学系を測定するための第2の実施形態に係る測定装置を通した概略子午断面図である。
図7a-7b】レチクルの異なる変位位置における、レチクルが軸方向に変位可能に配置されている、第3の実施形態に係る測定装置を通した子午断面図である。
図8a-8b】様々な変位位置における、コリメータが可変屈折力を追加的に有する、図7a及び図7bに示される測定装置の変形例を通した子午断面図である。
図9a-9b】異なる変位位置における、画像センサが、軸方向に変位可能であるように配置されている、第4の実施形態に係る測定装置を通した子午断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
1.従来技術
本発明に係る測定装置の動作を説明するために、まず図1を参照する。同図では、第1の従来技術に係る測定装置が概略子午断面図で示されており、全体として10’と指定されている。
【0021】
測定装置10’は、以下、試験物12’と称される、光学系の変調伝達関数(MTF)を測定することを意図されている。試験物12’は、ここでは、単一のレンズとしてのみ指示されているが、多くの場合、それは、いくつかの屈折及び/又は反射光学要素を有する光学系になるであろう。試験物12’は保持器13’によって保持されている。保持器13’は、試験物12’が、デバイス10’のビーム経路内において軸方向に中心を有し、傾斜のないように位置決めされ得る、調整デバイスを含むことができる。
【0022】
変調伝達関数は、光学系の結像品質を定量的に評価するための重要なツールであり、相対像コントラストと相対物体コントラストとの比によって光学系の分解能を記述する。物体が光学系によって結像されたときには、収差及び回折現象に起因する像平面における品質の低下が不可避的に存在する。製造偏差、並びに組み立て及び整列誤差もまた、試験物12’の結像性能を弱める。
【0023】
変調伝達関数を測定するために、試験物12’は物体を結像し、物体の像から試験物12’の変調伝達関数が推測され得る。試験物12’によって結像された物体は、光パターン生成デバイス14’によって生成された光パターンによって形成される。光パターン生成デバイス14’は、集光器22’を用いて電球として表現された光源20’によって均一に照明されるレチクル16’を有する。
【0024】
レチクルは、構造化されたコーティングを一方の側にもつガラス板である。構造化は、例えば、フォトリソグラフィにより規定されたエッチングプロセスによって作り出され得る。図1では、コーティング内のいくつかの光透過構造が18’によって指定されている。
【0025】
試験物12’は、その光軸が測定装置10’の基準軸24’と整列するよう測定装置10’内に配置される。これにより、装置10’の基準軸24’は集光器22’の光軸と一致する。加えて、保持器13’は、レチクル16’が試験物12’の焦平面26’内に配置されるよう試験物12’を軸方向に位置決めするために用いられる。その結果、構造18’によって規定された光パターンは試験物12’によって無限遠に結像される。
【0026】
2つの同一に構築されたカメラ28a’、28b’が、光パターン生成デバイス14’と反対の試験物12’の側に配置されている。カメラ28a’、28b’は、レンズ30’、及びレンズ30’の焦平面内に位置する、空間分解画像センサ32’を各々包含する。これにより、いずれの場合にも光パターン生成デバイス14’によって生成された光パターンの切り抜きが画像センサ32’上に形成される。これにより、切り抜きは、とりわけ、基準軸24’に対するカメラ28a’、28b’の配置によって、及びカメラの視野によって決定される。光軸34a’が基準軸24’と整列したカメラ28a’はレチクル16’の中心内の構造18’の像を取り込む。他のカメラ28b’の光軸34b’は基準軸24’に対して傾いている。その結果、カメラ28b’は外側の構造18’のうちの1つの像を取り込む。
【0027】
明確にするために図1には示されていない他のカメラも、通例、中心のカメラ28’の周りに配置されている。これらの他のカメラは他の構造18’の像を取り込む。カメラ28a’、28b’の画像センサ32’上に形成された構造18’の像を評価することによって、そのように知られている仕方で試験物12’の変調伝達関数を決定することができる。
【0028】
図1において示される従来の構成は、試験物の焦点距離が小さく、視野が対応して大きいときに、特に有利である。このとき、カメラは、それらが、基準軸24’に対して非常に大きい角度で試験物12’を出る光を捕捉することができるような仕方で配置することができる。
【0029】
図1に示される既知の測定装置10’では、カメラ28a’、28b’のうちの1つの視野によって覆われない視野点における変調伝達関数について説明することが不可能である。しかし、できるだけ多くの異なる視野位置において変調伝達関数を測定することがしばしば望まれる。図1から、限られた設置空間のゆえに、カメラの数を任意に増大させることができないことは明らかである。
【0030】
2.第1の実施形態
図2は、図1と同様の図における、本発明に係る、10と指定された装置の子午断面図を示す。短線のない参照符号Xで標識された構成要素は図1における構成要素X’に対応し、言及に値する相違が存在する場合にのみ再び説明される。
【0031】
複数のカメラ28a、28bは、本発明に係る装置10においては、収集光学素子30を同様に有する、単一のカメラ28によって置換されている。図示の実施形態では、センサ平面33と収集光学素子30(又は、より正確には、その像側の主平面H)との間の距離aは収集光学素子30の焦点距離fと等しい。したがって、コリメートされたビームとして収集光学素子30上に入射する測定光は画像センサ32上に集束させられる。
【0032】
画像センサ32及び収集光学素子30の寸法は、好ましくは、試験物12の視野全体が画像センサ32によって取り込まれるように選択される。これは、図3における上面図内に示される、レチクル16上の全ての構造18が、構造18が試験物の視野内にある限り、試験物12及び収集光学素子30によって画像センサ32上に同時に結像され得ることを意味する。例えば、別の測定において、構造18の間に位置する位置におけるさらなる視野点が測定されることになる場合には、レチクル16を、所望の視野位置における構造を包含する別のレチクルと交換するだけでよい。レチクル全体にわたって広がる構造の使用も原理上可能である。
【0033】
図4では、試験物12のFOV(視野)が破線によって指示されている。結像光学系の視野は、光学系を用いて鮮明に結像され得る3次元物体空間内の区域である。通例存在する矩形の結像野においては、視野は、角錐頂点が試験物12の入射瞳内にある無限切頭角錐である。切頭角錐の開口角は結像野の寸法及び試験物12の焦点距離によって決定される。
【0034】
図4では、試験物12は光の逆方向に測定されることが仮定されている。後の使用において、光は、図4において見たときに上方から試験物12を通過する。これが、視野FOVが画像センサ32の側に描かれている理由である。像側では、視野FOVは像空間に対応する。すなわち、視野内の各点は像空間内の点に対応する。
【0035】
装置10は、視野FOV又は像空間内にあるレチクル16全体が画像センサ32上に同時に結像されるという事実によって特徴付けられる。それゆえ、収集光学素子30及び画像センサ32は、試験物12によって結像され得る全ての視野点が画像センサ32上に実際に結像され得るように設計されている。このように、この種の従来の装置と異なり、個々の像が作り出されず、視野/結像野全体が取り込まれるため、例えば、試験物12の歪みを非常に容易に高精度で測定することができる。典型的には、構造18が規則的な格子を形成するレチクル16が、歪みを測定するために用いられる。
【0036】
また、画像センサ32は、通常、視野よりも大きいため、視野FOVのサイズを測定することも非常に容易である。さらに、装置10を用いて任意の周辺光量落ちを容易に検出することができる。図4において38によって指示されているのは、多数の同様の試験物12が自動品質検査プロセス内で装置10へ給送され、そこでそれらの光学特性に関して測定され得る給送デバイスである。試験物は、試験物12が装置10のビーム経路内に順々に位置決めされるという仕方で、矢印40によって指示される給送方向に沿って1つずつ運搬される。
【0037】
図5a及び図5bは、異なるズーム位置におけるズームレンズ112の測定中の図2及び図4に示される装置10を通した子午断面図を示す。ズームレンズ112の物体側の主平面H1の位置はいずれの場合にも破線によって指示されている。本発明に係る装置10の利点は、ズームレンズ112を測定するときに特に明白である。実際、複数のレンズ要素をシフトさせることによってズームレンズ112が軸方向に動かされたとき、構造18の像は静止したままでなく、像平面を横切って半径方向に動く。図5a及び図5bでは、画像センサ32上の軸外ピクセルの位置においてこれを見ることができる。図1に示されるとおりのこの種の従来の装置では、構造18の像は個々のカメラ28a、28bの視野外へ移動することになり、もはや評価することができなくなるであろう。他方で、本発明に係る装置10では、装置10を調整することを必要とすることなく、ズームレンズ112の全ての位置において、すなわち、結像比率βにかかわらず、これらの像を同時に取り込み、評価することができる。
【0038】
3.第2の実施形態
図6は、第2の実施形態に係る本発明に係る装置210の子午断面図を示す。装置210は、アフォーカルである試験物212の光学特性を測定するように構成されている。図示の実施形態では、試験物212は両側テレセントリックレンズである。しかし、AR又はVRシステムにおいて用いられるものなどの、プリズム又は導波路もまた、アフォーカルである。
【0039】
装置210においては、レチクル16と、焦平面226内にレチクル16が位置する試験物212のための保持器13との間に、コリメータ42が配置されている。コリメータ42はレチクル16を無限遠に結像し、これにより、試験物212は、コリメートされたビーム経路内に位置する。他の点では、装置210は第1の実施形態の装置10と異ならない。コリメータ42はコノスコープレンズとして設計することができる。これは、試験物の近くのビーム経路内に物理的な開口を導入することを必要とすることなく、仮想的な開口が試験物の平面内に光学的に生み出されることを可能にする。
【0040】
4.第3の実施形態
図7a及び図7bは、第3の実施形態に係る本発明に係る装置310の子午断面図を示す。装置310は、図6に示される装置210と実質的に同じであるが、ここでは、コリメータ42は光パターン生成デバイス14と一緒に共通ハウジング43内に収容されている。加えて、光パターン生成デバイス14のレチクル16は調整デバイス46を用いて光軸34に沿って可動である。図7aに示されるように、レチクル16がコリメータ42の焦平面内に厳密に位置する場合には、コリメータ42はレチクル16上の構造18を無限遠に結像し、これにより、コリメートされた光が試験物12を通過する。レチクル16がコリメータ42の焦平面外へ動かされた場合には、コリメータ42の背後の光はもはやコリメートされず、発散又は収束させられる。図7bは、試験物12が収束ビーム経路内にある場合を示す。
【0041】
コリメータが、調整デバイス44によって図8a及び図8bにおいて指示される、可変焦点距離を追加的に有する場合には、このとき、図8a及び図8bの比較によって示されるように、同時に、コリメータ42を調整し、レチクル16を動かすことによって、異なるビーム径を有するビーム経路を設定することができる。光の損失を伴うことなく、試験物12内で照明される区域のサイズを調整する能力は、時として、特定の測定タスクにおいて、例えば、測光量を測定する際に、有利である。
【0042】
5.第4の実施形態
図9a及び図9bは、第4の実施形態に係る本発明に係る装置410を通した子午断面図を示す。本実施形態では、画像センサ32は調整デバイス48を用いて装置410の光軸34に沿って可動である。これは、試験物12から発した測定光が厳密にコリメートされない場合に、特に有利である。このことの理由は、例えば、レチクル16が試験物12の焦平面内に厳密に位置しないか、又は図6図8に示される実施形態において、試験物12がおおよそアフォーカルであるにすぎないことであり得る。
【0043】
図9aは、試験物12から発する光が厳密にコリメートされ、収集光学素子30と画像センサ32との間の距離aが収集光学素子30の焦点距離fと等しい場合を示す。図9bは、たとえ、試験物12から発する光が若干収束しても、距離aを低減することによって、鮮明な像をどのように取得することができるのかを示す。概して、距離aは焦点距離fから10%より大きく逸脱しない。
【0044】
また、装置410は、結像野湾曲を単純な仕方で測定するために用いることもできる。この目的のために、例えば、レチクル16のいくつかの像を画像センサ32の異なる軸方向変位位置において獲得することができ、像コントラストを距離aの関数として測定することができる。
図1
図2
図3
図4
図5a-5b】
図6
図7a-7b】
図8a-8b】
図9a-9b】